(第一実施形態)
以下、本発明の参考例である第一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る超電導回転電機ステータ3を用いた超電導モータ1(超電導回転電機)の回転軸方向を含む断面図である。この超電導モータ1は誘導モータである。図1に示すように、超電導モータ1は、ケーシング2と、超電導回転電機ステータ3と、ブラケット4a,4bと、ロータ5とを備える。
超電導回転電機ステータ3は、ステータコア31と、複数の超電導コイル32と、外周スリーブ33とを有する。ステータコア31は、内周壁面31in及び外周壁面31outを有する中空円柱状(円筒状)に形成される。外周スリーブ33は円筒状に形成され、その内周面がステータコア31の外周壁面31outに対面接触するように、ステータコア31の外周側に配設される。外周スリーブ33は、非磁性の材料により形成される。本実施形態では、外周スリーブ33の材質は銅である。
ロータ5は、ステータコア31の内周側に、ステータコア31と離間して配置される。ロータ5は、ロータコア51と、籠形導体52と、回転軸53とを有する。ロータコア51は、環状の電磁鋼板を積層することにより中空円柱形状に形成され、ステータコア31の内周側にステータコア31と同軸的に配設される。ロータコア51の外周面が、ステータコア31の内周壁面31inに対面する。ロータコア51の軸中心部には、回転軸受容孔51aが形成されており、この回転軸受容孔51aに回転軸53が挿入される。回転軸53は、ロータコア51と一体的に回転するようにロータコア51に取り付けられる。
籠形導体52は、対向配置した一対のエンドリング521,521と、両エンドリング521,521を接続するように、エンドリング521の周方向に沿って配列された複数のロータバー522とを有する。ここで、ロータコア51の外周近傍には、軸方向に貫通する複数の貫通孔51bが、周方向に等間隔に形成されており、それぞれの貫通孔51bにロータバー522が挿通される。そして、一方のエンドリング521がロータコア51の一方の端面から突き出るように配置され、他方のエンドリング521がロータコア51の他方の端面から突き出るように配置される。このため、一方のエンドリング521がロータコア51の一方の軸方向端面に対面し、他方のエンドリング521がロータコア51の他方の軸方向端面に対面する。本実施形態において、一対のエンドリング521,521及びロータバー522は、超電導材料により形成される。
ケーシング2は、超電導回転電機ステータ3(より厳密には、外周スリーブ33)の外周を覆うように円筒状に形成される。ブラケット4a,4bは、それぞれ略円板形状を呈し、ケーシング2の開口している2つの端部にそれぞれ嵌め合わされる。ブラケット4aの中央部には、回転軸53を貫通させるための貫通孔4cが設けられる。なお、ブラケット4a,4bには、回転軸53を回転自在に支持するベアリング等の軸受け6a,6bが設けられる。
図2は、超電導回転電機ステータ3及びロータ5を、図1のA方向から見た正面図である。また、図3は、ステータコア31を図1のA方向から見た正面図である。図3に良く示すように、中空円柱状のステータコア31は、内周壁面31in及び外周壁面31outを有する。また、ステータコア31には、複数の内側スロット311と複数の外側スロット312が形成される。複数の内側スロット311は、ステータコア31の内周壁面31inに周方向に沿って一定の間隔を開けて形成される。内側スロット311は、ステータコア31の軸方向における両端面間に亘ってステータコア31の軸方向に延設される凹溝である。隣接する一対の内側スロット311,311間に、内周ティース313が形成される。また、複数の外側スロット312は、ステータコア31の外周壁面31outに周方向に沿って一定の間隔を開けて形成される。外側スロット312は、ステータコア31の軸方向における両端面間に亘ってステータコア31の軸方向に延設される凹溝である。
各内側スロット311は、正面視にて矩形形状を呈する。各内側スロット311は、3つの内壁面(底壁面311a及び両側壁面311b,311c)を有し、ステータコア31の径内方に向けて開口している。底壁面311aはステータコア31の周方向にほぼ平行であり、両側壁面311b,311cはステータコア31の周方向にほぼ垂直である。
また、各外側スロット312も正面視にて矩形形状を呈する。各外側スロット312は、3つの内壁面(底壁面312a及び両側壁面312b,312c)を有し、ステータコア31の径外方に向けて開口している。底壁面312aはステータコア31の周方向にほぼ平行であり、両側壁面312b、312cはステータコア31の周方向にほぼ垂直である。
本実施形態においては、24個の内側スロット311及び24個の外側スロット312が、ステータコア31に形成されている。従って、ステータコア31の中心軸方向から見て、15°間隔で内側スロット311及び外側スロット312が形成されている。また、ステータコア31の中心軸Oと一つの内側スロット311の周方向における中心位置とを通る平面Hは、一つの外側スロット312の周方向における中心位置を通る。つまり、ステータコア31の中心軸Oを通る平面上に、1つの内側スロット311と1つの外側スロット312が配設される。
図4は、超電導コイル32の斜視図である。超電導コイル32は、所謂レーストラック型超電導コイルである。超電導コイル32は、直線状に形成された第一直線部321(内側部分)と、直線状に形成されるとともに第一直線部321に対向配置する第二直線部322(外側部分)と、円弧状に形成され第一直線部321の一方の端部と第二直線部322の一方の端部とを接続する第一円弧部323と、円弧状に形成され第一直線部321の他方の端部と第二直線部322の他方の端部とを接続するとともに第一円弧部323に対向配置する第二円弧部324とを備え、その外径形状が、対向する直線部分を有する長円状(レーストラック形状)である。
また、超電導コイル32は、2つのレーストラック型超電導コイル(第1コイル32a,第2コイル32b)を軸方向に積層させることにより形成される。図5は、積層状態における第1コイル32aと第2コイル32bをそれぞれ同一の積層方向から見た図である。図5に示すように、第1コイル32a及び第2コイル32bは、長尺平板状(テープ形状)を有し且つ表面が絶縁被覆された超電導テープ線材が、レーストラック形状に巻回されることにより形成される。
超電導テープ線材を構成する超電導体は、本実施形態では高温超電導体である。また、超電導テープ線材の表面のうち、長手方向に垂直な方向における長さが長い面、すなわち幅広の面をテープ面Tと定義する。超電導テープ線材は、テープ面Tに平行な方向に折り曲げることができない。従って、第1コイル32a及び第2コイル32bは、超電導テープ線材がそのテープ面Tに垂直な方向に積層されるように、超電導テープ線材を巻回することにより形成される。
第1コイル32aは、内周端部32a_in及び外周端部32a_outを有し、第2コイル32bは、内周端部32b_in及び外周端部32b_outを有する。第1コイル32aの内周端部32a_inと第2コイル32bの内周端部32b_inは、図示しない導電性の接続部材により接続される。よって、第1コイル32aと第2コイル32bは電気的に直列接続されており、第1コイル32aの外周端部32a_outと第2コイル32bの外周端部32b_outとの間に電圧を印加した場合には、第1コイル32a及び第2コイル32bに直列的に電流が流れる。
また、同じ方向から見た場合において、第1コイル32aの外周端部32a_outから内周端部32a_inに向かう超電導テープ線材の巻回方向は、第2コイル32bの外周端部32b_outから内周端部32b_inに向かう超電導テープ線材の巻回方向と反対の回転方向である。つまり、第1コイル32aの外周端部32a_outから内周端部32a_inに向かう超電導テープ線材の巻回方向は、第2コイル32bの内周端部32b_inから外周端部32b_outに向かう超電導テープ線材の巻回方向と同一の回転方向である。
従って、第1コイル32aの外周端部32a_outから内周端部32a_inに向かって流れる電流の回転方向が例えば時計回り方向である場合、第2コイルの内周端部32b_inから外周端部32b_outに向かって流れる電流の回転方向も時計回り方向である。つまり、第1コイル32aを流れる電流の回転方向が時計周りであるときには第2コイル32bを流れる電流の回転方向も時計周りであり、第1コイル32aを流れる電流の回転方向が反時計周りであるときには第2コイル32bを流れる電流の回転方向も反時計周りであるように、第1コイル32aと第2コイル32bが電気的に直列接続される。なお、本実施形態においては、第1コイル32aの巻き数及び第2コイル32bの巻き数は、ともに5ターンである。
また、第1コイル32a及び第2コイル32bを構成する超電導テープ線材は、超電導状態である場合において、テープ面Tに垂直な方向から磁場が印加されているときの超電導臨界電流値が、テープ面Tに平行な方向から磁場が印加されているときの超電導臨界電流値よりも小さくなるように、形成されている。
超電導コイル32は、非磁性且つ絶縁性の材料からなる巻枠35の外周面に配設される。図6は、超電導コイル32が巻枠35の外周面に配設されている状態を超電導コイル32の巻き軸方向から見た正面図である。図6に示すように、巻枠35は巻き軸方向から見てレーストラック形状を呈している。この巻枠35の外周面上に超電導テープ線材が巻回される。従って、巻枠35は、超電導コイル32の内周面側に配設されていることになる。なお、超電導テープ線材のテープ面が巻枠35の外周面に対面するように、超電導テープ線材が巻枠35に巻回される。本実施形態において、巻枠35の材質は、ガラス繊維強化プラスチックである。
図1及び図2に示すように、本実施形態において、超電導コイル32の第一直線部321は、ステータコア31の内側スロット311内に配設される。一方、超電導コイル32の第二直線部322は、ステータコア31の外側スロット312内に配設される。図7は、超電導コイル32をステータコア31の一部の内側スロット311及び外側スロット312内に配設した状態を示す斜視図である。図1及び図7に示すように、超電導コイル32は、中空円柱状のステータコア31の内周と外周との間を跨ぐように、ステータコア31に対して配設される。このため、超電導コイル32の巻き軸方向は、ステータコア31の周方向にほぼ一致する。
また、超電導コイル32の第一円弧部323は、ステータコア31の一方の端面から突出し、超電導コイル32の第二円弧部324は、ステータコア31の他方の端面から突出する。ステータコア31の両端面から突出した第一円弧部323及び第二円弧部324の幅方向(超電導コイル32の巻き軸方向)における両端面には、強磁性体からなる半円形状のヨーク34が当接されている。図6には、ヨーク34が超電導コイル32及び巻枠35とともに示される。
図2に示すように、ステータコア31に形成されている全ての内側スロット311及び外側スロット312に、超電導コイル32が配設される。この場合において、1つの超電導コイル32の第一直線部321が配設される内側スロット311と、その超電導コイル32の第二直線部322が配設される外側スロット312は、ステータコア31の中心軸線を通る同一平面上に配設される。すなわち、一つの超電導コイル32の第一直線部321が配設される内側スロット311と、その超電導コイル32の第二直線部322が配設される外側スロット312が、ステータコアの中心軸Oを含む平面上に位置するように、複数の内側スロット311と複数の外側スロット312がステータコア31に形成されている。このため、超電導回転電機ステータ3を正面から見たときに、複数の超電導コイル32は、それぞれ、ステータコア31の中心から放射状に延びるように配列する。また、上述したように、内側スロット311及び外側スロット312の個数は24個である。従って、24個の超電導コイル32が、ステータコア31に配設されることになる。
図8は、超電導コイル32が内側スロット311及び外側スロット312に配設されている状態を示す拡大図である。図8に示すように、超電導コイル32の幅方向(巻き軸方向)における第一直線部321の一方の端面(側面)は、内側スロット311の一方の側壁面311bに接触している。また、超電導コイル32の幅方向(巻き軸方向)における第二直線部322の一方の側面(側面)は、外側スロット312の一方の側壁面312bに接触している。第一直線部321の他方の端面(側面)は、内側スロット311の他方の側壁面311cに接触しているのが好ましいが、側壁面311cから離間していてもよい。同様に、第二直線部322の他方の端面(側面)は、外側スロット312の他方の側壁面312cに接触しているのが好ましいが、側壁面312cから離間していてもよい。
また、超電導コイル32の第一直線部321の内周面は、巻枠35を介して内側スロット311の底壁面311aに対面し、超電導コイル32の第二直線部322の内周面は、巻枠35を介して外側スロット312の底壁面312aに対面する。このとき第一直線部321を構成する超電導テープ線材のテープ面T1は内側スロット311の底壁面311aにほぼ平行であり、第二直線部322を構成する超電導テープ線材のテープ面T2は外側スロット312の底壁面312aにほぼ平行である。底壁面311a及び底壁面312aは、ステータコア31の周方向にほぼ平行である。従って、テープ面T1及びテープ面T2は、ステータコア31の周方向(図8の矢印B方向)にほぼ平行である。
本実施形態に係る超電導モータ1は3相モータであり、それぞれの超電導コイル32は、U相コイル、V相コイル、W相コイルのいずれかに割り当てられる。以下、U相コイルを構成する超電導コイルをU相超電導コイルと呼び、V相コイルを構成する超電導コイルをV相超電導コイルと呼び、W相コイルを構成する超電導コイルをW相超電導コイルと呼ぶ。上述したように、ステータコア31には24個の超電導コイル32が配設されている。従って、8個のU相超電導コイル、8個のV相超電導コイル、及び8個のW相超電導コイルが、ステータコア31に配設されていることになる。8個のU相超電導コイルはそれぞれ電気的に直列接続され、8個のV相超電導コイルはそれぞれ電気的に直列接続され、8個のW相超電導コイルはそれぞれ電気的に直列接続される。
上記構成の超電導モータ1を駆動させる場合、まず、各超電導コイル32及び籠形導体52を超電導状態にする。そして、3相交流を超電導モータ1に印加する。すると、各超電導コイル32に電流が流れることによって、ステータコア31に回転磁界が発生する。発生した回転磁界に誘導されるようにロータ5内のロータバー522に誘導電流が流れる。ロータバー522に流れた誘導電流が回転磁界に作用することによりロータコア51が回転する。このようにして、超電導モータ1が駆動される。
図9は、超電導モータ1の駆動時のある瞬間における、ステータコア31及びロータコア51内で発生する磁場の解析結果を示す図である。図9において、白く示される部分が、磁場強度の高い部分である。図9に示すように、内周ティース313には、ステータコア31の径方向に沿って磁束が通過していることがわかる。さらに、ステータコア31の右半面の磁束分布とステータコアの左半面の磁束分布がほぼ対称的である。
ところで、超電導モータ1を駆動させた場合には、ステータコア31(磁性体)の鏡像効果によって、内側スロット311内の磁場及び外側スロット312内の磁場がステータコア31の周方向に沿って強められる。従って、内側スロット311内及び外側スロット312内にて鏡像効果により発生する磁場の向き(磁束線の方向)は、ステータコア31の周方向にほぼ一致する。ここで、図8に示すように、本実施形態において、内側スロット311内に配設される超電導コイル32の第一直線部321を構成する超電導テープ線材のテープ面T1は、ステータコア31の周方向に平行、すなわち内側スロット311内にて鏡像効果により生じる磁場の方向に平行である。つまり、内側スロット311内にて鏡像効果により発生する磁場が、第一直線部321を構成する超電導テープ線材のテープ面T1に平行な方向から超電導コイル32に進入する。また、外側スロット312内に配設される超電導コイル32の第二直線部322を構成する超電導テープ線材のテープ面T2は、ステータコア31の周方向に平行、すなわち外側スロット312内にて鏡像効果により生じる磁場の方向に平行である。つまり、外側スロット312内にて鏡像効果により発生する磁場が、第二直線部322を構成する超電導テープ線材のテープ面T2に平行な方向から超電導コイル32に進入する。
一般に、超電導コイルに磁場が進入すると、超電導コイルの超電導特性が低下する。特に、超電導臨界電流値が低下する。この超電導特性の低下の大きさ(度合い)は、超電導コイルに進入する磁場の方向によって変化する。具体的には、超電導コイルを構成する超電導テープ線材のテープ面に垂直な方向から磁場が進入した場合、超電導コイルの超電導特性が大きく低下し、超電導テープ線材のテープ面に平行な方向から磁場が進入した場合、超電導コイルの超電導特性の低下量は小さい。本実施形態によれば、鏡像効果により生じる磁場が超電導テープ線材のテープ面に平行な方向から超電導コイルに進入するように構成されているために、鏡像効果により生じる磁場による超電導コイルの超電導特性の低下量を低減することができる。
また、本実施形態においては、それぞれの超電導コイル32がステータコア31の径方向に沿ってステータコア31に巻かれている、つまり巻き軸方向がステータコア31の周方向に沿うように、超電導コイル32がステータコア31に配設されている。このため、それぞれの超電導コイル32は他の超電導コイル32と干渉しない。換言すれば、他の超電導コイル32との干渉を考慮することなく、且つ、超電導コイル32を変形させることなく、容易に超電導コイル32を分布巻きすることができる(分布巻きと同様な起磁力分布を得ることができる)。こうして超電導コイル32を分布巻きすることで、超電導回転電機ステータ3とロータ5との間のエアギャップの磁束密度分布に含まれる空間高調波成分を低減することができる。
このように、本実施形態によれば、ステータコア31の内周側に複数の内側スロット311が、ステータコア31の外周側に複数の外側スロット312が、それぞれ形成されるとともに、ステータコア31の内周側と外周側とを跨ぐように、すなわちステータコア31の径方向に沿って巻かれるように、超電導コイル32が内側スロット311内及び外側スロット312内に配設される。具体的には、レーストラック形状の超電導コイル32の第一直線部321が内側スロット311内に配設され、第二直線部322が外側スロット312内に配設される。このため、他の超電導コイルとの干渉を考慮することなく容易且つ自由に超電導コイル32をステータコア31に分布巻きすることができる。こうして自由に超電導コイル32をステータコア31に分布巻きすることにより、超電導回転電機ステータ3とロータ5との間のエアギャップの磁束密度の空間高調波成分を低減することができる。また、内側スロット311内及び外側スロット312内で超電導コイル32(第一直線部321、第二直線部322)を構成する超電導テープ線材のテープ面がステータコア31の周方向に平行な方向を向くように超電導コイル32が両スロット内に配設されるため、ステータコア31の鏡像効果による超電導コイル32の超電導特性の悪化を抑えることができる。以上のことから、本実施形態によれば、空間高調波の低減及び鏡像効果による超電導特性の悪化を共に抑えることにより、モータトルクの低下が少なく、且つトルクリップルが低減された超電導モータ(超電導回転電機)、及び、そのような超電導モータを構成するためのステータ(超電導回転電機ステータ)を提供することができる。
また、本実施形態においては、図2、図3、図7、及び図8に良く示すように、中空円柱状(円筒状)のステータコア31が、その円周方向に24分割されている、つまり、ステータコア31がその円周方向に分割された24個のブロックであるコアブロックにより構成されている。換言すれば、24個のコアブロックが、ステータコア31の円周方向に沿って接続されることにより、ステータコア31が形成される。本実施形態では、全てのコアブロックが同一形状であるが、各コアブロックが異なる形状であってもよい。
図10は、本実施形態に係るコアブロック31Aの斜視図である。ここで、図10に示す径方向、軸方向、周方向は、このコアブロック31Aが用いられるステータコア31の径方向、軸方向、周方向を、それぞれ表す。本実施形態及び他の実施形態において、コアブロックの構造を方向を用いて説明するとき、ステータコア31についての方向(径方向、軸方向、周方向)を援用する。
図10に示すように、コアブロック31Aは、軸方向から見て略扇状を呈し、軸方向に垂直な断面形状が一定であるように形成される。このコアブロック31Aは、ブロック内周壁面S1と、ブロック外周壁面S2と、第一側面S3と、第二側面S4と、第一端面S5と、第二端面S6を有する。
ブロック内周壁面S1は、コアブロック31Aの径方向における内径側の面を構成する。24個のコアブロック31Aが組み合わされて中空円柱状のステータコア31を形成した場合に、ブロック内周壁面S1はステータコア31の内周壁面31inを構成する。すなわち、ブロック内周壁面S1は、ステータコア31の内周壁面31inの一部を構成する。
ブロック外周壁面S2は、コアブロック31Aの径方向における外径側の面を構成する。24個のコアブロック31Aが組み合わされて中空円柱状のステータコア31を形成した場合に、ブロック外周壁面S2はステータコア31の外周壁面31outを構成する。すなわち、ブロック外周壁面S2は、ステータコア31の外周壁面31outの一部を構成する。
第一側面S3は、コアブロック31Aの周方向における一方の端部を形成する面であり、ブロック内周壁面S1の周方向における一方の端部とブロック外周壁面S2の周方向における一方の端部とを接続する。第二側面S4は、コアブロック31Aの周方向における他方の端部を形成する面であり、ブロック内周壁面S1の周方向における他方の端部とブロック外周壁面S2の周方向における他方の端部とを接続する。
第一端面S5は、コアブロック31Aの軸方向における一方の端部を形成する面であり、第二端面S6は、コアブロック31Aの軸方向における他方の端部を形成する面である。第一端面S5及び第二端面S6は、それぞれ平面状に形成されている。24個のコアブロック31Aが組み合わされて中空円柱状のステータコア31を形成した場合に、第一端面S5はステータコア31の一方の端面を構成し、第二端面S6はステータコア31の他方の端面を構成する。
ブロック内周壁面S1には、1個の内側スロット311が形成され、ブロック外周壁面S2には、1個の外側スロット312が形成される。内側スロット311は、ブロック内周壁面S1のうち、第一側面S3及び第二側面S4に干渉しない位置に形成される。つまり、内側スロット311を形成する壁面が、第一側面S3を含む平面及び第二側面S4を含む平面に交わらない。同様に、外側スロット312は、ブロック外周壁面S2のうち、第一側面S3及び第二側面S4に干渉しない位置に形成される。つまり、外側スロット312を形成する壁面が、第一側面S3を含む平面及び第二側面S4を含む平面に交わらない。
また、コアブロック31Aの第一側面S3に、凸部Pが形成され、コアブロック31Aの第二側面S4に、凹部Qが形成される。凸部Pは軸方向に延設されており、軸方向に垂直な断面形状が矩形状である。凹部Qも軸方向に延設されており、軸方向に垂直な断面形状が矩形状である。また、一のコアブロック31Aの凸部Pと、他のコアブロック31Aの凹部Qとは、嵌め合い可能に形成されている。一のコアブロック31Aの凸部Pと他のコアブロック31Aの凹部Qが嵌め合わされたとき、一のコアブロック31Aの第一側面S3が他のコアブロック31Aの第二側面S4に対面接触する。また、一のコアブロック31Aの凹部Qと他のコアブロック31Aの凸部Pが嵌め合わされたとき、一のコアブロック31Aの第二側面S4が他のコアブロック31Aの第一側面S3に対面接触する。第一側面S3及び第二側面S4が、本発明の接触面に相当する。
24個のコアブロック31Aが組み合わされてステータコア31を形成したとき、それぞれのコアブロック31Aの第一側面S3が、隣接するコアブロック31Aの第二側面S4に対面接触し、それぞれのコアブロック31Aの第二側面S4が、隣接するコアブロック31Aの第一側面S3に対面接触する。
また、1つのコアブロック31Aに、1つの超電導コイル32が取り付けられる。図11は、超電導コイル32が取り付けられたコアブロック31Aの斜視図である。以下、超電導コイル32が取り付けられたコアブロック31Aを、超電導コイルブロック3Aと呼ぶ。図11に示すように、超電導コイルブロック3Aに備えられる超電導コイル32は、コアブロック31Aの内側スロット311内及び外側スロット312内を、軸方向に沿って通過するように、コアブロック31Aに取り付けられる。具体的には、超電導コイル32の第一直線部321が内側スロット311内を軸方向に沿って通過し、超電導コイル32の第二直線部322が外側スロット312内を軸方向に沿って通過するように、超電導コイル32がコアブロック31Aに取り付けられる。また、超電導コイル32の第一円弧部323がコアブロック31Aの第一端面S5から円弧状に突出し、超電導コイル32の第二円弧部324がコアブロック31Aの第二端面S6から円弧状に突出する。
次に、本実施形態に係る超電導回転電機ステータ3の製造方向について説明する。本実施形態に係る超電導回転電機ステータ3を製造するにあたり、まず、図10に示す形状のコアブロック31Aを、24個作製する(コアブロック作製工程)。この場合、図10に示すコアブロック31Aの軸方向に垂直な断面形状を有する板状の電磁鋼板を軸方向に積層することによって、コアブロック31Aを作製してもよい。また、絶縁処理された軟磁性粉末を圧粉焼結することによって、図10に示すコアブロック31Aを作製してもよい。
次いで、作製したそれぞれのコアブロック31Aに、超電導コイル32を取り付けることにより、超電導コイルブロック3Aを作製する(超電導コイルブロック作製工程)。この場合、超電導コイルブロック作製工程は、巻枠取付工程と、超電導テープ線材巻回工程とを含む。巻枠取付工程においては、まず、巻枠35を用意し、この巻枠35が、コアブロック31Aに形成された内側スロット311内及び外側スロット312内を軸方向に沿って通過するように、巻枠35をコアブロック31Aに取り付ける。なお、巻枠35は、U字形状部と円弧部との2部材に分離可能に構成されている。U字形状部は、内側スロット311内を通過する直線状の第一部分と、外側スロット312内を通過する直線状の第二部分と、第一部分及び第二部分のそれぞれの一方の端部を接続する円弧状の第三部分と、を有する。円弧部はU字形状部の第一部分及び第二部分のそれぞれの他方の端部を接続することができるように円弧状に形成されている。従って、例えば、まずU字形状部の第一部分が内側スロット311を通過し、第二部分が外側スロット312を通過するように、U字形状部をコアブロック31Aに装着し、次いで、コアブロック31Aに装着されたU字形状部の第一部分及び第二部分のそれぞれの端部に円弧部を接続することにより、巻枠35をコアブロック31Aに取り付けることができる。
次いで、コアブロック31Aに取り付けられた巻枠35に超電導テープ線材を巻回する(超電導テープ線材巻回工程)。これにより、コアブロック31Aに形成されている内側スロット311内に超電導コイル32の第一直線部321が配設され、コアブロック31Aに形成されている外側スロット312内に超電導コイル32の第二直線部322が配設される。このようにして、24個の超電導コイルブロック3Aが作製される。
続いて、作製した24個の超電導コイルブロック3Aのうちの1個の超電導コイルブロック3Aに備えられるコアブロック31Aの第一側面S3に形成されている凸部Pと、他の超電導コイルブロック3Aに備えられるコアブロック31Aの第二側面S4に形成されている凹部Qとを嵌め合わせる。これにより、2個の超電導コイルブロック3Aが組み付けられる。次いで、組み付けられた2個の超電導コイルブロック3Aに、他の超電導コイルブロック3Aを、上述したように組み付ける。このようにして、順次、超電導コイルブロック3Aを組み付けていく(超電導コイルブロック組み付け工程)。そして、24個の超電導コイルブロック3Aが全て組み付けられることにより、超電導回転電機ステータ3が製造される。言い換えれば、複数(24個)の超電導コイルブロック3Aによって超電導回転電機ステータ3が構成されるよう、複数の超電導コイルブロック3Aが組み付けられる。こうして製造された超電導回転電機ステータ3においては、互いに隣接する超電導コイルブロック3Aの一方に備えられるコアブロック31Aの第一側面S3が他方に備えられるコアブロック31Aの第二側面S4に対面接触し、互いに隣接する超電導コイルブロック3Aの一方に備えられるコアブロック31Aの第二側面S4が他方に備えられるコアブロック31Aの第一側面S3に対面接触する。
ところで、超電導回転電機ステータ3に設けられる超電導コイル32の超電導特性を補償するために、用いられる超電導コイルの健全性の検査、すなわち、超電導コイルが目標とする超電導特性を発揮するか否かの検査、を行うのが望ましい。しかし、中空円柱状のステータコアが一体的に形成されている場合、すなわちステータコアが分割されていない場合、先に超電導コイルを作製しておいて、その後に作製した超電導コイルをステータコアに組み付けることはできない。その理由は、本実施形態においては、ステータコア31の内周と外周とを跨ぐように超電導コイル32がステータコア31に配設されるため、先に超電導コイルを作製した場合、その超電導コイルを一体的に形成されている中空円柱状のステータコアの内側スロットと外側スロットに嵌め込むことができないからである。この場合、ステータコアに超電導コイルを巻きつけた後にしか、超電導コイルの健全性を検査することができない。すなわち、超電導コイルの健全性を事前に、つまり超電導回転電機ステータ3を製造する前に、検査することができない。
超電導コイルの健全性を事前に検査することができない場合、ステータコアに超電導コイルを巻きつけた状態で超電導コイルの健全性を検査することになる。この場合、中空円柱状のステータコアを含めた超電導回転電機ステータ全体を超電導遷移温度以下の温度に冷却しなければならない。よって、冷却時間の長期化に伴う検査時間の増大、及び、検査用の冷却装置が大掛かりとなることによる検査コストの増大、を招く。また、検査結果がNGであった場合、ステータコアから超電導コイルを除去し、あらためて超電導コイルを巻き直す必要があるため、作業工数が増大する。
この点に関し、本実施形態においては、中空円柱状のステータコア31が、その円周方向に分割された複数(24個)のコアブロック31Aにより構成されている。従って、コアブロック31Aに超電導コイル32を巻きつけたもの(超電導コイルブロック3A)を作製し、作製した超電導コイルブロック3Aごとに、超電導コイル32の健全性を検査することができる。つまり、超電導コイルブロック3A単位で、超電導コイル32の健全性の事前検査を行うことができる。このように、本実施形態によれば、超電導コイル32の健全性の検査を、超電導コイルブロック3A単位で、事前に(超電導回転電機ステータ3として構成される前に)行うことができる。コアブロック31Aの熱容量はステータコア31全体の熱容量よりもはるかに小さい。よって、超電導コイルブロック3Aに備えられる超電導コイル32を超電導遷移温度以下の温度に冷却するために必要な超電導コイルブロック3Aの冷却時間は、超電導回転電機ステータ全体を冷却する時間に比べて短い。このようにして冷却時間を短縮することができる。また、小型の冷却装置により超電導コイルブロック3Aを冷却することができるため、検査に要するコストを低減することができる。
(第二実施形態)
図12は、第二実施形態に係るコアブロック31Bの斜視図である。このコアブロック31Bの形状は、基本的には第一実施形態に係るコアブロック31Aの形状と同じである。ただし、コアブロック31Bの第一側面S3に形成されている凸部P及び第二側面S4に形成されている凹部Qの形状が、第一実施形態に係るコアブロック31Aの第一側面S3に形成されている凸部P及び第二側面S4に形成されている凹部Qの形状と異なる。
図12に示すコアブロック31Bも、第一実施形態に係るコアブロック31Aと同様に、ブロック内周壁面S1、ブロック外周壁面S2、第一側面S3、第二側面S4、第一端面S5、及び、第二端面S6を有する。第一側面S3に凸部Pが形成され、第二側面S4に凹部Qが形成される。凸部P及び凹部Qは軸方向に沿って延設される。
また、本実施形態においては、凸部Pの軸方向に垂直な断面形状は逆台形形状である。つまり、凸部Pの基端側(第一側面S3に近い側)における径方向長さは、凸部Pの先端側(第一側面S3から遠い突出側)における径方向長さよりも短い。同様に、凹部Qの軸方向に垂直な断面形状は逆台形形状である。つまり、凹部Qの基端側(第二側面S4から遠い側)における径方向長さは、凹部Qの先端側(第二側面S3に近い開口側)における径方向長さよりも長い。また、一のコアブロック31Bの凸部Pと、他のコアブロック31Bの凹部Qとは、これらのコアブロック31Bを相対的に軸方向にスライドさせることによって嵌め合い可能なように形成されている。それ以外の部分の構成は、上記第一実施形態にて示したコアブロック31Aの構成と同一であるので、その具体的説明は省略する。
図12に示すコアブロック31Bを用いて作製された24個の超電導コイルブロックが組み合わされることによって、超電導回転電機ステータ3が製造される。この場合において、ある超電導コイルブロックに隣接する超電導コイルブロックを軸方向にスライドさせることにより、隣接する超電導コイルブロックの一方に備えられるコアブロック31Bの凸部Pと他方に備えられるコアブロック31Bの凹部Qとを凹凸嵌合させることができる。
また、図12に示すコアブロック31Bを用いて作製される超電導回転電機ステータ3は、それぞれの超電導コイルブロックが、逆台形形状の凹凸嵌合により接続されているため、一旦凹凸嵌合させておけば、超電導回転電機ステータ3が個々の超電導コイルブロックに分離され難い。そのため、外周スリーブ33を装着しなくても、超電導回転電機ステータ3の中空円柱形状(円筒形状)を維持することができる。
(第三実施形態)
図13は、第三実施形態に係るコアブロック31Cの斜視図である。このコアブロック31Cの形状は、基本的には第一実施形態に係るコアブロック31Aの形状と同じである。ただし、コアブロック31Cの第一側面S3に形成されている凸部P及び第二側面S4に形成されている凹部Qの延設方向が、第一実施形態に係るコアブロック31Aの第一側面S3に形成されている凸部P及び第二側面S4に形成されている凹部Qの延設方向と異なる。
図13に示すコアブロック31Cも、第一実施形態に係るコアブロック31Aと同様に、ブロック内周壁面S1、ブロック外周壁面S2、第一側面S3、第二側面S4、第一端面S5、及び、第二端面S6を有する。第一側面S3に凸部Pが形成され、第二側面S4に凹部Qが形成される。
また、本実施形態においては、凸部P及び凹部Qは径方向に沿って延設される。凸部Pの径方向に垂直な断面形状は矩形形状である。凹部Qの径方向に垂直な断面形状も矩形形状である。凸部P及び凹部Qのそれぞれの径方向に垂直な断面形状は、その他の形状であってもよい。また、一のコアブロック31Cの凸部Pと、他のコアブロック31Cの凹部Qとは、嵌め合い可能に形成されている。それ以外の部分の構成は、上記第一実施形態にて示したコアブロック31Aの構成と同一であるので、その具体的説明は省略する。
図13に示すコアブロック31Cを用いて作製された24個の超電導コイルブロックが組み合わされることによって、超電導回転電機ステータ3が製造される。この場合において、ある超電導コイルブロックに隣接する超電導コイルブロックを径方向にスライドさせることにより、隣接する超電導コイルブロックの一方に備えられるコアブロック31Cの凸部Pと他方に備えられるコアブロック31Cの凹部Qとを凹凸嵌合させることができる。つまり、超電導コイルブロックを径方向から嵌め込むことによって、超電導回転電機ステータ3を製造することができる。
ここで、上記第一実施形態に係るコアブロック31Aを用いて作製された複数の超電導コイルブロックにより超電導回転電機ステータ3を製造する場合において、最後の1個の超電導コイルブロック3Aは、軸方向からしか嵌め込むことができない。これに対し、本実施形態に係るコアブロック31Cを用いて作製された複数の超電導コイルブロックにより超電導回転電機ステータ3を製造する場合、全ての超電導コイルブロックを径方向から嵌め込むことができる。このため、超電導コイルブロックを組み付けやすいといった効果を奏する。
(第四実施形態)
図14は、第四実施形態に係る超電導回転電機ステータ3の斜視図である。図14には、超電導コイル32をステータコア31の一部の内側スロット311及び外側スロット312内に配設した状態が示される。図14に示すように、本実施形態に係る超電導回転電機ステータ3に備えられるステータコア31は、その円周方向に6分割されている。つまり、ステータコア31がその円周方向に分割された6個のコアブロック31Dにより構成されている。換言すれば、6個のコアブロック31Dが、ステータコア31の円周方向に沿って接続されることにより、ステータコア31が形成される。
本実施形態に係るコアブロック31Dは、第一実施形態に係る4個のコアブロック31Aを、周方向に沿って一体的に接続したような態様である。従って、このコアブロック31Dのブロック内周壁面S1には、4個の内側スロット311が形成され、ブロック外周壁面S2には、4個の外側スロット312が形成される。それ以外の構成は、上記第一実施形態に係るコアブロック31Aの構成と同一であるので、その具体的説明は省略する。
本実施形態に係るコアブロック31Dを用いて作製された6個の超電導コイルブロックを組み合わせることによって、超電導回転電機ステータ3を製造することができる。この場合、上記第一実施形態と同様に、コアブロック作製工程、超電導コイルブロック作製工程、超電導コイルブロック組み付け工程を経て、超電導回転電機ステータ3が製造される。
本実施形態によれば、超電導コイルブロック作製工程にて作製された6個の超電導コイルブロックごとに、超電導コイルの健全性を検査することができる。この場合においても、コアブロック31Dの熱容量はステータコア31全体の熱容量よりもはるかに小さい。よって、超電導コイルブロックに備えられる超電導コイル32を超電導遷移温度以下の温度に冷却するために必要な超電導コイルブロックの冷却時間は、超電導回転電機ステータ全体を冷却する時間に比べて短い。よって、検査における冷却時間を短縮することができる。また、小型の冷却装置により超電導コイルブロックを冷却することができるため、検査に要するコストを低減することができる。
(第五実施形態)
図15は、第五実施形態に係る超電導回転電機ステータ3の斜視図である。図15には、超電導コイル32をステータコア31の一部の内側スロット311及び外側スロット312内に配設した状態が示される。図15に示すように、本実施形態に係る超電導回転電機ステータ3に備えられるステータコア31は、第一実施形態に係るステータコア31と同様に、円周方向に分割された24個のコアブロック31Eにより構成されている。ただし、本実施形態に係るコアブロック31Eの形状は、上記第一実施形態に係るコアブロック31Aの形状とは異なる。
図16は、本実施形態に係るコアブロック31Eの斜視図である。図16に示すように、本実施形態に係るコアブロック31Eは、第一実施形態に係るコアブロック31Aと同様に、軸方向から見て略扇状に形成されている。また、コアブロック31Eは、第一実施形態に係るコアブロック31Aと同様に、ブロック内周壁面S1、ブロック外周壁面S2、第一側面S3、第二側面S4、第一端面S5、及び第二端面S6を有する。
また、第一側面S3とブロック内周壁面S1との境界部分、すなわち、ブロック内周壁面S1の周方向における第一側面S3に近い側の部分と第一側面S3の径方向における内径側の部分との間に、軸方向からみてL字状に切り欠かれた第一内側切欠部R1_inが形成されている。第一内側切欠部R1_inは軸方向に沿って延設される。同様に、第二側面S4とブロック内周壁面S1との境界部分、すなわち、ブロック内周壁面S1の周方向における第二側面S4に近い側の部分と第二側面S4の径方向における内径側の部分との間に、軸方向からみてL字状に切り欠かれた第二内側切欠部R2_inが形成されている。第二内側切欠部R2_inは軸方向に沿って延設される。
また、第一側面S3とブロック外周壁面S2との境界部分、すなわち、ブロック外周壁面S2の周方向における第一側面S3に近い側の部分と第一側面S3の径方向における外径側の部分との間に、軸方向から見てL字状に切り欠かれた第一外側切欠部R1_outが形成されている。第一外側切欠部R1_outは軸方向に沿って延設される。同様に、第二側面S4とブロック外周壁面S2との境界部分、すなわち、ブロック外周壁面S2の周方向における第二側面S4に近い側の部分と第二側面S4の径方向における外径側の部分との間に、軸方向から見てL字状に切り欠かれた第二外側切欠部R2_outが形成されている。第二外側切欠部R2_outは軸方向に沿って延設される。つまり、軸方向から見て、扇形状のコアブロック31Eの4隅にそれぞれ、L字状に切り欠かれた部分が形成される。各切欠部(R1_in,R2_in,R1_out,R2_out)の周方向における長さは、超電導コイル32の幅方向(巻軸方向)における長さの半分の長さである。
また、第一側面S3に凸部Pが形成され、第二側面S4に凹部Qが形成される。凸部P及び凹部Qは、第三実施形態に示すコアブロック31Cの凸部P及び凹部Qと同様に、径方向に沿って延設される。また、一のコアブロック31Eの凸部Pと、他のコアブロック31Eの凹部Qとは、嵌め合い可能に形成されている。
一のコアブロック31Eの凸部Pと他のコアブロック31Eの凹部Qとを凹凸嵌合させたとき、一のコアブロック31Eの第一側面S3と他のコアブロック31Eの第二側面S4が対面接触する。また、このとき、一のコアブロック31Eの第一内側切欠部R1_inと他のコアブロック31Eの第二内側切欠部R2_inが対面する。こうして対面した第一内側切欠部R1_inと第二内側切欠部R2_inとによって内側スロット311が形成される。また、一のコアブロック31Eの凸部Pと他のコアブロック31Eの凹部Qとを凹凸嵌合させて、一のコアブロック31Eの第一側面S3と他のコアブロック31Eの第二側面S4が対面接触したとき、一のコアブロック31Eの第一外側切欠部R1_outと他のコアブロック31Eの第二外側切欠部R2_outが対面する。こうして対面した第一外側切欠部R1_outと第二外側切欠部R2_outとによって外側スロット312が形成される。
第一内側切欠部R1_inと第二内側切欠部R2_inとにより形成された内側スロット311に超電導コイル32の第一直線部321が配設され、第一外側切欠部R1_outと第二外側切欠部R2_outとにより形成された外側スロット312に超電導コイル32の第二直線部322が配設されるように、超電導コイルが2つのコアブロック31Eに取り付けられる。図17は、本実施形態に係る2個のコアブロック31E,31Eに1個の超電導コイル32が取り付けられた状態を示す斜視図である。図17に示すように、内側スロット311は、隣接する2つのコアブロック31E,31Eのそれぞれの接触面、すなわち、互いに対面接触している一のコアブロック31Eの第一側面S3及び他のコアブロックの第二側面S4に干渉する位置に形成されている。つまり、内側スロット311は、互いに対面接触している一のコアブロック31Eの第一側面S3を含む平面及び他のコアブロック31Eの第二側面S4を含む平面に交わる位置に、形成されている。同様に、外側スロット312は、隣接する2つのコアブロック31E,31Eのそれぞれの接触面に干渉する位置に形成されている。つまり、外側スロット312も内側スロット311と同様に、互いに対面接触している一のコアブロック31Eの第一側面S3を含む平面及び他のコアブロック31Eの第二側面S4を含む平面に交わる位置に、形成されている。
次に、本実施形態に係るコアブロック31Eを用いた超電導回転電機ステータ3の製造方法について説明する。本実施形態に係るコアブロック31Eを用いて超電導回転電機ステータ3を製造するにあたり、まず、図16に示す形状のコアブロック31Eを、24個作製する(コアブロック作製工程)。
また、コアブロック作製工程の後に、或いは、コアブロック作製工程の前に、超電導コイル32を作製する(超電導コイル作製工程)。この超電導コイル作製工程においては、巻枠35に超電導テープ線材を巻回することによって、超電導コイル32を作製することができる。
続いて、コアブック作製工程にて作製した1個のコアブロック31Eに形成されている第一内側切欠部R1_inに超電導コイル32の第一直線部321が、第一外側切欠部R1_outに超電導コイル32の第二直線部322が、それぞれ配設されるように、1個のコアブロック31Eに1個の超電導コイル32を組み付ける(超電導コイル組み付け工程)。これにより、超電導コイル32の第一直線部321の幅方向(巻軸方向)における半分の領域が第一内側切欠部R1_inに嵌め込まれるとともに、超電導コイル32の第二直線部322の幅方向(巻軸方向)における半分の領域が第一外側切欠部R1_outに嵌め込まれる。
その後、超電導コイル32が組み付けられている一のコアブロック31Eの第一側面S3に形成されている凸部Pと、他のコアブロック31Eの第二側面S4に形成されている凹部Qとを嵌め合わせことによって、超電導コイル32が組み付けられているコアブロック31Eと他のコアブロック31Eとを組み付ける(コアブロック組み付け工程)。これにより、一のコアブロック31Eの第一側面S3と他のコアブロック31Eの第二側面S4が対面接触するとともに、一のコアブロック31Eの第一内側切欠部R1_inと他のコアブロック31Eの第二内側切欠部R2_inとにより内側スロット311が形成され、一のコアブロック31Eの第一外側切欠部R1_outと他のコアブロック31Eの第二外側切欠部R2_outにより外側スロット312が形成される。また、内側スロット311に超電導コイル32の第一直線部321が嵌め込まれ、外側スロット312に超電導コイル32の第二直線部322が嵌め込まれる。ここまでの工程により、図17に示す構造体が形成される。
上記超電導コイル組み付け工程と、上記コアブロック組み付け工程を、全ての超電導コイル32及び全てのコアブロック31Eに対して、交互に繰り返し実行することにより、或いは、全ての超電導コイル32及び全てのコアブロック31Eに対して超電導コイル組み付け工程とコアブロック組み付け工程を同時に実行することにより、コアブロック31Eに超電導コイル32が組み付けられていくとともに複数のコアブロック31Eが組み付けられていく。そして、最終的に超電導回転電機ステータ3が形成される。すなわち、コアブロック作製工程にて複数(24個)のコアブロック31Eを作製し、超電導コイル作製工程にて複数(24個)の超電導コイル32を作製し、次いで、作製した全ての超電導コイル32と全てのコアブロック31Eに対して超電導コイル組み付け工程とコアブロック組み付け工程とを実行することにより、超電導回転電機ステータ3が作製される。
本実施形態に係るコアブロック31Eによれば、内側スロット311及び外側スロット312が、2つのコアブロックの接触面(第一側面S3及び第二側面S4)に干渉する位置(交わる位置)に設けられている。つまり、内側スロット311及び外側スロット312が2個のコアブロック31Eに跨るように分割形成されており、2個のコアブロック31Eが組み付けられることによって、内側スロット311と外側スロット312が完成する。このため、超電導コイル組み付け工程にて、予め作製された超電導コイル32をコアブロック31Eに後から組み付けることができる。つまり、超電導コイル組み付け工程及びコアブロック組み付け工程の前に、予め超電導コイル32を作製しておくことができる。従って、超電導コイル単体で、超電導コイルの健全性の検査を実施することができる。超電導コイル単体でその健全性を検査することができるため、検査コストをより一層低減できるとともに、検査時間もより一層短縮化される。
(第六実施形態)
図18は、第六実施形態に係る超電導回転電機ステータ3の斜視図である。図18には、超電導コイル32をステータコア31の一部の内側スロット311及び外側スロット312内に配設した状態が示される。図18に示すように、本実施形態に係る超電導回転電機ステータ3に用いられるステータコア31は、第一実施形態及び第五実施形態に係るステータコア31と同様に、円周方向に分割された24個のコアブロック31Fにより構成されている。ただし、本実施形態に係るコアブロック31Fの形状は、上記第一実施形態に係るコアブロック31A及び上記第五実施形態に係るコアブロック31Eの形状とは異なる。
図19は、本実施形態に係るコアブロック31Fの斜視図である。図19に示すように、本実施形態に係るコアブロック31Fは、第一実施形態に係るコアブロック31A及び第五実施形態に係るコアブロック31Eと同様に、軸方向から見て略扇状に形成されている。また、コアブロック31Fは、第一実施形態に係るコアブロック31A及び第五実施形態に係るコアブロック31Eと同様に、ブロック内周壁面S1、ブロック外周壁面S2、第一側面S3、第二側面S4、第一端面S5、及び第二端面S6を有する。
また、ブロック内周壁面S1と第二側面S4との境界部分、すなわち、ブロック内周壁面S1の周方向における第二側面S4に近い側の部分と第二側面S4の径方向における内径側の部分との間に、軸方向からみてL字状に切り欠かれた内側切欠部R_inが形成されている。内側切欠部R_inは軸方向に沿って延設される。同様に、ブロック外周壁面S2と第二側面S4との境界部分、すなわち、ブロック外周壁面S2の周方向における第二側面S4に近い側の部分と第二側面S4の径方向における外径側の部分との間に、軸方向から見てL字状に切り欠かれた外側切欠部R_outが形成されている。外側切欠部R_outも軸方向に沿って延設される。各切欠部(R_in,R_out)の周方向における長さは、超電導コイル32の幅方向(巻軸方向)における長さとほぼ同じ長さである。
また、第一側面S3に凹部Qが形成され、第二側面S4に凸部Pが形成される。凹部Q及び凸部Pは、第一実施形態に示すコアブロック31Aの凸部P及び凹部Qと同様に、軸方向に沿って延設される。また、一のコアブロック31Fの凸部Pと、他のコアブロック31Fの凹部Qとは、嵌め合い可能に形成されている。
一のコアブロック31Fの凸部Pと他のコアブロック31Fの凹部Qとを凹凸嵌合させたとき、一のコアブロック31Fの第二側面S4と他のコアブロック31Fの第一側面S3が対面接触する。また、このとき、一のコアブロック31Fの内側切欠部R_inと他のコアブロック31Fの第一側面S3の径方向における内径側の部分とが対面する。対面した内側切欠部R_inと第一側面S3とによって内側スロット311が形成される。また、一のコアブロック31Fの凸部Pと他のコアブロック31Fの凹部Qとを凹凸嵌合させて、一のコアブロック31Fの第二側面S4と他のコアブロック31Fの第一側面S3が対面接触したとき、一のコアブロック31Fの外側切欠部R_outと他のコアブロック31Fの第一側面S3の径方向における外径側の部分とが対面する。対面した外側切欠部R_outと第一側面S3とによって外側スロット312が形成される。
内側切欠部R_inと第一側面S3とにより形成された内側スロット311に超電導コイル32の第一直線部321が配設され、外側切欠部R_outと第一側面S3とにより形成された外側スロット312に超電導コイル32の第二直線部322が配設されるように、超電導コイル32が2つのコアブロック31Fに取り付けられる。図20は、2つのコアブロック31F、31Fに超電導コイル32が取り付けられた状態を示す斜視図である。図20に示すように、内側スロット311は、隣接する2つのコアブロック31Fのそれぞれの接触面、すなわち、互いに対面接触している一のコアブロック31Fの第二側面S4及び他のコアブロック31Fの第一側面S3に干渉する位置に形成されている。つまり、内側スロット311は、一のコアブロック31Fの第二側面S4を含む平面及び他のコアブロック31Fの第一側面S3を含む平面に接する位置に、形成されている。同様に、外側スロット312は、隣接する2つのコアブロック31Fのそれぞれの接触面に干渉する位置に形成されている。つまり、外側スロット312も内側スロット311と同様に、一のコアブロック31Fの第二側面S4を含む平面及び他のコアブロック31Fの第一側面S3を含む平面に接する位置に、形成されている。
本実施形態に係る超電導回転電機ステータ3の製造方法は、上記第五実施形態に係る超電導回転電機ステータ3の製造方法と同じである。すなわち、コアブロック作製工程にて複数(24個)のコアブロック31Fを作製し、超電導コイル作製工程にて複数(24個)の超電導コイルを作製し、次いで、作製した全ての超電導コイル32と全てのコアブロック31Fに対して超電導コイル組み付け工程とコアブロック組み付け工程とを実行することにより、超電導回転電機ステータ3が作製される。
本実施形態に係るコアブロック31Fによれば、内側スロット311及び外側スロット312が、2つのコアブロックの接触面(第一側面S3及び第二側面S4)に干渉する位置(接する位置)に設けられている。つまり、内側スロット311及び外側スロット312が2個のコアブロック31Fに跨るように分割形成されており、2個のコアブロック31Fが組み付けられることによって、内側スロット311と外側スロット312が完成する。このため、超電導コイル組み付け工程にて、予め作製された超電導コイル32をコアブロック31Fに後から組み付けることができる。つまり、超電導コイル組み付け工程及びコアブロック嵌め合わせ工程の前に、予め超電導コイル32を作製することができる。従って、超電導コイル単体で、超電導コイルの健全性の検査を実施することができる。超電導コイル単体でその健全性を検査することができるため、検査コストをより一層低減できるとともに、検査時間もより一層短縮化される。
以上、本発明の様々な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることはない。例えば、上記様々な実施形態においては、複数のコアブロックの形状が全て同一である例について説明したが、ステータコアをその円周方向に沿って分割することができるような形状であれば、それぞれのコアブロックの形状は異なっていてもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。