本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3に示すように刈取り・脱穀・籾の選別・藁処理を同時に行うコンバイン1は、複胴下扱ぎ軸流式の脱穀部を備える乗用6条刈りの自脱型コンバインであって、左右のクローラ式走行装置2を下部に備えた機体フレーム(機体)3の機体進行方向右側前部にキャビン4で覆った操縦部Aを設けている。また、機体3の左側前部からキャビン4の前方にかけて刈取部Bを油圧リフトシリンダ5によって昇降自在に設けている。さらに、前記刈取部Bの後方には脱穀部Cを設けると共に、脱穀部Cの右側には収穀部Dを設けている。そして、前記脱穀部Cと収穀部Dの後方には排藁処理装置Eを設けている。
前記刈取部Bは、伝動装置、デバイダ6、ナローガイド7、引起し装置8、刈刃装置9、掻込搬送装置10、株元搬送装置11、穂先搬送装置12、扱ぎ深さ搬送装置13、及び補助搬送装置14と、これ等の装置を支える刈取部フレーム15及びリフトフレーム16によって構成している。なお、伝動装置は、リフトフレーム16に内蔵する入力駆動部と縦伝動部、穂先・株元伝動部、扱ぎ深さ伝動部、下伝動部、引起し伝動部等によって構成し、図示しない刈取りクラッチが接続されて、刈取部Bの各装置にエンジン動力が伝達されると、刈取部Bは左右のデバイダ6間に入った立毛穀稈を引き起こしながら刈り取り、また、扱ぎ深さ搬送装置14によって扱ぎ深さを調節しながら、刈り取った穀稈を脱穀部Cに搬送する。
また、脱穀部Cは、前後壁と左右の側壁と底板と上方を覆うシリンダーカバー17等からなる機枠の上部に扱室が形成され、該扱室には、刈取部Bから搬送されてきた穀稈を扱口に沿って挟持搬送する脱穀フイードチェン18、及びシリンダカバー17に設けた挟持レール19と、周囲に多数植設された扱歯を備える第1扱胴と、受網を設けている。また、扱室内で脱粒処理しきれなかった穀粒の混ざった藁屑等を処理する処理室を、第1扱胴の後端穂先側より機体の後方に向けて併設し、この処理室には第2扱胴と受網を設けている。さらに、第1及び第2扱胴の下方には、受網より漏下した穀粒等を選別処理する、揺動選別体及び選別風路等よりなる選別室を設けている。
なお、脱穀部Cの各装置は、図示しない脱穀クラッチを介してエンジン動力が伝達されて駆動されるが、脱穀フイードチェン18と刈取部Bは同一の変速機で変速され、双方が走行速度に同調して駆動されるので、超低速から高速まで乱れがなく一定の穀稈層厚を維持して刈取り脱穀処理を行うことができる。また、前記揺動選別体及び選別風路による籾の選別は、選別自動制御によって常に良好な選別性能が得られるように制御することができ、係る選別自動制御は、稲と麦等の材料条件を選別ダイヤルで設定すると共に、揺動選別体上の籾の漏下量変化に伴う選別室内の風量変化をセンサで検出し、揺動選別体のスイングシーブ角度を調整し、また、唐箕ファンの風量を調整して、選別室内の風量が常に一定になるように制御する。
さらに、脱穀部Cで脱穀・選別処理された穀粒は、収穀部Dを構成するグレンタンク20に移送され、このグレンタンク20は穀粒を一時的に貯留し、その後、排出オーガ21により機外のコンテナ等に排出することができる。なお、脱穀部Cで発生する藁屑及び塵埃等の排塵は、第2扱胴と選別室から直接、又は選別室に設けた排塵ファンで吸引して脱穀部Cの後方に排出される。また、脱穀処理を完了して扱室より排出される排稈は、排藁搬送装置によって排藁処理装置Eに向けて搬送され、さらに、排藁処理装置Eを構成するディスク型カッター(排藁カッター)22は、排藁搬送装置で搬送されてきた排稈を細断して刈取跡地に切藁として放出する。
次に、キャビン4で覆った操縦部Aについて説明すると、図3及び図4に示すように操縦部Aは、機体3の前部に設ける運転フレーム23の上面にフロア24を設け、このフロア24には適宜、マット等を敷設する。また、フロア24の前部側左右と左側にレバーフレームを立設し、この前部側の左右レバーフレームに、フロントカバー25とリヤカバー26と樹脂製のフロントパネル27を取り付けてレバーフレームを覆い、前部側の操作ボックスを構成する。
また、前部側の左レバーフレームと左側レバーフレームに、サイドカバー28とサイドパネル29を取り付けてレバーフレームを覆い、側部側の操作ボックスを構成する。なお、フロントパネル27の左側の後端寄りは、側部側の操作ボックスのサイドパネル29の上面に重合するようになだらかな傾斜として後方に延出形成し、これにより、前部側と側部側の操作ボックスの上面が連続した操作具の装着面となり、また、操作ボックスがフロア24の前方から一側方に亘って一連に設けられることになる。
さらに、フロア24の後方には、エンジンカバーフレームを立設し、このエンジンカバーフレームの周囲に複数のカバー30を取り付け、その内部をエンジンルームに構成する。そして、前部側のエンジンカバーフレームに、運転席31をブラケットを介して前後動・上下動調節自在に取り付け、操縦部Aを構成している。なお、キャビン4は、枠組みしたフレーム32にフロントガラス33、ガラスドア34、リヤガラス、サイドガラス35等を取り付け、また、天井部にエアコンを取り付け、その上方をルーフ36で覆った全面ガラス構造のキャビン4を採用し、係るキャビン4を操縦部Aを覆うように運転フレーム23に取り付ける。
さらに、クローラ式走行装置2、刈取部B、脱穀部C、収穀部D、及び排藁処理装置E等を駆動する原動部について説明すると、原動部は、運転席31下方から後方のエンジンルーム内に設け、エンジンルーム内には、立形水冷4サイクルコモンレール式ディーゼルエンジンとラジエータとエアクリーナ等を設ける。また、エンジンの動力は、走行用の静油圧式無段変速装置(HST)を介してミッションケース37に伝達し、ミッションケース37に設けた歯車式副変速装置、旋回力切換装置、及びサイドクラッチ等を介して、左右のクローラ式走行装置2を駆動する。
さらに、エンジンの動力は、脱穀クラッチを介して脱穀部Cと排藁処理装置Eに伝達し、これらを駆動する。なお、脱穀部Cの唐箕ファンは、伝動系に設けたベルト無段変速装置によって回転数が変更され、これにより唐箕ファンの風量が調節される。また、脱穀クラッチを介して伝達された動力が、搬送用の静油圧式無段変速装置によって変速され、この変速された動力が脱穀フイードチェン18と、刈取りクラッチを介して刈取部Bに分岐伝動される。なお、収穀部Dを構成するグレンタンク20は、運転席31後方に設ける穀粒排出スイッチによって入り切りされる油圧モータによって、タンク20内のラセンを回転させて穀粒を排出する。
なお、エンジンに設けるコモンレールは、排ガス規制に対応した電子制御の燃料噴射装置であり、高圧燃料を生成するサプライポンプ、高圧燃料を蓄えるレール、高圧燃料を電磁弁によって各気筒に噴射するインジェクタ、これらを制御するエンジンECU(Engine Control Unit)等で構成し、エンジン回転自動ダイヤルでエンジン回転数を設定する。また、エンジン回転自動制御によって、例えば、脱穀クラッチ又は刈取りクラッチが接続された際、排出オーガ21が籾排出位置乃至収納位置に操作された際、穀粒排出操作が行われた際、或いは機体3の前進又は後進操作が行われた際に、エンジン回転数を自動的に高くし、それ以外はアイドリング状態に制御する。
また、エンジンの排気系のマフラーには、排気ガスに含まれる粒子状物質PM(Particulate Matter)を捕集するDPF(Diesel particulate filter)が装着してあり、DPFが目詰まりを起こすとPM捕集機能が低下するので、定期的に、或いは目詰まりした際に粒子状物質を燃焼処理(DPF再生)する必要がある。そこで、本エンジンでは、DPF再生を促すDPFスイッチを設けている。
次に、操縦部Aに設ける操作具について説明すると、操作具は、マイクロコンピュータ等から構成する電子制御装置ECU(Electronic Control Unit)を介して機体各部の作動を制御する。或いは、機械的に連係して機体各部の作動を制御する。なお、電子制御装置ECUは、機体3に複数設け、各ユニットはコントロールエリアネットワーク(CAN)で相互通信可能に結んでいる。そして、具体的には、図4に示すように、操作ボックスの前部側の右側寄りに機体3の旋回や刈取部Bの昇降を行う操作具であるマルチステアリングレバー38を設け、マルチステアリングレバー38の後方に、マルチステアリングレバー38を操作する際に使用するアームレスト39を設けている。
マルチステアリングレバー38は、操作ボックスに前後・左右に揺動自在に支持され、基部に設ける操向ポテンショメータとリフト昇降ポテンショメータによって、レバー38の操作角度がECUに入力される。また、ECUは、レバー38の左右方向の傾倒を検出すると、ソレノイドバルブによって油圧シリンダを作動させ、ミッションケース37のサイドクラッチを切って、方向の微調整を行う。或いは、さらなる傾倒操作を検出すると、レバー38の操作角度に応じて、クローラ式走行装置2の旋回方向内側となる駆動力をコントロールして旋回力を変更する。そして、レバー38の前後方向の傾倒を検出すると、油圧リフトシンダ5を作動させて、刈取部Bをレバー38の操作角度に比例した昇降速度で昇降させる。
また、操作ボックスの前部側の中央部には、タッチパネル付きの液晶モニタ40と数個の押しボタン41を併設して設ける。係る液晶モニタは、例えば、図5に示すように、エンジン回転数、車速、燃料、穀粒タンク籾量、エンジン負荷率等を表示したり、各種自動制御の設定情報、或いは、機体後方を撮像するカメラ画像等を表示し、タッチパネル或いは押しボタン41の操作によって、その表示内容を切り替えることができる。なお、液晶モニタ40の下方側の操作ボックスには、図示しないスタータースイッチを設け、エンジンの始動・停止操作を行う。
さらに、操作ボックスのコーナー部、即ち、操作ボックスの前部側の左側寄りで、且つ操作ボックスの側部側の前部寄りには、スイッチケース42を取り付け、スイッチケース42に第1の操作具群を設ける。そして、第1の操作具群は、図6及び図7に示すように各機能毎に線引きによって区画された樹脂シート43の複数の領域に、操作具と必要に応じてLED(Light Emitting Diode)ランプを配置する。なお、樹脂シート43はスイッチケース42に貼り付け、操作具の名称や図柄を印刷している。以下、第1の操作具群の個々の操作具について説明する。
先ず、スイッチケース42の右寄りの前部に、刈取りクラッチと脱穀クラッチを断続する操作具であるパワークラッチスイッチ44と、その切替状態を表示するLEDランプ45を設ける。そして、パワークラッチスイッチ44は、モーメンタリ型のシーソースイッチで構成し、スイッチ44の前部側を押す度に脱穀クラッチ入り、刈取りクラッチ入りと切り替わり、後部側を押す度に刈取りクラッチ切り、脱穀クラッチ切りに切り替わる。なお、上記パワークラッチスイッチ44を操作すると、ECUはクラッチモータを作動させて、ベルトテンションクラッチ方式の脱穀クラッチ、及び刈取りクラッチを断続する。
また、スイッチケース42の右寄りの後部に、エンジン回転数を設定する操作具であるエンジン回転自動ダイヤル46と自動制御状態を表示するLEDランプ47を設ける。そして、エンジン回転自動ダイヤル46は、モーメンタリ型のスイッチとボリューム(可変抵抗器)を作動させ、ダイヤル46を押す度にスイッチがオンとなり、エンジン回転自動制御が入り・切りされる。また、ダイヤル46によってボリュームを回転操作すると、回転角度に応じたエンジン回転数に設定される。なお、エンジン回転自動ダイヤル46の信号に基づいてエンジンECUは、前述のエンジン回転自動制御を行い、或いはエンジン回転自動ダイヤル46で設定したエンジン回転数になるようにエンジンを制御する。
さらに、スイッチケース42の中央寄りの前部に、リフトシャットスイッチ48とその状態を表示するLEDランプ49を設ける。また、スイッチケース42の中央寄りの後部に、方向自動スイッチ50と扱深さ自動制御を入り切りする操作具である扱深さ自動スイッチ52、並びにそれらの状態を表示するLEDランプ51、53を左右に併設する。そして、これらのスイッチ48、50、52は何れもタクタイルスイッチで構成し、スイッチケース42の表面に設ける樹脂シート43の下方に設け、スイッチ48、50、52への塵埃の侵入を防止している。
なお、リフトシャットスイッチ48は、刈取り脱穀作業時に刈取部Bがリフトポテンショメータによって所定の高さまで上昇したことを検出した際に、ECUを介して刈取りクラッチを切断して、刈取部Bの駆動を自動的に停止させる制御を、有効、或いは無効にする切替えスイッチであり、係るリフトシャットスイッチ48を入りにすると、一行程の穀稈を刈り終えて次行程の刈取りを行うべく刈取部Bを上昇させ、その後に機体3の旋回や移動走行を行う際に、刈取部Bの駆動が自動的に停止するから、刈取部Bの駆動振動や騒音の発生が防止される。
また、方向自動スイッチ50は、方向自動制御を入り切りするスイッチであり,係る方向自動制御は、刈取作物の条間に対して中央のデバイダ6の通過位置を方向センサで感知し、デバイダ6が穀稈条列に近づきすぎると、ECUがサイドクラッチを断続させて、中央のデバイダ6が条間の中央を通過するように機体3の進行方向を制御する。さらに、扱深さ自動スイッチ52は、扱深さ自動制御を入り切りするスイッチであり,係る扱深さ自動制御は、穀稈の搬送中途に設けたセンサで穀稈の長短を検出し、脱穀部Cに供給する穀稈の扱ぎ深さが適正になるように、ECUが扱ぎ深さ搬送装置13をモータで上下作動させて制御する。
そして、スイッチケース42の左寄りの前部に、機体3を傾斜させる操作具である水平手動レバー54と水平ダイヤル55と水平自動スイッチ56と水平自動制御状態を表示するLEDランプ57を設ける。この内、水平手動レバー54は、前後及び左右操作自在なクロスレバースイッチで構成し、水平手動レバー54を左又は右に操作すると、ECUは機体3を左傾斜又は右傾斜させ、水平手動レバー54を前又は後に操作すると、ECUは機体3を前傾又は後傾させる。
また、水平自動スイッチ56は、タクタイルスイッチで構成し、水平自動スイッチ56を押す度に左右水平自動制御を入り切りし、また、前後水平自動制御を入り切りする。さらに、水平ダイヤル55は、モーメンタリ型のスイッチとボリュームを作動させ、ダイヤル55を押すとスイッチがオンとなり、機体3の前後傾斜を基準とする機体フレーム3とクローラ式走行装置2のトラックフレーム58が平行となる位置に戻す(前後水平リセット)。また、水平ダイヤル55によってボリュームを回転させると、そのボリュームの回転角度が、左右水平自動制御時の目標傾斜角度に設定される。因みに水平ダイヤル55の中央操作位置は、機体3を絶対水平に制御する位置となる。
なお、機体3の水平制御機構は、以下のように構成する。即ち、左右のクローラ式走行装置2のトラックフレーム58と機体フレーム3との間にピッチングフレームを設け、このピッチングフレームの左右両側部に左右の平行リンク59,60の基部を軸支すると共に、平行リンク59,60の下端部をトラックフレーム58に軸支して、ピッチングフレームに対して左右のトラックフレーム58を平行に上下動自在に支持する。また、ピッチングフレームの前部を機体フレーム3に軸支すると共に、機体フレーム3に基部を軸支した拡縮リンクの先端部をピッチングフレームの後部に軸支して、機体フレーム3に対してピッチングフレームを、前部を中心に後部が上下動自在に支持する。
さらに、左右の平行リンク59,60は、左右のローリングシリンダによって駆動し、また、拡縮リンクは、ピッチングシリンダによって駆動し、係る左右のローリングシリンダとピッチングシリンダをECUで伸縮制御して、機体3の前後・左右傾斜制御を行う。そして、機体3の前後、又は左右水平自動制御は、機体3のローリングを検出する左右傾斜センサ、又は機体3のピッチングを検出する前後傾斜センサの信号に基づいて、ECUが各シリンダを伸縮制御し、この場合、前後水平自動制御の目標角度は絶対水平となり、左右水平制御の目標角度は水平ダイヤル55によって設定された角度となる。
また、スイッチケース42の左寄りの後部に、刈取部Bの下降位置を設定する操作具である刈り高さダイヤル61を設ける。刈り高さダイヤル61はボリュームを作動させ、その回転角度が刈取部Bの下降位置の設定値となる。また、刈り高さダイヤル61を最低よりさらに回すと、刈取部Bの下降位置の設定が解除される。そして、刈取部Bの下降位置の設定が解除されると、ECUは、マルチステアリングレバー38の前後動操作によって油圧リフトシリンダ5を作動させて、刈取部Bを自由に昇降させる。
しかし、刈取部Bの下降位置の設定が行われている際は、ECUが刈り高さダイヤル61で設定される設定値と刈取部Bの昇降位置を検出するリフトポテンショメータとの値を比較し、両者の値が一致した時に、油圧リフトシリンダ5の下降作動を停止させ、刈取部Bの下降を停止させる。また、その状態で刈り高さダイヤル61を操作して設定値を変更すると、ECUは設定値に追従させて刈取部Bの昇降を行う。
次に、操作ボックスの側部側の中程に設ける機体3の走行変速を行う操作具について説明すると、機体3の走行変速を行う操作具は、主変速レバー62と副変速レバー63とによって構成する。この内、主変速レバー62は、中立(停止)の横溝64aと前進側の縦溝64bと後進側の縦溝64cを備えるガイド溝64に挿通して、上端にグリップ62aを備える前後・左右回動自在な操作レバーであって、主変速レバー62の前後動操作によって走行用の静油圧式無段変速装置(HST)のサーボバルブを切り替え、前後進の切替えと無段変速を行う。
なお、主変速レバー62は、運転席31から立上がって操作した場合にも、容易に操作することができるように、その前後回動操作領域(前進側と後進側に亘るガイド溝64の領域)をできるだけ機体3前方側に設定するものであって、因みに実施形態では中立の横溝64aが運転席31の座面先端より前方に位置するように配置する。
また、副変速レバー63は、主変速レバー62の前進側ガイド溝64bの機体内方側に前後回動自在に併設し、副変速レバー63をそのグリップ63aを握ってガイド溝65aに沿って前後動操作すると、ミッションケース37に設けた歯車式副変速装置を、例えば、中立、低速、標準(中速)、走行(高速)に機械的に切り換える。また、副変速レバー63の低速切り換え位置で左側に操作して横溝65bの左端に操作すると、ミッションケース37に設ける旋回力切換装置を機械的にスピンターンに切り換える。なお、副変速レバー63の後方に、コンビネーションスイッチ66を設ける。係るコンビネーションスイッチ66は、ライティングスイッチとフラッシャスイッチとホーンスイッチを備える。
最後に、操作ボックスの側部側の後部寄りに設ける第2の操作具群について説明すると、第2の操作具群は、旋回モード設定ダイヤル67と唐箕風量設定ダイヤル68と選別ダイヤル69とDPFスイッチ70で構成し、各操作具は操作ボックスに取り付けたカバー71の前後方向に整列させた夫々の開口部から、操作部を突出させて設ける。そして、この内、旋回モード設定ダイヤル67は、ボリュームを回転操作し、そのボリュームの回転角度によってECUは、ブレーキターンモード、減速ターンモード、或いはフルモードターンモードに切替えると共に、フルモードターンにおける旋回力の調整圧を設定する。
すなわち、ミッションケース37に設ける旋回力切換装置は、ECUの制御の基に、サイドクラッチが切断された旋回内側となるクローラ式走行装置2を制動させるブレーキターンと、サイドクラッチが切断された旋回内側となるクローラ式走行装置2を減速して外側のクローラ式走行装置2と同一方向に駆動する減速ターンと、減速ターン並びにブレーキターンを連続して行うフルモードターンと、サイドクラッチが切断された旋回内側となるクローラ式走行装置2を逆回転させるスピンターンに切換自在になす。
従って、旋回モード設定ダイヤル67をブレーキターン側、又は減速ターン側に最大限回転させると、ECUは旋回力切換装置をブレーキターン、又は減速ターンに切り換えるモードになり、それ以外の回転角度では、旋回力切換装置をフルモードターンに切り換えるモードとなる。また、副変速レバー63が低速切り換え位置で左側に操作されると、ECUはこれをスイッチによって検出し、スピンターンに切り換えるモードになる。なお、上記各旋回モードにおいて、実際に旋回力切換装置が切り換えられるタイミングは、マルチステアリングレバー38の左右方向の傾倒角度によって決定される。
また、唐箕風量設定ダイヤル68はボリュームを作動させ、そのボリュームの回転角度によって脱穀部Cの唐箕ファンの風量が設定される。そして、唐箕ファンの風量が設定されると、ECUはベルト無段変速装置の割りプーリーの開度をモータによって変更し、設定された風量が得られるように制御する。また、選別ダイヤル69は、モーメンタリ型のスイッチとボリュームを作動させ、ダイヤル69を押す度にスイッチがオンとなり、選別自動制御が入り・切りされると共に、自動制御状態を表示するLEDランプ72が点灯、又は消灯する。また、ダイヤル69によってボリュームを回転操作すると、選別自動制御における稲と麦等の材料条件が設定される。さらに、DPFスイッチ70は、モーメンタリ型のスイッチによって構成し、DPFスイッチ70をオンすると、前述のDPF再生が行われる。
以上、操縦部Aに設ける操作具について説明したが、次に刈取り脱穀作業中におけるオペレータの動向について考察すると、オペレータは運転席31に座った状態で機体3各部の操作を行う場合も勿論ある。しかし、畦際刈り時の刈取部Bの昇降操作、回り刈り時の機体3の前後進操作、条合わせ、或いは条刈り及び横刈り時の機体3の方向修正操作等において、これらの操作を迅速、且つ正確に行うために、オペレータは運転席31から立ち上がる場合が多い。
また、圃場の硬軟に基づくクローラ式走行装置2の沈下、或いは機体3の傾斜に基づく刈り高さへの対応、また、刈取り材料の倒伏、或いは草丈の長い雑草を同時に刈り取る際の対応等に当たり、オペレータは運転席31から立ち上がって、機体3前方の圃場状態、或いは刈取り材料の状態を確認しながら、操作具を操作して迅速、且つ適正に対応することが要求される。
すなわち、刈取り脱穀作業時には、機体3の傾斜操作(水平手動レバー54)、或いは刈り高さ設定値の変更(刈り高さダイヤル55)による刈り高さの調節、扱ぎ深さ自動制御の入り切り操作(扱深さ自動スイッチ52)による扱ぎ深さの調節、畦際の刈り上げ操作に伴う刈取部3の継続的な駆動操作(リフトシャットスイッチ48)、条刈り及び横刈りに伴う方向自動制御の入り切り操作(方向自動スイッチ50)、エンジン負荷の増減によるエンジン回転数の調節(エンジン回転自動ダイヤル47)、籾排出等のための圃場内移動走行時の刈取り脱穀クラッチの断続操作(パワークラッチスイッチ44)等が求められる。
従って、オペレータが運転席31から立ち上がって、機体3前方の圃場状態、乃至刈取り材料の状態を見ながら、或いは多少目を離した間に、操作具を迅速、且つ適正に操作して対応するためには、これらの操作具がオペレータの前方にあって、即座に手が届く位置にあることが望ましい。そこで、本発明は、係る人間工学的な見地に立って、操作具の配置箇所を決定する。また、操作具の機能によって、その操作頻度には自ずと高低差が生ずる。そこで、本発明は、コンバインを取り扱う場合に、一番長時間作業となる刈取り脱穀作業中をターゲットに、この刈取り脱穀作業中の操作具の操作頻度に基づいて、その配置箇所を最終的に決定する。
具体的には、操作具の操作頻度に基づいて、第1の操作具群と第2操作具群とに分ける。そして、操作ボックスの側部側の前部に、刈取り脱穀作業中に使用する操作頻度の高い第1の操作具群を配置する。これにより、オペレータが運転席31から立ち上がって前方を注視しながら刈取り脱穀作業を行っている際、第1の操作具群はオペレータの前方に位置して、右手でマルチステアリングレバー38を握って機体3の方向修正等を行っている時でも、第1の操作具群の操作具に左手を伸ばして、これを操作することができ、迅速な対応が可能となる。
また、第1の操作具群の後方には、機体3の走行変速を行う操作具(主変速レバー62、副変速レバー63)を配置する。これにより、オペレータが運転席31から立ち上がった状態でも、機体3の前後進操作、或いは圃場内移動速度(中速、又は高速)に変速することができる。そして、機体3の走行変速を行う操作具の後方には、操作頻度の低い第2の操作具群を配置する。ところで、係る第2の操作具群は、刈取り脱穀作業開始時、又は終了後に一度、操作すれば足り、刈取り脱穀作業中には殆んど操作することが稀な操作具(旋回モード設定ダイヤル67、唐箕風量設定ダイヤル68、選別ダイヤル69、DPFスイッチ70)であるから、オペレータが運転席31に座った状態で落ち着いて操作できれば事が足りる。
さらに、第2の操作具群を第1の操作具群に加えると、第1の操作具群の操作具数が増えて第1の操作具群の設置スペースを広くとらなければならず、後方に設ける機体3の走行変速を行う操作具(主変速レバー62、副変速レバー63)の配置位置に支障を来す虞がある。しかし、第2の操作具群に分けて、第1の操作具群の操作具数を必要最小限に止めることによって、これを解消することができる。また、第1の操作具群の操作具数が少なく、両者を加えたもののように操作具が混在しないため、必要な操作具を誤りなく選定することができ、迅速な対応によって刈取り脱穀精度を向上させることができる。
そして、本発明は、第1の操作具群の中の個々の操作具の配置についても考慮する。即ち、第1の操作具群の操作具の中にも自ずと操作頻度に高低差が生ずる。例えば、刈取り作業前後、或いは圃場内移動走行の前後には、刈取りクラッチと脱穀クラッチの断続操作を必要とする。また、刈取りクラッチと脱穀クラッチの断続操作を行うと、それに合わせてエンジン回転数を刈取り脱穀作業に必要な高回転に変更する、又は移動走行に適した回転数に変更する、或いは一時的に機体を停止する待機状態では、アイドリング状態に変更するといった操作が必要となり、これらの操作は、他の操作に比べて操作頻度が高い。
従って、第1の操作具群の中でも操作頻度が高い刈取りクラッチと脱穀クラッチを断続する操作具(パワークラッチスイッチ44)と、エンジン回転数を設定する操作具(エンジン回転自動ダイヤル46)とを、第1の操作具群を設けるスイッチケース42の最も右寄りに配置する。それ故、これらの操作具は最も運転席31に近くなり、運転席31から立ち上がったオペレータが左手で素早く操作することができる。また、これらの操作具の操作タイミングは略前後するから、一方の操作具を操作した後、他方の操作具への移行を極短時間で行うことができ、操作頻度が高くともオペレータの疲労を軽減して、作業能率を向上させることができる。
また、刈取り脱穀作業中に刈取部Bや脱穀部Cに詰まり等が発生した際には、刈取りクラッチと脱穀クラッチを断続する操作具(パワークラッチスイッチ44)を操作して、いち早く刈取部Bと脱穀部Cを停止させることができ、それにより深刻な詰まりの発生を防止することができる。さらに、エンジン回転数を設定する操作具(エンジン回転自動ダイヤル46)を液晶モニタ40に最も近い側に設けるから、液晶モニタ40に表示されるエンジン回転数を視野に入れながら適正なエンジン回転数に素早く設定することができると共に、同じく液晶モニタ40に表示されるエンジン負荷率に基づいてエンジン回転数を増減して、余裕を持ったエンジン負荷状態で刈取り脱穀作業を能率的に行うことができる。
また、刈取りクラッチと脱穀クラッチを断続する操作具(パワークラッチスイッチ44)とエンジン回転数を設定する操作具(エンジン回転自動ダイヤル46)を除く第1の操作具群の操作頻度は、細かく検討すれば相互の操作具間で差異があるが、その差はあまり大きくない。そこで、ここでは、操作具の機能に基づく関連性(纏まり)を第1に考慮すると共に、第2に周囲の設置環境、操作性等を総合的に判断して、操作具の配置を決定する。
即ち、第1の観点から機体3の傾斜制御に関する水平手動レバー54と水平ダイヤル55と水平自動自動スイッチ56、及び水平自動制御状態を表示するLEDランプ57は、同一領域に纏めて配置する。また、自動制御の入り切りのみを行うスイッチは、同一領域、又は近接して纏めて配置する。さらに、第2の観点から第1の操作具群は、機体3の走行変速を行う操作具(主変速レバー62、副変速レバー63)の、特にグリップによつてオペレータから見た時、影になり易い。そこで、影になっても操作具の操作性を損なわない配置とする。
そして、具体的には、リフトシャットスイッチ48とその状態を表示するLEDランプ49、及び方向自動スイッチ50と扱深さ自動スイッチ52、並びにそれらの状態を表示するLEDランプ51、53は、自動制御の入り切りのみを行うスイッチであるから、纏めて配置する。また、これらの自動制御を入り切りするスイッチ48、50、52は、指のタッチ操作で自動制御の入り切り操作を行うものであるから、操作空間をあまり必要としない。
また、これらのスイッチ48、50、52は、何れもタクタイルスイッチで構成し、スイッチケース42の表面に設ける樹脂シート43からのスイッチの突出量が少なく、走行変速を行う主変速レバー62が最大前進側に操作され、オペレータから見てそのグリップ62aの影側になっても、上記少ない平面的な操作空間とグリップとスイッチの間隔を広くとることができる上下方向の操作空間とが相まって、操作に支障を来さないから、主変速レバー62前方のスイッチケース42の中央寄りに設ける。なお、主変速レバー62が最大前進側に操作され、オペレータから見てそのグリップ62aの影側となる直下には、空きスペースSを設け、この空きスペースSを小物入れ等にすることもできる。
さらに、水平手動レバー54は、クロスレバースイッチで構成し、レバー54のスイッチケース42からの突出量は多く、また、レバー操作のための広い操作空間を必要とするから、機体3の走行変速を行う操作具(主変速レバー62、副変速レバー63)から最も離れたスイッチケース42の左寄りの前部に設ける。また、水平自動自動スイッチ56は、自動制御を入り切りするスイッチで操作空間をあまり必要としないから、水平手動レバー54と同一領域に設けるものの、リフトシャットスイッチ48と並ぶ、主変速レバー62前方となる水平手動レバー54の右側に設ける。さらに、水平自動自動スイッチ56に付随する水平自動制御状態を表示するLEDランプ57も水平自動自動スイッチ56に近接して設ける。残る水平ダイヤル55は水平手動レバー54の後方に設ける。
そして、最後に残った刈り高さダイヤル61は、スイッチケース42の左寄りの後部に設ける。なお、水平ダイヤル55と刈り高さダイヤル61は、ダイヤルを掴んで回転操作するため広い操作空間を必要とし、また、多少スイッチケース42から突出するから、走行変速を行う操作具の影側から離してこれらの操作性を確保する。また、こらのダイヤル55、61は、副変速レバー63の前方側に設けることになるが、副変速レバー63を最大に前方側に傾倒させた変速段は走行(高速)となるから、刈取り脱穀作業中に副変速レバー63が、係る走行段に変速されることは少なく、これらのダイヤル55、61を副変速レバー63の前方側に設けても大きな支障はない。
なお、第1の操作具群の操作具の配置は前述した通りであるが、コンバイン1の仕様や型式によって第1の操作具群の操作具の種類や、操作具の数を変更する場合がある。即ち、図8に示す例は、機体3の傾斜制御を左右傾斜制御のみ行い、前後傾斜制御を行わないものであって、水平手動レバー54の前後方向操作によって、機体3の左右を同時に上げ又は下げ操作できるようにする。また、水平自動自動スイッチ56は左右水平制御の入り切りのみを行うようにして、LEDランプ57の数も減らす。さらに、水平ダイヤル55はボリュームを回転させるものだけにし、スイッチを無くす。
また、図9に示す例は、機体3の傾斜制御に関する制御を無くし、水平手動レバー54、水平ダイヤル55、水平自動自動スイッチ56、水平自動制御状態を表示するLEDランプ57を全て取り去ったものである。さらに、図10に示す例は、汎用型コンバインにおける第1の操作具群の配置を示し、この場合、機体3の傾斜制御は左右傾斜制御のみ行い、前後傾斜制御を行わない。また、水平手動レバー54の前後方向操作によって、機体の左右を同時に上げ又は下げ操作できるようにする。
さらに、水平自動自動スイッチ56は、左右水平制御、又は対地平衡制御に切替えできるようにする。なお、対地平衡制御は刈取部3を構成するヘッダ部の下部にソリセンサを設け、係るソリセンサによってヘッダ部の左右が地面(畝)に平行になるように左右傾斜制御する。また、水平ダイヤル55に替えて、リール回転ダイヤル73と自動制御の入り切り状態を表示するLEDランプ74を設ける。リール回転ダイヤル73は、モーメンタリ型のスイッチとボリュームを作動させ、ダイヤル73を押す度にスイッチがオンとなり、リール回転自動制御が入り・切りされる。また、ダイヤル73によってボリュームを回転させると、回転角度に応じたリール回転数が設定される。
なお、リール回転自動制御は、ヘッダ部に設ける掻き込みリールの回転数を車速に同調するように自動制御するものであり、掻き込みリールの回転数はリール回転ダイヤル73で調整することもできる。また、方向自動制御と扱ぎ深さ自動制御は行わないので、方向自動スイッチ50と扱ぎ深さ自動スイッチ52を無くす替りに、対地刈高自動スイッチ75と自動制御の入り切り状態を表示するLEDランプ76を設ける。なお、対地刈高自動制御はソリセンサの検出値に基づいてヘッダ部を自動的に昇降し、材料の刈り高さを制御するものである。
以上、第1の操作具群の種類や、操作具の数を変更する例を説明したが、図6乃至図9に示す自脱型コンバインの例であっても、方向自動制御を付けない仕様もあり、その場合は、方向自動スイッチ50と自動制御の入り切り状態を表示するLEDランプ51を無くすものであって、操作具群の種類や数は適宜、変更することができ、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。