JP6673791B2 - シート状空気電池 - Google Patents

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Description

本発明は、負荷特性および貯蔵特性に優れたシート状空気電池に関するものである。
二酸化マンガンやカーボンなどを触媒とする空気極からなる正極と、亜鉛粒子や亜鉛合金粒子といった亜鉛系粒子などの金属粒子を活物質とする負極とを有する空気電池には、種々の形態のものが存在しており、外装体に金属缶を使用したものの他に、アルミニウムと熱可塑性樹脂とをラミネートしたラミネートフィルムなどのような、樹脂製のフィルムを用いた外装体を使用したシート状のものが知られている(特許文献1および2)。
シート状空気電池は、その外装体上の特徴から、電池の形状に自由度を持たせることができるため、携帯電話などのような金属缶を有する空気電池が用い難い用途などへの適用が期待できる。
特開2004−319464号公報 特開2004−288571号公報
シート状空気電池では、その用途展開上、例えば負荷特性の向上が求められる場合がある。ところが、シート状空気電池の負荷特性を高めるために外装体の空気孔を大きくしたり、その数を多くしたりすると、電解液の溶媒(水または有機溶媒)が蒸発により前記空気孔から電池系外に散逸しやすくなり、時間の経過とともに電解液の組成が変化してしまう。また、電解液としてアルカリ電解液を用いている場合には、空気中に含まれる二酸化炭素が徐々に電池内部に流入し、電解液と反応して炭酸カリウムなどの反応物を生成する。このため、負荷特性が向上する一方で、貯蔵特性などの電池特性が徐々に低下するという問題を生じる。
また、シート状空気電池は、種々の用途に適用が可能となる反面、空気孔が一方の面のみに形成されている場合には、使用される状況によっては、空気孔が形成された面が機器や衣服などに密着して空気の流入が遮られ、放電できなくなるという問題を生じることも考えられる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、負荷特性および貯蔵特性に優れたシート状空気電池を提供することにある。
前記目的を達成し得た本発明のシート状空気電池は、負極の両面に、それぞれ、セパレータ、正極および撥水膜が積層されてなる電極体と、電解液とが、樹脂フィルム製のシート状外装体の内部に収容されており、前記正極は、触媒を含有する触媒層を有しており、前記外装体の両面には、前記正極に空気を取り込むための空気孔が複数設けられており、前記空気孔は、いずれも面積が2mm以下であり、前記外装体の片面における全空気孔の合計面積をa(mm)とし、外装体の当該面側に配置された正極における触媒層の面積をb(mm)としたとき、前記外装体のいずれの面においても、0.001≦a/b≦0.025を満たしていることを特徴とするものである。
本発明によれば、負荷特性および貯蔵特性に優れたシート状空気電池を提供することができる。
本発明のシート状空気電池の一例を模式的に表す平面図である。 図1のシート状空気電池の裏面を表す平面図である。 図1のI−I線断面図である。 本発明のシート状空気電池の他の例を模式的に表す平面図である。 実施例で作製したシート状空気電池を模式的に表す平面図である。
図1〜図3に本発明のシート状空気電池の一例を模式的に示している。図1はシート状空気電池の片面を表す平面図であり、図2は図1に示す面の裏面を表す平面図であり、図3は図1のI−I線断面図である。
図3に示すように、シート状空気電池1は、2枚の正極20、20を有しており、これらの正極20、20のそれぞれが、セパレータ40、40を介して負極30の一方の面と対向するよう積層されている。更に、正極20、20の負極30とは反対側には、撥水膜50、50が積層され、これら部材の積層体として電極体が構成されており、電解液(図示しない)と共に、シート状外装体60内に収容されている。正極20、20は、電池1内でリード体を介して正極外部端子21と接続しており、また、図示していないが、負極30も、電池1内でリード体を介して負極外部端子31と接続している。なお、図1および図2における点線は、シート状外装体60内に収容された正極20、20のうちの、シート状外装体60の図示した面側に配置されている正極に係る触媒層の大きさを表している(後記の図4、5においても、同様である)。
シート状外装体60の両面には、正極に空気を取り込むための空気孔61が複数設けられており、空気孔61からの電解液の漏出を防止するために、空気孔61を覆うように、シート状外装体60の内面に撥水膜50、50を密着させている。
正極20、20は、触媒層を有しており、通常は、触媒層が集電体と積層された構造を有している。なお、図3では、図面が煩雑になることを避けるために、正極20、20の有する各層を区別して示していない。
本発明のシート状空気電池では、シート状外装体の両面に設ける空気孔の面積を、いずれも2mm以下、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1mm以下、最も好ましくは0.6mm以下とすると共に、外装体の片面における全空気孔の合計面積をa(mm)とし、外装体の当該面側(この片面側)に配置された正極における触媒層の面積をb(mm)としたとき、比a/bが、外装体のいずれの面においても、0.001以上、好ましくは0.003以上であって、0.025以下、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.015以下、最も好ましくは0.01以下となるようにする。
すなわち、本発明のシート状空気電池では、いずれの面においても、触媒層の面積に対する全空気孔の合計面積の比a/bをある程度大きくしつつ、個々の空気孔は小さくすることで、各面での空気孔の数をある程度確保し、正極の触媒層の全体に平均的に空気を導入することを可能とした。これにより、いずれの正極においても、触媒層が効率的に機能できるため、電池の負荷特性を高めることが可能となる。他方、比a/bを所定値以下に制限することで、全空気孔の合計面積を大きくしすぎないようにして、空気孔からの二酸化炭素の流入や電解液の漏出(漏液)を抑制し、電池の貯蔵特性を高めている。
ただし、個々の空気孔のサイズが小さすぎると、電池内へ空気を導入し難くなるため、電池の負荷特性などの特性をより高める観点から、シート状外装体の両面に設ける空気孔の面積を、いずれも0.03mm以上(円形の場合、直径0.2mm以上)とすることが好ましく、より好ましくは0.05mm以上とする。
本明細書でいう個々の空気孔の面積は、シート状外装体の外表面における開口の実面積であり、電子顕微鏡写真などを基に測定することができる。
また、本発明のシート状空気電池は、両面に空気孔を有していることから、例えば一方の面を適用機器などと合わせることで空気孔が塞がれても、他面の空気孔から電池内に空気を取り込むことが可能であるため、放電することができる。よって、本発明のシート状空気電池は、一般に空気孔が1つの面に設けられ、この面を塞ぐような用途に適用できない金属缶を外装体とする空気電池とは異なり、このような形態で使用される用途にも適用することができる。
シート状外装体の各面における各空気孔は、互いに規則的に配置されていてもよく、不規則に配置されていてもよいが、正極の触媒層の全面にわたって、より平均的に空気を導入できるようにする観点から、規則的に配置されていることが好ましい。
各空気孔を規則的に配置する場合、特定のパターンの繰り返しによって配置されていればよく、繰り返されるパターンは、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
図4に、本発明のシート状空気電池の他の例を模式的に表す平面図を示しているが、各空気孔の規則的な配置の例としては、例えば、図1、図2および図4に示すように、図中上下方向および左右方向に直線状に配置する例など、等間隔の複数の平行線同士が互いに交差する格子点に空気孔を配置する、いわゆる並行配列や千鳥配列を挙げることができる。
複数個の空気孔を配置する場合、隣接する空気孔同士の間隔が狭すぎたり、逆に広すぎたりすると触媒層の全面にわたって均一に空気を供給することができないため、空気孔同士の間隔は、1.5mm以上15mm以下とすることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることが最も好ましく、一方、12mm以下とすることがより好ましく、9mm以下とすることが最も好ましい。
シート状空気電池の正極(空気極)は、触媒層を有するものであり、例えば、触媒層と集電体とを積層した構造のものを使用することができる。
触媒層には、触媒やバインダーなどを含有させることができる。
触媒層に係る触媒としては、例えば、銀、白金族金属またはその合金、遷移金属、Pt/IrOなどの白金/金属酸化物、La1−xCaCoOなどのペロブスカイト酸化物、WCなどの炭化物、MnNなどの窒化物、二酸化マンガンなどのマンガン酸化物、カーボン〔黒鉛、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなど)、木炭、活性炭など〕などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が使用される。これらの中でも、カーボンや、二酸化マンガンなどのマンガン酸化物がより好ましい。触媒層における触媒の含有量は、20〜70質量%であることが好ましい。
なお、カーボンを触媒層の形成材料としてカーボン以外の触媒と併用した場合には、このカーボンが、触媒としてだけでなく触媒層の形成時に触媒の担体としても機能する。また、触媒層の形成に、カーボンとカーボン以外の触媒とを、それぞれ個別に使用するのではなく、カーボン以外の触媒を予めカーボンに担持させた状態で触媒層の形成に使用することもできる。
カーボン以外の触媒とカーボンとを併用する場合には、触媒層におけるカーボンの含有量を、20〜70質量%とすることができる。この場合、カーボン以外の触媒の触媒層における含有量は、前記の触媒層における触媒の含有量を満たすように調整すればよい。
触媒層に係るバインダーとしては、フッ化ビニリデンの重合体〔ポリフッ化ビニリデン(PVDF)〕、テトラフルオロエチレンの重合体〔ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)〕、フッ化ビニリデンの共重合体やテトラフルオロエチレンの共重合体〔フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF−CTFE)、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF−TFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF−HFP−TFE)など〕などのフッ素樹脂バインダーが挙げられる。これらの中でも、テトラフルオロエチレンの重合体または共重合体が好ましく、PTFEがより好ましい。触媒層におけるバインダーの含有量は、3〜50質量%であることが好ましい。
正極における触媒層の厚みは、100〜500μmであることが好ましい。
正極に係る集電体には、例えば、チタン製、ニッケル製、ステンレス製などの金属製や炭素製の網、箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル、発泡基材などを用いることができる。正極体に係る集電体の厚みは、50〜500μmであることが好ましい。
触媒層は、例えば、前記触媒(カーボンを含む)、バインダーなどを水と混合してロールで圧延し、集電体と密着させることにより製造することができる。また前記の触媒や必要に応じて使用するバインダーなどを、水や有機溶媒に分散させて調製した触媒層形成用組成物(スラリー、ペーストなど)を、集電体の表面に塗布し乾燥した後に、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て製造することもできる。
シート状空気電池の負極には、亜鉛系粒子(亜鉛粒子と亜鉛合金粒子とを纏めてこのように称する)やアルミニウム系粒子(アルミニウム粒子とアルミニウム合金粒子とを纏めてこのように称する)、マグネシウム系粒子(マグネシウム粒子とマグネシウム合金粒子とを纏めてこのように称する)などを含有するものを使用することができる。このような負極では、前記粒子中の亜鉛やアルミニウムやマグネシウムが活物質として作用する。亜鉛合金粒子の合金成分としては、例えば、インジウム(例えば含有量が質量基準で50〜500ppm)、ビスマス(例えば含有量が質量基準で50〜500ppm)、アルミニウム(例えば含有量が質量基準で10〜1500ppm)などが挙げられる。
アルミニウム合金粒子の合金成分としては、例えば、亜鉛(例えば含有量が質量基準で0.5〜10%)、スズ(例えば含有量が質量基準で0.04〜1.0%)、ガリウム(例えば含有量が質量基準で0.003〜1.0%)、ケイ素(例えば含有量が質量基準で0.05%以下)鉄(例えば含有量が質量基準で0.1%以下)、マグネシウム(例えば含有量が質量基準で0.1〜2.0%)、マンガン(例えば含有量が質量基準で0.01〜0.5%)などが挙げられる。
また、マグネシウム合金粒子の合金成分としては、例えば、カルシウム(例えば含有量が質量基準で1〜3%)、マンガン(例えば含有量が質量基準で0.1〜0.5%)、亜鉛(例えば含有量が質量基準で0.4〜1%)、アルミニウム(例えば含有量が質量基準で8〜10%)などが挙げられる。
金属粒子を含有する負極の場合、その金属粒子は、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。
ただし、金属粒子には、環境負荷軽減の観点から、合金成分として水銀を含有しないものを使用することが好ましい。また、水銀の場合と同じ理由から、金属粒子には、合金成分として鉛を含有しないものを使用することが好ましい。
亜鉛系粒子の粒度としては、例えば、全粒子中、粒径が75μm以下の粒子の割合が50質量%以下のものが好ましく、30質量%以下のものがより好ましく、また、粒径が100〜200μmの粒子の割合が、50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが挙げられる。
また、アルミニウム系粒子およびマグネシウム系粒子の粒度としては、例えば、全粒子中、粒径が30μm以下の粒子の割合が50質量%以下のものが好ましく、30質量%以下のものがより好ましく、また、粒径が50〜200μmの粒子の割合が、50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが挙げられる。
本明細書でいう金属粒子における粒度は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA−920」)を用い、粒子を溶解しない媒体に、これらの粒子を分散させて測定した、体積基準での累積頻度50%における粒径(D50)である。
前記の金属粒子を含有する負極の場合には、必要に応じて添加されるゲル化剤(ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルロースなど)やバインダーを含んでもよく、これに電解液を加えることで構成される負極剤(ゲル状負極など)を使用することができる。負極中のゲル化剤の量は、例えば、0.5〜1.5質量%とすることが好ましく、バインダーの量は、0.5〜3質量%とすることが好ましい。
金属粒子を含有する負極に係る電解液には、電池に注入するものと同じものを使用することができる。
負極における金属粒子の含有量は、例えば、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、また、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
金属粒子を含有する負極は、インジウム化合物を含有していることが好ましい。負極がインジウム化合物を含有することによって、金属粒子と電解液との腐食反応による水素ガス発生をより効果的に防ぐことができる。
前記のインジウム化合物としては、例えば、酸化インジウム、水酸化インジウムなどが挙げられる。
負極に使用するインジウム化合物の量は、質量比で、金属粒子:100に対し、0.003〜1であることが好ましい。
なお、本発明のシート状空気電池では、負極の両面に正極を配置するため、両方の正極と均等に反応が進むよう、負極は、集電体を中心として、その両側にゲル化剤やバインダーを含む負極剤を保持させた構成、または多孔質の集電体の空孔内部に負極剤を保持させた構成とすることが好ましい。負極に係る前記集電体には、チタン製、ニッケル製、ステンレス製などの金属製または炭素製の網、箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル、発泡基材などを用いることができる。負極に係る集電体の厚みは、50μm〜1mmであることが好ましい。
また、集電体が負極剤を保持しやすくするために、2枚のセパレータを重ね合わせたり、1枚のセパレータを折り返して重ねたりしてから、周囲を溶着させるなどして袋状にしたセパレータの中に負極を保持することも好ましい。
更に、負極には、前記亜鉛系粒子と同じ組成の亜鉛系シート(亜鉛箔や亜鉛合金箔など)や、前記アルミニウム系粒子と同じ組成のアルミニウム系シート(アルミニウム箔やアルミニウム合金箔など)、前記マグネシウム系粒子と同じ組成のマグネシウム系シート(マグネシウム箔やマグネシウム合金箔など)といった金属シートを用いることもできる。このような負極の場合、その厚みは、10〜5000μmであることが好ましい。
また、このような金属シートを有する負極の場合にも、必要に応じて集電体を用いてもよい。
シート状空気電池に係る電解液(ゲル化された電解液を含む)としては、例えば、負極が亜鉛系粒子を含有する場合や亜鉛系シートで構成される場合には、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)の1種または複数種の水溶液などのアルカリ電解液が好適に用いられ、水酸化カリウムの水溶液が特に好ましい。電解液の濃度は、例えば、水酸化カリウムの水溶液の場合、水酸化カリウムが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であって、好ましくは40質量%以下、より好ましくは38質量%以下である。水酸化カリウムの水溶液の濃度をこのような値に調整することで、導電性に優れた電解液とすることができる。
また、負極がマグネシウム系粒子を含有する場合やマグネシウム系シートで構成される場合には、電解液として、酸性水溶液、中性水溶液および弱アルカリ性の水溶液などの、pHが10以下の水溶液が好適に用いられる。電解液として使用する水溶液に溶解させる塩などの電解質としては、塩化ナトリウムなどの塩化物、水酸化ナトリウムなどの水酸化物、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩、過炭酸ナトリウムなどの過炭酸塩、フッ化物などのハロゲンを含む化合物、多価カルボン酸などが挙げられ、これらの材料のうちの1種または2種以上を水溶液中に含有していればよい。このような電解液の中でも、塩化ナトリウム水溶液などの塩化物の水溶液がより好ましい。
例えば、塩化ナトリウム水溶液の場合、その塩化ナトリウムの濃度は、1〜20質量%であることが好ましい。
負極がアルミニウム系粒子を含有する場合やアルミニウム系シートで構成される場合には、前記アルカリ電解液のほか、前記pHが10以下の水溶液を用いることもでき、塩化ナトリウム水溶液などの中性水溶液が好適に用いられる。
前記いずれの場合にも、電解液には、インジウム化合物が溶解していることが好ましい。電解液中にインジウム化合物が溶解している場合には、電池内での水素ガスの発生をより良好に抑制することができる。
電解液に溶解させるインジウム化合物としては、水酸化インジウム、酸化インジウム、硫酸インジウム、硫化インジウム、硝酸インジウム、臭化インジウム、塩化インジウムなどが挙げられる。
インジウム化合物の電解液中の濃度は、質量基準で、50ppm以上であることが好ましく、100ppm以上であることがより好ましく、500ppm以上であることが特に好ましく、また、10000ppm以下であることが好ましく、5000ppm以下であることがより好ましく、1000ppm以下であることが特に好ましい。
電解液には、前記の各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の各種添加剤を添加してもよい。例えば、負極に用いる金属粒子や金属シートの腐食(酸化)を防止するために、酸化亜鉛を添加するなどしてもよい。なお、酸化亜鉛は、負極に添加することもできる。
シート状空気電池において、正極と負極との間に介在させるセパレータには、ビニロンとレーヨンを主体とする不織布、ビニロン・レーヨン不織布(ビニロン・レーヨン混抄紙)、ポリアミド不織布、ポリオレフィン・レーヨン不織布、ビニロン紙、ビニロン・リンターパルプ紙、ビニロン・マーセル化パルプ紙などを用いることができる。また、親水処理された微孔性ポリオレフィンフィルム(微孔性ポリエチレンフィルムや微孔性ポリプロピレンフィルムなど)とセロファンフィルムとビニロン・レーヨン混抄紙のような吸液層(電解液保持層)とを積み重ねたものをセパレータとしてもよい。セパレータの厚みは、20〜500μmであることが好ましい。
シート状空気電池に係る撥水膜には、撥水性がある一方で空気を透過できる膜が使用され、具体的には、例えば、PTFEなどのフッ素樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;などの樹脂で構成された膜を用いることができる。撥水膜の厚みは、5〜250μmであることが好ましい。
シート状空気電池には、シート状外装体と撥水膜との間に、外装体内に取り込んだ空気を正極に供給するための空気拡散膜を配置してもよい。空気拡散膜には、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ナイロンなどの樹脂で構成された不織布を用いることができる。空気拡散膜の厚みは、20〜500μmであることが好ましい。
なお、本発明では、複数の微小な空気孔を近接させて規則的に配置させることにより、正極の触媒層の全体に平均的に空気を導入することが可能となるため、空気拡散膜を省き、シート状外装体の空気孔に直接撥水膜を対面させてもよい。
シート状空気電池の外装体は、樹脂フィルムで構成されたシート状外装体である。シート状外装体を構成する樹脂フィルムとしては、ナイロンフィルム(ナイロン66フィルムなど)、ポリエステルフィルム〔ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなど〕などが挙げられる。樹脂フィルムの厚みは、20〜100μmであることが好ましい。
なお、シート状外装体の封止は、シート状外装体の上側の樹脂フィルムの端部と下側の樹脂フィルムの端部との熱融着によって行うことが一般的であるが、この熱融着をより容易にする目的で、前記例示の樹脂フィルムに熱融着樹脂層を積層してシート状外装体に用いてもよい。熱融着樹脂層を構成する熱融着樹脂としては、変性ポリオレフィンフィルム(変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムなど)、ポリプロピレンおよびその共重合体などが挙げられる。熱融着樹脂層の厚みが20〜100μmであることが好ましい。
また、樹脂フィルムには金属層を積層してもよい。金属層は、アルミニウムフィルム(アルミニウム箔。アルミニウム合金箔を含む。)、ステンレス鋼フィルム(ステンレス鋼箔。)などにより構成することができる。金属層の厚みが10〜150μmであることが好ましい。
更に、シート状外装体を構成する樹脂フィルムは、前記の熱融着樹脂層と前記の金属層とが積層された構成のフィルムであってもよい。
シート状外装体の形状は、平面視で多角形(三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形)であってもよく、平面視で円形や楕円形であってもよい。なお、平面視で多角形のシート状外装体の場合、正極外部端子および負極外部端子は、同一辺から外部へ引き出してもよく、それぞれを異なる辺から外部へ引き出しても構わない。
本発明のシート状空気電池は、その外装体の特徴を生かした用途に好ましく適用できる他、従来から知られている空気電池が採用されている用途と同じ用途に適用することもできる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
<正極>
正極には、二酸化マンガン(触媒):42.35質量部と、ケッチェンブラック(カーボン):42.35質量部と、PTFE:10質量部と、銀ニッケル酸化物(AgNiO2):5.3質量部と、水とを混合し、ロール圧延して触媒層用のシートを形成し、このシートをステンレス網(集電体)に圧着させてから乾燥し、触媒層の大きさが30mm×30mmとなり、一端に集電体の露出部を有する形状に打ち抜いた。更に、前記集電体の露出部にニッケルのリード線を溶接して、全体の厚みが300μmの正極(空気極)を作製した。
<負極>
添加元素としてIn:500ppm、Bi:400ppmおよびAl:10ppmを含有する亜鉛合金粒子をカルボキシメチルセルロースの水溶液に分散させて負極用のペーストを作製した。次に、一端を圧縮して導電タブを形成したニッケル製の発泡基材(集電体)の空孔内に、前記ペーストを充填して乾燥させ、軽くプレスした後に、ペーストが充填された部分(負極合剤層)が30mm×30mmの大きさとなるよう切断し、前記導電タブにニッケルのリード線を溶接することにより負極を作製した。
<電解液>
電解液には、質量基準で200ppmとなる量の水酸化インジウムを溶解した35質量%濃度の水酸化カリウム水溶液を用いた。
<セパレータ>
セパレータには、ポリエチレン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させた構造を有するグラフト共重合体で構成された2枚のグラフトフィルム(厚み:30μm)を、セロハンフィルム(厚み:20μm)の両側に配置し、更にビニロン−レーヨン混抄紙(厚み:100μm)を積層したものを用いた。
<撥水膜>
撥水膜には、厚みが200μmのPTFE製シートを用いた。
<電池の組み立て>
ステンレス鋼箔の外面にPETフィルムを有し、内面に熱融着樹脂層としてポリプロピレンフィルムを有する5cm×5cmの大きさのステンレスラミネートフィルム2枚を外装体として用いた。
前記外装体のそれぞれに、図5に示すように、直径1mm(面積:0.785mm)の空気孔9個を、縦10mm×横10mmの等間隔(空気孔同士の中心間距離は10mm)で規則的に形成し、その内面側に、ホットメルト樹脂を用いて前記撥水膜を熱溶着させた。
前記外装体の片面あたりの空気孔の合計面積(a):7.065mmと、正極の触媒層の面積(b):900mmとの比:a/bは、0.0079であった。
更に、前記負極の両側に、前記セパレータ、前記正極および前記撥水膜を備えた外装体をそれぞれ積層し、2枚の外装体の周囲3辺(リード線を取り出す辺以外)を互いに熱溶着して袋状にし、その開口部から前記電解液を注液した後、前記開口部を熱溶着して封止して、図5に示す外観を有し、空気孔の数を除いて図3に示す断面構造を有するシート状空気電池とした。
なお、正極および負極のリードと外装体との熱溶着部には、封止性を高めるため、あらかじめ前記リードにテープ状のポリプロピレンを取り付けた後に熱溶着を行った。
(実施例2)
直径1mm(面積:0.785mm)の空気孔16個を、縦7mm×横7mmの等間隔(空気孔同士の中心間距離は8mm)で規則的に形成した以外は実施例1と同様にして、シート状空気電池を作製した。この電池における比a/bは、0.0140であった。
(実施例3)
直径1mm(面積:0.785mm)の空気孔25個を、縦5.25mm×横5.25mmの等間隔(空気孔同士の中心間距離は6.25mm)で規則的に形成した以外は実施例1と同様にして、シート状空気電池を作製した。この電池における比a/bは、0.0218であった。
(比較例1)
直径1mm(面積:0.785mm)の空気孔36個を、縦4.2mm×横4.2mmの等間隔(空気孔同士の中心間距離は5.2mm)で規則的に形成した以外は実施例1と同様にして、シート状空気電池を作製した。この電池における比a/bは、0.0314であった。
(比較例2)
直径1mm(面積:0.785mm)の空気孔1個を外装体の中央部に形成した以外は実施例1と同様にして、シート状空気電池を作製した。この電池における比a/bは、0.00087であった。
(比較例3)
直径1.7mm(面積:2.27mm)の空気孔3個を、一辺が20mmの正三角形の頂点に位置するよう(空気孔同士の中心間距離は18.3mm)に形成した以外は実施例1と同様にして、シート状空気電池を作製した。この電池における比a/bは、0.0076であった。
〔負荷特性および貯蔵特性の評価〕
負荷特性
実施例および比較例の各シート状空気電池について、空気孔を大気に暴露してから10分間放置した後、負極活物質量から計算した電池の設計容量に対して10時間率相当の電流で1.0Vまで放電した時の放電容量の割合を算出した。
貯蔵特性
実施例および比較例の各シート状空気電池(未放電のもの)について、空気孔を解放した状態で60℃90%RHの環境に1日間暴露した後、20℃60%RHの環境にて2mAの電流で1.0Vの電圧まで放電した時の容量を測定し、負極活物質量から計算した電池の設計容量に対する割合を算出した。
前記負荷特性および貯蔵特性の評価はそれぞれ別の電池を用いて行った。負荷特性と貯蔵特性の結果を表1に示す。
Figure 0006673791
表1に示す通り、実施例1〜3の各シート状空気電池は、各々の空気孔の面積が2mm以下で、かつa/bの値が0.001≦a/b≦0.025の範囲にあり、負荷特性、貯蔵特性が共に良好であった。特に、a/bの値を実施例3のシート状空気電池よりも小さくした実施例1および2のシート状空気電池において、より優れた貯蔵特性を実現することができた。
これに対し、空気孔の個数を多くし、a/bの値を0.025より大きくした比較例1の電池では、実施例3の電池と負荷特性がほとんど変わらない一方、電池内の水分量の変化が大きくなり、実施例3の電池に比べ貯蔵特性が低下した。また、比較例2の電池は、空気孔の個数が少なく、a/bの値が0.001より小さいため、外気の取り込みが小さく貯蔵特性は良好だが、負荷特性が悪くなった。更に、比較例3の電池は、a/bの値が0.001≦a/b≦0.025の範囲にあるものの、空気孔1つあたりの面積が2mmよりも大きく、正極面に対して空気が均一に供給されず、負荷特性が悪くなった。
1 シート状空気電池
20 正極(空気極)
21 正極外部端子
30 負極
31 負極外部端子
40 セパレータ
50 撥水膜
60 シート状外装体
61 空気孔

Claims (3)

  1. 負極の両面に、それぞれ、セパレータ、正極および撥水膜が積層されてなる電極体と、電解液とが、樹脂フィルム製のシート状外装体の内部に収容されてなるシート状空気電池であって、
    前記正極は、触媒を含有する触媒層を有しており、
    前記外装体の両面には、前記正極に空気を取り込むための空気孔が複数設けられており、
    前記空気孔は、いずれも面積が2mm以下であり、
    前記外装体の片面における全空気孔の合計面積をa(mm)とし、外装体の当該面側に配置された正極における触媒層の面積をb(mm)としたとき、前記外装体のいずれの面においても、0.0079≦a/b≦0.0140を満たしていることを特徴とするシート状空気電池。
  2. 前記空気孔を格子状に配置した請求項1に記載のシート状空気電池。
  3. 隣接する空気孔同士の間隔が、10mm以下である請求項1または2に記載のシート状空気電池。
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