JP2016169415A - Snめっき層を備えた導電材 - Google Patents

Snめっき層を備えた導電材 Download PDF

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【課題】アルミニウム基板とSnめっき層の間にNiめっき層を備えず、アルミニウム基板とSnめっき層との密着性に優れ、かつ、曲げ加工性に優れた導電材を提供する。
【解決の手段】アルミニウム基板と、この表面に形成されたSnめっき層とを備え、断面元素分布で基板表面から順にZn皮膜、Snめっき層が存在しており、−50℃で30分間の保持状態から+80℃で30分間の保持状態への環境保持変化を1サイクルとして1000サイクルの環境保持変化後におけるJISH8504に準拠した引き剥がし試験により、Snめっき層の基板からの剥離が発生せず、JISZ2248のVブロック法に準拠した90度曲げ試験により、Snめっき層の割れ及び基板からの剥離が発生しないことを特徴とするSnめっき層を備えた導電材。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば電気自動車、ハイブリット車、鉄道車両等の移動体や、配電盤や蓄電システム等の定置型の産業設備において、電池や電気機器を電気的に接続するためのアルミニウム製又はアルミニウム合金製のSnめっき層を備えた導電材に関する。
一般に電池や電気機器を接続するための導電材には、バスバー、リードフレーム、端子などがあり、導電率と強度のバランスから銅合金が主に用いられている。しかしながら、銅材料の資源枯渇、原料価格の変動、ならびに、軽量化の要請から、銅製の導電材をアルミニウム材料へ置き換える試みが近年活発になっている。
アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、これらをまとめて単に「アルミニウム」と記す)を導電材に適用する際、アルミニウム表面に絶縁性の酸化皮膜が存在することよる接触部での導通不良を改善するため、アルミニウム表面にSnめっき処理が施される。
通常、アルミニウムにSnめっき処理を施す場合、アルミニウムとSnは合金を形成せずアルミニウム上にSnめっき層が形成されても両者の密着性は不十分である。このように不十分な密着性を改善すべく、アルミニウムとSnめっきとの間にNiめっき層を介在させている(特許文献1)。
導電材は、装置、部品を電気的に接続することが主目的であり、配置の決まった装置間や、部品間の狭い空間を利用して接続することが多いため曲げ加工性が必要である。アルミニウム自体は加工性に優れるので、バスバーなどの導電材に要求される90度曲げ加工では割れが発生しない。しかしながら、上記特許文献1のような従来技術であるアルミニウムとSnめっき層の界面にNiめっき層を形成した場合には、Niめっき層がアルミニウム基材とSnめっき層よりも高硬度のため曲げ加工時に割れが発生して、外観不良やめっきの脱落による導通不良が発生する。また、長時間の使用により、NiとSnが相互拡散して脆い金属間化合物を形成し導通不良やめっき剥離の要因となる。
特開2014−47360号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、アルミニウム基板とSnめっき層の間にNiめっき層を備えることなく、アルミニウム基板とSnめっき層との密着性に優れ、かつ、曲げ加工性に優れた導電材を提供することを目的とする。
本発明は請求項1において、アルミニウム又はアルミニウム合金の基板と、当該基板の表面に形成されたSnめっき層とを備え、断面元素分布で前記基板表面から順にZn皮膜、Snめっき層が存在しており、−50℃で30分間の保持状態から+80℃で30分間の保持状態への環境保持変化を1サイクルとして1000サイクルの環境保持変化後におけるJISH8504に準拠した引き剥がし試験により、前記Snめっき層の基板からの剥離が発生せず、JISZ2248のVブロック法に準拠した90度曲げ試験により、前記Snめっき層の割れ及び基板からの剥離が発生しないことを特徴とするSnめっき層を備えた導電材とした。
本発明は請求項2では請求項1において、前記Snめっき層を形成する前における前記基板の算術平均粗さRaが0.30μm以上0.90μm以下であり、輪郭曲線平均長さRSmが7.0μm以上30.0μm以下であるものとした。
本発明により、アルミニウム基板とSnめっき層の間にNiめっき層を備えることなく、アルミニウム基板とSnめっき層との密着性に優れ、かつ、曲げ加工性に優れた導電材が提供可能となる。
本発明に係る導電材は、アルミニウム基板と、この表面に形成されたSnめっき層とを備え、断面元素分布で基板表面から順にZn皮膜、Snめっき層が存在する構造を有する。なお、Zn皮膜は、ジンケート処理によってアルミニウム基板の表層をZn置換して形成される。このように、本発明では、アルミニウム基板とSnめっき層の間にNiめっき層を設けない。
1.アルミニウム基板
本発明で用いるアルミニウム基板の材質は特に限定されるものではないが、導電材として求められる良好な導電率を有するA1000系、A6000系及びA8000系合金が好適に用いられる。
本発明に用いるアルミニウム基板は常法に従って製造したもので良く、求められる板厚に応じて、熱間圧延板又は冷間圧延板のいずれを採用してもよい。具体的には、鋳造工程、均質化工程、面削工程、熱間圧延工程、冷間圧延工程及び焼鈍工程の必要な工程を経て製造される。
本発明に用いるSnめっき層を形成する前におけるアルミニウム基板は、算術平均粗さRaが0.30μm以上0.90μm以下であり、輪郭曲線平均長さRSmが7.0μm以上30.0μm以下である表面形状を有する。ここで、RaとRSmは、JISB0601に準拠してレーザー顕微鏡で分析して求められる。Raが0.30μm未満の場合は、アルミニウム基板におけるSnめっき層と接する表面積の増加が少なくなり、アンカー効果が低減して密着性が低下する。一方、Raが0.90μmを超える場合は、アルミニウム基板表面の突出部の頂点部分にSnめっき層の形成が集中し、Snめっき層の形成が不均一となって密着性が低下する。また、RSmが7.0μm未満の場合は、アルミニウム基板表面の突出部の間隔が狭いため曲げた際のクラックの起点が多くなり、曲げ性が低下する。一方、RSmが30.0μmを超える場合は、アルミニウム基板におけるSnめっき層と接する表面積の増加が少なくなり、アンカー効果が低減して密着性が低下する。
アルミニウム基板の上記表面形状の調整方法は、ブラスト処理、ダル圧延などの機械的処理、アルミニウム基板を溶液に浸漬し、又は溶液をスプレーすることで表面をエッチング処理することによって行なわれる。これらの方法のうち、調整精度の点からブラスト処理が好ましい。
本発明に係る導電材には、電池や電気機器を電気的に接続するため高い導電性が要求される。そこで、これに用いるアルミニウム基板の導電率は55%IACS以上であることが好ましい。55%未満では電力損失が増大するなど、導電材としての特性が不十分となる。導電率の上限は特に規定するものではないが、アルミニウム基板の導電率の上限は64%IACSである。
本発明に係る導電材に用いるアルミニウム基板は、調質された際に100MPa以上の引張強度を有するのが好ましい。引張強度が100MPa未満では、組み付けの際のハンドリング時や、製品としての使用時における振動で変形する可能性がある。また引張強度の上限は特に限定されるものではない。
2.Zn皮膜
アルミニウム基板の上に密着性良くSnめっき層を形成するのは難しいので、本発明に用いるアルミニウム基板は、その表層とSnめっき層との間にZn皮膜を有する。Zn皮膜の形成には、従来のジンケート処理を用いることができる。例えば、アルカリ性の脱脂剤でアルミニウム基板表面の油を除去し、次いで、アルカリ性のエッチング液で表層の酸化皮膜を除去し、更に、アルカリ処理により生成したスマットを硝酸で除去した後に、ダブルジンケート処理を施すものである。
Zn皮膜の厚さは、0.1μm以上0.5μm以下であるのが好ましく、0.1μm以上0.3μm以下であるのがより好ましい。Zn皮膜の厚さが0.1μm未満では、アルミニウム基板とSnめっき層との十分な密着性が得られない場合があり、0.5μmを超えると、曲げ加工した際に割れの起点となる場合がある。
3.Snめっき層
アルミニウム基板表層のZn皮膜の上のSnめっき層は、従来用いられる電解めっき法又は無電解めっき法により形成することができる。Snめっき層の厚さは、1.0μm以上10.0μm以下であるのが好ましく、1.0μm以上5.0μm以下であるのがより好ましい。Snめっき層の厚さが1.0μm未満ではめっきが形成されないピンホールが生じる場合があり、10.0μmを超えるとめっき付着厚さにばらつきが生じる場合がある。
4.Snめっき層を備えた導電材
本発明に係るSnめっき層を備えた導電材は、形状に限定されない。バスバーとして用いる場合、通常、断面が矩形の棒状をなす。棒状の厚さは、0.5〜10mmとするのが好ましい。厚さが0.5mm未満では、十分な通電性を確保することができない場合がある。一方、10mmを超えると、実用上必要なプレス成形性や曲げ加工性が得られない場合がある。なお、本発明に係る導電材では、曲げ加工、プレス打ち抜き加工、ボルト用の穴開け加工を行うこともある。
以下、発明例及び比較例に基づいて本発明の具体的な形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表1に示すように、発明例及び比較例では、表面形状(Ra及びRSm)の異なるアルミニウム基板(A6101−T6で板厚2mm)を用いた。このアルミニウム基板に、アルカリ脱脂処理、アルカリ洗浄、硝酸洗浄、ダブルジンケート処理及びSnめっき処理をこの順序で実施してSnめっき層を備えた導電材試料を作製した(発明例1〜5及び比較例2、3、5)。
Figure 2016169415
Snめっき層を形成する前におけるアルミニウム基板の表面形状(Ra及びRSm)の相違は、異なる大きさのアルミナメディア又はガラスビーズを投射するブラスト処理によって設けた。なお、比較例1では、アルミニウム基板に、ブラスト処理を行なわず、アルカリ脱脂処理、アルカリ洗浄、硝酸洗浄、ダブルジンケート処理及びSnめっき処理をこの順序で実施した。また、比較例4では、アルミニウム基板に、ブラスト処理を行なわず、アルカリ脱脂処理、アルカリ洗浄、硝酸洗浄、ダブルジンケート処理、Niめっき処理及びSnめっき処理をこの順序で実施した。表面粗さ形状の分析はSnめっき処理の前に実施した。
上記のようにして作製した試料を用いて、アルミニウム基板とSnめっき層の密着性、ならびに、曲げ性を評価した。
1.密着性
アルミニウム基板とSnめっき層の密着性は、以下のようにして評価した。冷熱衝撃装置(エスペック株式会社製、型式TSA−102ELA)を用いて、導電材試料を、−50℃で30分間の保持状態から+80℃で30分間の保持状態へ移す環境保持変化を1サイクルとして、これを1000サイクル行なった。
次いで、サイクル試験後の導電材試料を、JISH8504の引き剥がし試験法のテープ試験方法に準拠して試験した。具体的には、試料のSnめっき層の表面に、一辺が2mmの正方形の条痕をカッタで形成した。そして、この条痕部分に粘着テープを張り付けてこれを引き剥がし、めっき層の剥離発生の有無を観察した。めっき層の剥離が発生しない場合を合格とし、剥離が発生した場合を不合格とした。
2.曲げ性
曲げ性は、以下のようにして評価した。導電材試料の板厚が2mmと厚いため、JISZ2248(金属材料曲げ試験方法)のVブロック法に準拠して試験した。具体的には、試料をVブロックに載置し押金具(内側半径1.0mm)によって90度に押し曲げた後に、曲げ部頂点の外側を観察して、Snめっき層の割れ及び基板からの剥離の発生の有無を調べた。Snめっき層の割れ及び基板からの剥離がいずれも発生しない場合を合格とし、Snめっき層の割れ及び基板からの剥離の少なくともいずれかが発生した場合を不合格とした。
これらの密着性及び曲げ性の評価結果を、表1に示す。
表1に示すように、発明例1〜5はいずれも、密着性及び曲げ性が合格であった。
比較例1では、ブラスト処理を行なわなかったのでRSmが小さくなり、アルミニウム基板表面における粗さ断面の山間の距離が短くなった。その結果、曲げ加工時のクラックの起点が増え、曲げ性(割れ及び剥離)が不合格であった。
比較例2では、ブラスト処理で投射したアルミナメディアが小さかったためRaが小さくなり、アルミニウム基板表面における粗さ断面の山谷の高低差が小さくなった。その結果、アルミニウム基板におけるSnめっき層と接する表面積の増加が少なく、密着性(中程度の剥離)が不合格であった。また、アルミナメディアが小さかったためRSmが小さくなり、アルミニウム基板表面における粗さ断面の山間の距離が短くなった。その結果、曲げ加工時のクラックの起点が増え、曲げ性(割れ)が不合格となった。
比較例3では、ブラスト処理で投射したアルミナメディアが大きかったためRaが大きくなり、アルミニウム基板表面における粗さ断面の山谷の高低差が大きくなった。その結果、アルミニウム基板表面における粗さ断面の山の部分にSnめっき層の形成が集中し、Snめっき層が均一に形成できず、密着性(小程度の剥離)が不合格となった。また、アルミナメディアが大きかったためRSmが大きくなり、アルミニウム基板表面における粗さ断面の山間の距離が長くなった。その結果、アルミニウム基板におけるSnめっき層と接する表面積の増加が少なく、密着性(少程度の剥離)が不合格であった。以上のように、密着性が不足したことで曲げ試験において割れが生じ、曲げ性も不合格であった。
比較例4では、Niめっき層の上にSnめっき層を形成したため、密着性は合格であった。しかしながら、Niめっき層を起点としてSnめっき層まで割れが発生し、曲げ性が不合格であった。
比較例5では、ブラスト処理で投射したガラスビーズメディアが小さかったため、Raが小さくなりアルミニウム基板表面における粗さ断面の山谷の高低差が小さくなった。その結果、アルミニウム基板におけるSnめっき層と接する表面積の増加が少なく、密着性(中程度の剥離)が不合格であった。密着性が不足したことで曲げ試験後には剥離が生じ、曲げ性も不合格であった。
アルミニウム基材とSnめっき層との密着性を向上させたことで、アルミニウム基材とSnめっき層との中間層となるNiめっき層を省くことができる。その結果、アルミニウム基材とSnめっき層との高密着性を備えつつ、曲げ性が良好な導電材が得られる。更に、Niめっき層が不要になるため、原料コスト及び製造コストの削減が図られる。

Claims (2)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金の基板と、当該基板の表面に形成されたSnめっき層とを備え、断面元素分布で前記基板表面から順にZn皮膜、Snめっき層が存在しており、−50℃で30分間の保持状態から+80℃で30分間の保持状態への環境保持変化を1サイクルとして1000サイクルの環境保持変化後におけるJISH8504に準拠した引き剥がし試験により、前記Snめっき層の基板からの剥離が発生せず、JISZ2248のVブロック法に準拠した90度曲げ試験により、前記Snめっき層の割れ及び基板からの剥離が発生しないことを特徴とするSnめっき層を備えた導電材。
  2. 前記Snめっき層を形成する前における前記基板の算術平均粗さRaが0.30μm以上0.90μm以下であり、輪郭曲線平均長さRSmが7.0μm以上30.0μm以下である、請求項1に記載のSnめっき層を備えた導電材。
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