JP2016052278A - ベーキング食品用膨張剤、ベーキング食品用プレミックス、ベーキング食品及び炭酸水素ナトリウム用膨張性改善剤 - Google Patents
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本発明のベーキング食品用膨張剤は、炭酸水素ナトリウムと、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分と、を含む。本発明のベーキング食品膨張剤によれば、ベーキング食品に優れた縮みにくさ、キメの細やかさを付与可能である。また、ベーキング食品の蒸したときの変色の抑制をすることができる。
糖カルボン酸は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化されたものであれば、特に限定されない。澱粉分解物又は転移反応物の重合度は、例えば、2〜100等であってもよい。より具体的には、糖カルボン酸は、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、パノース酸化物等が挙げられる。これらのうち、ベーキング食品に優れた縮みにくさ、キメの細やかさを付与可能である点で、マルトビオン酸、マルトトリオン酸が好ましく、マルトビオン酸がより好ましい。これらは、単独で使用してよく、2種以上を併用してもよい。また、糖カルボン酸は、遊離の酸であってもよく、塩又はラクトンであってもよい。
炭酸水素ナトリウム(重曹)は、ベーキング食品の製造において、ガス発生源となるものであり、本発明においては、これに上記糖カルボン酸を併用することで、ベーキング食品に優れた縮みにくさ、キメの細やかさを与えることができる。
本発明のベーキング食品用プレミックスは、穀類粉末と、膨張剤とを含む。
本発明は、上記プレミックスが用いられたベーキング食品を包含する。
本発明の炭酸水素ナトリウム用膨張性改善剤は、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分からなる。本明細書において、「膨張性」とは、ベーキング食品の製造における膨張時の縮みにくさ、キメの細やかさ、膨らみを意味する。
30%マルトース溶液(サンエイ糖化株式会社製)1000mlに、5%パラジウム炭素(川研ファインケミカル株式会社製)を9g添加した。この溶液を40℃に保持した後、空気1.0L/min、回転数600rpmで反応を開始させた。反応pHを9.0に維持するように20%水酸化ナトリウム溶液を連続的に添加した。反応開始から6時間後、触媒を含む反応液を遠心分離と0.2μmのメンブレンフィルターとでろ過し、マルトビオン酸ナトリウム溶液を得た。この溶液を強酸性カチオン交換樹脂(ダウケミカル社製、商品名「DOWEX−88」)2Lをつめたカラムへ通液することで脱塩処理を行った。次に、弱塩基性アニオン交換樹脂(三菱化学社製、商品名「WA30」)200mlと強酸性カチオン交換樹脂(ダウケミカル社製、商品名「DOWEX−88」)200mlの混合樹脂をつめたカラム、次いで粒状活性炭(武田薬品工業製、粒状白鷺)200mlをつめたカラムに順次通液し脱色を行った後、減圧濃縮と凍結乾燥によりマルトビオン酸粉末285gを得た。
調製例1のマルトースの代わりに、マルトトリオース含量19質量%、マルトース含量57質量%、グルコース含量1質量%のマルトース水飴(サンエイ糖化社製)を用いた以外は、上記調製例1と同じ方法により、マルトビオン酸を主成分とするマルトース水飴酸化物粉末を得た。
調製例1で得たマルトビオン酸粉末30gをそれぞれ蒸留水100mlへ溶解後、炭酸カルシウムに対して2:1のモル重量比となるように攪拌しながら少しずつ添加した。反応終了後の溶液を0.2μmフィルターで濾過し、凍結乾燥することで、マルトビオン酸カルシウム粉末を得た。
炭酸カルシウムの代わりに炭酸マグネシウムを用いた以外は、調製例3と同様の方法により、マルトビオン酸マグネシウム粉末を得た。
マルトビオン酸粉末の代わりに調製例2のマルトース水飴酸化物粉末を用いた以外は、調製例3と同様の方法により、マルトビオン酸カルシウムを主成分とするマルトース水飴酸化カルシウム粉末を得た。
調製例1で得たマルトビオン酸粉末30gをそれぞれ蒸留水100mlへ溶解後、水酸化ナトリウムを1:1のモル重量比となるように攪拌しながら少しずつ添加した。反応終了後の溶液を0.2μmフィルターで濾過し、凍結乾燥することで、マルトビオン酸ナトリウム粉末を得た。
(比較例1)
上白糖80gと全卵120gを比重が0.35g/ml程度となるようにハンドミキサーD−1089D(パール金属)で3分攪拌した。これに薄力粉100gと炭酸水素ナトリウム(重曹)0.5gをふるい入れ、ゴムヘラで粉気が無くなるまで切り混ぜた。その後、無塩の溶かしバター90gを加え油気が無くなるまで切り混ぜ、蒸しケーキ用生地を作製した。これを丸形のシリコンカップ(容積78ml)へ30gずつ分注し、蒸し器で10分間蒸した後、室温で1時間放冷して、比較例1に係る蒸しケーキを製造した。
生地に対するカルシウム量が約150mg/100gとなるように、上白糖の一部を炭酸カルシウムに置き換えて配合した以外は、比較例1に係る蒸しケーキと同様の方法により、比較例2に係る蒸しケーキを製造した。
生地に対するカルシウム量が約150mg/100gとなるように、上白糖の一部を、調製例5で調製したマルトース水飴酸化カルシウムに置き換えて配合した以外は、比較例1に係る蒸しケーキと同様の方法により、実施例1に係る蒸しケーキを製造した。
室温で1時間放冷した後の、実施例1、比較例1及び2に係る蒸しケーキについて、変色の程度を評価した。表1に評価結果と、各蒸しケーキの配合、pHを示す。なお、以下の表において、「Ca」はカルシウム、「Mg」はマグネシウム、「Na」はナトリウムをそれぞれ指す。
(比較例3)
比較例1で用いた炭酸水素ナトリウムをベーキングパウダーとし、蒸し時間を12分とした以外は、比較例1に係る蒸しケーキと同様の方法で、比較例3に係る蒸しケーキを製造した。比較例3に係る蒸しケーキの配合を、以下の表2に示す。
薄力粉100質量部に対して10質量部の、調製例3のマルトビオン酸カルシウムを、表2の上白糖の一部と置き換えて配合した以外は、比較例3に係る蒸しケーキと同様の方法で、実施例2に係る蒸しケーキを製造した。
薄力粉100質量部に対して10質量部の、調製例4のマルトビオン酸マグネシウムを、表2の上白糖の一部と置き換えて配合した以外は、比較例3に係る蒸しケーキと同様の方法で、実施例3に係る蒸しケーキを製造した。
薄力粉100質量部に対して10質量部の、調製例6のマルトビオン酸ナトリウムを、表2の上白糖の一部と置き換えて配合した以外は、比較例3に係る蒸しケーキと同様の方法で、実施例4に係る蒸しケーキを製造した。
比較例3、実施例2〜4に係る蒸しケーキの評価は、「蒸し縮み」、「キメ」、「膨らみ」について画像処理により数値化することによって、評価した。
蒸し縮み:断面積に占める蒸し縮みの割合(%)={(青強度60〜130の画素数)−(輝度130〜170)}÷(輝度130以上の画素数)×100
キメ:断面積に占める気泡の割合(%)=(輝度130〜170の画素数)÷{(輝度130以上の画素数)−(青強度60〜130の画素数)+(輝度130〜170)}×100・・・・断面積中の蒸し縮みを排除して計算
膨らみ:比較例3に係る蒸しケーキ断面積を100%とした時の変化率(%)=(輝度130以上の画素数)/(比較例3に係る蒸しケーキの輝度130以上の画素数)×100
(比較例4)
カルシウム含有量8.9質量%のグルコン酸カルシウムを、生地に対し約150mg/100gのカルシウム量となるように、上白糖の一部を置き換えて配合した以外は、比較例3に係る蒸しケーキと同様の方法で、比較例4に係る蒸しケーキを製造した。
カルシウム含有量13質量%の乳酸カルシウムを、生地に対し約150mg/100gのカルシウム量となるように、上白糖の一部を置き換えて配合した以外は、比較例3に係る蒸しケーキと同様の方法で、比較例5に係る蒸しケーキを製造した。
カルシウム含有量40質量%の炭酸カルシウムを、生地に対し約150mg/100gのカルシウム量となるように、上白糖の一部を置き換えて配合した以外は、比較例3に係る蒸しケーキと同様の方法で、比較例6に係る蒸しケーキを製造した。
調製例5のカルシウム含有量4.1質量%のマルトース水飴酸化カルシウムを、生地に対し約150mg/100gのカルシウム量となるように、上白糖の一部を置き換えて配合した以外は、比較例3に係る蒸しケーキと同様の方法で、実施例5に係る蒸しケーキを製造した。
蒸し時間の違いによる影響を観察するため、蒸し時間9分、10分、11分、12分毎に蒸し器より蒸しケーキを取り出して、評価2と同様の評価方法で、比較例3〜6、実施例5に係る蒸しケーキについて、蒸し縮み、キメを評価した。その評価結果を表5に示す。また、比較例3〜6、実施例5に係る蒸しケーキの各蒸し時間における、断面画像を図3に示す。
(実施例6)
調製例5のマルトース水飴酸化カルシウムを、薄力粉100質量部に対して2.5質量部となるように上白糖の一部と置き換えて配合した以外は、比較例3に係る蒸しケーキと同様の方法で、実施例6に係る蒸しケーキを製造した。
調製例5のマルトース水飴酸化カルシウムを、薄力粉100質量部に対して5質量部となるように配合した以外は、実施例6に係る蒸しケーキと同様の方法で、実施例7に係る蒸しケーキを製造した。
調製例5のマルトース水飴酸化カルシウムを、薄力粉100質量部に対して10質量部となるように配合した以外は、実施例6に係る蒸しケーキと同様の方法で、実施例8に係る蒸しケーキを製造した。
調製例5のマルトース水飴酸化カルシウムを、薄力粉100質量部に対して15質量部となるように配合した以外は、実施例6に係る蒸しケーキと同様の方法で、実施例9に係る蒸しケーキを製造した。
評価2と同様の評価方法で、実施例6〜9に係る蒸しケーキについて、蒸し縮み、キメ、膨らみの評価を行った。比較例3、実施例6〜9に係る蒸しケーキについての評価結果を表6に示す。また、比較例3、実施例6〜9に係る蒸しケーキの断面画像を図4に示す。
(実施例10)
調製例2のマルトース水飴酸化物2gと、生地に対して約150mg/100gのカルシウム量となる量の炭酸カルシウムとを、上白糖の一部と置き換えて配合した以外は、比較例3に係る蒸しケーキと同様の方法で、実施例10に係る蒸しケーキを製造した。なお、マルトース水飴酸化物は全卵及び上白糖を目標の比重まで泡立てた後に添加した。
調製例2のマルトース水飴酸化物2gに代えて、調製例2のマルトース水飴酸化物4gを用いた以外は、実施例10に係る蒸しケーキと同様の方法で、実施例11に係る蒸しケーキを製造した。
炭酸カルシウムに代えて、マルトース水飴酸化カルシウムを用いた以外は、実施例10に係る蒸しケーキと同様の方法で、実施例12に係る蒸しケーキを製造した。
評価2と同様の評価方法で、実施例10〜12に係る蒸しケーキについて、蒸し縮み、キメ、膨らみの評価を行った。比較例3、比較例6、実施例10〜12に係る蒸しケーキについての評価結果を表7に示す。
(比較例7)
薄力粉を小麦澱粉とした以外は、比較例3に係る蒸しケーキと同様の方法で、比較例7に係る蒸しケーキを製造した。
炭酸カルシウムを、生地に対して約100mg/100gのカルシウム量となるように、上白糖の一部を置き換えて配合した以外は、比較例7に係る蒸しケーキと同様の方法で、比較例8に係る蒸しケーキを製造した。
調製例5のマルトース水飴酸化カルシウムを、生地に対して約100mg/100gのカルシウム量となるように、上白糖の一部を置き換えて配合した以外は、比較例7に係る蒸しケーキと同様の方法で、実施例13に係る蒸しケーキを製造した。
評価2と同様の評価方法で、比較例7、比較例8、実施例13に係る蒸しケーキについて、蒸し縮み、キメ、膨らみの評価を行った。その評価結果を表6に示す。また、比較例7、比較例8、実施例13に係る蒸しケーキの断面画像を図4に示す。
Claims (11)
- 炭酸水素ナトリウムと、重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分と、を含む、ベーキング食品用膨張剤。
- 前記糖カルボン酸が、マルトビオン酸、イソマルトビオン酸、マルトトリオン酸、イソマルトトリオン酸、マルトテトラオン酸、マルトヘキサオン酸、及びパノース酸化物からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む、請求項1に記載の膨張剤。
- 前記糖カルボン酸が、マルトオリゴ糖酸化物、分岐オリゴ糖酸化物、水飴酸化物、粉飴酸化物又はデキストリン酸化物の形態で含まれる、請求項1又は2記載の膨張剤。
- 前記塩類が、カルシウム塩、マグネシウム塩及びナトリウム塩からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む、請求項1から3いずれかに記載の膨張剤。
- 前記炭酸水素ナトリウムと、前記成分との質量比が1:2〜1:40である、請求項1から4のいずれかに記載の膨張剤。
- 穀類粉末と、請求項1から5のいずれかに記載の膨張剤とを含む、ベーキング食品用プレミックス。
- 前記穀類粉末が小麦澱粉である、請求項6に記載のプレミックス。
- 前記成分の含有量が、前記穀類粉末100質量部に対して2.5質量部以上である、請求項6又は7に記載のプレミックス。
- 冷凍生地用又は冷蔵生地用である、請求項6から8のいずれかに記載のプレミックス。
- 請求項6から9のいずれかに記載のプレミックスが用いられたベーキング食品。
- 重合度2以上の澱粉分解物又は転移反応物の還元末端側のアルデヒド基が酸化された糖カルボン酸、その塩類及びそのラクトンからなる群から選択される少なくとも1つ以上からなる成分からなる、炭酸水素ナトリウム用膨張性改善剤。
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