JP2016108705A - 無機繊維被覆用水性塗布液及びそれを用いたゴム補強用無機繊維 - Google Patents

無機繊維被覆用水性塗布液及びそれを用いたゴム補強用無機繊維 Download PDF

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Abstract

【課題】ゴム補強用無機繊維を埋設してなる水素化ニトリルゴム系ベルト用の無機繊維被覆用水性塗布液およびそれを用いたゴム補強用無機繊維を提供する。
【解決手段】水素化ニトリル系ゴムベルトに埋設するゴム補強用無機繊維に被覆層を設けるための水性塗布液であって、該塗布液はモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)金属石鹸(B)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)及び/又は水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)を含有する無機繊維被覆用水性塗布液。
【選択図】なし

Description

本発明は、無機繊維被覆用水性塗布液、特に水素化ニトリル系ゴムベルトに埋設するゴム補強用無機繊維に被覆層を設けるための無機繊維被覆用水性塗布液、及びそれを用いたゴム補強用無機繊維に関する。
伝動ベルト、タイヤ等のゴム製品に引っ張り強さ及び寸法安定性を与えるために、ガラス繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維又は炭素繊維等の引っ張り強度の高い繊維からなるコードであるゴム補強用繊維を母材であるゴムに補強材として埋設することは一般的に行われ、母材ゴムに埋設するゴム補強用繊維には、母材ゴムとの界面が強固で剥離しないことが必要とされる。
しかしながら、ガラス繊維の場合、多数本のガラス繊維フィラメントにシランカップリング剤及び樹脂等を含有する集束剤を散布し集束させたガラス繊維束、言い換えれば、ストランドをそのまま母材ゴムに埋め込んでも、繊維とゴムとの界面が剥離してしまい補強材としての用をなさない。そのため、伝動ベルトを製造する際に母材ゴムに埋設して使用するゴム補強用ガラス繊維には、母材ゴムと接着するために、ガラス繊維被覆用塗布液をストランドに塗布被覆した被覆層を設ける。
例えば、自動車用伝動ベルトは高温のエンジンル−ム内で使用されるため、前記被覆処理を行ったゴム補強用ガラス繊維を埋設し芯線とした伝動ベルトであっても、高温下において屈曲走行し続ける過酷な状況において、ゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムとの初期の接着強さが持続されず、長時間の走行においては、ゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムとの界面の剥離をきたすこともある。
自動車用伝動ベルトには、高温下のエンジンルーム内で、雨水が付着する過酷な環境下における長時間の屈曲走行後において、引っ張り強さを持続し伸びがなく寸法安定性に優れていることが要求される。特に、タイミングベルトは、エンジンのカムシャフトおよびクランクシャフトを連結し、バルブの開閉をピストンの上下動に連動させるもので、過酷な条件下の長時間の屈曲走行において、破損は言うにおよばず、少しの伸びも許されない。
タイミングベルトの母材ゴムは、耐熱ゴムである水素化ニトリルゴムが用いられ、芯線には耐久性が有り、アラミド繊維に比べ安価なことからゴム補強用ガラス繊維が用いられ、さらなる耐久性の向上が望まれている。尚、水素化ニトリルゴムは水素添加ニトリルゴムとも呼ばれ、アクリロニトリルとブタジエンが共重合したニトリルゴムの主鎖中に残存する不飽和結合である−C=C−結合に水素添加し飽和させ、化学的に安定化させることで、耐熱性、耐化学薬品性、耐候性を向上させたものである。
伝動ベルトとし高温下長時間屈曲走行させてもゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムの初期の接着強さを持続する耐熱性に加え、伝動ベルトに水をかけつつ長時間走行させても、被覆層がストランドへの水の浸透を防ぐことで初期の接着強さを持続する耐水性を伝動ベルトに与えるゴム補強用ガラス繊維を芯線とした伝動ベルトの開発が待たれている。
伝動ベルトを製造する際に、母材ゴムに埋設して使用するゴム補強用ガラス繊維には、母材ゴムとの接着性を改善するための被覆材がストランドに塗布被覆されたもの、およびストランドに被覆材を塗布被覆した後、複数本のストランドを撚りさらなる被覆材が塗布被覆されたもの等がある。
母材ゴムとゴム補強用ガラス繊維の初期の接着強さを持続し界面の剥離をきたさず、高温下の屈曲走行においても長期信頼性のある伝動ベルトを提供するための被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維として、母材ゴムがクロロプレンゴムの場合、ストランドに1次被覆層を設けるのみであるが(特許文献1)、母材ゴムが水素化ニトリルゴムの場合、ストランドに1次被覆層を設け、該1次被覆層上に異なる組成のガラス繊維2次被覆液を塗布乾燥させて、さらなる2次被覆層を設ける(特許文献2〜5)。
従来、自動車のタイミングベルト等の耐熱性の伝動ベルトは、レゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレンからなるガラス繊維被覆用塗布液を用い、ストランドに塗布乾燥させたゴム補強用ガラス繊維を耐熱ゴムとしての水素化ニトリルゴムに埋設し作製された。また、ゴム補強用ガラス繊維と水素化ニトリルゴムの接着性、引いては耐熱性を高めるために、該ゴム補強用ガラス繊維にさらなる2次被覆層を設け、耐熱ゴムとしての水素化ニトリルゴムに埋設し作製された。
例えば、特許文献2において、ゴム補強用ガラス繊維をハロゲン含有ポリマーとイソシアネート化合物を含む第2液で処理する方法が開示されている。
また、特許文献3には、繰返し屈曲応力を受けるような高温の条件下で使用していても、時間の経過とともに接着力が低下することなく、耐熱性も大きく、しかも製造コストも低く、水素化ニトリルゴムの補強用として好適なゴムの補強用繊維、特に歯元強度の大きい歯付ベルトを得るのに好適な、ゴム補強用繊維として、ガラス繊維よりなる芯線上にレゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体およびアクリロニトリル−ブタジエン共重合体を含む層を形成させたゴムの補強用繊維が開示されている。
また、特許文献4には、ゴムラテックス、レゾルシノール−ホルムアルデヒド水溶性縮合物およびトリアジンチオールを含有するゴム補強用繊維処理剤が開示されている。
また、本出願人の特許出願に係る特許文献5には、ストランドにアクリル酸エステル系樹脂とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体とレゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物とを含有する1次被覆層を設け、その上層にクロロスルホン化ポリエチレンとビスアリルナジイミドを含有する2次被覆層を設けてなるクロロプレンゴム又は水素化ニトリルゴム補強用ガラス繊維が開示されている。また、特許文献6には、クロロプレン系ゴムベルトに埋設するゴム補強用ガラス繊維に被覆層を設けるためのガラス繊維被覆用水性塗布液であって、該塗布液にモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体と金属石鹸を含有することを特徴とするガラス繊維被覆用水性塗布液が開示されている。
また、従来、主にガラス繊維がゴム補強材として用いられていたが、特許文献7には、炭素繊維やガラス繊維などの無機繊維をゴム補強材として用いることが開示されている。
特開2012−67410号公報 特公平2−4715号公報 特開平4−103634号公報 特開平10−25665号公報 特開2004−203730号公報 特開2014−31605号公報 再表2006/001385号公報
伝動ベルトを製造する際に母材ゴムに埋設して使用するゴム補強用ガラス繊維には、母材ゴムとの接着性を改善するための被覆材がストランドに塗布被覆されたものが用いられる。
母材ゴムが、クロロプレンゴムの場合は、ゴム補強用ガラス繊維は、レゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物やモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物などのヒドロキシベンゼン類−ホルムアルデヒド縮合物類とゴムラテックスを含む1次被覆層の組成の工夫により、母材ゴムとの接着性が得られている。しかし、該ゴム補強用ガラス繊維が、ゴムに埋設されるまで長期に保存された場合、クロロプレンゴムとの接着性が経時的に低下する場合があった(特許文献1及び6)。
また、母材ゴムが、水素化ニトリルゴムの場合は、前記1次処理のみでは母材ゴムとの十分な接着性は得られておらず、1次被覆層の上に更なる被覆層(2次被覆層)を施すことにより接着性を高める必要があった。(特許文献2〜5)。接着性を高めなければ、当然、伝動ベルトの耐水性及び耐熱性を高めることはできない。そのため、水素化ニトリルゴム補強用ガラス繊維の製造は、2回の被覆処理工程が必要で、クロロプレンゴム補強用ガラス繊維と比較して、製造が煩雑であった。
そこで、本発明は、ガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維に、1次被覆層のみを設けるだけで水素化ニトリルゴムと充分な接着力の得られるゴム補強用無機繊維を得るための水性塗布液を提供することを目的とする。さらに、該水性塗布液を塗布被覆した該ゴム補強用無機繊維と、該ゴム補強用無機繊維を芯線として埋設した伝動ベルト又はタイミングベルトを提供することを目的とする。
前記の問題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物又はレゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれたヒドロキシベンゼン類−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、金属石鹸(B)と、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)及び/又は水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)と、を含有する無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、加熱乾燥させて被覆してなる被覆層を設けたゴム補強用無機繊維が、水素化ニトリルゴムを母材とする伝動ベルト又はタイミングベルト(以後、水素化ニトリル系ゴムベルトと記載する)の母材である水素化ニトリルゴムと優れた接着性を有し、水素化ニトリルゴムとの接着力を長期に亘って保持できること、すなわち長期に亘って接着力が低下しないことが分かった。
前記(A)は、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物及びレゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物のどちらを用いても水素化ニトリルゴムと高い接着性を得ることができる。前記塗布液中に少なくとも、前記(C)又は前記(D)のどちらかを含ませることにより水素化ニトリルゴムとの初期接着力が向上する。
ここで発明者らは、前記(A)と前記(C)及び/又は前記(D)を含む水性塗布液に対して、さらに金属石鹸(B)として知られる添加剤を共存させて得られた「金属石鹸(B)を含有する前記無機繊維被覆用水性塗布液」を無機繊維に塗布し、加熱乾燥させて被覆層とすることを試みた。その結果、得られた被覆層によれば、該被覆層の上に、従来技術のクロロスルホン化ポリエチレンなどの塩素化合物ポリマーを主成分とする2次被覆層を施さなくても水素化ニトリルゴムとの接着力を発現し、また、前記被覆層を形成したゴム補強用無機繊維を母材ゴムに埋設する前に長期に亘って保存(例えば、前記被覆層を形成して、常温で90日間)しても、接着力が低下しないという、驚くべき知見が得られた。
即ち、本発明は、(1)水素化ニトリル系ゴムベルトに埋設するゴム補強用無機繊維に被覆層を設けるための無機繊維被覆用水性塗布液であって、該塗布液に前記(A)と、前記(B)と、前記(C)及び/又は前記(D)とを含有することを特徴とする無機繊維被覆用水性塗布液である。
本発明の無機繊維覆用塗布液において、含有物である前記(A)と、前記(C)及び/又は前記(D)とから成る組成物(以下、「塗布液組成物(イ)」という)に前記(B)を含有させ、前記塗布組成物(イ)と前記(B)との組成比を調整することで、ゴム補強用無機繊維と母材である水素化ニトリルゴムに好ましい接着力を得るとともに接着力を持続させ、耐熱性及び耐水性をバランスよく合わせ持たせることが可能となった。
即ち、本発明は、(2)前記(A)、(C)及び(D)を合わせた質量(以下、「塗布液組成物(イ)の全質量」という)を100%基準とする質量百分率で表して、前記(B)を、B/(A+C+D)=0.1〜45質量%の範囲で含有することを特徴とする前記の無機繊維被覆用水性塗布液である。
さらに、本発明は、(3)前記塗布液組成物(イ)の全質量中の前記(A)、(C)及び(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)を、A/(A+C+D)=1〜15質量%の範囲で含有することを特徴とする前記の無機繊維被覆用水性塗布液である。
また、前記(A)と、前記(B)と、前記(C)及び/又は前記(D)とを含有する前記無機繊維被覆用水性塗布液に、さらにビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)を加えた該無機繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆してなる被覆層を設けたゴム補強用無機繊維は、母材である水素化ニトリルゴムと優れた接着性を有し、水素化ニトリルゴムとの接着力を長期に亘って保持できる(接着力が低下しない)ことに加え、被覆層に粘着性が付与され、ゴム補強用無機繊維を構成するフィラメント間の密着性が向上し、多数のフィラメントから構成されるゴム補強用無機繊維の一体感が向上すると共にゴム補強用無機繊維の柔軟性も向上することが分かった。
さらに、前記無機繊維被覆用水性塗布液においても、更に前記被覆層の上に、従来技術のクロロスルホン化ポリエチレンなどの塩素化合物ポリマーを主成分とする被覆層を施さなくても水素化ニトリルゴムとの接着力を発現し、また、前記ゴム補強用無機繊維を母材ゴムに埋設する前に長期に亘って保存しても、接着力が実質的に低下しない。
即ち、本発明は、(4)前記(A)と、前記(B)と、前記(C)及び/又は前記(D)とを含有する前記無機繊維被覆用水性塗布液に、さらに、前記(E)を含有することを特徴とする無機繊維被覆用水性塗布液である。
また、本発明の無機繊維覆用塗布液において、含有物である前記(A)と、前記(E)と、前記(C)及び/又は前記(D)とからなる組成物(以下、「塗布液組成物(ロ)」という)に前記(B)を含有させ、前記塗布組成物(ロ)と前記(B)との組成比を調整することで、ゴム補強用無機繊維と母材である水素化ニトリルゴムに好ましい接着力を得るとともに接着力を持続させ、耐熱性及び耐水性をバランスよく合わせ持たせることが可能となった。
即ち、本発明は、(5)前記(A)、(C)、(D)及び(E)を合わせた質量(以下「塗布液組成物(ロ)の全質量という」を100%基準とする質量百分率で表して、前記(B)を、B/(A+C+D+E)=0.1〜45質量%の範囲で含有することを特徴とする上記(4)に記載の無機繊維被覆用水性塗布液である。
さらに、本発明は、(6)前記塗布液組成物(ロ)の全質量中の前記(A)を、A/(A+C+D+E)=1〜15質量%と、前記(E)を、E/(A+C+D+E)=25〜80質量%との範囲で含有することを特徴とする上記(4)又は(5)に記載の無機繊維被覆用水性塗布液である。
このように、多数本の無機繊維フィラメントにシランカップリング剤及び樹脂等を含有する集束剤を塗布し、乾燥させた後に集束させたストランド(集束剤を処理した無機繊維ストランド)に、前記塗布液組成物からなる被覆層を設けたゴム補強用無機繊維が水素化ニトリルゴムと優れた接着性を有することがわかった。
また、本発明は、(7)前記の無機繊維被覆用水性塗布液を、集束剤を処理した無機繊維ストランドに塗布し加熱して乾燥させることによって被覆層を設ける工程を含むことを特徴とするゴム補強用無機繊維の製造方法である。
また、本発明は、(8)集束剤を処理した無機繊維ストランドに塗布した前記の無機繊維被覆用水性塗布液を、温度150〜350℃で加熱して乾燥させる工程を含む上記(7)に記載のゴム補強用無機繊維の製造方法である。
また、本発明は、(8)前記のゴム補強用無機繊維が水素化ニトリルゴムに埋設されてなることを特徴とする伝動ベルトである。
さらに、本発明は、(9)前記のゴム補強用無機繊維が水素化ニトリルゴムに埋設されてなることを特徴とする自動車用タイミングベルトである。
本発明による無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、加熱乾燥して無機繊維ストランドに被覆層を設けてなるゴム補強用無機繊維は、2次被覆層を設けないで水素化ニトリルゴムへ埋設した際に、ゴム補強用無機繊維と水素化ニトリルゴムとの接着強さが優れる。また、2次被覆層を設けないで水素化ニトリルゴムへ芯線として埋設して伝動ベルトとした際に、優れた耐熱性、耐水性をバランスよく合わせ持たせ、伝動ベルトの耐久性に優れる。さらに、前記ゴム補強用無機繊維が水素化ニトリルゴムに埋設されるまでの時間が長くなっても、前記ゴム補強用無機繊維と水素化ニトリルゴムとの接着性が経時的に低下しない。
また、該ゴム補強用無機繊維は、水素化ニトリルゴムに埋設する前に長期に保存した後に、2次被覆層を設けないで水素化ニトリルゴムに埋設しても接着力の低下がみられない。
本発明は、具体的には、無機繊維フィラメントを撚り合わせて集束材にて集束させてなるストランドに被覆層を設けゴム補強用無機繊維を得る際、被覆層を設けるための無機繊維被覆用水性塗布液及びそれを用いたゴム補強用無機繊維、該ゴム補強用無機繊維を補強のために芯線として埋め込んだゴム製の伝動ベルト又はタイミングベルトに関する。
特に、水素化ニトリル系ゴムベルトに埋設し補強を行うためのゴム補強用無機繊維に被覆層を設けるための無機繊維被覆用水性塗布液及びそれを用いたゴム補強用無機繊維、該ゴム補強用無機繊維を補強のために芯線として埋め込んだゴム製の伝動ベルト又はタイミングベルトに関する。
本発明は、水素化ニトリル系ゴムベルトに埋設するゴム補強用無機繊維に被覆層を設けるための無機繊維被覆用水性塗布液であって、塗布液組成物(イ)と前記(B)とを、又は、塗布液組成物(ロ)と前記(B)とを含有することを特徴とする無機繊維被覆用水性塗布液である。
尚、本発明の無機繊維被覆用水性塗布液を調製する際は、前記(A)は水溶液として、前記(C)、(D)及び(E)はエマルジョンとして、前記(B)は水分散液や乳化液として用いる。
本発明の無機繊維被覆用水性塗布液において含有物である、前記塗布液組成物の組成比を調整することで、ゴム補強用無機繊維と母材である水素化ニトリルゴムとの好ましい接着力を得、耐熱性及び耐水性を合わせ持たせることが可能となった。また、該ゴム補強用無機繊維が、ゴムに埋設されるまで長期に保存されても水素化ニトリルゴムとの接着性が経時的に低下しない被覆層を与えることが可能となった。
本発明の塗布液は、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維に適用できるが、以下、ガラス繊維を使用する場合を具体例として説明する。
先ず、無機繊維被覆用水性塗布液の組成について説明する。
前記塗布液組成物の全質量中の前記(A)は、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物及びレゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物のどちらを用いても水素化ニトリルゴムと高い接着を得ることができるが、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物を用いた方が、ゴム補強用ガラス繊維の耐熱性、耐水性が優れ、好ましい。
前記塗布液組成物(イ)の全質量中の前記(A)は、1〜15質量%が好ましい。無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)の含有が1質量%より少なくても水素化ニトリルゴムとの接着力を得るが、ゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルト又は自動車用タイミングベルトの耐熱性及び機械的耐久性の程度が相対的に低くなる。また、前記(A)の含有が、15質量%を超えても、ゴム補強用ガラス繊維と水素化ニトリルゴムの接着力が高くならない。より好ましくは2〜10質量%である。さらに好ましくは3〜8質量%である。
また、前記塗布液組成物(イ)の全質量中の前記(C)及び/又は前記(D)を、85〜99質量%が好ましい。無機繊維被覆用水性塗布液中に少なくとも、前記(C)又は前記(D)のどちらかが含まれていればよく、無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(C)及び/又は前記(D)が、85質量%より少なくなると、被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維と水素化ニトリルゴムとの初期接着力が低くなる。また、前記(C)及び/又は前記(D)が、99質量%を超えると、被覆層が硬くなり、柔軟性が低くなる。より好ましくは88〜95質量%である。
また、前記塗布液組成物(イ)質量を基準にしての前記(B)を、0.1〜45質量%が好ましい。無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(B)の含有が0.1質量%より少なくても、本発明の効果はあるが、その効果の程度が相対的に小さくなる。一方、45質量%を超えると、経済的ではない上、ゴム補強用ガラス繊維が硬くなり、柔軟性が低下する場合がある。より好ましくは2〜20質量%、さらに好ましくは3〜10質量%の範囲にあると、(B)の使用量が最小限に抑えられるため、被覆層の柔軟性が最大限に保たれる上に、2次被覆層を必要とせず、かつ、接着力が経時的に低下し難いという本発明の効果も発揮されやすい。
即ち、本発明は、無機繊維被覆用水性塗布液に前記塗布液組成物(イ) の全質量中の前記(A)を、1〜15質量%と、前記(C)及び/又は、前記(D)を、84〜99質量%との範囲で含有し、前記(B)を、前記塗布液組成物(イ)質量を基準にして0.1〜45質量%との範囲で含有することを特徴とする上記の無機繊維被覆用水性塗布液である。
又は、前記塗布液組成物(ロ)の全質量中の前記(A)は、1〜15質量%が好ましい。無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)の含有が1質量%より少なくても水素化ニトリルゴムとの接着力を得るが、ゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルト又は自動車用タイミングベルトの耐熱性及び機械的耐久性の程度が相対的に低くなる。また、前記(A)の含有が、15質量%を超えても、ゴム補強用ガラス繊維と水素化ニトリルゴムの接着力が高くならない。より好ましくは2〜10質量%である。さらに好ましくは3〜8質量%である。
また、前記塗布液組成物(ロ)の全質量中の前記(E)は、25〜80質量%が好ましい。無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(E)の含有が25質量%より少なくなると、ゴム補強用ガラス繊維の柔軟性及び機械的耐久性が低くなる。無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(E)の含有が80質量%を超えると、ゴム補強用ガラス繊維と水素化ニトリルゴムの接着力が低くなる。より好ましくは30〜70質量%である。さらに好ましくは40〜60質量%である。
また、前記塗布液組成物(ロ)の全質量中の前記(C)及び/又は前記(D)を、10〜70質量%が好ましい。無機繊維被覆用水性塗布液中に少なくとも、前記(C)又は前記(D)のどちらかが含まれていればよく、無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(C)及び/又は前記(D)が、10質量%より少なくなると、被覆層を設けたゴム補強用ガラス繊維と水素化ニトリルゴムとの初期接着力が低くなる。また、前記(C)及び/又は前記(D)が、70質量%を超えると、被覆層が硬くなり、柔軟性が低くなる。より好ましくは20〜65質量%である。さらに好ましくは30〜55質量%である。
また、前記塗布液組成物(ロ)質量を基準にしての前記(B)を、0.1〜45質量%が好ましい。無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(B)の含有が0.1質量%より少なくても、本発明の効果はあるが、その効果の程度が相対的に小さくなる。一方、45質量%を超えると、経済的ではない上、ゴム補強用ガラス繊維が硬くなり、柔軟性が低下する場合がある。より好ましくは2〜20質量%、さらに好ましくは3〜10質量%の範囲にあると、(B)の使用量が最小限に抑えられるため、被覆層の柔軟性が最大限に保たれる上に、2次被覆層を必要とせず、かつ、接着力が経時的に低下し難いという本発明の効果も発揮されやすい。
即ち、本発明は、無機繊維被覆用水性塗布液に前記塗布液組成物(ロ) の全質量中の前記
(A)を、1〜15質量%と、前記(E)を、25〜80質量%と、前記(C)及び/又は、前記(D)を、10〜70質量%との範囲で含有し、前記(B)を、前記塗布液組成物(ロ)質量を基準にして0.1〜45質量%との範囲で含有することを特徴とする上記の無機繊維被覆用水性塗布液である。
本発明の無機繊維被覆用水性塗布液には、老化防止剤、pH調整剤、安定剤等を含有させても良い。老化防止剤にはジフェニルアミン系化合物、pH調整剤にはアンモニア水が挙げられる。
無機繊維被覆用水性塗布液のpHは8以上に保つのが好ましい。pHが8より小さいと、無機繊維被覆用水性塗布液が不安定となり沈殿物が生じる。pH調整剤にはアンモニア水を用いるのが好ましい。これは、ガラス繊維に無機繊維被覆用水性塗布液を塗布後、加熱乾燥させるときに、アンモニアが散逸し、被覆層に残留しないために好ましい。pH調整剤に水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いると、加熱乾燥させても被覆層中に該pH調整剤が残留し、無機繊維被覆用水性塗布液が塗布乾燥されたゴム補強用ガラス繊維の引張強さが低下する。また、無機繊維被覆用水性塗布液の所望の固形分濃度に調整するために、適宜、水を加える。
無機繊維被覆用水性塗布液を、ガラス繊維に塗布乾燥して、ガラス繊維表面に被覆層を設けてゴム補強用ガラス繊維を得る方法は特に限定されるものではなく、通常当業者が実施できる方法を適宜用いればよい。例えば、無機繊維被覆用水性塗布液中に、所定本数束ねたガラス繊維を屈曲走行させて、無機繊維被覆用水性塗布液の塗布を強制的に行った後、ガラス繊維に付着した過剰の無機繊維被覆用水性塗布液を拭った後、加熱乾燥させる等の手段で行い、ガラス繊維の表面に被覆層を設けてゴム補強用ガラス繊維を得る。加熱乾燥条件としては、例えば、温度150〜350℃で10〜120秒間熱風加熱する。この、加熱条件を外れた場合、水素化ニトリル系ゴムベルトに埋設したとき、ゴム補強用ガラス繊維とマトリックスゴムとの接着性が充分に発現しない場合がある。中でも特に好ましい温度は200〜300℃である。
また、本発明は、水素化ニトリル系ゴムベルトに埋設するゴム補強用ガラス繊維であって、複数本のガラス繊維フィラメントを集束させたストランドに、前記塗布液組成物(イ)と前記(B)、又は、前記塗布液組成物(ロ)と前記(B)を含有する被覆層を設けてなることを特徴とするゴム補強用ガラス繊維である。
該塗布層は、前記発明の無機繊維被覆用水性塗布液を、通常当業者が実施する方法で塗布乾燥させて形成させたものである。該無機繊維被覆用水性塗布液の各成分の含有割合のままに、ゴム補強用ガラス繊維の被覆層が形成される。該被覆層のゴム補強用ガラス繊維に対する質量割合である付着量は、12〜25質量%の範囲で形成されるのが好ましい。この範囲を外れると、ゴム補強用ガラス繊維の屈曲疲労性が低下することがある。
無機繊維被覆用水性塗布液がガラス繊維に塗布乾燥されて設けられたゴム補強用ガラス繊維の被覆層は、ほぼ無機繊維被覆用水性塗布液の組成通りとなるので、ゴム補強用ガラス繊維の被覆層の組成について説明は割愛する。
本発明の無機繊維被覆用水性塗布液をガラス繊維に塗布乾燥し、その上に更なる被覆層(2次被覆層)を施しても、該2次被覆層の組成が適正であれば、母材ゴムとの高い接着性は維持され、耐熱性及び耐水性も良好である。例えば、クロロスルホン化ポリエチレンなどのハロゲン含有ポリマーとイソシアネート化合物を含む2次被覆層を施しても良好な接着性、耐熱性及び耐水性は維持される。
本発明のゴム補強用ガラス繊維を水素化ニトリルゴムに埋設し、種々の形態や大きさの伝動ベルト又はタイミングベルトに成形して使用する。伝動ベルト又はタイミングベルトへの成形時には加熱し、その際に加硫硬化を行う。
本発明の無機繊維被覆用水性塗布液及びそれを用いたゴム補強用無機繊維に使用するモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物又はレゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれたヒドロキシベンゼン類−ホルムアルデヒド縮合物(A)、金属石鹸(B)アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)及びビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)について説明する。
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)としては、モノヒドロキシベンゼンに対するホルムアルデヒドのモル比が0.5〜3.0で、アルカリの存在下で反応させたレゾール型のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)を使用することが、固形分の析出なく、無機繊維被覆用水性塗布液を安定させる効果があるので好ましい。ホルムアルデヒドのモル比が0.5未満では、ゴム補強用ガラス繊維と水素化ニトリルゴムとの接着強さに劣り、3.0を越えると無機繊維被覆用水性塗布液がゲル化し易い。レゾール型のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)を用いることで、無機繊維被覆用水性塗布液の液安定性が向上する。尚、前記アルカリとしては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、又は水酸化バリウム等が挙げられる。
レゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)としては、レゾルシノールに対するホルムアルデヒドのモル比が0.5〜3.0で、アルカリの存在下で反応させたレゾール型のレゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)を使用することが、固形分の析出なく、無機繊維被覆用水性塗布液を安定させる効果があるので好ましい。ホルムアルデヒドのモル比が0.5未満では、ゴム補強用ガラス繊維と水素化ニトリルゴムとの接着強さに劣り、3.0を越えると無機繊維被覆用水性塗布液がゲル化し易い。
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)には、工業用フェノール樹脂として市販されている群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667が挙げられる。
レゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)には、工業用レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂として市販されている住友化学株式会社製、商品名、スミカノール、型番700(S)が挙げられる。
金属石鹸(B )は、長鎖脂肪酸と、ナトリウム又はカリウム以外の金属塩の総称である。例えば、ステアリン酸リチウム 、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸カリウム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸カルシウム 、ナフテン酸リチウム、ナフテン酸マグネシウムが揚げられる。これらの中でも、カルシウム塩及び亜鉛塩の金属石鹸は入手が容易であるばかりではなく、本発明の効果も大きいため、特に好ましい。中でも、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛は本発明の実施に際して、特に好ましい金属石鹸である。本発明では、これらの中から、単独、もしくは、数種類を合わせて使用する。これら金属石鹸は水に不溶であるため、水に分散や乳化した状態で使用される。
例えば、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム水分散液として、日東化成工業株式会社製、商品名CSE−6(固形分45質量%)、ステアリン酸亜鉛水分散液として、日東化成工業株式会社製、商品名ZSE−2(固形分50質量%)などが挙げられる。
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)は、エマルジョンとして、日本ゼオン株式会社製、商品名Nipol L1561、Nipol L1562(固形分41質量%)などが挙げられる。
水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)は、エマルジョンとして、日本ゼオン株式会社製、商品名、2230−LX、(固形分40質量%)などが挙げられる。
また、本発明のゴム補強用ガラス繊維の被覆層には、老化防止剤、安定剤等を含有させても良い。老化防止剤にはジフェニルアミン系化合物が挙げられる。無機繊維被覆用水性塗布液のpH調整剤に、アンモニア水を用いると、ガラス繊維に無機繊維被覆用水性塗布液を塗布後、加熱乾燥させるときに、アンモニアが散逸し、被覆層に残留しない。
ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)には、ビニルピリジン:スチレン:ブタジエンの比が、質量比で10〜35:10〜40:25〜80の範囲で重合させてなるビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)を用いることが好ましく、該ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)として、日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス(固形分41質量%)や、日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックスLB(固形分41質量%)が挙げられる。
前記被覆層を設けてなる本発明のゴム補強用ガラス繊維は、種々の母材ゴム、特に水素化ニトリルゴム等の耐熱ゴムに埋設し伝動ベルトとすると、ゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムの優れた接着性が得られ、本発明のゴム補強用ガラス繊維は伝動ベルトの補強材として有効に働く。さらに、本発明のゴム補強用ガラス繊維を埋設させてなる伝動ベルトは、高温多湿の環境下における長時間の屈曲走行において、被覆層がゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムとの初期の接着強さを持続することで、寸法安定性に優れ、優れた耐熱性及び耐水性を合わせ持たせる。
本発明のゴム補強用無機繊維に用いるガラス繊維フィラメントの材料には、アルミノホウケイ酸ガラスであるEガラス、または高強度ガラス繊維フィラメントとしてのSガラス、炭素繊維等が好適に使用される。
Eガラスの組成は、例えば、質量%で表して、SiO2 53%、Al2O3 15%、CaO 21%、MgO 2%、B2O3 8%、Na2O+K2O 0.3%、残部0.7%であり、Sガラスの組成は、例えば、質量%で表して、SiO2 64%、Al2O3 25%、MgO 10%、Na2O+K2O 0.3%、残部0.7%である(影山 尚義著「硝子長繊維」影山技術士事務所 昭和51年8月1日発行、3頁の表1よ
り引用)。
Sガラス繊維はEガラス繊維に比較して、引っ張り強さが35%程大きく、弾性係数が20%程高く、Sガラスを使用した高強度ガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルトは、Eガラスを使用した通常のガラス繊維フィラメントを用いたゴム補強用ガラス繊維を埋設した伝動ベルトに比較して、引っ張り強さが10%〜20%大きい。
なお、本発明の無機繊維被覆用水性塗布液は、前記のガラス繊維のみではなく、炭素繊維に塗布被覆してゴム補強用炭素繊維にしても、種々の母材ゴム、特に水素化ニトリルゴム等の耐熱ゴムに埋設し伝動ベルトとすると、該ゴム補強用炭素繊維と母材ゴムの優れた接着性が得られ、該ゴム補強用炭素繊維は伝動ベルトの補強材として有効に働く。さらに、該ゴム補強用炭素繊維を埋設させてなる伝動ベルトは、高温多湿の環境下における長時間の屈曲走行において、被覆層がゴム補強用ガラス繊維と母材ゴムとの初期の接着強さを持続することで、寸法安定性に優れ、優れた耐熱性及び耐水性を合わせ持たせる。
尚、本発明において、伝動ベルトとは、エンジン、その他機械を運転するために、エンジン、モーター等の駆動源の駆動力を伝えるベルトのことであり、かみ合い伝動で駆動力を伝える歯付きベルト、摩擦伝動で駆動力を伝えるVベルトが挙げられる。自動車用伝動ベルトとは自動車のエンジンルーム内で用いられる耐熱性及び耐水性の前記伝動ベルトのことである。タイミングベルトとは、前記自動車用伝動ベルトの中で、カムシャフトを有するエンジンにおいて、クランクシャフトの回転をタイミングギヤに伝えカムシャフトを駆動させ、バルブの開閉を設定されたタイミングで行うための、プーリーの歯とかみ合う歯を設けた歯付きベルトのことである。自動車用伝動ベルトには、エンジンの熱に対する耐熱性と雨天走行における耐水性が必要であり、長時間の屈曲走行後において、引っ張り強さを持続し寸法安定性に優れていること、即ち、耐熱性、耐水性が要求される。
モノヒドロキベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)と金属石鹸(B)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)と水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)を含有することを特徴とする無機繊維被覆用水性塗布液を塗布乾燥させて被覆層を設けた本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例1及び14〜17)と、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物又はレゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれたヒドロキシベンゼン類−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)と金属石鹸(B)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)及び/又は水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)を含有することを特徴とする無機繊維被覆用水性塗布液を塗布乾燥させて被覆層を設けた本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例2〜13)を作製した。
次いで、本発明の範疇にないゴム補強用ガラス繊維を作製した(比較例1〜4)。
これら本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜15)、本発明の範疇にないゴム補強用ガラス繊維(比較例1〜4)の水素化ニトリルゴムに対する接着強さ評価試験を行い、評価結果を比較した。
また、これら本発明のゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜15)、本発明の範疇にないゴム補強用ガラス繊維(比較例1〜4)の引張り強さを測定し、強度結果を比較した。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
実施例1
(無機繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンと水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)のエマルジョンと金属石鹸(B)の水分散液とにアンモニア水と水を添加し、本発明の無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
詳しくは、市販の前記(A)の水溶液(群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分50質量%、実施例において以下使用する)を濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の質量割合で希釈した前記(A)の水溶液(固形分25質量%)を用いた。
当該前記(A)の水溶液、50質量部と、前記(C)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、二ポールL1577K、固形分38質量%)、296質量部と、前記(D)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、2230−LX、固形分40質量%)281質量部と、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(B)の水分散液(日東化成工業社製、製品名CSE−6、固形分、45質量%)、28質量部と、pH調整剤としてアンモニア水(濃度、25質量%)、20質量部を加え、全体として1000質量部になるように水を添加し、無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
前記無機繊維被覆用水性塗布液を蒸発皿に採取し、110℃で2時間加熱して水分を蒸発させ、残差の質量を測定し、採取した該無機繊維被覆用水性塗布液の質量に対する残差の質量を質量百分率で表して、詰まり、水性塗布液の固形分として25質量%であった。
前記無機繊維被覆用水性塗布液のpH(水性塗布液のpH)は、pHメーター(堀場製作所社製、型番B−212)で測定したところ9.8であった。
無機繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(C)と前記(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+C+D)=5質量%、前記(B)が、B/(A+C+D)=5質量%、前記(C)が、C/(A+C+D)=47質量%、前記(D)が、D/(A+C+D)=47質量%である。尚、無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)と前記(C)と前記(D)と前記(B)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
径9μmのガラス繊維フィラメントを、シランカップリング剤及び樹脂を含有する集束剤を用い200本集束させたストランド3本を引き揃えた後、前述の手順で作製した無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、その後、温度280℃で、22秒間乾燥させて被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して15質量%であった。
実施例2
(無機繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)のエマルジョンとアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンと金属石鹸(B)の水分散液とにアンモニア水と水を添加し、本発明の無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
詳しくは、市販の前記(A)の水溶液(群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分50質量%、実施例において以下使用する)を濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の質量割合で希釈した前記(A)の水溶液(固形分25質量%)を用いた。
当該前記(A)の水溶液、50質量部と、前記(E)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41質量%)、305質量部と、前記(C)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、二ポールL1577K、固形分38質量%)、263質量部と、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(B)の水分散液(日東化成工業社製、製品名CSE−6、固形分、45質量%)、28質量部と、pH調整剤としてアンモニア水(濃度、25質量%)、20質量部を加え、全体として1000質量部になるように水を添加し、無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は25質量%、pHは9.8であった。
無機繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(E)と前記(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+C+E)=5質量%、前記(B)が、B/(A+C+E)=5質量%、前記(C)が、C/(A+C+E)=42質量%、前記(E)が、E/(A+C+E)=53質量%である。尚、無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)と前記(E)と前記(C)と前記(B)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製した無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して16質量%であった。
実施例3
(無機繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)のエマルジョンとアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンと金属石鹸(B)の水分散液とにアンモニア水と水を添加し、本発明の無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
詳しくは、実施例2において、前記(B)の水分散液として12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(B)の水分散液(日東化成工業社製、製品名CSE−6、固形分、45質量%)、28質量部を、ステアリン酸亜鉛(B)の水分散液(日東化成工業社製、製品名ZSE−2、固形分、50質量%)、25質量部に代えて用いた以外、他の組成は実施例2と同じにして無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は25質量%、pHは9.8であった。
無機繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(E)と前記(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+C+E)=5質量%、前記(B)が、B/(A+C+E)=5質量%、前記(C)が、C/(A+C+E)=42質量%、前記(E)が、E/(A+C+E)=53質量%である。尚、無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)と前記(E)と前記(C)と前記(B)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製した無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して15質量%であった。
実施例4
(無機繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)のエマルジョンとアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンと金属石鹸(B)の水分散液とにアンモニア水と水を添加し、本発明の無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
詳しくは、実施例2において、前記(B)の水分散液として12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(B)の水分散液(日東化成工業社製、製品名CSE−6、固形分、45質量%)、28質量部を、オクチル酸亜鉛(B)(東栄化工社製、商品名ヘキサエート亜鉛22%、金属含有量、22質量%)、57質量部に代えて用いた以外、他の組成は実施例2と同じにして無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は25質量%、pHは9.8であった。
無機繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(E)と前記(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+C+E)=5質量%、前記(B)が、B/(A+C+E)=5質量%、前記(C)が、C/(A+C+E)=42質量%、前記(E)が、E/(A+C+E)=53質量%である。尚、無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)と前記(E)と前記(C)と前記(B)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製した無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して16質量%であった。
実施例5
(無機繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)のエマルジョンと水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)のエマルジョンと金属石鹸(B)の水分散液とにアンモニア水と水を添加し、本発明の無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
詳しくは、実施例2において、前記(C)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、二ポールL1577K、固形分38質量%)、263質量部を前記(D)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、2230−LX、固形分40質量%)、250質量部に代えて用いた以外、他の組成は実施例2と同じにして無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は25質量%、pHは9.4であった。
無機繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(E)と前記(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+D+E)=5質量%、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(B)が、B/(A+D+E)=5質量%、前記(D)が、D/(A+D+E)=42質量%、前記(E)が、E/(A+D+E)=53質量%である。尚、無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)と前記(E)と前記(D)と前記(B)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製した無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して15質量%であった。
実施例6
(無機繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)のエマルジョンとアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンと水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)のエマルジョンと金属石鹸(B)の水分散液とにアンモニア水と水を添加し、本発明の無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
詳しくは、実施例2において、前記(C)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、二ポールL1577K、固形分38質量%)、263質量部を、前記(C)のエマルジョン132質量部と前記(D)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、2230−LX、固形分40質量%)、125質量部に代えて用いた以外、他の組成は実施例2と同じにして無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は25質量%、pHは9.6であった。
無機繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(E)と前記(C)と前記(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+C+D+E)=5質量%、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(B)が、B/(A+C+D+E)=5質量%、前記(C)が、C/(A+C+D+E)=21質量%、前記(D)が、D/(A+C+D+E)=21質量%、前記(E)が、E/(A+C+D+E)=53質量%である。尚、無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)と前記(E)と前記(C)と前記(D)と前記(B)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製した無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して16質量%であった。
実施例7
(無機繊維被覆用水性塗布液の調製)
レゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)のエマルジョンとアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンと金属石鹸(B)の水分散液とにアンモニア水と水を添加し、本発明の無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
詳しくは、実施例2において、市販のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液(群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分、50質量%、実施例において以下使用する)を濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の質量割合で希釈したモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液、50質量部を、市販のレゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液(住友化学株式会社製、商品名、スミカノール、型番700(S)、固形分、65質量%、実施例において以下使用する)を濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で3倍の質量割合で希釈したレゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液、57.6質量部に代えて用いた以外、他の組成は実施例2と同じにして無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は25質量%、pHは9.6であった。
無機繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(E)と前記(C)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+C+E)=5質量%、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(B)が、B/(A+C+E)=5質量%、前記(C)が、C/(A+B+C+E)=42質量%、前記(E)が、E/(A+C+E)=53質量%である。尚、無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)と前記(E)と前記(C)と前記(B)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製した無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して16質量%であった。
実施例8
(無機繊維被覆用水性塗布液の調製)
レゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)のエマルジョンと水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)のエマルジョンと金属石鹸(B)の水分散液とにアンモニア水と水を添加し、本発明の無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
詳しくは、実施例7において、前記(C)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、二ポールL1577K、固形分38質量%)、263質量部を前記(D)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、2230−LX、固形分40質量%)、250質量部に代えて用いた以外、他の組成は実施例2と同じにして無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は25質量%、pHは9.4であった。
無機繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(E)と前記(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+C+E)=5質量%、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(B)が、B/(A+C+E)=5質量%、前記(C)が、C/(A+C+E)=42質量%、前記(E)が、E/(A+C+E)=53質量%である。尚、無機繊維被覆用水性塗布液中のモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)と12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(B)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製した無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して15質量%であった。
実施例9〜12
(無機繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)のエマルジョンとアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンと金属石鹸(B)の水分散液とにアンモニア水と水を添加し、本発明の無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
詳しくは、市販の前記(A)の水溶液(群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分、50質量%)を濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の質量割合で希釈した前記(A)の水溶液と、前記(E)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41質量%)と、前記(C)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、二ポールL1577K、固形分38質量%)と、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(B)の水分散液(日東化成工業社製、製品名CSE−6、固形分、45質量%)を、表1の組成になる様に調製して加え、pH調整剤としてアンモニア水(濃度、25質量%)、20質量部を加え、全体として1000質量部になるように水を添加し、無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は各々25質量%、pHは10.0、9.9、9.3及び9.8であった。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製した無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して各々16、15、16及び16質量%であった。
実施例13
(無機繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)のエマルジョンと水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)のエマルジョンと金属石鹸(B)の水分散液とにアンモニア水と水を添加し、本発明の無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
詳しくは、市販の前記(A)の水溶液(群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分、50質量%)を濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の質量割合で希釈した前記(A)の水溶液、10質量部と、前記(E)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41質量%)、145質量部と、前記(D)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、2230−LX、固形分40質量%)、439質量部と、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(B)の水分散液(日東化成工業社製、製品名CSE−6、固形分、45質量%)、0.5質量部と、pH調整剤としてアンモニア水(濃度、25質量%)、20質量部を加え、全体として1000質量部になるように水を添加し、無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は25質量%、pは9.4であった。
無機繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(E)と前記(D)とを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+D+E)=1質量%、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(B)が、B/(A+D+E)=0.1質量%、前記(D)が、D/(A+D+E)=74質量%、前記(E)が、E/(A+D+E)=25質量%である。尚、無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)と前記(E)と前記(D)と前記(B)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製した無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して16質量%であった。
実施例14
(無機繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)とアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンと水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)のエマルジョンと金属石鹸(B)の水分散液とにアンモニア水と水を添加し、本発明の無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
詳しくは、市販の前記(A)の水溶液(群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分、50質量%、実施例において以下使用する)を濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の質量割合で希釈した前記(A)の水溶液を用いた。
当該前記(A)の水溶液と、前記(C)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、二ポールL1577K、固形分38質量%)と、前記(D)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、2230−LX、固形分40質量%)と、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(B)の水分散液(日東化成工業社製、製品名CSE−6、固形分、45質量%)を、表1の組成になる様に調製して加え、pH調整剤としてアンモニア水(濃度、25質量%)、20質量部を加え、全体として1000質量部になるように水を添加し、無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は25質量%、pHは9.8であった。
無機繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(C)と前記(D)と前記(B)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+C+D)=21質量%、前記(B)が、B/(A+C+D)=50質量%、前記(C)が、C/(A+C+D)=58質量%、前記(D)が、D/(A+C+D)=21質量%である。尚、無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)と前記(C)と前記(D)と前記(B)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製した無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して16質量%であった。
実施例15
(無機繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)と水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)のエマルジョンと金属石鹸(B)の水分散液とにアンモニア水と水を添加し、本発明の無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
詳しくは、市販の前記(A)の水溶液(群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分、50質量%、実施例において以下使用する)を濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の質量割合で希釈した前記(A)の水溶液を用いた。
当該前記(A)の水溶液と、前記(D)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、2230−LX、固形分40質量%)と、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム(B)の水分散液(日東化成工業社製、製品名CSE−6、固形分、45質量%)を、表1の組成になる様に調製して加え、pH調整剤としてアンモニア水(濃度、25質量%)、20質量部を加え、全体として1000質量部になるように水を添加し、無機繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は25質量%、pHは10.1であった。
無機繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(C)と前記(D)と前記(B)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+C+D)=10質量%、前記(B)が、B/(A+C+D)=0.05質量%、前記(D)が、D/(A+C+D)=90質量%である。尚、無機繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)と前記(D)と前記(B)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製した無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して15.7質量%であった。
比較例1
(ガラス繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)のエマルジョンとアクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)のエマルジョンとにアンモニア水と水を添加し、比較例のガラス繊維被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、市販の前記(A)の水溶液(群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分、50質量%、実施例において以下使用する)を濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の質量割合で希釈した前記(A)の水溶液を用いた。
当該モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液、50質量部と、前記(E)のエマルジョン(日本エイアンドエル株式会社製、商品名、ピラテックス、固形分、41質量%)、305質量部と、前記(C)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、二ポールL1577K、固形分38質量%)、296質量部と、pH調整剤としてアンモニア水(濃度、25質量%)、20質量部を加え、全体として1000質量部になるように水を添加し、ガラス繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は26質量%、pHは10であった。
ガラス繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(E)と前記(C)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+C+E)=5質量%、前記(C)が、C/(A+C+E)=45質量%、前記(E)が、E/(A+C+E)=50質量%である。
尚、ガラス繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)と前記(E)と前記(C)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製したガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して16質量%であった。
比較例2
(ガラス繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)のエマルジョンと水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)のエマルジョンとにアンモニア水と水を添加し、比較例のガラス繊維被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、比較例1において、前記(C)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、二ポールL1577K、固形分38質量%)、296質量部を、前記(D)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、2230−LX、固形分40質量%)、281質量部に代えて用いた以外、他の組成は比較例1と同じにしてガラス繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は25質量%、pHは9.7であった。
ガラス繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(E)と前記(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+B+D+E)=5質量%、前記(D)が、D/(A+D+E)=45質量%、前記(E)が、E/(A+D+E)=50質量%である。尚、ガラス繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)と前記(E)と前記(D)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製したガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して15質量%であった。
比較例3
(ガラス繊維被覆用水性塗布液の調製)
モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)のエマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(F)のエマルジョンとにアンモニア水と水を添加し、比較例のガラス繊維被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、比較例1において、前記(C)のエマルジョン(日本ゼオン株式会社製、商品名、二ポールL1577K、固形分38質量%)、296質量部を、前記(F)のエマルジョン(住友精化株式会社製、製品名、セポレックスCSM、固形分40質量%)、315質量部に代えて用いた以外、他の組成は比較例1と同じにしてガラス繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は25質量%、pHは9.0であった。
ガラス繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(E)と前記(F)のエマルジョンを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+E+F)=5質量%、前記(E)が、E/(A+E+F)=50質量%、前記(F)が、F/(A+E+F)=45質量%である。
尚、ガラス繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)と前記(E)と前記(F)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製したガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して16質量%であった。
比較例4
(ガラス繊維被覆用水性塗布液の調製)
レゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)に、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)のエマルジョンとクロロスルホン化ポリエチレン(F)のエマルジョンとにアンモニア水と水を添加し、比較例のガラス繊維被覆用塗布液を調製した。
詳しくは、比較例3において、市販の前記(A)の水溶液(群栄化学工業株式会社製、商品名、レジトップ、型番PL−4667、固形分、50質量%、実施例において以下使用する)を濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で2倍の質量割合で希釈したモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液、50質量部を、市販のレゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液(住友化学株式会社製、商品名、スミカノール、型番700(S)、固形分、65質量%、実施例において以下使用する)を濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液で3倍の質量割合で希釈したレゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物(A)の水溶液、57.6質量部に代えて用いた以外、他の組成は比較例3と同じにしてガラス繊維被覆用水性塗布液を調製した。
実施例1と同様に測定し、固形分は25質量%、pHは9.1であった。
ガラス繊維被覆用水性塗布液中の各成分の含有割合は、前記(A)と前記(E)と前記(F)のエマルジョンを合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)が、A/(A+E+F)=5質量%、前記(E)が、E/(A+E+F)=50質量%、前記(F)が、F/(A+E+F)=45質量%である。
尚、ガラス繊維被覆用水性塗布液中の前記(A)と前記(E)と前記(F)の質量は固形分濃度から固形分に換算して求めた。ほぼ、このままの含有割合でゴム補強用ガラス繊維の被覆層となる。
参考例1
径9μmのガラス繊維フィラメントを、シランカップリング剤及び樹脂を含有する集束剤を用い200本集束させたストランド3本を引き揃えた後、実施例1と同じ無機繊維被覆用塗布液を塗布し、その後140℃で22秒間加熱乾燥させて被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。このときの固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全量に対して16質量%であった。
参考例2
径9μmのガラス繊維フィラメントを、シランカップリング剤及び樹脂を含有する集束剤を用い200本集束させたストランド3本を引き揃えた後、実施例1と同じ無機繊維被覆用塗布液を塗布し、その後360℃で22秒間加熱乾燥させて被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。このときの固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全量に対して14質量%であった。
(ゴム補強用ガラス繊維の作製)
実施例1と同様なガラス繊維ストランドに、前述の手順で作製したガラス繊維被覆用水性塗布液を塗布し、実施例1と同様な方法で被覆層を設け、1本のゴム補強用ガラス繊維を作製した。この時の固形分付着率、即ち、被覆層の質量割合である付着量は、ゴム補強用ガラス繊維の全質量に対して15質量%であった。
Figure 2016108705
Figure 2016108705
(各ゴム補強用ガラス繊維と水素化ニトリルゴムの接着強さの評価試験)
接着強さの評価試験を説明する前に、試験に使用したゴム組成物を説明する。
母材ゴムとしての(日本ゼオン株式会社製、型番、2020)、100質量部に対して、カーボンブラック、40質量部と、亜鉛華、5質量部と、ステアリン酸、0.5質量部と、硫黄、0.4質量部と、加硫促進剤、2.5質量部と、老化防止剤、1.5質量部とを配合してなる水素化ニトリルゴム(以後、試験ゴムAとする)、また、水素化ニトリルゴム(日本ゼオン株式会社製、型番、2010)、100質量部に対して、カーボンブラック、40質量部と、亜鉛華、5質量部と、ステアリン酸、0.5質量部と、1、3−ジ(t−ブチルペロキシイソプロピル)ベンゼン、5質量部と、老化防止剤、1. 5 質量部とを配合してなる水素化ニトリルゴム(以後、試験ゴムBとする)を接着強さの評価試験に使用した。
試験片は試験ゴムAまたは試験ゴムBからなる3mm厚、25mm幅のゴムシート上に前記ゴム補強用ガラス繊維(実施例1〜15、比較例1〜4、参考例1〜2)を20本並べ、その上から布をかぶせ、試験ゴムAについては、温度、150℃下、196ニュートン/cm2(以後、ニュートンをNと略す)、また試験ゴムBについては、温度、170℃下、196N/cm2の条件で端部を除き押圧し、30分間加硫させつつ成形して、接着強さ評価のための試験片、言い換えればゴムシートを得た。
この試験片の接着強さの測定を、端部において各々のゴムシートとゴム補強用ガラス繊維を個別にクランプにて挟み、剥離速度を50mm/minとし、ゴムシートからゴム補強用ガラス繊維を剥がす際の最大の抵抗値を測定し、接着強さとした。接着強さが大きいほど接着力に優れる。
(接着強さの評価結果)
各ゴム補強用ガラス繊維の試験ゴムに対する接着強さを表3及び表4に示す。接着強さは、ゴム補強用ガラス繊維を作製後24時間以内、30日経過後、90日経過後についてそれぞれ試験片を作製し、接着強さを測定した。
更に、ゴム補強用ガラス繊維を作製後90日経過後のものは、試験片を沸騰水中で2時間、煮沸した後、及び、120℃で100時間加熱した後の接着強さを測定し、各々耐水性及び耐熱性の指標とした。
表3及び4において、ガラス繊維と試験ゴムが界面から剥離していない破壊状態をゴム破壊、概ねゴム破壊であるが一部でも界面から剥離している破壊状態を部分ゴム破壊、全面界面から剥離している破壊状態を界面剥離とした。ゴム破壊、部分ゴム破壊、界面剥離の順に接着強さに優れる。
Figure 2016108705
Figure 2016108705
表3が示すように、実施例の無機繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆した実施例のゴム補強用ガラス繊維の接着強さは、試験ゴムA及びBにおいて、該ゴム補強用ガラス繊維を製造後、90日経過後においても全てゴム破壊の良好な接着性能を示した。また、試験片を120℃で100時間加熱した後の接着強さをみても、どれもゴム破壊のレベルであり、耐熱性も良好であることが分かった。更に、試験片を沸騰水中で2時間、煮沸した後の接着強さをみると、実施例7及び8は部分ゴム破壊、他の実施例は全てゴム破壊のレベルであり、耐水性も良好であることが分かった。実施例7及び8はモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド樹脂に代えてレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂を用いた例であるが、これらの結果は、モノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド樹脂を用いた方が耐水性に有利であることを示す。
これらの結果から、実施例の無機繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆した実施例のゴム補強用ガラス繊維の接着強さは、ゴムに埋設されるまで長期に保存されても母料ゴムとの接着性が経時的に低下しないことが分かった。
また、参考例1、2から、実施例の無機繊維被覆用水性塗布液を塗布し、温度150〜350℃を外れた温度で加熱して乾燥したゴム補強用ガラス繊維の接着強さは、試験ゴムA及びBにおいて界面剥離のレベルであることが分かった。
(引張り強さの測定)
引張り試験機において、クランプ間距離150mmに調製したクランプにゴム補強用ガラス繊維を装着し速度を300mm/分とし、試験片が破断されるまでの最大の抵抗値を引張り強さとした。20回、抵抗値を測定し、その平均値を引張り強さとした。
引張り強さは、ゴム補強用ガラス繊維を採取して、1時間煮沸したもの、150℃で100時間加熱したもの、煮沸も加熱もしないものを初期値として測定した。
表3が示すように、実施例の無機繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆した実施例のゴム補強用ガラス繊維の引張り強さの初期値は、実施例1〜15すべて90N以上を示しており、比較例1〜4と同等のレベルであった。
更に、試験片を沸騰水中で1hrの煮沸した後の引張り強さ、150℃で100hr加熱した後の引張り強さとも、実施例1〜15と比較例1〜4で優位差は見られず、実施例の無機繊維被覆用水性塗布液を塗布被覆した実施例のゴム補強用ガラス繊維は引張り強度の低下も見られないことが分かった。

Claims (10)

  1. 水素化ニトリル系ゴムベルトに埋設するゴム補強用無機繊維に被覆層を設けるための水性塗布液であって、
    該塗布液にモノヒドロキシベンゼン−ホルムアルデヒド縮合物又はレゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合物から選ばれたヒドロキシベンゼン類−ホルムアルデヒド縮合物(A)と、
    金属石鹸(B)と、
    アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(C)及び/又は水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(D)と、
    を含有することを特徴とする無機繊維被覆用水性塗布液。
  2. 前記(A)、(C)及び(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、
    前記(B)を、B/(A+C+D)=0.1〜45質量%
    の範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載の無機繊維被覆用水性塗布液。
  3. 前記(A)、(C)及び(D)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、前記(A)を、A/(A+C+D)=1〜15質量%
    の範囲で含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の無機繊維被覆用水性塗布液。
  4. 前記(A)と、前記(B)と、前記(C)及び/又は前記(D)とを含有する請求項1記載の無機繊維被覆用水性塗布液に、
    さらに、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体(E)を含有すること
    を特徴とする無機繊維被覆用水性塗布液。
  5. 前記(A)、(C)、(D)及び(E)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、
    前記(B)を、B/(A+C+D+E)=0.1〜45質量%
    の範囲で含有することを特徴とする請求項4に記載の無機繊維被覆用水性塗布液。
  6. 前記(A)、(C)、(D)及び(E)を合わせた質量を100%基準とする質量百分率で表して、
    前記(A)を、A/(A+C+D+E)=1〜15質量%と、
    前記(E)を、E/(A+C+D+E)=25〜80質量%と、
    の範囲で含有することを特徴とする請求項4又は5に記載の無機繊維被覆用水性塗布液。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の無機繊維被覆用水性塗布液を、集束剤を処理した無機繊維ストランドに塗布し加熱して乾燥して被覆層を形成する工程を含むことを特徴とするゴム補強用無機繊維の製造方法。
  8. 前記加熱温度が150〜350℃である、請求項7に記載のゴム補強用無機繊維の製造方法。
  9. 請求項7又は8に記載のゴム補強用無機繊維の製造方法により得られたゴム補強用無機繊維が水素化ニトリルゴムに埋設されてなることを特徴とする伝動ベルト。
  10. 請求項7又は8に記載のゴム補強用無機繊維の製造方法により得られたゴム補強用無機繊維が水素化ニトリルゴムに埋設されてなることを特徴とする自動車用タイミングベルト。
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