JP4687677B2 - 含フッ素重合体の製造方法、含フッ素重合体水性分散液、2−アシルオキシカルボン酸誘導体及び界面活性剤 - Google Patents

含フッ素重合体の製造方法、含フッ素重合体水性分散液、2−アシルオキシカルボン酸誘導体及び界面活性剤 Download PDF

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Description

本発明は、含フッ素重合体の製造方法、含フッ素重合体水性分散液、2−アシルオキシカルボン酸誘導体及び界面活性剤に関する。
含フッ素重合体の製造方法として、水性媒体中に、直鎖又は部分的に分岐鎖を有する炭素数7〜10のフッ素置換カルボン酸を、界面活性剤として用いることにより、テトラフルオロエチレン[TFE]を重合する方法が多くの文献に記載されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照。)。
含フッ素重合体の製造方法として、フッ素化されたポリオキシアルキレン基を有するカルボン酸を界面活性剤として用いる方法も開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
しかしながら、これらの界面活性剤は、熱的、化学的に非常に安定であり、重合の際には、連鎖移動等の副反応を抑制できる点で有用であるが、重合により得られた樹脂から除去するためには、洗浄、加熱等の条件が狭く限定される問題があった。
含フッ素重合体の製造方法として、スルホコハク酸エステルを界面活性剤として使用する方法が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。しかしながら、スルホコハク酸エステルは、加熱等により樹脂中から除去することが困難であり、樹脂中に残存した場合には、加熱等の加工処理後に着色している等の問題があった。
ところで、フルオロ2−ヒドロキシカルボン酸のエステルとしては、ヘキサフルオロプロペンの製造時に副生するオクタフルオロイソブテンを出発物質として得られるヘプタフルオロイソブテニルアルキルエーテル[(CFC=CFOR、Rは炭化水素基]をKMnOで酸化して得られるヒドロキシカルボン酸エステル[(CFC(OH)COOR]が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、KMnOにより副生するMnOの処理に問題がある。
KMnOの代わりに(CFC=CFORをHで酸化するH法が知られている(例えば、特許文献6参照。)。しかしながら、H法では、収率が低い等の問題がある。
フルオロ2−ヒドロキシカルボン酸のエステルとしては、更に、[CF(CFk1][CF(CFk2]C=CF(OR)(式中、Rは、炭化水素基;k1、k2は、0〜10を表す。)で表される化合物を、ルテニウム化合物又はオスミウム化合物の存在下に酸化して得られる[CF(CFk1][CF(CFk2]C(OH)COORも知られている(例えば、特許文献7参照。)。
このフルオロ2−ヒドロキシカルボン酸エステルからフルオロ2−ヒドロキシカルボン酸が得られることも知られている(例えば、特許文献7参照。)。
しかしながら、このフルオロ2−ヒドロキシカルボン酸のOH基にアシル基を導入したエステル化合物は知られていない。
特開昭61−207413号公報 特開昭61−228008号公報 特開平10−212261号公報 米国特許6429258号明細書 特開2003−119204号公報 特開昭61−286348号公報(請求項1) 特開2002−234860号公報(請求項1) Utebaev U. et al.; Izv. Akad. Nauk SSSR Ser. Khim.,2(1974)387)
本発明の目的は、上記現状に鑑み、重合時の安定性を損なうことなく、凝集等の加工処理後における含フッ素重合体粒子中の残存量が極めて少ない界面活性剤を用いて水性媒体中で含フッ素重合体を製造する方法、及び、含フッ素重合体の分散安定性に優れ、凝集等の加工処理後における含フッ素重合体粒子中の残存量が極めて少ない界面活性剤を用いた含フッ素重合体水性分散液を提供することにある。
本発明の目的は、また、2−アシルオキシカルボン酸誘導体、及び、上記2−アシルオキシカルボン酸誘導体からなる界面活性剤を提供することにある。
本発明は、水性媒体中で、界面活性剤として、カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体を使用して含フッ素重合体を重合する含フッ素重合体の製造方法であって、上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、フッ素原子により置換されていてもよいカルボン酸エステル結合と、−COOM(Mは、H、NH、Li、Na又はKを表す。)とを有するものであることを特徴とする含フッ素重合体の製造方法である。
本発明は、含フッ素重合体からなる粒子と、カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体と、水性媒体とからなる含フッ素重合体水性分散液であって、上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、フッ素原子により置換されていてもよいカルボン酸エステル結合と、−COOM(Mは、H、NH、Li、Na又はKを表す。)とを有するものであることを特徴とする含フッ素重合体水性分散液である。
本発明は、下記一般式(1)
Figure 0004687677
(式中、Rf及びRfは、同一又は異なって、H、F、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、若しくは、炭素数1〜20のエーテル酸素含有フルオロアルキル基を表し、Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、又は、炭素数1〜20のエーテル酸素含有フルオロアルキル基を表し、Mは、H、NH、Li、Na又はKを表し、a及びbは、0〜2の整数を表し、dは、1〜3の整数を表す。但し、a、b及びdは、a+b+d=3を満たす。Rf、Rf及びRfは、同一であってもよいし異なっていてもよい。)で表されることを特徴とする2−アシルオキシカルボン酸誘導体である。
本発明は、上記2−アシルオキシカルボン酸誘導体からなることを特徴とする界面活性剤である。
本発明は、下記一般式(5)
Figure 0004687677
(式中、Rf及びRfは、同一又は異なって、H、F、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、若しくは、炭素数1〜20のエーテル酸素含有フルオロアルキル基を表し、Mは、H、NH、Li、Na又はKを表し、a及びbは、0〜2の整数を表し、dは、1〜3の整数を表す。但し、a、b及びdは、a+b+d=3を満たす。)で表される2−ヒドロキシカルボン酸誘導体と、下記一般式(6)
RfCOZ (6)
(Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、又は、炭素数1〜20のエーテル酸素含有フルオロアルキル基を表し、Zは、−OM又はYを表し、Mは、H、NH、Li、Na又はKを表し、Yは、F又はClを表す。)で表されるアルカノイル化合物とをエステル化させることより上記2−アシルオキシカルボン酸誘導体を製造することよりなる2−アシルオキシカルボン酸誘導体の製造方法である。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の含フッ素重合体の製造方法は、水性媒体中で、界面活性剤として、カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体を使用して含フッ素重合体を重合することよりなる。
上記「含フッ素重合体」は、炭素原子に結合しているフッ素原子を有する重合体である。本発明において、上記含フッ素重合体は、フッ素含有単量体の1種又は2種以上を重合することにより得られるものであるが、フッ素原子を有しない非フッ素系の単量体をも共重合させて得られるものであってもよい。上記「フッ素含有単量体」は、炭素原子に結合しているフッ素原子を少なくとも1個有する単量体である。上記含フッ素重合体については、後述する。
上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、カルボン酸エステル結合と−COOM(Mは、上記定義したものである)とを有するカルボン酸誘導体である。
本明細書において、「カルボン酸エステル結合」とは、(1)−COO−又は−OCO−と、(2)1個又は2個以上の水素原子がフッ素原子等の置換基により置換されていてもよく、また、主鎖中にエーテル酸素を有していてもよい炭化水素基とが結合してなる構造を意味する。上記カルボン酸エステル結合としては、例えば、R−COO−で表される構造、R−OCO−で表される構造(Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、上記置換基を有していてもよいエーテル酸素含有フルオロアルキル基を表す。)等が挙げられる。
上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、上記重合後に行う凝析等の後処理等により、容易にエステル加水分解を起こし、生成した加水分解物は、通常、揮発性を有し、加熱により除去することができる。
上記カルボン酸エステル結合は、RfCOO−(Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、又は、炭素数1〜20のエーテル酸素含有フルオロアルキル基を表す。)で表されるアシルオキシ基、又は、RfOCO−(Rfは、上記と同じ。)で表されるアルコキシカルボニル基であることが好ましい。
本明細書において、「フルオロアルキル基」とは、少なくとも1個のHがFに置換されているアルキル基を意味する。
本明細書において、「エーテル酸素含有フルオロアルキル基」とは、繰り返し単位として炭素数1〜3のアルキレンオキシ基を主鎖中に含むアルキル基であって、少なくとも1個のHがFに置換されているものを意味する。
上記エーテル酸素含有フルオロアルキル基としては、−(CFO)−、−(CHCFO)−、−(CFCFO)−、−(CF(CF)CFO)−、これらの組み合わせ、例えば、−(CFCFO)−(CF(CF)CFO)−(kは、同一又は異なって、それぞれエーテル酸素含有フルオロアルキル基の炭素数が1〜20となる整数である。)等が挙げられる。
本明細書において、上記「エーテル酸素含有フルオロアルキル基」は、上述のようにエーテル酸素を有しているものである点で、上述の「フルオロアルキル基」とは異なる。
上記Rfが上記フルオロアルキル基である場合、炭素数の好ましい下限は2、より好ましい下限は3であり、好ましい上限は9、より好ましい上限は4である。
上記Rfが上記エーテル酸素含有フルオロアルキル基である場合、炭素数の好ましい下限は2であり、好ましい上限は8、より好ましい上限は4である。
上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体における上記Mとしては、生成した含フッ素重合体から加熱処理により容易に除去し得る点で、NHが好ましく、乳化力や分散力の点で、Li、Na、Kが好ましい。
本発明の含フッ素重合体の製造方法におけるカルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体としては、
・下記一般式(1)
Figure 0004687677
(式中、Rf及びRfは、同一又は異なって、H、F、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、若しくは、炭素数1〜20のエーテル酸素含有フルオロアルキル基を表し、a及びbは、0〜2の整数を表し、dは、1〜3の整数を表す。但し、a、b及びdは、a+b+d=3を満たす。Rf及びMは、上記定義したものと同じである。Rf、Rf及びRfは、同一であってもよいし異なっていてもよい。)
で表される2−アシルオキシカルボン酸誘導体、
・下記一般式(2)
RfOCO−Rf−COOM (2)
(式中、Rfは、1個の置換基Rf及び/又は1個の二重結合を含むものであってもよい主鎖炭素数が1〜8であるアルキレン基を表し、Rfは、H、F、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、又は、炭素数1〜20のエーテル酸素含有フルオロアルキレン基を表す。Rf及びMは、上記定義したものと同じである。)
で表されるジカルボン酸ハーフエステル
等が好ましい。
以下、上記一般式(1)及び一般式(2)のカルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体について、詳細に説明する。
2−アシルオキシカルボン酸誘導体
上記一般式(1)におけるRf、Rf及びRfは、界面活性能を発揮するように炭素数、dの値等を決定すればよく、本発明の含フッ素重合体の製造方法において重合における乳化剤として用いる点で、更に、C−H結合の数を連鎖移動性を考慮して決定することが好ましく、上記界面活性能を発揮させたのち上記2−アシルオキシカルボン酸誘導体を残存させない用途に用いる点で、特に、上述の加水分解物の揮発性を損なうほどに各基の炭素数を多くしないことが重要である。
上記一般式(1)において、a及びbは、0〜2の整数を表し、dは、1〜3の整数を表す。但し、a、b及びdは、a+b+d=3を満たす。上記dは、調製容易さの点で、1〜2の整数が好ましく、1がより好ましい。
上記一般式(1)において、Rf及びRfは、同一又は異なって、H、F、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、若しくは、炭素数1〜20のエーテル酸素含有フルオロアルキル基を表す。
上記Rf及びRfにおいて、上記フルオロアルキル基の炭素数の好ましい上限は9、より好ましい上限は5、更に好ましい上限は3、特に好ましい上限は2である。
上記Rf及びRfにおいて、上記エーテル酸素含有フルオロアルキル基の炭素数の好ましい上限は8、より好ましい上限は5、更に好ましい上限は2である。
上記Rf及びRfは、同一又は異なって、一般式:
A(CF(CH
(式中、Aは、H又はFを表し、jは、1〜6の整数を表し、pは、0〜3の整数を表す。)であることが好ましい。
上記Aとしては、Fが好ましい。
上記jの好ましい上限は4、より好ましい上限は3、更に好ましい上限は2である。
上記pの好ましい上限は1であり、上記pは0であることがより好ましい。
上記Rf及びRfは、同一又は異なって、それぞれ、CF−、CFCF−、CFCFCF−、又は、CFCFCFCF−であることがより好ましい。
上記一般式(1)において、Rfは、上記定義したものと同じである。
本明細書において、上記「2−アシルオキシカルボン酸誘導体」における「アシル」は、上記一般式(1)から明らかであるように−CORfであり、上記Rfの定義として示したように、上記エーテル酸素含有フルオロアルキル基を有するものも含む概念である。
上記Rfにおいて、上記フルオロアルキル基の炭素数の好ましい下限は2、より好ましい下限は3であり、好ましい上限は9、より好ましい上限は4である。
上記Rfにおいて、上記エーテル酸素含有フルオロアルキル基の炭素数の好ましい下限は2であり、好ましい上限は8、より好ましい上限は4である。
上記Rfは、
A(CF(CH
(式中、Aは、上記定義したものと同じである。nは、1〜4の整数を表し、mは、0〜3の整数を表す。)、又は、
A(CF−O−[CFX−CF(CHO]CFX−
(式中、Xは、F又はCFを表し、qは、0〜3の整数を表し、rは、0〜2の整数を表し、tは、0〜3の整数を表す。Aは、上記定義したものと同じである。)であることが好ましい。
上記nの上限は3であることがより好ましく、上記qの上限は、2であることがより好ましい。
上記m、上記r及び上記tは、それぞれ0であることが好ましい。
上記Rfは、CF−、CFCF−、CFCFCF−、CFCFCFCF−、HCF−、HCFCF−、HCFCFCF−、HCFCFCFCF−、又は、HCFCFCFCFCH−であることが更に好ましい。
上記一般式(1)において、Rf、Rf及びRfは、同一であってもよいし異なっていてもよい。
上記一般式(1)において、上記dが2〜3の整数を表す場合、d個のRfは、同一であってもよいし異なっていてもよいし、aが2である場合、a個のRfは同一であってもよいし異なっていてもよいし、bが2である場合、b個のRfは同一であってもよいし異なっていてもよい。
上記一般式(1)において、Rf及びRfは、同一又は異なって、
A(CF
(式中、Aは、上記定義したものと同じ。uは、1〜3の整数を表す。)であり、かつ、Rfは、
A(CF(CH
(式中、Aは、上記定義したものと同じ。wは、2〜4の整数を表し、yは、0〜1の整数を表す。)であることが好ましい。
上記一般式(1)において、Mは、上記定義したものと同じである。上記Mとしては、界面活性剤として使用した後、加熱処理により容易に除去し得る点でNHが好ましい。
上記一般式(1)としては、
(CFC(OCOCFCFCFCF)COOM、
(CF)(CFCF)C(OCOCFCFCFCF)COOM
(CFCFC(OCOCFCFCFCF)COOM、
(CF)C(OCOCFCFCFCFCOOM、
(CFCF)C(OCOCFCFCFCFCOOM
(CF)C(OCOCFCFCFCOOM、
(CFCF)C(OCOCFCFCFCOOM
(CF)C(OCOCFCFCOOM、
(CFCF)C(OCOCFCFCOOM
(CF)C(OCOCFCF)(OCOCFCFCF)COOM、
(CF)C(OCOCFCF)(OCOCFCFCFCF)COOM、
(CF)C(OCOCFCFCF)(OCOCFCFCFCF)COOM、
(CFCF)C(OCOCFCF)(OCOCFCFCF)COOM、
(CFCF)C(OCOCFCF)(OCOCFCFCFCF)COOM、
(CFCF)C(OCOCFCFCF)(OCOCFCFCFCF)COOM
(Mは、上記定義したものと同じ。)等が、上記界面活性能及び加水分解物の揮発性の点でより好ましい。
上記2−アシルオキシカルボン酸誘導体の製造方法については、後述する。
ジカルボン酸ハーフエステル
上記一般式(2)において、上記Rfは、−C2f−、−C2g−2−又は−(CH−T−(CH−〔fは、1〜6の整数を表し、gは、2〜6の整数を表し、h及びiは、同一又は異なって、0〜3の整数を表し、Tは、−CRf=CH−、−CH=CRf−又は−CHRf−を表す。Rfは、上記定義したものと同じである。〕が好ましい。
上記一般式(2)で表されるジカルボン酸ハーフエステルとしては、下記一般式(3)
RfOCORfCOOM (3)
(式中、Rf及びMは、上記定義したものと同じである。Rfは、−C2f−又は−C2g−2−で表される炭素数1〜6の無置換のアルキレン基である。f及びgは、上記定義したものと同じである。)
で表されるジカルボン酸ハーフエステル(A)であってもよいし、下記一般式(4)
RfOCO(CH−T−(CHCOOM (4)
(式中、Tは、−CRf=CH−、−CH=CRf−又は−CHRf−を表す。Rf、M、h、i及びRfは、上記定義したものと同じである。)
で表されるジカルボン酸ハーフエステル(B)であってもよい。
上記一般式(3)と一般式(4)とから明らかであるように、上記ジカルボン酸ハーフエステル(A)は、上記一般式(2)におけるRfが、置換基を有しない無置換のアルキレン基であるもの、上記ジカルボン酸ハーフエステル(B)は、上記Rfが、1個の置換基Rf(Rfは、上記定義したものと同じである。)を有している置換アルキレン基又は置換アルケニレン基であるものである。
上記一般式(3)において、上記f及び上記gは、それぞれ、5以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。上記f及び上記gは、同一であってもよいし異なっていてもよい。
上記一般式(3)において、上記Rfの水素原子数が多くなると、重合速度の低下、高分子量が得られない等の問題が生じやすいので、上記f及びgは、上述した範囲であることが好ましい。
上記Rfとしては、−CH−、−CHCH−、−CHCHCHCH−、−CH=CH−、−CH−CH=CH−CH−が好ましく、−CH−、−CHCH−、−CH=CH−、−CH−CH=CH−CH−がより好ましい。
上記ジカルボン酸ハーフエステル(A)は、例えば、RfOM(Rfは、上記定義したものと同じ。Mは、H、NH、Li、Na又はKを表す。)と、HOOCRfCOOM(Rf及びMは、上記定義したものと同じ。)又はその酸無水物とを、公知の方法等を用いてエステル化することにより製造することができる。
上記一般式(4)において、上記Rfとしては、H、F、炭素数8以下のフルオロアルキル基、及び、炭素数8以下のエーテル酸素含有フルオロアルキレン基が好ましく、H、F、炭素数4以下のフルオロアルキル基、及び、炭素数4以下のエーテル酸素含有フルオロアルキレン基がより好ましい。
上記一般式(4)において、上記h及び上記iとしては、0又は1が好ましく、0であることがより好ましい。
上記ジカルボン酸ハーフエステル(B)は、下記一般式
Figure 0004687677
(式中、Rf、Rf及びMは、上記定義したものと同じである。h及びiは、同一又は異なって、0〜3の整数を表す。)
で表される。
上記ジカルボン酸ハーフエステル(B)は、例えば、MOOC(CH−T−(CHCOOM(Mは、H、NH、Li、Na又はKを表す。T、M、h及びiは、上記定義したものと同じである。)又はその酸無水物に、公知の方法等によりRfOH(Rfは、上記定義したものと同じである。)を作用させてハーフエステル化することにより製造することができる。
本発明の含フッ素重合体の製造方法において、上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、ウィルムヘルミー法により測定した25℃における0.1質量%水溶液の表面張力が30〜70Nm/mであるものが、界面活性能の点で好ましい。
上記表面張力のより好ましい下限は、40Nm/mであり、より好ましい上限は60Nm/mである。
上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、使用量の一部又は全部が本発明の含フッ素重合体の製造方法における重合により得られた含フッ素重合体とともに水性分散液中に残存し、実質的に加水分解を起こさない環境条件下に変化がなければ、所望により上記水性分散液を凝析して得られる湿潤粉末中にも混在することとなる。
上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、例えば、界面活性剤等として使用した後、回収し、繰り返し利用することも可能である。
上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、通常、加水分解により加水分解物を生成する。上記加水分解は、主に、本発明の含フッ素重合体の製造方法における重合後、凝集等の後処理において、例えば、酸又はアルカリの存在下に行わせることができ、所望により10〜250℃、好ましくは100〜200℃の温度において行わせてもよい。本発明において、上記「加水分解物」とは、加水分解により生成する2以上の分子、即ち、上述の−COOM(Mは、上記定義したものと同じである。)を有する化合物と、RfCOOH(Rfは、上記定義したものと同じである。)若しくはその塩、又は、RfOH(Rfは、上記定義したものと同じである。)若しくはそのアルコラート類とを意味する。上記RfCOOHの塩としては、例えば、RfCOOM(Rf及びMは、上記定義したものと同じである。)等が挙げられ、上記アルコラート類としては、例えば、RfOM(Rf及びMは、上記定義したものと同じである。)等が挙げられる。
上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、上記加水分解物が揮発性を有するものが好ましい。上記加水分解物は、揮発性を有するものであると、加熱により容易に除去することができる。
上記加熱としては、例えば、上記含フッ素重合体の水性分散液から調製したコーティング用組成物を基材に塗布した後の乾燥や焼成、上記含フッ素重合体の水性分散液を凝析して得た湿潤粉末の乾燥やペレット化、得られる乾燥粉末やペレットを用いた成形加工等における加熱が挙げられる。
上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、凝析、加熱等の通常の後処理を行った後、上記含フッ素重合体の水性分散液の10ppm以下、好ましくは1ppm以下の濃度に低減することができる。更に、凝析等の後処理の際、上記含フッ素重合体の水性分散液の液性を酸性又はアルカリ性にして、温度を上げて洗浄することにより、洗浄効率を高めることができる。
上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、このように、含フッ素重合体を重合する際の乳化剤として界面活性能を発揮するとともに、後処理により容易に加水分解して除去することができる。従って、本発明の含フッ素重合体の製造方法は、得られる含フッ素重合体と併存する上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体の残存量を極めて少なく抑えることを可能にしたものであり、含フッ素重合体からなる粉末、ペレット、成形体、塗膜等の加工時発泡抑制、物性向上、着色防止等を可能にし得るものである。
本発明の含フッ素重合体の製造方法において、上記加水分解物は、加熱により除去し易い点で、フッ素原子と結合している炭素原子の数が6以下であるものが好ましい。
上記フッ素原子と結合している炭素原子の数は、上記除去の点で、2以上であるものが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることが更に好ましい。
本発明の含フッ素重合体の製造方法は、界面活性剤として、上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体を少なくとも1種用いれば、含フッ素重合体を効率よく製造することが可能である。また、本発明の含フッ素重合体の製造方法において、界面活性剤として、上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体を2種以上同時に用いてもよいし、揮発性を有するもの又は含フッ素重合体からなる成形体等に残存してもよいものであれば、上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体以外のその他の界面活性能を有する化合物を同時に使用してもよい。
上記その他の界面活性能を有する化合物としては特に限定されず、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系又はベタイン系の界面活性剤の何れであってもよく、これらの界面活性剤は、ハイドロカーボン系のものであってよい。
本発明の含フッ素重合体の製造方法において、上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体と、所望により用いるその他の界面活性能を有する化合物に加え、各化合物を安定化するため添加剤を使用することができる。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、安定剤等の一般的な界面活性剤に通常用いられるものであってよい。
本発明の含フッ素重合体の製造方法において、重合は、重合反応器に、水性媒体、上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体、単量体及び必要に応じて他の添加剤を仕込み、反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に所定量の重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行う。重合反応開始後に、目的に応じて、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤及び上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体等を追加添加してもよい。
上記重合において、通常、重合温度は、5〜120℃であり、重合圧力は、0.05〜10MPaGである。重合温度、重合圧力は、使用する単量体の種類、目的とする重合体の分子量、反応速度によって適宜決定される。
上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、合計添加量で、水性媒体の0.0001〜15質量%の量を添加することが好ましく、より好ましい下限は0.001質量%であり、より好ましい上限は10質量%であり、更に好ましい上限は1質量%である。0.0001質量%未満であると、分散力が不充分となりやすく、15質量%を超えると、添加量に見合った効果が得られず、却って重合速度の低下や反応停止が起こる場合がある。上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体の添加量は、使用する単量体の種類、目的とする重合体の分子量等によって適宜決定される。
重合開始剤としては、上記重合温度範囲でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性及び/又は水溶性の重合開始剤を使用することができる。更に、還元剤等と組み合わせてレドックスとして重合を開始することもできる。上記重合開始剤の濃度は、単量体の種類、目的とする重合体の分子量、反応速度によって適宜決定される。
上記「水性媒体」は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。例えば、懸濁重合を行うとき、C318等のフッ素含有有機溶媒を用いることができる。
上記重合において、更に、目的に応じて、公知の連鎖移動剤、ラジカル捕捉剤を添加し、重合速度、分子量の調整を行うこともできる。
上記含フッ素重合体は、フッ素含有単量体を重合することにより得られるものであり、目的に応じて、フッ素非含有単量体をも共重合させることもできる。
上記フッ素含有単量体としては、フルオロオレフィン、好ましくは炭素原子2〜10個を有するフルオロオレフィン;環式のフッ素化された単量体;式CY =CYOR又はCY =CYOROR(Yは、H又はFであり、R及びRは、水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置換されている炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置換されている炭素数1〜8のアルキレン基である。)で表されるフッ素化アルキルビニルエーテル等が挙げられる。
上記フルオロオレフィンは、好ましくは、炭素原子2〜6個を有するものである。上記炭素原子2〜6個を有するフルオロオレフィンとしては、例えば、テトラフルオロエチレン[TFE]、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]、クロロトリフルオロエチレン[CTFE]、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン[VDF]、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン及びパーフルオロブチルエチレン等が挙げられる。上記環式のフッ素化された単量体としては、好ましくは、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール[PDD]、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン[PMD]等が挙げられる。
上記フッ素化アルキルビニルエーテルにおいて、上記R及びRは、好ましくは、炭素原子1〜4個を有するものであり、より好ましくは水素原子の全てがフッ素によって置換されているものであり、上記Rは、好ましくは、炭素原子2〜4個を有するものであり、より好ましくは、水素原子の全てがフッ素原子によって置換されているものである。
上記フッ素非含有単量体としては、上記フッ素含有単量体と反応性を有する炭化水素系単量体等が挙げられる。上記炭化水素系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のアルケン類;エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、モノクロル酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル、ウンデシレン酸ビニル、ヒドロキシ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピオイン酸ビニル、ヒドロキシ酪酸ビニル、ヒドロキシ吉草酸ビニル、ヒドロキシイソ酪酸ビニル、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類;エチルアリルエーテル、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、イソブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル等のアルキルアリルエーテル類;エチルアリルエステル、プロピルアリルエステル、ブチルアリルエステル、イソブチルアリルエステル、シクロヘキシルアリルエステル等のアルキルアリルエステル類等が挙げられる。
上記フッ素非含有単量体としては、また、官能基含有炭化水素系単量体であってもよい。上記官能基含有炭化水素系単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;イタコン酸、コハク酸、無水コハク酸、フマル酸、無水フマル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、パーフルオロブテン酸等のカルボキシル基を有するフッ素非含有単量体;グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル等のグリシジル基を有するフッ素非含有単量体;アミノアルキルビニルエーテル、アミノアルキルアリルエーテル等のアミノ基を有するフッ素非含有単量体;(メタ)アクリルアミド、メチロールアクリルアミド等のアミド基を有するフッ素非含有単量体等が挙げられる。
本発明の含フッ素重合体の製造方法により好適に製造される含フッ素重合体として、重合体における単量体のモル分率が最も多い単量体(以下、「最多単量体」)がTFEであるTFE重合体、最多単量体がVDFであるVDF重合体、及び、最多単量体がCTFEであるCTFE重合体等が挙げられる。
TFE重合体としては、好適には、TFE単独重合体であってもよいし、(1)TFE、(2)炭素原子2〜8個を有する1つ又は2つ以上のTFE以外のフッ素含有単量体、特にHFP若しくはCTFE、及び、(3)その他の単量体からなる共重合体であってもよい。上記(3)その他の単量体としては、例えば、炭素原子1〜5個、特に炭素原子1〜3個を有するアルキル基を持つフルオロ(アルキルビニルエーテル);フルオロジオキソール;パーフルオロアルキルエチレン;ω―ヒドロパーフルオロオレフィン等が挙げられる。
TFE重合体としては、また、TFEと、1つ又は2つ以上のフッ素非含有単量体との共重合体であってもよい。上記フッ素非含有単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン等のアルケン類;ビニルエステル類;ビニルエーテル類が挙げられる。TFE重合体としては、また、TFEと、炭素原子2〜8個を有する1つ又は2つ以上のフッ素含有単量体と、1つ又は2つ以上のフッ素非含有単量体との共重合体であってもよい。
VDF重合体としては、好適には、VDF単独重合体[PVDF]であってもよいし、(1)VDF、(2)炭素原子2〜8個を有する1つ又は2つ以上のVDF以外のフルオロオレフィン、特にTFE、HFP若しくはCTFE、及び、(3)炭素原子1〜5個、特に炭素原子1〜3個を有するアルキル基を持つパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる共重合体等であってもよい。
CTFE重合体としては、好適には、CTFE単独重合体であってもよいし、(1)CTFE、(2)炭素原子2〜8個を有する1つ又は2つ以上のCTFE以外のフルオロオレフィン、特にTFE若しくはHFP、及び、(3)炭素原子1〜5個、特に炭素原子1〜3個を有するアルキル基を持つパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)からなる共重合体であってもよい。
CTFE重合体としては、また、CTFEと、1つ又は2つ以上のフッ素非含有単量体との共重合体であってもよく、上記フッ素非含有単量体としては、エチレン、プロピレン等のアルケン類;ビニルエステル類;ビニルエーテル類等が挙げられる。
本発明の含フッ素重合体の製造方法により製造される含フッ素重合体は、ガラス状、可塑性又はエラストマー性であり得る。これらのものは非晶性又は部分的に結晶性であり、圧縮焼成加工、溶融加工又は非溶融加工に供することができる。
本発明の含フッ素重合体の製造方法では、例えば、(I)非溶融加工性樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン重合体[PTFE重合体]が、(II)溶融加工性樹脂として、エチレン/TFE共重合体[ETFE]、TFE/HFP共重合体[FEP]及びTFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体[PFA、MFA等]が、(III)エラストマー性共重合体として、TFE/プロピレン共重合体、TFE/プロピレン共重合体/第3モノマー共重合体(上記第3モノマーは、VDF、HFP、CTFE、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類等)、TFEとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類とからなる共重合体;HFP/エチレン共重合体、HFP/エチレン/TFE共重合体;PVDF;VDF/HFP共重合体、HFP/エチレン共重合体、VDF/TFE/HFP共重合体等の熱可塑性エラストマー;及び、特公昭61−49327号公報に記載の含フッ素セグメント化ポリマー等が好適に製造されうる。
上記パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)は、式:
Rf(OCFQCFk3(OCRCFCFk4(OCFk5OCF=CF
(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を表す。k3、k4及びk5は、同一又は異なっていてもよい0〜5の整数である。Q、Q及びRは、同一又は異なって、F若しくはCFである。)で表されるものである。
本発明の含フッ素重合体の製造方法は、含フッ素重合体を製造するものである。
上記含フッ素重合体は、通常、上記重合を行うことにより得られる水性分散液の10〜50質量%の濃度である。上記水性分散液中において、含フッ素重合体の濃度の好ましい下限は10質量%、より好ましい下限は15質量%、好ましい上限は40質量%、より好ましい上限は35質量%、更に好ましい上限は30質量%である。
上記重合を行うことにより得られる水性分散液は、濃縮するか又は分散安定化処理してディスパージョンとしてもよいし、凝析又は凝集に供して回収し乾燥して得られる粉末その他の固形物としてもよい。本発明の含フッ素重合体の製造方法は、含フッ素重合体を製造するものであるが、製造した含フッ素重合体は、上記水性分散液中に分散されている含フッ素重合体であってもよいし、上記ディスパージョン中に分散している含フッ素重合体であってもよいし、上記粉末その他の固形物としての含フッ素重合体であってもよい。
本発明の含フッ素重合体の製造方法により好適に製造される上述の(I)非溶融加工性樹脂、(II)溶融加工性樹脂及び(III)エラストマー性重合体は、以下の態様で製造することが好ましい。
(I)非溶融加工性樹脂
本発明の含フッ素重合体の製造方法において、PTFE重合体の重合は、通常、重合温度10〜100℃、重合圧力0.05〜5MPaGにて行われる。
上記重合は、攪拌機を備えた耐圧の反応容器に純水及び上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体を仕込み、脱酸素後、TFEを仕込み、所定の温度にし、重合開始剤を添加して反応を開始する。反応の進行とともに圧力が低下するので、初期圧力を維持するように、追加のTFEを連続的又は間欠的に追加供給する。所定量のTFEを供給した時点で、供給を停止し、反応容器内のTFEをパージし、温度を室温に戻して反応を終了する。
上記PTFE重合体の製造において、知られている各種変性モノマーを併用することもできる。本明細書において、ポリテトラフルオロエチレン重合体[PTFE重合体]は、TFE単独重合体のみならず、TFEと変性モノマーとの共重合体であって、非溶融加工性であるもの(以下、「変性PTFE」という。)をも含む概念である。
上記変性モノマーとしては、例えば、HFP、CTFE等のパーハロオレフィン;炭素原子1〜5個、特に炭素原子1〜3個を有するアルキル基を持つフルオロ(アルキルビニルエーテル);フルオロジオキソール等の環式のフッ素化された単量体;パーハロアルキルエチレン;ω―ヒドロパーハロオレフィン等が挙げられる。変性モノマーの供給は、目的や、TFEの供給に応じて、初期一括添加、又は、連続的若しくは間欠的に分割添加を行うことができる。
変性PTFE中の変性モノマー含有率は、通常、0.001〜2モル%の範囲である。
上記PTFE重合体の製造において、上述のカルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、上述した本発明の含フッ素重合体の製造方法における使用範囲で用いることができるが、通常、水性媒体の0.0001〜5質量%の量を添加する。上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体の濃度は、上記範囲であれば特に限定されないが、通常、重合開始時に臨界ミセル濃度(CMC)以下で添加される。添加量が多いとアスペクト比の大きい針状粒子が生成し、水性分散体がゲル状となり安定性が損なわれる。
上記PTFE重合体の製造において、重合開始剤としては、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム)や、ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物を、単独で又はこれらの混合物の形で使用することができる。また、亜硫酸ナトリウム等の還元剤と共用し、レドックス系にして用いてもよい。更に、重合中に、ヒドロキノン、カテコール等のラジカル捕捉剤を添加したり、亜硫酸アンモニウム等のパーオキサイドの分解剤を添加し、系内のラジカル濃度を調整することもできる。
上記PTFE重合体の製造において、連鎖移動剤としては、公知のものが使用できるが、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の飽和炭化水素、クロロメタン、ジクロロメタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、水素等が挙げられるが、常温常圧で気体状態のものが好ましい。
上記連鎖移動剤の使用量は、通常、供給されるTFE全量に対して、1〜1000ppmであり、好ましくは1〜500ppmである。
上記PTFE重合体の製造において、更に、反応系の分散安定剤として、実質的に反応に不活性であって、上記反応条件で液状となる炭素数が12以上の飽和炭化水素を、水性媒体100質量部に対して2〜10質量部で使用することもできる。また、反応中のpHを調整するための緩衝剤として、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等を添加してもよい。
上記PTFE重合体の重合が終了した時点で、固形分濃度が10〜50質量%、平均粒子径が0.05〜5000μm、特にカルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体を使用することによって0.3μm以下の微小粒子径のPTFE重合体からなる粒子を有する水性分散液を得ることができる。上記重合終了時のPTFE重合体は、数平均分子量1,000〜10,000,000のものである。
上記PTFE重合体の水性分散液は、凝析と乾燥とを経てファインパウダーとして各種用途に使用することができる。
上記PTFE重合体の水性分散液に対して凝析を行う場合、通常、ポリマーラテックス等の乳化重合により得た水性分散液を、水を用いて10〜20質量%のポリマー濃度になるように希釈し、場合によっては、pHを中性又はアルカリ性に調整した後、撹拌機付きの容器中で反応中の撹拌よりも激しく撹拌して行う。上記凝析は、メタノール、アセトン等の水溶性有機化合物、硝酸カリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸等を凝析剤として添加しながら撹拌を行ってもよい。上記凝析は、また、インラインミキサー等を使用して連続的に行ってもよい。
上記凝析前や凝析中に、着色のための顔料や機械的性質を改良するための各種充填剤を添加すれば、顔料や充填剤が均一に混合した顔料入り又は充填剤入りのPTFE重合体ファインパウダーを得ることができる。
上記PTFE重合体の水性分散液を凝析して得られた湿潤粉末の乾燥は、通常、上記湿潤粉末をあまり流動させない状態、好ましくは静置の状態を保ちながら、真空、高周波、熱風等の手段を用いて行う。粉末同士の、特に高温での摩擦は、一般にファインパウダー型のPTFE重合体に好ましくない影響を与える。これは、この種のPTFE重合体からなる粒子が小さな剪断力によっても簡単にフィブリル化して、元の安定な粒子構造の状態を失う性質を持っているからである。
上記乾燥は、10〜250℃、好ましくは100〜200℃の乾燥温度で行う。
上記重合後に行う後処理において、上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、通常、加水分解されて、加水分解物を生成する。
得られるPTFE重合体ファインパウダーは、成形用として好ましく、好適な用途としては、航空機及び自動車等の油圧系、燃料系のチューブ等が挙げられ、薬液、蒸気等のフレキシブルホース、電線被覆用途等が挙げられる。
上記重合により得られたPTFE重合体の水性分散液は、また、ノニオン性界面活性剤を加えることにより、安定化して更に濃縮し、目的に応じ、有機又は無機の充填剤を加えた組成物として各種用途に使用することも好ましい。上記組成物は、金属又はセラッミクスからなる基材上に被覆することにより、非粘着性と低摩擦係数を有し、光沢や平滑性、耐摩耗性、耐候性及び耐熱性に優れた塗膜表面とすることができ、ロールや調理器具等の塗装、ガラスクロスの含浸加工等に適している。
(II)溶融加工性樹脂
(1)本発明の含フッ素重合体の製造方法において、FEPの重合は、通常、重合温度60〜100℃、重合圧力0.7〜4.5MPaGにて行うことが好ましい。
FEPの好ましい単量体組成(質量%)は、TFE:HFP=(60〜95):(5〜40)、より好ましくは(85〜90):(10〜15)である。上記FEPとしては、また、更に第3成分としてパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類を用い、全単量体の0.5〜2質量%である範囲内で変性させたものであってもよい。
上記FEPの重合において、上述のカルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、本発明の含フッ素重合体の製造方法における使用範囲で用いることができるが、通常、水性媒体の0.0001〜5質量%の量を添加する。
上記FEPの重合において、連鎖移動剤としては、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等を使用することが好ましく、pH緩衝剤としては、炭酸アンモニウム、燐酸水素二ナトリウム等を使用することが好ましい。
(2)本発明の含フッ素重合体の製造方法において、PFA、MFA等のTFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体の重合は、通常、重合温度60〜100℃、重合圧力0.7〜2.5MPaGで行うことが好ましい。
TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体の好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)=(95〜99.7):(0.3〜5)、より好ましくは(98〜99.5):(0.5〜2)である。上記パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、式:CF=CFORf(式中、Rfは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基)で表されるものを使用することが好ましい。
上記TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体の重合において、上述のカルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、本発明の含フッ素重合体の製造方法における使用範囲で用いることができるが、通常、水性媒体の0.0001〜2質量%の量で添加する。
上記TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体の重合において、連鎖移動剤としてシクロヘキサン、メタノール、エタノール、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル、メタン、エタン等を使用することが好ましく、pH緩衝剤として、炭酸アンモニウム、燐酸水素二ナトリウム等を使用することが好ましい。
(3)本発明の含フッ素重合体の製造方法において、ETFEの重合は、通常、重合温度20〜100℃、重合圧力0.5〜0.8MPaGで行うことが好ましい。
ETFEの好ましい単量体組成(モル%)は、TFE:エチレン=(50〜99):(50〜1)である。上記ETFEとしては、また、更に第3モノマーを用い、全単量体の0〜20質量%である範囲内で変性させたものであってもよい。好ましくは、TFE:エチレン:第3モノマー=(70〜98):(30〜2):(4〜10)である。上記第3モノマーとしては、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロブチルエチレン、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(CH=CFCFCFCFH)、2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロペン((CFC=CH)が好ましい。
上記ETFEの重合において、上述のカルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、本発明の含フッ素重合体の製造方法における使用範囲で用いることができるが、通常、水性媒体の0.0001〜2質量%の量で添加する。
上記ETFEの重合において、連鎖移動剤として、シクロヘキサン、メタノール、エタノール、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等を使用することが好ましい。
(III)エラストマー性重合体
本発明の含フッ素重合体の製造方法において、エラストマー性重合体の重合は、攪拌機を備えた耐圧の反応容器に純水及び上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体を仕込み、脱酸素後、モノマーを仕込み、所定の温度にし、重合開始剤を添加して、反応を開始する。反応の進行とともに圧力が低下するので、初期圧力を維持するように、追加のモノマーを連続的又は間欠的に追加供給する。所定量のモノマーを供給した時点で、供給を停止し、反応容器内のモノマーをパージし、温度を室温に戻して反応を終了する。乳化重合する場合、ポリマーラテックスを連続的に反応容器より取り出すことが好ましい。
特に、熱可塑性エラストマーを製造する場合、WO00/01741号パンフレットに開示されているように、一旦含フッ素重合体微粒子を高いカルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体濃度で合成してから希釈して更に重合を行うことで、通常の重合に比べて、最終的な重合速度を速くできる方法を使用することも可能である。
上記エラストマー性重合体の重合は、目的とするポリマーの物性、重合速度制御の観点から適宜条件を選択するが、重合温度は通常−20〜200℃、好ましくは5〜150℃、重合圧力は通常0.5〜10MPaG、好ましくは1〜7MPaGにて行われる。また、重合媒体中のpHは、公知の方法等により、後述するpH調整剤等を用いて、通常2.5〜9に維持することが好ましい。
上記エラストマー性重合体の重合に用いる単量体としては、フッ化ビニリデンの他に、炭素原子と少なくとも同数のフッ素原子を有しフッ化ビニリデンと共重合し得る含フッ素エチレン性不飽和単量体が挙げられる。上記含フッ素エチレン性不飽和単量体としては、トリフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、へキサフルオロブテン、オクタフルオロブテンが挙げられる。なかでも、へキサフルオロプロペンは、それが重合体の結晶成長を遮断した場合に得られるエラストマーの特性のために特に好適である。上記含フッ素エチレン性不飽和単量体としては、また、トリフルオロエチレン、TFE及びCTFE等が挙げられるし、1種若しくは2種以上の塩素及び/又は臭素置換基をもった含フッ素単量体を用いることもできる。パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、例えばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)も用いることができる。TFE及びHFPは、エラストマー性重合体を製造するのに好ましい。
エラストマー性重合体の好ましい単量体組成(質量%)は、フッ化ビニリデン:HFP:TFE=(20〜70):(20〜60):(0〜40)である。この組成のエラストマー性重合体は、良好なエラストマー特性、耐薬品性、及び、熱的安定性を示す。
上記エラストマー性重合体の重合において、上述のカルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、本発明の含フッ素重合体の製造方法における使用範囲で用いることができるが、通常、水性媒体に対して0.0001〜5質量%の量で添加する。
上記エラストマー性重合体の重合において、重合開始剤としては、公知の無機ラジカル重合開始剤を使用することができる。上記無機ラジカル重合開始剤としては、従来公知の水溶性無機過酸化物、例えば、ナトリウム、カリウム及びアンモニウムの過硫酸塩、過リン酸塩、過硼酸塩、過炭素塩又は過マンガン酸塩が特に有用である。上記ラジカル重合開始剤は、更に、還元剤、例えば、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩、ハイポ亜硫酸塩、チオ硫酸塩、亜リン酸塩若しくはハイポ亜リン酸塩により、又は、容易に酸化される金属化合物、例えば第一鉄塩、第一銅塩若しくは銀塩により、更に活性化することができる。好適な無機ラジカル重合開始剤は、過硫酸アンモニウムであり、過硫酸アンモニウムと重亜硫酸ナトリウムと共にレドックス系において使用することが、より好ましい。
上記重合開始剤の添加濃度は、目的とするポリマーの分子量や、重合反応速度によって適宜決定されるが、モノマー全量の0.0001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%の量に設定する。
上記エラストマー性重合体の重合において、連鎖移動剤としては、公知のものを使用することができるが、PVDFの重合では、炭化水素、エステル、エーテル、アルコール、ケトン、塩素化合物、カーボネート等を用いることができ、熱可塑性エラストマーでは、炭化水素、エステル、エーテル、アルコール、塩素化合物、ヨウ素化合物等を用いることができる。なかでも、PVDFの重合では、アセトン、イソプロピルアルコールが好ましく、熱可塑性エラストマーの重合では、イソペンタン、マロン酸ジエチル及び酢酸エチルは、反応速度が低下しにくいという観点から好ましく、I(CFI、I(CFI、ICHI等のジヨウ素化合物は、ポリマー末端のヨウ素化が可能で、反応性ポリマーとして使用できる観点から好ましい。
上記連鎖移動剤の使用量は、供給されるモノマー全量に対して、通常0.5×10−3〜5×10−3モル%、好ましくは1.0×10−3〜3.5×10−3モル%である。
上記エラストマー性重合体の重合において、PVDFの重合では、乳化安定剤としてパラフィンワックス等を好ましく用いることができ、熱可塑性エラストマーの重合では、pH調整剤として、リン酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を好ましく用いることができる。
本発明の含フッ素重合体の製造方法によって得られるエラストマー性重合体は、重合が終了した時点で、固形分濃度が10〜40質量%、平均粒子径が0.03〜1μm、好ましくは0.05〜0.5μm、数平均分子量が1,000〜2,000,000のものである。
本発明の含フッ素重合体の製造方法によって得られるエラストマー性重合体は、必要に応じて、炭化水素系界面活性剤等の分散安定剤の添加、濃縮等をすることにより、ゴム成形加工に適したディスパージョンにすることができる。上記ディスパージョンは、pH調節、凝固、加熱等を行い処理される。各処理は次のように行われる。
上記pH調節は、硝酸、硫酸、塩酸若しくはリン酸等の鉱酸、及び/又は、炭素数5以下でpK=4.2以下のカルボン酸等を加え、pHを2以下とすることからなる。
上記凝固は、アルカリ土類金属塩を添加することにより行われる。上記アルカリ土類金属塩としては、カルシウム又はマグネシウムの硝酸塩、塩素酸塩及び酢酸塩が挙げられる。
上記pH調節及び上記凝固は、いずれを先に行ってもよいが、先にpH調節を行うことが好ましい。
各操作の後、エラストマーと同容量の水で洗浄を行い、エラストマー内に存在する少量の緩衝液や塩等の不純物を除去し、乾燥を行う。乾燥は、通常、乾燥炉内で、高温下、空気を循環させながら、約70〜200℃で行われる。
上記各処理において、上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、通常、加水分解されて、加水分解物を生成する。
上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、重合により得られた含フッ素重合体を水性媒体に分散させるための分散剤としても、好適に用いることができる。
本発明の含フッ素重合体水性分散液は、含フッ素重合体からなる粒子と、カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体と、水性媒体とからなる含フッ素重合体水性分散液である。
本発明の含フッ素重合体水性分散液は、上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体の存在下、含フッ素重合体からなる粒子が水性媒体中に分散しているものである。
本発明の含フッ素重合体水性分散液において、上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、本発明の含フッ素重合体の製造方法において上述したカルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体と同じである。上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、加水分解により加水分解物を生成するものが好ましい。
上記加水分解物は、通常、揮発性を有し、加熱により除去することができるものである。上記加水分解物としては、例えば、本発明の含フッ素重合体の製造方法に関する記載で例示したものが挙げられる。上記加熱としては、例えば、本発明の含フッ素重合体水性分散液から調製したコーティング用組成物を基材に塗布した後の乾燥や焼成、上記含フッ素重合体水性分散液を凝析して得た湿潤粉末の乾燥やペレット化、得られる乾燥粉末やペレットを用いた成形加工等における加熱が挙げられる。上記加熱は、約10〜250℃の温度で行うことが好ましい。
本発明の含フッ素重合体水性分散液における上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体としては、上記一般式(1)で表される2−アシルオキシカルボン酸誘導体、上記一般式(2)で表されるジカルボン酸ハーフエステル等が、分散性が良く、上記含フッ素重合体水性分散液から得られる粉末、ペレット、成形体、塗膜等から除去しやすい点で好ましい。
上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、本発明の含フッ素重合体水性分散液の0.0001〜15質量%であることが好ましい。0.0001質量%未満であると、分散安定性に劣る場合があり、15質量%を超えると、存在量に見合った分散効果がなく実用的でない。上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体のより好ましい下限は0.001質量%であり、より好ましい上限は10質量%であり、更に好ましい上限は2質量%である。
本発明の含フッ素重合体水性分散液は、上述した重合を行うことにより得られる水性分散液、この水性分散液を濃縮するか又は分散安定化処理して得られるディスパージョン、及び、含フッ素重合体からなる粉末を、上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体の存在下に水性媒体に分散させたものの何れであってもよい。
上記濃縮の方法としては公知の方法が採用され、用途に応じて、含フッ素重合体濃度を40〜60質量%に濃縮することができる。濃縮によりディスパージョンの安定性が損なわれることがあるが、その場合は更に分散安定剤を添加してもよい。上記分散安定剤としては、上記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体や、その他の各種の界面活性剤を添加してもよい。上記各種の分散安定剤としては、例えば、ポリオキシアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤、特に、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えばローム&ハース社製のトライトンX−100(商品名))、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル(日本油脂(株)製のディスパノールTOC(商品名))、ポリオキシエチレンプロピルトリデシルエーテル等のポリオキシエチレンエーテル類が挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
上記分散安定剤の総量は、上記ディスパージョンの固形分に対し0.5〜20質量%の濃度である。0.5質量%未満であると、分散安定性に劣る場合があり、20質量%を超えると、存在量に見合った分散効果がなく実用的でない。上記分散安定剤のより好ましい下限は2質量%であり、より好ましい上限は12質量%である。
上記重合を行うことにより得られた水性分散液は、また、用途によっては濃縮せずに分散安定化処理して、ポットライフの長い含フッ素重合体水性分散液に調製することもできる。使用する分散安定剤は上記と同じものが挙げられる。
本発明の含フッ素重合体水性分散液の用途としては特に限定されず、水性分散液のまま適用するものとして、基材上に塗布し乾燥した後必要に応じて焼成することよりなる塗装;不織布、樹脂成形品等の多孔性支持体を含浸させ乾燥した後、好ましくは焼成することよりなる含浸;ガラス等の基材上に塗布し乾燥した後、必要に応じて水中に浸漬し、基材を剥離して薄膜を得ることよりなるキャスト製膜等が挙げられ、これら適用例としては、水性分散型塗料、電極用結着剤、電極用撥水剤等が挙げられる。
本発明の含フッ素重合体水性分散液は、公知の顔料、増粘剤、分散剤、消泡剤、凍結防止剤、成膜助剤等の配合剤を配合することにより、又は、更に他の高分子化合物を複合して、コーティング用水性塗料として用いることができる。
本発明の含フッ素重合体水性分散液の用途としては、また、含フッ素重合体水性分散液を凝析又は凝集に供して回収し、乾燥し、所望により造粒して得られる粉末を利用する用途が挙げられる。上記凝析又は凝集は、従来公知の方法をそのまま採用することができる。
上述した一般式(1)
Figure 0004687677
(式中、Rf及びRfは、同一又は異なって、H、F、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、若しくは、炭素数1〜20のエーテル酸素含有フルオロアルキル基を表し、a及びbは、0〜2の整数を表し、dは、1〜3の整数を表す。但し、a、b及びdは、a+b+d=3を満たす。Rf及びMは、上記定義したものと同じである。Rf、Rf及びRfは、同一であってもよいし異なっていてもよい。)
で表される2−アシルオキシカルボン酸誘導体もまた、本発明の1つである。
本発明の2−アシルオキシカルボン酸誘導体は、界面活性能を発揮することができ、例えば、水性媒体中で重合を行うことにより含フッ素重合体を製造するに際して水性媒体に存在させる乳化剤として好適であり、また、含フッ素重合体からなる粒子が水性媒体中に分散している含フッ素重合体水性分散液における分散剤として好適である。本発明の2−アシルオキシカルボン酸誘導体は、例えば、上記乳化剤、分散剤等として使用した後、回収し、繰り返し利用することができる。
本発明の2−アシルオキシカルボン酸誘導体は、上記重合後に行う凝析等の後処理等により、容易にエステル加水分解を起こし、生成した加水分解物は、通常、揮発性を有し、加熱により除去することができる。上記加熱としては、例えば、上記含フッ素重合体の水性分散液から調製したコーティング用組成物を基材に塗布した後の乾燥や焼成、上記含フッ素重合体の水性分散液を凝析して得た湿潤粉末の乾燥やペレット化、得られる乾燥粉末やペレットを用いた成形加工等における加熱が挙げられる。
本発明の2−アシルオキシカルボン酸誘導体は、このように、含フッ素重合体を重合する際の乳化剤、含フッ素重合体水性分散液における分散剤等として界面活性能を発揮するとともに、後処理により容易に加水分解して除去することができ、得られる含フッ素重合体からなる粉末、ペレット、成形体、塗膜等において残存しないので、これらの成形体、塗膜等の加工時発泡抑制、物性向上、着色防止等を可能にし得るものである。
本発明の2−アシルオキシカルボン酸誘導体として好ましい置換基、炭素数及び化合物は、本発明の含フッ素重合体の製造方法に関し上述したものと同じである。
本発明の2−アシルオキシカルボン酸誘導体を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(5)
Figure 0004687677
(式中、Rf、Rf、M、a、b及びdは、上記定義したものと同じ。)で表される2−ヒドロキシカルボン酸誘導体をエステル化することにより2−ヒドロキシル基にRfCO−(Rfは、上記定義したものと同じ。)を導入する方法が好ましい。
上記2−ヒドロキシカルボン酸誘導体としては、例えば、(CFC(OH)COOM、(CF)(CFCF)C(OH)COOM、(CFCFC(OH)COOM、(CF)C(OH)COOM、(CFCF)C(OH)COOM、(CF)C(OH)COOM(Mは、上記定義したものと同じ。)等が好ましい。
上記2−ヒドロキシカルボン酸誘導体は、例えば、以下の方法で調製することができる。
(A)d=1である場合
フルオロアルケニルエーテルより2−ヒドロキシカルボン酸エステルを製造し、更に、このエステルを公知の方法を用いて加水分解して、2−ヒドロキシカルボン酸又はその塩の形で得る方法。
上記フルオロアルケニルエーテルとしては、例えばヘキサフルオロプロペンの製造時に副生するオクタフルオロイソブテンを原料としてアルコール付加物に変換し、次いで脱フッ化水素を行うことにより得られるヘプタフルオロイソブテニルアルキルエーテル[(CFC=CFOR、Rは、炭素数1〜12のアルキル基]等が挙げられる。
上記フルオロアルケニルエーテルから上記2−ヒドロキシカルボン酸エステルを得る方法としては、ルテニウム化合物又はオスミウム化合物を用いて酸化反応させる方法が挙げられる。
上記酸化反応としては、例えば、RuOを化学量論より求められる量で用いる酸化反応、RuO・nHOやRuCl・nHO等の前駆体を共酸化剤でRuOにして酸化反応に寄与させる触媒的酸化、OsOを化学量論より求められる量で用いる酸化反応、共酸化剤でOsOにして酸化反応に寄与させる触媒的酸化等、特開2002−234860号公報に記載の酸化反応等が挙げられる。
(B)d=2である場合
CF(CFCFCFO(式中、zは、1〜17の整数を表し、−CFCFOは、エポキシ構造を表す。)で表される化合物を出発物質として用い、J.Org.Chem.,31,2312(1966)記載の方法に従い、CF(CFC(OH)COOH(式中、zは、上記定義したものと同じ。)で表される化合物を得る方法。
上記2−ヒドロキシカルボン酸誘導体をエステル化する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法を採用することができる。
(I)RfCOOH(Rfは上記定義したものと同じ。)から得られるハロゲン化アシルを作用させて脱ハロゲン化水素反応させる方法。
(II)RfCOOM(Rfは上記定義したものと同じ。Mは、H、NH、Li、Na又はKを表す。)で表されるカルボン酸又はその塩を作用させて脱水反応させる方法。
(III)RfCOOR(Rfは上記定義したものと同じ。Rは、炭素数1〜12のアルキル基)で表される酸エステルを作用させてエステル交換反応する反応。
(IV)RfCOOCOR(Rfは上記定義したものと同じ。Rは、Rf又は炭素数1〜12のアルキル基を表す。)で表される酸無水物を作用させる反応。
上記(I)〜(IV)の方法の中でも、操作性、収率等の面から、(I)又は(II)の方法が好ましく採用される。
上記(I)の方法における上記ハロゲン化アシルとしては、RfCOF、RfCOCl、RfCOBr又はRfCOI(Rfは上記定義したものと同じ。)の何れを用いてもよいが、RfCOF、RfCOClが好ましい。
本発明の2−アシルオキシカルボン酸誘導体を製造する方法としては、上記一般式(2)で表される2−ヒドロキシカルボン酸誘導体と、下記一般式(6)
RfCOZ (6)
(Rfは、上記定義したものと同じであり、Zは、−OM又はYを表し、Mは、H、NH、Li、Na又はKを表し、Yは、F又はClを表す。)で表されるアルカノイル化合物とをエステル化することより2−アシルオキシカルボン酸誘導体を製造する方法が好ましい。本方法もまた、本発明の1つである。
この方法は、上記(I)の方法における上記ハロゲン化アシルのハロゲンがF又はClである方法、及び、上記(II)の方法である。
上記(I)の方法としては、例えば、YがClの場合、0〜100℃の範囲で、ベンゼン、トルエン、クロロホルム等の有機溶剤の存在下、塩化チオニルを上記RfCOOHに滴下することにより上記アルカノイル化合物として酸クロライド[RfCOCl]を生成させ、引き続き、0〜100℃の範囲で、ピリジン、トリエチルアミン等の助酸剤及び上記有機溶剤の存在下、上記酸クロライドを上記2−ヒドロキシカルボン酸誘導体に対し0.8〜1.2当量の範囲で滴下し、数時間攪拌することからなる方法が挙げられる。
上記助酸剤は、上記2−ヒドロキシカルボン酸誘導体に対し0.1〜2当量の範囲で使用することが好ましい。
上記(II)の方法としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロホルム等の有機溶剤、及び、五酸化リン、硫酸等の脱水剤の存在下に、上記2−ヒドロキシカルボン酸誘導体、及び、上記RfCOOMとを50〜100℃で反応させる方法等が挙げられる。
上記脱水剤は、上記2−ヒドロキシカルボン酸誘導体に対し0.7〜5当量で使用することが好ましく、上記2−ヒドロキシカルボン酸誘導体に対する上記RfCOOMの滴下量は0.7〜2当量の範囲が好ましい。
上記(III)の方法で使用する上記RfCOORにおけるRとしては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられるが、メチル基が好ましい。
本発明の2−アシルオキシカルボン酸誘導体は、界面活性剤として好適に用いることができる。
上記2−アシルオキシカルボン酸誘導体からなる界面活性剤もまた、本発明の一つである。
本発明の界面活性剤は、上記一般式(1)で表される2−アシルオキシカルボン酸誘導体を少なくとも1種含有するものであれば、界面活性剤として充分に用いることができるが、上記2−アシルオキシカルボン酸誘導体を2種以上含有するものであってもよい。
本発明の界面活性剤は、上記2−アシルオキシカルボン酸誘導体に加え、その他の界面活性能を有する化合物を1種又は2種以上含むものであってもよい。
上記その他の界面活性能を有する化合物としては特に限定されず、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系又はベタイン系の界面活性剤の何れであってもよく、これらの界面活性剤は、ハイドロカーボン系のものであってもよい。
本発明の界面活性剤は、上記2−アシルオキシカルボン酸誘導体と、所望により用いるその他の界面活性能を有する化合物に加え、添加剤を含むものであってよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、安定剤等の一般的な界面活性剤に通常用いられるものであってよい。
本発明の界面活性剤は、上記2−アシルオキシカルボン酸誘導体からなるものであるので、各種用途において、適度な界面活性能を発揮することができる。本発明の界面活性剤は、水をはじめとした各種液体に混合することにより表面張力を低下させる効果があり、目的によって添加量、設定表面張力が適宜決定することができる。
本発明の含フッ素重合体の製造方法は、上述の構成よりなるので、樹脂中での界面活性剤残存量が極めて少なく、着色が少なく物性のよい含フッ素重合体を効率よく製造することができる。また、本発明の含フッ素重合体水性分散液は、上述の構成よりなるので、含フッ素重合体を安定に存在させることができ、また、着色が少なく物性のよい含フッ素重合体の成形体及び塗膜等を提供することができる。本発明の2−アシルオキシカルボン酸誘導体は、上述の構成よりなるので、界面活性剤等として好適に使用することができる。また、本発明の界面活性剤は、上記2−アシルオキシカルボン酸誘導体からなるものなので、好適な界面活性能を有する。
次に本発明を製造例及び実施例に基づいて説明するが、本発明はかかる製造例及び実施例のみに限定されるものではない。
製造例1(CFC(OCOCFCFCFCFH)COONHの合成
[1](CFC(OH)COOCHの合成
滴下ロート、冷却管、温度計及び撹拌子を有する1000mL三つ口丸底フラスコ中に、(CFC=CFOCHを53.0g(0.25mol)、RuO・nHOを0.03g(0.25mmol)、KCOを17.3g(0.13mol)及び水を40.0g仕込み、室温下で撹拌しながら、1.7mol/L次亜塩素酸ナトリウムを滴下して、RuO・nHOからRuOを発生させながら反応させた。6時間反応させた時点で、1.7mol/L次亜塩素酸ナトリウムの仕込み量は147g(0.25mol)となった。RuOがRuO・nHOに戻った時点で、反応混合物からRuO・nHOを濾別し、得られた濾液を分液ロートで分液した。得られた有機層をガスクロマトグラフィーで分析したところ、(CFC=CFOCH転化率は99.8%で、選択率90.5%で(CFC(OH)COOCHが得られた。
[2](CFC(OH)COOHの合成
冷却管、温度計及び撹拌子を有する100mL三つ口丸底フラスコ中に、水酸化ナトリウム0.9g、メタノール20mLを入れ、攪拌下に均一に溶解した。この中に、(CFC(OH)COOCH4.5gを3分間かけて滴下し、引き続き、水2mLを滴下し、1時間20℃で攪拌した。減圧下にメタノールを留去し、水を10mL加えた後、35%塩酸をpHが2になるまで滴下した。クロロホルム20mLを加え、油層を分離回収した。クロロホルムを留去し、(CFC(OH)COOH3.9gを得た。
[3](CFC(OCOCFCFCFCFH)COONHの合成
冷却管、温度計及び撹拌子を有する100mL三つ口フラスコ中に、(CFC(OH)COOH 2.1g、クロロホルム20mLを仕込み、20℃で攪拌しながら、トリエチルアミン1.6gを5分かけて滴下した。滴下終了後、HCFCFCFCFCOCl 4.1gを10分間かけて滴下した。1時間攪拌後、水20mLを加え、攪拌洗浄後、油層を分離、クロロホルムを留去して、3.1gの(CFC(OCOCFCFCFCFH)COOHを得た。この化合物をアンモニア水で中和し、(CFC(OCOCFCFCFCFH)COONHを得た。
製造例2[(CFC(OCOCFCFCFCFH)COOHの合成]
冷却管、温度計及び撹拌子を有する100ml三つ口フラスコ中に、(CFC(OH)COOH 2.1g、クロロホルム20mlを仕込み、20℃で攪拌しながら、トリエチルアミン1.6gを5分かけて滴下した。滴下終了後、HCFCFCFCFCOCl 4.1gを10分間かけて滴下した。1時間攪拌後、水20mlを加え、攪拌洗浄後、油層を分離、クロロホルムを留去して、3.1gの(CFC(OCOCFCFCFCFH)COOHを得た。この化合物をアンモニア水で中和した。
得られた水溶液について、(CFC(OCOCFCFCFCFH)COOH濃度を0.1質量%にして、表面張力をウィルムヘルミー法により25℃にて測定したところ、62Nm/mであった。
製造例3 CFC(OCOCFCFCFCFH)COOHの合成
冷却管、温度計及び撹拌子を有する100ml三つ口フラスコに、CFC(OH)COOH 1.0g及びクロロホルムを20ml仕込み、20℃で撹拌しながら、トリエチルアミン1.5gを5分かけて滴下した。滴下終了後、HCFCFCFCFCOCl 3.4gを10分間かけて滴下した。1時間攪拌後、水20mlを加え、攪拌洗浄後、油層を分離、クロロホルムを留去して、1.3gのCFC(OCOCFCFCFCFH)COOHを得た。この化合物をアンモニア水で中和した。
得られた水溶液について、CFC(OCOCFCFCFCFH)COOH濃度を0.1質量%にして、表面張力をウィルムヘルミー法により25℃にて測定したところ、56Nm/mであった。
製造例4 HCFCFCFCFCHOOCCH=CH−COONHの合成
冷却管、温度計および撹拌子を有する100mL三つ口フラスコ中に、無水マレイン酸5.0g及びHCFCFCFCFCHCHOH 40.0gを仕込み、70℃まで加温した。引き続き、濃硫酸0.3mlを添加し、70℃で3時間反応させた。反応物に水を加え、洗浄、分液を3回繰り返し、回収した油層より、残存アルコールを留去して、HCFCFCFCFCHOOCCH=CH−COOH 13.7gを得た。この化合物をアンモニアで中和し、HCFCFCFCFCHOOCCH=CH−COONHを得た。
参考例 PTFEラテックスの調製[1]
内容量3Lの攪拌翼付きステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水1.5L、パラフィンワックスを60g(融点60℃)、及び、2−アシルオキシカルボン酸誘導体として、(CFC(OCOCFCFCFCFH)COONHを250mg仕込み、系内をテトラフルオロエチレン[TFE]で置換した。内温を70℃にし、内圧が0.78MPaになるように、TFEを圧入し、0.6重量%の過硫酸アンモニウム[APS]水溶液5gを仕込み、反応を開始した。重合の進行に伴って重合系内の圧力が低下するので、連続的にTFEを追加して、内圧を0.78MPaに保ち、反応を継続した。水性分散体中の樹脂固形分が5質量%前後になるまで、TFEを追加した時点で攪拌を停止し、槽内の残圧を常圧に戻して反応を終了した。この水性分散体について以下の項目を測定した。結果を表1に示す。
・固形分濃度:得られた水性分散液を150℃で1時間乾燥した時の重量減少より求めた。
・残存界面活性剤濃度:得られた水性分散液100gに硝酸1gを添加し、25℃で15分間攪拌して得られた樹脂粉末を再度、100gの水で洗浄し、180℃で6時間乾燥してPTFE粉末を得た。この粉末1gをメタノール20mlに分散し、50℃での24時間攪拌下で抽出を行い、メタノール中に抽出された界面活性剤濃度を、Quattro LC(Micromass社製)を用いて液体クロマトグラフ/タンデム型質量分析(LC/MS/MS)にて定量し、対樹脂濃度に換算した。
上記液体クロマトグラフでは、Phenomonex Columbus C18(15cm×2mm i.d.)カラム、0.02M酢酸アンモニウム:メタノール(60:40 v:v、移動相A)及び0.02M酢酸アンモニウム:メタノール(10:90 v:v、移動相B)を用い、(1)溶出開始後0〜6分においては移動相A(100%)−移動相B(100%)濃度勾配、(2)溶出開始後6〜12分においては移動相B(100%)、そして(3)溶出開始後12〜13分においては移動相B(100%)−移動相A(100%)濃度勾配により溶出を行った。上記タンデム型質量分析では、ネガティブ・エレクトロスプレー型(ESP−)のイオン化を行った。
実施例1 PTFEラテックスの調製[2]
表1に示すように、製造例4で得られたマレイン酸ハーフエステル[HCFCFCFCFCHOOCCH=CH−COONH]を210mg使用した以外は、参考例と同様の重合及び測定を行った。結果を表1に示す。
比較例1 PTFEラテックスの調製[3]
界面活性剤としてパラフルオロオクタノエート[PFOA]240mgを使用した以外は、参考例と同様の重合及び測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 0004687677
表1から2−アシルオキシカルボン酸誘導体[(CFC(OCOCFCFCFCFH)COONH]、又は、マレイン酸ハーフエステル[HCFCFCFCFCHOOCCH=CH−COONH]を用いた参考例及び実施例1では、界面活性剤PFOAを用いた比較例1よりも残存界面活性剤が極めて少ないことが分かった。
本発明の含フッ素重合体の製造方法は、上述の構成よりなるので、樹脂中での界面活性剤残存量が極めて少なく、着色が少なく物性のよい含フッ素重合体を効率よく製造することができる。また、本発明の含フッ素重合体水性分散液は、上述の構成よりなるので、含フッ素重合体を安定に存在させることができ、また、着色が少なく物性のよい含フッ素重合体の成形体及び塗膜等を提供することができる。本発明の2−アシルオキシカルボン酸誘導体は、上述の構成よりなるので、界面活性剤等として好適に使用することができる。また、本発明の界面活性剤は、上記2−アシルオキシカルボン酸誘導体からなるものなので、好適な界面活性能を有する。

Claims (3)

  1. 水性媒体中で、界面活性剤として、カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体を使用して含フッ素重合体を重合する含フッ素重合体の製造方法であって、
    前記カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、フッ素原子により置換されていてもよいカルボン酸エステル結合と、−COOM(Mは、H、NH、Li、Na又はKを表す。)とを有するものであり、
    カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、下記一般式(4)
    RfOCO(CH−T−(CHCOOM (4)
    (式中、Tは、−CRf=CH−、−CH=CRf−又は−CHRf−を表し、Rfは、H、F、又は、炭素数1〜4のフルオロアルキル基を表し、h及びiは、同一又は異なって、0〜3の整数を表す。Rfは、CF−、CFCF−、CFCFCF−、CFCFCFCF−、HCF−、HCFCF−、HCFCFCF−、HCFCFCFCF−、又は、HCFCFCFCFCH−である。Mは、前記と同じ。)で表されるジカルボン酸ハーフエステル(B)である
    ことを特徴とする含フッ素重合体の製造方法。
  2. カルボン酸エステル結合含有カルボン酸誘導体は、水性媒体の0.0001〜15質量%の量を添加するものである請求項1記載の含フッ素重合体の製造方法。
  3. 一般式(4)において、h及びiは、0である請求項1又は2記載の含フッ素重合体の製造方法。
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