JP2016203570A - 離型シートおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
通常、離型シートは、製品から剥がれやすくするためにポリエステルフィルムなどの基材の表面に、離型剤を含有する樹脂層が設けられている。前記離型剤としては、シリコーン系の離型剤が最も多く使用されている。シリコーン系離型剤を用いた場合、シリコーン系離型剤の中に含まれる低分子量のシリコーン化合物が、製品の表面に移行して残存することがあった。低分子量のシリコーン化合物により、製品の表面が汚染された場合、例えば粘着シートでは実際に使用する際に粘着シートの粘着保持性が低下したり、ゴムシート等については、後の工程で他の材料と接着させる場合に、十分な接着性を得ることが困難となるなどの問題が指摘されていた。
こうした問題点を解決するものとして、本出願人は先に酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体からなる離型シートを提案した(PCT/JP2014/078683)。前記離型シートにおいてもなお、ゴムシートへの離型性が用途によって不十分であり、改善の余地があった。
(1)基材上に樹脂層を設けてなる離型シートであって、樹脂層が、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部と、架橋剤0.1〜50質量部、およびポリビニルアルコール1〜100質量部を含有し、架橋剤がオキサゾリン化合物および/またはカルボジイミド化合物からなることを特徴とする離型シート。
(2)酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するエチレン成分とα−オレフィン成分との質量比(エチレン成分/α−オレフィン成分)が、60/40〜99/1であることを特徴とする(1)記載の離型シート。
(3)α−オレフィン成分が、プロピレンまたは1−ブテンであることを特徴とする(1)または(2)記載の離型シート。
(4)基材が、ポリエステル樹脂フィルムであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の離型シート。
(5)酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部、架橋剤0.1〜50質量部、およびポリビニルアルコール1〜100質量部が水性媒体に分散または溶解されている離型層形成用の水系塗工液。
(6)(1)〜(4)いずれかに記載の離型シートの製造方法であって、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部、架橋剤0.1〜50質量部、およびポリビニルアルコール1〜100質量部が水性媒体に分散または溶解された水系塗工液を基材上に塗工したのち乾燥することを特徴とする離型シートの製造方法。
(7)(6)に記載の離型シートの製造方法であって、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部、架橋剤0.1〜50質量部、およびポリビニルアルコール1〜100質量部が水性媒体に分散または溶解された水系塗工液を、未延伸または一軸延伸後のポリエステル樹脂フィルムに塗工、乾燥したものを、ポリエステル樹脂フィルムとともに配向延伸および熱処理することにより製造することを特徴とする離型シートの製造方法。
本発明の離型シートは、基材と、その上に設けられた樹脂層とから構成される。そして樹脂層は、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と架橋剤とポリビニルアルコールとを含有する。
α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。これらの中でも、経済性の観点や入手のしやすさの観点から、プロピレン、1−ブテンが好ましい。
本発明において、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体は、オレフィン成分全量、すなわちエチレン成分とα−オレフィン成分の合計量に対して、不飽和カルボン酸成分を0.01〜10質量%含有していることが好ましく 、0.05〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜3質量%であることがさらに好ましく、0.2〜2質量%であることが特に好ましい。酸変性成分の含有量が0.01質量%未満の場合、基材との密着性が不十分になったり、架橋剤との反応が不十分となり、耐熱性に劣ることがある。一方、酸変性成分の含有量が10質量%を超える場合、離型性が低下する傾向がある。また、通常エチレン成分を含有するポリオレフィン樹脂を酸変性させる場合、協奏的に架橋反応も進行するために、酸変性量が高いものを製造することは、操業性の観点から、実質的に困難となることがある。
不飽和カルボン酸成分は、エチレン−α−オレフィン共重合体中に共重合されていればよく、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等が挙げられる。
グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜、選択して使用すればよい。
また酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体として、市販のものを用いてもよい。市販の酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体として、三井化学社製タフマーシリーズのMP−0620、MH−7020、MA−8510などが挙げられる。
架橋剤として、オキサゾリン化合物やカルボジイミド化合物以外の架橋剤を用いると、架橋反応が不十分となるため、得られる樹脂層は耐熱性が低下し、熱処理後の離型性が低下する傾向にある。
オキサゾリン基含有ポリマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法は、特に限定されず、公知の種々の重合方法を採用することができる。
オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズが挙げられ、具体的には、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」、固形タイプの「RPS−1005」などが挙げられる。
ポリカルボジイミドの製法は、特に限定されるものではない。ポリカルボジイミドは、例えば、イソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により製造することができる。イソシアネート化合物も限定されるものではなく、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネートのいずれであってもよい。イソシアネート化合物は、必要に応じて多官能液状ゴムやポリアルキレンジオールなどが共重合されていてもよい。
ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズが挙げられ、具体的には、水溶性タイプの「SV−02」、「V−02」、「V−02−L2」、「V−04」、有機溶液タイプの「V−01」、「V−03」、「V−07」、「V−09」、無溶剤タイプの「V−05」などが挙げられる。
ビニルエステルとしては、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に最も好ましい。
本発明の効果を損ねない範囲で、ビニルエステルに対し他のビニル化合物を共重合することも可能である。他のビニル系モノマーとしては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン類などが挙げられる。
市販のポリビニルアルコールとしては、日本酢ビ・ポバール社「J−ポバール」の「JC−05」、「VC−10」、「ASC−05X」、「UMR−10HH」、クラレ社「クラレポバール」の「PVA−103」、「PVA−105」や「エクセバール」の「AQ4104」、「HR3010」、電気化学工業社「デンカ ポバール」の「PC−1000」、「PC−2000」などが挙げられる。
また、本発明において水溶性有機溶媒の沸点は100℃以下であることが好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましく、70℃以下が特に好ましい。沸点が100℃を超えると、後述する脱溶剤処理の際に揮発させることが困難となる。
さらに、水溶性有機溶媒は、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の溶解性が高いことが好ましく、具体的には酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体濃度が1質量%以上で溶解できるものがより好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、3質量%以上が特に好ましく、5質量%以上が最も好ましい。水溶性有機溶媒における酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の溶解濃度が1質量%未満であると、後述する水性媒体に添加する工程において、溶解した酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体が析出する場合がある。また生産性も悪くなる場合がある。
中でも、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、塗れ性改善の観点から好ましく、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールがより好ましい。本発明では、これらの有機溶媒を複数混合して使用してもよい。有機溶媒の含有量は特に限定されないが、塗れ性改善の観点から、水性媒体全体に対し50質量%以下であることが好ましい。
樹脂材料は延伸処理されていてもよい。中でも、基材は、機械的特性および熱的特性に優れるポリエステル樹脂フィルムが好ましく、安価で入手が容易という点からポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
上記熱可塑性樹脂フィルムは、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。熱可塑性樹脂フィルムは、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよく、バリア層や易接着層、帯電防止層、紫外線吸収層などの他の層が積層されていてもよい。その他の材料と積層する場合の密着性を良くするために、熱可塑性樹脂フィルムの表面に、前処理としてコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理等が施されてもよい。
基材として用いることができる合成紙は、その構造は特に限定されず、単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造としては、例えば基材層と表面層の2層構造、基材層の表裏面に表面層が存在する3層構造、基材層と表面層の間に他の樹脂フィルム層が存在する多層構造を例示することができる。各層は、無機や有機のフィラーを含有していてもよいし、含有していなくてもよい。微細なボイドを多数有する微多孔性合成紙も使用することができる。
基材として用いることができる布としては、上述した合成樹脂からなる繊維や、木綿、絹、麻などの天然繊維からなる不織布、織布、編布などが挙げられる。
基材として用いることができる金属材料としては、アルミ箔や銅箔などの金属箔や、アルミ板や銅板などの金属板などが挙げられる。
基材として用いることができるガラス材料としては、ガラス板やガラス繊維からなる布などが挙げられる。
本発明の離型シートは、様々な材料に対して良好な離型性を有することから、様々な材料に対して使用することができる。
粘着材料に対して使用される場合、その取り扱い上、離型性に優れるものが求められており、たとえば、アクリル系粘着材料との剥離強度が0.5N/cm以下であるものが求められている。本発明の離型シートをアクリル系粘着材料に対して使用した場合、アクリル系粘着材料を貼り付けて、放置した後の樹脂層とアクリル系粘着材料との間の剥離強度を、0.5N/cm以下とすることができ、より好ましくは、0.4N/cm以下、さらに好ましくは0.3N/cm以下、最も好ましくは、0.2N/cm以下とすることができる。アクリル系粘着材料との剥離強度が0.5N/cmを超える場合、離型シートを粘着材料から剥離する際に、抵抗を感じたり、粘着材料の表面が荒れることにより、粘着性が低下する場合があるため、アクリル系粘着材料用の離型シートとして使用することが困難となることがある。
さらに、本発明の離型シートは下記のようなシート状構造体に対しても好適に用いることができる。シート状構造体の例としては、ウレタンやフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などのゴムシート、パーフロロスルホン酸樹脂などの高分子電解質などからなるイオン交換膜;誘電体セラミックスやガラスなどからなるセラミックグリーンシートなどが挙げられる。これらは、溶媒でペースト状あるいはスラリー状とした原料を、離型用シート上へキャストすることで形成される。ゴムシートの場合、樹脂や添加剤等を含む成分を溶融させてシート状に成形して、シートを形成してもよい。
シート状構造体を形成した場合も、離型性、耐熱性に優れたものの方が使用上好ましい。被着体と本発明の離型シートとの間の剥離強度が、0.5N/cm以下であることが好ましく、0.4N/cm以下であることがより好ましく、0.3N/cm以下であることがさらに好ましい。
1.酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体
(1)酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の不飽和カルボン酸成分含有量
オレフィン成分全量に対する不飽和カルボン酸成分の含有量は、下記に示す方法(A)または(B)を用いて求めた。
(A):酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体の酸価をJIS K5407に準じて測定し、その値から不飽和カルボン酸の含有量(グラフト率)を次式から求めた。
含有量(質量%)=(グラフトした不飽和カルボン酸の質量)/(原料ポリオレフィン樹脂の質量)×100
(B):赤外吸収スペクトル分析(Perkin Elmer社製フーリエ変換赤外分光光度計 System−2000、分解能4cm−1)を行い、不飽和カルボン酸成分の含有量を求めた。
オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて、1H−NMR、13C−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い、求めた。13C−NMR分析では定量性を考慮したゲート付きデカップリング法を用いて測定した。
JIS K7210(230℃、2160g荷重)に準拠する方法で測定した。
(4)水性分散体の固形分濃度
水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340)を用いて、数平均粒子径(mn)及び重量平均粒子径(mw)を測定した。なお、樹脂の屈折率は1.5とした。
(6)アクリル系粘着剤に対する剥離強度(常温) 得られた離型シートの樹脂層側に、巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B/アクリル系粘着剤)をゴムロールで圧着して、試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、25℃の雰囲気で24時間放置し、剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、粘着テープと離型シートとの剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180℃、剥離速度は300mm/分とした。
試料を放置する条件を、25℃の雰囲気から70℃の雰囲気に変更した以外は上記(6)に記載の方法で剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、粘着テープと離型シートとの剥離強度を、上記(6)に記載の方法で測定した。
上記剥離強度試験により離型シート表面から剥離した巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製No.31B/アクリル系粘着剤)をステンレス板(SUS304 厚さ1mm)に貼付し、2kPa荷重、室温で20時間放置した。その後、ポリエステル粘着テープと離型シートの剥離強度を、25℃の恒温室で引張試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)にて測定した。剥離角度は180度、剥離速度は300mm/分で行った。この測定により得られた剥離強度をF1とする。ステンレス板(SUS304 厚さ1mm)に、巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製No.31B/アクリル系粘着剤)を貼付し、2kPa荷重、室温で20時間放置した。その後、ポリエステル粘着テープと離型シートの剥離強度を、25℃の恒温室で引張試験機(インテスコ社製精密万能材料試験機2020型)にて測定(剥離角度は180度、剥離速度は300mm/分)し、得られた剥離強度をF2とし、下記式を用いて残留接着率を得た。
残留接着率(%)=(F1/F2)×100
粘着テープの粘着剤表面が離型シートにより汚染された場合、粘着テープの再粘着性が低下し、粘着テープとしての性能を損なう。すなわち、残留接着率は高い方が好ましい。
(A)ウレタンゴムシートに対する剥離強度
ミラブルウレタンゴム(デュポン社製アジプレンCM)100質量部に対して、ケッチェンブラック(ライオン社製 EC300J)8質量部、有機過酸化物(日本油脂社製 パークミルD)2質量部、ステアリン酸(花王社製 ルナックS30)0.5質量部を添加し、バンバリーミキサーで十分に混練して、ウレタンゴム成分を調製した。
このウレタンゴム成分を離型シートの上に押し出して、シート状に形成し、プレス成形(180℃、10分間)をした後、二次架橋(120℃、15時間)を行った。
上記、ウレタンゴムシートを積層したシートを、巾50mm、長さ150mmに切り出し、試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、25℃の雰囲気で24時間放置し、剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、ウレタンゴムシートと離型シートとの剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180°、剥離速度は300mm/分とした。
(B)シリコーンゴムシートに対する剥離強度
ポリオルガノシロキサンポリマー(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 TSE2527U)100質量部に対して、有機過酸化物(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 TC−8)0.4質量部、酸化鉄(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 ME−41F)4質量部、カーボンブラック(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 ME−41B)20質量部を、バンバリーミキサーで十分に混練して、シリコーンゴム成分を調製した。
このシリコーンゴム成分を離型シートの上に押し出して、シート状に形成し、プレス成形(170℃、10分間)した後、二次架橋(180℃、4時間)を行った。
上記、シリコーンゴムシートを積層したシートを、巾50mm、長さ150mmに切り出し、試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、25℃の雰囲気で24時間放置し、剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、シリコーンゴムシートと離型シートとの剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180°、剥離速度は300mm/分とした。
得られた離型シートを50mm×50mmの大きさに2枚切り出し、樹脂層と樹脂層反対面とが接触するように重ね合せ、60℃で10kPaの荷重をかけた状態で、24時間放置したあと、荷重を取り除いて室温まで冷却した後、樹脂層と樹脂層反対面との密着状態を調べることで耐ブロッキング性を評価した。
○:2枚のシートに密着が見られない、または、2枚のシートが簡単に剥がれ、樹脂層に白化などの変化が見られない。
×:樹脂層が凝集破壊を起こす、または、2枚のシートを剥がした後の樹脂層が全体的に白くなっている。
P−1:
エチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=75/25質量%)100gを、4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で、130℃に加熱したキシレン400gに溶解させた。次いで、この溶液に、無水マレイン酸のトルエン溶液(5質量%)10gおよびジクミルパーオキサイドのトルエン溶液(10質量%)5gをそれぞれ30分間かけて加え、その後、系内を130℃に保って、4時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥して酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−1を得た。P−1の特性については表1に示した。
P−1の製造において、エチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=75/25質量%)をエチレン−ブテン共重合体(エチレン/1−ブテン=70/30質量%)に変更した以外は、同様の操作を行って酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−2を得た。P−2の特性については表1に示した。
P−1の製造において、エチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=75/25質量%)をエチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=90/10質量%)に変更した以外は、同様の操作を行って酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−3を得た。P−3の特性については表1に示した。
P−1の製造において、無水マレイン酸のトルエン溶液(5質量%)の量を20gに変更した以外は同様の操作を行って酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−4を得た。P−4の特性については表1に示した。
P−1の製造において、エチレン−プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=75/25質量%)をプロピレン−ブテン共重合体(プロピレン/1−ブテン=70/30質量%)に変更した以外は、同様の操作を行って酸変性プロピレン−α−オレフィン共重合体P−5を得た。P−5の特性については表1に示した。
アルケマ社製、ボンダイン「LX−4110」(無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂)を使用した。P−6の特性については表1に示した。
クラレ社製、クラプレン「LIR−403」(酸変性ポリイソプレン、数平均分子量34000、酸価9〜11mgKOH/g)を使用した。P−7の特性については表1に示した。
樹脂層を構成する樹脂としてP−1を、水溶性有機溶媒としてテトラヒドロフラン(沸点66℃、以下、「THF」と示す。)を使用し、25gのP−1と4,975gのTHFを混合、加熱、撹拌することで、P−1の含有量が0.5質量%のP−1溶液を作製した。
次いで、水性媒体として10,000gのイオン交換水を、撹拌機とヒーターを備えた容器に仕込み、撹拌機で撹拌しながら、5,000gの前記P−1溶液を5分間かけて徐々に添加し、イオン交換水とP−1溶液からなる水性分散体を作製した。この時水性分散体は、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体が均一に分散していた(均一に白濁していた)。
得られた水性分散体を、ヒーターで60℃に加熱し、撹拌したまま、容器内を徐々に減圧した。加熱、減圧によって発生した、THFおよび水の蒸気は、容器外で凝縮し、容器外に留去させた。容器内の水性分散体の質量が200g以下となったところで、水性分散体を300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過した。この時濾過後のフィルター上には、未分散物はなかった。濾過後の水性分散体に、イオン交換水を加え、固形分濃度が10質量%となる様に調整した。このようにして、水性分散体E−1を得た。水性分散体E−1の特性は表2に示した。
製造例1において、P−1に変えて、P−2〜P−5をそれぞれ用いた以外は同様の操作を行って、水性分散体E−2〜E−5を得た。水性分散体E−2〜E−5の特性は表2に示した。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂P−6(アルケマ社製、ボンダイン「LX−4110」)、90.0gのイソプロピルアルコール、3.0gのトリエチルアミンおよび147.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとした。そして系内温度を140〜145℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリエチレン樹脂水性分散体E−6を得た。水性分散体E−6の特性は表2に示した。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリイソプレンP−7(クラレ社製、クラプレン「LIR−403」)、60.0gのイソプロパノール、15gのトリエチルアミンおよび165gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌しながら、加熱し、系内温度を120℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリイソプレン水性分散体E−7を得た。水性分散体E−7の特性は表2に示した。
水性分散体E−1と、オキサゾリン化合物の溶液(日本触媒社製、エポクロス「WS−500」、固形分濃度:39質量%)、およびポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製 VC−10 重合度1000、以下「PVA」と称する場合がある)の8質量%水溶液とを、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、オキサゾリン化合物の固形分を10質量部、ポリビニルアルコールが5質量部となるようにそれぞれ添加した水系塗工液を得た。この水系塗工液を、二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製 エンブレット S−50 厚み50μm)基材のコロナ処理面にマイヤーバーを用いてコートし、140℃で15秒間乾燥させて、厚さ0.3μmの樹脂層をフィルム状に形成させた。その後、50℃で二日間エージングを行なうことで、離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
実施例1において、水性分散体E−1に代えて、E−2(実施例2)、E−3(実施例3)、E−4(実施例4)をそれぞれ用いた以外は同様の操作を行って、離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
実施例1において、ポリビニルアルコールの含有量が、それぞれ30質量部(実施例5)、1質量部(実施例6)となるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
実施例1において、オキサゾリン化合物の固形分含有量が20質量部となるようにした以外は同様の操作を行って、離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
実施例1において、オキサゾリン化合物に代えて、ポリカルボジイミド化合物の水性溶液(日清紡社製 「V−10」、固形分濃度40質量%、以下「CI」と称する場合がある)を用いて、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、ポリカルボジイミド化合物固形分が50質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(日本エステル社製、固有粘度0.6)をTダイ備え付けの押出機(75mm径、L/Dが45の緩圧縮タイプ単軸スクリュー)を用いて、シンリンダー温度260℃、Tダイ温度280℃でシート状に押出し、表面温度25℃に調節された冷却ロール上に密着させて急冷し、厚み500μmの未延伸フィルムとした。続いて、90℃で縦方向に3.4倍延伸させた後、グラビアコート機を用いて、水性分散体E−1と、オキサゾリン化合物の溶液(日本触媒社製、エポクロス「WS−500」、固形分濃度:39質量%)、およびポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製 VC−10 重合度1000、以下「PVA」と称する場合がある)の8質量%水溶液とを、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、オキサゾリン化合物固形分が10質量部、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体に対してポリビニルアルコールが5質量部となるようにそれぞれ添加した水系塗工液を、乾燥、延伸後の塗布量が0.2g/m2になるように塗布し、次に温度90℃で2秒間予熱した後、240℃で横方向に3.0倍の倍率で延伸し、離型シートを得た。得られたポリエステルフィルムと樹脂層を合わせた厚みは、50μmであった。得られた離型シートの物性は表3に示した。
実施例9において、ポリビニルアルコールの含有量が、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、100質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
実施例10において、オキサゾリン系化合物の含有量を1質量部にした以外は、同様の操作を行って、離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
実施例9において、水性分散体E−1に代えて、水性分散体E−4を用いて、オキサゾリン系化合物の含有量を50質量部とした以外は同様の操作を行って、離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
実施例1において、水性分散体E−1に代えて、水性分散体E−5を用いた以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
実施例1において、水性分散体E−1に代えて、水性分散体E−6を用いた以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
実施例1において、ポリビニルアルコールを添加しなかった以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
実施例1において、オキサゾリン系化合物を用いなかった以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
実施例1において、ポリビニルアルコールの含有量を120質量部とした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
実施例1において、オキサゾリン系化合物の含有量を60質量部とした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
実施例1において、水性分散体E−1に代えて、水性分散体E−7を用いた以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。得られた離型シートの物性は表3に示した。
酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体P−1をトルエンに溶解させて、2質量%の溶液を作製した。酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体と、オキサゾリン化合物の溶液(日本触媒社製、エポクロス「WS−500」、固形分濃度:39質量%、イソプロピルアルコールで希釈)とを、オキサゾリン化合物の固形分が、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対して、10質量部となるように混合し、さらにポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製 VC−10 重合度1000、以下「PVA」と称する場合がある)の8質量%水溶液を、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部に対してポリビニルアルコールが5質量部となるようにそれぞれ添加し、撹拌した。しかしながら、すぐに液状物は、分離し、均一な塗工液を得ることは出来なかった。
一方、比較例1および2に示すように、本発明外の酸変性ポリオレフィン樹脂を用いた場合、粘着材料との離型性が不十分であった。比較例3〜6のように、本発明で規定する架橋剤の量を外れる場合、粘着剤との離型性が十分でない、または、ゴムシートとの離型性が不十分なものであった。
比較例7のように、イソプレン系の樹脂を用いた場合、粘着テープに対して良好な離型性を示すものの、ゴムシートに対しては、離型性が劣るものであった、また、ブロッキング性に劣るものであった。
比較例8は均一な水系塗工液が得られず、塗工することが出来なかった。
Claims (7)
- 基材上に樹脂層を設けてなる離型シートであって、樹脂層が、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部と、架橋剤0.1〜50質量部、およびポリビニルアルコール1〜100質量部を含有し、架橋剤がオキサゾリン化合物および/またはカルボジイミド化合物からなることを特徴とする離型シート。
- 酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体を構成するエチレン成分とα−オレフィン成分との質量比(エチレン成分/α−オレフィン成分)が、60/40〜99/1であることを特徴とする請求項1記載の離型シート。
- α−オレフィン成分が、プロピレンまたは1−ブテンであることを特徴とする請求項1また2記載の離型シート。
- 基材が、ポリエステル樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の離型シート。
- 酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部、架橋剤0.1〜50質量部、およびポリビニルアルコール1〜100質量部が水性媒体に分散または溶解されている離型層形成用の水系塗工液。
- 請求項1〜4いずれかに記載の離型シートの製造方法であって、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部、架橋剤0.1〜50質量部、およびポリビニルアルコール1〜100質量部が水性媒体に分散または溶解された水系塗工液を基材上に塗工したのち乾燥することを特徴とする離型シートの製造方法。
- 請求項6に記載の離型シートの製造方法であって、酸変性エチレン−α−オレフィン共重合体100質量部、架橋剤0.1〜50質量部、およびポリビニルアルコール1〜100質量部が水性媒体に分散または溶解された水系塗工液を、未延伸または一軸延伸後のポリエステル樹脂フィルムに塗工、乾燥したものを、ポリエステル樹脂フィルムとともに配向延伸および熱処理することにより製造することを特徴とする離型シートの製造方法。
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