JP2016127807A - 包み込み式の香り付き木なり脱渋柿の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】木なり脱渋柿に新たな付加価値を付与することのできる製造方法の提供。
【解決手段】収穫前の柿の実に包装袋を被せ,アルコールに香料を混合して得られる香料入りアルコールを柿の実とともに包装袋の中に封入し,柿の実の脱渋及び着香を行う,香り付き木なり脱渋柿の製造方法。及び果肉内のタンニンがアルコールによって不溶化し黒褐色のゴマが形成された脱渋柿であって,前記果肉の内部に香料が含浸している脱渋柿。前記香料は、柑橘系フレーバー以外のフレーバーであり、液状の香料を粉状又は固形状のアルコールに含浸させて、前記包装体に入れる、木なり脱渋柿の作成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は,収穫前の柿の実に包装袋を被せ,この包装袋の中に柿の実と共にアルコールを密封して柿の実の脱渋(渋抜き)を行う,包み込み式の木なり脱渋柿の製造方法に関する。具体的に説明すると,本発明は,アルコールと香料を混合した香料入りアルコールを柿の実とともに包装袋内に封入することで,柿の実の脱渋と同時に,この柿の実に対して所望の香りを付与する,香り付き木なり脱渋柿の製造方法に関するものである。
柿には甘柿と渋柿とがあり,このうちの渋柿は,果肉中にタンニンが含まれ渋味を呈するものである。このような渋柿の渋味は,果肉中に存在するタンニンに基づくとされており,これが果肉内で可溶性の状態であれば,ヒトは舌で渋みを感じる。そこで,人工的にアセトアルデヒドなどの生成を促して,可溶性のタンニンを反応させて不溶化し,渋柿の渋味を抜く脱渋方法が行われてきている。渋柿の脱渋方法としては,例えば,湯抜き法,アルコール法,炭酸ガス法,アルコール・炭酸ガス併用法などが知られているが,脱渋後の食味が良いことや脱渋が簡単であることから,現在ではアルコール法が多用されている(特許文献1,特許文献2)。アルコール法は,渋柿を包装袋などの密閉容器に収容し,焼酎や,薬用アルコール,エタノール等のアルコールをこの密閉容器に封入して,柿の実の呼吸の変化に伴って追熟を促進させ,タンニンを水溶性から不溶性に変化させることで,脱渋を行う手法である。
また,従来は,収穫後の渋柿を脱渋することが一般的であったが,近年では,収穫前の木になった状態の渋柿に対して脱渋を行う,木なり渋柿の脱渋法が開発されている(特許文献3)。一般的に,木なり渋柿の脱渋法には,以下の2通りがあるとされている。一つ目は,固形アルコールの入ったポリ袋を渋柿に被せて,ヘタのすぐ下のくびれ目を輪ゴムで巻き止める方法である。また,二つ目は,粉末アルコール入りの通気性のある容器を粘着剤つきアルミシートで被い,これを渋柿の表面に貼付する方法である。
近年開発された固形アルコールと粉末アルコールによる木なり脱渋法によれば,アルコールが渋柿の果肉内に効果的に浸み込んで拡散し,渋味の元であるタンニンが不溶性に変化して渋味が消失する。この点は,収穫後の渋柿をアルコールや炭酸ガスを使用して脱渋するのと同じであるが,決定的な相違は,木なり脱渋法によれば,渋柿内のタンニンが凝固及び変色して黒褐色のゴマ(褐斑)が形成される点にある。
木なり脱渋柿(平核無柿)の食感は,果肉内部に密集して凝固しているゴマによって,多少ザラザラするもパリパリとした感触となる。甘さは,糖度15度以上となり,日持ちは,40日前後(常温)となる。木なり脱渋柿は,凝固したゴマが軟化しにくく,収穫後に脱渋した柿と比較して,糖度が高く日持ちも良いという特長を持つ。なお,収穫後に脱渋した柿は,果肉内に黒褐色のゴマが現れず,食感も滑らかでまろやかであり,甘さは糖度12度程度,日持ちは7日前後(常温)で,軟化も早いものとなる。
木なり脱渋柿には,パリッとした新鮮な食感や,食味の良さ,果皮の色の良さ,硬果肉,日持ちの良さ,強い甘味などの点において,生産者,流通業者,及び消費者を惹きつけるに確かな魅力がある。このような現状を考えるとき,木なり脱渋柿は,特に生産者にとって,それを生産するメリットは大きい。その理由としては,第一に,生産経費が少なくて済む脱渋法であること,第二に,生産者の誰もが容易に参入できる簡便な方法であること,第三に,柿細胞の肥大化が一段と進み大玉の果実が得られること,第四に,収穫期間が長いことなどが挙げられる。
特開平7−099884号公報 特開平7−289161号公報 特開平7−059464号公報
上記のように,木なり脱渋柿は,今までの脱渋柿にない諸々の魅力や生産のメリットがあり,さらにはゴマ入りという珍しさも加わって,近年人気が上昇している。ゴマ入りの果肉の食感も,日本梨の石細胞の食感に似ているとされ,食味の向上につながっているといえる。このため,木なり脱渋柿をブランド品とし,その取り入れを急ぐ産地(例えば,和歌山県の紀ノ川柿,山形県のしぐれ柿)も現われている。
しかしながら,遠からず予想されることは,木なり脱渋柿の新産地の台頭による生産量の増加と,その結果もたらされる価格の低下である。新産地の例は,東京電力の福島原発事故により干し柿(あんぽ柿)の出荷が自粛同然となっている福島県伊達地方である。この地方のあんぽ柿の出荷のシェアは,事故前では全国の約5分の4以上であったが,事故以降,この地方では,放射線量の高いあんぽ柿から,放射線量の低い脱渋生柿の出荷へと切り替わりつつある。あんぽ柿は,乾燥加工を行う必要があるため,放射線量が生柿の約3〜5倍に増え,健康に悪影響をもたらす危険食物とみなされる傾向にあるからである。このため,今後課題は,木なり脱渋柿に更に革新的な付加価値をつけることである。このことが,現在,柿の生産者と流通業者にとって最大の課題となりつつある。
そこで,本発明は,木なり脱渋柿に新たな付加価値を付与することのできる製造方法を提供することを解決課題とする。
本発明の発明者は,上記の課題を解決する手段について鋭意研究を重ねた結果,収穫前の柿の実に包装袋を被せ,アルコールに香料を混合して得られる香料入りアルコールを,この柿の実とともに包装袋の中に封入し,樹上にて柿の実の脱渋及び着香を行うことで,他の植物,動物,菓子等の香りが移植された革新的な木なり脱渋柿を製造することができるという知見を得た。
すなわち,渋柿の香りは極めて少ない。このため,渋柿は,他の動物,植物,菓子等の香りを移植するには好適な素材である。そこで,木なり渋柿に,香料入りアルコールを浸み込ませる。すると,アルコールの作用により,果肉内のタンニンが不溶化し,ゴマ(褐斑)を内包した甘柿に変化する。また,タンニンが不溶化してゴマとなる段階で,アルコールに含まれる香料がゴマに浸潤し,ゴマ内にとじ込められて香り柿となる。さらに,ゴマ(タンニン細胞)以外の柿細胞は一段と膨張し肥大化するため,大玉の脱渋香り柿が得られる。
本発明の製造方法においては,香料入りアルコールを包装袋内に封入してから所定期間経過後に,包装袋の一部を開封して香料入りアルコールを取り出し,その包装袋を引き続き収穫前の柿の実に被せた状態で柿の実の追熟を行うことが好ましい。このように,香料入りアルコールを取り出した後,包装袋をそのまま柿の実に被せておくことで,虫避けや鳥避けになり,遅霜の凍害から柿の実を守り,さらには空中の放射性物質等の汚染物質から柿の実を防護する役割を果たす。
本発明の製造方法において,香料としては,柑橘系フレーバー以外のフレーバー,例えば柑橘系以外の植物類のフレーバーや,動物類のフレーバー,乳類のフレーバー,茶類のフレーバー,菓子類のフレーバー,その他の合成香料を選択することが好ましい。柿の実に柑橘系のフレーバーを着香しても,その香りが柿の味や香りに紛れてしまい,香りの変化に気づきにくいが,柑橘系以外のフレーバーを用いることで,柿の味や香りに有意な変化をもたらすことができる。
本発明の製造方法において,香料入りアルコールは液状であり,この液状の香料入りアルコールを含浸させた吸収体が包装袋の中に封入されることが好ましい。香料入りアルコールを液状とすることにより,アルコールとともに香料が気化しやすくなるため,香り成分を柿の実の内部まで効果的に浸透させることができる。
本発明の製造方法において,アルコールは粉状又は固形状であってもよい。この場合,香料入りアルコールは,粉状又は固形状のアルコールに液状の香料を添加して得られたものであることが好ましい。
本発明の他の側面は,脱渋柿に関する。本発明の脱渋柿は,果肉内のタンニンがアルコールによって不溶化し黒褐色のゴマが形成されたものであって,果肉の内部に香料が含浸していることを特徴とする。本発明の脱渋柿は,タンニンが不溶化してゴマとなる段階で,アルコールに含まれる香料がゴマに浸潤したものであり,ゴマ内に香料がとじ込められた香り柿となる。
本発明によれば,木なり脱渋柿に対して,他の動植物や菓子などの香りという革新的な付加価値を付与することができる。
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
本発明は,香り付きの木なり脱渋柿を製造する方法に関する。木なり脱渋柿を得る方法は既に知られている(例えば特許文献3等)。木なり脱渋法は,収穫前の木枝に吊るされた状態の柿の実に包装袋を被せ,この包装袋の中に柿の実とともにアルコールを密封し,アルコールの作用によって脱渋を行う方法である。本発明は,この木なり脱渋法に基づき,さらに“香り”という革新的な付加価値を脱渋柿に付加する。本発明では,基本的に,アルコールを用いて木なり脱渋柿を得るときに,柿の果肉内に発露する黒く凝固した不溶性タンニン(ゴマ)を,香りの着香部として利用する。つまり,アルコールによって水溶性タンニンが凝固してゴマ化するときに,他の植物や動物,菓子等の香り成分をゴマの中に閉じ込める。
本発明においては,収穫前の柿の実とともに包装袋内に封入するアルコールとして,アルコールに香料を混合して得られる「香料入りアルコール」を用いる。香料入りアルコールは,液状,粉状,固形状のいずれであってもよいが,特に液状のものを用いることが好ましい。液状の香料入りアルコールは,ペーパータオルや脱脂綿などの液体を吸収する吸収体に含浸させて,その香料入りアルコールが含浸した吸収体を,上記の包装袋内に封入すると良い。香料入りアルコールが液状であることにより,アルコールとともに香料が気化しやすくなるため,柿の実の内部に香り成分を分散浸透させることができるようになり,柿の実の全体に香りを付することができる。また,粉状又は固形状のアルコールについては,液状の香料を,その粉状又は固形状のアルコールに含浸させて用いればよい。
アルコールとしては,渋柿の脱渋に用いられる公知のものを採用することができる。アルコールの例は,エタノールや,エタノールと精製水の混合液である。脱渋用アルコールとしては,例えば,アデチール750(液状)(ADEKAクリーンエイド株式会社製)や,シブトール(固形状)(株式会社ニイタカ製),アンチモールド・マイルド(粉状)(フロイント産業株式会社製)などが知られている。
香料としては,食品添加物として用いられる公知のものを採用することができる。香料としては,一般的に使用される天然香料や,合成香料,及びこれらを調合した調合香料が挙げられる。天然香料は,天然に存在する香りある植物,動物から,蒸留,抽出,圧搾等の分離操作により取り出したものである。合成香料には,天然香料からその含有成分を抽出,精留,晶析などの簡単な化学処理よって得る単離香料と,有機合成反応により製造する純合成香料とがある。
本発明に置いて用いられる香料の香り(フレーバー)の種類としては,例えば,フルーツ類や,植物類,動物類,乳類,茶類,菓子類を挙げることができる。
フルーツ類のフレーバーとしては,例えば,柑橘系(ミカン,オレンジ,グレープフルーツ,スウィーティー,キーライム,レモン等),ベリー系(イチゴ,ブルーベリー,ラズベリー,クランベリー等),核果系(桃,杏,プラム,マンゴー,梅,チェリー,ライチ,等),その他のフルーツ系(バナナ,ぶどう,イチジク,梨,りんご,パイナップル,メロン,キーウィ,アセロラ,パッションフルーツ,パパイヤ,アサイー,ヤーコン等)がある。
植物類のフレーバーとしては,例えば,ラベンダー,バラ,ヒノキ,バニラ,ジャスミン,ネロリ,イランイラン,チュベローズ,クラリセーズ,クローブ,ペパーミント,ゼラニウム,パッチェリー,ココナッツ,サンダルウッド,シンナモン,コリアンダー,ナツメグがある。
動物類のフレーバーとしては,例えば,ムスク,シベット,カストリウム,アンバーグリス,ジャコウを挙げることがある
乳類のフレーバーとしては,例えば,ミルク,バター,チーズ,クリーム,ヨーグルトがある。
茶類のフレーバーとしては,例えば,緑茶,ウーロン茶,紅茶,コーヒーなどがある。
菓子類のフレーバーとしては,例えば,ココア,チョコレートなどがある。
香料の種類は,上記したものに限定されず,食品添加物として用いられる公知のものを適宜採用することができる。
ただし,本発明において,香料の種類としては,フルーツ類以外のフレーバーを採用すること,特に柑橘系以外のフレーバーを採用することが好ましい。本発明で用いられる香料は,脱渋柿に対して着香するものであるため,柿と香りの似ているフルーツ類,特には柑橘系のフレーバーの香料を用いると,その香りが柿の味や香りに紛れてしまい,香りの変化に気づきにくくなる。そこで,脱渋柿に対して斬新な香りを付与するために,植物類や,動物類,乳類,茶類,菓子類のフレーバーの香料を用いることが好ましい。
香料入りアルコールを作製するにあたり,アルコールと香料の混合比率は適宜調整すればよい。例えば,香料の混合比(質量比)は,香料入りアルコール全体の質量を100%とした場合に,0.03〜10%,0.05〜5%,0.07〜1%程度とすればよい。
収穫前の柿の実と香料入りアルコールを封入する包装袋としては,適度な透湿性と適度なエタノールガスの遮断性を持つ公知のプラスチックフィルム製の包装袋を用いることができる。例えば,プラスチックフィルムとしては,ポリプロピレンや,ポリエチレン,ポリビニルアルコール,アセタール化ポリビニルアルコール,エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂,変性ポリアクリル酸樹脂,ポリアミド樹脂,セルロース誘導体樹脂,ポリアクリルアミド樹脂,ポリエチレングリコール樹脂,ポリアセタール樹脂,脂肪族ポリエステル樹脂,ポリビニルピリジン樹脂などが挙げられる。特にその中でもアルコール性水酸基を有するものは透湿性とエタノールガス遮断性に優れている。
上記のように,収穫前の柿の実を包装袋で包み込み,その包装袋の内部に柿の実とともに香料入りアルコールを封入して,柿の実の脱渋及び着香を行う工程を,「脱渋着香工程」という。脱渋着香工程の開始時期は,柿の花の満開後,105日〜110日目とすることが好ましい。110日より遅れた場合(例えば15日の遅れが発生した場合),汚損果が90%以上発生する。なお,適用時期に5日間の余裕があるのは,柿木の下枝と上枝において,日当たりの良し悪し等による開花のズレを見込んでのことである。脱渋着香工程を開始するときには,例えば,包装袋に所定量の香料入りアルコールを入れ,渋柿を下から上に向かって全体的に包み込み,軸が出ている小枝まで包装袋の口を持ち上げる。その口を堅く巻き縛り,巾広のタフライトテープで小枝にしっかりと巻きつける。香料入りアルコールは,包装袋と粘着テープを用いて柿木の小枝に密着させ,雨水の侵入を防ぎ,通気孔を作らないことが好ましい。
香料入りアルコールの使用量は,柿の実の大きさに応じて調整することができる。例えば,3mlのアデチール750と,0.25mlのラベンダーオイルを混合した香料入りアルコールとをペーパータオルに含浸させたものを,一個の脱渋着香材とする。この場合,脱渋着香材の使用量は,以下の表1に示す量が適切な範囲である。
Figure 2016127807
上記の脱渋着香工程は,柿の実に包装袋を被せた日から10日〜15日間行うことが好ましい。すなわち,柿の実に包装袋を被せた日から10日〜15日間が経過した段階で,包装袋の下部の角部を切除して,脱渋着香材を取り出す。その後,包装袋は,脱渋柿の収穫日まで,そのままの状態で柿の実に被せておくことが好ましい。このように,脱渋着香材を取り出した後,包装袋をそのまま柿の実に被せておくことで,虫避けや鳥避けになり,遅霜の凍害から柿の実を守り,さらには空中の放射性物質等の汚染物質から柿の実を防護することができる。
木なり脱渋柿の収穫時期は,上記の脱渋着香工程の開始日,すなわち柿の実及び脱渋着香材に包装袋を被せた日から起算して,30日目以降とすることが好ましい。香り付き脱渋柿は,軟化し,熟柿となりにくい。柿の木が落葉した後に収穫すれば,甘味と食味を一層向上させることができる。また,柿の形状によっても,収穫時期が異なる。収穫時期は,以下の表2に示す時期が適切である。
Figure 2016127807
また,従来の木なり脱渋法2題と,本発明の「包み込み式木なり柿脱渋着香法」の技術的相違を以下に説明する。
第1題目の従来の脱渋法は,「ヘタ出し樹上脱渋法」である。この方法は,固形アルコール剤を入れた包装袋を平核無柿にかけ,輪ゴムでヘタの付け根に止める。2日間被袋後,包装袋の下部を切り取り,固形アルコールを除去する。収穫期まで約2か月間,木にならせておき,収穫して脱渋された状態で出荷する。しかし,従来のヘタ出し樹上脱渋法は,輪ゴムで果実のヘタの付け根を止めると,雨水がポリ袋内に入ったり,隙間があくという欠点があった。これに対して,本発明の「包み込み式木なり柿脱渋着香法」は,この欠点を防ぐために,果実を下から包み込み,果実の上部の小枝に香料入りアルコールの入った包装袋の口をねじり巻きして,しつかりと粘着テープで止め,ポリ袋内に雨水が入ったり,輪ゴムで止めたヘタの付け根に隙間が出来たりしないようにする。こうすることによって脱渋着香が不完全になることを防ぐ。また,本発明の「包み込み式木なり柿脱渋着香法」は,2日間被袋後でも,包装袋から香料入りアルコールを除去しない。アルコールは2日間のうちに果実に浸み込み,アルコール分は殆ど消えてしまうが,アルコールに添加された香料は,約10日過ぎなければ効力を失わない。このため,脱渋柿のゴマに香りを移植するのには,時間をかけなければならないからである。このため,本発明では,香料入りアルコールは,袋掛けしてから10日経過後に,袋下部を切り取って除去することが好ましい。
第2題目の従来の脱渋法は,「貼り付け式樹上脱渋法」である。第1題目の「ヘタ出し樹上脱渋法」の課題は,不完全脱渋柿が出ることと,生産者の労働力負担が大きいことであった。これを解決するために,第2題目の「貼り付け式樹上脱渋法」が提案された。この「貼り付け式樹上脱渋法」では,アルコールガスを通さない銀色の粘着アルミシートを用いる。粘着剤の付いたシール状のアルミシートの中央に,袋入り粉末アルコールを貼り付けて,これを果実表面に貼り付ける。シールは,貼着後2日目に剥がす。また,脱渋柿の収穫は約1か月後に行う。アルコールは2日間で果実内に浸み込んで拡散し,タンニンは不溶化するために,渋柿は脱渋されて,甘柿となる。この方法は,平核無柿よりも大玉の太天柿と太月柿によって試された。これに対して,本発明の「包み込み式木なり柿脱渋着香法」は,香料入りアルコール粉末シールは用いない。従来の「貼り付け式樹上脱渋法」のように,香料入りアルコール粉末付シールを10日間果実表面に貼付しておけば,香料がアルコールに浸み込み香り効力を発揮するが,シール痕が濃く残ることとなり,収穫までには消えずに汚染果とみなされ,商品価値を失ってしまう。この点において,本発明の「包み込み式木なり柿脱渋着香法」は優れているといえる。また,上述したとおり,本発明の「包み込み式木なり柿脱渋着香法」は,香料入りアルコールを2日間被袋後でも除去せずに,袋掛けしてから少なくとも10日が経過した後に除去する。その理由は,上述したとおり,脱渋柿のゴマに香りを移植するのには,少なくとも10日間以上の期間をかけなければならないからである
[平核無柿(渋柿)]
樹齢約40年の平核無柿(渋柿)の大木1本(A樹と名付ける)を実験用に選定し,同圃場(約10アール)の同品種の柿(9本)について同様の肥培管理を行った。A樹1本にイ.ロ.ハ区を設け,イ区及びロ区においては,脱渋着香加工を施した木なり脱渋香り柿を製造し,ハ区においては,無処理の柿を製造した。
イ区及びロ区における木なり脱渋香り柿の製造方法では,柿の花の満開後105日〜110日目が経過した段階で,収穫前の柿の実をプラスチック製の包装袋で包み込むとともに,この包装袋内に脱渋着香材を封入した。脱渋着香材としては,液体状のエタノールにラベンダーオイルを混合した溶液をペーパータオルに染み込ませたものを用いた。エタノールは,アデチール750(ADEKAクリーンエイド株式会社製)であり,その成分は,エタノール:67.5%(75度),精製水:31.98%等であった。ラベンダーオイルは,有限会社ファーム富田製のものを用いた。アデチール750とラベンダーオイルの配合量は,アデチール750:3ml,ラベンダーオイル:0.25mlとした。プラスチック製の包装袋としては,ハイポリNO.10(サーモ株式会社製)(厚さ0.03mm×巾180mm×長さ270mm)を利用し,包装袋を柿木に止め付けるためのテープとしては,タフライトテープNO.835(積水化学工業株式会社製)(巾50mm×長さ100mm)(透明)を用いた。脱渋着香材は,上記表1に示した適用量に準じた。柿の実に包装袋を被せた日から10日〜15日が経過した段階で,包装袋の下部の角部を切除して脱渋着香材を取り出した。脱渋柿の収穫時期は,上記表2に示した時期に準じた。A樹のイ区,ロ区,及びハ区において収穫された柿の評価を,以下の表3に示す。
Figure 2016127807
樹齢4年の赤富士柿(渋柿)の若木10本(B樹と名付ける)を実験用に選定し,同圃場(約20アール)の同品種の柿(50本)について同様の肥培管理を行った。B樹9本にイ.ロ.ハ区を設け,イ区及びロ区においては,脱渋着香加工を施した木なり脱渋香り柿を製造し,ハ区においては,無処理の柿を製造した。その他,イ区及びロ区における木なり脱渋香り柿の製造条件については,実施例1で説明した条件と同一とした。B樹のイ区,ロ区,及びハ区において収穫された柿の評価を,以下の表4に示す。
Figure 2016127807
樹齢約10年の西条柿(渋柿)の若木6本(B樹と名付ける)を実験用に選定し,同圃場(約20アール)の同品種の柿(40本)について同様の肥培管理を行った。C樹6本にイ.ロ.ハ区を設け,イ区及びロ区においては,脱渋着香加工を施した木なり脱渋香り柿を製造し,ハ区においては,無処理の柿を製造した。その他,イ区及びロ区における木なり脱渋香り柿の製造条件については,実施例1で説明した条件と同一とした。C樹のイ区,ロ区,及びハ区において収穫された柿の評価を,以下の表5に示す。
Figure 2016127807
また,実施例1〜3に示した実験結果の一覧を,以下の表6に示す。
Figure 2016127807
以上のように,本発明は,香料入りアルコールを使用し,木なり渋柿中のタンニンと反応させ,香り付きの脱渋柿をつくる。この方法によれば,渋柿はゴマ入り香り付きの甘柿となる。渋柿がタンニンを凝固させる過程で,アルコール入り香料は,タンニン中に入り込む。タンニンが凝固し終わる頃になると,香りもタンニン中に閉じ込められ,香り付きのゴマ柿に変化する。香り付きのゴマ柿は,肥大が良く,色調は濃厚,食味は極めて良く,甘さも強く,日持ちも従来の方法で作られた脱渋柿の3〜5倍となった。
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。本発明を利用して,木なり渋柿に動物及び植物等の香りを付ける応用範囲は広い。手法は簡単である。渋を持つ植物(特に渋柿)とアルコールと香料とポリ袋と粘着テープだけで済む。渋が凝固すると同時に,動物・植物から得られるオイルとエッセンスをアルコールによって揮発させ,柿内に拡散させる。この手法で得られる柿の実は,形と果肉色は赤ダイダイ色の柿(実)(扁平型・円錐形・俵形)であるが,果実の香りはオイル又はエッセンスの植植・動物の香りである。
本発明は,包み込み式の香り付き木なり脱渋柿の製造方法に関する。従って,本発明は,柿の生産業において好適に利用しうる。

Claims (6)

  1. 収穫前の柿の実に包装袋を被せ,アルコールに香料を混合して得られる香料入りアルコールを前記柿の実とともに前記包装袋の中に封入し,前記柿の実の脱渋及び着香を行う
    香り付き木なり脱渋柿の製造方法。
  2. 前記香料入りアルコールを前記包装袋内に封入してから所定期間経過後に,前記包装袋の一部を開封して前記香料入りアルコールを取り出し,前記包装袋を前記収穫前の柿の実に被せた状態で前記柿の実の追熟を行う
    請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記香料は,柑橘系フレーバー以外のフレーバーである
    請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記香料入りアルコールは液状であり,
    前記液状の香料入りアルコールを含浸させた吸収体が前記包装袋の中に封入される
    請求項1から請求項3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記アルコールは粉状又は固形状であり,
    前記香料入りアルコールは,前記粉状又は固形状のアルコールに液状の香料を添加して得られたものである
    請求項1から請求項3のいずれかに記載の製造方法。
  6. 果肉内のタンニンがアルコールによって不溶化し黒褐色のゴマが形成された脱渋柿であって,前記果肉の内部に香料が含浸している
    脱渋柿。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019208382A (ja) * 2018-05-31 2019-12-12 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 果実の香りを強化及び/又は向上させる方法
JP7051174B1 (ja) * 2020-08-10 2022-04-11 MD-Farm株式会社 イチゴの香り付け方法

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