JP2010507597A - 中分子量のマメ科植物タンパク質画分を得る方法、マメ科植物タンパク質画分およびその使用 - Google Patents

中分子量のマメ科植物タンパク質画分を得る方法、マメ科植物タンパク質画分およびその使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、まず果汁を準備し、マメ科植物タンパク質を凝固し、主成分が>14から約600kDの分子量を有するマメ科植物タンパク質画分を除去し、必要に応じこうして得た凝固マメ科植物タンパク質画分を洗浄し、必要に応じマメ科植物タンパク質画分を乾燥することからなる>14kDの分子量を有する凝固マメ科植物タンパク質画分を製造する方法、および該マメ科植物タンパク質画分の食品、食品添加物、医薬品添加物、動物用餌としての、化粧品中での、工業用タンパク質としての、および接着剤としての使用に関する。

Description

本発明は、特許請求の範囲の請求項1の導入部の方法、特許請求の範囲の請求項10の導入部のマメ科植物タンパク質画分、および特許請求の範囲の請求項14のその使用に関する。このように、本発明は、植物タンパク質を得る方法、植物タンパク質自体、およびこれらタンパク質の使用に関する。
タンパク質は、全生物界のために必須の化学物質であって、その多くは、酵素として生化学的な機能を有するばかりでなく、主として生長および/または再生のプロセスといった、いわば生命維持に重要なプロセスのための資源貯蔵器としての貯蔵物質(貯蔵タンパク質)でもある。タンパク質は、その分子量の大きさ、組成、ならびにその二次および三次構造により特徴づけられる。我々は、その化学構造が、アミノ酸であって、鎖長がおよそ30またはそれより以上のアミノ酸のみからなる場合にタンパク質と呼ぶ。これより短い鎖長のものについては通常ペプチドと呼ぶ。しかし、この分類は、実際には必ずしも正確な定義というものではない。それは、どちらかというと任意的なもので、個々の場面である程度有用なだけである。一般にタンパク質は、バクテリアおよび酵母などの単細胞生物や植物ばかりでなく、動物によっても産生される。タンパク質は、ヒトおよび動物の栄養物であるばかりか健康にも不可欠のものである。また、タンパク質は、その化学的、栄養的および生化学的特性に加えて、いわゆる機能的特性をも有する。タンパク質の吸水能力、消化性、水溶解性、泡の生成や安定化、およびその乳化能力のような特徴は、その三次および二次構造により特徴付けられており、タンパク質はこれらの特徴により技術的用途に適用可能とされるものである。そして、タンパク質は、例えば、接着剤、乳化剤および増粘剤として多くの技術分野において利用されている。タンパク質は、加熱されたり、酸またはアルカリに曝されたりすると、その三次構造がひどく、そしてしばしば不可逆的に損傷をうける。二次構造は、酵素あるいは高度にアルカリ性または酸性の媒体によって引き起こされるタンパク質分解によって破壊される。このため、タンパク質を単離する間にそのタンパク質の機能的特性を維持することは極めて重要である。
技術の現状は、動物および植物タンパク質を単離することである。それらは、既に多種多様な用途分野、例えば、食品(豆腐)や動物餌として、また薬剤および工業用用途(タンパク質接着剤など)において用いられている。栄養、食品技術への、例えば起泡剤、乳化剤、構造増強および/または構成剤(例えば、グミ ベア(Gummibaerchen)およびつや出し剤用のゼラチン)、動物の餌、化粧品および医療品に対するタンパク質の意義は独特のものであって、他のいかなる物質によっても代用できないものである。このような良好な水溶解性および乳化能力を有する機能性タンパク質を得るための最も容易な方法は、牛乳または卵(pH値の大きな変化や高温にもされていないもの)から得られるものを用いることである。
特に動物タンパク質は、しばしばアレルギー反応を惹き起すという問題を有している。
牛乳タンパク質は非常に頻繁に用いられるが、多くのラクトース過敏性のあるいは牛乳タンパク質に対してアレルギー性の消費者に恐れられている。また、動物タンパク質は、潜在的な病気(たとえば、BSE、HIVまたは鳥インフルエンザ)を運ぶあるいは病原体になり得るという問題を有している。動物タンパク質の他の問題は、倫理上の理由で、それらがしばしば多くの住民グループに受け入れられない、ということである。例えば、コラーゲンを基剤とするスキンクリームは、アジアおよびイスラム文化においてまさにそのような理由で禁止されている。しかしながら、我々の文化においてさえ、動物タンパク質は種々のアレルギーの原因となっている。さらに植物タンパク質は、動物タンパク質よりはるかに環境にやさしい、すなわち植物タンパク質はより安価に製造することができることから、通常植物タンパク質よりも動物タンパク質は高価である。また植物タンパク質は、菜食主義者あるいはプリン低減ダイエットや栄養物のようなダイエットに理想的である。このように、植物タンパク質をより詳細に検討することは意味のあることである。
植物タンパク質、特に、エンドウ豆タンパク質やインゲン豆タンパク質のようなマメ科植物タンパク質は、上記の動物タンパク質が有する問題の多くを有していない。それらの多くは、ほとんど、あるいは全く、アレルゲン性(アレルギー誘発性)ではない。すなわち、それらはEUのアレルゲンリストに登録されておらず、すべての文化において受け入れられており、またエンドウ豆あるいはビーン(ソラ豆、インゲン豆、大豆などの豆)のような特定の植物を栽培するものであることから、有機生産物および遺伝子組み換え技術を用いていない生産物(非―GMO証明)であることを保証することができる。
例えば、牛乳およびホエー製品、ゼラチン、鶏卵タンパク質、コラーゲン等の産業上使用されているすべての動物タンパク質の中から、第1には牛乳タンパク質、これは主としてカゼインおよびその塩(例えば瓶のラベル用の接着剤として用いられている)、全卵タンパク質あるいはアルブミン並びに卵黄などの鶏卵タンパク質およびゼラチン、骨にかわおよびコラーゲンなどの屠殺残渣から単離されたタンパク質(化粧品あるいは接着剤として用いられている)は、栄養技術、工業分野などの技術分野において使用されている。
今日、日々使用されている植物タンパク質は、限られた数の植物にのみ由来している。一般的な単離植物タンパク質は、大豆、エンドウ、ルピナス、レンズマメなどのマメ科植物に由来している。大規模で単離されているものは、大豆および小麦タンパク質、いわゆるグルテンである。グルテンは、多くの人がグルテンにアレルギーを有している(小児脂肪便症)ために問題があり、グルテンを含まない植物タンパク質が強く望まれている。分画されていない大豆タンパク質は、(多くの他のマメ科植物タンパク質と同様に)動物タンパク質の代替品として、また動物餌として広範に使用されているが、ホルモン活性を有する物質を含むため、議論の余地のないものではない。マメ科植物に含まれる典型的なホルモン活性物質は、甲状腺の機能を阻害する抗チロイドフラボンであるゲニシュタイン(Genistein)とダイザイン(Daiszein)である。ゲニシュタインは、270.24ダルトンの分子量を持つ5,7,4’−トリヒドロキシイソフラボンである。さらに、大豆はプロテアーゼ阻害剤、フィチン酸、レクチン、および大豆トキシンを含んでいる。
また、単離マメ科植物タンパク質は、西洋アブラナ、ルピナスおよびレンズ豆からも製造されている。市販されている多くのマメ科植物タンパク質、とくにエンドウ豆タンパク質の品質は、いまだ満足できるものではない。その理由としては種々のものが考えられる。西洋アブラナおよびこれと同様の植物に関しては、主として、これらのタンパク質およびそれから製造された製品の酸敗臭を引き起こす油をタンパク質中に含むことが問題である。これはまた、酸敗した植物油が畜肉に蓄えられ、畜肉に典型的な酸敗味を引き起こすことから、家畜の飼料タンパク質としても問題がある。
現在市販されている植物タンパク質における他の問題は、(大豆タンパク質にみられるような)その強い固有の味である。この理由から、植物たんばく質は多くの用途に使用することができないし、使用する量も制限される。これはまた往々問題でもある。
食品用途に関しては、マメ科植物タンパク質は健康によいものではないことに注意しなければならない。その理由は、マメ科植物タンパク質は、すべてのアミノ酸、とくに、人体がそれ自身で産生できず、したがって外から供給しなければならない、8つのいわゆる必須アミノ酸を含有するものではないことによる。マメ科植物タンパク質の品質は、一般的には、動物タンパク質よりも低いが、それでもなお良好ではある。
関連する植物部分、特に果実を圧搾する、あるいは粉砕された植物部分を液/液抽出することにより得られる果汁からマメ科植物タンパク質を製造するため、主として、次の二つの異なる技術的方法が用いられる。
I.酵素を不活性化した状態での、果汁中のタンパク質の熱凝固
または
II.酸性pHによる果汁からのタンパク質の沈殿、あるいは
これら両者の組み合わせ。
2.沈殿タンパク質の分離
本発明においては、植物部分とはマメ科植物の種子(例えば、ビーン、エンドウマメ、レンズマメ、大豆、“魔除け(juju)”ナッツ、落花生、等)をいう。
本明細書においては、果汁とは、種子から搾出された液汁および水性媒体を用いて種子から抽出されたマメ科植物タンパク質溶液をいう。抽出は、関連植物部分の液体含有量が不十分であるか、残渣タンパク質をも取得することが必要である場合、必要である。
前記熱沈殿により果汁からタンパク質が引き出されるが、この引き出されたタンパク質は、消化できず、強い臭いを持ち、しかも有害な物質を含む、十分な機能性を有しない難溶性の製品である。温度が高くなると、タンパク質はより大きな損傷を受け、食品工業に有用とされる貴重な特性、例えば無味、明るい色、溶解性、その他すべての機能もますます破壊されてしまい、その組織は角質化し、消化性も低下する。これは、いわゆる、組織化された植物タンパク質(TVP)、すなわち肉の代用品として用いられる大豆タンパク質に当てはまり、製造工程中に強い熱ストレスが加えられることから、消化することが難しく、また強い豆様の味を有している。
従来知られたマメ科植物タンパク質を単離する方法における更なる問題は、抗栄養性物質を除去できないことである。これら抗栄養性物質は往々水難溶性であることから、これを除去するには、極少量の乾燥物を多量の水を用いて水洗する選択的溶離法によらなければならない。他の除去法としては、回収および再処理が必要な、イソフラボン類を溶解する高価な溶剤(アルコール)を用いる方法が挙げられる。しかし、両方法とも、時間と費用がかかる。
さらに、こうして製造された公知のマメ科植物タンパク質は、殆ど機能性を有しておらず、殆ど栄養とならない、すなわち殆ど消化されず、牛乳タンパク質の代替品としては殆ど或いは全く適していない。同様なことは、有害な混在物質を含む、小麦、西洋アブラナ等の他の植物のタンパク質についても当てはまる。
沈殿したマメ科植物タンパク質中に共存物質として混入する他のネガティブな物質としては、具体的には、例えば、タンパク質消化酵素であるトリプシンの作用を阻害する、したがって消化を阻害するタンパク質であるトリプシン阻害剤がある。トリプシン阻害剤は、特別な不活性化処理、本ケースにおいては、約70℃での加熱処理によってのみ無害化される。
また、次のような物質、すなわち、Caの摂取を阻害するフィチン酸(Caイオンとの錯体)、レクチンおよび他の酵素阻害剤、消化、鉄の摂取を阻害し、消化酵素を不活性化するタンニン/タンニン酸、プロテアーゼ阻害剤、ポリフェノールおよび下痢を引き起こすマメ科植物シュガーのような特別の糖が共存することもある。さらに、マメ科植物では、ホルモン様物質として、具体的には、主としてイソフラボンも共存する。これらの有害物質の分離或いは除去は、今日、タンパク質を溶離する方法、或いは費用と時間が掛かるおよび/または高価な酵素処理法などの方法によって、その一部の除去を行うことができるのみである。
アルカリ性の環境でのタンパク質溶液の熱沈殿(時に必要な殺菌工程を含む)により産生されるマメ科植物タンパク質の多くには、その量ができるだけ低く抑えられるべきであるとされる抗栄養縮合物であるリジノアラニンが高濃度で含まれる。
本発明の課題は、より良好な機能性を有し、上記マメ科植物タンパク質が有する問題を有しないマメ科植物タンパク質を提供することである。
本発明によれば、この目的は、特許請求の範囲の請求項1に記載の特徴を有する方法の使用により達成することができる。さらに、本発明は、特許請求の範囲の請求項10、11および12に記載の特徴を有するタンパク質画分ならびに請求項16に記載のタンパク質画分の使用に関する。好適な態様は、引用請求項に記載されている。
本発明によれば、タンパク質は、タンパク質にやさしい、驚くほど簡便な方法により選択的に分画され、得られたタンパク質画分は食品における使用に適しており、十分な機能性を有している。本発明では、異なるタンパク質を分離するための方法として、分画法を使用することが重要である。pH値および温度を適切に調整する分画法は、有効かつ安価な処理法であり、大規模、簡便かつ驚異的に選択的なタンパク質分画を可能にする。
本発明の画分は、多段膜ろ過法、溶媒を用いた段階的沈殿法あるいは塩を用いた分画分別法によって得ることもできるが、これには多大な時間と労力が必要とされる。大量の物質を、デカンターを用いて、固形物とオーバーフローに(連続的かつ迅速に)機械的に分離することが往々好ましい。
特に、エンドウ豆タンパク質、インゲン豆タンパク質(Ackerbohnenprpteine)、レンズマメタンパク質は、高品質マメ科植物タンパク質(多くの必須アミノ酸)として適したものである。
本発明のマメ科植物タンパク質は、十分な量で入手することができ、また水溶性であることから満足のいく機能性を提供でき、このため、食品、食品添加物、医薬品添加物、動物の餌、化粧品、技術的タンパク質として、また接着剤に適している。
エンドウ豆の水抽出の際に有用であるように、マメ科植物の選択的分画は果汁から所望の画分を安価に分離する目的で実施される。本発明の方法は、分子量のより低い次のタンパク質画分を正確に分離するために、一つの工程から他の工程へと沈殿条件が強められることにより行われる。
本発明によれば、本方法は、
・細胞内に閉じ込められた果汁を放出するために、必要であれば(水性)溶媒を加えて、全果実、あるいは皮をむいた果実、あるいは分割された果実を磨り潰し、
・こうして得られた全タンパク質を含有する果汁を、固体物質から完全にあるいは部分的に分離し、そして
・タンパク質を分画沈殿させる
ことからなる。
ステップ1
最初のステップは、多量のタンパク質を分離するために使用される。まず、最初の酸性沈殿を行った後、マメ科タンパク質の画分である“沈殿タンパク質”を機械的に分離する。このものは高分子量を有しており、純粋なタンパク質である。低分子量のタンパク質は、上澄み液に残留している。この分画により、望ましくない有害な物質を吸着というコストと手間のかかる方法により除去することを避けることができる。この方法で分離されたエンドウ豆タンパク質は、90%のタンパク質含量(N6.25)を有し、高分子量を有し、ほとんど溶解性も機能性も示さない。
約116kDを超える分子量を有するこれらのタンパク質は、次の方法により簡単に分離することができる(膜ろ過法のようなさらに時間と手間のかかる方法は、費用が掛かることから副次的なものと考えられる):
・すでにわずかに酸性pH値を有している純粋果汁を(一度)遠心分離する。ここにおいて、最少量のタンパク質が分離されるが、少なくとも“単一分画”純度である。
または
・酸性pH値をpH2〜7の範囲内、好ましくは5〜7の範囲内に調整し、高分子量のタンパク質を酸性沈殿させ、ここにおいて沈殿された物質を次いで機械的、例えば遠心分離により分離する。このとき、沈殿が多すぎもせず、少なすぎもしないことが重要である。沈殿が多すぎれば、所望分画物の収量が少なくなり、少なすぎれば所望分画タンパク質の純度並びに他の品質パラメーターが落ちることになる。
これらの処理工程の特に有利な点の一つは、それが装置、材料およびエネルギー消費に関し、非常にシンプルであることである。
もし、116kDを超える分子量を有するタンパク質画分が分離されるべきである場合には、これは、pH値を沈殿に適した値および温度に調節し、またこれらのパラメーターをコントロールすることによって行うことができる。
ステップ2
ここでは、ステップ1での上澄み液を沈殿に適したpH値に調整するとともに熱沈殿を行うことにより、中分子量を有する標的タンパク質画分が単離される(もちろん、膜ろ過法などの時間も費用もかかる方法が用いられてもよい)。このために、温度は室温より高い温度とされ、pH値はおよそ標的タンパク質の等電点に選定される。
したがって、これは、上昇した温度下での酸性環境からの沈殿条件を満たすものであり、2〜6のpH値で且つ50〜85℃の温度でアクセス可能である。
ステップ1とステップ2とを共に行うこともでき、それにより約14kDより大きい分子量を有する全タンパク質が結果として得られる。
驚くべきことに、どのような費用のかかるあるいは複雑なプロセスあるいはプロセスステップも必要とせず、しかも非常に高速である本発明の(請求項2、3および4の)異なる方法の使用により、単純なプロセスステップの組み合わせにより、所望の目的を達成することができる。そのうえ、必要とされる装置は安価であり、操作の経費も低い。
本プロセスにおいては、非常に有利なことは、化学添加物、たとえば酵素、殺菌剤、増白剤等を用いる必要が無いことである。
さらに、生成物の特徴および/または特性に関しては、上記分画手段により、特別な分子量範囲を有するタンパク質が単離されるばかりでなく、すべての必要な特性、すなわち高度な栄養、中性の色、(ほとんど)原料の味を有しないこと、低いリジノアラニン含有量、並びに、保水性および油結合能力(乳化剤)などの技術的な機能性、を有する画分が単離されることもまた驚くべきことである。このことは、エンドウ豆についていうと、最初に沈殿されたタンパク質画分が高分子量であることからほとんど水不溶性であるので、とくに驚くべきことである。
一方、第2画分のビーンおよびエンドウ豆タンパク質は、pH値に応じて、15〜70%の幅広い最低溶解度を有するカーブの形状において溶解する。
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。しかし本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
本発明により製造されたマメ科植物タンパク質画分は、原因となる物質が溶離あるいは分離されることにより、上記した従来のマメ科植物タンパク質が有する問題(色、苦味、アレルゲン性、抗栄養製品、固有の味、機能性の喪失)を有さないものとなる。また、2つのタンパク質画分の分画沈殿を実施することもできる。いくつかの酵素は抗栄養的である。これら酵素は、2kD〜9kDの分子量を有しており、ここに記載される分画中には十分な数含まれない。それに加え、加熱処理により、酵素の変性と不活性化が起こる。
有害物質:重金属類や殺虫剤のような通常の環境毒の他には、イソフラボン類および抗甲状腺(アンチ−チロイド)イソフラボン類、並びに特殊な毒素を含むのみである。これらの物質は、上記したように分離される。14〜97および100〜600kDの分子量を有する本発明のマメ科植物タンパク質画分がアレルギーを引き起こすことは知られていない。このようなことから、これらは、特別なアレルゲン不含の、野菜食品や化粧品を製造するために適したものである。
乳化能力の測定:
タンパク質25gをウルトラ−ツラックス(Ultraturrax)を用いて水100g中に懸濁した。次いで、これに油(例えばヒマワリ種油、西洋アブラナ油、オリーブ油等)を、分散を続けながら徐々に且つ分割して、乳化が壊れるまで加える。油結合および乳化能力は、最大の油結合能力を示す際の3つの物質の濃度で示される。1:4:6というのは、タンパク質1部および水4部の混合物が油6部を結合することができる、すなわち上記乳化物に対して150gを超えた量の油を添加したのちに、試験物の乳化が壊れることを意味する。
水結合能力の決定:
タンパク質5gを秤量して水95gに加え、得られた懸濁液を1時間攪拌する。次いで、遠心分離(20分、3、500g)し、上澄み液を注意深くデカントし(必要なら、残留する液体はピペットで除去する)、湿潤タンパク質を秤量する。
(湿潤重量−乾燥重量)/乾燥重量=水結合能力
エンドウ豆タンパク質
水分含有量が低いことから、エンドウ豆(皮をとったあるいは皮付きのままのエンドウ豆)は、pH2〜10のpH値で10分〜数時間の十分な時間、水に浸すことが必要である。次いで、液は圧搾あるいは遠心分離に掛けられて、固体物質が分離され、得られた液状の上澄み液はタンパク質を分離するために用いられる。
ここで、以下のステップが適用される。
1.ステップ;
前記抽出溶液を4.0〜7.0のpHに調整し、これにより約100〜600kDの分子量を有するエンドウ豆タンパク質を室温で沈殿させ、これを分離する。
2.ステップ;
前記溶液を50〜85℃、4.0〜6.0のpH(ほぼ等電点)に調整し、得られた白色沈殿物(沈殿のためのpH4〜6)を、デカンター遠心機を用い、上記される処理条件で機械的に分離する。この未処理品のタンパク質含量は、乾燥物質において約75%である。前記沈殿条件はまた、製品の微生物学的な純度をも保証するものであり、本発明では更なる殺菌は必要とされない。高温あるいは非常に高温でなく、酸性環境であることから、リジノアラニンもほとんど生成しない。
精製工程:
次いで、タンパク質は、単離品質、すなわち乾燥物質において85%を超える品質に達するよう精製される。処理パラメーター:水道水が用いられ、これは冷たくても(室温)熱くても(好ましくは50℃から80℃)よく、pHは中性あるいは4〜6の酸性とされる。製品と同量または製品の2倍量までの量の洗浄水がデカンター遠心機に流入される。典型的には、この処理は、2段階に、例えば直列的に連結された2つのデカンターを用いて行われ、その際洗浄水の半分は各デカンターの前部に、または逆向流中に供給される、すなわち全量の水が第2のデカンターの前部に供給され、第1のデカンターの上部流出部においてこのプロセスから排出される。
高温になるほどタンパク質は加速度的にダメージを受け、食品工業に対し有用とされている貴重な特性、すなわち中性的な味、明るい色、溶解性、その他全ての機能性もますます破壊され、構造も角質となり、消化性も低下することに留意しなければならない。(マメ科植物果汁中に残っている)タンパク質画分は、このような高温状態でさえ溶解性を留めている。それほど過激でない条件は、収量を不必要に減少させる。
SDS−PAGEによれば、種々のエンドウ豆タンパク質の分子量は、高分子量画分中においては100〜600kDであり、中分子量画分中においては約14〜97kDである。そして、中分子量画分においては20kDのタンパク質が最大量であり、36.5〜97kDはあまりなく、他のバンドは一般的に無視しうる。
得られた中分子量画分の製品は以下の特性を有していた。
最大1%のデンプン
最大1%の蔗糖
最大1%の粗繊維
約4.3の等電点
4.0乃至6.0のpH値
1:4:10〜23の乳化能力(上記乳化能力の測定による)
溶解度:15〜70%(pH値によって室温での水中および熱水中に)
水結合能力:1:4乃至1:5(試験方法は上記を参照)
得られた20〜97kDの分子量を有するエンドウ豆タンパク質画分のアミノ酸組成は以下のとおりであった:
Ala(アラニン) 3.7−4.2
Arg(アルギニン) 7.1−7.3
Asp(アスパラギン酸) 10.1−10.2
Cys(シスチン) 0.9−1.0
Glu(グルタミン酸) 14.2−14.7
Gly(グリシン) 3.5−3.9
His(ヒスチジン) 2.0−2.2
Ile(イソロイシン) 4.1−4.6
Leu(ロイシン) 7.7−8.1
Met(メチオニン) 0.9−1.2
Phe(フェニルアラニン) 5.0−5.5
Pro(プロリン) 3.9−4.1
Ser(セリン) 4.2−4.6
Thr(スレオニン) 3.3−3.6
Try(トリプトファン) 0.8−1.0
Tyr(チロシン) 4.0−4.2
Val(バリン) 4.5−5.4
Lys(リジン) 6.3−7.6
必須アミノ酸には下線を付した。必須アミノ酸の全含有量は32.6%乃至36.8%である。乾燥物質におけるアミノ酸の合計量は87.1%であり、OS中では82.2%であり、乾燥物質中の粗タンパク質(N6.25)は85.6%である。変動は天然製品に典型的なものである。本エンドウ豆タンパク質は、既成の食品を製造するために特に適したタンパク質を提供する。
インゲン豆(Ackerbohnen):
インゲン豆についても、分離はエンドウ豆と同様に行われる。ただし、pHは4.2〜5.3で行うことにより、エンドウ豆と同様の中分子量を有する画分が沈殿する。これは2つの主タンパク質画分の等電点(pH5.5)と(pH4.8)に接近している。こうして得られた中分子量画分は、20kD〜116kDの分子量を有し、約36kDおよび約51kDが最大である(さらに66kD、116kDと、薄い21kDおよび23kDのバンドがある)。
これにより得られた20〜116kDの分子量を有する前記インゲン豆タンパク質画分のアミノ酸組成は以下のとおりであった:
Ala(アラニン) 3.0
Arg(アルギニン) 9.5
Asp(アスパラギン酸) 11.0
Cys(シスチン) 1.0
Glu(グルタミン酸) 16.1
Gly(グリシン) 3.3
His(ヒスチジン) 2.9
Ile(イソロイシン) 4.7
Leu(ロイシン) 7.9
Met(メチオニン) 0.4
Phe(フェニルアラニン) 5.1
Pro(プロリン) 6.4
Ser(セリン) 4.3
Thr(スレオニン) 3.2
Try(トリプトファン) 0.8
Tyr(チロシン) 4.7
Val(バリン) 4.6
Lys(リジン) 5.7
必須アミノ酸には下線を引いた。必須アミノ酸の全含有量は32.4%であった。
エンドウ豆タンパク質の製造
50kgの皮をとったエンドウ豆(品種 Pisum sativum L.の商品)をミル中で押し潰し、pH6.0〜8.0で0.5時間浸漬した。次いで、十分に水を含んだ基部をデカンター中で搾ることにより、エンドウ豆タンパク質を含有する溶液を得た。このエンドウ豆タンパク質を含有する溶液のpHを5.5に調整し、沈殿したタンパク質をスラッジ分離機中のかすタンパク質として分離した。次いで、中分子量のタンパク質画分を沈殿させるため、上澄み液を80℃に加熱し、pHを5.0に調整した。こうして沈殿したタンパク質画分は、デカンター中において分離された。得られた画分を洗浄し、2.5kgのかすタンパク質と5kgの中分子量タンパク質が得られた。どちらのタンパク質も、約7%の残留水分含量を有する明るいパウダー状のものであった。
インゲン豆タンパク質の製造
インゲン豆からのタンパク質は、エンドウ豆からのタンパク質と同じ方法で製造される。本方法で製造されたインゲン豆タンパク質は、20kD〜116kDの範囲の中分子量で、約51と約36kDに最大量を有するものであった。得られたタンパク質は、カゼインなどの牛乳タンパク質と同様の機能性を有しており、同様の方法で使用しうるものであった。
エンドウ豆タンパク質画分の非アレルゲン性サラダドレッシングにおける乳化剤としての使用
菜種油43.2%を、塩卵黄10%、水34.08%、エンドウ豆タンパク質6.00%、NaCl1.15%、砂糖7.2%、ジャガイモ繊維0.5%、パプリカ0.03%、カロチン0.01%、白胡椒0.05%、10%スピリットビネガー7.14%、ホットマスタード0.64%と混ぜ合わせた。得られたものは、濃化剤および乳化剤として通常用いられているデンプンタンパク質を使用していないことから、非アレルゲン性のサラダドレッシングであった。このドレッシングの乳化安定性および保存性は良好であり、またその味は何らの不満もないものであった。
インゲン豆タンパク質画分の非アレルゲン性トマトケチャップにおける乳化剤としての使用
二重濃縮トマトピューレ30%、水35.4%、10%スピリットビネガー9.5%、砂糖19.00%、塩2.3%、エンドウ豆タンパク質2.5%、ジャガイモ繊維0.5%、クエン酸0.8%を混合した。こうして得られたものは、通常用いられている小麦デンプンが置き換えられた(グルテンに対するアレルギー性の人に対し)心配のないものであった。
炭水化物の少ないヌードル生地
全卵150g、エンドウ豆タンパク質400g、クラスタマメ粉5g、水100g、ジャガイモ繊維60g、塩6gをこね合わせた。これによりヌードル生地が得られた。次いで、このヌードル生地をヌードルに形成し、乾燥した。得られたものは、炭水化物の含有量の少ない、特に吸収速度の速い炭水化物の量の少ない、糖尿病患者の体重低減に適した製品であった。
富タンパク質ニンジンクリームスープ
ニンジン300g、ジャガイモ200g、ネギ40g、パセリ15g、水500g、エンドウ豆タンパク質100g、ライムジュース10g、牛乳250g、サワークリーム100g、黒胡椒2g、塩17gを混合し、1534gのスープとした。このスープは、タンパク質に富んだ強化飲食物に理想的なものである。
コーヒークレーマー(クリーム代用品)
水82.7%、ココナツオイル10%、砂糖5%、水溶性エンドウ豆タンパク質2.25%、キサンタン0.05%を適当に攪拌した。これにより、牛乳タンパク質およびラクトースにアレルギー性の人に対するクリーム代用品、特にコーヒークレーマーとして用いることができる中性の味のクリーム様液体が得られた。
ビーフパティ
低脂肪ビーフ85%、水10.65%、エンドウ豆タンパク質3%、塩1.2%、黒胡椒0.15%を混練し、ミートボールを作った。ここでエンドウ豆タンパク質を水保留のため、生地の改善のため、および増量剤として用いた。
本発明を、選択された例により説明してきたが、当業者であれば特許請求の範囲において可能な多種多様な変更を確実に認識できるものである。これら全ての変更もまた本発明の保護の観点から保護される。

Claims (16)

  1. 果汁を取得し;
    マメ科植物タンパク質を凝固させ;
    大部分が14kDより大きく600kDまでの分子量を有するマメ科植物タンパク質画分を分離し;
    必要に応じ、該凝固マメ科植物タンパク質画分を水洗し;
    必要に応じ、該マメ科植物タンパク質画分を乾燥する
    ことを特徴とする14より大きい分子量を有する凝固されたマメ科植物タンパク質画分を得る方法。
  2. 大部分が116kDより大きく約600kDまでの分子量を有する高分子量マメ科植物タンパク質画分を分離し、
    該高分子量マメ科植物タンパク質画分を分離することによって得られた溶液から、14〜120kDの分子量を有し、その分子量分布の大部分が20〜66kDの間の分子量を有する中分子量マメ科植物タンパク質画分の中分子量凝固マメ科植物タンパク質画分を分離し;
    必要に応じ、前記凝固マメ科植物タンパク質画分を水洗し;
    必要に応じ、該マメ科植物タンパク質画分を乾燥する
    ことにより、請求項1に記載のマメ科植物タンパク質画分を分画することを含む、凝固マメ科植物タンパク質画分を得る方法。
  3. 等電点近傍のpH値に果汁のpHを調整することにより、その大部分が116kDより大きく約600kDまでの分子量を有する高分子量マメ科植物タンパク質画分を沈殿し、
    この方法により沈殿された画分を機械的に分離し、
    高分子量マメ科植物タンパク質画分を分離した後に得られた溶液を、pH3〜6、60〜90℃、好ましくは65〜80℃で処理することにより、温暖な状態下で、中分子量マメ科植物タンパク質画分を沈殿させ、
    約14〜120kDの間の分子量を有し、その大部分の分子量分布が20〜66kDの間の分子量を有する、中分子量凝固マメ科植物タンパク質画分を機械的に分離する
    ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 果汁の生来のpH値のままとし、温度を室温から40℃までの温度に調整することにより、大部分が116kDより大きく約600kDまでの分子量を有する高分子量マメ科植物タンパク質画分を沈殿させ、
    このようにして沈殿された画分を機械的に分離し、
    高分子量マメ科植物タンパク質画分を分離した後に得られた溶液を、pH3〜6、60〜90℃、好ましくは70〜80℃で処理することにより、温暖な状態下で、中分子量マメ科植物タンパク質画分を沈殿させ、
    約14〜97kDの間の分子量を有し、その大部分の分子量分布が20〜66kDの間の分子量を有する、中分子量凝固マメ科植物タンパク質画分を機械的に分離する
    ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
  5. 前記洗浄が、好ましい沈殿温度である80℃までの温度の水、好ましくは室温の水により行われることを特徴とする前記請求項いずれか一項に記載の方法。
  6. 前記洗浄が、等電点の範囲内のpH値で行われることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 前記機械的分離がデカンテーターを用いて行われることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記分離工程が、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、SOのような還元剤を加えるような酸化抑制条件下、保護ガス下で、かつ気密性のプラントで行われることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記マメ科植物タンパク質が、豆果タンパク質、エンドウ豆タンパク質、インゲン豆タンパク質、ルピナスタンパク質、レンズマメタンパク質などであることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  10. 請求項1〜9のいずれかの方法により得ることのできる、14kDより大きく600kD以下の分子量を有する、凝固光輝性タンパク質画分。
  11. 約14〜97kDの分子量であって、その分子量分布の大部分が20〜66kDの間にあり、2〜80%の水への溶解性を有することを特徴とする、請求項2〜9のいずれかの方法により得ることのできる、14〜116kDの中分子量を有する凝固マメ科植物タンパク質画分。
  12. マメ科植物タンパク質画分が、次のパラメーター:
    pH:4.0〜5.5、好ましくは4.1〜5.4
    等電点:4.3
    分子量:14〜97kDで、20/22kDおよび40kDのタンパク質を高含量で有する(SDS−PAGE)
    を有するエンドウ豆タンパク質画分であることを特徴とする、請求項11に記載のマメ科植物タンパク質画分。
  13. マメ科植物タンパク質画分が、次のパラメーター:
    pH:4.0〜5.5、好ましくは4.1〜5.4
    等電点:4.8〜5.4
    分子量:20〜116kDで、36kDおよび51kDのタンパク質を高含量で有する(SDS−PAGE)
    を有するインゲン豆タンパク質画分であることを特徴とする、請求項11に記載のマメ科植物タンパク質画分。
  14. マメ科植物タンパク質画分が、次のパラメーター:
    pH:4.0〜5.5、好ましくは4.1〜5.4
    分子量:116〜約600kD(SDS−PAGE)
    を有するインゲン豆タンパク質凝固物であることを特徴とする、請求項1に記載のマメ科植物タンパク質画分。
  15. マメ科植物タンパク質画分が、次のパラメーター:
    pH:4.0〜5.5、好ましくは4.1〜5.4
    分子量:97〜約600kD(SDS−PAGE)
    を有するエンドウ豆タンパク質凝固物であることを特徴とする、請求項1に記載のマメ科植物タンパク質画分。
  16. 前記請求項のいずれか一項に記載のマメ科植物タンパク質画分の、食品、食品添加物、医薬品添加物、動物の餌としての、化粧品中での、工業用タンパク質としての、接着剤としての使用。
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