以下に、本発明に係る端子付き電線製造方法及び端子圧着装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
[実施形態]
本発明に係る端子付き電線製造方法及び端子圧着装置の実施形態の1つを図1から図17に基づいて説明する。
先ず、電線との圧着対象となる圧着端子について説明する。図1から図4の符号1は、本実施形態の圧着端子を示す。この圧着端子1は、電線50に対して電気的に接続され、この電線50と一体になった状態のままで相手方端子(図示略)に対して電気的に接続されるものである。ここで、電線50は、その端部にて芯線51が剥き出しになっている(図1)。この電線50は、その端部において、芯線51を所定の長さ露出させるべく、例えば、その長さ分だけ被覆52を剥いて取り除いている。この例示の芯線51は、複数本の素線の集合体である。圧着端子1は、その電線50の端部に圧着させることで、露出している芯線51との間で物理的且つ電気的に接続される。以下においては、図3及び図4に示す圧着端子1と電線50の連結体を「端子付き電線50A」と称する。
この圧着端子1は、少なくとも端子金具10を備える(図1から図6)。本実施形態では端子金具10のみで構成されたものを例に挙げて説明するが、圧着端子1は、例えば、図7に示すように、止水部材20を備えていてもよい。その止水部材20とは、圧着加工後に芯線51に対して水等の液体を接触させないようにするための止水用の部材である。この止水部材20は、端子金具10に貼付され、圧着端子1の電線50への圧着加工と共に変形することで、剥き出しの芯線51の周囲を覆う。
端子金具10は、圧着端子1における主体部分である。この端子金具10は、金属等の導電性材料で成形する。ここでは、導電性の金属の板材(例えば銅板)を母材とし、この母材をプレス成形することによって、相手方端子や電線50との接続が可能な所定の形状へと形成する。この端子金具10は、図1から図7に示すように、相手方端子に対して電気的に接続される端子接続部11と、電線50の端部に対して電気的に接続される電線接続部12と、を有する。端子接続部11と電線接続部12は、これらの間に介在させた連結部13によって連結されている。
端子金具10は、雄端子であってもよく、雌端子であってもよい。端子接続部11は、端子金具10が雄端子の場合、雄型に形成され、端子金具10が雌端子の場合、雌型に形成される。本実施形態では、雌端子を例として挙げている。
ここで、この圧着端子1においては、相手方端子との間の挿抜方向(接続方向や離脱方向)を長手方向とし、これを第1方向Lと定義する。また、この圧着端子1においては、その第1方向Lに対する直交方向の内、プレス成形前の母材の平面に沿う方向を幅方向とし、これを第2方向Wと定義する。その第2方向Wは、この圧着端子1の後述する並列配置方向でもある。また、この圧着端子1においては、その第1方向Lと第2方向Wとに各々直交する方向を高さ方向とし、これを第3方向Hと定義する。
電線接続部12は、先ずは1枚の板状に形成されており(図5及び図6)、電線50との接続直前の状態としてのU字状に形成される(図1)。このU字状に形成された電線接続部12は、電線50の端部が内壁面側に載せ置かれた状態で当該電線50に巻き付けることによって、この電線50の端部に圧着され、剥き出しの芯線51に接触する。電線接続部12は、このような内壁面側に載置された電線50の端部に対する圧着加工に伴って、その電線50の端部の芯線51に対して電気的に接続される。この電線接続部12は、後述するように底部14と一対のバレル片部(第1バレル片部15、第2バレル片部16)とを有しており、その底部14に載置された電線50の端部に対して一対のバレル片部が巻き付けられている。
この電線接続部12は、第1方向Lにおいて、芯線圧着部12Aの領域と被覆圧着部12Bの領域と連結部12Cの領域とに区画することができる(図2から図7)。芯線圧着部12Aとは、圧着対象の電線50の端部の中の剥き出しの芯線51に圧着された部位のことである。その芯線51には、後述する底部14と一対のバレル片部(第1バレル片部15、第2バレル片部16)における芯線圧着部12Aに対応させた部分が圧着される。この芯線圧着部12Aは、連結部13に連接している。被覆圧着部12Bとは、圧着対象の電線50の端部の中の被覆52に圧着された部位のことである。その被覆52には、底部14と一対のバレル片部(第1バレル片部15、第2バレル片部16)における被覆圧着部12Bに対応させた部分が圧着される。連結部12Cとは、芯線圧着部12Aと被覆圧着部12Bとを連結させる部位のことである。この連結部12Cは、圧着対象の電線50の端部にて、芯線圧着部12Aに圧着されている部分と被覆圧着部12Bに圧着されている部分との間に存在している部分に対して圧着されている。
更に、この電線接続部12は、第2方向Wにおいて、底部14の領域と第1バレル片部15の領域と第2バレル片部16の領域とに区画することができる(図1、図6及び図7)。
底部14は、U字状の電線接続部12の底壁となる部位であり、圧着加工の際に電線50の端部が載置される。この底部14は、その圧着加工に際して、後述する第1金型111の支持面111A1,111B1に載置され、その支持面111A1,111B1で支持される。
第1バレル片部15と第2バレル片部16は、各々、底部14における電線50の端部の軸線に対する交差方向(つまり、第2方向W)の両端から延出させた片体である。この例示の第1バレル片部15と第2バレル片部16は、それぞれに芯線圧着部12Aから被覆圧着部12Bに渡って連なる1枚の片体として形成しており、芯線圧着部12Aと被覆圧着部12Bとの間にも連結部12Cが介在している。故に、U字状の電線接続部12においては、底部14に載置された電線50の端部を囲うように、底部14の両端から第1バレル片部15と第2バレル片部16とが延在している。この第1バレル片部15と第2バレル片部16は、芯線圧着部12Aと被覆圧着部12Bとで電線50の端部の芯線51と被覆52とに各々圧着させると共に、連結部12Cで例えば電線50の端部の芯線51と被覆52との境界部分に圧着させる。この例示の連結部12Cは、その境界部分における電線50側に圧着させる。この第1バレル片部15と第2バレル片部16は、圧着加工に際して、各々、後述する第2金型112の第1から第3の壁面116A,116B,116Cで支持面111A1,111B1に向けて加圧されながら、電線50の端部に圧着されていく。
第1バレル片部15と第2バレル片部16は、底部14側の根元から先端15a,16aの端面までの距離が各々同じ長さに形成されたものであってもよく、その距離が一方に対して他方が長くなるように形成されたものであってもよい。本実施形態では、後者を例示している。また、第1バレル片部15と第2バレル片部16は、互いに重なり合いながら電線50の端部に巻き付けていくものであってもよく、それぞれを底部14側に折り返して先端15a,16aを電線50の端部に加締めていくもの(例えば所謂B型クリンプ)であってもよい。本実施形態では、前者の形態を用いている。また、本実施形態の第1バレル片部15と第2バレル片部16は、それぞれに、芯線圧着部12Aと被覆圧着部12Bとの間に連結部12Cを介在させた1枚の片部として形成している。但し、この圧着端子1は、芯線圧着部12Aにおけるバレル片部と被覆圧着部12Bにおけるバレル片部とが互いに間隔を空けて配置されたもの、つまり芯線圧着部12Aと被覆圧着部12Bとが底部14における連結部(図示略)のみで連結されたものであってもよい。
この例示では、第2バレル片部16を第1バレル片部15よりも長くしている。故に、電線接続部12においては、圧着加工後に、第1バレル片部15と第2バレル片部16とが重なり合っている領域(以下、「オーバラップ領域」という。)が形成される。オーバラップ領域とは、具体的に、圧着加工後に第1バレル片部15の外壁面と第2バレル片部16の内壁面とが互いに対向している領域のことである。つまり、この電線接続部12においては、第1バレル片部15が内側で電線50の端部に巻き付けられるバレル片部となり、第2バレル片部16が外側で電線50の端部に巻き付けられるバレル片部となる。従って、圧着加工の際には、第1バレル片部15が電線50の端部の外周面に巻き付けられ、この状態の電線50の端部と第1バレル片部15とを外周面側から覆うように第2バレル片部16が巻き付けられる。電線接続部12においては、このようにして第1バレル片部15と第2バレル片部16が電線50の端部に加締められている。
ここで、圧着加工前の電線接続部12は、底部14及び一対のバレル片部(第1バレル片部15、第2バレル片部16)でU字状に形成されている(図1)。故に、圧着加工前の電線接続部12は、そのU字状の内方に底部14及び一対のバレル片部で囲まれた空間部を有し、かつ、それぞれの先端15a,16aの端面間に開口を有している。電線50の端部は、圧着加工を行う際に、その電線接続部12のU字の開口から内方の空間部に挿入される。電線接続部12は、その空間部に電線50の端部を入り込ませた状態で、その電線50の端部に圧着させる。従って、電線接続部12は、電線50の端部が挿入されやすくなるように、底部14側から開口側(先端15a,16a側)に向かうにつれて第1バレル片部15と第2バレル片部16の間隔が広くなっている。
電線接続部12には、その内壁面(電線50の端部を覆う側の壁面)に、圧着した先端の芯線51を保持するための芯線保持領域(以下、「セレーション領域」という。)17が設けられている(図5から図7)。そのセレーション領域17は、電線接続部12の内壁面の内、剥き出しの芯線51に対して巻き付ける部分に少なくとも配置する。この例示のセレーション領域17は、芯線51を全体的に覆うように形成する。具体的に、セレーション領域17とは、複数の凹部、複数の凸部又は複数の凹部と凸部の組み合わせが矩形状に並べられたものであり、凹部や凸部によって電線接続部12と先端の芯線51との間の接触面積を増やし、この間の密着強度を高めるものである。この例示では、複数の凹部17aによって矩形状のセレーション領域17が形成されている。
この圧着端子1においては、母材に対するプレス成形工程を経て、平板状の電線接続部12を有する端子金具10が成形される(図5及び図6)。この圧着端子1は、複数個並べられた連鎖体(以下、「端子連鎖体」という。)30として形成されている(図8)。端子連鎖体30とは、各々が同一方向を向いた状態で並列に等間隔で配置され且つ連鎖状に繋がれた複数の圧着端子1の集合体のことをいう。端子連鎖体30においては、全ての圧着端子1における一方の端部が連結片31によって繋がれている。連結片31は、例えば矩形の板状に成形され、全ての圧着端子1の電線接続部12に対して所定の間隔を空けて配置される。その電線接続部12の底部14と連結片31は、圧着端子1毎に例えば矩形の板状の繋ぎ部32を介して繋がれている。連結片31には、端子連鎖体30を端子圧着装置100の圧着位置まで送るための貫通孔(以下、「端子送り孔」という。)31aが端子連鎖体30の送り方向に沿って等間隔に形成されている。このように形成された端子連鎖体30は、リール状に巻き取られた状態で端子圧着装置100(図9)に配置される(図示略)。
続いて、その端子圧着装置100について説明する。
端子圧着装置100は、端子付き電線製造方法を実施するための装置であり、圧着端子1と電線50とを接続して端子付き電線50Aを形成する。
この端子圧着装置100は、端子供給工程と端子支持工程と電線保持工程と圧着工程と端子切り離し工程とを実施するための種々の装置や機構等を備えている。この例示の端子圧着装置100は、端子供給工程を実施する端子供給装置101と、端子支持工程と電線保持工程と圧着工程と端子切り離し工程とを実施する圧着装置102と、端子供給装置101及び圧着装置102を動作させるための駆動装置103と、に大別される(図9)。
端子供給装置101と圧着装置102は、この技術分野においてアプリケータと称される装置である。一方、駆動装置103は、駆動源(図示略)と、駆動源の駆動力を上下方向の動力に変換する動力変換機構(図示略)と、を有する。駆動源としては、電動機などの電動アクチュエータ、油圧シリンダなどの油圧アクチュエータ、エアシリンダなどの空気圧アクチュエータ等が適用可能である。
端子供給装置101と端子供給工程とについて説明する。
端子供給工程においては、連結片31に繋ぎ部32を介して繋がれた複数の圧着加工前の圧着端子1の内の1つを所定の圧着位置(後述する第1金型111)まで供給する。この端子供給工程では、リール状に巻き取られている端子連鎖体30から引き出した1つの圧着端子1を圧着位置まで供給する。
端子供給装置101とは、その圧着端子1を圧着位置まで供給するための装置のことである。この例示の端子供給装置101は、リール状に巻き取られている端子連鎖体30の外周側における先頭の圧着端子1を引き出して、順次圧着位置まで供給する。この端子供給装置101は、その先頭の圧着端子1の電線50の端部への圧着と端子連鎖体30からの切断とを終えた後、新たに先頭となった圧着端子1を圧着位置まで供給する。この端子供給装置101では、その動作が圧着加工と切断加工を行う度に順次繰り返される。
この端子供給装置101は、この技術分野において周知の構成を有しており、連結片31の端子送り孔31aに挿入される端子送り部材101aと、駆動装置103の動力によって端子送り部材101aを駆動させる動力伝達機構101bと、を備える(図9)。動力伝達機構101bは、圧着装置102の圧着動作(後述するラム131等の上下動)に連動するリンク機構として構成する。この例示の端子供給装置101は、圧着装置102の圧着動作に連動して、端子送り部材101aを上下方向及び左右方向に駆動させることによって、圧着端子1を圧着位置まで供給する。
圧着装置102と端子支持工程と電線保持工程と圧着工程と端子切り離し工程とについて説明する。
この例示の圧着装置102は、圧着機110と、端子切断機120と、圧着機110及び端子切断機120に駆動装置103の動力を伝える動力伝達機構130と、を備える(図9)。更に、この圧着装置102は、その圧着機110と端子切断機120と動力伝達機構130とを支持するフレーム140を備える(図9)。
先ず、フレーム140と動力伝達機構130について説明する。
フレーム140は、基台141と、アンビル支持体142と、動力伝達機構130の支持体(以下、「伝達部支持体」という。)143と、を備える(図9)。このフレーム140においては、基台141とアンビル支持体142と伝達部支持体143とが相互間で相対移動しないように設置されている。基台141は、例えば、端子圧着装置100を載せ置く載置台(図示略)の上に固定される。アンビル支持体142と伝達部支持体143は、基台141の上に固定される。伝達部支持体143は、アンビル支持体142に対して後方(図9の紙面右方)且つ上方(図9の紙面上方)に配置する。具体的に、この伝達部支持体143は、アンビル支持体142の後方で基台141から上方に向けて立設された立設部143Aと、この立設部143Aの上部に保持されたラム支持部143Bと、を有する。ラム支持部143Bは、後述するラム131を支持する支持部であり、アンビル支持体142の上方に所定の間隔を空けて配置する。
動力伝達機構130は、駆動装置103から出力された動力を圧着機110と端子切断機120に伝えるものであり、図9に示すように、ラム131と、ラムボルト132と、シャンク133と、を備える。
ラム131は、ラム支持部143Bに対して上下動自在に支持された可動部材である。例えば、このラム131は、方体状に成形している。このラム131には、雌螺子部(図示略)が形成されている。その雌螺子部は、ラム131の内方から上端面に向けて形成された上下方向の穴の内周面に形成する。
ラムボルト132は、ラム131の雌螺子部に螺合される雄螺子部(図示略)を有する。故に、このラムボルト132は、ラム131と一体になってラム支持部143Bに対して上下動することができる。また、このラムボルト132は、その雄螺子部の上方に配置されたボルト頭部132aを有する(図9)。そのボルト頭部132aには、雌螺子部(図示略)が形成されている。その雌螺子部は、ボルト頭部132aの内方から上端面に向けて形成された上下方向の穴の内周面に形成する。
シャンク133は、円柱状の中空部材であり、それぞれの端部に雄螺子部133a(図9)と接続部(図示略)とを有する。このシャンク133の雄螺子部133aは、中空部材の下側に形成されており、ラムボルト132のボルト頭部132aの雌螺子部に螺合される。故に、シャンク133は、ラム131やラムボルト132と一体になってラム支持部143Bに対して上下動することができる。
この動力伝達機構130においては、シャンク133の接続部が駆動装置103の動力変換機構の出力軸に連結されている。故に、この動力伝達機構130においては、駆動装置103の出力(動力変換機構の出力)によって、ラム131とラムボルト132とシャンク133とが一体になってラム支持部143Bに対して上下動する。そして、そのラム131には、圧着機110の後述する第2金型112と端子切断機120の後述する押下部材122とが固定されている。従って、その第2金型112と押下部材122は、駆動装置103の出力(動力変換機構の出力)によって、ラム131等と共にラム支持部143Bに対して上下動することができる。更に、ラム支持部143Bは、アンビル支持体142に対して相対移動しない。よって、第2金型112と押下部材122は、アンビル支持体142に対しても、駆動装置103の出力(動力変換機構の出力)で上下動することになる。
続いて、その駆動装置103と動力伝達機構130とで作動する圧着機110と端子切断機120について説明する。
圧着機110は、端子支持工程と電線保持工程と圧着工程とを実施するものであり、圧着位置まで供給された圧着端子1を支持すると共に電線50を保持した上で、その圧着端子1を電線50の端部に加締めて圧着させる。この圧着機110は、互いに対を成して圧着加工を担う第1金型111と第2金型112とを備える(図9及び図10)。この圧着機110は、更に、圧着加工前から圧着加工後までの間電線50を挟持する電線押さえ具113及び電線載置具114(図11及び図12)と、その電線50に対する挟持力を調整する第1及び第2の弾性部材115A,115B(図11及び図12)と、を備える。一方、端子切断機120は、端子切り離し工程を実施するものであり、圧着加工後の圧着端子1の繋ぎ部32を2つの端子切断部で挟み込んで切断する。この端子切断機120は、第1端子切断部121cを有する端子切断具121と、端子切断具121を押し下げる押下部材122と、を備える(図9及び図11)。この端子切断機120においては、後述するように、第1金型111に第2端子切断部111bを設けている。これらの各種構成部品や機構については、後で詳述する。
端子支持工程においては、圧着位置(第1金型111)まで供給されてきた圧着加工前の圧着端子1を支持する。この端子支持工程では、その圧着端子1の電線接続部12における底部14の外壁面側の被支持面14a(図2)を第1金型111で支持する。
電線保持工程においては、圧着加工が実施される前に電線50を保持する。この電線保持工程では、電線接続部12を間に置いて第1金型111に対して対向配置された第2金型112の第1金型111に向けた移動に連動して、電線50を載置している電線載置具114に向けて電線押さえ具113を移動させる。そして、この電線保持工程では、その電線押さえ具113の移動に伴って、電線押さえ具113と電線載置具114との間で電線50を保持する。
圧着工程においては、その電線保持工程で電線押さえ具113と電線載置具114との間に保持されている電線50に対して、圧着端子1の電線接続部12を圧着させる。この圧着工程では、第2金型112及び電線押さえ具113の第1金型111及び電線載置具114に向けた移動に連動して、U字状の電線接続部12の内方の空間部に電線50の端部を入り込ませる。そして、この圧着工程では、その第2金型112及び電線押さえ具113の移動に連動して、その電線押さえ具113の移動に伴う電線押さえ具113から電線50への第1押圧力と第1押圧力とは逆向きの電線載置具114から電線50への第2押圧力とで電線50を保持し続けながら電線載置具114を押し下げつつ、電線50の保持状態を保ったまま第1金型111と第2金型112との間で電線50の端部に対して電線接続部12の一対のバレル片部15,16を圧着させる。この例示の圧着工程では、電線50を介して電線押さえ具113からの押圧力が作用し続ける電線載置具114に対して、端子切断具121との間に介在する弾性部材(第2弾性部材115B)から第2押圧力を作用させ続けることで、電線押さえ具113と電線載置具114との間で電線50を保持し続ける。
端子切り離し工程においては、圧着加工後の圧着端子1の繋ぎ部32を切断する。この端子切り離し工程では、第2金型112及び電線押さえ具113の第1金型111及び電線載置具114に向けた移動に連動して、端子切断具121を押し下げながら端子切断具121の第1端子切断部121cを第2端子切断部111bに向けて移動させる。この端子切り離し工程では、その端子切断具121の移動に伴って、圧着加工後の圧着端子1の繋ぎ部32を第1端子切断部121cと第2端子切断部111bとで挟み込んで切断する。
先に、端子支持工程と電線保持工程と圧着工程とを実施する圧着機110についての説明を行う。
第1金型111と第2金型112は、上下方向に間隔を空けて対向配置された圧着成形型である(図10)。この第1金型111と第2金型112は、その間に配置された圧着端子1と電線50の端部とを挟み込んでいくことで、その圧着端子1を電線50の端部に圧着させる。第1金型111は、2つの下型が形成されたものであり、その下型として第1アンビル111Aと第2アンビル111Bとを有する。第2金型112は、2つの上型が形成されたものであり、その上型として第1クリンパ112Aと第2クリンパ112Bとを有する。第1アンビル111Aと第1クリンパ112Aは、上下方向に間隔を空けて対向配置されており、その相互間の間隔を狭めていくことによって、U字状の芯線圧着部12Aを先端の芯線51に圧着させる。また、第2アンビル111Bと第2クリンパ112Bは、上下方向に間隔を空けて対向配置されており、その相互間の間隔を狭めていくことによって、U字状の被覆圧着部12Bを被覆52に圧着させる。
第1金型111は、圧着位置まで供給されてきた圧着加工前の圧着端子1の電線接続部12における底部14の被支持面14aを支持する。この第1金型111の第1アンビル111Aと第2アンビル111Bには、それぞれの上側の先端に、下方に向けて凹ませた支持面111A1,111B1が形成されている(図10)。それぞれの支持面111A1,111B1は、U字状の芯線圧着部12AとU字状の被覆圧着部12Bのそれぞれの底部14の形状に合わせて弧状に形成される。この圧着機110においては、そのそれぞれの支持面111A1,111B1が圧着位置となる。底部14を下側にして供給されてきた圧着端子1は、芯線圧着部12Aの底部14の被支持面14aが第1アンビル111Aの上端の支持面111A1に載置され、被覆圧着部12Bの底部14の被支持面14aが第2アンビル111Bの上端の支持面111B1に載置される。
第2金型112は、電線接続部12を間に置いて第1金型111に対して対向配置する。この第2金型112は、第1金型111に対して上下方向(ラム131の上下動の方向)へと相対移動させる。この第2金型112は、U字状の電線接続部12の内方の空間部に電線50の端部を入り込ませた状態で第1金型111に向けて移動させながら、電線50の端部に対して電線接続部12の一対のバレル片部15,16を圧着させる。この第2金型112の第1クリンパ112Aと第2クリンパ112Bには、それぞれに、上方に向けて凹ませた凹状部112A1,112B1が形成されている(図10)。それぞれの凹状部112A1,112B1は、第1アンビル111Aと第2アンビル111Bのそれぞれの支持面111A1,111B1に対して上下方向で対向配置されている。それぞれの凹状部112A1,112B1は、互いに対向する第1及び第2の壁面116A,116Bと、第1及び第2の壁面116A,116Bの上端を繋ぐ第3壁面116Cと、を有する。それぞれの凹状部112A1,112B1は、第1から第3の壁面116A,116B,116Cを第1バレル片部15と第2バレル片部16に接触させつつ、第1バレル片部15と第2バレル片部16を電線50の端部に巻き付けながら加締めていく。それぞれの凹状部112A1,112B1は、このような加締め動作を行えるように形成する。
ここで、第1金型111は、それぞれの支持面111A1,111B1を上方に露出させた状態でアンビル支持体142に固定して支持させる。一方、第2金型112は、ラム131に固定している。その第1金型111に対する第2金型112の上下方向における相対位置は、ボルト頭部132aの雌螺子部とシャンク133の雄螺子部133aのねじ込み量を調整することによって、変化させることができる。つまり、この圧着機110は、そのねじ込み量の調整によって、第1アンビル111Aに対する第1クリンパ112Aの上下方向における相対位置と第2アンビル111Bに対する第2クリンパ112Bの上下方向における相対位置とを変化させることができる。ナット134は、ラムボルト132の上方でシャンク133の雄螺子部133aに螺合させており、ボルト頭部132aの雌螺子部と共に所謂ロックナットの機能を成す。このため、このナット134は、上記の相対位置の調整完了後にラムボルト132側へと締め付けることによって、その相対位置に第1クリンパ112Aと第2クリンパ112Bを固定することができる。
第2金型112は、ラム131と共にアンビル支持体142やラム支持部143Bに対して上下方向に相対移動させることができる。よって、この第2金型112は、第1金型111に対して上下方向に相対移動させることができる。
電線押さえ具113と電線載置具114は、圧着加工中に、電線接続部12に対する電線50の端部の位置ずれを抑える電線保持機構として動作する。電線押さえ具113と電線載置具114は、上下方向で対向配置させる(図11及び図12)。
電線押さえ具113は、第2金型112の移動に連動して電線載置具114に対して上下方向(ラム131の上下動の方向)へと相対移動させる部材であり、その第2金型112に並べて配置されている。この電線押さえ具113は、第2金型112等と同じようにラム131に固定し、このラム131と一体になって電線載置具114に対する相対移動を行わせてもよい。但し、この例示の電線押さえ具113は、後述するように端子切断機120の押下部材122に第1弾性部材115Aを介して取り付けており、押下部材122と一緒に上下方向に相対移動させる。一方、電線載置具114は、電線50が載置される部材であり、その電線50を間に置いて電線押さえ具113に対して対向配置される。この電線載置具114は、第1金型111に並べて配置されている。
この電線保持機構において、電線押さえ具113は、第2金型112の第1金型111に向けた移動に連動して移動しながら電線載置具114に近づき、その電線載置具114に載せ置かれている電線50に第1押圧力を作用させる。電線載置具114は、その電線押さえ具113から電線50への第1押圧力の作用に伴い第1押圧力とは逆向きの第2押圧力を電線50に作用させながら、電線押さえ具113との間で電線50を保持する。
電線保持機構は、その電線50を介した電線押さえ具113からの押圧力での電線載置具114の押し下げを許容しつつ、その電線押さえ具113からの押圧力が電線載置具114に作用している間第2押圧力を電線載置具114に作用させ続ける弾性部材(第2弾性部材115B)を備えている(図11及び図12)。よって、この電線保持機構は、電線押さえ具113が電線50に第1押圧力を作用させている間、電線押さえ具113と電線載置具114との間で電線50を保持し続ける。換言するならば、この電線保持機構は、第1金型111と第2金型112との間での圧着加工が続いている間、電線押さえ具113と電線載置具114との間で電線50を保持し続ける。
その電線押さえ具113と電線載置具114との間には、電線50の被覆52を保持する空間(以下、「電線保持空間」という。)117が形成される(図11及び図12)。その電線保持空間117は、圧着工程における電線載置具114からの電線50の浮き上がりを抑え、電線接続部12に対する先端の芯線51や被覆52の位置ずれを抑制させるためのものである。この電線保持機構においては、電線押さえ具113を電線載置具114に近づけていくことによって、これらの間に電線保持空間117が形成される。
ここで、圧着工程においては、第2金型112の第1金型111に向けた移動によって、電線50の端部が電線接続部12の底部14に向けて押し下げられていく。これに伴って、電線50の端部は、U字状の電線接続部12の内方の空間部に入り込む。その際、電線50の端部は、第2金型112で押し下げられて先端の芯線51側が底部14に載置され、その第2金型112による押し下げが続くことで、先端の芯線51側から徐々に底部14に載置されていく。つまり、電線50の端部は、第2金型112によって押し下げられて底部14側(下方)に傾倒した後、その押し下げの継続と共に、底部14に載置される。この例示の電線保持空間117は、その傾倒に伴う電線50の負荷を軽減するべく、押し下げに伴い傾倒している電線50の端部と同じ向きに傾斜させる。
その電線保持空間117の傾斜角は、圧着加工が行われているときの電線接続部12の底部14に対する電線50の端部の傾斜角に一致又は近づけることが望ましい。また、その電線50の端部の傾斜角が圧着加工中に変化する場合には、その様々な傾斜角の内の何れかに電線保持空間117の傾斜角を一致又は近づけることが望ましい。例えば、電線保持空間117の傾斜角は、先端の芯線51が電線接続部12の底部14に当接したときの電線50の端部の傾斜角に一致させる。
具体的に、電線保持空間117は、電線押さえ具113の下面113aに形成した凹部113b(図11、図12及び図14)と、電線載置具114の上面114aに形成した凹部114b(図11、図12及び図13)と、によって形成する。電線押さえ具113の下面113aと電線載置具114の上面114aは、圧着位置での電線接続部12の底部14に平行な平面(つまり、電線押さえ具113と電線載置具114との間の相対移動方向(上下方向)に対する直交平面)になっている。電線押さえ具113の凹部113bは、例えば、電線載置具114の上面114aに向けて側壁間の間隔が広がるV字状の溝であり、電線50の端部(先端)に近づくにつれて電線載置具114の上面114a側に近づくように溝底を傾斜させる。電線載置具114の凹部114bは、例えば、電線押さえ具113の下面113aに向けて側壁間の間隔が広がるV字状の溝であり、電線50の端部(先端)に近づくにつれて電線押さえ具113の下面113a側から離れるように溝底を傾斜させる。それぞれの凹部113b,114bの溝底は、例えば、相互間の間隔が同等になるように形成して、それぞれの傾斜角が同等の角度となるようにすることが望ましい。
電線載置具114の上面114aは、圧着端子1が圧着位置まで供給されてきた際に電線50が載せ置かれる部位である。従って、上面114aに載せ置かれた電線50は、第2金型112及び電線押さえ具113の第1金型111及び電線載置具114に向けた移動に伴って、第2金型112と電線押さえ具113の凹部113bで端部が押し下げられながら、その凹部113bの溝底の所定位置と電線載置具114の上面114aとで挟み込まれる。この電線50は、第2金型112及び電線押さえ具113の第1金型111及び電線載置具114に向けた移動が更に進むことで、それぞれの凹部113b,114bに傾斜状態で挟み込まれて、電線保持空間117で保持される。この電線50においては、先に示したように第2金型112による押し下げの継続と共に端部が底部14に載置され、更に第2金型112が移動することで、その端部に第1バレル片部15と第2バレル片部16とが圧着される。その際、この電線50は、それぞれの凹部113b,114bに挟み込まれた保持状態のまま、電線押さえ具113によって電線載置具114と共に押し下げられていく。
ここで、この端子圧着装置100においては、圧着加工が実際に始まる(第1バレル片部15と第2バレル片部16が第1壁面116Aと第2壁面116Bに接触する)前までに又は圧着加工が実際に始まると同時に、電線50が所定の位置で電線保持空間117に保持されるよう電線押さえ具113を下降させることが望ましい。これにより、この端子圧着装置100においては、圧着加工が実際に始まったときに、先端の芯線51の先端位置が芯線圧着部12Aから食み出さないように、この芯線51が芯線圧着部12Aの底部14に載置されているので、電線接続部12に対する電線50の端部の位置ずれが抑制される。
その電線保持空間117においては、それぞれの凹部113b,114bが開口側を互いに向かい合わせたV字状に形成されているので、保持前の電線50が電線載置具114の上面114aに沿って位置ずれしていたとしても、その電線50を電線押さえ具113の下降と共にそれぞれの凹部113b,114bの溝底に案内することができる。つまり、この端子圧着装置100は、電線50が電線載置具114の上面114aに沿って位置ずれしていたとしても、この電線保持空間117で所定の位置に保持することができる。よって、この端子圧着装置100においては、この点からも、電線接続部12に対する電線50の端部の位置ずれが抑制される。
ところで、従来の端子圧着装置では、凹部114bに相当する部分が端子切断具に設けられており、その端子切断具と一体になって、繋ぎ部が切断されるまで凹部114bに相当する部分も押下部材で押し下げられる。このように、従来の端子圧着装置では、繋ぎ部32の切断機能と電線50の保持機能とを1つの端子切断具に担わせているので、圧着加工の途中で上面114aや凹部114bに相当する部分が電線50から離れてしまい、その電線50が保持されなくなってしまう可能性がある。よって、従来の端子圧着装置においては、折角その電線50の保持機能で電線接続部12に対する電線50の端部の位置ずれを抑制していたにも拘わらず、圧着加工の途中で電線50の端部の位置ずれを発生させてしまう虞がある。しかしながら、本実施形態の端子圧着装置100においては、第1金型111と第2金型112との間での圧着加工が続いている間、電線保持空間117で電線50が保持され続けている。よって、本実施形態の端子圧着装置100は、圧着加工が終わるまで電線接続部12に対する電線50の端部の位置ずれを抑制し続けることができるので、従来の端子圧着装置よりも圧着加工精度を向上させることができる。従って、本実施形態の端子圧着装置100は、従来よりも高品質の端子付き電線50Aを形成することができる。
具体的に、この例示の電線押さえ具113は、先に示したように、端子切断機120の押下部材122に第1弾性部材115Aを介して取り付けている(図11及び図12)。一方、電線載置具114は、端子切断機120の端子切断具121に第2弾性部材115Bを介して取り付けている(図11及び図12)。そこで、以下においては、端子切断機120について説明しつつ、電線押さえ具113と電線載置具114の具体例の説明を行う。
端子切断機120は、圧着加工後の圧着端子1の繋ぎ部32を第1端子切断部121cと第2端子切断部111bとで挟み込んで切断するものであり、その切り離しを圧着工程の進行と同時に行う。この端子切断機120においては、端子切断具121を第2アンビル111Bよりも前側(図9の紙面左側)に配置し、押下部材122を第2クリンパ112Bよりも前側(図9の紙面左側)に配置する。
端子切断具121は、方体状に成形され、第2アンビル111Bの前面に沿って上下方向に摺動し得るように配置する。この端子切断具121には、その第2アンビル111Bとの摺接面121aから内方に向けてスリット121bが形成されている(図11から図13)。スリット121bは、圧着対象の圧着端子1が圧着位置まで供給されてきた際に、この圧着端子1と繋がる繋ぎ部32の一部を突出させた状態で連結片31が挿入される内部空間である。ここでは、そのスリット121bへの連結片31等の挿入が可能な位置を端子切断具121の上下方向における初期位置とする。繋ぎ部32における電線接続部12側の端部は、スリット121bの摺接面121a側(つまり圧着端子1側)の開口を介して、スリット121bの内部から突出させる。端子切断具121においては、その開口における上側のエッジ部が第1端子切断部121cとして利用される(図11から図13)。
この端子切断具121は、第1端子切断部121cが第1金型111の第2端子切断部111bとの間に繋ぎ部32を挟み込んで切断するように、第2金型112の第1金型111に向けた移動に連動して押し下げられる。この例示では、第2アンビル111Bの上面エッジを第2端子切断部111bとして利用する(図15から図17)。この端子切断機120においては、その第1端子切断部121cと第2端子切断部111bとが鋏の如き作用を為す。よって、この端子切断機120においては、端子切断具121を押し下げて第1端子切断部121cと第2端子切断部111bとで繋ぎ部32を挟み込み、そこから更に端子切断具121を押し下げることによって、第1端子切断部121cと第2端子切断部111bとで繋ぎ部32を切断する。これにより、圧着端子1は、端子連鎖体30から切り離される。尚、切断性を高めるため、第1端子切断部121cは、摺接面121a上で第2端子切断部111bに対して傾斜させている。
この端子切断具121には、上部に電線載置具114の収容室121dを形成する(図11から図13)。その収容室121dは、方体状に形成されており、底面121d1から複数本(ここでは、4本)のガイド部121eを垂設させている(図11から図13)。それぞれのガイド部121eは、上下方向に延在する軸部として形成する。電線載置具114には、ガイド部121eを挿通させる貫通孔(図示略)がガイド部121e毎に形成されている。ガイド部121eの垂設方向側の先端には、電線載置具114がガイド部121eから脱離しないように、電線載置具114を係止する係止部121fを設けている(図11から図13)。収容室121dにおいては、それぞれのガイド部121eが貫通孔に挿通された状態で、かつ、上面114a及び凹部114bを上方に向けた状態で、電線載置具114を底面121d1から間隔を空けて配置する。この収容室121dにおいては、その電線載置具114をガイド部121eに沿って上下方向へと相対移動させる。第2弾性部材115Bは、その上下方向に伸縮可能な弦巻バネとして形成し、その電線載置具114と底面121d1との間に配置する。このように、電線載置具114は、端子切断具121に対して上下方向に相対移動可能な状態で第2弾性部材115Bを介して取り付けられている。
この端子切断具121には、その収容室121dを間に挟む2つの側壁部121gが形成されている(図11及び図13)。この端子切断具121においては、それぞれの側壁部121gの上面を押下部材122との当接点として利用する。端子切断具121は、それぞれの側壁部121gの上面に押下部材122からの荷重が加えられることで押し下げられる。端子切断機120は、その押し下げられた端子切断具121を圧着加工後に初期位置に戻すための弾性部材123を備える(図15から図17)。その弾性部材123は、端子切断具121に対して上方への付勢力を加えるものであり、弦巻バネ等から成る。この弾性部材123は、押下部材122からの荷重(押下力)が解除されたときに、端子切断具121を上下方向における初期位置に戻す。
押下部材122は、先に示したようにラム131に固定されており、そのラム131と一体になって上下動する。この押下部材122は、端子切断具121の上方に配置され、下降していって端子切断具121を押し下げる。押下部材122は、方体状に成形される。
この押下部材122には、電線押さえ具113の収容室122aを形成する(図11及び図12)。電線押さえ具113は、上部113cを押下部材122の内方の収容室122aに収容し(図11及び図12)、その押下部材122に対して上下方向(ラム131の上下動の方向)へと相対移動させる。一方、この電線押さえ具113は、下部113dを押下部材122から下方に向けて突出させる(図11及び図12)。電線押さえ具113は、その下部113dの下面113aに凹部113bを形成している。第1弾性部材115Aは、上下方向に伸縮可能な弦巻バネとして形成し、収容室122aで電線押さえ具113の上部113cと収容室122aの上方の壁部122a1との間に配置する(図11及び図12)。この第1弾性部材115Aは、電線押さえ具113に対して下方への付勢力を加える。
ここで、この押下部材122には、その第1弾性部材115Aの付勢力で電線押さえ具113が収容室122aから脱離しないように係止部122a2を形成している(図11)。その係止部122a2は、収容室122aの下部に形成し、電線押さえ具113の被係止部113eを係止する。ここでは、その被係止部113eで係止されている電線押さえ具113の位置を電線押さえ具113の押下部材122に対する初期位置とする。
端子圧着装置100においては、第2金型112及び押下部材122と共に電線押さえ具113が下降し、電線載置具114の上面114aに載せ置かれている電線50に電線押さえ具113の凹部113bが当接する(図15)。その電線押さえ具113は、第2金型112及び押下部材122を更に下降させることで、これらと共に下降し、電線保持空間117で電線50を傾斜状態のまま保持する(図16)。この電線押さえ具113には、第1弾性部材115Aを介して押下部材122から下方に向けた押圧力が作用している。よって、この電線押さえ具113は、第2金型112及び押下部材122と共に更に下降させることによって、第1弾性部材115Aを縮めて押下部材122に対して上方に相対移動する一方、電線50に第1押圧力を加える。電線載置具114は、その電線50を介した電線押さえ具113からの押圧力によって、第2弾性部材115Bを介して端子切断具121に対して下方に相対移動する一方、その第2弾性部材115Bの弾発力によって、電線50に第2押圧力を加える。
第1弾性部材115Aと第2弾性部材115Bは、その電線50に対する第1押圧力と第2押圧力とを保ち続けるように作用させる。例えば、電線押さえ具113は、押下部材122の下降速度や荷重に変化が無ければ、電線保持空間117で電線50を保持しているときに押下部材122に対する相対移動が概ね止まる。これと同様に、電線載置具114は、押下部材122の下降速度や荷重に変化が無ければ、電線保持空間117で電線50を保持しているときに端子切断具121に対する相対移動が概ね止まる。一方、例えば、電線押さえ具113と電線載置具114は、押下部材122の下降速度や荷重が変化したときに、電線50に対する第1押圧力と第2押圧力を保ちつつ(つまり、電線保持空間117での電線50の保持状態を保ちつつ)、各々が相対移動する。
端子圧着装置100においては、第2金型112及び押下部材122を更に下降させることで、電線保持機構(電線押さえ具113、電線載置具114)による電線保持空間117での電線50の保持状態を保ちながら、第1金型111と第2金型112との間での圧着加工を行いつつ、押下部材122が端子切断具121を押し下げていく。この端子圧着装置100においては、第2金型112及び押下部材122を更に下降させることで、その電線50の保持状態を保ちながら、第1金型111と第2金型112との間での圧着加工が完了し、かつ、端子切断具121の第1端子切断部121cと第1金型111の第2端子切断部111bとによる繋ぎ部32の切断が完了する(図17)。
以上示したように、本実施形態の端子付き電線製造方法及び端子圧着装置100は、圧着端子1の電線50への圧着加工が終わるまでの間、電線保持機構(電線押さえ具113、電線載置具114)で電線保持空間117に電線50を保持し続けている。従って、この端子付き電線製造方法及び端子圧着装置100においては、圧着加工が終わるまでの間、圧着位置での電線接続部12に対する電線50の端部の位置ずれを抑制することができるので、圧着端子1と電線50との間の圧着加工精度を向上させることができる。例えば、この端子付き電線製造方法及び端子圧着装置100に依れば、端子付き電線50Aにおいては、芯線51のほつれ等の発生が抑えられている。