本発明は、炭素繊維を生成するための方法に関する。
炭素繊維は、増加し続けるニーズに対応する。2010年の炭素繊維の世界生産量は40キロメートルトン(KMT)であり、2020年には150KMTまで成長すると見込まれている。この成長には、工業グレードの炭素繊維が大きく貢献すると予想されており、適用には低コストが不可欠である。炭素繊維を生成するための従来の方法は、繊維状に溶液紡糸され、酸化及び炭化されるポリアクリロニトリル(PAN)に依存する。コストの約50パーセントは、ポリマー自体及び溶液紡糸のコストに関連している。
低コストの工業グレードの炭素繊維を生成する取り組みにおいて、種々のグループが、代替の前駆体ポリマー及び炭素繊維の作製方法を研究した。PAN繊維に代わる前駆体は、セルロース糸、窒素含有多環式ポリマー、及びピッチまでも含んでいた。各異なる前駆体から炭素繊維を調製することは、その前駆体に特有の課題を伴い、各前駆体の炭化プロセスは、特定の前駆体の化学的性質に合わせて設計されなければならない。
最近の取り組みには、スルホン化ポリエチレン繊維等の安定化されたポリオレフィン(S−PO)繊維を用いた研究が含まれている。例えば、米国特許第4070446号及び国際公開第WO92/03601号は、両方とも、ポリエチレン繊維のスルホン化、及びその後の炭素繊維への変換、またさらには黒鉛化炭素繊維への変換の方法を教示している。炭素繊維を生成するためのS−PO繊維の使用は比較的新しい技術であり、歴史的に、他の既知の前駆体からの炭素繊維と比較してより低い引張強度及びヤング率を有する炭素繊維を生成してきた。S−PO繊維の高温黒鉛化(典型的には2000℃を超過)は、得られる炭素繊維のヤング率を増加させるのに役立ち得るが、同時に処理コスト及び複雑性も増大させる。
PAN繊維の研究により、ホウ素が、繊維の弾性を増加させるように炭素繊維を黒鉛化するための効果的な触媒となり得ることが明らかになった。しかしながら、以下の参考文献から明らかであるように、たとえ繊維がホウ素触媒を含む場合であっても、必要とされる黒鉛化温度は依然として非常に高い。さらに、参考文献は、ホウ素は、2300℃超で加熱しない限り、実際には引張強度の低下を引き起こし得るということを明らかにしている。
Ya Wen et al.,Materials and Design 36,728−734(2012)は、処理したホウ酸を用いてPAN繊維を処理すると、1250℃を超える温度まで加熱した後でヤング率の増加がもたらされるが、2300℃を超過する温度まで加熱されない限り繊維の引張強度が低下することを実証するデータを提示している。
英国特許第1295289号は、ホウ素は、1800〜3200℃の温度範囲で、特定のポリマー繊維の急速な黒鉛化を促進するための触媒としての役割を果たすことができると報告している。英国特許第1295289号は、好適な前駆体繊維として、PAN、セルロース及び窒素含有多環式ポリマー繊維を特定している。ホウ素触媒は、PAN繊維が2200℃を超過して加熱された場合に、ホウ素なしで調製された同様の繊維と比較して高いヤング率を有する炭素繊維を生成するための例として示されている。
他の参考文献もまた、黒鉛化温度が2000℃を超える限り、改良された特性を有する黒鉛繊維を生成するための好適な黒鉛化触媒としてホウ素を特定している。例えば、ドイツ特許1949830A1号、日本特許第3457774B2号、日本特許第3303424B2号、及びCooper,GA,Mayer RM,Journal of Materials Science 6(1971)60−67を参照されたい。
PAN繊維は、S−PO繊維の前駆体とは異なる化学構造を有する。ホウ素がS−PO繊維の炭素繊維への変換にどのように影響するのか、またはそもそも、そのような変換に影響を与えるのかどうかさえ不確かなままである。
2000℃、またはさらには1800℃を超過する温度まで加熱する必要なく、得られる炭素繊維のヤング率、及び好ましくは引張強度も増加させる、スルホン化ポリオレフィン繊維等のS−PO繊維から炭素繊維を作製するためのプロセスを提供することが望ましい。
試験方法は、日付が試験方法番号とともに示されていないとき、本文書の優先日の時点で最新の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験協会および試験方法番号の両方への言及を含む。以下の試験方法の略称および識別名が本明細書に適用される:ASTMは、ASTM International(以前のAmerican Society for Testing and Materials)を指し、ENは、European Normを指し、DINは、Deutsches Institut fur Normungを指し、ISOは、International Organization for Standardsを指す。
「及び/または」は、「及び、または代替として」を意味する。別途指定のない限り、全ての範囲はエンドポイントを含む。
「弾性率」及び「ヤング率」は同義である。
本発明の方法は、安定化されたポリオレフィン繊維から炭素繊維、好ましくは黒鉛化繊維を調製するのに有用である。
「炭素繊維」は、繊維の重量の70wt%超、好ましくは80wt%以上、さらにより好ましくは90wt%以上を含む繊維であり、炭素重量が水素重量を20倍以上、好ましくは50倍以上上回る。
「黒鉛繊維」は、炭素繊維の一形態であり、これは、六角形の炭素環の規則正しい配列、結晶様構造及び秩序を特徴とする。炭素繊維は、炭素繊維において六角形の環の量及び組織化された構成が増加するにつれて、より黒鉛の性質になる。
「黒鉛化炭素繊維」は、ある程度の結晶様構造及び秩序を示す炭素繊維である。
安定化されたポリオレフィン(S−PO)繊維は、繊維の重量に基づく熱重量分析によって、最高600℃の温度で検出可能な炭化水素の損失が10重量パーセント(wt%)未満、より好ましくは5wt%未満、またはさらにより好ましくは1wt%未満であるように、そして好ましくは損失がないように化学修飾されたポリオレフィン繊維である。ポリオレフィン(PO)繊維は、ポリオレフィン繊維を架橋、酸化(例えば、空気酸化)、またはスルホン化することによってS−PO繊維に変換することができる。
S−POになるように化学修飾されたポリオレフィン繊維は、オレフィン及び非オレフィンの両方を含むマルチポリマーを含む、ポリオレフィンホモポリマーまたはマルチポリマーであってもよい。本明細書において、「マルチポリマー」は、コポリマー、ターポリマー、及び高次ポリマー等の1種類より多くのモノマーのポリマーを指す。望ましくは、ポリオレフィン繊維は、エチレン、プロピレン、ブタジエン及び/またはスチレン単位のうちの1つまたは任意の組み合わせまたは1つより多くを含むホモポリマーまたはコポリマーである。
ポリエチレンホモポリマー及びマルチポリマー、とりわけコポリマーは、特に望ましいポリオレフィン繊維である。好ましいポリエチレンコポリマーは、エチレン/オクテンコポリマー、エチレン/へキセンコポリマー、エチレン/ブテンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/スチレンコポリマー、エチレン/ブタジエンコポリマー、プロピレン/オクテンコポリマー、プロピレン/へキセンコポリマー、プロピレン/ブテンコポリマー、プロピレン/スチレンコポリマー、プロピレンブタジエンコポリマー、スチレン/オクテンコポリマー、スチレン/へキセンコポリマー、スチレン/ブテンコポリマー、スチレン/プロピレンコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、ブタジエン/オクテンコポリマー、ブタジエン/へキセンコポリマー、ブタジエン/ブテンコポリマー、ブタジエン/プロピレンコポリマー、ブタジエン/スチレンコポリマー、またはそれらの2つ以上の組み合わせを含む。
ポリオレフィンは、望ましくはマルチポリマーであり、好ましくはエチレン及びオクテンのコポリマーである。
ポリオレフィンマルチポリマーは、任意のモノマー単位の構成を有することができる。例えば、ポリオレフィンマルチポリマーは、直鎖または分岐鎖、モノマー単位またはモノマー単位のブロック内での交互ポリマー(ジブロックまたはトリブロックポリマー等)、グラフトマルチポリマー、分岐コポリマー、櫛形コポリマー、星形コポリマー、またはそれらの2つ以上の任意の組み合わせであってもよい。
ポリオレフィン繊維及びS−PO繊維は、中空繊維の円形、長円形、星形、三角形、長方形、及び正方形等の任意の断面形状であってもよい。
S−PO繊維は、望ましくはスルホン化ポリオレフィン繊維である。スルホン化ポリオレフィン繊維は、スルホン化されることによって安定化された、硫酸官能基を含むポリオレフィン繊維である。ポリオレフィン繊維をスルホン化するいずれの手段も、本発明の方法において使用されるスルホン化ポリオレフィン繊維を調製するのに好適である。例えば、ポリオレフィン繊維をスルホン化する好適な手段は、濃縮及び/もしくは発煙硫酸、クロロスルホン酸、ならびに/または溶媒中の及び/もしくは気体としての三酸化硫黄等のスルホン化剤にポリオレフィン繊維を曝露することによる。好ましくは、ポリオレフィン繊維を発煙硫酸、硫酸、三酸化硫黄、クロロスルホン酸またはそれらの任意の組み合わせから選択されるスルホン化剤で処理することによってスルホン化ポリオレフィン繊維を調製する。スルホン化は、ポリオレフィン繊維を第1のスルホン化剤、及び次いで第2のスルホン化剤、任意選択的に、第3および任意選択的により多くのスルホン化剤に曝露する段階的なプロセスであってもよい。各ステップのスルホン化剤は、任意の他のステップと同じかまたは異なってもよい。典型的には、スルホン化は、スルホン化剤を含有する1つまたは1つより多くの槽にポリオレフィン繊維を通すことによって起こる。
ポリオレフィン繊維をスルホン化するための1つの望ましい方法は、ポリオレフィン繊維を発煙硫酸で(第1のステップ)、次いで濃縮硫酸(第2のステップ)で、次いで第2の濃縮硫酸処理(第3のステップ)によって処理することである。各3つのステップの間の温度は、互いと同じかまたは異なってもよい。好ましくは、第1のステップの間の温度は、第2のステップの間の温度よりも低い。好ましくは、第2のステップの間の温度は、第3のステップの間の温度よりも低い。好適な温度の例を挙げる:第1のステップは、ゼロ℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上であると同時に望ましくは130℃以下、好ましくは100℃以下であり、第2のステップは望ましくは105〜130℃であり、第3のステップは望ましくは130〜150℃である。各ステップの滞留時間は、5分以上〜24時間以内であってもよい。
S−PO繊維をホウ素源で処理する。好適なホウ素源は、ホウ酸、フェニルボロン酸を含む。ホウ酸水溶液をホウ素源として使用すること、及びS−PO繊維をホウ酸水溶液に曝露することによってS−PO繊維を処理することが望ましい。ホウ酸水溶液中のホウ酸の濃度は、典型的には1リットル当たり0.09モル(M)以上、好ましくは0.1M以上、より好ましくは0.2M以上、0.3M以上、0.4M以上、さらには0.5M以上である。最も好ましくは、ホウ酸溶液は、S−PO繊維への曝露温度の飽和ホウ酸溶液である。
炭素繊維の説明とともに後述されるような最終的な炭素繊維のホウ素濃度を得るように、十分なホウ素をS−PO繊維と組み合わせるために、十分な期間、十分な濃度のホウ素源にS−PO繊維を曝露することが望ましい。
S−PO繊維を炭素繊維に変換するために、不活性雰囲気中、ホウ素源で処理されたS−PO繊維を加熱する。不活性雰囲気中で加熱することにより、S−PO繊維の炭化中に酸化分解を防止する。不活性雰囲気は、全大気重量に基づいて100重量百万分率未満の酸素を含有する。不活性雰囲気は、不活性ガス(加熱プロセスの間にPO繊維を酸化しないガス)を含有してもよい。好適な不活性ガスの例は、窒素、アルゴン、及びヘリウムを含む。不活性雰囲気は、101キロパスカルより低い圧力である真空であってもよい。酸素レベルは、純粋に1種または1種より多くの不活性ガスでパージすることによって、不活性ガスでパージして真空を引くことによって、または加熱中にS−PO繊維の望ましくない量の酸化を妨げるのに十分低い濃度まで酸素レベルを低下させるように十分低い真空を引くことによって、低下させることができる。
S−PO繊維を炭化するために、不活性雰囲気中でS−PO繊維を1000℃以上の温度まで加熱する。好ましくは、不活性雰囲気中でS−PO繊維を1150℃以上、より好ましくは1600℃以上、さらにより好ましくは1800℃以上の温度まで加熱する。加熱は、2000℃以上、2200℃以上、2400℃以上、及びさらには3000℃以上の温度までであってもよい。しかしながら、一般的に、加熱は、3000℃以下の温度までである。より高い温度は、繊維を非黒鉛炭素繊維より高い強度、より高いヤング率、またはその両方を有する黒鉛繊維に変換することができるため、S−PO繊維を炭化するためにはより高い加熱温度が望ましい。本発明の驚くべき結果の1つは、黒鉛化(すなわち、炭素繊維における結晶構造の形成)は、わずか1800℃以下まで加熱するだけでS−PO繊維から達成され得るということである。すなわち、本発明は、1800℃超の温度までS−PO繊維を加熱することなく、S−PO繊維の黒鉛化を提供する。
所望の特性を得るために、必要なだけ繊維を加熱する。一般的に、繊維がより長く加熱されると、炭化がより完全となり、炭素がより整列した状態になる。一般的に、加熱の期間は、所望の繊維特性を得るのに十分長くなおも加熱する一方で、商業的に実現可能であるために十分迅速に繊維を処理することのバランスである。
S−PO繊維を加熱して炭素繊維に変換した後、炭素繊維は、少なくとも0.3モルパーセント(mol%)、好ましくは0.35mol%以上、より好ましくは0.5mol%以上、さらに好ましくは1mol%以上、さらに好ましくは2.5mol%以上、さらにより好ましくは2.8mol%以上、さらにより好ましくは3mol%以上、さらにより好ましくは3.3mol%以上、さらにより好ましくは3.6mol%以上のホウ素濃度を有することが望ましい。典型的には、ホウ素の濃度は、最終的な炭素繊維において10mol%以下、より典型的には5mol%以下である。ホウ素濃度は、炭素繊維中の元素の総モルに対するものである。実施例の項に後述する方法に従って、誘導結合プラズマ(ICP)分析によって炭素繊維中のホウ素濃度を決定する。
本発明は、S−PO繊維を炭化の前にホウ素で処理することにより、ホウ素を含有しない、同じ炭化温度で炭化されるS−PO繊維からの炭素繊維より高い強度、より高いヤング率、またはより高い強度及びより高いヤング率の両方を有する炭素繊維の生成が可能になるという発見の結果である。本発明のために、強度は引張強度を指す。ASTM法C1557に従って引張強度及びヤング率を特徴付ける。
ポリエチレン/1−オクテンコポリマー(メルトインデックス30、密度0.9550グラム/ミリリットル、多分散性3.0)を溶融紡糸して1700フィラメント(靭性4.4グラム/デニール、破断強度8.4%、直径8.2ミクロン)を含有する連続的な繊維トウにする。第1槽では25メガパスカル(MPa)の張力下、後続槽では15MPaの張力下で、4槽連続プロセスにて繊維トウをスルホン化する。各槽で約60分の滞留時間に対応する速度で繊維トウを供給する。第1槽は、50℃の20モルパーセント(mol%)の発煙硫酸である。第2槽は120℃の96mol%硫酸である。第3槽は、140℃の96mol%硫酸である。第4槽は、比較例A及びBでは脱イオン水、実施例1〜5では種々の濃度のホウ酸水溶液(BA)、ならびに実施例5では0.082モルのフェニルボロン酸(PBA)水溶液である。第4槽から繊維を巻き取る。
比較例B及び実施例5は、比較例A及び実施例1〜4とは異なる日に異なるPO繊維のサンプルから作製されたということに留意されたい。したがって、結果の比較は、比較例A及び実施例1〜4と比較例B及び実施例5とを比較した場合に最も正確である。
10センチメートル(4インチ)のサンプルを、加熱ゾーン温度650℃、950℃、1150℃で、連続窒素パージ式の3ゾーン炭化炉に通過させることによってスルホン化繊維を炭化する。張力5.5MPa及び合計共鳴時間14分でサンプル繊維を炉に通す。1200℃以上の炭化の場合(表1を参照)、張力5.5MPa及び最も高温のゾーン内における合計共鳴時間2.5分で、サンプルを連続窒素パージ式の1ゾーンKYK炉にさらに通過させる。
実施例において得られた炭素繊維で得られた強度及びヤング率の値を表1にギガパスカル(GPa)の単位で示す。選択された実施例について得られた炭素繊維中のホウ素の濃度を、ICP分析によって決定される繊維のモル組成に基づくmol%で示す。
以下の手順を用いてICP分析を行う。Milestone UltraWave消化システムを用いた単一反応チャンバマイクロ波消化技術を使用した酸消化によってサンプルを調製する。約10ミリグラムの炭素繊維を消化用石英管に移し、0.5ミリリットルの高純度脱イオン水及び2ミリリットルの濃硝酸を加える。4メガパスカル(40バール)の窒素で反応チャンバを予圧し、マイクロ波エネルギーを用いてサンプルを200〜250℃まで加熱して消化を行う。消化後、高純度脱イオン水でサンプルを15ミリリットルに希釈する。誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を用いてサンプルを分析する。約1〜10マイクログラム/グラムの範囲にわたる認定された水性ホウ素標準の希釈液及び5%硝酸ブランクを用いてICP−OESを較正する。重量に基づいて較正標準及び試料を調製する。サンプルをこの較正標準と照合する。記憶効果を引き起こすホウ素の傾向のために、測定の実行を通してキャリーオーバーが存在しないことを確実にするための品質管理チェックとともに、多数のすすぎ及び較正を行う。ホウ素を加えていない繊維サンプルに、認定された水性ホウ素標準を添加し、分析を行うことによって正確性を確認する。
表1のデータは、1150℃〜2400℃の範囲の温度で炭化された炭化スルホン化PO繊維のヤング率及び/または強度における測定可能な増加を示している。広い範囲のホウ素処理濃度及び得られた炭素繊維の広い範囲のホウ素濃度において、ヤング率及び強度の増加が顕著である。
10センチメートル(4インチ)の繊維サンプルの代わりに45.7センチメートル(18インチ)の繊維サンプルを使用することを除いて、比較例A及び実施例3と同様の様式で、比較例B及び6の予備炭化繊維をそれぞれ調製する。ヘイルム雰囲気下で炭化しながら広角X線回析(WAXD)によって比較例B及び実施例6を分析する。WAXD分析中は繊維を163MPaの張力に維持し、加熱による結晶構造の変化を判定するために繊維を加熱しながら分析を行う。
cos2φ、La、Lc、及びd002のWAXDによる特徴付けを、それぞれ図1〜4に示す。図1は、繊維の配向の程度が、ホウ素が存在する場合、より低い温度でより大きな配向の程度となることを示している。図2は、ホウ素が存在する場合、より低い温度で微結晶の長さがより長いことをさらに示している。図3は、ホウ素が存在する場合、より低い温度で結晶層間の空間がより小さいこと(したがって、結晶構造がより純粋であること)を示している。図4は、ホウ素が存在する場合、より低い温度で結晶シートの数がより多いことを示している。WAXDデータは、ホウ素処理したスルホン化PO繊維では、より低い温度で、ホウ素を含まないスルホン化PO繊維より黒鉛化が広範囲であることを裏付けている。