JP2016172866A - インクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的安価な金属材料としてアルミニウムに着目し、高い金属鏡面光沢を有するインク組成物を含むインクセットを構成することにより、印刷物上に金属光沢を有する塗膜を形成することが可能なインクセットを提供することを目的とする。また、2液型の光硬化型インク組成物において、保存中のゲル化を防止し、保存安定性に優れたインクセットを提供することを目的とする。
【解決手段】金属顔料を含むメタリックインク組成物と、有彩色顔料を含む有彩色インク組成物、黒色顔料を含む黒色インク組成物、白色顔料を含む白色インク組成物からなる群から選択された少なくとも1種以上の光硬化型インク組成物と、を備えたインクセット、並びに金属顔料を含有するメタリックインク組成物と、色材を含有しない光硬化型インク組成物Aと、有彩色顔料、黒色顔料、白色顔料からなる群から選択された少なくとも1種以上の色材を含有する光硬化型インク組成物Bと、を備えたインクセット。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクセット、インクジェット記録方法及び記録物に関し、特に、金属光沢を有する塗膜の形成が可能なインクセット、インクジェット記録方法及び記録物に関する。
従来、印刷物上に金属光沢を有する塗膜を形成するためには、真鍮、アルミニウム微粒子等から作成された金粉、銀粉を顔料に用いた印刷インキや金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写方式等が用いられている。
しかしながら、金粉、銀粉を用いた印刷インキによる塗膜は、使用される金属粉の平均粒子径が10μmから30μmと大きく、つや消し調の金属光沢は得られるが、鏡面光沢を得ることは難しいものであった。また、金属箔を使用する箔押し又は熱転写では、印刷媒体に接着剤を塗布し、その上に平滑な金属箔を押し付け、記録媒体と金属箔を密着させ加熱し、金属箔と記録媒体を熱融着させるといった方法をとる。そのため、比較的良好な光沢は得られるが、製造工程が多くなり製造工程中で圧力や熱が加わるため、記録媒体に関して、熱や変形に強い記録媒体などに限られるという制限があった。
近年、印刷におけるインクジェットの応用例が数多く見受けられ、その中の一つの応用例として、メタリック印刷がある。例えば、特開2002−179960号公報には、プラスチックの球形粒子表面に金属皮膜を形成し、その顔料を含むインク組成物をインクジェット印刷にて印字処理するという技術が開示されている(特許文献1)。しかしながら、高い金属光沢を得るためには、その球体を変形させ扁平にして、表面を平滑にする必要があり、この技術ではローラーによるプレス処理と加熱処理を同時に行う必要があるとされている。従って、この点で装置や製造工程が複雑になることが避けられず、また記録媒体も制限を受けてしまう。
また、特開2003−292836号公報には、金、銀等の貴金属コロイドを分散したインク組成物を用いる技術も開示されている(特許文献2及び3)。しかしながら、貴金属コロイドは分散安定性を優先して粒子径を数nm〜数十nmまで小さくすると、プラズモン吸収に由来する発色が発現し、インク組成物として金属光沢は得られない。この場合には、塗膜を乾燥した後、加熱処理することでコロイド粒子を融着させることにより良好な金属光沢が得られる。加えて、これら技術では金属光沢が得られても、20度、60度、85度鏡面光沢度がそれぞれ200、200、100を超えるような高い金属の鏡面光沢をムラのない均一な面で得ることは困難であった。また、金属光沢を優先し粒子径を大きくした場合には、分散安定性が低下し、凝集や沈降の問題が避けられなくなり、インク組成物の保存寿命が著しく低下する。また、自明のことながら、貴金属を材料とすることはインク組成物のコストを大きく押し上げるため、付加価値の高い用途にしか使用できず、コスト面で不利である。
特開2002−179960号公報 特開2003−292836号公報 特開2003−306625号公報
本発明は、比較的安価な金属材料としてアルミニウムに着目し、高い金属鏡面光沢を有するインク組成物を含むインクセットを構成することにより、印刷物上に金属光沢を有する塗膜を形成することが可能なインクセットを提供することを目的とする。更に光硬化型インク組成物を用いて印刷を行うことで任意の色調のメタリック印刷が可能となる。また、本発明の付随的な目的としては、2液型の光硬化型インク組成物において、保存中のゲル化を防止し、保存安定性に優れたインクセットを提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行ったところ、特定の金属顔料を用いた金属顔料分散液、インク組成物、インクジェット記録方法及び記録物により、従来は不可能であった高い鏡面光沢度を有する印刷物が得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、以下の発明を提供するものである。
1.金属顔料を含むメタリックインク組成物と、
有彩色インク組成物、黒色インク組成物、白色インク組成物からなる群から選択された少なくとも1種以上の光硬化型インク組成物と、
を備えたインクセット。
2.金属顔料を含有するメタリックインク組成物と、
色材を含有しない光硬化型インク組成物Aと、
有彩色顔料、黒色顔料、白色顔料からなる群から選択された少なくとも1種以上の色材を含有する光硬化型インク組成物Bと、
を備えたインクセット。
3.前記金属顔料が、平板状粒子であり、該平板状粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZとした場合、該平板状粒子のX−Y平面の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50が0.5〜3μmであり、かつ、R50/Z>5の条件を満たす金属顔料である、前記1又は2に記載のインクセット。
4.前記光硬化型インク組成物が、少なくとも色材、光重合開始剤、重合性化合物を含有する、前記1に記載のインクセット。
5.前記光硬化型インク組成物Aが、非水系であり、少なくとも、光重合開始剤と、重合性化合物と、を含有する、前記2に記載のインクセット。
6.前記光硬化型インク組成物Bが、非水系であり、少なくとも、重合性化合物を含有し、光重合開始剤を含有しない、前記2に記載のインクセット。
7.前記光重合開始剤が、ビスアシルフォスフィンオキサイド、モノアシルフォスフィンオキサイド、α−アミノケトン、α−ヒドロキシケトンからなる群から選択された少なくとも2種以上である、前記4又は5に記載のインクセット。
8.前記重合性化合物が、N−ビニル化合物、エチレングリコールモノアリルエーテル、樹枝状ポリマーからなる群から選択された少なくとも1種以上である、前記4〜7のいずれか1に記載のインクセット。
9.前記樹枝状ポリマーが、デンドリマー及び/又はハイパーブランチポリマーである、前記8に記載のインクセット。
10.前記1〜9のいずれか1に記載のインクセットを収容した液体収容器。
11.前記10記載の液体収容器を備える液体噴射装置。
12.インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法において、
前記1に記載のインクセットを用いて画像を形成する、インクジェット記録方法。
13.前記メタリックインク組成物と、
前記有彩色インク組成物、前記黒色インク組成物、前記白色インク組成物からなる群から選択された少なくとも1種以上と、
を同時に吐出して任意の色調の画像を形成する、前記12に記載のインクジェット記録方法。
14.前記メタリックインク組成物を用いて画像を形成した後に、前記有彩色インク組成物を用いて任意の色調の画像を形成し、次いで前記黒色インク組成物及び/又は白色インク組成物を吐出し、該吐出と同時に又は吐出した後に、形成された画像に対して硬化処理を行う、前記12に記載のインクジェット記録方法。
15.前記メタリックインク組成物を吐出して画像を形成した後に、前記有彩色インク組成物、前記黒色インク組成物、前記白色インク組成物を同時に吐出し、該吐出と同時に又は吐出した後に、形成された画像に対して硬化処理を行う、前記12に記載のインクジェット記録方法。
16.前記メタリックインク組成物を用いて画像を形成した後に、該画像に対して乾燥処理を行い、前記有彩色インク組成物、前記黒色インク組成物、前記白色インク組成物を吐出して任意の色調の画像を形成した後、該画像に対して硬化処理を行う、前記12に記載のインクジェット記録方法。
17.前記硬化処理が、紫外線を照射することにより行われる、前記15又は16に記載のインクジェット記録方法。
18.インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法において、
前記2に記載のインクセットを用いて画像を形成する、インクジェット記録方法。
19.前記メタリックインク組成物と、
前記光硬化型インク組成物A及び/又は前記光硬化型インク組成物Bと、
を同時に吐出し、該吐出と同時に又は吐出した後に、形成された画像に対して硬化処理を行って任意の色調の画像を形成する、前記18に記載のインクジェット記録方法。
20.前記メタリックインク組成物を吐出して画像を形成した後に、前記光硬化型インク組成物A及び/又は前記光硬化型インク組成物Bを吐出し、該吐出と同時に又は吐出した後に、形成された画像に対して硬化処理を行って任意の色調の画像を形成する、前記18に記載のインクジェット記録方法。
21.前記光硬化型インク組成物A及び前記白色顔料を含有する光硬化型インク組成物Bを用いて画像を形成した後に、光照射によって硬化処理を行い、次いで、(i)前記メタリックインク組成物と、(ii)前記光硬化型インク組成物A及び/又は(iii)前記有彩色顔料又は前記黒色顔料を含有する光硬化型インク組成物Bと、を用いて画像を形成する、前記18に記載のインクジェット記録方法。
22.前記12〜21のいずれか1に記載のインクジェット記録方法により記録された、記録物。
本発明のインクセット、インクジェット記録方法及び記録物によれば、金属顔料を含むメタリックインク組成物を用いることで、記録媒体上に、高い金属光沢(いわゆるメタリック光沢)を有する画像の形成が可能となり、更に、有彩色インク組成物、黒色インク組成物、白色インク組成物とを組み合わせてインクセットを構成することにより、従来のインクセットでは実現できなかった画像、即ち任意の色調を有し、金属光沢を有する画像を形成することができる。
[実施形態1のインクセット]
本実施形態のインクセットは、既述のとおり、金属顔料を含むメタリックインク組成物と、有彩色インク組成物、黒色インク組成物、白色インク組成物からなる群から選択された少なくとも1種以上の光硬化型インク組成物と、を備えている。これにより、有彩色、黒色及び白色の色調にメタリック調の金属光沢が付加された画像を形成することが可能となる。
前記金属顔料(メタリック顔料ともいう)は、平板状粒子であり、該平板状粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZとした場合、該平板状粒子のX−Y平面の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50が0.5〜3μmであり、かつ、R50/Z>5の条件を満たす金属顔料であることが好ましい。
「平板状粒子」とは、略平坦な面(X−Y平面)を有し、かつ、厚み(Z)が略均一である粒子をいう。平板状粒子は金属蒸着膜を破砕して作成されたものであるため、略平坦な面と、略均一な厚みの金属粒子を得ることができる。従って、この平板状粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZと定義することができる。
「円相当径」は、メタリック顔料の平板状粒子の略平坦な面(X−Y平面)を、当該メタリック顔料の粒子の投影面積と同じ投影面積を持つ円と想定したときの当該円の直径である。例えば、メタリック顔料の平板粒子の略平坦な面(X−Y平面)が多角形である場合、その多角形の投影面を円に変換して得られた当該円の直径を、そのメタリック顔料の平板粒子の円相当径という。
前記平板状粒子のX−Y平面の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50は金属光沢、印字安定性の観点から0.5〜3μmであることがより好ましく、0.75〜2μmであることがさらに好ましい。
また、前記円相当径の50%平均粒子径R50と厚みZとの関係においては高い金属光沢を確保する観点からは、R50/Z>5であることが好ましい。
前記メタリック顔料は、コストの観点及び金属光沢を確保する観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが好ましい。アルミニウム合金を用いる場合、アルミニウムに添加されうる別の金属元素または非金属元素としては、金属光沢を有するものであれば特に限定されるものではないが、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等を挙げることができ、これらの単体又はこれらの合金及びこれらの混合物の少なくとも一種が好適に用いられる。
前記メタリック顔料の製造方法は、例えば、シート状基材面に剥離用樹脂層と金属又は金属化合物層とが順次積層された構造からなる複合化顔料原体の前記金属又は金属化合物層と前記剥離用樹脂層の界面を境界として前記シート状基材より剥離し粉砕し微細化して平板状粒子を得る。そして、得られた平板状粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZとした場合、該平板状粒子のX−Y平面の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50が0.5〜3μmであり、かつ、R50/Z>5の条件を満たすものを分取する。
前記メタリック顔料(平板状粒子)の平面上の長径X、短径Y及び円相当径は、粒子像分析装置を用いて測定することができる。粒子像分析装置としては、例えば、シスメックス株式会社製のフロー式粒子像分析装置FPIA−2100、FPIA−3000、FPIA−3000Sを利用することができる。
前記金属又は金属化合物層は、真空蒸着、イオンプレーティング又はスパッタリング法によって形成されることが好ましい。
前記金属又は金属化合物層の厚さは、20nm以上100nm以下で形成される。これにより、平均厚みが20nm以上100nm以下の顔料が得られる。20nm以上にすることで、反射性、光輝性に優れ、メタリック顔料としての性能が高くなり、100nm以下にすることで、見かけ比重の増加を抑え、メタリック顔料の分散安定性を確保することができる。
前記複合化顔料原体における剥離用樹脂層は、前記金属又は金属化合物層のアンダーコート層であるが、シート状基材面との剥離性を向上させるための剥離性層である。この剥離用樹脂層に用いる樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、ポリビニルブチラール、アクリル酸重合体又は変性ナイロン樹脂が好ましい。
上記の一種又は二種以上の混合物の溶液を記録媒体に塗布し、乾燥等を施して層が形成される。塗布後は粘度調節剤等の添加剤を含有させることができる。
前記剥離用樹脂層の塗布は、一般的に用いられているグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布、ディップ塗布、スピンコート法等により形成される。塗布・乾燥後、必要であれば、カレンダー処理により、表面の平滑化を行う。
剥離用樹脂層の厚さは、特に限定されないが、0.5〜50μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。0.5μm未満では分散樹脂としての量が不足し、50μmを超えるとロール化した場合、顔料層と界面で剥離しやすいものとなってしまう。
前記シート状基材としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、66ナイロン、6ナイロン等のポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセテートフィルム、ポリイミドフィルム等の離型性フィルムが挙げられる。好ましいシート状基材としては、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体である。
これらのシート状基材の厚さは、特に限定されないが、10〜150μmが好ましい。10μm以上であれば、工程等で取り扱い性に問題がなく、150μm以下であれば、柔軟性に富み、ロール化、剥離等に問題がない。
また、前記金属又は金属化合物層は、保護層で挟まれていてもよい。該保護層としては、酸化ケイ素層、保護用樹脂層が挙げられる。
酸化ケイ素層は、酸化ケイ素を含有する層であれば特に制限されるものではないが、ゾル−ゲル法によって、テトラアルコキシシラン等のシリコンアルコキシド又はその重合体から形成されることが好ましい。
上記シリコンアルコキシド又はその重合体を溶解したアルコール溶液を塗布し、加熱焼成することにより、酸化ケイ素層の塗膜を形成する。
前記保護用樹脂層としては、分散媒に溶解しない樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドまたはセルロース誘導体等が挙げられるが、ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体から形成されることが好ましい。
上記樹脂一種または二種以上の混合物の水溶液を塗布し、乾燥等を施した層が形成される。塗布液には粘度調節剤等の添加剤を含有させることができる。
上記酸化ケイ素および樹脂の塗布は、上記剥離用樹脂層の塗布と同様の手法により行われる。
上記保護層の厚さは、特に限定されないが、50〜150nmの範囲が好ましい。50nm未満では機械的強度が不足であり、150nmを超えると強度が高くなりすぎるため粉砕・分散が困難となり、また金属又は金属化合物層との界面で剥離してしまう場合がある。
また、前記「保護層」と「金属又は金属化合物層」との間に色材層を有していてもよい。
色材層は、任意の着色複合顔料を得るために導入するものであり、本発明に使用するメタリック顔料の金属光沢、光輝性に加え、任意の色調、色相を付与できる色材を含有できるものであれば特に限定されるものではない。この色材層に用いる色材としては、染料、顔料のいずれでもよい。また、染料、顔料としては、公知のものを適宜使用することができる。
この場合、色材層に用いられる"顔料"とは、一般的な顔料化学の分野で定義される、天然顔料、合成有機顔料、合成無機顔料等を意味し、本発明の"複合化顔料"等の、積層構造に加工されたものとは異なるものである。
この色材層の形成方法としては、特に限定されないが、コーティングにより形成することが好ましい。
また、色材層に用いられる色材が顔料の場合は、色材分散用樹脂をさらに含むことが好ましく、該色材分散用樹脂としては、顔料と色材分散用樹脂と必要に応じてその他の添加剤等を溶媒に分散又は溶解させ、溶液としてスピンコートで均一な液膜を形成した後、乾燥させて樹脂薄膜として作成されることが好ましい。
なお、前記複合化顔料原体の製造において、上記の色材層と保護層の形成がともにコーティングにより行われることが、作業効率上好ましい。
前記複合化顔料原体としては、前記剥離用樹脂層と金属又は金属化合物層との順次積層構造を複数有する層構成も可能である。その際、複数の金属又は金属化合物層からなる積層構造の全体の厚み、即ち、シート状基材とその直上の剥離用樹脂層を除いた、金属又は金属化合物層−剥離用樹脂層−金属又は金属化合物層、又は剥離用樹脂層−金属又は金属化合物層の厚みは5000nm以下であることが好ましい。5000nm以下であると、複合化顔料原体をロール状に丸めた場合でも、ひび割れ、剥離を生じ難く、保存性に優れる。また、顔料化した場合も、光輝性に優れており好ましいものである。
また、シート状基材面の両面に、剥離用樹脂層と金属又は金属化合物層とが順次積層された構造も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記シート状基材からの剥離処理法としては、特に限定されないが、前記複合化顔料原体を液体中に浸漬することによりなされる方法、また液体中に浸漬すると同時に超音波処理を行い、剥離処理と剥離した複合化顔料の粉砕処理を行う方法が好ましい。
上記のようにして得られる顔料は、剥離用樹脂層が保護コロイドの役割を有し、溶剤中での分散処理を行うだけで安定な分散液を得ることが可能である。また、該顔料を用いたインク組成物においては、前記剥離用樹脂層由来の樹脂は紙等の記録媒体に対する接着性を付与する機能も担う。
本実施形態のインクセットに用いられるメタリックインク組成物は、上述したメタリック顔料と、有機溶剤と、樹脂と、を含有するものである。
前記メタリック顔料のインク組成物中の濃度は、0.1〜10.0重量%であることが好ましい。
前記メタリック顔料のインク組成物中の濃度が0.1重量%以上1.5重量%未満の場合、印刷面を十分にカバーしきれないインク量を吐出することでハーフミラー様の光沢面、即ち光沢感は感じられるが、背景も透けて見えるような風合いを印刷可能となり、印刷面をカバーするに十分なインク量を吐出することで高光沢の金属光沢面を形成することができる。そのため、例えば、透明記録媒体においてハーフミラー画を形成する場合や高光沢の金属光沢面を表現する場合に適している。また、前記メタリック顔料のインク組成物中の濃度が1.5重量%以上の場合、金属顔料が印刷面にランダムに配列する為、高光沢は得られず、マット調の金属光沢面を形成することができる。そのため、例えば、透明な記録媒体において遮蔽層を形成する場合に適している。
前記有機溶剤としては、好ましくは極性有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、又はフッ化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はシクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、又はプロピオン酸エチル等)、又はエーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、又はジオキサン等)等を用いることができる。
特に、前記有機溶剤は、常温常圧下で液体であるアルキレングリコールエーテルを1種類以上含むことが好ましい。
アルキレングリコールエーテルは、メチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、ヘキシル、そして2−エチルヘキシルの脂肪族、二重結合を有するアリル並びにフェニルの各基をベースとするエチレングリコール系エーテルとプロピレングリコール系エーテルがあり、無色で臭いも少なく、分子内にエーテル基と水酸基を有しているので、アルコール類とエーテル類の両方の特性を備えた、常温で液体のものである。また、片方の水酸基だけを置換したモノエーテル型と両方の水酸基を置換したジエーテル型があり、これらを複数種組み合わせて用いることができる。
特に、前記有機溶剤は、アルキレングリコールジエーテル、アルキレングリコールモノエーテル、及びラクトンの混合物であることが好ましい。
アルキレングリコールモノエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
アルキレングリコールジエーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
またラクトンとしては、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
このような好適な構成とすることにより、本発明の目的をより一層達成することができる。
前記メタリックインク組成物に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、繊維素系樹脂(例えば、セルロースアセテートブチレート、ヒドロキシプロピルセルロース)、ポリビニルブチラール、ポリアクリルポリオール、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等が挙げられる。
また、非水系のエマルジョン型ポリマー微粒子(NAD=Non Aqueous Dispersion)も樹脂として用いることができる。これはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂等の微粒子が有機溶剤中に安定に分散している分散液のことである。例えば、ポリウレタン樹脂では、三洋化成工業社製のサンプレンIB−501、サンプレンIB−F370等が挙げられ、アクリルポリオール樹脂では、ハリマ化成社製のN−2043−60MEX、N−2043−AF−1等が挙げられる。
樹脂は、記録媒体への顔料の定着性を一層向上させるため、インク組成物中、0.1重量%以上10重量%以下添加することが好ましい。
前記インク組成物は、少なくとも1種類以上のグリセリン、ポリアルキレングリコール、又は糖類を含むことが好ましい。これら1種類以上のグリセリン、ポリアルキレングリコール、又は糖類の合計量は、インク組成物中0.1重量%以上10重量%以下添加されることが好ましい。
このような好ましい構成とすることにより、インクの乾燥を抑え、目詰まりを防止しつつ、インクの吐出を安定化し、記録物の画像品質を良好にすることができる。
ポリアルキレングリコールとしては、主鎖中にエーテル結合の繰り返し構造を有する線状高分子化合物であり、例えば環状エーテルの開環重合等によって製造される。
ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の重合体、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体およびその誘導体等が挙げられる。共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体等のいずれの共重合体も用いることができる。
ポリアルキレングリコールの好ましい具体例として、下式で表されるものが挙げられる。
HO−(Cn2nO)m−H
(上記式中、nは、1〜5の整数を表し、mは、1〜100の整数を表す)
なお、上記式中、(Cn2nO)mは、整数値nの範囲内において、一の定数または二種以上の数の組み合わせであってよい。例えば、nが3の場合は(C36O)mであり、nが1と4との組み合わせの場合は(CH2O−C48O)mである。また、整数値mは、その範囲内において、一の定数または二種以上の数の組み合わせであってよい。例えば、上記の例において、mが20と40との組み合わせの場合は(CH2O)20−(C24O)40であり、mが10と30の組み合わせの場合は(CH2O)10−(C48O)30である。
さらに、整数値nとmとは上記の範囲内で任意に組み合わせてもよい。
糖類としては、ペントース、ヘキトース、ヘプトース、オクトース等の単糖類、あるいは二糖類、三糖類、四糖類といった多糖類、またはこれらの誘導体である糖アルコール、デオキシ酸といった還元誘導体、アルドン酸、ウロン酸といった酸化誘導体、グリコセエンといった脱水誘導体、アミノ酸、チオ糖等が挙げられる。多糖類とは広義の糖を指し、アルギン酸やデキストリン、セルロース等の自然界に広く存在する物質も含む。
前記メタリックインク組成物は、少なくとも1種類以上のアセチレングリコール系界面活性剤及び/又はシリコーン系界面活性剤を含むことが好ましい。該界面活性剤は、インク組成物中の顔料の含有量に対して、0.01重量%以上10重量%以下添加されることが好ましい。
このような好適な構成とすることにより、前記メタリックインク組成物の記録媒体へのぬれ性が改善され、速やかな定着性を得ることがきる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、サーフィノール(登録商標)465(商標)、サーフィノール104(商標)(以上商品名、Air Products and Chemicals, Inc. 社製)、オルフィン(登録商標)STG(商標)、オルフィンE1010(商標)(以上商品名、日信化学社製)等が好適に挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることが好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3530、BYK−UV3570(ビックケミージャパン株式会社)が挙げられる。
前記メタリックインク組成物は、公知の慣用方法によって調製することができる。例えば、最初に、前述したメタリック顔料、分散剤、及び前記液媒を混合した後、ボールミル、ビーズミル、超音波、又はジェットミル等で顔料分散液を調製し、所望のインク特性を有するように調整する。続いて、バインダー樹脂、前記液媒、及びその他の添加剤(例えば、分散助剤や粘度調整剤)を撹拌下に加えて顔料インク組成物を得ることができる。
その他、複合化顔料原体を、一旦液媒中で超音波処理して複合化顔料分散液とした後、必要なインク用液媒と混合しても良く、また、複合化顔料原体を直接インク用液媒中で超音波処理してそのままインク組成物とすることもできる。
前記メタリックインク組成物の物性は特に限定されるものではないが、例えば、その表面張力は好ましくは20〜50mN/mである。表面張力が20mN/m未満になると、インク組成物がインクジェット記録用プリンタヘッドの表面に濡れ広がるか、又は滲み出してしまい、インク滴の吐出が困難になることがあり、表面張力が50mN/mを越えると、記録媒体の表面において濡れ広がらず、良好な印刷ができないことがある。
次に、本実施形態のインクセットに用いられる光硬化型インク組成物について説明する。本実施形態にインクセットに用いられる光硬化型インク組成物は、有彩色インク組成物、黒色インク組成物、白色インク組成物からなる群から選択された少なくとも1種以上を備える。
有彩色インク組成物は有彩色顔料を含むインク組成物である。「有彩色」とは、白から灰色を経て黒に至る系列の色(無彩色)以外のすべての色をいう。有彩色顔料としては、耐光性、耐候性、耐ガス性等の保存安定性の観点から有機顔料であることが好ましい。
具体的には、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(たとえば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等が挙げられる。上記顔料は1種単独でも、2種以上併用して用いることもできる。
より具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、2、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、16、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、73、74、75、81、83(ジスアゾイエローHR)、93、94、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、128、129、138、139、150、153、154,155、180、185、213、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、7、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、101(べんがら)、104、105、106、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、209、219、C.I.ピグメントヴァイオレット19、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、22、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等が使用できる。等が使用できる。
なお、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水に不溶であればいずれも使用できる。
黒色インク組成物は黒色顔料を含むインク組成物である。黒色顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられるがインクジェット用としては比重が比較的低く水中で沈降しにくいカーボンブラックが好ましい。これらは1種又は2種の混合物として用いてもよい。
白色インク組成物は白色顔料を含むインク組成物である。白色顔料としては、二酸化チタン、二酸化ジルコニア等の第IV族元素酸化物が挙げられる。その他にも、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸バリウム、シリカ、アルミナ、カオリン、クレー、タルク、白土、水酸化アルミ、炭酸マグネシウム、白色中空樹脂エマルジョン等が挙げられ、好ましくはこれらからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物である。
白色中空樹脂エマルジョンとは、中空ポリマー微粒子を含有する油性分散液をいう。
前記白色顔料の一次粒子径は、白色度の観点から、好ましくは1μm以下である。
ここで、「一次粒子径」とは、単結晶又はそれに近い結晶子が集まって形成している粒子の大きさをいう。顔料の一次粒子径の測定は、電子顕微鏡法による。これは電子顕微鏡写真から顔料粒子の大きさを計測するもので、顔料を有機溶媒に分散し、支持膜に固定して透過型電子顕微鏡写真から画像処理し計測することにより、より信頼性がある値を求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その一次粒子の面積と等しい円の直径を算術的に求めそれを一次粒子径とし、一定の視野から50個以上の顔料粒子をランダムに選択して平均値を求める。他の測定法でも同等の信頼性が得られれば差し支えないが、数値に実質的な差がある場合は上記の方法で求めた値を採用する。
前記有彩色インク組成物、黒色インク組成物は適宜決定されてよいが、インク組成物中、インク組成物中、0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜12重量%である。白色インク組成物の顔料の含有量は、白色度の観点から、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは5.0重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、20重量%以下である。
前記有彩色インク組成物、黒色インク組成物及び白色インク組成物の顔料の含有量は、色濃度の観点から、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、更に好ましくは3.0重量%以上10.0重量%以下である。
本実施形態のインクセットに使用される光硬化型インク組成物は、色材として顔料を使用するとともに、該顔料を分散するための分散剤を含有するものが好ましい。分散剤は、この種の顔料インクに使用可能であるものを特に制限なく用いることができ、例えば、カチオン性分散剤、アニオン性分散剤、ノニオン性分散剤や界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性分散剤の例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等が挙げられる。
ノニオン性分散剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
分散剤としての界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等のノニオン性界面活性剤、が挙げられる。特に、顔料の分散安定性を高める観点から、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を用いることが好ましい。
また、その他の分散剤として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンアミン又はソルビタンエステルを用いることができる。ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン(C2H4N)n−(PO)x−(EO)y−OH(上記式中、n、x及びyは、それぞれ1以上の整数を意味し、POはプロピレンオキサイドを意味し、EOはエチレンオキサイドを意味する。)の具体例としては、例えば、ディスコール(Discole)N−503、N−506、N−509、N−512、N−515、N−518、N−520等を挙げることができる。
本実施形態のインクセットに使用される光硬化型インク組成物は、少なくとも上述した色材のほか、光重合開始剤、重合性化合物を含有することが好ましい。
前記光重合開始剤としては、ビスアシルフォスフィンオキサイド、モノアシルフォスフィンオキサイド、α−アミノケトン、α−ヒドロキシケトンからなる群から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
前記ビスアシルフォスフィンオキサイド、モノアシルフォスフィンオキサイド、α−アミノケトン、α−ヒドロキシケトンは、何れも365nm以上の波長の光を吸収することができる。従って、光重合開始剤としてこれらの化合物を1種以上を選択することにより、より透過性の高い395nm以上の紫外光に適した光硬化性インク組成物を得ることができる。特に、ビスアシルフォスフィンオキサイド及びモノアシルフォスフィンオキサイドは、α−アミノケトン及びα−ヒドロキシケトンよりも長波長域に吸収がある。
ビスアシルフォスフィンオキサイドとしては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド等が挙げられ、これは、Irgacure819(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)の商品名で入手可能である。
モノアシルフォスフィンオキサイドとしては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキシド等が挙げられ、これは、Darocure TPO(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)の商品名で入手可能である。
α−アミノケトンとしては、例えば、2−ベンジル2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられ、これは、Irgacure369(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)の商品名で入手可能である。
α−ヒドロキシケトンとしては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられ、これは、Darocur1173、Irgacure184、127(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)の商品名で入手可能である。
本実施形態のインクセットに使用される光硬化型インク組成物は、上述した光重合開始剤を少なくとも2種以上を含むこともできる。光重合開始剤として、上述した光重合開始剤を少なくとも2種以上を含んでいれば、上記以外の他の光重合開始剤を併用して用いてもよい。
併用して用いることができる他の光重合開始剤としては、代表的なものとして、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、ベンジル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ポリ塩化ポリフェニル、ヘキサクロロベンゼン等が挙げられる。好ましくは、イソブチルペンゾインエーテル、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムである。
また、Vicure 10、30(Stauffer Chemical社製)、Irgacure 127、184、500、651、2959、907、369、379、754、1700、1800、1850、819、4265、OXE01、Darocure 1173、ITX、TPO(チバスペシャルティ ケミカルズ社製)、Quantacure CTX、ITX(Aceto Chemical社製)、KayacureDETX−S(日本化薬社製)、ESACURE KIP150(Lamberti社製)、Lucirin TPO(BASF社製)の商品名で入手可能な光重合開始剤も使用することができる。
前記重合性化合物は、保存安定性の観点から、N−ビニル化合物、エチレングリコールモノアリルエーテル、樹枝状ポリマー(デンドリティックポリマー)からなる群から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
前記インク組成物A及び前記インク組成物Bは、重合性化合物として、アリル化合物、更に好ましくはアリルエーテル化合物、エチレングリコールモノアリルエーテル、トリメリロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルが挙げられ、特に好ましくはエチレングリコールモノアリルエーテル、トリメリロールプロパンジアリルエーテル及び/又はN−ビニル化合物を含むことが好ましい。
エチレングリコールモノアリルエーテル及び/又はN−ビニル化合物は、単官能のラジカル重合性モノマーであり、保存中暗反応により、望まない重合が生じる傾向が低く、使用に当たって好適である。特にエチレングリコールモノアリルエーテル、トリメリロールプロパンジアリルエーテル等のアリルエーテル化合物は、光ラジカル重合開始剤の分解によって生じる炭素ラジカルが存在しても、単独では重合しない特性を有している。
前記N−ビニル化合物としては、硬化性の観点からN−ビニルフォルムアミドであることが好ましい。
前記N−ビニル化合物、エチレングリコールモノアリルエーテルの添加量は、50〜95重量%であることが好ましい。
前記樹枝状ポリマー(デンドリティックポリマー)としては、インク粘度低減の観点から、ハイパーブランチポリマー及び/又はデンドリマーであることが好ましい。
ここで、「ハイパーブランチポリマー」とは、多数の枝からなる樹木状の多分岐高分子のことで、分子構造は必ずしも規則的では無いものをいう。ハイパーブランチポリマーとしては、ジペンタエリスリトールをコアとして官能基を分岐させたハイパーブランチポリマーであることが好ましい。ハイパーブランチポリマーは、大阪有機化学工業社製のSTAR−501、502などが入手可能である。
本発明では、ハイパーブランチポリマーとして、大阪有機化学工業製の「ビスコート #1000」、「STAR−501」を用いた。この「ビスコート #1000」、「STAR−501」は、ジペンタエリスリトールをコアとして官能基を分岐させていったハイパーブランチポリマーであり、「ビスコート #1000」は希釈モノマーとして、エチレングリコールジアクリレートを含有し、粘度273mPa・s、官能基数14(アクリル基)のものであり、「STAR−501」は希釈モノマーとして、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを含有した、粘度:210Pa・s、官能基数20〜99(アクリル基)のものである。どちらも最外にアクリロイル基を有しており、好適に使用可能である。
またデンドリマーは立体規則性が高いため、製造工程数が多くコストが高くなってしまうが、ハイパーブランチポリマーは立体規則性がそれほど高くなく、比較的容易に合成できるのでコスト面で有利である。
また、「デンドリマー」とは、多数の枝からなる樹木状の多分岐高分子の中でも、その分子構造が規則的で欠陥の無い化合物をいい、一般的に用いられている直線状の高分子に比べて、反応性の官能基をその最外面に高密度且つ集中的に配置することが可能である。
前記デンドリティックポリマーの添加量は、1.0〜30.0重量%であることが好ましい。
また、上述した重合性化合物以外のその他の重合性化合物を含んでいてもよい。当該その他の重合性化合物としては、光重合開始剤から生成するラジカルまたはイオンにより重合されるものであれば特に限定ない。このような重合性化合物とは、高分子の基本構造の構成単位となり得る分子をいう。このような重合性化合物は光重合性モノマーとも呼ばれ、単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマーが含まれる。
このような重合性化合物の代表的なものとして、単官能モノマーとしては、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、(2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メトキシジエチレングリコールモノアクリレート、アクロイルモルホリン、メタクリル酸ラウリル、アリルグリコール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸シクロヘキシル、オキセタンメタアクリレート等を挙げることができる。
二官能モノマーとしては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレ−ト、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクリロキシプロパン、ヒドロキシピオペリン酸エステルネオペンチンルグリコールジアクリレート等を挙げることができる。
多官能モノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート、トリメチロールプロパンEO付加物トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO付加物トリアクリレート、グリセリンEO付加物トリアクリレート、グリセリンEO変性トリアクリレート、グリセリンPO付加物トリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレート、フタル酸水素−(2,2,2−トリアクロイルオキシメチル)エチル、ジペンタエリストールポリアクリレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリセリンモノアリルエーテル等を挙げることができる。
光硬化型インク組成物には、重合促進剤が含まれていてもよく、前記重合促進剤としては、重合性官能基を有する微粒子を含有する事が可能である。
重合促進剤としては、特に限定されないが、アミン化合物、チオキサントン、重合性微粒子のいずれか一つ以上を含有することが好ましく、例えば、アミノベンゾエートであるDarocur EHA、EDB(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、その表面に重合性官能基を導入した重合性微粒子等が挙げられる。
重合性官能基を導入した微粒子の重合促進機構は必ずしも明確ではないが、紫外線を吸収し、開裂した光重合開始剤により生成したラジカルが、微粒子表面にトラップされて安定化し、微粒子表面へ導入された重合性官能基及び表面に吸着した重合性化合物と容易に重合反応を開始する事により重合反応を促進するものと推測される。
重合性官能基を有する微粒子とは、特に限定されないが、一般的に体質顔料と称されるもので、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化カルシウム等の無機化合物が例示され、特に、シリカ、アルミナ等の透明なものも好適に使用でき、その中でもシリカが特に好ましい。
また、該微粒子が有する重合性官能基としては、特に限定されず、アクリロイル基、メタクリロイル基等が例示され、さらに、1つ以上の二重結合を有する重合性官能基とすることも可能である。
該微粒子の大きさとしては、特に限定されないが、粒径が10〜200nmのものが好ましい。
前記重合性官能基を有する微粒子の調製方法は、特に限定されないが、テトラエトキシシラン等のシラン化合物のゾルゲル反応によって、水酸基等を多数有するシリカ微粒子を作製し、該水酸基に重合性官能基を付与できるような化合物(シランカップリング剤)と反応させる方法が挙げられる。
前記重合性官能基を有する微粒子の含有量としては、特に限定されず、使用形態、条件、インク組成物の粘度と重合性の関係等に応じて適宜選択されるべきものであるが、インク組成物全量に対し10質量%以下であることが好ましい。
前記重合促進剤の添加量は、0.01〜5.0重量%であることが好ましい。
前記インク組成物A及び/又は前記インク組成物Bは、インク組成物の保存安定性を向上させるために、少なくとも一種類のHALS系熱ラジカル重合禁止剤を含有していてもよい。
HALS系熱ラジカル重合禁止剤としては、好ましくはヒンダード・フェノール化合物又はHALS系化合物であり、ヒンダード・フェノール化合物としては、Irgastab UV−22、HALS系化合物としてはIrgastab UV−10(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が挙げられる。
前記インク組成物A,Bのどちらか一方、又は前記インク組成物A,Bの両方が感度向上剤を含むものであっても良い。
前記インク組成物A及び/又は前記インク組成物Bは、感度向上剤としてクマリン系化合物、又はチオキサントン系化合物を含んでも良い。
感度向上剤は、光硬化を目的にインク組成物A及び/又はBへ照射された波長の光を吸収し、励起されることにより、水素引き抜きによりラジカル発生を行う化合物、エネルギー移動によりラジカル発生を行う化合物、電子移動によりラジカル発生を行う化合物のことである。
クマリン系化合物は、紫外光を吸収し、励起状態となった際に、他分子との間でエネルギー移動を起す事によって増感効果をもたらすだけでなく、基底状態に落ちる際に、蛍光を発光するという特性を有しており、光照射により発生した蛍光を重合開始剤が吸収することにより感度が向上すると考えられる。本発明の2液型光硬化インクセットは、とりわけ、膜厚がある印字物に効果的である。厚みのある印字物の場合、内部まで照射光が届きづらいが、クマリン系化合物が上述のように作用し、インクの内部から蛍光を発光するため、感度が向上し、さらに内部硬化性も優れた印字物を得ることができる。
クマリン系化合物の好ましい例としては、クマリン(Coumarin)、4−メチルクマリン、7−ヒドロキシクマリン、7−アミノ−4−メチルクマリン、7−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチルクマリン、3−(2−ベンゾチアゾイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリン、7−アセトキシ−3−(2−ベンゾオキサゾイル)クマリン、6,7−ジエトキシ−4−(トリフルオロメチル)クマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−9−メチル−1H,5H−キノリジノ(9,1−gh)クマリン等が挙げられる。
チオキサントン系化合物の好ましい例としては、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、クロロチオキサントン等が挙げられる。
前記感度向上剤の濃度は、前記インク組成物A及び/又は前記インク組成物B中0.01重量%〜1.0重量%であることが好ましい。
上述の光硬化型インク組成物は、公知の慣用方法によって調製することができる。例えば、顔料分散液とインク溶媒を混合後、ろ過することにより、所望の光硬化型インク組成物を得ることができる。
[液体収容器及び液体噴射装置]
本実施形態によれば、前述したインクセットを収容した液体収容器を提供することができる。また、本実施形態によれば、前記液体収容器を備える液体噴射装置を提供することができる。
[インクジェット記録方法]
本実施形態のインクジェット記録方法は、インクジェットヘッドを駆動させてインク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法において、上述のインクセットを用いて画像を形成するものである。
上述した金属顔料を含むメタリックインク組成物は、単独で用いた場合、JIS Z8741にて規定された20度、60度、85度鏡面光沢度の測定値がそれぞれ同時に200、200、100以上の数値を示す金属光沢を有する画像を形成することができる。このメタリックインク組成物を用いることで、マット調の画像からグロス調の画像まで、所望の金属光沢を有する画像を形成することができる。
具体的には、JIS Z8741にて規定された20度、60度、85度鏡面光沢度の測定値がそれぞれ同時に200以上400未満、200以上400未満、100以上の数値を示す画像を形成した場合、つや消し調(マット調)の金属光沢を有する画像とすることができる。
また、JIS Z8741にて規定された20度、60度、85度鏡面光沢度の測定値がそれぞれ同時に400以上600未満、400以上600未満、100以上の数値を示す画像は、形成した画像に映りこんだ物体が若干判別できるほどの、つやのある金属光沢とすることができる。
さらに、JIS Z8741にて規定された20度、60度、85度鏡面光沢度の測定値がそれぞれ同時に600以上、600以上、100以上の数値を示す金属光沢を有する画像は、鮮鋭性を有し、形成した画像に映りこんだ物体が明確に判別できるほどの光沢、いわゆる「鏡面光沢」を有する金属光沢とすることができる。
金属顔料を含む前記メタリックインク組成物と、前記有彩色インク組成物、前記黒色インク組成物、前記白色インク組成物から選択された少なくとも1種以上の光硬化型インク組成物とは、同時に吐出して画像を形成することができる。これにより、有彩色顔料、黒色顔料及び白色顔料の色調にメタリック調の色調を付与することができる。
前記金属顔料を含むメタリックインク組成物と、前記有彩色インク組成物、前記黒色インク組成物、前記白色インク組成物などの光硬化型インク組成物とを別々に吐出する場合は、例えば、前記金属顔料を含むメタリックインク組成物を用いて金属光沢を有する画像を形成した後に、前記有彩色インク組成物を用いて画像を形成することが好ましい。
メタリック顔料は、記録媒体がインク受理層を有するか否かにかかわらず、インク受理層には浸透しにくく、記録媒体上に付着した状態となる。これに対して有彩色インク組成物に含まれる顔料は、インク受理層を有する記録媒体上に吐出した場合、そのインク受理層中に浸透しやすい。このため、まず金属顔料を含むメタリックインク組成物を吐出して記録媒体上にメタリック顔料の付着層を形成し、その上に有彩色インクの顔料を付着させると、有彩色インク組成物の顔料の色彩をより鮮明に発色させることが可能となる。
また、前記金属顔料を含むメタリックインク組成物を用いて金属光沢を有する画像を形成した後に、前記有彩色インク組成物を用いて任意の色調の金属光沢を有する画像を形成し、次いで前記黒色インク組成物及び/又は白色インク顔料を用いて画像を形成することもできる。
インク組成物を吐出する方法としては、以下に説明する方法が挙げられる。
第一の方法としては、静電吸引方式があり、この方式はノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、またはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式である。
第二の方法としては、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式である。噴射したインク滴は噴射と同時に帯電させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する。
第三の方法は圧電素子(ピエゾ素子)を用いる方式であり、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式である。
第四の方式は熱エネルギーの作用によりインク液を急激に体積膨張させる方式であり、インク液を印刷情報信号に従って微小電極で加熱起泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式である。
以上のいずれの方式も本実施形態のインクジェット記録方法に使用することができ、それぞれの方式のインクジェットカートリッジに充填することができる。
前記光硬化型インク組成物の液滴を吐出した後、定法に従い、記録媒体に付着した液滴を硬化及び/又は乾燥させる処理を行う。
硬化処理の例としては、例えば、前記メタリックインク組成物を吐出して画像を形成した後に、前記有彩色インク組成物を吐出し、該吐出と同時に又は吐出した後に、形成された画像に対して硬化処理を行う方法がある。また、前記メタリックインク組成物を吐出して画像を形成した後に、前記有彩色インク組成物、前記黒色インク組成物、前記白色インク組成物を同時に吐出し、該吐出と同時に又は吐出した後に、形成された画像に対して硬化処理を行う方法もある。更に、前記メタリックインク組成物を用いて画像を形成した後に、前記有彩色インク組成物を用いて任意の色調の画像を形成し、次いで前記黒色インク組成物及び/又は白色インク組成物を吐出し、該吐出と同時に又は吐出した後に、形成された画像に対して硬化処理を行う方法もある。
これにより、メタリック光沢を有するフルカラー画像を形成することができる。
また、乾燥処理と硬化処理を組み合わせる例としては、例えば、前記メタリックインク組成物を用いて画像を形成した後に、該画像に対して乾燥処理を行い、前記有彩色インク組成物、前記黒色インク組成物、前記白色インク組成物を吐出して任意の色調の画像を形成した後、該画像に対して硬化処理を行う。
これにより、メタリック光沢を有するフルカラー画像を形成することができる。
前記硬化処理は、紫外線を照射することにより行うことが好ましい。紫外線の照射は、基板または記録媒体等の上に付着させたインク組成物量や厚さにより、適宜好ましい条件を選択することが好ましい。そのため、厳密には特定できないが、例えば、光照射装置から放射される光の波長が350〜450nmの範囲であることが好ましい。
また、紫外線の照射量は、10mJ/cm2以上、10,000mJ/cm2以下であり、また好ましくは50mJ/cm2以上、6,000mJ/cm2以下の範囲で行うことが好ましい。かかる程度の範囲内における紫外線照射量であれば、光硬化型インク組成物の硬化反応を十分に行うことができる。
紫外線照射は、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等のランプが挙げられる。例えばFusionSystem社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているものを用いて行うことができる。
また、消費エネルギー低減の面から、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)や紫外線発光半導体レーザ等の紫外線発光半導体素子により、紫外線照射を行うことが特に好ましい。
記録媒体としては、特に制限はなく、例えば、普通紙、インクジェット専用紙(マット紙、光沢紙)、ガラス、プラスチック、フィルム、金属、プリント配線基板等の種々の記録媒体を用いることができる。
前記記録媒体がインク受容層を有している場合は、熱ダメージを与えないという観点から、前記記録媒体を非加熱で印刷することが好ましい。
一方、前記記録媒体がインク受容層を有していない場合は、乾燥速度を高め、高光沢が得られるという観点から、前記記録媒体を加熱して印刷することが好ましい。
加熱は、記録媒体に熱源を接触させて加熱する方法、赤外線やマイクロウェーブ(2,450MHz程度に極大波長を持つ電磁波)などを照射し、または熱風を吹き付けるなど記録媒体に接触させずに加熱する方法などが挙げられる。
前記加熱は、印刷する前及び/又は印刷と同時に及び/又は印刷した後に行うことが好ましい。換言すれば、前記記録媒体の加熱は、印刷の前に行っても、同時に行っても、後に行ってもよく、印刷を行っている間を通して加熱してもよい。加熱温度は記録媒体の種類によるが、30〜80℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。
[記録物]
本実施形態の記録物は、先述のインクセットを用いて、上記インクジェット記録方法により記録が行われたものである。この記録物は、先述のインクセットを用いて上記インクジェット記録方法により得られたものであるため、任意の色調を帯びたメタリック調の画像を有する記録物を得ることができる。
[実施形態2のインクセット]
本実施形態のインクセットは、既述のとおり、金属顔料を含有するメタリックインク組成物と、色材を含有しない光硬化型インク組成物Aと、有彩色顔料、黒色顔料、白色顔料からなる群から選択された少なくとも1種以上の色材を含有する光硬化型インク組成物Bと、を備えている。これにより、有彩色、黒色及び白色の色調にメタリック調の金属光沢が付加された画像を形成することが可能となる。
本実施形態2においては、前述した実施形態1に用いられる有彩色インク組成物、黒色インク組成物、白色インク組成物からなる群から選択された少なくとも1種以上の光硬化型インク組成物の代わりに、色材を含有しない光硬化型インク組成物Aと、有彩色顔料、黒色顔料、白色顔料からなる群から選択された少なくとも1種以上の色材を含有する光硬化型インク組成物Bと、を備える点以外は、実施形態1と同様である。従って、金属顔料を含有するメタリックインク組成物に関する事項は、実施形態1において説明した前述の事項が本実施形態2においても同様に適用される。
次に、本実施形態のインクセットに用いられる光硬化型インク組成物について説明する。本実施形態にインクセットに用いられる光硬化型インク組成物A及びBは、色材を含有しない光硬化型インク組成物Aと、有彩色顔料、黒色顔料、白色顔料からなる群から選択された少なくとも1種以上の色材を含有する光硬化型インク組成物Bとからなる2液系光硬化インク組成物である。
前記光硬化型インク組成物Aは、非水系であり、少なくとも、光重合開始剤と、重合性化合物と、を含有することが好ましい。
前記光硬化型インク組成物Aに用いられる前記光重合開始剤は、前述した実施形態1において好ましく用いられる光重合開始剤と同様であり、前記事項が同様に適用される。
前記光硬化型インク組成物Aは、上述した光重合開始剤を少なくとも2種以上を含むこともできる。光重合開始剤として、上述した光重合開始剤を少なくとも2種以上を含んでいれば、上記以外の他の光重合開始剤を併用して用いてもよい。
併用して用いることができる他の光重合開始剤としては、前述した実施形態1において例示した他の光重合開始剤と同様であり、前記事項が同様に適用される。
前記光重合開始剤の添加量は、0.1〜15重量%であることが好ましい。
一方、前記光硬化型インク組成物Bは、非水系であり、少なくとも、重合性化合物を含有し、先述した光重合開始剤を含有しないことが好ましい。
前記光重合性インク組成物A及びBに用いられる前記重合性化合物としては、保存安定性の観点から、N−ビニル化合物、エチレングリコールモノアリルエーテル、樹枝状ポリマー(デンドリティックポリマー)からなる群から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
N−ビニルフォルムアミド及びエチレングリコールモノアリルエーテルは、単官能のラジカル重合性モノマーであり、保存中暗反応により、望まない重合が生じる傾向が低く、使用に当たって好適である。
N−ビニルフォルムアミド及び/又はエチレングリコールモノアリルエーテルの添加量が20重量%未満ではインク組成物の粘度、分散安定性、保存安定性等の問題が生じ、80重量%を超えて多くなると2液型光硬化インク組成物としての硬化性、皮膜強度が不十分となる場合がある。より好ましくは20重量%〜70重量%程度の範囲である。
前記樹枝状ポリマー(デンドリティックポリマー)としては、前述した実施形態1において例示したものと同様であり、前記事項が同様に適用される。
なお、本実施形態において使用される樹枝状ポリマー(デンドリティックポリマー)は、室温で固体であって、数平均分子量が1000〜100000の範囲のものが望ましく、特に2000〜50000の範囲のものが好ましく使用される。分子量が上記の範囲より低い場合には定着画像がもろくなり、また、分子量が上記の範囲より高い場合には、添加量を下げてもインクの粘度が高くなりすぎて吐出特性の点で実用的ではなくなる。
また、上述した重合性化合物以外のその他の重合性化合物を含んでいてもよい。当該その他の重合性化合物としては、前述した実施形態1において例示したものと同様であり、前記事項が同様に適用される。
前記重合促進剤及びその添加量は、前述した実施形態1の場合と同様である。
前記光硬化型インク組成物A及び/又は前記光硬化型インク組成物Bは、界面活性剤を使用することができ、例えばシリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることが好ましく、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。具体例としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を挙げることができる。
前記光硬化型インク組成物A又は前記光硬化型インク組成物Bには重合促進剤が含まれていても良い。重合促進剤としては、特に限定されないが、アミン化合物、チオキサントン、重合性微粒子のいずれか一つ以上を含有することが好ましく、例えば、アミノベンゾエートであるDarocur EHA、EDB(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、チオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、その表面に重合性官能基を導入した重合性微粒子等が挙げられる。
また、前記インク組成物A又は前記インク組成物Bは、熱ラジカル重合禁止剤を含有することが好ましい。これにより、インク組成物の保存安定性が向上する。熱ラジカル重合禁止剤には、一般的な重合性組成物に配合されているものが使用でき、例えば、フェノール系酸化防止剤、ヒンダード・アミン光安定剤、リン系酸化防止剤、広く(メタ)アクリルモノマーに用いられるハイドロキノンモノメチルエーテルの他、ハイドロキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール等が挙げられるが、好ましくはHALS系化合物であり、Irgastab UV−10(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が挙げられる。
また、本実施形態のインクセットは、光硬化型インク組成物Bのみに色材を含有する。この場合に用いられる色材は、顔料が印刷物の耐久性の点から好ましい。光硬化型インク組成物Bに含まれる顔料は、有彩色顔料、黒色顔料、白色顔料からなる群から選択された少なくとも1種以上である。
前記光硬化型インク組成物Bで使用される顔料としては、特別な制限なしに無機顔料、有機顔料を使用することができる。
有彩色顔料、黒色顔料、及び白色顔料としては、前述した実施形態1に用いられる有彩色インク組成物、黒色インク組成物、及び白色インク組成物それぞれに含まれる有彩色顔料、黒色顔料、及び白色顔料と同様であり、前記事項が適用される。
前記有彩色顔料、及び黒色顔料の含有量は、印刷物の光沢とブロンズ現象抑制効果の観点から、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、更に好ましくは3.0重量%以上10.0重量%以下である。白色顔料の含有量は、白色度の観点から、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは5.0重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、20重量%以下である。
前記光硬化型インク組成物Bは、色材として顔料を使用するとともに、該顔料を分散するための分散剤を含有するものが好ましい。分散剤は、この種の顔料インクに使用可能であるものを特に制限なく用いることができ、例えば、カチオン性分散剤、アニオン性分散剤、ノニオン性分散剤や界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性分散剤、ノニオン性分散剤、分散剤としての界面活性剤、その他の分散剤の例としては、前述した実施形態1に使用される光硬化型インク組成物に用いられるものと同様である。
本発明の好ましい態様によれば、これらの顔料は、分散剤または界面活性剤で水性媒体中に分散させて得られた顔料分散液として光重合型インク組成物Bとすることができる。好ましい分散剤としては、顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を使用することができる。
また、本実施形態のインクセットは、インク組成物が色材を含有する場合、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの基本4色に加えて、それぞれの色毎に同系列の濃色や淡色を用いてもよい。例えば、マゼンタに加えて淡色のライトマゼンタ、濃色のレッド、シアンに加えて淡色のライトシアン、濃色のブルー、ヴァイオレットが挙げられる。または中間色のグリーン、オレンジ、も挙げられる。更に無彩色であるブラックに加えて、その淡色であるグレイ、ライトブラック、濃色であるマットブラック、同じく無彩色であるホワイトに加えてクリーム、アイヴォリー、更に加えてメタリック色であればシルバー、ゴールド、カッパー、クロームシルバー等が挙げられる。
また、必要に応じて、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ポリアクリルポリオール樹脂、ポリオキシアルキレンポリアルキレンアミン樹脂、ワックス類を添加することが出来る。また、本発明のインク組成物Aまたはインク組成物Bには、2液型光硬化インクに使用し得る、公知公用のその他の成分として、湿潤剤、浸透溶剤、pH調整剤、防腐剤、防かび剤等を添加しても良い。
本実施形態のインクセットは、光硬化型インク組成物Aおよび光硬化型インク組成物Bを混合した後に光照射をすることにより硬化反応を行う。混合は硬化反応前であれば、印刷前・印刷後のどちらでもよい。即ち、該混合および印刷は、インク組成物Aとインク組成物Bとを記録媒体上の同位置に付着させる形態でも良く、また、インク組成物Aとインク組成物Bとを混合し記録媒体上に付着させる形態でもよい。
[液体収容器及び液体噴射装置]
本実施形態によれば、前述したインクセットを収容した液体収容器を提供することができる。また、本実施形態によれば、前記液体収容器を備える液体噴射装置を提供することができる。
[インクジェット記録方法]
本実施形態のインクジェット記録方法は、インクジェットヘッドを駆動させてインク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法において、上述のインクセットを用いて画像を形成するものである。
上述した金属顔料を含むメタリックインク組成物は、前述した実施形態1におけるものと同様に、単独で用いた場合、JIS Z8741にて規定された20度、60度、85度鏡面光沢度の測定値がそれぞれ同時に200、200、100以上の数値を示す金属光沢を有する画像を形成することができる。このメタリックインク組成物を用いることで、マット調の画像からグロス調の画像まで、所望の金属光沢を有する画像を形成することができる。その形成される金属光沢画像の具体例としては、実施形態1と同様である。
前記メタリックインク組成物と、前記光硬化型インク組成物A及び/又は前記光硬化型インク組成物Bと、同時に吐出して画像を形成することができる。これにより、有彩色顔料、黒色顔料及び白色顔料の色調にメタリック調の色調を付与することができる。
前記金属顔料を含むメタリックインク組成物と、前記有彩色インク組成物、前記黒色インク組成物、前記白色インク組成物などの光硬化型インク組成物とを別々に吐出する場合は、例えば、前記メタリックインク組成物を吐出して画像を形成した後に、前記光硬化型インク組成物A及び/又は前記光硬化型インク組成物Bを吐出して任意の色調の画像を形成することが好ましい。
メタリック顔料は、記録媒体がインク受理層を有するか否かにかかわらず、インク受理層には浸透しにくく、記録媒体上に付着した状態となる。これに対して有彩色インク組成物に含まれる顔料は、インク受理層を有する記録媒体上に吐出した場合、そのインク受理層中に浸透しやすい。このため、まず金属顔料を含むメタリックインク組成物を吐出して記録媒体上にメタリック顔料の付着層を形成し、その上に光硬化型インク組成物Bに含まれる顔料を付着させると、光硬化型インク組成物Bの顔料の色彩をより鮮明に発色させることが可能となる。
インク組成物を吐出する方法としては、前述した実施形態1で説明した第一〜第四の方法が挙げられる。
以上のいずれの方式も本実施形態のインクジェット記録方法に使用することができ、それぞれの方式のインクジェットカートリッジに充填することができる。但し、インク組成物に熱ダメージを与えないという観点からは、インクジェットヘッド非加熱方式である、上記第一、第二及び第三の方法を選択することが好ましい。
前記光硬化型インク組成物の液滴を吐出した後、定法に従い、記録媒体に付着した液滴を硬化及び/又は乾燥させる処理を行う。
硬化処理の例としては、例えば、前記光硬化型インク組成物A及び前記白色顔料を含有する光硬化型インク組成物Bを用いて画像を形成した後に、光照射によって硬化処理を行い、次いで、(i)前記メタリックインク組成物と、(ii)前記光硬化型インク組成物A及び/又は(iii)前記有彩色顔料又は前記黒色顔料を含有する光硬化型インク組成物Bと、を用いて画像を形成する方法がある。
これにより、メタリック光沢を有するフルカラー画像を形成することができる。
他の例としては、前記メタリックインク組成物を吐出して画像を形成した後に、前記光硬化型インク組成物A及び/又は前記光硬化型インク組成物Bを同時に吐出して画像を形成し、該吐出と同時に又は吐出した後に、形成された画像に対して硬化処理を行う方法がある。
これにより、メタリック光沢を有するフルカラー画像を形成することができる。
また、乾燥処理と硬化処理を組み合わせる例としては、例えば、前記メタリックインク組成物を吐出して画像を形成した後に、該画像に対して乾燥処理を行い、前記光硬化型インク組成物A及び/又は前記光硬化型インク組成物Bを同時に吐出して画像を形成し、該吐出と同時に又は吐出した後に、形成された画像に対して硬化処理を行う方法がある。
これにより、メタリック光沢を有するフルカラー画像を形成することができる。
前記硬化処理は、前述した実施形態1と同様に紫外線を照射することにより行うことが好ましく、その詳細は前記事項が同様に適用される。
[記録物]
本実施形態の記録物は、先述のインクセットを用いて、上記インクジェット記録方法により記録が行われたものである。この記録物は、先述のインクセットを用いて上記インクジェット記録方法により得られたものであるため、任意の色調を帯びたメタリック調の画像を有する記録物を得ることができる。
[実施例1]
1.メタリックインク組成物
(1)メタリック顔料分散液の調製
膜厚100μmのPETフィルム上に、セルロースアセテートブチレート(ブチル化率35〜39%、関東化学社製)3.0重量%及びジエチレングリコールジエチルエーテル(日本乳化剤社製)97重量%からなる樹脂層塗工液をバーコート法によって均一に塗布し、60℃、10分間乾燥する事で、PETフィルム上に樹脂層薄膜を形成した。
次に、真空蒸着装置(真空デバイス社製VE−1010型真空蒸着装置)を用いて、上記の樹脂層上に平均膜厚20nmのアルミニウム蒸着層を形成した。
次に、上記方法にて形成した積層体を、ジエチレングリコールジエチルエーテル中、VS−150超音波分散機(アズワン社製)を用いて剥離・微細化・分散処理を同時に行い、積算の超音波分散処理時間が12時間であるメタリック顔料分散液を作成した。
得られたメタリック顔料分散液を、開き目5μmのSUSメッシュフィルターにてろ過処理を行い、粗大粒子を除去した。次いで、ろ液を丸底フラスコに入れ、ロータリーエバポレターを用いてジエチレングリコールジエチルエーテルを留去した。これにより、メタリック顔料分散液を濃縮し、その後、そのメタリック顔料分散液の濃度調整を行い、5重量%濃度のメタリック顔料分散液1を得た。
また、蒸着条件及び/又は超音波分散時間を変化させたメタリック顔料を有するメタリック顔料分散液2を得た。
そして、粒子径・粒度分布測定装置(シスメックス社製FPIA−3000S)を用いて、各メタリック顔料の長径(X方向)−短径(Y方向)平面の円相当径の50%平均粒子径R50、平均膜厚Zを測定し、さらに、得られたR50とZの測定値に基づき、R50/Zを算出した。結果を表1に示す。
Figure 2016172866
(2)メタリックインク組成物の調製
上記方法にて調製したメタリック顔料分散液を用いて、表2に示す組成にてメタリック顔料インク組成物を調製した。溶媒及び添加剤を混合・溶解し、インク溶媒とした後に、メタリック顔料分散液をそのインク溶媒中へ添加して、更に常温・常圧下30分間マグネティックスターラーにて混合・撹拌して、メタリック顔料インク組成物(S1、S2、S3)とした。
表2中、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEGdEE)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(DPGmBE)及びテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGdME)は日本乳化剤社製のものを用いた。また、γ−ブチロラクトンは関東化学社製のものを用いた。また、N−2043−AF−1およびN−2043−60MEX(ポリアクリルポリオール樹脂エマルジョン)はハリマ化成社製のものを用い、BYK−3500(界面活性剤)はビックケミー・ジャパン社製のものを用いた。なお、単位は重量%である。
Figure 2016172866
2.カラーインク組成物
(1)重合性微粒子及びその分散液の調製
シリカゾルIPA−ST(日本化学工業社製、シリカ濃度30wt%のイソプロピルアルコール(以下「IPA」と称する)分散液)88.1重量部を200ml容の三角フラスコに加え、シランカップリング剤 サイラエースS710(3−メタクリロキSプロピルトリメトキシシラン、チッソ社製)7.9重量部を添加した。マグネティックスターラーで攪拌しながら0.05mol/L濃度の塩酸を4重量部添加し、室温で24時間攪拌しながら反応を行った。その結果、メタクリル基を有する重合性微粒子(MPS)を含むIPA分散液Aを得た。
300ml容の丸底フラスコにN−ビニルフォルムアミド(以下「NVF」とも称する、ビームセット770、荒川化学工業社製)70重量部、上記分散液A 100重量部を加え、ロータリーエバポレーターを用いてIPAを留去し、重合性微粒子を30wt%含む分散液Bを得た。
(2)顔料分散液の調製
(2−1)(イエロー)顔料分散液C
色材である顔料として、C.I.ピグメントイエロー(P.Y.)74とポリウレタン樹脂(平均分子量約20,000)(以下「分散剤」とも称する)とNVFを、顔料:分散剤:NVF=15:5:80の割合で混合して、サンドミル(安川製作所社製)中でガラスビーズ(直径1.7mm、混合物の1.5倍重量)と共に2時間分散させた。その後、ガラスビーズを分離し、顔料分散液C(顔料濃度15wt%)を得た。
(2−2)(マゼンタ)顔料分散液D
顔料をC.I.ピグメントレッド(P.R.)122に替えた以外は、上記顔料分散液Cと同様に顔料分散液D(顔料濃度15wt%)を調製した。
(2−3)(シアン)顔料分散液E
顔料をC.I.ピグメントブルー(P.B.)15:3に替えた以外は、上記顔料分散液Cと同様に顔料分散液E(顔料濃度15wt%)を調製した。
(2−4)(ブラック)顔料分散液F
顔料をC.I.ピグメントブラック(P.Bk.)7に替えた以外は、上記顔料分散液Cと同様に顔料分散液F(顔料濃度15wt%)を調製した。
(2−5)(ホワイト)顔料分散液G
チタン含有鉱石を硫酸で溶かして硫酸チタン溶液を得た。この硫酸チタン溶液を加水分解して得た含水酸化チタンに、TiO2換算での100重量部に対してリン酸アンモニウムを0.50重量部、硫酸カリウムを0.30重量部、硫酸アルミニウムを0.30重量部添加し、含水酸化チタンを生成物温度が1,020℃になるまで実験室用回転マッフル炉内で加熱した。生成した二酸化チタン微粒子を室温に冷却し、透過型電子顕微鏡写真で観測したところ、平均一次粒子径が0.13μmであるアナターゼ型であることが判った。
この表面処理された白色顔料としての二酸化チタン微粒子 15重量部、分散剤としてのポリオキシアルキレン付加ポリアルキレンアミン(第一工業製薬社製 ディスコール N−518) 5重量部、エチレングリコールモノアリルエーテル(以下「AG」と称する)80重量部を混合し、サンドミル(安川製作所製)でジルコニウムビーズ(1.0mm径)をスラリーの1.5倍量を充填し、2時間分散させた後、ビーズを取り除き、二酸化チタン微粒子の60wt% 顔料分散液Gを得た。
(3)インク組成物の調製
(3−1)イエロー顔料インク組成物(Y1)
遮光性を有する容器に、顔料分散液B 20重量部、顔料分散液C 10重量部を加え、NVF 29重量部、トリプロピレングリコールジアクリレート(以下「TPGDA」とも称する、アロニックスM−220、東亜合成社製)25重量部、グリセリンEO変性トリアクリレート(以下「AGE3」とも称する、HKエステル A−Gly−3E、新中村化学社製)10重量部、Irgacure 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド、チバ スペシャリティ ケミカルズ社製)4.0重量部、Irgacure 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、チバ スペシャリティ ケミカルズ社製)1.0重量部、Darocur EHA(2−エチルヘキシル−4−ジメトキシアミノベンゾエート、チバ スペシャリティ ケミカルズ社製)1重量部を添加し、マグネティックスターラーで1時間攪拌・混合してから、紫外線を遮蔽した環境下で5μmのメンブランフィルターを用いてろ過して、表3の組成のイエローインク組成物を調製した。
(3−2)マゼンタ、シアン、ブラック顔料インク組成物
以下同様に、それぞれ、顔料分散液Cに代えて、顔料分散液D、E、Fを用いて表3の組成の各インク組成物:マゼンタインク組成物(M1)、シアンインク組成物(C1)、ブラックインク組成物(Bk1)を調製した。
Figure 2016172866
(3−3)ホワイトインク組成物(W)
下記に示す配合成分におけるAG、顔料及び分散剤以外の溶媒及び各種添加剤を混合且つ完全に溶解し、インク溶媒を作成してから、上記顔料分散液Gを、攪拌しながらインク溶媒中に徐々に滴下し、滴下終了後常温で30分間混合攪拌した。その後、5μmのメンブランフィルターでろ過し、表4に示すホワイトインク組成物を調製した。下記の組成において、「AG」は日本乳化剤社製のエチレングリコールモノアリルエーテルを意味し、「Irgacure 127」はチバ スペシャルティ ケミカルズ社製の重合開始剤を意味し、「Darocur EDB」は同社の重合促進剤を意味し、「BYK−UV3570」はビッグケミー・ジャパン社製のシリコーン系界面活性剤を意味し、「Irgastab UV10」はチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の重合禁止剤を意味する。
Figure 2016172866
(3−4)イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ホワイト顔料インク組成物
上記と同様にして、それぞれ、表5に示す組成の各インク組成物:イエローインク組成物(Y2)、マゼンタインク組成物(M2)、シアンインク組成物(C2)、ブラックインク組成物(Bk2)、ホワイトインク組成物(W2)を調製した。
Figure 2016172866
3.インクセット
前記1及び2で得られた各インク組成物を用い、表6に示す組み合わせでインクセットを構成した。
Figure 2016172866
4.印刷評価試験
(1)印刷評価試験1
上記3で示したインクセットを使用し、ローランドD.G.株式会社製インクジェットプリンタ SJ−540を利用し、それぞれ対応する色列に対応するインク組成物を、即ち、ブラックインク組成物、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物をそれぞれブラック列、イエロー列、マゼンタ列、シアン列に充填し、メタリックインク組成物をライトシアン列に、ホワイトインク組成物をライトマゼンタ列に充填した。印刷は下記印刷パターンに従い実施した。記録媒体にはA4サイズにカットした塩化ビニルシート(Viewcal 2000(白):株式会社桜井製)、PETフィルム(PG−50L:株式会社 ラミーコーポレーション製)、ポリカーボネートフィルム(ユーピロン FE−2000:三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)を用いた。そして、下記の評価基準に基づき、印字物の官能評価を行った。結果を表7に示す。
AA:映りこんだ物体が明確に判別できるほどのメタリック調光沢が得られた。
A :画像に映りこんだ物体が若干判別できる程度のメタリック調光沢が得られた。
B :つや消し調(マット調)のメタリック光沢が得られた。
C :メタリック調の光沢は得られなかった。
上記インクセットを用いた印刷パターンは以下のとおりである。
a.印刷パターン1
加熱温度50℃の条件にてメタリックインク組成物を用いて画像を形成した後に、有彩色インクを用いて、メタリック画像の上に画像を形成し、その画像に対して、紫外線照射装置として、ピーク波長365nmの紫外線発光ダイオードNICHIAi−LED「NCCU033」及びピーク波長380nmの紫外線発光ダイオードNICHIA「NCCU001」(共に日亜化学工業社製)、ピーク波長395nmの発光ダイオードE1S40−0P0C6−01(豊田合成社製)を用いて作製したものを使用した。紫外線照射装置の照射条件は、照射面において、365nm、380nm、395nmの波長の照射強度がそれぞれ20mW/cm2、即ち合計で60mW/cm2となるようにした。そして、紫外線をサンプルに5秒間照射し、紫外線照射処理一回当たりの積算光量が300mJ/cm2となる条件で紫外線を照射し、硬化処理を行った。
b.印刷パターン2
加熱温度50℃の条件にてメタリックインク組成物を吐出して画像を形成した後に、有彩色インク組成物を用いて更に画像を形成した。その形成された画像に対して、紫外線照射装置として、ピーク波長365nmの紫外線発光ダイオードNICHIAi−LED「NCCU033」及びピーク波長380nmの紫外線発光ダイオードNICHIA「NCCU001」(共に日亜化学工業社製)、ピーク波長395nmの発光ダイオードE1S40−0P0C6−01(豊田合成社製)を用いて作製したものを使用した。紫外線照射装置の照射条件は、照射面において、365nm、380nm、395nmの波長の照射強度がそれぞれ20mW/cm2、即ち合計で60mW/cm2となるようにした。そして、紫外線をサンプルに5秒間照射し、紫外線照射処理一回当たりの積算光量が300mJ/cm2となる条件で紫外線を照射し、硬化処理を行った。続いて、黒色インク組成物、白色インク組成物を同時に吐出し、該吐出と同時に又は吐出した後に、形成された画像に対して、上記と同様の条件で紫外線を照射し、硬化処理を行った。
c.印刷パターン3
加熱温度50℃の条件にてメタリックインク組成物を用いて画像を形成した後に、続いて有彩色インク組成物、前記黒色インク組成物、前記白色インク組成物を吐出して画像を形成した後、該画像に対し、紫外線照射装置として、ピーク波長365nmの紫外線発光ダイオードNICHIAi−LED「NCCU033」及びピーク波長380nmの紫外線発光ダイオードNICHIA「NCCU001」(共に日亜化学工業社製)、ピーク波長395nmの発光ダイオードE1S40−0P0C6−01(豊田合成社製)を用いて作製したものを使用した。紫外線照射装置の照射条件は、照射面において、365nm、380nm、395nmの波長の照射強度がそれぞれ20mW/cm2、即ち合計で60mW/cm2となるようにした。そして、紫外線をサンプルに5秒間照射し、紫外線照射処理一回当たりの積算光量が300mJ/cm2となる条件で紫外線を照射し、硬化処理を行った。
d.印刷パターン4
加熱温度50℃の条件にてメタリックインク組成物を用いて画像を形成した後に、該画像に対して60℃で15分間乾燥処理を行い、続いて有彩色インク組成物、前記黒色インク組成物、前記白色インク組成物を吐出して画像を形成した後、該画像に対し、紫外線照射装置として、ピーク波長365nmの紫外線発光ダイオードNICHIAi−LED「NCCU033」及びピーク波長380nmの紫外線発光ダイオードNICHIA「NCCU001」(共に日亜化学工業社製)、ピーク波長395nmの発光ダイオードE1S40−0P0C6−01(豊田合成社製)を用いて作製したものを使用した。紫外線照射装置の照射条件は、照射面において、365nm、380nm、395nmの波長の照射強度がそれぞれ20mW/cm2、即ち合計で60mW/cm2となるようにした。そして、紫外線をサンプルに5秒間照射し、紫外線照射処理一回当たりの積算光量が300mJ/cm2となる条件で紫外線を照射し、硬化処理を行った。
Figure 2016172866
表7に示すように、上記のインクセットを用いた上記インクジェット記録方法により、任意の色調を帯びたメタリック調の画像を有する記録物を得ることができた。
[実施例2]
1.メタリックインク組成物
実施例1と同様にして調整した前記メタリック顔料インク組成物(S1、S2、S3)を用いた。
2.カラーインク組成物
(1)樹枝状ポリマーの調製
本発明において、樹枝状ポリマーとしてはハイパーブランチポリマーまたはデンドリマーを用いた。
ハイパーブランチポリマーとして、大阪有機化学工業製、「STAR−501」を用いた。この「STAR−501」は、ジペンタエリスリトールをコアとして官能基を分岐させていったハイパーブランチポリマーであり、希釈モノマーとして、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを含有した、粘度:210Pa・s、官能基数20〜99(アクリル基)のものである。
デンドリマー7および9は以下の通りに合成した。
容量1Lの反応容器にエチレンジアミン 31g、アクリル酸ジメチル 256g、メタノール 300gを入れ、窒素気流下、40℃にて攪拌しながら6時間反応を行った。反応終了後、得られた混合物はロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した後、大過剰のジエチルエーテル中に加え再沈殿操作により精製した。得られた反応生成物1に500gのメタノールを加えて溶解し、次の反応を行った。
容量2Lの反応容器に反応生成物1を含むメタノール溶液を入れ、240gのエチレンジアミンを加えて、窒素気流下、27℃にて攪拌しながら6時間反応を行った。反応後、同様にメタノール留去、再沈殿操作による精製後、得られた反応生成物2に1000gのメタノールを加えて溶解し、次の反応を行った。
容量5Lの反応容器に反応生成物2を含むメタノール溶液を入れ、アクリル酸ジメチル667gを入れ、窒素気流下、40℃にて攪拌しながら6時間反応を行った。反応後、同様にメタノール留去、再沈殿操作による精製後、得られた反応生成物3に2000gのメタノールを加えて溶解し、次の反応を行った。
反応容器に反応生成物3を含むメタノール溶液を入れ、361gのエチレンジアミンを加えて、窒素気流下、27℃にて攪拌しながら6時間反応を行った。反応後、同様にメタノール留去、再沈殿操作による精製後、得られた反応生成物4に2000gのモレキュラシーブを用いて脱水処理したアセトンを加えて溶解し、次の反応を行った。
反応容器に反応生成物4を含むアセトン溶液 1000gを分取し、カレンズBEI(1,1−Bis(acryloyloxymetyl)ethyl isocyanate、昭和電工社製)2153gを添加し、窒素気流下にて撹拌混合した後、DABCO(1,4−Diazabicyclo〔2,2,2〕octane、東京化成工業社製)1gを更に添加し、撹拌混合し、反応温度を50℃まで昇温してから6時間反応を行った。
反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いてアセトンを留去した後、6838gのエチレングリコールモノアリルエーテルを添加して、30重量%濃度のデンドリマー7のエチレングリコールモノアリルエーテル溶液8を調製した。
この場合、デンドリマー7の1分子の当たりの最外面に配置されたアクリロイル基数は72個となる。
また、反応性生物4を含むアセトン溶液からロータリーエバポレーターを用いてアセトンを留去した後、6838gのエチレングリコールモノアリルエーテルを添加して30重量%濃度のデンドリマー9のエチレングリコールアリルエーテル溶液10を調製した。このデンドリマー9は最外面にラジカル重合性反応基を持たないものである。
(2)顔料分散液の調製
顔料分散液は下記に示す方法によって調製した。着色剤としてC.I.ピグメントブラック7(カーボンブラック)15部、分散剤としてのディスコールN−509(大日精化工業社製)3.5部に、モノマーとしてのエチレングリコールモノアリルエーテル(日本乳化剤社製。以下、「AG」と称する)加えて全体を100部とし、混合攪拌して混合物とした。この混合物を、サンドミル(安川製作所社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径1.5mm)と共に6時間分散処理を行った。その後ジルコニアビーズをセパレータで分離しブラック顔料分散液を得た。
以下同様にしてそれぞれの色に対応する顔料分散液、即ちシアン顔料分散液(C.I.ピグメントブルー15:3)、マゼンタ顔料分散液(C.I.ピグメントヴァイオレット-19)、イエロー顔料分散液(C.I.ピグメントイエロー155)及びホワイト顔料分散液(二酸化チタン微粒子)を調製した。
(3)インク組成物A1、インク組成物B1〜5の調製
下記の表8に示す組成にてインク組成物A1、インク組成物B1〜5を調製した。即ち、表8に示すモノマー、光ラジカル重合開始剤、重合促進剤、界面活性剤、熱ラジカル重合禁止剤を混合且つ完全に溶解した。次いで顔料分散液を含有する場合には、顔料分散液を攪拌しながら溶媒中に徐々に滴下し、滴下終了後、常温で1時間混合攪拌した。その後、5μmのメンブランフィルターでそれぞれのインク組成物A1、インク組成物B1〜5をろ過し、透明インク組成物(インク組成物A1)、ブラックインク組成物(インク組成物B1)、イエローインク組成物(インク組成物B2)、マゼンタインク組成物(インク組成物B3)、シアンインク組成物(インク組成物B4)及びホワイトインク組成物(インク組成物B5)とした。表中の数値は「重量%」を示す。
なお、表中、「NVF」は荒川化学工業社製のN−ビニルフォルムアミドを意味し、「AG」は日本乳化剤社製のエチレングリコールモノアリルエーテルを意味し、「STAR−501」は大阪有機化学工業社製のハイパーブランチポリマーを意味し、「Irgacure 819」及び「Irgacure 127」はチバ スペシャルティ ケミカルズ社製の光ラジカル重合開始剤を意味し、「Darocure EHA」はチバ スペシャルティ ケミカルズ社製の重合促進剤を意味し、「BYK−UV3570」はビックケミージャパン社製のシリコーン系界面活性剤を意味し、「Irgastab UV−10」はチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の熱ラジカル重合禁止剤を意味する。
Figure 2016172866
(4)インク組成物A2、インク組成物B6〜10の調製 前記(3)と同様にして、下記の表9に示す組成のインク組成物A2、インク組成物B6〜10を調製し、透明インク組成物(インク組成物A2)、ブラックインク組成物(インク組成物B16)、イエローインク組成物(インク組成物B7)、マゼンタインク組成物(インク組成物B8)、シアンインク組成物(インク組成物B9)及びホワイトインク組成物(インク組成物B10)とした。表中の数値は「重量%」を示す。
なお、表中、「ビスコート #1000」は大阪有機化学工業社製のハイパーブランチポリマーを意味する。
Figure 2016172866
3.インクセット
前記1及び2で得られた各インク組成物を用い、表10に示す組み合わせでインクセットを構成した。
Figure 2016172866
4.評価試験
(1)印刷評価試験
上記3で示したインクセットを使用し、ローランドD.G.株式会社製インクジェットプリンタ SJ−540を2台用いて、そのうち1台のインクジェットプリンタ(IJP−1)のブラック列にメタリックインク組成物(S1、S2又はS3)、インク組成物A1、A2(透明インク組成物)をライトシアン列、インク組成物B5、B10(ホワイトインク組成物)をライトマゼンタ列に充填した。
もう一台のインクジェットプリンタ(IJP−2)にはそれぞれ対応する色列に対応するインク組成物、即ち、インク組成物B1、B6(ブラックインク組成物)、インク組成物B2、B7(イエローインク組成物)、インク組成物B3、B8(マゼンタインク組成物)、インク組成物B4、B9(シアンインク組成物)をそれぞれブラック列、イエロー列、マゼンタ列、シアン列に充填し、インク組成物A1、A2(透明インク組成物)をライトシアン列に、インク組成物B5、B10(ホワイトインク組成物)をライトマゼンタ列に充填した。印刷は下記印刷パターンに従い実施した。
記録媒体にはA4サイズにカットした塩化ビニルシート(Viewcal 2000(白):株式会社桜井製)、PETフィルム(PG−50L:株式会社ラミーコーポレーション製)、ポリカーボネートフィルム(ユーピロン FE−2000:三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製)を用いた。そして、下記の評価基準に基づき、印字物の官能評価を行った。結果を表5に示す。
AA:映りこんだ物体が明確に判別できるほどのメタリック調光沢が得られた。
A :画像に映りこんだ物体が若干判別できる程度のメタリック調光沢が得られた。
B :つや消し調(マット調)のメタリック光沢が得られた。
C :メタリック調の光沢は得られなかった。
上記インクセットを用いた印刷パターンは以下のとおりである。
a.印刷パターン1
前記IJP−1を用いて、記録メディアの表面温度が50℃になる加熱条件にてメタリックインク組成物S1、インク組成物A1、A2(透明インク組成物)、インク組成物B5、B6〜B10(ホワイトインク組成物)を同時に吐出して画像を形成した。その後、その画像に対して、紫外線照射装置を用いて紫外線を照射し、硬化処理を行った。
紫外線照射装置としては、ピーク波長365nmの紫外線発光ダイオードNICHIAi−LED「NCCU033」及びピーク波長380nmの紫外線発光ダイオードNICHIA「NCCU001」(共に日亜化学工業社製)、ピーク波長395nmの発光ダイオードE1S40−0P0C6−01(豊田合成社製)を用いて作製したものを使用した。
紫外線照射装置の照射条件は、照射面において、365nm、380nm、395nmの波長の照射強度がそれぞれ20mW/cm2、即ち合計で60mW/cm2となるようにした。そして、紫外線をサンプルに5秒間照射し、紫外線照射処理一回当たりの積算光量が300mJ/cm2となる条件で行った。
b.印刷パターン2
前記IJP−1を用いて、記録メディアの表面温度が50℃になる加熱条件にてメタリックインク組成物S1を用いて画像を形成した。その後、前記IJP−2を用いて、その画像の上にインク組成物A1、A2(透明インク組成物)及びB1〜B5、B6〜B10(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン、ホワイトの各カラーインク組成物)を同時に吐出して画像を形成した。そして、その画像に対して、前記印刷パターン1と同様の条件で紫外線を照射し、硬化処理を行った。
c.印刷パターン3
前記IJP−1を用いて、記録メディア上にインク組成物A1、A2(透明インク組成物)及びB5、B10(ホワイトインク組成物)を同時に吐出して白色の画像を形成した。その後、その画像に対して、前記印刷パターン1と同様の条件で紫外線を照射し、硬化処理を行った。
続いて前記IJP−1を用いて、表面温度が50℃になる加熱条件にてメタリックインク組成物S1を用いて画像を形成した。その後、更に前記IJP−2を用いて、メタリック画像の上にインク組成物A1、A2(透明インク組成物)及びB1〜B5、B6〜B10(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン、ホワイトの各カラーインク組成物)を同時に吐出して画像を形成した。そして、その画像に対して、前記と同様の照射条件にて紫外線を照射し、硬化処理を行った。
なお、メタリックインク組成物S1に替えてS2、S3を用い、上記と同様に印刷パターン1〜3の印刷評価を実施した。
Figure 2016172866
表11に示すように、上記のインクセットを用いた上記インクジェット記録方法により、任意の色調を帯びたメタリック調の画像を有する記録物を得ることができた。

Claims (22)

  1. 金属顔料を含むメタリックインク組成物と、
    有彩色インク組成物、黒色インク組成物、白色インク組成物からなる群から選択された少なくとも1種以上の光硬化型インク組成物と、
    を備えたインクセット。
  2. 金属顔料を含有するメタリックインク組成物と、
    色材を含有しない光硬化型インク組成物Aと、
    有彩色顔料、黒色顔料、白色顔料からなる群から選択された少なくとも1種以上の色材を含有する光硬化型インク組成物Bと、
    を備えたインクセット。
  3. 前記金属顔料が、平板状粒子であり、該平板状粒子の平面上の長径をX、短径をY、厚みをZとした場合、該平板状粒子のX−Y平面の面積より求めた円相当径の50%平均粒子径R50が0.5〜3μmであり、かつ、R50/Z>5の条件を満たす金属顔料である、請求項1又は2に記載のインクセット。
  4. 前記光硬化型インク組成物が、少なくとも色材、光重合開始剤、重合性化合物を含有する、請求項1に記載のインクセット。
  5. 前記光硬化型インク組成物Aが、非水系であり、少なくとも、光重合開始剤と、重合性化合物と、を含有する、請求項2に記載のインクセット。
  6. 前記光硬化型インク組成物Bが、非水系であり、少なくとも、重合性化合物を含有し、光重合開始剤を含有しない、請求項2に記載のインクセット。
  7. 前記光重合開始剤が、ビスアシルフォスフィンオキサイド、モノアシルフォスフィンオキサイド、α−アミノケトン、α−ヒドロキシケトンからなる群から選択された少なくとも2種以上である、請求項4又は5に記載のインクセット。
  8. 前記重合性化合物が、N−ビニル化合物、エチレングリコールモノアリルエーテル、樹枝状ポリマーからなる群から選択された少なくとも1種以上である、請求項4〜7のいずれか1項に記載のインクセット。
  9. 前記樹枝状ポリマーが、デンドリマー及び/又はハイパーブランチポリマーである、請求項8に記載のインクセット。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクセットを収容した液体収容器。
  11. 請求項10記載の液体収容器を備える液体噴射装置。
  12. インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法において、
    請求項1に記載のインクセットを用いて画像を形成する、インクジェット記録方法。
  13. 前記メタリックインク組成物と、
    前記有彩色インク組成物、前記黒色インク組成物、前記白色インク組成物からなる群から選択された少なくとも1種以上と、
    を同時に吐出して任意の色調の画像を形成する、請求項12に記載のインクジェット記録方法。
  14. 前記メタリックインク組成物を用いて画像を形成した後に、前記有彩色インク組成物を用いて任意の色調の画像を形成し、次いで前記黒色インク組成物及び/又は白色インク組成物を吐出し、該吐出と同時に又は吐出した後に、形成された画像に対して硬化処理を行う、請求項12に記載のインクジェット記録方法。
  15. 前記メタリックインク組成物を吐出して画像を形成した後に、前記有彩色インク組成物、前記黒色インク組成物、前記白色インク組成物を同時に吐出し、該吐出と同時に又は吐出した後に、形成された画像に対して硬化処理を行う、請求項12に記載のインクジェット記録方法。
  16. 前記メタリックインク組成物を用いて画像を形成した後に、該画像に対して乾燥処理を行い、前記有彩色インク組成物、前記黒色インク組成物、前記白色インク組成物を吐出して任意の色調の画像を形成した後、該画像に対して硬化処理を行う、請求項12に記載のインクジェット記録方法。
  17. 前記硬化処理が、紫外線を照射することにより行われる、請求項15又は16に記載のインクジェット記録方法。
  18. インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法において、
    請求項2に記載のインクセットを用いて画像を形成する、インクジェット記録方法。
  19. 前記メタリックインク組成物と、
    前記光硬化型インク組成物A及び/又は前記光硬化型インク組成物Bと、
    を同時に吐出し、該吐出と同時に又は吐出した後に、形成された画像に対して硬化処理を行って任意の色調の画像を形成する、請求項18に記載のインクジェット記録方法。
  20. 前記メタリックインク組成物を吐出して画像を形成した後に、前記光硬化型インク組成物A及び/又は前記光硬化型インク組成物Bを吐出し、該吐出と同時に又は吐出した後に、形成された画像に対して硬化処理を行って任意の色調の画像を形成する、請求項18に記載のインクジェット記録方法。
  21. 前記光硬化型インク組成物A及び前記白色顔料を含有する光硬化型インク組成物Bを用いて画像を形成した後に、光照射によって硬化処理を行い、次いで、(i)前記メタリックインク組成物と、(ii)前記光硬化型インク組成物A及び/又は(iii)前記有彩色顔料又は前記黒色顔料を含有する光硬化型インク組成物Bと、を用いて画像を形成する、請求項18に記載のインクジェット記録方法。
  22. 請求項12〜21のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法により記録された、記録物。
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