JP2016180629A - 部分放電測定方法および部分放電測定装置、並びに絶縁電線の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面に絶縁層を備える絶縁電線を走行させる走行工程と、走行する絶縁電線の絶縁層に対して電源に接続された電極を接触させ、絶縁電線を走行させながら絶縁層に所定の試験電圧を印加する電圧印加工程と、試験電圧の印加により絶縁層から発生する部分放電に伴う信号のうち、閾値以上の信号を部分放電信号として検出する検出工程と、検出工程の結果に基づき、試験電圧での部分放電の発生頻度を判定する判定工程と、を有する、部分放電測定方法である。
【選択図】図1
Description
具体的に説明すると、絶縁電線では絶縁層の膜厚が長さ方向でばらつくことがあり、このような絶縁層のPDIVを測定すると、厚い箇所で測定される数値は比較的高くなり、薄い箇所で測定される数値は比較的低くなる。この厚い箇所で測定される高い数値を絶縁電線の全体のPDIVとすると、そのPDIVに近い電圧を絶縁電線に印加したときに、膜厚の比較的薄い箇所で部分放電が発生するおそれがある。そのため、PDIVとしては、絶縁電線の全体で膜厚が最も薄い箇所で測定される最小値を把握する必要がある。PDIVの最小値は、最小値よりも低い電圧を印加する場合であれば、絶縁電線の全長にわたって部分放電を抑制できることを保証する保証値となり得る。この点、従来のように絶縁電線の一部をサンプルとして抜き出し、そのPDIVを測定する場合、膜厚の最も薄い箇所を測定できるとも限らないため、測定される数値はPDIVの保証値としては不十分となってしまう。
表面に絶縁層を備える絶縁電線を走行させる走行工程と、
走行する前記絶縁電線の前記絶縁層に対して電源に接続された電極を接触させ、前記絶縁電線を走行させながら前記絶縁層に所定の試験電圧を印加する電圧印加工程と、
前記試験電圧の印加により前記絶縁層から発生する部分放電に伴う信号のうち、閾値以上の信号を部分放電信号として検出する検出工程と、
前記検出工程の結果に基づき、前記試験電圧での部分放電の発生頻度を判定する判定工程と、を有する、部分放電測定方法が提供される。
上述の部分放電測定方法を、導体の外周上に絶縁層を形成する絶縁層形成工程の後にインラインにて行う、絶縁電線の製造方法が提供される。
表面に絶縁層を備える絶縁電線を走行させる走行部と、
所定の試験電圧を生成する電源に接続され、走行する前記絶縁電線の前記絶縁層に接触するように配置されて、前記絶縁層に前記試験電圧を印加する電極と、
前記試験電圧の印加により前記絶縁層から発生する部分放電に伴う信号のうち、閾値以上の信号を部分放電信号として検出する検出部と、
前記検出部での結果に基づき、前記試験電圧での部分放電の発生頻度を判定する判定部と、を備える部分放電測定装置が提供される。
また、動いている絶縁電線の絶縁層に対して従来の方法と同様の条件で電圧を印加するには、移動する絶縁電線の絶縁層と電極との接触時間、印加する電圧の周波数などを所定の関係を満足するように適宜設定するとよいことを見出した。
本発明は上記知見に基づいて成されたものである。
まず、部分放電測定装置の説明に先立ち、測定対象となる絶縁電線について説明する。
次に、本発明の一実施形態に係る部分放電測定装置が組み込まれる絶縁電線の製造装置について説明する。
部分放電測定装置100は、表面に絶縁層3が形成された絶縁電線1を走行させながら、試験電圧を印加し、発生する部分放電を検出することで、部分放電の発生頻度を絶縁電線1の全長にわたって測定するものである。部分放電測定装置100は、図1に示すように、走行部110と、電極120と、検出部130と、判定部140とを備えて構成されている。
次に、上述した部分放電測定装置100を用いた部分放電測定方法について説明する。
これに対して、最大値V0の試験電圧を印加したときに、絶縁電線1で部分放電の発生頻度が高くなる箇所があれば、絶縁電線1のPDIVの保証値は電圧V0よりも低いことが分かる。この場合、例えば、試験電圧の最大値をV0から徐々に降圧して測定し、絶縁電線1の全長にわたって部分放電の発生頻度が低くなるときの最大値V1を求め、それを保証値と設定するとよい。
次に、上述した部分放電測定方法を、導体2の外周上に絶縁層3を形成する絶縁層形成工程の後にインラインにて行う、絶縁電線1の製造方法について説明する。ここで、インラインとは、絶縁電線1の製造と同じ工程にて部分放電測定方法を行うことであり、導体2の外周上に絶縁層3を形成して絶縁電線1を製造しつつ、製造された絶縁電線1を連続的に部分放電測定することを示す。
続いて、導体2を絶縁層形成部210に導入し、走行する導体2の外周上に、例えばポリエステルイミド、ポリアミドイミド又はポリイミドなどを含む絶縁塗料を塗布する。その後、絶縁塗料を加熱する(焼き付ける)ことにより所定の膜厚の絶縁層3を形成する。そして、絶縁塗料の塗布・焼付を、絶縁層3が所望の膜厚(例えば、30μm〜150μm)となるまで繰り返し行い、絶縁電線1を製造する。
まず、導体径φ0.80mmの銅線を走行させつつ、銅線の外周上にポリエステルイミド樹脂塗料を塗布し、塗料を焼き付けることで、膜厚35μmの絶縁層を形成して絶縁電線を製造した。この絶縁電線を所定の速度で走行させながら、カーボン製ブラシが内在する電極(絶縁電線の走行方向に沿った長さが150mm)に接触させ、絶縁層に対して所定の正弦波電圧を印加した。電極から約10cm下流側に設置した電磁波センサにより、絶縁層で発生する部分放電に伴う信号のうち、放電電荷量が100pC以上となる信号を部分放電信号として検出した。そして、その結果から部分放電の発生頻度を測定した。実施例1〜4では、同一の絶縁電線に対して、下記表1に示すように、絶縁電線を走行させる速度、正弦波電圧の最大値および周波数を適宜変更して部分放電を測定した。なお、実施例1〜4では、絶縁層に印加される正弦波電圧の周期数Tが50周期分となるように、正弦波電圧を印加した。
一方、実施例2に示すように、1000Vpの正弦波電圧を印加した場合、部分放電の発生頻度が高いことが確認されたので、部分放電の発生がありと総合的に判断した。このことから、絶縁電線のPDIVの保証値は1000Vpよりも低いことが分かった。
実施例3,4では、実施例1,2よりも絶縁電線を走行させる速度を大きくしたが、正弦波電圧の周期数Tが50周期となるように、正弦波電圧の周波数fを変更することにより、実施例1,2と同様に部分放電を測定できることが確認された。
まず、導体径φ0.80mmの銅線を走行させつつ、銅線の外周上にポリエステルイミド樹脂塗料を塗布し、塗料を焼き付けることで、膜厚35μmの絶縁層を形成して絶縁電線を製造した。この絶縁電線を所定の速度で走行させながら、カーボン製ブラシが内在する電極(絶縁電線の走行方向に沿った長さが150mm)に接触させ、絶縁層に対して所定の正弦波電圧を印加した。電極から約10cm下流側に設置した電磁波センサにより、絶縁層で発生する部分放電に伴う信号のうち、放電電荷量が100pC以上となる信号を部分放電信号として検出した。そして、部分放電信号の検出回数Nを計測し、検出回数Nと正弦波電圧の周期数Tとを比較して検出頻度に基づいて、部分放電の発生頻度を測定した。実施例5〜8では、同一の絶縁電線に対して、下記表2に示すように、正弦波電圧の最大値および周波数を適宜変更して部分放電を測定した。なお、実施例5〜8では、絶縁層に印加される正弦波電圧の周期数Tが50周期分となるように、正弦波電圧を印加した。
比較例1では、まず、実施例1と同様に、導体を速度20m/minで走行させながら、絶縁塗料を塗布・焼付することにより、膜厚35μmの絶縁層を備える絶縁電線を製造した。
比較例2では、絶縁電線を製造するときに導体の走行速度を20m/minから30m/minに変更した以外は比較例1と同様に絶縁電線を製造した。
比較例1,2では、得られた絶縁電線のPDIVを以下の方法により測定した。まず、製造した絶縁電線を600mmに切り出し、撚り部が120mmとなるようにツイストペアを作製し、その端部から10mmの位置までの絶縁層を削って端末処理を施すことで、測定サンプルを作製した。続いて、この測定サンプルを10本準備し、それぞれの端末処理された端部に電極を接続した。そして、温度25℃、湿度50%の雰囲気下で、50Hzの正弦波電圧を10V/sで昇圧させ、測定サンプルに放電電荷量が100pC以上の放電光が50回発生するときの電圧を測定した。ここでは、これを3回繰り返し、それぞれで得られた電圧の平均値からPDIVを求めた。
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
本発明の一態様によれば、
表面に絶縁層を備える絶縁電線を走行させる走行工程と、
走行する前記絶縁電線の前記絶縁層に対して電源に接続された電極を接触させ、前記絶縁電線を走行させながら前記絶縁層に所定の試験電圧を印加する電圧印加工程と、
前記試験電圧の印加により前記絶縁層から発生する部分放電に伴う信号のうち、閾値以上の信号を部分放電信号として検出する検出工程と、
前記検出工程の結果に基づき、前記試験電圧での部分放電の発生頻度を判定する判定工程と、を有する、部分放電測定方法が提供される。
付記1の部分放電測定方法において、好ましくは、
前記電圧印加工程では、
前記試験電圧として交流電圧を印加し、
前記交流電圧の周波数をf[Hz]、前記絶縁電線を走行させる速度をv[m/min]および前記電極の長さをL[mm]としたとき、前記絶縁層における前記電極との接触領域に対して前記交流電圧を、下記式(1)に示す周期数Tが50以上となるように、印加する。
付記2の部分放電測定方法において、好ましくは、
前記検出工程では、前記部分放電信号の検出される検出回数Nを計測し、
前記判定工程では、前記周期数Tと前記検出回数Nとを参照し、T≦Nのときに部分放電の発生頻度が高いと判定する。
付記2又は3の部分放電測定方法において、好ましくは、
前記電圧印加工程では、前記電極の長さLを25mm以上200mm以下とする。
付記2又は3の部分放電測定方法において、好ましくは、
前記電圧印加工程では、前記周波数fを10Hz以上1000Hz以下とする。
付記2又は3の部分放電測定方法において、好ましくは、
前記走行工程では、前記速度vを5m/min以上40m/min以下とする。
付記1〜6のいずれかの部分放電測定方法において、好ましくは、
前記判定工程では、前記絶縁層において部分放電の発生頻度が高い領域は発生頻度が低い領域よりも前記絶縁層の膜厚が薄いと判定する。
本発明の他の態様によれば、
導体の外周上に絶縁層を形成する絶縁層形成工程の後、付記1〜7のいずれかの部分放電測定方法をインラインにて行う、絶縁電線の製造方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、
表面に絶縁層を備える絶縁電線を走行させる走行部と、
所定の試験電圧を生成する電源に接続され、走行する前記絶縁電線の前記絶縁層に接触するように配置されて、前記絶縁層に前記試験電圧を印加する電極と、
前記試験電圧の印加により前記絶縁層から発生する部分放電に伴う信号のうち、閾値以上の信号を部分放電信号として検出する検出部と、
前記検出部での結果に基づき、前記試験電圧での部分放電の発生頻度を判定する判定部と、を備える部分放電測定装置が提供される。
付記9の部分放電測定装置において、好ましくは、
前記電源は、前記試験電圧として交流電圧を生成し、
前記電極は、前記交流電圧の周波数をf[Hz]、前記走行部の前記絶縁電線を走行させる速度をv[m/min]および前記電極の長さをL[mm]としたとき、前記絶縁層における前記電極との接触領域に対して前記交流電圧を、下記式(1)に示す周期数Tが50以上となるように、印加する。
付記10の部分放電測定装置において、好ましくは、
前記検出部は、前記部分放電信号の検出される検出回数Nを計測し、
前記判定部は、前記周期数Tと前記検出回数Nとを参照し、T≦Nのときに部分放電の発生頻度が高いと判定する。
2 導体
3 絶縁層
100 部分放電測定装置
110 走行部
120 電極
130 検出部
140 判定部
200 絶縁電線の製造装置
210 絶縁層形成部
Claims (11)
- 表面に絶縁層を備える絶縁電線を走行させる走行工程と、
走行する前記絶縁電線の前記絶縁層に対して電源に接続された電極を接触させ、前記絶縁電線を走行させながら前記絶縁層に所定の試験電圧を印加する電圧印加工程と、
前記試験電圧の印加により前記絶縁層から発生する部分放電に伴う信号のうち、閾値以上の信号を部分放電信号として検出する検出工程と、
前記検出工程の結果に基づき、前記試験電圧での部分放電の発生頻度を判定する判定工程と、を有する、部分放電測定方法。 - 前記検出工程では、前記部分放電信号の検出される検出回数Nを計測し、
前記判定工程では、前記周期数Tと前記検出回数Nとを参照し、T≦Nのときに部分放電の発生頻度が高いと判定する、請求項2に記載の部分放電測定方法。 - 前記電圧印加工程では、前記電極の長さLを25mm以上200mm以下とする、請求項2又は3に記載の部分放電測定方法。
- 前記電圧印加工程では、前記周波数fを10Hz以上1000Hz以下とする、請求項2又は3に記載の部分放電測定方法。
- 前記走行工程では、前記速度vを5m/min以上40m/min以下とする、請求項2又は3に記載の部分放電測定方法。
- 前記判定工程では、前記絶縁層において部分放電の発生頻度が高い領域は発生頻度が低い領域よりも前記絶縁層の膜厚が薄いと判定する、請求項1〜6のいずれかに記載の部分放電測定方法。
- 導体の外周上に絶縁層を形成する絶縁層形成工程の後、請求項1〜7のいずれかに記載の部分放電測定方法をインラインにて行う、絶縁電線の製造方法。
- 表面に絶縁層を備える絶縁電線を走行させる走行部と、
所定の試験電圧を生成する電源に接続され、走行する前記絶縁電線の前記絶縁層に接触するように配置されて、前記絶縁層に前記試験電圧を印加する電極と、
前記試験電圧の印加により前記絶縁層から発生する部分放電に伴う信号のうち、閾値以上の信号を部分放電信号として検出する検出部と、
前記検出部での結果に基づき、前記試験電圧での部分放電の発生頻度を判定する判定部と、を備える部分放電測定装置。 - 前記検出部は、前記部分放電信号の検出される検出回数Nを計測し、
前記判定部は、前記周期数Tと前記検出回数Nとを参照し、T≦Nのときに部分放電の発生頻度が高いと判定する、請求項10に記載の部分放電測定装置。
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