JP2016065033A - 多官能ニトリルオキシド化合物 - Google Patents

多官能ニトリルオキシド化合物 Download PDF

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Abstract

【課題】安定で製造が容易なニトリルオキシド化合物を提供する。
【解決手段】 式(I):
Figure 2016065033

[式中:
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭化水素基を表し;
Aは、s価の有機基を表し;
sは、2〜10の整数である。]
で表される化合物。
【選択図】図1

Description

本発明は、多官能ニトリルオキシド化合物、および該化合物を含む組成物に関する。
ニトリルオキシド基を有する化合物は、他の化合物中の不飽和結合と容易にクリック反応([2+3]付加環化反応)を起こすので、種々の用途における反応剤として有用であることが知られている。しかしながら、ニトリルオキシド化合物は、二量化等の反応を起こしやすく、著しく不安定であるという問題があった。この問題に対してオルト位に置換基を有する芳香族ニトリルオキシド化合物とすることにより、比較的安定なニトリルオキシド化合物を得ることができることが知られている(特許文献1)。さらに、この芳香族ニトリルオキシドについては、多官能型の化合物を合成することも可能であり、この多官能型の芳香族ニトリルオキシドを用いてポリマーを架橋させることも可能である(特許文献2〜4)。
特開2011−052072号公報 特開2010−37288号公報 特開2010−37289号公報 特開2011−208117号公報 特開2013−112741号公報
Chemical Communications, 2013, p. 7723-7725
しかしながら、特許文献1〜4に記載の芳香族ニトリルオキシドは、用途によっては(例えば、フッ素ゴムの架橋(硬化)反応や、成形機内での反応など、高温下にて反応が実施される用途では)温度安定性が充分ではなく、目的の反応を起こす前に失活(異性化や二量化)してしまう問題を有している。
この問題を解決する手段として、更に温度安定性を改善した脂肪族ニトリルオキシド(ニトリルオキシド基のα位の炭素上に嵩高い置換基を有する化合物)を利用する方法が知られているが(特許文献5、非特許文献1)、公知の脂肪族ニトリルオキシドは単官能の化合物であり、架橋(硬化)反応の様なポリマー鎖間を結合させる反応に使用することはできない。
また、公知の脂肪族ニトリルオキシドは、アルキル基、または極性のアニオン重合性単量体もしくはスチレン系単量体を重合して得られる炭素鎖の片方の末端に、ニトリルオキシド基を導入することによってのみ得られるものであることから、その構造は限定されたものであり、任意の用途での使用要求を満たすものではない。
さらに、公知の方法に基づき、エポキシ類、オキセタン類、アジリジン類、環状シロキサン類等のヘテロ原子を含有する開環重合性モノマー、あるいはまたはケイ素系化合物のアニオン重合を経て、末端にニトリルオキシド基の導入を試みた場合、ニトリルオキシド基の前駆体骨格であるニトロスチレンとの反応が起こらず、末端にニトリルオキシド基を導入することはできない。これは、開環重合等で生じるヘテロ原子上に負電荷を有するアニオン種の求核力が充分でないためであると考えられる。それ故、ヘテロ原子を含有する目的骨格を脂肪族ニトリルオキシドに導入することは困難であった。
従来の脂肪族ニトリルオキシドの合成方法では、導入したい任意の骨格をカルボアニオン種として導入している。この方法に則って、多官能の脂肪族ニトリルオキシド(すなわち、一分子内に二つ以上のニトリルオキシド基を有する化合物)を合成する場合、一分子中に二つ以上のカルボアニオンを有する求核剤を発生させる必要がある。しかしながら、カルボアニオンは求核力が極めて高く反応性に富むために、一分子中に二つ以上のカルボアニオンを持つ化合物はより安定性が低く、カルボアニオンを一つのみ持つ化合物に比べて分解を起こしやすい。また、その高い反応性から、カルボアニオンの起こす反応は高選択的とはいい難く、ある程度の副反応も起こることが少なくない。例えば、二官能の脂肪族ニトリルオキシドを合成する場合、一分子中の二つのカルボアニオンの両方が所望の反応を起こす必要があり、二つのカルボアニオンの内の一つでも副反応を起こすと、その分子は、目的の二官能ニトリルオキシドとはならない。
よって、本発明者らは、導入したい任意の骨格をカルボアニオン種として導入することが、一分子内に二つ以上のニトリルオキシド基を有する、多官能の脂肪族ニトリルオキシドを合成する上で、問題となっていると考えた。
すなわち、本発明は:
[1] 式(I):
Figure 2016065033
[式中:
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭化水素基を表し;
Aは、s価の有機基を表し;
sは、2〜10の整数である。]
で表される化合物;
[2] sが2または3である、上記[1]に記載の化合物;
[3] 式(II):
Figure 2016065033
[式中:
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭化水素基を表し:
は、二価の炭化水素基を表し:
ただし、R、RおよびRは、それぞれ、炭素原子によりニトリルオキシドが結合する炭素原子に結合している。]
で表される上記[1]または[2]に記載の化合物;
[4] RおよびRが、それぞれ独立して、水素原子、または1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基もしくは(ポリ)アルキルエーテル基である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物;
[5] RおよびRの少なくとも一方が、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、アリール基、tert−アルキル基、sec−アルキル基または(ポリ)アルキルエーテル基である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の化合物;
[6] Rが、式:
−R4c−R4b−R4a−R4b−R4c
(式中:
4aは、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい、アルキレン基、または2価の(ポリ)アルキルエーテル基を表し;
4bは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、または1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基を表し;
4cは、それぞれ独立して、単結合、または1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい、アルキレン基、シクロアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。)
で表される基である、上記[3]〜[5]のいずれかに記載の化合物;
[7] R4bが、−OCO−または−COO−である、上記[6]に記載の化合物;
[8] Rが、式:
−R4c−O−R4a−O−R4c
(式中:
4aは、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、アルキレン基もしくは2価の(ポリ)アルキルエーテル基を表し;
4cは、アリーレン基を表す。)
で表される基である、上記[3]〜[7]のいずれかに記載の化合物;
[9] 式(III):
Figure 2016065033
[式中:
は3価の有機基を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭化水素基を表し;
Linkは、単結合または2価の基を表し;
ただし、R、RおよびLinkは、それぞれ、炭素原子によりニトリルオキシドが結合する炭素原子に結合している。]
で表される上記[1]または[2]に記載の化合物;
[10] Linkが、−R4a−、−R4b−または−R4c−:
(ここに、R4aは、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい、アルキレン基、または2価の(ポリ)アルキルエーテル基を表し;
4bは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、または1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基を表し;
4cは、それぞれ独立して、単結合、または1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい、アルキレン基、シクロアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。)
あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものである、上記[9]に記載の化合物;
[11] Linkが、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルキレンオキシ基、アルキレンジオキシ基、カルボニル基、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−NR−、−C(O)NR−、−NR−CO−NR−(式中、Rは、水素原子あるいは1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基である)、アリーレン基、アリーレンオキシ基、アリーレンジオキシ基、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものである、上記[9]〜[10]に記載の化合物;
[12] Rは、好ましくは、C(R)(Rは、水素原子、またはフッ素で置換されていてもよいアルキルである)、窒素原子、置換されていてもよいケイ素原子、環原子としてヘテロ原子を含んでいてもよい3価の芳香環である、上記[9]〜[11]のいずれかに記載の化合物;
[13] 1種またはそれ以上の上記[1]〜[12]のいずれかに記載の化合物を含む、組成物;
[14] ニトリルオキシド基と反応性を有する基を含む材料に適用するために使用される、1種またはそれ以上の上記[1]〜[12]のいずれかに記載の化合物を含む、組成物;
[15] 架橋剤である、上記[13]または[14]に記載の組成物;
[16] 液状ゴムの原料である、上記[13]または[14]に記載の組成物;
[17] 上記[15]に記載の架橋剤により処理された2種またはそれ以上の化合物の複合体;
[18] 上記[16]に記載の組成物を用いて調製された液状ゴム
を提供する。
本発明によれば、ニトロオレフィン誘導体に目的とする任意の構造を組み込み、これをカルボアニオン種と反応させることにより、目的とする多官能脂肪族ニトリルオキシドを得ることができる。また、本発明の方法を用いることにより、溶解性の低い骨格を有する脂肪族ニトリルオキシド化合物を合成することが可能になる。さらに、本発明の方法を用いることにより、ヘテロ原子を含有する骨格を有する脂肪族ニトリルオキシド化合物を合成することができる。また、本発明の化合物は、表面処理剤、フィラーの改質剤、および反応性相溶化剤として用いることができ、優れた効果を奏する。
実施例1の二官能性t−Buニトリルオキシド4のH−NMRスペクトルを示す。 実施例1の二官能性t−Buニトリルオキシド4のIRスペクトルを示す。 実施例6の引張試験の結果を示す。 実施例8のOHジフェニルニトリルオキシド5のH−NMRスペクトルを示す。 実施例8のOHジフェニルニトリルオキシド5のIRスペクトルを示す。 実施例8の三官能性ニトリルオキシド11のH−NMRスペクトルを示す。 実施例8の三官能性ニトリルオキシド11のIRスペクトルを示す。
本明細書中、特に記載が無い限り、「炭化水素基」とは、炭素および水素を含む基を意味する(但し、水素原子は下記する置換基により一部または全部が置換されていてもよい)。当該「炭化水素基」としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。なお、かかる炭化水素基は、その末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S等を有していてもよい。
本明細書中、特に記載が無い限り、「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよく、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。当該「脂肪族炭化水素基」としては、特に限定されるものではないが、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられる。当該「脂肪族炭化水素基」は、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
本明細書中、特に記載が無い限り、「アルキル基」は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよく、例えば、炭素数1〜20、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜6のアルキル基である。当該「アルキル基」としては、特に限定されるものではないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、n−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基等が挙げられる。当該「アルキル基」は、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
本明細書中、特に記載が無い限り、「アルケニル基」は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよく、例えば、炭素数2〜20、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜6のアルケニル基である。当該「アルケニル基」としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記アルキル基の少なくとも1つの炭素−炭素単結合を炭素−炭素二重結合に置き換えたもの、具体的には、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1,3−ヘキサジエニル基、1,5−ヘキサジエニル基等が挙げられる。当該「アルケニル基」は、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
本明細書中、特に記載が無い限り、「アルキニル基」は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよく、例えば、炭素数2〜20、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜6のアルキニル基である。当該「アルキニル基」としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記アルキル基の少なくとも1つの炭素−炭素単結合を炭素−炭素三重結合に置き換えたもの、具体的には、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、1−ペンチニル基、1−エチル−2−プロピニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基等が挙げられる。当該「アルキニル基」は、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
本明細書中、特に記載が無い限り、「シクロアルキル基」は、炭素数3〜20、好ましくは5〜12の環状のアルキル基である。当該「シクロアルキル基」としては、特に限定されるものではないが、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。当該「シクロアルキル基」は、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
本明細書中、特に記載が無い限り、「シクロアルケニル基」は、炭素数3〜20、好ましくは5〜12の環状のアルケニル基である。当該「シクロアルケニル基」としては、特に限定されるものではないが、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基等が挙げられる。当該「シクロアルケニル基」は、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
本明細書中、特に記載が無い限り、「芳香族炭化水素基(以下、アリール基とも称する)」は、単環式、多環式、例えば二環式または三環式のいずれであってもよく、また、芳香族複素環基(以下、ヘテロアリール基とも称する)であってもよい。当該「芳香族炭化水素基」としては、特に限定されるものではないが、炭素数3〜20のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、炭素数3〜20のヘテロアリール基、例えばフリル基、チエニル基、ピリジル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基等が挙げられる。当該「芳香族炭化水素基」は、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
本明細書中、特に記載が無い限り、「アルキレン基」は、上記アルキル基の炭素原子上の水素原子を1個除いた2価の基を意味する。
本明細書中、特に記載が無い限り、「(ポリ)アルキルエーテル基」とは、上記アルキル基の1個以上の炭素−炭素結合にエーテル性酸素原子が挿入された基を意味する。
好ましい(ポリ)アルキルエーテル基は、下記式:
R−(O(CH−(Rは、C1−16アルキル基であり、mは、1〜300の整数であり、nは、各出現において、1〜6の整数である)
で表される基である。
好ましい(ポリ)アルキルエーテル基は、下記式:
R−(OC−(OC−(OC−(OCH
(式中:
Rは、C1−16アルキル基を表し;
a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0以上200以下の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基である。
上記(ポリ)アルキルエーテル基が、二価の基として用いられる場合、下記式:
−R’−(OC−(OC−(OC−(OCH
(R’は、C0−16アルキレン基を表す。)
で示される基を意味する。なお、本明細書中、Cとは、炭素原子が存在しないことを意味し、例えば、C0−16アルキレン基は、単結合またはC1−16アルキレン基を意味する。
本明細書中、特に記載が無い限り、上記炭化水素基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、芳香族炭化水素基およびアルキレン基の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸素原子;ハロゲン原子;ヒドロキシル基;無置換、一置換または二置換アミノ基;ニトロ基;アジド基;1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1−16アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、C3−16シクロアルキル基、C3−16シクロアルケニル基、C6−16ヘテロシクロアルキル基、C6−16ヘテロシクロアルケニル基、C6−16アリール基、C6−16ヘテロアリール基、C1−16アルコキシ基、C6−16アリールオキシ、C1−16アルキルチオまたはC1−20(ポリ)アルキルエーテル基;−O−C(O)−OR、−O−C(O)−NR 、−C(O)−R、−C(O)−OR、−NR−C(O)−R、−NR−C(NR)−R、−C(NR)−Rまたは−C(NR)−NR (これら式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、C1−16アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、C3−16シクロアルキル基、C3−16シクロアルケニル基、C6−16ヘテロシクロアルキル基、C6−16ヘテロシクロアルケニル基、C6−16アリール基またはC6−16ヘテロアリール基を表す)等が挙げられる。
上記「一置換アミノ基」は、特に限定されるものではないが、それぞれ、C1−16アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、C3−16シクロアルキル基、C3−16シクロアルケニル基、C6−16ヘテロシクロアルキル基、C6−16ヘテロシクロアルケニル基、C6−16アリール基およびC6−16ヘテロアリール基からなる群から独立して選択される1個の置換基により置換されたアミノ基を意味する。当該「一置換アミノ基」としては、特に限定されるものではないが、メチルアミノ、エチルアミノ、フェニルアミノ等が挙げられる。
上記「二置換アミノ基」は、特に限定されるものではないが、C1−16アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、C3−16シクロアルキル基、C3−16シクロアルケニル基、C6−16ヘテロシクロアルキル基、C6−16ヘテロシクロアルケニル基、C6−16アリール基およびC6−16ヘテロアリール基からなる群から独立して選択される2個の置換基により置換されたアミノ基を意味する。当該「二置換アミノ基」としては、特に限定されるものではないが、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジフェニルアミノ等が挙げられる。
上記「C1−16アルコキシ基」としては、特に限定されるものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、1−エチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、2−エチルブトキシ基等が挙げられる。
上記「C6−16アリールオキシ」としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェノキシ、ナフチルオキシ等が挙げられる。
上記「C1−16アルキルチオ」としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ等が挙げられる。
本明細書中、特に記載が無い限り、「ハロゲン(またはハロゲン原子)」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を意味する。
本明細書中、特に記載が無い限り、「パーフルオロアルキル基」とは、上記アルキル基のすべての水素原子がフッ素原子に置換された基を意味し、−C2m+1(ここに、mは整数を表し、具体的には1〜16、例えば1〜12または1〜6の整数である)で表される。当該「パーフルオロアルキル基」は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよいが、好ましくは、直鎖状である。
本明細書において、ニトリルオキシド化合物中のニトリルオキシド基が直接結合する炭素原子を「C」と記載する場合がある。
以下、本発明の化合物について説明する。
本発明は、式(I):
Figure 2016065033
[式中:
およびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭化水素基を表し;
Aは、s価の有機基を表し;
sは、2〜10の整数である。]
で表される化合物を提供する(以下、「本発明の化合物(I)」とも称する)。
上記式(I)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭化水素基を表す。当該炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、または(ポリ)アルキルエーテル基が挙げられる。好ましくは、RおよびRの少なくとも1つは、炭化水素基である。より好ましくは、RおよびRの一方または両方は、それぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルキル基または(ポリ)アルキルエーテル基により置換されているアルキル基である。
一の態様において、上記RおよびRの一方または両方は、それぞれ独立して、フルオロアルキル基であるか、あるいは、1種またはそれ以上のフルオロアルキル基により置換されている基(例えば、アルキル基、好ましくはsec−アルキル基またはtert−アルキル基、あるいはアリール基、好ましくはフェニル基またはアルキル基)である。好ましくは、上記フルオロアルキル基は、末端炭素原子がCFH−であり他のすべての炭素原子がフッ素により全置換されているフルオロアルキル基、またはパーフルオロアルキル基であり、より好ましくはパーフルオロアルキル基である。好ましくは、RおよびRの一方または両方は、それぞれ独立して、パーフルオロアルキル基により置換されているアルキル基である。
一の態様において、RおよびRの少なくとも1つは、1種またはそれ以上のパーフルオロアルキル基により置換されているアルコキシ基を有するフェニル基である。
一の態様において、RおよびRは、好ましくは、C1−6アルキル基または炭素数3〜10のアリール基であり、さらに好ましくは分枝鎖のC3−6アルキル基またはフェニル基であり、特に好ましくはt−Buまたはフェニル基である。
上記式(I)中、Aはs価の有機基を表し、sは2〜10の整数、好ましくは2〜6の整数、より好ましくは2〜4の整数、さらに好ましくは2または3、代表的には2である。
上記Aとしては、限定するものではないが、2価、3価またはそれ以上の価数の脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基が挙げられる。
上記式(I)において、R、RおよびAは、それぞれ、炭素原子によりニトリルオキシドが結合する炭素原子(C)に結合している。
一の態様において、R、RおよびAの少なくとも1つは、少なくとも1個のフッ素原子により置換されていてもよい。
一の好ましい態様において、上記Aは2価の有機基である。Aが2価の有機基である式(I)で表される化合物は、下記式(II):
Figure 2016065033
で表される(以下、「本発明の化合物(II)」とも称する)。
上記式(II)中、RおよびRは、上記式(I)の記載と同意義である。
上記式(II)中、Rは、式(I)中のAに対応し、二価の炭化水素基を表す。
一の態様において、上記Rは、−R4a−、−R4b−または−R4c−、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたもの、例えば−R4b−R4a−、−R4a−R4b−、−R4c−R4b−、−R4b−R4c−、−R4b−R4a−R4b−、−R4c−R4b−R4a−R4b−R4c−等で表される基である。好ましくは、Rは、式:−R4c−R4b−R4a−R4b−R4c−で表される基である。
上記式中、R4aは、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい、アルキレン基、アリーレン基または2価の(ポリ)アルキルエーテル基、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものを表す。
一の態様において、R4aは、アルキレン基、アリーレン基または2価の(ポリ)アルキルエーテル基または2価の(ポリ)アルキルエーテル基である。
別の態様において、R4aは、アリーレン−アルキレン−アリーレン基である。
一の態様において、上記アルキレン基は、直鎖または分枝鎖(好ましくは直鎖)のC1−10アルキレン基、好ましくはC2−6アルキレン基であり得る。
一の態様において、上記アリーレン基は、炭素数3〜20のアリーレン基であり、好ましくは炭素数3〜10のアリーレン基、例えばフェニレンである。
一の態様において、上記2価の(ポリ)アルキルエーテル基は、置換されていない(ポリ)アルキルエーテルであり、好ましくは、−(C1−6アルキレン−O)−(nは、1〜10の整数、好ましくは2〜6の整数である)であり、例えば−(CHCHO)−であり得る。
さらに別の態様において、R4aにおける置換基は、ハロゲン原子、好ましくはフッ素原子から選択される。
この態様において、好ましくは、R4aは、−C0−6アルキレン−パーフルオロアルキレン−C0−6アルキレン−であってもよく、より好ましくは−C0−6アルキレン−パーフルオロアルキレン−C0−6アルキレン−であってもよい。
上記パーフルオロアルキレンの両端に結合するC0−6アルキレンは、同じであっても、異なっていてもよい。
上記C0−6アルキレンは、好ましくは直鎖の−C1−6アルキレン−であり、より好ましくは直鎖の−C1−3アルキレン−であり、具体的にはメチレン、エチレン、プロピレンが挙げられる。
上記パーフルオロアルキレンは、好ましくは直鎖のC1−12パーフルオロアルキレンであり、より好ましくは直鎖のC3−12パーフルオロアルキレンであり、さらに好ましくは直鎖のC3−8パーフルオロアルキレンである。
この態様において、より好ましくは、R4aは、−直鎖C1−3アルキレン−直鎖C3−8パーフルオロアルキレン−直鎖C1−3アルキレン−であり得る。
上記式中、R4bは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−NR−、−C(O)NR−、−NR−CO−NR−(式中、Rは、水素原子あるいは1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基である)、または1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、好ましくは酸素原子または−O−CO−、−CO−O−である。
上記式中、R4cは、それぞれ独立して、単結合、または1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい、アルキレン基、シクロアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。好ましくは、R4cは、Cに結合する炭素原子が2級または3級、好ましくは3級であるアルキレン基またはアリーレン基であり、より好ましくはアリーレン基、さらに好ましくはフェニレン基である。
好ましくは、Rは、式:
−R4c−O−R4a−O−R4c
(式中:
4aは、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、アルキレン基もしくは2価の(ポリ)アルキルエーテル基を表し;
4cは、アリーレン基を表す。)
で表される基である。
一の好ましい態様において、上記Aは、3価またはそれ以上の価数を有する脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基である。
Aが3価またはそれ以上の価数の脂肪族炭化水素基である式(I)で表される化合物は、下記式(III)で表される。
Figure 2016065033
[式中、Rは3価の有機基であり、RおよびRは、上記式(I)の記載と同意義である。]
上記式中、RおよびRは、好ましくは、それぞれ独立して、フッ素原子で置換されていても良いアルキル基またはアリール基であり、より好ましくはC1−6アルキル基または炭素数3〜10のアリール基であり、さらに好ましくは分枝鎖のC3−6アルキル基またはフェニル基であり、特に好ましくはt−Buまたはフェニル基である。
上記式中、Linkは、リンカーを意味する。上記リンカーとは、単結合または2価の基であり、例えば、限定するものではないが、2価の脂肪族炭化水素基および2価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
一の態様において、Linkは、上記式(II)に関して記載した−R4a−、−R4b−または−R4c−、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたもの、例えば−R4b−R4a−、−R4a−R4b−、−R4c−R4b−、−R4b−R4c−、−R4b−R4a−R4b−、−R4c−R4b−R4a−R4b−R4c−等であってもよい。
別の態様において、好ましいリンカーとしては、例えば、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルキレンオキシ基、アルキレンジオキシ基、カルボニル基、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−NR−、−C(O)NR−、−NR−CO−NR−(式中、Rは、水素原子あるいは1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基である)、アリーレン基、アリーレンオキシ基、アリーレンジオキシ基、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものが挙げられ、より好ましくは、アルキレンオキシ基、アルキレンジオキシ基、カルボニルオキシ−アリーレン、アリーレンオキシ−アリーレン基等が挙げられる。
上記式中、Rは、好ましくは、C(R)(Rは、水素原子、またはフッ素で置換されていてもよいアルキルである)、窒素原子、置換されていてもよいケイ素原子、環原子としてヘテロ原子を含んでいてもよい3価の芳香環であってもよく、好ましくは、C(R)(Rは、水素原子またはアルキル基である)または3価のベンゼン環であり、より好ましくは、C(CH)またはベンゼン環である。
一の態様において、Aが3価またはそれ以上の価数の脂肪族炭化水素基である式(I)で表される化合物は、例えば、下記式(VI)または式(VII):
Figure 2016065033
[式中、Dは、R20または式(a):
Figure 2016065033
で表される基を意味し;
20は、水素または炭化水素基(好ましくは、フッ素で置換されていてもよいC1−6アルキル基)を意味し;
およびRは、式(I)の定義と同意義であり;
Linkは、リンカーを意味し:
あるいは、同一炭素原子上または異なる炭素原子上の2つのDが、=O、=NR21、=CR21、またはC1−10アルキレン基を意味し、
21は、水素原子または炭化水素基(好ましくは、C1−6アルキル基)を意味する:
ただし、少なくとも3つのDは、式(a)で表される基である。]
で表される。
上記リンカーとは、単結合または2価の基であり、例えば、限定するものではないが、2価の脂肪族炭化水素基および2価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
一の態様において、Linkは、上記式(II)に関して記載した−R4a−、−R4b−または−R4c−、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたもの、例えば−R4b−R4a−、−R4a−R4b−、−R4c−R4b−、−R4b−R4c−、−R4b−R4a−R4b−、−R4c−R4b−R4a−R4b−R4c−等であってもよい。
別の態様において、好ましいリンカーとしては、例えば、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルキレンオキシ基、アルキレンジオキシ基、カルボニル基、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−NR−、−C(O)NR−、−NR−CO−NR−(式中、Rは、水素原子あるいは1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基である)、アリーレン基、アリーレンオキシ基、アリーレンジオキシ基、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものが挙げられ、より好ましくは、アルキレンオキシ基、アルキレンジオキシ基、カルボニルオキシ−アリーレン、アリーレンオキシ−アリーレン基等が挙げられる。
Aが3価またはそれ以上の価数の芳香族炭化水素基である式(I)で表される化合物は、上記式(a)で表される基を3つ以上有する芳香族炭化水素化合物である。当該芳香族化合物は、単環式であっても、多環式であってもよく、また、炭素環であっても、複素環であってもよい。
例えば、Aが3価またはそれ以上の価数の芳香族炭化水素基である式(I)で表されるベンゼン化合物としては、下記式(VIII):
Figure 2016065033
[式中、Dは上記と同意義である:
ただし、Dが式(a)で表される基である場合、式(a)中のLinkは、単結合ではない。]
で表される化合物が挙げられる。
好ましい態様において、上記式(VIII)で表される化合物は、式(VIIIa):
Figure 2016065033
[式中、R、R、R20、Linkは、上記と同意義である。]
で表される3つのニトリルオキシド基を有する化合物である。
上記式(VIIIa)において、RおよびRは、それぞれ独立して、好ましくは、アルキル基またはアリール基であり、より好ましくはC1−6アルキル基または炭素数3〜10のアリール基であり、さらに好ましくは分枝鎖のC3−6アルキル基またはフェニル基であり、特に好ましくはt−Buまたはフェニル基が好ましい。
上記式(VIIIa)において、好ましくは、Linkは、それぞれ独立して、単結合、カルボニル基、−O−CO−、−CO−O−、アルキレンオキシ基、アルキレンジオキシ基またはアリーレン基、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものである。より好ましくは、Linkは、カルボニルオキシアリーレン基、例えばカルボニルオキシフェニレン基である。
別の態様において、Linkは、上記式(II)に関して記載した−R4a−、−R4b−または−R4c−、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたもの、例えば−R4b−R4a−、−R4a−R4b−、−R4c−R4b−、−R4b−R4c−、−R4b−R4a−R4b−、−R4c−R4b−R4a−R4b−R4c−等であってもよい。
尚、上記式(VIIIa)において、ベンゼン環部分は、他の芳香族基であってもよい。
本発明の化合物は、従来の芳香族多官能ニトリルオキシド化合物よりも安定性、特に温度安定性が高く、様々な用途において好適に用いることができる。また、下記する製造方法により、任意の置換基を導入することができるので、本発明の化合物は、所望の温度範囲において優れた温度安定性および反応性を有するように設計することができる。
次に、本発明の化合物の製造方法について記載する。
本発明の化合物は、下記工程:
(a)式(P):
A−(C(R)=CHNO
[式中:
は、それぞれ独立して、水素原子または炭化水素基を表し;
Aは、s価の有機基を表し;
sは、2〜10の整数、好ましくは2または3である。]
で表される化合物を、下記式(Q):

[式中:Rは、水素原子または炭化水素基を表し;
Lは、MXを表し;
Mは、Li、Zn、Na、K、Al、Cu、B、Si、Ti、Cr、Fe、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Ir、MgまたはSmを表し;
Xは、ハロゲン原子またはアルコキシ基を表し;
tは、0〜6の整数を表す。]
で表される化合物とを反応させること;ついで、
(b)脱水処理すること;および、所望により
(c)R、RおよびRを、別のR、RおよびRに変換すること;
を含む方法により製造することができる。
例えば、ニトリルオキシド基を2つ有する化合物、即ち本発明の式(II)で表される化合物は、下記工程:
(i)式(P):
Figure 2016065033
[式中:Rは、それぞれ独立して、水素原子または炭化水素基を表し:
は、二価の炭化水素基を表す。]
で表される化合物を、下記式(Q):

[式中:Rは、水素原子または炭化水素基を表し;
Lは、MXを表し;
Mは、Li、Zn、Na、K、Al、Cu、B、Si、Ti、Cr、Fe、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Ir、MgまたはSmを表し;
Xは、ハロゲン原子またはアルコキシ基を表し;
tは、0〜6の整数を表す。]
で表される化合物とを反応させること;ついで、
(ii)脱水処理すること;および、所望により
(iii)R、RおよびRを、別のR、RおよびRに変換すること;
を含む方法により製造することができる。
まず、工程(i)について説明する。
式(P)で表される化合物は、市販されているか、または、自体公知の方法により製造することができる。
例えば、式(P)で表される化合物は、下記式(p):
Y−R41−Y
[式中、Yは、脱離基、例えばハロゲン原子を表し、
41は、上記Rの一部である2価の基を表す。]
で表される化合物と、これに対して2当量の下記式(q):
Z−R42−COR
[式中、Zは、求核性基、例えば水酸基を表し、
42は、上記Rの一部である2価の基を表し、
は、上記と同意義である。]
で表される化合物とを反応させることにより、得ることができる。かかる反応においては、式(p)のY基と、式(q)のZ基が反応し、R41、R42およびZ基の残基が、Rを構成し、C(O)R−R−C(O)Rで表される化合物が得られる。次いで、このC(O)R−R−C(O)Rで表される化合物を、CHNOと反応させて、式(P)で表される化合物を得ることができる。これらの反応は、適当な溶媒中、適当な触媒を用いて行うことができ、当業者であれば用いる化合物に応じて、適宜選択することができる。
上記式(Q)中、Lは、MXを表す。ここに、Mは、Li、Zn、Na、K、Al、Cu、B、Si、Ti、Cr、Fe、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Ir、MgまたはSmを表し、好ましくはLi、Zn、Na、Cu、BまたはSiであり、特に好ましくは、LiまたはMg(すなわち、有機リチウム試薬またはグリニャール試薬)である。Xは、ハロゲン原子またはアルコキシ基を表す。tは、0〜6の整数を表す。式(Q)で表される化合物は、強い求核性を有する試薬であり、好ましくは、グリニャール試薬、アルキルリチウムである。当該化合物は、市販の化合物から自体公知の方法により製造することができる。
式(P)で表される化合物と式(Q)で表される化合物のモル比は、1:2以上であれば特に限定されないが、通常、1:2〜1:5である。
反応は、通常、溶媒中で行われる。当該溶媒としては、式(Q)で表される求核剤が失活しない溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、THF等の環状エーテル類、ジイソプロピルエーテル等の非環式エーテル類、ジクロロメタンおよび1,2−ジクロロエタン等の含塩素溶媒、HMPA(ヘキサメチルホスファミド)、DMPU(ジメチルプロピレン)、TMEDA(テトラメチルエチレンジアミン)、トルエンなどの芳香族化合物またはそれらの混合物が挙げられる。
反応温度は、用いる式(Q)で表される求核剤に応じて適宜選択され、例えば用いる求核剤が失活しない温度である。このような温度は当業者であれば容易に決定することができる。
反応時間は、通常、10分〜24時間、例えば30分〜3時間である。
当該反応は、触媒の存在下で行ってもよい。当該触媒としては、特に限定されるものではないが、HMPA(ヘキサメチルリン酸トリアミド)、DMPU(N,N’−ジメチルプロピレン尿素)、TMEDA(テトラメチルエチレンジアミン)、クラウンエーテル等が挙げられる。
次に、工程(ii)について説明する。
当該脱水処理は、特に限定されるものではないが、濃硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホンイミド、またはフェニルイソシアナート、あるいは他の求核性の無い対アニオンを有する強酸を用いることにより行うことができる。
処理温度は、通常、0℃〜室温である。
処理時間は、通常、1分〜60分、例えば10〜30分である。
次に、工程(iii)について説明する。
工程(iii)は、任意の工程であり、得られたニトリルオキシド化合物におけるR、RおよびR基を、別の基に変換する工程であり、例えば、その基を別の基に置換する、さらなる置換基を導入するなどの方法により実施することができる。当業者であれば、当該分野において公知の方法により、適宜行うことができる、
例えば、上記式(III)で表される三官能ニトリルオキシドは、例えば、
(i)下記式(P):
Figure 2016065033
[式中:RおよびLinkは、式(III)の記載と同意義である。]
で表される化合物を、下記式(Q):

[式中:Rは、水素原子または炭化水素基を表し;
Lは、MXを表し;
Mは、Li、Zn、Na、K、Al、Cu、B、Si、Ti、Cr、Fe、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Ir、MgまたはSmを表し;
Xは、ハロゲン原子またはアルコキシ基を表し;
tは、0〜6の整数を表す。]
で表される化合物とを反応させること;ついで、
(ii)脱水処理すること;および、所望により
(iii)RおよびRを、別のRおよびRに変換すること;
を含む方法により製造することができる。
まず、工程(i)について説明する。
式(P)で表される化合物は、市販されているか、または、自体公知の方法により製造することができる。
例えば、式(X4)で表される化合物は、下記式(p’):
61(Y)
[式中、Yは、脱離基、例えばハロゲン原子を表し、
61は、上記R−(Link−)の一部である3価の基を表す。]
で表される化合物と、これに対して3当量の下記式(q’):
Z−R62−COR
[式中、Zは、求核性基、例えば水酸基を表し、
62は、上記R−(Link−)の一部である2価の基を表し、
は、上記と同意義である。]
で表される化合物とを反応させることにより、得ることができる。かかる反応においては、式(p’)のY基と、式(q’)のZ基が反応し、R61、R62およびZ基の残基が、R−(Link−)を構成し、R−(Link−C(O)Rで表される化合物が得られる。次いで、このR−(Link−C(O)Rで表される化合物を、CHNOと反応させて、式(P)で表される化合物を得ることができる。これらの反応は、適当な溶媒中、適当な触媒を用いて行うことができ、当業者であれば用いる化合物に応じて、適宜選択することができる。
上記式(Q)中、Lは、MXを表す。ここに、Mは、Li、Zn、Na、K、Al、Cu、B、Si、Ti、Cr、Fe、Ni、Pd、Pt、Rh、Ru、Ir、MgまたはSmを表し、好ましくはLi、Zn、Na、Cu、BまたはSiであり、特に好ましくは、LiまたはMg(すなわち、有機リチウム試薬またはグリニャール試薬)である。Xは、ハロゲン原子またはアルコキシ基を表す。tは、0〜6の整数を表す。式(X)で表される化合物は、強い求核性を有する試薬であり、好ましくは、グリニャール試薬、アルキルリチウムである。当該化合物は、市販の化合物から自体公知の方法により製造することができる。
式(P)で表される化合物と式(Q)で表される化合物のモル比は、1:3以上であれば特に限定されないが、通常、1:3〜1:8である。
反応に用いられる溶媒、温度、反応時間、触媒等は、上記した二官能のニトリルオキシドの合成と同じであってよい。
工程(ii)〜(iii)は、上記した二官能のニトリルオキシドの合成と同様に行うことができる。
具体的な例として、以下に、ニトリルオキシド基を3つ有する化合物の合成スキームを示す。
Figure 2016065033
別法として、本発明の多官能ニトリルオキシド化合物は、求核性官能基を有する単官能ニトリルオキシドを合成し、これを複数のR50−CO−基(式中、R50は、脱離基、例えばハロゲン原子である)、あるいは脱離基としてのTsO−基(トシルオキシ基)、TfO−基(トリフラート基)またはX−(ハロ基)を有する化合物と反応させることにより、目的とする多官能脂肪族ニトリルオキシドを得ることができる。尚、R50−CO−基においては、R50が脱離し、−CO−部分は脱離しない。
上記求核性官能基としては、特に限定されないが、例えば、−OH、−SH、−NH、NHR51(式中、R51は、アルキル基またはアリール基である)等が挙げられ、好ましくは−OH基である。
上記R50は、好ましくはハロゲン原子、具体的にはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、R−COO−(Rはアルキル基またはアリール基であり、好ましくはアルキル基である)であり、好ましくは塩素である。
例えば、本発明の多官能ニトリルオキシド化合物は、下記式(D1):
Figure 2016065033
[式中、A’は、s価の有機基を表し、
Linkは、リンカーとしての2価の有機基を表し、
Xは、R50−CO−基(式中、R50は、脱離基、例えばフッ素により置換されていてもよいメチル基、ハロゲン原子である)、あるいは脱離基としてのTsO−基(トシルオキシ基)、TfO−基(トリフラート基)またはX−(ハロ基)であり、
sは、2〜10の整数であり、好ましくは2または3である。]
で表される化合物を、下記式(D2):
Figure 2016065033
[式中、RおよびRは、上記式(I)と同意義であり、
Nuは、−OH、−SH、−NH、−NHR51(式中、R51は、アルキル基またはアリール基である)であり、
Linkは、リンカーとしての2価の有機基を表す。]
で表される化合物と反応させることにより得ることができる。
上記の反応により、下記式(D3):
Figure 2016065033
[式中、A’、Link、Link、RおよびRは、上記と同意義であり、
sは、2〜10の整数であり、好ましくは2または3であり、
Nu1’は、上記NuからHが脱離した基である。]
が得られる。即ち、式(D3)中、A’からLinkまでが、式(I)のAに対応する。
この反応において、式(D2)で表される化合物は、式(D1)で表される化合物1モルに対して、少なくともsモル反応させる。
この反応は、好ましくは塩基性試薬の存在下で行われる。塩基性試薬としては、特に限定されないが、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられ、好ましくはトリメチルアミンである。
この反応により二官能性のニトリルオキシドを合成する場合、式(D1)で表される化合物として、下記式(D4):
Figure 2016065033
[式中、R4’は、2価の有機基であり、
Link1’は、2価の有機基であり、
Xは上記式(D1)の記載と同意義である。]
で表される化合物が用いられる。
この上記式(D4)で表される化合物と、式(D2)で表される化合物の反応により得られる化合物は、式(II)で表される化合物に対応し、−Link−Nu1’−Link1’−R4’−Link1’−Nu1’−Link−が、式(II)のRに対応する。例えば、Link1’およびLinkは、上記式(II)に関して記載した−R4a−、−R4b−または−R4c−、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものに対応し得る。
また、この反応により三官能性のニトリルオキシドを合成する場合、式(D1)で表される化合物として、下記式(D5):
Figure 2016065033
[式中、R7’は、3価の有機基であり、
Link1’は、2価の有機基であり、
Xは上記式(D1)の記載と同意義である。]
で表される化合物が用いられる。
この上記式(D5)で表される化合物と、式(D2)で表される化合物の反応により得られる化合物は、式(III)で表される化合物に対応し、R7’−(Link1’−Nu1’−Link−)が、式(III)のR−(Link−)に対応する。即ち、R7’はRに対応し、−Link1’−Nu1’−Link−が、Link−に対応し得る。例えば、Link1’およびLinkは、上記式(II)に関して記載した−R4a−、−R4b−または−R4c−、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものに対応し得る。
例えば、求核性官能基としてOH基を有する下記のニトリルオキシド:
(ONC)(R)(R)C−R31−OH
[式中、RおよびRは、上記と同意義であり、R31は、二価の有機基である。]
を、複数のハロゲン化カルボニルを有する下記化合物:
A’−(C(O)−R50s’
[式中、A’は、s’価の有機基を表し、
s’は2〜10の整数であり、
50は、上記と同意義である。]
と反応させることにより、下記式の多官能ニトリルオキシド:
A’−(C(O)−O−R31−CRCNO)s’
を得ることができる。
一の態様において、上記R31は、上記式(II)に関して記載した−R4a−、−R4b−または−R4c−、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたもの、例えば−R4b−R4a−、−R4a−R4b−、−R4c−R4b−、−R4b−R4c−、−R4b−R4a−R4b−、−R4c−R4b−R4a−R4b−R4c−等であってもよい。
上記R31は、好ましくは、アリーレン基であり、より好ましくはフェニレン基である。
具体的な例として、以下に、ニトリルオキシド基を2つ有する化合物および3つ有する化合物の合成スキームを示す。スキーム1は、OH基を有するニトリルオキシドの合成例である。スキーム2および3は、それぞれ、スキーム1で得られたニトリルオキシドと、ハロゲン化カルボニル化合物との合成例である。
Figure 2016065033
さらに別法として、本発明の多官能ニトリルオキシド化合物は、ニトロアルケン化合物のアルケン二重結合に、求核性官能基を付加させ、得られた化合物を、脱水処理、好ましくは塩基の存在下、イソシアネート化合物(好ましくはフェニルイソシアネート)で処理して、−CHNO部分を−CNOに変換することにより、製造することができる。
上記求核性官能基は、特に限定されないが、例えば、−CR53(COOR54、−OR55、−SR55、−NR5556等が挙げられ、好ましくはCR53(COOR54である。上記式中、R53は、フッ素原子、塩素原子、あるいは1個またはそれ以上のフッ素原子または塩素原子により置換されていてもよいC1−6アルキル基であり、R54は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキル基であり、R55は、フッ素原子により置換されていてもよいアルキル基またはアリール基であり、R56は、水素原子、アルキル基またはアリール基である。
好ましくは、ニトロアルケン化合物は、ニトロアルケン基が、ベンゼン環に結合した化合物、好ましくはニトロアルケン基が、フェニレン−R57−フェニレン鎖に結合した化合物であることが好ましい。上記R57は、−O−、−S−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−NR−、−C(O)NR−、−NR−CO−NR−(式中、Rは、水素原子あるいは1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基である)である。
例えば、本発明の多官能ニトリルオキシド化合物は、下記式(E1):
Figure 2016065033
[式中、A’は、s価の有機基を表し、
Linkは、リンカーとしての2価の有機基を表し、
は、上記式(I)の記載と同意義であり、
sは、2〜10の整数であり、好ましくは2または3である。]
で表される化合物を、求核性官能基を有する試薬:
Nu
[式中、Nuは、−CR53(COOR54、−OR、−SR55または−NR5556であり、好ましくはCR53(COOR54であり、
53は、フッ素原子、塩素原子、あるいは1個またはそれ以上のフッ素原子または塩素原子により置換されていてもよいC1−6アルキル基であり、
54は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1−6アルキル基であり、
55は、フッ素原子により置換されていてもよいアルキル基またはアリール基であり、
56は、水素原子、アルキル基またはアリール基である。]
と反応させて、式(E2):
Figure 2016065033
[式中、A’、Link、RおよびNuは、上記と同意義である。]
で表される化合物を得る。次いで、式(E2)で表される化合物を、イソシアネート化合物、好ましくはフェニルイソシアネートで処理して、−CHNO部分を、−CNOに変換することにより合成することができる。
この反応により得られる化合物において、A’−(Link−)が、式(I)で表される化合物のAに対応し、Nuが、式(I)で表される化合物のRに対応する。Linkは、上記式(II)に関して記載した−R4a−、−R4b−または−R4c−、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものに対応し得る。
この反応により二官能性のニトリルオキシドを合成する場合、式(E1)で表される化合物として、下記式(E3):
Figure 2016065033
[式中、R4’は、3価の有機基であり、
Link3’は、2価の有機基であり、
は上記式(I)の記載と同意義である。]
で表される化合物が用いられる。
この反応により得られる化合物において、R4’−(Link3’−)が、式(II)のRに対応する。例えば、Link3’は、上記式(II)に関して記載した−R4a−、−R4b−または−R4c−、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものに対応し得る。
また、この反応により三官能性のニトリルオキシドを合成する場合、式(E1)で表される化合物として、下記式(E4):
Figure 2016065033
[式中、R7’は、3価の有機基であり、
Link3’は、2価の有機基であり、
は上記式(I)の記載と同意義である。]
で表される化合物が用いられる。
この反応により得られる化合物において、R7’−(Link3’−)が、式(III)のR−(Link−)に対応する。例えば、Link3’は、上記式(II)に関して記載した−R4a−、−R4b−または−R4c−、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものに対応し得る。
具体的な例として、以下に、ニトリルオキシド基を3つ有する化合物の合成スキームを示す。
Figure 2016065033
さらに別法として、本発明の多官能ニトリルオキシド化合物は、2つまたはそれ以上のニトロアルケン化合物を、アルケン二重結合に付加可能な基を2つまたはそれ以上有する化合物で架橋し、次いで、得られた化合物を、塩基の存在下、イソシアネート化合物、好ましくはフェニルイソシアネートで処理して、−CHNO部分を−CNOに変換することにより、製造することができる。
この方法において、好ましくは、ニトロアルケン化合物は、ニトロアルケン基が、ベンゼン環に結合した化合物である。
アルケン二重結合に付加可能な基とは、特に限定されないが、例えば、−OH、−SH、−NH、−NHR51(式中、R51は、アルキル基またはアリール基である)等が挙げられ、好ましくは−OH基である。
アルケン二重結合に付加可能な基を有する化合物は、好ましくは、式(I)におけるA基に、その価数に応じた数のアルケン二重結合に付加可能な基が結合した化合物である。
例えば、本発明の多官能ニトリルオキシド化合物は、下記式(F1):
Figure 2016065033
[式中、RおよびRは、上記式(I)の記載と同意義である。]
で表される化合物を、下記式(F2):
Figure 2016065033
[式中、A’は、s価の有機基を表し、
Linkは、リンカーとしての2価の有機基を表し、
Nuは、求核性官能基であり、
sは、2〜10の整数であり、好ましくは2または3である。]
で示される化合物と反応させて、下記式(F3):
Figure 2016065033
[式中、A’、Link、Nu、R、Rおよびsは、上記と同意義である。]
で表される化合物を得、この化合物を、イソシアネート化合物、好ましくはフェニルイソシアネートで処理して、−CHNO部分を、−CNOに変換することにより合成することができる。
この反応により得られる化合物において、A’−(Link−Nu−)が、式(I)で表される化合物のAに対応する。例えば、Linkは、上記式(II)に関して記載した−R4a−、−R4b−または−R4c−、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものに対応し得る。
上記Nuは、好ましくは、−O−、−S−、または−NR−(Rは、アルキル基またはアリール基である)であり得る。
上記A’およびsは、二官能性ニトリルオキシドを合成する場合には、それぞれ、R4’(二価の有機基)および2であり得、三官能性ニトリルオキシドを合成する場合には、それぞれ、R7’(三価の有機基)および3であり得る。この反応により得られる化合物において、R4’−(Link−Nu−)が、式(II)のRに対応し、R7’−(Link−Nu−)が、式(III)のR−(Link−)に対応する。例えば、Linkは、上記式(II)に関して記載した−R4a−、−R4b−または−R4c−、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものに対応し得る。
具体的な例として、以下に、ニトリルオキシド基を2つ有する化合物の合成スキームを示す。
Figure 2016065033
次に、本発明の組成物について記載する。
本発明は、1種またはそれ以上の上記した本発明の化合物(I)を含む組成物(以下、本発明の組成物とも称する)を提供する。当該組成物は液体であっても固体であってもよい。また、当該組成物は、上記した本発明の化合物(I)のみから構成されていてもよい。
一の態様において、本発明の組成物は、本発明の化合物(I)に加え、さらにニトリルオキシド基と反応性を有する基を含む材料を含んでいてもよい。即ち、この態様において、本発明の組成物は、本発明の化合物(I)およびニトリルオキシド基と反応性を有する基を含む材料の混合物であり得る。
別の態様において、本発明の組成物は、他の組成物、例えばニトリルオキシド基と反応性を有する基を含む材料を含む組成物と組み合わせた形態であってもよい。この態様において、本発明の組成物と他の組成物は、使用直前に混合され、所望の用途に用いることができる。
上記組み合わせ形態は、本発明の組成物と他の組成物の両方が液体であってもよく、一方が固体(ゲルを含む)であってもよく、あるいは、両方が固体(ゲルを含む)であってもよい。
本発明の組成物は、溶剤を含んでいてもよい。かかる溶剤としては、組成物に含まれる成分に応じて適宜選択することができる。
好ましい態様において、本発明の組成物または本発明の組成物と他の組成物の組み合わせ形態は、ニトリルオキシド基と反応性を有する基を含む材料に適用するために使用される。
上記「ニトリルオキシド基と反応性を有する基」としては、二重結合(C=C、C=N、N=N、C=S、P(V)=C、C=P(III)、C=As、C=Se、B=N、P(V)=N、C=O)を有する基、または三重結合(C≡C、C≡N、C≡P)を有する基などが挙げられ、具体的には、アルケニル基、アルキニル基、ニトリル基が挙げられる。
上記ニトリルオキシド基と反応性を有する基を含む材料の「材料」としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記する葉面処理剤が適用される基材(例、ガラス、樹脂等)、相溶化剤または架橋剤が適用される化合物、特に高分子化合物(例、天然ゴム、合成ゴム)、フィラーの改質剤が適用されるフィラーまたは液状ゴムの材料となる化合物(例、不飽和結合を有する化合物)が挙げられる。
一の態様において、上記本発明の組成物は、表面処理剤である。
本発明の表面処理剤は、主成分または有効成分として、少なくとも1種の上記した本発明の化合物(I)を含み、撥水性、撥油性、防汚性、摩擦耐久性、表面滑り性などを有する表面処理層を形成することができ、防汚性コーティング剤として好適に利用される。ここで、「主成分」とは、表面処理剤中の含量が50%を超える成分を言い、「有効成分」とは、表面処理すべき基材上に残留して表面処理層を形成し、何らかの機能(撥水性、撥油性、防汚性、表面滑り性、摩擦耐久性など)を発現させ得る成分を意味する。
本発明の表面処理剤は、ニトリルオキシド基と反応性を有するものであればいかなる基材に対しても好適に適用できる点で、主にガラス基材に好適に用いられる含フッ素シラン化合物を含む表面処理剤、主に樹脂基材に好適に用いられる硬化性部位(例えば二重結合)を有する化合物を含む表面処理剤と比べて有利である。
本発明の表面処理剤の組成は、表面処理層に所望される機能に応じて適宜選択してもよい。
例えば、表面処理剤は、上記の本発明の化合物(I)に加えて、含フッ素オイルとして理解され得るフルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロポリエーテル化合物を含んでいてもよい(以下、「含フッ素オイル」とも言う)。含フッ素オイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
表面処理剤中、本発明の化合物(I)100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、含フッ素オイルは、例えば0〜300質量部、好ましくは50〜200質量部で含まれ得る。
かかる含フッ素オイルとしては、以下の一般式(A)で表される化合物(パーフルオロポリエーテル化合物)が挙げられる。

21−(OCa’−(OCb’−(OCc’−(OCFd’−R22 ・・・(A)

式中、R21は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し、好ましくは1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基である。好ましくは、上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルキル基は、末端炭素原子がCFH−であり他のすべての炭素原子がフッ素により全置換されているパーフルオロアルキル基であり、より好ましくはパーフルオロアルキル基である。
22は、水素原子、フッ素原子または1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し、好ましくは1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基である。好ましくは、上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいアルキル基は、末端炭素原子がCFH−であり他のすべての炭素原子がフッ素により全置換されているパーフルオロアルキル基であり、より好ましくはパーフルオロアルキル基である。
a’、b’、c’およびd’は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロポリエーテルの3種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a’、b’、c’およびd’の和は少なくとも1、好ましくは1〜100である。添字a’、b’、c’、d’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、−(OC)−は、−(OCFCFCFCF)−、−(OCF(CF)CFCF)−、−(OCFCF(CF)CF)−、−(OCFCFCF(CF))−、−(OC(CFCF)−、−(OCFC(CF)−、−(OCF(CF)CF(CF))−、−(OCF(C)CF)−および−(OCFCF(C))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCFCFCF)−である。−(OC)−は、−(OCFCFCF)−、−(OCF(CF)CF)−および−(OCFCF(CF))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCFCF)−である。また、−(OC)−は、−(OCFCF)−および−(OCF(CF))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCFCF)−である。
上記一般式(A)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物の例として、以下の一般式(A1)および(A2)のいずれかで示される化合物(1種または2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。

21−(OCFCFCFb’’−R22 ・・・(A1)
21−(OCFCFCFCFa’’−(OCFCFCFb’’−(OCFCFc’’−(OCFd’’−R22 ・・・(A2)

これら式中、R21およびR22は上記の通りであり;式(A1)中、b’’は1以上100以下の整数であり;式(A2)中、a’’およびb’’はそれぞれ独立して1〜30の整数であり、c’’およびd’’はそれぞれ独立して1以上300以下の整数である。これら式中、添字a’’、b’’、c’’、d’’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
一般式(A1)で示される化合物および一般式(A2)で示される化合物は、それぞれ単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。
また、上記の本発明の化合物(I)がパーフルオロアルキル基を含む場合、含フッ素オイルは、一般式Rf−F(式中、Rfは、上記の本発明の化合物(I)に含まれるパーフルオロアルキル基である)で表される化合物であってよい。この場合、Rf−Fで表される化合物は、上記した本発明の化合物(I)と高い親和性が得られる点で好ましい。
また、本発明の表面処理剤は、上記の本発明の化合物(I)に加えて、シリコーンオイルとして理解され得るシリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)を含んでいてもよい。シリコーンオイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
表面処理剤中、本発明の化合物(I)100質量部に対して、シリコーンオイルは、例えば0〜300質量部、好ましくは50〜200質量部で含まれ得る。
かかるシリコーンオイルとしては、例えばシロキサン結合が2000以下の直鎖状または環状のシリコーンオイルを用い得る。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
本発明は、また、基材と、該基材の表面において上記した本発明の化合物(I)または表面処理剤(以下、これらを代表して単に表面処理剤と言う)より形成された層(表面処理層)とを含む物品を提供する。かかる物品は、例えば以下のようにして製造できる。
まず、基材を準備する。上記したように、本発明の表面処理剤は、ニトリルオキシド基と反応性を有するものであればいかなる基材に対しても好適に適用できる。かかる基材は、ガラス、樹脂(天然または合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料であってよく、板状、フィルム、その他の形態であってよい)、金属(アルミニウム、銅、鉄等の金属単体または合金等の複合体であってよい)、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材等、任意の適切な材料で構成され得る。
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラスまたは透明プラスチックなどであってよい。また、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面(最外層)に何らかの層(または膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層および多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、Ta、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WOなどが挙げられる。これらの無機物は、単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I−CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、および液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
基材の形状は特に限定されない。また、表面処理層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途および具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
かかる基材としては、少なくともその表面部分が、ニトリルオキシド基と反応性を有する基を元々有する材料から成るものであってよいが、前処理を施すことにより、基材にニトリルオキシド基と反応性を有する基を導入してもよい。例えば、ガラス基材である場合、ピラニハ(piranha)溶液で処理して、基材表面にヒドロキシル基を発現させ、このヒドロキシル基に、例えばアリルトリクロロシランを反応させることにより、ニトリルオキシド基と反応性を有する基であるアリル基を基材表面に導入することができる。
次に、かかる基材の表面に、上記の表面処理剤の膜を形成し、この膜を必要に応じて後処理し、これにより、表面処理剤から表面処理層を形成する。
本発明の表面処理剤の膜形成は、上記の表面処理剤を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法を使用できる。
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、バーコーティング、ダイコーティングおよび類似の方法が挙げられる。
乾燥被覆法の例としては、真空蒸着、スパッタリング、CVDおよび類似の方法が挙げられる。真空蒸着法の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、高周波加熱、イオンビームおよび類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ−CVD、光学CVD、熱CVDおよび類似の方法が挙げられる。
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
湿潤被覆法を使用する場合、本発明の表面処理剤は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。含フッ素シラン化合物または組成物の安定性および溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:炭素数5〜12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素;ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(COCH)、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)、パーフルオロブチルエチルエーテル(COC)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(CCF(OCH)C)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基およびアルキル基は直鎖または分枝状であってよい))など。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、ヒドロフルオロエーテルが好ましく、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)および/またはパーフルオロブチルエチルエーテル(COC)が特に好ましい。
上記の方法により表面処理剤の膜を形成した後、必要に応じて、後処理をしてもよい。この後処理としては、特に限定されるものではなく、例えば40〜150℃、例えば60〜100℃に加熱することが挙げられる。
上記のようにして、基材の表面に、本発明の表面処理剤に由来する表面処理層が形成され、物品が製造される。
したがって、本発明の表面処理剤は、光学材料の最外層に表面処理層を形成するために好適に用いることができる。光学材料としては、多種多様な光学材料が好ましく挙げられる:例えば、陰極線管(CRT;例、TV、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED;Field Emission Display)などのディスプレイまたはそれらのディスプレイの保護板、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの。
本発明によって得られる表面処理層を有する物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu−ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD−R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバーなど。
表面処理層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、表面処理層の厚さは、0.1〜30μm、好ましくは0.5〜20μmの範囲であることが、光学性能、表面滑り性、摩擦耐久性および防汚性の点から好ましい。
本発明の表面処理剤により得られる表面処理層は、撥水性、撥油性、防汚性、表面滑り性、および/または摩擦耐久性等を有し、機能性薄膜として好適に利用され得る。
一の態様において、上記本発明の組成物は、フィラーの改質剤である。
本発明のフィラーの改質剤は、少なくとも1種の上記した本発明の化合物(I)を含む。
本発明のフィラーの改質剤が適用されるフィラーとしては、ニトリルオキシド基と反応性を有する基を表面に有するフィラー、例えば特に限定されるものではないが、表面にビニル基、アリル基、ニトリル基などの不飽和結合を有する基が導入されたシリカ粒子、アルミナ、酸化チタン、酸化バリウムおよび酸化カルシウムが挙げられる。
シリカ粒子の表面にビニル基、アリル基、ニトリル基などの不飽和結合を有する基を導入する方法は、当業者によく知られている。例えば、シリカ粒子の表面へのビニル基の導入は、シリカ粒子をビニル系シランカップリング剤(例、ビニルエトキシシラン等)で処理することにより行うことができる。
本発明のフィラーの改質剤を用いる改質処理は、単にフィラーと混合することにより実施することができる。かかる改質処理は、好ましくは溶媒中で行われる。
上記溶媒としては、本発明の化合物およびフィラーに対して不活性なものであれば特に限定されず、例えば、水、炭素数5〜12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素;ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(COCH)、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)、パーフルオロブチルエチルエーテル(COC)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(CCF(OCH)C)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基およびアルキル基は直鎖または分枝状であってよい))などが挙げられる。
また、本発明は、上記フィラーの改質剤により処理されたフィラー、例えばシリカ粒子を提供する。
本発明のフィラーの改質剤により処理されたフィラーは、例えばフッ素ゴム、パーフロゴム、フッ素樹脂のフィラーとして用いる場合、未処理のフィラーと比較して、分散性が改善される、あるいはフィラー表面の反応性基(例えば、シリカのSiO)と含フッ素ポリマーとの反応を抑制することができるという効果を有する。
一の態様において、上記本発明の組成物は、反応性相溶化剤である。
本発明の反応性相溶化剤は、少なくとも1種の上記した本発明の化合物(I)を含み、2種またはそれ以上の材料(化合物)、例えばニトリルオキシド基と反応性を有する汎用ポリマーと含フッ素ポリマー間の相溶性を向上させることができる。
本発明の反応性相溶化剤は、ニトリルオキシド基と反応性を有する化合物とフッ素を含有する化合物との組み合わせであれば、いずれの化合物の組み合わせにも好適に適用することができる。また、相溶化させる(複合化させる)化合物の組み合わせは、3種以上の組み合わせ、例えば1種のニトリルオキシド基と反応性を有する化合物と2種のフッ素を含有する化合物との組み合わせであってもよい。
上記ニトリルオキシド基と反応性を有する化合物としては、特に限定されるものではないが、分子内にニトリルオキシド基と反応性を有する部分(例、C=C、C≡N)を有する汎用ポリマー、例えば、天然ゴム、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、PAN(ポリアクリロニトリル)、HC=C(R)−(CH−CHR)−CH−CR=CH(ここに、Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、またはイソブチル基であり、nは10〜1000の整数である)などが挙げられる。
上記フッ素を含有する化合物としては、特に限定されるものではないが、フッ素樹脂およびフッ素ゴム等が挙げられる。
上記フッ素樹脂としては、非溶融加工性であるフッ素樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、および、溶融加工性であるフッ素樹脂が挙げられる。
上記PTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体であってもよいし、変性ポリテトラフルオロエチレン(変性PTFE)であってもよい。本明細書において、「変性PTFE」とは、得られる共重合体に溶融加工性を付与しない程度の少量の共単量体をTFEと共重合して得られるものを意味する。上記少量の共単量体としては、特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、パーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)、(パーフルオロアルキル)エチレン等が挙げられる。上記少量の共単量体は、1種または2種以上を用いることができる。
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等が挙げられる。
上記少量の共単量体が上記変性PTFEに付加されている割合は、その種類によって異なるが、例えば、PAVE、パーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)等を用いる場合、通常、上記TFEと上記少量の共単量体との合計質量の0.001〜1質量%であることが好ましい。
溶融加工性であるフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン(TFE)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、TFE/HFP/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)共重合体、TFE/PAVE共重合体(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)およびテトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA))、エチレン(Et)/TFE共重合体、Et/TFE/HFP共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)/TFE共重合体、Et/CTFE共重合体、TFE/フッ化ビニリデン(VDF)共重合体、VDF/HFP/TFE共重合体、VDF/HFP共重合体等が挙げられる。
また、フッ素樹脂としては、さらに、フルオロオレフィン単位および水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体単位を含む水酸基含有含フッ素共重合体が挙げられる。
フルオロオレフィン単位としては、テトラフルオロエチレン(TFE)単位、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位、フッ化ビニル(VF)単位、フッ化ビニリデン(VDF)単位、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)単位、トリフルオロエチレン(TrFE)単位、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)単位などの1種または2種以上が挙げられ、PAVE単位としては、パーフルオロメチルビニルエーテル単位、パーフルオロプロピルビニルエーテル単位が挙げられる。
TFE単位を含む2種以上の単位の組み合わせとしては、TFE/HFP単位、TFE/PAVE単位、TFE/エチレン単位、TFE/ビニルエーテル単位、TFE/ビニルエステル単位、TFE/ビニルエステル/ビニルエーテル単位、TFE/ビニルエーテル/アリルエーテル単位などが挙げられる。これらのうち、エチレン性不飽和基含有単量体への混合が良好な点から、TFE/エチレン単位、TFE/ビニルエーテル単位、TFE/ビニルエステル単位、TFE/ビニルエステル/ビニルエーテル単位、TFE/ビニルエーテル/アリルエーテル単位などが好ましい。
CTFE単位を含む2種以上の単位の組み合わせとしては、CTFE/HFP単位、CTFE/PAVE単位、CTFE/エチレン単位、CTFE/ビニルエーテル単位、CTFE/ビニルエステル単位、CTFE/ビニルエステル/ビニルエーテル単位、CTFE/ビニルエーテル/アリルエーテル単位などが挙げられる。これらのうち、エチレン性不飽和基含有単量体への混合が良好な点から、CTFE/エチレン単位、CTFE/ビニルエーテル単位、CTFE/ビニルエステル単位、CTFE/ビニルエステル/ビニルエーテル単位、CTFE/ビニルエーテル/アリルエーテル単位などが好ましい。
同様にHFP単位を含む2種以上の単位の組み合わせとしては、CTFE/HFP単位、TFE/HFP単位、HFP/ビニルエーテル単位、HFP/ビニルエステル単位、HFP/ビニルエステル/ビニルエーテル単位、HFP/ビニルエーテル/アリルエーテル単位などが挙げられる。これらのうち、エチレン性不飽和基含有単量体への混合が良好な点から、HFP/ビニルエーテル単位、HFP/ビニルエステル単位、HFP/ビニルエステル/ビニルエーテル単位、HFP/ビニルエーテル/アリルエーテル単位などが好ましい。
VDF単位を含む2種以上の単位の組み合わせとしては、VDF/TFE単位、VDF/HFP単位、VDF/TFE/HFP単位、VDF/CTFE単位、VDF/TFE/PAVE単位、VDF/CTFE/TFE単位、VDF/CTFE/HFP単位などが挙げられる。これらのうち、エチレン性不飽和基含有単量体への混合が良好な点から、VDF単位が重合体中に50モル%以上含有されていることが好ましい。
水酸基含有含フッ素共重合体における水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体単位の具体例としては、例えば式:
Figure 2016065033
[式中、R1は−OR2または−CH2OR2である(ただし、R2は水酸基を有するアルキル基である)]
で表わされるヒドロキシアルキルビニルエーテルやヒドロキシアルキルアリルエーテルが挙げられる。R2としては、例えば炭素数1〜8の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基に1〜3個、好ましくは1個の水酸基が結合したものである。これらの例としては、例えば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル単位、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル単位、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル単位、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル単位、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル単位、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル単位、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル単位、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル単位、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル単位、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル単位、エチレングリコールモノアリルエーテル単位、ジエチレングリコールモノアリルエーテル単位、トリエチレングリコールモノアリルエーテル単位、グリセリンモノアリルエーテル単位が挙げられるが、これらの中で、特に炭素数が3〜8のヒドロキシアルキルビニルエーテル、なかでも、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル単位または2−ヒドロキシエチルビニルエーテル単位が、重合が容易であるという観点から好ましい。
水酸基含有含フッ素共重合体は、さらに水酸基を含まない非フッ素ビニルエーテル単位および/または非フッ素ビニルエステル単位を含んでいてもよい。
水酸基含有含フッ素共重合体における水酸基を含まない非フッ素ビニルエーテル単位および/または非フッ素ビニルエステル単位の具体例としては、例えば式:
Figure 2016065033
[式中、R3は−OR4、−COOR4または−OCOR4である(ただし、R4はアルキル基である)]
で表わされるアルキルビニルエーテルやアルキルアリルエーテルが挙げられる。R4としては、例えば炭素数1〜8の直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基である。これらの例としては、例えばシクロヘキシルビニルエーテル単位、メチルビニルエーテル単位、エチルビニルエーテル単位、プロピルビニルエーテル単位、n−ブチルビニルエーテル単位、イソブチルビニルエーテル単位、酢酸ビニル単位、プロピオン酸ビニル単位、酪酸ビニル単位、イソ酪酸ビニル単位、ピバリン酸ビニル単位、カプロン酸ビニル単位、バーサティック酸ビニル単位、ラウリン酸ビニル単位、ステアリン酸ビニル単位、シクロヘキシルカルボン酸ビニル単位が好ましい。また、耐候性、溶解性、廉価性に優れる点からバーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、酢酸ビニルである。これらのなかでも耐薬品性の点から、非芳香族系カルボン酸ビニルエステル、特にカルボン酸の炭素数が6以上のカルボン酸ビニルエステル、さらに好ましくはカルボン酸の炭素数が9以上のカルボン酸ビニルエステルが好ましい。カルボン酸ビニルエステルにおけるカルボン酸の炭素数の上限は20以下、さらには15以下が好ましい。具体例としてはバーサティック酸ビニルが最も好ましい。
水酸基含有含フッ素共重合体には、カルボキシル基含有モノマー単位を含んでいてもよい。
カルボキシル基含有モノマー単位はカルボキシル基を含み水酸基と芳香族基とを含まないものであり、この点で他の単位と異なる。
カルボキシル基含有モノマー単位としては、例えば式:
Figure 2016065033
[式中、R3、R4およびR5は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、アルキル基、
カルボキシル基またはエステル基であり、nは0または1である]
または、式:
Figure 2016065033
[式中、R6およびR7は、同じかまたは異なり、いずれも飽和または不飽和の直鎖または環状アルキル基であり、nは0または1であり、mは0または1である]
で表わされるカルボキシル基含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
カルボキシル基含有モノマー単位の具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニルから選択される1種または2種以上が挙げられ、それらのなかでも単独重合性の低いクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、3−アリルオキシプロピオン酸が好ましい。
カルボキシル基含有モノマー単位の割合の下限は0.1モル%、好ましくは0.4モル%であり、上限は2.0モル%、好ましくは1.5モル%である。
水酸基含有含フッ素共重合体の具体例としては、例えば、
Figure 2016065033
(式中、a、bおよびcの比率はモル比で、a:b:c=40〜60:3〜15:5〜45である);
Figure 2016065033
(式中、a、b、cおよびdの比率はモル比で、a:b:c:d=40〜60:3〜15:5〜45:5〜45である);
Figure 2016065033
(式中、a、b、cおよびdの比率はモル比で、a:b:c:d=40〜60:3〜15:5〜45:5〜45である);
Figure 2016065033
(式中、a、b、cおよびdの比率はモル比で、a:b:c:d=40〜60:3〜15:5〜45:5〜45であり、i−Buはイソブチル基を意味する);
テトラフルオロエチレン/バーサティック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル;テトラフルオロエチレン/バーサティック酸ビニル/ヒドロキシエチルビニルエーテル/tert−ブチル安息香酸ビニル;テトラフルオロエチレン/バーサティック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/クロトン酸;テトラフルオロエチレン/バーサティック酸ビニル/ヒドロキシエチルビニルエーテル/安息香酸ビニル/クロトン酸が挙げられる。
フッ素ゴムとしては、非パーフルオロフッ素ゴムおよびパーフルオロフッ素ゴムが挙げられる。
上記非パーフルオロフッ素ゴムとしては、ビニリデンフルオライド(VDF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VDF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VDF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、フルオロホスファゼン系フッ素ゴム等が挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または、本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。なかでも、ビニリデンフルオライド系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムが好ましい。
上記ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムとは、ビニリデンフルオライド45〜85モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体55〜15モル%とからなる含フッ素弾性状共重合体をいう。好ましくは、ビニリデンフルオライド50〜80モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体50〜20モル%とからなる含フッ素弾性状共重合体をいう。
上記ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体としては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フッ化ビニル等の含フッ素単量体、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテル等の非フッ素単量体が挙げられる。これらをそれぞれ単独で、または、任意に組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)を用いることが好ましい。
この場合のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、例えばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等が挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または、本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムの具体例としては、VDF−HFP系ゴム、VDF−HFP−TFE系ゴム、VDF−CTFE系ゴム、VDF−CTFE−TFE系ゴム等が挙げられる。
上記テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムとは、テトラフルオロエチレン45〜70モル%、プロピレン55〜30モル%、および、架橋部位を与える単量体0〜5モル%からなる含フッ素弾性状共重合体をいう。
上記架橋部位を与える単量体としては、例えば特公平5−63482号公報、特開平7−316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)やパーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)等のヨウ素含有単量体、特表平4−505341号公報に記載されている臭素含有単量体、特表平4−505345号公報、特表平5−500070号公報に記載されているようなニトリル基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アルコキシカルボニル基含有単量体等が挙げられる。
上記パーフルオロフッ素ゴムとしては、TFEを含むパーフルオロゴム、例えばTFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)/架橋部位を与える単量体からなる含フッ素弾性状共重合体が挙げられる。その組成は、好ましくは、45〜90/10〜50/0〜5(モル%)であり、より好ましくは、45〜80/20〜50/0〜5であり、更に好ましくは、53〜70/30〜45/0〜2である。これらの組成の範囲を外れると、ゴム弾性体としての性質が失われ、樹脂に近い性質となる傾向がある。
この場合のPAVEとしては、例えばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)等が挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。
上記架橋部位を与える単量体としては、例えば、下記式:
CX=CX−RCHRI
(式中、XはH、FまたはCH、Rはフルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基またはパーフルオロポリオキシアルキレン基、RはHまたはCH)で表されるヨウ素含有単量体、下記式:
CF=CFO(CFCF(CF))−O−(CF−Y
(式中、mは0〜5の整数、nは1〜3の整数、Yはニトリル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基または臭素原子)で表されるような単量体等が挙げられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。これらのヨウ素原子やニトリル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、臭素原子が、架橋点として機能する。
かかるパーフルオロフッ素ゴムの具体例としては、国際公開第97/24381号パンフレット、特公昭61−57324号公報、特公平4−81608号公報、特公平5−13961号公報等に記載されているフッ素ゴム等が挙げられる。
その他、含フッ素ポリマーとしては、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PVF(ポリビニルフルオライド)等の単独重合体が挙げられる。
本発明の反応性相溶化剤は、ニトリルオキシド基と反応性を有する化合物と、フッ素を含有する化合物とを、常圧下、混合機(ニーダー、ブラベンダー、押出機等)により混合する工程において、単に本発明の化合物を含む反応性相溶化剤をこれらの化合物と混合するだけで機能を発揮し得る。このような混合工程において、本発明の化合物は、ニトリルオキシド基と反応性を有する化合物の反応性部位とクリック反応することにより、ニトリルオキシド基と反応性を有する化合物にフッ素含有基を導入することができる。この導入されたフッ素含有基が、上記フッ素を含有する化合物と親和性を有することにより、両者を相溶化(複合化)させることが可能になる。
上記混合工程は、通常、ニトリルオキシド基と反応性を有する化合物およびフッ素を含有する化合物が溶融する温度、例えば約150〜250℃で行われる。例えば、ニトリルオキシド基と反応性を有する化合物としてNBRを用い、フッ素を含有する化合物としてPVDFを用いる場合、約170℃以上、例えば約180〜210℃で行われる。本発明の化合物は、温度安定性が高いので、このような高温下での処理が可能になる。
また、上記混合工程は、通常、溶媒、添加剤等を加えることなく実施することができる。しかしながら、目的に応じて、例えば反応を促進させるために、溶媒、添加剤を加えてもよい。当業者であれば、目的に応じて、かかる溶媒、添加剤を選択することができる。
従来から一般的に用いられる相溶化剤としては、複合化させる2成分それぞれの骨格を有するブロックポリマーまたはグラフトポリマーが挙げられるが、本発明の化合物は、このようなポリマーと比較して調製が容易である点で有利である。また、本発明の反応性相溶化剤は、単に複合化させる成分の混合物と混ぜ合わせるだけで、これらを相溶化することができる点で有利である。
また、本発明は、上記の反応性相溶化剤により処理された2種またはそれ以上の化合物の複合体を提供する。
一の態様において、上記本発明の組成物は、繊維処理剤である。
本発明の繊維処理剤は、少なくとも1種の上記した本発明の化合物(I)を含み、ニトリルオキシド基と反応性を有する基を有する繊維、例えばアクリル系繊維の撥水撥油性などを向上させることができる。
本発明の繊維処理剤は、ニトリルオキシド基と反応性を有する基を有する繊維であればいかなる繊維にも好適に使用できる。
このような繊維としては、アクリル系繊維、または側鎖にニトリル基を持つモノマーを共重合することにより得られるポリエステル系繊維もしくはポリビニルアルコール系繊維などが挙げられる。また、ニトリルオキシド基と反応性を有する基を有さない繊維であっても、ニトリルオキシド基と反応性を有する基を導入することにより、上記本発明の繊維処理剤で処理することが可能になる。例えば、側鎖に水酸基またはアミノ基を持つモノマーを共重合することにより得られるポリエステル系繊維またはポリビニルアルコール系繊維は、ニトリルオキシド基と反応性を有する基を有するカルボン酸またはスルホン酸化合物と脱水縮合反応させることにより、上記本発明の繊維処理剤で処理することが可能になる。
本発明の繊維処理剤は、本発明の化合物(I)に加え、添加剤、例えば、乳化剤(ポリエチレングリコール系、カチオン系、アンモニウム系、ノニオン系、アニオン系)、消泡剤、湿潤剤、パラフィン系炭化水素などを含んでいてもよい。
本発明の繊維処理剤は、溶媒で希釈して繊維に適用してもよい。かかる溶媒としては、炭素数5〜12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素;ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(COCH)、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)、パーフルオロブチルエチルエーテル(COC)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(CCF(OCH)C)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基およびアルキル基は直鎖または分枝状であってよい))、他の含フッ素系溶媒、鉱油などの炭化水素系溶媒、アルコール、MIBK(メチルイソブチルケトン)、グリコール系溶媒(エチレングリコール、プロピレングリコール等)などが挙げられる。
本発明の繊維処理剤を、繊維に適用する方法としては、処理すべき繊維に所望の量を付着させるものであれば、特に限定されるものではなく、種々の方法が採用できる。繊維処理方法としては、連続法またはバッチ法等が挙げられる。
上記連続法としては、まず、溶媒を用いて繊維処理剤を希釈して処理液を調製する。次に、処理液で満たされた含浸装置に、被処理物を連続的に送り込み、被処理物に処理液を含浸させた後、不要な処理液を除去する。含浸装置としては特に限定されず、パッダ、キスロール式付与装置、グラビアコーター式付与装置、スプレー式付与装置、フォーム式付与装置、コーティング式付与装置等が好ましく採用でき、特にパッダ式が好ましい。続いて、乾燥機を用いて被処理物に残存する溶媒を除去する操作を行う。乾燥機としては、特に限定されず、ホットフルー、テンター等の拡布乾燥機が好ましい。該連続法は、被処理物が織物等の布帛状の場合に採用するのが好ましい。
バッチ法は、被処理物を処理液に浸漬する工程、処理を行った被処理物に残存する溶媒を除去する工程からなる。該バッチ法は、被処理物が布帛状でない場合、例えばバラ毛、トップ、スライバ、かせ、トウ、糸等の場合、または編物等連続法に適さない場合に採用するのが好ましい。浸漬する工程においては、例えば、ワタ染機、チーズ染色機、液流染色機、工業用洗濯機、ビーム染色機等を用いることができる。溶媒を除去する操作においては、チーズ乾燥機、ビーム乾燥機、タンブルドライヤー等の温風乾燥機、高周波乾燥機等を用いることができる。
本発明の繊維処理剤を付着させた被処理物には、乾熱処理を行うことが好ましい。該乾熱処理を行うと、繊維処理剤における有効成分が被処理物により強固に付着するため好ましい。乾熱処理の温度としては、120〜180℃が好ましく、特に160〜180℃が好ましい。該乾熱処理の時間としては、10秒間〜3分間が好ましく、特に1〜2分間が好ましい。乾熱処理の方法としては、特に限定されないが、被処理物が布帛状である場合にはテンターが好ましい。
また、本発明は、上記繊維処理剤により処理された繊維を提供する。
本発明の繊維処理剤により処理された繊維は、用いる本発明の化合物に応じて、撥水撥油性、耐候性および/または耐熱性などが向上する。また、本発明の化合物は、クリック反応により繊維と化学的に結合することから、上記の機能は摩擦などにより劣化しにくく、長期間機能を維持することができる。
一の態様において、上記本発明の組成物は、架橋剤である。
本発明の架橋剤は、少なくとも1種の上記した本発明の化合物(I)を含み、2つのニトリルオキシド基と反応性を有する官能基と反応して、この官能基間を架橋することができる。なお、上記2つの官能基は、同一の分子に存在してもよく、それぞれ別個の分子に存在してもよい。
本発明のニトリルオキシド化合物(I)は、従来の芳香族多官能ニトリルオキシドと比較して高い熱的安定性を有しているので、高温条件下で用いることができる。したがって、架橋する化合物が、反応部位(即ち、不飽和結合部位)が少ないポリマー、または主鎖が剛直で分子運動性に乏しいポリマーである場合にも、高温条件下で処理することにより、これらの化合物を架橋することができる。具体的には、フッ素ゴムのベースポリマー、パーフロゴムのベースポリマー等のテトラフルオロエチレンを主成分として含むポリマーであっても、好適に架橋することができる。
架橋される化合物としては、ニトリルオキシド基と反応性を有する部位を有していれば特に限定されないが、例えば、ニトリルオキシド基と反応性を有する部位を有するポリマーであり得、例えば、汎用ゴム、天然ゴム、フッ素ポリマー(好ましくはフッ素ゴム)が挙げられる。
上記汎用ゴムとしては、例えば、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、PAN(ポリアクリロニトリル)、HC=C(R)−(CH−CHR)−CH−CR=CH(ここに、Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、またはイソブチル基であり、nは10〜1000の整数である)などが挙げられる。
天然ゴムとは、通常に天然に産するゴム状高分子であり、通常、ポリイソプレン構造を有するが、これに限定されない。
上記フッ素ゴムは、非パーフルオロフッ素ゴムまたはパーフルオロフッ素ゴムのいずれであってもよく、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)および下記式(a):
CF=CF−Rf(a)
(式中、Rfは、−CFまたはORf(Rfは、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す)を表す。)
で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物(例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)等)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体に由来する構造単位を含むことが好ましい。
非パーフルオロフッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、フルオロホスファゼン系フッ素ゴム等が挙げられ、これらを単独または組み合わせて用いることができる。また、これらのフッ素ゴムは、共単量体との共重合体であってもよい。
上記共単量体としては、その他の単量体と共重合可能であれば特に限定されず、例えば、TFE、HFP、PAVE、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、ヨウ素含有フッ素化ビニルエーテル、下記一般式(b):
CH=CFRf(b)
(式中、Rfは炭素数1〜12の直鎖または分枝鎖のフルオロアルキル基を表す)
で表される含フッ素単量体等のフッ素含有単量体(c);
CF=CFOCFORf(c)
(式中、Rfは、炭素数1〜6の直鎖または分枝鎖のパーフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環式パーフルオロアルキル基、または、1〜3個の酸素原子を含む炭素数2〜6の直鎖または分枝鎖のパーフルオロオキシアルキル基を表す。)
で表されるパーフルオロビニルエーテル;
エチレン(Et)、プロピレン(Pr)、アルキルビニルエーテル等のフッ素非含有単量体;および、反応性乳化剤等が挙げられ、これらは、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような共重合体としては、限定するものではないが、例えば、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/CTFE/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体、VdF/TFE/プロピレン(Pr)共重合体、VdF/エチレン(Et)/HFP共重合体及びVdF/式(b)で表される含フッ素単量体(b)の共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が挙げられる。
フッ素ゴムのニトリルオキシド基との反応性部位は、該反応性部位を有する単量体由来であっても、反応性部位を有しないフッ素ゴムを修飾して、ニトリルオキシド基との反応性部位を導入したものであってもよい。
ニトリルオキシド基との反応性部位を有する単量体としては、ビスオレフィン化合物、例えば、式:R2223C=CR24−Z−CR25=CR2627
(式中、R22、R23、R24、R25、R26およびR27は、同じであってもまたは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基を表し;
Zは、直鎖もしくは分枝鎖の、酸素原子を含んでいてもよい、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された炭素数1〜18のアルキレンもしくはシクロアルキレン基、または(パー)フルオロポリオキシアルキレン基を表す。)
で表されるビスオレフィン化合物が挙げられる。
ニトリルオキシド基との反応性部位を有する単量体の別の例としては、ニトリル基を有するオレフィン化合物、例えば、式:R2829C=CR30−Z−CN
(式中、R28、R29およびR30は、同じであってもまたは異なっていてもよく、それぞれ、水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基を表し;
Zは、直鎖もしくは分枝鎖の、酸素原子を含んでいてもよい、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された炭素数1〜18のアルキレンもしくはシクロアルキレン基、または(パー)フルオロポリオキシアルキレン基を表す。)
で表される化合物、代表的にはCF=CFOCFCF(CF)OCFCFCNが挙げられる。
一の態様において、上記本発明の組成物は、液状ゴムの原料として用いられる。
液状ゴムの原料として用いられる本発明の組成物(以下、「液状ゴム原料組成物1」ともいう)は、少なくとも1種の上記した本発明の化合物(I)を含む。
上記液状ゴム原料組成物1は、不飽和結合を有する化合物を含む組成物(以下、「液状ゴム原料組成物2」ともいう)と混合することにより、本発明の化合物に含まれるニトリルオキシド基と、液状ゴム原料組成物2中の化合物に含まれる不飽和結合がクリック反応を起こし、ゲル状の生成物(即ち、液状ゴム)を生成する。
上記液状ゴム原料組成物2に含まれる不飽和結合を有する化合物としては、限定するものではないが、下記式:
CH=CH−(X)−Rf−(X)−CH=CH
[式中:
Xは、それぞれ独立して、−CH−、−CHO−、−CHOCH−、または−CH−NR−CO−であり;
Yは、−CH−であり:
Rfは、2価のパーフルオロアルキレン基であり;
aは、それぞれ独立して、0または1の整数である。]
で表される1種またはそれ以上の化合物、および
式:
Rf−(X)−CH=CH
[式中:
Xは、それぞれ独立して、−CH−、−CHO−、−CHOCH−、または−CH−NR−CO−であり;
Yは、−CH−であり:
Rfは、パーフルオロポリアルキル基であり;
aは、それぞれ独立して、0または1の整数である。]
で表される1種またはそれ以上の化合物が挙げられる。
具体的な液状ゴム原料組成物2に含まれる不飽和結合を有する化合物としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルトリメリテート、ジアリルフタレート、亜リン酸トリアリル、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ビスマレイミド、トリアリルホスフェート等が挙げられる。
従来の代表的な液状ゴムの製造においては、白金化合物等の金属触媒が必須であったが、本発明は、液状ゴム原料組成物1と、液状ゴム原料組成物2を単に混合することにより、液状ゴムを生成できる点で有利である。本発明の組成物を用いることにより、触媒を含まない液状ゴムを製造することが可能になり、例えば、このような液状ゴムは、金属の存在が悪影響を及ぼし得る半導体製造プロセスにおいて、好適に用いられる。
また、従来の代表的な液状ゴムの製造においては、硬化反応をヒドロシリル化により行っているが、この方法を用いて得られた液状ゴムは、Si原子を含んでいる。このSi原子を含む骨格は、半導体製造プロセスにおいて用いられるフッ素系の活性種(フッ素ガスや、フッ素プラズマ、フッ素ラジカル)に対する耐性が低く、半導体製造プロセスにおいて、これらの活性種が発生する工程での使用には適していない。本発明の組成物を用いて得られた液状ゴムは、Si原子を含む骨格を利用することなく製造されるので、必要であればSi原子不含とすることが容易であり、この点でも有利である。
また、本発明は、上記の本発明の組成物を用いて製造された液状ゴムを提供する。
以上、本発明について詳述したが、本発明は、これらの化合物および用途に限定されない。
実施例1
Figure 2016065033
工程1:二官能性ベンズアルデヒド2の合成
4−ヒドロキシベンズアルデヒド1(18g、150mmol)、1,2−ビス−(2−クロロエトキシ)エタン(9.4g、50mmol)、炭酸カリウム(31g、230mmol)をジメチルホルムアミド(250mL)に加え、90℃で28h反応させた。ジクロロメタン(200mL)を加え、水で2回、ついで、炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。エバポレーターで濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製することにより、標題化合物を白色粉末として得た(15g、41mmol、82%)。
1H NMR (400 MHz, 298 K, CDCl3):δ 9.88 (s, 2H), 7.82-7.81 (d, J = 8.8 Hz, 4H), 7.02-7.00 (d, J = 8.8 Hz, 4H), 4.21-4.20 (t, J = 4.4 Hz 4H), 3.91-3.88 (t, J = 4.4 Hz, 4H) 3.76 (s, 4H) ppm
工程2:二官能性ニトロエテン3の合成
工程1で得られた二官能性ベンズアルデヒド2(5.4g、15mmol)、ニトロメタン(4.6g、75mmol)および酢酸アンモニウム(1.5g、23mmol)を酢酸(15mL)に加え、130℃で5時間還流した。ジクロロメタン(200mL)を加え、水で3回、ついで、炭酸水素ナトリウム水溶液で1回抽出し、硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。エバポレーターで濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製することにより、標題化合物を黄色粉末として得た(3.9g、8.7mmol、58%)。
1H NMR (400 MHz, 298 K, CDCl3):δ 7.98-7.94 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.55-7.52 (d, J = 9.0 Hz, 2H),, 7.49-7.47 (d, J = 8.8 Hz, 4H), 7.02-7.00 (d, J = 8.8 Hz, 4H), 4.21-4.20 (t, J = 4.4 Hz 4H), 3.91-3.88 (t, J = 4.4 Hz, 4H) 3.76 (s, 4H) ppm
工程3:二官能性t−Buニトリルオキシド4の合成
Figure 2016065033
二官能性ニトロスチレン3(2.4g、5.4mmol)をテトラヒドロフラン(250mL)に加え、Ar雰囲気下で0℃に冷却した。tert−ブチルマグネシウムクロリド(6.5mL、13mmol)を加え、30分間撹拌した。−10℃まで冷却後、濃硫酸(>95%、5.7mL、100mmol)を加え、30分撹拌した。水で3回抽出し、ついで、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=3:1)で精製することにより、標題化合物を黄色のオイルとして得た(1.2g、2.3mmol、43%)。H−NMRスペクトルおよびIRスペクトルを、それぞれ、図1および2に示す。
1H NMR (400 MHz, 298 K, CDCl3): δ 7.11-7.13 (d, J = 8.7 Hz, 4H), 6.87-6.89 (d, J = 8.7 Hz, 4H), 4.13-4.12 (t, J = 4.0 Hz 4H), 3.88-3.87 (t, J = 4.0 Hz, 4H), 3.76 (s, 4H), 3.68 (s, 2H), 1.00 (s, 18H) ppm
IR (NaCl): n・ 2961, 2294, 1609, 1512, 1367, 1309, 1248, 1181, 1127, 1062, 832, 756, 487, 471, 457 cm-1
FAB-HR MS (m/z): C30H40N2O6Na+として計算値:[M+Na]+ 547.2784;実測値:547.2781
実施例2
Figure 2016065033
二官能性フェニルニトリルオキシド6の合成
二官能性ニトロエテン5(0.44g、1.1mmol)を無水テトラヒドロフラン(10mL)に加え、Ar雰囲気下で−40℃まで冷却した。フェニルリチウム(2.4mL、4.3mmol)をゆっくりと加え、2時間撹拌した。−10℃まで冷却後、濃硫酸(>95%、1.0mL、20mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。水で3回抽出して、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去して、標題化合物を淡黄色のオイルとして得た。
実施例3
Figure 2016065033
二官能性t−ブチルニトリルオキシド7の合成
二官能性ニトロエテン5(0.21g、0.50mmol)を無水テトラヒドロフラン(5mL)に加え、Ar雰囲気下で0℃まで冷却した。tert−ブチルマグネシウムクロリド(1.0mL、2.0mmol)を加え、1時間撹拌した。−10℃まで冷却後、濃硫酸(>95%、1.1mL、22mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。水で3回抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、標題化合物を茶色の結晶として得た。
実施例4
Figure 2016065033
二官能性ポリメタクリル酸メチルニトリルオキシド8の合成
1,1−ジフェニルエテン(1.4g、7.9mmol)を無水テトラヒドロフラン(100mL)に加え、Ar雰囲気下で−78℃まで冷却した。sec−ブチルリチウム(7.8mL、8.2mmol)を加え、20分間撹拌した。メタクリル酸メチル(8.5mL、80mmol)を加え、2時間撹拌し、ポリメタクリル酸メチルアニオン溶液を得た。二官能性ニトロスチレン(1.6g、4.0mmol)を無水テトラヒドロフラン(200mL)に加え、アルゴン雰囲気下で−78℃まで冷却した。ポリメタクリル酸メチルアニオン溶液100mLを加え、24h攪拌した。−10℃まで冷却後、濃硫酸(>95%、4.3mL、80mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。水で3回抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、ヘキサン、メタノールを用いて再沈殿を行って、標題化合物を黄色の結晶として得た。
実施例5
実施例1で合成した二官能性t−ブチルニトリルオキシド4(以下、単に「ニトリルオキシド7」という)と高分子との架橋反応
Figure 2016065033
(1)ポリアクリロニトリル(PAN)のN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中での架橋
PAN(0.054g)をDMF(1mL)に室温で溶解させ、ニトリルオキシド4(0.01g)を加え、40℃で2日間反応させた。反応後、DMFで繰り返し洗浄し、乾燥させて淡黄色ネットワークポリマー(0.050g、78%)を得た。このネットワークポリマーのクロロホルムに対する重量膨潤率は、2,100%であった。
(2)PANのDMF中での架橋
PAN(0.054g)をDMF(1mL)に室温で溶解させ、ニトリルオキシド4(0.01g)を加え、70℃で5時間反応させた。反応後、DMFで繰り返し洗浄し、乾燥させて淡黄色ネットワークポリマー(0.061g、95%)を得た。このネットワークポリマーのクロロホルムに対する重量膨潤率は、2,100%であった。
Figure 2016065033
(3)天然ゴム(NR)のクロロホルム中での架橋
NR(0.069g)をクロロホルム(1mL)に室温で溶解させ、ニトリルオキシド4(0.011g)を加え、70℃で3時間反応させた。反応後、クロロホルムで繰り返し洗浄し、乾燥させて無色のネットワークポリマー(0.057g、72%)を得た。このネットワークポリマーのクロロホルムに対する重量膨潤率は、2,700%であった。
(4)NRの固相での架橋
NR(0.068g)とニトリルオキシド4(0.010g)を、乳鉢上で、70℃で2時間加圧混合した。反応後、クロロホルムで繰り返し洗浄し、乾燥させて無色のネットワークポリマー(0.048g、61%)を得た。このネットワークポリマーのクロロホルムに対する重量膨潤率は、2,100%であった。
Figure 2016065033
(5)アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)のクロロホルム中での架橋
NBR(0.055g)をクロロホルム(1mL)に室温で溶解させ、ニトリルオキシド4(0.011g)を加え、70℃で2時間反応させた。反応後、クロロホルムで繰り返し洗浄し、乾燥させて無色のネットワークポリマー(0.042g、64%)を得た。このネットワークポリマーのクロロホルムに対する重量膨潤率は、2,200%であった。
(6)NBRの固相での架橋
NBR(0.054g)とニトリルオキシド4(0.010g)を、乳鉢上で、70℃で2時間加圧混合した。反応後、クロロホルムで繰り返し洗浄し、乾燥させて無色のネットワークポリマー(0.046g、71%)を得た。このネットワークポリマーのクロロホルムに対する重量膨潤率は、3,100%であった。
上記(1)〜(6)を下記表にまとめた。
Figure 2016065033
上記の結果から、本発明の化合物は、種々の高分子(PAN、NR、NBR)と反応することが確認された。また、(4)および(6)のように溶媒を用いない場合であっても、非常に良好に反応が進行することが確認された。また、原料である高分子はいずれもクロロホルムに溶解するが、反応後のネットワークポリマーは溶解せず、2,100〜3,100%のクロロホルムに対する重量膨潤率を示していることから、高分子がニトリルオキシドにより架橋されていることが確認された。
実施例6
天然ゴム(NR)の架橋によるフィルム作製
Figure 2016065033
(1):天然ゴム(1.0g)を、テフロンシャーレ(42mmφ)中で、クロロホルム(15mL)に溶解させ、ニトリルオキシド4(100mg;0.20mmol)をクロロホルム(1mL)に溶解した溶液を加え、撹拌した。撹拌子を取り除いたあとホットプレート上、大気中40℃で1日反応させた。生成したフィルムをクロロホルムで洗浄した後、大気中室温および真空中70℃で乾燥させ、淡黄色ネットワークポリマーフィルム(1)(1.0g;91%)を得た。
(2)〜(4):ニトリルオキシド4の量を、(2)85mg(0.17mmol)、(3)50mg(0.10mmol)および(4)20mg(0.04mmol)とした以外は、上記(1)と同様にして、ネットワークポリマーフィルム(2)〜(4)を得た。
上記試料(1)〜(4)のネットワークポリマーフィルムについて、アクリロトリルに対する重量膨潤率を測定した。また、修正フローリー−レーナー(Flory-Reighner)の式:
Figure 2016065033
[式中、νは、網目鎖濃度(mol/cm)であり、
Vは、膨潤溶媒の分子容(分子量/密度)(cm/mol)であり、
gは、膨潤前試験片中のゲルゴムの容積分率であり、
μは、試料ゴムと膨潤溶媒との相互作用定数であり、
は、膨潤ゲルゴム中のゴムの容積分率である。]
から単位体積当たりの架橋鎖の濃度(網目鎖濃度(架橋密度):ν)を算出した。さらに、高分子中の二重結合のうち反応が進行したものの割合(架橋度)を算出した。結果を下記表に示す。尚、架橋度は、下記の計算式により算出した。
(架橋度)=(架橋した二重結合の数)÷(仕込み天然ゴム中の全二重結合の数)
=(架橋鎖数)×2÷(仕込み天然ゴム中の全二重結合の数)
=v×(ゲルの体積)×2÷(仕込み天然ゴム中の全二重結合の数)
=v×(ゲルの全重量)÷(ゲルの密度)×2÷[(仕込み天然ゴム重量)÷(天然ゴムの繰り返し分子量)]
Figure 2016065033
上記(1)〜(4)のネットワークポリマーフィルム(幅:2mm、長さ:12mm、厚さ:250μm)について、引張試験を行い、応力−ひずみ曲線を得た。結果を、対照としてのニトリルオキシドと反応していない天然ゴムの結果と併せて図3に示す。
上記の結果から、ニトリルオキシド4とNRとを反応することにより得られたネットワークポリマーフィルムは、架橋されていることが確認された。上記の結果から、ニトリルオキシド4の仕込み量が増加するに従い、架橋密度および架橋度が増加しており、ニトリルオキシド4が定量的に反応することが確認された。このことは、引張試験において、仕込み量の増大に応じてひずみに対する強度が高くなっていることからも確認することができた。
実施例7
実施例2で合成した二官能性ニトリルオキシド6(199mg、白黄色固体)とトリアリルイソシアヌレート(264mg、無色透明液体)とを、十分に混合してペースト状の液体を得えた。このペースト状の液体を、粘弾性測定用のセル上に加え、粘弾性測定装置にセットした。次いで、セル内の温度を室温から120℃まで上昇させて保持し、30分間、粘度変化の様子を観察したところ、粘度の上昇が確認された。また、測定後のセル内は、黄色透明の固体(ゲル)状物質が存在しており、硬化反応が進行したことが確認された。なお、粘弾性測定装置は、株式会社ユー・ビー・エム製、Rheosol−G3000NTを使用した。
比較例
トリアリルイソシアヌレート(500mg、無色透明液体)を、粘弾性測定用のセル上に秤量し、粘弾性測定装置にセットした。次いで、セル内の温度を室温から120℃まで上昇させて保持し、30分間、粘度変化の様子を観察したが、粘度の上昇は確認されなかった。また、測定後のセル内は、測定前と外観の変わらない無色透明溶液が存在するのみであり、硬化反応は進行しなかったことが確認された。なお、粘弾性測定装置は、上記と同じ装置を使用した。
実施例8
三官能脂肪族ニトリルオキシドの合成
Figure 2016065033
工程1:トリイソプロピルシリル(TIPS)ベンゾフェノン6の合成
p−OHベンゾフェノン(15g、75mmol)、イミダゾール(10g、150mmol)、DMAP(1.8g、15mmol)を無水THF(150mL)に溶解させ、0℃でトリイソプロピルシリルクロリド(22g、110mmol)を加えた。室温に戻し、1日反応させた。溶媒を減圧留去し、ジクロロメタンを適量加えて水で3回分液をし、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製し、薄黄色オイル(25g、71mmol、94%)を得た。
7.78-7.75 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.78-7.76 (d, J = 8.8 Hz, 4H), 7.56-7.54 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 7.49-7.45 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 6.95-6.92 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 1.59-1.28 (m, 3H), 1.12-1.11 (d, J = 7.3 Hz, 18H) ppm
工程2:TIPSジフェニルニトロエテン8の合成
TIPSベンゾフェノン6(7.3g、21mmol)をTHF(20mL)に加え、Ar雰囲気下で0℃まで冷却した。リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(19mL、25mmol)を加え、室温で1日撹拌した。溶媒を減圧留去し、酢酸エチルを適量加え、水で2回、飽和食塩水で1回分液をした。溶媒を減圧留去し、そこへニトロメタン50mLを加えて115℃で1日還流した。溶媒を留去し、茶色いオイルを得た。この化合物はこのまま次の反応へ用いた。
工程3:TIPSジフェニルニトリルオキシド9の合成
工程2で得たオイル(7。0g)を無水THF(200mL)に加え、Ar雰囲気下で−78℃まで冷却した。n−BuLi(10mL、26mmol)を加え、30分間撹拌した。濃硫酸(>95%、9.5mL、175mmol)を加え、0℃で30分間撹拌した。水で4回分液し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=1:2)で精製し、黄色オイル(4.6g、11mmol、50%)を得た。
1H NMR (400 MHz, 298 K, CDCl3): δ 7.34-7.25 (m, J = 8.7 Hz, 5H), 7.13-7.11 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.83-6.81 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 2.34-2.30 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 1.34-1.22 (m, 7H), 1.12-1.09 (d, J = 7.3 Hz, 18H) ,0.89-0.86 (t, J = 7.1 Hz, 3H) ppm
工程4:OHジフェニルニトリルオキシド5の合成
TIPSジフェニルニトリルオキシド9(2.0g、4.5mmol)をTHF(50mL)に溶解させ、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)(1.7mL、6.7mmol)を加えて10分間撹拌した。ジクロロメタンを適量加え、水で3回、飽和食塩水で1回分液をし、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:ヘキサン=6:1)で精製し、黄色オイル(1.2g、4.2mmol、94%)を得た。H−NMRスペクトルおよびIRスペクトルを、それぞれ、図4および5に示す。
1H NMR (400 MHz, 298 K, CDCl3): δ 7.37-7.28 (m, J = 8.7 Hz, 5H), 7.18-7.16 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 6.82-6.80 (d, J = 8.7 Hz, 2H), 5.16 (s, 1H), 2.38-2.34 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 1.37 (m, 4H), 0.93-0.89 (t, J = 6.8 Hz, 3H) ppm
工程5:三官能性ニトリルオキシド11の合成
Figure 2016065033
OHジフェニルニトリルオキシド5(0.43g、1.5mmol)をクロロホルム(10mL)に溶解させ、トリエチルアミン(0.43mL、3.1mmol)を加えた。溶液を0℃にし、トリメシン酸クロリド(0.12g、0.45mmol)をクロロホルム(5mL)に溶解させた溶液を加えた。室温に戻し、2時間撹拌した。水で2回、飽和食塩水で1回分液をし、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、薄黄色固体(0.43g、4.3mmol、96%)を得た。H−NMRスペクトルおよびIRスペクトルを、それぞれ、図6および7に示す。
1H NMR (400 MHz, 298 K, CDCl3): δ 9.20 (s, 3H), 7.40-7.25 (m, 27H), 2.40 (t, J = 6.9 Hz, 6H), 1.38 (m, 12H), 0.90-0.89 (t, J = 6.9 Hz, 9H) ppm
本発明の化合物は、多種多様な用途、例えば表面処理剤、フィラーの改質剤、繊維処理剤、相溶化剤、架橋剤または接着剤の改質剤として、あるいは液状ゴムの原料として好適に用いられる。

Claims (18)

  1. 式(I):
    Figure 2016065033
    [式中:
    およびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭化水素基を表し;
    Aは、s価の有機基を表し;
    sは、2〜10の整数である。]
    で表される化合物。
  2. sが2または3である、請求項1に記載の化合物。
  3. 式(II):
    Figure 2016065033
    [式中:
    およびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭化水素基を表し:
    は、二価の炭化水素基を表し:
    ただし、R、RおよびRは、それぞれ、炭素原子によりニトリルオキシドが結合する炭素原子に結合している。]
    で表される請求項1または2に記載の化合物。
  4. およびRが、それぞれ独立して、水素原子、または1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基もしくは(ポリ)アルキルエーテル基である、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
  5. およびRの少なくとも一方が、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、アリール基、tert−アルキル基、sec−アルキル基または(ポリ)アルキルエーテル基である、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
  6. が、式:
    −R4c−R4b−R4a−R4b−R4c
    (式中:
    4aは、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい、アルキレン基、または2価の(ポリ)アルキルエーテル基を表し;
    4bは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、または1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基を表し;
    4cは、それぞれ独立して、単結合、または1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい、アルキレン基、シクロアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。)
    で表される基である、請求項3〜5のいずれかに記載の化合物。
  7. 4bが、−OCO−または−COO−である、請求項6に記載の化合物。
  8. が、式:
    −R4c−O−R4a−O−R4c
    (式中:
    4aは、1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、アルキレン基もしくは2価の(ポリ)アルキルエーテル基を表し;
    4cは、アリーレン基を表す。)
    で表される基である、請求項3〜6のいずれかに記載の化合物。
  9. 式(III):
    Figure 2016065033
    [式中:
    は3価の有機基を表し;
    およびRは、それぞれ独立して、水素原子または炭化水素基を表し;
    Linkは、単結合または2価の基を表し;
    ただし、R、RおよびLinkは、それぞれ、炭素原子によりニトリルオキシドが結合する炭素原子に結合している。]
    で表される請求項1または2に記載の化合物。
  10. Linkが、−R4a−、−R4b−または−R4c−:
    (ここに、R4aは、1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい、アルキレン基、または2価の(ポリ)アルキルエーテル基を表し;
    4bは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、または1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキレン基を表し;
    4cは、それぞれ独立して、単結合、または1個またはそれ以上の置換基を有していてもよい、アルキレン基、シクロアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。)
    あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものである、請求項9に記載の化合物。
  11. Linkが、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルキレンオキシ基、アルキレンジオキシ基、カルボニル基、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−NR−、−C(O)NR−、−NR−CO−NR−(式中、Rは、水素原子あるいは1個またはそれ以上の置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基である)、アリーレン基、アリーレンオキシ基、アリーレンジオキシ基、あるいはこれらの2種もしくはそれ以上を連結させたものである、請求項9または10に記載の化合物。
  12. は、好ましくは、C(R)(Rは、水素原子、またはフッ素で置換されていてもよいアルキルである)、窒素原子、置換されていてもよいケイ素原子、環原子としてヘテロ原子を含んでいてもよい3価の芳香環である、請求項9〜11のいずれかに記載の化合物。
  13. 1種またはそれ以上の請求項1〜12のいずれかに記載の化合物を含む、組成物。
  14. ニトリルオキシド基と反応性を有する基を含む材料に適用するために使用される、1種またはそれ以上の請求項1〜12のいずれかに記載の化合物を含む、組成物。
  15. 架橋剤である、請求項13または14に記載の組成物。
  16. 液状ゴムの原料である、請求項13または14に記載の組成物。
  17. 請求項15に記載の架橋剤により処理された2種またはそれ以上の化合物の複合体。
  18. 請求項16に記載の組成物を用いて調製された液状ゴム。
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