JP2017174795A - 扁平形電池 - Google Patents

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光俊 渡辺
Mitsutoshi Watanabe
光俊 渡辺
裕志 橋本
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裕志 橋本
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Kunihiko Koyama
邦彦 小山
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【課題】空気極を有する扁平形電池において、負荷特性及び長期信頼性を両立させた電池を得る。【解決手段】空気電池1は、底部11及び開口を有する有底筒状の正極缶10と、正極缶10の開口を覆う負極缶20と、正極缶10と負極缶20との間に形成される空間S内に配置された負極42と、負極42よりも正極缶10の底部11側に配置された空気極41とを備える。正極缶10の底部11には、空気極41に空気を供給するための複数の空気孔11bが形成されている。空気孔11bは、それぞれの開口面積が16×10−3mm2以下である。複数の空気孔11bの開口面積の総和は、正極缶10の底部11の面積に対して0.1〜0.3%である。【選択図】図1

Description

本発明は、空気極を有する扁平形電池に関する。
従来より、たとえば補聴器用の電源に用いられる扁平形電池として、空気中の酸素を正極活物質として用いた空気電池が知られている。この空気電池では、正極として、酸素を還元するための触媒(マンガン酸化物、カーボンブラックなど)を有する空気極を備えており、前記触媒の表面で空気中の酸素を還元する反応を生じる。一方、前記空気電池の負極には、活物質として亜鉛などの金属材料が用いられている。前記空気電池では、前記負極の金属材料を酸化させることにより電子を放出する反応と、前記正極である空気極で酸素を還元させる反応とによって、発電が行われる。
このような構成を有する空気電池では、一般に、前記金属材料を含む負極、セパレータ、前記触媒を有する空気極、撥水膜及び空気拡散膜が、電解液とともに、正極缶(外装缶)及び負極缶(封止体)によって形成される空間内に封止されている。前記空気電池は、ボタン形(扁平形)の形状を有する。
また、前記正極缶の底面には、前記空気極に空気(酸素)を供給するために、1個または複数個の空気孔が形成されている。
ところが、前記空気孔から前記空気極に酸素が供給されるだけでなく、空気中に含まれる二酸化炭素も前記空気孔を介して前記空気極に供給される。そのため、前記空気電池を電源として使用した場合、前記空気電池内に流入した二酸化炭素が電解液と反応して炭酸カリウムなどの反応物を生成する。また、前記空気孔を介して、前記電解液中の水分が徐々に電池外に放出される。これにより、前記電解液の組成が時間の経過とともに変化する。よって、前記電解液中の水分が前記空気孔から電池外に放出されることは、前記空気電池の特性を低下させる要因になっている。
上述のような問題を解決するために、今までに、空気孔の個数や面積、空気孔間の距離などを最適化することにより、空気電池の特性劣化を抑制する検討が行われている。例えば、正極缶に設けられた0.3〜1.0mmの直径を有する空気孔の数を、有効空気極面積当たり0.7個/cmとすること(特許文献1)や、0.025〜0.170mmの直径を有する空気孔を少なくとも1個、正極缶に設けること(特許文献2)などが提案されている。
特開平4−174977号公報 特開平9−106837号公報
しかしながら、本発明者らの検討によれば、空気極での反応効率を考慮した場合、電池の性能をより向上させるためには、上述のような従来の構成では不十分であることが判明した。
本発明の目的は、空気極を有する扁平形電池において、負荷特性及び長期信頼性を両立させた電池を得ることにある。
本発明の一実施形態に係る扁平形電池は、厚み方向の一方に底部を有し、他方に開口を有する有底筒状の外装缶と、前記外装缶の開口を覆う封止体と、前記外装缶と前記封止体との間に形成される空間内に、前記封止体側に配置された負極と、前記空間内に、前記負極よりも前記外装缶の底部側に配置された空気極とを備える。前記外装缶の底部には、前記空気極に酸素を供給するための複数の空気孔が形成されている。前記空気孔は、開口面積が16×10−3mm以下である。前記複数の空気孔の開口面積の総和が、前記外装缶の底部の面積に対して0.1〜0.3%である(第1の構成)。
この構成により、外装缶の底部に、微細な空気孔が複数、形成されるため、空気極との反応に必要な酸素を確保しつつ、二酸化炭素等の酸素以外の余分な物質が電池内に流入しにくくなる。また、電池内の水分が電池外に流出するのを抑制することもできる。
したがって、電池の反応効率の低下による負荷特性の低下を抑制できるとともに、電解液の組成変化に伴う電池の長期信頼性の低下を抑制することが可能となる。よって、優れた負荷特性と長期信頼性とを両立可能な電池が得られる。
前記第1の構成において、前記複数の空気孔は、それぞれ、前記開口面積が8×10−3mm以下であることが好ましい(第2の構成)。これにより、電池の長期信頼性を一層向上させることができる。
前記第1または第2の構成において、前記複数の空気孔における前記開口面積の総和は、前記外装缶の底部の面積に対して0.24%よりも小さいことが好ましい(第3の構成)。
これにより、電池の作動電圧を高くすることができるとともに、電池の長期信頼性をより一層向上させることができる。
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、前記複数の空気孔は、それぞれ、隣接する空気孔との間隔が1.8mm以下であることが好ましい(第4の構成)。
これにより、扁平形電池の空気極における反応効率をより向上させることができる。したがって、電池の負荷特性をより一層向上させることができる。
前記第1から第4の構成のうちいずれか一つの構成において、前記複数の空気孔は、前記外装缶の底部における外面の中心を回転中心として回転対称になるように、前記底部に形成されていることが好ましい(第5の構成)。
これにより、外装缶の底部に、複数の空気孔を均等に形成することができる。よって、電池内に均等に酸素を取り込むことが可能になり、扁平形電池の空気極における反応のばらつきを抑制することができる。したがって、全体として電池の負荷特性を向上させることができる。
前記第1から第5の構成のうちいずれか一つの構成において、前記複数の空気孔のうち少なくとも一つの空気孔は、前記外装缶の底部の外面側の面積が内面側の面積よりも大きいことが好ましい(第6の構成)。
これにより、外装缶の底部に、低コストで且つ容易に空気孔を形成することができる。
外装缶の底部に微小な空気孔を形成する場合、レーザ光を用いた加工方法が好ましい。このようにレーザ光を用いた加工方法によって外装缶の底部に空気孔を形成する場合、金属板に空気孔を形成した後、該金属板を筒状に加工することによって、外装缶を得ることも可能である。しかしながら、このように外装缶を形成した場合、前記金属板を筒状に加工する際に空気孔の孔径が変化する可能性があるため、筒状に加工された外装缶に、空気孔を設けることが好ましい。
このように筒状の外装缶に空気孔を設ける場合、レーザ光を出射するノズルが外装缶の周壁部と干渉しないように、外装缶の底部の外面側からレーザ光を照射することが好ましい。これにより、外装缶の加工上の制約が少なくなるため、汎用のレーザ加工機を用いて、外装缶の底部に低コストで且つ容易に空気孔を形成することができる。
また、上述のようにレーザ光を用いて外装缶の底部に空気孔を形成する場合、レーザ光の形状の関係から、レーザ光を出射するノズルに近い位置では、レーザ光によって形成される孔の面積が大きくなりやすい。
そのため、外装缶の底部の外面側からレーザ光を照射する場合、外装缶の底部の外面側の面積が内面側の面積よりも大きい空気孔(例えばテーパ状の空気孔)が形成されやすい。レーザ光の走査によって、外装缶の底部の内面側と外面側とで同じ面積になるストレート状の空気孔や、外装缶の底部の内面側の面積が外面側の面積よりも大きい空気孔などを形成することが可能である。しかしながら、加工の容易性及び生産性の点から、外装缶の底部の外面側の面積が内面側の面積よりも大きい空気孔を設けることが好ましい。
なお、本発明において、空気孔の開口面積は、外装缶の外面における空気孔の面積を意味する。
本発明の一実施形態に係る扁平形電池は、空気極を有し、外装缶の底部に、開口面積が16×10−3mm以下で、且つ、開口面積の総和が前記外装缶の底部の面積に対して0.1〜0.3%になるように複数の空気孔が設けられている。これにより、外装缶に形成された空気孔における二酸化炭素等の流入や水分の流出を抑制できるとともに、前記空気極との反応に必要な酸素を十分に確保することができる。したがって、優れた負荷特性及び長期信頼性を有する電池が得られる。
図1は、本発明の実施形態に係る空気電池の概略構成を断面図である。 図2は、空気電池の正極缶の底部の平面図である。 図3は、空気極の概略構成を示す断面図である。 図4は、空気孔がテーパ状に形成された例を示す断面図である。 図5は、空気孔がテーパ状に形成された例を示す断面図である。 図6は、実施例1に係る空気孔の配置の一例を示す図2相当図である。 図7は、実施例2に係る空気孔の配置の一例を示す図2相当図である。 図8は、実施例4に係る空気孔の配置の一例を示す図2相当図である。 図9は、比較例1に係る空気孔の配置の一例を示す図2相当図である。 図10は、比較例2に係る空気孔の配置の一例を示す図2相当図である。 図11は、比較例3に係る空気孔の配置の一例を示す図2相当図である。
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る空気電池1(扁平形電池)の概略構成を示す断面図である。空気電池1は、負極に亜鉛粒子が用いられる一方、正極に空気中の酸素を還元する触媒が用いられている。なお、空気電池1は、例えば補聴器などの小型機器の電源として用いられる。
空気電池1は、有底円筒状(有底筒状)の正極缶10(外装缶)と、該正極缶10の開口を覆う負極缶20(封止体)と、正極缶10の内面と負極缶20の外面との間に配置されるガスケット30と、正極缶10及び負極缶20の間に形成される空間S内に収納される発電要素40とを備えている。空気電池1は、正極缶10と負極缶20とを合わせることによって、全体が扁平なコイン状に形成されている。空気電池1の正極缶10及び負極缶20の間に形成される空間S内には、発電要素40以外に、電解液(図示省略)も封入されている。
正極缶10は、鋼材などの金属材料からなり、プレス成形によって有底円筒状に形成されている。正極缶10は、円形状の底部11と、その外周に該底部11と連続して形成される円筒状の周壁部12とを備えている。すなわち、正極缶10は、厚み方向の一方に底部11を有するとともに、厚み方向の他方に開口を有する。周壁部12は、縦断面視で、底部11に対して垂直に延びるように設けられている。正極缶10は、後述するように、負極缶20との間にガスケット30を挟んだ状態で、周壁部12の開口端側が内側に折り曲げられて、該負極缶20の外周部に対してかしめられている。
図1に示すように、正極缶10の底部11における中央部分に、正極缶10の外方に向かって膨出する膨出部13が設けられている。膨出部13によって、底部11における正極缶10の内方に、後述する空気拡散膜44を配置するための凹部11aが形成される。凹部11aは、正極缶10の底部11において、正極缶10及び負極缶20がかしめられた嵌合部分よりも内側に形成されている。すなわち、前記嵌合部分は、凹部11aよりも底部11の外側に位置する。ここで、嵌合部分とは、正極缶10と負極缶20とのかしめ(嵌合)によって、正極缶10の底部11にガスケット30が押し付けられる力が作用している部分(正極缶10において、ガスケット30が正極缶10と接触している部分)をいう。
なお、正極缶10の底部11は、平坦面を有する平板状であってもよい。
正極缶10の底部11のうち、凹部11aが設けられている部分には、図1に示すように、底部11を厚み方向に貫通する複数の空気孔11bが形成されている。空気孔11bは、空気電池1の外部と正極缶10の底部11の凹部11aによって形成される後述の空間S1とを連通する。すなわち、空気孔11bは、酸素等の気体が通過する流路として機能する。
空気孔11bの詳しい構成については後述する。
なお、図示しないが、空気電池1が未使用の場合には、正極缶10の底部11の外面11cには、複数の空気孔11bを塞ぐためのシール等が貼られている。これにより、空気電池1が未使用の状態で、空気電池1内に空気孔11bを介して空気が侵入するのを防止できる。
負極缶20は、例えば、銅、ステンレス鋼及びニッケルの板材からなるクラッド材によって構成されていて、プレス成形によって有底円筒状に形成されている。負極缶20は、図1に示すように、円形状の平面部21と、その外周に該平面部21と連続して形成される円筒状の周壁部22とを備えている。図1に示すように、この周壁部22に対して、正極缶10の周壁部12の開口端側が折り曲げられてかしめられている。これにより、空気電池1が封止される。
ガスケット30は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、PPSにオレフィン系エラストマーを含有させた樹脂組成物、ポリアミド樹脂(ナイロン66等)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)などのフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル(PEE)、ポリスルフォン(PSF)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが用いられる。
ガスケット30は、図1に示すように、リング状のベース部31を備えている。ガスケット30は、ベース部31が後述のセパレータ43及び空気極41とともに、正極缶10の底部11の周縁部と負極缶20の周壁部22の開口端との間に挟みこまれるように、正極缶10と負極缶20との間に配置されている。
さらに、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間にガスケット30を挟みこんだ状態で、該正極缶10の周壁部12を折り曲げて負極缶20の周壁部22にかしめることにより、該ガスケット30によって正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22とを電気的に絶縁しつつ、それらの間を封止することができる。
また、ガスケット30を正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間に挟みこむことにより、負極缶20の内方に、後述する負極42を収容するための密閉空間を形成することができる。さらに、図1に示すように、ガスケット30と正極缶10の底部11との間には、後述するセパレータ43及び空気極41の周縁部が挟み込まれる。このとき、セパレータ43及び空気極41の径方向寸法の調整等によって、平面視で、セパレータ43及び空気極41の中央部分が、正極缶10の底部11の中央部分に対して浮き上がるように、ガスケット30と正極缶10の底部11との間にセパレータ43及び空気極41を挟みこむのが好ましい。これにより、セパレータ43及び空気極41と、正極缶10の底部11との間に空間S1が形成されるため、この空間S1内に、正極缶10の底部11に設けられた複数の空気孔11bを介して空気が流入する。また、上述のように、セパレータ43及び空気極41の平面視で中央部分を、正極缶10の底部11の中央部分に対して浮き上がらせることにより、空気極41の実質的な反応面積を増大させることができる。
発電要素40は、空気極41と、負極活物質の亜鉛粉末を含む負極42と、セパレータ43と、空気拡散膜44とを備えている。図1に示すように、負極缶20の内方には負極42が配置されている。正極缶10の内方の底部11側には、空気極41、空気拡散膜44が配置されている。空気拡散膜44は、正極缶10の底部11に形成された凹部11a内に配置されている。空気極41は、空気拡散膜44よりも負極42側に配置されている。空気極41と負極42との間にはセパレータ43が配置されている。
空気極41の拡大断面を図3に示す。空気極41は、図1及び図3に示すように、触媒層41aと、撥水膜41bとが積層されることによって形成される。具体的には、撥水膜41bは、触媒層41aの下側、すなわち空気極41を図1に示すように正極缶10内に配置した状態で触媒層41aよりも正極缶10の底部11側に位置付けられている。
図3に示すように、触媒層41aの撥水膜41b側には、例えばステンレス製の網部材41cが設けられている。この網部材41cは、正極の集電体として機能する。網部材41cは、触媒層41aに対して、例えば圧着によって一体化されている。
触媒層41aは、酸素を還元するための触媒、及びバインダーなどを含む合剤からなる。空気極41における触媒層41aの厚みは、100〜500μmであることが好ましい。
触媒層41aにおける触媒には、例えば、銀、白金族金属またはその合金、遷移金属、Pt/IrOなどの白金/金属酸化物、La1−xCaCoOなどのペロブスカイト酸化物、フタロシアニン鉄などの錯体触媒、WCなどの炭化物、MnNなどの窒化物、二酸化マンガンなどのマンガン酸化物などが用いられる。これらの中でも、二酸化マンガンなどのマンガン酸化物がより好ましい。また、後述の各種カーボン(触媒層に使用し得るカーボン)を、触媒として使用することもできる。触媒層41aにおける触媒の含有量は、50〜97質量%であることが好ましい。
なお、カーボン以外の触媒を用いる場合であっても、前記触媒の担体としてカーボンを含有させることが好ましい。
触媒層41aに使用するカーボンとしては、黒鉛、グラフェン、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなど)、VGCF(気相法炭素繊維)、活性炭素繊維、カーボンナノチューブ、木炭、活性炭などが挙げられる。
触媒層41aにおけるバインダーとしては、フッ化ビニリデンの重合体〔ポリフッ化ビニリデン(PVDF)〕、テトラフルオロエチレンの重合体〔ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)〕、フッ化ビニリデンの共重合体やテトラフルオロエチレンの共重合体〔フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF−HFP)、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF−CTFE)、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF−TFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF−HFP−TFE)など〕などのフッ素樹脂バインダーが挙げられる。これらの中でも、前記バインダーとして、テトラフルオロエチレンの重合体または共重合体が好ましく、PTFEがより好ましい。触媒層41aにおけるバインダーの含有量は、3〜50質量%であることが好ましい。
撥水膜41bは、撥水性を有し、且つ空気が通過可能な多数の微細孔を有する膜である。具体的には、撥水膜41bとして、例えば、PTFEなどのフッ素樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;などの樹脂によって構成された膜を用いることができる。撥水膜41bは、所定量の空気が通過可能である一方、空気電池1内の電解液の通過を抑制して、微細孔からの電解液の漏出を抑制することができる。撥水膜41bの細孔径及び細孔数を選択することにより、撥水膜41bを通過する空気の量を調整することが可能になる。
空気電池における撥水膜41bの厚みは、50μm以上であることが好ましく、また、250μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
負極42は、活物質として亜鉛合金やマグネシウム合金などの合金粉末を含む。亜鉛合金粉末の合金成分としては、例えば、インジウム、ビスマス、アルミニウムなどが挙げられる。亜鉛合金粉末におけるそれぞれの元素の含有量は、インジウム:0.005〜0.05質量%、ビスマス:0.005〜0.05質量%、アルミニウム:0.0005〜0.15質量%であることが好ましい。また、マグネシウム合金粉末の合金成分としては、例えば、カルシウム、マンガン、亜鉛、アルミニウムなどが挙げられる。マグネシウム合金粉末におけるそれぞれの元素の含有量は、カルシウム:1〜3質量%、マンガン:0.1〜0.5質量%、亜鉛:0.4〜1質量%、アルミニウム:8〜10質量%であることが好ましい。
ただし、亜鉛合金やマグネシウム合金などの合金粉末には、環境負荷軽減の観点から、合金成分として水銀を含有しないものを使用することが好ましく、また、同様の理由から、鉛を含有しないものを使用することが好ましい。
亜鉛合金粉末の粒度としては、例えば、全粒子中、粒径が75μm以下の粒子の割合は50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、粒径が100〜200μmの粒子の割合は、50質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
また、マグネシウム合金粉末の粒度としては、例えば、全粒子中、粒径が30μm以下の粒子の割合は50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、粒径が50〜200μmの粒子の割合は、50質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
なお、合金粉末の粒度は、レーザ散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA−920」)を用いて、粒子を溶解しない媒体に合金粉末の粒子を分散させた状態で測定された、体積基準での累積頻度により求められる。
負極42には、例えば、上述の合金粉末の他に、必要に応じて、ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルロースなどのゲル化剤、酸化亜鉛、インジウム化合物などの添加剤を含有させてもよい。これらの構成物を含む負極合剤組成物が後述する電解液とともに負極缶20内に充填されることにより、負極42が構成される。
負極42が酸化インジウム、水酸化インジウムなどのインジウム化合物を含有する場合、上述の合金粉末と電解液との反応による水素ガス発生をより効果的に防ぐことができる。負極42に使用するインジウム化合物の量は、合金粉末:100質量部に対し、0.003〜1質量部であることが好ましい。
セパレータ43は、ビニロン及びレーヨンを主体とする不織布、ポリアミド不織布、ポリオレフィン・レーヨン不織布、ビニロン紙、ビニロン・リンターパルプ紙、ビニロン・マーセル化パルプ紙、グラフトフィルムなどを用いることができる。詳しくは、セパレータ43は、ポリエチレン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させた構造を有するグラフト共重合体によって構成された2枚のグラフトフィルムを、セロハンフィルムの厚み方向両側に配置するとともに、ビニロン−レーヨン混抄紙を積層させたものが好適に用いられる。
また、親水処理された微孔性ポリオレフィンフィルム(微孔性ポリエチレンフィルムや微孔性ポリプロピレンフィルムなど)とセロファンフィルムとビニロン・レーヨン混抄紙のような吸液層(電解液保持層)とを積み重ねたものを、セパレータ43として用いてもよい。セパレータ43の厚みは、20〜500μmであることが好ましい。
上述のように、負極缶20内には電解液が充填されているため、空気電池1の構成部材のうち空気極41の撥水膜41bよりも負極42側に位置する構成部材は、電解液によって含浸されている。すなわち、負極42、セパレータ43、触媒層41aは、電解液によって含浸されている。
電解液は、負極42に亜鉛合金粉末が用いられる場合には、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)の1種または複数種の水溶液などのアルカリ電解液が好適に用いられ、水酸化カリウムの水溶液が特に好ましい。電解液の濃度は、例えば、水酸化カリウムの水溶液の場合、水酸化カリウムが、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは38質量%以下である。水酸化カリウムの水溶液の濃度を、このような値に調整することで、導電性に優れた電解液が得られる。
また、負極42にマグネシウム合金粉末を用いる場合には、酸性水溶液、中性水溶液および弱アルカリ性の水溶液など、pHが10以下の水溶液が好適に用いられる。電解液として使用する水溶液に溶解させる塩などの電解質としては、塩化ナトリウムなどの塩化物、水酸化ナトリウムなどの水酸化物、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩、過炭酸ナトリウムなどの過炭酸塩などが挙げられる。電解液は、これらの電解質のうちの1種または2種以上を含有していればよい。このような電解液の中でも、電解液として、塩化ナトリウム水溶液などの塩化物の水溶液がより好ましい。例えば、電解液が塩化ナトリウム水溶液の場合、塩化ナトリウムの濃度は、1〜20質量%であることが好ましい。
電解液には、上述の各成分の他に、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。例えば、負極に用いる合金粉末の腐食を防止して、空気電池1内での水素ガス発生を抑制するために、電解液に酸化亜鉛やインジウム化合物を添加してもよい。
電解液に添加するインジウム化合物としては、水酸化インジウム、酸化インジウム、硫酸インジウム、硫化インジウム、硝酸インジウム、臭化インジウム、塩化インジウムなどが挙げられる。
電解液中のインジウム化合物の濃度は、質量基準で、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が特に好ましく、また、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が特に好ましい。
空気拡散膜44には、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ナイロンなどの樹脂で構成された不織布を用いることができる。空気拡散膜44は、正極缶10の底部11に設けられた空気孔11bを介して空気電池1内に流入する空気を拡散させることにより、触媒層41aに供給される空気の量のばらつきを抑制する。これにより、空気電池1内で均一に酸素を反応させることが可能になる。
(空気孔)
正極缶10の底部11に設けられた複数の空気孔11bは、円形の断面形状を有する。しかしながら、空気孔11bの断面形状は、長円形や多角形など、円形以外の形状でもよい。空気孔11bは、例えばレーザ光を用いて形成される。
空気孔11bは、図1に示すように正極缶10の底部11の厚み方向に面積が変化しないストレート状の空気孔でもよいし、図4及び図5に示すように前記厚み方向に面積が変わるテーパ状の空気孔でもよい。なお、複数の空気孔11bの全てがテーパ状に形成されていてもよいし、一部の空気孔11bのみがテーパ状に形成されていてもよい。このように空気孔11bをテーパ状に形成する場合、本実施形態のように空気孔11bの断面形状が円形であれば、空気孔11bの孔径を前記厚み方向に変えてテーパ状に形成すればよい。
図4に、底部11に、内面11d側の面積が外面11c側の面積よりも大きいテーパ状の空気孔111bを形成した例を示す。空気孔111bをこのようなテーパ状に形成することにより、空気電池1内での酸素の拡散が促進される。これにより、空気電池1内に酸素を偏りなく取り込むことが可能になり、空気電池1内でより均一に酸素を反応させることができる。
この場合、空気電池1内で酸素をより拡散させやすくするために、正極缶10の内面11dにおける空気孔111bの面積を、外面11cにおける空気孔111bの面積(開口面積)の105%以上とすることが好ましく、110%以上とすることがより好ましく、120%以上とすることが特に好ましい。一方、空気孔の加工性などの点からは、正極缶10の内面11dにおける空気孔111bの面積を、外面11cにおける空気孔111bの面積(開口面積)の300%以下とすることが好ましく、200%以下とすることがより好ましく、180%以下とすることが特に好ましい。なお、空気孔111bを上記のようなテーパ状に形成することの効果は、空気孔111bの面積が小さくなるほど顕著になる。そのため、本発明の空気電池のように微小な面積を有する空気孔に上記のような形状を適用することによって、より顕著な効果が得られる。
上述のように、空気孔は、レーザ光を用いて形成される。有底円筒状の正極缶10の底部11に対して内側からレーザ光を当てようとすると、レーザ光を出射するノズルが正極缶10と干渉する場合があり、小型の電池に適した小さなノズルを用意する必要がある。そのため、生産性を考慮して、有底円筒状の正極缶10の底部11の外面11cにレーザ光を当てることにより、空気孔を形成することが好ましい。これにより、レーザ光を出射するノズルのサイズの制約がなくなるため、汎用品のノズルを用いることが可能になり、生産コストの低減を図れる。
また、上記問題を避けるために、あらかじめ金属板に空気孔を形成しておき、これを有底円筒状に加工することにより、正極缶を得てもよい。しかしながら、前記加工時に空気孔の孔径が変化する可能性があるため、有底円筒状に加工された正極缶に空気孔を形成するのが好ましい。
上述のようにレーザ光を正極缶10の底部11の外面11cに照射して形成した空気孔211bの一例を図5に示す。空気孔211bは、底部11の外面11c側の面積が内面11d側の面積よりも大きいテーパ状である。
正極缶10の底部11に設けられた空気孔11bは、それぞれ、外面11cにおける面積(開口面積)が16×10−3mm以下である。また、複数の空気孔11bの開口面積の総和は、正極缶10の底部11の面積に対して0.1〜0.3%である。これにより、空気孔11bを介して、空気電池1内に効率良く酸素を取り込むことができる一方、空気電池1内の電解液の水分が流出することを抑制できる。
なお、空気孔11bの開口面積は、12×10−3mm以下が好ましく、8×10−3mm以下がより好ましく、6×10−3mm以下が特に好ましく、3×10−3mm以下が最も好ましい。一方、空気孔11bの径が小さくなると、正極缶10の底部11に形成する空気孔11bの数が多くなって加工時間がかかるため、空気孔11bの開口面積は、3×10−4mm以上が好ましく、1×10−3mm以上がより好ましく、1.5×10−3mm以上が最も好ましい。
本実施形態のように空気孔11bが円形の場合には、空気孔11bの直径は0.14mm以下が好ましく、0.1mm以下がより好ましく、0.07mm以下が最も好ましい。また、空気孔11bの加工性の観点から、空気孔11bの直径は、0.02mm以上が好ましく、0.04mm以上がより好ましい。
また、複数の空気孔11bの開口面積の総和は、正極缶10の底部11の面積に対して0.23%以下が好ましく、0.2%以下がより好ましい。この構成により、空気電池1の作動電圧を高くすることができるとともに、空気電池1の長期信頼性をより一層向上させることができる。
空気孔11bの数は、空気電池1のサイズや空気孔11bの面積によっても変わるが、直径が約11mmの空気電池1(正極缶10の底部11の面積が約1cm)の場合には、12個以上が好ましく、17個以上がより好ましく、20個以上が特に好ましい。一方、加工時間の観点から、空気孔11bの数は、1000個以下が好ましく、200個以下がより好ましく、100個以下が特に好ましく、35個以下が最も好ましい。すなわち、空気孔11bの数は、正極缶10の底部11の単位面積(1cm)あたり、12個以上が好ましく、17個以上がより好ましく、20個以上が特に好ましい。また、空気孔11bの数は、正極缶10の底部11の単位面積(1cm)あたり、1000個以下が好ましく、200個以下がより好ましく、100個以下が特に好ましく、35個以下が最も好ましい。
本実施形態では、複数の空気孔11bは、図2に一例を示すように、正極缶10の底部11に、底部11の平面視で直交する2方向に等間隔に位置するように、設けられている。すなわち、複数の空気孔11bは、前記平面視で正極缶10の底部11の中央を回転中心とした場合に4回対称の回転対称に形成されている。また、空気孔11bは、底部11の前記中央に設けられている。
なお、複数の空気孔11bは、3回対称、6回対称、8回対称など、4回対称以外の回転対称に形成されていてもよいし、他の配置で形成されていてもよい。すなわち、複数の空気孔11bは、正極缶10内に効率良く空気を取り込むことができる一方、空気電池1内の水分の流出及び空気電池1内への二酸化炭素等の流入を抑制可能な配置であれば、どのような配置で設けてもよい。
ただし、空気極41に対して空気(酸素)を均一に供給して、空気極41における反応を効率的に進行させるためには、複数の空気孔11bを規則的に配置することが好ましい。空気孔11bの規則的な配置とは、例えば、前記回転対称の配置や、等間隔の複数の平行線同士が互いに交差した位置(格子点)に空気孔11が設けられた、いわゆる並行配列や、千鳥配列などである。
また、複数の空気孔11bは、それぞれ、隣接する空気孔11bとの間隔が1.8mm以下になるように形成されていることが好ましい。これにより、空気電池1内に酸素を効率良く取り込むことができ、空気極41における反応効率をより向上させることができる。したがって、空気電池1の負荷特性をより一層向上させることが可能となる。
前記隣接する空気孔11b同士の間隔は、1.5mm以下がより好ましく、1.2mm以下が特に好ましく、1.0mm以下が最も好ましい。
また、全ての空気孔11bについて、隣接する空気孔11b同士の間隔を同じ値にしてもよい。正極缶10の底部11の中央に近い部分に形成された複数の空気孔11bは、正極缶10の底部11の周縁に近い側に形成された複数の空気孔11bよりも、隣接する空気孔11bとの間隔を小さくしてもよい。または、正極缶10の底部11の周縁に近い側に形成された複数の空気孔11bは、正極缶10の底部11の中央に近い部分に形成された複数の空気孔11bよりも、隣接する空気孔11bとの間隔を小さくしてもよい。
複数の空気孔11bは、正極缶10の底部11において、正極缶10及び負極缶20の嵌合部分(図2におけるQ)を除いた領域P(図1参照)、すなわち、凹部11aが設けられている部分に形成されている。正極缶10及び負極缶20の嵌合部分Qでは、空気極41の触媒層41aの周縁部が、ガスケット30のベース部31と正極缶10の底部11とによって挟み込まれている。そのため、正極缶10及び負極缶20の嵌合部分Qでは、触媒層41aと酸素との反応がほとんど生じないと考えられる。
また、嵌合部分Qよりも内側(領域P)であっても、嵌合部分Qの近傍の触媒層41aは、ガスケットによる圧縮の影響を受けて、酸素との反応が生じにくい。このため、嵌合部分Qやその近傍に位置する触媒層41aは、空気電池1の放電に寄与しにくいうえ、嵌合部分Qの近傍に空気孔を形成した場合、空気電池1の負荷特性の向上につながらないだけでなく、空気孔からの二酸化炭素の流入や水分の流出が空気電池1の負荷特性を低下させてしまう。したがって、空気孔を形成する位置は、正極缶10の底部11の中央に近い部分、例えば、図2に示すように、正極缶10の底部11の中心と外周とを結ぶ線において中心側7/10の領域内にすることが望ましい。
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
前記実施形態では、負極缶20の周壁部22と正極缶10の周壁部12との間にガスケット30を挟みこむことにより、正極缶10及び負極缶20を封止している。しかしながら、負極缶20の周壁部22の先端は、折り返された形状であってもよい。正極缶10と負極缶20との嵌合部分の構成は、正極缶10及び負極缶20を封止可能な構成であれば、どのような構成であってもよい。
前記実施形態では、正極缶10を外装缶としていて、負極缶20を封止体としているが、逆に正極缶が封止体で、負極缶が外装缶であってもよい。また、封止体である負極缶20の構成は、正極缶10と嵌合可能な構成であれば、どのような構成であってもよい。
以下、実施例について詳細に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
<空気極>
触媒として四酸化マンガン(Mn):47.5質量部と、ケッチェンブラック:47.5質量部と、PTFEのディスパージョン:5質量部(固形分として)とを混合し、ロール圧延してシート状の合剤とした。その合剤にステンレス網(SUS316)を圧着させることによりシート部材を作製した。そして、前記シート部材を乾燥させた後、直径11mmの円形に打ち抜くことにより、触媒層を得た。なお、前記触媒層に含まれる前記合剤の重量は40mgであった。
<負極>
負極には、添加元素としてIn:0.05質量%、Bi:0.04質量%、Al:0.001質量%を含有し、粒径が100〜200μmの粒子の割合が50質量%以上である亜鉛合金粉末(平均粒径:120μm)を用いた。前記亜鉛合金粉末:100質量部と、水酸化インジウム:0.3質量部とを混合して負極合剤組成物とし、該負極合剤組成物850mgを用いて負極を構成した。
<電解液>
電解液には、水酸化インジウムを0.02質量%溶解した35質量%濃度の水酸化カリウム水溶液を用いた。
<セパレータ>
セパレータには、ポリエチレン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させた構造を有するグラフト共重合体で構成された2枚のグラフトフィルム(厚み:30μm)を、セロハンフィルム(厚み:20μm)の両側に配置し、更にビニロン−レーヨン混抄紙(厚み:100μm)を積層したものを打ち抜いて用いた。
<空気拡散膜および撥水膜>
空気拡散膜には、厚みが100μmのセルロース製不織布(紙)を、直径7mmに打ち抜いて用いた。また、撥水膜には、厚みが100μmのPTFE製多孔質シートを、直径11mmに打ち抜いて用いた。
<電池の組み立て>
上述のように得た空気拡散膜、撥水膜、空気極、セパレータ、負極(負極合剤組成物)およびアルカリ電解液を、内面にスズメッキが施されたNiメッキ鋼板からなる正極缶と、銅−ステンレス鋼(SUS304)−ニッケルクラッド板からなる負極缶と、ナイロン66製のガスケットとによって構成された電池ケース内に収容した。そして、正極缶の外周側を負極缶の外周側にかしめることにより、図1に示す断面構造を有する空気電池を作製した。空気電池は、直径11.4mm、厚さ5.4mmであり、底部の面積は約1cmであった。
なお、図6に示すように、正極缶310の底部311には、予めIRレーザを用いて直径90μmの円形の空気孔311b(開口面積:6.36×10−3mm)を25個形成した。正極缶310の底部311の中央に近い部分に形成された空気孔311bは、いずれも、隣接する空気孔311bとの間隔(最短距離)が0.91mm(空気孔311b同士の中心間距離は1mm)であり、正極缶310の底部311の周縁に近い側に形成された空気孔311bは、いずれも、隣接する空気孔311bとの間隔が1.32mm(空気孔311b同士の中心間距離は1.41mm)であった。また、形成された空気孔311bの開口面積の総和は、0.159mmであり、正極缶310の底部311の面積に対する前記総和の割合は、0.16%であった。
前記隣接する空気孔とは、ある空気孔に対し、その空気孔と最も近い距離に位置する空気孔を指す。また、空気孔同士の間隔とは、2つの空気孔における中心同士を結ぶ直線の長さから、一方の空気孔における中心から外周までの長さと、他方の空気孔における中心から外周までの長さとを引いた値を意味する。なお、空気孔が円形の場合は、空気孔の中心から外周までの長さは、円の半径である。以下の説明において、同様である。
(実施例2)
図7に示すように、正極缶410の底部411に直径90μmの円形の空気孔411bを37個形成した以外は、実施例1と同様にして空気電池を作製した。それぞれの空気孔411bは、隣接する空気孔411bとの間隔が0.91mm(空気孔411b同士の中心間距離は1mm)であった。また、形成された空気孔411bの開口面積の総和は、0.235mmであり、正極缶410の底部411の面積に対する前記総和の割合は、0.24%であった。
(実施例3)
空気孔の直径を120μm(開口面積:11.3×10−3mm)とした以外は、実施例1と同様にして空気電池を作製した。それぞれの空気孔は、隣接する空気孔との間隔が0.88mm(空気孔同士の中心間距離は1mm)であった。また、形成された空気孔の開口面積の総和は、0.283mmであり、正極缶の底部の面積に対する前記総和の割合は、0.28%であった。
(実施例4)
図8に示すように、直径90μmの円形の空気孔511bを、正極缶510の底部511の中心から半径2.5mmの円周上に12個、正極缶510の底部511の中心から半径3.5mmの円周上に12個、それぞれ等間隔に形成した以外は、実施例1と同様にして空気電池を作製した。それぞれの空気孔511bは、隣接する空気孔511bとの間隔が1.17mm(空気孔511b同士の中心間距離は1.26mm)であった。また、形成された空気孔511bの開口面積の総和は、0.153mmであり、正極缶510の底部511の面積に対する前記総和の割合は、0.15%であった。
(比較例1)
図9に示すように、正極缶610の底部611に直径90μmの円形の空気孔611bを12個形成した以外は、実施例1と同様にして空気電池を作製した。それぞれの空気孔611bは、隣接する空気孔611bとの間隔が1.91mm(空気孔611b同士の中心間距離は2mm)であった。また、形成された空気孔611bの開口面積の総和は、0.076mmであり、正極缶610の底部611の面積に対する前記総和の割合は、0.08%であった。
(比較例2)
図10に示すように、正極缶710の底部711に直径90μmの円形の空気孔711bを49個形成した以外は、実施例1と同様にして空気電池を作製した。それぞれの空気孔711bは、隣接する空気孔711bとの間隔が0.71mm(空気孔711b同士の中心間距離は0.8mm)であった。また、形成された空気孔711の開口面積の総和は、0.312mmであり、正極缶710の底部711の面積に対する前記総和の割合は、0.31%であった。
(比較例3)
図11に示すように、正極缶810の底部811に直径300μmの円形の空気孔811b(開口面積:70.7×10−3mm)を4個形成した以外は、実施例1と同様にして空気電池を作製した。それぞれの空気孔811bは、隣接する空気孔811bとの間隔が4.2mm(空気孔811b同士の中心間距離は4.5mm)であった。また、形成された空気孔811bの開口面積の総和は、0.283mmであり、正極缶810の底部811の面積に対する前記総和の割合は、0.28%であった。
(比較例4)
空気孔の直径を500μm(開口面積:196×10−3mm)とした以外は、比較例3と同様にして空気電池を作製した。それぞれの空気孔は、隣接する空気孔との間隔が4mm(空気孔同士の中心間距離は4.5mm)であった。また、形成された空気孔の開口面積の総和は、0.785mmであり、正極缶の底部の面積に対する前記総和の割合は、0.79%であった。
上述のように作製した各実施例および各比較例の空気電池に60Ωの抵抗を接続して放電させることにより、空気電池の電圧が0.9Vまで低下する際の放電容量を測定した。測定された放電容量から、それぞれの空気電池の初期容量を求めた。
また、前記放電容量のうち50%の放電が完了した時点における空気電池の電圧を測定し、測定された電圧を、各空気電池における平均作動電圧とした。
さらに、各実施例及び各比較例の空気電池において、前記測定に用いた空気電池とは別の空気電池を、45℃の温度環境下で、且つ50%±10%の湿度環境下で、20日間貯蔵した後、上述の初期容量の測定と同様に放電容量を測定した。測定された放電容量から、それぞれの空気電池の貯蔵後容量を求めた。
<評価結果>
空気電池の評価結果を表1に示す。実施例1〜4の空気電池では、空気孔の開口面積を16×10−3mm以下とし、且つ、それぞれの空気孔の開口面積の総和を、正極缶の底部の面積に対して0.1〜0.3%の範囲にすることにより、空気電池の初期容量を大きくし、且つ、貯蔵時の容量低下を抑制することができた。
Figure 2017174795
特に、それぞれの空気孔の開口面積の総和が正極缶の底部の面積に対して0.24%よりも小さい実施例1及び実施例4の空気電池では、平均作動電圧が高く、且つ貯蔵後の電池容量の低下がより少ない。よって、負荷特性及び長期信頼性がより優れた空気電池が得られた。
一方、それぞれの空気孔の開口面積の総和を、正極缶の底部の面積に対して0.1%未満とした比較例1の空気電池では、貯蔵時の容量低下を抑制することはできたものの、反応に必要な酸素を空気極に充分に供給することができず、空気電池の初期容量が減少したとともに空気電池の平均作動電圧が低下した。よって、比較例1の空気電池は、負荷特性が劣る空気電池であった。
また、正極缶の底部の面積に対する空気孔の開口面積の総和の比率が0.3%よりも大きい比較例2及び比較例4の空気電池では、二酸化炭素の流入及び水分の流出の影響が大きい。貯蔵後の電池容量は、初期容量の約1/2以下に減少した。
また、それぞれの空気孔の開口面積が16×10−3mmよりも大きい比較例3の空気電池は、空気孔の開口面積の総和が正極缶の底部の面積に対して0.1〜0.3%の範囲であっても、二酸化炭素の流入及び水分の流出の影響が大きいため、貯蔵後の電池容量が大きく低下した。
本発明による扁平形電池は、空気極を有し、正極活物質として酸素を用いる空気電池に利用可能である。
1 空気電池(扁平形電池)
10、310、410、510、610、710、810 正極缶(外装缶)
11、311、411、511、611、711、811 底部
11a 凹部
11b、111b、211b、311b、411b、511b、611b、711b、811b 空気孔
11c 外面
11d 内面
12 周壁部
20 負極缶(封止体)
30 ガスケット
40 発電要素
41 空気極
41a 触媒層
41b 撥水膜
41c 網部材
42 負極
43 セパレータ
44 空気拡散膜
S、S1 空間
P 嵌合部分を除いた領域
Q 嵌合部分

Claims (6)

  1. 厚み方向の一方に底部を有し、他方に開口を有する有底筒状の外装缶と、
    前記外装缶の開口を覆う封止体と、
    前記外装缶と前記封止体との間に形成される空間内に、前記封止体側に配置された負極と、
    前記空間内に、前記負極よりも前記外装缶の底部側に配置された空気極とを備え、
    前記外装缶の底部には、前記空気極に酸素を供給するための複数の空気孔が形成されていて、
    前記複数の空気孔は、それぞれ、開口面積が16×10−3mm以下であり、
    前記複数の空気孔における前記開口面積の総和が、前記外装缶の底部の面積に対して0.1〜0.3%である、扁平形電池。
  2. 請求項1に記載の扁平形電池において、
    前記複数の空気孔は、それぞれ、前記開口面積が8×10−3mm以下である、扁平形電池。
  3. 請求項1または2に記載の扁平形電池において、
    前記複数の空気孔における前記開口面積の総和は、前記外装缶の底部の面積に対して0.24%よりも小さい、扁平形電池。
  4. 請求項1から3のいずれか一つに記載の扁平形電池において、
    前記複数の空気孔は、それぞれ、隣接する空気孔との間隔が1.8mm以下である、扁平形電池。
  5. 請求項1から4のいずれか一つに記載の扁平形電池において、
    前記複数の空気孔は、前記外装缶の底部における外面の中心を回転中心として回転対称になるように、前記底部に形成されている、扁平形電池。
  6. 請求項1から5のいずれか一つに記載の扁平形電池において、
    前記複数の空気孔のうち少なくとも一つの空気孔は、前記外装缶の底部の外面側の面積が内面側の面積よりも大きい、扁平形電池。
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