JP2016192247A - 二軸配向積層ポリエステルフィルムおよびデータストレージ - Google Patents

二軸配向積層ポリエステルフィルムおよびデータストレージ Download PDF

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Abstract

【課題】突起の並び方が均一な二軸配向積層ポリエステルフィルムおよびそれを用いたデータストレージを提供すること。【解決手段】 A面及びB面を有する二軸配向積層ポリエステルフィルムであって、A面の表面粗さ(Ra)が3nm以下でありかつ、A面の地合表面粗さ(Rabase)が2.5nm以下であり、反対側の面であるB面の突起の配置係数(DI)が0.70以上であり、B面の突起の確率密度関数(PDF)のピーク値が0.07以上である二軸配向積層ポリエステルフィルムとする。【選択図】なし

Description

本発明は、二軸配向積層ポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは、データストレージなどの塗布型磁気記録テープのベースフィルムとして、好ましく用いることが可能な二軸配向積層ポリエステルフィルムに関する。
ポリエステルフィルムは、比較的安価で、優れた機械的特性を有することから、従来磁気記録テープのベースフィルムに用いられてきた。この場合、ポリエステルフィルムには粗大な突起や欠点がない平坦な表面を有することが求められる。近年、磁気記録テープはクラウドコンピューティングやICT(Information and Communication Technology :情報通信技術)におけるバックアップ用途、アーカイブ用途として、その需要が高まっている。また、ビッグデータの取り扱いにより、保存すべきデータ量が飛躍的に増加しているため、信頼性が高く、かつ高密度な記録技術が追求されている。磁気記録テープのベースフィルムに対しても、高密度化の要求に対応するため、平滑で均一な表面に対する極限追求がされている。
特許文献1および特許文献2には、少なくとも磁性層を形成する側の表面を形成するA層および磁性層を形成しない側の表面を形成するB層に含有される粒子の、種類、粒子径や量を規定することにより、フィルム表面の地合(地肌指数)をある範囲に規制し、データテープなどの塗布型磁気テープのベースフィルムなどに適した二軸配向積層ポリエステルフィルムが開示されている。
しかしながら、さらなる磁気記録容量の増大が要求される中、フィルムの平滑性の定義は見直す必要が生じた。磁気記録特性と、既存の平滑性定義パラメータとの相関が取れなくなる傾向が強くなってきたからである。
特開2014−22026号公報 特開2014−19138号公報
上記状況に鑑み検討したところ、データストレージ用ベースフィルムにおいて、磁性層側、あるいはその反対側における最良の面形態は、突起の並び方が均一なものであり、これにより微細レベルで見た際の、磁性層の均一性や、ヘッドクリアランスが担保され、従来に比べてさらに高密度な記録媒体を製造できることが判明した。本発明の目的は、このように高密度な記録媒体を製造するために好適な二軸配向積層ポリエステルフィルムおよびそれを用いたデータストレージを提供することにある。
本発明では、フィルム表面の突起を、より規則性正しく、均一な面性状を表す指標を定義し、従来とは異なる表面形状を実現する手段を提供する。すなわち、本発明は、A面及びB面を有する二軸配向積層ポリエステルフィルムであって、A面の表面粗さ(Ra)が3nm以下でありかつ、A面の地合表面粗さ(Rabase)が2.5nm以下であり、B面の突起の配置係数(DI)が0.70以上であり、B面の突起の確率密度関数(PDF)のピーク値が0.07以上であることを特徴とする。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、突起の並び方が均一で、極めて平坦な表面を有する、優れた表面性を有しながら、巻取りなどのハンドリング性が良好であるため、高容量型のデータストレージ用途として優れたフィルムを提供することができる。
以下、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムの一実施形態について説明する。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、フィルム面A(以下、A面という)とフィルム面B(以下、B面という)からなる2層以上の二軸配向積層ポリエステルフィルムであって、A面の表面粗さ(Ra)が3nm以下でありかつ、A面の地合表面粗さ(Rabase)が2.5nm以下であり、反対側の面であるB面の突起の配置係数(DI)が0.70以上であり、B面の突起の確率密度関数(PDF)のピーク値が0.07以上であることを特徴とする。
本発明においてポリエステルとは、二塩基酸とグリコールを構成成分とするポリエステルであり、芳香族二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、ナトリウムスルホイソフタル酸、ジブロモテレフタル酸などを用いることができる。脂環族二塩基酸としては、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などを用いることができる。グリコールとしては、脂肪族ジオールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコールなどを用いることができ、芳香族ジオールとして、ナフタレンジオール、2,2ビス(4−ヒドロキシジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ハイドロキノンなどを用いることができ、脂環族ジオールとしては、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどを用いることができる。
さらに、ポリエステルが実質的に線状である範囲内で3官能以上の多官能化合物、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、没食子酸などを共重合してもよく、また単官能化合物、例えばo−ベンゾイル安息香酸、ナフトエ酸等を添加反応させてもよい。また、ポリエチレングリコールなどのポリエーテルやポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルやポリカプロラクトンに代表される脂肪族ポリエステルなどを共重合してもよい。
ポリエステルは2種以上のものをブレンドしてもよく、例えば50質量%以上がポリエステルであれば、ポリエステル以外のものをブレンドしてもよい。
本発明に用いられるポリエステルの固有粘度(オルソクロロフェノール中、25℃で測定)は、ポリエーテルイミドとの溶融混練性、製膜性、溶融押出時の分解性等の観点から、下限値は好ましくは0.55dl/g、より好ましくは0.6dl/g、最も好ましくは、下限値は0.7dl/gである。固有粘度が0.55dl/gより低いと、ポリエーテルイミドとの溶融混練性が低下する。また上限値は、好ましくは2dl/g、より好ましくは1.4dl/g、最も好ましくは1.0dl/gである。固有粘度が2.0dl/gを超えると、押出時の負荷が増え、せん断発熱による分解が起こり、粗大突起を形成することがある。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエーテルイミドを含有していることが好ましい。ポリエーテルイミドとは、脂肪族、脂環族または芳香族系のエーテル単位と環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリマーであり、溶融成形性を有するポリマーであれば、特に限定されない。例えば、米国特許第4141927号明細書、特許第2622678号公報、特許第2606912号公報、特許第2606914号公報、特許第2596565号公報、特許第2596566号公報、特許第2598478号公報のポリエーテルイミド、特許第2598536号公報、特許第2599171号公報、特開平9−48852公報、特許第2565556号公報、特許第2564636号公報、特許第2564637号公報、特許第2563548号公報、特許第2563547号公報、特許第2558341号公報、特許第2558339号公報、特許第2834580号公報に記載のポリマー等が挙げられる。本発明の効果が損なわれない範囲であれば、ポリエーテルイミドの主鎖に環状イミド、エーテル単位以外の構造単位、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が含有されていてもよい。
本発明では、ガラス転移温度が350℃以下、より好ましくは250℃以下のポリエーテルイミドが好ましく、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミンまたはp−フェニレンジアミンとの縮合物が、ポリエステルとの相溶性、コスト、溶融成形性等の観点から最も好ましい。このポリエーテルイミドは、SABIC社製で「Ultem1000または5000シリーズ」の商標名で知られているものである。
ポリエーテルイミドの含有量は、フィルムの全質量中の0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムにおいて、効果を発現させるためには、ポリエーテルイミドの含有量が0.5質量%以上であることが好ましく、ポリエーテルイミドが核物となった内部異物を抑制するためには、ポリエーテルイミドの含有量は10質量%以下であることが好ましい。
ポリエーテルイミドはフィルム中において平均分散径が1nm以上50nm以下で分散していることが好ましい。平均分散径がこの範囲内であれば、強度や寸法安定性、寸法変化率のばらつきを抑制し、特性が大幅に向上したフィルムを得ることが可能となる。平均分散径が50nmより大きくなるとポリイミドによるポリエステル分子の拘束力が低下するためガラス転移点が低下し、熱寸法安定性が悪化し、寸法変化率のばらつきが悪化する傾向がある。さらに良好な物性を得るためには、平均分散径は20nm以下が好ましく、最も好ましくは10nm以下である。また、現在の混練技術を考慮すると、平均分散径を1nm未満とすることは実質的に不可能であり、下限は好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上である。
ポリエステル中に、ポリエーテルイミドを平均分散径が1nm以上50nm以下で分散させる方法(あるいは、相溶し含有させる方法)は、ポリエステルとポリエーテルイミドとを押出機に投入し、(1)スクリュー剪断速度を30秒−1以上、300秒−1未満、(2)押出温度を280℃以上、320℃以下、(3)ポリマーの吐出時間を30秒以上、10分以下に設定して、樹脂組成物を成形する。上記(1)については、押出機のスクリュー剪断速度(=πDN/h、D:スクリュー直径、N:スクリュー回転数、h:スクリュー計量部の溝深さ)は50秒−1以上、250秒−1未満がより好ましく、90秒−1以上、200秒−1未満に設定するのが、ポリエステルの熱分解抑止およびポリエステルとポリエーテルイミドの相溶化の観点から好ましい。フィルム中におけるポリエーテルイミドの平均分散経は、3nm以上5nm未満であることが好ましい。
ポリエステルまたはポリエーテルイミドの微分散化の促進と相溶化ならびに粗大分散物の低減の観点から、スクリューの長さと直径の比が20以上、好ましくは25以上の各種ミキシング型スクリューを使用することが好ましい。ミキシング型スクリューとは、ニーディングディスク、ロータ型などが適している。押出機は一軸でも二軸混練タイプのいずれでもよいが、高剪断・低発熱タイプのスクリューを使用することが有効で、二軸タイプが好ましく用いられる。また本発明では、ポリエステルとポリエーテルイミドの相溶化およびポリエステルの熱分解抑制の観点から、押出温度を290℃以上、320℃以下とするのが好ましい。また、ポリマーの吐出時間は1.5分以上、6分以下とするのがより好ましく、2分以上、5分以下に設定するのが最も好ましい。吐出時間は、フィーダー、ギアポンプの運転条件や押出機のスクリュー回転数を変更することにより適宜変更できる。ポリマーの吐出時間とは押出機および単管、フィルター、口金も含めた押出工程の全容積Vをポリマーの吐出量Qで割った値V/Qである。吐出時間は、フィーダー、ギアポンプの運転条件や押出機のスクリュー回転数を変更することにより適宜変更できる。
さらに、ポリエステル中にポリエーテルイミドを含有させる方法は、上記により得られた、ポリエステルにポリエーテルイミドが相溶した樹脂組成物を用いて製膜した、二軸延伸ポリエステルフィルムを回収した原料も、ポリエステル中にポリエーテルイミドが偏ることなく分散しているので、好ましく使用できる。この際も、回収原料中のポリエーテルイミドの含有量についても0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
この際、回収原料は、フィルムをグラインダー(クラッシャー)にて粉砕後にフレークを得て、必要に応じフレークを押固めた後、溶融し、目開きが10〜50μmのフィルターにて異物を除去後、口金より樹脂を吐出・冷却し、連続的に太い糸状に固化させた樹脂(ガット)を得た後、このガットを回転刃により切断し、回収原料を得ることが好ましい。
また、ポリエステルには、フィルム層表面の突起高さや表面粗さを適正化させるために、不活性粒子を含有させることができる。
この不活性粒子については、好ましくは数平均粒子径0.1〜5μmのもの、より好ましくは0.3〜3μmのものを用いる。数平均粒子径の異なる粒子を添加してもよい。
含有せしめる不活性粒子の数平均粒子径が0.1μm未満であると、十分な滑り性が得られないためフィルムを巻き取ることが困難となることがある。また、5μmを超えると、フィルムの延伸工程で破れが発生し生産性が低下することがある。
不活性粒子の種類としては、球状シリカ、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機粒子、またその他有機系高分子粒子としては、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン−アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、メラミン樹脂粒子等が好ましい。これらの1種もしくは2種以上を選択して用いることもできる。
これらの不活性粒子は、ポリエステル重合工程の段階で添加することにより、不活性粒子含有ポリマーを準備することができる。例えば、ポリエステルのグリコール成分であるエチレングリコールのスラリーとし、重縮合前のエステル交換後、あるいはエステル化後のオリゴマーの段階で不活性粒子含有スラリーを添加し、引き続き、重縮合反応を行うことで、不活性粒子含有ポリマーを得ることができる。
その後、必要に応じてチップを適宜混合した後、真空乾燥機により、チップ中の水分を除去する。その後押出機で溶融して押出した後、ギアポンプで溶融ポリマーを一定の吐出量にする。その後フィルターで濾過を行う。
濾過後の溶融樹脂は、スリット状のダイ(口金)から吐出して、シート状に成型する。このシート状物を表面温度20〜50℃のキャスティングドラムに巻付け冷却固化し、未延伸(未配向)フィルムとする。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、縦および横方向の両方向において、所望の高い機械特性を得るため、延伸を行うことが好ましい。
延伸方式としては、同時二軸または逐次二軸延伸のいずれでもよい。該未延伸シートをフィルムの長手方向および幅方向に延伸、熱処理して、目的とする面配向度のフィルムを得る。好ましくはフィルムの品質の点でテンター方式によるものが好ましく、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方式、長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が好ましい。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムを逐次二軸延伸にて延伸する際は、長手方向への延伸は、ロール間ドローによる延伸を縦延伸機にて実施し、幅方向に延伸する際は、テンター方式にて横延伸機にて実施することが好ましい。
縦延伸工程は、未延伸フィルムを、搬送ロールにて予熱し、80℃以上130℃未満の延伸温度まで加熱した後、ロール間ドローにより長手方向に延伸する。延伸温度が80℃未満であると、延伸時にフィルムが破断しやすくなり、130℃以上では、十分な縦配向を得られず、強度が低下することがある。延伸倍率は、2.5倍以上7.0倍未満が好ましい。延伸倍率が2.5未満であると強度が低下し、7.0倍以上であると延伸時にフィルムが破断しやすくなる。また、縦延伸速度は1,000%/分〜200,000%/分であることが望ましい。
かかる長手方向に延伸された一軸延伸フィルムを、横延伸機にて80℃以上120℃未満で3倍以上6倍未満で幅方向に延伸し、二軸延伸(二軸配向)フィルムとする。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行なってもよいし、同時2軸にて延伸してもよい。
更に、二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行なうが、この熱処理はオーブン中、加熱されたロール上等、従来公知の任意の方法で行なうことができる。熱処理温度は通常150℃以上245℃未満の任意の温度とすることができるが、通常1〜60秒間行なうことが好ましい。熱処理は、フィルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行なってもよい。また、熱処理後は熱処理温度より0〜150℃低い温度で幅方向に0〜10%弛緩させる。
熱処理後のフィルムは、例えば中間冷却ゾーンや除冷ゾーンを設け、寸法変化率や平面性を調整することができる。また特に、特定の熱収縮性を付与するために、熱処理時あるいはその後の中間冷却ゾーンや除冷ゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に弛緩してもよい。
延伸後のフィルムは、搬送工程にて冷却させた後、エッジを切断後巻取り、中間製品(エッジを切り取った後の巻き取りフィルムロール)を得る。該搬送工程にて、フィルムの厚みを測定し、厚みの調整に必要なデータを得ることや、欠点検出器による異物検知を、専用の測定装置により実施する。
中間製品はスリット工程により適切な幅にスリットして巻き取り、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムが得られる。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、A面とB面からなる2層以上の構成を有している。層の数は3層でも4層以上でもよいが、層が3層以上になった際、平滑性とハンドリング性および、回収原料を中間層に入れることによる低コスト化をバランス良く実現させることができるので望ましい。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムにおけるA面は、例えば磁気記録材料用途においては、磁性層を塗布する面であることが望ましい。本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムを、離型フィルムとして用いる場合は、A面に離型層を設け、部材を成型するために用いるのが望ましい。また、B面は、A面と比べ、粗面であることが、加工中や、巻取り工程において、エアーを適切に排除できるため好ましい。具体的には、B面の表面粗さ値がA面の表面粗さ値の1.5倍以上3.0倍以下であることが好ましく、1.7倍以上2.5倍以下が更に好ましい。
上述したように、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、A面の表面粗さ(Ra)が3nm以下でありかつ、A面の地合表面粗さ(Rabase)が2.5nm以下であり、反対側の面であるB面の突起の配置係数(DI)が0.70以上であり、B面の突起確率密度関数(PDF)のピーク値が0.07以上である。以下に、それぞれの表面性パラメータの意味や技術的意義について説明する。
[A面の表面粗さ Ra]
A面の表面粗さとは、3次元の中心線平均粗さを指し、Raと表記する。このRaは表面の平滑性を表す。A面の表面粗さは、A面を構成する層(ここではA層と称する)の厚みや、A層に添加する粒子の粒子径、添加量にて制御が可能であり、延伸時の温度や、熱固定温度を調整して、フィルムの結晶化挙動をコントロールすることによっても、A層の表面粗さを制御することは可能である。このA面の表面粗さ Raは、磁性層の塗布厚みを均一に保ち、エラーレートを少なくするためには3.0nm以下である。さらに良好な実施形態として、このA面の表面粗さ Raは2.0nm以下であることが好ましく、更には1.0nm以下が好ましい。好ましい下限値としては0.4nmであり、さらに好ましい下限値は0.6nmである。
[A面の地合表面粗さ(Rabase)]
地合表面粗さ(Rabase)とは、表面形態測定器により計測した表面生データにおける突起部を、ソフトウェア上で除去した後の、残りの面に対して評価した表面粗さを示す。突起の認定は、スレッシュホールド値(Threshold)にて行うが、表面生データには、データの傾きやうねり、ノイズが含まれていることがあるため、回帰処理および平滑化処理(ガウシアンフィルタ)を行う。本願においては、これをデータの前処理と称する。地合表面粗さは、突起が存在する部分を除いた本来のベース面に対する粗さを表す指標である。より高密度化した磁気記録層において、磁気特性は、磁性層の微小領域での厚み斑が、ノイズの原因となり、この磁性層の厚み斑を良好にするためには、地合表面粗さを本願の範囲にてコントロールすることによる達成できることを発明者たちは見い出した。近年の平滑なフィルムにおいて、突起は表面のごく一部を占めるに止まり、投影面積でみると僅かな領域を占めるのみとなっているため、突起領域を除いた平坦面(ベース面)の特性が、磁気特性に寄与する真の因子であるからである。また、磁気記録層の表面うねりを除去するための、カレンダー処理工程の機能も、該地合表面粗さをコントロールすることにより、担うことができる。さらには、地合の粗度を微小な領域で検証した際に、磁性粉の垂直配向をより規則正しく行うことができ、磁気特性を微小な領域においても、均一にすることができ、ひいては、高密度な磁気記録を、高い信頼性で行うことができる。
この地合表面粗さ(Rabase)は2.5nm以下であることが、高密度な磁気記録を高い信頼性で行うためには重要である。さらには、この地合表面粗さ(Rabase)は1.5nm以下であることが好ましい。好ましい下限値としては0.4nmであり、さらに好ましい下限値は0.6nmである。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムにおける地合表面粗さは、単に表面粗さを低減させるための従来の手法、たとえば、粒子の径や添加量を減らすのみでは達成し難く、同時二軸延伸機による延伸が非常に重要となる。例えば、縦延伸機、横延伸機からなる逐次二軸延伸機においては、キャストされた未延伸フィルムを縦延伸ロールにて昇温する時に、未延伸フィルムとロールとの微細な粘着による表面の凹凸が発生し、また、結晶化履歴の微少な違いにより、その後の横延伸時においての表面形成過程で微小なムラが生じることが多い。このムラは横延伸後の熱固定プロセス以降でほぼ確定するため、ロール延伸工程を用いない同時二軸延伸は、その意味で重要な工程である。
また、同時二軸延伸における昇温過程において、上記結晶化履歴のムラを作らないためには、温度設定や延伸条件をおのおの調整することが好ましい。特には、延伸時の温度を90℃以上200℃以下に設定することが、表面形成初期過程における微小なムラを抑制できるので好ましい。また、延伸速度が1,000%/分以上200,000%/分以下とすることにより、延伸を均一に行うことができるため好ましい形態の表面形成が可能となる。また、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムにおける横延伸については、横延伸区間、すなわち、横延伸が開始され終了するまでの、長手方向にフィルムが搬送され縦・横延伸される課程において、フィルムが横方向に伸張される度合いを、延伸区間内で調整することにより、表面形成過程で微小なムラを抑制することができることを見いだした。具体的には、延伸パターンが「オニオン状」パターンであることが好ましい。次に、ここでいうところの「オニオン状」パターンについて述べる。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムにおける「オニオン状」とは、横延伸においける延伸区間、つまり横延伸が開始され終了するまでの、長手方向の区間内において、2回以上、横延伸倍率が異なる延伸区間があり、最初の延伸区間については、最初の延伸区間での、フィルム幅伸長率(後述する)が、全横延伸区間におけるフィルム幅伸長率よりも高く、かつ、その後の延伸倍率が異なる区間では、前の区間よりもフィルム幅伸長率が低くなるような延伸方式である。このため、ステンターのレールパターンを上部より俯瞰した際にオニオン(タマネギ)のごとく外側に膨らんだようなパターンを描く。この「オニオン」延伸パターンと、延伸時の昇温が、地合表面粗さ(Rabase)に対する効果を奏する。ここでいうところの「フィルム幅伸長率」とは、ステンターの各々の延伸区間におけるステンター内のフィルムが、長手方向1m進んだ際の、フィルム幅の伸長率を指す。ここでのフィルム幅とは、ステンター内のクリップ間距離と同じ値とする。具体的には、式1に示すとおりである。
フィルム幅伸長率=(各延伸区間終点のSTNレール幅−各延伸区間始点のSTNレール幅)/(各延伸区間終点の長手方向フィルム位置−各延伸区間始点の長手方向フィルム位置)×100 ・・・式1
Rabaseは、表面形態測定器により計測した表面生データにおける突起部を、ソフトウェア上で除去した後に求めるパラメータであるが、次に示す突起の配置係数(DI)および突起の確率密度関数(PDF)のピーク値は、表面形態測定器により計測した表面生データにおける突起部を、ソフトウェア上で抽出した後に計算させるパラメータである。次にパラメータが意味するところを下記する。
[突起の配置係数(DI)]
突起の配置係数(DI:Dispersion Index。以下、単にDIと表記することがある)は、突起の分布状態を示したものである。突起の最近点間距離の平均値に、面内密度の平方根値を乗じた値である。面内密度とは、測定面積に対する突起の山切片の総和との比である。ここでいう配置係数は分布の状態を示す。理想的にランダムな場合は0.5、部分的に密集する傾向がある場合は、0.5より小さな値となり、規則的に配置されている時には大きくなり、最大は、正三角形状格子の各頂点の位置に突起が存在する場合の1.074となる。なお、突起の最近点間距離とは、ある頂上あるいは谷から最も近い頂上あるいは谷までの距離である。従来このような突起の配置を規定するのは、添加粒子が凝集し突起高さが増大する懸念があったために指標化していたものであったが、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムにおいては、突起の配置が巻取り時や巻き取った後の、微小領域でのエアー抜けの均一性を維持することや、微細な磁性粉を均一に塗布するにあたっての障害を少なくするための効果を予め予測するために規定している。
本発明において、B面の突起の配置係数(DI)は0.70以上であるが、好ましい範囲は0.80以上1.07以下である。より好ましくは0.90以上1.000以下である。この範囲に突起の配置係数DIを制御することにより、良好な巻姿と、磁性層の塗工特性を得ることができる。
この突起の配置係数DIを所望の数値に制御する為には、体積平均粒子径が0.1μm以上2.0μm以下であることが好ましく、真円度が良好な粒子を用いることが好ましい。この真円度は、体積形状係数にて表すことができる。本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムにおいて、フィルム内に添加する粒子の形状・粒子径分布については均一なものが好ましく、とくに粒子形状は球形に近いものが好ましい。体積形状係数は好ましくはf=0.3以上π/6以下であり、より好ましくはf=0.4〜π/6である。ここで、体積形状係数fは、次式で表される。
f=V/Dm
ここでVは粒子体積(μm),Dmは粒子の投影面における最大径(μm)である。
なお、体積形状係数fは粒子が球のとき、最大のπ/6(=0.52)をとる。また、必要に応じて濾過などを行うことにより、凝集粒子や粗大粒子などを除去することが好ましい。
このことから、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムにおいて、フィルム内に添加する粒子は、乳化重合法で等で合成された、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子が好適に使用できるが、とくに架橋ポリスチレン粒子、架橋シリコーン、さらに球状シリカなどは体積形状係数が真球に近く、粒径分布が極めて均一であり、均一にフィルム表面突起を形成する観点で好ましい。複合層のサブ層厚みを適切な範囲に保つこと、具体的には、A層に含有される不活性粒子の平均粒径d(μm)と積層厚みt(μm)との関係t/dが0.5〜20であることが望ましい。また、同時二軸延伸方式を採用することも好ましい。また、未延伸フィルム上にマイクロドットを付与し、熱硬化、延伸することにより、さらに配置係数DIを好ましい範囲に収めることができる。
ここで述べるマイクロドットとは、二軸配向積層ポリエステルフィルムの、フィルム面上に設けられる、小さい(マイクロ)点状(ドット)の突起物を指す。ここで言うところの、点状の突起物は、直径が0.01μmから50μmの大きさであり、10nm以上10μm以下の高さを有する。マイクロドットの形状は、半球状、ピラミッド状(多面体)、直方体状、円柱状が好ましく、マイクロドットそのものに窪み(ディンプル)を有していてもよいし、マイクロドット内部に微多孔を有していてもよい。マイクロドットは、フィルム上にランダムに設けてもよいし、規則性を持たせ設けてもよい。なお、二軸配向積層ポリエステルフィルムには、粒子を含んでも含まなくてもよい。また、単膜フィルム、積層フィルムともに、フィルム面Aおよびフィルム面Bを構成する層についても、粒子を含んでいても含んでいなくてもよいが、実質的に粒子を含んでいないほうがより、形成されたマイクロドットの規則性を有効に得ることができ、均一な面を形成することができるので好ましい。フィルム上に設けるマイクロドットは、先述の大きさ・高さのものであれば、大きさや高さの分布は問わないが、大きさ、高さ共に1σ以内にバラツキを抑制するほうが、より均一な平滑面を形成することができ好ましい。また、マイクロドットは、樹脂から構成されていることが好ましい。マイクロドットを設けるにあたっては、溶融あるいは溶液状態で、樹脂からなる塗剤(以降、単に塗剤と称する)を吐出・定着させ、加熱、場合により紫外線照射を行った後、横延伸機、延伸機あるいは、同時二軸延伸機により延伸するプロセスを経て設けることが好ましい。このため、塗液を吐出するまでは粘度が低く、吐出後の加熱工程にて固化が開始され、延伸工程にて完全に硬化する樹脂が望ましい。また、マイクロドットの形成後に延伸するプロセスにより、マイクロドットの脱落を防止することができる。この要件を満たす樹脂は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびシリコーン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。これらの各樹脂は、単一の種類で用いてもよいし、2種類以上混合させて用いてもよい。
これら樹脂には、水系あるいは溶剤系の液体に分散させることもできる。分散状態は水系においてはコロイド状が好ましい。
これらマイクロドットにて表面を形成することにより、規則性の正しい表面突起を形成することができるため、配置係数DIを好ましい範囲に収めることができる。
[突起の確率密度関数(PDF)のピーク値]
突起の確率密度関数(Probability Density Function、以下、単にPDFと表記することがある)のピーク値とは、突起大きさの均一性を示すパラメータである。具体的には、先述の特定面積内にて突起として分離しカウントしたものの、断面積に関する正規分布曲線を作成する。この際カウントした突起の総和が1になるようにする。該正規分布曲線にて、曲線のピーク値を求め、これを突起の確率密度関数(PDF)のピーク値とする。この分布曲線が急峻なほど、突起が均一であることを示す。B面における該数値が0.07以上であると、相対的に平坦な箇所が多くなり、磁気材料用途として良好な磁気特性を得ることができる。さらに好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上である。好ましい上限値としては0.5である。さらに好ましい上限値としては0.4である。
突起の確率密度関数を本願の範囲に制御するためには、突起の配置係数DIを所望の数値に制御する際に示した、粒子径や粒子の真円度、粒子をB層に含有させる際の添加量を調整することに加え、同時二軸延伸機における横方向への延伸について、温度と延伸速度を先述のように調整することで達成することができる。
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、磁気記録テープのベースフィルムとして用いられるのに好適である。また、磁気記録テープを製造する際においては、磁気記録を行う面を本発明におけるA面とし、その反対の面を本発明におけるB面とすることで、高い磁気密度を磁気記録層に付与でき、しかも、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムを製膜する工程や、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムを用いた加工工程においての、ハンドリング性や、巻取り性が良好となる。
また、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムからなる磁気記録テープは、データストレージとして用いるのに良好である。表面の均一さは、冗長性を持たせたデータ保存形式において、重複するデータ(二重保存されたデータ)それぞれの再現性が担保されるためである。
なお、本発明は、データストレージなどの塗布型磁気記録テープのベースフィルムとして、好ましく用いることが可能な二軸配向積層ポリエステルフィルムを提供することが可能となるが、上記で説明した表面性を満たすことにより、今後さらなる平滑化を要求される離型フィルム用途、特には積層セラミックスコンデンサ用途の離型フィルムなど、要求される表面粗さの数値の単位がnmを切る可能性があるような用途に関しても、「平滑性」の対比が可能となる(正確な評価が可能となる)ため、平滑性が極限まで求められる用途に最適に用いることができる。
以下に、表面特性に関する測定方法を述べる。
(1)A面の表面粗さ(Ra)、最大突起高さ(Rmax)
[データの前処理]
AFMにてフィルム表面の測定を30μm角で測定し、測定データに関し平坦化処理を実施する。該データを表面形状・粗さ解析ソフトProAna3D(岩手大学 内舘道正,“表面形状・粗さ解析ソフトProAna3D”,http://www13.plala.or.jp/Uchi/progprog01.html
より入手)にて読み取り、該面内のデータについて、傾きやうねり等の成分を除去するために、面回帰を行った後、X方向およびY方向のラインについて、1ライン毎の回帰処理を実施する。これをデータの前処理と称す。
前処理条件
・Threshold(しきい値の種類):“Height”、高さ:0.01μm
・Assessment Region(抽出する部分):“Lower”
表面粗さ(Ra)、最大突起高さ(Rmax)は、該データの前処理を実施した後のデータを用い、上記ソフトウェアにて算出する。
AFM測定条件
・測定モード:タッピングモード
・測定面積:30μm×30μm
・サンプリング数:256本×256本
・Scan Rate:0.5Hz
(2)A面の地合表面粗さ(Rabase
A面の地合表面粗さ(Rabase)とは、フィルム表面から突起を模擬的に除去した際の地合の粗さである。
[Rabaseの算出]
前記前処理を実施した後のデータについて、高さのしきい値(Threshold)0.01μm、Assessment Regionを“Lower”と選択し、突起を除外されたと見なされた領域に関する表面粗さを(Rabase)とする。
(3)突起の配置係数(DI)
突起の配置係数(DI)とは、突起間の最も近い距離を平均化した値を、面内密度のスクエア・ルートで割った値であり、いかに均一に突起が分布しているかを表すパラメータである。理想的なランダム状態では0.500となり、最大値は、正三角形格子状の1.074である。
前記データの前処理を実施したデータに関し、以下のパラメータ値により解析を行い、突起の配置係数(DI)を算出する。まず突起として認定するためのしきい値の種類と、抽出する部分をThreshold値により選択する。Threshold値は、高さのしきい値を0.03μmに指定し、Assessment Regionを“Higher”(高いほう)に選択する。評価する曲率半径:“Positive”と設定し、正の曲率(突起を意味する)を評価することと選択。解析は、ソフトウェアでのボタンをクリックし計算される。該パラメータ値により解析を行い、突起の配置係数(DI)を算出する。
(4)突起の確率密度関数(PDF)のピーク値
突起の確率密度関数(PDF)のピーク値とは、突起としてカウントしたものの大きさ(断面積)が、大きさの総和を1としたときの大きさ分布曲線を示し、この分布曲線が急峻なほど、突起が均一であることを示す。前記の、前処理を実施したデータに関し、突起確率密度関数を求めた後に、確率密度のピーク値を求める。
条件値
・Total interval(確率密度関数を計算するZ値の範囲)
:最小値−0.01um、最大値0.03um
・Interval number(分割数):200
(5)原反の巻取り性評価
スリッターでの巻取り時における収率にて判断する。すなわち、
A:巻取り良好で、シワの混入やツブの混入による収率は85.0%以上100.0%以下で大変良好
B:収率70.0%以上85.0%未満で許容範囲内
C:収率70.0%未満であり、許容できない範囲の収率である。
(6)塗布性
[評価用磁気テープの調製]
1m幅にスリットしたフィルム(すなわち支持体)を張力200Nで搬送させ、支持体の一方の表面(A面)に下記組成の磁性塗料及び非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布(上層を磁性塗料で塗布厚0.2μmとし、下層を非磁性塗料で塗布厚0.9μmとした。)し、磁気配向させ、100℃にて乾燥させた。次いで、反対側の表面(B面)に下記組成のバックコートを塗布した後、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)で、温度85℃、線圧2.0×10N/mでカレンダー処理した後、テープ原反として巻き取った。このテープ原反を1/2インチ(12.65mm)幅にスリットしてパンケーキとし、このパンケーキから長さ200m分をカセットに組み込んで評価用のカセットテープとした。
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100質量部
[Fe:Co:Ni:Al:Y:Ca=70:24:1:2:2:1(質量比)]
[長軸長:0.09μm、軸比:6、保持力:153kA/m(1,922Oe)、飽和磁比:146Am/kg(146emu/g)、BET比表面積:53m/g、X線粒径:15nm]
・変成塩化ビニル共重合体(結合剤) : 10質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・変成ポリウレタン(結合剤) : 10質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・ポリイソシアネート(硬化剤) : 5質量部
(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コロネートL)
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5質量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1質量部
・カーボンブラック(帯電防止剤) : 1質量部
(平均一次粒子径:0.018μm)
・アルミナ(研磨剤) : 10質量部
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
(非磁性塗料の組成)
・変成ポリウレタン : 10質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体 : 10質量部
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・メチルエチルケトン : 75質量部
・シクロヘキサノン : 75質量部
・トルエン : 75質量部
・ポリイソシアネート : 5質量部
(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名:コロネートL)
・2−エチルヘキシルオレート(潤滑剤) : 1.5質量部
・パルミチン酸(潤滑剤) : 1質量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック : 95質量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.018μm)
・カーボンブラック : 10質量部
(帯電防止剤、平均一次粒子径0.3μm)
・アルミナ
(αアルミナ、平均粒子径:0.18μm)
・変成ポリウレタン : 20質量部
(数平均分子量:25,000、スルホン酸基含有量:1.2×10−4当量/g、ガラス転移点:45℃)
・変成塩化ビニル共重合体
(平均重合度:280、エポキシ基含有量:3.1質量%、スルホン酸基含有量:8×10−5当量/g)
・シクロヘキサノン : 200質量部
・メチルエチルケトン : 300質量部
・トルエン : 100質量部
[塗布性の評価]
上記にて作製したカセットテープについて、塗布ムラ又は塗布抜けを目視で確認した上で、市販のデータストレージドライブの容量が、非圧縮時で25TBのものを用いて24時間走行させ、磁性層の剥がれを確認して下記の基準によりテープの磁性層の塗布性を評価した
S:ムラ、塗布抜け及び剥がれが全く無く、塗布性良好である
A:ムラ、塗布抜け及び剥がれがほぼ無く、塗布性に問題ない
B:ムラ、塗布抜け及び剥がれが時々発生し、塗布性に若干問題あり
C:ムラ、塗布抜け及び剥がれが頻発しており、塗布性に問題あり。
(7)エラーレート
上記で作製したカセットテープについて、市販のデータストレージドライブの容量が、非圧縮時で25TBのものを用いて23℃50%RHの環境で記録及び再生することでエラーレートの発生状況を評価した。エラーレートは、ドライブから出力されるエラー情報(エラービット数)を用いて次式にて算出し、下記基準で評価した。下記基準のうち、Cが不合格となる。
エラーレート=(エラービット数)/(書き込みビット数)
S:エラーレートが1.0×10−6未満
A:エラーレートが1.0×10−6以上、1.0×10−5未満
B:エラーレートが1.0×10−5以上、1.0×10−4未満
C:エラーレートが1.0×10−4以上
[実施例1]
(1)PETペレットの作成
(PETペレットXの作成)
テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム・4水和物0.1質量部及び三酸化アンチモン0.05質量部を加え、140〜230℃でメタノールを留出させつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルを5質量%含むエチレングリコール溶液を1質量部(リン酸トリメチルとして0.05質量部)添加した。トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下するため、余剰のエチレングリコールを留出させながら、反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにして、エステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達した後に、反応内容物を重合装置へ移行した。反応内容物の移行後、反応系を230℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分間とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合反応を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした。)を示した。そこで反応系を窒素パージして常圧に戻すことで重縮合反応を停止させ、反応物を冷水にストランド状に吐出させてから直ちにこれをカッティングして、固有粘度0.62のPETペレットXを得た。
(PETペレットYの作成)
上記と同様にポリエステルを製造するにあたり、エステル交換後、体積平均粒径0.2μm、体積形状係数f=0.51、体積平均粒径0.06μm、体積形状係数f=0.51、モース硬度7の球状シリカをそれぞれ添加し、重縮合反応を行い、粒子をポリエステルに対し1質量%シリカを含有するPETペレットYを得た。
(PETペレットZの作成)
280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、前記にて調製したPETペレットXを98質量部と、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子を10質量%含有する水スラリーを20質量部(球状架橋ポリスチレンとして2質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持して水分を除去し、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2質量部含有する固有粘度0.62のPETペレットZ(0.3)を得た。また、280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、前記にて調製したPETペレットXを98質量部と、平均径0.1μmの球状架橋ポリスチレン粒子を10質量%含有する水スラリーを20質量部(球状架橋ポリスチレンとして2質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持して水分を除去し、平均径0.1μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2質量部含有する固有粘度0.62のPETペレットZ(0.1)を得た。さらに、280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、前記にて調製したPETペレットXを98質量部と、平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を10質量%含有する水スラリーを20質量部(球状架橋ポリスチレンとして2質量部)供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持して水分を除去し、平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子を2質量部含有する固有粘度0.62のPETペレットZ(0.8)を得た。また、平均径0.10μmの球状架橋ポリスチレン粒子を同一の製法にて添加しPETペレットZ(0.1)を得た。
(ブレンドチップ(I)の作成)
また、温度300℃に加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に、前記にて得られたPETペレットXの50質量部とSABICイノベーティブプラスチック社製のPEI「Ultem1010」のペレット50質量部とを供給し、スクリュー回転数を毎分300回転として溶融押出してストランド状に吐出させて温度25℃の水で冷却した後、直ちにこれをカッティングしてブレンドチップ(I)を得た。
(2)二軸配向ポリエステルフィルムの製造
押出機E、F2台を用い、295℃に加熱された押出機Eには、PETペレットXを91質量部、PETペレットYを3質量部、ブレンドチップ(I)6質量部を調合後、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく295℃に加熱された押出機Fには、PETペレットX67質量部と、PETペレットYを15質量部、PETペレットZ(0.3)12質量部とブレンドチップ(I)6質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。2層積層すべくTダイ中でこれらを合流させ(積層厚み比E(A面側)/F(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながらB面側がキャストドラムに接触するように密着冷却固化させ、積層未延伸フィルムを得た。
この積層未延伸フィルム同時2軸延伸テンターに導き、温度90℃にて、長さ方向及び幅方向について同時に、それぞれ3.50倍及び3.60倍延伸した(最初の横延伸区間の、フィルム幅伸長率は30.2%であり、延伸速度は4,727%/分)。この延伸工程における昇温速度は1℃/秒以下とした。続いて、冷却工程を経ることなく、温度190℃で長さ方向及び幅方向について同時に、それぞれ1.20倍及び1.37倍(2番目の横延伸区間の、フィルム幅伸長率は14.5%、)に再延伸した。全延伸区間における延伸倍率は、縦4.20倍、横4.96倍(全延伸区間の、フィルム幅伸長率は22.1%)であったため、横延伸パターンはオニオン延伸である。その後、温度215℃で5.5秒間熱処理後、温度160度で幅方向に1.75%の弛緩処理を行った。その後、25℃にて均一に冷却し、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取って厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
巻取りは安定し、巻乱れのない中間製品を採取できた。該中間製品より、製品幅にスリットし、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムの製品ロールを採取した。製品は、シワや巻ズレなどの発生無く、良好な巻姿であった。
また、表面の評価特性に関し、中間製品より採取したサンプルを、先述の方法により、AFMを用いた測定を実施した。結果を表1に示す。各種の表面特性は所望の範囲を満たしていた。
(実施例2)
実施例1の二軸配向ポリエステルフィルムの製造にて、押出機Eには、PETペレットXを92質量部、PETペレットYを2質量部、ブレンドチップ(I)6質量部を調合後、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく295℃に加熱された押出機Fには、PETペレットX77質量部と、PETペレットYを5質量部、PETペレットZ(0.3)12質量部とブレンドチップ(I)6質量部を調合した以外には、実施例1と同じ製膜条件にて厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。表1の結果の通り、良好な巻き、塗布性、エラーレートの値となった。
(実施例3)
実施例1の二軸配向ポリエステルフィルムの製造にて、押出機Eには、PETペレットXを94質量部、ブレンドチップ(I)6質量部を調合後、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく295℃に加熱された押出機Fには、PETペレットX89質量部、PETペレットYを5質量部、ブレンドチップ(I)6質量部を調合後180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、2層積層すべくTダイ中でこれらを合流させ(積層厚み比E(A面側)/F(B面側)=7/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながらB面側がキャストドラムに接触するように密着冷却固化させ、積層未延伸フィルムを得た後、マイクロドット塗材にはポリスチレン系の水溶性塗材を用い、A面およびB面にマイクロドットコートを実施した。フィルム上に長手方向11μm、幅方向9μmの間隔で両面に連続的に付与し、加熱乾燥装置にて80℃の温度にて乾燥後、同時二軸延伸機にて95℃で未延伸フィルムを昇温後、縦4.20倍、横4.96倍(ストレート延伸)で延伸し、210℃で熱固定を実施した。その後温度160度で幅方向に1.75%の弛緩処理を行い、25℃にて均一に冷却し、フィルムエッジを除去し、コア上に巻き取って厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。なお、横延伸パターンはストレート延伸とした。巻取りは安定し、巻乱れのない中間製品を採取できた。該中間製品より、製品幅にスリットし、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムの製品ロールを採取した。製品は、シワや巻ズレなどの発生無く、良好な巻姿であった。また、塗布性、エラーレートとも良好であった。
(実施例4)
実施例1の二軸配向ポリエステルフィルムの製造にて、押出機Eには、PETペレットXを91質量部、PETペレットYを3質量部、PETペレットZ(0.1)を3質量部、ブレンドチップ(I)6質量部を調合したほかは、実施例1と同じ製膜条件にて厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。原反の巻きは良好であったが、塗布は許容範囲であるがムラが生じた。エラーレートはAと判定した。
(比較例1)
実施例1の二軸配向ポリエステルフィルムの製造にて、押出機Eには、PETペレットXを88質量部、PETペレットYを6質量部、ブレンドチップ(I)6質量部を調合後、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく295℃に加熱された押出機Fには、PETペレットX67質量部と、PETペレットYを15質量部、PETペレットZ(0.3)12質量部とブレンドチップ(I)6質量部を調合した以外には、実施例1と同じ製膜条件にて厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。原反の巻きは許容範囲であるもの、巻きズレの発生が多かった。塗布では、塗布抜けが頻発し、エラーレートが不合格値となった。
(比較例2)
実施例1の二軸配向ポリエステルフィルムの製造にて、押出機E、F2台を用い、295℃に加熱された押出機Eには、PETペレットXを91質量部、PETペレットYを3質量部、ブレンドチップ(I)6質量部を調合後、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく295℃に加熱された押出機Fには、PETペレットX67質量部と、PETペレットYを15質量部、PETペレットZ(0.3)12質量部とブレンドチップ(I)6質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。2層積層すべくTダイ中でこれらを合流させ(積層厚み比E(A面側)/F(B面側)=5/4)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながらB面側がキャストドラムに接触するように密着冷却固化させ、積層未延伸フィルムを得た。その後の製造条件は実施例1と同様として、厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。原反の巻きは良好であるが、塗布抜けが頻発し、エラーレートが不合格値となった。
(比較例3)
実施例1と同様な二軸配向ポリエステルフィルムの製造条件(レシピ)にて、同時二軸延伸の延伸条件をストレート延伸とした。長さ方向及び幅方向について同時に、それぞれ4.20倍及び4.96倍延伸した(全横延伸区間の、フィルム幅伸長率は22.1%)巻取りは良好であったが、塗布抜けが時々発生した。エラーレートが次世代レベルを実現するに至らなかった。
(比較例4)
実施例1の二軸配向ポリエステルフィルムの製造にて、押出機Eには、PETペレットXを94質量部、ブレンドチップ(I)6質量部を調合後、180℃で3時間減圧乾燥した後に供給し、同じく295℃に加熱された押出機Fには、PETペレットX88質量部と、PETペレットYを1質量部、PETペレットZ(0.3)5質量部とブレンドチップ(I)6質量部を調合した以外には、実施例1と同じ製膜条件にて厚さ5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。原反の巻きで欠点発生率が高くなり、評価Cとした。塗布抜けが頻発し、エラーレートが不合格値となった。
(比較例5)
実施例1と同様な二軸配向ポリエステルフィルムの製造条件(レシピ)にて、長さ方向及び幅方向について同時に、それぞれ4.20倍及び2.40倍延伸した(最初の横延伸区間の、フィルム幅伸長率は16.3%、延伸速度は3,152%/分)。続いて、冷却工程を経ることなく、温度190℃で長さ方向及び幅方向について同時に、縦・横延伸をそれぞれ1.20倍及び2.07倍(2番目の横延伸区間の、フィルム伸長率は27.4%、延伸速度は2,502%/分)に再延伸した。全延伸区間における延伸倍率は、縦4.20倍、横4.96倍(全延伸区間の、フィルム幅伸長率は22.1%)であったため、横延伸パターンはオニオン延伸の逆のパターンである(非オニオン延伸と称す)。原反の巻きは許容範囲内であるものの欠点発生率が上がった。塗布では抜けが多発したため評価Cとした。エラーレートは不合格値となった。
(比較例6)
実施例1と同様の二軸配向ポリエステルフィルムの製造条件(レシピ)にて、逐次二軸延伸方式にて延伸を実施した。最初に長手方向に4.20倍、続いて横方向に、最初の横延伸区間において、延伸温度95℃、フィルム幅伸長率30.2%で、2番目の横延伸区間において、延伸温度190℃、フィルム幅伸長率14.5%にて、オニオン延伸での横延伸を行った。原反の巻きは許容範囲内であるものの欠点発生率が上がった。塗布では抜けが多発したため評価Cとした。エラーレートは不合格値となった。
Figure 2016192247

Claims (3)

  1. A面及びB面を有する二軸配向積層ポリエステルフィルムであって、A面の表面粗さ(Ra)が3nm以下でありかつ、A面の地合表面粗さ(Rabase)が2.5nm以下であり、反対側の面であるB面の突起の配置係数(DI)が0.70以上であり、B面の突起の確率密度関数(PDF)のピーク値が0.07以上である二軸配向積層ポリエステルフィルム。
  2. 磁気記録テープのベースフィルムとして用いられる、請求項1に記載の二軸配向積層ポリエステルフィルム。
  3. 請求項1または2に記載の二軸配向積層ポリエステルフィルムと、そのいずれかの表面に形成された磁性層とからなるデータストレージ。
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