JP2016061774A - 機械部品、機械部品の製造方法、ムーブメントおよび時計 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】機械部品10は、軸部材30が挿通する貫通孔14を有する部品本体11と、貫通孔14の内面に形成され、軸部材30が圧入されることにより軸部材30に固定される圧入部12とを有する。部品本体11は、部品本体11に対する圧入部12の変位を規制するアンカー構造である保持凹部15を有する。圧入部12は、金属材料により形成される。
【選択図】図1
Description
機械部品と軸部材との結合構造としては、機械部品の貫通孔に金属からなる圧入部が形成され、この圧入部に軸部材が圧入されて固定される構造がある(例えば、特許文献1を参照)。
この種の機械部品は薄く形成されるため、軸部材を圧入する際に生じた応力の影響を受けやすいが、前記圧入部を有する機械部品は、前記応力を圧入部により緩和できる。
特許文献1に記載の機械部品では、メッキにより全表面に金属膜が形成され、この金属膜のうち貫通孔の内面に形成された部分が、軸部材の圧入による応力を緩和する圧入部として機能し得る。
金属膜が薄いと、この金属膜の塑性変形量が小さくなり、特に、脆性材料(セラミックス材料など)を機械部品に用いた場合には破損が起こりやすくなる。また、金属膜は貫通孔の内面から剥離する可能性がある。膜剥離は軸ズレの原因となり得る。さらに、前記構造の機械部品では、回転緩みが起こりやすいという問題もあった。
また、金属膜は機械部品の全表面に形成されているため、貫通孔の内面の金属膜を厚くすると外周面の金属膜も厚くなり、機械部品の外径が大きくなることから、他の機械部品との関係に悪影響が及ぶおそれがあった。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、圧入部を軸部材に対し強固に固定することができ、かつ十分な緩衝効果が得られ、しかも寸法精度を高めることができる機械部品、機械部品の製造方法、ムーブメントおよび時計を提供することを目的とする。
また、保持凹部には前記圧入部の少なくとも一部が保持されるため、この部分において圧入部の径方向寸法(厚み)を大きくできる。このため、十分な圧入代を確保し、緩衝効果を高めることができる。よって、部品本体に脆性材料が用いられている場合でも、軸部材を圧入する際の応力による機械部品の破損を防ぐことができる。
また、圧入部の径方向寸法(厚み)を大きくできるため、圧入部の剥離を起こりにくくすることができる。
さらに、圧入部は金属材料からなるため、電鋳法により形成することができる。これにより、金属材料を部品本体の外周面に付着させずに圧入部を形成することができるため、機械部品の外径寸法が大きくなることはない。よって、機械部品の寸法精度を高め、時計の計時精度を向上させることができる。
この構成によれば、部品本体に対する圧入部の固定強度をさらに高め、機械部品の動作時における回転緩みを防止することができる。
この構成によれば、部品本体に対する圧入部の固定強度をさらに高め、機械部品の動作時における回転緩みを防止することができる。
この構成によれば、圧入部の周方向の変位を起こりにくくし、部品本体に対する圧入部の固定強度をさらに高め、機械部品の動作時における回転緩みを防止することができる。
この構成によれば、軸部材の圧入に伴う応力を緩和することができる。よって、部品本体に過大な力がかかりにくく、部品本体の破損を確実に防ぐことができる。
この構成によれば、軸部材を確実に保持できる。
この構成によれば、軸部材の位置ずれを規制することができるため、機械部品の破損を防ぎ、この機械部品を用いた時計の計時精度を向上させることができる。
この構成によれば、計時精度が高いムーブメントを提供することができる。
この構成によれば、計時精度が高い時計を提供することができる。
このため、軸部材に対する軸ズレを起こりにくくし、機械部品の動作時の偏心を防ぐことができる。よって、この機械部品を用いた時計の計時精度を高めることができる。
また、保持凹部には前記圧入部の少なくとも一部が保持されるため、この部分において圧入部の径方向寸法(厚み)を大きくできる。このため、十分な圧入代を確保し、緩衝効果を高めることができる。よって、部品本体に脆性材料が用いられている場合でも、軸部材を圧入する際の応力による機械部品の破損を防ぐことができる。
また、圧入部の径方向寸法(厚み)を大きくできるため、圧入部の剥離を起こりにくくすることができる。
さらに、圧入部は金属材料からなるため、電鋳法により形成することができる。これにより、金属材料を部品本体の外周面に付着させずに圧入部を形成することができるため、機械部品の外径寸法が大きくなることはない。よって、機械部品の寸法精度を高め、時計の計時精度を向上させることができる。
このため、軸部材に対する軸ズレを起こりにくくし、機械部品の動作時の偏心を防ぐことができる。よって、この機械部品を用いた時計の計時精度を高めることができる。
本発明の第1実施形態である機械部品10について説明する。
図1(a)は、機械部品10を示す平面図であり、図1(b)は、機械部品10の一部を拡大した平面図である。図2は、図1(a)のI−I’線における断面図である。なお、図1は軸部材30を圧入する前の機械部品10を示す。
A1は部品本体11の中心軸であり、機械部品10の回転軸である。
以下の説明において、「周方向」とは、部品本体11の第1面11aを含む面内において中心が中心軸A1に一致する円の周方向である。「径方向」とは、前記円の径方向である。「軸方向」とは中心軸A1に沿う方向である。また、「内方」とは中心軸A1に近づく方向であり、「外方」とは中心軸A1から離れる方向である。また、周方向のうち、図1(a)における右回りの方向をC1方向といい、左回りの方向をC2方向という。
中央孔部14の内縁14a(内面)には、複数の保持凹部15が周方向に間隔をおいて形成されている。
保持凹部15は、平面視において、周方向に沿う円弧状の外縁15aと、外縁15aの両端からそれぞれ内方に向かう側縁15b,15bとを有する概略扇形に形成されている。側縁15b,15bには、外縁15aから離れた位置(外縁15aよりも内方寄りの位置)にそれぞれ凸部16,16が形成されている。
隣り合う保持凹部15,15の間の部分を中間部分17という。これらの中間部分17を、右回りにそれぞれ第1〜第4中間部分17A〜17Dということがある。
なお、保持凹部の数は、図示例に限定されない。保持凹部の数は1でもよいし、複数でもよい。
部品本体11の第1面11aに平行な面内において、第1保持凹部15Aと第2保持凹部15Bとの間の部分である中間部分17(第1中間部分17A)の中央(周方向の中央)を通り、径方向に沿う方向をX方向という。部品本体11の第1面11aに平行な面内においてX方向に垂直な方向をY方向という。
第1保持凹部15AのC2方向側の側縁15b(側縁15Ab1)と、第2保持凹部15BのC1方向側の側縁15b(側縁15Bb2)と、第3保持凹部15CのC2方向側の側縁15b(側縁15Cb1)と、第4保持凹部15DのC1方向側の側縁15b(側縁15Db2)とは、Y方向に沿って形成することができる。
凸部16の外縁16aは、側縁15bに対し傾斜する方向(図1(b)では側縁15bに対して垂直)に形成されている。外縁16aは、周方向の位置が大きく変化する部分であり、受け段部19ともいう。
受け段部19においては、保持凹部15の周方向の寸法が不連続的に変化している。すなわち、保持凹部15の周方向の寸法は、外方に向けて、受け段部19において不連続的に大きくなっている。
この構造によって、軸支持部18の内方への変位を阻止し、部品本体11に対する圧入部12の固定強度をさらに高め、機械部品10の動作時における回転緩みを防止することができる。
凸部16の先端縁16bは、側縁15bと平行に形成することができる。
なお、凸部の平面視形状は矩形に限らず、半円形、三角形などとしてよい。凸部は複数形成してもよい。これら複数の凸部は複数段をなすように形成することができる。
第2中間部分17Bおよび第4中間部分17Dの内縁17Ba,17Daは、X方向に沿って形成することができる。
幅寸法L1は、保持凹部15の周方向の一端部の最内周位置15cと他端部の最内周位置15cとの距離である。幅寸法L2は、保持凹部15の周方向の一端部の最外周位置15dと他端部の最外周位置15dとの距離である。
この構造によって、軸支持部18の内方および周方向への変位を阻止できるため、部品本体11に対する圧入部12の固定強度をさらに高め、機械部品10の動作時における回転緩みを防止することができる。
なお、保持凹部は、第1位置における幅寸法が、前記第1位置より外周側の第2位置における幅寸法より小さければ、第1位置は最内周位置でなくてもよいし、第2位置は最外周位置でなくてもよい。
なお、脆性材料とは、外部からの応力による弾性変形の限界ひずみ量が小さく、弾性変形の限界を超えると、降伏点が存在せず破壊に至るものであり、望ましくは弾性変形領域が1%以下のもので、より望ましくは0.5%以下のものである。脆性材料は、靱性が低い性質を有する。
部品本体11は、高い絶縁性を有することが望ましい。部品本体11の絶縁性が十分でない場合は、軸支持部18に当接する表面に酸化物膜を形成することが望ましい。
軸支持部18は、保持凹部15の内部空間を満たすとともに、その一部は、中間部分17の内縁17a(中央孔部14の内縁14a)より内方に突出して形成されている。この構造により、軸支持部18は軸部材30を確実に保持できる。
軸支持部18は、平面視において、外縁15aに当接する円弧状の外縁18aと、側縁15bに当接する側縁18bと、周方向に沿う内縁18cとを有する、概略扇形とされている。
軸支持部18のうち保持凹部15内に形成された部分を主部21といい、中間部分17の内縁17aより内方に突出した部分を突出部22という。
凹部24は、凸部16の外縁16a(受け段部19)に当接する内縁24aと、凸部16の先端縁16bに当接する直線状の側縁24bとを有する。
内縁24aは、周方向の位置が大きく変化する部分であり、当接段部25ともいう。当接段部25においては、軸支持部18の周方向の寸法が不連続的に変化している。すなわち、軸支持部18の周方向の寸法は、外方に向けて、当接段部25において不連続的に大きくなっている。
内縁24a(当接段部25)は、凸部16の外縁16a(受け段部19)に当接することによって、軸支持部18の内方への変位を確実に阻止する。
図1に示す例では、側縁24bは側縁15bと平行な直線状に形成されている。
外周部分28は、外周側に行くほど周方向寸法が大きくなる概略扇形である。内周部分29も、外周側に行くほど周方向寸法が大きくなる概略扇形である。
軸支持部18の周方向の寸法は、当接段部25において不連続的に変化するため、内周部分29の最大周方向寸法は外周部分28の最小周方向寸法より小さい。
軸支持部18は、径方向の寸法が大きいと、軸部材30の保持力を高めるうえで有利となる。
軸支持部18は部品本体11と一体になっている。
図1および図2に示す径raは、中心軸A1から軸支持部18の内縁18cまでの距離である。径rbは、中心軸A1から軸支持部18の外縁18aまでの距離である。
径rcは、中心軸A1から凹部24の内縁24a(当接段部25)までの距離である(図1(b)参照)。詳しくは、径rcは、中心軸A1から内縁24aの先端24a1までの距離である。
径Rは、中心軸A1から中間部分17の内縁17aまでの最小距離であり、図1(a)では、中間部分17の内縁17aの中央における中心軸A1からの距離である。
中間部分17の径Rと軸支持部18の径raとの差(R−ra)は、軸部材30が内側空間26(後述)に圧入される際の圧入代となる寸法であり、10μm程度が好ましい。
径rcは、径raより大きく、かつ径rbより小さくされる。すなわち、「ra<rc<rb」となる。
軸支持部18の径方向の寸法tは、径rbと径raとの差(rb−ra)であり、数十μm以上が好ましい。
軸支持部18のアスペクト比(径方向寸法t/軸方向寸法)は、10以下が好ましい。
アスペクト比をこの範囲にすることによって、十分な圧入代を確保でき、部品本体11の破損を防止しやすくなる。
圧入部12を分割形状とすることによって、圧入部12の周方向の変位を起こりにくくし、部品本体11に対する圧入部12の固定強度をさらに高め、機械部品10の動作時における回転緩みを防止することができる。よって、軸部材30のトルクを確実に部品本体11に伝達することができる。
なお、軸支持部の分割数は1以上であればよく、2以上が好ましく、3以上がさらに好ましい。分割数が1であると、軸支持部は概略C字状となり、分割数が2であると、軸支持部は向かい合う2つの円弧状となる。
このような金属材料としては、例えばAu、Ni、Cu、および、それらの合金がある。前記合金としては、Ni合金(Ni−Fe,Ni−Wなど)、Cu合金、Au合金などがある。
金属材料は脆性材料に比べて、曲げ強度、引張強度、延性、限界ひずみが高く、脆性が低いため、軸部材30を圧入する際に機械部品10の破損を起こりにくくすることができる。
軸部材30が圧入されると、軸支持部18は外方に押圧されて圧縮方向に塑性変形するとともに、軸支持部18の内縁18cが軸部材30を保持し、これによって、機械部品10は軸部材30に固定される。
軸支持部18は、軸部材30に取り付けた後、軸部材30に対して接合してもよい。接合方法としては、レーザー溶接、はんだ付け、拡散接合、ろう付け、共晶接合、熱圧着、接着材による接合、ワックスによる接合などを採用できる。
また、保持凹部15には圧入部12の一部が保持されるため、この部分において圧入部12の径方向寸法(厚み)を大きくできる。このため、十分な圧入代を確保し、緩衝効果を高めることができる。よって、部品本体11に脆性材料が用いられている場合でも、軸部材30を圧入する際の応力による機械部品10の破損を防ぐことができる。
また、圧入部12の径方向寸法(厚み)を大きくできるため、圧入部12の剥離を起こりにくくすることができる。
さらに、圧入部12は金属材料からなるため、電鋳法により形成することができる。これにより、金属材料を部品本体11の外周面に付着させずに圧入部12を形成することができるため、機械部品10の外径寸法が大きくなることはない。よって、機械部品10の寸法精度を高め、時計の計時精度を向上させることができる。
次に、第1実施形態の機械部品10の製造方法について、図3〜図6を参照しつつ説明する。
図3では(a)、(c)、(e)は平面図であり、(b)、(d)、(f)は、それぞれ(a)、(c)、(e)におけるII−II’線、III−III’線、IV−IV’線の断面図である。図4では(a)、(c)、(e)は平面図であり、(b)、(d)、(f)は、それぞれ(a)、(c)、(e)におけるV−V’線、VI−VI’線、VII−VII’線の断面図である。図5では(a)、(c)は平面図であり、(b)、(d)は、それぞれVIII−VIII’線、IX−IX’線の断面図である。図6では(a)、(c)は平面図であり、(b)、(d)は、それぞれX−X’線、XI−XI’線の断面図である。
図3(a)および図3(b)に示すように、Siなどからなる基材31を用意する。
次いで、図3(c)および図3(d)に示すように、基材31の少なくとも一方の面(ここでは第1面31a)に、SiO2などの酸化物等からなる第1マスク32を形成する。
第1マスク32は、円環状の本体部32aと、本体部32aの内側に本体部32aから離れて形成された中央部32bと、これらを互いに連結する複数の連結部32cとを有する。
本体部32aと中央部32bとの間隙部分32dの平面視形状(第1マスク32の内形)は、図1(a)に示す圧入部12の形状に対応した形状である。詳しくは、圧入部12の平面視形状と同じ平面視形状を有する。
第1マスク32の平面視における外形は、部品本体11の平面視における外形と同じである。
前記被覆膜のパターニングは、例えば次の方法により行うことができる。
基材31の第1面31aの全域に前記被覆膜を形成し、この被覆膜の表面にレジスト層(図示略)を形成する。レジスト層としては、ネガ型のフォトレジストを用いてもよいし、ポジ型のフォトレジストを用いてもよい。
レジスト層の表面に、所定のフォトマスクを配置してレジスト層を露光する。フォトマスクの遮光パターンの平面視における形状および寸法は、図1(a)に示す部品本体11の平面視における形状および寸法に対応している。
レジスト層の現像によって不要部分が除去され、レジスト層は第1マスク32に応じた形状となる。
レジスト層がない部分の被覆膜をドライエッチングなどにより除去することによって、図3(c)および図3(d)に示す第1マスク32が形成される。第1マスク32の形成後、レジスト層を除去する。
第2マスク33によって、基材31の第1面31aのうち第1マスク32より外側の領域が覆われる。間隙部分32dは第2マスク33に覆われないため、間隙部分32dでは基材31の第1面31aが露出した状態となる。
なお、図3(e)および図3(f)に示すように、第2マスク33は、一部が第1マスク32の外縁を含む領域にかかっていてもよい。
前記レジスト層は、例えばフォトリソグラフィによるパターニングにより形成することができる。例えば、レジスト層を所定のフォトマスクを通して露光し、現像することによって、図3(e)および図3(f)に示す環状の第2マスク33を形成することができる。
貫通穴34は、後の工程において保持凹部15となる。
この際、第1マスク32より外側の領域は第2マスク33に覆われているため、この領域が除去されることはない。
第2マスク33を除去することによって、貫通穴34を有する基材31の表面に第1マスク32が形成された成形型41を得る。
図4(c)および図4(d)に示すように、成形型41を基板60の表面60aに接着等により固定する。この際、成形型41は、基材31の第1面31aを基板60に向けた姿勢とする。基板60とこれに固定した成形型41とを基板付き成形型41Aという。基板60は、表面60aに金属などからなる導電膜(図示略)が形成されていてもよいし、基板60自体が導電性材料で構成されていてもよい。
なお、図4(c)および図4(d)では、成形型41は第1面31aを下向きにした姿勢とされている。
図7は、軸支持部18を形成するための電鋳装置50の構成を示す模式図である。
電鋳装置50は、電鋳槽51と、電極53と、電気配線55と、電源部57とを有する。
電鋳槽51には、電鋳液59が貯液されている。電極53は、電鋳液59に浸漬されている。電極53は、軸支持部18と同一の金属材料を用いて形成されている。
電気配線55は、第一配線55aおよび第二配線55bを有する。第一配線55aは、電極53と電源部57の陽極側とを接続している。第二配線55bは、基板付き成形型41Aと電源部57の陰極側とを接続している。
この構成より、電源部57の陽極側には電極53が接続され、陰極側には基板付き成形型41Aが接続される。
これにより、電極53を構成する金属(例えばニッケル)がイオン化して電鋳液59を移動し、基板60の表面60aのうち成形型41の貫通穴34に面した領域に析出する。
図4(c)および図4(d)に示すように、前記金属は貫通穴34内で成長し、軸支持部18が形成される。貫通穴34が金属で満たされ、第2面31bから少しはみ出す程度に金属が成長したら、電圧印加を停止する。
具体的には、貫通穴34に前記金属が形成された成形型41を電鋳槽51から取り出した後、成形型41の第2面31bに研削・研磨を施し、第2面31bを平坦化するとともに、成形型41の厚みを調整することができる。
これにより、貫通穴34内に軸支持部18が形成される。
次いで、成形型41を基板60から取り外す。
次いで、図4(e)および図4(f)に示すように、基材31の第1面31aに、中央穴部63を有する第3マスク35を形成する。中央穴部63の平面視における形状および寸法は、図1(a)に示す中央孔部14の平面視における形状および寸法に対応している。
第3マスク35を構成する材料は、次の工程において第1マスク32の中央部32bを除去する際に、金属からなる軸支持部18を損傷しないものを選択するのが好ましい。第3マスク35は、レジスト層または金属層としてよい。
図4(e)および図4(f)では、成形型41は第1面31aを上向きにした姿勢とされている。
次いで、図5(c)および図5(d)に示すように、有機溶剤やO2プラズマアッシングなどを用いて第3マスク35を除去する。
第1マスク32の内側に位置する領域の基材31が除去されることによって、基材31には、図1(a)に示す中央孔部14が形成される。
第1マスク32の外側に位置する領域の基材31が除去されることによって、図1(a)に示す形状の部品本体11が得られる。
これによって、図1および図2に示す機械部品10が得られる。
このため、軸部材30に対する軸ズレを起こりにくくし、機械部品10の動作時の偏心を防ぐことができる。よって、この機械部品10を用いた時計の計時精度を高めることができる。
図8は、第1実施形態の機械部品10の具体例に係る機械部品10Aの平面図である。
機械部品10Aは歯車であり、機械部品10Aの外周縁には、径方向外方に向かって突出する複数の歯27が形成されている。歯27は、突出方向に徐々に幅が狭くなる形状(先細り形状)とされている。歯27の形成により、機械部品10Aは、隣接する歯車と噛合可能である。
機械部品10Aとしての歯車は、番車などである。
なお、機械部品10は、機械部品10Aのような歯車に限らず、がんぎ車、アンクル、てんわなどであってもよい。
本発明の第2実施形態である機械部品70について説明する。なお、以下、既出の実施形態と同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。
図9は、機械部品70を示す平面図である。
図9に示すように、機械部品70は、概略円板状の部品本体71と、部品本体71の内側に設けられた圧入部72と、を備えている。
部品本体71の中央には、中央孔部74(貫通孔)が形成され、中央孔部74の内縁74a(内面)には、周方向に間隔をおいて3つの保持凹部75が形成されている。
保持凹部75は、平面視において、周方向に沿う円弧状の外縁75aと、外縁75aの両端からそれぞれ内方に向かう直線状の側縁75b,75bとを有する概略扇形に形成されている。
この保持凹部75は、軸支持部78を保持することによって軸支持部78が内方および周方向に変位するのを規制するアンカー構造として機能している。
隣り合う保持凹部75,75の間の部分を中間部分77という。
部品本体71は、第1実施形態における部品本体11と同様に、セラミックス材料などの脆性材料からなることが好ましい。
軸支持部78は、保持凹部75の内部空間を満たすとともに、中間部分77の内縁より内方に突出して形成されている。
軸支持部78は、平面視において、外縁75aに当接する円弧状の外縁78aと、側縁75bに当接する側縁78bと、周方向に沿う内縁78cとを有する、概略扇形とされている。
軸支持部78は、第1実施形態における軸支持部18と同様に、電鋳法を用いて金属材料により形成される。
圧入部72は、周方向に並ぶ3つの軸支持部78によって構成されており、この形状は、環状体が3箇所で分割された形状といえる。
また、第1実施形態の機械部品10と同様に、外径を大きくすることなく圧入部72の径方向寸法(厚み)を大きくできるため、緩衝効果を高めて機械部品70の破損を防ぐとともに、機械部品70の寸法精度を高め、時計の計時精度を向上させることができる。
本発明の第3実施形態である機械部品80について説明する。
図10は、機械部品80を示す平面図である。
図10に示すように、機械部品80は、部品本体81に、軸部材30の圧入に伴って生じた軸支持部18の膨出変形部分を受け入れる受入れ凹部82が形成されている点で、図1等に示す部品本体11と異なる。
図10に示す例では、受入れ凹部82は、軸支持部18の外縁18aと側縁18bとの交点である角部18fを中心とする円弧状の平面視形状を有する。
受入れ凹部の平面視形状は円弧形に限らず、任意の形状、例えば矩形、半円形、三角形などとしてよい。
本発明の第4実施形態である機械部品90について説明する。
図11は、機械部品90を示す平面図である。
図11に示すように、機械部品90は、概略円板状の部品本体91と、部品本体91の内側に設けられた圧入部92と、を備えている。
部品本体91の中央には、平面視において概略円形の中央孔部94(貫通孔)が形成され、中央孔部94の内縁(内面)には、周方向に間隔をおいて3つの保持凹部95が形成されている。
保持凹部95は、平面視において円弧状とすることができる。図示例の円弧状の保持凹部95の中心は、中央孔部94がなす円の外側にあるため、最内周位置95c(第1位置)における幅寸法L5は、幅寸法が最大となる位置95d(第2位置)における幅寸法L6より小さくされている。
この保持凹部95は、突出部98を保持することによって圧入部92が周方向に変位するのを規制するアンカー構造として機能している。保持凹部95は、幅寸法L5が幅寸法L6より小さいため、圧入部92の内方変位も規制できる構造である。
突出部98は、保持凹部95の内部空間を満たすように形成されており、保持凹部95と同じ平面視形状(図11では円弧形)を有する。
圧入部92は、第1実施形態における圧入部12と同様に、電鋳法を用いて金属材料により形成される。
なお、突出部98の平面視形状は円弧形に限らず、矩形、半円形、三角形などとしてよい。
図12に示すように、第1実施形態の機械部品10において、凸部16の先端縁16bに第1凹凸16cを形成するとともに、これに当接する部分の凹部24の側縁24bに、第1凹凸構造16cに対応する形状の第2凹凸24cを形成してもよい。
第1凹凸16cと第2凹凸24cとが互いに嵌合することよって、アンカー効果(この例では軸支持部18の内方変位を起こりにくくする効果)が高められる。
図13は、第1実施形態の機械部品10の第1変形例である機械部品220を模式的に示す断面図である。図13は、図2と同様に、機械部品220の中心軸、保持凹部および軸支持部を通る線(図1(a)のI−I’線を参照)における断面図である。
保持凹部225の周縁225aの内面225bは、第1面221aから第2面221bにかけて縮径するように一定角度で傾斜する傾斜面である。
軸支持部228は、(部品本体221に対する)厚さ方向の変位を規制する構造を有する。詳しくは、軸支持部228の外縁228aの外面228bは、第1面228cから第2面228dにかけて縮径するように一定角度で傾斜する傾斜面であり、全面にわたって内面225bに当接している。
軸支持部228の第1面228cにおける外径(最大外径)は、保持凹部225の第2面221bにおける内径(最小内径)より大きいため、軸支持部228の下方移動(部品本体221の厚さ方向の移動)は規制される。
機械部品220は、この構造によって、軸支持部228の脱落を防止し、その耐久性を高めることができる。
図14は、第1実施形態の機械部品10の第2変形例である機械部品230を模式的に示す断面図である。
軸支持部238は、(部品本体231に対する)厚さ方向の変位を規制する構造を有する。詳しくは、軸支持部238は、本体部238aと、外方延出部238bとからなる断面L字状の構造を有する。
本体部238aは、保持凹部235の周縁235aの内面235bに設けられている。外方延出部238bは、本体部238aの第1面231a側の端部から、部品本体231の第1面231aに沿って径方向外方に延出する。
軸支持部238は、外方延出部238bに当接する第1面231aによって下方移動(部品本体231の厚さ方向の移動)が規制される。
機械部品230は、この構造によって、軸支持部238の脱落を防止し、その耐久性を高めることができる。
図15は、第1実施形態の機械部品10の第3変形例である機械部品240を模式的に示す断面図である。
保持凹部245は、主部245cと、第1面凹部245dとを有する。主部245cは保持凹部245の周縁245aの内面245bに形成されている。第1面凹部245dは部品本体241の第1面241aに形成されている。
軸支持部248は、(部品本体241に対する)厚さ方向の変位を規制する構造を有する。詳しくは、軸支持部248は、本体部248aと、外方延出部248bとを有する。
本体部248aは、主部245cに、部品本体241の全厚さ方向にわたって設けられている。外方延出部248bは、本体部248aの第1面241a側の部分から径方向外方に突出している。外方延出部248bは、部品本体241より薄くされ、部品本体241の厚さ範囲の一部(厚さ方向の中間位置から第1面241aまでの厚さ範囲)に形成されており、第1面凹部245d内に位置している。
軸支持部248は、外方延出部248bが第1面凹部245d内に形成されているため、保持凹部245の底部245eによって下方移動(部品本体241の厚さ方向の移動)が規制される。
機械部品240は、この構造によって、軸支持部248の脱落を防止し、その耐久性を高めることができる。
図16は、第1実施形態の機械部品10の第4変形例である機械部品250を模式的に示す断面図である。
部品本体251に形成された保持凹部255は、主部255cと、第1面251aに形成された第1面凹部255dと、第1面凹部255dの外縁部に形成された外縁凹部255eとを有する。
主部255cは、保持凹部255の周縁255aの内面255bに形成されている。外縁凹部255eは、第1面凹部255dの外縁部の底面に、第2面251bに向けた凹状に形成されている。
本体部258aは、主部255cに、部品本体251の全厚さ方向にわたって設けられている。外方延出部258bは、本体部258aの第1面251a側の部分から径方向外方に突出し、第1面凹部255d内に形成されている。外縁凸部258cは、外方延出部258bの外縁部から第2面251bに向けて突出し、外縁凹部255e内に形成されている。
軸支持部258は、第1面凹部255dの底部と外縁凹部255eの底部によって下方移動(部品本体251の厚さ方向の移動)が規制される。
機械部品250は、この構造によって、軸支持部258の脱落を防止し、その耐久性を高めることができる。
図17は、第1実施形態の機械部品10の第5変形例である機械部品260を模式的に示す断面図である。
保持凹部265は、主部265cと、第1面凹部265dとを有する。主部265cは保持凹部265の周縁265aの内面265bに形成されている。第1面凹部265dは部品本体261の第1面261aに形成されている。
軸支持部268は、(部品本体261に対する)厚さ方向の変位を規制する構造を有する。詳しくは、軸支持部268は、部品本体261より薄くされ、部品本体261の厚さ範囲の一部(厚さ方向の中間位置から第1面261aまでの厚さ範囲)に形成されている。軸支持部268は、径方向に一定の厚さを有する。軸支持部268の外縁を含む部分は第1面凹部265d内に形成されている。
軸支持部268は、一部が第1面凹部265d内に形成されているため、保持凹部265の底部265eによって下方移動(部品本体261の厚さ方向の移動)が規制される。
機械部品260は、この構造によって、軸支持部268の脱落を防止し、その耐久性を高めることができる。
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。ムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースの風防のある方の側、すなわち、文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」又は「文字板側」と称する。
地板の両側のうち、時計ケースの裏蓋のある方の側、すなわち、文字板と反対の側をムーブメントの「表側」又は「裏蓋側」と称する。
図18に示すように、時計1のコンプリート1aは、時に関する情報を示す目盛り3などをもつ文字板2と、時を示す時針4a、分を示す分針4bおよび秒を示す秒針4cを含む針4と、を備えている。
図19は、ムーブメント表側の平面図である。なお図19では、図面を見やすくするため、ムーブメント100を構成する時計部品のうち一部の図示を省略している。
そして巻真110を回転させると、つづみ車(不図示)の回転を介してきち車112が回転する。きち車112の回転により丸穴車114および角穴車116が順に回転し、香箱車120に収容されたぜんまい(不図示)が巻き上げられる。
ぜんまいの復元力により香箱車120が回転すると、香箱車120の回転により二番車124、三番車126、四番車128およびがんぎ車130が順に回転する。これら香箱車120、二番車124、三番車126および四番車128は、表輪列を構成する。
また、筒かなの回転に基づいて日の裏車(不図示)の回転を介して筒車(不図示)が回転し、この筒車に取り付けられた時針4a(図18参照)が「時」を表示するようになっている。
がんぎ車130の外周には歯130aが形成されている。アンクル142は、地板102とアンクル受164との間で回転可能に支持されており、一対のつめ石142a,142bを備えている。アンクル142の一方のつめ石142aが、がんぎ車130の歯130aに係合した状態で、がんぎ車130は一時的に停止している。
機械部品10(てんわ)は、一定周期で往復回転することにより、がんぎ車130の歯130aに、アンクル142の一方のつめ石142aおよび他方のつめ石142bを、交互に係合および解除させている。これにより、がんぎ車130を一定速度で脱進させている。
10,10A,70,80,90,220,230,240,250,260…機械部品
11,71,81,91,221,231,241,251,261…部品本体
12,72,82,92…圧入部
14,74,94…中央孔部(貫通孔)
14a,74a…中央孔部の内縁(貫通孔の内面)
15,75,85,95,225,235,245,255,265…保持凹部(アンカー構造)
15c,75c,95c…最内周位置(第1位置)
15d,75d…最外周位置(第2位置)
19…受け段部
25…当接段部
30…軸部材
31…基材
32…第1マスク
50…電鋳装置
82…受入れ凹部
95d…保持凹部の幅寸法が最大となる位置(第2位置)
100…ムーブメント
Claims (11)
- 軸部材を中心に回動する機械部品であって、
前記軸部材が挿通する貫通孔を有する部品本体と、
前記貫通孔の内面に形成され、前記軸部材が圧入されることにより前記軸部材に固定される圧入部とを有し、
前記貫通孔の内面には、前記圧入部の少なくとも一部を保持することによって、前記部品本体に対する前記圧入部の変位を規制するアンカー構造である保持凹部が形成され、
前記圧入部は、金属材料により形成されている、ことを特徴とする機械部品。 - 前記保持凹部は、第1位置における幅寸法が、前記第1位置より外周側の第2位置における幅寸法より小さくされることによって、前記圧入部が内方に変位するのを規制する、ことを特徴とする請求項1に記載の機械部品。
- 前記保持凹部は、外方に向かって、周方向の寸法が不連続的に大きくなる受け段部を有し、
前記圧入部は、前記受け段部に当接する当接段部を有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の機械部品。 - 前記圧入部は、前記部品本体の周方向の少なくとも1箇所にて分割されている、ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の機械部品。
- 前記部品本体は、前記軸部材の圧入に伴って生じた前記圧入部の膨出変形部分を受け入れる受入れ凹部が形成されている、ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の機械部品。
- 前記圧入部の一部は、前記貫通孔の内面から突出していることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の機械部品。
- 前記圧入部は、前記部品本体に対する厚さ方向の変位を規制する変位規制構造を有する請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の機械部品。
- 前記部品本体は、脆性材料からなることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の機械部品。
- 請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の機械部品を備えたことを特徴とするムーブメント。
- 請求項9に記載のムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
- 軸部材を中心に回動する機械部品の製造方法であって、
前記機械部品は、前記軸部材が挿通する貫通孔を有する部品本体と、前記貫通孔の内面に形成され、前記軸部材が圧入されることにより前記軸部材に固定される圧入部とを有し、前記貫通孔の内面には、前記圧入部の少なくとも一部を保持することによって前記部品本体に対する前記圧入部の変位を規制するアンカー構造である保持凹部が形成され、
前記部品本体となる基材の少なくとも一方の面に、前記圧入部の形状に対応した内形と前記部品本体の外形に対応した外形とを有するマスクを形成し、前記マスクの内形に合わせて前記基材に前記保持凹部を形成する工程と、
少なくとも一部が前記保持凹部に保持されるように、電鋳法により金属材料からなる前記圧入部を形成する工程と、
前記マスクの外形に合わせて前記基材の不要部分を除去する工程と、を有することを特徴とする機械部品の製造方法。
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