以下、本発明の実施形態につき説明する。
本発明の一実施形態によれば、重量平均分子量が45,000以上であるポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、およびSP値が10.0〜12.0の範囲であるUV吸収剤を含む、熱可塑性樹脂組成物が提供される。
上述したように、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物においては、UV曝露による色変化の抑制と、耐衝撃性低下の抑制との両立が困難なものとなっていた。
本発明者らは、特に高分子量ポリカーボネート樹脂を用いた場合に、UV吸収剤や安定化剤を用いてもUV曝露による色変化または耐衝撃性が十分に抑制できない原因として、UV吸収剤や安定化剤が樹脂組成物に均一に分散されていないことが影響しているものと推測した。
そこで、鋭意検討した結果、SP値が10.0〜12.0の範囲であるUV吸収剤を添加することで、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物のUV曝露による色変化の抑制と、耐衝撃性低下の抑制との両立が可能になることを見出した。
上記のUV吸収剤のSP値は、ポリカーボネート樹脂のSP値10.3、およびポリエステル樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂のSP値11.3に近い。そのため、UV吸収剤が樹脂となじみやすく、優れた相溶性を示すため、樹脂組成物に均一に分散される。そのため、十分な光劣化抑制効果が得られるものと考えられる。
以下、本発明について詳細に説明する。
(ポリカーボネート樹脂)
ポリカーボネート樹脂とは、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲンまたは炭酸ジエステルとを反応させることにより得られる、芳香族ホモまたはコポリカーボネート樹脂でありうる。このようなポリカーボネート樹脂の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を採用することができ、例えば、芳香族二価フェノール系化合物にホスゲンなどを直接反応させる方法(界面重合法)や、芳香族二価フェノール系化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸ジエステルとを溶融状態でエステル交換反応させる方法(溶液法)などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物に用いられるポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、45,000以上である。ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量が45,000未満であると、耐衝撃性が低下してしまう。また、分子量が小さくなるとSP値も小さくなるため、重量平均分子量が45,000未満であると、SP値が10.0〜12.0であるUV吸収剤との相溶性が十分に得られない。そのため、UV吸収剤を添加する効果が十分に得られない。ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量の上限値は特に制限されないが、70,000以下とすることで、優れた靭性を保持できるため好ましい。より好ましくは、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量は、50,000〜60,000である。重量平均分子量は、下記実施例に記載の測定方法により測定されるものである。なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂は、重量平均分子量の異なる2以上の成分が混合されたものであってもよい。この場合、混合物として測定された重量平均分子量をポリカーボネート樹脂の重量平均分子量とする。
芳香族二価フェノール系化合物の例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、および1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが挙げられ、これらを単独あるいは混合物として使用することができる。
炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトルイルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートなどのジアリールカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート、ホスゲンなどのカルボニルハライド、2価フェノールのジハロホルメートなどのハロホルメートなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、ジフェニルカーボネートが好ましい。これらの炭酸ジエステルもまた、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリカーボネート樹脂としては、例えば、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンまたは1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンのような三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であっても、芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよい。また、得られたポリカーボネート樹脂を2種またはそれ以上混合して得られた混合物であってもよい。
ポリカーボネート樹脂としては市販品を用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂として、廃棄されたポリカーボネート樹脂製品を粉砕して得られる樹脂片を用いてもよい。特に、上記分子量の範囲にあるポリカーボネートとして、廃棄された光ディスク等の粉砕品も好適に用いることができる。CD、CD−R、DVD、MD等の光ディスクや光学レンズを成形加工した時に出る端材や廃棄物となった光ディスクから反射層、記録層等を剥離したものなどを10mm以下の適当な大きさに粉砕した樹脂片であれば特に限定なく、本発明において使用できる。廃棄されたポリカーボネート樹脂製品のポリカーボネート樹脂片は、粉砕洗浄後、一旦、180℃以上260℃以下の温度で混練し、冷却・粉砕して得ることもできる。
バージン(未使用)のポリカーボネート樹脂はペレット状の形態で市販されているが、これらをガラス転移温度以上の温度でプレスしたり、または押出機等で一旦溶融させ、溶融ストランドを冷却水中でローラーに通して押し潰し、通常のペレタイザーでカッティングしたりすることで、樹脂片として用いることができる。
ポリカーボネート樹脂を樹脂片として用いることにより、樹脂組成物の製造時において混練機への供給を容易にし、また溶融までの混練において、混練装置への負荷が少なくなる。ポリカーボネート樹脂片の形状としては、例えばフレーク状、ブロック状、粉状及びペレット状などが好ましく、特に好ましい形状はフレーク状である。樹脂片の好ましい最大長は30mm以下であり、より好ましくは20mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂は、特に制限されないが、好ましくは芳香族ジカルボン酸あるいはそのエステル誘導体成分と、脂肪族ジオールや脂環族ジオールなどのジオール成分とがエステル反応により連結した構造を有する芳香族ポリエステルである。ポリエステル樹脂は、例えば、芳香族ジカルボン酸あるいはそのエステル誘導体成分と、脂肪族ジオールまたは脂環族ジオールなどとを公知の方法で重縮合して得られるものを用いることができる。
芳香族ジカルボン酸の例としては、特に制限されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−アントラセンジカルボン酸、4,4’−p−ターフェニレンジカルボン酸および2,5−ピリジンジカルボン酸などが挙げられる。
脂肪族ジオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールなどが挙げられる。脂環族ジオールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
これらの芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジオールまたは脂環族ジオールは共に上記化合物を各々単独または2種以上組み合わせて用いることができる。さらに、本発明の樹脂組成物を構成するポリエステル樹脂は、全構造単位に基づいて1モル%以下であれば、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のモノマーから誘導される構造成分を有していてもよい。
具体的には、ポリエステル樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートなどの共重合ポリエステルが挙げられる。これらのなかでも、相溶性の面から特にポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートが好ましい。
本発明の樹脂組成物に用いられるポリエステル樹脂は、特に制限されないが、重量平均分子量が40,000〜85,000の範囲であることが好ましい。ポリエステル樹脂の重量分子量が上記範囲であると、本発明の効果がより顕著に得られうる。
ポリエステル樹脂の固有粘度に特に制限はないが、耐衝撃性および流動性を考慮すると、好ましくは0.4〜1.5dl/gの範囲である。この固有粘度は、JIS K7367−5(2000)に従い、フェノール/テトラクロロエタン(質量比:1/1)混合溶媒を用いて30℃で測定したときの値である。
ポリエステル樹脂として、廃棄されたポリエステル樹脂製品を粉砕して得られる樹脂片を用いることができる。使用済みの廃棄PETボトル等のPET製品の粉砕品も好適に用いることができる。廃棄物として回収されたPET製品であるボトル、シート、衣類、およびこれら成形品を成形した時に出た成形屑や繊維屑などを、適当な大きさに粉砕した樹脂片を使用することができる。中でも、量的に多い飲料用ボトルの粉砕品を好適に使用することができる。PETボトルは一般に、分別回収後、異材質除去、粉砕、洗浄工程を経て大きさ5〜10mmの透明なクリアフレークに再生される。
廃棄されたポリエステル樹脂製品のポリエステル樹脂片は、粉砕して洗浄、乾燥後、一旦、180℃以上260℃以下の温度で混練し、冷却・粉砕して得ることもできる。バージン(未使用)のポリエステル樹脂はペレット状の形態で市販されているが、これらをガラス転移温度以上の温度でプレスしたり、または押出機等で一旦溶融させ、溶融ストランドを冷却水中でローラーに通して押し潰し、通常のペレタイザーでカッティングしたりすることで、樹脂片として用いることができる。
(UV吸収剤)
本発明の樹脂組成物は、SP値が10.0〜12.0の範囲であるUV吸収剤を含む。好ましくは、前記UV吸収剤のSP値は10.6〜10.9の範囲である。
ここで、SP値とは、25℃における溶解性パラメータδ(cal/cm3)1/2であって、それぞれの化合物の蒸発エネルギーE(cal/mol)およびモル体積V(cm3/mol)から、δ=(E/V)1/2の計算式を用いて算出される化合物に固有の値であり、化合物の溶解性を予測するための一つの尺度である。SP値が大きいほど極性が高く、SP値が小さいほど極性が低いことを示す。そして、2種の化合物を混合する場合に、両者のSP値の差が小さいほど相溶性が高くなる。
それぞれの化合物の蒸発エネルギーE(cal/mol)およびモル体積V(cm3/mol)は、化合物を構成する結合または原子団ごとの蒸発エネルギーおよびモル体積の定数を用いて計算することができる。この定数としては、R.F.Fedors,Polym.Eng.Sci.,14,147(1974)に記載される値を用いることができる。
また、これらの定数を用いて、SP値が所望の値になるようにUV吸収剤の構造を設計することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、SP値が10.0〜12.0の範囲のUV吸収剤として、下記一般式(1)または(2)で表される化合物を含むことが好ましい。
一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、またはアリール基であり、R1とR2の炭素数の和が1〜11である。
一般式(2)中、R3は、置換もしくは非置換の炭素数が1〜13のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、またはアリール基である。
一般式(1)または(2)で表されるUV吸収剤は、SP値がポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂のSP値に近い。そのため、UV吸収剤と樹脂とが馴染みやすく、UV吸収剤が樹脂組成物に均一に分散される。その結果、より優れた光劣化抑制効果が得られ、UV曝露後の衝撃強度の低下がより抑えられ、色変化もより小さくすることができる。加えて、比較的分子量が大きいため、耐熱性に優れ、成形加工時の揮散は少ない。また、長期保留性に優れるため、長期間にわたって衝撃強度が維持され、着色が抑えられる。
上記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール系UV吸収剤、または一般式(2)で表されるトリアジン系UV吸収剤の入手方法は特に限定されるものではなく、市販品を用いてもよく、従来公知の方法で製造することもできる。
上記一般式(1)中、R1およびR2の炭素数の和は、4〜9であることが好ましい。一般式(1)で表されるUV吸収剤において、R1およびR2の炭素数が小さくなるとSP値は大きくなる方向にシフトし、炭素数が大きくなるとSP値は小さくなる方向にシフトする。R1およびR2の炭素数の和を4〜9の範囲とすることにより、ポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂のSP値とより近いSP値となり、樹脂組成物により均一に分散される。その結果、より優れた光劣化抑制効果が得られ、UV曝露後の衝撃強度の低下がより抑えられ、色変化もより小さくすることができる。
上記一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、置換もしくは非置換のアルキル基であることがより好ましく、非置換のアルキル基であることがさらに好ましい。また、非置換の直鎖アルキル基であることが特に好ましい。これらの形態であれば本発明の効果がより顕著に得られうる。
また、上記一般式(2)中、R3の炭素数は、2〜9であることが好ましい。一般式(2)で表されるUV吸収剤において、R3の炭素数が小さくなるとSP値は大きくなる方向にシフトし、炭素数が大きくなるとSP値は小さくなる方向にシフトする。R3の炭素数を2〜9の範囲とすることにより、ポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂のSP値とより近いSP値となり、樹脂組成物により均一に分散される。その結果、より優れた光劣化抑制効果が得られ、UV曝露後の衝撃強度の低下がより抑えられ、色変化もより小さくすることができる。
上記一般式(2)中、R3は、置換もしくは非置換のアルキル基であることがより好ましく、非置換のアルキル基であることがさらに好ましい。また、非置換の直鎖アルキル基であることが特に好ましい。これらの形態であれば本発明の効果がより顕著に得られうる。
上記一般式(1)および(2)において、アルキル基としては、上記の炭素数、または炭素数の和を有するものから選択される。すなわち、一般式(1)において、アルキル基は、その置換基も含めた炭素数が1〜11であって、R1およびR2の炭素数の和が4〜9の範囲になるように選択される。また、一般式(2)において、アルキル基は、その置換基も含めた炭素数が1〜13のアルキル基である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−イソプロピルブチル基、2−メチル−1−イソプロピル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基などが挙げられる。
アルケニル基としては、上記の炭素数、または炭素数の和を有するものであれば特に制限されない。すなわち、一般式(1)において、アルケニル基は、その置換基も含めた炭素数が2〜11であって、R1およびR2の炭素数の和が4〜9の範囲になるように選択される。また、一般式(2)において、アルケニル基は、その置換基も含めた炭素数が2〜13のアルケニル基である。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、上記の炭素数、または炭素数の和を有するものであれば特に制限されない。すなわち、一般式(1)において、アルキニル基は、その置換基も含めた炭素数が2〜11であって、R1およびR2の炭素数の和が4〜9の範囲になるように選択される。また、一般式(2)において、アルキニル基は、その置換基も含めた炭素数が2〜13のアルキニル基である。アルキニル基としては、例えば、2−ブチニル基、3−ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、デシニル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、上記の炭素数、または炭素数の和を有するものであれば特に制限されない。すなわち、一般式(1)において、シクロアルキル基は、その置換基も含めた炭素数が3〜11であって、R1およびR2の炭素数の和が4〜9の範囲になるように選択される。また、一般式(2)において、シクロアルキル基は、その置換基も含めた炭素数が3〜13のシクロアルキル基である。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基などが挙げられる。
シクロアルケニル基としては、上記の炭素数、または炭素数の和を有するものであれば特に制限されない。すなわち、一般式(1)において、シクロアルケニル基は、その置換基も含めた炭素数が3〜11であって、R1およびR2の炭素数の和が4〜9の範囲になるように選択される。また、一般式(2)において、シクロアルケニル基は、その置換基も含めた炭素数が3〜13のシクロアルケニル基である。シクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基などが挙げられる。
シクロアルキニル基としては、上記の炭素数、または炭素数の和を有するものであれば特に制限されない。すなわち、一般式(1)において、シクロアルキニル基は、その置換基も含めた炭素数が3〜11であって、R1およびR2の炭素数の和が4〜9の範囲になるように選択される。また、一般式(2)において、シクロアルキニル基は、その置換基も含めた炭素数が3〜13のシクロアルキニル基である。シクロアルキニル基としては、例えば、シクロブチニル基、シクロペンチニル基、シクロヘキシニル基、シクロヘプチニル基、シクロオクチニル基、シクロデシニル基などが挙げられる。
アリール基としては、上記の炭素数、または炭素数の和を有するものであれば特に制限されない。すなわち、一般式(1)において、アリール基は、その置換基も含めた炭素数が6〜11であって、R1およびR2の炭素数の和が6〜9の範囲になるように選択される。また、一般式(2)において、アリール基は、その置換基も含めた炭素数が6〜13のアリール基である。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
上記R1〜R3に場合によって存在する置換基は、上記の炭素数、または炭素数の和を満たすものであれば特に制限はないが、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基(−OH)、メルカプト基(−SH)、シアノ基(−CN)、スルホ基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)、ニトロ基(−NO2)などがある。または、アルキルカルボニル基(アシル基;−COR)、アルキルカルボニルオキシ基(アシルオキシ基;−OCOR)、アルキルオキシカルボニル基(−COOR)、アクリロイル基(−C(=O)−CH=CH2)、メタクリロイル基(−C(=O)−C(CH3)=CH2)、アクリロイルオキシ基(−O−C(=O)−CH=CH2)、メタクリロイルオキシ基(−O−C(=O)−C(CH3)=CH2)などが挙げられる。ここで、アルキル基Rの具体的な形態は上記と同様である。なお、場合によって存在する置換基は、置換するR1〜R3と同じとなることはない。例えば、R1〜R3がアルキル基の場合には、さらにアルキル基で置換されることはない。
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−エチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−プロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジエチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジプロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジペンチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
一般式(1)で表される化合物の市販品としては、例えば、サンケミカル社製CYASORB UV5411、BASF社製チヌビンPS、チヌビンP、シプロ化成社製SEESORB704などが挙げられる。
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールなどが挙げられる。
一般式(2)で表される化合物の市販品としては、例えば、BASF社製チヌビン1577やアデカ社製の商品名:アデカスタブLA−46が挙げられる。
上記一般式(1)または(2)で表される化合物の他にも、本発明において好適に用いられるSP値が10.0〜12.0のUV吸収剤としては、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン(SP値11.7、市販品としてシプロ化成株式会社製SEESORB107が用いられうる)などのベンゾフェノン系UV吸収剤、フェニルサリシレート(SP値11.0、市販品としてシプロ化成株式会社製SEESORB201が用いられうる)などのサリシレート系UV吸収剤などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、UV吸収剤は、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との合計質量100質量部に対して0.01〜2質量部用いることが好ましい。UV吸収剤の含有量がポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との合計質量100質量部に対して0.01質量部以上であれば、光による衝撃強度の低下や色の変化を抑制する効果が高い。一方、2質量部以下であれば、添加量に応じた光劣化抑制効果が得られるとともに、高い衝撃強度が得られうる。より好ましくは、UV吸収剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との合計質量100質量部に対して0.1〜1質量部である。
さらに、本発明の樹脂組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を実質的に含まないことが好ましい。これは、ヒンダードアミン系光安定剤は、塩基性であるため、添加副作用としてポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂の加水分解を促進し、UV曝露後の強度低下を抑制しきれない場合があるためである。ヒンダードアミン系光安定剤は、光安定化機能を有する化合物であって、窒素原子の隣接する2つの炭素原子に複数の立体障害作用を示す置換基を持ったピペリジン環を有する化合物である。このような立体障害作用を示す置換基を有するピペリジン環を含むオリゴマーまたはポリマーであってもよい。このような立体障害作用を示す置換基としては、例えば、メチル基等を挙げることができる。このような化合物の例としては、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル環を有する化合物が挙げられる。これらの化合物またはこれらの化合物を含有した組成物の市販品としては、例えば、BASF社製チヌビン622、123、144、292、765、770、BASF社製UVINUL 5050H、Clariant社製Sanduvor 3058などが知られている。
(増靭剤)
増靭剤は、樹脂組成物の柔軟性や加工性、耐衝撃性などを向上させる。増靭剤は、一種でもそれ以上でもよい。増靭剤は、例えば、ゴム弾性を有する樹脂である。増靭剤は、ブタジエンを含むモノマーの重合体で構成されるソフトセグメントと、スチレンのような芳香族基を有するモノマーの重合体で構成されるハードセグメントとを含む熱可塑性エラストマーであることが好ましい。上記熱可塑性エラストマーの分子のサイズは、例えば分子サイズが小さすぎると、樹脂組成物の耐衝撃性が低下することがあり、大きすぎると、熱可塑性樹脂組成物の加工性が低下することがある。このような観点から、例えば、熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、10,000〜500,000であることが好ましい。熱可塑性エラストマーの重量平均分子量も、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーなどの公知の方法を用いて求められる。
上記熱可塑性エラストマーの構造には、例えば、コアシェル構造、グラフト構造、直鎖構造および海島構造(いわゆる「ポリマーアロイ」)が知られている。熱可塑性エラストマーの構造は、そのいずれであってもよい。コアシェル構造は、例えば、架橋したゴム粒子のコアと、コアの存在下でビニル系単量体がグラフト重合してなるシェルとを含む。コアは、主にソフトセグメントで構成され、シェルは、主にハードセグメントで構成される。グラフト構造は、例えば、ソフトセグメントおよびハードセグメントの一方である幹ポリマーと、他方である枝ポリマーとから構成される。直鎖構造は、例えば、ソフトセグメントとハードセグメントとのブロック共重合体で構成される。海島構造は、例えば、主にソフトセグメントで構成される島(分散相)と、主にハードセグメントで構成される海(連続相)とによって構成される。
上記熱可塑性エラストマーの例としては、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、スチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)、および、ブチルアクリレート−メチルメタアクリレート共重合体などが挙げられる。これらは1種単独で用いても2種以上併用してもよい。中でも、増靭剤がMBS、ABSおよびSBSからなる群から選ばれる一以上であることは、熱可塑性樹脂組成物の相溶化性および難燃性や、熱可塑性樹脂組成物における熱可塑性エラストマーの分散性の観点から好ましい。
また、MBSの構造がコアシェル構造であり、MBSのゴム量が50〜80質量%であることが、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性や、熱可塑性樹脂組成物におけるMBSの分散性などの観点から好ましい。また、ABSの構造がグラフト構造であり、ABSのゴム量が10〜55質量%であることが、熱可塑性樹脂組成物の相溶化性および加工性の観点から好ましい。また、SBSの構造が直鎖構造であり、SBSのゴム量が50〜80質量%であることが、熱可塑性樹脂組成物の柔軟性および耐衝撃性の観点から好ましい。上記「ゴム量」とは、上記熱可塑性エラストマー中のソフトセグメントの含有量を意味する。
MBSの例としては、EM500(LG Chemical社製)が挙げられる。ABSの例には、TFX−610(三菱化学株式会社製)が挙げられる。SBSの例には、カリフレックス TRKX65S(シェル株式会社製)が挙げられる。
熱可塑性組成物中の増靭剤の含有量は特に制限されないが、好ましくは、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との合計質量100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましい。
(相溶化剤)
相溶化剤は、二重結合、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基などを有する化合物(低分子化合物又はポリマー)であって、成形加工工程で相溶化させようとするポリマーの一方または両方と反応してグラフトまたはブロック構造に基づく界面活性剤的な働きをして相溶化剤として機能するものであり(参考文献:「ポリマーアロイ」基礎と応用、高分子学会編、1993年発行)、特開2013−133369号公報で開示されている反応性官能基を有する樹脂などが挙げられる。相溶化剤としては、例えば、エチレングリシジルメタクリレート共重合体(E−GMA;共重合重量組成、例えばE/GMA=100/6〜12)、エチレングリシジルメタクリレート−ビニルアルコール共重合体(E−GMA−VA;共重合重量組成、例えばE/GMA/VA=100/3〜12/8〜5)、エチレングリシジルメタクリレート−メタクリレート共重合体(E−GMA−MA;共重合重量組成、例えばE/GMA/MA=100/3〜12/30)などのグリシジルメタクリレート(GMA)由来の構成単位を有する共重合体;エチレングリシジルメタクリレート−アクリロニトリルスチレン(EGMA−AS;共重合重量組成、例えばEGMA/AS=70/30)、エチレングリシジルメタクリレート−ポリスチレン(EGMA−PS;共重合重量組成、例えばEGMA/PS=70/30)、エチレングリシジルメタクリレート−ポリメチルメタクリレート(EGMA−PMMA、例えばEGMA/PMMA=70/30)、スチレン−アクリロニトリル−グリシジルメタクリレート(SAN−GMA、例えば、SAN/GMA=スチレン/アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート=70/50/10〜75/23/2)などのグリシジルメタクリレートが導入された樹脂;エチレン無水マレイン酸エチルアクリレート共重合体(E−MAH−EA);酸変性型ポリエチレンワックス;COOH化ポリエチレングラフトポリマー、COOH化ポリプロピレングラフトポリマー;イソシアネート基を5〜30質量%含むポリイソシアネート等が挙げられる。
相溶化剤は市販品を用いてもよく、具体的には、ボンドファーストE、ボンドファースト2C(住友化学株式会社製);レクスパールRA、レクスパールET、レクスパールRC(日本ポリオレフィン株式会社製);ボンダイン(住友化学株式会社製);モディパー(日油株式会社製);ハイワックス(APEW;三井化学株式会社製);VESTANAT T1890(デグサ社製)等が挙げられる。
これら相溶化剤のうちの1種のみを用いてもよく、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
中でも、ポリエステル樹脂との反応のし易さという点から、相溶化剤は、グリシジルメタクリレート(GMA)由来の構成単位を有する共重合体またはグリシジルメタクリレートが導入された樹脂であることが好ましい。
相溶化剤の添加量としては、ポリエステル樹脂組成物およびポリカーボネート樹脂の合計が100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましい。
(滑剤)
滑剤は、熱可塑性樹脂組成物を構成する樹脂の間の摩擦を低減して摩擦熱を抑制し、また、熱可塑性樹脂組成物から成形される樹脂成形体の表面の粘着を抑え、離型性を高める働きをする。滑剤としては、特に制限されず、高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類などを用いることができるが、好ましくは、下記一般式(3)または(4)で表される化合物を含む。
一般式(3)中、R1’は下記化学式で表される構造を有し、
R2’は置換もしくは非置換の炭素数11〜40のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはシクロアルキニル基であり、一般式(4)中、R3’、R4’はそれぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換の炭素数が1〜40のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、またはシクロアルキニル基であり、R3’とR4’との炭素数の和が11〜40である。
上記一般式(3)または一般式(4)で表される化合物は、SP値がポリカーボネート樹脂のSP値に近い。そのため、滑剤と樹脂とが馴染みやすく、滑剤が樹脂組成物中に均一に分散される。そのため、高い流動性を有する樹脂組成物が得られうる。このため、成形性が向上し、優れた外観を有する樹脂成形体を作製することができる。
熱可塑性組成物中の滑剤の含有量は特に制限されないが、好ましくは、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との合計質量100質量部に対して、0.01〜5質量部であり、より好ましくは、0.05〜4.5質量部である。滑剤の含有量がポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との合計質量100質量部に対して0.01質量部以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性を高める効果が大きい。また、5質量部以下であれば、十分な衝撃強度が得られうる。
(難燃剤)
難燃剤は、有機系難燃剤であっても、無機系難燃剤であってもよい。有機系難燃剤の例には、ブロモ化合物、リン化合物が含まれる。無機系難燃剤の例には、アンチモン化合物や金属水酸化物が含まれる。
難燃剤の少なくとも一部はリン系化合物であることが好ましい。リン系化合物は、樹脂組成物に高い難燃性を付与しやすく、かつ環境毒性もないからである。リン系化合物は、典型的にはリン酸エステル化合物であり、リン酸エステル化合物の例には、亜リン酸エステル、リン酸エステルおよびホスホン酸のエステル化物などが含まれる。特にリン酸エステルが好ましい。
亜リン酸エステルの具体例には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが含まれる。
リン酸エステルの具体例には、トリフェニルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート、ジステアリルペンタエリスリトールジホスフェート、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート、トリブチルホスフェート、ビスフェノールAビス−ジフェニルホスフェート、芳香族縮合リン酸エステルなどが挙げられる。縮合リン酸エステルとしては、例えば、1,3−フェニレンビス(ジ2,6キシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)及び1,3−フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。
ホスホン酸エステルの具体例には、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸エステルなどが含まれる。
ブロモ化合物の例には、ポリブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化ポリカーボネートオリゴマーが含まれる。
難燃剤は市販品を用いてもよく、市販のリン系化合物としては、例えば、大八化学工業株式会社製の「CR−733S」、「CR−741」(いずれも縮合リン酸エステル、液状)、「PX−200」(縮合リン酸エステル、固体状)、大塚化学株式会社製の「SPS−100」(ホスファゼン化合物、固体状)等が挙げられる。
難燃剤の添加量としては、ポリエステル樹脂組成物およびポリカーボネート樹脂の合計が100質量部に対して、1〜35質量部であることが好ましい。
(酸化防止剤)
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いられる酸化防止剤の種類としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、含硫黄有機化合物系酸化防止剤、含リン有機化合物系酸化防止剤などが挙げられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス−〔メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー〕、3,9−ビス[1,1−ジ−メチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−2,4,8,10−テトラオキオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。
含硫黄有機化合物系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)等が挙げられる。
含リン有機化合物系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4'−ビフェニレン−ジホスホナイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
なお、本発明の熱可塑性樹脂化合物は、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系酸化防止剤(窒素原子の隣接する2つの炭素原子に複数の立体障害作用を示す置換基を持ったピペリジン環を有する化合物を含む酸化防止剤)を含有しないことが好ましい。
なお、酸化防止剤は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。また、酸化防止剤は、合成品を用いてもよいし市販品を用いてもよい。市販品の例としては、例えば、ノクラック(登録商標)200、ノクラック(登録商標)M−17、ノクラック(登録商標)SP、ノクラック(登録商標)SP−N、ノクラック(登録商標)NS−5、ノクラック(登録商標)NS−6、ノクラック(登録商標)NS−30、ノクラック(登録商標)300、ノクラック(登録商標)NS−7、ノクラック(登録商標)DAH(以上、大内新興化学工業株式会社製)、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−616、アデカスタブAO−635、アデカスタブAO−658、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−15、アデカスタブAO−18、アデカスタブ328、アデカスタブAO−37、(以上、株式会社ADEKA製)、IRGANOX(登録商標)245、IRGANOX(登録商標)259、IRGANOX(登録商標)565、IRGANOX(登録商標)1010、IRGANOX(登録商標)1024、IRGANOX(登録商標)1035、IRGANOX(登録商標)1076、IRGANOX(登録商標)1081、IRGANOX(登録商標)1098、IRGANOX(登録商標)1222、IRGANOX(登録商標)1330、IRGANOX(登録商標)1425WL、IRGAFOS(登録商標)38、IRAGFOS(登録商標)168、IRGAFOS(登録商標)P−EPQ(以上いずれもBASF社製)、Sumilizer(登録商標)GM、Sumilizer(登録商標)GA−80(以上、住友化学株式会社製)等が挙げられる。
酸化防止剤の添加量としては、ポリエステル樹脂組成物およびポリカーボネート樹脂の合計が100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記成分の他、ドリップ防止剤を添加して混合してもよい。
(ドリップ防止剤)
ドリップ防止剤としては、燃焼時に樹脂材料の滴下(ドリップ)を防止し、難燃性を向上させる目的で添加されるものであり、フッ素系ドリップ防止剤やシリコンゴム類、層状ケイ酸塩等が挙げられる。
上記層状ケイ酸塩としては、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ、タルク等が挙げられ、その層間に、有機カチオン、第4級アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンがインターカレートされているものでもよい。
上記ドリップ防止剤の中でも、特にフッ素系のドリップ防止剤が好ましく、フッ素系のドリップ防止剤の具体例としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系樹脂やパーフルオロメタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ−n−ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロ−t−ブタンスルホン酸カリウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム塩、パーフルオロ−2−エチルヘキサンスルホン酸カルシウム塩等のパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩化合物又はパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。上記フッ素系のドリップ防止剤の中でも、ドリップ防止性の点から、ポリテトラフルオロエチレンが最も好ましい。
ドリップ防止剤の添加量としては、ポリエステル樹脂組成物およびポリカーボネート樹脂の合計が100質量部に対して、0.01〜1質量部であることが好ましい。
(他の樹脂成分、任意成分)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的が達成される範囲で、他の樹脂成分や必要に応じて任意の添加成分(任意成分)を配合することができる。
他の樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミドなどを加えて、成形用樹脂としての性能を改良することができる。他の樹脂成分の含有量は、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との合計質量100質量%に対して、0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
また、任意成分としては、例えば、架橋剤(例えばフェノール樹脂など)、熱安定剤(フェノール系、アクリレート系など)、エステル交換抑制剤(モノステアリルアシッドホスフェートとジステアリルアシッドホスフェートの混合物など)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系など)、光安定剤(有機ニッケル系など)、滑剤(高級脂肪酸の金属塩類、高級脂肪酸アミド類など)、顔料(カーボンブラック、酸化チタンなど)や染料、帯電防止剤、発泡剤などが挙げられる。
任意成分のさらに他の例には、金属繊維、アラミド繊維、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカ、ワラステナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンおよび酸化アルミニウムなどの充填材が含まれる。なかでも、ガラス繊維、炭素繊維および金属繊維が好ましく、最も好ましいのは炭素繊維である。これら繊維状充填材の種類は、一般に樹脂の強化用に用いられているものならば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョプドストランドや、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、任意成分の含有量は、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との合計質量100質量%に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
(熱可塑性樹脂組成物の製造方法)
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては特に限定されない。例えば、少なくともポリカーボネート樹脂と、ポリエステル樹脂と、所定のUV吸収剤、および必要に応じて増靭剤、相溶化剤、滑剤、難燃剤、酸化防止剤、その他の添加剤を含む混合物の溶融混練により、熱可塑性樹脂組成物を得る。
この際、溶融混練の前に、あらかじめ各成分を混合する予備混合を行ってもよい。または、あらかじめポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂とをドライブレンドなどによって予備混合して真空乾燥しておき、乾燥させた混合物にUV吸収剤、増靭剤、相溶化剤、滑剤、難燃剤、酸化防止剤、その他の添加剤を添加して混合してもよい。
予備混合に用いる混合機としては、V型混合機、リボンミキサー、ナウターミキサー、スーパーミキサーなどの混合機が挙げられる。また、予備混合処理の後においては、溶融混練処理の前に、ポリエステル樹脂の加水分解反応を抑制させる観点から、混合物を十分に乾燥させることが好ましい。この際の乾燥温度としては、特に限定されるものではないが、60〜100℃であることが好ましい。また、乾燥時間については特に限定されるものではないが、2〜6時間であることが好ましい。さらに乾燥の際、減圧下で行うことで、乾燥がより進行しやすくなるため、好ましい。
溶融混練は、バンバリーミキサー、ロール、および単軸または多軸混練押出機などで行うことができるが、好ましくは多軸混練押出機を用いることが好ましく、特には二軸混練押出機にて行うことが好ましい。溶融混練条件は特に制限されないが、例えば、溶融混練の際の押出し機のシリンダー温度は、240〜300℃の範囲であることが好ましく、250〜280℃の範囲であることがより好ましい。例えば押出機にて溶融混練を行う場合、押出機のシリンダー温度を上記範囲に設定することがよい。なお、ここでいう押出機のシリンダー温度とは、押出機のシリンダーにおいて複数の温度設定がなされる場合には、最も高いシリンダー部の温度を指す。混練圧力は特に限定されないが、1〜20MPaであることが好ましい。
溶融混練の際の押出機からの吐出量は特に限定されるものではないが、溶融混練が十分
に行われることから、10〜100kg/時で行うことが好ましく、20〜70kg/時で行うことがより好ましい。
ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との混合比率は、70〜90質量部のポリカーボネート樹脂に対して、30〜10質量部のポリエステル樹脂とすることが好ましい。ポリカーボネート樹脂の割合を70質量部以上(ポリエステル樹脂の割合を30質量部以下)とすることで、衝撃強度の高い樹脂組成物が得られうる。また、ポリカーボネート樹脂の割合を90質量部以下(ポリエステル樹脂の割合を10質量部以上)とすることで、樹脂組成物の流動成形性が向上しうる。
また、上記のように、UV吸収剤は、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との合計質量100質量部に対して0.01〜2質量部用いることが好ましい。
また、各成分の添加量は特に制限されないが、増靭剤、相溶化剤、滑剤、難燃剤、酸化防止剤から選択される1以上の添加剤の添加量の合計が、ポリカーボネート樹脂と前記ポリエステル樹脂との合計質量100質量部に対して、20〜45質量部であることが好ましい。上記添加剤の総量が20質量部以上であれば、添加剤の効果が十分に得られうる。また、45質量部以下であれば、耐衝撃性および流動性に優れた樹脂組成物が得られうる。なお、増靭剤、相溶化剤、滑剤、難燃剤、および酸化防止剤はそれぞれ任意の成分であるが、本発明の樹脂組成物においては、増靭剤、相溶化剤、難燃剤、および酸化防止剤を含むことが好ましい。
上記のように溶融混練されて得られた溶融状態の樹脂混練物は、射出された後、冷却処理することが好ましい。冷却処理は特に限定されず、例えば上記樹脂混練物を0〜60℃の水に浸漬して水冷する方法、−40〜60℃の気体で冷却する方法、−40〜60℃の金属に接触させる方法などが用いられうる。
このようにして得られた樹脂組成物は、射出成形法による射出成形時の処理を容易にするために、例えばペレタイザーによって裁断し、ペレットとすることが好ましい。
(樹脂成形体)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、任意の手法で樹脂成形体に成形することができる。成形の手法の例には、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、異形押出成形、圧縮成形、ガスアシスト成形などが含まれる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の樹脂成形体は、電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器または家電機器のハウジング部品などに使用可能である。特に、プリンターなどのOA機器の筐体に好ましく用いられる。
本発明の効果を以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
<測定方法>
(重量平均分子量(Mw)の測定)
4〜7μgの範囲で試料を秤量して、THFに添加した後、超音波を30分かけ、溶けた部分をGPC装置の測定に用いた。重量平均分子量(Mw)(ポリスチレン換算)は、GPC装置として、東ソー(株)製HLC−8120GPC、SC−8020装置を用い、カラムはTSKgei,SuperHM−H(6.0mmID×15cm×2)を用い、溶離液として和光純薬社製クロマトグラフ用THF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、流速0.6ml/min、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、IR検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:A−500、F−1、F−10、F−80、F−380、A−2500、F−4、F−40、F−128、F−700の10サンプルから作製した。また試料解析におけるデータ収集間隔は300msとした。
[実施例1]
ポリエステル樹脂としてのポリエチレンテレフタレート樹脂(商品名ダイヤナイトMA521H−D25、三菱レイヨン社製)14質量部、ポリカーボネート樹脂(商品名タフロンA−1900、重量平均分子量55,000、出光興産社製)57質量部、難燃剤(商品名PX−200、大八化学社製)18質量部、増靭剤(MBS;商品名EM500、LG Chemical社製およびABS;商品名TFX−610、三菱化学株式会社製の1:1(質量比)混合物)10質量部、相溶化剤(商品名モディパーA4400、日油社製)0.5質量部、酸化防止剤(商品名Irganox245、BASF社製)0.4質量部、およびUV吸収剤として下記化学式に示す例示化合物1(BASF社製チヌビンP、SP値:12.0)0.1質量部を、V型混合器を用いてドライブレンドし、真空乾燥機を用いて混合物を減圧下で70℃、4時間乾燥させた。ここで、UV吸収剤の添加量は、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との合計100質量部に対して0.14質量部であった。
乾燥させた混合物を二軸混練押出機の原材料供給口から投入し、シリンダー温度を260℃、混練物の吐出量を10kg/時、樹脂圧力を4MPa、として溶融混練した。二軸混練機から吐出した混練物を、30℃の水に浸漬することによって急冷し、ペレタイザーによりペレット状に粉砕して熱可塑性樹脂組成物を得た。
[実施例2]
UV吸収剤を下記化学式に示す例示化合物2(SP値:11.8)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[実施例3]
UV吸収剤を下記化学式に示す例示化合物3(SP値:10.9)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[実施例4]
UV吸収剤を下記化学式に示す例示化合物4(シプロ化成社製SEESORB704、SP値:10.4)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性脂組成物を得た。
[実施例5]
UV吸収剤を下記化学式に示す例示化合物5(SP値:11.5)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[実施例6]
UV吸収剤を下記化学式に示す例示化合物6(BASF社製チヌビン1577、SP値:10.7)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[実施例7]
UV吸収剤を下記化学式に示す例示化合物7(SP値:10.0)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[実施例8]
UV吸収剤を下記化学式に示す例示化合物8(アデカ社製アデカスタブLA−46、SP値:10.6)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[実施例9]
UV吸収剤を下記化学式に示す例示化合物9(シプロ化成社製SEESORB201、SP値:11.0)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[実施例10]
UV吸収剤を下記化学式に示す例示化合物6(SP値:10.7)に変更し、ポリカーボネート樹脂を、重量平均分子量が46,000のもの(出光興産社製タフロンA−1700)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[実施例11]
UV吸収剤を下記化学式に示す例示化合物6(SP値:10.7)に変更し、ポリカーボネート樹脂を、重量平均分子量が68,000のもの(出光興産社製タフロンA−2200)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[実施例12]
UV吸収剤を下記化学式に示す例示化合物6(SP値:10.7)0.02質量部に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。このとき、UV吸収剤の添加量は、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との合計100質量部に対して0.028質量部であった。
[実施例13]
UV吸収剤を下記化学式に示す例示化合物6(SP値:10.7)1.5質量部に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。このとき、UV吸収剤の添加量は、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との合計100質量部に対して2.1質量部であった。
[実施例14]
UV吸収剤を下記化学式に示す例示化合物6(SP値:10.7)に変更し、ポリカーボネート樹脂を64質量部、ポリエチレンテレフタレート樹脂を7質量部用いたことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[実施例15]
UV吸収剤を下記化学式に示す例示化合物6(SP値:10.7)に変更し、ポリカーボネート樹脂を50質量部、ポリエチレンテレフタレート樹脂を21質量部用いたことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[比較例1]
UV吸収剤を下記化学式に示す比較化合物1(SP値:12.2)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[比較例2]
UV吸収剤を下記化学式に示す比較化合物2(SP値:9.9)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[比較例3]
UV吸収剤を下記化学式に示す比較化合物3(SP値:12.6)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[比較例4]
UV吸収剤を下記化学式に示す比較化合物4(SP値:9.8)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[比較例5]
UV吸収剤を下記化学式に示す比較化合物5(BASF社製チヌビン622、SP値:9.8)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[比較例6]
UV吸収剤を下記化学式に示す比較化合物6(SP値:8.5)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
[比較例7]
UV吸収剤を下記化学式に示すに示す例示化合物6(SP値:10.7)に変更し、ポリカーボネート樹脂を、重量平均分子量が43,000のもの(出光興産社製タフロンR−1700)に変更したことを除いては、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
各実施例および比較例で得た樹脂組成物について、UV吸収剤の種類、SP値およびポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との合計100質量部に対する添加量(質量部)、ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(PC分子量)、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との混合比(質量比)、添加剤(増靭剤、相溶化剤、難燃剤、および酸化防止剤)のポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂との合計100質量部に対する総添加量(質量部)を、以下の評価の結果と併せて、下記表1に示す。
<評価方法>
(1)アイゾット衝撃強度
ペレット状の樹脂組成物を100℃で4時間乾燥させた後、射出成形機「J55ELII」(日本製鋼所社製)を用いて、シリンダー設定温度260℃、金型温度50℃で、80mm×10mm×4mmの短冊型試験片を成形し、「JIS−K7110」に準拠してアイゾット衝撃試験を行い、下記評価基準により評価した。
◎:42kJ/m2以上、
○:28kJ/m2以上42kJ/m2未満、
△:10kJ/m2以上28kJ/m2未満、
×:10kJ/m2未満(実用上問題あり)。
(2)耐光安定性試験
上記試験片を、「JIS−K7350」に準拠して人工的に促進劣化させ(劣化試験)、その後に下記二項目(評価AおよびB)を評価することで、耐光安定性を評価した。
A.劣化試験後衝撃強度(衝撃強度安定性)
評価方法は上記(1)と同様である。
B.色安定性
L、a、およびbで表されるCielab系を用いて色測定を実施した。変色度ΔEは、劣化試験の前後に測定したL、a、およびbの値から計算した。
◎:ΔE=1.5未満、
○:ΔE=1.5以上5.0未満、
△:ΔE=5.0以上10.0未満
×:ΔE=10.0以上(実用上問題あり)。
上記の表1に示すように、重量平均分子量が45,000以上であるポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、およびSP値が10.0〜12.0の範囲であるUV吸収剤を含む、実施例1〜15の樹脂組成物では、初期衝撃強度に優れ、UV曝露後であっても書劇強度が低下しにくく、色変化が抑制された。
これに対して、SP値が上記範囲に含まれないUV吸収剤を用いた比較例1〜6の樹脂組成物では、UV曝露による衝撃強度低下および色変化が大きかった。これは、UV吸収剤のSP値が、ポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂のSP値と離れているため、樹脂組成物に均一に分散されにくく、結果として十分な光劣化抑制効果が得られなかったものと考えられる。また、分子量が45,000未満のポリカーボネート樹脂を用いた比較例7の樹脂組成物では、衝撃強度が不十分であった。