以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
本実施形態に係るエンドウタンパクの製造方法は、エンドウタンパクに、次の(a)及び(b):(a)エンドウタンパクを水性溶媒に懸濁してエンドウタンパク懸濁液を調製すること;及び(b)当該エンドウタンパク懸濁液の上清の少なくとも一部を除去すること;を含む洗浄処理を施すことを含み、当該洗浄処理が施されていないエンドウタンパクに比べて、プリン体含有量が低減されたエンドウタンパクを製造する方法である。
本実施形態に係るエンドウタンパク分解物の製造方法は、エンドウタンパクに、次の(a)及び(b):(a)エンドウタンパクを水性溶媒に懸濁してエンドウタンパク懸濁液を調製すること;及び(b)当該エンドウタンパク懸濁液の上清の少なくとも一部を除去すること;を含む洗浄処理を施すことと、当該洗浄処理が施されたエンドウタンパクを酵素分解してエンドウタンパク分解物を得ることと、を含み、当該洗浄処理が施されていないエンドウタンパクを酵素分解して得られるエンドウタンパク分解物に比べて、プリン体含有量が低減されたエンドウタンパク分解物を製造する方法である。
本実施形態に係るエンドウタンパクのプリン体含有量を低減する方法は、エンドウタンパクに、次の(a)及び(b):(a)エンドウタンパクを水性溶媒に懸濁してエンドウタンパク懸濁液を調製すること;及び(b)当該エンドウタンパク懸濁液の上清の少なくとも一部を除去すること;を含む洗浄処理を施すことを実施することにより、当該エンドウタンパクのプリン体含有量を、当該洗浄処理が施されていないエンドウタンパクに比べて低減する方法である。
本実施形態に係るエンドウタンパク分解物のプリン体含有量を低減する方法は、エンドウタンパクに、次の(a)及び(b):(a)エンドウタンパクを水性溶媒に懸濁してエンドウタンパク懸濁液を調製すること;及び(b)当該エンドウタンパク懸濁液の上清の少なくとも一部を除去すること;を含む洗浄処理を施すことと、当該洗浄処理が施されたエンドウタンパクを酵素分解してエンドウタンパク分解物を得ることと、を実施することにより、当該エンドウタンパク分解物のプリン体含有量を、当該洗浄処理が施されていないエンドウタンパクを酵素分解して得られるエンドウタンパク分解物に比べて低減する方法である。
上記(a)の工程においては、エンドウタンパクを水性溶媒に懸濁してエンドウタンパク懸濁液を調製する。具体的には、エンドウタンパクと水性溶媒とを混合することにより、当該エンドウタンパクを当該水性溶媒に懸濁して、当該エンドウタンパクを含むエンドウタンパク懸濁液を調製する。
エンドウタンパクは、エンドウ(Pisum Sativum L)から抽出されたタンパクである。すなわち、エンドウタンパクは、例えば、粉砕されたエンドウを溶媒に浸漬する抽出操作により得られる。
上述のようにして得られるエンドウタンパクは、タンパクを主成分として含有する組成物である。すなわち、エンドウタンパクは、例えば、タンパクの含有量が70重量%以上の組成物である。
また、エンドウタンパクは、例えば、SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)で測定される分子量が1000〜70000であるタンパクを含むこととしてもよい。
また、エンドウタンパクは、例えば、脂質の含有量が10重量%以下、又は5重量%以下の組成物であってもよい。なお、本実施形態において洗浄処理の対象となるエンドウタンパクは、上述のとおりエンドウから抽出された組成物であるため、当該エンドウに由来するプリン体を含む。エンドウタンパクの形態は特に限られないが、例えば、粉末状又は液状であることとしてもよい。
水性溶媒は、エンドウタンパクを懸濁することができ、且つ当該エンドウタンパクに含有されているプリン体の少なくとも一部を当該水性溶媒中に溶出させることができるものであれば、特に限られない。水性溶媒は、例えば、水、又は水とエタノールとの混合液であってもよい。水性溶媒は、45体積%以上の水を含むこととしてもよい。
上記(a)の工程で調製されるエンドウタンパク懸濁液の温度は、特に限られないが、例えば、温度が0℃超のエンドウタンパク懸濁液を調製することとしてもよい。また、エンドウタンパク懸濁液の温度は、例えば、5℃以上であってもよく、10℃以上であってもよく、15℃以上であってもよく、20℃以上であってもよい。
なお、所定温度のエンドウタンパク懸濁液の調製は、例えば、エンドウタンパクを当該所定温度の水性溶媒と混合することにより実施してもよいし、又は、まずエンドウタンパクを当該所定温度より低い又は高い温度の水性溶媒と混合してエンドウタンパク懸濁液を調製し、次いで、当該エンドウタンパク懸濁液を加熱又は冷却して、当該所定温度のエンドウタンパク懸濁液を調製することにより実施してもよい。
また、上記(a)の工程で調製されるエンドウタンパク懸濁液の温度は、例えば、20℃超であってもよく、30℃以上であってもよく、40℃以上であってもよく、50℃以上であってもよく、60℃以上であってもよい。
また、上記(a)の工程で調製されるエンドウタンパク懸濁液の温度は、例えば、60℃超であってもよく、65℃以上であってもよく、70℃以上であってもよい。
上記(b)の工程においては、上記(a)の工程で調製されたエンドウタンパク懸濁液の上清の少なくとも一部(すなわち、当該上清の一部又は全部)を除去する。すなわち、例えば、まず、エンドウタンパク懸濁液中において、エンドウタンパクを沈殿させ、次いで、当該エンドウタンパク懸濁液の上清の一部を除去する。そして、除去された上清の少なくとも一部を廃棄する。すなわち、除去された上清の少なくとも一部は、その後、使用しない。具体的に、例えば、エンドウタンパク懸濁液の上清の一部を除去する場合、その後、当該上清の一部の少なくとも一部を廃棄する。
エンドウタンパクの沈殿は、例えば、エンドウタンパク懸濁液の遠心分離又は静置、及びエンドウタンパク懸濁液のpHをエンドウタンパクが沈殿する範囲に調整することからなる群より選択される1つ以上により行う。また、例えば、エンドウタンパク懸濁を、エンドウタンパクが通過しないフィルターでろ過し、当該フィルターを通過した上清の少なくとも一部を除去してもよい。
上記(b)の工程においては、エンドウタンパク懸濁液の上清の30重量%以上を除去してもよく、40重量%以上を除去してもよく、50重量%以上を除去してもよく、60重量%以上を除去してもよく、70重量%以上を除去してもよく、80重量%以上を除去してもよく、90重量%以上を除去してもよい。
なお、上述のとおり、除去された上清の少なくとも一部を廃棄する。この点、最終的には、例えば、エンドウタンパク懸濁液の上清の30重量%以上を廃棄してもよく、40重量%以上を廃棄してもよく、50重量%以上を廃棄してもよく、60重量%以上を廃棄してもよく、70重量%以上を廃棄してもよく、80重量%以上を廃棄してもよく、90重量%以上を廃棄してもよい。具体的に、例えば、エンドウタンパク懸濁液の上清の50重量%を除去し、当該除去された上清の80重量%を廃棄する場合、最終的には、当該エンドウタンパク懸濁液の上清の40重量%を廃棄することになる。
エンドウタンパク懸濁液の上清の少なくとも一部の除去は、当該エンドウタンパク懸濁液を調製してから所定時間が経過した後に行う。すなわち、エンドウタンパクを水性溶媒に懸濁し、上述のような所定温度のエンドウタンパク懸濁液を調製した後、所定時間が経過した時点で、当該エンドウタンパク懸濁液の上清の少なくとも一部を除去する。
エンドウタンパク懸濁液を調製してから、その上清の少なくとも一部を除去するまでの時間は、当該エンドウタンパク懸濁液中において、エンドウタンパクに含まれるプリン体の少なくとも一部を溶出させることのできる時間であれば特に限られないが、当該エンドウタンパク懸濁液を調製してから、例えば、1分以上、48時間以下の時間が経過した時点、好ましくは30分以上、24時間以下の時間が経過した時点で、その上清の少なくとも一部を除去することとしてもよい。なお、エンドウタンパク懸濁液を調製してから、その上清の少なくとも一部を除去するまでの間、当該エンドウタンパク懸濁液は静置してもよいし、好ましくは撹拌することとしてもよい。
エンドウタンパクに上述の洗浄処理を施すことにより、後述のとおり、当該洗浄処理が施されていないエンドウタンパクに比べて、プリン体含有量が低減されたエンドウタンパクが得られる。
エンドウタンパク分解物の製造方法においては、さらに、上記洗浄処理が施されたエンドウタンパクを酵素分解してエンドウタンパク分解物を得る。すなわち、上記(b)の工程でエンドウタンパク懸濁液の上清の少なくとも一部を除去した後、当該エンドウタンパク懸濁液に残されたエンドウタンパクを酵素分解する。
具体的に、例えば、まず容器内のエンドウタンパク懸濁液から上清の少なくとも一部を除去し、次いで、当該容器に酵素を添加してエンドウタンパクの酵素分解を行ってもよいし、又は、まず容器内のエンドウタンパク懸濁液から上清の少なくとも一部を除去し、次いで、当該容器からエンドウタンパクを回収して別の容器に移し、当該別の容器内でエンドウタンパクに酵素を添加して酵素分解を行ってもよい。
エンドウタンパクの酵素分解に使用する酵素としては、タンパク分解酵素を使用する。タンパク分解酵素は、エンドウタンパクを分解する活性を有するものであれば特に限られないが、例えば、エンドウタンパクを部分分解するタンパク分解酵素が好ましく使用される。なお、エンドウタンパクの酵素分解には、タンパク分解酵素に加えて多糖類分解酵素を使用することとしてもよい。
エンドウタンパクの酵素による部分分解においては、当該エンドウタンパクをアミノ酸に完全分解するのではなく、当該エンドウタンパクの分解により生成したペプチドを含むエンドウタンパク分解物が得られるように酵素分解を実施する。
この部分分解には、例えば、エンド型プロテアーゼ及びエンド型プロテアーゼ活性を有するタンパク分解酵素の一方又は両方が好ましく使用される。エンドウタンパクの部分分解によって生成されたエンドウタンパク分解物は、例えば、発泡性飲料の製造方法において添加された場合に、当該発泡性飲料の泡特性を効果的に向上させることができる。
エンドウタンパクを酵素分解する条件は、特に限られず、使用するタンパク分解酵素の至適条件に応じて調整する。酵素分解の温度は、例えば、30℃〜90℃であってもよい。酵素分解の時間は、例えば、1分〜24時間であってもよい。
上述のようなエンドウタンパクの酵素分解により得られるエンドウタンパク分解物は、当該エンドウタンパクの酵素分解により生成されたペプチド及びアミノ酸を含む組成物である。
エンドウタンパク分解物は、例えば、ゲルろ過担体を使用した高速液体クロマトグラフィーにおいて、分子量1000〜50000に相当する時間で溶出される成分の含有量が、50重量%以上であることとしてもよく、70重量%以上であることとしてもよく、80重量%以上であることとしてもよい。また、エンドウタンパク分解物は、例えば、ゲルろ過担体を使用した高速液体クロマトグラフィーにおいて、分子量1000〜17000に相当する時間で溶出される成分の含有量が、40重量%以上であることとしてもよく、50重量%以上であることとしてもよい。
本実施形態に係るエンドウタンパクの製造方法においては、エンドウタンパクに、上記(a)及び(b)を含む洗浄処理を施すことにより、当該洗浄処理が施されていないエンドウタンパク(以下、「未洗浄エンドウタンパク」ということがある。)に比べて、プリン体含有量が低減されたエンドウタンパクを製造する。
すなわち、まず、エンドウタンパクを水性溶媒に懸濁してエンドウタンパク懸濁液を調製することにより、当該エンドウタンパク懸濁液中において、当該エンドウタンパクに含まれていたプリン体の少なくとも一部を溶出させる。
次いで、エンドウタンパク懸濁液の、エンドウタンパクから溶出したプリン体を含む上清の少なくとも一部を除去することにより、当該エンドウタンパク懸濁液に含まれる総プリン体の量を、当該除去前に比べて低減させる。その結果、そのプリン体含有量が上記洗浄処理前のエンドウタンパクに比べて効果的に低減されたエンドウタンパクが得られる。
具体的に、例えば、そのアデニン含有量、グアニン含有量、ヒポキサンチン含有量、及びキサンチン含有量の合計(以下、「総プリン体含有量」という。)が、上記洗浄処理が施されていないエンドウタンパクのそれの80%以下であるエンドウタンパクを製造することとしてもよい。
この場合、例えば、その総プリン体含有量が、未洗浄エンドウタンパクの75%以下、70%以下、又は65%以下であるエンドウタンパクを製造してもよい。また、例えば、その総プリン体含有量が、未洗浄エンドウタンパクの60%以下、55%以下、又は50%以下であるエンドウタンパクを製造してもよい。また、例えば、その総プリン体含有量が、未洗浄エンドウタンパクの45%以下、40%以下、又は35%以下であるエンドウタンパクを製造してもよい。
また、例えば、その総プリン体含有量が0.65重量%以下であるエンドウタンパクを製造することとしてもよい。この場合、例えば、その総プリン体含有量が0.60重量%以下、0.55重量%以下、又は0.50重量%以下であるエンドウタンパクを製造してもよい。また、例えば、その総プリン体含有量が0.40重量%以下、0.35重量%以下、又は0.34重量%以下であるエンドウタンパクを製造してもよい。なお、これらの場合、当然ながら、洗浄処理前のエンドウタンパクの総プリン体含有量は、上記製造されるエンドウタンパクのそれより大きい。
本実施形態に係るエンドウタンパク分解物の製造方法においては、エンドウタンパクに、上記(a)及び(b)を含む洗浄処理を施し、さらに当該洗浄処理が施されたエンドウタンパクを酵素分解することにより、当該洗浄処理が施されていないエンドウタンパクを酵素分解して得られるエンドウタンパク分解物に比べて、プリン体含有量が低減されたエンドウタンパク分解物を製造する。
すなわち、上述のとおり、上記洗浄処理によりプリン体含有量が低減されたエンドウタンパクを酵素分解することにより、そのプリン体含有量が、当該洗浄処理前のエンドウタンパクを酵素分解して得られるエンドウタンパク分解物に比べて効果的に低減されたエンドウタンパク分解物が得られる。
具体的に、例えば、その総プリン体含有量が、上記洗浄処理が施されていないエンドウタンパクを酵素分解して得られるエンドウタンパク分解物のそれの80%以下であるエンドウタンパクを製造することとしてもよい。
この場合、例えば、その総プリン体含有量が、未洗浄エンドウタンパクを酵素分解して得られるエンドウタンパク分解物の75%以下、70%以下、又は65%以下であるエンドウタンパク分解物を製造してもよい。
また、例えば、その総プリン体含有量が、未洗浄エンドウタンパクを酵素分解して得られるエンドウタンパク分解物の60%以下、55%以下、又は50%以下であるエンドウタンパク分解物を製造してもよい。また、例えば、その総プリン体含有量が、未洗浄エンドウタンパクを酵素分解して得られるエンドウタンパク分解物の45%以下、40%以下、又は35%以下であるエンドウタンパク分解物を製造してもよい。
また、例えば、その総プリン体含有量が0.65重量%以下であるエンドウタンパク分解物を製造することとしてもよい。この場合、例えば、その総プリン体含有量が0.60重量%以下、0.55重量%以下、又は0.50重量%以下であるエンドウタンパク分解物を製造してもよい。また、例えば、その総プリン体含有量が0.40重量%以下、0.35重量%以下、又は0.30重量%以下であるエンドウタンパク分解物を製造してもよい。
製造されるエンドウタンパク及びエンドウタンパク分解物のプリン体含有量は、例えば、上記洗浄処理の条件によって調整される。具体的に、例えば、洗浄処理前のエンドウタンパクのプリン体含有量、洗浄処理におけるエンドウタンパク懸濁液の温度、エンドウタンパク懸濁液を調製してから、その上清の少なくとも一部を除去するまでの時間、エンドウタンパク懸濁液の上清の全体量に対する、除去する上清の量の割合、及び上記洗浄処理を繰り返す回数、からなる群より選択される1つ以上の条件により調整される。
より具体的に、例えば、上記(a)の工程において、温度が60℃超、好ましくは65℃以上、より好ましくは70℃以上のエンドウタンパク懸濁液を調製することにより、プリン体含有量が極めて効果的に低減されたエンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を製造することができる。
すなわち、これらの温度で洗浄処理を実施する場合、例えば、その総プリン体含有量が、当該未洗浄エンドウタンパクのそれ、又は当該未洗浄エンドウタンパクを酵素分解して得られるエンドウタンパク分解物のそれの50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、特に好ましくは35%以下であるエンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を製造することができる。
また、上述のような温度で洗浄処理を実施する場合、例えば、その総プリン体含有量が0.40重量%以下、好ましくは0.35重量%以下、より好ましくは0.34重量%以下であるエンドウタンパクを製造することができ、また、その総プリン体含有量が0.40重量%以下、好ましくは0.35重量%以下、より好ましくは0.30重量%以下であるエンドウタンパク分解物を製造することができる。
また、製造されたエンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物が、発泡性飲料の製造方法において使用される場合、上記洗浄処理の条件によって、当該エンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物による、当該発泡性飲料の泡特性を向上させる効果を効果的に維持することができる。
具体的に、例えば、上記(a)の工程において、温度が25℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらにより好ましくは50℃以上、特に好ましくは60℃以上のエンドウタンパク懸濁液を調製することにより、上述のようにプリン体含有量が効果的に低減され、且つ上記発泡性飲料の泡特性を向上させる効果を維持したエンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を製造することができる。
さらに、例えば、上記(a)の工程において、温度が60℃超、好ましくは65℃以上、より好ましくは70℃以上のエンドウタンパク懸濁液を調製することにより、発泡性飲料の泡特性を向上させる効果を維持しつつ、上述のようにプリン体含有量が極めて効果的に低減され、且つ上記発泡性飲料の泡特性を向上させる効果を維持したエンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を製造することができる。
本実施形態に係るエンドウタンパク及びエンドウタンパク分解物は、上述の方法により製造される。すなわち、本実施形態に係るエンドウタンパクは、エンドウから抽出されたエンドウタンパクに、上述の洗浄処理を施して得られ、そのプリン体含有量が、当該洗浄処理を施されていないエンドウタンパクのそれに比べて低減されたエンドウタンパクである。
また、本実施形態に係るエンドウタンパク分解物は、上記洗浄処理によってプリン体含有量が低減されたエンドウタンパクを酵素分解して得られ、そのプリン体含有量が、未洗浄エンドウタンパクを酵素分解して得られるエンドウタンパク分解物のそれに比べて低減されたエンドウタンパク分解物である。
また、本実施形態に係るエンドウタンパク及びエンドウタンパク分解物は、総プリン体含有量が0.65重量%以下であることとしてもよい。すなわち、上述のとおり、本実施形態に係るエンドウタンパクの総プリン体含有量は、例えば、0.60重量%以下であってもよく、0.55重量%以下であってもよく、0.50重量%以下であってもよく、0.40重量%以下であってもよく、0.35重量%以下であってもよく、0.34重量%以下であってもよい。
また、本実施形態に係るエンドウタンパク分解物の総プリン体含有量は、例えば、0.60重量%以下であってもよく、0.55重量%以下であってもよく、0.50重量%以下であってもよく、0.40重量%以下であってもよく、0.35重量%以下であってもよく、0.30重量%以下であってもよい。
本実施形態に係る飲料の製造方法は、本実施形態に係るエンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を使用する。すなわち、この飲料の製造方法は、上記洗浄処理によりプリン体含有量が低減されたエンドウタンパク、又は当該エンドウタンパクを酵素分解して得られたエンドウタンパク分解物を使用する。本実施形態に係る飲料は、上記方法により製造される。
本実施形態に係る飲料のプリン体含有量を低減する方法は、上述した洗浄処理を含む方法により製造されたエンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を使用して飲料を製造することにより、当該飲料のプリン体含有量を、当該洗浄処理が施されていないエンドウタンパク、又は当該洗浄処理が施されていないエンドウタンパクを酵素分解して得られるエンドウタンパク分解物を使用して製造される飲料に比べて低減する方法である。
本実施形態に係る飲料は、エンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を使用して製造される飲料であれば、特に限られない。飲料は、例えば、発泡性飲料であってもよい。発泡性飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を含む泡特性を有する飲料である。すなわち、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有する飲料であって、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料である。
飲料に発泡性を付与する方法は、特に限られず、例えば、アルコール発酵、炭酸水の使用、及び炭酸ガスの使用からなる群より選択される1種以上の方法により発泡性が付与された飲料を製造することとしてもよい。
飲料は、アルコール飲料であってもよい。アルコール飲料は、エタノールの含有量が1体積%以上(アルコール分1度以上)の飲料である。アルコール飲料のエタノール含有量は、1体積%以上であれば特に限られないが、例えば、1〜20体積%であってもよい。アルコール飲料は、発泡性アルコール飲料であってもよい。
飲料は、ノンアルコール飲料であってもよい。ノンアルコール飲料は、エタノールの含有量が1体積%未満の飲料である。ノンアルコール飲料のエタノール含有量は、1体積%未満であれば特に限られないが、例えば、0.5体積%未満であってもよく、0.05体積%未満であってもよく、0.005体積%未満であってもよい。ノンアルコール飲料は、発泡性ノンアルコール飲料であってもよい。
本実施形態に係る飲料の製造方法は、植物原料を使用して原料液を調製することを含み、当該原料液を使用して飲料を製造することとしてもよい。この場合、原料液は、植物原料と水(好ましくは湯)とを混合することにより調製する。こうして得られる原料液は、植物原料から抽出された成分を含む。
植物原料は、飲料の製造に使用され得るものであれば特に限られないが、例えば、穀類(例えば、大麦、小麦、米類及びとうもろこしからなる群より選択される1種以上)、豆類及びいも類からなる群より選択される1種以上を含むこととしてもよい。これら穀類、豆類及びいも類は、発芽させたものであってもよく、発芽させていないものであってもよい。
すなわち、例えば、大麦及び/又は小麦を使用して原料液を調製することとしてもよい。この場合、大麦及び/又は小麦と、ホップとを使用して原料液を調製してもよい。大麦及び小麦は、発芽させたものであってもよく、発芽させていないものであってもよい。
また、例えば、麦芽を使用して原料液を調製してもよい。この場合、麦芽及びホップを使用して原料液を調製してもよい。麦芽としては、大麦麦芽及び/又は小麦麦芽が好ましく使用される。大麦麦芽は大麦を発芽させることにより得られ、小麦麦芽は小麦を発芽させることにより得られる。麦芽を使用した原料液の調製は、当該麦芽と水(好ましくは湯)とを混合することにより実施してもよいし、麦芽エキスと水(好ましくは湯)とを混合することにより実施してもよい。麦芽エキスとしては、市販の麦芽エキスを使用してもよい。
麦芽を使用して原料液を調製する場合、糖化を行って当該原料液を調製してもよい。すなわち、この場合、麦芽と水(好ましくは湯)とを混合し、得られた混合液の糖化を行う。糖化は、例えば、麦芽及び水を含む混合液を、当該麦芽に含まれる消化酵素(例えば、デンプン分解酵素、タンパク質分解酵素)が働く温度(例えば、30〜80℃)に維持することにより行う。
麦芽及びホップを使用して原料液を調製する場合、例えば、麦芽と水(好ましくは湯)とを混合し、得られた混合液にホップを添加し、煮沸することにより当該原料液を調製してもよい。また、例えば、麦芽と水(好ましくは湯)とを混合し、糖化を行い、その後、ホップを添加して煮沸することにより原料液を調製してもよい。
また、本実施形態に係る飲料の製造方法は、例えば、植物原料を使用して原料液を調製すること、及び当該原料液に酵母を添加してアルコール発酵を行うこと、を含んでもよい。アルコール発酵は、例えば、原料液に酵母(例えば、ビール酵母)を添加して所定の温度(例えば、0〜40℃)で所定の時間(例えば、1〜14日)維持することにより行う。発酵開始時の発酵液における酵母の密度は特に限られず、例えば、1×106個/mL〜3×109個/mLであることとしてもよい。
また、アルコール発酵に続いて、熟成を行ってもよい。すなわち、この場合、原料液に酵母を添加してアルコール発酵を行い、さらに熟成を行って、飲料を製造する。熟成は、アルコール発酵後の発酵液をさらに所定の温度で所定の時間だけ維持することにより行う。この熟成により、発酵液中の不溶物を沈殿させて濁りを取り除き、香味を向上させることができる。なお、アルコール発酵を行う場合、発泡性飲料を製造することとしてもよく、アルコール飲料を製造することとしてもよく、発泡性アルコール飲料を製造することとしてもよい。
また、本実施形態に係る飲料の製造方法は、例えば、植物原料を使用して原料液を調製することを含み、アルコール発酵を行うことなく当該原料液を使用して飲料を製造することとしてもよい。
この場合、発泡性飲料を製造することとしてもよく、ノンアルコール飲料を製造することとしてもよく、発泡性ノンアルコール飲料を製造することとしてもよく、アルコール飲料を製造することとしてもよく、発泡性アルコール飲料を製造することとしてもよい。
アルコール発酵を行わずに発泡性飲料を製造する場合、上述のとおり、例えば、炭酸水の使用及び/又は炭酸ガスの使用により、発泡性が付与された飲料を製造してもよい。また、アルコール発酵を行わずにアルコール飲料を製造する場合、例えば、エタノールを添加することとしてもよい。
また、アルコール発酵を行うことなく飲料(例えば、ノンアルコール飲料)を製造する場合、例えば、原料液と他の原料とを混合することにより当該飲料を製造してもよい。この場合、他の原料としては、例えば、糖類、食物繊維、酸味料、色素、香料、甘味料及び苦味料からなる群より選択される1種以上を使用することとしてもよい。
そして、本実施形態に係る飲料の製造方法においては、上述した本実施形態に係るエンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を添加する。エンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を添加するタイミングは、特に限られない。
すなわち、例えば、本実施形態に係る飲料の製造方法が、植物原料を使用して原料液を調製すること、及び当該原料液に酵母を添加してアルコール発酵を行うこと、を含む場合、原料液の調製中、原料液の調製後であってアルコール発酵前、アルコール発酵中、及びアルコール発酵後からなる群より選択される1つ以上のタイミングで、エンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を添加する。
また、例えば、本実施形態に係る飲料の製造方法が、植物原料を使用して原料液を調製すること、当該原料液に酵母を添加してアルコール発酵を行うこと、さらに貯酒を行うことを含む場合、原料液の調製中、原料液の調製後であってアルコール発酵前、アルコール発酵中、アルコール発酵後であって貯酒前、貯酒中、及び貯酒後からなる群より選択される1つ以上のタイミングで、エンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を添加する。
エンドウタンパクの添加量は、特に限られないが、例えば、原料液100重量部に対して、0.0002〜10重量部であってもよく、0.0002〜1重量部であってもよく、0.001〜1重量部であってもよく、0.01〜1重量部であってもよい。エンドウタンパク分解物の添加量は、特に限られないが、例えば、原料液100重量部に対して、0.0002〜10重量部であってもよく、0.0002〜10重量部であってもよく、0.001〜1重量部であってもよく、0.01〜1重量部であってもよい。
そして、本実施形態に係る飲料の製造方法においては、上記洗浄処理を含む方法により製造されたエンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を使用することにより、当該エンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物に由来するプリン体含有量が、当該未洗浄エンドウタンパク、又は当該未洗浄エンドウタンパクを酵素分解して得られるエンドウタンパク分解物を使用して製造される飲料に比べて低減された飲料を製造することができる。
また、発泡性飲料を製造する場合には、上述のとおり、当該発泡性飲料の泡特性を向上させる効果を維持したエンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を使用することにより、プリン体含有量が効果的に低減され、且つ泡特性が効果的に向上した発泡性飲料を製造することができる。すなわち、この場合、本実施形態に係るエンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を、発泡性飲料の泡特性を向上させる添加剤として効果的に使用することができる。
本実施形態に係る飲料は、上記洗浄処理を含む方法により製造されたエンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物を使用して製造されることにより、当該エンドウタンパク又はエンドウタンパク分解物に由来するプリン体含有量が、当該未洗浄エンドウタンパク、又は当該未洗浄エンドウタンパクを酵素分解して得られるエンドウタンパク分解物を使用して製造される飲料に比べて効果的に低減されている。
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
[洗浄処理]
洗浄処理を施すエンドウタンパクとして、市販のエンドウタンパクを使用した。この市販のエンドウタンパクは、エンドウから抽出された粉末状のエンドウタンパク組成物であり、SDS−PAGEで測定される分子量が1000〜70000のタンパクを含み、タンパク含有量が80〜84重量%であり、脂質含有量が3重量%以下であった。水性溶媒としては、水を使用した。
まず容器内で、粉末状のエンドウタンパクを水に懸濁し、エンドウタンパク懸濁液を調製した。次いで、エンドウタンパク懸濁液の調製から所定時間が経過した時点で、当該エンドウタンパク懸濁液の遠心分離を実施し、容器の底部にエンドウタンパクを沈殿させた。その後、エンドウタンパク懸濁液の上清の約80重量%を容器外に除去し、廃棄した。こうして、洗浄処理が施されたエンドウタンパクを得た。
[酵素分解]
タンパク分解酵素としては、エンド型プロテアーゼ活性を有する市販のプロテアーゼを使用した。上述のように上清を除去した後、エンドウタンパクの沈殿が残された上記容器に、当該エンドウタンパク100重量部に対し1重量部のタンパク分解酵素及び水を添加し、反応液を調製した。この反応液を55℃で3時間撹拌することにより、エンドウタンパクの酵素分解を行った。
次いで、反応液を90℃に加熱して、当該反応液中のタンパク分解酵素を失活させた。さらに、反応液を冷却し、エンドウタンパク100重量部に対し2重量部の活性炭による処理、及び珪藻土ろ過を実施した。その後、反応液のスプレードライを実施した。こうして、粉末状のエンドウタンパク分解物を得た。
一方、比較例として、洗浄処理が施されていないエンドウタンパクを酵素分解してエンドウタンパク分解物を得た。すなわち、容器内で、洗浄処理が施されていない粉末状のエンドウタンパクと、当該エンドウタンパク100重量部に対し1重量部のタンパク分解酵素と、水とを混合して、反応液を調製した。そして、反応液を55℃で3時間撹拌することにより、エンドウタンパクの酵素分解を行った。
その後、上述の例と同様にして、タンパク分解酵素の失活、活性炭処理、珪藻土ろ過、及びスプレードライを実施して、粉末状のエンドウタンパク分解物を得た。
[プリン体含有量の評価]
上述のようにして得られたエンドウタンパク分解物と水とを混合して、当該エンドウタンパク分解物を1(w/v)%含む水溶液(1(w/v)%エンドウタンパク分解物溶液)を調製した。
そして、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、この1(w/v)%エンドウタンパク分解物溶液に含まれるアデニン、グアニン、ヒポキサンチン、及びキサンチンの含有量を測定した。具体的に、参考文献「Biomedical Chromatography,2009;23」(p.858−864)の記載に従い、次の装置及び条件で測定し、プリン体の含有量を算出した。装置:HP1100(アジレントテクノロジー社)、カラム:ShodexAsahipakGS−320HQ(7mmI.D.×300mm)、移動相:150mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH2.5)、流量:0.6mL/min、カラム温度:35℃、検出:UV 260nm。
図1には、12種類のエンドウタンパク分解物について、その製造における洗浄条件と、1(w/v)%エンドウタンパク分解物溶液100mL中のアデニン含有量、グアニン含有量、ヒポキサンチン含有量、キサンチン含有量、及びこれらの合計(総プリン体含有量)(mg)を示す。図2には、12種類のエンドウタンパク分解物について、その1(w/v)%エンドウタンパク分解物溶液100mL中の総プリン体含有量(mg)を示す。
図1及び図2において、「未洗浄」は、洗浄処理が施されていないエンドウタンパクを酵素分解して得られたエンドウタンパク分解物の例を示す。「20℃/30分」は、エンドウタンパクを、pHが調整されていない20℃の水道水に懸濁し、得られたエンドウタンパク懸濁液を30分間撹拌した例を示す。「20℃/30分(pH4)」は、エンドウタンパクを、HClを使用してpHが4に調整された20℃の水道水に懸濁し、得られたエンドウタンパク懸濁液を30分間撹拌した例を示す。「20℃/30分(pH9)」は、エンドウタンパクを、NaOHを使用してpHが9に調整された20℃の水道水に懸濁し、得られたエンドウタンパク懸濁液を30分間撹拌した例を示す。
「60℃/30分」は、エンドウタンパクを、pHが調整されていない60℃の水道水に懸濁し、得られたエンドウタンパク懸濁液を30分間撹拌した例を示す。「70℃/30分」、「70℃/60分」及び「70℃/120分」は、エンドウタンパクを、pHが調整されていない70℃の水道水に懸濁し、得られたエンドウタンパク懸濁液を、それぞれ30分間、60分間又は120分間撹拌した例を示す。「70℃/30分×2」は、まず、エンドウタンパクを、pHが調整されていない70℃の水道水に懸濁し、得られたエンドウタンパク懸濁液を30分間撹拌することを含む第一の洗浄処理を実施し、次いで、当該第一の洗浄処理が施されたエンドウタンパクを、pHが調整されていない70℃の水道水に懸濁し、得られたエンドウタンパク懸濁液を30分間撹拌することを含む第二の洗浄処理を実施した例(70℃の洗浄処理を2回繰り返した例)を示す。
「80℃/30分」は、エンドウタンパクを、pHが調整されていない80℃の水道水に懸濁し、得られたエンドウタンパク懸濁液を30分間撹拌した例を示す。「80℃/30分×2」は、上述の「70℃/30分×2」と同様、80℃の洗浄処理を2回繰り返した例を示す。「90℃/30分」は、エンドウタンパクを、pHが調整されていない90℃の水道水に懸濁し、得られたエンドウタンパク懸濁液を30分間撹拌した例を示す。
また、「総プリン体」は、アデニン含有量、グアニン含有量、ヒポキサンチン含有量、及びキサンチン含有量の合計である総プリン体含有量を示す。なお、例えば、「未洗浄」の例における総プリン体含有量「7.8mg/100mL」は、上述のとおり、1(w/v)%エンドウタンパク分解物溶液100mL中に含まれる総プリン体の量であるから、当該溶液中のエンドウタンパク分解物の総プリン体含有量は、「0.78重量%」と算出される。
また、図1において、「総プリン体(%/未洗浄)」は、未洗浄エンドウタンパクを使用した例の総プリン体含有量に対する、他の各々の例の総プリン体含有量の割合(%)を示す。また、「N.D.」は含有量が定量限界未満であったことを示す。
図1及び図2に示されるように、20℃、60℃、70℃、80℃又は90℃の洗浄処理を経て得られた11種類のエンドウタンパク分解物の全てのプリン体含有量は、未洗浄エンドウタンパクの酵素分解により得られたエンドウタンパク分解物(「未洗浄」)のそれより顕著に低減されていた。
すなわち、11種類のエンドウタンパク分解物の総プリン体含有量は、「未洗浄」の例のそれの約65%以下であり、約0.50重量%以下であった。また、特に、60℃超の洗浄処理を経て得られたエンドウタンパク分解物のプリン体含有量は、未洗浄エンドウタンパクの酵素分解により得られたエンドウタンパク分解物のそれより極めて顕著に低減されていた。すなわち、70℃以上の洗浄処理が実施された例において、エンドウタンパク分解物の総プリン体含有量は、「未洗浄」の例のそれの約31%以下であり、約0.25重量%以下であった。
[泡特性の評価]
上述のようにして得られたエンドウタンパク分解物を、発泡性飲料の泡特性を改善する添加剤として使用して、製造された発泡性飲料の泡特性を評価した。まず麦芽及びホップを使用して製造された市販の発泡性アルコール飲料に超音波をかけることにより、炭酸ガスを強制的に抜いて、実質的に発泡性を有しないアルコール飲料を得た。
次に、このアルコール飲料150gに、エンドウタンパク分解物0.15g(飲料100重量部に対して0.1重量部)を添加して混合した。さらに、このエンドウタンパク分解物を含むアルコール飲料150gを炭酸飲料用500mL容積のペットボトルに入れて5℃で1時間冷却し、その後、ドライアイス3gを添加して15秒静置し、蓋を閉め、5℃のインキュベータで1晩保管した。こうして、上記12種類のエンドウタンパク分解物のいずれかが添加された12種類の発泡性アルコール飲料を得た。なお、比較例として、エンドウタンパク分解物を添加しない以外は同様にして、エンドウタンパク分解物が添加されていない発泡性アルコール飲料を得た。
そして、保管後の発泡性アルコール飲料50gを100mL容積のガラス製ビーカーに入れて1分間静置した。一方、200mL容積のメスシリンダーの上部に漏斗をセットした。次いで、この漏斗からメスシリンダーに、発泡性アルコール飲料を10秒かけて注ぎ入れた。
メスシリンダー内の発泡性アルコール飲料について、注ぎ入れた直後(経過時間0分)の泡の高さと、その後の1分経過ごとの泡の高さとを、7分が経過するまで順次測定し、起泡量として得た。また、注ぎ終えた時点から、泡が消えて液面が見えるまでの時間を測定し、泡保持時間として得た。
図3には、13種類の発泡性アルコール飲料について、起泡量(mL)を測定した結果を示す。図4には、13種類の発泡性アルコール飲料について、泡保持時間(秒)を測定した結果を示す。図3及び図4において、「無添加」は、エンドウタンパク分解物が添加されていない発泡性アルコール飲料についての結果を示す。
図3及び図4に示すように、未洗浄エンドウタンパクの酵素分解により得られたエンドウタンパク分解物を添加した発泡性アルコール飲料(「未洗浄」)の泡特性は、エンドウタンパク分解物が添加されていない発泡性飲料(「無添加」)のそれに比べて顕著に向上していた。
これに対し、20℃の洗浄処理を経て得られたエンドウタンパク分解物を添加した発泡性アルコール飲料(「20℃」)の泡特性は、エンドウタンパク分解物が添加されていない発泡性飲料(「無添加」)のそれに比べて低下していた。
一方、20℃超の洗浄処理を経て得られたエンドウタンパク分解物を添加した発泡性アルコール飲料(「60℃」、「70℃」、「80℃」及び「90℃」)の泡特性は、洗浄処理を経ずに得られたエンドウタンパク分解物を添加した発泡性アルコール飲料(「未洗浄」)のそれと同等又はそれ以上の泡特性を示した。すなわち、これら20℃超の洗浄処理を経て得られたエンドウタンパク分解物は、発泡性飲料の泡特性を向上させる効果を維持していた。
また、上述のプリン体含有量の評価結果と併せると、60℃超の洗浄処理を経て得られたエンドウタンパク分解物は、その発泡性飲料の泡特性を向上させる効果を、洗浄処理を経ることなく得られたエンドウタンパク分解物のそれと同等以上に維持しつつ、そのプリン体含有量は、当該洗浄処理を経ることなく得られたエンドウタンパク分解物のそれに比べて極めて顕著に低減されていた。
[分子量分布]
洗浄処理を経ることなく得られたエンドウタンパク分解物、上記「70℃/30分」の洗浄処理を経て得られたエンドウタンパク分解物、及び上記「70℃/30分×2」の洗浄処理を経て得られたエンドウタンパク分解物のそれぞれについて、ゲルろ過担体を使用した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、分子量分布を測定した。
分子量マーカーとしては、次の7種類のマーカーを使用した:BSA(分子量66338)、Ovalbumin(分子量45000)、β−Lactoglobulin(分子量35000)、Myoglobin(分子量17000)、Cytochrome C(分子量12000)Aprotinin(分子量6511)、Vitamin B12(分子量1355)。
HPLCの測定条件は、次のとおりであった:Column:Superdex75 10/300GL、Eluent:0.05M Na-Pi(pH6.4) containing 0.15M NaCl、Temp.:room temperature、Flow Rate: 0.5ml/min、Detection:UV214nm、Injection:100μl、Sample:0.1mg/ml。
図5Aには、分子量マーカーの測定において得られたクロマトグラムを示す。図5Bには、洗浄処理を経ることなく得られたエンドウタンパク分解物の測定において得られたクロマトグラムを示す。図5Cには、「70℃/30分」の洗浄処理を経て得られたエンドウタンパク分解物の測定において得られたクロマトグラムを示す。図5Dには、「70℃/30分×2」の洗浄処理を経て得られたエンドウタンパク分解物の測定において得られたクロマトグラムを示す。
図5B〜図5Dに示すように、エンドウタンパク分解物の分子量分布には、洗浄処理の実施及び洗浄処理の回数による変化は見られなかった。また、図5A〜図5Dより、エンドウタンパク分解物は、分子量1000〜50000に相当する時間で溶出される成分の含有量が80重量%以上であった。また、エンドウタンパク分解物は、分子量1000〜17000に相当する時間で溶出される成分の含有量が50重量%以上であった。
上述の実施例1における「70℃/30分」の例において、エンドウタンパク懸濁液の上清を除去しない以外は同様にして、エンドウタンパク分解物を得た。すなわち、まず容器内で、粉末状のエンドウタンパクを水に懸濁し、70℃のエンドウタンパク懸濁液を調製した。次いで、エンドウタンパク懸濁液の調製から30分が経過した時点で、当該エンドウタンパク懸濁液の遠心分離を実施し、容器の底部にエンドウタンパクを沈殿させた。
その後、エンドウタンパク懸濁液の上清を除去することなく、上記容器に、エンドウタンパク100重量部に対し1重量部のタンパク分解酵素及び水を添加し、反応液を調製した。さらに、この反応液を55℃で3時間撹拌することにより、エンドウタンパクの酵素分解を行った。その後、上述の実施例1と同様にして、タンパク分解酵素の失活、活性炭処理、珪藻土ろ過、及びスプレードライを実施して、粉末状のエンドウタンパク分解物を得た。
そして、こうして得られたエンドウタンパク分解物について、上述の実施例1と同様にして、プリン体含有量を測定した。
図6及び図7には、上述の図1及び図2と同様に、エンドウタンパク分解物のプリン体含有量を評価した結果を示す。図6及び図7において、「未洗浄」には、図1及び図2における「未洗浄」の結果を示し、「上清除去」には、図1及び図2における「70℃/30分」の結果を示し、「上清除去なし」には、上述のようにエンドウタンパク懸濁液の上清を除去することなく得られたエンドウタンパク分解物の結果を示す。
図6及び図7に示すように、上清を除去することなく得られたエンドウタンパク分解物のプリン体含有量は、上清を除去する洗浄処理を経て得られたエンドウタンパク分解物に比べて大きかった。すなわち、エンドウタンパク及びエンドウタンパク分解物のプリン体含有量を低減するためには、洗浄処理における上清の除去が重要な要件の1つであることが確認された。
[洗浄処理]
上述の実施例1における「20℃/30分」及び「70℃/30分」の例と同様にして、エンドウタンパクに洗浄処理を施した。すなわち、まず容器内で、粉末状のエンドウタンパクを水に懸濁し、20℃又は70℃のエンドウタンパク懸濁液を調製した。次いで、エンドウタンパク懸濁液の調製から30分が経過した時点で、当該エンドウタンパク懸濁液の遠心分離を実施し、容器の底部にエンドウタンパクを沈殿させた。
そして、エンドウタンパク懸濁液の上清と、沈殿物とをそれぞれ回収した。なお、この沈殿物は、上述の実施例1及び実施例2における、洗浄処理後のエンドウタンパクに相当するものであった。
[プリン体含有量の評価]
上述のようにして回収されたエンドウタンパク懸濁液の上清及び沈殿物のそれぞれについて、上述の実施例1と同様にして、プリン体含有量を測定した。すなわち、エンドウタンパク懸濁液の上清については、当該上清をそのままサンプルとして使用して、当該上清中のプリン体含有量を測定した。一方、エンドウタンパク懸濁液の沈殿物については、まず当該沈殿物を容器に入れて、当該沈殿物の重量を測定した。次いで、この沈殿物に、洗浄処理を施す前のエンドウタンパクの重量と、当該洗浄処理で使用した水の重量との合計と同じ重量になるまで水を加えた。さらに、得られた組成物をプロペラミキサーを用いて撹拌し、その後、さらに重量が10倍になるまで水を加えた(10倍希釈)。そして、得られた組成物のプリン体含有量を、沈殿物のプリン体含有量として測定した。
図8には、上述の図1と同様に、エンドウタンパク懸濁液の上清及び沈殿物のそれぞれについて、プリン体含有量を評価した結果を示す。ここで、図8に示す「沈殿物」のプリン体含有量は、洗浄処理後のエンドウタンパクのプリン体含有量に相当する。また、「上清」のプリン体含有量は、洗浄処理においてエンドウタンパクから溶出したプリン体量を示す。
この点、図8に示されるように、上清中のプリン体含有量は、沈殿物中のそれに比べて顕著に大きかった。すなわち、洗浄処理においては、エンドウタンパクから上清中にプリン体が効果的に溶出していることが確認された。
この結果は、上述の実施例2でも確認された、エンドウタンパク及びエンドウタンパク分解物のプリン体含有量を低減するためには、洗浄処理における上清の除去が重要な要件の1つであることを裏付けるものであった。
参考例
洗浄処理が施されていないエンドウタンパクと、当該洗浄処理が施されていないエンドウタンパクの酵素分解により得られたエンドウタンパク分解物とについて、発泡性飲料の泡特性を向上させる効果を比較した。
100mL容積のビーカーで、水50mLと、99.5%エタノール(特級試薬)2.5mLとを混合し、スターラーで1分間撹拌した。次いで、この溶液に、エンドウタンパク0.5g(約1wt%)又はエンドウタンパク分解物0.5g(約1wt%)を添加し、スターラーで3分間撹拌した。
その後、スターラーを止め、溶液を100mL容積の比色管に静かに移し、栓をして1分間静置した。さらに、比色管を手で上下に50往復振とうした後、10秒間静置した。その後、比色管内における溶液の泡を含む全量と、泡を除く液量とをそれぞれ測定した。そして、溶液の全量から液量を減じた量を起泡量として得た。
その結果、エンドウタンパクが添加された溶液の起泡量は23.7mLであったのに対し、エンドウタンパク分解物が添加された溶液の起泡量は60.0mLであった。すなわち、発泡性飲料の泡特性を向上させる効果は、エンドウタンパクよりも、当該エンドウタンパクを酵素分解して得られたエンドウタンパク分解物の方が大きかった。