JP2016080837A - 液体現像剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】低粘度でありながら、保存安定性に優れ、良好な定着性を有し、さらに高抵抗の液体現像剤及びその製造方法に関すること。【解決手段】ポリエステル樹脂と顔料とを含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤であって、前記ポリエステル樹脂が、炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールを60モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分と、炭素数8以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を60モル%以上100モル%以下含有するカルボン酸成分とを含む原料モノマーを重縮合して得られる結晶性ポリエステルを含有する、液体現像剤及びその製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる液体現像剤及びその製造方法に関する。
電子写真用現像剤には、着色剤及び結着樹脂を含む材料からなるトナー成分を乾式状態で用いる乾式現像剤と、トナー成分が絶縁性の担体液中に分散した液体現像剤がある。
液体現像剤は、トナー粒子の小粒径化が可能であることから画質の面で優れており、商業印刷用途に適している。
特許文献1には、定着性が良好で、画像濃度が高く、高解像で転写性の良好な画像を得ることを目的として、メルトマスフローレイトが10〜1200g/10minの結晶性ポリエステル樹脂を主成分として含有している液体現像剤が開示されている。
特許文献2には、ドキュメントオフセットの発生を低減することを目的として、酸成分とアルコール成分の両構成単位に占める脂肪族系モノマーに由来する構成単位の全量が30〜80モル%であるポリエステル樹脂を含む液体現像剤が開示されている。
特許文献3には、トナー粒子中の顔料分散性と定着強度を両立させることを目的として、酸性基を有する顔料と、ε−カプロラクトン由来の構成単位を含む塩基性高分子分散剤を含有する液体現像剤が開示されている。
特開2005−062466号公報 特開2013−003197号公報 特開2013−097294号公報
近年、高速化への要求が高まっていることから、液体現像剤の低粘度化も求められている。つまり、トナー粒子が小粒径、低粘度で安定に分散した液体現像剤が求められている。また、トナーの現像性や転写性を良好に保ち、高画質を実現するためには高抵抗の現像剤が必要である。
本発明は、低粘度でありながら、保存安定性に優れ、良好な定着性を有し、さらに高抵抗の液体現像剤及びその製造方法に関する。
本発明は、
〔1〕 ポリエステル樹脂と顔料とを含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤であって、前記ポリエステル樹脂が、炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールを60モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分と、炭素数8以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を60モル%以上100モル%以下含有するカルボン酸成分とを含む原料モノマーを重縮合して得られる結晶性ポリエステルを含有する、液体現像剤、
並びに
〔2〕 工程1:少なくともポリエステル樹脂と顔料とを溶融混練し、得られた混練物を、粉砕して、トナー粒子を得る工程であって、該ポリエステル樹脂が結晶性ポリエステルを含有し、該結晶性ポリエステルが、炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールを60モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分と、炭素数8以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を60モル%以上100モル%以下含有するカルボン酸成分とを含む原料モノマーを重縮合して得られる樹脂である、工程、及び
工程2:トナー粒子を、分散剤の存在下で、絶縁性液体中に分散させる工程
を含む、液体現像剤の製造方法
に関する。
本発明の液体現像剤は、低粘度でありながら、保存安定性に優れ、良好な定着性を有し、さらに抵抗が高いという優れた効果を奏する。
本発明の液体現像剤は、ポリエステル樹脂と顔料とを含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散し、ポリエステル樹脂が、長鎖脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、長鎖脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを含む原料モノマーを重縮合して得られる結晶性ポリエステルを含有している点に1つの特徴を有しており、液体現像剤は低粘度でありながら、保存安定性に優れ、良好な定着性を有し、さらに高抵抗を有する。
このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
前記結晶性ポリエステルは、長鎖脂肪族ジオールと長鎖脂肪族ジカルボン酸化合物とを主成分として含む原料モノマーを重縮合して得られるポリエステルであり、該ポリエステルは、結晶性が高いとともに、結晶性ポリエステルの構成単位である長鎖脂肪族の部位が絶縁性液体中での分散性を高め、低粘度でありながら、良好な保存安定性が得られると考えられる。なお、結晶性ポリエステルの結晶性が低いと、非晶質ポリエステルを併用する場合には、非晶質ポリエステルのガラス転移温度が低下し、逆に保存安定性が低下する。
また、定着性に優れるのは、該結晶性ポリエステルは低極性であり、加熱定着時に、低極性の絶縁性液体に相溶し易く、成膜しやすくなるためと考えられる。
さらに、低極性の結晶性ポリエステルを用いることで、絶縁性液体中に、低分子の結晶性ポリエステルが溶出したとしても、低極性であるため、現像液(液体現像剤)を高抵抗に維持できる。これにより、絶縁性液体中での転写効率を向上させることができる。
本発明の液体現像剤において、ポリエステル樹脂はトナー粒子の結着樹脂となる樹脂であり、前記の如く結晶性ポリエステルを含む。
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.7〜1.2、より好ましくは0.9〜1.2、さらに好ましくは0.9〜1.1であり、非晶質樹脂は1.4を超えるか、0.6未満の樹脂であり、好ましくは1.5を超えるか、0.5以下である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性樹脂においては、吸熱の最高ピーク温度を融点とする。
結晶性ポリエステルは、長鎖脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、長鎖脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを含む原料モノマーを重縮合して得られる樹脂(以下、結晶性ポリエステル(C)ともいう)である。
長鎖脂肪族ジオールの炭素数は、保存安定性及び定着性に優れる観点から、8以上であり、10以上が好ましく、12以上がより好ましい。また、生産性の観点から、14以下である。
炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールとしては、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられ1種であっても、2種以上が併用されていてもよい。これらの中では、トナー定着性を向上させる観点から、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールが好ましく、1,12-ドデカンジオールがより好ましい。
炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールは、トナーの低温定着性を向上させる観点から、水酸基を炭素鎖の末端に有していることが好ましく、α,ω−直鎖アルカンジオールであることが好ましい。
炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールの含有量は、現像液の抵抗が高く、保存安定性及び定着性に優れる観点から、結晶性ポリエステル(C)のアルコール成分中、60モル%以上、100モル%以下であり、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい。
他のアルコール成分としては、炭素数2〜7の脂肪族ジオール、炭素数15以上の脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
長鎖脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、保存安定性及び定着性に優れる観点から、8以上であり、10以上が好ましい。また、生産性の観点から、14以下である。長鎖脂肪族ジカルボン酸化合物における鎖状炭化水素基は直鎖であっても分岐鎖であってもよいが直鎖であることが好ましい。
炭素数8以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、スベリン酸(炭素数:8)、アゼライン酸(炭素数:9)、セバシン酸(炭素数:10)、1,10−デカンジカルボン酸(炭素数:12)、1,12−ドデカンジカルボン酸(炭素数:14)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物、これらの酸の炭素数1〜3のアルキルエステル等が挙げられる。本発明において、脂肪族カルボン酸化合物の炭素数にアルキルエステル部の炭素数は含まれない。
炭素数8以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、現像液の抵抗が高く、保存安定性及び定着性に優れる観点から、結晶性ポリエステル(C)のカルボン酸成分中、60モル%以上、100モル%以下であり、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい。
他のカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸化合物、炭素数2以上7以下の脂肪族ジカルボン酸化合物、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上のカルボン酸化合物等が挙げられる。
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、適宜含有されていてもよい。
結晶性ポリエステル(C)の原料モノマーは、低粘度であり、定着性に優れ、さらに液体現像剤を高抵抗に維持する観点から、炭素数12以上22以下の1価の脂肪族アルコール及び炭素数12以上22以下の1価の脂肪族カルボン酸化合物の少なくともいずれかを含有することが好ましい。
1価の脂肪族アルコールと1価の脂肪族カルボン酸化合物の炭素数は、定着性の観点から、12以上が好ましく、16以上がより好ましく、18以上がさらに好ましい。また、生産性の観点から、22以下が好ましく、20以下がより好ましく、18以下がさらに好ましい。
炭素数12以上22以下の1価の脂肪族アルコールとしては、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられ、これらのなかでは、ステアリルアルコールが好ましい。
炭素数12以上22以下の1価の脂肪族カルボン酸化合物としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等が挙げられ、これらのなかでは、ステアリン酸が好ましい。
炭素数12以上22以下の1価の脂肪族アルコールと炭素数12〜22の1価の脂肪族カルボン酸化合物の総含有量は、低粘度であり、定着性に優れ、さらに液体現像剤を高抵抗に維持する観点から、結晶性ポリエステル(C)の原料モノマー中、即ち、アルコール成分とカルボン酸成分の総量中、1モル%以上が好ましく、2モル%以上がより好ましく、3モル%以上がさらに好ましい。また、保存安定性の観点から、15モル%以下が好ましく、12モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましく、8モル%以下がさらに好ましく、6%以下がさらに好ましい。
結晶性ポリエステル(C)の原料モノマー中、炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールと炭素数12以上22以下の1価の脂肪族アルコールと炭素数8以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物と炭素数12以上22以下の1価の脂肪族カルボン酸化合物の総含有量は、結晶性ポリエステルの疎水性を高め、結晶性を向上させることで、保存安定性が向上する観点から、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。また、100モル%以下が好ましく、実質的に100モル%がより好ましく、100モル%がさらに好ましい。
結晶性ポリエステル(C)のカルボン酸成分とアルコール成分のモル比(カルボン酸成分/アルコール成分)は、トナーの分散安定性を向上させる観点から、0.90以上が好ましく、0.95以上がより好ましい。また、トナーの帯電性を向上させる観点から、1.15以下が好ましく、1.10以下がより好ましい。
アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合反応時の温度は、反応性の観点から、200℃以上が好ましく、225℃以上がより好ましい。また、熱分解性の観点から、250℃以下が好ましい。
重縮合反応は、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下で行ってもよい。
エステル化触媒としては、スズ触媒、チタン触媒等が挙げられる。スズ触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等が挙げられる。チタン触媒としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。
エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
結晶性ポリエステル(C)の軟化点は、トナーの保存性の観点から、65℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性の観点から、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。
結晶性ポリエステル(C)の融点は、トナーの保存性の観点から、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性の観点から、95℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましい。
結晶性ポリエステル(C)の酸価は、トナーの低温定着性の観点から、3mgKOH/g以上が好ましく、5mgKOH/g以上がより好ましい。また、トナーの保存性の観点から、40mgKOH/g以下が好ましく、30mg KOH/g以下がより好ましく、25mgKOH/g以下がさらに好ましく、18mgKOH/g以下がさらに好ましい。
ポリエステル樹脂は、保存安定性及び定着性の観点から、さらに非晶質ポリエステルを含有していることが好ましい。
非晶質ポリエステルのアルコール成分としては、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、1,2-プロパングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、水素添加ビスフェノールA等の2価のアルコール;ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
アルコール成分としては、ポリエステルの極性を高めて、結晶性ポリエステル(C)の結晶化を促進し、現像液を高抵抗に維持することができ、定着性及び保存安定性にも優れる観点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、式(I):
Figure 2016080837
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上であり、好ましくは16以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、現像液の抵抗が高く、定着性に優れる観点から、非晶質ポリエステルのアルコール成分中、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。また、100モル%以下が好ましく、実質的に100モル%がより好ましく、100モル%がさらに好ましい。
非晶質ポリエステルのカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;これらの酸の無水物及びこれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
非晶質ポリエステルのカルボン酸成分のカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸化合物を含有していることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸の無水物、これらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、ポリエステルの極性を高めて、結晶性ポリエステルの結晶化を促進し、現像液を高抵抗に維持することができ、また定着性及び保存安定性にも優れる観点から、非晶質ポリエステルのカルボン酸成分中、又は非晶質ポリエステル(A)のカルボン酸成分中、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。また、100モル%以下が好ましく、実質100モル%がより好ましく、100モル%がさらに好ましい。
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、適宜含有されていてもよい。
従って、本発明では、非晶質ポリエステルは、上記観点から、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分と、カルボン酸成分とを重縮合して得られる非晶質ポリエステル(以下、非晶質ポリエステル(A)ともいう)を含むことが好ましい。非晶質ポリエステル(A)の含有量は、非晶質ポリエステル中、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。また、100質量%以下が好ましく、実質的に100質量%がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、現像液の抵抗が高く、定着性に優れる観点から、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。また、100モル%以下が好ましく、実質的に100モル%がより好ましく、100モル%がさらに好ましい。
非晶質ポリエステル(A)のカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸化合物を含むことが好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、ポリエステルの極性を高めて、結晶性ポリエステルの結晶化を促進し、現像液を高抵抗に維持することができ、また定着性及び保存安定性にも優れる観点から、非晶質ポリエステル(A)のカルボン酸成分中、又は非晶質ポリエステル(A)のカルボン酸成分中、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。また、100モル%以下が好ましく、実質100モル%がより好ましく、100モル%がさらに好ましい。
アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合については、結晶性ポリエステルと同様である。
非晶質ポリエステル又は非晶質ポリエステル(A)の軟化点は、トナーの保存性の観点から、80℃以上が好ましく、85℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性の観点から、105℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。
非晶質ポリエステル又は非晶質ポリエステル(A)のガラス転移温度は、トナーの保存性の観点から、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性の観点から、65℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。
非晶質ポリエステル又は非晶質ポリエステル(A)の酸価は、トナーの低温定着性の観点から、3mgKOH/g以上が好ましく、8mgKOH/g以上がより好ましい。また、トナーの保存性の観点から、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましい。
結晶性ポリエステル(C)の含有量は、ポリエステル樹脂中、定着性と保存安定性の観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。また、低粘度化し、現像液の抵抗が高く、保存安定性及び定着性に優れる観点から、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下がさらにより好ましい。
また、結晶性ポリエステル(C)と非晶質ポリエステルの総量中の結晶性ポリエステル(C)の含有量、又は結晶性ポリエステル(C)と非晶質ポリエステル(A)の総量中の結晶性ポリエステル(C)の含有量は、定着性と保存安定性の観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。また、低粘度化し、現像液の抵抗が高く、保存安定性及び定着性に優れる観点から、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下がさらにより好ましい。
なお、本発明において、非晶質ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、アルコール成分と、カルボン酸成分とを重縮合させて得られる重縮合系樹脂成分と、スチレン系樹脂成分とを含む複合樹脂、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
本発明の液体現像剤は、本発明の効果が損なわれない範囲において、ポリエステル樹脂以外の他の樹脂が含有されていてもよいが、ポリエステル樹脂の含有量は、樹脂の総量中、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。また、好ましくは100質量%以下、より好ましくは実質的に100質量%、さらに好ましくは100質量%であり、即ち樹脂として、ポリエステル樹脂のみを用いることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体であるスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、ポリウレタン、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂等が挙げられる。
顔料としては、トナー用着色剤として用いられている顔料のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等を用いることができる。本発明において、トナー粒子は、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
顔料の含有量は、トナー粒子の粉砕性を向上させ小粒径の液体現像剤を得る観点、液体現像剤の低温定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは25質量部以下である。また、液体現像剤の画像濃度を向上させる観点から、樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは15質量部以上である。
本発明では、トナー原料として、さらに、離型剤、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜使用されていてもよい。
本発明の液体現像剤は、トナー粒子を絶縁性液体中に分散させて得られるが、トナー粒子を得る方法としては、樹脂や顔料を含有するトナー原料を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕して得る方法、水系樹脂分散液と水系顔料分散液を混合し樹脂粒子と顔料粒子を合一させる方法、及び水系樹脂分散液と顔料を高速攪拌する方法等が挙げられる。液体現像剤の現像性及び定着性を向上させる観点から、トナー原料を溶融混練した後に粉砕する方法が好ましい。かかる観点から、本発明の液体現像剤は、
工程1:少なくともポリエステル樹脂と顔料とを溶融混練し、得られた混練物を、粉砕して、トナー粒子を得る工程、及び
工程2:トナー粒子を、分散剤の存在下で、絶縁性液体中に分散させる工程
を含む方法により製造することが好ましい。
工程1では、少なくとも結晶性ポリエステル(C)を含み、好ましくは非晶質ポリエステル、より好ましくは非晶質ポリエステル(A)を、さらに含むポリエステル樹脂と顔料とを溶融混練する。溶融混練時に、結晶性ポリエステルが微分散される。結晶性ポリエステル(C)は、疎水性の高い長鎖脂肪族ジオールと長鎖脂肪族ジカルボン酸化合物を高い割合で含有している原料モノマーを用いているため、工程1の終了時に結晶化し易い。これにより、液体現像液中のトナー粒子から結晶性ポリエステルが溶出しにくく、現像液を高抵抗に維持することができ、保存安定性にも優れる。
工程1の溶融混練は、密閉式ニーダー、一軸もしくは二軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。混練の繰り返しや分散助剤の使用をしなくても、樹脂中に顔料を効率よく高分散させることができる観点から、オープンロール型混練機を用いることが好ましい。
ポリエステル樹脂と顔料は、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。また、必要に応じて、離型剤、荷電制御剤等の添加剤を樹脂等とともに溶融混練に供してもよい。
オープンロール型混練機とは、混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。また、連続式オープンロール型混練機は、少なくとも2本のロールを備えた混練機であることが好ましく、本発明に用いられる連続式オープンロール型混練機は、周速度の異なる2本のロール、即ち、周速度の高い高回転側ロールと周速度の低い低回転側ロールとの2本のロールを備えた混練機である。本発明においては、樹脂への顔料の分散性を向上させる観点から、高回転側ロールは加熱ロール、低回転側ロールは冷却ロールであることが好ましい。
ロールの温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
高回転側ロールの原料投入側端部温度は、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及び顔料のポリエステル樹脂への分散性を向上させる観点から、100℃以上、160℃以下が好ましく、同様の観点から、低回転側ロールの原料投入側端部温度は30℃以上、100℃以下が好ましい。
高回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、混練物のロールからの脱離を防止する観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及び顔料のポリエステル樹脂への分散性を向上させる観点から、好ましくは20℃以上であり、また、好ましくは60℃以下、より好ましくは55℃以下である。低回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及び顔料の樹脂への分散性を向上させる観点から、50℃以下であることが好ましく、30℃以下がより好ましい。
高回転側ロールの周速度は、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及び顔料のポリエステル樹脂への分散性を向上させる観点から、好ましくは2m/min以上、より好ましくは10m/min以上、さらに好ましくは25m/min以上であり、また、好ましくは100m/min以下、より好ましくは75m/min以下であり、さらに好ましくは50m/min以下である。低回転側ロールの周速度は、同様の観点から、好ましくは1m/min以上、より好ましくは5m/min以上、さらに好ましくは10m/min以上であり、また、好ましくは90m/min以下、より好ましくは60m/min以下、さらに好ましくは30m/min以下、よりさらに好ましくは20m/min以下である。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、好ましくは1/10〜9/10、より好ましくは3/10〜8/10である。
ロールの構造、大きさ、材料等は特に限定されず、ロール表面も、平滑、波型、凸凹型等のいずれであってもよいが、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及び顔料の樹脂への分散性を向上させる観点から、各ロールの表面には複数の螺旋状の溝が刻んであることが好ましい。
溶融混練により得られた混練物を、粉砕可能な硬度に達するまで適宜し、粉砕する。
粉砕は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、樹脂混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに所望の粒径に微粉砕してもよい。
粉砕に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式カウンタージェットミル、衝突板式ジェットミル、回転型機械式ミル等が挙げられる。
工程1において、粉砕の後、得られたトナー粒子は、必要に応じて、分級することが好ましい。
分級に用いられる分級機としては、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程を繰り返してもよい。
工程1により得られるトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、後述の湿式粉砕工程の生産性を向上させる観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、また、好ましくは15μm以下、より好ましくは12μm以下である。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
工程2は、工程1で得られたトナー粒子を、分散剤の存在下で、絶縁性液体中に分散させる工程である。
本発明では、液体現像剤中のトナー粒子の粒径を小さくする観点、及び液体現像剤の粘度を低減する観点から、以下の工程2−1〜工程2−2を含む方法により、工程2を行うことが好ましい。
工程2−1:工程1で得られたトナー粒子に分散剤を加え、絶縁性液体中に分散させ、トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程2−2:工程2−1で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程
工程2−1で用いる絶縁性液体とは、電気が流れにくい液体のことを意味するが、本発明においては、絶縁性液体の導電率が、1.0×10-11S/m以下が好ましく、5.0×10-12S/m以下がより好ましく、1.0×10-13S/m以上が好ましい。また、絶縁性液体は、誘電率が3.5以下であることが好ましい。
絶縁性液体の具体例としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ポリシロキサン、植物油等が挙げられる。特に、臭気、無害性及びコストの点から、流動パラフィン、イソパラフィン、炭素数12以上18以下のオレフィン等の脂肪族炭化水素が好ましい。脂肪族炭化水素の市販品としては、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーK、アイソパーM(以上、いずれもエクソンモービル社製)、シェルゾール71、シェルゾールTM(以上、いずれもシェルケミカルズジャパン社製)、IPソルベント1620、IPソルベント2028、IPソルベント2835(以上、いずれも出光興産社製)、モレスコホワイトP-55、モレスコホワイトP-70、モレスコホワイトP-100、モレスコホワイトP-150、モレスコホワイトP-260(以上、いずれもMORESCO社製)、コスモホワイトP-60、コスモホワイトP-70(以上、いずれもコスモ石油ルブリカンツ社製)、ライトール(Sonneborn社製)、アイソゾール400(JX日鉱日石エネルギー社製)、リニアレン14、リニアレン16、リニアレン18、リニアレン124、リニアレン148、リニアレン168(以上、いずれも出光興産社製)等が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ、液体現像剤の定着性を向上させる観点及び抵抗を高める観点から、炭素数12以上18以下のオレフィンが好ましく、炭素数12以上16以下のオレフィンがより好ましい。また、オレフィンの中でも、液体現像剤の定着性を向上させる観点、及び入手性の観点から、α-オレフィンが好ましい。
絶縁性液体中に炭素数12以上18以下のオレフィンを含有する場合、該オレフィンの含有量は、液体現像剤の定着性を向上させる観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、絶縁性液体中、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。また、100質量%以下が好ましく、実質的に100質量%がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。
絶縁性液体の25℃における粘度は、液体現像剤の現像性を向上させる観点から、100mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以下がより好ましく、20mPa・s以下がさらに好ましく、10mPa・s以下がさらに好ましく、5mPa・s以下がさらに好ましい。また、液体現像剤中でのトナー粒子の分散安定性を向上させる観点から、1mPa・s以上が好ましく、1.5mPa・s以上がより好ましい。なお、絶縁性液体の粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
工程2−1でトナー粒子を絶縁性液体中に安定に分散させるために用いる分散剤としては、ポリエステル樹脂への吸着性を向上させる観点から、吸着基として塩基性吸着基を有する塩基性分散剤が好ましく、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点、及び湿式粉砕時にトナー粒子の粉砕性を向上させ小粒径の液体現像剤を得る観点から、ポリイミンとカルボン酸の縮合物がより好ましい。
ポリイミンとカルボン酸の縮合物の原料となるポリイミンとしては、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、ポリアルキレンイミンが好ましい。ポリアルキレンイミンの具体例としては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン等が挙げられるが、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、ポリエチレンイミンがより好ましい。
ポリイミンとカルボン酸の縮合物の原料となるカルボン酸としては、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは炭素数10以上30以下、より好ましくは炭素数12以上24以下、さらに好ましくは炭素数16以上22以下の飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸が好ましく、直鎖の飽和又は不飽和の脂肪族カルボン酸がより好ましい。具体的なカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の直鎖飽和脂肪族カルボン酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の直鎖不飽和脂肪族カルボン酸等が挙げられる。
また、ポリイミンとカルボン酸の縮合物の原料となるカルボン酸は、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよく、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、ヒドロキシ基を置換基として有する、ヒドロキシカルボン酸であることが好ましい。ヒドロキシカルボン酸としては、メバロン酸、リシノール酸、12-ヒドロキシステアリン酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸はその縮合体であってもよい。
上記観点から、ポリイミンとカルボン酸の縮合物の原料となるカルボン酸としては、好ましくは炭素数10以上30以下、より好ましくは炭素数12以上24以下、さらに好ましくは炭素数16以上22以下のヒドロキシ脂肪族カルボン酸、及びその縮合体が好ましく、12-ヒドロキシステアリン酸及びその縮合体がより好ましい。
ポリイミンとカルボン酸の縮合物の具体例としては、ソルスパース11200、ソルスパース13940(以上、いずれも日本ルーブリゾール社製)等が挙げられる。
ポリイミンとカルボン酸の縮合物以外の分散剤としては、アジスパーPB-821(商品名、味の素ファインテクノ株式会社製、塩基性ウレタン樹脂分散剤、アミン価:9mgKOH/g)、アジスパーPB-822(商品名、味の素ファインテクノ株式会社製、塩基性ウレタン樹脂分散剤、アミン価:17mgKOH/g)等が挙げられる。
分散剤中のポリイミンとカルボン酸の縮合物の含有量は、トナー粒子の凝集を抑制し、液体現像剤の粘度を低減する観点、及び湿式粉砕時にトナー粒子の粉砕性を向上させ小粒径の液体現像剤を得る観点から、分散剤の有効分中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。また、好ましくは100質量%以下、より好ましくは実質的に100質量%、さらに好ましくは100質量%である。
分散剤の使用量は、トナー粒子の凝集を抑制し、液体現像剤の粘度を低減する観点から、トナー粒子100質量部に対して、有効分として好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上である。また、液体現像剤の現像性及び定着性を向上させる観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
トナー粒子、絶縁性液体、及び分散剤の混合方法としては、攪拌混合装置により攪拌する方法等が好ましい。
撹拌混合装置は、特に限定はされないが、トナー粒子分散液の生産性及び保存安定性を向上させる観点から、高速攪拌混合装置が好ましく、具体的には、デスパ(浅田鉄工社製)、T.K.ホモミクサー、T.K.ホモディスパー、T.K.ロボミックス(以上、いずれもプライミクス社製)、クレアミックス(エム・テクニック社製)、ケイディーミル(ケイディー・インターナショナル社製)等が好ましい。
トナー粒子と絶縁性液体及び分散剤を高速攪拌混合装置により混合することによって、トナー粒子が予備分散され、トナー粒子分散液を得ることができ、次の湿式粉砕による液体現像剤の生産性が向上する。
続く工程2−2は、工程2−1で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程である。湿式粉砕とは、絶縁性液体中に分散させたトナー粒子を、絶縁性液体に分散した状態で機械的に粉砕処理する方法である。
湿式粉砕に供するトナー粒子分散液の固形分濃度は、液体現像剤の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは33質量%以上である。また、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。なお、トナー粒子分散液の固形分濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
湿式粉砕に使用する装置としては、例えば、アンカー翼等の一般に用いられている撹拌混合装置を用いることができる。撹拌混合装置の中では、デスパ(浅田鉄工社製)、T.K.ホモミクサー(プライミクス社製)等の高速攪拌混合装置、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の粉砕機及び混練機等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
これらの中では、液体現像剤中のトナー粒子の粒径を小さくする観点、及び液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点、及びトナー粒子分散液の粘度を低減する観点から、ビーズミルの使用が好ましい。
ビーズミルでは、用いるメディアの粒径や充填率、ローターの周速度、滞留時間等を制御することにより所望の粒径、粒径分布を持ったトナー粒子を得ることができる。
液体現像剤の固形分濃度は、液体現像剤の画像濃度を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。また、液体現像剤中のトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。なお、液体現像剤の固形分濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。トナー粒子分散液調製後、希釈、濃縮等の操作がなければ、トナー粒子分散液の固形分濃度が液体現像剤の固形分濃度となるが、湿式粉砕後に絶縁性液体で希釈して固形分濃度を調整してもよい。
液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、液体現像剤中のトナー粒子の粒径を小さくし、液体現像剤の画質を向上させる観点から、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2.5μm以下である。また、液体現像剤の粘度を低減する観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上である。なお、液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
液体現像剤の25℃における粘度は、液体現像剤の定着性を向上させる観点から、好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは40mPa・s以下、さらに好ましくは35mPa・s以下、さらに好ましくは25mPa・s以下である。また、液体現像剤中でのトナー粒子の分散安定性を向上させ保存安定性を向上させる観点から、好ましくは3mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上、さらに好ましくは7mPa・s以上、さらに好ましくは10mPa・s以上である。なお、液体現像剤の粘度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の液体現像剤及びその製造方法を開示する。
<1> ポリエステル樹脂と顔料とを含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤であって、前記ポリエステル樹脂が、炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールを60モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分と、炭素数8以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を60モル%以上100モル%以下含有するカルボン酸成分とを含む原料モノマーを重縮合して得られる結晶性ポリエステルを含有する、液体現像剤。
<2> 炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールの炭素数が、10以上であり、12以上が好ましい、前記<1>記載の液体現像剤。
<3> 炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールの含有量が、結晶性ポリエステルのアルコール成分中、70モル%以上であり、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい、前記<1>又は<2>記載の液体現像剤。
<4> 炭素数8以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数が、10以上である、前記<1>〜<3>いずれか記載の液体現像剤。
<5> 炭素数8以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量が、結晶性ポリエステルのカルボン酸成分中、70モル%以上であり、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、実質的に100モル%がさらに好ましく、100モル%がさらに好ましい、前記<1>〜<4>いずれか記載の液体現像剤。
<6> 結晶性ポリエステルの原料モノマーが、炭素数12以上22以下の1価の脂肪族アルコール及び炭素数12以上22以下の1価の脂肪族カルボン酸化合物の少なくともいずれかを含有する、前記<1>〜<5>いずれか記載の液体現像剤。
<7> 1価の脂肪族アルコールと1価の脂肪族カルボン酸化合物の炭素数は、16以上であり、18以上が好ましく、20以下であり、18以下が好ましい、前記<6>記載の液体現像剤。
<8> 炭素数12以上22以下の1価の脂肪族アルコールと炭素数12以上22以下の1価の脂肪族カルボン酸化合物の総含有量が、結晶性ポリエステルの原料モノマー中、即ち、アルコール成分とカルボン酸成分の総量中、1モル%以上であり、2モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、15モル%以下であり、12モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、8モル%以下がさらに好ましく、6%以下がさらに好ましい、前記<6>又は<7>記載の液体現像剤。
<9> 結晶性ポリエステルの原料モノマー中、炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールと炭素数12以上22以下の1価の脂肪族アルコールと炭素数8以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物と炭素数12以上22以下の1価の脂肪族カルボン酸化合物の総含有量が、80モル%以上であり、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、100モル%以下であり、実質的に100モル%がより好ましく、100モル%がさらに好ましい、前記<6>〜<8>いずれか記載の液体現像剤。
<10> ポリエステル樹脂は、さらに非晶質ポリエステルを含有している、前記<1>〜<9>いずれか記載の液体現像剤。
<11> 非晶質ポリエステルが、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分と、カルボン酸成分とを重縮合して得られる非晶質ポリエステル(A)を含有する、前記<10>記載の液体現像剤。
<12> 式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量が、非晶質ポリエステル(A)のアルコール成分中、70モル%以上であり、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、100モル%以下であり、実質的に100モル%がより好ましく、100モル%がさらに好ましい、前記<11>記載の液体現像剤。
<13> 非晶質ポリエステル(A)のカルボン酸成分が、芳香族ジカルボン酸化合物を含有する、前記<11>又は<12>記載の液体現像剤。
<14> 芳香族ジカルボン酸化合物の含有量が、非晶質ポリエステル(A)のカルボン酸成分中、70モル%以上であり、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、100モル%以下が好ましく、実質100モル%がより好ましく、100モル%がさらに好ましい、前記<13>記載の液体現像剤。
<15> 結晶性ポリエステルの含有量が、ポリエステル樹脂中、3質量%以上であり、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、50質量%以下であり、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらにより好ましい、前記<1>〜<14>いずれか記載の液体現像剤。
<16> 結晶性ポリエステル(C)と非晶質ポリエステルの総量中の結晶性ポリエステル(C)の含有量、又は結晶性ポリエステル(C)と非晶質ポリエステル(A)の総量中の結晶性ポリエステル(C)の含有量は、3質量%以上であり、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、50質量%以下であり、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらにより好ましい、前記<10>〜<15>いずれか記載の液体現像剤。
<17> 顔料の含有量が、樹脂100質量部に対して、100質量部以下であり、好ましくは70質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは25質量部以下であり、5質量部以上であり、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上である、前記<1>〜<16>いずれか記載の液体現像剤。
<18> 液体現像剤の固形分濃度が、10質量%以上であり、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、50質量%以下であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である、前記<1>〜<17>いずれか記載の液体現像剤。
<19> 液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)が、5μm以下であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは2.5μm以下であり、0.5μm以上であり、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは1.5μm以上である、前記<1>〜<18>いずれか記載の液体現像剤。
<20> 液体現像剤の25℃における粘度が、50mPa・s以下であり、好ましくは40mPa・s以下、より好ましくは35mPa・s以下、さらに好ましくは25mPa・s以下であり、3mPa・s以上であり、好ましくは5mPa・s以上、より好ましくは7mPa・s以上、さらに好ましくは10mPa・s以上である、前記<1>〜<19>いずれか記載の液体現像剤の製造方法。
<21> 工程1:少なくともポリエステル樹脂と顔料とを溶融混練し、得られた混練物を、粉砕して、トナー粒子を得る工程であって、該ポリエステル樹脂が結晶性ポリエステルを含有し、該結晶性ポリエステルが、炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールを60モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分と、炭素数8以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を60モル%以上100モル%以下含有するカルボン酸成分とを含む原料モノマーを重縮合して得られる樹脂である、工程、及び
工程2:トナー粒子を、分散剤の存在下で、絶縁性液体中に分散させる工程
を含む、液体現像剤の製造方法。
<22> 工程1における溶融混練を、オープンロール型混練機を用いて行う、前記<21>記載の液体現像剤の製造方法。
<23> 工程2が、
工程2−1:工程1で得られたトナー粒子に分散剤を加え、絶縁性液体中に分散させ、トナー粒子分散液を得る工程、及び
工程2−2:工程2−1で得られたトナー粒子分散液を湿式粉砕し、液体現像剤を得る工程
を含む、前記<21>又は<22>記載の液体現像剤の製造方法。
<24> ポリエステル樹脂が、さらに、非晶質ポリエステル、好ましくは非晶質ポリエステル(A)を含有している、前記<21>〜<23>いずれか記載の液体現像剤の製造方法。
<25> 結晶性ポリエステル(C)と非晶質ポリエステルの総量中の結晶性ポリエステル(C)の含有量、又は結晶性ポリエステル(C)と非晶質ポリエステル(A)の総量中の結晶性ポリエステル(C)の含有量は、3質量%以上であり、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、50質量%以下であり、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらにより好ましい、前記<21>〜<24>いずれか記載の液体現像剤の製造方法。
<26> 絶縁性液体が、流動パラフィン、イソパラフィン、及び炭素数12以上18以下のオレフィンからなる群より選ばれた少なくとも1種の脂肪族炭化水素であり、炭素数12以上18以下のオレフィンが好ましく、炭素数12以上16以下のオレフィンがより好ましく、オレフィンはα-オレフィンが好ましい、前記<21>〜<25>いずれか記載の液体現像剤の製造方法。
<27> 炭素数12以上18以下のオレフィンの含有量が、絶縁性液体中、10質量%以上であり、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%以下であり、実質的に100質量%がより好ましく、100質量%がさらに好ましい、前記<26>記載の液体現像剤の製造方法。
<28> 絶縁性液体の25℃における粘度が、100mPa・s以下であり、50mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましく、10mPa・s以下がさらに好ましく、5mPa・s以下がさらに好ましく、1mPa・s以上であり、1.5mPa・s以上がより好ましい、前記<21>〜<27>いずれか記載の液体現像剤の製造方法。
<29> 分散剤が、塩基性吸着基を有する塩基性分散剤であり、ポリイミンとカルボン酸の縮合物が好ましい、前記<21>〜<28>いずれか記載の液体現像剤の製造方法。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(島津製作所社製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/minで0℃まで冷却しそのまま1分間静止させる。その後、昇温速度10℃/minで測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの頂点の温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱ピークを測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
〔絶縁性液体と混合する前のトナー粒子の体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB(グリフィン):13.6)を5質量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
〔絶縁性液体及び液体現像剤の25℃における粘度〕
6mL容のガラス製サンプル管「スクリューNo.2」(マルエム社製)に測定液を4〜5mL入れ、回転振動式粘度計「ビスコメイトVM-10A-L」(セコニック社製)を用いて、25℃にて粘度を測定する。
〔絶縁性液体の導電率〕
絶縁性液体25gを40mL容のガラス製サンプル管「スクリューNo.7」(マルエム社製)に入れ、非水系導電率計「DT-700」(Dispersion Technology社製)を用いて、電極を液体現像剤に浸し、20回測定を行って平均値を算出し、導電率を測定する。数値が小さいほど高抵抗であることを示す。
〔トナー粒子分散液及び液体現像剤の固形分濃度〕
試料10質量部をヘキサン90質量部で希釈し、遠心分離装置「H-201F」(コクサン社製)を用いて、回転数25000r/minにて、20分間回転させる。静置後、上澄み液をデカンテーションにて除去した後、90質量部のヘキサンで希釈し、同様の条件で再び遠心分離を行う。上澄み液をデカンテーションにて除去した後、下層を真空乾燥機にて0.5kPa、40℃にて8時間乾燥させ、以下の式より固形分濃度を計算する。
Figure 2016080837
〔液体現像剤中のトナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
レーザー回折/散乱式粒径測定装置「マスターサイザー2000」(マルバーン社製)を用いて、測定用セルにアイソパーL(エクソンモービル社製、イソパラフィン、25℃における粘度1mPa・s)を加え、散乱強度が5〜15%になる濃度で、粒子屈折率1.58(虚数部0.1)、分散媒屈折率1.42の条件にて、体積中位粒径(D50)を測定する。
樹脂製造例1〔樹脂A1〕
表1に示す原料モノマー、エステル化触媒及びエステル化助触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、230℃に昇温して反応率が90%に達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて、軟化点が93℃に達した時点で反応を終了し、表1に示す物性を有する非晶質ポリエステルを得た。なお、反応率とは、生成反応水量(mol)/理論生成水量(mol)×100の値をいう。
樹脂製造例2〔樹脂A2〕
表1に示す原料モノマー、及びエステル化触媒を窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、マントルヒーターを用いて、180℃に昇温した後、210℃まで10時間かけて昇温を行い、210℃にて反応率が90%に到達するまで反応させ、さらに8.3kPaにて、表1に示す軟化点に達するまで反応を行って、表1に示す物性を有する非晶質ポリエステルを得た。
樹脂製造例3〔樹脂C1〜C3、C6〜C7、C9〕
表1に示す原料モノマー、及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、140℃で6時間保持、さらに200℃まで6時間かけて昇温、200℃にて1時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させて、表1に示す物性を有する結晶性ポリエステルを得た。
樹脂製造例4〔樹脂C4、C5、C8〕
表1に示す原料モノマー、エステル化触媒、及び重合禁止剤を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、140℃で6時間保持、さらに200℃まで6時間かけて昇温、200℃にて1時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させて、表1に示す物性を有する結晶性ポリエステルを得た。
Figure 2016080837
実施例及び比較例で用いた絶縁性液体を表2に示す。
Figure 2016080837
実施例1〜9及び比較例1〜5
〔工程1〕
表3に示す樹脂85質量部及び顔料「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー15:3)15質量部を、予め20L容積のヘンシェルミキサーを使用し、回転数1500r/min(周速度21.6m/sec)で3分間攪拌混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
<溶融混練条件>
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(日本コークス工業社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:55cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)回転数75r/min(周速度32.4m/min)、低回転側ロール(バックロール)回転数35r/min(周速度15.0m/min)、原料投入側端部のロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が110℃及び混練物排出側が85℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の上記混練機への供給速度は10kg/h、上記混練機中の平均滞留時間は約3分間であった。
上記で得られた混練物を冷却ロールで圧延冷却した後、ハンマーミルを用いて1mm程度に粗粉砕した。得られた粗粉砕物を気流式ジェットミル「IDS」(日本ニューマチック社製)により微粉砕及び分級し、体積中位粒径(D50)が10μmのトナー粒子を得た。
〔工程2−1〕
得られたトナー粒子35質量部と表3に示す絶縁性液体62.9質量部、及び塩基性分散剤「ソルスパース11200」(日本ルーブリゾール社製、ポリイミンとカルボン酸の縮合物、有効分50%)2.1質量部を1L容のポリエチレン製容器に入れ、「T.K.ロボミックス」(プライミクス社製)を用いて、氷冷下、回転数7000r/minにて30分間攪拌を行い、固形分濃度が36質量%のトナー粒子分散液を得た。
〔工程2−2〕
次に、得られたトナー粒子分散液を、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いて、体積充填率60体積%にて、6筒式サンドミル「TSG-6」(アイメックス社製)で回転数1300r/min(周速度4.8m/sec)にて表3に示す体積中位粒径(D50)になるまで湿式粉砕した。ビーズをろ過により除去した後、ろ液100質量部に対し表3に示す絶縁性液体40質量部を加えて希釈し、固形分濃度が26質量%の、表3に示す物性を有する液体現像剤を得た。
試験例1〔液体現像剤の導電率〕
液体現像剤25gを40mL容のガラス製サンプル管「スクリューNo.7」(マルエム社製)に入れ、非水系導電率計「DT-700」(Dispersion Technology社製)を用いて、電極を液体現像剤に浸し、20回測定を行って平均値を算出し、導電率を測定した。結果を表3に示す。数値が小さいほど高抵抗であることを示し、導電率は、1.0×10-10S/m以下が好ましく、5.0×10-11S/m以下がより好ましく、3.0×10-11S/m以下がさらに好ましい。
試験例2〔定着性〕
「PODグロスコート紙」(王子製紙社製)に液体現像剤を滴下し、ワイヤーバーにより乾燥後の質量が1.2g/m2になるように薄膜を作製した。
作製した薄膜を、60℃の恒温槽中で10秒間保持した後、「OKI MICROLINE 3010」(沖データ社製)の定着機を外部に取り出した外部定着機にて、定着ロールの温度を140℃に設定し、140mm/secの定着速度で定着させた。
得られた定着画像にメンディングテープ「Scotchメンディングテープ810」(3M社製、幅18mm)を貼り付け、500gの荷重がかかるようにローラーでテープに圧力をかけた後、テープを剥離した。テープ剥離前と剥離後の画像濃度を、色彩計「Spectroeye」(X-Rite社製)にて測定した。画像印字部は各3点測定し、その平均値を画像濃度として算出した。剥離後の画像濃度/剥離前の画像濃度×100の値から定着率(%)を算出し、定着性を評価した。結果を表3に示す。数値が大きいほど定着性に優れることを示し、定着率は、86%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましい。
試験例3〔保存安定性〕
液体現像剤10gを20mL容のガラス製サンプル管「スクリューNo.5」(マルエム社製)に入れ、40℃の恒温槽にて24時間保存した。保存前後の体積中位粒径を前記方法により測定し、得られた体積粒度分布から10μm以上の粒子の割合(体積%)を算出し、保存前後の差分の値から保存安定性を評価した。結果を表3に示す。数値が0に近いほどトナー粒子の分散安定性が良好であり、保存安定性に優れることを示し、保存前後の差分は、5体積%以下が好ましく、3体積%以下がより好ましく、1体積%以下がさらに好ましい。
Figure 2016080837
以上の結果から明らかなように、比較例1〜5と対比して、実施例1〜9の液体現像剤は、高抵抗であり、かつ定着性及び保存安定性が良好であることが分かる。
実施例1と実施例2との比較より、結晶性ポリエステルが炭素数16〜22の1価の脂肪族アルコール及び炭素数16〜22の1価の脂肪族カルボン酸化合物の少なくともいずれかを含有することで、低粘度であり、定着性に優れ、更に液体現像剤を高抵抗に維持できることがわかる。
実施例2、3、比較例4との比較により、炭素数8〜14、特に炭素数12の脂肪族ジオールを用いた場合、現像液の抵抗が高く、高い定着性を得ることができることがわかる。
実施例2と比較例1との比較により、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を用いた場合、低粘度であり、保存安定性、定着性に優れ、さらに液体現像剤を高抵抗に維持できることがわかる。
実施例2と実施例4との比較により、カルボン酸成分中、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸の含有量が多い方が、現像液の抵抗が高く、保存安定性に優れ、定着性に優れることがわかる。
実施例2と実施例9との比較により、アルコール成分中、炭素数8〜14の脂肪族ジオールの含有量が多い方が、現像液の抵抗が高く、保存安定性に優れ、定着性に優れることがわかる。
実施例1、5、6の比較において、ポリエステル樹脂が、さらに非晶質ポリエステルを含有し、非晶質ポリエステルと結晶性ポリエステルの合計量中、前記結晶性ポリエステルの含有量が10質量%である時に、保存安定性に優れ、定着性に優れることがわかる。
実施例1と実施例7との比較により、絶縁性液体はオレフィンの方が、現像液の抵抗が高く、定着性に優れることがわかる。
実施例1と実施例8との比較により、非晶質ポリエステルの原料モノマーとして、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を用いた場合に、現像液の抵抗が高く、定着性に優れることがわかる。
実施例1と比較例5との比較により、結晶性ポリエステルを用いることによって、定着性だけでなく、意外なことに、保存安定性も向上している。これは、結晶性ポリエステルの長鎖脂肪族部分により、トナー粒子の保存安定性が高められたためと考えられる。
本発明の液体現像剤は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。

Claims (8)

  1. ポリエステル樹脂と顔料とを含有するトナー粒子が絶縁性液体中に分散してなる液体現像剤であって、前記ポリエステル樹脂が、炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールを60モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分と、炭素数8以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を60モル%以上100モル%以下含有するカルボン酸成分とを含む原料モノマーを重縮合して得られる結晶性ポリエステルを含有する、液体現像剤。
  2. ポリエステル樹脂が、さらに非晶質ポリエステルを含有し、非晶質ポリエステルと結晶性ポリエステルの総量中、結晶性ポリエステルの含有量が3質量%以上50質量%以下である、請求項1記載の液体現像剤。
  3. 非晶質ポリエステルが、式(I):
    Figure 2016080837
    (式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1以上16以下である)
    で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を70モル%以上含有するアルコール成分と、カルボン酸成分とを重縮合して得られる非晶質ポリエステル(A)を含有する、請求項2記載の液体現像剤。
  4. 結晶性ポリエステルの原料モノマーが、炭素数12以上22以下の1価の脂肪族アルコール及び炭素数12以上22以下の1価の脂肪族カルボン酸化合物の少なくともいずれかを含有する、請求項1〜3いずれか記載の液体現像剤。
  5. 結晶性ポリエステルの原料モノマー中、炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールと炭素数12以上22以下の1価の脂肪族アルコールと炭素数8以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物と炭素数12以上22以下の1価の脂肪族カルボン酸化合物の総含有量が、80モル%以上100モル%以下である、請求項1〜4いずれか記載の液体現像剤。
  6. 工程1:少なくともポリエステル樹脂と顔料とを溶融混練し、得られた混練物を、粉砕して、トナー粒子を得る工程であって、該ポリエステル樹脂が結晶性ポリエステルを含有し、該結晶性ポリエステルが、炭素数8以上14以下の脂肪族ジオールを60モル%以上100モル%以下含有するアルコール成分と、炭素数8以上14以下の脂肪族ジカルボン酸化合物を60モル%以上100モル%以下含有するカルボン酸成分とを含む原料モノマーを重縮合して得られる樹脂である、工程、及び
    工程2:トナー粒子を、分散剤の存在下で、絶縁性液体中に分散させる工程
    を含む、液体現像剤の製造方法。
  7. 工程1における溶融混練を、オープンロール型混練機を用いて行う、請求項6記載の製造方法。
  8. ポリエステル樹脂が、さらに非晶質ポリエステルを含有し、非晶質ポリエステルと結晶性ポリエステルの総量中、結晶性ポリエステルの含有量が3質量%以上50質量%以下である、請求項6又は7記載の製造方法。
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