JP2016071964A - 空気極及び金属空気電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属空気電池の正極に用いられる空気極であって、上記空気極は、触媒層、導電層、及び、吸水層を備え、上記吸水層は、吸水性高分子を含む吸水部を有し、触媒層及び導電層に対して一方の側に設けられている空気極であり、好ましくは、空気極は、更に拡散層を備え、上記拡散層は、親水性多孔質膜から構成される親水部を有し、上記触媒層及び導電層と上記吸水層との間に設けられているものである。
【選択図】図3
Description
電解液が漏出すると、電池性能が著しく低下するとともに、長期信頼性を確保すること(長寿命化)ができず、また電池の使用者等が電解液と接触するなど安全性の面でも課題がある。
これに対し、上記特許文献1に記載のように、空気極触媒層等の空気極内部に高い撥水性を有するフッ素樹脂を混合することで、短期的には電解液の漏出を抑制することができるが、その様な対策を講じても、従来の金属空気電池では、空気極触媒層に形成される空隙(酸素拡散経路)を介して電解液が漏洩する場合があり、また、撥水性の高いフッ素樹脂であっても、高濃度電解液(KOH水溶液)等により撥水性が徐々に低下するため、長期的には電解液が漏出してしまい、長期信頼性、安全性を確保できなかった。
また上記特許文献2に記載のように、電解液の漏洩を防止するために、空気極の外側に多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜を有する金属空気電池が知られている。しかし、空気極外側(空気側)に多孔性PTFE膜を配置すると、フッ素樹脂の撥水性が徐々に低下し空気極を介して電解液が漏洩する場合があり、また、長期間放電すると放電特性が低下する場合がある。加えて、漏出した電解液が空気極と多孔性PTFE膜の間に溜まり、空気供給を阻害して、電池特性が低下する要因になる。
また、各実施形態の構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
図1は、本発明に係る実施形態1の金属空気電池の全体構成を示す断面模式図である。
実施形態1の金属空気電池ECは、金属空気電池筐体と、金属電極(負極)A、空気極(正極)C、電解液(KOH水溶液)E、及び、セパレータSによって構成される。金属電極(負極)Aは、電解液Eと接する位置に配置されている。電解液Eは、電解液槽(図示せず)内に保持されている。
金属空気電池筐体は、空孔Hが設けられ、これは酸素拡散経路等として機能する。
セパレータSは、負極(例えば、亜鉛極)活物質及び負極反応生成物が空気極(正極)Cに透過しないようにするための1枚以上の隔膜である。また、セパレータSの配置は、空気極Cと電解液Eの間には限定されない、例えば、金属電極Aと電解液Eの間に設けられていてもよい。また、セパレータSは、必須の構成ではなく、空気極Cが電解液E直接接していてもよい。
金属電極A(負極)は、金属空気電池に適した金属又は金属合金活物質から構成されるものである。
金属空気電池ECの詳細については、後述する。
実施形態1の空気極C(正極)は、電解液槽側から空気側に向かって、空気極触媒層15、空気極導電層13、吸水層11がこの順に配置されて構成されている。なお、空気極導電層13の配置は、特に限定されず、電解液槽側から空気側に向かって、空気極導電相13、空気触媒層15、吸水層11の順であってもよく、また、電解液槽側から空気側に向かって、空気極触媒層15、空気極導電層13、空気極触媒層15、吸水層11の順で配置されていてもよい。
実施形態1の空気極Cは、空気極触媒層15、空気極導電層(集電体)13、及び、吸水層11を備え、空気極触媒層15・空気極導電層(集電体)13の空気側(電解液槽側と反対側)に吸水性高分子を含む吸水層11を設けたことを特徴とする。これにより、金属空気電池における電解液の漏出を防止し、信頼性及び安全性に優れた金属空気電池を実現する本発明の効果を発揮することができる。
空気極Cは、図3に示したものに限定されないが、少なくとも空気極触媒層、空気極導電層、及び、吸水層を含むことが好ましく、セパレータと一体化されていることがより好ましい。
実施形態1で用いられる空気極導電層13は、電池において集電体として使用される金属であれば特に限定されず、例えばニッケルが好ましい。また、空気極導電層の構成は特に限定されないが、空気極導電層が網目状であることが好ましい。
実施形態1で用いられる空気極触媒層15は、電子伝導性物質(例えば、カーボン)21、電極触媒17、及び、フッ素樹脂19から構成される。該空気極触媒層15は、少なくとも電極触媒及びフッ素樹脂のどちらか一方を含むことが好ましく、更に電子伝導性物質を含むことがより好ましい。該フッ素樹脂19は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などが挙げられる。
空気極触媒層15内には、複数の空隙23がある。このように、空気極触媒層15は多孔質であることが好ましい。本明細書中、空気極触媒層における多孔質は、空隙が互いに連通し、酸素拡散経路として空気(酸素)を通すことができるものであればよい。空気極触媒層における多孔質の孔径は、負極反応生成物の透過を抑制する観点から、最大5μm以下であることが好ましい。
吸水層11は、少なくとも吸水性高分子から構成される少なくとも吸水部が設けられた層である。吸水層11には、吸水性高分子の他にもカーボンなどの電子伝導性物質が適宜含まれていることが好ましい。
吸水性高分子は、高吸水性高分子あるいは水溶性高分子が使用でき、耐アルカリ性に優れた材料が好ましく用いられる。
高吸水性高分子としては、例えば、架橋型ポリアクリル酸塩や親水基としてスルホ基を有する2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が例示される。また、ポリアクリル酸塩の種類は特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸カルシウム、ポリアクリル酸マグネシウムを挙げることができる。
また、水溶性高分子としては、例えば、でん粉系のアクリロニトリルグラフト共重合体、アクリル酸グラフト共重合体、アクリルアミドグラフト共重合体や、セルロース系のアクリロニトリルグラフト共重合体、カルボキシメチルセルロース架橋体や、多糖類系のヒアルロン酸や、ポリビニルアルコール系のポリビニルアルコール架橋体、ポリビニルアルコール吸水ゲル凍結・解凍エストラマーや、アクリル酸系のアクリル酸・ナトリウムビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体や、アクリルアミド系のN−置換アクリルアミド架橋体などを用いることができる。
なお、これら高吸水性高分子あるいは水溶性高分子は、架橋密度を増やすことで吸水量を増加させることができ、適宜調整可能である。架橋密度の調整に、架橋剤や重合開始剤などを用いても構わない。
吸水性高分子の吸水量は、特に限定されるものではないが、100mL/g以上が好ましく、1000mL/g以上であることがさらに好ましい。例えば、吸水性高分子として架橋型ポリアクリル酸カリウム使用する場合には、使用した架橋型ポリアクリル酸カリウムの自重の数百から約千倍までの電解液を吸水することができる。そのため、架橋型ポリアクリル酸カリウム使用することで、吸水層11は薄く形成する、または膜状にすることができるため、ポリアクリル酸カリウムの量は少量でよく低コストに抑えることができる。
また、電解液Eにアルカリ性水溶液を用いる場合に、架橋型ポリアクリル酸カリウムは耐アルカリ性に優れるため材料劣化が小さく、吸水層11の交換が必要になったとしてもその頻度を低減できる。
吸水層11の層厚は特に限定されるものではないが、該層厚が厚くなればなるほど電解液Eの浸出を防ぐことができ、具体的には0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましく、0.1mm以上が更に好ましく、0.3mm以上が特に好ましい。一方で、電気特性を観点から該層厚は、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、2.0mm以下が更に好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。
上記吸水層の層厚は、吸水層全体の厚みを平均して算出されるものを意味する。
実施形態1の空気極Cを備える金属空気電池では、吸水層11に具備された吸水性高分子(吸水部)が電解液Eを保持(ゲル化)し、電解液Eが空気極C外部に漏出することを防止できる。
実施形態1の金属空気電池では、電解液Eが外部に漏出しないため、環境への悪影響をなくすことができ、また、電池の使用者等が直接電解液に触れる危険性が低減する。
実施形態1の金属空気電池ではまた、電池内部のイオン伝導が律速しないため、高い出力を得ることができる(電解液槽や空気極内部で電解液を保持〔ゲル化〕するとイオン伝導性が低下するため高出力を得ることができない。)。
多孔性担体は、その表面に陽イオン基が固定イオンとして存在するように表面処理がなされていてもよい。このことにより、多孔性担体の表面を水酸化物イオンが伝導できるため、電極触媒17上で生成した水酸化物イオンが移動しやすくなる。
また、空気極Cの空気極触媒層15は、上記したようにフッ素樹脂を含むことが好ましい。フッ素樹脂は、空気極触媒層15に撥水性を付与し、電解液Eの浸透を抑制することができる。また、フッ素樹脂は、バインダーとしても機能し、空気極触媒層15内の多孔性担体同士を結着し、空気極Cの強度を向上させることができる。
また、電気触媒17として、W、Ce、Ni、V、Ti、Co、Mo、Fe、Cu、Nb、Mnなどの酸化物や窒化物を、単独もしくは2種類以上組み合わせて用いることもできる。さらに、電極触媒17としては、Pt、Ru、Au、Ag、Pd、Ir等の貴金属と、W、Ce、Ni、V、Ti、Co、Mo、Fe、Cu、Zn、Nb、Mn等の酸化物や窒化物とを、2種類以上組み合わせて空気極触媒18として用いることもできる。
電極触媒17は、上述した金属又は合金をカーボンに担持させたものであってもよく、例えば白金担持カーボンであることが好ましい。
以下に、実施形態1に係る空気極の作製手順の一例を詳細に記載するが、これに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更することができる。
(1)空気極触媒層15の作製
電極触媒17と、電子伝導性物質21と、フッ素樹脂19とを混合撹拌し、得られた混合物を延圧ローラーに通してシート状の空気極触媒層15を得る。
(2)吸水層11の作製
電子伝導性物質21と、吸水性高分子とを混合撹拌し、得られた混合物を延圧ローラーに通してのシート状の吸水層を得る。
(3)空気極Cの作製
(1)で得られたシート状の空気極触媒層15及び(2)で得られたシート状の吸水層11で挟み込むように、空気極導電層13を圧着して一体化物を成形し空気極Cとする。
例えば、亜鉛空気電池、アルミニウム空気電池、鉄空気電池の場合、電解液には、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液を用いることができる。マグネシウム空気電池の場合、電解液には塩化ナトリウム水溶液等の中性水溶液を用いることができる。また、リチウム金属電池、ナトリウム空気電池、カルシウム空気電池の場合、有機電解液を用いることができる。
セパレータSとしては、親水性多孔質膜が好ましい。多孔質膜の孔径は最大10μm以下であることが好ましい。該孔径が10μmを超える場合、負極反応生成物の透過を抑制できず、正極上で析出してしまい電池の長期安定性が低下するおそれがある。セパレータSとしては、クラフト紙、ビニロン・合成パルプ紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布などの樹脂材料や、ガラス繊維不織布等の不織布等、セラミックス材料、ゼオライト、活性炭、Niやステンレス等の金属これらを積層したものが好ましいものとして挙げられ、中でも不織布がより好ましく、ポリオレフィン不織布が更に好ましい。
実施形態1の金属空気電池のその他の構成は、一般的に金属空気電池として用いられる構成を使用できる。
図4は、本発明の実施形態2の空気極の全体構成を示す断面模式図である。
実施形態2の空気極Cは、電解液槽側から空気側に向かって、空気極触媒層115、空気極導電層113、拡散層112、吸水層111がこの順に配置されて構成されている。
実施形態2の空気極Cは、空気極触媒層115、空気極導電層113、拡散層112、及び、吸水層111を備え、空気極触媒層115・空気極導電層113と吸水層111との間に拡散層112が配置されたことを特徴とする。
空気極Cは、図4に示したものに限定されないが、少なくとも空気極触媒層、空気極導電層、拡散層、及び、吸水層を含むことが好ましく、セパレータと一体化されていることがより好ましい。
実施形態2で用いられる空気極導電層113は、電池において集電体として使用される金属であれば特に限定されず、例えばニッケルが好ましい。また、空気極導電層の構成は特に限定されないが、空気極導電層が網目状であることが好ましい。
実施形態2で用いられる空気極触媒層115は、電子伝導性物質121、電極触媒117、及び、フッ素樹脂119から構成される。該空気極触媒層115は、少なくとも電極触媒、及び、フッ素樹脂を含むことが好ましく、更に電子伝導性物質を含むことがより好ましい。電極触媒が電子伝導性物質に担持されていることが更に好ましい。該フッ素樹脂は、PTFEがより好ましい。
空気極触媒層115内には、複数の空隙123がある。このように、空気極触媒層115は多孔質であることが好ましい。
拡散層112は、親水性多孔質膜で構成されるものが好ましい。
親水性多孔質膜は、親水性かつ空気を通すことができるものであれば良く、セパレータと同様の材料を用いることが好ましく、例えばクラフト紙、ビニロン・合成パルプ紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等、これらを積層したものが好ましいものとして挙げられ、中でも不織布がより好ましく、ポリオレフィン不織布が更に好ましい。
なお、多孔質の孔径は、最大5μm以下であることが好ましい。
親水性とは、表面に付着した水が水滴状にならないことであり、親水性多孔質における対水接触角は、40度以下であればよい。
実施形態2の空気極を備える金属空気電池では、実施形態1の効果に加えて、拡散層112により浸出した電解液をより広範囲に拡散させることができるため、吸水層111内部の吸水性高分子を無駄なく利用することができる。したがって、浸出した電解液をより多く保持することができ、電池の寿命を更に延ばすことができる。
以下に実施形態2に係る空気極等の作製手順の一例を詳細に記載するが、これに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更することができる。
(1)空気極触媒層115の作製
電極触媒117と、電子伝導性物質121と、フッ素樹脂119とを混合撹拌し、得られた混合物を延圧ローラーに通してシート状の空気極触媒層115を得る。
(2)吸水層111の作製
電子伝導性物質121と、吸水性高分子とを混合撹拌し、得られた混合物を延圧ローラーに通してシート状の吸水層111を得る。
(3)空気極Cの作製
上記(1)で得られたシート状の空気極触媒層115及び上記(2)で得られたシート状の吸水層111で挟み込むように、空気極導電層113及び拡散層112を圧着して一体化物を成形し空気極Cを得る。
図5は、本発明の実施形態3の空気極の全体構成を示す断面模式図である。図6は、実施形態3の金属空気電池で用いられる拡散層の構成を示す断面模式図であり、図5中のA1−A2線に沿った断面に対応している。
実施形態3の空気極は、電解液槽側から空気側に向かって、空気極触媒層215、空気極導電層213、拡散層212、吸水層211がこの順に配置されて構成されている。
実施形態3の空気極は、空気極触媒層215、空気極導電層213、拡散層212、及び、吸水層211を備え、空気極触媒層215・空気極導電層213と、吸水層211との間に拡散層212が配置され、拡散層212の一部に疎水部212aを設けたことを特徴とする。なお、拡散層212の疎水部212a以外の部分は親水部212bから構成される。すなわち、実施形態3は、拡散層212が親水部212bとともに疎水部212aを有する以外は、実施形態2と同様の構成である。
空気極Cは、図5に示したものに限定されないが、少なくとも空気極触媒層、空気極導電層、親水部とともに疎水部を有する拡散層、及び、吸水層を含むことが好ましく、セパレータと一体化されていることがより好ましい。
実施形態3で用いられる空気極導電層213は、電池において集電体として使用される金属であれば特に限定されず、例えばニッケルが好ましい。また、空気極導電層の構成は特に限定されないが、空気極導電層が網目状であることが好ましい。
実施形態3で用いられる空気極触媒層215は、電子伝導性物質221、電極触媒217、及び、フッ素樹脂219から構成される。該空気極触媒層は、少なくとも電極触媒、及び、フッ素樹脂を含むことが好ましく、更に電子伝導性物質を含むことがより好ましい。電極触媒は電子伝導性物質に担持されていることが更に好ましい。該フッ素樹脂は、PTFEがより好ましい。
空気極触媒層215内には、複数の空隙223がある。このように、空気極触媒層215は多孔質であることが好ましい。
実施形態3で用いられる拡散層212内の親水部212bは、セパレータと同様の材料(例えば、親水性多孔質膜)を用いることが好ましい。すなわち、拡散層212内の親水部212bとしては、拡散層112として前述した通りのものを用いることができる。
また拡散層212内の疎水部212aは、疎水性多孔質膜で構成されることが好ましい。疎水性多孔質膜を構成する疎水性材料は、例えばフッ素樹脂が好ましく、PTFEがより好ましい。疎水性多孔質膜は、更にカーボンを含んでいても構わない。疎水性とは、表面に付着した水が水滴状になることであればよい。
多孔質膜は、空気を通すことができるものであればよい。なお、多孔質の孔径は、最大10μm以下であることが好ましい。
疎水部212aの位置は図6に示したものに限定されず、適宜配置することができる。
実施形態3の空気極を備える金属空気電池では、実施形態2の効果に加えて、拡散層212内の疎水部212aにより、拡散層212内の酸素拡散経路が確保されるため、より長期間発電(長寿命化)することができる。また、実施形態3の空気極を備える金属空気電池は、酸素拡散経路が確保されているため、高出力が必要な場合も発電することができる。
以下に実施形態3に係る空気極等の作製手順の一例を詳細に記載するが、これに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更することができる。
(1)空気極触媒層215の作製
電極触媒217と、電子伝導性物質221と、フッ素樹脂219とを混合撹拌し、得られた混合物を延圧ローラーに通してシート状の空気極触媒層215を得る。
(2)吸水層211の作製
電子伝導性物質221と、吸水性高分子とを混合撹拌し、得られた混合物を延圧ローラーに通してシート状の吸水層211を得る。
(3)拡散層212の作製
拡散層212(親水部)を図6に示した親水部212bの様に切り抜く。疎水性多孔質膜を図6の疎水部212aよりも若干大きく切り抜き、図6に示した構成となる様に重ねる。
(4)空気極Cの作製
上記(1)で得られたシート状の空気触媒層215及び上記(2)で得られたシート状の吸水層211で挟み込むように、空気極導電層213及び上記(3)で得られた拡散層212を圧着して一体化物を成形し空気極Cを得る。
なお、実施形態3の空気極Cにおいて、拡散層212の一部に設けられた疎水部212aは、図6に示されたような、長方形の形状に限らない。また、1つの疎水部212aにおいて、シート状の拡散層212の空気極触媒層215または空気極導電層213と接触している端面の位置は、シート状の拡散層212の吸水層211と接触している端面の位置よりも低くしておく、つまり図示しない金属空気電池筺体の接地面側に位置しておくことが好ましい。このような構成によれば、空気極Cに酸素の供給が損なわれずに、拡散層212に浸出した電解液Eの自重が空気極触媒層215側に付加されるので、電解液Eの浸出速度を抑制することができる。
図7は、実施形態4の空気極の全体構成を示す断面模式図である。図8は、実施形態4の金属空気電池で用いられる拡散層の構成を示す断面模式図であり、図7中のB1−B2線に沿った断面に対応している。図9は、実施形態4の金属空気電池で用いられる吸水層の構成を示す断面模式図であり、図7中のC1−C2線に沿った断面に対応している。
実施形態4の空気極は、電解液槽側から空気側に向かって、空気極触媒層315、空気極導電層313、拡散層312、吸水層311がこの順に配置されて構成されている。
実施形態4の空気極は、空気極触媒層315、空気極導電層313、拡散層312、及び、吸水層311を備え、空気極触媒層315・空気極導電層313と、吸水層311との間に拡散層312が配置され、拡散層312の一部に疎水部312aを設け、吸水層311においても拡散層312の疎水部312aと同じ位置に疎水部311aを設けたことを特徴とする。拡散層312の疎水部312aと同じ位置とは、本発明の空気極Cの各層の主面を平面視したときに、拡散層312の疎水部312aと重畳していることを言う。実施形態4における吸水層の疎水部と拡散層の疎水部は、空気流路を構成する。
なお、拡散層312の疎水部312a以外の部分は親水部312bから構成され、吸水層311の疎水部311a以外の部分は吸水部311cから構成される。すなわち、実施形態4は、吸水層311が、吸水部311cとともに、拡散層312の疎水部312aと同じ位置に疎水部311aを有する以外は、実施形態3と同様の構成である。
空気極Cは、図7に示したものに限定されないが、少なくとも空気極触媒層、空気極導電層、親水部とともに疎水部を有する拡散層、及び、吸水部とともに疎水部を有する吸水層を含むことが好ましく、セパレータと一体化されていることがより好ましい。
実施形態4で用いられる空気極導電層313は、電池において集電体として使用される金属であれば特に限定されず、例えばニッケルが好ましい。また、空気極導電層の構成は特に限定されないが、空気極導電層が網目状であることが好ましい。
実施形態4で用いられる空気極触媒層315は、電子伝導性物質321、電極触媒317、及び、フッ素樹脂319から構成される。該空気極触媒層は、少なくとも電極触媒、及び、フッ素樹脂を含むことが好ましく、更に電子伝導性物質を含むことがより好ましい。電極触媒は電子伝導性物質に担持されていることが更に好ましい。該フッ素樹脂は、PTFEがより好ましい。
空気極触媒層315内には、複数の空隙323がある。このように、空気極触媒層315は多孔質であることが好ましい。
実施形態4で用いられる吸水層311内の疎水部311aは、疎水性多孔質膜で構成されることが好ましい。吸水層内の疎水性多孔質膜としては、拡散層内の疎水部と同様のものを用いることができるが、フッ素樹脂とカーボンで構成されることがより好ましい。疎水部311aの位置は疎水部312aと重なる限り図8に示したものに限定されず、適宜配置することができる。
実施形態4の空気極を備える金属空気電池では、空気極外部から空気極触媒層までの酸素拡散経路が確保されるため、より長期間発電(長寿命化)することができる。また、実施形態4の空気極を備える金属空気電池は、酸素拡散経路が確保されているため、高出力が必要な場合も発電することができる。
以下に実施形態4に係る空気極等の作製手順の一例を詳細に記載するが、これに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更することができる。
(1)空気極触媒層315の作製
電極触媒317と、電子伝導性物質321と、フッ素樹脂319とを混合撹拌し、得られた混合物を延圧ローラーに通してシート状の空気極触媒層315を得る。
(2)吸水層311の作製
電子伝導性物質321と、吸水性高分子とを混合撹拌し、得られた混合物を延圧ローラーに通して吸水部シートを得る。型で打ち抜くことにより、図9に示した吸水部311cを得た。
電子伝導性物質321と、フッ素樹脂319とを混合撹拌し、得られた混合物を圧延ローラーに通して疎水部シートを得る。型で短冊状に打ち抜き、疎水部シートが吸水部シートの打ち抜き部を覆うように疎水部シートと吸水部シートとを重ねて圧延ローラーに通して吸水層311を得る。
(3)拡散層312の作製
拡散層(親水部)312を図8に示した親水部312bの様に切り抜く。疎水性多孔質膜を図8の疎水部312aよりも若干大きく切り抜き、図8に示した構成となる様に重ねる。
(4)空気極Cの作製
上記(1)で得られたシート状の空気極触媒層315及び上記(2)で得られたシート状の吸水層311で挟み込むように、空気極導電層313及び上記(3)で得られた拡散層312を圧着して一体化物を成形し空気極Cを得る。
しました。
なお、実施形態4の空気極Cにおいて、吸水層311または拡散層312の一部に設けられた疎水部311a、312aは、図6に示されたような、長方形の形状に限らない。また、1つの疎水部311aにおいて、拡散層312と接触している端面の位置は、大気と接触している端面の位置よりも低くしておく、つまり図示しない金属電池筺体の接地面側に位置しておくことが好ましい。また、同様に一つの疎水部312aにおいて、空気極触媒層315または空気極導電層313と接触している端面は、吸水層311と接触している端面の位置よりも低くしておく、つまり図示しない金属電池筺体の接地面側に位置しておくことが好ましい。このような構成によれば、空気極Cに酸素の供給が損なわれずに、吸水層311または拡散層312に浸出した電解液Eの自重が、空気極触媒層315側に付加されるので、電解液Eの浸出速度を抑制することができる。
図10は、実施形態5の空気極の全体構成を示す断面模式図である。
実施形態5の空気極は、電解液槽側から空気側に向かって、空気極触媒層415、空気極導電層413、吸水層411、及び、撥水層410がこの順に配置されて構成されている。
実施形態5の空気極は、空気極触媒層415、空気極導電層413、吸水層411、及び、撥水層410を備え、空気極触媒層415・空気極導電層413の空気側(電解液槽側と反対側)に吸水性高分子を含む吸水層411を設け、更に吸水層411の空気側に撥水層410を設けたことを特徴とする。
実施形態5の空気極は、吸水層の外側に撥水層が設けられた以外は、実施形態1の空気極の構成と同様である。
空気極Cは、図10に示したものに限定されないが、少なくとも空気極触媒層、空気極導電層、吸水層、及び、撥水層を含むことが好ましく、セパレータと一体化されていることがより好ましい。
実施形態5で用いられる空気極導電層413は、電池において集電体として使用される金属であれば特に限定されず、例えばニッケルが好ましい。また、空気極導電層の構成は特に限定されないが、空気極導電層が網目状であることが好ましい。
実施形態5で用いられる空気極触媒層415は、電子伝導性物質421、電極触媒417、及び、フッ素樹脂419から構成される。該空気極触媒層は、少なくとも電極触媒、及び、フッ素樹脂を含むことが好ましく、更に電子伝導性物質を含むことがより好ましい。電極触媒は電子伝導性物質に担持されていることが更に好ましい。該フッ素樹脂は、PTFEがより好ましい。
空気極触媒層415内には、複数の空隙423がある。このように、空気極触媒層415は多孔質であることが好ましい。
実施形態5で用いられる撥水層410は、フッ素樹脂とカーボンとから構成されてもよく、フッ素樹脂の多孔質膜を用いても構成されてもよい。なお、拡散層の疎水部として、PTFEの代わりにフッ素樹脂とカーボンとを混合したものを用いても構わない。
実施形態5の空気極を備える金属空気電池では、実施形態1の効果に加えて、電池の使用者等が電解液に接触する可能性をより低減し、電池を安全に取り扱うことができる。また、撥水層を設けることにより、電池外部の水分が吸水層の吸水性高分子に吸収されることを防ぐことができる。電池外部の水分が吸収されることを防ぐため、多湿な環境においても、電池特性を維持することができる。
(1)空気極触媒層415の作製
電極触媒417と、電子伝導性物質421と、フッ素樹脂419とを混合撹拌し、得られた混合物を延圧ローラーに通してシート状の空気極触媒層415を得る。
(2)吸水層411の作製
電子伝導性物質421と、吸水性高分子とを混合撹拌し、得られた混合物を延圧ローラーに通して厚みシート状の吸水層411を得る。
(3)撥水層410の作製
電子伝導性物質421と、フッ素樹脂419とを混合撹拌し、得られた混合物を延圧ローラーに通してシート状の撥水層410を得る。
(4)吸水層411と撥水層410との一体化物の作製
上記(2)で得られたシート状の吸水層411及び上記(3)で得られたシート状の撥水層410を圧着して一体化した。
(5)空気極Cの作製
上記(1)で得られたシート状の空気極触媒層415及び上記(4)で得られた一体化物で挟み込むように、空気極導電層413を圧着して一体化物を成形し空気極Cを得る。(吸水層411と空気極導電層413が接触するように圧着する。)
実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱し
ない範囲において任意に変更して実施しうる。
(実施例1)
(実施形態1の空気極C等の作製手順)
(1)空気極触媒層の作製
電極触媒と、電子伝導性物質と、フッ素樹脂とを混合撹拌し、得られた混合物を延圧ローラーに通して厚み1mmのシートを得て、空気極触媒層とした。
具体的には、白金50wt%担持カーボン(電極触媒、田中貴金属社製、TEC10E50E)0.1g、カーボンブラック(電子伝導性物質キャボット社製、VULCAN XC72−R)1.5g、及び、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(アルドリッチ社製)0.7gを乳鉢で混練し混合物を得た。得られた混合物を圧延ローラーに通して厚み1mmのシートとして形成した。
(2)吸水層の作製
電子伝導性物質と、吸水性高分子とを混合撹拌し、得られた混合物を延圧ローラーに通して厚み0.5mmのシートを得て、吸水層とした。
具体的には、カーボンブラック(電子伝導性物質、キャボット社製、VULCAN XC72−R)1.0g及び架橋型ポリアクリル酸カリウム(吸水性高分子、アルドリッチ社製)0.1gを乳鉢で混練し混合物を得た。得られた混合物を圧延ローラーに通して厚み0.5mmのシートとして形成した。
(3)空気極Cの作製
(1)で得られたシート及び(2)で得られたシートで挟み込むように、空気極導電層(ニッケルメッシュ、線径0.15mm、40メッシュ)を、プレス機にて5kNで5分間圧着して一体化物を成形し、実施例1の空気極Cとした。
(4)空気極CとセパレータSの一体化
(3)で得られた構成物(実施例1の空気極)にセパレータをプレス機にて2kNで5分間圧着してセパレータ(ポリオレフィン不織布)と一体化した空気極を形成した。
比較例1の金属空気電池は、吸水層を設けなかった以外は実施例1と同様である。
比較例2の金属空気電池は、吸水層の代わりにカーボンブラック(キャボット社製、VULCAN XC72−R)のみからなる層(撥水層)を設けた以外は実施形態1と同様である。
(1)電解液の漏出
壁部に実施例及び比較例において製造した空気極を備えた電解液槽に、電解液(7mol/dm3、KOH)300mlを注入し、室温(25℃)の環境下で静置した。その後、実施例及び比較例の空気極から電解液が浸出し、電解液槽の外壁が電解液で濡れた否か、目視で観察した。
大気及び電解液に触れている空気極の面積は、50mm×50mmとした。電解液槽の内壁の深さは80mmであり、空気極の部分以外の電解液槽の材質はABS製であった。
壁部に実施例及び比較例において製造した空気極を備えた電解液槽に、電解液(7mol/dm3、KOH)300mlを注入した。
亜鉛電極には、SUS304の支持体(70mm×50mm、厚さ1mm)に、亜鉛粉とバインダーとしてPTFE分散液を混合したものを塗布し、プレスによって形成した。形成した亜鉛電極は、50mm×50mm、厚さ20mmに統一した。
電解液槽中に亜鉛電極を挿入し亜鉛空気電池を、室温(25℃)において、1.5A(電流密度30mA/cm2)の定電流負荷で、1日当たり5時間放電する放電実験を行った。1日使用した亜鉛電極は、繰り返し使用されることなく、新しい亜鉛電極を用いて実験を行った。放電電圧の測定では、Fuel Cell Test System(東陽テクニカ社製、型番890CL)を用いた。
表1に実施例1、比較例1及び比較例2それぞれの空気極を用いた評価結果を示す。なお、表1における液浸出は、電解液の浸出の評価を開始してから目視で電解液の浸出が確認されるまでの期間を示し、長期信頼性は、安定した電圧(一定電圧)で放電できた期間を示す。
また、実施例1の空気極を用いた場合には、1年以上一定した電圧で放電することができた。
以上の実施形態から、以下に示す本発明の各態様が導かれる。
本発明の一態様は、金属空気電池の正極に用いられる空気極であって、上記空気極は、触媒層15、導電層13、及び、吸水層11を備え、上記吸水層11は、吸水性高分子を含む吸水部を有し、触媒層15及び導電層13に対して一方の側に設けられている空気極であってもよい。吸水層11は、吸水部だけから構成されるものであっても構わない。
A:金属電極
C:空気極
E:電解液
S:セパレータ
H:空孔
I:注液口
11、111、211、311、411:吸水層
13、113、213、313、413、513:空気極導電層
15、115、215、315、415、515:空気極触媒層
17、117、217、317、417、517:電極触媒
19、119、219、319、419、519:フッ素樹脂
21、121、221、321、421:電子伝導性物質
23、123、223、323、423:空隙
112、212、312:拡散層
212a、311a、312a:疎水部
212b、312b:親水部
311c:吸水部
410:撥水層
Claims (5)
- 金属空気電池の正極に用いられる空気極であって、
該空気極は、触媒層、導電層、及び、吸水層を備え、
該吸水層は、吸水性高分子を含む吸水部を有し、触媒層及び導電層に対して一方の側に設けられている
ことを特徴とする空気極。 - 前記空気極は、更に拡散層を備え、
該拡散層は、親水性多孔質膜から構成される親水部を有し、前記触媒層及び導電層と前記吸水層との間に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の空気極。 - 前記拡散層は、更に疎水性多孔質膜から構成される疎水部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の空気極。 - 前記吸水層は、更に疎水性多孔質膜から構成される疎水部を有し、
該吸水層の疎水部は、前記空気極の各層の主面を平面視したときに、前記拡散層の疎水部と重畳している
ことを特徴とする請求項3に記載の空気極。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の空気極、電解液槽、及び、金属電極を備える金属空気電池であって、
該空気極の前記吸水層は、前記触媒層及び前記導電層よりも外側に配置されている
ことを特徴とする金属空気電池。
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