以下の例は、本開示の実施形態を例示するために含めるものであり、本開示の範囲を限定しようとするものではない。当業者は、本明細書で開示される技術は、本開示の実践において適用される技術を表すことを理解すべきである。当業者は、本開示に照らして、本明細書での例において、本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく、変更を加えることができることを理解するはずである。
以下の用語および句は、本明細書で使用される場合、それらが使用されている文脈によって別段示されている場合を除いて、一般に下記の意味を有することを意図する。
単数形で使用されている用語は、複数も含む。例えば「a」は、別段の指定がない限り、1つまたは複数を意味する。
「約(about)」という用語の使用は、値またはパラメーター自体を含みかつそれを記載する。例えば、「約x」は、「x」自体を含みかつそれを記載する。一部の実施形態では、「約」という用語は、測定の関連で使用されるか、または、値、単位、定数もしくは値の範囲を修飾するために使用される場合、±10%の変動を指す。例えば、一部の実施形態では、「約2:8」は1.8〜2.2:7.2〜8.8を含む。
用語「添加する」の使用は、別段の指定がない限り、添加される材料が組み合わされる順序、方法またはやり方を制限しない。例えば、「AをBに添加する」は、「BをAに添加する」を説明することもできる。さらに、「AおよびBをCに添加する」は、「AをBおよびCに添加する」、「AおよびCをBに添加する」、「BをAおよびCに添加する」、「BおよびCをAに添加する」、ならびに「CをAおよびBに添加する」などの様々な他の組合せを説明することもできる。
式Iの化合物:
の薬学的に許容される塩またはその水和物が提供される。いくつかの態様では、式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、メシル酸塩またはその水和物である。一変形形態では、式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、ビスメシル酸塩またはその水和物である。
一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物が提供される。「ビスメシル酸塩」は、本明細書では「ビスMSA塩」と称することもできると理解すべきである。ある特定の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物が提供される。別の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物が提供される。さらに別の実施形態では、上記いずれかの多形体が提供される。一変形形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体である形態3が提供される。別の変形形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体である形態7が提供される。
式Iの化合物のビスメシル酸塩は、本明細書では様々な仕方で表され得る。例えば、一変形形態では、ビスメシル酸塩は、式IAによって表すことができる。
当業者は、式Iの化合物のビスメシル酸塩が上記の式IAのように表される場合、イオン形態(例えば、式Iの化合物のカチオン形態およびメタンスルホン酸のアニオン形態)が意図されることを理解するであろう。いかなる理論にも拘泥するものではないが、別の変形形態では、ビスメシル酸塩は、式IBによって表すことができる。
一部の実施形態では、式IAまたはIBによって表されるビスメシル酸塩は、その水和物であってもよい。例えば、一実施形態では、式IAまたはIBによって表されるビスメシル酸塩は、ビスメシル酸塩一水和物であってもよい。いかなる理論にも拘泥するものではないが、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物は、式ICによって表すこともできる。
式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物は、式Iの化合物のモノメシル酸塩と比較して、より高いpHで高い溶解性を有する。「モノメシル酸塩」は、本明細書では「モノMSA塩」と称することもできると理解すべきである。式Iの化合物のビスメシル酸塩は、式Iの化合物のモノメシル酸塩と比較して、式Iの化合物の生物学的利用能の増大、および薬物動態(PK)プロファイルに対する酸還元剤の効果を相殺する能力を提供する。
いかなる理論にも拘泥するものではないが、他の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩の水和物は、式IDによって表すことができ、
式中、yは、少なくとも0.5である。一部の変形形態では、yは、少なくとも1、少なくとも1.5、少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも3もしくは少なくとも4、または0.5〜5、0.5〜4、0.5〜2、0.5〜1.5、または約0.5、約1、約1.5、約2、約3もしくは約4である。ある特定の変形形態では、yは、整数である。例えば、yが1である場合、式IDの化合物は、ビスメシル酸塩一水和物である。yが2である場合、式IDの化合物は、二ビスメシル酸塩水和物である。したがって、式IDの変数「y」は、ビスメシル酸塩の水和物における水分含量の変動を表している。
いかなる理論にも拘泥するものではないが、別の変形形態では、ビスメシル酸塩の水和物は式IE:
で表すことができ、式中、yは少なくとも0.5である。一部の変形形態では、yは少なくとも1、少なくとも1.5、少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも3もしくは少なくとも4、または0.5〜5、0.5〜4、0.5〜2、0.5〜1.5または約0.5、約1、約1.5、約2、約3もしくは約4である。ある特定の変形形態では、yは整数である。例えば、yが2である場合、式IEの化合物はビスメシル酸塩二水和物である。他の変形形態では、yは非整数である。
さらに他の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩の水和物は、様々な量の水を有することができる。
本明細書では、式Iの化合物のメシル酸塩またはその水和物の多形体が提供される。ある特定の態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物の多形体が提供される。ある特定の変形形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体が提供される。一態様では、式IAもしくはIBの化合物またはその水和物の多形体が提供される。別の態様では、式IC、IDまたはIEの化合物の多形体が提供される。本明細書に記載の多形体は、例えば、X線粉末回折パターン(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)および熱重量測定分析(TGA)を含めた様々な固体状態の分析データによって特徴付けることができる。
多形形態3
式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物(例えば、式IAもしくはIBの化合物またはその水和物、またはICもしくはIDの化合物)の治療用途および商品化は、生体利用可能な安定な化合物の開発を含む。当業者には理解されるであろうが、医薬品薬物物質の結晶構造における多様性は、特に、固体経口剤形に製剤化される場合、医薬品薬物作製物の溶解速度(生物学的利用能等に影響を及ぼし得る)、製造可能性(例えば、取扱いの容易さ、公知の強度の用量を一貫して調製する能力)、および安定性(例えば、熱安定性、保存期間等)に影響を及ぼし得る。
一態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体である多形形態3が提供される。ある特定の変形形態では、形態3は、結晶性である。したがって、ある特定の態様では、式IAの化合物:
の一水和物の多形体である多形形態3が提供される。
一部の実施形態では、多形形態3は、式IAのビスメシル酸塩一水和物の結晶形態である。当業者は、ビスメシル酸塩が、上記の式IAのように表される場合、イオン形態(例えば、式Iの化合物のカチオン形態およびメタンスルホン酸のアニオン形態)が意図されることを理解するであろう。
他の態様では、式IBの化合物:
の一水和物の多形体である多形形態3が提供される。
一部の実施形態では、多形形態3は、式IBのビスメシル酸塩一水和物の結晶形態である。
ある特定の態様では、式ICの化合物:
の多形体である多形形態3が提供される。
一部の実施形態では、多形形態3は、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の結晶形態である。
さらに他の態様では、式IDの化合物:
の多形体である多形形態3が提供され、式中、ビスメシル酸塩の一水和物では、yは1である。一部の実施形態では、多形形態3は、式IDのビスメシル酸塩一水和物の結晶形態である。
さらに他の態様では、式IEの化合物:
の多形体である多形形態3が提供され、
式中、ビスメシル酸塩の一水和物では、yは1である。一部の実施形態では、多形形態3は、式IEのビスメシル酸塩一水和物の結晶形態である。本開示を通して、「多形形態3」、「形態3」、「形態III」、「多形形態3のビスMSA塩」または「ビスMSA塩形態3」への言及は、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体である多形形態3を指すことが理解される。上記で論じたように、ビスメシル酸塩は、式IAまたはIBの化合物として含み、様々な仕方で表すことができる。さらに、ビスメシル酸塩一水和物は、式ICもしくはID(式中、yは1である)またはIE(式中、yは1である)で表すことができる。
一部の変形形態では、多形形態3は、図1Aまたは1Bで実質的に示されるようなX線粉末回折(XRPD)パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。しかし、図で示される多形形態のピークの相対強度および配置(assignment)は、試料の調製、搭載、ならびにスペクトルを得るために使用される機器および分析手順および設定を含むいくつかの因子に応じて変動し得ることを理解すべきである。したがって、図において観察されるピークおよび本明細書で挙げる配置(多形形態3についての図1Aおよび1Bに含まれる)は、±0.2°2θの変動を包含するものとする。
他の変形形態では、多形形態3は、2θ反射(±0.2°):13.8、16.9、22.9および26.1を含むX線回折(XRPD)パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。一部の実施形態では、多形形態3は、2θ反射(±0.2°):13.8、16.9、22.9および26.1の少なくとも1つもしくは複数;少なくとも2つもしくはそれ超;または少なくとも3つもしくはそれ超を含むX線回折(XRPD)パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。一部の実施形態では、多形形態3は、2θ反射(±0.2°):7.7、12.9、17.7および18.1を含むX線回折によって特徴付けられるまたはそれを有する。一部の実施形態では、多形形態3は、7.7、12.9、13.8、16.9、17.7、18.1、22.9および26.1の2θ反射(±0.2°)を含むX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。一部の実施形態では、多形形態3は、2θ反射(±0.2°):7.7、12.9、13.8、16.9、17.7、18.1、22.9および26.1の少なくとも3つもしくはそれ超;少なくとも4つもしくはそれ超;または少なくとも5つもしくはそれ超を含むX線回折(XRPD)パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。X線回折パターンにおける2θ反射(例えば、形態3の)を記載する場合、±0.2°は、「±0.2°2θ」と表すこともできることを理解すべきである。
一部の実施形態では、多形形態3は、図3A、3Bまたは3Cで実質的に示されるようなDSCプロットによって特徴付けられるまたはそれを有する。
一部の実施形態では、用語「で実質的に示されるような」は、X線粉末回折パターンまたは示差走査熱量測定プロファイルに言及する場合、本明細書に表されているものと必ずしも同一ではないが、当業者によって考慮される場合の実験誤差または偏差の限度内に入るパターンまたはプロファイルが包含され得ることを意味する。
ある特定の変形形態では、多形形態3は、以下の特性(i)〜(vi):
(i)以下の寸法:a=8.7831(6)Å;b=11.8484(8)Å;c=14.2485(10)Å;α=98.108(6)°;β=100.955(6)°;およびγ=98.861(6)°;
の結晶X線結晶解析によって決定される単位格子
(ii)三斜晶の結晶系;
(iii)P−1空間群;
(iv)1416.05(17)Å3の体積;
(v)2のZ値;および
(vi)1.458Mg/m3の密度
の1つもしくは複数、2つもしくはそれ超、3つもしくはそれ超、4つもしくはそれ超、5つもしくはそれ超またはすべてを有することもできる。
多形形態7
別の態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体である多形形態7が提供される。一部の変形形態では、式IAの化合物:
の水和物の多形体である多形形態7が提供される。
当業者は、ビスメシル酸塩が、上記の式IAのように表される場合、イオン形態(例えば、式Iの化合物のカチオン形態およびメタンスルホン酸のアニオン形態)が意図されることを理解するであろう。
他の変形形態では、式IBの化合物:
の多形体である多形形態7が提供される。
一部の実施形態では、多形形態7は、式Iの化合物のビスメシル酸塩の可変の水和物である。可変の水和物は、変動する水分含量を有することができる。例えば、一実施形態では、多形形態7は、1.8%〜10%の水を有するビスメシル酸塩の多形体である。例えば、多形形態7が特徴付けられる相対湿度条件を含む様々な因子が、多形形態7の水分含量に影響を及ぼし得る。
一部の変形形態では、多形形態7は、少なくとも2つの水分子を含むビスメシル酸塩水和物の多形体である。一変形形態では、多形形態7は、式IDによって表すことができ、
式中、yは、少なくとも0.5である。一部の変形形態では、yは、少なくとも1、少なくとも1.5、少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも3もしくは少なくとも4、または0.5〜5、0.5〜4、0.5〜2、0.5〜1.5、または約0.5、約1、約1.5、約2、約3もしくは約4である。ある特定の変形形態では、yは、整数である。例えば、yが2である場合、式IDの化合物は、ビスメシル酸塩二水和物である。他の変形形態では、yは、非整数である。
一部の変形形態では、多形形態7は、少なくとも2つの水分子を含むビスメシル酸塩水和物の多形体である。一変形形態では、多形形態7は、式IEによって表すことができ、
式中、yは、少なくとも0.5である。一部の変形形態では、yは、少なくとも1、少なくとも1.5、少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも3もしくは少なくとも4、または0.5〜5、0.5〜4、0.5〜2、0.5〜1.5、または約0.5、約1、約1.5、約2、約3もしくは約4である。ある特定の変形形態では、yは、整数である。例えば、yが2である場合、式IEの化合物は、ビスメシル酸塩二水和物である。他の変形形態では、yは、非整数である。
本出願を通して、「多形形態7」、「形態7」、「形態VII」、「多形形態7のビスMSA塩」または「ビスMSA塩形態7」への言及は、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体である多形形態7を指すことが理解される。上記で論じたように、ビスメシル酸塩は、式IAまたはIBの化合物として含み、様々な仕方で表すことができる。さらに、様々な水分含量を有するビスメシル酸塩は、式IDで表すことができる。
一部の変形形態では、多形形態7は、4.9および9.8の2θ反射(±0.2°)ならびに26.7の2θ反射(±0.4°)を含むX線回折(XRPD)パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。ある特定の変形形態では、多形形態7は、4.9および9.8の2θ反射(±0.2°)ならびに26.7の2θ反射(±0.3°)を含むX線回折(XRPD)パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。ある特定の変形形態では、多形形態7は、2θ反射(±0.2°):4.9、9.8および26.7を含むX線回折(XRPD)パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。
一部の変形形態では、多形形態7は、4.9(±0.2°)、9.8(±0.2°)および26.7(±0.4°)の2θ反射の少なくとも1つもしくは複数;または少なくとも2つもしくはそれ超を含むX線回折(XRPD)パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。一部の変形形態では、多形形態7は、4.9(±0.2°)、9.8(±0.2°)および26.7(±0.3°)の2θ反射の少なくとも1つもしくは複数;または少なくとも2つもしくはそれ超を含むX線回折(XRPD)パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。ある特定の変形形態では、多形形態7は、2θ反射(±0.2°):4.9、9.8および26.7の少なくとも1つもしくは複数;または少なくとも2つもしくはそれ超を含むX線回折(XRPD)パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。
他の実施形態では、多形形態7は、2θ反射(±0.2°):15.0および18.0を含むX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。一部の実施形態では、多形形態7は、4.9、9.8、15.0および18.0の2θ反射(±0.2°)ならびに26.7の2θ反射(±0.4°)を含むX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。一部の実施形態では、多形形態7は、4.9、9.8、15.0および18.0の2θ反射(±0.2°)ならびに26.7の2θ反射(±0.3°)を含むX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。一部の実施形態では、多形形態7は、4.9、9.8、15.0、18.0および26.7の2θ反射(±0.2°)を含むX線回折パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。
他の実施形態では、多形形態7は、4.9(±0.2°)、9.8(±0.2°)、15.0(±0.2°)、18.0(±0.2°)および26.7(±0.4°)の2θ反射の少なくとも3つもしくはそれ超;少なくとも4つもしくはそれ超;またはそのそれぞれを含むX線回折(XRPD)パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。一部の実施形態では、多形形態7は、4.9(±0.2°)、9.8(±0.2°)、15.0(±0.2°)、18.0(±0.2°)および26.7(±0.3°)の2θ反射の少なくとも3つもしくはそれ超;少なくとも4つもしくはそれ超;またはそのそれぞれを含むX線回折(XRPD)パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。一部の実施形態では、多形形態7は、4.9、9.8、15.0、18.0および26.7の2θ反射(±0.2°)の少なくとも3つもしくはそれ超;少なくとも4つもしくはそれ超;またはそのそれぞれを含むX線回折(XRPD)パターンによって特徴付けられるまたはそれを有する。
X線回折パターンにおける2θ反射(例えば、形態7の)を記載する場合、±0.2°、±0.3°および±0.4°は、それぞれ「±0.2°2θ」、「±0.3°2θ」および「±0.4°2θ」と表すこともできることを理解すべきである。
一部の変形形態では、多形形態7はまた、図2Aまたは2Bで実質的に示されるようなXRPDパターンによっても特徴付けられるまたはそれを有する。しかし、図で示される多形形態のピークの相対強度および配置は、試料調製、搭載、ならびにスペクトルを得るために使用される機器および分析手順および設定を含むいくつかの因子に応じて変動し得ることを理解すべきである。したがって、図において観察されるピークおよび本明細書で挙げる配置(多形形態7についての図2Aおよび2Bに含まれる)は、±0.2°2θの変動を包含するものとする。さらに、ある特定の場合、多形形態7のXRPDパターンは、湿度依存性であり得、または形態7が特徴付けられる相対湿度に基づいて変動し得る。例えば、図2BのXRPDは、25℃および53%相対湿度(RH)で得たものである。
一部の実施形態では、多形形態7は、多形形態3の調製における化合物中間体として提供される。一部の実施形態では、多形形態7は、多形形態3を含む反応混合物中に提供される。式Iの化合物(式Iの遊離塩基と称することもできる)から形態3を作製するいくつかの方法では、形態7は、反応経路における中間体である。
結晶性
用語「結晶性」は、材料が、分子レベルで規則正しい秩序ある内部構造を有し、規定されたピークで特徴的なX線回折パターンをもたらす固相を指す。またこのような材料は、十分に加熱されると、液体の特性を呈するが、固体から液体への変化は、相変化、一般に一次(融点)によって特徴付けられる。
例えば、一実施形態では、多形形態3は、実質的に結晶性である。一部の実施形態では、実質的に結晶性である化合物(例えば多形形態3)は、組成物中に存在する化合物の50%超、または55%超、または60%超、または65%超、または70%超、または75%超、または80%超、または85%超、または90%超、または95%超、または99%超を結晶形態で有する。他の実施形態では、実質的に結晶性である化合物(例えば多形形態3)は、約20%以下、または約10%以下、または約5%以下、または約2%以下を非晶質形態で有する。さらに他の実施形態では、実質的に結晶性である化合物(例えば多形形態3)は、約20%以下、または約10%以下、または約5%以下、または約2%以下を非結晶形態で有する。
多形体の生物学的同等性
また本明細書では、多形形態3と生物学的に同等である多形体が提供される。また本明細書では、多形形態7と生物学的に同等である多形体が提供される。ある特定の実施形態では、2つの多形体の間の生物学的同等性は、実質的に類似の生物学的利用能、実質的に類似の有効性、実質的に類似の安全性プロファイル、またはそれらの組合せを有する多形体を指す。さらに他の実施形態では、生物学的同等性は、実質的に類似の薬物動態(PK)プロファイルまたは治療効果を呈する多形体を指す。生物学的同等性は、いくつかのin vivoおよびin vitro方法によって実証され得る。これらの方法には、例えば、薬物動態学的、薬力学的、臨床的およびin vitro研究が含まれ得る。一部の実施形態では、生物学的同等性は、負荷用量、定常状態用量、薬物の初期または定常状態濃度、生物学的半減期、排出速度、曲線下面積(AUC)、クリアランス、ピーク血液または血漿濃度(Cmax)、ピーク濃度までの時間(Tmax)、生物学的利用能および効力を含めた、当技術分野で公知の任意の適切な薬物動態尺度または薬物動態尺度の組合せを使用して実証することができる。一部の実施形態では、生物学的同等性は、類似の投与量を用いて達成される。代替の実施形態では、生物学的同等性は、異なる投与量を用いて達成される。
多形形態3を調製する方法
一部の実施形態では、本明細書に記載の多形形態3は、形態7を形態3に転換することによって調製される。形態7から形態3への転換は、ある量の多形形態3の「種」を形態7に添加することによって容易に行うことができる。一部の実施形態では、形態3を調製する方法は、多形形態7を化合物中間体として形成させるステップを必要とする。
一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体である多形形態3を作製する方法であって、
多形形態3の種および少なくとも1つの溶媒を、多形形態7(これは式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体である)に添加して、混合物を形成させるステップと、
混合物中で多形形態3を作製するステップと
を含む方法が提供される。
ある特定の実施形態では、該方法は、多形形態3を混合物から単離するステップをさらに含む。
一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体である、生産規模の量の多形形態3を調製する方法であって、ある量の多形形態3の種および少なくとも1つの溶媒を、多形形態7(これは式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体である)に添加して、混合物を形成させるステップと、多形形態3を単離するステップとを含む方法が提供される。
前述の方法の一部の実施形態では、種の量は、核形成を惹起するのに十分な量である。一部の実施形態では、種の量は、種材料を用いない転換と比較して、形態7から形態3への転換にかかる時間を短縮する量である。一部の実施形態では、ある量の形態3の種を添加することによって、形態7から形態3への転換時間が、形態3の種を添加しない転換時間と比較して、約10%〜約20%、約20%〜約50%、約30%〜約60%、約40%〜約75%、または約50%〜約80%短縮される。一部の実施形態では、ある量の形態3の種を添加することによって、形態7から形態3への転換時間が、形態3の種を添加しない転換時間と比較して、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約75%、または少なくとも約80%短縮される。
一部の実施形態では、該方法は、ある量の多形形態3の種を形態7に添加するステップを提供する。形態3の種の量は、転換される形態7の量よりも実質的に少なく、また、本明細書に記載の方法によって得られる形態3の量よりも実質的に少ない。一部の実施形態では、多形形態7に添加される形態3の種の量は、0.01モル%〜5モル%である。一部の実施形態では、多形形態7に添加される形態3の種の量は、多形形態7の0.01モル%〜3モル%である。一部の実施形態では、多形形態7に添加される形態3の種の量は、多形形態7の0.01モル%〜2モル%である。一部の実施形態では、多形形態7に添加される形態3の種の量は、多形形態7の0.01モル%〜1モル%である。一部の実施形態では、多形形態7に添加される形態3の種の量は、多形形態7の0.1モル%〜2モル%である。一部の実施形態では、多形形態7に添加される形態3の種の量は、多形形態7の0.1モル%〜1モル%である。一部の実施形態では、多形形態7に添加される形態3の種の量は、多形形態7の約1モル%である。
一部の実施形態では、多形形態7に添加される形態3の種の量は、多形形態7の0.001〜0.1重量パーセントである。一部の実施形態では、多形形態7に添加される形態3の種の量は、多形形態7の0.01〜0.1重量パーセントである。一部の実施形態では、多形形態7に添加される形態3の種の量は、多形形態7の0.01〜0.08重量パーセントである。一部の実施形態では、多形形態7に添加される形態3の種の量は、多形形態7の約0.015重量パーセントである。
しかし一実施形態では、形態7から多形形態3を調製する方法のステップの1つまたは複数は、省略することができ、またはステップの順序は、変わり得る。例えば、代替の実施形態では、形態3を作製する方法は、形態3の種を形態7に添加するステップを必要としない。一部の実施形態では、該方法は、混合物を加熱および冷却するステップを含む。一部の実施形態では、多形形態7は、反応混合物から単離されず、その場で生み出され、形態3に転換される。
一部の実施形態では、形態3の種を含めた形態3は、代替方法、例えば実施例11に記載の方法によって得られる。一部の実施形態では、形態3を調製する方法は、形態3の種を添加するステップを含まない。
一部の実施形態では、多形形態3の生産規模の量は、1kg超、5kg超、10kg超、20kg超、50kg超、100kg超、200kg超、または500kg超である。一部の実施形態では、多形形態3の生産規模の量は、1kg〜500kgである。一部の実施形態では、多形形態3の生産規模の量は、10kg〜300kgである。一部の実施形態では、多形形態3の生産規模の量は、50kg〜500kgである。
一部の実施形態では、混合物は、加熱還流される。一部の実施形態では、混合物は、約40℃〜約65℃の温度まで加熱される。一部の実施形態では、混合物は、約45℃〜約65℃の温度まで加熱される。一部の実施形態では、混合物は、約55℃の温度まで加熱される。
一部の実施形態では、混合物は、撹拌することができる。一部の実施形態では、混合物を撹拌すると、形態3作製物が容易に形成される。一部の実施形態では、撹拌によって、混合物中の成分の分散が増大する。混合物に成分が十分に分散することにより、反応混合物の一部に、ある特定の材料が高濃度で蓄積するのが防止される。例えば、固体材料を沈殿させるために、撹拌せずに溶媒を溶液に添加すると、より高濃度のアセトンが溶液の一部に蓄積して、固体が不均等に沈殿するおそれがある。ゴムのような固体形態または他の望ましくない特徴を有する固体が生じる場合がある。しかし、溶液を撹拌しながら溶媒を添加することは、添加される溶媒の不均等な分布を防止し、沈殿した固体の望ましくない形態を防止する一助となり得る。撹拌スピードは、1分間当たりの回転数(RPM)で説明することができる。一部の実施形態では、撹拌は、約200RPM超、約150RPM超、約100RPM超、または約50RPM超で行われる。一部の実施形態では、撹拌は、約150〜約250RPM、約100〜200RPM、50〜150RPMで行われる。撹拌は、不均一な混合物(例えばスラリー)において特に重要である。撹拌スピードは、反応体積の規模に応じて変わり、大きい反応体積よりも、小さい反応体積の方が高いRPMを有することができる。例えば、作製工場における最大撹拌スピードは、約100〜約150RPMに達する場合がある。実験室設定における最大撹拌スピードは、約200RPM超に達する場合がある。いくつかの方法では、撹拌は、約30〜約60RPMで行われる。
該方法の一部の実施形態では、混合物が形成される。一部の実施形態では、混合物は、均質な溶液である。他の実施形態では、混合物は、不均一であり、2つ以上の相、例えば固相および液相を含む。一部の実施形態では、混合物は、スラリーである。一部の実施形態では、混合物の内容物の一部は、経時的に相変化を受ける場合がある。例えば、均質な溶液混合物は、経時的に固体を形成させ、固相と液相を含む不均一な混合物になる場合がある。あるいは、不均一な混合物は、例えば固体材料が溶媒に溶解する場合には、均質な溶液混合物になる場合がある。一部の実施形態では、相変化は、反応事象時に生じる。例えば、均質な溶液混合物は、反応事象時に不均一な混合物になることがあり、逆の場合も同じである。反応事象は、反応混合物の状態の変化、例えば冷却もしくは加熱、特定の溶媒の添加、固体の添加、または蒸発であり得る。
一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体である多形形態3を作製する方法であって、
式Iの化合物をメタンスルホン酸に添加して、式Iの化合物のビスメシル酸塩を作製するステップと、
多形形態3の種をビスメシル酸塩に添加して、ビスメシル酸塩を多形形態3に転換するステップと
を含む方法が提供される。
ある特定の実施形態では、該方法は、作製された多形形態3を単離するステップをさらに含む。
他の実施形態では、式Iの化合物の遊離塩基をメタンスルホン酸に添加して、ビスメシル酸塩を形成させることによって、多形形態3を調製する方法が提供される。ビスメシル酸塩を、ある量の多形形態3の種に添加すると、ビスメシル酸塩が形態3に転換される。
前述の方法のある特定の実施形態では、ビスメシル酸塩は、多形形態7であり、多形形態7は単離され、次に形態3を作製するためにさらに使用される。他の実施形態では、ビスメシル酸塩は、形態7であり、反応混合物から単離されない。形態3の種の量は、形態3を得るための方法で使用される遊離塩基の量よりも実質的に少なく、また本明細書に記載の方法によって得られる形態3の量よりも実質的に少ない。一部の実施形態では、ビスメシル酸塩に添加される形態3の種の量は、遊離塩基の0.01モル%〜5モル%、0.01モル%〜3モル%、0.01モル%〜2モル%、0.01モル%〜1モル%、0.1モル%〜2モル%、または0.1モル%〜1モル%、約1モル%である。
一部の実施形態では、ビスメシル酸塩に添加される形態3の種の量は、遊離塩基の0.001〜0.1重量パーセント、0.01〜0.1重量パーセント、または0.01〜0.08重量パーセント、または約0.015重量パーセントである。
一部の実施形態では、メタンスルホン酸の量は、式Iの化合物1モル当量に対して、約2.0〜約2.5モル当量、約2.0〜約2.4モル当量、約2.0〜約2.2モル当量、約2.0〜約2.1モル当量、約2.0〜約2.05モル当量、または約2.05モル当量である。
本明細書に開示の方法のいずれかの実施において、一部の実施形態では、少なくとも1つの溶媒が、混合物に添加される。溶媒の非限定的な例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、メチル−t−ブチルエーテル、アセトニトリル、ヘプタン、ヘキサン、水、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、2−メチル−テトラヒドロフラン、およびメチルイソブチルケトンが挙げられる。好ましい実施形態では、溶媒は、アセトンである。他の実施形態では、溶媒は、アセトンおよび水である。一部の実施形態では、少なくとも1つの溶媒は、有機溶媒である。一部の実施形態では、少なくとも1つの溶媒は、水をさらに含む有機溶媒である。有機溶媒の非限定的な例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、メチル−t−ブチルエーテル、アセトニトリル、ヘプタン、ヘキサン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、2−メチル−テトラヒドロフラン、およびメチルイソブチルケトンが挙げられる。一部の実施形態では、少なくとも1つの溶媒は、プロトン性溶媒をさらに含む。プロトン性溶媒の非限定的な例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、およびブタノールが挙げられる。一部の実施形態では、少なくとも1つの溶媒は、水をさらに含むアセトンである。
一部の実施形態では、少なくとも1つの溶媒は、有機溶媒および水である。一部の実施形態では、水/有機溶媒の混合物における水の濃度は、約1%〜約7.5%、約2%〜約5%、約4%〜約6%または約5%である。
一部の実施形態では、少なくとも1つの溶媒は、アセトンおよび水であり、アセトン/水の溶媒混合物における水の濃度は、約1%〜約7.0%、約2%〜約5%、約4%〜約6%、または約5%である。
一部の実施形態では、水とアセトンの比は、約1:15〜約1:40、約1:18〜約1:22、約1:19、または約1:38である。
上記実施形態の一部では、該方法は、混合物を加熱するステップを含む。一部の実施形態では、温度が低いほど水が少なくて済む。例えば、混合物を55℃まで加熱すると、水濃度は約5%で済み、混合物を35℃まで加熱すると、水濃度は約4%で済む。
一部の実施形態では、多形形態3(これは式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体である)を作製する方法であって、
多形形態3の種、アセトンおよび水を、多形形態7(これは式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体である)に添加して、混合物を形成させるステップと、
混合物中で多形形態3を作製するステップと
を含む方法が提供される。
ある特定の実施形態では、該方法は、作製された多形形態3を混合物から単離するステップをさらに含む。
一部の実施形態では、式IAの化合物
の一水和物などの式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体である生産規模の量の多形形態3を調製する方法であって、
ある量の多形形態3の種、アセトンおよび水を、多形形態7に添加して、混合物を形成させるステップと、作製された多形形態3を単離するステップと(水とアセトンの比は、約1:18〜約1:22である)を含み、任意選択で、混合物を撹拌するステップをさらに含み、任意選択で混合物を加熱し、冷却した後に、作製された多形形態3を単離するステップをさらに含む方法が提供される。一部の実施形態では、混合物は、加熱還流され、撹拌される。一部の実施形態では、混合物を加熱すると、混合物を加熱しない場合と比較して、形態7から形態3への転換が速くなる。一部の実施形態では、多形形態3の単離は、混合物を濾過して固体を得ることを含む。一部の実施形態では、固体は、溶媒ですすがれ、次に乾燥させられる。
一部の実施形態では、式IAの化合物:
の一水和物などの式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体である生産規模の量の多形形態3を調製する方法であって、
ある量の多形形態3の種および少なくとも1つの溶媒を、多形形態7に添加して、混合物を形成させるステップと、作製された多形形態3を単離するステップとを含み、多形形態3が、2θ反射(±0.2°):13.8、16.9、22.9および26.1の少なくとも2つまたはそれ超を含むX線回折(XRPD)パターンを有し、多形形態7が、少なくとも2つまたはそれ超の2θ反射(±0.2°):4.9、9.8および26.7を含むX線回折(XRPD)パターンを有する方法が提供される。
一部の実施形態では、式Iの化合物:
のビスメシル酸塩一水和物の多形体である生産規模の量の多形形態3を調製する方法であって、
アセトンおよび水を式Iの化合物に添加して、混合物を形成させ、ある量のメタンスルホン酸を混合物に添加し、混合物を加熱し、ある量の多形形態3の種を混合物に添加するステップと、混合物を冷却するステップと、多形形態3としての式Iの化合物を回収するステップとを含み、メタンスルホン酸の量が、式Iの化合物1モル当量に対して約2.05モル当量である方法が提供される。ある特定の実施形態では、式Iの化合物、アセトン、および水の混合物は、撹拌され、撹拌されたその混合物に、メタンスルホン酸が添加される。一部の実施形態では、混合物は、加熱還流され、撹拌される。
多形形態7を調製する方法
一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形体である多形形態7を作製する方法であって、
溶媒を式Iの化合物に添加して、混合物を形成させるステップと、
ある量のメタンスルホン酸を混合物に添加するステップと、
混合物を加熱するステップと、
加熱された混合物を冷却して、多形形態7を作製するステップと
を含む方法が提供される。
一部の実施形態では、該方法は、作製された多形形態7を単離するステップをさらに含む。
一部の変形形態では、溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、メチル−t−ブチルエーテル、アセトニトリル、ヘプタン、ヘキサン、水、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、2−メチル−テトラヒドロフラン、およびメチルイソブチルケトンを含む。一変形形態では、溶媒は、アセトンを含む。他の実施形態では、溶媒は、アセトンおよび水を含む。一部の実施形態では、溶媒は、有機溶媒である。一部の実施形態では、溶媒は、水をさらに含む有機溶媒である。有機溶媒の非限定的な例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、メチル−t−ブチルエーテル、アセトニトリル、ヘプタン、ヘキサン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、2−メチル−テトラヒドロフラン、およびメチルイソブチルケトンが挙げられる。一部の実施形態では、溶媒は、プロトン性溶媒をさらに含む。プロトン性溶媒の非限定的な例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、およびブタノールが挙げられる。一部の実施形態では、少なくとも1つの溶媒は、水をさらに含むアセトンである。
一部の実施形態では、混合物は、加熱還流される。一部の実施形態では、混合物は、約40℃〜約65℃の温度まで加熱される。一部の実施形態では、混合物は、約45℃〜約65℃の温度まで加熱される。一部の実施形態では、混合物は、約55℃の温度まで加熱される。
一部の実施形態では、加熱された混合物は、室温に冷却される。一部の実施形態では、加熱された混合物は、約0℃〜約30℃、または約10℃〜約30℃、または約10℃〜約25℃、または約5℃〜約30℃、または約10℃〜約30℃、または約10℃〜約20℃の温度に冷却される。
重水素化化合物
式Iの化合物および薬学的に許容されるその塩(例えばモノメシル酸塩およびビスメシル酸塩を含む)またはその水和物を含む本明細書で与えられる任意の式または構造は、化合物またはその塩または水和物の同位体標識した形態としても意図される。したがって、標識をしていない形態の化合物が提供されるが、このような同位体が明示されていなくても、本開示は、同位体標識した化合物も意図することが理解される。同位体標識した化合物またはその塩または水和物は、1個または複数の原子が、選択された原子質量または質量数を有する原子で置き換えられていること以外は、本明細書で与えられる式で表される構造を有する。本開示の化合物中に取り込むことができる同位体の例には、これらに限定されないが、2H(重水素、D)、3H(三重水素)、11C、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、36Clおよび125Iなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体が含まれる。例えば、これらに限定されないが、2H(重水素、D)、3H(三重水素)、11C、13C、14C、15Nおよび35Sなどの水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体を、式Iの化合物の塩(例えば、メシル酸塩)またはその水和物を含む式Iの化合物中に取り込むことができる。本開示の種々の同位体標識した化合物またはその塩または水和物は、例えば3H、13Cおよび14Cなどの放射性同位体を取り込んだものである。このような同位体標識した化合物またはその塩は、薬物または基質の組織分布アッセイまたは被験体の放射線処置を含む、代謝研究、反応動力学的研究、検出または画像化技術、例えばポジトロン放出断層撮影(PET)または単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)において有用であり得る。
本開示は、炭素原子と結合している1〜n個の水素が重水素で置き換えられている(ここでnは分子中の水素の数である)式Iの化合物および薬学的に許容されるその塩(例えば、モノメシル酸塩およびビスメシル酸塩を含む)またはその水和物も含む。このような化合物は、代謝に対して高い耐性を示すことができ、したがって、哺乳動物に投与した場合、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩またはその水和物(式IAまたはIBのビスメシル酸塩またはその水和物;あるいは式ICまたはIDのビスメシル酸塩水和物を含む)の半減期を増加させるのに有用である。例えばFoster、「Deuterium Isotope Effects in Studies of Drug Metabolism」、Trends Pharmacol. Sci.5巻(12号):524〜527頁(1984年)を参照されたい。このような化合物は、当技術分野で周知の手段によって、例えば、1つまたは複数の水素が重水素で置き換えられている出発原料を用いることによって合成される。
本開示の重水素標識または置換された治療化合物(その塩または水和物を含む)は、吸収、分布、代謝および排出(ADME)に関して改善されたDMPK(薬物代謝および薬物動態学的)特性をもつことができる。重水素などのより重い同位体での置換は、より高い代謝安定性によりもたらされるある特定の治療上の利点、例えばin vivoでの半減期の増加、必要投与量の減少および/または治療指数の改善を提供することができる。18F標識化合物は、PETまたはSPECT研究に有用であり得る。本開示の同位体標識した化合物およびそのプロドラッグは、一般に、非同位体標識試薬を、容易に入手できる同位体標識試薬に置換することにより、以下に記載するスキームまたは実施例および調製で開示される手順を実施することによって調製することができる。この関連で、重水素は、式Iの化合物および薬学的に許容されるその塩(例えば、モノメシル酸塩およびビスメシル酸塩を含む)またはその水和物において、置換基と見なされることが理解される。
このようなより重い同位体、具体的には重水素の濃度は、同位体濃縮係数で定義することができる。本開示の化合物において、特定の同位体として具体的に指定されていない任意の原子は、その原子の任意の安定な同位体を表すものとする。別段の言及のない限り、位置が具体的に「H」または「水素」と指定されている場合、その位置は、その天然に豊富にある同位体組成で水素を有すると理解される。したがって、本開示の化合物またはその塩において、重水素(D)と具体的に指定されている任意の原子は、重水素を表すものとする。
医薬組成物
本明細書に記載のメシル酸塩(式Iの化合物のモノメシル酸塩およびビスメシル酸塩またはそれらの水和物を含む)、および本明細書に記載のそれらの任意の多形形態(例えば、形態3および/または形態7)は、純粋な化学物質として投与することができるが、化合物またはその塩もしくは水和物は、医薬組成物または製剤の形態で投与することが典型的であり、好ましい。(i)式Iの化合物のビスメシル酸塩もしくはその水和物、または前述のものの多形体、および(ii)薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬組成物が提供される。薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルは、本明細書では、薬学的に許容される担体、添加剤、アジュバントもしくはビヒクル、または生体適合性のある薬学的担体、添加剤、アジュバントもしくはビヒクルと称することもできる。したがって、多形形態3および/または形態7、ならびに生体適合性のある薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬組成物が提供される。該組成物は、式Iの化合物のビスメシル酸塩もしくはその水和物、または本明細書に記載の多形形態を、ただ1つの活性薬剤として含むことができ、あるいは他の薬剤、例えば、1つまたは複数の薬学的に許容される担体または添加剤と混合されたオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド、オリゴペプチドもしくはポリペプチド、薬物、またはホルモンと組み合わせて含むことができる。担体、添加剤、および他の成分は、それらが製剤の他の成分と適合性があり、そのレシピエントにとって有害でない限り、薬学的に許容されるとみなすことができる。
一態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物、および薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬組成物が提供される。ある特定の態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物、および薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬組成物が提供される。一態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物、および薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬組成物が提供される。ある特定の態様では、式IAもしくはIBのメシル酸塩またはその水和物、および薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬組成物が提供される。他の態様では、式IAまたはIBの水和物メシル酸塩、および薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬組成物が提供される。
例えば一部の実施形態では、本明細書において、多形形態3、および薬学的に許容される担体または他の添加剤を含む医薬組成物が提供される。医薬組成物の一実施形態では、組成物中の多形形態3は、他の多形形態を超過して存在する。例えば、医薬組成物中の多形形態3と他の多形形態の重量比は、85〜15、90〜10、95〜5、または99〜1であり得る。一実施形態では、多形形態3と他の多形形態の重量比は、90:1〜99:1である。
「担体」という用語は、賦形剤、崩壊剤、析出抑制剤、界面活性剤、流動促進剤、結合剤、滑沢剤、ならびにそれと一緒に化合物を投与する他の添加剤およびビヒクルを指す。担体は本明細書で概略的に記載され、また、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」においても記載されている。
医薬組成物は、適切な薬学的に許容される担体を含有するように製剤化することができ、任意選択で、本明細書に記載の多形形態を薬学的に使用され得る調製物に加工するのを容易にする添加剤および助剤を含むことができる。投与機序によって、一般に担体の性質が決定される。例えば、非経口投与のための製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含むことができる。非経口投与に適した担体は、生理食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、および他の生理的に適合性のある溶液の中から選択することができる。非経口投与に好ましい担体は、生理的に適合性のある緩衝液、例えばハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理緩衝食塩水である。組織または細胞への投与では、特定の障壁が浸透されるようにするのに適した浸透剤が、製剤に使用される。このような浸透剤は、当技術分野で一般に公知である。タンパク質を含む調製物では、製剤は、安定化材料、例えばポリオール(例えばスクロース)および/または界面活性剤(例えば非イオン性界面活性剤)等を含み得る。
あるいは、非経口使用のための製剤は、適した油性注射懸濁液として調製された、本明細書に記載の多形形態の分散液または懸濁液を含み得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、脂肪油、例えばゴマ油、および合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増大する物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストラン、およびこれらの混合物を含有することができる。また任意選択で、懸濁液は、適切な安定剤、または化合物の溶解性を増大して、高度濃縮溶液を調製することができる薬剤を含有することができる。また、pHに感応して活性薬剤を可溶化および/または徐放する水性ポリマー、例えばメタクリルポリマー、例えばRohm America Inc.(Piscataway、N.J.)から利用可能なEUDRAGIT(商標)シリーズを、コーティングまたはマトリクス構造として使用することができる。また、乳化剤または分散剤(表面活性材料、界面活性剤)によって任意選択で安定化されたエマルジョン、例えば水中油および油中水分散液を使用することができる。懸濁液は、懸濁化剤、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレン(polyoxyethlyene)ソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、トラガカントガム、ならびにこれらの混合物を含有することができる。
また、本明細書に記載の多形形態を含有するリポソームは、非経口投与のために用いることができる。リポソームは、一般に、リン脂質または他の脂質物質から導出される。また、リポソーム形態の組成物は、安定剤、保存剤、賦形剤などの他の成分を含有することができる。好ましい脂質には、天然および合成両方のリン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)が含まれる。リポソームを形成させる方法は、当技術分野で公知である。例えば、Prescott(編)、Methods in Cell Biology、第XIV巻、33頁、Academic Press、New York(1976年)参照。
一部の実施形態では、本明細書に開示の多形体またはその組成物は、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体を使用して、経口投与に合わせて製剤化される。経口投与に合わせて製剤化された調製物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、糖衣錠、ロゼンジ剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、エリキシル剤、懸濁液剤、または散剤の形態であり得る。例えば、経口使用するための医薬品調製物は、活性化合物を固体添加剤と組み合わせ、任意選択で得られた混合物を粉砕し、所望に応じて適切な助剤を添加した後に顆粒混合物を加工して、錠剤または糖衣錠コアを得ることによって得ることができる。経口製剤では、非経口使用について記載されているものに類似のタイプの液体担体、例えば緩衝水溶液、懸濁液等を用いることができる。
好ましい経口製剤には、錠剤、糖衣錠、およびゼラチンカプセル剤が含まれる。これらの調製物は、1つまたは複数の添加剤を含有することができ、これらには、a)賦形剤、例えば微結晶性セルロースおよびラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含めた糖、b)結合剤、例えばデンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トウモロコシ、コムギ、コメ、バレイショ等に由来するデンプン、c)セルロース材料、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ガム、例えばアラビアゴムおよびトラガカントガム、ならびにタンパク質、例えばゼラチンおよびコラーゲン、d)崩壊剤または可溶化剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、デンプン、寒天、アルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウム、または発泡性組成物、e)滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸もしくはそのマグネシウム塩もしくはカルシウム塩、およびポリエチレングリコール、f)香味剤および甘味剤、g)例えば作製物を同定するか、または活性化合物の量(投薬量)を特徴付けるための着色剤または顔料、ならびにh)他の成分、例えば保存剤、安定剤、膨張剤、乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、および緩衝液が含まれるが、これらに限定されない。
好ましい担体の例には、これらに限定されないが、モノステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスポビドン、イソステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシステアリン酸ヒドロキシオクタコサニル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ラクトース一水和物、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、微結晶性セルロース、ポロクサマー124、ポロクサマー181、ポロクサマー182、ポロクサマー188、ポロクサマー237、ポロクサマー407、ポビドン、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、シリコーン、シリコーン接着剤4102およびシリコーンエマルジョンが含まれる。しかし、本開示において提供される医薬組成物のために選択された担体、および組成物中でのこのような担体の量は、製剤化および処理(例えば、乾式造粒製剤、固体分散製剤)の方法に応じて変動し得ることを理解すべきである。
ある特定の変形形態では、医薬組成物は、形態3、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロース、マンニトール、クロスポビドン、ポロクサマー、コロイド状二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム、およびこれらの任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む。別の変形形態では、医薬組成物は、多形形態3、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびにマンニトール、クロスポビドン、ポロクサマー、コロイド状二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム、およびこれらの任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1つの追加の薬学的に許容される担体を含む。
上記した薬学的に許容される担体は、所与の製剤において1つまたは複数の異なる機能を遂行することができ、担体の1つまたは複数の機能の部類(例えば、崩壊剤、滑沢剤、賦形剤)の範囲に入り得ることも理解すべきである。
他の実施形態では、医薬組成物は、流動、圧縮、硬度、味覚および錠剤性能を改善するために、1つまたは複数の追加の担体を含むことができることをさらに理解すべきである。
一部の実施形態では、医薬組成物は、a)約34%w/wの式Iの化合物のメシル酸塩(例えば、モノメシル酸塩またはビスメシル酸塩を含む)、b)約15%w/wのHPMC、c)約22%w/wのマンニトール、d)約10%w/wのクロスポビドン、およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含む。一変形形態では、医薬組成物は、a)約34%w/wの式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物、b)約15%w/wのHPMC、c)約22%w/wのマンニトール、d)約10%w/wのクロスポビドン、およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含む。別の変形形態では、医薬組成物は、a)約34%w/wの式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物、b)約15%w/wのHPMC、c)約22%w/wのマンニトール、d)約10%w/wのクロスポビドン、およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含む。さらに別の変形形態では、医薬組成物は、a)約34%w/wの多形形態3、多形形態7、またはそれらの組合せ、b)約15%w/wのHPMC、c)約22%w/wのマンニトール、d)約10%w/wのクロスポビドン、およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含む。
使用方法
治療的または予防的に、Syk活性を選択的または特異的に阻害するための、本開示に記載する医薬組成物の使用も提供される。この方法は、阻害を必要とする個体に、Syk活性を阻害するのに十分な量で医薬組成物を投与するステップを含む。この方法は、その症状または病状がSykの発現または活性によって媒介される状態に苦しむ、またはそれにかかり易い被験体(例えば、ヒト)を処置するために用いることができる。
一態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物をヒトに投与するステップを含む、処置を必要とするヒトを処置する方法が提供される。ある特定の態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物をヒトに投与するステップを含む、処置を必要とするヒトを処置する方法が提供される。一態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物をヒトに投与するステップを含む、処置を必要とするヒトを処置する方法が提供される。ある特定の態様では、式IAもしくはIBのメシル酸塩またはその水和物をヒトに投与するステップを含む、処置を必要とするヒトを処置する方法が提供される。他の態様では、式IAまたはIBの水和物メシル酸塩をヒトに投与するステップを含む、処置を必要とするヒトを処置する方法が提供される。一態様では、多形形態3をヒトに投与するステップを含む、処置を必要とするヒトを処置する方法が提供される。一態様では、多形形態7をヒトに投与するステップを含む、処置を必要とするヒトを処置する方法が提供される。
「処置(treatment)」または「処置すること(treating)」は、臨床結果を含む有益なまたは望ましい結果を得るためのアプローチである。有益なまたは望ましい臨床結果は以下の:
a)疾患または状態を阻害すること(例えば、疾患または状態からもたらされる1つまたは複数の症状を減少させること、および/または疾患または状態の程度を低下させること);
b)疾患または状態に関連する1つまたは複数の臨床症状の発症を遅延させるもしくは停止させること(例えば、疾患または状態を安定化させること、疾患または状態の悪化または進行を防止するもしくは遅延させること、および/または、疾患または状態の伝播(例えば、転移)を防止するもしくは遅延させること);および/または
c)疾患を軽減すること、すなわち、臨床症状の後退を引き起こさせること(例えば、疾患状態を改善すること、疾患または状態の部分または完全寛解をもたらすこと、別の薬物療法の効果を増強すること、疾患の進行を遅延させること、生活の質を向上させること、および/または生存を延長させることの1つまたは複数を含むことができる。
「防止(prevention)」または「防止すること(preventing)」は、疾患または状態の臨床症状を発症させないようにする、疾患または状態の任意の処置を意味する。一部の実施形態では、化合物を、疾患または状態のリスクがあるまたはその家族歴を有する被験体(ヒトを含む)に投与することができる。
「被験体」は、処置、観察または実験の対象である、または対象となる哺乳動物(ヒトを含む)などの動物を指す。本明細書に記載する方法は、ヒトの治療および/または獣医学的適用において有用であり得る。一部の実施形態では、被験体は哺乳動物である。一実施形態では、被験体はヒトである。
医薬組成物の「治療有効量」という用語は、被験体に投与した場合、処置をもたらして、症状の改善または疾患進行の遅延などの治療利益を提供するのに十分な量を意味する。例えば、治療有効量は、Syk活性の阻害に応答性の疾患または状態の症状を減少させるのに十分な量であってよい。治療有効量は、被験体、処置される疾患または状態、被験体の体重および年齢、疾患または状態の重症度ならびに投与の仕方に応じて変動し得、当業者が容易に決定することができる。
「阻害」という用語は、生物学的活性または過程のベースライン活性の低下を示す。「Syk活性の活性の阻害」は、このような医薬組成物の非存在下でのSykの活性に対する、該医薬組成物の存在への直接的または間接的な応答としてのSykの活性の低下を指す。一部の実施形態では、Syk活性の阻害は、処置前の同じ被験体と、またはその処置を受けていない他の被験体と比較することができる。
ある特定の態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物、および本明細書に記載のその組成物は、がん、アレルギー性障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患および/または急性炎症反応を有する被験体を処置するために使用される。
一態様では、本開示で提供される医薬組成物は、がんの処置に使用することができる。一部の実施形態では、多形体および本明細書に記載のその組成物は、がん細胞など造血由来のがん細胞の成長または増殖を阻害する方法において用いることができる。一部の実施形態では、がん細胞は、リンパ系由来であり、特定の実施形態では、がん細胞は、Bリンパ球またはBリンパ球前駆体に関係し、またはそれらに由来する。
本開示で開示される方法を使用する処置に敏感に反応するがんには、これらに限定されないが、リンパ腫(例えば、リンパ系および細網内皮系組織の悪性新生物、例えばバーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ球性リンパ腫);多発性骨髄腫;白血病(例えば、リンパ性白血病、慢性骨髄性(骨髄性の)白血病)が含まれる。造血起源の、あるいは別段、脾臓チロシンキナーゼ(Syk)を発現する他のがん細胞も、本明細書に記載する多形体およびその組成物の投与によって処置することができる。
本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、がんは白血病またはリンパ腫である。ある特定の実施形態では、がんは、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)、難治性iNHL、非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)および辺縁帯リンパ腫(MZL)である。ある特定の変形形態では、がんは、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)、難治性iNHL、非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。一実施形態では、がんは、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)またはB細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)である。非ホジキンリンパ腫は、例えば濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症および辺縁帯リンパ腫を含む無症候性B細胞疾患、ならびに例えばバーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)およびマントル細胞リンパ腫(MCL)を含む侵襲性リンパ腫を包含する。一実施形態では、がんは、無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)である。さらに別の実施形態では、がんは、非FL iNHLである。
本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、がんは、血液系悪性疾患である。ある特定の実施形態では、血液系悪性疾患は白血病(例えば、慢性リンパ性白血病)またはリンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫)である。一部の変形形態では、がんは、MCL、DLBCL、iNHL、FL、MZL、LPL、SLLまたはWMである。他の変形形態では、がんは、CLL、MCL、DLBCL、iNHL(例えば、非FL iNHLを含む)またはFLである。
他の実施形態では、がんは、固形腫瘍がん(または固形がん腫瘍)である。ある特定の実施形態では、がんは固形腫瘍であり、脾臓チロシンキナーゼ(Syk)活性を発現する。他の実施形態では、固形腫瘍がんは、膵臓がん、肺がん、結腸がん、結腸直腸がん、乳がん、食道がん、腺癌、肝細胞がんからなる群から選択される。一実施形態では、固形腫瘍がんは、膵臓がん、肺がん、結腸直腸がん、卵巣がんおよび肝細胞がんからなる群から選択される。
本明細書で提供される処置方法のいずれかを、進行期のがんを処置するために使用することができる。本明細書で提供される処置方法のいずれかを、局所的に進行期のがんを処置するために使用することができる。本明細書で提供される処置方法のいずれかを、初期段階のがんを処置するために使用することができる。本明細書で提供される処置方法のいずれかを、寛解期のがんを処置するために使用することができる。本明細書で提供される処置方法のいずれかの実施形態の一部では、がんは、寛解後に再発している。本明細書で提供される処置方法のいずれかの一部の実施形態では、がんは進行がんである。
一部の実施形態では、本明細書に記載する化合物および組成物を使用して影響を及ぼすことができる状態および疾患には、これらに限定されないが、湿疹、アレルギー性鼻炎または鼻感冒、枯草熱、気管支ぜんそく、じんましん(urticaria)(じんましん(hives))および食品アレルギーならびに他のアトピー性状態を含むアレルギー性障害;これらに限定されないが、乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病、過敏性腸症候群、シェーグレン病、組織移植片拒絶および移植器官の超急性拒絶、ぜんそく、全身性エリテマトーデス(および関連糸球体腎炎)、皮膚筋炎、多発性硬化症、強皮症、血管炎(ANCA関連血管炎および他の血管炎)、自己免疫性溶血性状態および血小板減少性状態、グッドパスチャー症候群(および関連糸球体腎炎および肺出血)、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、アジソン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、糖尿病、敗血症性ショックおよび重症筋無力症を含む自己免疫疾患および/または炎症性疾患;これらに限定されないが、日光皮膚炎(skin sunburn)、炎症性骨盤疾患、炎症性腸疾患、尿道炎、ブドウ膜炎(uvitis)、副鼻腔炎、肺炎、脳炎、髄膜炎、心筋炎、腎炎、骨髄炎、筋炎、肝炎、胃炎、腸炎、皮膚炎、歯肉炎、虫垂炎、膵炎および胆嚢炎(cholocystitis)を含む急性炎症反応;多発性嚢胞腎疾患が含まれるが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、自己免疫疾患の処置における本明細書に記載する化合物および組成物の使用も提供される。自己免疫疾患のある特定の実施形態には、ぜんそく、関節リウマチ、多発性硬化症およびループスが含まれる。
さらに別の態様では、本開示で提供される医薬組成物のいずれかを個体に投与することによって、Syk媒介性障害を有する個体を処置する方法が提供される。また、本開示で提供される医薬組成物のいずれかを個体に投与することによって、個体のSykを調節する方法が提供される。
上記方法のいくつかでは、本開示で提供される医薬組成物は、単位剤形として、例えば錠剤の形態で個体に投与することができる。一部の変形形態では、メシル酸塩(例えば、モノメシル酸塩またはビスメシル酸塩を含む)またはその水和物は、錠剤の形態で投与される。別の変形形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体(例えば式IAのビスメシル酸塩の一水和物の多形体)である多形形態3は、単位剤形の噴霧乾燥調製物に使用され、最終的な単位剤形は、多形形態3を実質的に含有していない。
被験体
提供される処置方法のいずれかを、がん、アレルギー性障害および/または自己免疫疾患および/または炎症性疾患および/または急性炎症反応と診断されている、またはそれを有していると疑われる被験体を処置するために使用することができる。
本明細書で提供される方法のいずれかの実施形態の一部では、被験体は、がんを発症するリスクがあるヒト(例えば、遺伝的にまたはそのほかで、がんを発症しやすいヒト)、およびがんと診断されているまたは診断されていないヒトである。本明細書で使用する、「リスクのある」被験体は、がん(例えば、血液系悪性疾患)を発症するリスクがある被験体である。被験体は、検出可能な疾患を有していてもいなくてもよく、本明細書に記載する処置方法の前に、検出可能な疾患を示していてもいなくてもよい。リスクのある被験体は、本明細書に記載するものなどのがんの発症と相関する測定可能なパラメーターである、1つまたは複数のいわゆる危険因子を有し得る。これらの危険因子の1つまたは複数を有する被験体は、これらの危険因子(複数可)を有していない個体より、がんを発症する確率が高い。
これらの危険因子には、例えば、年齢、性別、人種、食事、既往症の履歴、前駆疾患の存在、遺伝的(例えば、遺伝性の)考慮事項および環境曝露が含まれ得る。一部の実施形態では、がんのリスクのある被験体には、例えば、その親類がこの疾患を経験している被験体、および遺伝子マーカーまたは生化学マーカーの分析でそのリスクが決定されている被験体が含まれる。がんを有していたという前歴も、例えば、がんの再発の場合の危険因子であり得る。
本明細書では、がん(例えば、血液系悪性疾患)に関連する1つまたは複数の症状を示す被験体(例えば、ヒト)を処置するための方法も提供される。一部の実施形態では、被験体は、がんの初期段階にある。他の実施形態では、被験体は、がんの進行期にある。
一部の実施形態では、被験体(例えば、ヒト)は、Syk活性に応答性のがんを有する。別の実施形態では、ヒトは、Sykを発現する固形がん腫瘍を有する。一部の実施形態では、ヒトは、17p欠失、TP53変異、NOTCH1、SF3B1変異、11q欠失またはそれらの任意の組合せを有する。一実施形態では、ヒトは、17p欠失、TP53変異またはそれらの組合せを有する。別の実施形態では、ヒトは、NOTCH1、SF3B1変異、11q欠失またはそれらの任意の組合せを有する。
また本明細書では、がん(例えば血液系悪性疾患)を処置するための1つまたは複数の標準療法、例えば化学療法、放射線療法、免疫療法および/または外科処置を受けている被験体(例えばヒト)を処置するための方法が提供される。したがって、上記一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物、および本明細書に記載の組成物は、化学療法、放射線療法、免疫療法および/または外科処置を施す前、最中または後に投与される。
別の態様では、がん処置に対して「難治性」である、または、がん(例えば、血液系悪性疾患)の処置後に「再発」している被験体(例えば、ヒト)を処置するための方法が本明細書で提供される。抗がん療法に対して「難治性」である被験体は、彼らが特定の処置に応答しないことを意味し、これは耐性とも称される。がんは、処置の開始から処置に耐性である可能性がある、または、処置の過程の間、例えば処置がそのがんに対してある効果を示したが、寛解または部分寛解と考えるのには十分でなかったその後に、耐性になる可能性がある。「再発」している被験体は、ある改善期間の後、例えば、被験体が寛解または部分寛解した後などの、処置が、がんの有効な減少を示した後、がんが再発している、またはがんの兆候および症状が生じていることを意味する。
一部の実施形態では、被験体は、(i)少なくとも1つの抗がん療法に対して難治性である、または、(ii)少なくとも1つの抗がん療法で処置した後に再発している、あるいは(i)と(ii)の両方であるヒトであってよい。実施形態の一部では、被験体は、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つの抗がん療法(例えば、標準的または実験的な化学療法を含む)に対して難治性である。
ある特定の実施形態では、被験体は、慢性リンパ性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、または非FL無症候性非ホジキンリンパ腫(例えば、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストレーム(Waldestrom)マクログロブリン血症(LPL/WM)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、および辺縁帯リンパ腫(MZL)を含む)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発しているヒトである。
一部の変形形態では、被験体は、非FL無症候性非ホジキンリンパ腫のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している、かつ/または(iii)それへの事前曝露を有しているヒトである。ある特定の実施形態では、非FL無症候性非ホジキンリンパ腫は、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストレームマクログロブリン血症(LPL/WM)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、または辺縁帯リンパ腫(MZL))である。別の変形形態では、被験体は、濾胞性リンパ腫(FL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している、かつ/または(iii)それへの事前曝露を有しているヒトである。別の変形形態では、被験体は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している、かつ/または(iii)それへの事前曝露を有しているヒトである。別の変形形態では、被験体は、マントル細胞リンパ腫(MCL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している、かつ/または(iii)それへの事前曝露を有しているヒトである。さらに別の変形形態では、被験体は、慢性リンパ性白血病(CLL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している、かつ/または(iii)それへの事前曝露を有しているヒトである。さらに別の変形形態では、被験体は、慢性リンパ性白血病(CLL)のためのホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害剤、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、またはB細胞受容体(BCR)による処置に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している、かつ/または(iii)それへの事前曝露を有しているヒトである。
一部の実施形態では、被験体は、フルダラビン、リツキシマブ、オビヌツズマブ、アルキル化剤、アレムツズマブおよび他の化学療法処置、例えばCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン);R−CHOP(リツキシマブ−CHOP);hyperCVAD(多分割シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン、メトトレキサート、シタラビン);R−hyperCVAD(リツキシマブ−hyperCVAD);FCM(フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン);R−FCM(リツキシマブ、フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン);ボルテゾミブおよびリツキシマブ;テムシロリムスおよびリツキシマブ;テムシロリムスおよびVelcade(登録商標);ヨウ素−131 トシツモマブ(Bexxar(登録商標))およびCHOP;CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン);R−CVP(リツキシマブ−CVP);ICE(イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド);R−ICE(リツキシマブ−ICE);FCR(フルダラビン、シクロホスファミド、リツキシマブ);FR(フルダラビン、リツキシマブ);ならびにD.T.PACE(デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、Adriamycin(登録商標)、シクロホスファミド、エトポシド)から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つまたは少なくとも4つの抗がん療法(例えば、標準的または実験的化学療法を含む)に対して難治性である。
化学療法処置(標準的または実験的化学療法を含む)の他の例は、以下に記載されている。さらに、ある特定のリンパ腫の処置は、Cheson, B.D.、Leonard, J.P.、「Monoclonal Antibody Therapy for B−Cell Non−Hodgkin’s Lymphoma」The New England Journal of Medicine 2008年、359巻(6号)、613〜626頁;およびWierda, W.G.、「Current and Investigational Therapies for Patients with CLL」Hematology 2006年、285〜294頁に概説されている。米国におけるリンパ腫の発生パターンは、Morton, L.M.ら「Lymphoma Incidence Patterns by WHO Subtype in the United States, 1992−2001」Blood 2006年、107巻(1号)、265〜276頁に概説(profile)されている。
例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)、特にB細胞起源のものの処置は、モノクローナル抗体、標準的な化学療法アプローチ(例えば、CHOP、CVP、FCM、MCPなど)、放射免疫療法およびそれらの組合せ、特に抗体療法を化学療法と統合したものの使用を含む。非ホジキンリンパ腫/B細胞がんのための非コンジュゲート型モノクローナル抗体の例には、リツキシマブ、アレムツズマブ、ヒトまたはヒト化抗CD20抗体、ルミリキシマブ、抗TRAIL、ベバシズマブ、ガリキシマブ、エプラツズマブ、SGN−40および抗CD74が含まれる。非ホジキンリンパ腫/B細胞がんの処置において使用される実験的抗体剤の例には、オファツムマブ、ha20、PRO131921、アレムツズマブ、ガリキシマブ、SGN−40、CHIR−12.12、エプラツズマブ、ルミリキシマブ、アポリズマブ、ミラツズマブおよびベバシズマブが含まれる。非ホジキンリンパ腫/B細胞がんのための化学療法の標準的なレジメンの例には、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)、FCM(フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン)、CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾン)、MCP(ミトキサントロン、クロラムブシルおよびプレドニゾロン)、R−CHOP(リツキシマブ+CHOP)、R−FCM(リツキシマブ+FCM)、R−CVP(リツキシマブ+CVP)およびR−MCP(R−MCP)が含まれる。非ホジキンリンパ腫/B細胞がんのための放射免疫療法の例には、イットリウム−90標識イブリツモマブチウキセタンおよびヨウ素−131標識トシツモマブが含まれる。
別の例では、マントル細胞リンパ腫(MCL)のための治療的処置には、併用化学療法、例えばCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)、hyperCVAD(多分割シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン、メトトレキサート、シタラビン)およびFCM(フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン)が含まれる。さらに、これらのレジメンを、モノクローナル抗体リツキシマブ(Rituxan)で補充して、併用療法R−CHOP、hyperCVAD−RおよびR−FCMを形成させることができる。他のアプローチには、上記療法のいずれかと、幹細胞移植またはICE(イホスファミド、カルボプラチンおよびエトポシド)での処置を組み合わせることが含まれる。マントル細胞リンパ腫を処置するための他のアプローチには、リツキシマブ(Rituxan)のようなモノクローナル抗体を使用するなどの免疫療法が含まれる。リツキシマブは、辺縁帯リンパ腫、WM、CLLおよび小リンパ球性リンパ腫を含む無症候性B細胞がんを処置するために使用することができる。修正されたアプローチは、モノクローナル抗体を、ヨウ素−131トシツモマブ(Bexxar(登録商標))およびイットリウム−90 イブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標))などの放射性同位体粒子と組み合わせる放射免疫療法である。別の例では、Bexxar(登録商標)は、CHOPでの逐次的処置において使用される。別の免疫治療の例には、個々の被験体の腫瘍の遺伝子構成をもとにしたがんワクチンの使用が含まれる。リンパ腫ワクチンの例はGTOP−99(MyVax(登録商標))である。マントル細胞リンパ腫を処置するためのさらに他のアプローチは、高用量化学療法を加えた自家幹細胞移植を含む、あるいは、マントル細胞リンパ腫の処置は、プロテアソーム阻害剤、例えばVelcade(登録商標)(ボルテゾミブまたはPS−341)、または抗血管新生剤、例えばサリドマイド(特にRituxanと組み合わせて)を投与することを含む。別の処置アプローチは、他の化学療法剤と組み合わせた、オブリメルセン(Genasense)などの、Bcl−2タンパク質の分解をもたらし、化学療法へのがん細胞感受性を高める薬物を投与することである。別の処置アプローチには、細胞増殖の阻害、さらには細胞死をもたらすことができるmTOR阻害剤を投与することが含まれる;非限定的な例は、テムシロリムス(CCI−779)、およびRituxan(登録商標)、Velcade(登録商標)または他の化学療法剤と組み合わせたテムシロリムスである。
MCLのための他の最近の療法が開示されている(Nature Reviews;Jares, P.2007年)。このような例には、フラボピリドール、PD0332991、R−ロスコビチン(セリシクリブ(Selicilib)、CYC202)、スチリルスルホン、オバトクラックス(GX15−070)、TRAIL、抗TRAIL DR4抗体およびDR5抗体、テムシロリムス(CCl−779)、エベロリムス(RAD001)、BMS−345541、クルクミン、ボリノスタット(SAHA)、サリドマイド、レナリドミド(Revlimid(登録商標)、CC−5013)およびゲルダナマイシン(17−AAG)が含まれる。
ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)を処置するために使用される他の治療剤の例には、ペリホシン、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))、リツキシマブ、クエン酸シルデナフィル(Viagra(登録商標))、CC−5103、サリドマイド、エプラツズマブ(hLL2−抗CD22ヒト化抗体)、シンバスタチン、エンザスタウリン、campath−1H、デキサメタゾン、DT PACE、オブリメルセン、アンチネオプラストン(antineoplaston)A10、アンチネオプラストンAS2−1、アレムツズマブ、βアレチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン塩酸塩、プレドニゾン、硫酸ビンクリスチン、フルダラビン、フィルグラスチム、メルファラン、組換えインターフェロンアルファ、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、エトポシド、メルファラン、ドラスタチン10、インジウムIn 111モノクローナル抗体MN−14、イットリウムY90ヒト化エプラツズマブ、抗胸腺細胞グロブリン、ブスルファン、シクロスポリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、治療用同種異系リンパ球、イットリウムY90イブリツモマブチウキセタン、シロリムス、タクロリムス、カルボプラチン、チオテパ、パクリタキセル、アルデスロイキン、組換えインターフェロンアルファ、ドセタキセル、イホスファミド、メスナ、組換えインターロイキン−12、組換えインターロイキン−11、Bcl−2ファミリータンパク質阻害剤ABT−263、デニロイキンジフチトクス、タネスピマイシン、エベロリムス、ペグフィルグラスチム、ボリノスタット、アルボシジブ(alvocidib)、組換えflt3リガンド、組換えヒトトロンボポエチン、リンフォカイン活性化キラー細胞、アミホスチン三水和物、アミノカンプトテシン、イリノテカン塩酸塩、カスポファンギン酢酸塩、クロファラビン、エポエチンアルファ、ネララビン、ペントスタチン、サルグラモスチム、ビノレルビン二酒石酸塩、WT−1アナログペプチドワクチン、WT1 126−134ペプチドワクチン、フェンレチニド、イクサベピロン、オキサリプラチン、モノクローナル抗体CD19、モノクローナル抗体CD20、オメガ−3脂肪酸、ミトキサントロン塩酸塩、酢酸オクトレオチド、トシツモマブおよびヨウ素I−131トシツモマブ、モテクサフィンガドリニウム、三酸化ヒ素、ティピファニブ、自家ヒト腫瘍由来HSPPC−96、ベルツズマブ、ブリオスタチン1およびペグ化リポソームドキソルビシン塩酸塩ならびにそれらの任意の組合せが含まれる。
WMを処置するために使用される治療手順の例には、末梢血幹細胞移植、自家造血幹細胞移植、自家骨髄移植、抗体療法、生物学的療法、酵素阻害剤療法、全身照射、幹細胞の注入、幹細胞サポートでの骨髄除去、in vitro処置末梢血幹細胞移植、臍帯血移植、免疫酵素技術、薬理学的研究、低LETコバルト−60ガンマ線療法、ブレオマイシン、従来型の外科処置、放射線療法および骨髄非破壊同種造血幹細胞移植が含まれる。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)薬物療法を処置するために使用される他の治療剤の例には(Blood 2005年、Abramson, J.)、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、抗CD20モノクローナル抗体、エトポシド、ブレオマイシン、ワルデンストレームマクログロブリン血症(Waldenstrom’s)について挙げた薬剤の多数、ならびにそれらの任意の組合せ、例えばICEおよびR−ICEが含まれる。
慢性リンパ性白血病(CLL)を処置するために使用される他の治療剤の例には(Spectrum、2006年、Fernandes, D.)、クロラムブシル(Leukeran)、シクロホスファミド(Cyloxan、Endoxan、Endoxana、Cyclostin)、フルダラビン(Fludara)、ペントスタチン(Pentstatin)(Nipent)、クラドリビン(Leustarin)、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標)、Adriblastine)、ビンクリスチン(Oncovin)、プレドニゾン、プレドニゾロン、アレムツズマブ(Campath、MabCampath)、ワルデンストレームマクログロブリン血症のために挙げた薬剤の多数、ならびに一般的な併用レジメン:CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン);R−CVP(リツキシマブ−CVP);ICE(イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド);R−ICE(リツキシマブ−ICE);FCR(フルダラビン、シクロホスファミド、リツキシマブ);およびFR(フルダラビン、リツキシマブ)を含む併用化学療法および化学免疫療法が含まれる。
別の態様では、(i)少なくとも1つの化学療法処置に対して難治性である、または(ii)化学療法で処置した後に再発している、または(i)および(ii)の両方である被験体(例えばヒト)を感受性にする方法が提供され、該方法は、式Iの化合物のビスメシル酸塩(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物、またはそれらの医薬組成物を被験体に投与するステップを含む。感受性にする被験体は、式Iの化合物のビスメシル酸塩(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物および本明細書に記載のその組成物の投与を含む処置に応答する被験体、またはこのような処置に耐性を生じなかった被験体である。
別の態様では、併存症を有するがんについて被験体(例えば、ヒト)を処置するための方法であって、処置が、併存症を処置するのにも有効である方法が本明細書で提供される。がんとの「併存症」は、がんと同時に起こる疾患である。
一部の実施形態では、併存症を有する慢性リンパ性白血病(CLL)について被験体(例えば、ヒト)を処置するための方法であって、処置が、併存症を処置するのにも有効である方法が本明細書で提供される。CLLを有する多くの被験体は、1つまたは複数の他の疾患、例えば血圧系、血管および心臓系、内分泌および代謝系、泌尿生殖器系、筋骨格系、呼吸器系、神経系、上部および下部胃腸系、精神医学的系、耳、鼻および咽喉系、腎臓系または肝臓系に影響を及ぼす疾患を有する。CLLの具体的な病的状態には、これらに限定されないが、1つまたは複数の他のがん(例えば、乳がん、頭頸部がん、肺がん、黒色腫、非ホジキンT細胞リンパ腫、前立腺がん、結腸がん、小腸がん、婦人科のがんおよび尿路がん)、高血圧症、高脂血症、冠動脈疾患、末梢血管疾患、心筋症、心臓弁膜症(vulvular heart disease)、心房細動、脳血管疾患(例えば、一過性脳虚血発作、脳卒中)、慢性閉塞性肺疾患、関節疾患、消化性潰瘍、炎症性腸疾患、精神病(psychiatric illness)、甲状腺疾患、良性前立腺肥大、真性糖尿病および変形性関節症が含まれる(Satram−Hoangら、Journal of Cancer Therapy、2013年;4巻:1321〜1329頁;Thurmesら、Leukemia & Lymphoma、2008年;49巻(1号):49〜56頁)。
一部の実施形態では、被験体(例えば、ヒト)におけるCLLの併存症を処置する方法であって、その方法は、式Iの化合物、または薬学的に許容される塩、あるいはそれらの医薬組成物を被験体に投与するステップを含む。一部の実施形態では、併存症は、1つまたは複数の他のがん(例えば、乳がん、頭頸部がん、肺がん、黒色腫、非ホジキンT細胞リンパ腫、前立腺がん、結腸がん、小腸がん、婦人科のがんおよび尿路がん)、高血圧症、高脂血症、冠動脈疾患、末梢血管疾患、心筋症、心臓弁膜症、心房細動、脳血管疾患(例えば、一過性脳虚血発作、脳卒中)、慢性閉塞性肺疾患、関節疾患、消化性潰瘍、炎症性腸疾患、精神病、甲状腺疾患、良性前立腺肥大、真性糖尿病および変形性関節症からなる群から選択される。
単剤療法および併用療法
本開示で提供される医薬組成物が、被験体(例えばヒト)に投与され、したがって式Iの化合物のメシル酸塩(例えばビスメシル酸塩を含む)またはその水和物が、被験体に投与される唯一の治療剤になるような処置方法が提供される。被験体(例えばヒト)に投与される本開示で提供される医薬組成物が、1つまたは複数の追加の治療剤または他の療法と組み合わせて被験体(例えばヒト)に与えられる処置方法も提供される。単剤療法および併用療法の両方は、本明細書で詳述されている方法、例えば本明細書に詳述されている疾患または状態のいずれかを処置する方法において使用するため、および本明細書に詳述されている任意の被験体で使用するために意図され、説明されている。
単剤療法
一部の実施形態では、がん、アレルギー性障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患および/または急性炎症反応を処置する方法は、処置を必要とする被験体に、有効量の式Iの化合物のビスメシル酸塩(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物を投与するステップを含み、ここで被験体は、その疾患または状態のための、別の薬剤または手順を用いた療法を受けていない。
式Iの化合物のビスメシル酸塩、(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物が、がんであると診断されているか、またはがんを有していると疑われる被験体に単剤療法として投与される一部の実施形態では、被験体は、(i)少なくとも1つの抗がん療法に対して難治性である、または(ii)少なくとも1つの抗がん療法で処置した後に再発している、または(i)および(ii)の両方であるヒトであり得る。実施形態の一部において、被験体は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つの抗がん療法(例えば標準的または実験的な化学療法を含む)に難治性である。例えば、一部の実施形態では、被験体は、(i)抗CD20抗体、アルキル化剤(例えばベンダムスチン)、プリン類似体(例えばフルダラビン)、アントラサイクリン、またはそれらの任意の組合せを使用する療法に対して難治性であるか、(ii)抗CD20抗体、アルキル化剤(例えばベンダムスチン)、プリン類似体(例えばフルダラビン)、アントラサイクリンもしくはそれらの任意の組合せで処置した後に再発しているか、または(i)および(ii)の両方であるヒトであり得る。
前述の通り、少なくとも1つの抗がん療法に対して難治性である、かつ/または少なくとも1つの抗がん療法で処置した後に再発しているヒト被験体は、過去に1つまたは複数の療法を受けていてもよい。一部の実施形態では、このような被験体は、本明細書に記載の方法を使用する処置の前(例えば、式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩を単剤療法として投与する前)に、1つ、2つ、3つもしくは4つ、または少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つもしくは少なくとも5つ、または1〜10、1〜9つ、1〜8つ、1〜7つ、1〜6つ、1〜5つもしくは1〜4つの抗がん療法を受けている。
被験体(例えばヒト)が、単剤療法としての式Iの化合物または薬学的に許容されるその塩で処置される場合、被験体は、抗がん療法ではない1つまたは複数の他の療法を受けることもできると理解すべきである。
一部の実施形態では、がん、例えばCLLであると診断された被験体(例えばヒト)における、限定されるものではないがCLLを含めたがんの併存症を処置する方法が提供され、該方法は、その併存症を処置するための療法を、式Iの化合物のビスメシル酸塩(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物、またはその医薬組成物と組み合わせて被験体に投与するステップを含む。一部の実施形態では、併存症は、1つまたは複数の他のがん(例えば乳房、頭頸部、肺、黒色腫、非ホジキンT細胞リンパ腫、前立腺、結腸、小腸、婦人科ならびに尿路)、高血圧、高脂血症、冠動脈疾患、末梢血管疾患、心筋症、心臓弁膜(vulvular)症、心房細動、脳血管疾患(例えば一過性脳虚血発作、脳卒中)、慢性閉塞性肺疾患、関節疾患、消化性潰瘍、炎症性腸疾患、精神病、甲状腺疾患、良性前立腺肥大症、真性糖尿病、および変形性関節症からなる群から選択される。
併用療法
一部の実施形態では、がん、アレルギー性障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患および/または急性炎症反応を処置する方法は、処置を必要とする被験体(例えばヒト)に、本明細書に記載の有効量の医薬組成物を、がん、アレルギー性障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患および/または急性炎症反応を処置するのに有用であり得る1つまたは複数の追加の療法(例えば、1つまたは複数の追加の治療剤)と一緒に投与するステップを含む。
一部の実施形態では、がん、アレルギー性障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患および/または急性炎症反応を処置する方法は、処置を必要とする被験体に、有効量の式Iの化合物のビスメシル酸塩(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物を、がん、アレルギー性障害および/または自己免疫および/または炎症性疾患および/または急性炎症反応を処置するのに有用であり得る第2の活性薬剤と一緒に投与するステップを含む。例えば、第2の薬剤は、抗炎症剤であり得る。第2の活性薬剤を用いる処置は、式Iの化合物のビスメシル酸塩(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物を用いる処置の前、それと同時またはその後であってよい。一部の実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物は、別の活性薬剤と単一剤形で組み合わされる。
また本明細書では、式Iの化合物のビスメシル酸塩(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物が、がんであると診断されたか、またはがんを有すると疑われる被験体(例えばヒト)に投与され、前述の抗がん療法の1つまたは複数を含めた1つまたは複数の追加の療法と組み合わせて被験体に与えられる処置方法が提供される。したがって、一部の実施形態では、処置を必要とする被験体(例えばヒト)のがんを処置するための方法は、被験体に、治療有効量の式Iの化合物のビスメシル酸塩(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物、またはその医薬組成物を、がんを処置するのに有用であり得る1つまたは複数の追加の療法と一緒に投与するステップを含む。1つまたは複数の追加の療法は、1つまたは複数の治療剤の投与を含み得る。
一態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩(このようなビスメシル酸塩の多形体、例えば形態3および/または形態7を含む)またはその水和物、および追加の治療剤をヒトに投与するステップを含む、処置を必要とするヒトのがんを処置する方法が提供される。ある特定の態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物をヒトに投与し、追加の治療剤をヒトに投与するステップを含む、処置を必要とするヒトのがんを処置する方法が提供される。一態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物をヒトに投与し、追加の治療剤をヒトに投与するステップを含む、処置を必要とするヒトのがんを処置する方法が提供される。ある特定の態様では、式IAもしくはIBのメシル酸塩またはその水和物をヒトに投与し、追加の治療剤をヒトに投与するステップを含む、処置を必要とするヒトのがんを処置する方法が提供される。他の態様では、式IAまたはIBの水和物メシル酸塩をヒトに投与し、追加の治療剤をヒトに投与するステップを含む、処置を必要とするヒトのがんを処置する方法が提供される。一態様では、多形形態3をヒトに投与し、追加の治療剤をヒトに投与するステップを含む、処置を必要とするヒトのがんを処置する方法が提供される。別の態様では、多形形態7をヒトに投与し、追加の治療剤をヒトに投与するステップを含む、処置を必要とするヒトのがんを処置する方法が提供される。上記実施形態のいずれかでは、がんの処置は、例えば、白血病、リンパ腫および固形細胞腫瘍を含み得る。
追加の治療剤は、1つまたは複数の薬剤であってよい。一部の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、例えば、その構造を以下に示す化合物A、B、CおよびD
を含むホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害剤であってよい。
他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)の阻害剤、または例えば、ヒトLOXL2に向けられる免疫グロブリンIgG4アイソタイプを有するヒト化モノクローナル抗体(mAb)を含むLOXL2と結合する物質であってよい。さらに他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、アポトーシスシグナル調節キナーゼ(ASK−1)の阻害剤、またはASK−1と結合する物質であってよい。さらに他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、JAK1もしくはJAK2などのヤヌスキナーゼの阻害剤、またはJAK1もしくはJAK2などのヤヌスキナーゼと結合する物質であってよい。一実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤はモメロチニブである。他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、ブルトンのチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤であってよい。さらに他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤はB細胞リンパ腫(BCL)阻害剤であってよい。一部の変形形態では、BCL阻害剤はBCL−2阻害剤である。一変形形態では、BCL阻害剤はABT−199である。
さらに他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、フルダラビン、リツキシマブ、オビヌツズマブ、アルキル化剤、アレムツズマブおよび他の化学療法処置、例えばCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン);R−CHOP(リツキシマブ−CHOP);hyperCVAD(多分割シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン、メトトレキサート、シタラビン);R−hyperCVAD(リツキシマブ−hyperCVAD);FCM(フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン);R−FCM(リツキシマブ、フルダラビン、シクロホスファミド、ミトキサントロン);ボルテゾミブおよびリツキシマブ;テムシロリムスおよびリツキシマブ;テムシロリムスおよびVelcade(登録商標);ヨウ素−131トシツモマブ(Bexxar(登録商標))およびCHOP;CVP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン);R−CVP(リツキシマブ−CVP);ICE(イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド);R−ICE(リツキシマブ−ICE);FCR(フルダラビン、シクロホスファミド、リツキシマブ);FR(フルダラビン、リツキシマブ);ならびにD.T.PACE(デキサメタゾン、サリドマイド、シスプラチン、Adriamycin(登録商標)、シクロホスファミド、エトポシド)であってよい。
他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、ビンカアルカロイドであってよい。一変形形態では、ビンカアルカロイドは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、デスオキシビンカミノール、ビンカミノール、ビンブルニン、ビンカマジンおよびビネリジンならびに薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される。ある特定の変形形態では、少なくとも1つのビンカアルカロイドは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、デスオキシビンカミノール、ビンカミノール、ビンブルニン、ビンカマジンおよびビネリジンならびに薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される。一部の変形形態では、ビンカアルカロイドは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンならびに薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される。他の変形形態では、ビンカアルカロイドは、ビンクリスチンおよびビンブラスチンならびに薬学的に許容されるそれらの塩からなる群から選択される。一変形形態では、ビンカアルカロイドは、ビンクリスチンおよび薬学的に許容されるその塩である。別の変形形態では、ビンカアルカロイドは、ビンブラスチンおよび薬学的に許容されるその塩である。したがって、一態様では、ヒトに、式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物、およびビンカアルカロイド、または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、処置を必要とするヒトのがんを処置するための方法が提供される。ある特定の態様では、ヒトに、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物、およびビンカアルカロイド、または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、処置を必要とするヒトのがんを処置するための方法が提供される。一態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物、およびビンカアルカロイド、または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、処置を必要とするヒトのがんを処置する方法が提供される。ある特定の態様では、式IAまたはIBのメシル酸塩またはその水和物、およびビンカアルカロイド、または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、処置を必要とするヒトのがんを処置する方法が提供される。他の態様では、式IAまたはIBの水和物メシル酸塩、およびビンカアルカロイド、または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、処置を必要とするヒトのがんを処置する方法が提供される。
他の実施形態では、1つまたは複数の追加の療法は、例えば慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)および/または急性骨髄性白血病(AML)を含む白血病を処置するのに適した任意の単剤療法または併用療法であってよい。
他の実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、抗炎症剤であってよい。1つまたは複数の追加の治療剤での処置は、本明細書に記載する医薬組成物での処置の前、それと同時またはその後であってよい。一部の実施形態では、本明細書に記載する医薬組成物を、単一剤形において別の治療剤と組み合わせる。本明細書に記載する少なくとも1つの化学的実体と組み合わせて使用できる適切な抗腫瘍治療薬には、これらに限定されないが、化学療法剤、例えばマイトマイシンC、カルボプラチン、タキソール、シスプラチン、パクリタキセル、エトポシド、ドキソルビシンまたは上記化学療法剤の少なくとも1つを含む組合せが含まれる。放射線療法抗腫瘍剤もやはり、単独か、または、化学療法剤と組み合わせて使用することができる。
本明細書に記載する医薬組成物は、化学感作剤として有用であり得、したがって、他の化学療法薬、特にアポトーシスを誘導する薬物と組み合わせると有用であり得る。
化学療法を受けている被験体(例えば、ヒト)に、化学療法剤に対するがん細胞の感受性を増加させるのに十分な量で、化学療法剤を、本明細書に記載する医薬組成物と一緒に投与するステップを含む、化学療法に対するがん細胞の感受性を増加させるための方法も、本明細書で提供される。本明細書に記載する化学的実体と組み合わせて使用できる他の化学療法薬の例には、トポイソメラーゼI阻害剤(カンプトテシン(camptothesin)またはトポテカン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ダウノマイシンおよびエトポシド)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、メルファランおよびBCNU)、チューブリン指向性薬剤(例えば、タキソールおよびビンブラスチン)、ならびに生物学的薬剤(例えば、抗体、例えば抗CD20抗体、IDEC8、免疫毒素およびサイトカイン)が含まれる。
一部の実施形態では、本明細書に記載する医薬組成物を、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、またはCD20+B細胞を選択的に枯渇させることによって機能する他の薬剤と組み合わせて使用する。
本明細書では、本明細書に記載する医薬組成物を、抗炎症剤と組み合わせて投与する処置方法が含まれる。抗炎症剤には、これらに限定されないが、NSAID、非特異的およびCOX−2特異的シクロオキシゲナーゼ酵素阻害剤、金化合物、コルチコステロイド、メトトレキサート、腫瘍壊死因子受容体(TNF)受容体アンタゴニスト、免疫抑制剤およびメトトレキサートが含まれる。NSAIDの例には、これらに限定されないが、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセンおよびナプロキセンナトリウム、ジクロフェナク、ジクロフェナクナトリウムとミソプロストールの組合せ、スリンダク、オキサプロジン、ジフルニサル、ピロキシカム、インドメタシン、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、ケトプロフェン、ナブメトンナトリウム、スルファサラジン、トルメチンナトリウムおよびヒドロキシクロロキンが含まれる。NSAIDの例には、COX−2特異的阻害剤(すなわち、COX−1についてのIC50より少なくとも50倍小さいIC50でCOX−2を阻害する化合物)、例えばセレコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブおよび/またはロフェコキシブも含まれる。
さらなる実施形態では、抗炎症剤はサリチレートである。サリチレートには、これらに限定されないが、アセチルサリチル酸すなわちアスピリン、サリチル酸ナトリウム、およびサリチル酸コリンおよびサリチル酸マグネシウムが含まれる。抗炎症剤は、コルチコステロイドであってもよい。例えば、コルチコステロイドは、コルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウムおよびプレドニゾンから選択することができる。一部の実施形態では、抗炎症治療剤は、金チオリンゴ酸ナトリウムまたはオーラノフィンなどの金化合物である。一部の実施形態では、抗炎症剤は、代謝阻害剤、例えば、メトトレキサートなどのジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害剤、またはレフルノミドなどのジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ阻害剤である。
一部の実施形態では、少なくとも1つの抗炎症性化合物が、抗C5モノクローナル抗体(エクリズマブまたはパキセリズマブなど)、エタネルセプト(entanercept)または抗TNFアルファモノクローナル抗体であるインフリキシマブなどのTNFアンタゴニストである組合せを使用する。
一部の実施形態では、少なくとも1つの治療剤がメトトレキサート、レフルノミド、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリンまたはミコフェノール酸モフェチルなどの免疫抑制剤化合物である組合せを使用する。
上記の追加の治療剤の任意の組合せを、ありとあらゆる組合せが個別に挙げられているかの如く、使用できることを理解すべきである。例えば、ある特定の実施形態では、追加の治療剤には、PI3K阻害剤およびLOXL2阻害剤が含まれる。
キット
また、式Iの化合物のメシル酸塩(例えばビスメシル酸塩を含む)またはその水和物、および少なくとも1つの薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクル(例えば、少なくとも1つの薬学的に許容されるポリマー)を含む医薬組成物を含むキットが提供される。
一態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物;および薬学的担体を含む医薬組成物を含むキットが提供される。ある特定の態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物および薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬組成物を含むキットが提供される。一態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物および薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬組成物を含むキットが提供される。ある特定の態様では、式IAまたはIBのメシル酸塩またはその水和物;および薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬組成物を含むキットが提供される。他の態様では、式IAまたはIBのメシル酸塩水和物;および薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬組成物を含むキットが提供される。一態様では、多形形態3;および薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬組成物を含むキットが提供される。別の態様では、多形形態7;および薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクルを含む医薬組成物を含むキットが提供される。
一変形形態では、メシル酸塩は、式IAのビスメシル酸塩である。特定の変形形態では、メシル酸塩は、式IAのビスメシル酸塩の形態3である、式IAのビスメシル酸塩の形態7またはそれらの混合物である。本明細書に記載するように、形態3および形態7は、式Iの化合物のビスメシル酸塩の多形形態である。例えば、形態3は、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体である。
一態様では、キットは、がんまたは炎症状態の処置での使用のための指示を含む。特定の変形形態では、指示は、例えば白血病またはリンパ腫を含むがんの処置のための医薬組成物の使用を対象とする。ある特定の実施形態では、がんは、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)、難治性iNHL、非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)および辺縁帯リンパ腫(MZL)である。ある特定の実施形態では、がんは、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)、難治性iNHL、非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。一実施形態では、がんは、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T−ALL)またはB細胞急性リンパ芽球性白血病(B−ALL)である。一部の実施形態では、がんは、MCL、DLBCL、iNHL、FL、MZL、LPL、SLLまたはWMである。他の実施形態では、がんは、CLL、MCL、DLBCL、iNHL(例えば、非FL iNHLを含む)またはFLである。
非ホジキンリンパ腫は、例えば濾胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症および辺縁帯リンパ腫を含む無症候性B細胞疾患、ならびに、例えばバーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)およびマントル細胞リンパ腫(MCL)を含む侵襲性リンパ腫を包含する。一実施形態では、がんは、無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)である。別の実施形態では、がんは、非FL iNHLである。
特定の変形形態では、指示は、自己免疫疾患の処置のための医薬組成物の使用を対象とする。自己免疫疾患のある特定の実施形態は、ぜんそく、関節リウマチ、多発性硬化症およびループスを含む。
本開示で提供される任意の医薬組成物は、ありとあらゆる組成物がキットの使用のために具体的かつ個別に挙げられている場合と同様に、キットにおいて使用することができる。例えば、一実施形態では、キットは:a)約34%w/wの式Iの化合物のメシル酸塩(例えばモノメシル酸塩またはビスメシル酸塩を含む);b)約15%w/wのHPMC;c)約22%w/wのマンニトール;d)約10%w/wのクロスポビドン;およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含むことができる。別の実施形態では、キットは:a)約34%w/wの式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物;b)約15%w/wのHPMC;c)約22%w/wのマンニトール;d)約10%w/wのクロスポビドン;およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含むことができる。さらに別の実施形態では、キットは:a)約34%w/wの式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物;b)約15%w/wのHPMC;c)約22%w/wのマンニトール;d)約10%w/wのクロスポビドン;およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含むことができる。さらに別の実施形態では、キットは:a)約34%w/wの多形形態3、多形形態7またはそれらの組合せ;b)約15%w/wのHPMC;c)約22%w/wのマンニトール;d)約10%w/wのクロスポビドン;およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含むことができる。
製造品
式Iの化合物のメシル酸塩(例えば、ビスメシル酸塩を含む)および少なくとも1つの薬学的に許容されるポリマーを含む医薬組成物が収容されている容器を含む製造品が提供される。製造品は、本開示で提供される医薬組成物を含む瓶、バイアル、アンプル、単回使用の使い捨て可能なアプリケーターなどであってよい。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料で形成されていてよく、一態様では、がんまたは炎症状態の処置において使用するための使用法を示す、容器上のラベルまたは容器と関連したラベルも含む。
一態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物を含む製造品が提供される。ある特定の態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物を含む製造品が提供される。一態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物を含む製造品が提供される。ある特定の態様では、式IAまたはIBのメシル酸塩またはその水和物を含む製造品が提供される。他の態様では、式IAまたはIBのメシル酸塩水和物を含む製造品が提供される。一態様では、多形形態3を含む製造品が提供される。一態様では、多形形態7を含む製造品が提供される。上記実施形態のいずれかにおいて、製造品は、メシル酸塩の使用のための取扱説明を含むラベルをさらに含むことができる。
また、式Iの化合物のメシル酸塩(例えばモノメシル酸塩またはビスメシル酸塩を含む)および少なくとも1つの薬学的に許容されるポリマーを含む医薬組成物の単位剤形が提供される。
一態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物を含む単位剤形が提供される。ある特定の態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物を含む単位剤形が提供される。一態様では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物を含む単位剤形が提供される。ある特定の態様では、式IAもしくはIBのメシル酸塩またはその水和物を含む単位剤形が提供される。他の態様では、式IAまたはIBの水和物メシル酸塩を含む単位剤形が提供される。一態様では、多形形態3を含む単位剤形が提供される。一態様では、多形形態7を含む単位剤形が提供される。上記実施形態のいずれかでは、単位剤形は、錠剤である。
一部の実施形態では、単位剤形は、約10mg〜約1800mgまたは約10mg〜約1500mg、または約10mg〜約1300mg、または約10mg〜約1000mg、または約10mg〜約800mg、または約10mg〜約600mg、または約10mg〜約300mg、または約10mg〜約200mg、または約10mg〜約100mg、または約100mg〜約800mg、または約100mg〜約600mg、または約100mg〜約300mg、または約100mg〜約200mg、または約200mg〜約350mg、または約250mg〜約300mg、または約200mg〜約400mg、または約400mg〜約600mg、または約400mg〜約800mg、または約600mg〜約800mg、または約800mg〜約1200mg、または約1200mg〜約1600の式Iの化合物のメシル酸塩またはその水和物;またはある特定の実施形態では、式Iの化合物のモノメシル酸塩またはビスメシル酸塩、その水和物;または一実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物;または、別の実施形態では、多形形態3、多形形態7またはそれらの組合せを含む。ある特定の実施形態では、単位剤形は、約25mg、約50mg、約75mg、約100mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約550mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mgまたは約1300mgの式Iの化合物のメシル酸塩またはその水和物;または、ある特定の実施形態では、式Iの化合物のモノメシル酸塩またはビスメシル酸塩、その水和物;または、一実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物;または別の実施形態では、多形形態3、多形形態7またはそれらの組合せを含む。
上記実施形態の一部では、単位剤形は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体をさらに含む。
上記経口投与のための投薬量を、1日に1回(QD)または1日に2回(BID)投与することができる。一部の実施形態では、式Iの化合物のメシル酸塩またはその水和物;または、ある特定の実施形態では、式Iの化合物のモノメシル酸塩またはビスメシル酸塩、その水和物;または、一実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物;または、別の実施形態では、多形形態3、多形形態7またはそれらの組合せ、または上記のいずれかの医薬組成物は、約1mgQD、約2mgQD、約5mgQD、約10mgQD、約15mgQD、約20mgQD、約25mgQD、約30mgQD、約35mgQD、約40mgQD、約45mgQD、約50mgQD、約75mgQD、約100mgQD、約125mgQD、約150mgQD、約175mgQD、約200mgQD、約225mgQD、約250mgQD、約300mgQD、約350mgQD、約400mgQD、約450mgQD、約500mgQD、約550mgQD、約600mgQD、約650mgQD、約700mgQD、約750mgQD、約800mgQD、約850mgQD、約900mgQD、約950mgQD、または約1000mgQDの単位投薬量で経口投与される。一部の実施形態では、式Iの化合物のメシル酸塩またはその水和物;または、ある特定の実施形態では、式Iの化合物のモノメシル酸塩またはビスメシル酸塩、その水和物;または、一実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物;または、別の実施形態では、多形形態3、多形形態7またはそれらの組合せ、または上記のいずれかの医薬組成物は、約1mgBID、約2mgBID、約5mgBID、約10mgBID、約15mgBID、約20mgBID、約25mgBID、約30mgBID、約35mgBID、約40mgBID、約45mgBID、約50mgBID、約75mgBID、約100mgBID、約125mgBID、約150mgBID、約175mgBID、約200mgBID、約225mgBID、約250mgBID、約300mgBID、約350mgBID、約400mgBID、約450mgBID、約500mgBID、約550mgBID、約600mgBID、約650mgBID、約700mgBID、約750mgBID、約800mgBID、約850mgBID、約900mgBID、約950mgBID、または約1000mgBIDの単位投薬量で経口投与される。
例えば、ある特定の変形形態では、式Iの化合物のメシル酸塩またはその水和物;または、ある特定の実施形態では、式Iの化合物のモノメシル酸塩またはビスメシル酸塩、その水和物;または、一実施形態では、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物;または、別の実施形態では、多形形態3、多形形態7またはそれらの組合せを含む錠剤であって、処置を必要とするヒトに、約1mgBID、約2mgBID、約5mgBID、約10mgBID、約15mgBID、約20mgBID、約25mgBID、約30mgBID、約35mgBID、約40mgBID、約45mgBID、約50mgBID、約75mgBID、約100mgBID、約125mgBID、約150mgBID、約175mgBID、約200mgBID、約225mgBID、約250mgBID、約300mgBID、約350mgBID、約400mgBID、約450mgBID、約500mgBID、約550mgBID、約600mgBID、約650mgBID、約700mgBID、約750mgBID、約800mgBID、約850mgBID、約900mgBID、約950mgBID、または約1000mgBIDの単位投薬量で経口投与される錠剤が提供される。上記の一変形形態では、ヒトは、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストレームマクログロブリン血症(LPL/WM)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)および慢性リンパ性白血病(CLL)またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される状態を有している。上記のいずれかの別の変形形態では、ヒトは、非FL無症候性非ホジキンリンパ腫のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している。ある特定の実施形態では、非FL無症候性非ホジキンリンパ腫は、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストレームマクログロブリン血症(LPL/WM)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)または辺縁帯リンパ腫(MZL))である。別の変形形態では、ヒトは、濾胞性リンパ腫(FL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している。別の変形形態では、ヒトは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している。別の変形形態では、ヒトは、マントル細胞リンパ腫(MCL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している。さらに別の変形形態では、ヒトは、慢性リンパ性白血病(CLL)のための少なくとも1つの療法に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している。さらに別の変形形態では、ヒトは、慢性リンパ性白血病(CLL)のためのホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害剤、ブルトンチロシンキナーゼ(BTK)阻害剤またはB細胞受容体(BCR)処置に対して(i)難治性である、かつ/または(ii)それで処置した後に再発している。
本開示で提供される任意の医薬組成物は、ありとあらゆる組成物が製造品の使用のために具体的かつ個別的に挙げられている場合と同様に製造品において使用することができる。例えば、一実施形態では、製造品は:a)約34%w/wの式Iの化合物のメシル酸塩(例えばモノメシル酸塩またはビスメシル酸塩を含む);b)約15%w/wのHPMC;c)約22%w/wのマンニトール;d)約10%w/wのクロスポビドン;およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含むことができる。別の実施形態では、製造品は:a)約34%w/wの式Iの化合物のビスメシル酸塩またはその水和物;b)約15%w/wのHPMC;c)約22%w/wのマンニトール;d)約10%w/wのクロスポビドン;およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含むことができる。さらに別の実施形態では、製造品は:a)約34%w/wの式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物;b)約15%w/wのHPMC;c)約22%w/wのマンニトール;d)約10%w/wのクロスポビドン;およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含むことができる。さらに別の実施形態では、製造品は:a)約34%w/wの多形形態3、多形形態7またはそれらの組合せ;b)約15%w/wのHPMC;c)約22%w/wのマンニトール;d)約10%w/wのクロスポビドン;およびe)約1%w/w〜約3%w/wのポロクサマーを含むことができる。
以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態を例示するために含まれる。本明細書で開示されている技術は、本開示の実践に適用される技術であることを当業者は理解すべきである。当業者は、本開示に照らして、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく変更を加えることができ、しかも同様または類似の結果を得ることができると理解すべきである。
本明細書に記載の多形体は、例えば実施例4A、4B、4C、5A、5B、6A、6Bおよび11に記載の方法を含めた当技術分野で公知の様々な方法、例えばX線粉末回折パターン(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量測定分析(TGA)、動的水蒸気収着(DVS)、単結晶X線回折、核磁気共鳴(NMR、例えば1H NMR)によって特徴付けることができる。多形形態3に関して、例示的なXRPDパターンは、図1Aおよび1Bに提示されており、例示的なDSCおよびTGAプロファイルは、図3A、3Bおよび3Cに提示されており、例示的なDVSプロットは、図5Aおよび5Cに提示されており、例示的な1H NMRスペクトルは、図13に提示されている。多形形態7に関して、代表的なXRPDパターンは、図2Aおよび2Bに提示されており、例示的なDSCおよびTGAデータは、図4A、4Bおよび4Cに提示されており、例示的なDVSプロットは、図5Bおよび5Dに提示されており、例示的な1H NMRスペクトルは、図14に提示されている。
以下の実施例において、「X」という用語は、相当重量(weight equivalent)を指し、「V」は相当体積を指す。「RH」は相対湿度を指す。
(実施例1)
多形形態3の合成
種々の形態の式Iの化合物を一般的に作製するための方法は、米国特許第8,450,321号および同第8,455,493号に見出すことができる。以下は、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体(以下の反応スキームにおいて示される式IAの化合物の一水和物の多形体として記載することもできる)である多形形態3を作製するための方法である。
式Iの化合物(1.0X)を、反応器Aに加えた。メタンスルホン酸(0.56X、2.40eq)、水(4X、4V)およびアセトン(3.2X、4V)を反応器Bに加えた。反応器A内の温度を35℃未満に維持しながら、反応器Bの内容物を反応器Aに加えた。固体を溶解させた後、反応器Aの内容物を反応器Bに移した。反応器Aを、水(1X、1V)およびアセトン(0.8X、1V)ですすぎ、反応器Bに移した。反応器Bの温度を19〜25℃に調整した。高撹拌下で、アセトン(11.9X、15V)を反応器Bに加えた。反応器Bの温度を0〜6℃に調整し、反応器Bの内容物を5h混合し、次いで濾過し、アセトン(4.0X、5V)ですすいで多形形態7を得た。形態7を、真空下、60℃で一定重量が達成されるまで乾燥させた。多形形態7のXRPDおよびDSCの代表的なパターンを、図2Aおよび4Aに示す。
単離された多形形態7を、反応器B中の式IAの化合物の多形形態3の種(0.01X、1mol%)に加えた。アセトン(15.4X、19.5V)および水(0.5X、0.5V)を反応器Bに加え、19〜25℃で、多形形態7が形態3に転換されるまで混合した。この転換をXRPDまたはDSCで監視した。反応器Bの内容物を濾過し、アセトン(2.4X、3V)ですすぎ、真空下、60℃で一定重量が達成されるまで乾燥させた。多形形態3のXRPDの代表的なパターンを、図1Aおよび3Aに示す。式IAの化合物の多形形態3のXRPDおよびDSCの他の代表的なパターンは、それぞれ図1Bおよび3Cに示されている。
(実施例2)
多形形態3の代替合成
以下は、多形形態3である、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物(以下の反応スキームにおいて示される式IAの化合物の一水和物の多形体として記載することもできる)を作製するための方法である。
多形形態7を、実施例1に記載したようにして得た。
単離された多形形態7を、反応器B中の式IAの化合物の多形形態3の種(0.01X、1mol%)に加えた。アセトン(15.0X、19.0V)および水(1.0X、1.0V)を反応器Bに加えた。反応器Bの内容物を、多形形態7が形態3に転換されるまで、加熱還流(約55℃)した。この転換をXRPDまたはDSCで監視した。反応器Bの内容物はスラリーであり、これを19〜25℃に冷却し、次いで濾過し、アセトン(2.4X、3V)ですすぎ、真空下、60℃で一定重量が達成されるまで乾燥させて多形形態3を得た。多形形態3のXRPDおよびDSCの代表的なパターンを、図1Aおよび3Aに示す。式IAの化合物の多形形態3のXRPDおよびDSCの他の代表的なパターンは、それぞれ図1Bおよび3Cに示されている。
(実施例3)
多形形態3のワンポット合成
以下は、式Iの化合物(遊離塩基として)から、多形形態3である、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物(以下の反応スキームにおいて示される式IAの化合物の一水和物の多形体として記載することもできる)を作製するための方法である。ここに記載する方法は、式Iの化合物の多形形態3への転換において単一の反応器を使用し、化合物中間体の単離を必要としない。
式Iの化合物(1.0X)を、反応器A中のアセトン(14.2X、18V)に加え、混合した。水(0.8X、0.8V)を反応器Aに加え、次いでメタンスルホン酸(0.48X、2.05eq)を加えた。アセトン(0.9X、1.2V)をポンプ輸送し、ラインをアセトンで反応器Aの方向へすすいだ。反応器Aの内容物を、約2時間、加熱還流(約55℃)させた。多形形態3の種(0.015X、1mol%)を反応器Aに加え、内容物を還流下で混合して、式IAの化合物を多形形態3に転換させた。この転換をXRPDで監視した。反応器の内容物を19〜25℃に冷却し、濾過し、アセトン(4.0X、5V)ですすぎ、真空下、60℃で乾燥させた。式IAの化合物の多形形態3のXRPDおよびDSCの代表的なパターンは、それぞれ図1Aおよび3Aに示されている。式IAの化合物の多形形態3のXRPDおよびDSCの他の代表的なパターンは、それぞれ図1Bおよび3Cに示されている。
(実施例4A)
多形形態3および多形形態7のXRPD測定
この実施例は、多形形態3および多形形態7のXRPD測定についての実験条件およびデータを記載する。
多形形態3
XRPDパターンを、Optixの長い微小焦点源を使用して作製されるCu放射線の入射ビームを使用するPANalytical X’Pert PRO MPD回折計で収集した。検体を経由しかつ検出器上にCu Kα X線の焦点を合わせるために、楕円傾斜型多層膜ミラー(elliptically graded multilayer mirror)を使用した。分析の前に、シリコン検体(NIST SRM640d)を分析して、Si111ピークの観測位置が、NIST認定位置と一致することを確認した。試料の検体を3μm厚フィルム間に挟み、透過型幾何形状において分析した。空気によって発生するバックグラウンドを最小化させるために、ビームストップ、短い散乱防止エクステンション(short antiscatter extension)および散乱防止ナイフエッジを使用した。入射ビームおよび回折ビーム用のソーラースリットを使用して、軸発散により拡大するのを最小化させた。回折パターンを、検体から240mmに位置する走査型位置敏感型検出器(X’Celerator)およびData Collectorソフトウェアv.2.2bを使用して収集した。各パターンについてのデータ取得パラメーターは、ミラーの前の発散スリット(DS)を含めて、本報告書のデータの部における画像の上部に示す。好ましくは、強い強度を有する非重複型の低角度のピークを特定することによって、顕著なピークを観測ピークから選択する。
多形形態3の例示的なXRPDパターンを図1Aに示す。図1Aを参照すると、形態3についての特徴的なXRPD2θ反射(±0.2°)は13.75、16.90、22.88および26.06である。
多形形態7
XRPDパターンを、回転による反射ステージ、データ取得範囲:2〜40°2θ、銅(Cu)アノード;Kα1/Kα2放射線;管電流40mA;管電圧45kV;自動発散スリットおよび散乱防止スリットで構成されたPANalytical X’Pert MPD Pro粉末X線回折計を使用して収集した。試料を、固体材料をシリコンホルダー上に薄層として広げることによって分析用に調製した。各ホルダーを反射/透過ステージ上に取り付け、データ取得の間、回転させた。
多形形態7の例示的なXRPDパターンを図2Aに示す。図2Aを参照すると、形態7についての特徴的なXRPD2θ反射(±0.2°)は4.94、9.82および26.68である。
(実施例4B)
多形形態3および多形形態7のXRPD測定
この実施例は、多形形態3および多形形態7のXRPD測定についての実験条件およびデータを記載するものである。
X線粉末回折(XRPD)パターンを、Cu Kα放射線(40kV、40mA)、自動XYZステージ、自動試料位置決めのためのレーザービデオ顕微鏡およびHiStar二次元面積検出器を使用して、Bruker AXS C2 GADDS回折計で収集した。X線光学系(optics)は、0.3mmのピンホールコリメータと連結された単一のGoebel多層膜ミラーからなる。認定されている標準的なNIST1976コランダム(平板)を使用して、性能チェックを毎週実施する。
ビーム発散、すなわち試料上でのX線ビームの有効サイズはおよそ4mmであった。θ−θ連続走査モードは、3.2°〜29.7°の有効な2θ範囲をもたらす20cmの試料−検出器の距離で用いた。典型的には、試料を、X線ビームに120秒間曝露させる。データ収集のために使用したソフトウェアはXP/2000 4.1.43用のGADDSであり、そのデータを分析し、Diffrac Plus EVA v15.0.0.0を使用して提示した。
周囲条件:周囲条件下で行う試料を、粉砕せずに受け入れたままで粉末を使用して、平板検体として調製した。およそ1〜2mgの試料を、スライドガラス上で軽く押圧して平らな表面を得た。
非周囲条件:非周囲条件下で行う試料を、熱伝導性化合物でシリコンウエハー上に取り付けた。次いで試料を20℃/分で適切な温度に加熱し、続いて等温で1分間保持した後、データ収集を開始した。
(実施例4C)
多形形態3および多形形態7のXRPD測定
この実施例は、多形形態3および多形形態7のXRPD測定についての実験条件およびデータを記載する。
X線粉末回折(XRPD)パターンを、Cu Kα放射線(40kV、40mA)、θ〜2θゴニオメーターならびにV4および受光スリットの発散、Ge単色光分光器およびLynxeye検出器を使用してBruker D8回折計で収集した。機器は、認定コランダム標準品(NIST1976)を使用して性能チェックする。データ収集のために使用したソフトウェアはDiffrac Plus XRD Commander v2.6.1であり、Diffrac Plus EVA v15.0.0.0を使用して、データを解析し提示した。
試料を、受け入れたままの粉末を使用して、平板検体として、周囲条件下で実行した。試料を、研磨されたゼロバックグラウンド(510)シリコンウエハー中の空洞カット部に緩やかに入れた。試料を、分析の間、それ自体の面内で回転させた。データ収集の詳細は:
角度範囲:2〜42°2θ
ステップサイズ:0.05°2θ
収集時間:0.5s/ステップ
である。
非周囲条件下での試料実行:およそ40mgの試料を、周囲条件下で、Niコーティングした試料ホルダー中に入れた。試料を25℃で搭載した。次いで試料を適切な温度に加熱した。データ収集の詳細は:
角度範囲:3〜30°2θ
ステップサイズ:0.05°2θ
収集時間:0.5s/ステップ
である。
(実施例5A)
多形形態3および多形形態7のDSC測定
この実施例では、多形形態3および多形形態7の調節示差走査熱量測定(mDSC)および熱重量測定分析(TGA)測定に関する実験条件およびデータを説明する。
DSCは、TA instruments(New Castle、DE、USA)モデル1000を使用し、ピンホールを有するアルミニウムパンにおよそ2〜5mgの固体を入れて、乾燥窒素パージの下で60秒毎に±0.8℃で調節して2℃/minで加熱して実施した。TGAは、およそ2〜5mgの固体を2または10℃/minの速度で加熱し、TA Instruments(New Castle、DE、USA)モデル500を使用して実施した。
多形形態3
多形形態3のDSCサーモグラムおよびDSCサーモグラムとTGAサーモグラムのオーバーレイは、それぞれ図3Aおよび3Bに示されている。109℃、206℃および255℃で始まる3つの吸熱を有する、形態3の特徴的なDSCパターンが観察された。観察されたDSCサーモグラムの主要な事象は、260℃における溶融と、同時に発生する分解であった。微量の吸熱が、約170℃で観察され、微量の発熱が、約210℃で観察されたが、それらの由来は未知であった。この実施例の形態3のTGAサーモグラムは、75℃〜100℃の間の温度で約3%の段階変化を示しているが、これは残留溶媒の喪失に起因し得る。別の段階変化が約200℃で観察され、これはDSCサーモグラム上の小さい発熱と一致している。主要な分解は、約230℃で開始したことが観察された。
多形形態7
形態7のDSCサーモグラムおよびDSCサーモグラムとTGAサーモグラムのオーバーレイは、それぞれ図4Aおよび4Bに示されている。2つの小さい吸熱が、約110℃および170℃で観察された後、約280℃で分解が開始した。逆熱流は、170℃の典型的なtgを示しているが、このことは、同じ温度における全熱流で示される吸熱が、溶融事象ではないことを示し得る。これらの熱特性は、液晶状態と一致し得る。形態7のTGAサーモグラムは、80℃未満でそれぞれ約1%の2つの段階変化を示しているが、これは残留溶媒の喪失に起因し得る。分解の開始は約220℃で観察されたが、これはDSCサーモグラムと類似している。
(実施例5B)
多形形態3および多形形態7のDSC測定
この実施例では、多形形態3および形態7の示差走査熱量測定(DSC)および熱重量測定分析(TGA)測定に関する実験条件およびデータを説明する。
DSCデータを、34ポジションオートサンプラーを備えたMettler DSC 823Eで収集した。機器を、認証インジウムを使用してエネルギーおよび温度に関して較正した。ピンホール付きアルミニウムパンに入れた、典型的に0.5〜3mgの各試料を、10℃/minで25℃から300℃に加熱した。50ml/minの窒素パージを、試料上に維持した。機器の制御およびデータ分析ソフトウェアは、STARe v12.1であった。TGAデータを、34ポジションオートサンプラーを備えたMettler TGA/SDTA 851eで収集した。機器を、認証インジウムを使用して温度較正した。典型的に5〜30mgの各試料を、事前に秤量したアルミニウムるつぼに搭載し、10℃/minで周囲温度から350℃に加熱した。50ml/minの窒素パージを、試料上に維持した。機器の制御およびデータ分析ソフトウェアは、STARe v12.1であった。
多形形態3および多形形態7の例示的なDSCおよびTGAサーモグラムは、それぞれ図3Cおよび4Cに示されている。
(実施例6A)
多形形態3および多形形態7の吸湿性の研究
この実施例では、多形形態7と比較して、多形形態3の物理的安定性が優れていることを実証する。
25℃における多形形態3および多形形態7の吸湿性を、自動化蒸気収着測定器(Q5000SA;TA instruments、New Castle、DE)を使用して、動的水蒸気収着(DVS)によって決定した。吸湿性を、0〜90%の範囲にわたる相対湿度(RH)の関数として研究した。およそ10mgの固体試料を、13mmの石英DVS試料カップ上に直接置き、一定重量が達成されるまで0%相対湿度(RH)で平衡化した。平衡化した後、RHを90%に達するまで増分10%で増大し、水分収着を監視した。脱着については、相対湿度を同様にして低減して、全収着/脱着サイクルを達成した。
すべての実験に関して、機器をdm/dtモード(経時的な質量変動)で操作して、いつ平衡に達するかを決定した。0.0010%/minの固定dm/dt値を、すべてのRHセグメントについて選択した。これらの実験について、最大ステージ360分および最小ステージ60分を選択した。
多形形態3は、70%RHおよびそれ未満では吸湿性であることが観察されなかった。70%RHを超えると、多量の湿気を吸収することが観察された。90%では、水吸着は約28%に達することが観察された。水吸着は、大きい履歴現象の存在によって示される通り、不可逆的であることが観察された。DVS実験の最後に、試料を収集し、XRPDによって分析すると、試料が形態7に転換していたことが示された。図6参照。
多形形態7は、吸湿性が高いことが観察された。試験したすべてのRHで、水を連続的に吸着することが観察された。40%RHでは、重量増加は、ほぼ10%であることが観察された。しかし、90%RHにおける重量増加は、約22%であることが観察され、これは形態3の重量増加よりも少ない。RHが低下すると、試料は重量を喪失し、重量増加は、0%RHでほぼゼロに戻ることが観察された。
つまり最大70%RHでは、多形形態3は、吸湿性であることが観察されず、70%RH未満では、水を吸着する形態7と比較して、高い安定性を呈している。
(実施例6B)
多形形態3および形態7の吸湿性の研究
この実施例では、多形形態3および多形形態7の物理的安定性を実証する。
収着等温線を、Hiden IGASorp湿気収着分析器を使用して、CFRSorpソフトウェアによって制御して得た。試料温度を、Huber再循環水浴によって25℃に維持した。湿度は、乾燥および湿潤窒素ストリームを総流速250ml/minで混合することによって制御した。相対湿度(RH)は、試料近くに置いた較正済みVaisala RHプローブ(動的範囲0〜95%RH)によって測定した。%RHの関数としての試料の重量変化(質量緩和)を、微量てんびん(精度±0.001mg)によって常に監視した。
10〜20mgの試料を、周囲条件で、風袋引きしたメッシュステンレス鋼バスケットに入れた。試料を、40%RHおよび25℃(典型的な室内状態)で搭載し、取り出した。
湿気収着等温線を、以下の表1に概説した通りに実施した(2回の走査で1回の完全なサイクルを得た)。標準等温線を、25℃において0〜90%RH範囲にわたって10%RH間隔で実施した。
該ソフトウェアでは、質量緩和のモデルと一緒に最小二乗最小化手順を使用して、漸近値を予測する。測定された質量緩和値は、次の%RH値を選択する前にソフトウェアによって予測された値の5%以内でなければならない。最小平衡化時間は、1時間に設定し、最大値は4時間に設定した。データ分析は、IGASorp Systems Software v6.50.55を使用して実施した。試料を、等温線の完了後に回収し、XRPDによって再分析した。
他の場合には、やはり収着等温線を、SMS DVS Intrinsic湿気収着分析器を使用して、DVS Intrinsic Controlソフトウェアv1.0.1.2(またはv1.0.1.3)によって制御して得た。試料温度を、機器制御によって25℃に維持した。湿度は、乾燥および湿潤窒素ストリームを総流速200ml/minで混合することによって制御した。相対湿度は、試料近くに置いた較正済みRotronicプローブ(動的範囲1.0〜100%RH)によって測定した。%RHの関数としての試料の重量変化(質量緩和)を、微量てんびん(精度±0.005mg)によって常に監視した。
5〜20mgの試料を、周囲条件で、風袋引きしたメッシュステンレス鋼バスケットに入れた。試料を、40%RHおよび25℃(典型的な室内状態)で搭載し、取り出した。湿気収着等温線を、以下の表2に概説した通りに実施した(2回の走査で1回の完全なサイクルを得た)。標準等温線を、25℃において0〜90%RH範囲にわたって10%RH間隔で実施した。データ分析は、Microsoft Excelを使用して、DVS Analysis Suite v6.2(または6.1または6.0)を使用して実施した。試料を、等温線の完了後に回収し、XRPDによって再分析した。
多形形態3は、70%RHおよびそれ未満では吸湿性であることが観察されなかった(図5C)。しかし、形態3は、90%RHまで、25℃で最大約20wt%の水を吸収する。DVS分析後の試料のXRPD分析は、材料が形態7に転換していたことを示している。
多形形態7は、90%RHまで、25℃で約21wt%の水を吸収し、吸湿性が高いことが観察された(図5D)。この形態は、30〜60%RHで室温において安定であることが見出された。しかし、この間隔より低いと、材料は非晶質になる。つまり70%RHまでは、多形形態3は吸湿性ではなく、形態7と比較して良好な安定性を呈する。
1H核磁気共鳴(NMR)
NMRスペクトルを、オートサンプラーを備えた、DRX400コンソールによって制御されるBruker 400MHz機器で収集した。自動化実験を、ICON−NMR v4.0.7を使用し、Topspin v1.3を用いて実行し、標準的なBruker搭載実験を使用して得た。非ルーチン分光法では、Topspinだけを使用してデータを得た。
試料は、別段指定されない限りDMSO−d6中で調製した。オフライン分析を、ACD Spectrus Processor 2012を使用して実施した。図13および14は、それぞれ多形形態3および多形形態7の例示的なプロトンNMRスペクトルである。
(実施例7)
多形形態3および式Iの化合物のモノMSA塩の固有溶解研究
この実施例では、多形形態3(すなわち、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体)の溶解速度が、式Iの化合物のモノメシル酸塩と比較して改善されていることを実証する。
固有溶解速度の実験を、回転ディスク装置を使用して実施した。薬物物質のディスクは、ダイに入れた多形形態3の粉末100mgを、液圧プレス機(Carver Press、Fred Carver、NJ、USA)を使用して、圧力2500psiで2分間直接圧縮することによって調製した。得られたディスクの曝露表面積は、0.5cm2であった。溶解研究のために、37±0.5℃に維持した通常のUSP溶解装置を使用した。各溶解容器は、500mLの0.05N HClの水性溶解媒体またはpH6.8の20mMリン酸緩衝液と1%臭化セチルトリメチルアンモニウム(cetyltrimetrylammonium)(CTAB)を含有していた。ディスクホルダー(ダイ)を、溶解媒体に半分浸漬し、100rpmで回転させた。試料を特定の時間間隔で取り除き、HPLCによって分析した。
単位表面積当たりの固体の溶解速度(J)は、拡散モデル:
によって説明することができる。
式中、Dは、溶質の拡散係数であり、hは、固体表面における溶解中の拡散層の厚さであり、Csは、溶解媒体における固体の飽和溶解性であり、Cbは、バルク媒体における固体の濃度である。シンク条件(Cs>>Cb)では、方程式2は、
に誘導され、式中、溶解速度は、飽和溶解性に正比例する。
式Iの遊離塩基化合物、式Iの化合物のモノMSA塩、および多形形態3(式Iの化合物の一水和物ビスMSA塩)の固有溶解速度(IDR)を、以下の表3にまとめる。
式Iの遊離塩基の無水結晶形態のIDRは、pH1.3で0.00046mg/min/cm2である。pH6.8では、溶解媒体中に遊離塩基が検出不能であったので、固有溶解速度は決定できなかった。
式IのモノMSA化合物の結晶形態のIDRは、高いpH依存性を示した。pH1.3〜6.8では、IDRは、2.5から0.003mg/min/cm2まで、約1000分の1に低下した。それとは対照的に、多形形態3の結晶形態のIDRは、pH6.8では、モノMSAよりもかなり高いIDRを示した。多形形態3のIDRは、1.2mg/min/cm2であり、モノMSAよりも400倍高い。さらに図7は、pH6.8における2種類の化合物の溶解速度を比較するグラフを示す。
多形形態3は、高pH条件では、モノMSA化合物よりも著しく良好な機能を果たすという、予期しなかった驚くべき結果を有している。
(実施例8)
イヌモデルにおけるPK研究
この実施例では、式IのモノMSA塩またはビスMSA塩(一水和物ビスMSA塩の多形体である多形形態3)を、ペンタガストリンまたはファモチジンで事前に処置したイヌに投与して、その薬物動態学的効果を実証する。
絶食させたイヌに、ペンタガストリンによる事前処置(試験製剤を投与する30分前に、6μg/kgの筋肉内注射)を使用して、ヒトの絶食時の胃pHを模擬した。絶食させたイヌに、ファモチジンによる事前処置(試験製剤を投与する1時間前に、経口で20mg)を使用して、酸抑制剤を試験製剤と共に投与した場合のヒトの胃pHを模擬した。式Iの化合物のモノMSA塩またはビスMSA塩の錠剤(通常の錠剤および噴霧乾燥製剤)を、経口投与した後、水30mLを流しこんだ。
モノMSA塩形態を含有する錠剤を投与したイヌにおける式Iの化合物の曝露は、胃pHに非常に依存する。表2に示されている通り、投与後24時間の曲線下面積(AUC0−24)は、ペンタガストリンで事前に処置したイヌのAUC0−24と比較して、ファモチジンで事前に処置したイヌの方が100分の1よりも小さかった。これらの結果は、pHが2から3に増大すると溶解性が劇的に低下する、式Iの化合物のモノMSA塩の動的溶解性プロファイルと一致している。
形態3を含有する類似の錠剤製剤を、ファモチジンで事前に処置したイヌに投与した場合、モノMSA塩製剤と比較して、AUC
0−24は予想外に10倍を超えて増大した。噴霧乾燥製剤では、通常の錠剤製剤よりもさらに、経口生物学的利用能が増大する。これらの驚くべき予期しなかった結果は、生物学的利用能の改善を示しており、形態3を使用すると、モノメシル酸塩と比較して酸抑制剤との薬物−薬物相互作用が低減されることを示唆している。結果を表すグラフは、図8に示されている。
(実施例9)
多形形態3を得るための代替方法
この実施例では、多形形態3を得る代替方法を説明し、該方法は、形態3の種を添加するステップを含まない。多形形態3は、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体(以下の反応スキームに示される式IAの化合物の一水和物の多形体と説明することもできる)である。
ギ酸(3V、3.6×)および酢酸エチル(2V、1.8×)を、反応器Aに添加し、19〜25℃に調整した。反応器の温度を19〜25℃に維持しながら、式Iの化合物(1.0×)を反応器Aに添加し、固体が溶解するまで混合した。反応器A中の溶液を、反応器Bに移した。ギ酸(0.08V、0.1×)、酢酸エチル(2V、1.8×)およびメタンスルホン酸(2.0mol当量、0.47×)を、反応器Aに添加した。反応器Bの温度を19〜25℃に維持しながら、反応器A中の溶液を、反応器Bに移した。酢酸エチル(5V、4.5×)を、最低でも1時間かけて反応器Aに添加し、次に反応器Bに添加した。反応器Bの内容物を19〜25℃で約16h撹拌し、次に濾過し、酢酸エチル(4V、3.6×)ですすぎ、真空下で60℃において乾燥させた。
固体を、アセトン(18.9V、15.0×)および水(0.5V、0.5×)と共に反応器Aに移した。ポンプおよびラインを、アセトン(0.9V、0.7×)で反応器Aの方向へすすいだ。反応器Aの内容物を、19〜25℃で混合した。転換をXRPD分析によって監視した。反応混合物を濾過し、アセトン(3V、2.4×)ですすぎ、真空下で60℃において乾燥させて、多形形態3を得た。
(実施例10)
多形形態3の合成
この実施例では、以下の反応スキームに表されている通り、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形体である多形形態3を得る方法を説明する。
メタンスルホン酸(0.56×)および水(0.5×)の混合物を、固体が溶解するまで内容物の温度を約35℃未満に維持しながら、式Iの化合物(1.0×)、アセトン(3.6×)および水(4.0×)の混合物に添加した。溶液を約10分間撹拌し、内容物の温度を、約19〜25℃に調整した。高撹拌下で、アセトン(11.9×)を約2hかけて添加した。この時間が経過した後、内容物の温度を、約0〜6℃に調整した。混合物を、少なくとも約5h撹拌し、濾過し、濾過ケーキをアセトン(4.0×)ですすいだ。湿潤ケーキを、真空下で最大約60℃において乾燥させた。
乾燥固体を反応容器に戻し、アセトン(15.0×)、水(0.5×)およびアセトン(0.4×)を順次添加した。多形形態3の種(0.0147×、1mol%)を添加し、内容物を約32〜38℃に調整し、形態7から形態3への転換がXRDによって完了したとみなされるまで(約24〜60h)撹拌した。スラリーを約19〜25℃まで冷却し、濾過した。濾過ケーキを、アセトン(2.4×)ですすいだ。湿潤ケーキを、真空下で最大約60℃において乾燥させた。
(実施例11)
多形形態3の単結晶X線構造
この実施例は、式Iの化合物のビスメシル酸塩一水和物の多形形態3の単結晶X線構造を記載する。
多形形態3の単結晶X線構造は、三斜晶系、空間群P−1においてRTで決定した。非対称な単位中に、式Iの化合物の1つのカチオン、2つのメシレートアニオンおよび1つの水分子が存在しており、最終R1[I>2σ(I)]=4.53%であった。この形態のための参照としての役目を果たすように、XRPDパターンを結晶構造から計算した(図9)。
構造的特徴
単結晶X線回折による分析に十分なサイズおよび量の結晶を、酢酸イソプロピル中における50℃〜RT、8時間サイクルでの熟成によって得た。結晶は、およそ0.50×0.22×0.15mmの寸法を有するブロック状の形態のものであった。
多形形態3の構造は、図10A、10B、11および12で示すようにして決定した。以下の表5に、多形形態3についての試料および結晶データをまとめる。
(実施例12)
モノMSA中間体を経由する多形形態3のための代替の合成経路
この実施例は、式Iの化合物のモノMSA塩からの多形形態3(これは式Iの化合物のビスMSA塩一水和物の多形体である)の合成の記載を提供するものである。
ギ酸(3.7X)を反応容器に入れ、酢酸エチル(9.7X)と組み合わせる。内容物を撹拌し、約19〜25℃に調整する。内容物の温度を約19〜25℃に維持しながら、式IのモノMSA化合物(1.0X)を分割して入れる。内容物を、すべての固体が溶解するまで約19〜25℃で撹拌する。
上記内容物に、別個の反応容器中で調製した酢酸エチル(0.6X)およびメタンスルホン酸(0.169X、MSA含量、およびモノMSA化合物中に存在する水について補正)の溶液を加える。得られた混合物を、約19〜25℃で約24h撹拌する。反応混合物をサンプリングし、イオンクロマトグラフィーにより、MSA含量について試験する。所望範囲のMSA含量が達成されるまで、撹拌を続行する。反応が完了したら、反応容器の内容物を濾過し、酢酸エチル(3.6X)ですすぎ、湿潤濾過ケーキを真空下、約60℃で乾燥させる。乾燥した固体を反応容器に戻す。
乾燥固体にアセトン(15.0X)を加え、得られた混合物を、最大の撹拌下に置く。水(0.50X)を加え、次いでアセトン(0.70X)を加える。XRPD分析で確認して、多形形態3への形態転換が完了するまで、混合物を約19〜25℃で撹拌する。固体を濾過し、アセトン(2.4X)ですすぎ、湿潤ケーキを真空下、約60℃で乾燥させる。
本明細書を通して、様々な特許、特許出願および他の種類の出版物(例えば、学術論文)が参照されている。本明細書で引用するすべての特許、特許出願および出版物の開示は、すべての目的のために、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
一態様では、処置を必要とする被験体の状態を処置する方法であって、該被験体に、式Iの化合物のビスメシル酸塩もしくはその水和物、または式Iの化合物のビスメシル酸塩もしくはその水和物の多形体、または上記実施形態のいずれかを含む医薬組成物を投与するステップを含み、該状態が、がんおよび自己免疫疾患からなる群から選択される方法が提供される。一部の実施形態では、状態は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(Waldestrom’s macroglobulinemia)(WM)、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)および辺縁帯リンパ腫(MZL)からなる群から選択される。ある特定の実施形態では、状態は非ホジキンリンパ腫である。一変形形態では、NHLは無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)である。別の変形形態では、iNHLは難治性iNHLである。さらに別の変形形態では、iNHLは非FL iNHLである。他の実施形態では、状態は、ぜんそく、関節リウマチ、多発性硬化症およびループスからなる群から選択される。上記実施形態の一部では、被験体はヒトである。
例えば、本発明の実施態様では、以下が提供される。
(項目1)
式Iの化合物:
のビスメシル酸塩またはその水和物。
(項目2)
前記ビスメシル酸塩またはその水和物が、
式IBの化合物:
または
式ICの化合物
または
式IDの化合物
(式中、yは少なくとも0.5である)
である、項目1に記載のビスメシル酸塩。
(項目3)
前記ビスメシル酸塩またはその水和物が、結晶性である、項目1または2に記載のビスメシル酸塩。
(項目4)
13.8、16.9、22.9および26.1の2θ反射(±0.2°2θ)を含むX線回折パターンによって特徴付けられるビスメシル酸塩一水和物の多形体である、項目1から3のいずれか一項に記載のビスメシル酸塩。
(項目5)
前記X線回折パターンが、7.7、12.9、17.7、および18.1の2θ反射(±0.2°2θ)をさらに含む、項目4に記載のビスメシル酸塩。
(項目6)
7.7、12.9、17.7、および18.1の2θ反射(±0.2°2θ)を含むX線回折パターンによって特徴付けられるビスメシル酸塩一水和物の多形体である、項目1から3のいずれか一項に記載のビスメシル酸塩。
(項目7)
前記X線回折パターンが、13.8、16.9、22.9および26.1の2θ反射、(±0.2°2θ)をさらに含む、項目6に記載のビスメシル酸塩。
(項目8)
4.9、9.8および26.7の2θ反射、±0.2°2θを含むX線回折パターンによって特徴付けられるビスメシル酸塩水和物の多形体である、項目1に記載のビスメシル酸塩。
(項目9)
前記X線回折パターンが、15.0および18.0の2θ反射(±0.2°2θ)をさらに含む、項目8に記載のビスメシル酸塩。
(項目10)
15.0および18.0の2θ反射(±0.2°2θ)を含むX線回折パターンによって特徴付けられるビスメシル酸塩水和物の多形体である、項目1に記載のビスメシル酸塩。
(項目11)
前記X線回折パターンが、4.9、9.8および26.7の2θ反射(±0.2°2θ)をさらに含む、項目10に記載のビスメシル酸塩。
(項目12)
図1Aまたは1Bで実質的に示されるようなX線回折パターンによって特徴付けられるビスメシル酸塩一水和物の多形体である、項目1から3のいずれか一項に記載のビスメシル酸塩。
(項目13)
図2Aまたは2Bで実質的に示されるようなX線回折パターンによって特徴付けられるビスメシル酸塩水和物の多形体である、項目1から3のいずれか一項に記載のビスメシル酸塩。
(項目14)
式Iの化合物:
のビスメシル酸塩またはその水和物の多形体であって、項目1から13のいずれか一項に記載のビスメシル酸塩、またはその水和物と生物学的に同等である多形体。
(項目15)
式Iの化合物:
のビスメシル酸塩一水和物の多形形態3を作製する方法であって、
ある量の多形形態3の種および溶媒を、式Iの化合物のビスメシル酸塩水和物の多形形態7に添加して、混合物を形成させるステップと、
前記混合物中で多形形態3を作製するステップと
を含み、
前記多形形態3が、A:13.8、16.9、22.9および26.1、B:7.7、12.9、17.7および18.1、ならびにC:7.7、12.9、13.8、16.9、17.7、18.1、22.9および26.1からなる群から選択される2θ反射(±0.2°2θ)を含むX線回折パターンを有し、
前記多形形態7が、A:4.9、9.8および26.7、B:15.0および18.0、ならびにC:4.9、9.8、15.0、18.0および26.7からなる群から選択される2θ反射(±0.2°2θ)を含むX線回折パターンを有する方法。
(項目16)
前記多形形態3を単離するステップをさらに含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記溶媒がアセトンを含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記溶媒が水をさらに含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
水とアセトンの比が、約1:15〜約1:40である、項目18に記載の方法。
(項目20)
水とアセトンの比が、約1:18〜約1:22である、項目18に記載の方法。
(項目21)
前記混合物を撹拌するステップと、
撹拌した前記混合物を加熱するステップと、
加熱された前記混合物を冷却するステップと
をさらに含む、項目15から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
式Iの化合物:
のビスメシル酸塩一水和物の多形形態3を作製する方法であって、
a)溶媒を式Iの化合物に添加して、混合物を形成させるステップと、
b)ある量のメタンスルホン酸を、ステップ(a)の前記混合物に添加するステップと、
c)ステップ(b)の前記混合物を加熱するステップと、
d)ある量の多形形態3の種を、ステップ(c)の前記混合物に添加するステップと、
e)ステップ(d)の前記混合物を冷却して、多形形態3を作製するステップと
を含み、
前記多形形態3のX線回折パターンが、A:13.8、16.9、22.9および26.1、B:7.7、12.9、17.7および18.1、ならびにC:7.7、12.9、13.8、16.9、17.7、18.1、22.9および26.1からなる群から選択される2θ反射(±0.2°2θ)を含む方法。
(項目23)
前記多形形態3を単離するステップをさらに含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
添加される前記メタンスルホン酸の量が、前記式Iの化合物1モル当量に対して2.0〜2.4モル当量である、項目22に記載の方法。
(項目25)
項目15から24のいずれか一項に記載の方法によって調製された、式Iの化合物:
のビスメシル酸塩一水和物の多形形態3。
(項目26)
項目1から13のいずれか一項に記載の式Iの化合物のビスメシル酸塩もしくはその水和物、または項目14および25のいずれか一項に記載の多形体、ならびに
薬学的担体、添加剤、アジュバントまたはビヒクル
を含む、医薬組成物。
(項目27)
項目1から13のいずれか一項に記載の式Iの化合物のビスメシル酸塩もしくはその水和物、項目14および25のいずれか一項に記載の多形体、または項目26に記載の医薬組成物を含む製造品。
(項目28)
処置を必要とするヒトの状態を処置する方法であって、前記ヒトに、項目1から13のいずれか一項に記載の式Iの化合物のビスメシル酸塩もしくはその水和物、項目14および25のいずれか一項に記載の多形体、または項目26に記載の医薬組成物を投与するステップを含み、前記状態が、がんおよび自己免疫疾患からなる群から選択される方法。
(項目29)
前記状態が、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(MPD)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM)、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)および辺縁帯リンパ腫(MZL)からなる群から選択される、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記状態が、非ホジキンリンパ腫(NHL)である、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記NHLが、無症候性非ホジキンリンパ腫(iNHL)である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記iNHLが、難治性iNHLである、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記iNHLが、非FL iNHLである、項目31に記載の方法。
(項目34)
前記状態が、ぜんそく、関節リウマチ、多発性硬化症、およびループスからなる群から選択される、項目28に記載の方法。