JP2016184720A - R−t−b系希土類焼結磁石及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い保磁力(Hcj)を有するR−T−B系希土類焼結磁石を提供することを目的とする。【解決手段】本発明のR−T−B系希土類焼結磁石は、希土類元素であるRと、Feを主成分とする遷移金属であるTと、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属を含む金属元素Mと、Bおよび不可避不純物からなり、Rを13〜15.5原子%含み、Bを5.0〜6.0原子%含み、Mを0.1〜2.4原子%含み、Tおよび不可避不純物が残部であり、前記希土類元素であるRとして、Tbを0原子%超、0.01原子%以下含むことを特徴とする。【選択図】図3

Description

本発明は、R−T−B系希土類焼結磁石及びその製造方法に関するものである。
従来、R−T−B系希土類焼結磁石(以下、「R−T−B系磁石」と略記する場合がある)は、ハードディスクドライブのボイスコイルモーター、ハイブリッド自動車や電気自動車のエンジン用モーターなどのモーターに使用されている。
R−T−B系磁石は、Nd、Fe、Bを主成分とするR−T−B系合金粉末を成形して焼結することによって得られる。通常、R−T−B系合金においてRは、Ndと、Ndの一部をPr、Dy、Tb等の他の希土類元素で置換したものである。Tは、Feと、Feの一部をCo、Ni等の他の遷移金属で置換したものである。Bはホウ素であり、一部をCまたはNで置換できる。
一般的なR−T−B系磁石の組織は、主に、主相とRリッチ相とからなる。主相は、R14Bで構成される。Rリッチ相は、主相の粒界に存在しており、主相よりもNd濃度が高いものである。Rリッチ相は、粒界相とも呼ばれている。
R−T−B系合金の組成は、通常、R−T−B系磁石の組織における主相の割合を高めるために、NdとFeとBとの比が、できる限りR14Bに近くなるようにされている(例えば、非特許文献1参照)。
また、自動車用モーターに用いられるR−T−B系磁石は、モーター内で高温に曝されるため、高い保磁力(Hcj)が要求される。
R−T−B系磁石の保磁力を向上させる技術としては、R−T−B系合金のRをNdからDyまたはTbに置換する技術がある。しかしながら、DyおよびTbは資源が偏在しているうえ、産出量も限られているためにその供給に不安が生じている。このため、R−T−B系合金に含まれるDyまたはTbの含有量を多くすることなく、R−T−B系磁石の保磁力を向上させる技術が検討されている。
本発明者らは、R−T−B系合金の組成を検討した結果、従来のR−T−B系合金よりも低い特定のB濃度のときに、保磁力が向上することを見出した。そして、DyまたはTbの含有量がゼロ又は非常に少なくても、高保磁力のR−T−B系磁石が得られるR−T−B系合金の開発に成功した(例えば、特許文献1参照)。
本発明者らが開発したR−T−B系合金を用いて製造したR−T−B系磁石は、R14Bからなる主相と、主相よりRを多く含む粒界相とを有する。このR−T−B系磁石には、粒界相として、従来から認められている希土類元素濃度の高い粒界相(Rリッチ相)の他に、従来の粒界相よりも希土類元素濃度が低く遷移金属元素濃度が高い粒界相(遷移金属リッチ相)が含まれている。遷移金属リッチ相は、保磁力を担いうる相であり、粒界相に遷移金属リッチ相が存在するR−T−B系磁石は、従来の常識を覆す画期的なものである。
特開2013−216965号公報
佐川 眞人、永久磁石−材料科学と応用−2008年11月30日、初版第2刷発行、256ページ〜261ページ
本発明者らが開発したR−T−B系磁石は、DyまたはTbの少なくとも一方の含有量を抑制しつつ、高保磁力(Hcj)を示すものであるが、より一層保磁力を高くすることが求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明者らが開発した上記R−T−B系磁石においてさらに改良が加えられて、さらに高い保磁力(Hcj)を有するR−T−B系希土類焼結磁石及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
(1)希土類元素であるRと、Feを主成分とする遷移金属であるTと、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属を含む金属元素Mと、Bおよび不可避不純物からなり、Rを13〜15.5原子%含み、Bを5.0〜6.0原子%含み、Mを0.1〜2.4原子%含み、Tおよび不可避不純物が残部であり、前記希土類元素であるRとして、Tbを0原子%超、0.01原子%以下含むことを特徴とするR−T−B系希土類焼結磁石。
(2)Tbを含むR14B結晶構造の粒子を有することを特徴とする(1)に記載のR−T−B系希土類焼結磁石。
(3)下記(式1)を満たすことを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載のR−T−B系希土類焼結磁石。
0.32≦B/TRE≦0.40・・(式1)
(式1)において、Bはホウ素元素の濃度(原子%)、TREは希土類元素合計の濃度(原子%)を表す。
(4)前記遷移金属であるTとして、Zrを0.015〜0.10原子%含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一つに記載のR−T−B系希土類焼結磁石。
(5)前記金属元素Mとして少なくともGaを含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一つに記載のR−T−B系希土類焼結磁石。
(6)希土類元素であるRと、Feを主成分とする遷移金属であるTと、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属を含む金属元素Mと、Bおよび不可避不純物からなり、Rを13〜15.5原子%含み、Bを5.0〜6.0原子%含み、Mを0.1〜2.4原子%含み、Tおよび不可避不純物が残部であるR−T−B系磁石用合金と、Tbを必須に含む希土類元素であるRと、Feを主成分とする遷移金属であるTと、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属を含む金属元素Mと、Bおよび不可避不純物からなり、Rを13〜15.5原子%含み、Bを5.0〜6.0原子%含み、Mを0.1〜2.4原子%含み、Tおよび不可避不純物が残部である添加合金と、を用いて焼結体を形成する焼結工程と、前記焼結体を熱処理炉内に入れ、790〜920℃で0.5〜10時間保持する熱処理を行うと共に、その後100℃/分以上の冷却速度で冷却する第1熱処理工程と、前記第1熱処理後の前記焼結体を、480〜620℃で0.05〜10時間保持する熱処理を行うと共に、その後100℃/分以上の冷却速度で冷却する第2熱処理工程と、を有することを特徴とするR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法。
(7)前記添加合金が、Tbを含むR14B結晶相を有することを特徴とする(6)に記載のR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法。
(8)下記(式1)を満たすことを特徴とする(6)または(7)のいずれかに記載のR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法。
0.32≦B/TRE≦0.40・・(式1)
(式1)において、Bはホウ素元素の濃度(原子%)、TREは希土類元素合計の濃度(原子%)を表す。
(9)前記R−T−B系磁石用合金は、Tbを含まないことを特徴とする(6)〜(8)のいずれか一つに記載のR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法。
(10)前記R−T−B系磁石用合金と前記添加合金とを、前記焼結工程の前に混合することを特徴とする(6)〜(9)のいずれか一つに記載のR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法。
(11)前記R−T−B系磁石用合金と前記添加合金との混合物のTbの含有量を、0原子%超、0.01原子%以下とすることを特徴とする(10)に記載のR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法。
本発明のR−T−B系希土類焼結磁石によれば、DyまたはTbの少なくとも一方の含有量を抑制しつつ、高保磁力を有するR−T−B系希土類焼結磁石を提供することができる。
本発明のR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法によれば、DyまたはTbの少なくとも一方の含有量を抑制しつつ、高保磁力を有するR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法を提供することができる。
合金の製造装置の一例を示す正面模式図である。 本発明のR−T−B系希土類焼結磁石を製造する方法の一例を説明するためのグラフである。 Dy未添加のR−T−B系磁石である実施例2、3、及び、比較例3、4について、Tbの含有量と、保磁力との関係を示したグラフである。 実施例1及び比較例4のR−T−B系磁石のFE−EPMAによる観察結果を示すものであり、(a)はTb像、(b)はNd像、(c)はFe像、(d)はB像、(e)は組成像である。
以下、本発明の一実施形態のR−T−B系希土類焼結磁石及びその製造方法について詳細に説明する。本発明は、以下に説明する一実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。本発明のR−T−B系希土類焼結磁石は、本発明の目的を逸脱しない範囲で他の元素が含まれてもいてもよい。
「R−T−B系希土類焼結磁石」
本実施形態のR−T−B系希土類焼結磁石(以下、「R−T−B系磁石」と略記する場合がある)は、希土類元素であるRと、Feを主成分とする遷移金属であるTと、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属を含む金属元素Mと、Bおよび不可避不純物からなる。本実施形態のR−T−B系磁石は、Rを13〜15.5原子%含み、Bを5.0〜6.0原子%含み、Mを0.1〜2.4原子%含み、Tおよび不可避不純物が残部であり、希土類元素であるRとして、Tbを0原子%超0.01原子%以下含む。
R−T−B系磁石に含まれるRの含有量が13原子%未満であると、R−T−B系磁石の保磁力が不十分となる。また、Rの含有量が15.5原子%を超えると、R−T−B系磁石の残留磁化が低くなる。
本実施形態のR−T−B系磁石は、Tbを0原子%超、0.01原子%以下含む。好ましくは、Tbを0.002〜0.008原子%含んでいる。Tbの含有量は微量ではあるが、この範囲の量を含むことにより、本発明者らが開発したR−T−B系磁石よりもさらに保磁力(Hcj)が向上する。
Tbは主に主相と粒界相との境界近傍に存在している。それが主相内なのか、粒界相内かは特定できてはいないが、微量で保磁力に有意な向上が見られていることから、粒界相に存在する可能性が高いと考えている。
添加したTbを含んだ合金の微粒子表面が熱処理中に溶融し、磁石の粒界に拡散して主相粒子表面を被覆することにより、保磁力が向上したものと考えられる。
添加した合金のTbは、R14B結晶構造をした粒子の、Rの1成分として含有されていることが好ましい。これは、焼結温度でR14B結晶が僅かに溶融して、Tbが磁石の粒界に拡散して主相の最表面に供給されるからである。添加した合金は、表面が溶融するだけなので、焼結後の磁石にはTbを含むR14B結晶構造の粒子が存在する。
本実施形態のR−T−B系磁石は、Dyを含んでもよいし、含まなくてもよい。R−T−B系磁石に含まれ得るDy以外の希土類元素としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Ho、Tb、Er、Tm、Yb、Luが挙げられる。これら希土類元素の中でも特に、Nd、Pr、Dy、Tbが好ましく用いられる。また、R−T−B系磁石のRは、Ndを主成分とすることが好ましい。
R−T−B系磁石に含まれる金属元素Mは、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属である。金属元素Mに含まれるAl、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属は、R−T−B系磁石を製造する際に遷移金属リッチ相の生成を促進させる。その結果、R−T−B系磁石の保磁力(Hcj)を効果的に向上させる。
R−T−B系磁石には、金属元素Mが0.1〜2.4原子%含まれている。このため、R−T−B系磁石を製造する際に、遷移金属リッチ相の生成が促進される。R−T−B系磁石に含まれる金属元素Mが0.1原子%未満であると、遷移金属リッチ相の生成を促進する効果が不足する。その結果、R−T−B系磁石に遷移金属リッチ相が形成されず、R17相が析出し、R−T−B系磁石の保磁力(Hcj)が不十分になる恐れがある。
遷移金属リッチ相を十分に生成させるために、R−T−B系磁石に含まれる金属元素Mの含有量は0.7原子%以上であることが好ましい。また、R−T−B系磁石に含まれる金属元素Mが2.4原子%を超えると、R−T−B系磁石の磁化(Br)や最大エネルギー積(BHmax)などの磁気特性が低下する。R−T−B系磁石の磁化および最大エネルギー積を確保するために、R−T−B系磁石に含まれる金属元素Mの含有量は、2.4原子%以下であることが好ましい。
金属元素MがCuを含む場合、R−T−B系磁石を製造するための焼結が容易となり、好ましい。金属元素MがCuを含む場合、R−T−B系磁石中のCuの濃度が1.0原子%未満であると、R−T−B系磁石の残留磁化(Br)が良好となる。
R−T−B系磁石に含まれるBは、ホウ素であり、一部をCまたはNで置換できる。B含有量は5.0〜6.0原子%である。さらに、本実施形態のR−T−B系磁石は、下記(式1)を満たすものであることが好ましい。本実施形態では、B含有量が上記範囲であって、好ましくはB/TREが上記範囲であると、保磁力の高いR−T−B系磁石となる。この理由は、以下に示すものによるものと推定される。
0.32≦B/TRE≦0.40・・(式1)
(式1)において、Bはホウ素元素の濃度(原子%)、TREは希土類元素合計の濃度(原子%)を表す。
B含有量が上記範囲であって、好ましくはB/TREが上記範囲であると、R−T−B系磁石中に含まれる遷移金属と希土類元素の含有量が相対的に多くなる。その結果、R−T−B系磁石の製造工程において、遷移金属リッチ相の生成が金属元素Mにより効果的に促進される。したがって、R−T−B系磁石は、十分に遷移金属リッチ相の生成された高い保磁力を有するものとなる。
また、R−T−B系磁石におけるBの含有量が6.0原子%を超えると、R−T−B系磁石中にBリッチ相が含まれるようになり、保磁力が不十分となる。したがって、R−T−B系磁石におけるBの含有量は6.0原子%以下とし、5.5原子%以下とすることが好ましい。
また、上記(式1)で示されるB/TREは0.32〜0.40であり、R−T−B系磁石が高い保磁力を得るために、0.34〜0.38とすることがさらに好ましい。
R−T−B系磁石に含まれるTは、Feを主成分とする遷移金属である。
R−T−B系磁石のTに含まれるFe以外の遷移金属としては、種々の3〜11族元素を用いることができる。具体的には、例えば、Co、Zr、Nbなどが挙げられる。R−T−B系磁石のTが、Fe以外にCoを含む場合、Tc(キュリー温度)及び耐食性を改善することができ好ましい。また、上述したように、R−T−B系磁石のTが、Fe以外にNbを含む場合も、R−T−B系磁石を製造するための焼結時に主相の粒成長が抑制されたものとなるため、好ましい。また、R−T−B系磁石のTが、Fe以外にZrを微量(例えば、0.015〜0.10原子%)含む場合、角形性(Hk/Hcj)を高く維持しつつ、保磁力が高いR−T−B系磁石とすることができる。
R−T−B系磁石に含まれるB含有量に対するT含有量の比(T/B)は、13〜15.5であることが好ましい。R−T−B系磁石のT/Bが上記範囲であると、R−T−B系磁石の保磁力が、より一層高くなる。また、R−T−B系磁石のT/Bが13〜15.5であると、R−T−B系磁石の製造工程において、遷移金属リッチ相の生成がより効果的に促進される。R−T−B系磁石のT/Bが15.5以下、より好ましくは15以下であると、製造時にR−T−B系磁石中にR17相が生成されにくく、良好な保磁力および角形性が得られる。また、R−T−B系磁石のT/Bが13以上、より好ましくは13.5以上であると、R−T−B系磁石の残留磁化が良好となる。
本実施形態のR−T−B系磁石は、R2T14Bからなる主相と、主相よりRを多く含む粒界相とを備えている。粒界相は、Rリッチ相と、Rリッチ相よりもRの濃度が低く遷移金属元素の濃度が高い遷移金属リッチ相とを有している。Rリッチ相は、希土類元素の合計原子濃度が50原子%以上のものである。遷移金属リッチ相は、希土類元素の合計原子濃度が25〜35原子%のものである。
R−T−B系磁石に含まれる遷移金属リッチ相の面積率は、0.005面積%〜3面積%であることがより好ましい。遷移金属リッチ相の面積率が上記範囲内であると、粒界相中に遷移金属リッチ相が含まれていることによる保磁力向上効果が、より一層効果的に得られる。これに対し、遷移金属リッチ相の面積率が0.005面積%未満であると、R17相が析出し、保磁力(Hcj)を向上させる効果が不十分となる恐れが生じる。また、遷移金属リッチ相の面積率が3面積%を超えると、残留磁化(Br)や最大エネルギー積((BH)max)が低下するなど磁気特性に悪影響を及ぼす恐れがあるため、好ましくない。
R−T−B系磁石の遷移金属リッチ相の面積率は、以下に示す方法により調べる。まず、R−T−B系磁石を導電性の樹脂に埋込み、配向方向に平行な面を削りだし、鏡面研磨する。次いで、鏡面研磨した表面を反射電子像にて1500倍程度の倍率で観察し、そのコントラストにより主相、Rリッチ相、遷移金属リッチ相を判別する。その後、遷移金属リッチ相について断面あたりの面積率を算出する。
遷移金属リッチ相の面積率は、原料として用いる磁石用合金(または磁石用合金および添加合金)の組成を調節したり、後述する焼結工程、第1熱処理工程、第2熱処理工程の少なくともいずれかの熱処理条件を調整したりすることにより、容易に調節できる。
遷移金属リッチ相中のFeの原子濃度は、50〜70原子%であることが好ましい。遷移金属リッチ相中のFeの原子濃度が上記範囲内であると、遷移金属リッチ相が含まれていることによる保磁力向上効果が、より一層顕著となる。
「R−T−B系希土類焼結磁石の製造方法」
本発明のR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法を以下に説明する。
〔合金製造工程〕
本発明のR−T−B系希土類焼結磁石の製造に用いる合金は、例えば、SC(ストリップキャスト)法により、例えば、1450℃程度の温度の所定の組成の合金溶湯を鋳造して鋳造合金を製造することができる。この時、鋳造後の鋳造合金の冷却速度を500〜900℃で一時的に遅くして合金内の成分の拡散を促す処理(温度保持工程)を行ってもよい。
次いで、得られた鋳造合金を破砕し、鋳造合金薄片とする。その後、鋳造合金薄片を、水素解砕法などにより解砕し、粉砕機により粉砕する。以上の工程によって磁石用合金が得られる。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金としては例えば、希土類元素であるRと、Feを主成分とする遷移金属であるTと、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属を含む金属元素Mと、Bおよび不可避不純物からなる。磁石用合金は、Rを13〜15.5原子%含み、Bを5.0〜6.0原子%含み、Mを0.1〜2.4原子%含み、Tおよび不可避不純物が残部であるR−T−B系磁石用合金(以下「第1合金」ということがある)と、Tbを必須に含む希土類元素であるRと、Feを主成分とする遷移金属であるTと、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属を含む金属元素Mと、Bおよび不可避不純物からなり、Rを13〜15.5原子%含み、Bを5.0〜6.0原子%含み、Mを0.1〜2.4原子%含み、Tおよび不可避不純物が残部である添加合金(以下「第2合金」ということがある)と、を併せて用いることができる。
以下において、単にR−T−B系磁石用合金と記載した場合には上記第1合金を指し、添加合金と記載した場合には上記第2合金を指す。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金として、R−T−B系磁石用合金(第1合金)と添加合金(第2合金)の2種類を併せて用いる場合を例示したが、これに限定されない。3種類以上の合金を添加してもよい。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金として用いる添加合金は、Tbを含むR14B結晶相を有することが好ましい。Tbを含むR14B結晶相を有すると、これを用いてR−T−B系磁石を製造した場合、Tbを含むR14B結晶構造の粒子を有し、高保磁力を発揮する磁石を製造できるからである。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金として、R−T−B系磁石用合金(第1合金)と添加合金(第2合金)の2種類を併せて用いる場合、焼結工程の前であれば、どの段階でそれら2種類の合金あるいは合金薄片を混ぜてもよい。例えば、粉砕機により粉砕する前の水素解砕の段階で混ぜても、粉砕後に混ぜてもよい。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金は、Dyを含む必要は無いが、所定の保磁力を得るために含んでいてもよい。
さらに、R−T−B系希土類焼結磁石用合金は、下記(式1)を満たすものであることが好ましい。
0.32≦B/TRE≦0.40・・(式1)
(式1)において、Bはホウ素元素の濃度(原子%)、TREは希土類元素合計の濃度(原子%)を表す。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金に含まれるRの含有量が13原子%未満であると、これを用いて得られたR−T−B系磁石の保磁力が不十分となる。また、Rの含有量が15.5原子%を超えると、これを用いて製造したR−T−B系磁石の残留磁化が低くなる。
上述の通り、R−T−B系希土類焼結磁石用合金としてR−T−B系磁石用合金(第1合金)と添加合金(第2合金)の2種類を用いる場合、R−T−B系磁石用合金(第1合金)に含まれる希土類元素としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Tb、Ho、Er、Tm、Yb、Luが挙げられる。これらの中でも特に、Nd、Pr、Dyが好ましく用いられる。また、磁石用合金のRは、Ndを主成分とすることが好ましい。また、添加合金(第2合金)に含まれる希土類元素としてTbは必須であり、その他としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luが挙げられる。これらの中でも特に、Nd、Pr、Dyが好ましく用いられる。また、磁石用合金のRは、Ndを主成分とすることが好ましい。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金に含まれる金属元素Mは、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属である。金属元素Mに含まれるAl、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属は、R−T−B系磁石を製造する際に遷移金属リッチ相の生成を促進させる。その結果、R−T−B系磁石の保磁力(Hcj)を効果的に向上させる。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金には、金属元素Mが0.1〜2.4原子%含まれている。このため、磁石用合金を焼結し、熱処理することで、Rリッチ相と遷移金属リッチ相とを含むR−T−B系磁石が得られる。磁石用合金に含まれる金属元素Mが0.1原子%未満であると、遷移金属リッチ相の生成を促進させる効果が不足する。その結果、R−T−B系磁石に遷移金属リッチ相が形成されず、R−T−B系磁石の保磁力(Hcj)が不十分になる恐れがある。遷移金属リッチ相を十分に生成させるために、磁石用合金に含まれる金属元素Mの含有量は0.7原子%以上であることが好ましい。また、磁石用合金に含まれる金属元素Mが2.4原子%を超えると、R−T−B系磁石の磁化(Br)や最大エネルギー積(BHmax)などの磁気特性が低下する。R−T−B系磁石の磁化および最大エネルギー積を確保するために、磁石用合金に含まれる金属元素Mの含有量は、2.4原子%以下であることが好ましい。
金属元素MがGaを含む場合、GaはR17相の生成を抑制する効果が高いため、R17相が生成することによる保磁力や角形性の低下を防止することができる。そのため、金属元素MはGaを含むことが好ましい。
金属元素MがCuを含む場合、磁石用合金の焼結が容易となり、好ましい。金属元素MがCuを含む場合、磁石用合金中のCuの濃度が1.0原子%未満であると、磁石用合金を用いて製造されたR−T−B系磁石の残留磁化(Br)が良好となる。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金に含まれるBは、ホウ素であり、一部をCまたはNで置換できる。B含有量は5.0〜6.0原子%であり、かつB濃度に対する希土類元素濃度の比であるB/TREが上記(式1)を満たしている。このため、本実施形態では、この磁石用合金を用いて製造したR−T−B系磁石が、保磁力の高いものとなる。この理由は、以下に示すものによるものと推定される。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金のB含有量およびB/TREが上記範囲であると、磁石用合金を用いて製造したR−T−B系磁石は、粒界相が均一に分布されたものとなり、高い保磁力が得られる。しかも、磁石用合金のB含有量およびB/TREが上記範囲であると、磁石用合金中に含まれる遷移金属および希土類元素の含有量が相対的に多くなる。その結果、R−T−B系磁石の製造工程において、遷移金属リッチ相の生成が効果的に促進される。したがって、この磁石用合金を用いて製造したR−T−B系磁石は、十分に遷移金属リッチ相の生成されたものとなり、高い保磁力を有する。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金におけるBの含有量が、5.0原子%未満であると、R−T−B磁石中にR17相が析出し、保磁力が不足する場合がある。磁石用合金におけるBの含有量が6.0原子%を超えると、これを用いて製造したR−T−B系磁石中にBリッチ相が含まれるようになり、保磁力が不十分となる。したがって、磁石用合金におけるBの含有量は6.0原子%以下とし、5.5原子%以下とすることが好ましい。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金に含まれるTは、Feを主成分とする遷移金属である。R−T−B系磁石のTに含まれるFe以外の遷移金属としては、種々の3〜11族元素を用いることができる。具体的には、例えば、Co、Zr、Nbなどが挙げられる。R−T−B系磁石のTが、Fe以外にCoを含む場合、Tc(キュリー温度)及び耐食性を改善することができ好ましい。また、上述したように、R−T−B系磁石のTが、Fe以外にNbを含む場合も、R−T−B系磁石を製造するための焼結時に主相の粒成長が抑制されたものとなるため、好ましい。また、R−T−B系磁石のTが、Fe以外にZrを微量(例えば、0.015〜0.10原子%)含む場合、角形性(Hk/Hcj)を高く維持しつつ、保磁力が高いR−T−B系磁石とすることができる。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金に含まれるB含有量に対するT含有量の比(T/B)は、13〜15.5であることが好ましい。磁石用合金のT/Bが上記範囲であると、磁石用合金を用いて製造されたR−T−B系磁石の保磁力が、より一層高くなる。また、磁石用合金のT/Bが13〜15.5であると、R−T−B系磁石の製造工程において、遷移金属リッチ相の生成がより効果的に促進される。磁石用合金のT/Bが15.5以下、より好ましくは15以下であると、磁石用合金を用いて製造されたR−T−B系磁石中にR17相が生成するのを防止し、保磁力や角形性が低下することを防止できる。また、磁石用合金のT/Bが13以上、より好ましくは13.5以上であると、磁石用合金を用いて製造されたR−T−B系磁石の残留磁化が良好となる。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金中に不純物などとして含まれる酸素と窒素と炭素の合計濃度が高いと、焼結工程において、これら元素と希土類元素Rとが結合して希土類元素Rが消費される。このため、磁石用合金中に含まれる希土類元素Rのうち、焼結工程後に行う第1熱処理工程および第2熱処理工程において、遷移金属リッチ相の原料として利用される希土類元素Rの量が少なくなる。その結果、遷移金属リッチ相の生成量が少なくなり、R−T−B系磁石の保磁力が不十分となる恐れがある。
したがって、R−T−B系希土類焼結磁石用合金中に含まれる酸素と窒素と炭素の合計濃度は2原子%以下であることが好ましい。R−T−B系希土類焼結磁石用合金中に含まれる酸素と窒素と炭素の合計濃度を2原子%以下にすることで、焼結工程において希土類元素Rが消費されるのを抑制でき、遷移金属リッチ相の生成量を確保できる。よって、保磁力(Hcj)の高いR−T−B系磁石が得られる。
R−T−B系希土類焼結磁石用合金は、R14Bからなる主相と、主相よりRを多く含む粒界相とを備えている。
本発明のR−T−B系希土類焼結磁石用の合金を製造する工程の一例として、図1に示す製造装置を用いて製造する方法について説明する。
(合金の製造装置)
図1は、合金の製造装置の一例を示す正面模式図である。
図1に示す合金の製造装置1は、鋳造装置2と、破砕装置21と、破砕装置21の下方に配置された加熱装置3と、加熱装置3の下方に配置された貯蔵容器4とを備えている。
破砕装置21は、鋳造装置2によって鋳造された鋳造合金塊を破砕して鋳造合金薄片にするものである。図1に示すように、破砕装置21と開閉式ステージ群32との間には、鋳造合金薄片を加熱装置3の開閉式ステージ群32上に案内するホッパ7が備えられている。
加熱装置3は、加熱ヒータ31とコンテナ5とから構成されている。コンテナ5は、貯蔵容器4と、貯蔵容器4の上部に設置された開閉式ステージ群32とを備えている。開閉式ステージ群32は、複数の開閉式ステージ33からなるものである。開閉式ステージ33は、「閉」のときに破砕装置21から供給された鋳造合金薄片を載置させ、「開」のときに鋳造合金薄片を貯蔵容器4に送出させるものである。
また、製造装置1にはコンテナ5を可動自在にするベルトコンベア51(可動装置)が備えられており、ベルトコンベア51によってコンテナ5が図1中の左右方向に移動できるようになっている。
また、図1に示す製造装置1には、チャンバ6が備えられている。チャンバ6は、鋳造室6aと、鋳造室6aの下方に設置されて鋳造室6aと連通する保温・貯蔵室6bとを備えている。鋳造室6aには鋳造装置2が収納され、保温・貯蔵室6bには加熱装置3が収納されている。
本実施形態においてR−T−B系希土類焼結磁石用の合金を製造するには、まず、図示しない溶解装置において1450℃程度の温度の所定の組成の合金溶湯を調製する。次いで、得られた合金溶湯を、図示しないダンディッシュを用いて鋳造装置2の水冷銅ロールからなる冷却ロール22に供給して凝固させ、鋳造合金とする。その後、鋳造合金を冷却ロール22から離脱させ、破砕装置21の破砕ロールの間を通して破砕することにより、鋳造合金薄片とする。
破砕された鋳造合金薄片は、ホッパ7を通過して、ホッパ7の下に配置された開閉式ステージ群32の「閉」の状態とされた開閉式ステージ33上に堆積される。開閉式ステージ33上に堆積された鋳造合金薄片は、加熱ヒータ31によって加熱される。
本実施形態においては、製造された800℃超の鋳造合金が500℃未満の温度となるまでの間に、10秒〜120秒間一定の温度で維持する温度保持工程を行う。本実施形態では、開閉式ステージ33上に800℃〜500℃の温度範囲内の鋳造合金薄片が供給され、鋳造合金薄片が開閉式ステージ33上に堆積された時点から加熱ヒータ31による加熱が開始される。このことによって、鋳造合金を一定の温度で10秒〜120秒間維持する温度保持工程が開始される。
そして、開閉式ステージ33上に堆積された鋳造合金薄片は、所定の時間が経過した時点で、開閉式ステージ33が「開」の状態とされて貯蔵容器4に落下される。このことにより、加熱ヒータ31の熱が鋳造合金薄片に到達しなくなり、鋳造合金薄片の冷却が再開され、温度保持工程が終了する。
温度保持工程を行った場合、鋳造合金に含まれる元素が鋳造合金内で移動する元素の再配置により、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属を含む金属元素Mと、Bとの成分の入れ替えが促されると推定される。このことにより、合金粒界相となる領域に含まれていたBの一部が主相へと移動し、主相となる領域に含まれていた金属元素Mの一部が合金粒界相へと移動すると推定される。これにより、主相本来の磁石特性を発揮することができるので、これを用いたR−T−B系磁石の保磁力が高くなると推定される。
温度保持工程における鋳造合金の温度が800℃超である場合、合金組織が粗大化する恐れがある。また、一定の温度で維持する時間が120秒を超える場合、生産性に支障を来す場合がある。
また、温度保持工程における鋳造合金の温度が500℃未満である場合や一定の温度で維持する時間が10秒未満である場合、温度保持工程を行うことによる元素の再配置の効果が充分に得られない場合がある。
なお、本実施形態においては、800℃〜500℃の温度範囲内で開閉式ステージ33上に堆積された鋳造合金薄片を加熱ヒータ31で加熱する方法により温度保持工程を行ったが、温度保持工程は、800℃超の鋳造合金が500℃未満の温度となるまでの間に、10秒〜120秒間一定の温度で維持することができればよく、この方法に限定されない。
また、本実施形態のR−T−B系希土類焼結磁石用の合金の製造方法においては、R−T−B系合金を製造するチャンバ6内を不活性ガスの減圧雰囲気とすることが好ましい。さらに、本実施形態においては、鋳造工程の少なくとも一部を、ヘリウムを含む雰囲気中で行うことが好ましい。ヘリウムはアルゴンと比較して鋳造合金から抜熱する能力が高く、鋳造合金の冷却速度を容易に速くすることができる。
鋳造工程の少なくとも一部を、ヘリウムを含む雰囲気中で行う方法としては、例えば、チャンバ6の鋳造室6a内に所定の流量で不活性ガスとしてヘリウムを供給する方法が挙げられる。この場合、鋳造室6a内がヘリウムを含む雰囲気となるので、鋳造装置2によって鋳造され、冷却ロール22によって急冷されている鋳造合金における冷却ロール22と接触していない面を効率よく冷却できる。したがって、鋳造合金の冷却速度が速くなり、合金組織の粒径が微細化され、粉砕性に優れるものとなり、合金粒界相の間隔が3μm以下の微細な合金組織が容易に得られ、これを用いて製造されたR−T−B系磁石の保磁力を向上させることができる。また、鋳造室6a内を、ヘリウムを含む雰囲気とした場合、鋳造合金の冷却速度が速くなるので、開閉式ステージ33上に堆積される鋳造合金薄片の温度を、容易に800℃以下にすることができる。
また、本実施形態のR−T−B系合金の製造方法においては、温度保持工程後の鋳造合金薄片を、ヘリウムを含む雰囲気中で冷却することが好ましい。このことにより、温度保持工程後の鋳造合金である鋳造合金薄片の冷却速度が速くなるので、より一層合金組織が微細化され、粉砕性に優れ、合金粒界相の間隔が3μm以下の微細な合金組織が容易に得られる。温度保持工程後の鋳造合金薄片を、ヘリウムを含む雰囲気中で冷却する方法としては、例えば、開閉式ステージ33から落下された鋳造合金薄片の収容される貯蔵容器4内に所定の流量でヘリウムを供給する方法が挙げられる。
なお、本実施形態においては、温度保持工程を含んだSC法を用いてR−T−B系希土類焼結磁石用の合金を製造する場合について説明したが、本発明において用いられるR−T−B系希土類焼結磁石用の合金は、温度保持工程を含まないSC法でもよく、またSC法を用いて製造されるものに限定されるものではない。例えば、R−T−B系希土類焼結磁石用の合金は、遠心鋳造法、ブックモールド法などを用いて鋳造してもよい。
水素解砕法は、例えば、室温で鋳造合金薄片に水素を吸蔵させ、300℃程度の温度で水素中で熱処理した後、減圧して主相の格子間に入り込んだ水素を脱気し、その後、500℃程度の温度で熱処理して粒界相中の希土類元素と結合した水素を除去するという手順で行われる。水素解砕法において水素が吸蔵された鋳造合金薄片は、体積が膨張するので、合金内部に容易に多数のひび割れ(クラック)が発生し、解砕される。
また、水素解砕された鋳造合金薄片を粉砕する方法としては、ジェットミルなどが用いられる。水素解砕された鋳造合金薄片をジェットミル粉砕機に入れ、例えば0.6MPaの高圧窒素を用いて平均粒度1〜4.5μmに微粉砕して粉末とする。粉末の平均粒度を小さくした方が、焼結磁石の保磁力を向上させることができる。しかし、粒度をあまり小さくすると、粉末表面が酸化されやすくなり、逆に保磁力が低下してしまう。
〔合金を用いた磁石製造工程〕
次に、このようにして得られたR−T−B系希土類焼結磁石用の合金を用いてR−T−B系磁石を製造する方法を説明する。
本実施形態のR−T−B系磁石を製造する方法としては、例えば、R−T−B系希土類焼結磁石用の合金の粉末に、潤滑剤として0.02質量%〜0.03質量%のステアリン酸亜鉛を添加し、横磁場中成型機などを用いてプレス成形して、真空中で焼結し、その後、熱処理する方法などが挙げられる。
(焼結工程)
成形体を焼結するための熱処理は、特に限定されるものではなく、例えば、以下に示す熱処理条件で行うことができる。
焼結を行う際の熱処理炉内(チャンバー内)の雰囲気は、例えば、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気とすることができる。焼結を行う際の熱処理炉内の雰囲気は、磁石用合金からなる成形体の酸化による損傷を防ぐために、真空雰囲気またはアルゴン雰囲気であることが好ましく、真空雰囲気であることがより好ましい。
図2は、本発明のR−T−B系希土類焼結磁石を製造する方法の一例を説明するためのグラフであって、焼結工程、第1熱処理工程、第2熱処理工程における熱処理時間と熱処理温度との関係を示したグラフである。なお、第1熱処理工程及び第2熱処理工程のグラフのそれぞれにおいて、本発明に係る急冷は太線で示しており、太線ではない実線、点線は急冷でない場合の参考のために示している。
本実施形態において、成形体を焼結するための熱処理は、従来公知の条件で行うことができ、特に限定されない。例えば、成形体を焼結するための熱処理では、図2に示すように、有機物の除去を目的とした1段目熱処理を行う。その後、さらに昇温して水素化物の還元を目的とした2段目熱処理を行う。その後、さらに昇温して液相焼結を目的とした3段目熱処理を行う方法とすることができる。このように、成形体を焼結するための熱処理では、最高到達温度(図2に示す例では、3段目熱処理の温度)に到達するまでに、所定の時間一定の温度に保持する工程を1回又は複数回(図2に示す例では、1段目熱処理と2段目熱処理の2回)行うことにより、段階的に昇温してもよいし、最高到達温度に到達するまで一定の温度で保持することなく連続して昇温してもよい。
(第1熱処理工程)
第1熱処理工程においては、焼結後に得られた焼結体を、熱処理炉内に入れて以下に示す条件で熱処理を行う。
第1熱処理工程における熱処理雰囲気は、特に限定されるものではなく、例えば、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気とすることができる。第1熱処理工程を行う際の熱処理炉内の雰囲気は、酸化を防止するため、真空あるいはアルゴン雰囲気であることが好ましい。
第1熱処理工程においては、図2の符号T1の温度を790〜920℃として0.5〜10時間保持する熱処理を行うと共に、100℃/分以上の冷却速度で冷却する(図2参照)。熱処理の温度および保持時間並びに冷却速度を上記範囲とすることで、添加合金に含まれるTbが添加合金から上記第1合金全体に拡散して均一に主相と粒界相との境界近傍に供給され、保磁力向上に寄与すものと考えられる。
T1の温度で所定時間保持した後の冷却速度は、100℃/分以上である。冷却速度は、200℃/分以上であることが好ましく、300℃/分以上であることがより好ましく、500℃/分以上であることがさらに好ましい。冷却速度の上限としては、内部にひずみが残存して焼結体の強度が低下する問題を防ぐ理由で、3000℃/分以下であることが好ましく、2000℃/分以下であることがより好ましく、1500℃/分以下であることがさらに好ましい。この上限の冷却速度は例えば、焼結体を水冷することによって達成することができる。
また、熱処理温度が790℃以上であると、粒界相の組成の均一化が起こるため、好ましい。また、熱処理温度が920℃以下であると、焼結体の主相の粒成長を抑制できる。したがって、熱処理温度は、920℃以下とする。焼結体の主相の粒成長をより効果的に抑制するために、熱処理温度を910℃以下とすることが好ましい。
熱処理の保持時間が0.5時間未満であると、粒界相の組成が均一に再配置するのには足りず、保磁力向上効果が充分に得られない。このため、熱処理の保持時間は0.5時間以上とし、0.75時間以上とすることが好ましい。また、保持時間を10時間以下にすると、焼結体の主相の粒成長を抑制できる。したがって、第1熱処理工程における保持時間は、10時間以下とし、8時間以下とすることが好ましい。
(第2熱処理工程)
第2熱処理工程においては、第1熱処理後の焼結体を熱処理炉内に入れて、以下に示す条件で熱処理を行う。
第2熱処理工程における熱処理雰囲気は、特に限定されるものではなく、例えば、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気とすることができる。
第2熱処理工程においては、第1熱処理後の前記焼結体を、図2の符号T2の温度を480〜620℃として0.05〜10時間保持する熱処理を行うと共に、100℃/分以上の冷却速度で冷却する(図2参照)。熱処理の温度および保持時間並びに冷却速度を上記範囲とすることで、R−T−B系磁石に含まれる原子が再配置される。その結果、第2熱処理工程後の焼結体は、高い保磁力(Hcj)を有するものとなる。
T2の温度で所定時間保持した後の冷却速度は、100℃/分以上である。冷却速度は、200℃/分以上であることが好ましく、300℃/分以上であることがより好ましく、500℃/分以上であることがさらに好ましい。冷却速度の上限としては、内部ひずみが残るために焼結体の強度が低下する問題を防ぐ理由で3000℃/分以下であることが好ましく、2000℃/分以下であることがより好ましく、1500℃/分以下であることがさらに好ましい。
熱処理温度が480℃以上であると、R−T−B系磁石に含まれる原子の再配置を行うことによる効果が充分に得られる。このため、熱処理温度は480℃以上とする。熱処理温度が520℃以上であると、第2熱処理工程を行うことによる保磁力向上効果が顕著となるため、好ましい。また、熱処理温度が620℃以下であると、焼結体内で粒界相成分が反応することによる、R−T−B系磁石の角形性の低下が抑制される。したがって、第2熱処理工程における熱処理温度は、620℃以下とする。第2熱処理工程を行うことによるR−T−B系磁石の角形性の低下をより効果的に抑制するために、熱処理温度は575℃以下とすることが好ましい。
熱処理の保持時間が0.05時間未満であると、第2熱処理工程後の焼結体における原子の再配置が不十分となり、第2熱処理工程を行うことによる保磁力向上効果が得られない。このため、熱処理の保持時間は0.05時間以上とすることが好ましい。また、保持時間が10時間を超えると、粒子が凝集するため第2熱処理工程を行うことによる保磁力向上効果が低下する。したがって、第2熱処理工程における保持時間は、10時間以下とすることが好ましい。
また、本発明のR−T−B系磁石において得られる保磁力(Hcj)を向上させる効果は第1には、粒界相中にFeを高濃度で含む遷移金属リッチ相が形成されていることによるものと推測される。本発明のR−T−B系磁石に含まれる遷移金属リッチ相の面積率は、0.005〜3面積%であることが好ましく、0.1%〜2面積%であることがより好ましい。
遷移金属リッチ相の面積率が上記範囲内であると、粒界相中に遷移金属リッチ相が含まれていることによる保磁力向上効果が、より一層効果的に得られる。これに対し、遷移金属リッチ相の面積率が0.005面積%未満であると、保磁力(Hcj)を向上させる効果が不十分となる恐れが生じる。また、遷移金属リッチ相の面積率が3面積%を超えると、残留磁化(Br)や最大エネルギー積((BH)max)が低下するなど磁気特性に悪影響を及ぼすため、好ましくない。
さらに、本発明のR−T−B系磁石において得られる保磁力(Hcj)を向上させる効果は第2には、希土類元素であるRとして、Tbを0原子%超0.01原子%以下含むことにより、主相表面をTbが被覆するものと推測される。
遷移金属リッチ相中のFeの原子濃度は、50〜70原子%であることが好ましい。遷移金属リッチ相中のFeの原子濃度が上記範囲内であると、遷移金属リッチ相が含まれていることによる効果が、より一層効果的に得られる。これに対し、遷移金属リッチ相のFeの原子濃度が上記範囲未満であると、粒界相中に遷移金属リッチ相が含まれていることによる保磁力(Hcj)向上効果が、不十分となる恐れが生じる。また、遷移金属リッチ相のFeの原子濃度が上記範囲を超えると、R17相あるいはFeが析出して磁気特性に悪影響を及ぼす恐れがある。
本実施形態のR−T−B系磁石は、B/TRE含有量が上記(式1)を満たし、金属元素Mを0.1〜2.4原子%含むR−T−B系合金を成形して焼結してなるものであり、粒界相が、Rリッチ相と遷移金属リッチ相とを含み、遷移金属リッチ相は、Rリッチ相より希土類元素の合計原子濃度が低く、Rリッチ相よりFeの原子濃度が高いものであるので、Dyの含有量を抑制しつつ、高い保磁力を有し、モーターに好適に用いられる優れた磁気特性を有するものとなる。
なお、本実施形態においては、焼結後のR−T−B系磁石の表面に、Dy金属もしくはDy化合物を付着させて熱処理し、Dyを焼結磁石内部に拡散させることにより、焼結磁石表面のDy濃度が内部のDy濃度よりも高いR−T−B系磁石とし、さらに保磁力を向上させてもよい。
焼結磁石表面のDy濃度が内部のDy濃度よりも高いR−T−B系磁石を製造する方法としては、具体的には、以下に示す方法が挙げられる。例えば、エタノールなどの溶媒とフッ化ジスプロシウム(DyF)とを所定の割合で混合してなる塗布液中に、焼結後のR−T−B系磁石を浸漬させることにより、R−T−B系磁石に塗布液を塗布する。その後、塗布液の塗布されたR−T−B系磁石に対して、2段階の熱処理を行う拡散工程を行う。具体的には、塗布液の塗布されたR−T−B系磁石を、アルゴン雰囲気中で900℃の温度で一時間程度加熱する第1熱処理を行い、第1熱処理後のR−T−B系磁石を一旦室温まで冷却する。その後、再びR−T−B系磁石を、アルゴン雰囲気中で500℃の温度で一時間程度加熱する第2熱処理を行って、室温まで冷却する。
上記方法以外の焼結後のR−T−B系磁石の表面に、Dy金属もしくはDy化合物を付着させる方法として、金属を気化させて磁石表面にこれらの膜を付着させる方法、有機金属を分解させて表面に膜を付着させる方法などを用いても良い。
なお、焼結後のR−T−B系磁石の表面には、Dy金属もしくはDy化合物に代えて、Tb金属もしくはTb化合物を付着させて熱処理してもよい。この場合、例えば、焼結後のR−T−B系磁石の表面にTbのフッ化物を含む塗布液を塗布して熱処理し、Tbを焼結磁石内部に拡散させることにより、焼結磁石表面のTb濃度が内部のTb濃度よりも高いR−T−B系磁石とすることができ、さらに保磁力を向上させることができる。
また、R−T−B系磁石の表面に、金属Dyや金属Tbを蒸着させて熱処理し、DyやTbを焼結磁石内部に拡散させることにより、さらに保磁力を向上させてもよい。本実施形態のR−T−B系磁石には、このような技術を何ら支障なく使用することができる。
R−T−B系磁石の保磁力(Hcj)は、高いほど好ましいが、自動車などの電動パワーステアリングのモーター用の磁石として用いる場合、20kOe以上であることが好ましく、電気自動車のモーター用の磁石として用いる場合、30kOe以上であることが好ましい。電気自動車のモーター用の磁石において保磁力(Hcj)が30kOe未満であると、モーターとしての耐熱性が不足する場合がある。
「実施例1〜10、比較例1〜9」
Ndメタル(純度99wt%以上)、Prメタル(純度99wt%以上)、Dyメタル(純度99wt%以上)、フェロボロン(Fe80wt%、B20wt%)、鉄塊(純度99%wt以上)、Alメタル(純度99wt%以上)、Gaメタル(純度99wt%以上)、Cuメタル(純度99wt%)、Coメタル(純度99wt%以上)、Zrメタル(純度99wt%以上)、Tbメタル(純度99wt%以上)を、表1に示す合金M1〜M5(第1合金)、及び、合金A1(添加合金(第2合金))の合金組成になるように秤量し、アルミナるつぼに装填した。
その後、アルミナるつぼを高周波真空誘導炉内に設置して、炉内をArで置換した。そして、高周波真空誘導炉を1450℃まで加熱して合金を溶融させて溶湯とした。その後、水冷銅ロールに溶湯を注ぎ、SC(ストリップキャスト)法により鋳造合金を鋳造した。この時、水冷銅ロールの周速度を1.0m/秒、溶湯の平均厚みを0.3mm程度とした。その後、鋳造合金を破砕して第1合金の鋳造合金薄片及び添加合金(第2合金)の鋳造合金薄片を得た。次に、第1合金の鋳造合金薄片及び添加合金(第2合金)の鋳造合金薄片を混合した。混合後の組成は表1に示す通りである。
次に、第1合金の鋳造合金薄片及び添加合金(第2合金)の鋳造合金薄片を混合後、混合した鋳造合金薄片を以下に示す水素解砕法により解砕した。まず、鋳造合金薄片を直径5mm程度になるように粗粉砕し、室温の水素中に挿入して水素を吸蔵させた。続いて、粗粉砕して水素を吸蔵させた鋳造合金薄片を300℃まで水素中で加熱する熱処理を行った。その後、300℃から減圧して主相の格子間の水素を脱気し、さらに500℃まで加熱する熱処理を行って粒界相中の水素を放出除去し、室温まで冷却する方法により解砕した。
次に、水素解砕された鋳造合金薄片に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛0.025wt%を添加し、ジェットミル(ホソカワミクロン100AFG)により、0.6MPaの高圧窒素を用いて、水素解砕された鋳造合金薄片を平均粒度(d50)4μmに微粉砕してR−T−B系合金粉末を得た。
次に、このようにして得られたR−T−B系合金粉末に、潤滑剤として0.02質量%〜0.03質量%のステアリン酸亜鉛を添加し、横磁場中成型機(磁界2T)を用いて成型圧力0.8t/cm2でプレス成型して成形体とした。
その後、成形体を、カーボン製のトレイ内に設置し、成形体の入れられたトレイを熱処理炉内に配置して、0.01Paまで減圧した。引き続き、有機物の除去を目的として500℃、水素化物の分解を目的として800℃、焼結を目的として1000〜1100℃の3段階で熱処理して、焼結体を得た(焼結工程)。
その後、焼結体を、900℃で保持時間0.75時間、その後急冷という第1熱処理工程を行い、次いで、520℃で保持時間1時間、その後急冷という第2熱処理工程を行って、実施例1〜10、及び、比較例1〜9のR−T−B系磁石を得た。第1熱処理工程及び第2熱処理工程の急冷の冷却速度は同じとした。
次いで、得られた実施例1〜10、及び、比較例1〜9のR−T−B系磁石を一辺6.5mmの立方体に加工して、それぞれ磁気特性をパルス型BHカーブトレーサー(東英工業TPM2−10)で測定した。その結果を表2に示す。
表2において「Hcj」とは保磁力であり、「Br」とは残留磁化であり、「(BH)max」とは最大エネルギー積であり、「Hk/Hcj」とはBrが90%となるHとして算出したHkとHcjとの比率に基づく角形性である。これらの磁気特性の値は、それぞれ3個のR−T−B系磁石の測定値の平均である。また、上述の通り、第1熱処理工程及び第2熱処理工程の冷却速度は同じであって、表2における冷却速度はその同じ冷却速度を示す。なお、冷却速度35℃/分は通常の量産ラインとしては速い方である。
表2によれば、以下のことがわかる。
実施例2〜6、比較例1、2はいずれも同じ組成であって、Tbを0.002原子%含むものであるが、焼結工程後の第1熱処理工程及び第2熱処理工程の冷却速度が100℃/分以上の実施例2〜6の保磁力は、ずれも18kOe以上であった。これに対して、冷却速度が80℃/分、35℃/分の比較例1、2の保磁力はそれぞれ、17.18kOe、17.20kOeといずれも17kOeを少し超えた程度であり、実施例2〜6に比べて、1kOe近く低かった。
また、実施例1、2、比較例3はいずれも焼結工程後の第1熱処理工程及び第2熱処理工程の冷却速度が500℃であるが、それぞれ、Tbの含有量は0.008原子%、0.002原子%、0.016原子%である。Tbの含有量が0.01原子%を超えない実施例1、2の保磁力はそれぞれ、18.11kOe、18.15kOeといずれも18kOeを超えていた。これに対して、Tbの含有量が0.01原子%を超えている比較例3は、17.49kOeと、実施例1に比べて0.6kOe程度低かった。
また、比較例4及び5によれば、Tbを含有しない場合には、焼結工程後の第1熱処理工程及び第2熱処理工程の冷却速度が通常の量産ラインの冷却速度により近い35℃/分であっても、それに比べて急冷である500℃/分であっても、保磁力は17kOeを少し超えた程度であった。
また、実施例2と実施例7とを比較すると、Tbの含有量が同じでも、Zrの含有量を0.10原子%より多くするよりも、0.10原子%より少ない0.02原子%にする方が、保磁力が向上することがわかる。これに加えて、実施例7と比較例6とを比較すると、Zrの含有量を0.02原子%とし、さらにTbを含有すると保磁力がさらに向上することがわかる。
また、実施例7と実施例8とを比較すると、Tbの含有量が同じでかつZrの含有量が0.02原子%と同程度であっても、Dyを含有する方が、保磁力が向上することがわかる。これに加えて、実施例8と比較例7とを比較すると、Zrの含有量を0.03原子%とし、Dyの含有量を0.8原子%とし、さらにTbを含有すると保磁力がさらに向上することがわかる。
また、実施例2と実施例9とを比較すると、Tbの含有量及びZrの含有量が同じでも、Dyを含有する方が、保磁力が向上することがわかる。
また、実施例9と比較例8とを比較すると、Dyの含有量及びZrの含有量が同じでも、Tbを含む方が含まないよりも保磁力がより向上することがわかる。
また、実施例9と実施例10とを比較すると、Tbの含有量及びZrの含有量が同じでも、Dyを多く含有する方が、保磁力が向上することがわかる。
また、実施例10と比較例9とを比較すると、Dyの含有量及びZrの含有量が同じでも、Tbを含む方が含まないよりも保磁力がより向上することがわかる。
図3は、Dy未添加のR−T−B系磁石である実施例1、2、及び、比較例3、4について、Tbの含有量と、保磁力との関係を示したグラフである。
図3より、保磁力は、Tbの含有量が0.016原子%から減少するにつれて徐々に高くなっていき、0.005原子%あたりで最大となり、0.005原子%より少なくなると減少し始め、0.002原子%のときに0.008原子%と同程度の保磁力(18kOe超)となり、さらに0.0015原子%あたりで18kOeを割り、0.001原子%では17.8kOe程度となり、0.0005原子%では17.5kOe程度となり、Tbを含有しないときには17.36kOeとなるのがわかる。
図3から、Tbの含有量は微量ではあるが、0.01原子%以下において保磁力が高くなることが明らかである。
実施例1及び比較例4のR−T−B系磁石をそれぞれ研磨した後、研磨面を電界放出型電子線マイクロアナライザー(FE−EPMA)により観察し、組成マップ分析を行った。
図4は、FE−EPMAによる観察結果を示すものであり、(a)〜(e)は順に、Tb像、Nd像、Fe像、B像、組成像であり、(a)〜(e)のそれぞれで左側の像は実施例1の像であり、右側の像は比較例4の像である。図4中の主相粒子1及び添加粒子1はそれぞれ、実施例1のR−T−B系磁石における主相内の粒子(組成分析箇所)、添加合金由来と思われる粒子(組成分析箇所)を示すものである。
表3は、主相粒子1及び添加粒子1の組成を示す。
図4および表3から添加したTbを含む合金粒子は磁石内部にR14Bの組成を保ったまま残存していることがわかる。また、これらの画像を用いて画像解析からTbを含む合金粒子の量を算出すると0.01面積%程度であった。
図4(a)の実施例1に明確に観察される添加粒子1はR14B結晶構造のTb含有粒子であり、比較例4には観察されない。この添加粒子1がR14B結晶構造であることはTEM像で確認した。
1…製造装置、2…鋳造装置、3…加熱装置、4…貯蔵容器、5…コンテナ、
6…チャンバ、6a…鋳造室、6b…保温・貯蔵室、7…ホッパ、21…破砕装置、31…加熱ヒータ、32…開閉式ステージ群、33…開閉式ステージ。

Claims (11)

  1. 希土類元素であるRと、Feを主成分とする遷移金属であるTと、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属を含む金属元素Mと、Bおよび不可避不純物からなり、Rを13〜15.5原子%含み、Bを5.0〜6.0原子%含み、Mを0.1〜2.4原子%含み、Tおよび不可避不純物が残部であり、
    前記希土類元素であるRとして、Tbを0原子%超、0.01原子%以下含むことを特徴とするR−T−B系希土類焼結磁石。
  2. Tbを含むR14B結晶構造の粒子を有することを特徴とする請求項1に記載のR−T−B系希土類焼結磁石。
  3. 下記(式1)を満たすことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のR−T−B系希土類焼結磁石。
    0.32≦B/TRE≦0.40・・(式1)
    (式1)において、Bはホウ素元素の濃度(原子%)、TREは希土類元素合計の濃度(原子%)を表す。
  4. 前記遷移金属であるTとして、Zrを0.015〜0.10原子%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のR−T−B系希土類焼結磁石。
  5. 前記金属元素Mとして少なくともGaを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のR−T−B系希土類焼結磁石。
  6. 希土類元素であるRと、Feを主成分とする遷移金属であるTと、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属を含む金属元素Mと、Bおよび不可避不純物からなり、Rを13〜15.5原子%含み、Bを5.0〜6.0原子%含み、Mを0.1〜2.4原子%含み、Tおよび不可避不純物が残部であるR−T−B系磁石用合金と、
    Tbを必須に含む希土類元素であるRと、Feを主成分とする遷移金属であるTと、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属を含む金属元素Mと、Bおよび不可避不純物からなり、Rを13〜15.5原子%含み、Bを5.0〜6.0原子%含み、Mを0.1〜2.4原子%含み、Tおよび不可避不純物が残部である添加合金と、を用いて焼結体を形成する焼結工程と、
    前記焼結体を熱処理炉内に入れ、790〜920℃で0.5〜10時間保持する熱処理を行うと共に、その後100℃/分以上の冷却速度で冷却する第1熱処理工程と、
    前記第1熱処理後の前記焼結体を、480〜620℃で0.05〜10時間保持する熱処理を行うと共に、その後100℃/分以上の冷却速度で冷却する第2熱処理工程と、を有することを特徴とするR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法。
  7. 前記添加合金が、Tbを含むR2T14B結晶相を有することを特徴とする請求項6に記載のR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法。
  8. 下記(式1)を満たすことを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載のR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法。
    0.32≦B/TRE≦0.40・・(式1)
    (式1)において、Bはホウ素元素の濃度(原子%)、TREは希土類元素合計の濃度(原子%)を表す。
  9. 前記R−T−B系磁石用合金は、Tbを含まないことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載のR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法。
  10. 前記R−T−B系磁石用合金と前記添加合金とを、前記焼結工程の前に混合することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載のR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法。
  11. 前記R−T−B系磁石用合金と前記添加合金との混合物のTbの含有量を、0原子%超、0.01原子%以下とすることを特徴とする請求項10に記載のR−T−B系希土類焼結磁石の製造方法。
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