JPH0953182A - アルミニウム合金材料のめっき前処理方法 - Google Patents

アルミニウム合金材料のめっき前処理方法

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JPH0953182A
JPH0953182A JP20805495A JP20805495A JPH0953182A JP H0953182 A JPH0953182 A JP H0953182A JP 20805495 A JP20805495 A JP 20805495A JP 20805495 A JP20805495 A JP 20805495A JP H0953182 A JPH0953182 A JP H0953182A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 廃水処理が困難なフッ化物を使用することな
く、Al合金材料に、めっき層が均一に付着するような
前処理方法の提供。 【解決手段】 Al合金表面に、めっき前処理として、
アルカリ金属水酸化物、有機カルボン酸又はその塩、有
機ホスホン酸又はアルカリ金属塩0.1〜60g/リッ
トルを含むエッチング液により、75℃においてエッチ
ングを施し、次に、Znイオン、Feイオン、アルカリ
金属水酸化物、有機カルボン酸又はアルカリ金属塩、お
よび必要により有機ホスホン酸又はアルカリ金属塩を含
む浴による亜鉛置換処理を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウム合金
材料のめっき前処理技術に関するものであり、特に珪素
を含有する鋳物用アルミニウム合金材料に効果的なめっ
き前処理技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般にアルミニウム合金上にめっきを施
す場合、めっき密着性向上のためにはアルミニウム表面
の酸化皮膜の除去が必要であり、このために前記アルミ
ニウム合金材料表面を脱脂した後、これにアルカリまた
は酸によるエッチング処理が施されている。
【0003】アルミニウム含有金属材料の表面には通常
厚い酸化皮膜が形成しているので、これを除去するため
には特定のアルカリやフッ化水素酸などによって、表面
部分をある程度溶解する必要がある。
【0004】アルカリ金属の水酸化物溶液を用いたアル
ミニウム合金用エッチングは、エッチング速度が速く、
しかもフッ化物が含まれていないため、排水処理性に優
れているという利点がある。
【0005】しかし、アルミニウム合金の場合、アルミ
ニウムに対する合金成分が表面に偏析するため、表層の
組成が不均一になりやすく、フッ化物を含まないアルカ
リ金属水酸化物溶液によるエッチングでは均一なエッチ
ングを施すことが非常に困難である。
【0006】その理由は、合金材料表面部分の組成が不
均一であると、部位によって表面電位(腐食電位)が異
なるために、ミクロセル(局部電池)を形成し易く、こ
のためエッチング溶液中でのエッチングも不均一で局部
的なものとなり、短時間のエッチングでは酸化物層を完
全に除去できないということによる。
【0007】このエッチング効果の不均一性は、アルミ
ニウム合金材料のめっき処理において、エッチング後に
施される亜鉛置換処理皮膜およびめっき皮膜と、アルミ
ニウム合金材料表面との密着性が低下する最大の原因と
なっていた。
【0008】酸化物層を完全に除去することは、長時間
のエッチングを施せば可能であるが、この場合には、エ
ッチング後の表面の粗度が過大となり、このためめっき
層の平滑性や寸法精度に問題を生ずることになる。
【0009】一方、アルミ合金製エンジンブロックやピ
ストンなどの摺動部材としてアルミニウム−珪素合金が
用いられるがその摺動面の耐摩耗性を向上させるため、
合金材料の表面部分を深さ数μm程度溶解してアルミニ
ウム/珪素系アルミニウム合金中の初晶シリコン粒子を
表面に突出させることが好ましく、この目的のためにア
ルミニウム合金材料表面に陽極酸化処理や電解エッチン
グ処理が施されている。
【0010】このような陽極酸化や電解エッチングを用
いてアルミニウム合金エンジン部品の耐摩耗性を向上さ
せた例としては、特開昭53−58443号公報に記載
されており、これにはアルミニウム合金製ピストンに、
りん酸50〜300g/リットルを含有する溶液中で1
0A/dm2 の電流密度で陽極酸化処理を施したのち、め
っきする技術が開示されている。
【0011】また、特開平5−86972号公報には、
アルミニウム合金材料に過塩素酸と氷酢酸の混合溶液中
で50V、40℃の条件下2分間の電解エッチングを施
した後、これにめっきする技術が開示されている。
【0012】これらの先行技術において、処理コストや
設備費用が安価なアルカリ溶液による化学エッチングが
使用されていないが、その理由は、従来のアルカリエッ
チングで珪素等を含有するアルミニウム合金をエッチン
グした場合、当該合金の組成、成分によってエッチング
速度が著しく異なり、かつ均一なエッチングが非常に困
難であるため、エッチング過少な部位と過多な部分とが
混在してしまい、所望の目的を達成できないということ
にある。
【0013】従って、現状では、アルミニウム合金材料
にめっきを施すときの前処理として、均一なエッチング
を施すことができ、めっき皮膜の密着性と平滑性とを向
上させることが可能であり、かつ廃水処理の困難なフッ
素化合物を使用することのないアルミニウム合金の前処
理方法は見出されていないのである。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、アルミニウ
ム合金材料の表面にめっき工程を施すまでに、前処理と
して施されるエッチング処理及び亜鉛置換処理工程にお
いて、従来技術の問題点、すなわち、アルカリエッチン
グの際に、合金組成に由来するエッチング効果の不均一
性を減少させると同時に、不均一な合金材料に対して
も、これを均一にエッチングすることができ、それによ
って、局部的なエッチング不良ならびに過剰エッチング
を防止して、めっき皮膜の密着性及び平滑性を向上させ
ることができる、アルミニウム合金材料のめっき前処理
方法を提供しようとするものである。
【0015】また、本発明は、従来電解エッチングまた
は陽極酸化が必要とされていたアルミニウム合金摺動部
品用材料等についても、そのめっき前処理におけるエッ
チングにも使用可能であるような、アルミニウム合金材
料のめっき前処理方法を提供しようとするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者は、アルミニウ
ム合金材料のめっき工程の前処理として施されるエッチ
ング処理工程において、化学エッチングを施す場合、エ
ッチング処理が不十分であると表面の酸化皮膜が十分に
除去されていないため、めっき層の密着性が低下して製
品の品質が不良になることや、逆にエッチングが過剰で
あると表面が著しく粗化し、めっきの光沢が失われ、製
品の寸法精度も悪化することなどの問題に対し、その解
決のため種々の検討を行った。
【0017】また、本発明者は、めっき工程の前処理と
して、電解エッチングや陽極酸化処理を施す場合、電解
処理が設備面や作業性の点でコストアップの原因となっ
ており、この問題の本質的な解決は電解処理を採用する
限り不可能であり、従来の化学エッチングに替わる新た
な技術が必要であるとの観点から、これらの技術課題を
解決するための手段について、コストが安価で廃水処理
が容易な特長を持つアルカリエッチング液組成を中心に
鋭意研究を重ねた。
【0018】本発明者は、最初に、従来のアルカリエッ
チング剤による各種アルミニウム合金のエッチング速度
(mg/分)を測定した結果、合金種、組成によってエッ
チング速度が大きく異なる現象を確認した。
【0019】次に本発明者は、エッチング処理後の合金
表面を電子顕微鏡によって詳細に観察した結果、従来の
アルカリエッチング剤ではエッチングを均一に施すこと
は難しく、特に合金表面の組成が不均一な珪素含有率の
高いアルミニウム−珪素系合金の鋳物、およびダイカス
ト材ではこの傾向が顕著であり、Si粒子に隣接する部
位が局所的に深くエッチングされており、他の部位はエ
ッチングが不十分となることを見出した。
【0020】さらにこれらの結果をもとに、エッチング
浴の組成を、酸化皮膜や合金成分の化学的溶解作用の高
いものとすることにより、合金成分が偏析しているアル
ミニウム合金表面でも、より均一なエッチングが可能に
なるのではないかとの考えから、各種のキレート剤の組
み合わせについて、そのエッチング速度およびエッチン
グの均一性を検討した。
【0021】その結果、本発明者はエッチング液に有機
ホスホン酸を添加することにより、種々の組成のアルミ
ニウム合金材料に対してもエッチング速度がほぼ一定と
なり、かつエッチングが均一となって、表面粗度が過大
となることがないという知見を得た。
【0022】さらに発明者は、有機ホスホン酸またはそ
のアルカリ金属塩と、有機カルボン酸またはそのアルカ
リ金属塩と、アルカリ金属の水酸化物を含むエッチング
液で処理したのち亜鉛イオン、鉄イオン、アルカリ金属
の水酸化物、および有機カルボン酸またはそのアルカリ
金属塩を含む浴で亜鉛置換処理し、その上にNi/P合
金電気めっきを施した場合、このめっき皮膜の密着性
が、エッチング液中に有機ホスホン酸またはそのアルカ
リ金属塩を含まない場合と比較して著しく優れており、
エッチング後の表面の平滑性もより良好であることを確
認した。
【0023】同時に、本発明者は亜鉛置換処理浴組成に
ついても検討し、前記亜鉛置換浴中に有機ホスホン酸ま
たはそのアルカリ金属塩を含有させることにより、さら
に良好な密着性が得られることを見出した。
【0024】また、各種処理条件についても検討し、エ
ッチング処理浴の温度が75℃を超えるとホスホン酸ま
たはそのアルカリ金属塩の効果が低下すること、および
エッチング後に硝酸などで酸洗することにより、さらに
密着性が向上すること等を見出して本発明を完成した。
【0025】即ち本発明に係るアルミニウム合金のめっ
き前処理方法は、アルミニウム合金材料の表面をアルカ
リ金属の水酸化物と、有機カルボン酸と、0.1〜60
g/リットルの有機ホスホン酸またはその塩とを含む水
溶液を用いて、75℃以下の温度でエッチング処理する
工程、および前記エッチングされたアルミニウム合金材
料表面に、亜鉛イオンと、鉄イオンと、アルカリ金属の
水酸化物と、および有機カルボン酸またはそのアルカリ
金属塩とを含む浴による亜鉛置換処理を施す工程を含む
ことを特徴とするものである。
【0026】また、本発明方法において、前記亜鉛置換
処理浴は、さらに有機ホスホン酸またはそのアルカリ金
属塩を含むことが好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明方法が前処理法として適用
されるめっきは、ニッケル系、コバルト系、鉄系、クロ
ム系、スズ系、鉛系、および銅系金属などの電気合金め
っきおよび電気複合めっき等の電気めっきであるが、そ
の他に、同様の無電解めっき、および置換めっきにも適
用が可能である。
【0028】また、本発明のアルカリエッチング液で使
用されるアルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナト
リウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等があるが、
経済性の点から水酸化ナトリウムが最も適している。
【0029】アルカリ金属水酸化物のエッチング浴中濃
度は、1〜200g/リットルであることが好ましい。
その濃度が1g/リットル未満では、エッチング速度が
遅く、液の寿命が短くなることがある。またその濃度が
200g/リットルを超えるとエッチング液の粘性が上
がり、水素ガスが表面から離脱しにくくなるためエッチ
ング速度が低下することがある。
【0030】より好ましいアルカリ金属の水酸化物の濃
度範囲は、水酸化ナトリウムの場合、20〜150g/
リットルである。
【0031】また、本発明方法に用いられるエッチング
水溶液中には、有機ホスホン酸またはそのアルカリ金属
塩を有機ホスホン酸に換算して0.1〜60g/リット
ル含むことが必要である。
【0032】本発明方法に用いられる有機ホスホン酸と
しては、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホ
ン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミ
ンテトラメチレンホスホン酸、およびジエチレントリア
ミンペンタメチレンホスホン酸等があるが、これらの中
でも1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸
がコスト面から好ましい。
【0033】エッチング液中の有機ホスホン酸の濃度が
0.1g/リットル未満では、めっき密着性やエッチン
グの均一性が充分でなく、またそれが60g/リットル
を超える場合には、経済性と排水処理性に問題が生じ
る。有機ホスホン酸又はそのアルカリ金属塩の濃度のよ
り好ましい範囲は0.3〜20g/リットルである。
【0034】また本発明のエッチング液、および亜鉛置
換処理液中には、溶出した金属イオンが沈澱することを
防止するために有機カルボン酸またはそのアルカリ金属
塩を添加することが必要である。
【0035】有機カルボン酸としては、グルコン酸、酒
石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸およびリンゴ酸等
が使用でき、これらをナトリウム塩またはカリウム塩な
どのようなアルカリ金属塩として添加することが好まし
く、中でもグルコン酸ナトリウムが最も好ましい。
【0036】これらの有機カルボン酸またはその塩の濃
度は、有機カルボン酸として0.2〜100g/リット
ルの範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜1
0g/リットルの範囲である。
【0037】この数値が0.2g/リットル未満では、
少量の処理でもアルミニウム水酸化物の沈澱が生ずると
いう問題を生ずることがあり、また、それが100g/
リットルを超えると、排水処理が困難になることがあ
る。
【0038】このようにして調製された本発明のエッチ
ング溶液は、そのpHは12〜14の範囲にあることが好
ましい。
【0039】本発明では、エッチング処理は液温75℃
以下で施される。エッチング工程は、25〜60℃で浸
漬処理することが最も好ましい。
【0040】液温度が25℃未満ではエッチング速度が
不十分になることがある。また、そが75℃を超えると
有機ホスホン酸の効果が不十分となり均一エッチング効
果が低下する。
【0041】また、本発明のエッチング処理液による処
理時間は10〜180秒の範囲であることが好ましい。
処理時間が10秒未満では酸化膜の除去が不十分になる
ことがあり、それが180秒を超えるとオーバーエッチ
ングとなり、表面粗度が過大となることがある。
【0042】好ましいエッチング処理時間としては、目
的によってやや異なるが、表面の光沢を重視する場合に
は20〜60秒間、アルミニウム−珪素系合金の耐摩耗
性を向上させたい場合は60〜150秒間である。
【0043】本発明のめっき前処理は、被処理材である
アルミニウム合金材料を有機溶剤または界面活性剤を含
む水系洗浄液で脱脂したのち、さらに必要に応じて水洗
した後に施されることが好ましい。
【0044】洗浄後の被処理材は、前記のエッチング溶
液によって処理されたのち、亜鉛イオン、鉄イオン、ア
ルカリ金属の水酸化物、および有機カルボン酸またはそ
のアルカリ金属塩を含む亜鉛置換浴で亜鉛置換処理する
ことにより、優れた性能を有するめっき下地が形成され
る。
【0045】本発明の亜鉛置換処理浴には、亜鉛イオ
ン、鉄イオン、アルカリ金属の水酸化物、および有機カ
ルボン酸またはそのアルカリ金属塩を含むことが必要で
あり、この浴にさらに有機ホスホン酸またはそのアルカ
リ金属塩を添加することによりさらにめっき処理後の皮
膜密着性を向上させることができる。
【0046】この亜鉛置換処理液は、アルカリ金属の水
酸化物、および有機カルボン酸またはそのアルカリ金属
塩を溶解した水溶液に、亜鉛または酸化亜鉛を溶解して
亜鉛イオンを形成させ、さらに硫酸鉄などの可溶性鉄塩
を添加して鉄イオンを形成させることによって調製され
る。
【0047】置換浴中の亜鉛イオンの濃度は、0.3〜
80g/リットルの濃度範囲にあることが好ましく、よ
り好ましい範囲は3〜30g/リットルである。
【0048】亜鉛イオン濃度が80g/リットルを越え
ると沈澱が生じ易くなり、また、それが0.3g/リッ
トル未満では皮膜密着性が不十分になることがある。
【0049】また、置換浴中の鉄イオンの濃度は、0.
1〜30g/リットルの範囲にあることが好ましく、
0.5〜10g/リットルの範囲がより好ましい。この
濃度が0.1g/リットル未満ではめっきの密着性が不
十分になることがあり、またそれが30g/リットルを
越えると水酸化鉄の沈澱が生じ易くなることがある。
【0050】亜鉛置換浴中のアルカリ金属水酸化物とし
ては、アルカリエッチング液と同様にナトリウム、カリ
ウム等の水酸化物が使用され、これらの中で水酸化ナト
リウムが最も好ましい。
【0051】置換浴中のアルカリ金属水酸化物濃度は、
5〜200g/リットルの範囲であることが好ましい。
【0052】また、本発明方法において用いられる亜鉛
置換浴中の有機ホスホン酸またはそのアルカリ金属塩の
濃度は、0.02〜50g/リットルの範囲にあること
が好ましく、より好ましい範囲は0.2〜20g/リッ
トルである。
【0053】有機ホスホン酸またはそのアルカリ金属塩
の種類としては前記アルカリエッチング液中に添加され
るものと同様である。
【0054】また、本発明のエッチング処理を行った
後、亜鉛置換処理する前に、アルミニウム合金材料に、
必要により20〜40%硝酸による20〜120秒間の
酸洗を施すことにより、表面に残留しているアルミニウ
ム水酸化物を完全に除去することができ、さらにめっき
密着性を向上させることができる。
【0055】本発明のアルミニウム合金のめっき前処理
方法において、エッチング溶液中に含まれる有機ホスホ
ン酸は、アルミニウム合金材料表面のアルミニウム酸化
物や、マグネシウム、鉄、銅などの金属に対して高い溶
解作用を有するため、この作用と、アルカリ金属の水酸
化物が金属アルミニウムを溶解する反応との相互作用に
よりこれらの皮膜を除去し、エッチングの均一性を高め
るという効果を奏する。
【0056】また、有機ホスホン酸の有するスレッシュ
ホールド効果により、金属イオンの沈澱を防止し、スマ
ットの付着が防止される。このため、その後に亜鉛置換
処理を施した場合に、より良好な亜鉛置換皮膜が得ら
れ、このためめっき層の密着性も向上するのである。
【0057】本発明方法の上記の効果はアルカリエッチ
ング液に有機ホスホン酸またはそのアルカリ金属塩を添
加することによってはじめて達成される効果であり、グ
ルコン酸などの有機カルボン酸のみではこのような効果
は達成されない。
【0058】また、同様に亜鉛置換浴に添加される有機
ホスホン酸も、亜鉛置換浴中で素材の均一エッチングを
助ける効果を示すため、有機ホスホン酸またはそのアル
カリ塩の添加により亜鉛置換皮膜と、アルミニウム合金
材料表面との密着性をより高いものにすることができ
る。
【0059】
【実施例】本発明の下記実施例によりさらに説明する。
【0060】実施例1〜9および比較例1〜7 実施例1〜9および比較例1〜7において、表1に記載
のアルミニウム合金材(50mm×30mm)を、アルミニ
ウム用脱脂液(登録商標:ファインクリーナー315、
日本パーカライジング(株)製)を使用して、70℃×
120秒間浸漬脱脂し、これを水洗して表面の油分を除
去した。
【0061】アルミニウム合金材の種類を表1に示す。
【表1】
【0062】油分を除去した試験片に、アルカリエッチ
ング溶液で処理を施した後、これを水洗し、さらに亜鉛
置換処理を施した。
【0063】試験片のうち、めっきの密着性試験に供す
るものには、アルカリエッチング処理後に亜鉛置換処理
したのちニッケル/りん合金電気めっきを施した。
【0064】これは、ニッケル/リン合金めっきは硬質
で展性に乏しく、下地処理が不十分な場合、力を加える
と剥離しやすいため、密着性評価に適しているためであ
る。
【0065】密着性試験用試験片の処理はアルカリエッ
チング直後(亜鉛置換前)に30%硝酸浸漬を30秒間
行った場合と、省略した場合の2通りの工程で行った。
【0066】亜鉛置換処理は、水酸化ナトリウムに酸化
亜鉛、グルコン酸ナトリウム、および硫酸第二鉄を溶解
させたジンケート置換浴を使用して、30℃で20秒間
処理した。
【0067】エッチング処理液及び亜鉛置処理液の調製
に使用した薬品としては、有機ホスホン酸は日本モンサ
ント(株)製、ディクエスト(登録商標)2010,2
000,2041、および2066を使用し、水酸化ナ
トリウム、グルコン酸ナトリウム、酸化亜鉛、硫酸第二
鉄等の薬品については1級試薬または相当品を使用し
た。
【0068】また、処理液中のアルカリ金属の水酸化物
としては水酸化ナトリウムを使用した。
【0069】エッチング水溶液および亜鉛置換液中に添
加した有機ホスホン酸の種類を表2に示し、有機カルボ
ン酸の種類を表3に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】エッチング処理後の試験片は、水洗、乾燥
後に表面あらさ計(東京精密(株)製 サーフコム:商
標登録)によって表面粗度(Ra )を測定した。
【0073】また、エッチング処理前後の重量差を測定
し、60秒処理後のエッチング減量(g/m2 )を算出
し、エッチング速度の目安とした。
【0074】ニッケル/リン合金電気めっきとしては、
スルファミン酸ニッケル480g/リットル、塩化ニッ
ケル15g/リットル、硼酸45g/リットル、サッカ
リンナトリウム5g/リットルの浴に次亜りん酸0.2
5g/リットル、を添加しためっき浴を使用し、浴温度
57℃、電流密度10A/dm2 で10分間めっき行っ
た。
【0075】めっき後の皮膜密着性テストにおいて、試
験片を中央からシャーリング切断した後、カッターナイ
フの刃を皮膜−素材間に差し込んで強制剥離し、この際
の剥離し易さから下記の基準により判定した。
【0076】 密着性の評価 評点 密着性 良↑ 5 強い力を加えるとアルミ素地とともに剥離 4 力を加えると一部がめっき−素地界面から剥離 3 力を加えるとめっき−素地界面から剥離 2 素地−めっき皮膜界面から容易に剥離 劣↓ 1 切断により自然剥離
【0077】実施例1〜9におけるエッチング工程の工
程条件およびその結果を表4に示し、亜鉛置換工程の工
程条件、およびめっき密着性テスト結果をおよび表5に
示す。
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】比較例1〜7におるエッチング工程の工程
条件およびその結果を表6に示し、亜鉛置換工程の工程
条件およびめっき密着性テスト結果を表7に示す。
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】表4〜7の結果から明らかなように、本発
明の構成要件を満たす実施例1〜9においては、試験片
のエッチング後の表面粗さが小さく、かつめっき密着性
に優れていた。一方、本発明の構成要件のうちエッチン
グ条件、亜鉛置換浴条件ともに満たさない比較例1及び
2、亜鉛置換浴条件は満たすがエッチング条件は満たさ
ない比較例3及び4、エッチング条件は満たすが亜鉛置
換浴条件を満たさない比較例5及び6、およびエッチン
グ浴の温度条件を満たさない比較例7においては、いず
れも得られた前処理試験片のめっき密着性が劣ってい
た。
【0084】
【発明の効果】上記に説明したように、本発明のアルミ
ニウム合金材料のめっき前処理方法を用いれば、作業環
境や廃水処理に有害なフッ素化合物を含まないアルカリ
処理浴のみを使用して、各種合金成分を含む不均質なア
ルミニウム合金材料に対して、均一で十分なエッチング
を行うことが可能であり、かつ良好なめっき密着性を得
ることができる。しかも、合金成分に差があってもエッ
チング量のばらつきが少ないため、めっきの密着性や平
滑性の向上のみでなく、従来電解エッチングや陽極酸化
処理によってエッチングを行っていたアルミニウム合金
摺動部材の耐摩耗性向上のための前処理等の目的にも利
用が可能となり、実用上の効果が大きい。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム合金材料の表面をアルカリ
    金属の水酸化物と、有機カルボン酸またはそのアルカリ
    金属塩と、0.1〜60g/リットルの有機ホスホン酸
    またはそのアルカリ金属塩とを含む水溶液を用いて、7
    5℃以下の温度でエッチング処理する工程、および前記
    エッチングされたアルミニウム合金材料表面に、亜鉛イ
    オンと、鉄イオンと、アルカリ金属の水酸化物と、およ
    び有機カルボン酸またはそのアルカリ金属塩とを含む浴
    による亜鉛置換処理を施す工程とを含むことを特徴とす
    る、アルミニウム合金材料のめっき前処理方法。
  2. 【請求項2】 前記亜鉛置換処理浴がさらに有機ホスホ
    ン酸またはそのアルカリ金属塩を含む、請求項1に記載
    のアルミニウム合金材料のめっき前処理方法。
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