以下に、本発明に係る端子圧着装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
[実施形態]
本発明に係る端子圧着装置の実施形態の1つを図1から図4に基づいて説明する。
図1及び図2の符号1は、本実施形態の端子圧着装置を示す。
この端子圧着装置1は、複数の端子金具100の連鎖体(以下、「端子連鎖体」という。)100C(図8)における所定の端子金具100を圧着位置まで送り、その圧着位置まで供給された端子金具100を電線110(図9)に圧着させる。端子連鎖体100Cとは、同一方向を向いて並列に配置された複数の端子金具100が連鎖状に繋がっている端子金具100の集合体のことをいう。圧着位置とは、後述する圧着機10に設けられている圧着加工の実施場所のことである。
この端子圧着装置1においては、第1型としての下型(アンビル)と第2型としての上型(クリンパ)との間に端子金具100と電線110とを配置し、下型と上型との間隔を狭めながら下型と上型とで上下方向から端子金具100と電線110を挟み込むことによって、これらの圧着加工を行う。よって、ここでは、下型に対する上型に向けた方向を上方といい、上型に対する下型に向けた方向を下方という。この端子圧着装置1では、このように上下を定義する。また、この端子圧着装置1においては、装置前に居る作業者が本装置の起動や停止等を行うものとする。ここでは、端子圧着装置1に対して作業者の居る側(図1の紙面手前側)を前側といい、その逆側を後側という。この端子圧着装置1では、このように前後を定義する。また、この端子圧着装置1においては、作業者から見た右手を端子圧着装置1における右側といい、作業者から見た左手を端子圧着装置1における左側という。この端子圧着装置1では、このように左右を定義する。この端子圧着装置1においては、左方から右方の圧着位置へと端子連鎖体100Cが送られていく。
電線110は、先端で芯線111を露出させるべく、この先端において被覆112を剥いて取り除いたものである。端子圧着装置1としては、例えば、電線供給機(図示略)によって、この電線110を下型及び端子金具100と上型との間まで供給させるよう構成されたものがある。また、端子圧着装置1としては、装置前に居る作業者が下型及び端子金具100と上型との間に電線110を配置するよう構成されたものもある。更に、端子圧着装置1としては、その電線110が端子金具100の上方に配置されるよう構成されたものもあれば、その電線110が端子金具100の上に載せ置かれるよう構成されたものもある。
端子金具100は、導電性の金属の板材が所定の形状に成形されたものである。端子金具100は、先端の芯線111の近くで電線110の被覆112を圧着する被覆圧着部101と、その先端の芯線111を圧着する芯線圧着部102と、相手側端子(図示略)に対して電気的に接続される電気接続部103と、を有する(図9)。被覆圧着部101と芯線圧着部102と電気接続部103は、その順番で互いに所定の隙間104a,104bを空けて配置されている。更に、この端子金具100は、被覆圧着部101と芯線圧着部102とを繋ぐ第1連結部105と、芯線圧着部102と電気接続部103とを繋ぐ第2連結部106と、を有する。この端子金具100は、一端部を成す被覆圧着部101から他端部を成す電気接続部103に向けて延在している。端子圧着装置1は、その図9に示すような端子金具100と電線110との圧着状態を形成する。
電線110が圧着される前の端子金具100において、電線110への圧着に伴い被覆圧着部101が形成される部分(圧着対象部位)には、圧着加工に伴い電線110(被覆112)が載置される板状の基部101Bと、端子連鎖体100Cの送り方向における基部101Bの両端から各々立設された板状の2枚の被覆圧着片(加締め片)101Pと、が設けられている。つまり、この部分(基部101Bと2枚の被覆圧着片101Pとから成る部分)は、軸線方向(延在方向)に対して直交する断面が、コの字状又はUの字状等のような一端が開口された形状に形成されている。このため、圧着加工工程においては、基部101Bと2枚の被覆圧着片101Pによって電線110(被覆112)が囲まれることになる。被覆圧着部101は、その基部101Bと2枚の被覆圧着片101Pとによって囲まれた空間(以下、「被覆収容空間」という。)内に電線110が存在している状態で、その2枚の被覆圧着片101Pを内側の電線110側に巻き込みながら被覆112に加締めていくことによって形成される。
電線110が圧着される前の端子金具100において、電線110への圧着に伴い芯線圧着部102が形成される部分(圧着対象部位)には、圧着加工に伴い電線110(先端の芯線111)が載置される板状の基部102Bと、端子連鎖体100Cの送り方向における基部102Bの両端から各々立設された板状の2枚の芯線圧着片(加締め片)102Pと、が設けられている。つまり、この部分(基部102Bと2枚の芯線圧着片102Pとから成る部分)は、軸線方向(延在方向)に対して直交する断面が、コの字状又はUの字状等のような一端が開口された形状に形成されている。このため、圧着加工工程においては、基部102Bと2枚の芯線圧着片102Pによって電線110(先端の芯線111)が囲まれることになる。芯線圧着部102は、その基部102Bと2枚の芯線圧着片102Pとによって囲まれた空間(以下、「芯線収容空間」という。)内に電線110が存在している状態で、その2枚の芯線圧着片102Pを内側の電線110側に巻き込みながら芯線111に加締めていくことによって形成される。尚、端子連鎖体100Cの送り方向は、基部102Bの幅方向や端子金具100の幅方向に一致するものである。
端子金具100は、雄端子であってもよく、雌端子であってもよい。電気接続部103は、端子金具100が雄端子の場合、雄型に成形され、端子金具100が雌端子の場合、雌型に成形される。電気接続部103は、圧着位置に到達したときには既に雄型又は雌型に成形されている。この例示では、雌端子を例に挙げて説明する。
電線110が圧着される前の端子金具100においては、基部101Bと基部102Bとが第1連結部105で繋がっており、基部102Bと電気接続部103とが第2連結部106で繋がっている。この例示の第1連結部105は、被覆圧着片101Pにおける基部101B側と芯線圧着片102Pにおける基部102B側との間も繋いでいる。また、第2連結部106は、芯線圧着片102Pにおける基部102B側と電気接続部103における基部側(図9の紙面下側)との間も繋いでいる。
端子連鎖体100Cは、導電性の金属の板材から成る一体物であり、上記の圧着前の端子金具100が連鎖状に複数形成されている。この端子連鎖体100Cにおいては、その全ての端子金具100が同じ向きで互いに等しい間隔を空けて並列に配置されている。つまり、この端子連鎖体100Cにおいては、全ての端子金具100が同一方向(延在方向)を向いた状態で等間隔に並べられている。端子連鎖体100Cにおいては、全ての端子金具100における一方の端部が連結片107によって繋がれている。連結片107は、例えば矩形の板状に成形され、全ての端子金具100の基部101Bに対して所定の間隔を空けて配置される。その基部101Bと連結片107は、端子金具100毎に例えば矩形の板状の繋ぎ部108を介して繋がれている。連結片107には、端子連鎖体100Cを圧着位置まで送るための貫通孔(以下、「端子送り孔」という。)107aが端子連鎖体100Cの送り方向に沿って等間隔に形成されている。この例示では端子送り孔107aを繋ぎ部108の近くに設けているが、端子送り孔107aは、連結片107における隣り合う端子金具100の間に設けてもよい。このように形成された端子連鎖体100Cは、リール状に巻き取られた状態で端子圧着装置1に配置される(図示略)。
端子圧着装置1は、図1及び図2に示すように、所定の圧着位置で端子金具100と電線110の圧着を行う圧着装置2と、その圧着位置まで端子金具100を供給する端子供給装置3と、圧着装置2及び端子供給装置3を動作させるための駆動装置4と、を備える。圧着装置2及び端子供給装置3は、この技術分野においてアプリケータと称される装置である。圧着装置2は、供給された端子金具100の電線110への圧着と、この端子金具100の端子連鎖体100Cからの切り離しと、を行う。このため、この圧着装置2は、圧着機10と端子切断機20とを備える。また、端子供給装置3は、端子連鎖体100Cとして連なっている複数の端子金具100を圧着装置2の圧着位置まで案内しながら供給する。このため、この端子供給装置3は、端子供給機30と端子ガイド機40とを備える。
圧着機10は、圧着位置まで供給された端子金具100を電線110の端部に加締めることによって、この端子金具100を電線110に圧着するものである。この例示の圧着機10は、端子金具100における被覆圧着片101Pと芯線圧着片102Pとを電線110における被覆112と先端の芯線111とに各々加締めることによって、この端子金具100を電線110に圧着する。この圧着機10は、この技術分野において周知の構成を有するものであり、フレーム11と、互いに対を成す第1金型12及び第2金型13と、動力伝達機構14と、を備える。
フレーム11は、基台11Aと、アンビル支持体11Bと、動力伝達機構14の支持体(以下、「伝達部支持体」という。)11Cと、を備える。基台11Aは、例えば、端子圧着装置1を載せ置く載置台(図示略)の上に固定される。アンビル支持体11Bと伝達部支持体11Cは、基台11Aの載置面11A1上に配置され、この載置面11A1上に固定される。伝達部支持体11Cは、アンビル支持体11Bに対して後方かつ上方に配置する。具体的に、この伝達部支持体11Cは、アンビル支持体11Bの後方で載置面11A1から上方に向けて立設された立設部11C1と、この立設部11C1の上側に保持されたラム支持部11C2と、を有する。ラム支持部11C2は、後述するラム14Aを支持する支持部であり、アンビル支持体11Bの上方に所定の間隔を空けて配置する。
第1金型12と第2金型13は、互いに対を成す圧着成形型であり、端子金具100と電線110の圧着を行う。この例示では、図2に示すように、第1金型12としての2つの下型(第1アンビル12A及び第2アンビル12B)と、第2金型13としての2つの上型(第1クリンパ13A及び第2クリンパ13B)と、が設けられている。第1アンビル12Aと第1クリンパ13Aは、互いに対を成しており、基部101B及び2枚の被覆圧着片101Pとこれらによって囲まれた電線110(被覆112)とを挟み込むことによって、基部101Bと2枚の被覆圧着片101Pを電線110(被覆112)に圧着させる。駆動装置4は、その動力を後述する動力伝達機構14に伝えることによって、そのような圧着加工時に第1アンビル12Aと第1クリンパ13Aとの間を狭め、圧着加工後に第1アンビル12Aと第1クリンパ13Aとの間を広げる。また、第2アンビル12Bと第2クリンパ13Bは、互いに対を成しており、基部102B及び2枚の芯線圧着片102Pとこれらによって囲まれた電線110(先端の芯線111)とを挟み込むことによって、基部102Bと2枚の芯線圧着片102Pを電線110(先端の芯線111)に圧着させる。駆動装置4は、その動力を動力伝達機構14に伝えることによって、そのような圧着加工時に第2アンビル12Bと第2クリンパ13Bとの間を狭め、圧着加工後に第2アンビル12Bと第2クリンパ13Bとの間を広げる。この例示では、第1クリンパ13Aと第2クリンパ13Bを同時に第1アンビル12Aと第2アンビル12Bに向けて各々下降させることによって、第1アンビル12Aと第1クリンパ13Aとの間及び第2アンビル12Bと第2クリンパ13Bとの間を狭める。一方、この例示では、第1クリンパ13Aと第2クリンパ13Bを同時に各々上昇させることによって、第1アンビル12Aと第1クリンパ13Aとの間及び第2アンビル12Bと第2クリンパ13Bとの間を広げる。
第1アンビル12Aと第2アンビル12Bは、それぞれに、上下方向に延在させた板状部材から成る。第1アンビル12Aの上側の先端には、圧着加工時に端子金具100の基部101Bを受け止める係止部12aが形成されている。また、第2アンビル12Bの上側の先端には、圧着加工時に端子金具100の基部102Bを受け止める係止部12bが形成されている。それぞれの係止部12a,12bは、下方に向けて凹ませた凹状面を有している。この圧着機10においては、その凹状面が圧着位置となる。その凹状面は、軸線方向(延在方向)に対して直交する断面が、例えば、弧状、コの字状又はUの字状等に形成される。2枚の被覆圧着片101Pは、基部101Bが係止部12aの凹状面に受け止められている状態で、その凹状面よりも上方に突出させる。また、2枚の芯線圧着片102Pは、基部102Bが係止部12bの凹状面に受け止められている状態で、その凹状面よりも上方に突出させる。第1アンビル12Aと第2アンビル12Bは、それぞれに凹状面を露出させた状態でアンビル支持体11Bに支持される。その際、この第1アンビル12Aと第2アンビル12Bは、それぞれに凹状面の高さ調整をした上で、アンビル支持体11Bに固定される。
第1クリンパ13Aは、上下方向に延在させた板状部材から成る。第1クリンパ13Aの下側の先端には、係止部12aの凹状面に対向させて配置され、圧着加工時に2枚の被覆圧着片101Pに各々摺接しながら圧を加えて2枚の当該被覆圧着片101Pを電線110に圧着させる圧着部13aが形成されている。その圧着部13aには、2枚の被覆圧着片101Pに対して個別に摺接する2つの摺接面13bが形成されている。それぞれの摺接面13bは、上下方向(圧着動作方向)に対して互いに向かい合わせた状態で配置され、かつ、同等の形状に形成される。この摺接面13bは、第1アンビル12A側から順に、弧状部13b1、案内部13b2、折り返し部13b3を有する。弧状部13b1は、案内部13b2に連なっている。案内部13b2は、折り返し部13b3に連なっている。
弧状部13b1は、圧着加工時に、被覆圧着片101Pの先端(基部101Bとは逆側の自由端側の端部)が最初に当接する場所であると共に、基部101B側の端部を支点にして被覆圧着片101Pを他方の被覆圧着片101P側に折り曲げていく場所でもある。この弧状部13b1は、対向する他方の摺接面13b(具体的には弧状部13b1)及び第1アンビル12Aに向けて膨出させた弧状に形成する。このため、圧着部13aにおいては、それぞれの弧状部13b1の間の幅方向(端子金具100の幅方向)における間隔(以下、「第1圧着幅」という。)Wa1が、第1アンビル12Aから離れるにつれて(上方に向かうにつれて)徐々に狭くなっていく。第1圧着幅Wa1については、後で詳述する。
案内部13b2は、弧状部13b1による被覆圧着片101Pの折り曲げを収束させる場所であると共に、その被覆圧着片101Pを折り返し部13b3に案内する場所でもある。この案内部13b2は、第1アンビル12Aから離れるにつれて他方の摺接面13bの案内部13b2に近づくよう傾斜させている。このため、圧着部13aにおいては、それぞれの案内部13b2の間の幅方向(端子金具100の幅方向)における間隔(以下、「第2圧着幅」という。)Wa2が、第1アンビル12Aから離れるにつれて徐々に狭くなっていく。その第2圧着幅Wa2の最小値と最大値は、電線110の被覆112の直径と2枚の被覆圧着片101Pのそれぞれの板厚との和よりも僅かに(具体的には摺接動作を妨げない範囲内で)大きくなるように設定する。尚、第2圧着幅Wa2の最大値は、第1圧着幅Wa1の最小値に一致している。
折り返し部13b3は、被覆圧着片101Pを先端から順に内側の電線110側に巻き込みながら被覆112に加締めていく場所である。この折り返し部13b3は、第1アンビル12Aから離れる方向(上方)に凹ませた凹状に形成する。
第2クリンパ13Bは、上下方向に延在させた板状部材から成る。第2クリンパ13Bの下側の先端には、係止部12bの凹状面に対向させて配置され、圧着加工時に2枚の芯線圧着片102Pに各々摺接しながら圧を加えて2枚の当該芯線圧着片102Pを電線に圧着させる圧着部13cが形成されている。その圧着部13cには、2枚の芯線圧着片102Pに対して個別に摺接する2つの摺接面13dが形成されている。それぞれの摺接面13dは、上下方向(圧着動作方向)に対して互いに向かい合わせた状態で配置され、かつ、同等の形状に形成される。この摺接面13dは、第1クリンパ13Aの摺接面13bと同等の形状に形成されており、第2アンビル12B側から順に、弧状部13d1、案内部13d2、折り返し部13d3を有する。このため、その弧状部13d1と案内部13d2と折り返し部13d3の具体的な説明は省略する。尚、それぞれの案内部13d2の間の幅方向(端子金具100の幅方向)における間隔(第2圧着幅Wb2)は、第2アンビル12Bから離れるにつれて徐々に狭くなり、かつ、その最小値と最大値が、電線110の先端の芯線111の直径と2枚の芯線圧着片102Pのそれぞれの板厚との和よりも僅かに(具体的には摺接動作を妨げない範囲内で)大きくなるように設定する。また、それぞれの弧状部13d1の間の幅方向(端子金具100の幅方向)における間隔(第1圧着幅Wb1)については、後で詳述する。第2圧着幅Wb2の最大値は、第1圧着幅Wb1の最小値に一致している。
第1クリンパ13Aと第2クリンパ13Bは、それぞれに、圧着加工の実施前に第1アンビル12Aと第2アンビル12Bに対して所定の間隔を空けた初期位置に配置する。第1クリンパ13Aと第2クリンパ13Bは、圧着加工の開始と共に、その初期位置から第1アンビル12Aと第2アンビル12Bに向けて各々下降させる。
第1クリンパ13Aは、下降と共に、それぞれの弧状部13b1が2枚の被覆圧着片101Pの先端に接触する。その際、電線110(被覆112)の一部は、第1クリンパ13Aの2つの摺接面13bと基部101Bと2枚の被覆圧着片101Pとによって形成される空間内に配置される。第1クリンパ13Aは、その状態で更に下降し、それぞれの被覆圧着片101Pに対して弧状部13b1と案内部13b2と折り返し部13b3とが順次摺接していくことによって、それぞれの被覆圧着片101Pを内側に巻き込みながら電線110側に折り畳んでいく。第1アンビル12Aと第1クリンパ13Aは、このようにして2枚の被覆圧着片101Pを電線110(被覆112)に加締めていく。
一方、第2クリンパ13Bは、下降と共に、それぞれの弧状部13d1が2枚の芯線圧着片102Pの先端に接触する。その際、電線110(先端の芯線111)は、第2クリンパ13Bの2つの摺接面13dと基部102Bと2枚の芯線圧着片102Pとによって形成される空間内に配置される。第2クリンパ13Bは、その状態で更に下降し、それぞれの芯線圧着片102Pに対して弧状部13d1と案内部13d2と折り返し部13d3とが順次摺接していくことによって、それぞれの芯線圧着片102Pを内側に巻き込みながら電線110側に折り畳んでいく。第2アンビル12Bと第2クリンパ13Bは、このようにして2枚の芯線圧着片102Pを電線110(先端の芯線111)に加締めていく。
第1クリンパ13Aと第2クリンパ13Bは、圧着加工を実施した後、初期位置まで上昇させる。この第1クリンパ13Aと第2クリンパ13Bの上下動は、動力伝達機構14と駆動装置4とからなる駆動部によって実施させる。
動力伝達機構14は、駆動装置4から出力された動力を第1クリンパ13Aと第2クリンパ13Bに伝えるものであり、図1に示すように、ラム14Aと、ラムボルト14Bと、シャンク14Cと、を備える。
ラム14Aは、ラム支持部11C2に対して上下動自在に支持された可動部材である。このラム14Aには、第1クリンパ13Aと第2クリンパ13Bとが固定されている。このため、第1クリンパ13Aと第2クリンパ13Bは、ラム14Aと一体になってラム支持部11C2に対して上下動することができる。例えば、このラム14Aは、方体状に成形している。このラム14Aには、雌螺子部(図示略)が形成されている。その雌螺子部は、ラム14Aの内方から上端面に向けて形成された上下方向の穴の内周面に形成する。
ラムボルト14Bは、ラム14Aの雌螺子部に螺合される雄螺子部(図示略)を有する。このため、このラムボルト14Bは、ラム14Aと一体になってラム支持部11C2に対して上下動することができる。また、このラムボルト14Bは、その雄螺子部の上方に配置されたボルト頭部14B1を有する。そのボルト頭部14B1には、雌螺子部(図示略)が形成されている。その雌螺子部は、ボルト頭部14B1の内方から上端面に向けて形成された上下方向の穴の内周面に形成する。
シャンク14Cは、円柱状の中空部材であり、それぞれの端部に雄螺子部14C1と接続部(図示略)とを有する。このシャンク14Cの雄螺子部14C1は、中空部材の下側に形成されており、ラムボルト14Bのボルト頭部14B1の雌螺子部に螺合される。このため、シャンク14Cは、ラム14Aやラムボルト14Bと一体になってラム支持部11C2に対して上下動することができる。接続部は、駆動装置4に接続される。
駆動装置4は、駆動源(図示略)と、駆動源の駆動力を上下方向の動力に変換する動力変換機構(図示略)と、を有する。シャンク14Cの接続部は、その動力変換機構の出力軸に連結されている。このため、第1クリンパ13Aと第2クリンパ13Bは、駆動装置4の出力(動力変換機構の出力)によって、ラム14Aとラムボルト14Bとシャンク14Cと一体になってラム支持部11C2に対して上下動する。駆動源としては、電動機などの電動アクチュエータ、油圧シリンダなどの油圧アクチュエータ、エアシリンダなどの空気圧アクチュエータ等が適用可能である。
ここで、第1アンビル12Aに対する第1クリンパ13Aの上下方向における相対位置と第2アンビル12Bに対する第2クリンパ13Bの上下方向における相対位置は、ボルト頭部14B1の雌螺子部とシャンク14Cの雄螺子部14C1のねじ込み量を調整することによって、変化させることができる。その相対位置は、上述した初期位置において調整することが望ましい。ナット14Dは、ラムボルト14Bの上方でシャンク14Cの雄螺子部14C1に螺合させており、ボルト頭部14B1の雌螺子部と共に所謂ロックナットの機能を成す。このため、このナット14Dは、上記の相対位置の調整完了後にラムボルト14B側へと締め付けることによって、その相対位置に第1クリンパ13Aと第2クリンパ13Bを固定することができる。
端子切断機20とは、圧着位置まで供給された端子金具100を端子連鎖体100Cから切り離すものである。この例示の端子切断機20は、第1アンビル12Aよりも前側の所定位置に配置され、繋ぎ部108を切断することによって、所定の端子金具100を連結片107から切り離す。これにより、その先頭の端子金具100は、端子連鎖体100Cから切り離される。この端子切断機20は、端子金具100の電線110への圧着加工と共に、この端子金具100の端子連鎖体100Cからの切り離しを行う。
この端子切断機20は、図1に示すように、この技術分野において周知の構成を有するものであり、第1アンビル12Aの前面に沿って上下方向に摺動するよう配置された端子切断部21と、この端子切断部21に対して上方への付勢力を加えるバネ部材等から成る弾性部(図示略)と、を備える。
端子切断部21は、第1クリンパ13Aと第2クリンパ13Bの下降と共に、図1に示す押下部22によって押し下げられる。その押下部22は、ラム14Aに固定されており、ラム14Aと一体になって上下動する。端子切断部21における第1アンビル12Aとの摺接面には、連結片107が通るスリット(図示略)が形成されている。そのスリットは、押下部22による下方に向けた力が端子切断部21に加わっていないときに、弾性部の付勢力によって、第1アンビル12Aの上端よりも上方に配置される。一方、このスリットは、押下部22によって端子切断部21が押し下げられているときに、第1アンビル12Aの上端よりも下方に配置される。また、端子切断部21の上部には、電線110が載置されるVの字状の凹部(図示略)が形成されている。
この端子切断機20においては、第1アンビル12Aと第2アンビル12Bの凹状面に端子金具100が載置されている状態で、押下部22による下方に向けた力が端子切断部21に加わっていないときに、連結片107が端子切断部21のスリットに挿通されている。この端子切断機20においては、その後の圧着機10の圧着動作に伴い、第1クリンパ13Aや第2クリンパ13Bと共に押下部22が下降して、端子切断部21が押し下げられる。この端子切断機20においては、その端子切断部21の下降に伴い、この端子切断部21のスリットの開口エッジ(図示略)と第1アンビル12Aの上面エッジとによって、凹状面上の端子金具100と連結片107とを繋ぐ繋ぎ部108が切断され、この端子金具100が端子連鎖体100Cから切り離される。
次に、端子供給機30と端子ガイド機40とを備える端子供給装置3について説明する。
端子供給機30とは、端子連鎖体100Cの所定の端子金具100を圧着位置まで順次供給するものである。この例示の端子供給機30は、リール状に巻き取られている端子連鎖体100Cにおける外周側の先頭の端子金具100を引き出して、その端子金具100から順次圧着位置まで供給するように構成している。このため、この端子供給機30は、その先頭の端子金具100の電線110への圧着と端子連鎖体100Cからの切断とが終わったら、新たに先頭となった端子金具100を圧着位置まで供給する。この端子供給機30では、その動作が圧着加工を行う度に順次繰り返される。
この端子供給機30は、この技術分野において周知の構成を有しており、連結片107の端子送り孔107aに挿入される端子送り部材31と、この端子送り部材31を駆動させる動力伝達機構32と、を備える。その動力伝達機構32は、駆動装置4の動力を端子送り部材31に伝えるものである。この例示の端子供給機30は、圧着機10の圧着動作(つまりラム14A等の上下動)に連動させる。このため、動力伝達機構32は、ラム14A等の上下動に連動して、端子送り部材31を上下方向及び左右方向に駆動させるリンク機構32Aを備える。
動力伝達機構32は、例えば、第1クリンパ13Aと第2クリンパ13Bが初期位置のとき(つまりラム14A等が最上昇位置のとき)に、端子送り部材31を最も右側の前進位置で端子送り孔107aに挿入させている。このときには、端子連鎖体100Cの先頭の端子金具100が圧着位置に到達している。動力伝達機構32は、圧着機10の圧着動作に伴いラム14A等が最上昇位置から下降し始めると共に、端子送り部材31を上方及び左方へと移動させ、その後、端子送り部材31を下方及び左方へと移動させる。動力伝達機構32は、ラム14A等が最下降位置まで到達したときに、端子送り部材31を最も左側の後退位置まで移動して、この端子送り部材31を連結片107の別の端子送り孔107aに挿入する。その別の端子送り孔107aとは、先に挿入されていた端子送り孔107aよりもリール側(左側)に存在している貫通孔のことである。動力伝達機構32は、圧着後にラム14A等が最下降位置から上昇し始めると共に、端子送り孔107aに挿入させたままで端子送り部材31を右方に移動させ、端子連鎖体100Cを圧着位置に向けて送り出す。動力伝達機構32は、その後、ラム14A等が最上昇位置まで到達したときに、端子送り部材31を最も右側の前進位置に移動させ、端子連鎖体100Cの先頭の端子金具100の圧着位置への供給を完了させる。
端子ガイド機40は、リール側から引き出された端子連鎖体100Cを圧着位置まで案内する端子ガイド機構を備える。その端子ガイド機構は、アンビル支持体11Bの左方に配置したガイド支持体41によって支持される。ガイド支持体41は、端子ガイド機構の支持部41aを有する。その支持部41aは、載置面11A1から上方に向けて立設された立設部41bを介して基台11Aに固定されている。支持部41aは、リール側から引き出された端子連鎖体100Cが載置される平面を有している。その平面は、その端子連鎖体100Cの下方で左右方向(つまり端子連鎖体100Cの送り方向)に延在しており、端子連鎖体100Cを圧着位置まで案内するガイドレール(図示略)として利用される。端子供給機30は、そのガイドレール上の端子連鎖体100Cを当該ガイドレールに沿って圧着位置側へと供給する。つまり、端子ガイド機40(端子ガイド機構)とは、端子供給機30によって送られているガイドレール上の端子連鎖体100Cを圧着位置まで案内するもののことである。
また、この端子ガイド機構は、第1ガイド部材43と第2ガイド部材44とを備える。その第1ガイド部材43と第2ガイド部材44は、端子連鎖体100Cにおけるガイドレール上の複数の端子金具100の被覆圧着片101Pを圧着位置に向けて案内するものである。第1ガイド部材43は、そのそれぞれの被覆圧着片101Pにおける連結片107側の一端部に沿って配置されたガイド部を有する。一方、第2ガイド部材44は、そのそれぞれの被覆圧着片101Pにおける芯線圧着片102P側の他端部に沿って配置されたガイド部を有する。この端子ガイド機構においては、被覆圧着片101Pを第1ガイド部材43と第2ガイド部材44とで圧着位置に向けて案内することで、端子連鎖体100Cを圧着位置まで案内する。
ところで、端子圧着装置1としては、端子金具100を電線110に圧着する際に、前述したように、第1金型12(第1アンビル12A、第2アンビル12B)の上方の端子金具100と第2金型13(第1クリンパ13A、第2クリンパ13B)との間で、かつ、その端子金具100の上方に間隔を空けた設計上の基準位置に、圧着加工前の電線110の端部を配置するものがある。しかしながら、その電線110の端部は、自重や柔軟性、電線110への振動等の外力の入力などによって、設計上の正規位置に対して位置がズレて配置されてしまう可能性がある。そして、その位置ズレが設計上の正規位置での中立位置(2枚の加締め片の間における中央部分)に対する左右方向(端子金具100の幅方向であり、言うなれば2枚の加締め片の対向する方向)のズレの場合には、第2金型13が下降してきた際に、この第2金型13と端子金具100の加締め片(被覆圧着片101P、芯線圧着片102P)との間に電線110を噛み込んでしまう可能性があり、その加締め片による電線110の加締め不良や芯線111のほつれ等を引き起こしてしまう虞がある。また、圧着加工時に電線110の端部が端子金具100の上(設計上の正規位置)に載せ置かれるよう構成された端子圧着装置1であっても、この端子圧着装置1においては、電線110の柔軟性や電線110への外力の入力等によって、電線110の端部が端子金具100よりも上方に浮き上がり、その上で更に左右方向への位置ズレを引き起こしてしまい、加締め不良等のような同様の不都合を生じさせてしまう可能性がある。
そこで、本実施形態では、そのような圧着加工時における電線110の噛み込みの発生を抑えるべく、第2金型13(第1クリンパ13A、第2クリンパ13B)の形状設定を行う。
具体的に、電線110の噛み込みは、概ね次のような事象によって発生する。左右方向に位置がズレている電線110は、第2金型13(第1クリンパ13A、第2クリンパ13B)の下降に伴って、摺接面13bの弧状部13b1又は摺接面13dの弧状部13d1に当接した場合、その弧状部13b1(13d1)によって、対向するそれぞれの摺接面13b(13d)の間の中央寄りに押し戻される。しかしながら、左右方向に位置ズレしている電線110が、一部でも弧状部13b1(13d1)より左方(右方)の第2金型13の先端(第1金型12側の先端)の下方にまでズレていた場合、その第2金型13の先端と端子金具100の加締め片(被覆圧着片101P、芯線圧着片102P)との間に電線110が噛み込まれてしまう可能性がある。この点を鑑みると、端子圧着装置1においては、電線110が左方又は右方へと最もズレたときにも、この電線110を弧状部13b1(13d1)に当接させることができたならば、第2金型13と端子金具100の加締め片とによる電線110の噛み込みの発生を抑えることができる。このため、本実施形態では、第2金型13(第1クリンパ13A、第2クリンパ13B)の第1圧着幅Wa1,Wb1を次のように設定する。
第1クリンパ13Aについては、図3に示すように、電線110の被圧着部位(被覆収容空間に収容される被覆112の部分)の左右方向(端子金具100の幅方向)における最大ズレ幅We1以上の大きさになるよう第1圧着幅Wa1の最大値Wa1maxを設定する(Wa1max≧We1)。最大ズレ幅We1とは、その電線110の被圧着部位が最も左方(端子金具100の幅方向の内の一方)に位置ズレしたときの当該被圧着部位におけるズレ方向の端部(左端)と、この被圧着部位が最も右方(端子金具100の幅方向の内の他方)に位置ズレしたときの当該被圧着部位におけるズレ方向の端部(右端)と、の間の距離のことである。これにより、その電線110の被圧着部位は、左方又は右方へと最もズレたとしても、弧状部13b1に当接し、この弧状部13b1によってそれぞれの摺接面13bの間の中央寄りに押し戻される。従って、この端子圧着装置1においては、その電線110の被圧着部位に対する第1クリンパ13Aと被覆圧着片101Pとの間での噛み込みが抑制され、被覆圧着片101Pによる電線110の被覆112の加締め不良を抑えることができる。
また、第2クリンパ13Bについては、図4に示すように、電線110の被圧着部位(芯線収容空間に収容される芯線111の部分)の左右方向(端子金具100の幅方向)における最大ズレ幅We2以上の大きさになるよう第1圧着幅Wb1の最大値Wb1maxを設定する(Wb1max≧We2)。最大ズレ幅We2とは、その電線110の被圧着部位が最も左方(端子金具100の幅方向の内の一方)に位置ズレしたときの当該被圧着部位におけるズレ方向の端部(左端)と、この被圧着部位が最も右方(端子金具100の幅方向の内の他方)に位置ズレしたときの当該被圧着部位におけるズレ方向の端部(右端)と、の間の距離のことである。芯線111は、複数の素線が略円柱状に纏められているものとする。これにより、その電線110の被圧着部位は、左方又は右方へと最もズレたとしても、弧状部13d1に当接し、この弧状部13d1によってそれぞれの摺接面13dの間の中央寄りに押し戻される。従って、この端子圧着装置1においては、その電線110の被圧着部位に対する第2クリンパ13Bと芯線圧着片102Pとの間での噛み込みが抑制され、芯線圧着片102Pによる電線110の芯線111の加締め不良や当該芯線111のほつれの発生を抑えることができる。
ここで、第1クリンパ13Aについては、図3に示すように、その最大ズレ幅We1と左方の余裕代Wl1と右方の余裕代Wr1との加算値以上の大きさになるよう第1圧着幅Wa1の最大値Wa1maxを設定する(Wa1max≧We1+Wl1+Wr1)。その余裕代Wl1,Wr1は、例えば、端子圧着装置1の各構成部品の寸法公差や当該各構成部品の組み付け公差による端子金具100(つまり圧着位置)の位置ズレ、電線110の径方向の寸法公差等に基づいて設定すればよい。これにより、この端子圧着装置1においては、電線110の被圧着部位(被覆収容空間に収容される被覆112の部分)を弧状部13b1でより適切に中央寄りに押し戻し、より適切な被圧着部位の噛み込みの抑制が可能になるので、被覆圧着片101Pによる被覆112の加締め不良の抑制効果を高めることができる。
また、第2クリンパ13Bについては、図4に示すように、その最大ズレ幅We2と左方の余裕代Wl2と右方の余裕代Wr2との加算値以上の大きさになるよう第1圧着幅Wb1の最大値Wb1maxを設定する(Wb1max≧We2+Wl2+Wr2)。その余裕代Wl2,Wr2は、余裕代Wl1,Wr1と同じようにして設定すればよい。これにより、この端子圧着装置1においては、電線110の被圧着部位(芯線収容空間に収容される芯線111の部分)を弧状部13d1でより適切に中央寄りに押し戻し、より適切な被圧着部位の噛み込みの抑制が可能になるので、芯線圧着片102Pによる芯線111の加締め不良の抑制効果や当該芯線111のほつれ発生の抑制効果を高めることができる。
以上示したように、本実施形態の端子圧着装置1は、第2金型13(第1クリンパ13A、第2クリンパ13B)の弧状部13b1,13d1の形状を上記の如く設定することによって、圧着加工時に圧着対象部位に対する電線110の位置ズレを抑えることができるので、その圧着対象部位における電線110の加締め不良や当該電線110における芯線111のほつれ発生の抑制が可能になる。
[変形例1]
前述した実施形態の端子圧着装置1では、左右方向に位置ズレしている電線110が加締め片(被覆圧着片101P、芯線圧着片102P)の先端の近くにあるほど、電線110が弧状部13b1(13d1)で中央寄りに押し戻されるよりも前に、第2金型13と加締め片との間での電線110の噛み込みが発生する可能性が高くなる場合がある。本変形例の端子圧着装置1は、そのような不都合の発生を抑えるためのものである。本変形例の端子圧着装置1は、実施形態の端子圧着装置1において、第1金型12と第2金型13との間を狭めるタイミング、つまり第2金型13(第1クリンパ13A、第2クリンパ13B)の下降タイミングを以下のように設定したものである。
本変形例では、下降中の第1クリンパ13Aの弧状部13b1に被覆圧着片101Pの先端が当接したときに、その弧状部13b1で中央寄りに押動されている電線110(被覆112)が、第1クリンパ13Aの2つの摺接面13bと基部101Bと2枚の被覆圧着片101Pとによって形成された空間S1内に配置されているように(図5)、第1クリンパ13Aの下降タイミングを設定する。これにより、本変形例の端子圧着装置1においては、弧状部13b1に被覆圧着片101Pの先端が当接したときに、その空間S1内に電線110(被覆112)が既に存在しているので、第1クリンパ13Aと被覆圧着片101Pとの間での電線110の噛み込みを回避することができる。よって、この端子圧着装置1は、被覆圧着片101Pによる電線110の被覆112の加締め不良(電線110の噛み込みを要因とするもの)を回避することができる。
また、本変形例では、下降中の第2クリンパ13Bの弧状部13d1に芯線圧着片102Pの先端が当接したときに、その弧状部13d1で中央寄りに押動されている電線110(芯線111)が、第2クリンパ13Bの2つの摺接面13dと基部102Bと2枚の芯線圧着片102Pとによって形成された空間S2内に配置されているように(図6)、第2クリンパ13Bの下降タイミングを設定する。これにより、本変形例の端子圧着装置1においては、弧状部13d1に芯線圧着片102Pの先端が当接したときに、その空間S2内に電線110(芯線111)が既に存在しているので、第2クリンパ13Bと芯線圧着片102Pとの間での電線110の噛み込みを回避することができる。よって、この端子圧着装置1は、芯線圧着片102Pによる電線110の芯線111の加締め不良(電線110の噛み込みを要因とするもの)や当該芯線111のほつれ(電線110の噛み込みを要因とするもの)の発生を回避することができる。
ここで、その下降タイミングは、動力伝達機構14と駆動装置4とからなる駆動部の設定によって実現させる。例えば、動力伝達機構14で実現させる場合には、上記の所望の下降タイミングとなるように、駆動装置4から出力された動力の第1クリンパ13A及び第2クリンパ13Bへの伝達タイミングを調整する。動力伝達機構14は、そのような伝達タイミングが実現されるように構成する。また、駆動装置4で実現させる場合には、上記の所望の下降タイミングとなるように、動力変換機構による動力伝達機構14への動力の伝達タイミングを調整する。その動力変換機構は、そのような伝達タイミングが実現されるように構成する。
以上示したように、本変形例の端子圧着装置1は、第2金型13(第1クリンパ13A、第2クリンパ13B)の下降タイミングを上記の如く設定することによって、圧着加工時に圧着対象部位に対する電線110の位置ズレを不都合の生じない適切な範囲内に抑えることができるので、その圧着対象部位における電線110の加締め不良や当該電線110における芯線111のほつれ発生の回避が可能になる。
ところで、本変形例の端子圧着装置1は、第2金型13(第1クリンパ13A、第2クリンパ13B)が実施形態で説明した形状の弧状部13b1,13d1を有しているので、下降タイミングとの相乗効果によって、電線110の加締め不良や芯線ほつれについての高い回避効果が得られる。しかしながら、本変形例の端子圧着装置1は、そのような第2金型13(第1クリンパ13A、第2クリンパ13B)の形状を設けずとも、上述した下降タイミングが設定されることによって、そのような回避効果を得ることもできる。
[変形例2]
前述した実施形態や変形例1の端子圧着装置1では、加締め片(被覆圧着片101P、芯線圧着片102P)の先端よりも先に電線110が折り返し部13b3,13d3に当接する場合がある。そして、この場合には、加締め片の先端が電線110に衝突したり、折り返し部13b3,13d3と加締め片の先端との間に電線110が噛み込まれたりして、電線110の加締め不良や芯線111のほつれが発生してしまう可能性がある。本変形例の端子圧着装置1は、そのような不都合の発生を抑えるためのものである。本変形例の端子圧着装置1は、実施形態や変形例1の端子圧着装置1において、第2金型13(第1クリンパ13A、第2クリンパ13B)と連動して上下動し、その下降時(つまり圧着加工時)に電線110を端子金具100側に押さえ込む電線押さえ込み機構15を設ける(図7)。その図7は、第1クリンパ13A側から見た図である。
電線押さえ込み機構15は、端子金具100よりも上方(第2金型13側)に配置され、第2金型13(第1クリンパ13A、第2クリンパ13B)又はラム14Aに取り付ける。この例示では、第1クリンパ13Aと第2クリンパ13Bとの間に配置し、電線110における2箇所の被圧着部位の間(被覆収容空間に収容される部分と芯線収容空間に収容される部分との間)を端子金具100側に押さえ込むよう構成する。
電線押さえ込み機構15は、下端が折り返し部13b3,13d3よりも下方(第1金型12側)に位置する押さえ込み部材15aを有している。具体的に、その押さえ込み部材15aは、折り返し部13b3,13d3よりも下方で、かつ、案内部13b2,13d2の上部寄りに下端(電線110を押さえ込む部分においての下端)が来るように配置して、第2金型13と一体になって上下動させる。その下端の位置は、例えば、圧着加工時に押さえ込み部材15aが下降している際、加締め片の先端が折り返し部13b3,13d3に当接するよりも先に、押さえ込み部材15aが電線110を端子金具100の電線収容空間としての被覆収容空間と芯線収容空間に収容させるように設定する。このため、この電線押さえ込み機構15においては、その設定が具現化されるように押さえ込み部材15aの形状及び配置を決めればよい。尚、その下端の位置の設定は、第2金型13と押さえ込み部材15aの下降タイミングの調整も併せて行うことで実現させてもよい。
このように、本変形例の端子圧着装置1においては、第2金型13(第1クリンパ13A、第2クリンパ13B)の下降に伴い押さえ込み部材15aも下降して、加締め片の先端が折り返し部13b3,13d3に当接するよりも先に、押さえ込み部材15aが電線110を被覆収容空間と芯線収容空間に収容させる。このため、この端子圧着装置1では、折り返し部13b3,13d3と加締め片の先端との間での電線110の噛み込みの発生が抑制され、加締め片による電線110の加締め不良や芯線111のほつれの発生を抑えることができる。
ところで、電線押さえ込み機構15が上下方向に伸縮できない場合には、被覆112や芯線111が基部101B,102Bに当接した後、押さえ込み部材15aが第2金型13と共に更に下降することで、押さえ込み部材15aが電線110を下方に向けて更に押し込むことになり、その電線110に無用な荷重が加わってしまう。一方、電線押さえ込み機構15が上下方向に伸縮できる場合には、被覆112や芯線111が基部101B,102Bに当接した後、押さえ込み部材15aが第2金型13と共に更に下降しようとしても、電線110に所定荷重よりも大きな力が加わらない。このため、電線押さえ込み機構15は、例えば、電線110から加えられた荷重が所定荷重以上のときに上方に縮み、所定荷重よりも小さいときに下方に伸びる伸縮機構を有する構成にしてもよい。その所定荷重は、例えば、電線110の耐久性を損なわない荷重の中から決めることになる。これにより、この端子圧着装置1は、電線110の耐久性の低下を抑えつつ、加締め片による電線110の加締め不良や芯線111のほつれの発生を抑えることができる。
ここで、その伸縮機構は、高剛性部材としての押さえ込み部材15aと当該押さえ込み部材15aを保持する保持部材(図示略)との間に、弦巻バネ等の弾性部材(図示略)を介在させることによって構成してもよい。また、この伸縮機構は、押さえ込み部材15aそのものに上下方向への伸縮が可能な弾性部材を用いてもよい。この弾性部材は、線状部材を螺旋状に成形した弦巻バネであってもよく、板状部材をアコーディオン形状に折り曲げたもの(図7)であってもよい。
尚、実施形態や変形例では端子連鎖体100Cの端子金具100を例に挙げて説明したが、第2金型13や電線押さえ込み機構15等の構成に関しては、必ずしも連鎖状の端子金具100のみが適用対象となるのではなく、単独で存在している端子金具100の電線110への圧着加工にも適用可能である。