(発明が解決しようとする課題)
パンケーキ型超電導コイル或いはレーストラック型超電導コイルは、上述した超電導テープ線材の形状的な特性から、銅線により形成されるコイルのように自由に変形することができない。そのため超電導コイルを分布巻きすることは、できないことはないが難しい。よって、多くの超電導コイルは特許文献1に示すようにステータコアに集中巻きされる。この場合、ステータコアに形成されるスロット内にて、超電導テープ線材のテープ面がステータコアの周方向に対してほぼ垂直となるように、超電導テープ線材がステータコアに巻回される。
超電導コイルがステータコアに集中巻きされている場合、ステータとロータとの間のエアギャップの磁束分布に空間高調波成分(例えば第5次高調波成分)が多く含まれる。よって、超電導コイルが集中巻きされたステータを、モータ、特に誘導モータに利用した場合においては、モータトルクが低下するとともにトルクリップルが増加する虞がある。
また、特許文献2に示すように超電導コイルを分布巻きすることもできるが、多数の超電導コイルを重ねて分布巻きすることは、上述した超電導テープ線材の形状的な特性故に、困難である。また、隣接する超電導コイルどうしの干渉を避けるために、多くのティースを跨いて超電導コイルを分布巻きすることはできない。このように、従来においては、超電導コイルを分布巻きする上での制約が多い。それ故に、超電導コイルを分布巻きした場合においても、ステータとロータとの間のエアギャップにおける空間高調波成分の低減に関する改善効果が少ない。また、特許文献2に示す分布巻きでは、ステータのスロット内に存在する余剰空間(スロット内の空間のうち超電導コイルが存在していない空間)が大きくなるため、漏れリアクタンスが増加する等の磁気特性の低下を招く虞がある。
また、ステータコアのスロット内には、ステータコアの鏡像効果により生じる磁場が形成される。この磁場はステータコアの周方向に強く形成される。従って、超電導コイルを集中巻きした場合、スロット内において超電導テープ線材のテープ面に垂直な方向から超電導コイルに磁場が進入する。
超電導コイルに磁場が進入した場合には超電導コイルの超電導特性(例えば超電導臨界電流値)が低下する。超電導コイルに磁場が進入した場合における超電導特性の低下の度合いは、超電導コイルに進入する磁場の進入方向により異なる。具体的には、超電導コイルを構成する超電導テープ線材のテープ面に垂直な方向から超電導コイルに磁場が進入した場合には超電導コイルの超電導特性が大きく低下する。一方、超電導コイルを構成する超電導テープ線材のテープ面に平行な方向から超電導コイルに磁場が進入した場合には超電導コイルの超電導特性の低下量は小さい。
特許文献1に示すように超電導コイルが集中巻きされている場合、上述したようにスロット内にて鏡像効果により生じた磁場が超電導テープ線材のテープ面に垂直な方向から超電導コイルに進入する。その結果、超電導コイルの超電導特性が大きく低下する。さらに、特許文献2に示す超電導コイルにおいても、スロット内において超電導コイルを構成する超電導テープ線材のテープ面がステータコアの周方向にほぼ垂直である。よって、ステータコアの鏡像効果によりスロット内にて生じる磁場が超電導テープ線材のテープ面に垂直な方向から超電導コイルに進入するため、超電導コイルの超電導特性が大きく低下する。超電導コイルの超電導特性が低下した場合、超電導コイルに流すことのできる電流(超電導臨界電流)が小さくされる。その結果、ステータコア内の磁束密度が低下し、これをモータに用いた場合におけるモータトルクの低下を招く。なお、特許文献1においては、磁束線誘導部材をスロット内に設けることにより、超電導テープ線材のテープ面に垂直な方向からの磁場の進入を抑制しているが、構造が複雑化するとともに、磁束線誘導部材を設けることによる製造工数及び製造コストが増大するという問題を有する。
本発明は、従来に比べてトルクの低下が少なくされた超電導回転電機を構成するための超電導回転電機ステータ、及び、そのような超電導回転電機ステータを備える超電導回転電機を提供することを、目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明は、超電導テープ線材がそのテープ面に垂直な方向に積層されるように超電導テープ線材を巻回することにより形成された複数の超電導コイル(32)と、中空円柱状であり、その内周壁面には軸方向に延設された複数の内側スロット(311,311C,311D)が周方向に沿って形成され、その外周壁面には軸方向に延設された複数の外側スロット(312,312C,312D)が周方向に沿って形成されたステータコア(31,31D,31D)と、を備え、超電導コイルが、内側スロット内に配設される内側部分(321)と、外側スロット内に配設される外側部分(322)と、内側部分と外側部分とを接続する一対の接続部分(323,324)と、を備える、超電導回転電機ステータ(3,3A,3B,3C,3D)を提供する。
この場合、超電導コイルは、直線状に形成された第1直線部(321)と、直線状に形成されるとともに第1直線部に対向配置する第2直線部(322)と、第1直線部の一方の端部と第2直線部の一方の端部とを接続する第1円弧部(323)と、第1直線部の他方の端部と第2直線部の他方の端部とを接続するとともに第1円弧部に対向配置する第2円弧部(324)と、を有するレーストラック型超電導コイルであるのがよい。そして、超電導コイルの内側部分が第1直線部であり、外側部分が第2直線部であるとよい。また、一対の接続部分の一方が第1円弧部であり、一対の接続部分の他方が第2円弧部であるのがよい。
本発明によれば、中空円柱形状のステータコアの内周側に内側スロットが形成され、外周側に外側スロットが形成される。そして、超電導コイルの内側部分(第1直線部)がステータコアの内側スロットに配設され、超電導コイルの外側部分(第2直線部)がステータコアの外側スロットに配設される。つまり、超電導コイルは、中空円柱状のステータコアの内周と外周との間を跨ぐように、ステータコアに対して配設される。このように超電導コイルがステータコアに配設されることにより、超電導コイルを構成する超電導テープ線材の巻き軸方向が、ステータコアの周方向にほぼ一致する。また、超電導コイルを構成する超電導テープ線材のテープ面は超電導コイルの巻き軸方向に平行である。よって、超電導コイルのうちステータコアの内側スロットに配設されている内側部分を構成する超電導テープ線材のテープ面、及び、ステータコアの外側スロットに配設されている外側部分を構成する超電導テープ線材のテープ面は、ステータコアの周方向にほぼ平行にされる。そのため、内側スロット内にてステータコアの鏡像効果により生じた磁場は超電導テープ線材のテープ面に平行な方向から超電導コイルの内側部分に進入する。同様に、外側スロット内にてステータコアの鏡像効果により生じた磁場は超電導テープ線材のテープ面に平行な方向から超電導コイルの外側部分に進入する。
上述したように、ステータコアの鏡像効果により生じる磁場が超電導テープ線材のテープ面に平行な方向から超電導コイルに進入した場合における、超電導コイルの超電導特性の低下の度合いは小さい。従って、本発明に係る超電導回転電機ステータによれば、ステータコアの鏡像効果により生じる磁場が進入することによる超電導コイルの超電導特性の低下を抑えることができる。よって、本発明に係る超電導回転電機ステータを用いて超電導回転電機(例えば超電導モータ)を構成した場合に、超電導特性の低下に起因するモータトルクの低下は少ない。
また、本発明によれば、ステータコアの周方向に離間して配置された2つの超電導コイルに流れる電流の向きが反対向きとなるように、これらの超電導コイルを直列接続することにより、容易に超電導コイルをステータコアに擬似的に分布巻きすることができる。よって、本発明に係る超電導回転電機ステータを用いて超電導回転電機を構成した場合に、超電導回転電機ステータとロータとの間のエアギャップにおける磁束分布に含まれる空間高調波成分を十分に低減することができる。その結果、空間高調波成分による超電導回転電機のトルクの低下が少なくされ、且つ、トルクリップルの増加が低減される。
また、本発明によれば、ステータコアの周方向に沿って隣接配置された複数の超電導コイルに流れる電流の向きが同じ向きになるようにこれらの超電導コイルを直列接続することにより、ステータコア内の起磁力分布を正弦波に近づけることができる。このため、本発明に係る超電導回転電機ステータを用いて超電導回転電機(例えば超電導モータ)を構成した場合に、超電導回転電機ステータとロータとの間のエアギャップにおける磁束分布に含まれる空間高調波成分をさらに低減することができる。その結果、空間高調波成分による超電導回転電機のトルクの低下がさらに少なくされ、且つ、トルクリップルの増加をさらに低減することができる。
本発明において、超電導コイルの内側部分(第1直線部)が配設される内側スロットと、その超電導コイルの外側部分(第2直線部)が配設される外側スロットが、ステータコアの中心軸を含む平面上に位置するように、複数の内側スロットと複数の外側スロットがステータコアに形成されているとよい。この場合、ステータコアの中心軸を含み且つ超電導コイルの内側部分(第1直線部)が配設される内側スロット及びその超電導コイルの外側部分(第2直線部)が配設される外側スロットが位置される平面が、ステータコアの周方向に等間隔で形成されるように、複数の内側スロットと複数の外側スロットがステータコアに形成されているとよい。つまり、同数の内側スロット及び外側スロットが、ステータコアの周方向に等間隔で形成されているとよい。
これによれば、ステータコアの中心軸方向から見たときに複数の超電導コイルが放射状に配列される。このように超電導コイルをステータコアに配設することにより、ステータコア内の起磁力分布をより一層正弦波に近づけることができる。このため、本発明に係る超電導回転電機ステータを用いて超電導回転電機(例えば超電導モータ)を構成した場合に、超電導回転電機ステータとロータとの間のエアギャップにおける磁束分布に含まれる空間高調波成分をさらに低減することができる。その結果、空間高調波成分による超電導回転電機のトルクの低下がさらに少なくされ、且つ、トルクリップルの増加をさらに低減することができる。
また、超電導コイルの内側部分(第1直線部)が配設される内側スロットとステータコアの中心軸とを通る平面と、その超電導コイルの外側部分(第2直線部)が配設される外側スロットとステータコアの中心軸とを通る平面とが、異なる平面であるように、複数の内側スロットと複数の外側スロットがステータコアに形成されていてもよい。これによれば、一つの超電導コイルの内側部分(第1直線部)が配設される内側スロットの周方向位置とその超電導コイルの外側部分(第2直線部)が配設される外側スロットの周方向位置が異なる。このため、ステータコアの周方向における磁路面積が均一化される。よって、ステータコア内の磁束密度の均一性をより一層高めることができる。
また、超電導コイルの幅方向における内側部分(第1直線部)の少なくとも一方の端面(側面)が、内側スロットの内壁面に接触するように、内側部分(第1直線部)が内側スロット内に配設されているとよい。また、超電導コイルの幅方向における外側部分(第2直線部)の少なくとも一方の端面(側面)が、外側スロットの内壁面に接触するように、外側部分(第2直線部)が外側スロット内に配設されているとよい。ここで、超電導コイルの幅方向とは、超電導コイルを構成する超電導テープ線材の巻き軸方向である。これによれば、超電導コイルの端面をスロットの内壁に接触させることにより、スロット内で鏡像効果により生じる磁場を、より一層確実に、スロット内の超電導テープ線材のテープ面に平行な方向から超電導コイルに進入させることができる。
また、超電導コイルの幅方向における一対の接続部分(第1円弧部,第2円弧部)の両端面に、強磁性体により構成されるヨーク(34)が配設されているとよい。これによれば、超電導コイルのうち、ステータコアのスロット(内側スロット、外側スロット)に配設されていない部分、すなわち一対の接続部分(第1円弧部,第2円弧部)に強磁性体を接触させておくことにより、接続部分(第1円弧部,第2円弧部)において超電導コイル自身が発生する磁場による超電導コイルの超電導特性の低下、特に、超電導臨界電流の低下を抑えることができる。こうして接続部分(第1円弧部,第2円弧部)の超電導臨界電流の低下が抑えられる結果、接続部分(第1円弧部,第2円弧部)に超電導臨界電流以上の電流が流れることに起因するクエンチの発生を防止することができる。
また、超電導コイルの内側部分の内周面とそれに対向する内側スロットの内壁面との間の距離が、内側部分の端面とそれに対向する内側スロットの内壁面との間の距離よりも大きく、且つ、超電導コイルの外側部分の内周面とそれに対向する外側スロットの内壁面との間の距離が、外側部分の端面とそれに対向する外側スロットの内壁面との間の距離よりも大きくなるように、超電導コイルが内側スロット及び外側スロット内に配設されているとよい。この場合において、超電導コイルの内側部分の内周面とそれに対向する内側スロットの内壁面との間、及び、超電導コイルの外側部分の内周面とそれに対向する外側スロットの内壁面との間に、非磁性かつ絶縁性の材料からなる巻き枠が設けられているとよい。これによれば、超電導コイルを構成する超電導テープ線材のテープ面(すなわち超電導コイルの内側部分の内周面及び外側部分の内周面)がスロットの壁面から離間されることにより、テープ面に対向するスロット内壁面からテープ面に垂直に磁場が進入することを防止することができる。
また、本発明に係る超電導回転電機ステータは、ステータコアの外周面又は内周面のいずれか一方に接触するように設けられるとともに、非磁性の導電材料又は反磁性材料からなる筒形状のスリーブ(33,33B)を備えるのがよい。これによれば、スリーブをステータコアの外周又は内周に配設することにより、ステータコアの外周面又は内周面からの磁束の漏れを防止することができる。なお、本発明に係るステータコアを用いた超電導モータにおいて、ステータコアの内周側にロータが配設される場合には、ステータコアの外周面に接触する外周スリーブが設けられ、ステータコアの外周側にロータが配設される場合には、ステータコアの内周面に接触する内周スリーブが設けられるとよい。
この場合、スリーブの材質が、銅、アルミニウム、超電導材料のいずれかであるのがよい。スリーブの材質が銅又はアルミニウムのような非磁性の導電材料である場合、スリーブにて生じる渦電流によって、ステータコア内の磁束がステータコアからスリーブを経て外部に漏れることが防止される。また、スリーブの材質が超電導材料のような反磁性材料である場合、スリーブへのステータコア内の磁束の進入が防止されることにより、ステータコア内の磁束がスリーブを経て外部に漏れることが防止される。
また、超電導テープ線材は、テープ面に垂直な方向から磁場が印加されているときの超電導臨界電流値が、テープ面に平行な方向から磁場が印加されているときの超電導臨界電流値よりも小さくなるように形成されているとよい。これによれば、ステータコアの鏡像効果によって内側スロット又は外側スロットにて生じる磁場が超電導コイルに進入した場合における超電導臨界電流値が、磁場がテープ面に垂直な方向から進入する場合と比較して大きいので、より多くの電流を超電導コイルに流すことができる。
また、本発明は、上記した超電導回転電機ステータと、その超電導回転電機ステータの内周側又は外周側に超電導回転電機ステータと同軸的に配置されたロータ(5)とを備える、超電導回転電機(1)を提供する。
この場合、ロータは、籠形の導電材料からなる籠形導体(52)を備え、超電導回転電機ステータの回転磁界によって籠形導体に電流が誘起されることにより、回転するように構成されるものであるとよい。すなわち、超電導回転電機が誘導モータであるとよい。本発明に係る超電導回転電機ステータを誘導モータに用いることにより、上記した作用効果を有する誘導モータを提供することができる。
また、籠形導体は超電導材料により構成されているとよい。これによれば、籠形導体に流れる電流を大きくすることができるため、より一層、超電導回転電機により発生されるトルクが大きくされる。また、籠形導体に電流が流れた場合におけるジュール損失がほとんど無いために、モータ効率が向上する。
また、ロータは、磁場を発生する界磁部を備え、超電導回転電機ステータの回転磁界が界磁部により発生された磁場に作用することにより、回転するように構成されていてもよい。つまり、超電導回転電機が同期モータであってもよい。この場合、界磁部は、永久磁石、超電導体、コイルのうちの少なくとも一つにより構成されるとよい。本発明に係る超電導回転電機ステータを同期モータに用いることにより、上記した作用効果を有する同期モータを提供することができる。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る超電導モータ1(超電導回転電機)の回転軸方向を含む断面図である。この超電導モータ1は誘導モータである。図1に示すように、超電導モータ1は、ケーシング2と、ステータ3(超電導回転電機ステータ)と、ブラケット4a,4bと、ロータ5とを備える。
ステータ3は、ステータコア31と、複数の超電導コイル32と、外周スリーブ33とを有する。ステータコア31は、環状の電磁鋼板を軸方向に積層することにより中空円柱形状に形成される。外周スリーブ33は円筒状に形成され、その内周面がステータコア31の外周面に対面接触するように、ステータコア31の外周側に配設される。外周スリーブ33は、非磁性の導電材料により形成される。本実施形態では、外周スリーブ33の材質は銅である。
ロータ5は、ステータコア31の内周側に、ステータコア31と離間して配置される。ロータ5は、ロータコア51と、籠形導体52と、回転軸53とを有する。ロータコア51は、環状の電磁鋼板を積層することにより中空円柱形状に形成され、ステータコア31の内周側にステータコア31と同軸的に配設される。ロータコア51の軸中心部には、回転軸受容孔51aが形成されており、この回転軸受容孔51aに回転軸53が挿入される。回転軸53は、ロータコア51と一体的に回転するようにロータコア51に取り付けられる。
籠形導体52は、対向配置した一対のエンドリング521,521と、両エンドリング521,521を接続するように、エンドリング521の周方向に沿って配列された複数のロータバー522とを有する。ここで、ロータコア51の外周近傍には、軸方向に貫通する複数の貫通孔51bが、周方向に等間隔に形成されており、それぞれの貫通孔51bにロータバー522が挿通される。そして、一方のエンドリング521がロータコア51の一方の端面から突き出るように配置され、他方のエンドリング521がロータコア51の他方の端面から突き出るように配置される。このため、一方のエンドリング521がロータコア51の一方の軸方向端面に対面し、他方のエンドリング521がロータコア51の他方の軸方向端面に対面する。本実施形態において、一対のエンドリング521,521及びロータバー522は、超電導材料により形成される。
ケーシング2は、ステータ3(より厳密には、外周スリーブ33)の外周を覆うように円筒状に形成される。ブラケット4a,4bは、それぞれ略円板形状を呈し、ケーシング2の開口している2つの端部にそれぞれ嵌め合わされる。ブラケット4aの中央部には、回転軸53を貫通させるための貫通孔4cが設けられる。なお、ブラケット4a,4bには、回転軸53を回転自在に支持するベアリング等の軸受け6a,6bが設けられる。
図2は、ステータ3及びロータ5を、図1のA方向から見た正面図である。また、図3は、ステータコア31を図1のA方向から見た正面図である。図3に良く示すように、ステータコア31には、複数の内側スロット311と複数の外側スロット312が形成される。複数の内側スロット311は、ステータコア31の内周壁に周方向に沿って一定の間隔を開けて形成される。内側スロット311は、ステータコア31の軸方向における両端面間に亘ってステータコア31の軸方向に延設される凹溝である。複数の外側スロット312は、ステータコア31の外周壁に周方向に沿って一定の間隔を開けて形成される。外側スロット312は、ステータコア31の軸方向における両端面間に亘ってステータコア31の軸方向に延設される凹溝である。隣接する内側スロット311,311間に内周ティース313が形成され、隣接する外側スロット312,312間に外周ティース314が形成される。
各内側スロット311は、正面視にて矩形形状を呈する。各内側スロット311は、3つの内壁面(底壁面311a及び両側壁面311b,311c)を有し、ステータコア31の径内方に向けて開口している。底壁面311aはステータコア31の周方向にほぼ平行であり、両側壁面311b,311cはステータコア31の周方向にほぼ垂直である。
また、各外側スロット312も正面視にて矩形形状を呈する。各外側スロット312は、3つの内壁面(底壁面312a及び両側壁面312b,312c)を有し、ステータコア31の径外方に向けて開口している。底壁面312aはステータコア31の周方向にほぼ平行であり、両側壁面312b、312cはステータコア31の周方向にほぼ垂直である。
本実施形態においては、24個の内側スロット311及び24個の外側スロット312が、ステータコア31に形成されている。従って、ステータコア31の中心軸方向から見て、15°間隔で内側スロット311及び外側スロット312が形成されている。また、ステータコア31の中心軸Oと一つの内側スロット311の周方向における中心位置とを通る平面Pは、一つの外側スロット312の周方向における中心位置を通る。つまり、ステータコア31の中心軸Oを通る平面上に、1つの内側スロット311と1つの外側スロット312が配設される。
図4は、超電導コイル32の斜視図である。超電導コイル32は、所謂レーストラック型超電導コイルである。超電導コイル32は、直線状に形成された第1直線部321(内側部分)と、直線状に形成されるとともに第1直線部321に対向配置する第2直線部322(外側部分))と、円弧状に形成され第1直線部321の一方の端部と第2直線部322の一方の端部とを接続する第1円弧部323と、円弧状に形成され第1直線部321の他方の端部と第2直線部322の他方の端部とを接続するとともに第1円弧部323に対向配置する第2円弧部324とを備え、その外径形状が、対向する直線部分を有する長円状(レーストラック形状)である。
また、超電導コイル32は、2つのレーストラック型超電導コイル(第1コイル32a,第2コイル32b)を軸方向に積層させることにより形成される。図5は、積層状態における第1コイル32aと第2コイル32bをそれぞれ同一の積層方向から見た図である。図5に示すように、第1コイル32a及び第2コイル32bは、長尺平板状(テープ形状)を有し且つ表面が絶縁被覆された超電導テープ線材が、レーストラック形状に巻回されることにより形成される。
超電導テープ線材を構成する超電導体は、本実施形態では高温超電導体である。また、超電導テープ線材の表面のうち、長手方向に垂直な方向における長さが長い面、すなわち幅広の面をテープ面Sと定義する。超電導テープ線材は、テープ面Sに平行な方向に折り曲げることができない。従って、第1コイル32a及び第2コイル32bは、超電導テープ線材がそのテープ面Sに垂直な方向に積層されるように、超電導テープ線材を巻回することにより形成される。
第1コイル32aは、内周端部32a_in及び外周端部32a_outを有し、第2コイル32bは内周端部32b_in及び外周端部32b_outを有する。第1コイル32aの内周端部32a_inと第2コイル32bの内周端部32b_inは、図示しない導電性の接続部材により接続される。よって、第1コイル32aと第2コイル32bは電気的に直列接続されており、第1コイル32aの外周端部32a_outと第2コイル32bの外周端部32b_outとの間に電圧を印加した場合には、第1コイル32a及び第2コイル32bに直列的に電流が流れる。
また、同じ方向から見た場合において、第1コイル32aの外周端部32a_outから内周端部32a_inに向かう超電導テープ線材の巻回方向は、第2コイル32bの外周端部32b_outから内周端部32b_inに向かう超電導テープ線材の巻回方向と反対の回転方向である。つまり、第1コイル32aの外周端部32a_outから内周端部32a_inに向かう超電導テープ線材の巻回方向は、第2コイル32bの内周端部32b_inから外周端部32b_outに向かう超電導テープ線材の巻回方向と同一の回転方向である。
従って、第1コイル32aの外周端部32a_outから内周端部32a_inに向かって流れる電流の回転方向が例えば時計回り方向である場合、第2コイルの内周端部32b_inから外周端部32b_outに向かって流れる電流の回転方向も時計回り方向である。つまり、第1コイル32aを流れる電流の回転方向が時計周りであるときには第2コイル32bを流れる電流の回転方向も時計周りであり、第1コイル32aを流れる電流の回転方向が反時計周りであるときには第2コイル32bを流れる電流の回転方向も反時計周りであるように、第1コイル32aと第2コイル32bが電気的に直列接続される。なお、本実施形態においては、第1コイル32aの巻き数及び第2コイル32bの巻き数は、ともに5ターンである。
また、第1コイル32a及び第2コイル32bを構成する超電導テープ線材は、超電導状態である場合において、テープ面Sに垂直な方向から磁場が印加されているときの超電導臨界電流値が、テープ面Sに平行な方向から磁場が印加されているときの超電導臨界電流値よりも小さくなるように、形成されている。
超電導コイル32は、非磁性且つ絶縁性の材料からなる巻枠35の外周面に配設される。図6は、超電導コイル32が巻枠35の外周面に配設されている状態を示す図であり、図6(a)が超電導コイル32の巻き軸方向から見た正面図、図6(b)が図6(a)のB−B断面図、図6(c)が図6(a)のC−C断面図、図6(d)が図6(a)D−D断面図である。図6(a)示すように、巻枠35は巻き軸方向から見てレーストラック形状を呈している。この巻枠35の外周面上に超電導テープ線材が巻回される。従って、巻枠35は、超電導コイル32の内周面32in側に配設されていることになる。なお、超電導テープ線材のテープ面が巻枠35の外周面に対面するように、超電導テープ線材が巻枠35に巻回される。本実施形態において、巻枠35の材質は、ガラス繊維強化プラスチックである。
図1及び図2に示すように、本実施形態において、超電導コイル32の第1直線部321は、ステータコア31の内側スロット311内に配設される。一方、超電導コイル32の第2直線部322は、ステータコア31の外側スロット312内に配設される。図7は、超電導コイル32をステータコア31の内側スロット311及び外側スロット312内に配設した状態を示す斜視図である。図1及び図7に示すように、超電導コイル32は、中空円柱状のステータコア31の内周と外周との間を跨ぐように、ステータコア31に対して配設される。このため、超電導コイル32の巻き軸方向は、ステータコア31の周方向にほぼ一致する。
また、超電導コイル32の第1円弧部323は、ステータコア31の一方の端面から突出し、超電導コイル32の第2円弧部324は、ステータコア31の他方の端面から突出する。ステータコア31の両端面から突出した第1円弧部323及び第2円弧部324の幅方向(超電導コイル32の巻き軸方向)における両端面には、強磁性体からなる半円形状のヨーク34が当接されている。図6には、ヨーク34が超電導コイル32及び巻枠35とともに示される。図6(c)及び図6(d)に良く示すように、ヨーク34は、超電導コイル32の第1円弧部323及び第2円弧部324の幅方向(巻き軸方向)における両端面、及び、巻枠35の両端面に接触するように、超電導コイル32に対して配設されている。
また、超電導コイル32をステータコア31に配設したときに、第1コイル32aの外周端部32a_out及び第2コイル32bの外周端部32b_outのいずれか一方が、ステータコア31の内側スロット311から図7において上方に延び、いずれか他方が、ステータコア31の外側スロット312から図7において上方に延びる。内側スロット311から上方に延びている端部を、以下、内側端部32Iと呼び、外側スロット312から上方に延びている端部を、以下、外側端部32Oと呼ぶ。一つの超電導コイル32の内側端部32Iと外側端部32Oは、電気的に接続されている。
図2に示すように、ステータコア31に形成されている全ての内側スロット311及び外側スロット312に、超電導コイル32が配設される。この場合において、1つの超電導コイル32の第1直線部321が配設される内側スロット311と、その超電導コイル32の第2直線部322が配設される外側スロット312は、ステータコア31の中心軸線を通る同一平面上に配設される。すなわち、一つの超電導コイル32の第1直線部321が配設される内側スロット311と、その超電導コイル32の第2直線部322が配設される外側スロット312が、ステータコアの中心軸Oを含む平面上に位置するように、複数の内側スロット311と複数の外側スロット312がステータコア31に形成されている。このため、ステータ3を正面から見たときに、複数の超電導コイル32は、それぞれ、ステータコア31の中心から放射状に延びるように配列する。また、上述したように、内側スロット311及び外側スロット312の個数は24個である。従って、24個の超電導コイル32が、ステータコア31に配設されることになる。
図8は、超電導コイル32が内側スロット311及び外側スロット312に配設されている状態を示す拡大図である。図8に示すように、超電導コイル32の幅方向(巻き軸方向)における第1直線部321の一方の端面(側面)は、内側スロット311の一方の側壁面311bに接触している。また、超電導コイル32の幅方向(巻き軸方向)における第2直線部322の一方の側面(側面)は、外側スロット312の一方の側壁面312bに接触している。第1直線部321の他方の端面(側面)は、内側スロット311の他方の側壁面311cから離間していてもよい。同様に、第2直線部322の他方の端面(側面)は、外側スロット312の他方の側壁面312cから離間していてもよい。
また、超電導コイル32の第1直線部321の内周面は、巻枠35を介して内側スロット311の底壁面311aに対面し、超電導コイル32の第2直線部322の内周面は、巻枠35を介して外側スロット312の底壁面312aに対面する。このとき第1直線部321を構成する超電導線材のテープ面S1は内側スロット311の底壁面311aにほぼ平行であり、第2直線部322を構成する超電導線材のテープ面S2は外側スロット312の底壁面312aにほぼ平行である。底壁面311a及び底壁面312aは、ステータコア31の周方向にほぼ平行である。従って、テープ面S1及びテープ面S2は、ステータコア31の周方向(図8の矢印B方向)にほぼ平行である。
また、超電導コイル32の第1直線部321の内周面(32in)と、それに対向する内側スロット311の底壁面311aとの間の距離は、第1直線部321の一方の端面とそれに対向する内側スロット311の側壁面311bとの間の距離(本実施形態においては両面は接している)及び第1直線部321の他方の端面とそれに対向する内側スロット311の側壁面311cとの間の距離よりも大きくされている。同様に、超電導コイル32の第2直線部322の内周面(32in)と、それに対向する外側スロット312の底壁面312aとの間の距離は、第2直線部322の一方の端面とそれに対向する外側スロット312の側壁面312bとの間の距離(本実施形態において両面は接している)及び第2直線部322の他方の端面とそれに対向する外側スロット312の側壁面312cとの間の距離よりも大きくされている。
本実施形態に係る超電導モータ1は3相モータであり、それぞれの超電導コイル32は、U相コイル、V相コイル、W相コイルのいずれかに割り当てられる。以下、U相コイルを構成する超電導コイルをU相超電導コイル(U+,U−)と呼び、V相コイルを構成する超電導コイルをV相超電導コイル(V+,V−)と呼び、W相コイルを構成する超電導コイルをW相超電導コイル(W+,W−)と呼ぶ。上述したように、ステータコア31には24個の超電導コイル32が配設されている。従って、8個のU相超電導コイル、8個のV相超電導コイル、及び8個のW相超電導コイルが、ステータコア31に配設されていることになる。
本実施形態では、図2に示すように、対のU相超電導コイルU+,U+がステータコア31の周方向に沿って隣接して配置され、対のU相超電導コイルU−、U−がステータコア31の周方向に沿って隣接して配置される。同様に、対のV相超電導コイルV+,V+がステータコア31の周方向に沿って隣接して配置され、対のV相超電導コイルV−,V−がステータコア31の周方向に沿って隣接して配置される。同様に、対のW相超電導コイルW+,W+がステータコア31の周方向に沿って隣接して配置され、対のW相超電導コイルW−,W−がステータコア31の周方向に沿って隣接して配置される。
また、対のU相超電導コイルU+,U+の隣に対のV相超電導コイルV−,V−が配設され、対のV相超電導コイルV−,V−の隣に対のW相超電導コイルW+,W+が配設される。さらに、対のW相超電導コイルW+、W+の隣に対のU相超電導コイルU−,U−が配設され、対のU相超電導コイルU−,U−の隣に対のV相超電導コイルV+,V+が配設され、対のV相超電導コイルV+,V+の隣に対のW相超電導コイルW−,W−が配設される。このように、図2において時計周り方向に沿って、対のU相超電導コイルU+,U+、対のV相超電導コイルV−,V−、対のW相超電導コイルW+,W+、対のU相超電導コイルU−,U−、対のV相超電導コイルV+,V+、対のW相超電導コイルW−,W−、対のU相超電導コイルU+,U+、対のV相超電導コイルV−,V−、対のW相超電導コイルW+,W+、対のU相超電導コイルU−,U−、対のV相超電導コイルV+,V+、対のW相超電導コイルW−,W−、といった順に、各コイルが配設される。
このように各コイルを配置することにより、対のU相超電導コイルU+,U+と対のU相超電導コイルU−,U−が、ステータコア31の周方向に離間して配置され、対のV相超電導コイルV+,V+と対のV相超電導コイルV−,V−が、ステータコア31の周方向に離間して配置され、対のW相超電導コイルW+,W+と対のW相超電導コイルW−,W−が、ステータコア31の周方向に離間して配置される。
この超電導モータ1は、インバータ回路INVに接続される。図9は、超電導モータ1とインバータ回路INVとの接続状態を示す図である。インバータ回路INVは直流電源Vに接続されている。インバータ回路INVは、スイッチ素子としてのトランジスタUH,UL,VH,VL,WH,WLを備える。インバータ回路INVは、トランジスタUHとULが直列接続されたスイッチ直列回路と、トランジスタVHとVLが直列接続されたスイッチ直列回路と、トランジスタWHとWLが直列接続されたスイッチ直列回路が、並列接続されることにより構成される。トランジスタUH,VH,WHのドレイン側は直流電源Vの正極側に接続され、トランジスタUL,VL,WLのソース側が直流電源Vの負極側に接続される。
トランジスタUHのソースとトランジスタULのドレインとの間を結ぶ配線部分UPに、ステータコア31に配設されている1つのU相超電導コイルU+が接続される。トランジスタVHのソースとトランジスタVLのドレインとの間を結ぶ配線部分VPに、ステータコア31に配設されている1つのV相超電導コイルV+が接続される。トランジスタWHのソースとトランジスタWLのドレインとの間を結ぶ配線部分WPに、ステータコア31に配設されている1つのW相超電導コイルW+が接続される。
インバータ回路INVの各トランジスタUH,UL,VH,VL,WH,WLへの通電は、図示しない制御装置によって制御される。これにより、インバータ回路INVから超電導モータ1に3相交流が印加される。超電導モータ1には上述したようにU相超電導コイル、V相超電導コイル、W相超電導コイルが備えられており、これらのコイルがスター結線される。
図10は、ステータコア31に配設される各超電導コイルの配線状態を示す図である。図10に示すように、8個のU相超電導コイルは、U+_1,U+_2,U+_3,U+_4,U−_1,U−_2,U−_3,U−_4として図10に表される。隣接配置したU+_1とU+_2により、第1U+相ペアが構成され、隣接配置したU+_3とU+_4により、第2U+相ペアが構成される。隣接配置したU−_1とU−_2により第1U−相ペアが構成され、隣接配置したU−_3とU−_4により第2U−相ペアが構成される。また、8個のV相超電導コイルは、V+_1,V+_2,V+_3,V+_4,V−_1,V−_2,V−_3,V−_4として図10に表される。隣接配置したV+_1とV+_2により第1V+相ペアが構成され、隣接配置したV+_3とV+_4とより第2V+相ペアが構成される。また、隣接配置したV−_1とV−_2により第1V−相ペアが構成され、隣接配置したV−_3とV−_4により第2V−相ペアが構成される。また、8個のW相超電導コイルは、W+_1,W+_2,W+_3,W+_4,W−_1,W−_2,W−_3,W−_4として図10に表される。隣接配置したW+_1とW+_2により第1W+相ペアが構成され、隣接配置したW+_3とW+_4により第2W+相ペアが構成される。また、隣接配置したW−_1とW−_2により第1W−相ペアが構成され、隣接配置したW−_3とW−_4により第2W−相ペアが構成される。
インバータ回路INVの配線部分UPは、第1U+相ペアの一方のU相超電導コイルU+_1の外側端部32Oに接続される。U相超電導コイルU+_1の内側端部32Iは、第1U+相ペアの他方のU相超電導コイルU+_2の外側端部32Oに接続される。U相超電導コイルU+_2の内側端部32Iは、第1U+相ペアに離間して配設されている第1U−相ペアの一方のU相超電導コイルU−_1の内側端部32Iに接続される。U相超電導コイルU−_1の外側端部32Oは、第1U−相ペアの他方のU相超電導コイルU−_2の内側端部32Iに接続される。さらに、U相超電導コイルU−_2の外側端部32Oは、第1U−相ペアに離間して配置されている第2U+相ペアの一方のU相超電導コイルU+_3の外側端部32Oに接続される。U相超電導コイルU+_3の内側端部32Iは、第2U+相ペアの他方のU相超電導コイルU+_4の外側端部32Oに接続される。U相超電導コイルU+_4の内側端部32Iは、第2U+相ペアに離間して配置されている第2U−相ペアの一方のU相超電導コイルU−_3の内側端部32Iに接続される。U相超電導コイルU−_3の外側端部32Oは、第2U−相ペアの他方のU相超電導コイルU−_4の内側端部32Iに接続される。そして、U相超電導コイルU−_4の外側端部32Oが、N点(図9参照)にてスター結線される。
インバータ回路INVの配線部分VPは、第1V+相ペアの一方のV相超電導コイルV+_1の外側端部32Oに接続される。V相超電導コイルU+_1の内側端部32Iは、第1V+相ペアの他方のV相超電導コイルV+_2の外側端部32Oに接続される。V相超電導コイルV+_2の内側端部32Iは、第1V+相ペアに離間して配設されている第1V−相ペアの一方のV相超電導コイルV−_1の内側端部32Iに接続される。V相超電導コイルV−_1の外側端部32Oは、第1V−相ペアの他方のV相超電導コイルU−_2の内側端部32Iに接続される。V相超電導コイルV−_2の外側端部32Oは、第1V−相ペアに離間して配置されている第2V+相ペアの一方のV相超電導コイルV+_3の外側端部32Oに接続される。V相超電導コイルV+_3の内側端部32Iは、第2V+相ペアの他方のV相超電導コイルV+_4の外側端部32Oに接続される。V相超電導コイルV+_4の内側端部32Iは、第2V+相ペアに離間して配置されている第2V−相ペアの一方のV相超電導コイルV−_3の内側端部32Iに接続される。V相超電導コイルV−_3の外側端部32Oは、第2V−相ペアの他方のV相超電導コイルV−_4の内側端部32Iに接続される。そして、V相超電導コイルV−_4の外側端部32Oが、N点(図9参照)にてスター結線される。
インバータ回路INVの配線部分WPは、第1W+相ペアの一方のW相超電導コイルW+_1の外側端部32Oに接続される。W相超電導コイルW+_1の内側端部32Iは、第1W+相ペアの他方のW相超電導コイルW+_2の外側端部32Oに接続される。W相超電導コイルW+_2の内側端部32Iは、第1W+相ペアに離間して配設されている第1W−相ペアの一方のW相超電導コイルW−_1の内側端部32Iに接続される。W相超電導コイルW−_1の外側端部32Oは、第1W−相ペアの他方のW相超電導コイルW−_2の内側端部32Iに接続される。W相超電導コイルW−_2の外側端部32Oは、第1W−相ペアに離間して配置されている第2W+相ペアの一方のW相超電導コイルW+_3の外側端部32Oに接続される。W相超電導コイルW+_3の内側端部32Iは、第2W+相ペアの他方のW相超電導コイルW+_4の外側端部32Oに接続される。W相超電導コイルW+_4の内側端部32Iは、第2W+相ペアに離間して配置されている第2W−相ペアの一方のW相超電導コイルW−_3の内側端部32Iに接続される。W相超電導コイルW−_3の外側端部32Oは、第2W−相ペアの他方のW相超電導コイルW−_4の内側端部32Iに接続される。そして、W相超電導コイルW−_4の外側端部32Oが、N点(図9参照)にてスター結線される。
各超電導コイル32が上記のように接続されることにより、全てのU相超電導コイルが直列接続され、全てのV相超電導コイルが直列接続され、全てのW相超電導コイルが直列接続される。また、U相超電導コイルU+_1,U+_2,U+_3,U+_4を流れる電流の向きが同じ向きにされ、V相超電導コイルV+_1,V+_2,V+_3,V+_4を流れる電流の向きが同じ向きにされ、W相超電導コイルW+_1,W+_2,W+_3,W+_4を流れる電流の向きが同じ向きにされる。また、U相超電導コイルU−_1,U−_2,U−_3,U−_4を流れる電流の向きが同じ向きにされ、V相超電導コイルV−_1,V−_2,V−_3,V−_4を流れる電流の向きが同じ向きにされ、W相超電導コイルW−_1,W−_2,W−_3,W−_4を流れる電流の向きが同じ向きにされる。さらに、U相超電導コイルU+_1,U+_2,U+_3,U+_4を流れる電流の向きと、U相超電導コイルU−_1,U−_2,U−_3,U−_4を流れる電流の向きは反対にされ、V相超電導コイルV+_1,V+_2,V+_3,V+_4を流れる電流の向きと、V相超電導コイルV−_1,V−_2,V−_3,V−_4を流れる電流の向きは反対にされ、W相超電導コイルW+_1,W+_2,W+_3,W+_4を流れる電流の向きと、W相超電導コイルW−_1,W−_2,W−_3,W−_4を流れる電流の向きが反対にされる。
上記構成の超電導モータ1を駆動させる場合、まず、各超電導コイル32及び籠形導体52を超電導状態にする。そして、インバータ回路INVを作動させて3相交流を超電導モータ1に印加する。すると、各超電導コイル32に電流が流れることによって、ステータコア31に回転磁界が発生する。発生した回転磁界に誘導されるようにロータ5内のロータバー522に誘導電流が流れる。ロータバー522に流れた誘導電流が回転磁界に作用することによりロータコア51が回転する。このようにして、超電導モータ1が駆動される。
図11は、超電導モータ1の駆動時のある瞬間における、ステータコア31及びロータコア51内で発生する磁場の解析結果を示す図である。図11において、白く示される部分が、磁場強度の高い部分である。図11に示すように、内周ティース313には、ステータコア31の径方向に沿って磁束が通過していることがわかる。さらに、ステータコア31の右半面の磁束分布とステータコアの左半面の磁束分布がほぼ対称的である。
ちなみに、本実施形態においては、超電導コイル32がステータコア31の内周側から外周側を跨ぐように、つまりステータコア31の径方向に巻きつけられている。従って、超電導コイル32の巻き軸方向がステータコア31の周方向に沿う。この場合、超電導コイル32に通電することにより生じる磁界の向きがステータコア31の周方向にされる。ただし、例えばV相超電導コイルV+への通電により生じる磁界の向きと、V相超電導コイルV−への通電により生じる磁界の向きは反対向きであるために、これらの磁界の相互作用により磁界の向きがステータコア31の径方向にされる。このようにして、内周ティース313にてステータコア31の径方向に沿って磁束が通過する。
ところで、超電導モータ1を駆動させた場合には、ステータコア31(磁性体)の鏡像効果によって、内側スロット311内の磁場及び外側スロット312内の磁場がステータコア31の周方向に沿って強められる。従って、内側スロット311内及び外側スロット312内にて鏡像効果により発生する磁場の向き(磁束線の方向)は、ステータコア31の周方向にほぼ一致する。ここで、図8に示すように、本実施形態において、内側スロット311内に配設される超電導コイル32の第1直線部321を構成する超電導テープ線材のテープ面S1は、ステータコア31の周方向に平行、すなわち内側スロット311内にて鏡像効果により生じる磁場の方向に平行である。つまり、内側スロット311内にて鏡像効果により発生する磁場が、第1直線部321を構成する超電導テープ線材のテープ面S1に平行な方向から超電導コイル32に進入する。また、外側スロット312内に配設される超電導コイル32の第2直線部322を構成する超電導テープ線材のテープ面S2は、ステータコア31の周方向に平行、すなわち外側スロット312内にて鏡像効果により生じる磁場の方向に平行である。つまり、外側スロット312内にて鏡像効果により発生する磁場が、第2直線部322を構成する超電導テープ線材のテープ面S2に平行な方向から超電導コイル32に進入する。
一般に、超電導コイルに磁場が進入すると、超電導コイルの超電導特性が低下する。特に、超電導臨界電流値が低下する。この超電導特性の低下の大きさ(度合い)は、超電導コイルに進入する磁場の方向によって変化する。具体的には、超電導コイルを構成する超電導テープ線材のテープ面に垂直な方向から磁場が進入した場合、超電導コイルの超電導特性が大きく低下し、超電導テープ線材のテープ面に平行な方向から磁場が進入した場合、超電導コイルの超電導特性の低下量は小さい。本実施形態によれば、鏡像効果により生じる磁場が超電導テープ線材のテープ面に平行な方向から超電導コイルに進入するように構成されているために、鏡像効果により生じる磁場による超電導コイルの超電導特性の低下量を低減することができる。
図12は、比較例に係るステータC1の正面図である。このステータC1は、ステータコアC11及び複数の超電導コイルC12を備える。超電導コイルC12は、本実施形態に係る超電導コイル32と同様に、超電導テープ線材が巻回されることにより形成されるレーストラック型超電導コイルである。ステータコアC11は、中空円柱形状に形成されており、その内周壁には軸方向に延設された12個のスロットC13が周方向に沿って形成される。それぞれのスロットC13には、1つの超電導コイルの一方の直線部と、その超電導コイルに隣接配置される超電導コイルの他方の直線部が配設される。また、1つのスロットC13に配設されている2つの超電導コイルC12,C12が干渉しないように、各スロットC13内に磁性体よりなるヨークC14が配設されている。また、隣接するスロットC13,C13間に、ティースC15が形成される。なお、比較例に係る超電導コイルC12の巻き数は20ターンである。
図13は、ステータコアC11のスロットC13及びそのスロットC13に配設されている超電導コイルC12の拡大図である。図12及び図13に示すように、超電導コイルC12を構成する超電導テープ線材が、隣接配置した2つのスロットC13,C13の間に形成されるティースC15に巻き付けられる。つまり、超電導コイルC12が集中巻きされる。このとき、超電導コイルC12を構成する超電導テープ線材のテープ面S3が、スロットC13を構成する一方の側壁面C131に対面するように、超電導テープ線材がティースC15に巻回される。側壁面C131は、ステータコアC11の径方向に平行に形成されている。従って、比較例に係るステータC1においては、超電導コイルC12を構成する超電導テープ線材のうちスロットC13に配設される部分のテープ面S3は、ステータコアC11の径方向に平行、すなわちステータコア31の周方向(図13の矢印C方向)に垂直に配置する。
比較例においては、超電導コイルC12のうちスロットC13内に配設される部分を構成する超電導テープ線材のテープ面S3が、スロットC13内にて鏡像効果により生じる磁場の方向に垂直に配置している。つまり、スロットC13内にて鏡像効果により発生する磁場が超電導テープ線材のテープ面S3に垂直な方向から超電導コイルC12に進入する。従って、スロットC13内にて鏡像効果により発生する磁場によって超電導コイルの超電導特性が大きく低下してしまう。これに対し、本実施形態に係る超電導モータ1によれば、上述したように内側スロット311内及び外側スロット312内にて鏡像効果により発生する磁場が、超電導テープ線材のテープ面(S1,S2)に平行な方向から超電導コイル32に進入するため、超電導コイル32の超電導特性の低下の度合いは小さい。よって、超電導コイル32により多くの電流を流すことができる。その結果、比較例に対し、モータトルクを高めることができる。つまり、本実施形態に係る超電導モータ1によれば、鏡像効果によるモータトルクの低下が少なくされる。
図14は、比較例に係るステータC1を用いた超電導モータを駆動させた場合における、ステータコアC11及びロータコア内にて発生する磁場の解析結果を示す図である。図14に示すように、比較例に係る超電導モータのティースC15における磁場強度は、本実施形態に係る超電導モータ1の内周ティース313における磁場強度よりも弱い。
図15は、本実施形態に係る超電導モータ1を駆動させた場合におけるU相超電導コイル(U+,U−)に流れる電流の向きが示された、ステータ3及びロータ5の正面図である。図15に示すように、U相超電導コイルU+に流れる電流の向きと、U相超電導コイルU−に流れる電流の向きは、反対である。また、U相超電導コイルU+とU相超電導コイルU−は、複数の内周ティース313を挟んで離間して配置されている。U相超電導コイルのこのような電流の流れの状態は、U相超電導コイルが複数の内周ティース313を跨いで分布巻きされている場合における電流の流れの状態に等しい。すなわち、本実施形態に係る超電導コイル32は、ステータコア31に擬似的に分布巻きされている。
また、本実施形態においては、それぞれの超電導コイル32がステータコア31の径方向に沿ってステータコア31に巻かれている、つまり巻き軸方向がステータコア31の周方向に沿うように、超電導コイル32がステータコア31に配設されている。このため、それぞれの超電導コイル32は他の超電導コイル32と干渉しない。換言すれば、他の超電導コイル32との干渉を考慮することなく、且つ、超電導コイル32を変形させることなく、容易に超電導コイル32を分布巻きすることができる。こうして超電導コイル32を分布巻きすることで、ステータ3とロータ5との間のエアギャップの磁束密度分布に含まれる空間高調波成分を低減することができる。
図16は、本実施形態に係る超電導モータ1のステータ3とロータ5との間のエアギャップにおける磁束密度分布の第5次高調波成分(空間高調波成分)の大きさと、比較例に係るステータC1を用いた超電導モータのステータC1とロータとの間のエアギャップにおける磁束密度分布の第5次高調波成分(空間高調波成分)の大きさとを比較したグラフである。図16の縦軸は、磁束密度の径方向成分Brを角度に対してプロットしたグラフから得られる基本波の振幅に対する第5次高調波成分の振幅の比である。図16から明らかなように、本実施形態に係る超電導モータ1においては、空間高調波の振幅が小さい。つまり、空間高調波の増大が抑えられている。よって、本実施形態に係る超電導モータ1においては、空間高調波によるトルクの低下が小さくされ、且つトルクリップルが十分に低減されることがわかる。
図17は、比較例に係るステータを用いた超電導モータのモータトルクを1とした場合における本実施形態に係る超電導モータ1のモータトルク比を示すグラフである。なお、モータ回転数は300r.p.mとした。これによれば、本実施形態に係る超電導モータ1により発生されるトルクの大きさは、比較例に係るステータC1を用いた超電導モータにより発生されるトルクの大きさの約1.25倍である。この結果から、本実施形態に係る超電導モータ1によれば、従来の超電導モータと比較して、トルクの大きさを25%程度向上できることがわかる。
このように、本実施形態によれば、ステータコア31の内周側に複数の内側スロット311が、ステータコア31の外周側に複数の外側スロット312が、それぞれ形成されるとともに、ステータコア31の内周側と外周側とを跨ぐように、すなわちステータコア31の径方向に沿って巻かれるように、超電導コイル32が内側スロット311内及び外側スロット312内に配設される。具体的には、レーストラック形状の超電導コイル32の第1直線部321が内側スロット311内に配設され、第2直線部322が外側スロット312内に配設される。このため、他の超電導コイルとの干渉を考慮することなく容易且つ自由に超電導コイル32をステータコア31に分布巻きすることができる。こうして自由に超電導コイル32をステータコア31に分布巻きすることにより、ステータ3とロータ5との間のエアギャップの磁束密度の空間高調波成分を低減することができる。また、内側スロット311内及び外側スロット312内で超電導コイル32(第1直線部321、第2直線部322)を構成する超電導テープ線材のテープ面がステータコア31の周方向に平行な方向を向くように超電導コイル32が両スロット内に配設されるため、ステータコア31の鏡像効果による超電導コイル32の超電導特性の悪化を抑えることができる。以上のことから、本実施形態によれば、空間高調波の低減及び鏡像効果による超電導特性の悪化を共に抑えることにより、モータトルクの低下が少なく、且つトルクリップルが低減された超電導モータ(超電導回転電機)、及び、そのような超電導モータを構成するためのステータ(超電導回転電機ステータ)を提供することができる。
また、本実施形態によれば、超電導コイル32の巻き数(ターン数)を増加した場合、超電導コイル32の大きさがステータコア31の径方向に増大し、ステータコア31の周方向には増大しない。このため、巻き数の増加によりステータコアのティースの幅を狭める必要がない。よって、ティースの磁気飽和を抑制することができる。
さらに、本実施形態によれば、それぞれの超電導コイルどうしの干渉を考慮することなく分布巻きすることができるため、特許文献2のように超電導コイルを分布巻きした場合と比較して、スロット(内側スロット311、外側スロット312)内の余剰空間、すなわちスロット内において超電導コイルが存在していない空間の割合が小さい。このため、スロット内の空間からの漏れリアクタンスを減少することができる。
また、本実施形態によれば、超電導コイル32の第1円弧部323及び第2円弧部324に、強磁性体からなるヨーク34が当接されている。このため、超電導コイル32自身が発生する磁場による臨界電流密度の低下に起因した超電導コイル32のクエンチの発生を防止することができる。
さらに、本実施形態によれば、ステータコア31の外周側に銅製の外周スリーブ33が設けられている。そのため、外周スリーブ33内で渦電流が発生することによって、ステータコア31内の磁束がステータコア31の外周面から外周スリーブ33を経て外部に漏れることが防止される。よって、ステータコア31内の磁束密度をさらに高めることができる。
さらに、本実施形態によれば、超電導コイル32の第1直線部321の一方の端面(側面)が、内側スロット311の一方の側壁面311bに接触しており、超電導コイル32の第2直線部322の一方の端面(側面)が、外側スロット312の一方の側壁面312bに接触している。このため、内側スロット311内及び外側スロット312内にて鏡像効果により生じた磁場が、ほぼ確実に、超電導コイル32を構成する超電導テープ線材のテープ面に平行な方向から超電導コイル32に進入する。このため、内側スロット311及び外側スロット312内にて鏡像効果によって生じる磁場の影響に起因した超電導コイル32の超電導特性の低下を十分に抑えることができる。
さらに、本実施形態によれば、図15に示すように、同相であって同じ方向に電流が流れる超電導コイルを隣接して配置することできる。例えばU相超電導コイルU+を2つあるいはそれ以上に分割して隣接配置することができる。このように同じ方向に電流が流れる超電導コイルを分割して隣接配置することにより、ステータコア内の起磁力分布を正弦波に近づけることができ、その結果、ステータ3とロータ5との間のエアギャップにおける磁束分布に含まれる空間高調波成分をさらに低減することができる。
さらに、本実施形態によれば、超電導コイル32の第1直線部321の内周面(32in)とそれに対向する内側スロット311の底壁面311aとの間の距離が、第1直線部321の幅方向における一方の端面とそれに対向する内側スロットの側壁面311bとの間の距離及び第1直線部321の他方の端面とそれに対向する内側スロット311の側壁面311cとの間の距離よりも大きくされている。また、超電導コイル32の第2直線部322の内周面(32i)とそれに対向する外側スロット312の底壁面312aとの間の距離が、第2直線部322の幅方向における一方の端面とそれに対向する外側スロット312の側壁面312bとの間の距離及び第2直線部322の他方の端面とそれに対向する外側スロット312の側壁面312cとの間の距離よりも大きくされている。このため、超電導コイル32の内周面から超電導テープ線材のテープ面に垂直に磁場が進入することを防止することができる。
さらに、本実施形態に係る超電導コイル32を構成する超電導テープ線材は、テープ面に垂直な方向から磁場が印加されているときの超電導臨界電流値が、テープ面に平行な方向から磁場が印加されているときの超電導臨界電流値よりも小さくなるように形成されている。従って、ステータコア31の鏡像効果によって内側スロット311又は外側スロット312にて生じる磁場が超電導コイル32に進入した場合における超電導臨界電流値は、磁場がテープ面に垂直な方向から進入する場合と比較して大きい。よって、より多くの電流を超電導コイルに流すことができる。
さらに、本実施形態によれば、超電導モータ1のロータ5に備えられる籠形導体52が超電導材料により形成されているため、籠形導体52に大きな電流を流すことができる。よって、超電導モータ1のトルクをより一層大きくすることができる。また、籠形導体52に電流が流れた場合におけるジュール損失がほとんど無いために、モータ効率をさらに向上させることができる。
(第2実施形態)
図18は、第2実施形態に係る超電導モータのステータ3Aの正面図である。この超電導モータのステータ3Aには、第1実施形態にて示した外周スリーブ33が設けられていない。その他の構成については第1実施形態と同様であるので、その具体的説明は省略する。本実施形態に係る超電導モータは、外周スリーブ33を設けることによる効果を除き、第1実施形態に係る超電導モータと同様の作用効果を奏する。
(第3実施形態)
図19は、第3実施形態に係る超電導モータのステータ3Bの正面図である。この超電導モータのステータ3Bに設けられている外周スリーブ33Bは、超電導材料により構成されている。それ以外の構成については第1実施形態と同様であるので、その具体的説明は省略する。
本実施形態に係る超電導モータにおいても、上記第1実施形態に係る超電導モータと同様の作用効果を有する。また、外周スリーブ33Bの材質が、反磁性体である超電導材料であるため、ステータコア31内の磁束は、外周スリーブ33Bを通過することができない。このため、ステータコア31内の磁束が外周スリーブ33Bを経て外部に漏れることが確実に防止される。
(第4実施形態)
図20は、第4実施形態に係る超電導モータのステータ3Cの正面図である。図20からわかるように、本実施形態に係る超電導モータのステータ3Cは、ステータコア31C及び超電導コイル32を備える。ステータコア31Cは中空円柱形状に形成されている。図21は、ステータコア31Cの正面図である。図21に示すように、ステータコア31Cの内周壁面に複数の内側スロット311Cが形成され、ステータコア31Cの外周壁面に複数の外側スロット312Cが形成される。
また、図20に示すように、超電導コイル32は、上記第1実施形態と同様に、ステータコア31Cの内側スロット311C内に配設される第1直線部321と、ステータコア31Cの外側スロット312C内に配設される第2直線部322とを有する。この場合において、一つの超電導コイル(例えば図20に示す超電導コイル32S)の第1直線部321が配設されている内側スロット311Cの周方向における中心位置とステータコア31Cの中心軸Oとを通る平面P1と、その超電導コイル(32S)の第2直線部322が配設されている外側スロット312Cとステータコア31Cの中心軸Oとを通る平面P2とは、異なる平面である。
また、図20に示すように、全ての超電導コイル32は、ステータコア31Cの径方向に対して一定の角度だけ傾斜した状態で、ステータコア31Cに配設されている。その他の構成については第1実施形態と同様であるため、その具体的説明は省略する。
本実施形態に係るステータ3Cを用いた超電導モータは、上記第1実施形態に係る超電導モータ1と同様の作用効果を奏する。また、上記第1実施形態においては、ステータコア31の径方向における同じ位置に内側スロット311と外側スロット312とが存在しているので、周方向に沿った磁束の通過断面積は、内側スロット311と外側スロット312が存在する周方向位置にてかなり小さくされている。これに対し、本実施形態においては、径方向における同じ位置に内側スロット311Cと外側スロット312Cが存在しない。従って、周方向に沿った磁束の通過断面積が均一化される。これにより、磁束の通過断面積が小さいことに起因した磁気飽和を効果的に防止することができる。
以上、本発明の様々な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、本発明に係るステータを図22のように構成してもよい。図22に示すステータ3Dのステータコア31Dには、図22に示す方向から見て、同相の対の超電導コイルがV字状に配設されている。つまり、同相の対の超電導コイルがV字状に配設されるように、内側スロット311Dと外側スロット312Dがステータコア31Dに形成されている。このようなステータ3Dを用いた超電導モータであっても、上記した各実施形態に係る超電導モータによりもたらされる作用効果と同様の作用効果を奏することができる。また、上記第1実施形態では、超電導モータ1が誘導モータである例を説明したが、本発明に係る超電導モータ(超電導回転電機)は同期モータでも良い。この場合、ロータは、磁場を発生する界磁部を備え、ステータの回転磁界が界磁部により発生された磁場に作用することにより、回転するように構成される。また、この場合、界磁部は、永久磁石、超電導体、コイルの少なくとも一つにより構成されるとよい。また、上記第1実施形態では、ステータ3の内周側にロータ5が配設される例について説明したが、ロータは、ステータの外周側に配設されていても良い。この場合、ステータコアの内周壁に接触する内周スリーブをステータコアの内周側に設けておくとよい。また、上記第1実施形態に係る外周スリーブ33の材質は銅であるが、外周スリーブ33の材質はアルミニウムでも良い。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。