JP7329698B2 - マグネットワイヤ被覆の検査装置、マグネットワイヤ被覆の検査方法、および電気機械の製造方法 - Google Patents
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Description
従来の絶縁特性の検査装置は、走行線に保証電圧を印加する保証電圧印加ユニットと、保証電圧印加ユニットより下流側に配設され、走行線に帯電する電荷を前記走行線を接地させて除去する接地ユニットと、接地ユニットより下流側に配設され、走行線に保証電圧より低い検査電圧を印加し、漏れ電流値を検出する検査電圧印加ユニットと、を備える(例えば特許文献1)。
また、本願に開示されるマグネットワイヤ被覆の検査装置は、被覆されたマグネットワイヤを、巻線前に線方向に等速走行させ走行路を形成する走行路形成装置と、前記走行路内の設定箇所で、交流電圧を前記マグネットワイヤに印加して前記マグネットワイヤの素線から発生する放電電荷を収集する放電検知電極、および該放電検知電極からの前記放電電荷に基づいて放電信号を検出する検出装置を有する放電検出装置と、前記走行路内の前記設定箇所である電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線からの放電発生を促す放電促進装置とを備え、前記放電検知電極は、前記電圧印加点において前記マグネットワイヤの周りに環状に配置されるものである。
また、本願に開示されるマグネットワイヤ被覆の検査装置は、被覆されたマグネットワイヤを、巻線前に線方向に等速走行させ走行路を形成する走行路形成装置と、前記走行路内の設定箇所で、交流電圧を前記マグネットワイヤに印加して前記マグネットワイヤの素線から発生する放電電荷を収集する放電検知電極、および該放電検知電極からの前記放電電荷に基づいて放電信号を検出する検出装置を有する放電検出装置と、前記走行路内の前記設定箇所である電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線からの放電発生を促す放電促進装置と、前記放電信号を記憶する記憶部、記憶された前記放電信号に基づいて特徴量を計算する計算部、および該特徴量に基づいてマグネットワイヤ被覆の異常を判定する判定部を有する制御装置とを備え、前記計算部が計算する前記特徴量は、ピーク放電電荷量、放電継続時間および総放電電荷量の少なくとも1つである。
また、本願に開示されるマグネットワイヤ被覆の検査装置は、被覆されたマグネットワイヤを、巻線前に線方向に等速走行させ走行路を形成する走行路形成装置と、前記走行路内の設定箇所で、交流電圧を前記マグネットワイヤに印加して前記マグネットワイヤの素線から発生する放電電荷を収集する放電検知電極、および該放電検知電極からの前記放電電荷に基づいて放電信号を検出する検出装置を有する放電検出装置と、前記走行路内の前記設定箇所である電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線からの放電発生を促す放電促進装置と、前記放電信号を記憶する記憶部、記憶された前記放電信号に基づいて特徴量を計算する計算部、および該特徴量に基づいてマグネットワイヤ被覆の異常を判定する判定部を有する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記特徴量の計算に先立って、前記放電信号のスムージング処理を行うものである。
また、本願に開示されるマグネットワイヤ被覆の検査装置は、被覆されたマグネットワイヤを、巻線前に線方向に等速走行させ走行路を形成する走行路形成装置と、前記走行路内の設定箇所で、交流電圧を前記マグネットワイヤに印加して前記マグネットワイヤの素線から発生する放電電荷を収集する放電検知電極、および該放電検知電極からの前記放電電荷に基づいて放電信号を検出する検出装置を有する放電検出装置と、前記走行路内の前記設定箇所である電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線からの放電発生を促す放電促進装置と、前記放電信号を記憶する記憶部、記憶された前記放電信号に基づいて特徴量を計算する計算部、および該特徴量に基づいてマグネットワイヤ被覆の異常を判定する判定部を有する制御装置と、前記判定部による判定結果を、前記放電信号の波形と共に表示する表示装置とを備えるものである。
また、本願に開示されるマグネットワイヤ被覆の検査方法は、被覆されたマグネットワイヤを、巻線前に線方向に等速走行させる第1ステップと、前記マグネットワイヤによる走行路内の設定箇所で、放電検知電極により前記マグネットワイヤに交流電圧を印加して前記マグネットワイヤの素線から発生する放電電荷を収集する第2ステップと、前記放電検知電極からの前記放電電荷に基づいて放電信号を検出する第3ステップと、前記走行路内の前記設定箇所である電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線からの放電発生を促す第4ステップとを備え、前記第4ステップでは、前記電圧印加点の、上流側、下流側の少なくとも1方に設けられた加熱装置により前記素線を加熱し、該第4ステップにより前記素線を加熱しつつ、前記第2ステップの処理を行うものである。
また、本願に開示されるマグネットワイヤ被覆の検査方法は、被覆されたマグネットワイヤを、巻線前に線方向に等速走行させる第1ステップと、前記マグネットワイヤによる走行路内の設定箇所で、放電検知電極により前記マグネットワイヤに交流電圧を印加して前記マグネットワイヤの素線から発生する放電電荷を収集する第2ステップと、前記放電検知電極からの前記放電電荷に基づいて放電信号を検出する第3ステップと、前記走行路内の前記設定箇所である電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線からの放電発生を促す第4ステップとを備え、前記第4ステップでは、前記マグネットワイヤの被覆材料の耐熱温度を超えない温度で前記素線を加熱するものである。
図1は、実施の形態1によるマグネットワイヤ被覆の検査装置の構成を示す図である。
図1に示すように、マグネットワイヤ被覆の検査装置100は、被覆されたマグネットワイヤ2を繰り出す繰り出し装置3と、マグネットワイヤ2を巻き取る巻き取り装置4とを有してマグネットワイヤ2の走行路1を形成する。この場合、繰り出し装置3と巻き取り装置4とから走行路形成装置が構成される。
また、検査装置100は、マグネットワイヤ2の素線から発生する放電を検知する放電検知電極5、および放電信号を検出する検出装置10にて構成される放電検出装置と、マグネットワイヤ2の素線を加熱する加熱装置7Aとを備える。加熱装置7Aは、マグネットワイヤ2の素線からの放電発生を促す放電促進装置として設けられる。
図2に示すように、マグネットワイヤ2は、銅あるいはアルミニウム等からなる素線21と、素線21の表面を被覆する有機物絶縁体から成るマグネットワイヤ被覆である被覆22とによって構成される。マグネットワイヤ2の終端は、被覆22が剥離された素線21が接地される(図1参照)。
放電検知電極5は、マグネットワイヤ2の走行路1内に、電圧印加点のマグネットワイヤ2の周囲を囲む環状に配置され、例えば、断面形状が円形のリング状に形成される。放電検知電極5は、鉄、アルミニウム、銅などの金属材料で形成してもよいし、導電性ゴム、あるいは表面にアルミニウム等の金属材料を蒸着した樹脂材料等で形成してもよい。また、リング状の放電検知電極5の内径を、マグネットワイヤ2の外径と合わせて、放電検知電極5をマグネットワイヤ2と接触させても良い。あるいは、接触による被覆22の擦過を避けるためにマグネットワイヤ2との間に10μm~100μm程度の隙間を有して放電検知電極5を配置しても良い。
マグネットワイヤ2の被覆22にピンホールあるいは傷による欠陥部23がある場合、電圧印加点の素線21から被覆22の欠陥部23を介して放電検知電極5に向かう放電が発生し、その放電電荷は放電検知電極5に収集され、検出装置10に送られる。
素線21から、放電検知電極5へ放電が発生すると、印加されている交流電圧に急峻な変動が発生する。放電検出器13は、この交流電圧の変動を、検出インピーダンス12の両端に発生する電圧値として検出する。
図5に示すように、被覆22内のピンホールあるいは傷による欠陥部23の静電容量C1と、欠陥部23と素線21との間の部分の静電容量C2とは、直列に接続される。この直列接続された静電容量C1、C2と、被覆22の正常部における静電容量C3と、検出装置10内で直列接続された静電容量C4(カップリングコンデンサ11の静電容量)および検出インピーダンス12とが並列関係となり、交流電圧が印加される。
なお、放電検出器13が検出する電圧(電圧信号)が、検出装置10が検出する放電信号となる。
ΔV=Z・q
このように放電開始電圧が低下することにより、放電検知電極5により印加される電圧は低電圧に抑制でき、低電圧で放電による発生電圧ΔVを観測することが可能になる。即ち、マグネットワイヤ2の絶縁異常となる被覆22の欠陥部23を、低電圧で高精度に検出できる。これにより、マグネットワイヤの絶縁特性を、正常なマグネットワイヤ被覆を損傷させることなく、巻線前に信頼性良く検査できる。
この場合、被覆膜厚:2E-05m(20μm)とし、電圧印加点の素線21と放電検知電極5との間である放電検出部の温度を25℃から200℃まで25℃間隔で上昇させた場合の放電開始電圧を示す。なお、加熱前の25℃のとき、放電開始電圧:500V、放電検出部の気圧:101330Pa(1atm)である。温度が上昇し空気密度が低下することにより放電開始電圧が低下することがわかる。
検査装置100では、まず、繰り出し装置3および巻き取り装置4が、巻線前のマグネットワイヤ2を等速度で線方向に走行させる。これにより、上述した走行路1が形成される(ステップS1)。
走行路1内の定点(電圧印加点)にて、放電検知電極5が交流電圧をマグネットワイヤ2に印加し、検出装置10が放電信号を検出する(ステップS2)。
まず、予め設定された基準電荷量信号強度、例えば100ピコクーロンに対し、この基準電荷量信号強度以下の信号を、放電信号から除去することで、不要な微弱ノイズである放電ノイズを除去する。これにより、被覆22内のピンホールあるいは傷による欠陥部23に起因する放電と関連しない放電ノイズを除去する。この場合、除去する放電ノイズには、正常な被覆22の表面からの放電も含まれ、また、検査装置100の検査作業場の環境に起因する放電、例えば、素線21、交流電源6あるいは放電検出器13の接地点電位の不安定に起因する放電等も含まれる(ステップS3)。
図8は、検出装置10にて検出された放電信号の波形図であり、図9は、スムージング処理後の放電信号の波形図である。図9では、移動平均点数9点で移動平均処理した例を示す。図8に示す放電信号波形15は、スムージング処理後に、図9に示すように平滑された放電信号波形16となる。
スムージング処理では、ステップS3における放電ノイズの除去では除去できなかった外乱によるノイズをさらに除去できる。また、移動平均法を用いると、簡便な計算にてスムージング処理が行える。
ステップS6において、特徴量の値が上限値未満である場合は、マグネットワイヤ被覆は欠陥なしと判定される(ステップS8)。
図12は、実施の形態2によるマグネットワイヤ被覆の検査装置の構成を示す図である。
図12に示すように、実施の形態2によるマグネットワイヤ被覆の検査装置100Aは、上記実施の形態1によるマグネットワイヤ被覆の検査装置100に、温度計測部としての温度計41A、41Bと温度表示装置42A、42Bとを設ける。温度計41Aは、加熱装置7Aの下流側近傍で加熱装置7Aと放電検知電極5との間に配置し、温度計41Bは、加熱装置7Bの上流側近傍で加熱装置7Bと放電検知電極5との間に配置する。そして、各温度計41A、41Bで計測されたマグネットワイヤ2の温度が、温度表示装置42A、42Bに表示される。
その他の構成および動作は、上記実施の形態1と同様である。
また、温度計41A、41Bおよび温度表示装置42A、42Bは、加熱装置7A、7Bに付随して設けられるため、加熱装置7Aが温度計41Aおよび温度表示装置42Aを備え、加熱装置7Bが温度計41Bおよび温度表示装置42Bを備えるものとしても良い。
図15は、実施の形態3によるマグネットワイヤ被覆の検査装置の構成を示す図である。
図15に示すように、実施の形態3によるマグネットワイヤ被覆の検査装置100Bは、上記実施の形態1によるマグネットワイヤ被覆の検査装置100に、上記実施の形態2と同様の温度計41A、41Bを設け、さらに、制御装置30が、加熱装置7A、7Bを制御して温度調整を行う温度調整部36を備える。
その他の構成および動作は、上記実施の形態1と同様である。
この実施の形態4では、上記各実施の形態1~3に用いられる加熱装置7A、7Bについて説明する。図16は加熱装置の構成を示す図であり、図17は加熱装置の動作を示す図である。
図16に示すように、各加熱装置7A、7Bは、例えばニクロム線等の電熱線をコイル状に成形した電熱線コイル46と直流電源47とから成る。そして、図17に示すように、マグネットワイヤ2を、直流電源47から直流電圧が印加される電熱線コイル46の中を通るように走行させる。電熱線コイル46には直流電流が流れ、その抵抗発熱による熱伝導48で、マグネットワイヤ2を昇温することができる。
この実施の形態5では、上記各実施の形態1~3に用いられる加熱装置7A、7Bの別形態について説明する。図18は加熱装置の構成を示す図であり、図19は加熱装置の動作を示す図である。
図18に示すように、各加熱装置7A、7Bは、導線をコイル状に成形した導線コイル49と高周波電源50とから成る誘導加熱コイルを用いて構成される。そして、図19に示すように、マグネットワイヤ2を、高周波電源50から高周波電圧が印加される誘導加熱コイルである導線コイル49の中を通るように走行させる。
なお、マグネットワイヤ2を最適に加熱するために、高周波電源50に接続される温度設定装置51を設けても良い。
あるいは、オペレータが、素線21の線径に応じて予め決定された最適な発振周波数に設定しても良い。
この実施の形態6では、マグネットワイヤ被覆の検査装置における、マグネットワイヤのガイド構造について説明する。図20(図20A、図20B、図20C)は、実施の形態6によるマグネットワイヤのガイドブロックを説明する図である。
上述したように、マグネットワイヤ被覆の検査装置100、100A、100Bでは、走行路1内の設定箇所で、マグネットワイヤ2の素線21を加熱しつつ放電検知電極5により交流電圧を印加して、被覆22の欠陥部23に起因して発生する放電を検出する。精度の高い放電検出を阻害する要因として、走行路1の不安定がある。走行路1の僅かな蛇行、あるいは僅かな振動により、マグネットワイヤ2と放電検知電極5との接触状態、あるいは距離が変動することがある。良好で安定な接触状態である、あるいは距離が適正に維持されている場合には、強度の高い放電が安定に検出できるが、逆にそれらが安定して維持されない場合、強度の低い不安定な放電となり精度の高い放電検出が実施できない。
この場合、概略立方体形状の樹脂材料から成るガイドブロック60に、マグネットワイヤ2を通過させる貫通穴61と、放電検知電極5を格納する溝62とが設けられ、図20Bに示すように、放電検知電極5を溝62に格納し、図20Cに示すように、マグネットワイヤ2を貫通穴61内を通るように走行させる。
このように、この実施の形態では、マグネットワイヤ2がガイドブロック60に誘導されて走行路1が安定化されるため、強度の高い放電を安定して検出できる。これにより、計算部33において放電信号の特徴量が高精度に計算でき、放電検出の精度が向上する。
図21(図21A、図21B、図21C)は、実施の形態7によるマグネットワイヤのガイドブロックを説明する図である。
マグネットワイヤ被覆の検査装置100による高精度な放電検出を阻害する要因で、上記実施の形態6で示したものとは別の要因として、加熱装置7A、7Bと放電検知電極5との間の距離のばらつきがある。加熱装置7A、7Bと放電検知電極5間の距離にばらつきがあると、加熱装置7A、7Bが一定出力でマグネットワイヤ2を加熱しても、電圧印加点でのマグネットワイヤ2の温度が安定せず、空気密度低下による放電量にばらつきが生じ、放電検出の精度が劣化する。
加熱装置7A、7Bとして、上記実施の形態4による電熱線コイル46、あるいは上記実施の形態5による導線コイル49が溝63A、63Bに格納される。なお、電熱線コイル46は直流電源47に接続され、導線コイル49は高周波電源50に接続される。
このように、ガイドブロック60Aには、放電検知電極5および加熱装置7A、7Bをそれぞれ格納する複数(この場合、3つ)の溝62、63A、63Bが設けられる。そして、加熱装置7A、7Bの中心点が放電検知電極5の中心点に一致するように、放電検知電極5と加熱装置7A、7Bとを3つの溝62、63A、63Bにそれぞれ格納して、それぞれの定位置にて固定する。このため、加熱装置7A、7Bと放電検知電極5との間の距離は一定となりばらつくことは無い。
図22(図22A、図22B)は、実施の形態7の別例によるマグネットワイヤのガイドブロックを説明する図である。このガイドブロック60Bは、上記実施の形態2、3に示す検査装置100A、100Bに適用できる。
このように、温度計41A、41B用の溝64A、64Bをさらに設けたガイドブロック60Bを用いる事により、マグネットワイヤ2の温度測定位置と放電検知電極5との距離も一定にでき、加熱装置7A、7Bの出力調整の精度が向上し、これにより放電検出の精度がさらに向上する。
図23は、実施の形態8によるマグネットワイヤ被覆の検査装置の構成を示す図である。また図24は、マグネットワイヤ被覆の検査装置に接続される巻線装置および固定子鉄心を示す部分拡大図である。なお、図23内の点Aが図24内の点Aに接続される。
この実施の形態8では、マグネットワイヤ被覆の検査装置100Cを、回転電機または直動機の電機子である固定子の巻線工程へ適用する。この実施の形態8は、上記各実施の形態1~7に適用できるが、ここでは上記実施の形態3に適用したものを図示して、異なる部分のみを説明する。
また、検査装置100Cは、制御装置30内に出力部37を備えると共に、外部に出力情報を表示する表示装置38を備える。出力部37は、所望の出力情報、例えば、検出された放電信号の波形画像を、判定部35での判定結果と共に、表示装置38に表示する。この際、マグネットワイヤ被覆に欠陥部23ありと判定された放電信号の積算数を併せて表示しても良い。
計算部33では、マグネットワイヤ2の走行速度Sと、放電検知電極5から巻線装置70までの走行路長Lとが予め設定され、時間T(=L/S)を計算する。そして、計測部34は、判定部35が欠陥部23ありと判定した時点から、タイマ動作させ時間Tを計測する。これにより、計測部34が計測完了した時点で巻線作業中である固定子鉄心72が特定され、即ち、マグネットワイヤ被覆の欠陥部23を有する固定子鉄心72が特定される。
また、計測部34が計測完了する以前に、巻線装置70の停止等によりマグネットワイヤ2の走行が停止することがある。計測部34は、マグネットワイヤ2が走行しているか否かを検知し、走行停止を検知すると走行時間の計測を中断する。そして、巻線装置70が巻線を再開してマグネットワイヤ2の走行が再開すると、計測部34による計測も再開する。
また、これら不良固定子鉄心を、個別に、公知のサージ電圧印加(インパルス電圧印加)試験等の方法で再度検査してもよい。
この回転電機90は、マグネットワイヤ被覆の検査装置100Cにより、巻線されたマグネットワイヤ2の被覆22に絶縁欠陥がないことが確認された固定子鉄心72を用いて製造される。これにより、絶縁特性の良好なマグネットワイヤ2を用いた信頼性の高い回転電機90が得られる。
上記実施の形態1~8では、放電開始電圧を低下させて放電発生を促すための放電促進装置として、加熱装置7A、7Bを用いたが、この実施の形態9では、放電促進装置として、マグネットワイヤ2の周囲を減圧する減圧装置を用いる。
図27は、実施の形態9によるマグネットワイヤ被覆の検査装置の構成を示す図である。図27に示すように、マグネットワイヤ被覆の検査装置100Dは、上記実施の形態8と同様に、回転電機または直動機の電機子である固定子の巻線工程に適用され、図27内の点Aが、上記実施の形態8で示した図24内の点Aに接続される。
放電検知電極5および検出装置10は、上記実施の形態1と同様の構成で同様に動作する。減圧装置9は、マグネットワイヤ2の素線からの放電発生を促す放電促進装置として設けられ、電圧印加点におけるマグネットワイヤ2を囲むように配置された減圧槽8と、減圧槽8内を減圧する減圧ポンプ8Aとを備える。
図に示すように、減圧装置9は、アクリル樹脂等の絶縁性の樹脂パネルにより概略立法体に成形された減圧槽8と、減圧槽8内を減圧する減圧ポンプ8Aとを備える。減圧槽8の対向する2面の樹脂パネルには、該2面に垂直にマグネットワイヤ2を通過させるため、1mm程度の同径の貫通穴65A、65Bが設けられる。その際、貫通穴65A、65Bは、各々の中心を通って開口面に垂直な中心線が一致するように配置される。また、減圧槽8内の圧力を測定する圧力計68が設けられる。
なお、減圧槽8内の圧力を維持するため、貫通穴65A、65Bの内径側を、例えばシリコンゴムなどのゴム材で覆ってもよい。
そして、マグネットワイヤ2は、減圧槽8の上流側端面の貫通穴65Aから減圧槽8内に入り、放電検知電極5に接近し、放電検知電極5と安定な接触状態、あるいは適正な距離を保って電圧印加点を通過し、減圧槽8の下流側端面の貫通穴65Bから減圧槽8外へ走行する。減圧ポンプ8Aは、マグネットワイヤ2が減圧槽8内を走行する間、減圧槽8内を所定圧力まで減圧する。
また、マグネットワイヤ2の走行状態を目視確認できるよう、減圧槽8を形成する樹脂パネルは、透明なものが望ましい。
電圧印加点におけるマグネットワイヤ2の周囲は、減圧装置9により減圧されている。この減圧により、電圧印加点における素線21と放電検知電極5との間の空気密度は低下し、素線21から被覆22の欠陥部23を介して発生する放電における放電開始電圧が低下する。即ち、減圧装置9は、放電開始電圧を低下させて放電発生を促す。
この場合、減圧槽8内の圧力を減圧ポンプ8Aにより、0.002Mpaから0.1Mpaの範囲で変化させて、素線21から被覆22の欠陥部23を介した放電開始電圧を測定したものである。図30の横軸はマグネットワイヤ2の周囲圧力、即ち、減圧槽8内の圧力を示す。縦軸は、各周囲圧力時の放電開始電圧を0.1Mpa(大気圧)における放電開始電圧で割った放電開始電圧比を示す。
なお、固定子鉄心72への巻線作業は、欠陥部23の有無に拘わらず継続して行われる。
記憶装置81は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶装置(図示省略)と、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等の不揮発性の補助記憶装置(図示省略)とを備えている。なお、不揮発性の補助記憶装置としては、HDDの代わりにフラッシュメモリを使用してもよい。
記憶装置81は補助記憶装置と揮発性記憶装置とを備える。プロセッサ80には補助記憶装置から揮発性記憶装置を介して制御プログラム82が入力される。
プロセッサ80は、演算結果等のデータ83を記憶装置81の揮発性記憶装置に出力し、これらのデータ83を、必要に応じて揮発性記憶装置を介して補助記憶装置に保存する。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
Claims (25)
- 被覆されたマグネットワイヤを、巻線前に線方向に等速走行させ走行路を形成する走行路形成装置と、
前記走行路内の設定箇所で、交流電圧を前記マグネットワイヤに印加して前記マグネットワイヤの素線から発生する放電電荷を収集する放電検知電極、および該放電検知電極からの前記放電電荷に基づいて放電信号を検出する検出装置を有する放電検出装置と、
前記走行路内の前記設定箇所である電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線からの放電発生を促す放電促進装置とを備え、
前記走行路内の前記電圧印加点の、上流側、下流側の少なくとも1方に設けられ、前記電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線を加熱する加熱装置を、前記放電促進装置として備える、
マグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記加熱装置は、前記マグネットワイヤの被覆材料の耐熱温度を超えない温度で加熱する、
請求項1に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記加熱装置は電熱線コイルおよび直流電源を備える、
請求項1または請求項2に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記加熱装置は、導線コイルおよび高周波電源から成る誘導加熱コイルを備える、
請求項1または請求項2に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記加熱装置は、前記マグネットワイヤの温度を計測する温度計測部を備え、該温度計測部の計測結果に基づいて加熱調整可能とする、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 被覆されたマグネットワイヤを、巻線前に線方向に等速走行させ走行路を形成する走行路形成装置と、
前記走行路内の設定箇所で、交流電圧を前記マグネットワイヤに印加して前記マグネットワイヤの素線から発生する放電電荷を収集する放電検知電極、および該放電検知電極からの前記放電電荷に基づいて放電信号を検出する検出装置を有する放電検出装置と、
前記走行路内の前記設定箇所である電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線からの放電発生を促す放電促進装置とを備え、
前記放電検知電極は、前記電圧印加点において前記マグネットワイヤの周りに環状に配置される、
マグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記放電信号を記憶する記憶部と、記憶された前記放電信号に基づいて特徴量を計算する計算部と、該特徴量に基づいてマグネットワイヤ被覆の異常を判定する判定部とを有する制御装置を備える、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記放電信号を記憶する記憶部と、記憶された前記放電信号に基づいて特徴量を計算する計算部と、該特徴量に基づいてマグネットワイヤ被覆の異常を判定する判定部とを有する制御装置を備え、
前記制御装置は、温度調整部を備え、前記マグネットワイヤの温度が予め設定された範囲となるように前記加熱装置を制御する、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記判定部が判定する異常は、前記マグネットワイヤ被覆の欠陥部による絶縁異常である、
請求項7または請求項8に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 被覆されたマグネットワイヤを、巻線前に線方向に等速走行させ走行路を形成する走行路形成装置と、
前記走行路内の設定箇所で、交流電圧を前記マグネットワイヤに印加して前記マグネットワイヤの素線から発生する放電電荷を収集する放電検知電極、および該放電検知電極からの前記放電電荷に基づいて放電信号を検出する検出装置を有する放電検出装置と、
前記走行路内の前記設定箇所である電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線からの放電発生を促す放電促進装置と、
前記放電信号を記憶する記憶部、記憶された前記放電信号に基づいて特徴量を計算する計算部、および該特徴量に基づいてマグネットワイヤ被覆の異常を判定する判定部を有する制御装置とを備え、
前記計算部が計算する前記特徴量は、ピーク放電電荷量、放電継続時間および総放電電荷量の少なくとも1つである、
マグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記制御装置は、前記特徴量の計算に先立って、前記放電信号の放電ノイズを除去する、
請求項7から請求項10のいずれか1項に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 被覆されたマグネットワイヤを、巻線前に線方向に等速走行させ走行路を形成する走行路形成装置と、
前記走行路内の設定箇所で、交流電圧を前記マグネットワイヤに印加して前記マグネットワイヤの素線から発生する放電電荷を収集する放電検知電極、および該放電検知電極からの前記放電電荷に基づいて放電信号を検出する検出装置を有する放電検出装置と、
前記走行路内の前記設定箇所である電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線からの放電発生を促す放電促進装置と、
前記放電信号を記憶する記憶部、記憶された前記放電信号に基づいて特徴量を計算する計算部、および該特徴量に基づいてマグネットワイヤ被覆の異常を判定する判定部を有する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記特徴量の計算に先立って、前記放電信号のスムージング処理を行う、
マグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記放電信号のスムージング処理は、移動平均法を用いて行う、
請求項12に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 被覆されたマグネットワイヤを、巻線前に線方向に等速走行させ走行路を形成する走行路形成装置と、
前記走行路内の設定箇所で、交流電圧を前記マグネットワイヤに印加して前記マグネットワイヤの素線から発生する放電電荷を収集する放電検知電極、および該放電検知電極からの前記放電電荷に基づいて放電信号を検出する検出装置を有する放電検出装置と、
前記走行路内の前記設定箇所である電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線からの放電発生を促す放電促進装置と、
前記放電信号を記憶する記憶部、記憶された前記放電信号に基づいて特徴量を計算する計算部、および該特徴量に基づいてマグネットワイヤ被覆の異常を判定する判定部を有する制御装置と、
前記判定部による判定結果を、前記放電信号の波形と共に表示する表示装置とを備える、
マグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記走行路形成装置は、前記走行路の上流側に設けられ前記マグネットワイヤを繰り出す繰り出し装置と、前記走行路の下流側に設けられ前記マグネットワイヤを巻き取る巻き取り装置とを備える、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記走行路形成装置は、前記走行路の上流側に設けられ前記マグネットワイヤを繰り出す繰り出し装置を備え、前記走行路の下流側に設置された巻線装置に前記マグネットワイヤを送る、
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記走行路形成装置は、前記走行路の上流側に設けられ前記マグネットワイヤを繰り出す繰り出し装置を備えて、前記走行路の下流側に設置された巻線装置に前記マグネットワイヤを送り、
前記制御装置は、前記マグネットワイヤの走行時間を計測する計測部を備え、該計測部の計測結果と前記判定部による判定結果とに基づいて、前記マグネットワイヤ被覆の異常あり巻線を巻線後に特定可能とした、
請求項7から請求項14のいずれか1項に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記放電検知電極は、前記電圧印加点において前記マグネットワイヤの周りに環状に配置され、
前記走行路形成装置は、前記走行路内の前記電圧印加点の定位置に前記マグネットワイヤを誘導するガイド部を備える、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記ガイド部は、前記マグネットワイヤを通過させる貫通穴が設けられ、樹脂材料から成るガイドブロックにて構成され、
前記放電検知電極が前記ガイドブロックに格納される、
請求項18に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 前記ガイドブロックは、前記放電検知電極および前記加熱装置をそれぞれ格納する複数の溝を設け、前記放電検知電極と前記加熱装置とを、それぞれの定位置にて固定する、
請求項19に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置。 - 被覆されたマグネットワイヤを、巻線前に線方向に等速走行させる第1ステップと、
前記マグネットワイヤによる走行路内の設定箇所で、放電検知電極により前記マグネットワイヤに交流電圧を印加して前記マグネットワイヤの素線から発生する放電電荷を収集する第2ステップと、
前記放電検知電極からの前記放電電荷に基づいて放電信号を検出する第3ステップと、
前記走行路内の前記設定箇所である電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線からの放電発生を促す第4ステップとを備え、
前記第4ステップでは、前記電圧印加点の前記素線を加熱して、前記電圧印加点における前記素線から放電し始める放電開始電圧を低下させる、
マグネットワイヤ被覆の検査方法。 - 被覆されたマグネットワイヤを、巻線前に線方向に等速走行させる第1ステップと、
前記マグネットワイヤによる走行路内の設定箇所で、放電検知電極により前記マグネットワイヤに交流電圧を印加して前記マグネットワイヤの素線から発生する放電電荷を収集する第2ステップと、
前記放電検知電極からの前記放電電荷に基づいて放電信号を検出する第3ステップと、
前記走行路内の前記設定箇所である電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線からの放電発生を促す第4ステップとを備え、
前記第4ステップでは、前記電圧印加点の、上流側、下流側の少なくとも1方に設けられた加熱装置により前記素線を加熱し、該第4ステップにより前記素線を加熱しつつ、前記第2ステップの処理を行う、
マグネットワイヤ被覆の検査方法。 - 被覆されたマグネットワイヤを、巻線前に線方向に等速走行させる第1ステップと、
前記マグネットワイヤによる走行路内の設定箇所で、放電検知電極により前記マグネットワイヤに交流電圧を印加して前記マグネットワイヤの素線から発生する放電電荷を収集する第2ステップと、
前記放電検知電極からの前記放電電荷に基づいて放電信号を検出する第3ステップと、
前記走行路内の前記設定箇所である電圧印加点における前記マグネットワイヤの前記素線からの放電発生を促す第4ステップとを備え、
前記第4ステップでは、前記マグネットワイヤの被覆材料の耐熱温度を超えない温度で前記素線を加熱する、
マグネットワイヤ被覆の検査方法。 - 前記第3ステップにて検出された前記放電信号に基づいて特徴量を計算し、該特徴量に基づいてマグネットワイヤ被覆の異常を判定する第5ステップを備える、
請求項21から請求項23のいずれか1項に記載のマグネットワイヤ被覆の検査方法。 - 請求項1から請求項20のいずれか1項に記載のマグネットワイヤ被覆の検査装置を用いて検査した前記マグネットワイヤを鉄心に巻線して、電気機械を製造する、
電気機械の製造方法。
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