JP2016188342A - アミド系発泡樹脂粒子及び発泡成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】発泡成形体の型内成形用のアミド系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子であり、前記発泡粒子は、表層が中心より低い結晶性を有する粒子であることを特徴とするアミド系発泡樹脂粒子により課題を解決する。
【選択図】図1
Description
上記課題を解決すべく、特許文献1には、結晶性ポリアミドセグメント及びポリエーテルセグメントを有するブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー樹脂の架橋処理物からなる発泡粒子を用いた発泡成形体が提案されている。この発泡成形体は、高度のゴム弾性を示すとされている。
かくして本発明によれば、発泡成形体の型内成形用のアミド系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子であり、前記発泡粒子は、表層が中心より低い結晶性を有する粒子であることを特徴とするアミド系発泡樹脂粒子が提供される。
以下のいずれかの場合、回復性及び反発性により優れ、かつより高い強度の発泡成形体を与え得る発泡粒子を提供できる。
(2)アミド系発泡樹脂粒子が、その表層に結晶化阻害性化合物を備えてなる。
(3)結晶化阻害性化合物が、下記式(I)
で表される。
(4)結晶化阻害性化合物が、下記式(1)〜(6)
のいずれかの化合物である。
(5)結晶化阻害性化合物が、レゾルシノール、フェノール、エチルフェノール又はベンジルアルコールである。
(6)結晶化阻害性化合物が、基材樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部含まれる。
更に、発泡成形体が、0.015〜0.5g/cm3の密度、0.7〜3.0MPaの最大破断点応力(JIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に記載された引張試験による厚み10mmの発泡成形体での値)を示す場合、及び/又は発泡成形体が、10%以下の圧縮永久歪と50以上の反発係数を有する場合、回復性及び反発性により優れ、かつより高い強度の発泡成形体を提供できる。
アミド系発泡樹脂粒子(以下、発泡粒子ともいう)は、発泡成形体の型内成形用のアミド系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子である。
発泡粒子は、発泡成形体の型内成形用のアミド系樹脂を基材樹脂とし、表層が中心より低い結晶性を有している。この結晶性を有することは、表層のアミド系樹脂が、中心のアミド系樹脂より、非晶質化していることを意味している。表層が非晶質化することで、型内成形時に、発泡粒子相互の融着性を改善できる。更に、中心の結晶性は変化しないので、所望の性質の発泡成形体を提供できる。
結晶性の相違は、種々の方法により判断することができるが、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計で測定されるグラフ中から得られる最大ピークの半値幅と吸光度比を表層と中心とで比較する方法がある。具体的には、フーリエ変換赤外分光光度計で測定されるグラフ中の3250〜3350cm−1において、表層の最大ピークの半値幅と吸光度比が、中心の最大ピークの半値幅と吸光度比の1.1倍以上を示す粒子であることが好ましい。
上記半値幅と吸光度比の相違は、半値幅と吸光度比が1.1倍未満の場合、表層の結晶性が強いため、発泡粒子相互の融着性が低下することがある。好ましい半値幅と吸光度比は1.15倍以上であり、より好ましい半値幅と吸光度比は1.2倍以上である。
上記半値幅と吸光度比の範囲は、例えば、発泡粒子が、その表層に結晶化阻害性化合物を備えることにより実現できる。この化合物は、表層に備えられていることで、表層が結晶化されることを防ぐ役割を果たす。具体的な結晶化阻害性化合物は、下記式(I)
上記式中、R1〜R4は、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜7のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数1〜7のアルコキシ基であり、少なくとも1つがヒドロキシル基又はヒドロキシアルキル基である。
より具体的な結晶化阻害性化合物としては、下記式(1)〜(6)
結晶化阻害性化合物は、レゾルシノール、フェノール、エチルフェノール及びベンジルアルコールから選択されることが特に好ましい。
アミド系樹脂は、発泡可能であれば特に限定されず、非架橋又は架橋アミド系樹脂を使用できる。中でも発泡成形体の反発性の観点から非架橋又は架橋のアミド系エラストマーを使用することがより好ましい。更に、非架橋のアミド系樹脂を使用することが、発泡成形体の回復性の観点から好ましい。
本明細書において、非架橋とは、溶解可能な有機溶剤に不溶なゲル分率が3.0重量%以下のものを意味する。
発泡粒子の重量W1を測定する。次に、130℃の溶剤(3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール100ミリリットル)中に発泡粒子を24時間に亘って浸漬する。
次に、溶剤中の残渣を80メッシュの金網を用いて濾過し、金網上に残った残渣を130℃の真空乾燥機中にて1時間に亘って乾燥させて、金網上に残った残渣の重量W2を測定し、下記式に基づいて発泡粒子のゲル分率を算出できる。
ゲル分率(重量%)=100×W2/W1
非架橋のアミド系エラストマーには、ポリアミドブロック(ハードセグメント)とポリエーテルブロック(ソフトセグメント)とを有するコポリマーを使用できる。
ポリアミドブロックとしては、例えば、ポリεカプラミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウラミド(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリナノメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)等に由来するポリアミド構造が挙げられる。ポリアミドブロックは、これらポリアミド構造を構成する単位の組み合わせでもよい。
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックはランダムに分散していてもよい。
非架橋のアミド系エラストマーの結晶化温度はJIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠し示差熱分析計(DSC)で測定される。なお、結晶化温度は、降温速度2℃/minの降温過程での発熱ピーク値温度である。
非架橋のアミド系エラストマーは、ショアD硬度が65以下であることが好ましい。65より大きい場合、発泡時の軟化が困難で、所望の発泡倍数が得られないことがある。好ましいショアD硬度は30〜60である。
非架橋のアミド系エラストマーは、結晶化温度−10℃の温度での貯蔵弾性率と結晶化温度−15℃の温度での貯蔵弾性率が共に4×106〜4×107Paの範囲にあることが好ましい。4×107Paより大きい場合、発泡時の軟化が困難で、所望の発泡倍数が得られないことがある。4×106より小さい場合、発泡後の冷却過程において、発泡形状を保持できず、収縮してしまうことがある。より好ましい貯蔵弾性率の範囲は、6×106〜2×107Paである。加えて、結晶化温度−10℃の温度での貯蔵弾性率と結晶化温度−15℃の温度との範囲の貯蔵弾性率が全て4×106〜4×107Paの範囲にあることが好ましい。
1)ジアミン鎖端を有するポリアミドブロックとジカルボン酸鎖端を有するポリオキシアルキレンブロックとの共重縮合、
2)ポリエーテルジオールとよばれる脂肪族ジヒドロキシ化α,ω−ポリオキシアルキレン単位のシアノエチル化及び水素化で得られるジカルボン酸鎖端を有するポリアミド単位とジアミン鎖端を有するポリオキシアルキレン単位との共重縮合、
3)ジカルボン酸鎖端を有するポリアミド単位とポリエーテルジオールとの共重縮合(この場合に得られるものを特にポリエーテルエステルアミドとよんでいる)。
1)の共重縮合の場合、非架橋のアミド系エラストマーは、例えば、ポリエーテルジオールと、ラクタム(又はα,ω−アミノ酸)と、連鎖制限剤のジアシッドとを少量の水の存在下で反応させて得ることができる。非架橋のアミド系エラストマーは、種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有していてもよく、更に各成分がランダムに反応することでポリマー鎖中に分散していてもよい。
架橋アミド系エラストマーとしては前記の非架橋アミド系エラストマーを電子線処理、有機化酸化物による架橋処理等の公知の技術により架橋させたものを用いることができる。
非架橋及び架橋のアミド系エラストマーは融点が120〜180℃であることが好ましい。融点が120℃を下回ると発泡後に常温に晒された時点で収縮することがあり、融点が180℃を超えると所望の発泡倍数への発泡が困難となることがある。より好ましい融点は、125〜175℃である。融点はJIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠し示差熱分析計(DSC)で測定される。なお、融点は、再昇温過程での吸熱ピーク値温度である。
基材樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲で、アミド系樹脂以外に、ポリエーテル樹脂、架橋アミド系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー等の他の樹脂が含まれていてもよい。他の樹脂は、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂であってもよい。
発泡粒子は、0.015〜0.5g/cm3の範囲の嵩密度を有することが好ましい。嵩密度が0.015g/cm3未満の場合、得られる発泡成形体に収縮が発生して外観が良好とならずかつ発泡成形体の機械的強度が低下することがある。0.5g/cm3より大きい場合、発泡成形体の軽量性が低下することがある。好ましい嵩密度は、0.05〜0.1g/cm3である。
発泡粒子は、20〜250μmの平均気泡径を有することが好ましい。平均気泡径が20μm未満の場合、発泡成形体が収縮することがある。250μmより大きい場合、成形体の外観の悪化や融着の不良を招くことがある。より好ましい平均気泡径は20〜200μmであり、更に好ましくは40〜150μmである。
発泡粒子は、半値幅比の制御を結晶化阻害性化合物で行う場合、アミド系樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得る工程(含浸工程)と、発泡性粒子を発泡させて表層未付与発泡粒子を得る工程(発泡工程)と、表層未付与発泡粒子に結晶化阻害性化合物を付与する工程(付与工程)を経て得ることができる。
(a)樹脂粒子
樹脂粒子は、公知の製造方法及び製造設備を使用して得ることができる。
例えば、押出機を使用してアミド系樹脂を溶融混練し、次いで押出、水中カット、ストランドカット等により造粒することによって、樹脂粒子を製造できる。溶融混練時の温度、時間、圧力等は、使用原料及び製造設備に合わせて適宜設定できる。
溶融混練時の押出機内の溶融混練温度は、アミド樹脂が十分に軟化する温度である、170〜250℃が好ましく、200〜230℃がより好ましい。溶融混練温度とは、押出機ヘッド付近の溶融混練物流路の中心部温度を熱伝対式温度計で測定した押出機内部の溶融混練物の温度を意味する。
樹脂粒子は、その長さをL、平均径をDとした場合のL/Dが0.8〜3であることが好ましい。樹脂粒子のL/Dが0.8未満や3を超えている場合、成形型内への充填性が低下することがある。なお、樹脂粒子の長さLは、押出方向の長さをいい、平均径Dは長さLの方向に実質的に直交する樹脂粒子の切断面の直径をいう。
気泡調整剤としては、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸ビスアミド、高級脂肪酸塩、無機気泡核剤等が挙げられる。これら気泡調整剤は、複数種組み合わせてもよい。
高級脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。
高級脂肪酸ビスアミドとしては、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
無機気泡核剤としては、タルク、珪酸カルシウム、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素等が挙げられる。
樹脂粒子は、他に、ヘキサブロモシクロドデカン、トリアリルイソシアヌレート6臭素化物等の難燃剤、カーボンブラック、酸化鉄、グラファイト等の着色剤等を含んでいてもよい。
樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を製造する。なお、樹脂粒子に発泡剤を含浸させる要領としては、公知の要領を用い得る。例えば、オートクレーブ内に樹脂粒子、分散剤及び水を供給して撹拌することによって、樹脂粒子を水中に分散させて分散液を製造し、この分散液中に発泡剤を圧入し、樹脂粒子中に発泡剤を含浸させる方法が挙げられる。
分散剤としては、特に限定されず、例えば、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、酸化マグネシウム等の難水溶性無機物や、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような界面活性剤が挙げられる。
樹脂粒子に含浸させる発泡剤の量は、樹脂粒子100重量部に対して、4〜12重量部であることが好ましい。4重量部未満であると、発泡力が低くなり、高い発泡倍率では、良好に発泡させることが困難である。発泡剤の含有量が12重量部を超えると、気泡膜の破れが生じやすくなり、可塑化効果が大きくなりすぎて、発泡時の粘度が低下しやすくなり、かつ収縮が起こりやすくなる。より好ましい発泡剤の量は6〜8重量部である。この範囲内であれば、発泡力を十分に高めることができ、高い発泡倍率であっても、より一層良好に発泡できる。発泡剤の含有量が8重量部以下であると、気泡膜の破れが抑えられ、可塑化効果が大きくなりすぎないために、発泡時の粘度の過度の低下が抑えられ、かつ収縮が抑えられる。
発泡工程では、発泡性粒子を発泡させて、表層未付与発泡粒子を得ることができれば発泡温度、加熱媒体は特に限定されない。
発泡工程において、発泡性粒子に、無機成分を添加することが好ましい。無機成分としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物粒子が挙げられる。発泡性粒子100重量部に対して、無機成分の添加量は好ましくは0.03重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、好ましくは0.2重量部以下、より好ましくは0.1重量部以下である。
無機成分の粒子径は、好ましくは5μm以下である。無機成分の粒子径の最小値は、0.01μm程度である。無機成分の粒子径が上限以下であると、無機成分の添加量を少なくすることができ、無機成分が後の成形工程に悪影響(阻害)を与えにくくなる。
付与工程では、表層未付与発泡粒子に結晶化阻害性化合物を添加することで、発泡粒子の表層に結晶化阻害性化合物が付与される。この化合物の付与は、化合物が液体の場合は、必要により溶媒で濃度調整して、塗布や浸漬により行うことができる。また、化合物が固体状の場合は、溶媒に溶解又は分散させて、塗布や浸漬により化合物を付与できる。なお、含有量と添加量とはほぼ同じである。
発泡成形体は、上記発泡粒子を型内成形させて得られ、複数の発泡粒子の融着体から構成される。例えば、発泡成形体は、多数の小孔を有する閉鎖金型内に発泡粒子を充填し、加圧水蒸気で発泡粒子を加熱発泡させ、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させ、一体化させることにより得ることができる。上記特定の半値幅と吸光度比を有する発泡粒子は、その表層における相互の融着性が高いため、発泡成形体の強度を向上できる。強度の向上は、最大破断点応力で評価して、0.7〜3.0MPaとすることができる。ここでの最大破断点応力は、JIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に記載された引張試験による厚み10mmの発泡成形体での値を意味する。より好ましい最大破断点応力は0.8〜3.0MPaであり、更に好ましい最大破断点応力は0.9〜3.0MPaである。
発泡成形体は、0.5〜0.015g/cm3の密度を有するのが好ましい。この範囲であれば、圧縮永久歪と機械的物性とを良好なバランスで両立できる。密度は、例えば、金型内への発泡粒子の充填量を調整する等して調整できる。
本発明の発泡成形体は、例えば、工業分野、スポーツ用品、緩衝材、シートクッション、自動車部材等に用いることができる。特に圧縮永久歪の向上が求められる用途に用いることができる。
測定前に、発泡粒子をオーブンにて50℃、24時間乾燥させた後、測定を行う。
発泡粒子表層と中心の半値幅と吸光度比(3280FWHM/D3280)を次の要領で測定する。
無作為に選択した10個の各発泡粒子の表面と中心について、赤外分光分析ATR測定法により表面分析を行って赤外吸収スペクトルを得る。この分析では、試料表面から数μm(約2μm)までの深さの範囲の赤外吸収スペクトルが得られる。
各赤外吸収スペクトルから個別の半値幅と吸光度比(3280FWHM/D3280)を算出し、表層について算出した個別の半値幅と吸光度比の相加平均を表層結晶化度とし、中心について算出した個別の半値幅と吸光度比の相加平均を中心結晶化度とする。中心はカミソリ刃で粒子のほぼ真ん中をカットし、カット面を測定面とする。表層はカットした片方の粒子表面を測定する。
粒子表層と中心の半値幅と吸光度比は、Thermo SCIENTIFIC社から商品名「フーリエ変換赤外分光光度計 Nicolet iS10」で販売されている測定装置に、ATRアクセサリーとしてThermo SCIENTIFIC社製「Smart−iTR」を接続して測定する。以下の条件にてATR−FTIR測定を行う。
・ATRクリスタル:Diamond with ZnSe lens、角度=42°
・測定法:一回ATR法
・測定波数領域:4000cm−1〜650cm−1
・測定深度の波数依存性:補正せず
・検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器およびKBrビームスプリッター
・分解能:4cm−1
・積算回数:16回(バックグランド測定時も同様)
以上の条件で得られた赤外線吸収スペクトルは、次のようにピーク処理をしてそれぞれの3280FWHMとD3280を求めている。
赤外吸収スペクトルから得られる3280cm−1での吸光度D3280は、アミド系エラストマーに含まれるアミド結合のNH伸縮振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。この吸光度の測定では、3280cm−1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離は実施していない。吸光度D3280は、3800cm−1と2500cm−1を結ぶ直線をベースラインとして、3350cm−1と3250cm−1間の最大吸光度を意味する。
また、赤外吸収スペクトルから得られる3280FWHMは、3280cm−1ピークの半値全幅を意味し、D3280を求める際に使用したベースラインを使用し、3280cm―1ピークの全半値幅を求める。
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×30mm)の重量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求める。倍数は密度の逆数である。
圧縮永久ひずみ試験(JIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」)に準拠して以下算出方法により測定する。
・試験片:50W×50L×25T(mm)(片面スキンあり)
・圧縮割合:25(%)
・試験数:3
圧縮永久歪みの算出方法
圧縮永久歪み(%)=(初めの厚さ(mm)−試験後の厚さ(mm))/初めの厚さ(mm)×100
JIS K6400:2011「第3部 反発弾性の求め方」の試験方法に準拠して測定されたものをいう。具体的には高分子計器株式会社製のフォーム用反発弾性試験機FR−2型を用い、厚み50mmに成形した成形体に500mmの高さより直径5/8インチ、質量16.3gの鋼玉を落下させ、反発最高到達時の高さを読み取る。計5回同様の操作を繰り返し、平均値を反発性とする。
厚み10mmの発泡成形体を用いて、JIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に記載された引張試験により測定する。具体的には、テンシロン万能試験機UCT―10T(オリエンテック社製)、万能試験機データ処理(UTPS―237ソフトプレーン社製)を用いて、引張速度500mm/min、つかみ具間隔は100mm、試験片はダンベル形タイプ1(ISO1798規定)、厚み10mmで測定する。但し、伸びはつかみ具間の試験前と切断時の距離から算出した。試験片の数は5個とし、試験片を温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で16時間以上状態調節した後、温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で測定を行う。引張り強さ、伸びは次式により算出する。
T=F/Wt
T:最大破断点応力(MPa)
F:切断にいたるまでの最大荷重(N)
W:試験片の幅(mm)
t:試験片の厚さ(mm)
E=100×(L1−L0)/L0
E:伸び(%)
L0:試験前のつかみ具間距離(mm)
L1:切断時のつかみ具間距離(mm)
(1)含浸工程
ナイロン12をハードセグメントとし、ポリテトラメチレングリコールをソフトセグメントとするアミド系エラストマーであるペバックス5533(アルケマ社製)の粒子(平均直径1.5mm)100重量部を圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧4.0MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、含浸時間24時間が経過した後、5分間かけて圧力容器内をゆっくりと除圧した。このようにして、アミド系エラストマーに、炭酸ガスを含浸させて、発泡性粒子を得た。上述した方法により、発泡性粒子に含浸された発泡剤の含浸量を測定したところ6.2重量%であった。
上記(1)含浸工程における除圧の後直ぐに、圧力容器から発泡性粒子を取り出した後、炭酸カルシウム0.08重量部を添加し、混合した。その後、水蒸気を用いて、発泡温度136℃で撹拌しながら、高圧の発泡槽で、上記含浸物を水蒸気により発泡させた。発泡後に、高圧の発泡槽から粒子を取り出して、塩化水素水溶液で炭酸カルシウムを除去した後に、気流乾燥機にて乾燥を行い、平均粒子径3.3mmの発泡粒子を得た。上述した方法により、得られた発泡粒子の嵩密度を測定したところ、0.1g/cm3であった。
得られた発泡粒子100重量部と予めイソプロピルアルコールに溶解させたレゾルシノール3重量部をタンブラーに入れて15分間攪拌を行い、発泡粒子表面にレゾルシノールを付与した。
レゾルシノールが付与された発泡粒子の表層と中心をFT−IRで測定することにより得られたグラフを図1(a)〜(c)に示す。図1(a)は表層と中心を同時に示したグラフ、図1(b)は表層のグラフ、図1(c)は中心のグラフを意味する。
得られた発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、圧力容器中に密閉し、圧力容器内を窒素ガスで置換した後、窒素ガスを、含浸圧(ゲージ圧)1.0MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、加圧養生を8時間実施した。加圧後の発泡粒子を、10mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.27MPaの水蒸気にて40秒間加熱を行い、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を得た。
添加剤を表1に示すものに変更したこと以外は実施例1と同様に行い、発泡成形体を得た。
発泡成形体の密度を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様に行い、発泡成形体を得た。
レゾルシノールの添加量を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様に発泡成形体を得た。
レゾルシノールの付与を行わないこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
添加剤を表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。比較例4においては、発泡粒子が溶解したため、発泡成形体を得ることができなかった。
添加剤を樹脂の接着に用いられる表2に示すバインダーに変更したこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
実施例1の結果を表1に、比較例の結果を表2に示す。
また、図2に、実施例1及び比較例1の発泡成形体の引張破断点応力と変位量との関係についてのグラフを示す。図2中、実線は実施例1を、破線は比較例1をそれぞれ示す。
また、実施例1について、図3(a)に発泡粒子の断面の顕微鏡写真(40倍)、図3(b)に発泡成形体の断面の顕微鏡写真(200倍)、図3(c)に発泡成形体の断面の顕微鏡写真(1000倍)を示す。更に、比較例1について、図4(a)に発泡粒子の断面の顕微鏡写真(40倍)、図4(b)に発泡成形体の断面の顕微鏡写真(200倍)、図4(c)に発泡成形体の断面の顕微鏡写真(1000倍)を示す。図3(a)と図4(a)とを比べると、実施例1の発泡粒子の表層は、比較例1より気泡壁が薄いことが分かる。図3(b)と図4(b)及び図3(c)と図4(c)とを比べると、実施例1の発泡成形体は、発泡粒子の融着面がほぼ確認できなくなっているのに対して、比較例1の発泡成形体は確認でき、実施例1の発泡成形体は比較例1より融着性が良好であることが分かる。
Claims (10)
- 発泡成形体の型内成形用のアミド系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子であり、前記発泡粒子は、表層が中心より低い結晶性を有する粒子であることを特徴とするアミド系発泡樹脂粒子。
- 前記発泡粒子は、フーリエ変換赤外分光光度計で測定されるグラフ中の3250〜3350cm−1において、表層の最大ピークの半値幅と吸光度比が、中心の最大ピークの半値幅と吸光度比の1.1倍以上を示す粒子である請求項1に記載のアミド系発泡樹脂粒子。
- 前記アミド系発泡樹脂粒子が、その表層に結晶化阻害性化合物を備えてなる請求項1又は2に記載のアミド系発泡樹脂粒子。
- 前記結晶化阻害性化合物が、下記式(I)
で表される請求項3に記載のアミド系発泡樹脂粒子。 - 前記結晶化阻害性化合物が、下記式(1)〜(6)
のいずれかの化合物である請求項3又は4に記載のアミド系発泡樹脂粒子。 - 前記結晶化阻害性化合物が、レゾルシノール、フェノール、エチルフェノール又はベンジルアルコールである請求項3〜5のいずれか1つに記載のアミド系発泡樹脂粒子。
- 前記結晶化阻害性化合物が、基材樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部含まれる請求項3〜6のいずれか1つに記載のアミド系発泡樹脂粒子。
- 請求項1〜7のいずれか1つに記載のアミド系発泡樹脂粒子を型内発泡させて得られた発泡成形体。
- 前記発泡成形体が、0.015〜0.5g/cm3の密度、0.7〜3.0MPaの最大破断点応力(JIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」に記載された引張試験による厚み10mmの発泡成形体での値)を示す請求項8に記載の発泡成形体。
- 前記発泡成形体が、10%以下の圧縮永久歪と50以上の反発係数を有する請求項8又は9に記載の発泡成形体。
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