JP2016117797A - 樹脂シート製造用硬化型組成物 - Google Patents

樹脂シート製造用硬化型組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】得られる樹脂シートが剛性及び強靭性に優れる硬化型組成物、具体的には硬度及び曲げ特性に優れる硬化型組成物の提供。【解決手段】下記(A)〜(C)成分を含む組成物であって、(A)〜(C)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を2〜40重量%、(B)成分を10〜90重量%及び(C)成分を0〜80重量%含む樹脂シート製造用硬化型組成物。(A)成分:1個のエチレン性不飽和基を有する水素結合性化合物(B)成分:2個以上のエチレン性不飽和基を有する水素結合性化合物(C)成分:エチレン性不飽和基を有する化合物であって、(A)及び(B)成分以外の化合物【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂シート製造用硬化型組成物に関し、当該組成物から得られる樹脂シートは液晶ディスプレイ(LCD)及び有機EL等の光学用基板に好ましく使用でき、タッチパネル透明導電膜形成用の樹脂シートにより好ましく使用することができ、これら技術分野に属する。
尚、本明細書においては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表し、又、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す。
近年、スマートフォン、タブレット端末、カーナビゲーションシステム等のモバイル機器に、タッチパネル一体型液晶表示装置又はタッチパネル一体型有機EL表示装置が多く適用されるようになっている。
従来、タッチパネルの透明導電性薄膜としては、ガラス上に酸化インジウムスズ(以下、「ITO」という)の薄膜を形成した導電性ガラスがよく知られているが、基材がガラスであるために可撓性、加工性に劣る。そのため、用途によっては、可撓性、加工性、耐衝撃性に優れ、軽量である等の利点から、ポリエチレンテレフタレートシートを基材とした透明導電性シートが使用されている。
一方、タッチパネルの薄型軽量化、透過率の向上、部材のコストダウンに貢献する事が期待される点から、カバーガラスにITO等のタッチセンサを直接形成するカバー一体型タッチパネル、いわゆるOGS(One Glass Solution)が一部採用されている。しかしながら、OGSタイプはカバーガラスが割れてしまうとタッチパネルを操作できなくなってしまう問題を有する。
そこで、耐衝撃性に優れるカバーの材料として、樹脂シートにITO等のタッチセンサを直接形成する、いわゆるOPS(One Plastic Solution)が提案されている。しかしながら、従来のアクリル系やポリカーネート系シートでは表面硬度が低いため傷つき易く、又、靱性も不足する場合があり外部からの衝撃力で割れる可能性がある。
特許文献1においては、脂環骨格を有するビスメタクリレート及びメルカプト化合物を含む光硬化型組成物を光硬化して得られる、透明導電膜形成用のプラスチック部材が開示されている。
しかしながら、メルカプト化合物を配合する事で硬化物に適度な靱性を付与しているものの、組成物の可使時間(ポットライフ)が短くなり組成物の安定性が低下するという問題があった。
特許文献2においては、脂環構造を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート、脂環構造を有する2官能(メタ)アクリレート及び光重合開始剤を含む光硬化型組成物を光硬化して得られる、厚さ50〜500μmの透明樹脂成形体が開示されている。
しかしながら、ガラスと同等の剛性を発現することができないため、透明導電膜や金属電極形成プロセスでの加熱工程で外観不具合が生じるという問題があった。
以上のように、OPS用として満足な性能を有する樹脂シートはこれまでに見出されておらず、とりわけ剛性と強靭性のバランスに優れた樹脂組成の開発が大きな課題であった。
特開2002−161113号公報 特開2007−56180号公報
本発明者らは、得られる樹脂シートが剛性及び強靭性に優れる硬化型組成物、具体的には硬度及び曲げ特性に優れる硬化型組成物を見出すため鋭意検討を行ったのである。
尚、本発明において、「剛性に優れる」とは、硬化物の硬度及び曲げ試験における弾性率に優れることを意味し、「強靭性に優れる」とは、曲げ試験における応力及び歪みが大きい、即ち破断エネルギーが大きいことを意味する。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、1個のエチレン性不飽和基を有する水素結合性化合物、2個以上のエチレン性不飽和基を有する水素結合性化合物及びその他のエチレン性不飽和基を有する化合物を特定割合で含む組成物が、前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記(A)〜(C)成分を含む組成物であって、(A)〜(C)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を2〜40重量%、(B)成分を10〜90重量%及び(C)成分を0〜80重量%含む樹脂シート製造用硬化型組成物に関する。
(A)成分:1個のエチレン性不飽和基を有する水素結合性化合物
(B)成分:2個以上のエチレン性不飽和基を有する水素結合性化合物
(C)成分:エチレン性不飽和基を有する化合物であって、(A)及び(B)成分以外の化合物
(A)成分としては、カルボキシル基、水酸基、アミド基、カルバメート基及びイミド基から選ばれる1つ以上の水素結合性基と1個のエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましく、カルボキシル基、アミド基及びカルバメート基から選ばれる1つ以上の水素結合性基と1個のエチレン性不飽和基を有する化合物がより好ましい。
(B)成分としては、ウレタン結合を有し2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物がより好ましく、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であり、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が特に好ましい。
組成物としては、光重合開始剤(D)又は/及び熱重合開始剤(E)をさらに含む組成物が好ましい。
組成物の硬化物としては、曲げ試験における弾性率が1GPa以上、最大歪みが2%以上であるものが好ましい。又、硬化物の曲げ試験における破断エネルギーが2MJ/m3以上であるものが好ましい。
組成物の硬化物からなる樹脂シートとしては、硬化物の厚みが100μm〜5mmであるものが好ましい。
樹脂シートの製造方法としては、基材/堰を設けるための基材/基材で構成される成形型の中に、前記した組成物を流し込んだ後、いずれかの基材側から活性エネルギー線を照射する製造方法が好ましい。さらに、活性エネルギー線を照射した後、加熱する製造方法がより好ましい。
又、樹脂シートの製造方法としては、基材/堰を設けるための基材/基材で構成される成形型の中に、前記した組成物を流し込んだ後、加熱する製造方法が好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の組成物によれば、得られる樹脂シートが剛性及び強靭性に優れるものとなり、具体的には硬度及び曲げ特性に優れるものとなり、特に曲げ特性において、弾性率、最大応力、最大歪み、破断歪み及び破断エネルギーのいずれの物性にも優れるものとなる。
図1は、本発明の組成物を使用して樹脂シートを製造する際に使用する成形型の1例を示す図である。
本発明は、(A)〜(C)成分を含む組成物であって、(A)〜(C)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を2〜40重量%、(B)成分を10〜90重量%及び(C)成分を0〜80重量%含む樹脂シート製造用硬化型組成物に関する。
以下、それぞれの成分及び組成物の詳細について説明する。
1.(A)成分
(A)成分は、1個のエチレン性不飽和基を有する水素結合性化合物である。
(A)成分におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びビニルエーテル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基及びビニル基が好ましい。
(A)成分としては、水素結合性基と1個のエチレン性不飽和基を有する化合物が好ましい。
この場合の水素結合性基としては、カルボキシル基、水酸基、アミド基、カルバメート基イミド基及び尿素基が挙げられ、カルボキシル基、アミド基及びカルバメート基が好ましい。
カルボキシル基を有する化合物の例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のポリカプロラクトン変性物、(メタ)アクリル酸のマイケル付加型多量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水フタル酸の付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと無水コハク酸の付加物等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら化合物の中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
水酸基を有する化合物の例としては、水酸基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート及びヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミド基を有する化合物の例としては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン及び(メタ)アクリルアミド系化合物等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド系化合物の具体例としては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN−t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキルアクリルアミド;
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキルアクリルアミド;
N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド及びN−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;並びに
(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
これら化合物の中でも、(メタ)アクリロイルモルホリン及びN−ビニルホルムアミドが好ましい。
カルバメート基を有する化合物の例としては、オキサゾリドン基を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができ、その具体例としては、2−(2−オキソー3−オキサゾリジニル)エチルアクリレート等を挙げることができる。
イミド基を有する化合物の例としては、マレイミド基を有する化合物が挙げられる。マレイミド基を有する化合物としては、ヘキサヒドロフタルイミド基を有する(メタ)アクリレート及びテトラヒドロフタルイミド基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヘキサヒドロフタルイミド基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。テトラヒドロフタルイミド基を有する(メタ)アクリレートの例としては、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタルイミド等が挙げられる。
(A)の含有割合は、(A)、(B)及び(C)成分〔以下、これらをまとめて「硬化性成分」という〕の合計100重量%中に、2〜40重量%であり、好ましくは5〜40重量%である。
(A)の配合割合が2重量%に満たないと、剛性と強靭性のバランスが低下してしまい、一方、40重量%を超えると熱分解が顕著になり、耐熱性が低下してしまう。
2.(B)成分
(B)成分は、2個以上のエチレン性不飽和基を有する水素結合性化合物である。
(B)成分におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びビニルエーテル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
(B)成分における、「水素結合性」とは、化学構造中に水素結合性を有する単位をする化合物が好ましく、当該単位としてはウレタン結合が好ましい。
(B)成分としては、ウレタン結合を有し2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「(B1)成分」という〕が好ましい。(B1)成分は、通常ウレタン(メタ)アクリレートと称される化合物である。
(B1)成分としては、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物〔以下、「(B1-1)成分」という〕、並びに有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物〔以下、「(B1-2)成分」という〕等が挙げられる。
以下、(B1-1)成分及び(B1-2)成分について説明する。
2−1.(B1-1)成分
(B1-1)成分は、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物である。
(B1-1)成分におけるポリオールとしては、ジオールが好ましい。
ジオールとしては、低分子量ジオール、ポリエステル骨格を有するジオール、ポリエーテル骨格を有するジオール及びポリカーボネート骨格を有するジオールが好ましい。
低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。
ポリエステル骨格を有するジオールとしては、前記低分子量ジオール又はポリカプロラクトンジオール等のジオール成分と、ジカルボン酸又はその無水物等の酸成分とのエステル化反応物等が挙げられる。
ジカルボン酸又はその無水物としては、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドルフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等、並びにこれらの無水物等が挙げられる。
ポリエーテルジオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエトラメチレングリコール等が挙げられる。
ポリカーボネートジオールとしては、前記低分子量ジオール又は/及びビスフェノールA等のビスフェノールと、エチレンカーボネート及び炭酸ジブチルエステル等の炭酸ジアルキルエステルの反応物等が挙げられる。
有機ポリイソシアネートとしては、脂環式基を有しない脂肪族ポリイソシアネート(以下、単に「脂肪族ポリイソシアネート」という)、脂環式基を有する脂肪族ポリイソシアネート(以下、「脂環式ポリイソシアネート」という)、複素環を有するポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環式ポリイソシアネートとしては、水素化トリレンジイソシアネート、水素化4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート3量体等が挙げられる。
複素環を有するポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体等を挙げることができる。
芳香族ジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート及び1,5−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
本発明において、有機ポリイソシアネートとしては、硬化物の物理特性に優れ、黄変が少ないという点で脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有モノ(メタ)アクリレートが好ましい。
水酸基含有モノ(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート及びヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2−2.(B1-2)成分
(B1-2)成分は、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であり、ウレタンアダクトと称される化合物である。
(B)成分として、(B1-2)成分を使用することにより、架橋密度が高くなり、耐熱性が向上するのに加え、(A)成分との併用により強靭性も向上するため好ましい。
(B1-2)成分において、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、前記した化合物が挙げられる。
(B1-2)成分においては、水酸基含有(メタ)アクリレートとして、水酸基及び2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、「水酸基含有多官能(メタ)アクリレート」という)を使用することもできる。
(B1-2)成分としては当該有機ポリイソシアネートと水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの反応物〔以下、「(B1-2-1)成分」という〕を使用すると、架橋密度が高くなり、耐熱性、耐摩耗性及び耐擦傷性にも優れるものとなるため好ましい。
水酸基含有多官能(メタ)アクリレートとしては、種々の化合物が使用でき、具体的には、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのジ又はトリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールのジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、硬化膜が耐磨耗性と耐擦傷性に優れる点で、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、水酸基を1個有する化合物が好ましく、具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら化合物の中でも、得られる硬化物の反りを防止できる点で、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートがより好ましい。
(B1-2-1)成分の製造において、原料の水酸基含有多官能(メタ)アクリレートは、通常、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートと水酸基を有しない多官能(メタ)アクリレートを含む混合物であるが、(B1-2-1)成分としては当該混合物を使用して製造されたものも使用することができる。
具体的には、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートとトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの混合物、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートとジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートの混合物、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの混合物等が挙げられる。
当該混合物から得られる反応物は、(B)成分と(C)成分の混合物となる。
(B1-2)成分の別の好ましい化合物としては、3個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートと水酸基含有モノ(メタ)アクリレートの反応物〔以下、「(B1-2-2)成分」という〕が挙げられる。
(B1-2-2)成分における水酸基含有モノ(メタ)アクリレートとしては、前記した化合物と同様の化合物が挙げられる。
3個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートの例としては、前記したヘキサメチレンジイソシアネート3量体及びイソホロンジイソシアネート3量体等を挙げることができる。
(B1-2-2)成分の好ましい例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体とヒドロキシブチルアクリレートの付加反応物等が挙げられる。
さらに、(B1-2)成分としては、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であって、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。当該化合物は、硬化物の適度な架橋密度によって剛性を維持すると同時に高い強靭性を有するものとなる。
当該化合物の例としては、前記した(B1-2-1)成分及び(B1-2-2)成分を挙げることができる。
2−3.(B1)成分の製造方法
(B1)成分は、(B1-1)成分においては、ポリオール、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの付加反応、(B1-2)成分においては、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの付加反応により製造される。
この付加反応は無触媒でも可能であるが、反応を効率的に進めるために、ジブチルスズジラウレート等の錫系触媒や、トリエチルアミン等のアミン系触媒等を添加しても良い。
(B)の含有割合は、硬化性成分の合計100重量%中に、10〜90重量%であり、好ましくは15〜70重量%である。
(B)の含有割合が10重量%に満たないか、又は90重量%を超えると、剛性と強靭性のバランスが低下してしまう。
3.(C)成分
(C)成分は、エチレン性不飽和基を有する化合物であって、(A)及び(B)成分以外の化合物である。
(C)成分におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基及びビニルエーテル基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
(C)成分の具体例において、エチレン性不飽和基を1個有する化合物としては、1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「単官能(メタ)アクリレート」という〕等が挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、о−フェニルフェノールEO変性(n=1〜4)(メタ)アクリレート、p−クミルフェノールEO変性(n=1〜4)(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、о−フェニルフェニル(メタ)アクリレート、p−クミルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(C)成分の具体例において、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物としては、2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物〔以下、「2官能(メタ)アクリレート」という。以下、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を「○官能(メタ)アクリレート」と同様に表記する。〕としては、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の芳香族骨格を有する2官能(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(1−メチルブチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族骨格を有する2官能(メタ)アクリレート;
ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート;
ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びスピログリコールジ(メタ)アクリレート等の脂環式骨格を有する2官能(メタ)アクリレート;
尚、上記においてアルキレンオキサイド付加物としては、エチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
(C)成分としては、オリゴマーを使用することもでき、具体的には、ポリエステル(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレー等が挙げられる。
(C)成分としては、前記した化合物の1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
(C)成分としては、前記した化合物の中でも、剛性と耐熱性を付与できるという理由で、3官能以上の(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環式骨格を有する単官能(メタ)アクリレート、並びにジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びスピログリコールジ(メタ)アクリレート等の脂環式骨格を有する2官能(メタ)アクリレートが好ましい。
(C)の含有割合は、硬化性成分の合計100重量%中に、0〜80重量%であり、好ましくは10〜70重量%である。
(C)の含有割合が80重量%を超えると、強靭性が低下してしまう。
4.樹脂シート製造用硬化型組成物
本発明は、前記(A)〜(C)成分を必須成分とする樹脂シート製造用硬化型組成物に関する。
組成物の製造方法としては、常法に従えば良く、例えば、(A)〜(C)成分、必要に応じてその他の成分を撹拌混合して製造することができる。
組成物の粘度は目的に応じて適宜設定すれば良く、50〜10,000mPa・sが好ましい。
尚、本発明において粘度とは、E型粘度計を使用して25℃で測定した値を意味する。
本発明の組成物は、活性エネルギー線硬化型組成物及び熱硬化型組成物として使用することできる。
本発明の組成物は、前記(A)〜(C)成分を必須成分とするものであるが、目的に応じて種々の成分を配合することができる。
その他成分としては、具体的には、光重合開始剤〔以下、「(D)成分」という〕、熱重合開始剤〔以下、「(E)成分」という〕、有機溶剤、可塑剤、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤、耐光性向上剤、並びに2個以上のメルカプト基を有する化合物〔以下、「多官能メルカプタン」という〕等を挙げることができる。
以下、これらの成分について説明する。尚、後記する成分は、1種のみ使用しても良く、又2種以上を併用しても良い。
4−1.その他の成分
1)(D)成分
(D)成分は、光重合開始剤である。
(D)成分は、活性エネルギー線として紫外線及び可視光線を用いた場合に配合する成分である。活性エネルギー線として電子線を使用する場合には、必ずしも配合する必要はないが、硬化性を改善させるため必要に応じて少量配合することもできる。
(D)成分としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)-フェニル]−2−ヒドロキシー2−メチルー1−プロパンー1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシー2−メチルー1−[4−1−(メチルビニル)フェニル]プロパノン、2−ヒドロキシー1−[4−[4−(2−ヒドロキシー2−メチループロピオニル)−ベンジル]−フェニル]−2−メチルプロパンー1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノー1−(4−モルフォリノフェニル)ブタンー1−オン、2−ジメチルアミノー2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イルーフェニル)−ブタンー1−オン、アデカオプトマーN−1414((株)ADEKA製)、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン化合物;
ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル−2−ベンゾフェノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパンー1−オン、4,4‘−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4‘−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン及び4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート及びビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;
チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロピルチオキサントン、3−[3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イル]オキシ]−2−ヒドロキシプロピル−N,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド及びフロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;
アクリドン、10−ブチル−2−クロロアクリドン等のアクリドン系化合物;
1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O―ベンゾイルオキシム)]及びエタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O―アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;
2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体及び2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;並びに9−フェニルアクリジン及び1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体等が挙げられる。
(D)成分としては、前記以外にも分子量が350以上の光重合開始剤を使用することも可能である。分子量350以上の光重合開始剤は、光照射後の分解物により得られる樹脂シートが着色を生じることがなく、さらに透明導電性フィルムの製造に使用する場合、分解物が透明導電体層の真空成膜時のアウトガスも発生しないため、短時間で高真空に到達することができ、導電体層の膜質が低下して低抵抗化しにくくなってしまうことを防止することができる。
(D)成分としては、分子量が350以上で紫外線や可視光線等の光により重合開始する化合物であれば種々の化合物を使用することができる。
(D)成分の具体例としては、ヒドロキシケトンのポリマー等が挙げられ、例えば、下記式(1)で表される化合物等が挙げられる。当該化合物は、(A)〜(C)成分との相溶性に優れる点でも好ましい。
Figure 2016117797
式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2はアルキル基を表し、nは2〜5数を表す。
2はアルキル基としては、メチル基、エチル基及びプロピル基等の低級アルキル基が好ましい。
式(1)で表される化合物の具体例としては、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン等が挙げられる。
当該化合物は市販されており、例えば、ESACURE KIP 150(Lamberti社製)が知られている。ESACURE KIP 150は、上記式(1)表される化合物において、R1は水素原子又はメチル基、R2はメチル基、nは2〜3数、かつ[(204.3×n+16.0)又は(204.3×n+30.1)]の分子量を有する化合物である。
前記以外の化合物としては、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸等を挙げることができる。
当該化合物は市販されており、イルガキュア754(BASF社製)が知られている。イルガキュア754は、オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物である。
(D)成分の配合割合としては、硬化性成分の合計量100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
(D)成分の配合割合を0.01重量%以上とすることにより、適量な紫外線又は可視光線量で組成物を硬化させることができ生産性を向上させることができ、一方10重量部以下とすることで、硬化物の耐候性や透明性に優れたものとすることができる。
2)(E)成分
組成物を熱硬化型組成物として使用する場合には、(E)成分(熱重合開始剤)を配合することができる。
熱重合開始剤としては、種々の化合物を使用することができ、有機過酸化物及びアゾ系開始剤が好ましい。
有機過酸化物の具体例としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ジラウロイルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジーメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α、α‘−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
アゾ系化合物の具体例としては、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾジ−t−オクタン、アゾジ−t−ブタン等が挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。又、有機過酸化物は還元剤と組み合わせることによりレドックス反応とすることも可能である。
(E)成分の使用割合としては、硬化性成分合計量100重量部に対して、10重量部以下が好ましい。
熱重合開始剤を単独で用いる場合は、通常のラジカル熱重合の常套手段にしたがって行えばよく、場合によっては光重合開始剤と併用し、光硬化させた後にさらに反応率を向上させる目的で熱硬化を行うこともできる。
3)有機溶剤
本発明の組成物は、基材への塗工性を改善する等の目的で、有機溶剤を配合することができる。
但し、得られる樹脂シートを透明導電性フィルム用途に使用する場合は、有機溶剤を含まないものが好ましい。
有機溶剤の具体例としては、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−イソペンチルオキシエタノール、2−ヘキシルオキシエタノール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;
テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ビス(2−エトキシエチル)エーテル及びビス(2−ブトキシエチル)エーテル等のエーテル系溶剤;
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、ジエチルケトン、ブチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、ホロン、イソホロン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;
酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶剤が挙げられる。
有機溶剤の割合としては、適宜設定すれば良いが、好ましくは組成物中に90重量%以下が好ましく、より好ましくは80重量%以下である。
4)可塑剤
硬化物に柔軟性を付与し、脆さを改善する目的で、可塑剤を添加することができる。
可塑剤の具体例としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル等のフタル酸ジアルキルエステル、アジピン酸ジオクチル等のアジピン酸ジアルキルエステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、リン酸トリクレシル等のリン酸エステル、ポリプロピレングリコール等の液状ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンジオール、3−メチルペンタンジオールアジペート等の液状ポリエステルポリオール等が挙げられる。又、数平均分子量10,000以下の軟質アクリル系ポリマー等を挙げることができる。
これら可塑剤の配合割合としては、適宜設定すれば良いが、硬化性成分の合計100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、より好ましくは20重量部以下である。
30重量部以下にすることにより、強度や耐熱性に優れるものとすることができる。
5)重合禁止剤又は/及び酸化防止剤
本発明の組成物には、保存安定性を向上させために、重合禁止剤又は/及び酸化防止剤を添加することができる。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、並びに種々のフェノール系酸化防止剤が好ましいが、イオウ系二次酸化防止剤、リン系二次酸化防止剤等を添加することもできる。
これら重合禁止剤又は/及び酸化防止剤の総配合割合は、硬化性成分の合計量100重量部に対して、3重量部以下が好ましく、より好ましくは0.5重量部以下である。
6)耐光性向上剤
本発明の組成物には、紫外線吸収剤や光安定剤等の耐光性向上剤を添加しても良い。
紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール化合物;
2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジン等のトリアジン化合物;
2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4'−メチルベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2、4、4'−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、又は2、2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物等を挙げることができる。
光安定性剤としては、N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N′−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,6,6−)ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、等の低分子量ヒンダードアミン化合物;N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N′−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート等の高分子量ヒンダードアミン化合物等のヒンダードアミン系光安定剤を挙げることができる。
耐光性向上剤の配合割合は、硬化性成分の合計量100重量部に対して、0〜5重量部であることが好ましく、より好ましくは0〜1重量部である。
7)多官能メルカプタン
多官能メルカプタンは、組成物硬化物の硬化収縮を防止する目的や強靭性を付与する目的で、必要に応じて配合することができる。
多官能メルカプタンとしては、2個以上のメルカプト基を有する化合物であれば種々の化合物を使用することができる。
例えば、ペンタエリスルトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスルトールテトラキスチオプロピオネート等が挙げられる。
多官能メルカプタンの割合としては、硬化性成分100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましく、5重量部以下が特に好ましい。この割合を20重量部以下にすることで、得られる硬化物の耐熱性や剛性の低下を防止することができる。
4−2.硬化物物性
本発明における組成物の硬化物の物性としては、曲げ試験における弾性率が1GPa以上、最大歪みが2%以上であるものが好ましい。組成物の硬化物が当該弾性率を有するものは、剛性に優れるものとなり、又当該最大歪みを有するものは強靭なものとなる。
弾性率としては、2GPa以上が好ましく、より好ましくは3GPa以上である。
最大歪みとしては、3%以上が好ましく、より好ましくは4%以上である。
尚、本発明における曲げ試験における弾性率とは、支点間距離30mm、曲げ速度0.2mm/分で行った曲げ試験において、歪み0.1%と1%の応力から計算した値を意味する。
又、本発明における最大歪みとは、同試験において応力が最大値を示す歪みを意味する。
さらに、組成物の硬化物としては、曲げ試験における破断エネルギーが2MJ/m3以上であるものが好ましい。組成物の硬化物が当該破断エネルギーを有するものは、強靭なものとなる。
破断エネルギーとしては、3MJ/m3以上が好ましく、より好ましくは4MJ/m3以上である。
尚、本発明における曲げ試験における破断エネルギーとは、支点間距離30mm、曲げ速度0.2mm/分で行った曲げ試験において、応力−歪み曲線の面積から計算した値を意味する。
組成物の硬化物のガラス転移温度(以下、「Tg」という)としては、0〜250℃が好ましく、より好ましくは20〜230℃である。Tgを0℃以上とすることにより、得られる樹脂シートが剛性や耐熱性に優れるものとなり、250℃以下とすることにより、強靭性を保持することができる。
尚、本発明におけるTgとは、周波数1Hz、昇温温度2℃/分、引張モードで測定した動的粘弾性スペクトルにおける引張損失係数tanδが最大となるときの温度を意味する。
4−3.膜厚
樹脂シートの膜厚としては、目的に応じて適宜設定すれば良い。
特にOPS等のガラス代替用途に使用する場合、100μm〜5mmが好ましく、より好ましくは200μm〜3mmであり、特に好ましくは300μm〜2mmである。
5.樹脂シートの製造方法
本発明の組成物を使用する樹脂シート製造方法としては、種々の方法を採用することができる。
具体的には、組成物として活性エネルギー線硬化型組成物を使用する場合は、例えば下記4つの製造方法が挙げられる。
1)製法1-1
基材に組成物を塗工し、活性エネルギー線照射して組成物を硬化させる方法
2)製法1-2
基材に組成物を塗工し別の基材と貼り合せた後、活性エネルギー線照射して組成物を硬化させる方法
3)製法1-3
凹部を有する基材に組成物を流し込み、活性エネルギー線照射して組成物を硬化させる方法
4)製法1-4
凹部を有する基材に組成物を流し込み別の基材と貼り合せた後、活性エネルギー線照射して組成物を硬化させる方法
これら製造方法の場合、活性エネルギー線を照射した後に加熱することもできる。
本発明の組成物から得られる樹脂シートをガラス代替用途で使用する場合においては、上記製法1-4が好ましい。
組成物として熱硬化型組成物を使用する場合は、例えば下記4つの製造方法が挙げられる。
5)製法2-1
基材に組成物を塗工し、加熱して組成物を硬化させる方法
6)製法2-2
基材に組成物を塗工し別の基材と貼り合せた後、加熱して組成物を硬化させ方法
7)製法2-3
空間部を有する基材に組成物を流し込み、加熱して組成物を硬化させる方法
8)製法2-4
空間部を有する基材に組成物を流し込み別の基材と貼り合せた後、加熱して組成物を硬化させる法
本発明の組成物から得られる樹脂シートをガラス代替用途で使用する場合においては、上記製法2-4が好ましい。
重合方式としては、バッチ式及び連続式のいずれも採用することができる。
連続式の例としては、組成物を塗工又は流し込み基材として、ベルト状の基材を連続供給する方法等が挙げられる。
連続式の別の例としては、上記以外にも連続キャスト法と称される方法が挙げられる。即ち、連続した鏡面ステンレスのベルトをキャタピラ状に上下に2枚並べ、そのベルトとベルトの間に組成物を流し入れ、ゆっくりとベルトを動かしながら連続的にベルトとベルトの間で重合を行い、樹脂シートを製造方法等が挙げられる。
ガラス代替用途においては、バッチ式が好ましい。
5−1.基材
基材としては、剥離可能な基材及び離型性を有しない基材(以下、「非離型性基材」という)のいずれも使用することができる。
剥離可能な基材としては、金属、ガラス、離型処理されたフィルム及び剥離性を有する表面未処理フィルム(以下、まとめて「離型材」という)等が挙げられる。
離型材としては、シリコーン処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルム、表面未処理シクロオレフィンポリマーフィルム及び表面未処理OPPフィルム(ポリプロピレン)等が挙げられる。
本発明の組成物から得られる樹脂シートに対して、低いヘイズにしたり表面平滑性を付与するためには、剥離可能な基材として表面粗さ(中心線平均粗さ)Raが0.15μm以下の基材を使用することが好ましく、0.001〜0.100μmの基材がより好ましい。さらに、ヘイズとしては3.0%以下が好ましい。
当該基材の具体例としては、ガラス、表面未処理ポリエチレンテレフタレートフィルムや表面未処理OPPフィルム(ポリプロピレン)等が挙げられる。
尚、本発明において表面粗さRaとは、フィルムの表面の凹凸を測定し、平均の粗さを計算したものを意味する。
非離型性基材としては、前記以外の各種プラスチックが挙げられ、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース及びジアセチルセルロース等のセルロースアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ノルボルネン等の環状オレフィンをモノマーとする環状ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
空間部を有する基材としては、凹部を有する基材が挙げられる。離型材に目的の膜厚とする所定の形状の穴を空け、凹部を形成したものが挙げられる。
この場合、凹部を有する基材に組成物を流し込んだ後、当該凹部を有する基材の上に、別の基材を重ねることもできる。
空間部を有する基材の他の例としては、離型材上に、硬化物が目的の膜厚となるように堰(スペーサー)を設けたもの(以下、「成形型」という)等も挙げられる。この場合も、堰の上に、別の基材を重ねることもできる。
この場合の離型材としては、ガラス及び離型処理がされたガラスが好ましい。
成形型の例として、図1を挙げ説明する。
図1の(a1-1)及び(a1-2)は、2枚の基材〔図1:(a1-1)の(1)及び(a1-2)の(1)’〕、2枚の離型性に優れる基材〔図1:(a1-1)の(2)及び(a1-2)の(2)’〕及び1枚の堰を設けるための基材〔図1:(a1-1)の(3)〕から構成される成形型の例である。
図1の(a2)は、2枚の基材〔図1:(a2)の(1)及び(1)’〕、及び1枚の堰を設けるための基材〔図1:(a2)の(3)〕から構成される成形型の例である。
堰を設けるための基材〔図1:(a1-1)の(3)〕は、図1に示す通り、上部に組成物を注入するための空孔部を有する形状のものが好ましい〔図1:(a1-1)の(3-1)〕。当該堰を設けるための基材としては、種々の材料が使用でき、シリコーンゴム等を挙げることができる。
図1の(a1-1)及び(a1-2)の具体例としては、基材として2枚のガラス、2枚の離型処理されたフィルム及び1枚の堰を設けるための基材から構成される成形型が挙げられる。
ガラス〔図1:(a1-1)の(1)〕の上に、離型処理されたフィルム〔図1:(a1-1)の(2)〕を重ね、その上に堰を設けるための基材〔図1:(a1-1)の(3)〕を重ね堰(スペーサー)とする。さらにその上に、離型処理されたフィルム〔図1:(a1-2)の(2)’〕を重ね、その上にガラス〔図1:(a1-2)の(1)’〕を重ね成形型とする。
図1の(a2)の具体例としては、基材〔図1:(a2)の(1)及び(1)’〕として、離型処理されたガラスや金属を使用する場合であり、硬化物の離型性に優れるため、図1の(a1-1)や(a1-2)における2枚の離型処理されたフィルムは不要である。
又、組成物の硬化物自体が離型性に優れる場合には、基材〔図1:(a2)の(1)及び(1)’〕として、ガラスを使用することもできる。組成物の硬化物自体が離型性に優れる例としては、組成物に離型剤を配合した例が挙げられる。
5−2.組成物の事前処理
樹脂シートの製造に当たっては、硬化物中に気泡を含むことを防止するため、各成分を配合した後に脱泡処理することが好ましい。
脱泡処理の方法としては、静置、真空減圧、遠心分離、サイクロン(自転・公転ミキサー)、気液分離膜、超音波、圧力振動及び多軸押出機による脱泡等が挙げられる。
5−3.塗工又は注入
基材に組成物を塗工する場合の塗工方法としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、従来公知のバーコーター、アプリケーター、ドクターブレード、ナイフコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、ダイコーター、リップコーター、グラビアコーター及びマイクログラビアコーター等で塗工する方法が挙げられる。
空間部を有する基材に組成物を注入する場合は、組成物を注射器等の注入機器や注入装置に入れ注入する方法等が挙げられる。
この場合の膜厚としては、前記した樹脂シートの目的とする膜厚に応じて適宜設定すれば良い。
特にガラス代替用途、好ましくはOPS用途に使用する場合、100μm〜5mmが好ましく、より好ましくは200μm〜3mmであり、特に好ましくは300μm〜2mmである。
5−4.活性エネルギー線照射
組成物として活性エネルギー線硬化型組成物を使用する場合の活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、電子線及びX線等が挙げられ、硬化物を膜厚とすることができる点で紫外線及び可視光線が好ましい。
紫外線照射装置としては、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ブラックライトランプ、UV無電極ランプ、LED等が挙げられる。
活性エネルギー線照射における、線量や照射強度等の照射条件は、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。
この場合、活性エネルギー線を照射した後に加熱することができる。当該加熱の方法としては後記と同様の方法が挙げられる。
5−5.加熱
組成物として熱硬化型組成物を使用する場合の加熱方法としては、熱及びオイル等の熱媒浴に浸漬する方法、熱プレスを用いる方法、並びに温調式恒温槽内に保持する方法等が挙げられる。
加熱する場合の加熱温度等の条件は、使用する組成物、基材及び目的等に応じて適宜設定すれば良い。加熱温度としては40〜250℃が好ましい。加熱時間は使用する組成物、及び目的とする樹脂シート等に応じて適宜設定すれば良く、3時間以上が挙げられる。加熱時間の上限は、経済性を考慮し24時間以下が好ましい。
又、目的に応じて加熱温度を変更することもできる。例えば、分解温度の異なる熱重合開始剤を使用した場合等が挙げられる。具体的な温度としては、例えば、40〜80℃程度の比較的低温で数時間重合した後、100℃以上の比較的高温で数時間重合する方法等が挙げられる。
6.樹脂シートの用途
本発明の組成物から製造される樹脂シートは、特に光学シートとして好ましく使用することができる。
本発明の組成物から形成される光学シートは、種々の光学用途に使用できるものである。より具体的には、偏光板の偏光子保護フィルム、プリズムシート用支持フィルム及び導光フィルム等の液晶表示装置やタッチパネル一体型液晶表示装置に使用されるシート、各種機能性フィルム(例えば、ハードコートシート、加飾シート、透明導電性シート)及び表面形状を付したシート(例えば、モスアイ型反射防止シートや太陽電池用テクスチャー構造付きシート)のベースシート、太陽電池等屋外用の耐光性(耐候性)シート、LED照明・有機EL照明用フィルム、フレキシブルエレクトロニクス用透明耐熱シート等の用途が挙げられる。
本発明の組成物から形成される光学シートは、耐熱性に優れるため、透明導電性シートの製造に好ましく使用することができる。この用途で使用する組成物としては、透明導電性体層の真空成膜時のアウトガス発生を抑制できる点で、有機溶剤を含まない無溶剤型組成物が好ましい。
さらに、本発明の光学シートは、厚膜であっても耐熱性に優れるうえ可撓性を有しかつ高強度であるため、OPS用の透明導電性シート基材として使用することもでき、この場合、膜厚が0.5mm以上1.5mm以下の光学シートをより好ましく使用することができる。
透明導電性シートの製造方法は、常法に従えば良い。
透明導電体層を形成する金属酸化物としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物、チタン−ニオブ複合酸化物等が挙げられる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物が好ましい。
透明導電体層を形成する方法としては、常法に従えば良く、本発明の光学シートを使用して、前記金属酸化物を使用して真空成膜装置を使用してスパッタ法により形成する方法等が挙げられる。
より具体的には、前記金属酸化物をターゲット材料とし、脱水・脱ガスを行った後、排気して真空にし、光学シートを所定の温度とした後、スパッタ装置を使用して光学シート上に透明導電体層を形成する方法等が挙げられる。
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。
又、以下において「部」とは重量部を意味し、「%」とは重量%を意味する。
1.実施例1〜同7、比較例1〜同6
1)組成物の製造
下記表1〜表3に示す(A)〜(D)成分を、下記表1〜表3に示す割合で配合し、さらに自転・公転ミキサー〔(株)シンキー製 あわとり練太郎 ARE−250〕を使用し、混合(1800rpm×4分)・脱泡(2000rpm×1分)した。
Figure 2016117797
Figure 2016117797
Figure 2016117797
尚、表1〜表3における略号は、以下を意味する。
(A)成分
・ACMO:アクリロイルモルホリン、KJケミカルズ(株)製
・MAA :メタクリル酸、三菱レーヨン(株)製
・AA :アクリル酸、東亞合成(株)製
・NVF :N−ビニルホルムアミド、東京化成工業(株)製
(B)成分
・HBUA:ヘキサメチレンジイソシアネート3量体とヒドロキシブチルアクリレートの付加反応物(1分子中に3個のアクリロイル基を有するウレタンアダクト)
・OT−1000:ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの付加反応物(「アダクト」という)とペンタエリスリトールテトラアクリレート(「PETeA」という)の混合物〔62:38(重量比)〕、東亞合成(株)製アロニックスOT−1000
※実施例6及び7、並びに比較例4〜同6では、OT−1000を50部使用した。表3においては、OT−1000に含まれる(B)成分に該当するアダクトと(C)成分に該当するPETeAを分けて記載した。
(C)成分
・DCPA:ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、共栄社化学(株)製ライトアクリレートDCP−A
・IB−X:イソボルニルメタクリレート、共栄社化学(株)製ライトエステルIB−X
・M−309:トリメチロールプロパントリアクリレート、東亞合成(株)製アロニツクスM−309
・MA :メチルアクリレート、東亞合成(株)製
・MMA :メチルメタクリレート、三菱レーヨン(株)製
(D)成分
・DC−1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、BASFジャパン(株)製ダロキュアー1173
2)樹脂シートの製造
樹脂シートを製造するための成形型として、図1の(a1-1)及び(a1-2)示す成形型を使用した。
2枚のガラス板〔100mm×180mm、厚さ2mm〕、2枚の離形処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔100mm×180mm、東レ(株)製セラピールMFA〕及び1枚のシリコーンゴム製板(厚さ1.0mm)を使用した。
ガラス板〔図1の(a1-1):(1)〕の上に、離形処理PETフィルム〔図1の(a1-1):(2)〕を重ね、その上にシリコーンゴム製板〔図1の(a1-1):(3)〕を重ね堰(スペーサー)とした。さらにその上に離形処理PETフィルム〔図1の(a1-2):(2)'〕を重ね、その上にガラス板〔図1の(a1-2):(1)'〕を重ね成形型とした。
成形板のシリコーンゴム製板の空孔部〔図1の(a1-1):(3-1)〕から、上記で得られた組成物を、注射器により注液した。
得られた成形型に対して、ガラス板側の両面へ別々に高圧水銀ランプ(実施例1〜同5、比較例1〜同3)又は可視光LED(実施例6及び同7、比較例4〜同6)を照射し、組成物を硬化させた。照射条件は以下のとおりである。
○高圧水銀ランプ
アイグラフィックス(株)製紫外線照射装置〔高圧水銀灯、365nmの照射強度100mW/cm2(フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)社製UV POWER PUCKの測定値)〕により、成形型の一方のガラス板側5分照射し、さらに他方のガラス板側で5分照射し、合計10分間紫外線を照射した。
○UV−LED
オプコード(株)製LED照射装置(365nmの照射強度3.6mW/cm2)により、成形型の一方のガラス板側のみから60分照射した。
放冷後、成形型からガラスを外し、離形処理PETフィルムを剥離して硬化物を取り出した。硬化物を、窒素気流中で150℃で6時間熱処理して樹脂シートを得た。
得られた樹脂シートについて、下記方法に従い、塑性硬度、鉛筆硬度及び曲げ特性を評価した。それらの結果を表1〜表3に示す。
3)評価方法
(1)塑性硬度
微小硬度計(フィッシャー・インストルメンツ社製 フィッシャースコープ H100CS)を用い、ビッカース圧子を用いて所定の押込み条件(0〜300mN/10sec→5sec保持→300〜0mN/10sec)で測定し、塑性硬度(HUpl値)を求めた。
(2)鉛筆硬度
JIS K−5600に準じて測定した。
(3)曲げ特性
樹脂シートを長さ50(mm)×幅10(mm)×厚み1(mm)のサイズに切り出し、切断面をサンドペーパーで平滑にした試験片を使用した。曲げ試験は、インストロン5566Aを用いて、支点間距離30mm、曲げ速度0.2mm/分、23℃で行った。曲げ弾性率(GPa)は歪み0.1%と1%の応力から計算した。破断エネルギー(MJ/m3)は応力−歪み曲線の面積から計算した。
2.総括
実施例1〜同7の組成物は、得られる樹脂シートが、硬度及び曲げ特性のいずれにも優れるものであった。
これに対して、比較例1〜同6の組成物は、(A)成分を含まない組成物であるが、硬度に優れるものの、曲げ特性における最大歪み、破断歪み、破断エネルギーが不十分なものとなり、特に破断エネルギーの低下が大きかった。
本発明の組成物は、樹脂シートの製造に好ましく使用することができ、得られた樹脂シートは、種々の用途に使用することができ、光学シートとして好ましく使用することができる。当該光学シートは、透明導電性シートの製造に好ましく使用することができ、タッチパネル用透明導電性シートの製造により好ましく使用することができる。

Claims (15)

  1. 下記(A)〜(C)成分を含む組成物であって、(A)〜(C)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を2〜40重量%、(B)成分を10〜90重量%及び(C)成分を0〜80重量%含む樹脂シート製造用硬化型組成物。
    (A)成分:1個のエチレン性不飽和基を有する水素結合性化合物
    (B)成分:2個以上のエチレン性不飽和基を有する水素結合性化合物
    (C)成分:エチレン性不飽和基を有する化合物であって、(A)及び(B)成分以外の化合物
  2. (A)成分が、カルボキシル基、水酸基、アミド基、カルバメート基及びイミド基から選ばれる1つ以上の水素結合性基と1個のエチレン性不飽和基を有する化合物である請求項1記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
  3. (A)成分が、カルボキシル基、アミド基及びカルバメート基から選ばれる1つ以上の水素結合性基と1個のエチレン性不飽和基を有する化合物である請求項2記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
  4. (B)成分が、ウレタン結合を有し2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
  5. (B)成分が、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物である請求項4に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
  6. (B)成分が、有機ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートの反応物であり、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である請求項5に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
  7. さらに、光重合開始剤(D)を含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
  8. さらに、熱重合開始剤(E)を含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
  9. 硬化物の曲げ試験における弾性率が1GPa以上、最大歪みが2%以上である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
  10. 硬化物の曲げ試験における破断エネルギーが2MJ/m3以上である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の樹脂シート製造用硬化型組成物。
  11. 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の組成物の硬化物からなる樹脂シート。
  12. 硬化物の厚みが100μm〜5mmである請求項11記載の樹脂シート。
  13. 基材/堰を設けるための基材/基材で構成される成形型の中に、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の組成物を流し込んだ後、いずれかの基材側から活性エネルギー線を照射する樹脂シートの製造方法。
  14. 活性エネルギー線を照射した後、加熱する請求項13記載の樹脂シートの製造方法。
  15. 基材/堰を設けるための基材/基材で構成される成形型の中に、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の組成物を流し込んだ後、加熱する樹脂シートの製造方法。
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