JP2016049699A - 防汚性構造体、これを有する積層体及び画像表示装置 - Google Patents

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伸 宮之脇
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かおり 山下
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Mikio Ishikawa
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Abstract

【課題】表面の指紋付着防止性及び指紋拭取り性が良好であり、タッチパネルの画像表示部のように手指の接触、押圧が繰り返される部位に適用しても防汚性が持続し、画像視認性にも優れる防汚性構造体、これを有する積層体及び画像表示装置を提供する。【解決手段】同一表面に、連続した1つの平面部1と、周期的に配列された複数の凹部2とを有し、凹部2の平面部1からの深さが25〜180nmであり、凹部2のピッチpが60〜1000nmであり、平面部1と凹部2の開口部との合計面積に対する平面部1の面積比率が20〜90%である防汚性構造体100、これを有する積層体及び画像表示装置。【選択図】図1

Description

本発明は、防汚性構造体、これを有する積層体及び画像表示装置に関する。詳しくは、スマートフォンやタブレット型端末などの画像表示装置において、指紋付着防止性の付与などを目的として画像表示部の表面に好適に用いられる防汚性構造体、これを有する積層体及び画像表示装置に関する。
近年、タブレット型端末ならびにスマートフォンに代表される双方向の通信機能を備え、かつ情報表示ならびに情報入力用の透明タッチパネルを搭載したモバイル型の情報端末機器が、日本ばかりでなく世界で広く普及しはじめてきた。
タッチパネルを搭載した情報端末機器は、該端末の画像表示部表面に手指を直接接触させ、かつ押圧して操作するため、指紋や皮脂が付着しやすいという問題がある。そのためこれら画像表示部表面は防汚性を有することが好ましい。該防汚性としては、具体的には指紋が付着し難いこと、指紋の拭取りが容易であること、これらの効果が長期にわたり持続されることが必要になる。
一般に、物質表面に防汚性を付与する方法としては、表面に撥水性又は撥油性の膜を形成する方法、表面に凹凸を形成する方法、及びこれらの方法を組み合わせる方法などが知られている。
例えば特許文献1には、水より表面張力が低い液体に対して平坦な表面で親液性を示す基板を用い、該基板の表面に凹部が複数形成されており、該凹部の内壁が基板の厚さ方向に略並行である撥液増大構造体が開示されている。
特許文献2には、複数の突起が設けられた表面を有し、該突起が末端以外の部分にエステル結合を有する第1の化合物、および環状炭化水素基を有する第2の化合物の少なくとも一方を含んでいる防汚体が、表面に指紋が付着した場合、何もせずとも指紋のパターンが濡れ広がり、見えにくくなる機能を有することが開示されている。
特許文献3には、他物体との接触摩擦により表面が摩耗される物品であって、該物品の基材を構成する物質もしくは他の物質により表面が10μm以上の凹凸が形成され、該凹凸表面が共有結合したフッ化炭素基または炭化水素基を含む分子が形成した防汚性被膜を有する物品が開示されている。
また特許文献4には、透明な支持基板と、該支持基板の表面に形成され、フッ素を含有する保護層とを有し、該保護層が周期的に連続な凹凸構造を有し、かつ特定の要件を満たす、反射防止機能と防汚機能とを兼ね備えた保護フィルムが開示されている。
特開2006−182014号公報 国際公開第2014/034629号 特開2003−145669号公報 特開2007−76242号公報
しかしながら特許文献1〜3には、タッチパネルの画像表示部などのように、画像の視認性が要求され、かつ手指の接触、押圧が繰り返されるような部位に対する防汚性及び防汚耐久性については言及されていない。
例えば特許文献2のように表面に複数の突起を設けた構造では、タッチパネルの画像表示部表面に用いた場合、手指の接触、押圧が繰り返されることにより該突起が破損し、防汚耐久性が低下するおそれがある。特許文献3に開示された方法では表面に10μm以上の大きさの凹凸が形成されるため、タッチパネルの画像表示部表面に用いた場合には該凹凸の存在により画像の視認性が低下する。
特許文献4の保護フィルムに関しては、タッチパネルなどに適用した場合、指の接触による指紋、皮脂等の付着による視認性の劣化を抑制することが開示されているものの、その具体的な効果については実施例で示されておらず、特に防汚耐久性については何ら言及されていない。
本発明の課題は、表面の指紋付着防止性及び指紋拭取り性が良好であり、タッチパネルの画像表示部のように手指の接触、押圧が繰り返される部位に適用しても防汚性が持続し、画像視認性にも優れる防汚性構造体、これを有する積層体及び画像表示装置を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、同一表面に、連続した1つの平面部と、周期的に配列された複数の凹部とを有し、該凹部の形状等を所定の範囲とした防汚性構造体が上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[4]を提供する。
[1]同一表面に、連続した1つの平面部と、周期的に配列された複数の凹部とを有し、該凹部の該平面部からの深さが25〜180nmであり、該凹部のピッチが60〜1000nmであり、該平面部と該凹部の開口部との合計面積に対する該平面部の面積比率が20〜90%である、防汚性構造体。
[2]下記工程1及び工程2を有する、上記[1]の防汚性構造体の製造方法。
工程1:鋳型を用いて被転写材料に該鋳型の形状を転写し、同一表面に、連続した1つの平面部と、周期的に配列された複数の凹部とを有する非防汚性構造体を得る工程
工程2:前記非防汚性構造体表面にフッ素含有材料を蒸着して防汚性機能層を形成し、防汚性構造体を得る工程
[3]基材上に上記[1]の防汚性構造体を有する積層体。
[4]上記[1]の防汚性構造体を有する画像表示装置。
本発明の防汚性構造体は、表面の指紋付着防止性及び指紋拭取り性が良好であり、タッチパネルの画像表示部のように手指の接触、押圧が繰り返される部位に適用しても防汚性が持続される。また、画像表示部表面に用いた際にも視認性を損なわないことから、本発明の防汚性構造体及びこれを有する積層体は、タッチパネルを備えた画像表示装置などの各種画像表示装置の前面板、あるいは各種画像表示装置の画像表示部表面に用いる防汚性フィルムとして好適に用いられる。
本発明の防汚性構造体を上面(表面側)から見た平面模式図である。 本発明の防汚性構造体の斜視図である。 本発明の防汚性構造体の凹部開口部に対し垂直方向の断面模式図である。 実施例1で得られた防汚性構造体の、凹部開口部に対し垂直方向の断面写真である。
以下、本発明の実施形態を説明する。
[防汚性構造体]
本発明の防汚性構造体は、同一表面に、連続した1つの平面部と、周期的に配列された複数の凹部とを有し、該凹部の該平面部からの深さが25〜180nmであり、該凹部のピッチが60〜1000nmであり、該平面部と該凹部の開口部との合計面積に対する該平面部の面積比率が20〜90%であることを特徴とする。なお本発明において「防汚性」とは、θ/2法を用いて測定した、23℃における純水の静的接触角が90°以上であることをいう。本発明において純水の静的接触角は、防汚性構造体の表面に1.0μLの純水を滴下し、着滴1秒後に、θ/2法に従って、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から測定される値である。測定装置としては、例えば、協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」を用いることができる。純水の静的接触角は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の防汚性構造体は上記構成を有することにより、表面の指紋付着防止性及び指紋拭取り性が良好であり、手指の接触、押圧が繰り返されても防汚性が持続する(以下「防汚耐久性」ともいう)という効果を奏する。また本発明の防汚性構造体は、画像表示装置などの画像表示部表面に設けた際の画像視認性にも優れる。
本発明の防汚性構造体が上記効果を奏する理由は、以下のように考えられる。
物質表面に防汚性を付与する方法としては、表面に撥水性又は撥油性などの防汚性の膜を形成する方法などが知られている。しかしながら、例えば平面上に防汚性機能層を形成したフィルムをタッチパネルの画像表示部表面に設けた場合には、該層の表面が直接手指で擦られるため、該層が剥がれることなどにより防汚性が徐々に低下し、防汚耐久性が不足する。
これに対し本発明の防汚性構造体は、表面に周期的に配列された所定の形状の凹部を複数有するため、この構造に由来して撥液性が向上するとともに、防汚性を有する部分の表面積が増加する。また凹部内部には手指が直接接触しないことから、凹部内部においては防汚性機能層の剥がれも発生し難い。したがって本発明の防汚性構造体の表面には指紋が付着し難く、かつ、防汚耐久性も向上すると考えられる。
また本発明の防汚性構造体は、表面に連続した1つの平面部を有することを特徴とする。連続した1つの平面部を有さない構造として、例えば表面に複数の凸部を設けた構造が挙げられるが、このような構造をタッチパネルの画像表示部表面に設けた場合には、手指の接触、押圧が繰り返されることにより該凸部が破損し、防汚耐久性が低下することが予想される。本発明の防汚性構造体においてはこのような構造の破損を生じ難いため、防汚耐久性が向上すると考えられる。
さらに本発明においては、凹部が所定範囲の深さを有することで、上記効果を奏することに加えて、表面に手指が接触した際に凹部内に皮脂が埋没して拭き取れなくなるなどの現象を回避できるので、指紋の拭取り性も良好である。また該凹部が所定範囲のピッチを有することで、本発明の防汚構造体を画像表示部の表面に設けたとしても画像の視認性を損なわない。
本発明の防汚性構造体を、図面を用いて説明する。図1は本発明の防汚性構造体を上面(表面側)から見た平面模式図、図2は斜視図、図3は凹部開口部に対し垂直方向の断面模式図である。なお図1〜図3は、いずれも本発明の防汚性構造体の一部を拡大した模式図である。
本発明の防汚性構造体100は、同一表面に平面部1と凹部2とを有する。平面部1は連続した1つの平面である。凹部2は防汚性構造体100の表面全体に複数存在し、周期的に配列されている。本発明において「周期的に配列」とは、略同一形状の開口部を有する凹部が等間隔に繰り返し配列されていることをいう。但し、すべての凹部が等間隔に繰り返し配列されていなければならないという趣旨ではなく、本発明の効果を損なわない範囲で、周期をずらしたものや、部分的に凹部が抜けた配列のものなども含まれる。凹部の配列形式は特に制限されず、例えば正方配列、三方配列などが挙げられる。
図1〜図3において、凹部2の平面部1からの深さはh、凹部2のピッチはpで示す。ピッチpは、隣接する凹部2の開口部の一方の中心と他方の中心との距離をいう。また凹部2の開口部は略円形であり、該開口部の内径をdで示す。
本発明の防汚性構造体においては、凹部2の平面部1からの深さhは25〜180nmである。深さhが25nm未満では、凹部を形成したことによる表面積の増加が少ないため本発明の効果が発現されず、構造体の製造も困難である。また深さhが180nmを超えると、表面に手指が接触した際に凹部内に皮脂が埋没しやすく、指紋の拭取り性が低下する。また、画像表示装置などの画像表示部表面に適用した際に画像の視認性が低下する場合がある。これらの観点から、凹部の深さhは、好ましくは25〜150nm、より好ましくは30〜100nm、さらに好ましくは30〜80nmである。
また本発明の防汚性構造体においては、凹部2のピッチpは60〜1000nmである。ピッチpが60nm未満では構造体の製造が困難である。またピッチpが1000nmを超えると、画像表示装置などの画像表示部表面に適用した際に画像の視認性が低下する場合がある。これらの観点から、凹部のピッチpは、好ましくは100〜450nm、より好ましくは100〜350nmである。
図1〜図3には凹部2の開口部が略円形のものを図示するが、この形状に制限されない。凹部2の開口部の形状としては、略円形の他、多角形でもよい。防汚性を有する表面積を増加させる観点、及び画像視認性の低下を回避する観点からは、略円形が好ましい。開口部の形状が略円形であると、開口部が多角形の場合のように角部で発生する光の散乱がなく、画像視認性の低下が少ないためである。略円形としては正円や楕円等が挙げられるが、画像視認性の点から正円が好ましい。多角形の場合も、画像視認性の点から正多角形が好ましい。
また指紋の拭取り性を向上させる観点からは、凹部の開口部の形状が三角形のものも好ましい。三角形の凹部側面の角部が皮脂の流路として機能すると考えられるためである。
本発明の防汚性構造体において、該開口部の内径dは、好ましくは50〜500nm、より好ましくは50〜400nm、さらに好ましくは50〜350nm、よりさらに好ましくは100〜300nmである。凹部2の開口部の内径dが50nm以上であれば防汚構造体の生産性が良好であり、また500nm以下であれば画像視認性が良好である。
なお本発明において、凹部の開口部の内径とは、開口部が正円形である場合は、正円の直径を、楕円形である場合は、該楕円の長径を意味する。凹部の開口部が多角形である場合は、該多角形の重心から頂点までの距離のうち、最長のものの2倍を意味する。
また凹部2の平面部1からの深さhと、凹部2の開口部の内径dとの比率h/dは、防汚性を有する表面積を増加させる観点、画像視認性の観点から、好ましくは0.02〜2の範囲、より好ましくは0.05〜1の範囲、さらに好ましくは0.1〜0.5の範囲である。
図2及び図3において、本発明の防汚性構造体の凹部2の内部側面をzで示す。凹部2の内部側面zの形状は、平面部1に対し略垂直であるか、又は、凹部2の開口部から底面部に向けて断面積が小さくなるような傾きを有することが好ましく、略垂直であることがより好ましい。凹部の内部側面の形状が平面部に対し略垂直である場合には、凹部2の開口部から底面部に向けて断面積が小さくなるような傾きを有する形状と比較して、防汚性を有する表面の表面積を増加させる観点で有利になる。また、反対に凹部2の開口部から底面部に向けて断面積が大きくなるような傾きを有する形状(逆テーパー形状)と比較して、構造体の製造が容易であるからである。
本発明の防汚性構造体の凹部2の深さ及び内部側面の形状は、防汚性構造体の断面を走査型電子顕微鏡により観察し、測定することができる。凹部2のピッチ、並びに開口部の形状及び大きさは、防汚性構造体表面を、電子走査型微細寸法測定装置を用いて加速電圧1.5kV、エミッション電流6pAの条件で観察し、またその実画像からピッチ及び開口部の大きさを測定することができる。
本発明の防汚性構造体は、平面部1と凹部2の開口部との合計面積に対する平面部1の面積比率(以下「平面部の面積比率」又は単に「面積比率」ともいう)が20〜90%である。当該面積比率が20%未満であると、防汚構造体表面の滑り性が低下する。また構造体の強度が低下するため、手指の接触、押圧が繰り返されることにより構造体が破損するおそれがある。上記観点から、当該面積比率は好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上である。また、防汚性構造体表面の表面積を増加させる観点から、当該面積比率は90%以下、好ましくは80%以下である。当該面積比率が90%を超えると、防汚性構造体表面の表面積向上効果が少ないため、指紋付着防止性が低下する。
防汚性構造体の平面部の面積比率は、具体的には実施例に記載の方法で求めることができる。
なお本発明において「滑り性」とは、汚れの取れやすさを表す指標である。滑り性は、純水及びn−ヘキサデカンの滑落角を測定することで評価でき、該滑落角が小さいほど滑り性が良好である。滑落角は、測定対象物である防汚性構造体の表面に、水平な状態で1.5μLの純水及び3μLのn−ヘキサデカンを滴下し、防汚性構造体を徐々に傾斜させて、液滴が滑り始める傾斜角度(滑落角)を測定することにより求められる。測定装置としては、例えば、協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」を用いることができる。滑落角は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
以上のような形状及び性能を有する本発明の防汚性構造体を構成する材料は、画像表示装置などの画像表示部表面に適用した際に画像視認性を損なわない程度の透明性を有するものであれば、特に制限はない。
本発明の防汚性構造体は、例えば、23℃における、純水の静的接触角が、θ/2法で90°以上である、防汚性を有する透明性成形材料を直接成形して作製されたものでもよい。あるいは、防汚性を有さない透明性成形材料を成形して作製された非防汚性構造体の表面に、後述する防汚性機能層を有するものでもよい。材料の選択性、加工性、及び、構造体表面により多くの防汚性官能基を存在させることができる観点からは、後者の態様が好ましい。なお「非防汚性」とは、23℃における表面の水の静的接触角が90°未満であることをいい、好ましくは60°未満である。
<防汚性を有する透明性成形材料>
当該防汚性を有する透明性成形材料としては、防汚性の観点から、フッ素含有樹脂材料が好ましい。例えば、フッ素成分を含有する、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、又はこれらの樹脂組成物などが挙げられる。なかでも、得られる防汚性構造体の防汚性及び硬度の点から、フッ素成分を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物が好ましい。当該フッ素成分としては、フッ素含有モノマー、オリゴマー、ポリマーなどのフッ素含有電離放射線硬化性樹脂や、パーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキレン基及びパーフルオロアルキル基から選ばれる少なくとも1種の基を有する添加剤などが挙げられる。当該添加剤の市販品としては、変性パーフルオロポリエーテルであるオプツ−ルDAC(商品名、ダイキン工業(株)製)などが挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂組成物中のフッ素成分の含有量は、得られる防汚性構造体の防汚性、硬度及び経済性の観点から、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは3〜15質量%である。
なお本発明において、電離放射線硬化性樹脂組成物は電離放射線を照射することにより硬化する樹脂組成物であり、電離放射線としては、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するもの、例えば、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるほか、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も用いられる。
フッ素成分を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物は、上記フッ素成分以外に、フッ素を含有しない電離放射線硬化性樹脂を含有してもよい。このような樹脂としては、従来電離放射線硬化性の樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマー(ないしはプレポリマー)の中から適宜選択して用いることができる。
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート単量体が好適であり、なかでも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。
多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリレートモノマーであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどのトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの4官能以上の(メタ)アクリレート;上記した多官能性(メタ)アクリレートモノマーのエチレンオキシド変性品、プロピレンオキシド変性品、カプロラクトン変性品、プロピオン酸変性品などが好ましく挙げられる。これらのなかでも、優れた硬度が得られる観点から、トリ(メタ)アクリレートよりも多官能の、すなわち3官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。これらの多官能性(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性オリゴマーとしては、分子内にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系のオリゴマーなどが好ましく挙げられる。さらに、重合性オリゴマーとしては、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマーなども好ましく挙げられる。これらのオリゴマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性オリゴマーは、数平均分子量(GPC法で測定したポリスチレン換算の数平均分子量)が20,000以下のものが好ましく、より好ましくは300〜10,000であり、さらに好ましくは300〜5,000である。
フッ素成分を含有する電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合には、該電離放射線硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、例えば、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、アルキルフェノン系、ベンゾイン系、ケタール系、アントラキノン系、ジスルフィド系、チオキサントン系、チウラム系、フルオロアミン系などの光重合開始剤が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このような光重合開始剤は市販品として入手可能であり、例えば、「イルガキュア184(商品名)」(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、「イルガキュア907(商品名)」(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、「イルガキュア127(商品名)」(2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン)(いずれもBASF社製)などが挙げられる。
当該電離放射線硬化性樹脂組成物中の光重合開始剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1〜7質量部がより好ましい。
<防汚性を有さない透明性成形材料>
一方、前記防汚性を有さない透明性成形材料としては、所望の形状の非防汚性構造体を形成しうる材料であれば特に制限はない。例えば、ガラス板、スピン−オン−グラス(SOG)材料などの各種無機系材料、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などの各種有機系樹脂材料、有機−無機複合材料などが挙げられる。なかでも、材料の加工性、得られる構造体の機械的強度、及び防汚性機能層の形成しやすさなどの観点から、SOG材料又は有機−無機複合材料が好ましく、SOG材料がより好ましい。SOG材料としては、メチルシロキサンなどのアルキルシロキサン系材料や、ヒドロキシシルセスキオキサン系材料、シラザン系材料、シルセスキオキサン系材料などが挙げられ、耐久性などの点からシルセスキオキサン系材料が好ましい。
市販品のSOG材料としては、例えば層間絶縁膜用塗布材料「HSG」(商品名、日立化成(株)製)、東京応化工業(株)製のOCNシリーズなどが挙げられる。また市販品の有機−無機複合材料としては、UV照射により最表面が自発的に無機化する有機−無機複合材料(商品名「NH−1000G」、日本曹達(株)製)などが挙げられる。
<防汚性機能層>
防汚性機能層は、防汚性を有する層であり、好ましくは前記非防汚性構造体の表面に形成される。防汚性機能層を構成する材料としては23℃における水の静的接触角が90°以上の層を形成できる材料であれば特に制限はなく、例えば、フッ素含有材料、シリコーン含有材料、前記フッ素含有材料以外のシランカップリング剤などが挙げられる。なかでも、高い防汚性を付与する観点から、フッ素含有材料が好ましい。
防汚性機能層を構成するフッ素含有材料としては、パーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキレン基及びパーフルオロアルキル基から選ばれる少なくとも1種の基を有するフッ素含有材料などが挙げられる。
防汚性機能層は、前記非防汚性構造体表面に存在する平面部及び凹部内部を均一に被覆し、かつ該構造体表面との密着性を有することが好ましい。また構造体表面を被覆する際には、凹部が埋まらないように、厚みの薄い層であることが好ましい。これらの観点から、防汚性機能層を構成するフッ素含有材料のなかでも、パーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキレン基及びパーフルオロアルキル基から選ばれる少なくとも1種の基を有するシラン化合物が好ましく、パーフルオロアルキル基を有するシラン化合物から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、パーフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物がさらに好ましい。これらの材料は、ガラス板表面やSOG材料との反応性を有するシラン部位を有するためである。また蒸着法やディップ法などを用いて該構造体表面に厚みの薄い層を形成することが可能であり、かつ層の厚みを薄くしても高い防汚性を付与できるためである。
市販されているパーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキレン基及びパーフルオロアルキル基から選ばれる少なくとも1種の基を有するシラン化合物としては、KP−801、X−71、KY−130、KY−178(いずれも商品名、信越化学工業(株)製)、オプツ−ルDSX(商品名、ダイキン工業(株)製)などが好ましく使用できる。
防汚性機能層の厚みは、凹部が埋まらないように前記非防汚性構造体表面を均一に被覆して防汚性を付与する観点から、2〜50nmが好ましく、2〜20nmがより好ましい。
防汚性機能層の形成方法には特に制限はなく、従来公知の方法の中から適宜選択すればよい。例えば、蒸着法、グラビアコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法などの公知の方法を使用できる。前記非防汚性構造体表面に厚みの薄い層を均一に形成する観点からは、防汚性機能層の形成方法は蒸着法又はディップコート法が好ましく、蒸着法がより好ましい。
また、防汚性機能層と非防汚性構造体との密着性を向上させて耐傷性を向上させる目的で、防汚性機能層と非防汚性構造体の層間にSiO2密着層を形成してもよい。SiO2密着層は一般的にイオンアシスト法により非防汚性構造体上に形成される。
[防汚性構造体の製造方法]
本発明の防汚性構造体の製造方法にも特に制限はなく、該防汚性構造体を構成する材料の種類などに応じて適宜選択することができる。例えば、防汚性構造体を構成する前記成形材料を、切削法、フォトリソグラフィー法、印刷法、電子線描画法、及び、エンボス法、UVナノインプリント法、熱ナノインプリント法、室温ナノインプリント法、熱UVナノインプリント法などの各種転写法を用いて加工する方法が挙げられる。本発明においては、微細な形状を有する構造体を作製する観点、並びに生産性、低コスト化、大面積化の観点から、転写法を用いることが好ましい。
本発明の防汚性構造体を転写法を用いて製造する方法としては、下記工程1及び工程2を有する方法(以下「本発明の製造方法」ともいう)が好ましい。該方法を用いることにより、本発明の防汚性構造体を低コストで効率よく製造することができる。
工程1:鋳型を用いて被転写材料に該鋳型の形状を転写し、同一表面に、連続した1つの平面部と、周期的に配列された複数の凹部とを有する非防汚性構造体を得る工程
工程2:前記非防汚性構造体表面にフッ素含有材料を蒸着して防汚性機能層を形成し、防汚性構造体を得る工程
以下、本発明の製造方法について説明する。
(工程1)
工程1では、鋳型を用いて被転写材料に該鋳型の形状を転写し、同一表面に、連続した1つの平面部と、周期的に配列された複数の凹部とを有する非防汚性構造体を得る。
工程1で用いる鋳型は、被転写材料に対し所望の凹部を形成可能な凸部を有するものである。この鋳型の凸部を有する面を被転写材料に転写することにより、該被転写材料に、連続した1つの平面部と周期的に配列された複数の凹部とを同一表面に有する形状を形成することができる。
鋳型の材質には特に制限はなく、ガラス、石英、金属、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの耐熱性樹脂等を用いることができる。
鋳型の製造方法にも特に制限はなく、鋳型の材質及び凸部の形状などに応じて公知の方法を選択することができるが、微細パターンを形成する観点から、フォトリソグラフィー法を用いることが好ましい。フォトリソグラフィー法では、鋳型用の基材上にレジスト膜を形成した後、所望の凸部形状を形成可能な微細パターンを有するマスクを介して露光するか、又は電子線描画を行い、次いで現像工程、エッチング工程を順に行うことにより、鋳型を製造することができる。特に、数十ナノメートルオーダーの微細なパターンを有する鋳型を製造する観点からは、電子線描画法を用いてパターンを描画することが好ましい。
また本発明においては、上記方法を用いてマスターモールドを製造し、該マスターモールドの形状をさらにポリジメチルシロキサンなどに転写して得られた鋳型を用いてもよい。
被転写材料としては、前述した、防汚性を有さない透明性成形材料を用いることができる。なかでも、材料の加工性、得られる構造体の機械的強度、及び工程2における防汚性機能層の形成しやすさなどの観点から、前述したSOG材料又は有機−無機複合材料が好ましく、SOG材料がより好ましく、シルセスキオキサン系材料がさらに好ましい。
転写方法は、被転写材料の種類に応じて適宜選択でき、例えば、鋳型の凸部を有する面を被転写材料に押し付け、必要に応じて加圧して転写する方法が挙げられる。被転写材料がガラス板あるいは熱可塑性樹脂である場合には、形状転写性の観点から、転写時に加圧及び加熱を行うことが好ましい。
鋳型の形状を被転写材料に転写した後、必要に応じて、該被転写材料に転写された形状を固定する工程を行ってもよい。当該形状を固定する工程としては、例えば被転写材料として熱硬化性樹脂材料を用いた場合には、転写後に熱硬化工程を行うことが挙げられる。また被転写材料として電離放射線硬化性樹脂材料を用いた場合には、転写後に電離放射線を照射する工程を行うことが挙げられる。被転写材料としてSOG材料を用いた場合には、鋳型の形状を被転写材料に転写した後に400〜1000℃程度の温度で焼成する工程を行うことが好ましい。
被転写材料としてSOG材料を用いた場合には、さらに強化処理を行ってもよい。強化処理としては、イオン交換法、風冷強化法などの、ガラスの強化処理方法として公知の方法を用いることができる。
上記工程を行った後に被転写材料から鋳型を外すことで、同一表面に、連続した1つの平面部と周期的に配列された複数の凹部とを有する非防汚性構造体を得ることができる。
(工程2)
工程2では、前記非防汚性構造体表面にフッ素含有材料を蒸着して防汚性機能層を形成し、防汚性構造体を得る。
フッ素含有材料としては、前述の防汚性機能層を構成しうるフッ素含有材料が好ましいものとして挙げられる。該フッ素含有材料を蒸着する方法としては、例えば、電子ビーム蒸着法が挙げられる。電子ビーム蒸着法では、非防汚性構造体と、フッ素含有材料を充填したCuなどの金属製の容器とを両者が対向するように設置し、1.0×10-3Pa程度の真空度下、9mA程度の電流下で該金属製の容器に電子ビームを照射する。これにより該容器内のフッ素含有材料を揮発させて、非防汚性構造体表面に、厚みが2〜50nm程度の防汚性機能層を形成することができる。その他、化学気相蒸着法(CVD)などの公知の蒸着法を用いてもよい。
[積層体]
本発明の積層体は、基材上に本発明の防汚性構造体を有することを特徴とする。基材上に本発明の防汚性構造体を有する積層体は、タッチパネルを備える画像表示装置等の前面板として、あるいは該画像表示装置の画像表示部表面に備える防汚性フィルムとして用いることができる。
本発明の防汚性構造体に用いる基材としては、光透過性、平滑性、耐熱性を備え、機械的強度に優れたものであることが好ましい。このような基材としては、ガラス板又は樹脂フィルムが好ましい。
基材として用いられる樹脂フィルムとしては、ポリエステル、トリアセチルセルロース(TAC)、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン及び非晶質オレフィン等のプラスチックフィルムが挙げられる。樹脂フィルムは、2枚以上のプラスチックフィルムを貼り合わせたものであってもよい。
上記の中でも、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエステルフィルム、及びアクリルフィルムから選ばれる樹脂フィルムが好ましい。
基材として用いられるガラス板の厚みは、特に制限はないが、通常0.1〜5mmの範囲である。また基材として用いられる樹脂フィルムの厚みは、通常5〜500μmの範囲である。
基材の表面には、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理の他、アンカー剤又はプライマーと呼ばれる塗料の塗布を予め行ってもよい。
本発明の積層体は、例えば、基材上に、前述の方法を用いて防汚性積層体を形成することなどにより製造できる。
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の防汚性構造体を有するものである。当該画像表示装置としては特に制限されないが、表面の指紋付着防止性及び指紋拭取り性が良好であり、手指の接触、押圧が繰り返される部位に適用しても防汚耐久性に優れるという本発明の効果の観点から、タッチパネルを備えた画像表示装置が好ましい。タッチパネルとしては、静電容量式タッチパネル、抵抗膜式タッチパネル、光学式タッチパネル、超音波式タッチパネル及び電磁誘導式タッチパネル等が挙げられる。タッチパネルは、オンセル式でもインセル式でもよい。
本発明の画像表示装置においては、本発明の防汚性構造体がそのまま、又は前記積層体とした状態で、画像表示部表面に設けられる。例えば、本発明の防汚性構造体又はこれを有する積層体を、前面板として、あるいは画像表示部表面に用いる防汚性フィルムとして備えた各種画像表示装置が例示される。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準とする。
(評価方法)
(1)防汚性構造体の形状測定
電子走査型微細寸法測定装置((株)ホロン製「EMU−220」)を用いて、加速電圧1.5kV、エミッション電流6pAの条件で、防汚性構造体表面の凹部が周期的に配列されている箇所を観察し、その実画像から防汚性構造体の凹部の開口部内径及びピッチを計測した。凹部深さ及び凹部の断面形状については、上記装置及び観察条件にて防汚性構造体の断面を観察して確認、計測した。
次に、上記凹部の開口部内径及びピッチの計測値を用いて、防汚性構造体表面において凹部が周期的に配列されている箇所1mm角あたりに存在する凹部の個数及び凹部開口部の総面積を算出し、ここから防汚性構造体表面の平面部の面積比率を下記式から求めた。
平面部の面積比率(%)=[1−(防汚性構造体表面1mm角あたりに存在する凹部開口部の総面積(mm2)]×100
(2)静的接触角の測定
純水の静的接触角は接触角計(協和界面科学(株)製「DM 500」)を用いて測定した。防汚性構造体の表面に1.0μLの純水を滴下し、着滴1秒後に、θ/2法に従って、滴下した液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度から接触角を算出した。5回測定した平均値を、純水の静的接触角の値とした。
(3)防汚耐久性の評価
防汚性構造体を水平に配置し、スチールウール(♯0000、寸法5mm×10mm×10mm)を防汚性構造体表面(凹部形成面)に接触させた。その上に1,000gfの荷重を付与して、荷重を加えた状態でスチールウールを140mm/秒の速度で往復させた。この摩擦試験を100回行った後、上記(2)の方法で防汚性構造体表面の純水の静的接触角を測定した。試験後の純水の接触角の低下が少ないほど防汚耐久性が良好であることを示し、純水の接触角が90°以上を維持していれば防汚性が良好であることを示す。なお摩擦試験は、摩擦1往復を「1回」とカウントする。
(4)耐指紋性の評価
〔指紋付着性〕
指もしくはシリコーン樹脂版(10mmφ×30mmの円柱状)に人工指紋液(伊勢久(株)製、JIS C9606の付属書4に準拠)を付着させたものを防汚性構造体表面に押し付けて指紋を付着させた。これを目視観察し、以下の基準で評価した。
A:指紋の付着跡が見えない、又はわずかに見える。
B:指紋の付着跡が見える
C:指紋の付着跡がはっきりと視認できる
〔指紋拭取性〕
上記方法で付着させた指紋をティッシュペーパーで5往復拭き取り、指紋の残り跡を目視観察し、以下の基準で評価した。
A:指紋の付着跡が完全に見えない
B:指紋の付着跡がわずかに見える
C:指紋の拭き取り跡がはっきりと視認できる
〔滑り性〕
協和界面科学(株)製の接触角計「DM 500」を用いて、純水及びn−ヘキサデカンの滑落角を測定した。防汚性構造体を水平に配置し、その表面に1.5μLの純水、及び3μLのn−ヘキサデカンをそれぞれ滴下し、防汚性構造体を徐々に傾斜させて、液滴が滑り始める傾斜角度(滑落角)を測定した。5回測定した平均値を、滑落角の値とし、以下の基準で滑り性を評価した。滑落角が小さいほど、滑り性に優れることを示す。
A:純水=40°未満、或いはn−ヘキサデカン=20°未満
B:純水=40°〜90°、或いはn−ヘキサデカン=20°〜90°
C:滑落しない
(5)画像視認性の評価
iPad Air Wi−Fiモデル 16GB MD788J/A(Apple社製、2013年11月販売)を水平な机上に置き、起動して最初に現れるホーム画面を表示した。画面の明るさは最大に設定した。この表示画面上に、下記方法で作製した各標準サンプルと、実施例、比較例で作製した防汚性構造体を有する積層体とを並べ、明室下(蛍光灯下)で目視観察した。目視観察は、表示画面から約30cmの高さにて角度を変えながら行った。また、防汚性構造体の外観についても目視観察し、以下の基準で評価した。
A・・・外観は無色透明であり、標準サンプルと同等の画像視認性を有する
C・・・光散乱が発生し白濁しており、標準サンプルよりも画像視認性が劣る
なお、実施例1及び比較例1〜4と、実施例2〜3とでは、使用した基材の種類及び厚みが異なるため、本評価においては基材の種類毎に標準サンプルを準備した。以下に記載するように、いずれの標準サンプルも全光線透過率90%以上でかつヘイズが0.5%以下であり、良好な画像視認性を有していた。
<標準サンプル1の作製(実施例1及び比較例1〜4用)>
ガラス基板(日本電気硝子(株)製無アルカリガラス「OA−10G」、厚み0.5mm)上に、スピン−オン−グラス(SOG)材料(東京応化工業(株)製「OCNL103」、ハイドロジェンシルセスキオキサン(HSQ)の20質量%プロピレングリコールジメチルエーテル溶液をスピンコートし、室温で5分乾燥して、ガラス基板上に膜厚400nmのSOG膜を製膜した。これを温度400℃で60分加熱してSOGを焼成して、ガラス基板上にSOGからなる平坦膜が形成された標準サンプル1を得た。紫外可視分光光度計(島津製作所製「UV−2550」)で測定した標準サンプル1の全光線透過率は92%(λ=550nm)、また、JIS K7136に従ってヘーズ・透過率計((株)村上色彩技術研究所製「HM−150」)で測定したヘイズは0.2%であった。
<標準サンプル2の作製(実施例2、3用)>
PETフィルム(東洋紡(株)製「コスモシャインA4300」、厚み100μm)上に、フッ素成分を含有する紫外線硬化性樹脂組成物(ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成(株)製「PETA」))/光ラジカル重合開始剤(BASF製「イルガキュアー184」)/変性パーフルオロポリエーテル(ダイキン工業(株)製「オプツールDAC」)=100/4/10(質量比))を膜厚5μmになるようディップコートし、70℃で3分間乾燥した。PETフィルム側から高圧水銀灯により紫外線を照射し(照射量;波長254nmにおいて500mJ/cm2)、PETフィルム上に紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる平坦膜が形成された標準サンプル2を得た。紫外可視分光光度計(島津製作所製「UV−2550」)で測定した標準サンプル2の全光線透過率は91%(λ=550nm)、また、JIS K7136に従ってヘーズ・透過率計((株)村上色彩技術研究所製「HM−150」)で測定したヘイズは0.4%であった。
また、以下の実施例、比較例で用いた鋳型は下記のとおりである。下記鋳型は、130mm×130mm×厚み1mmのポリジメチルシロキサン膜の片面に、下記形状を有する周期的な連続パターンを形成したものである。
鋳型A:直径250nm、高さ60nmの円柱をピッチ430nmで三方配列した鋳型
鋳型B:直径120nm、高さ50nmの円柱をピッチ200nmで三方配列した鋳型
鋳型C:直径120nm、高さ200nmの円柱をピッチ200nmで三方配列した鋳型
鋳型D:直径500nm、高さ100nmの円柱をピッチ520nmで三方配列した鋳型
鋳型E:直径120nm、高さ20nmの円柱をピッチ200nmで三方配列した鋳型
鋳型F:直径120nm、高さ100nmの円柱をピッチ500nmで三方配列した鋳型
実施例1
ガラス基板(日本電気硝子(株)製無アルカリガラス「OA−10G」、厚み0.5mm)上に、スピン−オン−グラス(SOG)材料(東京応化工業(株)製「OCNL103」、ハイドロジェンシルセスキオキサン(HSQ)の20質量%プロピレングリコールジメチルエーテル溶液をスピンコートし、室温で5分乾燥して、ガラス基板上に膜厚400nmのSOG膜を製膜した。
次に、SOG膜上に、前述の鋳型Aの連続パターン形成面を載置し、ナノインプリント装置(明昌機工(株)製「NANOIMPRINTER」)を用いて、温度90℃、圧力4MPaの条件で3分間押圧し、SOG膜に連続パターンを転写した。これを温度400℃で60分加熱してSOGを焼成して、ガラス基板上にSOGからなる非防汚性構造体を形成した。
この非防汚性構造体表面(SOG面)に、電子ビーム蒸着法(真空度=1.0×10-3Pa、電流値=9mA)により、防汚性材料であるパーフルオロアルキルシラン化合物(信越化学工業(株)製「KY−178」)を蒸着し、厚み10nmの防汚性機能層を全面に製膜して、防汚性構造体を得た。
得られた防汚性構造体について、前記評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例2
PETフィルム(東洋紡(株)製「コスモシャインA4300」、厚み100μm)上に、UV照射により最表面が自発的に無機化する有機−無機複合材料(日本曹達(株)製「NH−1000G」)を、マイクログラビアコーター((株)康井精機製)で膜厚5μmになるよう塗工し、70℃で2分加熱乾燥して、有機−無機複合材料膜を形成した。
次に、上記有機−無機複合材料膜上に、前述の鋳型Bの連続パターン形成面を載置し、ナノインプリント装置(明昌機工(株)製「NANOIMPRINTER」)を用いて、温度80℃、圧力4MPaの条件で3分間押圧し、有機−無機複合材料に連続パターンを転写した。鋳型を取り除いた後、高圧水銀灯により紫外線を照射し(照射量;波長254nmにおいて1000mJ/cm2)、PETフィルム上に、表面が無機化された非防汚性構造体を形成した。この非防汚性構造体表面を、UVオゾン洗浄装置(岩崎電気(株)製)を用いてUVオゾン洗浄を10分間行った。次いで、電子ビーム蒸着法(真空度=1.0×10-3Pa、電流値=9mA)により、防汚性材料であるパーフルオロアルキルシラン化合物(信越化学工業(株)製「KY−178」)を蒸着し、厚み10nmの防汚性機能層を全面に製膜して、防汚性構造体を得た。
得られた防汚性構造体について、前記評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例3
PETフィルム(東洋紡(株)製「コスモシャインA4300」、厚み100μm)上に、フッ素成分を含有する紫外線硬化性樹脂組成物(ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亜合成(株)製「PETA」))/光ラジカル重合開始剤(BASF製「イルガキュアー184」)/変性パーフルオロポリエーテル(ダイキン工業(株)製「オプツールDAC」)=100/4/10(質量比))を膜厚5μmになるようディップコートし、70℃で3分間乾燥して、紫外線硬化性樹脂組成物膜を形成した。
次に、上記紫外線硬化性樹脂組成物膜上に、前述の鋳型Bの連続パターン形成面を載置して、ナノインプリント装置(明昌機工(株)製「NANOIMPRINTER」)を用いて、温度40℃、圧力4MPaの条件で1分間押圧した。PETフィルム側から高圧水銀灯により紫外線を照射したのち(照射量;波長254nmにおいて500mJ/cm2)、鋳型を取り除き、防汚性構造体を得た。
得られた防汚性構造体について、前記評価を行った。評価結果を表1に示す。
図4に、実施例1で得られた防汚性構造体の、凹部開口部に対し垂直方向の断面写真を示す。図4に示すように、実施例1の防汚性構造体の凹部側面は、防汚性構造体の平面部に対し略垂直であり、凹部の上面は連続した1つの平面であることがわかる。他の実施例の防汚性構造体についても同様であった。
比較例1〜4
実施例1において、鋳型Aのかわりに表1に示す鋳型を用いたこと以外は、実施例1と同様にして防汚性構造体を作製し、前記評価を行った。評価結果を表1に示す。なお比較例2の構造体は、摩擦試験及び耐指紋性評価時に構造が破壊された。
表1の結果から明らかなように、本発明の防汚性構造体及び積層体は表面の指紋付着防止性及び指紋拭取り性が良好であり、滑り性も良好である上、防汚耐久性、画像視認性にも優れる。
本発明の防汚性構造体は、表面の指紋付着防止性及び指紋拭取り性が良好であり、タッチパネルの画像表示部のように手指の接触、押圧が繰り返される部位に適用しても防汚性が持続する。また、画像表示部表面に用いた際にも視認性を損なわないことから、本発明の防汚性構造体及びこれを有する積層体は、タッチパネルを備えた画像表示装置などの各種画像表示装置の前面板、あるいは各種画像表示装置の画像表示部表面に用いる防汚性フィルムとして好適に用いられる。
100 防汚性構造体
1 平面部
2 凹部

Claims (12)

  1. 同一表面に、連続した1つの平面部と、周期的に配列された複数の凹部とを有し、該凹部の該平面部からの深さが25〜180nmであり、該凹部のピッチが60〜1000nmであり、該平面部と該凹部の開口部との合計面積に対する該平面部の面積比率が20〜90%である、防汚性構造体。
  2. 前記表面のθ/2法を用いて測定した23℃における純水の静的接触角が90°以上である、請求項1に記載の防汚性構造体。
  3. 前記凹部の内部側面の形状が前記平面部に対し略垂直である、請求項1又は2に記載の防汚性構造体。
  4. 前記凹部の開口部の形状が略円形である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の防汚性構造体。
  5. 前記略円形の開口部の内径が50〜500nmの範囲である、請求項4に記載の防汚性構造体。
  6. 前記防汚性構造体が、非防汚性構造体の表面に防汚性機能層を有するものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の防汚性構造体。
  7. 前記非防汚性構造体を構成する材料がシルセスキオキサン系材料である、請求項6に記載の防汚性構造体。
  8. 下記工程1及び工程2を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の防汚性構造体の製造方法。
    工程1:鋳型を用いて被転写材料に該鋳型の形状を転写し、同一表面に、連続した1つの平面部と、周期的に配列された複数の凹部とを有する非防汚性構造体を得る工程
    工程2:前記非防汚性構造体表面にフッ素含有材料を蒸着して防汚性機能層を形成し、防汚性構造体を得る工程
  9. 基材上に請求項1〜7のいずれか1項に記載の防汚性構造体を有する積層体。
  10. 前記基材がガラス板又は樹脂フィルムである、請求項9に記載の積層体。
  11. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の防汚性構造体を有する画像表示装置。
  12. タッチパネルを備えた請求項11に記載の画像表示装置。
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