JP2016199457A - 合わせ板 - Google Patents

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Abstract

【課題】コーナーエッジにおける割れが低減された、湾曲形状が異なる2枚の板を中間層を介して互いの面が密着するように貼り合わせた合わせ板を提供する。【解決手段】第1湾曲形状に湾曲された第1板と、前記第1湾曲形状とは異なる第2形状である第2板とが中間膜によって接合された合わせ板であって、前記合わせ板は、少なくとも一つのコーナーエッジにおける板厚の標準偏差が0.038mm未満である合わせ板を提供する。【選択図】図6

Description

本発明は、合わせ板に関する。
従来、2枚の板を積層させた合わせ板として、例えば、曲率半径(湾曲形状)が異なる2枚のガラス板を、中間膜を介して互いの面が密着するように貼り合わせた、車両用合わせガラスが知られている(例えば、特許文献1)。
このような合わせガラスは、2枚のガラス板のうちいずれか一方、または2枚のガラス板が互いに弾性変形した状態である。
特許文献1には、端部同士を重ね合わせれば中央部が開いて密着しないが、撓ませれば互いの面が密着する一対のガラス板を貼り合わせることで、ガラス板の周縁部にはガラス板が互いに押し合う力が負荷され、剥離が抑制されたガラス板が開示されている。
特開平11−060293号公報
ところが、本願発明者らの知見によれば、略同一の曲率半径を有する2枚の板を積層した合わせ板に比べて、特許文献1のような合わせ板は、合わせ板のエッジ(辺)のうち特にコーナー部分(以後、コーナーエッジという)における強度が弱く、コーナーエッジに負荷がかかると破損しやすいということが明らかになった。
この問題は、合わせ板において生じる。合わせ板は、第1板と、第2板と、これらを接合する中間膜とを含む。
以上のような背景を鑑み、本発明は、コーナーエッジが破損しにくい合わせ板を提供する。
上記の目的を達成するため、本発明は、
第1湾曲形状に湾曲された第1板と、前記第1湾曲形状とは異なる第2形状である第2板とが中間膜によって接合された合わせ板であって、
前記積層板は、第1コーナーエッジにおいて、しわを有さないことを特徴とする合わせ板を提供する。
本発明によれば、コーナーエッジが破損しにくい合わせ板を提供することができる。
摺動する車両用合わせガラス板が車両に組み付けられた状態を示す構成図 第1ガラス板と第2ガラス板とを貼り合わせる前の図 本実施形態の車両用合わせガラス板の斜視図 本実施形態の車両用合わせガラス板の平面図 コーナーエッジの定義を示す図 コーナーが面取りされている場合のコーナーエッジの定義を示す図 本実施形態のコーナーエッジをYZ平面で観察した模式図 本実施形態のコーナーエッジをXZ平面で観察した模式図 本実施形態に係る車両用合わせガラス板の製造装置の模式図 ガラス板の周縁に沿って溶着部を形成した例を示す図 全体としてT字状を形成するようにガラス板に溶着部を形成した例を示す図 ガラス板の周縁の2辺に沿ってL字状に溶着部を形成した例を示す図 ガラス板に十字に溶着部を形成した例を示す図 ガラス板の中央部のみに溶着部を形成した例を示す図
以下、図面を用いて、本発明に係る合わせ板具体的な実施の形態について説明する。
なお、形態を説明するための図面において、図内左下に矢印で座標を定義しており、必要があればこの座標を用いて説明する。また、本明細書において「X方向」とは、X座標を示す矢印の根元から先端に向かう方向だけでなく、180度反転した先端から根元に向かう方向も指すものとする。「Y方向」「Z方向」も同様に、それぞれY、Z座標を示す矢印の根元から先端に向かう方向だけでなく、180度反対とした先端から根元に向かう方向も指すものとする。なお、X方向は第1方向、Y方向は第2方向ともいう。
また、本明細書において、「平行」、「垂直」などの用語は、本発明の効果を損なわない程度のズレを許容するものである。例えば、厳密な意味での平行、垂直の位置関係を基準として、±5°程度の誤差は許容する。
また、本明細書において、上下左右は、特に指示しない場合には参照している図面上の向きを指しているものとし、図面は参照符号が読める向きに見るものとする。
なお、本明細書において、以下合わせ板の代表例として、合わせガラスの場合、特に上下に摺動する車両サイドドア用合わせガラスについて説明するが、合わせ板は摺動する合わせガラスに限定されない。例えば、車両のフロントガラスやルーフガラスのような嵌め殺しの窓に適用する合わせガラスであっても良い。
また、合わせガラス自体に限定されるものではない。例えば、ポリカーボネートなどの樹脂板体を貼り合わせた合わせ板であってもよく、車両ボディーのピラーとそのピラーをカバーするように貼り合わせる化粧板との組み合わせによる合わせ板であってもよい。さらに、電子機器用カバーガラス等にも好適に用いられる。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である、摺動する車両用合わせガラス板102が車両に組み付けられた状態を示す構成図である。
本実施形態において、車両用合わせガラス板102は、車両のドアに装着されるものであって、昇降装置120により、窓枠130に沿って上下に昇降されるものである。特に、窓枠130のうち、車両用合わせガラス板102の側辺を支持する部分をガラスラン131ともいう。昇降装置120は、アーム式レギュレータであり、二本のアーム121、122、昇降レール123、固定レール124及びレギュレータなどから構成されている。なお、図中の破線は車両のドアの開口部の下端の位置(ベルトライン)を模式的に示している。
二本のアーム121、122は、支点125を軸にして回動可能に互いに連結されている。昇降レール123は、水平方向に延在しており、車両ドアに対して上下に昇降可能なレールである。アーム121、122の上端は共に、昇降レール123に水平方向にスライド可能に取り付けられている。また、固定レール124は、水平方向に延在しており、車両ドアに対して固定されたレールである。アーム121の下端は、固定レール124に水平方向にスライド可能に取り付けられており、アーム122の下端は、ギヤ126を介してレギュレータに接続されている。係る構成において、レギュレータを介してギヤ126が駆動されると、アーム121、122が支点125を軸にして回動することで、昇降レール123が昇降される。なお、昇降装置120はこの構成に限定されず、ワイヤーを用いた昇降装置であってもよい。
車両用合わせガラス板102は、下辺103にホルダ127が装着され、昇降装置120の昇降レール123に取り付けられる。
このような状態で車両用合わせガラス板102を上下に摺動させて窓の開閉を行ったとき、車両用合わせガラス板102の上辺104は、開放時に露出する辺であり、露出した上辺104には、乗員が寄りかかった際や、半開状態で高速走行した際に負荷がかかることがしばしばある。特にガラスランに固定された端部A、Bのコーナーエッジには、負荷が集中し、これらの外力に耐え得るだけの十分な強度が求められている。
また、上辺104には、窓を閉じる際の異物の挟み込みなどによって局所的な外力がかかることもある。
また、車両用合わせガラス板102の側辺105は、昇降時にガラスラン131と擦れ合う辺であり、ガラスラン131との摩擦による負荷が生じる。特に、下側に摺動する場合には、端部C、Dの2か所のコーナーエッジに大きな負荷が掛かり、上側に摺動する場合には、端部A、Bの2か所のコーナーエッジに大きな負荷がかかる。
また、ガラスラン131に砂や小石などの異物が入り込み、それらを巻き込みながら車両用合わせガラス板102が昇降した場合には、側辺105全体に負荷がかかる。
また、車両用合わせガラス板102の下辺103は、摺動の動力源となる昇降装置120が取り付けられる辺であり、昇降装置120の駆動によって負荷がかかる。
このように摺動窓の周縁には様々な外力が加わり、特にコーナーエッジには負荷が集中するため、十分な強度を有することが必要である。
図2は、第1ガラス板と第2ガラス板とを貼り合わせる前の図、図3Aは本実施形態の車両用合わせガラス板102の斜視図、図3Bは本実施形態の車両用合わせガラス102の平面図、図4はコーナーエッジの定義を示す図、図5はコーナーが面取りされている場合のコーナーエッジの定義を示す図、図6は本実施形態のコーナーエッジをYZ平面で観察した模式図、図7は本実施形態のコーナーエッジをXZ平面で観察した模式図である。
本実施形態の車両用合わせガラス板102は、第1湾曲形状に湾曲された第1ガラス板201と、第1湾曲形状とは異なる第2形状である第2ガラス板202とを備え、それらが中間膜301によって接合される。
第1ガラス板201は、中間膜301とは反対側に配される第1主表面211と、中間膜301に接する第2主表面212とを有する。また、第2ガラス板202は、中間膜301に接する第3主表面213と、中間膜301とは反対側に配される第4主表面214とを有する。また、中間膜は301、第2主表面212と第3主表面213との間に配置され、第2主表面212と第3主表面213を接合することで、合わせガラス102が構成される(図3A)。
仮に中間膜による第1ガラス板201と第2ガラス板202との接合が解除される場合、第1ガラス板201および第2ガラス板202は接合前の自然状態に戻る。このとき、図2の如く、横断面に対応する断面および縦断面に対応する断面の両方において、第2主表面202は、第3主表面よりも小さい曲率半径を有する場合がある。
第1主表面211の重心における法線を含む断面のうち、第1主表面211の曲率半径が最大となる断面を横断面、横断面に直交する断面を縦断面と呼ぶ。横断面に沿った方向を第1方向と、第1方向に直行する方向すなわち縦断面に沿った方向を第2方向とする。例えば、第1方向は図2のY方向、第2方向はX方向などであってよい。
このような接合状態の場合、接合状態の第4主表面214には、その外周の少なくとも一部に曲げ圧縮応力が生じている。その部位において表面に傷がつきにくくなる。
なお、各断面における曲率半径とは、第1主表面211の両端及び第1主表面の重心の3点を通る円の半径で代表してもよい。第1主表面211の両端の間に、湾曲部分のみならず、平坦部分があってもよい。
第1ガラス板201の板厚は1.5mm以上4.0mm以下であり、第2ガラス板202の板厚は0.2mm以上1.0mm未満とすることが好ましい。
第1ガラス板201の板厚は、より好ましくは1.8mm以上3.5mm以下、さらに好ましくは2.0mm以上3.0mm以下である。
また、第2ガラス板202の板厚は、より好ましくは0.2mm以上0.9mm以下、さらに好ましくは0.3mm以上0.8mm以下である。
また、第1ガラス板201の板厚と、第2ガラス板202との板厚との比は、好ましくは0.1以上0.5以下、より好ましくは0.15以上0.4以下である。
このようにすることで、両者を貼り合わせた際に、第1ガラス板201の弾性変形量を第2ガラス板202よりも小さくすることができる。すなわち、あらかじめ、第1ガラス板201を車体ボディーに組み付ける湾曲形状に成型しておくことで、車両用合わせガラス板102とした際、車体ボディーに組み付ける湾曲形状とのズレを低減することができる。
さらに、第1ガラス板201の板厚を第2ガラス板202よりも厚くすることにより、第1ガラス板201によって車両用合わせガラス板102に必要な剛性を確保しつつ、第2ガラス板202の板厚を小さくすることで、車両用合わせガラス102を軽量化することができる。第1ガラス板201は、板厚または組成などにより、第2ガラス板202よりも高い剛性を有することが好ましい。
車両用合わせガラス板102とした際に、第2ガラス板202の面積は、第1ガラス板201の面積よりも小さくてもよい。
例えば、車両用合わせガラス板102の全周において、第2ガラス板202の周縁が、第1ガラス板201の周縁よりも面内側に存在していてもよい。
また、下辺103のみ等、一部の辺のみ、第2ガラス板202の周縁が、第1ガラス板201の周縁よりも面内側に存在していてもよい。
さらに、ホルダ127の設置箇所等、辺の一部のみ、第2ガラス板202の周縁が、第1ガラス板201の周縁よりも面内側に存在していてもよい。
このように第2ガラス板202の周縁が、第1ガラス板201の周縁よりも面内側に存在することで、車両用合わせガラス102のエッジに外力がかかった際、第1ガラス板201よりも板厚が薄く強度が小さい第2ガラス板202のエッジには、外力がかかりにくくすることができる。すなわち、車両用合わせガラス102のコーナーエッジを破損しにくくすることができる。
図2において、第1湾曲形状は、第1方向(例えばY方向)と、Y方向に直行する方向である第2方向(X方向)との両方向に湾曲した複曲形状である。
第1湾曲形状をこのような複曲形状にすることで、意匠性に優れた車両用窓ガラスが作成でき、車両デザインの多様なニーズに対応できる。
特に、従来の湾曲形状が異なる2枚の板を中間膜を介して互いの面が密着するように貼り合わせた合わせガラスは、第1湾曲形状が複曲形状であると、車両用合わせガラス板102とした際にコーナーエッジのエッジ強度が弱くなりやすいが、本実施形態においては、コーナーエッジを破損しにくくすることができる。詳細は後述する。
ただし、第1湾曲形状は、本実施形態に限定されず、例えば、X方向またはY方向のいずれか一方のみに湾曲した単曲形状(シリンドリカル)であってもよい。
図2において、第2ガラス板202は、湾曲されていない平板状である場合を示す。ただし、第2ガラス板202は、本実施形態に限定されず、X方向またはY方向のみに湾曲していてもよく、X方向とY方向の両方に湾曲していてもよい。
すなわち、第2形状とは、第1湾曲形状と異なる形状であればよい。第3主表面213の重心における法線を含む断面のうち、任意の一つの断面における、第3主表面の曲率半径が、同一方向かつ第1主表面211の重心を通る断面における、第1主表面211の曲率半径よりも、大きくてよく、小さくてもよい。また平板状(曲率半径が無限大)の場合も含む。平板状であれば、第2形状を曲げ成形する必要がなくなり、製造が容易となる。
また、本実施形態において、第2ガラス板202が、X方向及び/またはY方向に湾曲し、第1湾曲形状の曲率半径に近い曲率半径を有している場合、第2ガラス板の弾性変形量が小さくなるため、車両用合わせガラス102とした際のエッジ強度の低下を抑制できる。
特に、第1湾曲形状が複曲形状の場合、X方向とY方向のうち、より曲率半径が小さいいずれかの方向だけでも、第2ガラス板202が第1湾曲形状の曲率半径に近い曲率半径に湾曲されていれば、車両用合わせガラス102とした際の第2ガラス板の弾性変形量が小さくなるため、車両用合わせガラス102とした際のエッジ強度の低下を抑制できる。
好ましくは、第3主表面213の重心における法線を含む断面のうち、任意の一つの断面における、第3主表面の曲率半径が、同一方向かつ第1主表面211の重心を通る断面における、第1主表面211の曲率半径の値を中心として、大小それぞれ5倍の範囲以内、より好ましくは4倍の範囲以内、さらに好ましくは3倍の範囲以内である。車両用合わせガラス102とした際のエッジ強度の低下を抑制できる。なお、「任意の一つの断面」とは、第1方向であってよい。
また、好ましくは、第3主表面213の重心における法線を含む断面のうち、任意の一つの断面における、第3主表面の曲率半径が、同一方向かつ第1主表面211の重心を通る断面における、第1主表面211の曲率半径の値を中心として、大小それぞれ1.1倍の範囲以外、より好ましくは1.3倍の範囲以外、さらに好ましくは1.5倍の範囲以外である。第2ガラス板202の成形のばらつきを許容できる。また、第2ガラス板202は、第1ガラス板201よりも大様な曲げ成形でよくなる。あるいは第2ガラス板202は、曲げ成形しなくてよくなる。なお、「任意の一つの断面」とは、第1方向であってよい。
本実施例において、第2ガラス板202は、化学強化されたガラス板であることが好ましい。すなわち、本実施形態で使用されるガラス板は、イオン交換可能なものであれば特に限定されず、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス等から適宜選択して使用することができる。
本実施形態で使用されるガラス板の組成の一例としては、酸化物基準のモル%で表示した組成で、SiOを50〜80%、Bを0〜10%、Alを0.1〜25%、LiO+NaO+KOを3〜30%、MgOを0〜25%、CaOを0〜25%、SrOを0〜5%、BaOを0〜5%、ZrOを0〜5%及びSnOを0〜5%含むガラスが挙げられるが、特に限定されない。より具体的には、以下のガラスの組成が挙げられる。なお、例えば、「MgOを0〜25%含む」とは、MgOは必須ではないが25%まで含んでもよい、の意である。
(i)モル%で表示した組成で、SiOを63〜73%、Alを0.1〜5.2%、NaOを10〜16%、KOを0〜1.5%、MgOを5〜13%及びCaOを4〜10%を含むガラス。
(ii)モル%で表示した組成で、SiOを50〜74%、Alを1〜10%、NaOを6〜14%、KOを3〜11%、MgOを2〜15%、CaOを0〜6%及びZrOを0〜5%含有し、SiO及びAlの含有量の合計が75%以下、NaO及びKOの含有量の合計が12〜25%、MgO及びCaOの含有量の合計が7〜15%であるガラス。
(iii)モル%で表示した組成で、SiOを68〜80%、Alを4〜10%、NaOを5〜15%、KOを0〜1%、MgOを4〜15%及びZrOを0〜1%含有するガラス。
(iv)モル%で表示した組成で、SiOを67〜75%、Alを0〜4%、NaOを7〜15%、KOを1〜9%、MgOを6〜14%及びZrOを0〜1.5%含有し、SiO及びAlの含有量の合計が71〜75%、NaO及びKOの含有量の合計が12〜20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス。
(v)モル%で表示した組成で、SiOを60〜70%、Bを0〜10%、Alを8〜15%、NaOを10〜17%、KOを0〜3%、MgOを0〜10%、CaOを0〜1%、ZrOを0〜1%含有し、SiO及びAlの含有量の合計が76〜81%、NaO及びKOの含有量の合計が13〜16%であるガラス。
また、第2ガラス板202は、透明であることが好ましい。それによって、第2ガラス板202で近赤外線の低波長領域を吸収しないため、後述する本願の第1実施形態の製造時に、中間膜を十分加熱することができる。ここで、「透明」であるとは、可視光線透過量が80%以上であることを指す。また、第2板が透明であることで、第2板が第1板をコーティングしたような独特な質感が得られ、意匠上優れた合わせ板が得られる。
第1ガラス板201は、特に限定されないが、重量%で表示した組成で、SiOを65〜75%、Alを0.1〜5%、CaOを5〜10%、MgOを2〜5%、NaOを10〜15%、KOを0〜3%、Feを0.2〜3%含むガラスであれば、近赤外線の低波長領域を吸収できるため、特に好ましい。
中間膜301の組成は、従来の車両用合わせガラスに一般に用いられるものでよく、例えばポリビニルブチラール(PVB)やエチレンビニルアセタール(EVA)等を用いることができる。また、加熱前は液状である熱硬化性樹脂を用いてもよい。すなわち、中間膜は合わせガラスとした状態の時に膜状であればよく、ガラス板の接合前の状態で中間膜が液状などであっても良い。
また、中間膜の厚みは、例えば0.5mm以上4mm以下のものが好適に用いられる。
また、赤外線吸収剤を配合させた中間膜を用いてもよい。赤外線吸収剤の材質としては、例えばSn、Sb、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、Cs、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moの金属、酸化物、窒化物、硫化物、またはこれらにSbもしくはFをドープしたドープ物からなる微粒子などが例示される。これらの微粒子を単独または複合物として使用することができる。また、これらの単独物または複合物を有機樹脂に混合した混合物、またはこれらの単独物または複合物を有機樹脂で被覆した被覆物を用いてもよい。また、赤外線吸収剤として、着色剤や染料、有機物(フタロシアニン、ナフタロシアニン)などを用いても良い。
また、中間膜はHUD(Head Up Display)用の断面が楔状でもよい。また、厚み方向に、異なる粘弾性を有する中間膜などを複数重ねた複層構造でもよい。
本実施形態において、車両用合わせガラス102は、コーナーエッジ401にしわを有さない。これにより合わせガラス102とした際のエッジ強度の低下を抑制できる。特に、合わせガラス102のうち、第2ガラス板202にしわを有さないことが好ましい。合わせガラス102が破損しにくくなる。なお、本明細書における「しわ」とは、ガラス板に局所的に生じる、板厚方向の変形を意味する。
また、本実施形態における車両用合わせガラス102のコーナーエッジ401における板厚の標準偏差は、0.038mm未満であることが好ましく、より好ましくは0.035mm以下、さらに好ましくは0.030mm以下であり、さらに好ましくは0.020mm以下である。
また、コーナーエッジにおける板厚の最大値と最小値の差は、0.1mm未満であることが好ましく、より好ましくは0.095mm以下、さらに好ましくは0.072mm以下、さらに好ましくは0.046mm以下である。
ここで、本明細書において、コーナーエッジ401とは、図4で示す通り、車両用合わせガラス102のエッジのうち、端部AからX方向に距離402及びY方向に距離403だけ離れた点までの範囲を指す。すなわち、図4においてコーナーエッジとは距離402+距離403となる。同様に、端部B、C、Dのコーナーエッジも端部B、C、DからX方向及びY方向に所定距離離れた点までの範囲である。この距離402、403は、例えばそれぞれ25mmである。
なお、端部Aが面取りされていた場合は、図4に示す通り、車両用合わせガラス102のエッジのうち、面取りによって形成されたRの孤の長さ404と、面取りによって形成されたRの接線の傾きが0になる点EからX方向に距離402、及びY方向に距離403離れた点までの範囲を指す。すなわち、図5におけるコーナーエッジとは、距離402+孤の長さ404+距離403となる。端部B、C、Dについても同様である。
コーナーエッジ401における合わせガラス102の板厚は、例えばガラス板の周縁312から面内方向へ5mmの位置をコーナーエッジ401に沿って5mm間隔で測定する。
さらに、本明細書において、コーナーエッジ401における板厚の最大値及び最小値とは、例えばコーナーエッジ401を5mm間隔で11点測定した中で、最大値と最小値を判断するものとする。
車両用合わせガラス102のコーナーエッジ401における板厚の標準偏差を上記のような値範囲とすることで、合わせガラス102とした際のエッジ強度の低下を抑制できる。
また、コーナーエッジにおける板厚の最大値と最小値の差を上記のような値とすることで、合わせガラス102とした際のエッジ強度の低下を抑制できる。
この理由は、以下のように考えられる。
本実施形態において、車両用合わせガラス102の第2ガラス板202は、中間膜301によって、元々の形状とは異なる形状である第1湾曲形状に沿うよう、強制的に弾性変形させられる。その結果、接合状態の第4主表面214には、その外周の少なくとも一部に曲げ圧縮応力が生じる。通常はその部位について表面に傷がつきにくくなるが、その曲げ圧縮応力が大きすぎると、その箇所において、しわが生じると考えられる。例えば、図6に示すように、第2ガラス板202の一部分がしわ602を備える。なお、図6のしわ602は、正確な縮尺ではなく、説明のために強調して図示している。また、しわ602は第4主表面214に対して凸状に変形しているが、凹状に変形したものでもよい。
ここで、しわ602には、局所的に第2ガラス板202に引張応力が生じていると考えられ(引張応力部601)、この引張応力部601が第2ガラス板202に形成されると、その引張応力部601において、局所的にエッジ強度が低下する。
すなわち、図6で示すように端部Aのコーナーエッジ401のうち、上辺に沿ったY方向に引張応力部601が存在する場合、開放時に乗員の寄りかかりや高速走行した際の負荷が、コーナーエッジ401に集中した際に、元々引張応力が形成されている引張応力部601が割れやすく、コーナーエッジ401のエッジ強度の低下を招いていると考えられる。
なお、このような第2ガラス板のしわは、第1湾曲形状が複曲であれば特に発生しやすく、引張応力部601が形成されやすいためエッジ強度が低下しやすい。
本実施形態においては、車両用合わせガラス102のコーナーエッジ401における板厚の標準偏差は、0.038mm未満、好ましくは0.035mm以下、より好ましくは0.03mm以下、さらに好ましくは0.02mm以下であるため、引張応力部601の形成を抑制するとともに、引張応力部601が形成されていたとしても、その引張応力の値を低くすることができる。その結果コーナーエッジ401における割れを低減することができる。
また、コーナーエッジ401における板厚の標準偏差が0.038mm未満の範囲で凸変形部602を備えることによって、第2ガラス板202は、第2ガラス板の第2形状とは違う、第1湾曲形状に追従するように変形することが可能となる。
また、本実施形態のように、合わせ板が窓用板である場合、コーナーエッジ401近傍に透視歪が存在すると、その部分で窓用板を隔てて見た景色が歪んで見えるため、外観品質が好ましくない。コーナーエッジ401における板厚の標準偏差を0.03mm以下、より好ましくは0.02mm以下とすることで、コーナーエッジ401近傍における透視歪も改善でき、より品質の高い車両用合わせガラス102を得ることができる。
また、図7で示すように端部Aのコーナーエッジ401のうち、側辺に沿ったX方向に引張応力部601が存在する場合、図1のように車両に組み付けた車両用合わせガラス102を、ガラスラン131に沿ってX方向上方へ摺動させた際に、ガラスラン131との摩擦によって、引張応力部601に負荷がかかり割れやすく、コーナーエッジ401のエッジ強度の低下を招いていると考えられる。
また同様に、ガラスラン131の溝内に砂などが入りこんでいた場合も、その砂との接触や巻き込んでの摺動によって、引張応力部601に負荷がかかり割れやすく、コーナーエッジ401のエッジ強度の低下を招いていると考えられる。
一方、摺動窓でなく、例えば嵌め殺し窓の場合、モールディングと呼ばれる樹脂枠体を射出成型でガラス周縁部313に成型するが、従来例である、湾曲形状が異なる2枚の板を中間膜を介して互いの面が密着するように貼り合わせたガラス板の場合、射出成型時に合わせガラス板が割れる場合があった。また、車体への組み付け時の圧力でも割れる場合があった。
これは、引張応力部601がコーナーエッジ401及びガラス板の周縁312に形成されていることで、射出成型時の圧力がしわ602を潰すように働くため、引張応力部601により大きな引張応力が生じ、コーナーエッジ401及びガラス板の周縁312において、割れが発生していたと考えられる。
ここで、周縁部313とは、図3Bの斜線で示す領域を示し、例えば、車両用合わせガラス102の周縁312から面内方向に20mmの領域である。
これらの場合に対しても同様に、車両用合わせガラス102のコーナーエッジ401における板厚の標準偏差を車両用合わせガラス102のコーナーエッジ401における板厚の標準偏差は、0.038mm未満、好ましくは0.035mm以下、より好ましくは0.03mm以下、さらに好ましくは0.02mm以下であるため、引張応力部601の形成を抑制するとともに、引張応力部601が形成されていたとしても、その引張応力の値を低くすることができる。その結果コーナーエッジ401における割れを低減することができる。
また、合わせガラス102の周縁において、板厚の標準偏差が0.02mm以下の範囲で、波状変形部を備えてよい。第2ガラス板202は、第2ガラス板の第2形状とは異なる第1湾曲形状に追従するように変形することが可能となる。本明細書において波状変形部とは、しわよりも緩やかな、板厚方向の変形を指す。波状変形部は例えば第4主表面214に対して凸状または凹状に形成されてよい。波状変形部は複数連続して形成されていてもよく、単独で形成されていてもよい。
さらにまた、コーナーエッジ401における板厚の標準偏差を0.03mm以下、より好ましくは0.02mm以下とすることで、コーナーエッジ401近傍における透視歪も改善でき、より品質の高い車両用合わせガラス102を得ることができる。
本実施形態のように、端部Aのコーナーエッジのみでも板厚の標準偏差が0.038mm未満とすることで、端部Aにおいて合わせガラス102とした際のエッジ強度の低下を抑制でき、コーナーエッジ401における破損を低減することができる。例えば、車両用合わせガラス102の組み付けによって、端部Aのみ負荷が集中しやすい環境下にある場合などに効果がある。
また、隣り合う2つのコーナーエッジにおける板厚の標準偏差が0.038mm未満であれば、好ましい。例えば、端部Aと端部Bの板厚の標準偏差が0.038mm未満であれば、開放時に乗員の寄りかかりや高速走行した際の負荷に対する割れを抑制することができ、端部Aと端部Dの板厚の標準偏差が0.038mm未満であれば、昇降時におけるガラスラン131から受ける負荷に対する割れを抑制することができる。
特に、ガラスラン131は窓を半開状態で走行した場合、砂などの異物が溜まりやすいため、端部Aと端部Dの板厚の標準偏差が0.038mm未満であれば、コーナーエッジ401における割れを低減することができる
この場合、端部Aを第1コーナーエッジとして、端部Bまたは端部Dを、第1コーナーエッジに隣り合う第2コーナーエッジとする。
さらに、一つのコーナーエッジ401を第1コーナーエッジとしたとき、第1コーナーエッジと、第1コーナーエッジと隣り合う2つのコーナーエッジ(第2コーナーエッジと第3コーナーエッジ)の板厚の標準偏差が0.038mm未満であれば、よりコーナーエッジ401における割れを抑制することができるため好ましい。
またより好ましくは、全てのコーナーエッジで板厚の標準偏差が0.038mm未満であれば、全てのコーナーエッジの割れを抑制することができるため好ましい。
また、いずれか一辺においての板厚の標準偏差が0.038mm未満であれば、コーナーエッジのみならず、周縁312の割れも低減できるため、さらに望ましい。例えば、窓を閉じる際の異物の挟み込みなどによって局所的な外力がかかることがある上辺104の板厚の標準偏差が0.038mm未満であれば、合わせガラス102とした際のエッジ強度の低下を抑制でき、破損を抑制することができる。
車両用合わせガラスの一辺の板厚は、例えば、合わせガラスの周縁312から5mm内側の箇所の板厚を、一辺の周縁312に沿って5mm間隔で測定する。
また、周縁部313より面内側を占有する面内領域314において、板厚の標準偏差が0.03mm以下、より好ましくは0.02mm以下である。このような値とすることで、面内領域314において、運転者や乗り手が不快に感じる透視歪が低減された、品質の優れた車両用合わせガラス102が得られる。
また、特に車両用合わせガラス102の2つの辺が交わる角度θ(以下、コーナーエッジの角度θという)が90°以下、より好ましくは80°以下のコーナーエッジにおいて、板厚の標準偏差が0.038mm未満であれば、よりコーナーエッジを破損しにくくする効果が大きくなる。
コーナーエッジの角度θが90°以下のコーナーエッジでは、特にコーナーエッジからの割れが発生しやすいためである。
コーナーエッジの角度とは、図5のように端部が面取りされていた場合には、コーナーエッジを形成する2つの辺の延長線が交わる角度とする。
また、本実施形態の合わせガラス102に、有機ELなどの表示部材を封入してもよい。本実施形態のように第2ガラス板202の板厚が薄く、剛性が低い形態であれば、封入の際に表示部材又は合わせガラス102が破損しにくいため、好適に用いられる。第2ガラス板202が表示部材の形状になじむためと考えられる。
また、第2ガラス202側から表示部材を視認するように、合わせガラス102に表示部材を封入する場合、第1ガラス板201は可視光線透過率の低いガラスであってよい。背景となる第1ガラス板201の可視光線透過率が低いため、表示部材が見やすくなる。また、第1ガラス板201側から表示部材が見えづらくなる。
(第1実施形態の製造方法・製造装置)
図8は、本願の第1実施形態に係る車両用合わせガラスの製造装置の模式図の一例を示した図である。
第1吸着パッド801は第1ガラス板201を第1湾曲形状で支持し、第2吸着パッド802は、不図示の昇降駆動部に連結され、第2ガラス板202の面が中間膜301を介して第1ガラス板201の面と接触するように押圧する。
溶着ヘッド804は、周囲に押し付けユニット803を備え不図示の昇降駆動部に連結される。溶着ヘッド804は第2吸着パッドと同様に、第2ガラス板202の面が中間膜301を介して第1ガラス板201の面と接触するように押圧しながら、近赤外線のうち低周波長領域を照射することにより、中間膜301を加熱し、第1ガラス板201及び第2ガラス板202と中間膜301とを接合する。第1ガラス板201及び第2ガラス板202と中間膜301が、安定して接合されるため、合わせガラス102とした際にしわが生じにくくなる。
近赤外線のうち低周波長領域を照射するための光源としては、特に限定はないが、ハロゲンヒータ、ハロゲンランプ、赤外線乾燥用ランプ、近赤外線領域の光を発する発光ダイオード、半導体レーザー、Nd−YAGレーザー、色素レーザー、Tiドープサファイアレーザー等であってもよい。
本実施形態において、近赤外線のうち低波長領域とは、例えば700nm以上1500nm以下の波長の範囲を指す。
なお、光源としては、近赤外線のうち低周波領域の光を含んでいればよく、それ以外の波長の光を含んでいてもよい。
冷却装置805は、溶着ヘッド804で溶着した部分を急冷する。冷却装置としては、例えば、常温または冷却された気体を吹き付ける構成でもよく、常温または冷却された固体をガラス表面に接触させて急冷する構成であってもよい。冷却装置805は、第1ガラス板201側に設けられていても良い。第1ガラス板201及び第2ガラス板202と中間膜301が、安定して接合されるため、合わせガラス102とした際にしわが生じにくくなる。
また、第1吸着パッド801、第2吸着パッド802、押し付けユニット803、溶着ヘッド804、冷却装置805は、水平方向に移動する移動手段を備えていてもよい。ガラス板の形状に応じて適切な位置を溶着できる。
本発明の車両用合わせガラス102の製造方法の具体例としては、まず、第1ガラス板201を第1湾曲形状に成型する。その後第1ガラス板201を第1吸着パッド801上に載置し、その上に適切な形状に裁断した中間膜301を位置決めして載置する。さらに中間膜301上に第2形状(未成型の平板状を含む)の第2ガラス板202を位置決めして載置する。
次に、第1吸着パッド801と第2吸着パッド802で第1ガラス板201、中間膜301及び第2ガラス板202の面が接着するように押圧し、押し付けユニット803で、溶着ヘッド804から近赤外線を照射する部位の周囲の第1ガラス板201、中間膜301及び第2ガラス板202をさらに押圧しながら、溶着ヘッド804から近赤外線を照射して溶着する。第1ガラス板201及び第2ガラス板202と中間膜301が、安定して接合されるため、合わせガラス102とした際にしわが生じにくくなる。
以下に第1ガラス板201、中間膜301、第2ガラス板202の具体的な構成を示す。
第1実施形態の車両用合わせガラスを車両フロント用合わせガラスとして用いる場合、本実施形態における第1ガラス板、第2ガラス板、中間膜の光学特性は、例えば、以下であることが好ましい。
すなわち、第2ガラス板202のエネルギー透過率(Te)が80%以上であり、かつ合わせガラス全体としての可視光線透過率(Tv)が70%以上であり、かつ第1ガラス板のエネルギー透過率(Te)が30%以上70%以下、より好ましくは40%以上60%以下である。
このようなガラス板の構成とすることで、車両用合わせガラス102全体としては、フロントガラスに求められる可視光線透過率を確保しつつ、主に第1ガラス板201が近赤外線を吸収し、中間膜301を伝熱によって加熱できる。
また、第2ガラス板のエネルギー透過率(Te)が80%以上であり、かつ合わせガラス全体としての可視光線透過率(Tv)が70%以上であり、中間膜に赤外線吸収剤を含み、第1ガラス板のエネルギー透過率(Te)が50%以上90%以下、より好ましくは60%以上80%以下である。
このようなガラス板の構成とすることで、車両用合わせガラス102全体としては、フロントガラスに求められる可視光線透過率を確保しつつ、主に中間膜301が近赤外線を吸収して加熱される。
また、第1実施形態の車両用合わせガラスが、車内のプライバシー保護のため、透過率の低い車両サイドドア用合わせガラスとする場合、本実施形態における第1ガラス板、第2ガラス板、中間膜の光学特性は、例えば、以下であることが好ましい。
すなわち、第2ガラス板202のエネルギー透過率(Te)が80%以上であり、かつ合わせガラス全体としての可視光線透過率(Tv)が70%以下、より好ましくは10%以上45%以下であり、かつ第1ガラス板201のエネルギー透過率(Te)が15%以上45%以下である。
このようなガラス板の構成とすることで、車両用合わせガラス102全体としては、透過率が低く、主に第1ガラス板201が近赤外線を吸収し、中間膜301を伝熱によって加熱できる。
また、第2ガラス板202のエネルギー透過率(Te)が80%以上であり、かつ合わせガラス全体としての可視光線透過率(Tv)が10%未満であり、中間膜に赤外線吸収剤を含み、第1ガラス板のエネルギー透過率(Te)が15%以上である。
このようなガラス板の構成とすることで、車両用合わせガラス102全体としては、透過率が低く、主に中間膜301が近赤外線を吸収して加熱される。
なお、上記4つの例示の全てにおいて、中間膜301自身が近赤外線を吸収して加熱されるとともに、第1ガラス板201も溶着ヘッド804からの近赤外線を吸収し、熱伝導によって中間膜301を加熱することもできる。このようにすることで、中間膜301を溶着して、第1ガラス板201、中間膜301及び第2ガラス板202を接合する時間を短縮できる。
また、第1ガラス板201と第2ガラス板202の少なくとも一方に赤外線反射被膜を備えてもよい。
第2ガラス板202に近赤外線の低波長領域のうち、特に低域よりも大きい波長(例えば1200nm以上)を反射する赤外線反射被膜を備えることで、中間膜301を加熱するために必要な分の、近赤外線のうち低波長領域は透過するが、それ以外は反射するため、車両に組み付けた際の車内の温度上昇を抑制することができる。この膜の組成としては、特に限定されないが、例えばITO、SnOなどを含有した膜が挙げられる。
また、第1ガラス板201に近赤外線の低波長領域の最も低域の波長(例えば700nm)以上を反射する赤外線反射被膜を備えることで、より効率的に中間膜301を加熱することができると同時に、車両に組み付けた際の車内の温度上昇を抑制することができる。この膜の組成としては、特に限定されないが、例えばAgを含有した膜が挙げられる。
その後、溶着した箇所を冷却装置805によって急冷し、車両用合わせガラスの面内の数点が溶着された、仮接着された車両用合わせガラスを得る。
ここで、溶着時の中間膜301の温度は、90℃以上150℃以下であることが好ましく、近赤外線の照射時間は10秒以下、好ましくは7秒以下、さらに好ましくは5秒以下である。また、冷却時間は20秒以下、好ましくは15秒以下、さらに好ましくは10秒以下である。第1ガラス板201及び第2ガラス板202と中間膜301が、安定して接合されるため、合わせガラス102とした際にしわが生じにくくなる。
また、急冷の速度、急冷の速度の変化率、急冷前温度などの条件をコントロールすることで、仮接着位置及びその周囲において、より安定してガラス板と中間膜が接着され、しわを生じにくくすることができる。
また、ガラス板の仮接着部901の配置は、図9、図10、図11で示すパターンとすることが好ましい。図9は、ガラス板の周縁312に沿って、所定間隔を隔てて溶着部901を形成した例である。図10は、ガラス板の周縁312の1辺に沿って、及びその1辺の中心から面内側に向けて、全体としてT字状を形成するように、所定間隔を隔てて溶着部901を形成した例である。図11はガラス板の周縁312のうち、2辺に沿ってL字状に所定間隔を隔てて溶着部901を形成した例である。
また、図12、図13で示すパターンとしてもよい。図12は、ガラス板の中心から、全体として十字状を形成するように、所定間隔を隔てて溶着部901を形成した例である。図13は、ガラス板の中央に集中して溶着部901を形成した例である。
このようなパターンで第1ガラス板201、中間膜301及び第2ガラス板202を接合して仮接着することで、合わせガラス102とした際にしわが生じにくくなる。
その理由は定かではないが、以下のように考えられる。すなわち、図9のパターンに関しては、合わせガラスの周縁をあらかじめ拘束することで、周縁にしわが生じにくく、面内などに曲げ圧縮応力が分散されることが推察できる。また、図10から図13のパターンに関しては、第2ガラス板202を第1ガラス板201に沿わせて変形させるとともに、後の予備圧着時や本圧着時の周縁からの脱気を妨げないためだと推察できる。
次に、以上のようにして得られた、仮接着された車両用合わせガラスを袋体に入れ、真空ポンプにより袋体内部の気体を排出することにより圧力を下げ、袋体と仮接着された車両用合わせガラスとを密着させる。気体を排出することにより、この状態では袋体内部が大気圧によって押しつぶされ、第1ガラス板201、中間膜301及び第2ガラス板202とは、圧力がかけられた状態で密着する。この状態で、加熱装置により加熱され、仮接着されたガラス板は予備圧着される。
また、予備圧着の別の方法として、加熱しながら一対の加圧ローラーを通過させることによって、予備圧着してもよい。一対の加圧ローラーは、ローラーの間隔が、仮接着された車両合わせガラス板よりも小さくなっている。このため、仮接着された車両合わせガラス板が加圧ローラーを通過する際に、第1ガラス板201及び第2ガラス板202が押し付けられる。よって仮接着された車両合わせガラス板の内部に存在する空気が押し出され、予備圧着されたガラスを得る。
その後、予備圧着された車両用合わせガラスは、オートクレーブによって本圧着され、車両用合わせガラス102が得られる。
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
300mm×300mmのサイズの第1ガラス板201、中間膜301、第2ガラス板202を用意し、それらを積層させ、図12のように十字に、また図13のように中央部のみに集中して仮接着した。
ここで、第1ガラス板201の厚みは2.8mm、中間膜301の厚みは0.76mm、第2ガラス板の厚みは0.5mmである。
溶着ヘッド804が備える近赤外線ヒーターとしては、波長が800nm〜1200nmのハロゲンヒータを用い、照射時間は5秒とした。
また、近赤外線の照射後直ちに冷却装置805によって約10秒間冷却した。冷却装置としては、ジェットクーラーを用い、近赤外線を照射した箇所に冷却気体を吹き当てた。させて評価サンプルを得た。
図12によって得られたものを表1の実施例1、図13によって得られたものを実施例2とする。
このようにして得られた評価サンプルのコーナーエッジにおける板厚を測定した。ここで板厚の測定は、周縁312に沿って周縁から面内に5mm内側の箇所を、任意の端部及び端部からX方向、Y方向にそれぞれ5mmずつ5点測定し、合計11点の板厚の値を得た。表1の「標準偏差」及び「最大値−最小値」は、この11点の値をもとに算出した。
さらに、「最大値−最小値」の半分の値を矢高、しわ602の全長を孤として、しわ602の曲率半径を算出し、さらにガラスのヤング率71500MPa、第2ガラス板の板厚0.5mmから第2ガラス板202の引張応力部601に発生する引張応力を算出した。
その引張応力の値から、合わせガラスの板厚方向に圧力が加えられた際に破壊するか否かを評価した。圧力は、車両用窓として用いた場合に乗員の寄りかかりなどで生ずる程度を想定した。また、製品出荷における透視による目視検査の基準に従い、コーナーエッジ近傍の透視歪を評価した。「○」は優、「△」は可、「×」は不合格を示す。
また、車両用サイドガラス板の形状が実寸サイズである第1ガラス板201、中間膜301、第2ガラス板202を用意し、それらを積層させ、図9〜図11のように仮接着した。なお、仮接着時の条件及び板厚の測定条件は、実施例1、2と同様である。図9によって得られたものを表1の実施例3、図10によって得られたものを実施例4、図11によって得られたものを実施例5とする。
また、比較例1、2、3として、仮接着を行わずに、単に積層させ貼り合わせた場合を例示する。
Figure 2016199457
表1より、比較例1、2のようにコーナーエッジにおけるガラス板厚の標準偏差が0.038mmよりも大きい場合、最大値−最小値の値も高くなりやすく、特に引張応力が11MPaを超えるため、コーナーエッジからの割れが発生しやすかった。
一方、本実施形態の実施例においては、コーナーエッジにおけるガラス板厚の標準偏差が小さいため、最大値−最小値の値が小さくなりやすく、引張応力が11MPa以下に抑制できるため、コーナーエッジからの割れを低減できる。
さらに、コーナーエッジにおけるガラス板厚の標準偏差が0.03mm以下であれば、発生する引張応力が10MPa以下に抑えられ、よりコーナーエッジが割れにくいガラス板が得られることに加え、コーナーエッジ近傍の透視歪が改善され、より品質の高いガラス板が得られる。
また、実施例3において、端部における2つの辺が交わる角度と、標準偏差との関係を表2にまとめる。
Figure 2016199457
表2より、端部における2つの辺が交わる角度が90度より小さい場合に、コーナーエッジにおけるガラス板厚の標準偏差が大きくなる傾向がある。したがって端部における2つの辺が交わる角度が90度、より好ましくは80度以下のコーナーエッジにおいて、板厚の標準偏差を0.038mm未満とすれば、コーナーエッジからの割れを低減する効果が大きいことがわかる。
本発明は、合わせ板に係り、特に、上下に摺動する車両サイドドア用合わせガラス、嵌め殺しの窓ガラス、ポリカーボネートなどの樹脂板体を張り合わせた合わせ板、車両ボディーのピラーとそのピラーをカバーするように張り合わせる化粧板との組み合わせによる合わせ板、電子機器用カバーガラス等に好適に用いられる。
102 車両用合わせガラス板
103 下辺
104 上辺
105 側辺
120 昇降装置
121、122 アーム
123 昇降レール
124 固定レール
125 支点
126 ギヤ
127 ホルダ
130 窓枠
131 ガラスラン
201 第1ガラス板
202 第2ガラス板
211 第1主表面
212 第2主表面
213 第3主表面
214 第4主表面
301 中間膜
312 周縁
313 周縁部
314 面内領域
401 コーナーエッジ
402、403 距離
404 孤の長さ
601 引張応力部
602 しわ
604 平坦部
801 第1吸着パッド
802 第2吸着パッド
803 押さえユニット
804 溶着ヘッド
805 冷却装置
A、B、C、D 端部
E Rの接線の傾きが0になる点
θ コーナーエッジの角度

Claims (15)

  1. 第1湾曲形状に湾曲された第1板と、前記第1湾曲形状とは異なる第2形状である第2板とが中間膜によって接合された合わせ板であって、
    前記合わせ板は、第1コーナーエッジにおいて、しわを有さないことを特徴とする合わせ板。
  2. 前記合わせ板は、前記第1コーナーエッジにおける板厚の標準偏差が0.038mm未満である請求項1に記載の合わせ板。
  3. 前記第1コーナーエッジの角度が90°以下である請求項1または2に記載の合わせ板。
  4. 前記合わせ板の面内領域において、板厚の標準偏差が0.03mm以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の合わせ板。
  5. 前記第1湾曲形状は、第1方向と、前記第1方向に直交する方向である第2方向とに湾曲した複曲形状である請求項1から4のいずれか一項に記載の合わせ板。
  6. 前記第2形状は、前記第1方向と、前記第2方向とに湾曲した複曲形状である請求項5に記載の合わせ板。
  7. 前記第1板は、前記中間膜とは反対側に配される第1主表面と、前記中間膜に接する第2主表面とを有し、
    前記第2板は、前記中間膜に接する第3主表面と、前記中間膜とは反対側に配される第4主表面とを有し、
    前記第1方向における前記第3主表面の曲率半径は、前記第1方向における前記第1主表面の曲率半径の値を中心として、大小それぞれ1.1倍の範囲以外、かつ5倍の範囲以内である請求項6に記載の合わせ板。
  8. 前記第4主表面の外周の少なくとも一部には、曲げ圧縮応力が生じている請求項1から7のいずれか一項に記載の合わせ板。
  9. 前記合わせ板は、周縁において、波状変形部を有する請求項1から8のいずれか一項に記載の合わせ板。
  10. 前記波状変形部における前記合わせ板の板厚の標準偏差が0.02以下である請求項1から9のいずれか一項に記載の合わせ板。
  11. 前記第1板の板厚は、1.5mm以上4.0mm以下であり、
    前記第2板の板厚は、0.2mm以上1.0mm以下である請求項1から10のいずれか一項に記載の合わせ板。
  12. 前記第1板の板厚と、前記第2板の板厚との比が、0.1以上0.5以下である請求項1から11のいずれか一項に記載の合わせ板。
  13. 前記第2板の、エネルギー透過率(Te)が80%以上であり、かつ前記合わせ板の可視光線透過率(Tv)が70%以上であり、かつ第1板のエネルギー透過率(Te)が30%以上70%以下である請求項1から12のいずれか一項に記載の合わせ板。
  14. 前記第2板の、エネルギー透過率(Te)が80%以上であり、かつ前記合わせ板の可視光線透過率(Tv)が70%以下であり、かつ第1板のエネルギー透過率(Te)が15%以上45%以下である請求項1から12のいずれか一項に記載の合わせ板。
  15. 前記合わせ板は、合わせガラスである請求項1から14のいずれか一項に記載の合わせ板。
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