JP2016195048A - 銀被覆導電性粒子及び該粒子を含有する導電性材料 - Google Patents

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寛人 赤池
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Abstract

【課題】耐エレクトロケミカルマイグレーション性に優れた銀被覆導電性粒子及び該銀被覆導電性粒子を含有する導電性材料を提供する。
【解決手段】銀被覆導電性粒子は、非金属粒子を母粒子とし、この母粒子の表面が銀層で被覆され、銀層の表面がパラジウム層又は金層で被覆され、パラジウム層又は金層の表面が有機物撥水層で被覆された構造を有する。有機物撥水層がスルフィド化合物若しくはチオール化合物を主成分とする硫黄含有化合物、ベンゾトリアゾール化合物又はポリオキシエチレンエーテル類界面活性剤のいずれかを用いて形成された被覆層であることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、導電性ペーストや異方性導電材料等の導電性材料に含まれる導電性フィラーとして好適な銀被覆導電性粒子及び該銀被覆導電性粒子を含有する導電性材料に関する。
例えば、太陽電池パネル、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の電子機器又は電子表示機器或いは半導体素子等が備える電子部品(電極又は電気配線等)の形成には、主に等方性の導電性ペースト(以下、単に導電性ペーストという。)が一般に利用されている。この導電性ペーストには、導電性成分として金属粒子等からなる導電性フィラーが含まれており、この導電性フィラーと、更にバインダー成分としての樹脂や溶剤等の他の成分を混合してペースト状に調製される。導電性ペーストを用いて電極等を形成するには、先ず、導電性ペーストを基板等の表面に、スクリーン印刷法やオフセット印刷法等の塗工法により塗布して印刷パターンを形成する。次いで、形成した印刷パターンを所望の温度で乾燥又は焼成することにより電極等が形成される。これまで、導電性ペーストに使用される導電性フィラーには、低抵抗化や耐酸化性等に優れることから、銀粒子が広く使用されてきたが、低コスト化、軽量化等の観点から、樹脂粒子の表面を銀で被覆した銀被覆粒子等も使用されている。
また、電子機器等が備える電極や電気配線等を電気的に接続する材料等に、異方性導電接着剤、異方性導電フィルム等の異方性導電材料や導電スペーサが使用されている。この異方性導電材料等にも、上記導電性ペーストと同様、導電性成分として導電性フィラーが含まれる。導電スペーサ用の導電性フィラーには、導電性等の導電性成分としての一般的特性のほか、フィラーに負荷を与えたときの潰れ方や荷重を除いたときの回復率等の特性が求められ、例えばアクリル、ウレタン、スチレン等の樹脂粒子にNi、Au、Ag等をめっきしたもの等が使用されている。
従来、上記導電性ペーストや異方性導電材料等の導電性材料に含まれる導電性フィラーとして、アクリル系樹脂等の樹脂表面に、錫吸着層を介して銀を被覆させた銀被覆球粒子等が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に示される銀被覆球状樹脂では、銀よりも低比重の樹脂を使用し、その表面に銀を被覆する構造とすることにより、低比重で、しかも銀と同等の導電性が得られるとされている。また、銀粉を導電性フィラーとして使用した導電性ペーストに比べて、コストの高い銀使用量が抑えられるため、生産コストの面等でも優れる。また、この銀被覆球状粒子は、アクリル系樹脂等の弾性を持つ母粒子表面を金属で被覆する構造になっており、フィラーの潰れ方や回復率が適度であることから、異方性導電材料や導電スペーサに使用される導電性フィラーとしても好適に使用される。更に、銀は全単体金属中、常温で最も低抵抗であるとともに、現在、異方性導電材料用の導電性フィラーとして主に使用されている金よりも低コストであることから、性能面及び生産コストの面でも優れた異方性導電材料を製造することができる。
また、有機高分子化合物からなる核体上に金属層、最外層及び突起が形成された導電粒子を含有する回路接続材料が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この回路接続材料によれば、回路電極の表面が平坦であっても、対向する回路電極同士間の良好な電気的接続を達成できると共に回路電極間の電気特性の長期信頼性を十分に高めることができるとされている。
また、表面に、ニッケル層、銀層、銀より貴な貴金属層が順次形成された導電層を有する基材微粒子が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この基材微粒子では、上記構成により、従来不可能であった基材微粒子と導電層との高い密着性、低抵抗、高耐食性を兼ね備えることができ、製造時及び熱圧着時の導電層の剥がれや、後述する使用時のエレクトロケミカルマイグレーションを抑制することができるとされている。
特許第5497183号公報(請求項1、段落[0009]、段落[0010]、段落[0012]) 特許第5387592号公報(請求項1〜5、段落[0006]、段落[0007]) 特開2007−194210号公報(請求項1、段落[0009])
しかし、上記従来の特許文献1に示された銀被覆樹脂では、樹脂粒子の表面の被覆層が銀単層で構成されていることから、エレクトロケミカルマイグレーションが起こる場合がある。エレクトロケミカルマイグレーションとは、電極や電気配線等の電子部品に使用している導電性成分(導電性フィラー等)が電気化学的な要因により、付着水分中にイオンとして溶出及び還元を繰り返すことで絶縁物の上や中を横切って移動するような現象をいい、銀、銅、鉛、錫等の金属(以下、易マイグレーション金属)でこの現象が確認されている。この現象が起きると、電子部品等が備える配線間に短絡が生じる等の不具合が起こる場合がある。また、上記従来の特許文献2に示された基材微粒子は、樹脂粒子の表面の被覆層が2層の金属層で構成されているが、例えば最外層の金属層に割れが生じると、内側の金属に易マイグレーション金属を使用した場合、その割れ目から内側の金属がエレクトロケミカルマイグレーションを起こすことがある。また、上記従来の特許文献3に示された基材微粒子では、Niを使用していることから、所望の導電性が十分に得られないという問題がある。また、Niめっきが硬いため、上述のフィラーの潰れ方や回復率といった導電スペーサに使用する際に要求される特性についての改善が求められている。
本発明の目的は、導電性ペーストや異方性導電材料等の導電性材料に含まれる導電性フィラーとして好適な銀被覆導電性粒子であって、耐エレクトロケミカルマイグレーション性に優れた銀被覆導電性粒子及び該粒子を含有する導電性材料を提供することにある。
本発明の第1の観点は、非金属粒子を母粒子とし、この母粒子の表面が銀層で被覆され、銀層の表面がパラジウム層又は金層で被覆され、パラジウム層又は金層の表面が有機物撥水層で被覆された構造を有する銀被覆導電性粒子である。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に有機物撥水層がスルフィド化合物若しくはチオール化合物を主成分とする硫黄含有化合物、ベンゾトリアゾール化合物又はポリオキシエチレンエーテル類界面活性剤のいずれかを用いて形成された被覆層であることを特徴とする。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点の銀被覆導電性粒子を含有する導電性材料である。
本発明の第1の観点の銀被覆導電性粒子は、非金属粒子を母粒子とし、この母粒子の表面が銀層で被覆され、銀層の表面がパラジウム層又は金層で被覆され、パラジウム層又は金層の表面が有機物撥水層で被覆された構造を有する。このように、この銀被覆導電性粒子は、銀層の表面が難マイグレーション性の金属からなるパラジウム層又は金層によって被覆されているため、銀層のエレクトロケミカルマイグレーションを抑制する効果が得られる。また、パラジウム層又は金層の表面が有機物撥水層によって更に被覆されているため、パラジウム層又は金層に割れ及びスルーホールが生じて銀層が露出した場合でも、有機物撥水層による撥水性により水分の付着が防止され、これによりエレクトロケミカルマイグレーションを抑制することができる。また、母粒子に非金属粒子を使用していることから、圧縮したときの潰れ方や回復率が適度であり、一方向に圧縮したときの導電性にも優れるため、異方性導電材料や導電スペーサ用の導電性フィラーとしても好適に使用できる。また、銀粒子単体の場合と比較して低比重であるため、導電性ペーストにより電気配線等の形成を行う際の導電性フィラーとして使用すれば、印刷パターンの形状が粒子の自重によって崩れるのを防止でき、配線形状保形性に優れた導電性ペーストを調製できる。
本発明の第2の観点の銀被覆導電性粒子では、有機物撥水層がスルフィド化合物若しくはチオール化合物を主成分とする硫黄含有化合物、ベンゾトリアゾール化合物又はポリオキシエチレンエーテル類界面活性剤のいずれかを用いて形成されている。スルフィド化合物やチオール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ポリオキシエチレンエーテル類は、特に銀や金、パラジウムといった貴金属への結合力が強いことから、これらを主成分とする有機物撥水層を形成することにより、有機物撥水層のパラジウム層又は金層への密着性が高められる。そのため、脂肪族カルボン酸や脂肪族アミンといった吸着性の化合物等を主成分として有機物撥水層を形成したものに比べ、加熱時や有機溶媒中での保存性が高められる。
本発明の第3の観点の導電性材料は、本発明の銀被覆導電性粒子を導電性フィラーとして含有するため、形成した電気配線又は電極等において、或いは電子部品の接合等に際して良好な導電性が得られるとともに、エレクトロケミカルマイグレーションに起因する絶縁不良等の不具合を抑制することができる。
実施例1で得られた銀被覆導電性粒子をSEMにて観察したときの写真図である。
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
本発明の銀被覆導電性粒子は、非金属粒子を母粒子とし、この母粒子の表面が銀層で被覆され、この銀層の表面がパラジウム層又は金層で被覆され、更にこのパラジウム層又は金層の表面が有機物撥水層で被覆された構造を有する。なお、この構造には、被覆する表面の全面が、後述の前処理により形成する錫層を含む、銀層、パラジウム層又は金層、有機物撥水層等の被覆層によって完全に被覆された構造に限らず、その一部が被覆された構造も含まれる。
母粒子は、実質的に球状の粒子であればよく、例えば、完全な球形の粒子、楕円のような球形に近い形状の粒子、表面に若干の凹凸がある粒子が含まれる。母粒子の形状は球形に近いほど好ましい。母粒子の形状が鋭利な突片を呈する場合、めっき被膜の密着性を損ねたり、分散性を減退させたりする場合がある。また、銀被覆導電性粒子を導電性フィラーとして用いるときの導電性付与の再現性等を損ねる原因になる。従って、極端に鋭利な突片を有する形状は好ましくない。
母粒子には、非金属製の粒子が用いられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリカ、アルミナからなる粒子を使用することができる。この銀被覆導電性粒子を異方性導電接着剤や異方性導電フィルム等の用途で使用する場合は、これら異方性導電接着剤や異方性導電フィルム等に要求される特性(フィラーに荷重による負荷を与えたときのフィラーの潰れ方及び荷重を除荷したときの回復率等)の観点から、母粒子は、アクリル系樹脂又はスチレン系樹脂からなることが好ましい。アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル樹脂(PMMA樹脂)等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、ポリスチレン樹脂(PS樹脂)等が挙げられる。
母粒子の平均粒径は0.5〜40μmであることが好ましい。母粒子の粒径の変動係数は、5.0%以下であり、粒径が揃っていることが好ましい。母粒子の平均粒径が下限値より小さいと、母粒子の表面積が大きくなり、導電性フィラーとして必要な導電性を得るために銀の含有量を多くする必要があるため、銀粒子を用いる場合と比較して生産コストの面でのメリットが小さくなる。また、粒子同士が架橋凝集しやすくなり、所望の粒子径を持った銀被覆粒子が得られにくくなる傾向がみられる。一方、母粒子の平均粒径が上限値より大きいと、銀被覆導電性粒子を微細なパターンへ応用することが困難になる場合がある。また、粒径が揃っていないと、導電性フィラーとして用いるときの導電性付与の再現性等を損ねる原因になり得る。このため、銀被覆導電性粒子の粒径の変動係数が5.0%以下であり、粒径が揃っていることがより好ましい。ここで、本明細書中、母粒子又は銀被覆導電性粒子等の粒子の平均粒径とは、株式会社日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡(型番:S−4300SE)を用いて、ソフトウェア(品名:PC SEM)により、倍率:2000倍で、300個の粒子の直径を測定し、この測定値から算出した平均値をいう。また、変動係数(CV値、単位:%)とは、上記300個の粒子の粒子径から、式:〔(標準偏差/平均粒径)×100〕により求めた値である。
銀を被覆する前の母粒子表面には、前処理により、予め錫層等を設けておくことが望ましい。錫層は、前処理で使用される錫化合物中の錫の2価イオンが、樹脂表面に付着することによって形成されたものである。一般に、有機質材料や無機質材料等の不導体の表面に無電解銀めっきを実施する際、予め不導体の表面に対して触媒化処理を行う必要がある。本実施形態では、前処理としての触媒化処理により母粒子表面に錫層を予め形成し、後述する無電解銀めっきによって、以下の特性を有する銀めっき層(銀層)を形成している。
銀被覆導電性粒子を構成する銀層は、無電解銀めっきによって母粒子表面を被覆することにより形成される。銀被覆導電性粒子における銀層の膜厚は所望する導電性により決められ、10〜1000nmとするのが好ましい、銀層の膜厚が10nmよりも小さいと、導電性フィラーとして銀被覆導電性粒子が分散したときに、銀同士の接点が取り難く、十分な導電性を付与できない場合がある。一方、銀層の膜厚が1000nmより大きいと、比重が大きくなり、コストも高くなるにも拘わらず、導電性が飽和する傾向がみられる。
パラジウム層又は金層は、後述のように、パラジウム塩又は金塩を用い、上記銀層の表面に金属パラジウム又は金属金を還元析出させることにより形成される被覆層である。このパラジウム層又は金層が、銀被覆導電性粒子の銀層と有機物撥水層の間に形成されることで、易マイグレーション性の銀層の露出が少なくなる。そのため、エレクトロケミカルマイグレーションを抑制する効果が高められる。また、これらの効果をより顕著に発現させるため、パラジウム層又は金層の厚さは5〜100nmとするのが望ましい。上限値を超えると銀層のみ場合と比較して高抵抗化する場合があり、一方、下限値未満になるとエレクトロケミカルマイグレーションの抑制効果が不十分になる場合がある。また、この被覆層を構成する金属種を、他の金属ではなく、パラジウム又は金に限定した理由は、これら以外の金属で形成する場合に比べて、耐エレクトロケミカルマイグレーション性、耐酸化性に優れ、更に無電解めっきにおける膜厚制御が容易であるためである。
有機物撥水層は、スルフィド化合物若しくはチオール化合物を主成分とする硫黄含有化合物、ベンゾトリアゾール化合物又はポリオキシエチレンエーテル類界面活性剤のいずれかを用いて形成された層であることが好ましい。この有機物撥水層は、後述するように、パラジウム層又は金層を形成した粒子を、上記スルフィド化合物等の有機化合物が含まれる溶液に浸漬して撹拌混合し、乾燥することにより形成される。パラジウム層又は金層の表面、或いは部分的に露出した銀層の表面に、この有機物撥水層が形成されることで、有機物撥水層が有する撥水性により、エレクトロケミカルマイグレーションの抑制効果がより高められる。また、この有機物撥水層は単層で、均一にパラジウム層又は金層の表面或いは部分的に露出した銀層の表面を被覆していることが好ましいが、所定の撥水性が得られていれば多層膜や未被覆の部分があってもよい。有機物撥水層は十分な撥水性を有し、かつ金属層の導電性を阻害しない程度の分子量であることが望まれることから、炭素数4〜40の有機化合物により形成されるのが特に好ましい。なお、有機物撥水層が形成されているか否かを評価する方法としては、後述のような接触角を測定する方法の他に、熱分解GC/MSにより有機物撥水層の熱分解物を観測する方法が挙げられる。
このように構成される銀被覆導電性粒子は、平均粒径は、微細配線の形成等にも対応できる導電性材料を得るため、1.0〜440μmの範囲であることが好ましい。また、粒径が揃っていないと、導電性フィラーとして用いるときの導電性付与の再現性等を損ねる原因になり得る。このため、銀被覆導電性粒子の粒径の変動係数が5.0%以下であり、粒径が揃っていることがより好ましい。その理由は、粒径の揃った球状の粒子でないと、配線間の均一な導通接続が確保できないためである。銀被覆導電性粒子の形状は、球状に限らず、扁平状、棒状のものであっても良いが、異方性導電材料中の導電フィラーとして用いられる場合は球状であることが好ましい。導電性ペーストにおいても、球状の方が導電性フィラーの体積充填率を算出しやすいといった利点がある。なお、球状とは、完全な真球に限られず、楕円のような球形に近い形状や、表面に若干の凹凸がある形状等も含まれる。
また、銀被覆導電性粒子の撥水性は、水に対する接触角で特定することができる。具体的には、多数の銀被覆導電性粒子を型内に充填して、14.7MPa(150kg/cm2)の圧力で印加することによりペレット状の成型体を形成し、その成型体の表面に水滴を滴下して、その水滴の接触角を求める。水接触角は125度以上であることが好ましい。その接触角が125度未満であると、環境雰囲気から水分を吸着して電離が起き、エレクトロケミカルマイグレーションが生じやすい。
また、銀被覆導電性粒子の導電性は、上記構成により、粉体体積抵抗率が好ましくは1×10-2Ω・cm以下、更には好ましくは3×10-3Ω・cm以下を示す。粉体体積抵抗率が1×10-2Ω・cmよりも高いと、抵抗値が高いため、導電性材料に含まれる導電性フィラーとして不適である。ここで、粉体体積抵抗率は、銀被覆導電性粒子を圧力容器に入れて9.8MPaで圧縮して圧粉体とし、この圧粉体の抵抗値をデジタルマルチメーターによって測定される値である。
続いて、本発明の銀被覆導電性粒子を製造する方法について説明する。先ず、樹脂に、錫化合物の水溶液による前処理を行い(錫層の形成工程)、次いで、前処理を行った樹脂に、還元剤を用いて無電解銀めっきを行う(銀層の形成工程)。次に、銀層が形成されたその表面にパラジウム層又は金層を形成し(パラジウム層又は金層の形成工程)、このパラジウム層又は金層の表面に有機物撥水層を形成する(有機物撥水層の形成工程)。
母粒子に錫層を形成する前処理では、例えば、錫化合物の水溶液に母粒子を添加し、攪拌する。そして、母粒子を濾別して水洗する。攪拌時間は、以下の錫化合物の水溶液の温度及び錫化合物の含有量によって適宜決定されるが、好ましくは、0.5〜24時間である。
錫化合物の水溶液の温度は、20〜45℃であり、好ましくは20〜35℃であり、より好ましくは25〜35℃であり、最も好ましくは27〜35℃である。錫化合物の水溶液の温度が20℃未満であると、温度低下により、水溶液の活性が低くなり、母粒子に錫化合物が十分に付着しない。一方、錫化合物の水溶液の温度が45℃より高くても、錫化合物が酸化するため、水溶液が不安定となり、母粒子に錫化合物が十分に付着しない。この前処理を20〜45℃の水溶液で実施することによって、従来法では密着性の悪かったアクリル系樹脂やスチレン系樹脂からなる微粒子に対しても、適切な結晶子径の銀の結晶粒子を析出させることができる。このため、密着性及び緻密性に優れた銀層を形成できる。更に、銀層が密着性及び緻密性に優れるため、一方向に、粒径の10%を圧縮したときの圧縮方向の抵抗値を、従来品と比較して10分の1以下に低減できる。
前処理で使用する錫化合物としては、塩化第一錫、フッ化第一錫、臭化第一錫、ヨウ化第一錫等が挙げられる。塩化第一錫を用いる場合、錫化合物の水溶液中の塩化第一錫の含有量は、30〜100g/dm3が好ましい。塩化第一錫の含有量が30g/dm3以上であれば、均一な錫層を形成し易い。また、塩化第一錫の含有量が100g/dm3以下であると、塩化第一錫中の不可避不純物の量を抑制しやすい。なお、塩化第一錫は、飽和になるまで錫化合物の水溶液に含有させることができる。
錫化合物の水溶液は、塩化第一錫1gに対して、塩酸を0.5〜2cm3を含有することが好ましい。塩酸の量が0.5cm3以上であると、塩化第一錫の溶解性が向上し、かつ錫の加水分解を抑制しやすい。また、塩酸の量が2cm3以下であると、錫化合物の水溶液のpHが低くなり過ぎないため、錫を母粒子に効率よく吸着させることができる。
銀層は無電解めっき法により形成される。無電解めっき法としては、(1)錯化剤、還元剤等を含む水溶液中に、前処理をした母粒子を浸漬し、銀塩水溶液を滴下する方法、(2)銀塩、錯化剤を含む水溶液中に、前処理をした母粒子を浸漬し、還元剤水溶液を滴下する方法、(3)銀塩、錯化剤、還元剤等を含む水溶液に、前処理をした母粒子を浸漬し、苛性アルカリ水溶液を滴下する方法が挙げられ、いずれの方法でも適用してもよい。
銀塩としては、硝酸銀或いは銀を硝酸に溶解したもの等を用いることができる。錯化剤としては、アンモニア、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、ニトロ三酢酸、トリエチレンテトラアンミン六酢酸等の塩類を用いることができる。還元剤としては、ホルマリン、ブドウ糖、ロッシェル塩(酒石酸ナトリウムカリウム)、ヒドラジン及びその誘導体等を用いることができる。還元剤としては、ホルムアルデヒドが好ましく、少なくともホルムアルデヒドを含む2種以上の還元剤の混合物がより好ましく、ホルムアルデヒドとブドウ糖を含む還元剤の混合物が最も好ましい。
パラジウム層又は金層は無電解めっき法により形成される。具体的には、表面の銀層を触媒とした自己触媒型の無電解めっきにより形成することができる。パラジウム層をこの無電解めっきにより形成する場合、パラジウム塩には、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム塩又は酢酸パラジウム等を用いることができる。また、パラジウム塩の錯化剤には、アンモニア、エタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ジエチレントリアミン又はEDTA塩を用いることができる。また、還元剤には、ギ酸、次亜リン酸塩又はヒドラジン等を用いることができる。
一方、金層を上記無電解めっきにより形成する場合、金塩には、シアン化金塩、塩化金酸塩又は亜硫酸金塩等を用いることができる。また、金塩の錯化剤としては、シアン化物の塩類、クエン酸、酒石酸、乳酸、エチレンジアミン、EDTA塩等を用いることができる。また、還元剤には、テトラヒドロホウ酸塩、ジメチルアミンボラン、次亜リン酸、ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、ジエチルグリシン、L−アスコルビン酸塩、ホルムアルデヒド等を用いることができる。
有機物撥水層を形成する方法としては、パラジウム層又は金層を形成した粒子を、撥水層を形成するスルフィド化合物等の有機化合物や撥水層形成を補助する添加物を含む溶液に浸漬して撹拌混合し、乾燥する方法等が挙げられる。
有機物撥水層の形成に用いられる硫黄含有高分子には、例えばジオクタデシルスルフィド等のスルフィド化合物やドデカンチオール等のチオール(メルカプタン)化合物、オクタデシルジスルフィド等のジスルフィド化合物等が挙げられるが、表面占有率の高い有機物撥水層を形成できるという理由からスルフィド化合物及びチオール化合物が好ましい。硫黄含有高分子を含む溶液は、硫黄含有高分子の水溶液にポリエチレングリコール等の添加剤を更に添加して調製され、質量%で硫黄含有高分子が2〜4%、添加剤が1〜2%含まれるように調製するのが好ましい。また、硫黄含有高分子を含む溶液への浸漬時間は5〜60分とし、このときの液温は20〜60℃とするのが好ましい。
スルフィド化合物としては、ジヘキシルスルフィド(沸点260℃)、ジヘプチルスルフィド(沸点298℃)、ジオクチルスルフィド(沸点309℃)、ジデシルスルフィド(沸点217℃/8mmHg)、ジドデシルスルフィド、ジテトラデシルスルフィド、ジヘキサデシルスルフィド、ジオクタデシルスルフィド等の炭素数6〜40程度(好ましくは炭素数10〜40程度)の直鎖状又は分岐鎖状のジアルキルスルフィド(アルキルスルフィド);ジフェニルスルフィド(沸点296℃)、フェニル−p−トリルスルフィド(沸点312℃)、4,4−チオビスベンゼンチオール(沸点148℃/12mmHg)等の炭素数12〜30程度の芳香族スルフィド;3,3′−チオジプロピオン酸(沸点409℃)、4,4′−チオジブタン酸等のチオジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、ジアルキルスルフィドが特に好ましい。
チオール化合物としては、2−メチル−2−プロパンチオールやオクタデシルチオール等の炭素数4〜40程度(より好ましくは6〜20程度)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルチオール(アルキルメルカプタン)等が挙げられる。また、これらの化合物の炭素基に結合している水素原子がフッ素に置換された化合物等も好適に使用できる。添加剤は、ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
一方、ベンゾトリアゾールを含む溶液は、質量%でベンゾトリアゾールが0.5〜5%、添加剤が1〜2%含まれる水溶液とするのが好ましい。また、ベンゾトリアゾール化合物を含む溶液への浸漬時間は5〜60分とし、このときの液温は20〜60℃とするのが好ましい。
ベンゾトリアゾール化合物としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール塩、メチルベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール及びベンゾトリアゾール誘導体等が挙げられる。また、添加剤としては、上述のポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
また、界面活性剤を含む溶液としては、防錆機能を有する界面活性剤の水溶液に添加剤を加えたものが用いられる。質量%で界面活性剤が2〜4%、添加剤が1〜2%の水溶液とされ、浸漬時間としては5〜60分、水溶液の温度は20〜60℃が好ましい。
界面活性剤の種類は特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール、これらの組み合わせ等が挙げられる。添加剤には、上述のポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
また、上記硫黄含有高分子化合物、防錆機能を有する界面活性剤以外でも、例えばシランカップリング剤、フッ素含有高分子化合物、脂肪酸塩等、Agへの吸着性に優れ、かつ撥水性を付与できるものであれば適用可能である。
以上の工程により、本発明の銀被覆導電性粒子が得られる。この銀被覆導電性粒子は、導電性ペーストや異方性導電材料、導電スペーサといった導電性材料に含まれる導電性フィラーとして使用することができる。電極等の形成に用いる導電性ペーストを調製するには、例えば、上述の銀被覆導電性粒子を、熱硬化性樹脂等の一般的に用いられているバインダー成分に分散させることにより得られる。その他、用途等に応じて、硬化剤や溶剤等の他の成分を添加、混合して調製することもできる。電極等の形成に用いる導電性ペーストを調製する際の銀被覆導電性粒子の割合は、用途等によっても異なるが、質量割合で50〜90%とするのが好ましい。
また、本発明の銀被覆導電性粒子を用いて異方性導電接着剤を調製する方法、異方性導電フィルムを形成する方法、導電スペーサとして使用する方法について以下に説明する。異方性導電接着剤及び異方性導電フィルム等の異方性導電性材料には、バインダー成分としての絶縁性のバインダー樹脂と、この絶縁性のバインダー樹脂中に分散された導電性微粒子(導電性フィラー)が導電性成分として含まれ、本発明の銀被覆導電性粒子は該導電性微粒子として使用することができる。銀被覆導電性粒子の含有量は、特に限定されず、用途等に応じて適宜決定されるが、体積割合で0.5%〜10%程度とするのが好ましい。
異方性導電接着剤としては、例えば異方性導電ペースト、異方性導電インキ等が挙げられる。異方性導電接着剤の場合、絶縁性のバインダー樹脂は、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂のほか、硬化性樹脂組成物等の熱や光によって硬化する組成物を使用できる。熱可塑性樹脂としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、アクリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。硬化性樹脂組成物としては、グリシジル基を有するモノマーやオリゴマーと、イソシアネート等の硬化剤とを含有する樹脂組成物が挙げられる。
異方性導電フィルムは、フィルム状に成形された異方性導電膜であり、例えば以下の方法によって製造される。導電性微粒子が絶縁性の樹脂中に分散する組成物を作製し、この組成物をPET等の支持フィルムの表面に塗布する。これによって、異方性導電フィルムが得られる。異方性導電フィルムの場合、絶縁性の樹脂には、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分として含む樹脂組成物を使用できる。
導電スペーサとは、液晶表示装置等において、液晶物質を挟む上下2枚の基板の配線部分を電気的に上下に接続し、かつ基板の間隙を所定の寸法に保持するものである。本発明の銀被覆導電性粒子を導電スペーサに使用するには、例えば、銀被覆導電性粒子を熱硬化性樹脂や紫外光硬化型接着剤等に添加して樹脂組成物を作製する。そして、上下2枚の基板の配線部分に、上記樹脂組成物を塗布して2枚の基板を貼り合わせる。樹脂組成物中の銀被覆導電性粒子の含有量は、特に限定されず、用途等に応じて適宜決定されるが、体積割合で2%〜10%程度とするのが好ましい。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず、塩化第一錫20gと、濃度が35%の塩酸cm3を、容量1dm3のメスフラスコを用いて水で1dm3に希釈(メスアップ)し、30℃に保温した。この水溶液に、母粒子として平均粒径が3.0μmであり、かつ粒径の変動係数が2.5%である球状のアクリル系樹脂(PMMA樹脂)30gを添加して1時間撹拌して前処理を行い、その後、該アクリル系樹脂を濾別して水洗した。なお、母粒子の平均粒径は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡(型番:SU−1500)を用いて、ソフトウェア(品名:PC SEM)により、倍率:2000倍で、300個の粒子の直径を測定し、この測定値から算出した平均値である。また、変動係数は、上記300個の粒子の粒子径から、式:〔(標準偏差/平均粒径)×100〕により求めた値である。
次に、上記前処理により表面に錫被覆層が形成された母粒子表面に、無電解めっきにより銀被覆層を形成した。具体的には、先ず、水3dm3に、錯化剤としてエチレンジアミン四酢酸ナトリウム120g、pH調整剤として水酸化ナトリウム65g、還元剤としてホルマリン(ホルムアルデヒド濃度37質量%)50mlを添加し、これらを溶解させることにより、錯化剤及び還元剤を含む水溶液を調製した。また、硝酸銀100g、25%濃度のアンモニア水100ml、水200mlを混合し、硝酸銀を含む水溶液を作製した。
次に、上記調製した錯化剤及び還元剤を含む水溶液中に、上記前処理後の母粒子を浸漬させた。その後、水溶液を撹拌しながら、硝酸銀を含む水溶液を60分間かけて滴下することにより、母粒子の表面に銀めっきを施した。これにより、母粒子の表面に厚さ0.2μmの銀層を形成した。銀めっき処理後の母粒子を水洗した後、該母粒子をイオン交換水中に分散させてスラリーとした。
次に、塩化パラジウム15gをイオン交換水中に添加して攪拌しながら、このイオン交換水中に錯化剤としてエチレンジアミン40gを添加することにより、パラジウム含有液を調製した。
次に、上述の銀めっき処理後の母粒子を含むスラリーを攪拌しながら、このスラリーに上記調製したパラジウム含有液を添加し、ウォーターバスにて60℃まで昇温させた。ここに、還元剤としてギ酸を滴下し、上記温度で60分間撹拌しながら保持することにより、銀めっき処理後の母粒子にパラジウムめっきを施した。これにより、母粒子の銀層の表面に、パラジウム層を形成した。
更に、パラジウム層を形成した母粒子が含まれるスラリーを水洗した後、この洗浄後のスラリーに、ジオクタデシルスルフィド3質量%、ポリエチレングリコール2質量%を含む水溶液を添加して、ウォーターバスにて40℃まで昇温させ、該温度で10分間攪拌保持した。これにより、上記パラジウム層の表面に有機物撥水層を形成した。その後、スラリーをろ過により固液分離し、固形分を乾燥させることにより、母粒子の表面が銀層で被覆され、銀層の表面がパラジウム層で被覆され、パラジウム層の表面が有機物撥水層で被覆された銀被覆導電性粒子を得た。
上記得られた銀被覆導電性粒子の銀層、パラジウム層の厚さ、銀被覆導電性粒子の平均粒径を、以下の表1に示す。なお、各層の厚さは、銀被覆導電性粒子10個について、その断面を透過電子顕微鏡(TEM)にて観察し、測定した各層の厚みをそれぞれ平均した値である。また、銀被覆導電性粒子の平均粒径は、母粒子の平均粒径と同様の方法で算出した値である。また、有機物撥水層の有無を、熱分解GC/MSによる方法により再確認した。具体的には、熱分解装置(Frontier Lab社製 型式名:PY-3030)により、500℃のHeガス雰囲気にて銀被覆導電性粒子の有機物成分を熱分解させ、この熱分解物について、ガスクロマトグラフ飛行時間質量分析計(日本電子社製 型式名:JMS−T100GCV)により質量分析を行った。検出されたマススペクトルに、有機物撥水層の形成に用いられるスルフィド化合物若しくはチオール化合物を主成分とする硫黄含有化合物、ベンゾトリアゾール化合物又はポリオキシエチレンエーテル類界面活性剤のいずれかのピークが生じたか否かにより有機物撥水層の有無を確認した。その結果についても同様に以下の表1に示す。
<実施例2>
有機物撥水層を形成する際に、ジオクタデシルスルフィドの代わりにドデカンチオールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして銀被覆導電性粒子を得た。
<実施例3>
有機物撥水層を形成する際、ベンゾトリアゾールを使用したこと以外は、実施例1と同様にして銀被覆導電性粒子を得た。その際、ベンゾトリアゾールを2質量%、ポリエチレングリコールを1質量%含む水溶液を使用し、洗浄後のスラリーへ添加した後の撹拌保持温度は30℃、撹拌保持時間は15分間とした。
<実施例4>
有機物撥水層を形成する際、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルを使用したこと以外は、実施例1と同様にして銀被覆導電性粒子を得た。その際、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルを3質量%、添加剤としてのラウリル硫酸ナトリウムを1質量%含む水溶液を使用し、洗浄後のスラリーへ添加した後の撹拌保持温度は25℃、撹拌保持時間は10分間とした。
<実施例5>
母粒子として平均粒径が6.0、粒径の変動係数が4.5%のシリカ粒子を用いたこと、及び有機物撥水層を形成する際、添加剤にラウリル硫酸ナトリウムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして銀被覆導電性粒子を得た。
<実施例6>
パラジウム層を形成する代わりに金層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして銀被覆導電性粒子を得た。なお、金層の形成は、パラジウム含有液の代わりに、シアン化金カリウム24g、錯化剤としてクエン酸アンモニウム400gをイオン交換水中に溶解することにより調製した金含有液を使用し、還元剤として硫酸ヒドラジンを滴下することにより行った。
<比較例1>
母粒子の銀層を形成した後、パラジウム層を形成せずに有機物撥水層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして銀被覆導電性粒子を得た。
<比較例2>
母粒子の銀層の表面にパラジウム層を形成した後、有機物撥水層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして銀被覆導電性粒子を得た。
<比較試験及び評価>
実施例1〜6及び比較例1,2で得られた銀被覆導電性粒子を用いて、以下の(i)〜(iii)の評価を行った。これらの結果を、以下の表1に示す。また、実施例1で得られた銀被覆導電性粒子を走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 型式名:SU−1500)で観察したときの写真図を、図1に示す。
(i) エレクトロケミカルマイグレーション試験:樹脂(バインダー成分)としてエポキシ樹脂(三菱化学 jER826)15gと、硬化剤として酸無水物硬化剤(新日本理化 リカシッドMH-700)10gと、硬化促進剤としてマイクロカプセル型硬化剤(旭化成イーマテリアルズ ノバキュアHX3932)1gと、溶剤としてシクロヘキサノン5gとを混合し、絶縁性接着剤(有機ビヒクル)を調製した。これに、銀被覆導電性粒子75gを配合して混合することにより導電性ペーストを調製した。この調製した導電性ペーストを用い、スクリーン印刷法により、ガラス基板上に、L&Sが0.2mmの櫛型電極を形成してエレクトロケミカルマイグレーションの評価を行った。
具体的には、85℃、85%湿度雰囲気下、上記形成した電極の両端に5Vの電圧を印加した状態で保持し、エレクトロケミカルマイグレーションが発生するまでの時間を計測した。表1中、「優」は500時間経過後も絶縁性を維持し、電流値が0.1mA以下であった場合を示し、「良」は、500時間経過後も絶縁性を維持し、電流値が1mA以下であった場合を示し、「不可」は、エレクトロケミカルマイグレーションにより短絡が生じ、電流値が1mAを超過した場合を示す。
(ii) 接触角:銀被覆導電粒子をペレット成型機の型内に50g充填し、14.7MPa(150kg/cm2)の圧力を印加し15分間保持することで、ペレット状の成型体を形成した。このペレット成型体に対して、接触角計(協和界面科学 Drop Master)を用いて水滴を滴下し、接触角を測定した。
(iii) 抵抗値:銀被覆導電性粒子5.0gを充填した圧力容器に9.8mPaの圧力を印加して圧粉体とし、このときの抵抗値を抵抗率計(三菱化学アナリテック社製 型式名:ロレスタGP MCP)のように圧縮したときの抵抗率を測定した。
表1から明らかなように、実施例1〜6と比較例1,2を比較すると、銀層の表面をパラジウム層又は金層で被覆せず、有機物撥水層だけで被覆した比較例1では、十分な耐エレクトロケミカルマイグレーション性を保持することはできず、短絡を引き起こした。また、パラジウム層の表面を有機物撥水層で被覆しなかった比較例2では、ペレット成型体の接触角が十分でなく、撥水性が不足したために耐エレクトロケミカルマイグレーション性に劣り、短絡を引き起こした。
これに対し、銀層の表面をパラジウム層又は金層で被覆し、更にパラジウム層又は金層の表面を有機撥水層で被覆した実施例1〜6では、十分に低い体積抵抗率を示すとともに、500時間以上も絶縁性を維持し、非常に優れた耐エレクトロケミカルマイグレーション性を示した。
本発明は、太陽電池パネル、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の電子機器又は電子表示機器或いは半導体素子等の製造に好適に利用できる。

Claims (3)

  1. 非金属粒子を母粒子とし、前記母粒子の表面が銀層で被覆され、前記銀層の表面がパラジウム層又は金層で被覆され、前記パラジウム層又は金層の表面が有機物撥水層で被覆された構造を有する銀被覆導電性粒子。
  2. 前記有機物撥水層がスルフィド化合物又はチオール化合物を主成分とする硫黄含有化合物、ベンゾトリアゾール化合物又はポリオキシエチレンエーテル類界面活性剤のいずれかを用いて形成された被覆層である請求項1記載の銀被覆導電性粒子。
  3. 請求項1又は2記載の銀被覆導電性粒子を含有する導電性材料。
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