JP2011183554A - 微細構造体の製造方法 - Google Patents

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JP2011183554A JP2010047786A JP2010047786A JP2011183554A JP 2011183554 A JP2011183554 A JP 2011183554A JP 2010047786 A JP2010047786 A JP 2010047786A JP 2010047786 A JP2010047786 A JP 2010047786A JP 2011183554 A JP2011183554 A JP 2011183554A
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健太郎 角崎
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Abstract

【課題】ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が寸法精度よく形成された硬化物質を含む微細構造体を、生産性よく、大面積で製造する方法の提供。
【解決手段】ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が形成された硬化物質を含む微細構造体の製造方法において、前記硬化性物質を含む溶液が、式Si(Xで表される4官能シラン、式RSi(Xで表される3官能シラン、含フッ素界面活性剤、有機溶剤、および水を含み、かつ、前記4官能シランに対する前記3官能シランのモル比が、0.03〜1である。X、Xはそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルコキシ基、Rは炭素数が1〜10の置換または非置換の1価有機基(ただし、ケイ素原子と結合する原子は炭素原子である)。
【選択図】図1

Description

本発明は、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が形成された硬化物質を含む微細構造体の製造方法に関する。
ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が形成された硬化物質を含む微細構造体の製造方法としては、下記方法が提案されている。
(1)基材上にゾルゲル化合物を塗布し、該ゾルゲル化合物にモールドを押し当てた後、モールドを分離し、さらに焼成する方法(特許文献1)。
(2)モールドにゾルゲル化合物を塗布し、該ゾルゲル化合物をゲル化させた後、基材に接着させてモールドを分離し、さらに焼成する方法(特許文献2)。
(3)フッ素樹脂モールドに硬化性物質を塗布し、該硬化性物質を硬化前駆体とした後、基材に接着させてモールドを分離し、該硬化前駆体を硬化させて硬化物とする方法(特許文献3)。
しかし、(1)の方法では、ゾルゲル化合物にモールドを強く押し付けた状態で加熱保持するためプレス装置が必要で、装置導入のコストがかかる。また、押し付け圧力のむらのため微細構造が正確に転写されない恐れがある。また、高い圧力で大面積を均一に押すことは困難であり、微細構造体を大面積に形成することができない。
(2)の方法では塗布装置と焼成装置だけで微細構造体を形成するため、プレス装置が不要である。従って微細構造体の製造コストを安く抑えられ、大面積に微細構造体を形成することも可能である。しかし、(2)の方法ではパターニングされたレジスト膜に無機質保護膜を形成してモールドとするために微細構造体とモールドの離型性が悪く、微細構造体をモールドから剥離する際に剥離不良が発生して微細構造が正確に転写されない恐れがある。
モールドの離型性を向上させるにはモールド表面に剥離剤を塗布することが有効であるが、塗布工程が必要となるため生産性が低下する。また、剥離剤の塗布ムラが発生すると、離型性が低下して微細構造が正確に転写されない。このような離型性に関する問題を解決するため、(3)の方法では、モールドとしてフッ素樹脂からなるモールドを用いている。しかし、(3)の方法によっても、充分な光学特性と硬度とを有する微細構造体を大面積で均一に作製することが難しい場合があり、さらなる改善が望まれていた。
特開平4−47541号公報 特開平3−269845号公報 特開2008−162190号公報
本発明の目的は、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が寸法精度よく形成された硬化物質を含む微細構造体を、生産性よく、大面積で製造できる製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、光学特性や撥水性に優れた微細構造が寸法精度よく表面に形成された硬化物質を含む微細構造体を生産性よく、大面積で製造できる製造方法を提供することにある。
本発明は以下の発明を提供する。
[1]ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が形成された硬化物質を含む微細構造体の製造方法であって、
(a)表面に前記微細構造に対応する反転構造が形成され、かつその表面が含フッ素重合体を含む、モールドの該表面に、前記硬化性物質を含む溶液を供給して、前記モールドの表面に前記溶液の層を形成する工程と、
(b)前記含フッ素重合体の軟化温度未満で溶媒を除去し、前記硬化性物質が硬化前駆体となるまで硬化反応を進める工程と、
(c)モールド上の前記硬化前駆体の層の表面に基材を貼り合わせる工程と、
(d)前記硬化前駆体の層を有するモールドから該硬化前駆体の層を分離して該硬化前駆体の成形体を得る工程と、
(e)前記硬化前駆体を硬化させて硬化物質を含む微細構造体を得る工程と、を有する、微細構造体の製造方法において、
前記硬化性物質を含む溶液が、式Si(Xで表される4官能シラン、式RSi(Xで表される3官能シラン、含フッ素界面活性剤、有機溶剤、および水を含み、
かつ、前記4官能シランに対する前記3官能シランのモル比が、0.03〜1であることを特徴とする微細構造体の製造方法。
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
、X:それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルコキシ基、
R:炭素数が1〜10の置換または非置換の1価有機基(ただし、ケイ素原子と結合する原子は炭素原子である)。
[2]さらに、(f)前記(e)工程で得られた微細構造体の硬化物質の表面に撥水剤の薄膜を形成する工程を有する、[1]に記載の微細構造体の製造方法。
本発明の微細構造体の製造方法によれば、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が寸法精度よく形成された硬化物質を含む微細構造体を生産性よく、大面積で製造できる。
また、前記(f)工程を有すれば、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、撥水性が高い微細構造が寸法精度よく表面に形成された硬化物質を含む微細構造体を生産性よく、大面積で製造できる。
本発明の製造方法で得られる微細構造体の一例を示す断面図である。 本発明の製造方法における工程(a)〜(c)の一例を示す断面図である。 本発明の製造方法における工程(d)〜(f)の一例を示す断面図である。
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
<微細構造体>
本発明における微細構造体は、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が形成された硬化物質を含むものである。図1は、本発明における微細構造体の一例を示す断面図である。微細構造体10は、基材12と、基材12に貼り合わされた、表面に微細構造14が形成された硬化物質16と、硬化物質16の表面に形成された撥水剤の薄膜18とを有する。
(基材)
基材としては、ガラス、セラミックス、プラスチック、金属、有機無機ハイブリッド材料等の材料からなる基材が挙げられる。半導体素子や光学素子を基材として用いてもよい。
ガラスとしては、石英ガラス、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クラウンガラス、アルミノケイ酸ガラス、リン酸塩ガラス等が挙げられる。
プラスチックとしては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、シクロオレフィン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
微細構造とは、硬化物質の表面に形成された微細な凸部および/または凹部を意味する。
凸部としては、硬化物質の表面に延在する長尺の凸条、表面に点在する突起等が挙げられる。凹部としては、硬化物質の表面に延在する長尺の溝、表面に点在する孔等が挙げられる。
凸条または溝の形状としては、直線、曲線、折れ曲がり形状等が挙げられる。凸条または溝は、複数が平行に存在して縞状をなしていてもよい。凸条または溝の、長手方向に直交する方向の断面形状としては、長方形、台形、三角形、半円形等が挙げられる。突起または孔の形状としては、三角柱、四角柱、六角柱、円柱、三角錐、四角錐、六角錐、円錐半球、多面体等が挙げられる。
凸条または溝の幅は、平均で20nm〜30μmが好ましく、30nm〜20μmがより好ましく、40nm〜10μmが特に好ましい。凸条の幅とは、長手方向に直交する方向の断面における底辺の長さを意味する。溝の幅とは、長手方向に直交する方向の断面における上辺の長さを意味する。凸条または溝の幅が20nm〜30μmの範囲であれば、優れた光学特性や撥水性などの特性が得られる。
突起または孔の幅は、平均で20nm〜30μmが好ましく、30nm〜20μmがより好ましく、40nm〜10μmが特に好ましい。突起の幅とは、底面が細長い場合、長手方向に直交する方向の断面における底辺の長さを意味し、そうでない場合、突起の底面における最大長さを意味する。孔の幅とは、開口部が細長い場合、長手方向に直交する方向の断面における上辺の長さを意味し、そうでない場合、孔の開口部における最大長さを意味する。突起または孔の幅が20nm〜30μmの範囲であれば、優れた光学特性や撥水性などの特性が得られる。
凸部の高さは、平均で10nm〜10μmが好ましく、20nm〜3μmがより好ましく、30nm〜1.5μmが特に好ましい。凸部の高さが10nm以上であれば優れた光学特性や撥水性などの特性が得られる。凸部の高さが10μm以下であれば硬化物質にクラックが発生しにくく、外観に優れた微細構造体が得られる。
凹部の深さは、平均で10nm〜10μmが好ましく、20nm〜3μmがより好ましく、30nm〜1.5μmが特に好ましい。凹部の深さが10nm以上であれば優れた光学特性や撥水性などの特性が得られる。凹部の深さが10μm以下であれば硬化物質にクラックが発生しにくく、外観に優れた微細構造体が得られる。
微細構造が密集している領域において、隣接する凸部(または凹部)間の間隔は、平均で20nm〜30μmが好ましく、30nm〜20μmがより好ましく、40nm〜10μmが特に好ましい。隣接する凸部間の間隔とは、凸部の断面の底辺の終端から、隣接する凸部の断面の底辺の始端までの距離を意味する。隣接する凹部間の間隔とは、凹部の断面の上辺の終端から、隣接する凹部の断面の上辺の始端までの距離を意味する。隣接する凸部(または凹部)間の間隔が20nm以上であれば微細構造を欠陥が少ない状態で転写することが容易である。また、隣接する凸部(または凹部)間の間隔が20nm〜30μmの範囲であれば、優れた光学特性や撥水性などの特性が得られやすい。
(撥水剤の薄膜)
撥水剤の薄膜は、後述の撥水剤の溶液を微細構造体の硬化物質の表面に塗布、乾燥させて形成される薄膜である。撥水剤の薄膜の厚さは、0.5〜60nmが好ましく、単分子膜厚に近いことがより好ましい。撥水剤の薄膜の厚さが0.5〜60nmの範囲であれば、優れた光学特性と撥水性が得られやすい。
(微細構造体)
微細構造体の厚さは、0.03〜30mmが好ましい。微細構造体の厚さが0.03mm以上であれば、機械的強度が充分となり、変形しにくく、取り扱いやすい。微細構造体の厚さが30mm以下であれば、熱伝導性が良好となり、硬化性物質が充分に硬化しない等の微細構造体の製造上の問題が生じにくい。
<微細構造体の製造方法>
本発明の微細構造体の製造方法は、下記工程を有する。
(a)表面に前記微細構造に対応する反転構造が形成され、かつその表面が含フッ素重合体を含むモールドの該表面に、前記硬化性物質を含む溶液を供給して、前記モールドの表面に前記溶液の層を形成する工程。
(b)前記含フッ素重合体の軟化温度未満で前記層の溶媒を除去し、前記硬化性物質が硬化前駆体となるまで硬化反応を進める工程。
(c)モールド上の前記硬化前駆体の層の表面に基材を貼り合わせる工程。
(d)前記硬化前駆体の層を有するモールドから該硬化前駆体の層を分離して該硬化前駆体の成形体を得る工程。
(e)前記硬化前駆体を硬化させて硬化物質を含む微細構造体を得る工程。
(f)必要に応じて、前記(e)工程で得られた微細構造体の硬化物質の表面に、撥水剤の溶液を塗布し、乾燥して撥水剤の薄膜を形成する工程。
以下、図面を参照しながら、各工程について説明する。
(a)工程:
図2(a)に示すように、表面に微細構造14に対応する反転構造22が形成され、かつその表面が含フッ素重合体を含む、モールド20の該表面に、硬化性物質を含む溶液を供給して、前記モールドの表面に前記溶液の層30を形成する。
(モールド)
モールド20はその表面が含フッ素重合体を含む。後に詳述するが、モールド20に供給する溶液には、4官能シラン、3官能シラン、含フッ素界面活性剤、有機溶剤、および水が含まれている。また、この溶液には、前記4官能シランや3官能シランの反応触媒として酸またはアルカリが含まれている場合がある。
モールド20には、そのような溶液に対して膨潤・溶解しないという耐薬品性が要求される。ポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリカーボネート(PC)からなるモールドと異なり、その表面が含フッ素重合体を含むモールド20は耐薬品性に優れる。
モールド20は、含フッ素重合体を含むモールド本体の裏面に基板を設けたものであってもよい。
基板としては、石英、ガラス、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、アルミ、ニッケル、ステンレス、銅等が挙げられる。基板の形状は角型や円形などの平板状であってもよく、円柱状やレンズ形状などの曲面状であってもよく、フレキシブルなフィルム状であってもよい。
また、モールド20は、該モールド本体と基板との間に1層以上の中間層を設けたものであってもよい。中間層としては、反応性基を有する含フッ素重合体からなる層が挙げられる。反応性基としては、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。
含フッ素重合体としては、熱可塑性の含フッ素重合体または含フッ素光硬化性組成物の硬化物からなる含フッ素重合体が好ましい。
含フッ素重合体が熱可塑性の含フッ素重合体である場合、離型性の点から、フッ素原子の量が含フッ素重合体(100質量%)中35質量%以上であり、かつ含フッ素重合体からなる膜に対する水の接触角が90以上である含フッ素重合体が好ましい。水の接触角は、接触角計を用いて測定する。接触角は、100度以上であることがさらに好ましい。
水の接触角が90度以上であれば離型性に優れるため、モールドと硬化前駆体を分離する工程において欠陥が発生しにくい。また、モールド表面に硬化前駆体が残留しないためモールドを繰返し利用することが可能となり、生産性に優れる。
熱可塑性の含フッ素重合体としては、含フッ素鎖状重合体または含フッ素環状重合体が好ましい。
含フッ素鎖状重合体としては、下記共重合体が挙げられる。
テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体、
テトラフルオロエチレン/エチレン系共重合体(以下、ETFEと記す)、
テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体、
フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体。
含フッ素鎖状重合体としては、離型性および加工温度が低く成形しやすい点から、ETFEが好ましい。ETFEとしては、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと記す)に基づく繰り返し単位とエチレン(以下、Eと記す)に基づく繰り返し単位との比(TFE/E)が、70/30〜30/70(モル比)のものが好ましく、65/35〜40/60(モル比)のものがより好ましい。
ETFEは、他のコモノマーに基づく繰り返し単位を含んでいてもよい。他のコモノマーとしては、下記化合物が挙げられる。
フルオロエチレン類(ただし、TFEを除く):CF=CFCl等、
フルオロプロピレン類:CF=CFCF、CF=CHCF等、
炭素数が2〜12のパーフルオロアルキル基を有するフルオロエチレン類:CFCFCFCFCH=CH、CFCFCFCFCF=CH等、
パーフルオロビニルエーテル類:R(OCFXCFOCF=CF(ただし、Rは炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、Xはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、kは0〜5の整数である)等、
オレフィン類(ただし、Eを除く):C3オレフィン(プロピレン等)、C4オレフィン(ブチレン、イソブチレン等)等。
他のコモノマーとしては、CFCFCFCFCH=CHが特に好ましい。
他のコモノマーに基づく繰り返し単位の割合は、ETFEを構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、30モル%以下が好ましく、0.1〜15モル%がより好ましく、0.2〜10モル%が特に好ましい。
本発明において含フッ素環状重合体とは、主鎖に含フッ素脂肪族環を有する含フッ素重合体であり、含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子の1個以上が該含フッ素重合体の主鎖を構成する炭素原子であるものをいう。含フッ素脂肪族環を構成する原子としては、炭素原子以外に酸素原子、窒素原子等を含んでもよい。含フッ素脂肪族環としては、1〜2個の酸素原子を有する含フッ素脂肪族環が好ましい。含フッ素脂肪族環を構成する原子の数は4〜7個が好ましい。
主鎖を構成する炭素原子は、含フッ素環状重合体が環状単量体を重合させて得た重合体である場合には、該含フッ素重合体を構成する単量体の重合性二重結合の2個の炭素原子に由来する。また、ジエン系単量体を環化重合させて得た重合体である場合には、2個の重合性二重結合の4個の炭素原子に由来する。重合性二重結合としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
含フッ素環状重合体としては、環状単量体の単独重合体または共重合体、ジエン系単量体を環化重合させた単独重合体または共重合体等が挙げられる。
環状単量体とは、含フッ素脂肪族環を有し、かつ含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子−炭素原子間に重合性二重結合を有する単量体、または、含フッ素脂肪族環を有し、かつ含フッ素脂肪族環を構成する炭素原子と含フッ素脂肪族環外の炭素原子との間に重合性二重結合を有する単量体である。
ジエン系単量体とは、2個の重合性二重結合を有する単量体である。
環状単量体およびジエン系単量体は、フッ素原子を有する単量体であり、炭素原子に結合した水素原子と炭素原子に結合したフッ素原子の合計数に対する炭素原子に結合したフッ素原子の数の割合が80%以上の単量体が好ましく、パーフルオロ単量体(該割合が100%の単量体)がより好ましい。
環状単量体およびジエン系単量体は、パーフルオロ単量体のフッ素原子の一部(1〜4個が好ましい)が塩素原子に置換された単量体(以下、パーハロポリフルオロ単量体)であってもよい。
環状単量体およびジエン系単量体と共重合させる単量体も、パーフルオロ単量体またはパーハロポリフルオロ単量体が好ましい。
環状単量体としては、化合物(1)または化合物(2)が好ましい。
Figure 2011183554
ただし、X11、X12、R11およびR12は、それぞれ独立にフッ素原子、炭素数が1〜4のパーフルオロアルキル基または炭素数1〜4のパーフルオロアルコキシ基である。X11としては、フッ素原子が好ましい。X12としては、フッ素原子、トリフルオロメチル基、または炭素数1〜4のパーフルオロアルコキシ基が好ましい。R11、R12としては、それぞれフッ素原子またはトリフルオロメチル基が好ましい。
21およびX22は、それぞれ独立にフッ素原子または炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基である。X21およびX22としては、それぞれフッ素原子またはトリフルオロメチル基が好ましい。
化合物(1)の具体例としては、化合物(1−1)〜(1−3)が挙げられる。
Figure 2011183554
化合物(2)の具体例としては、化合物(2−1)〜(2−2)が挙げられる。
Figure 2011183554
環状単量体と共重合させる単量体としては、下記化合物が挙げられる。
CF=CF、CF=CFCl、CF=CFOCF等。
ジエン系単量体としては、化合物(3)が好ましい。
CF=CF−Q−CF=CF ・・・(3)。
ただし、Qは、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基である。Qがエーテル性酸素原子を有するパーフルオロアルキレン基である場合、該パーフルオロアルキレン基におけるエーテル性酸素原子は、該基の一方の末端に存在していてもよく、該基の両末端に存在していてもよく、該基の炭素原子間に存在していてもよい。環化重合性の点から、該基の一方の末端に存在していることが好ましい。
化合物(3)の環化重合により、下式(3−1)〜(3−4)の繰り返し単位を有する重合体が得られる。
Figure 2011183554
ジエン系単量体の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
CF=CFOCFCF=CF
CF=CFOCF(CF)CF=CF
CF=CFOCFCFCF=CF
CF=CFOCFCF(CF)CF=CF
CF=CFOCF(CF)CFCF=CF
CF=CFOCFOCF=CF
CF=CFOC(CFOCF=CF
CF=CFCFCF=CF
CF=CFCFCFCF=CF等。
ジエン系単量体と共重合させる単量体としては、前記化合物(1)、前記化合物(2)、および下記化合物が挙げられる。
CF=CF、CF=CFCl、CF=CFOCF等。
含フッ素環状重合体は、全繰り返し単位(100モル%)のうち、含フッ素脂肪族環を有する繰り返し単位を20モル%以上含むことが好ましく、40モル%以上含むことがより好ましく、含フッ素脂肪族環を有する繰り返し単位のみからなることが特に好ましい。含フッ素脂肪族環を有する繰り返し単位は、環状単量体の重合により形成された繰り返し単位およびジエン系単量体の環化重合により形成された繰り返し単位である。
熱可塑性の含フッ素重合体としては、硬化前駆体との離型性に優れる点から、無定形または非結晶性のパーフルオロ重合体が好ましく、該パーフルオロ重合体をフッ素ガスで処理したパーフルオロ重合体がより好ましい。
含フッ素重合体が、含フッ素光硬化性組成物の硬化物からなる含フッ素重合体(以下、含フッ素重合体(A)とも記載する)である場合は、離型性の点から、含フッ素重合体からなる膜に対する水の接触角が90度以上である含フッ素重合体が好ましい。水の接触角は、接触角計を用いて測定する。水の接触角は100度以上であることがさらに好ましい。接触角が90度以上であれば離型性に優れるため、モールドと硬化前駆体を分離する工程において欠陥が発生しにくい。また、モールド表面に硬化前駆体が残留しないため、モールドを繰返し利用することが可能となり、生産性に優れる。
離型性の点から、フッ素原子の量が含フッ素重合体(100質量%)中3.5質量%以上であることが好ましい。
本発明において、含フッ素重合体(A)とは、重合性基を有する含フッ素化合物および光重合開始剤を含む光硬化性組成物を硬化して得られる含フッ素重合体である。重合性基は特に限定されないが、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、フルオロビニル基、アリル基、オキシラニル基が好ましく、アクリロイル基もしくはメタクリロイル基がより好ましい。
重合性基を有する含フッ素化合物はモノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、ポリマーであってもよい。
含フッ素光硬化性組成物としては、フッ素原子を含まないモノマーを50〜98質量%、含フッ素モノマーを0.1〜45質量%、含フッ素界面活性剤および/または含フッ素ポリマーを0.1〜20質量%、ならびに光重合開始剤を1〜10質量%含み、かつ実質的に溶剤を含まない光硬化性組成物が好ましい。
含フッ素界面活性剤および含フッ素ポリマーは、フッ素原子を含まないモノマーに対して相溶性が悪い場合があり、相分離の原因となりうる。本発明においては、含フッ素光硬化性組成物は、フッ素原子を含まないモノマー、含フッ素界面活性剤、および含フッ素ポリマーのそれぞれに対して相溶性の高い含フッ素モノマーを含むため、含フッ素界面活性剤および/または含フッ素ポリマーの含有量が高くても相分離しない。また、該光硬化性組成物の硬化物は、フッ素原子含有量が高く離型性に優れる。
含フッ素モノマー中のフッ素原子含有量は、40〜70質量%であるのが好ましく、45〜65質量%であるのが特に好ましい。フッ素原子含有量とは、含フッ素モノマーを構成するすべての原子の総質量に対するフッ素原子の質量の割合である。含フッ素モノマーのフッ素原子含有量を40質量%以上とすることで硬化物の離型性が特に優れる。また含フッ素モノマーのフッ素原子含有量を70質量%以下とすることで光重合開始剤との相溶性がより向上し、光硬化性組成物を均一に調整しやすい。
含フッ素光硬化性組成物は、含フッ素界面活性剤および/または含フッ素ポリマーを0.1〜20質量%含むことが好ましい。より好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%含む。この場合、含フッ素光硬化性組成物を調製しやすく、さらに該光硬化性組成物は相分離することなく硬化物を形成しやすい。
含フッ素光硬化性組成物は、含フッ素界面活性剤および含フッ素ポリマーを含んでいてもよく、含フッ素界面活性剤のみを含んでいてもよく、含フッ素ポリマーのみを含んでいてもよい。なお、含フッ素光硬化性組成物が含フッ素界面活性剤および含フッ素ポリマーを含む場合は、上記含有量は、含フッ素界面活性剤および含フッ素ポリマーの総量を意味する。
含フッ素光硬化性組成物が含フッ素界面活性剤を含む場合、該光硬化性組成物および該光硬化性組成物の硬化物は、特に離型性が優れモールドから円滑に剥離できる。含フッ素光硬化性組成物は含フッ素界面活性剤を、0.1〜5質量%含むのが好ましく、0.5〜2.5質量%含むのが特に好ましい。
本発明における含フッ素界面活性剤は、フッ素原子含有量が10〜70質量%の含フッ素界面活性剤が好ましく、フッ素原子含有量が20〜40質量%の含フッ素界面活性剤が特に好ましい。含フッ素界面活性剤は、水溶性であっても脂溶性であってもよい。
含フッ素光硬化性組成物が含フッ素ポリマーを含む場合、該光硬化性組成物および該光硬化性組成物の硬化物は、離型性に優れモールドから円滑に剥離できる。また、光硬化性組成物の重合において、含フッ素ポリマーの存在下にモノマーの重合が行われるため、体積収縮率の小さい硬化物が得られる。そのため、該硬化物の表面に形成される前記反転パターン形状はマスターモールドのパターン形状に対して高精度である。
含フッ素光硬化性組成物は含フッ素ポリマーを、0.1〜10質量%含むのが好ましく、0.5〜7.5質量%含むのがより好ましく、1〜5質量%含むのが特に好ましい。
含フッ素ポリマーの質量平均分子量は、他の成分との相溶性の観点から、500〜100000が好ましく、1000〜100000がより好ましく、3000〜50000が特に好ましい。
含フッ素ポリマーは、離型性に優れる観点から、フッ素原子含有量が30〜70質量%の含フッ素ポリマーが好ましく、フッ素原子含有量が45〜70質量%の含フッ素ポリマーが特に好ましい。
また含フッ素ポリマーは、相溶性の観点から、ヘテロ原子を含有する含フッ素ポリマーが好ましく、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、またはリン原子を含有する含フッ素ポリマーがより好ましく、水酸基、エーテル性酸素原子、エステル基、アルコキシカルボニル基、スルホニル基、燐酸エステル基、アミノ基、ニトロ基、またはケトン基を含有する含フッ素ポリマーが特に好ましい。
含フッ素光硬化性組成物は、光重合開始剤を1〜10質量%含むことが好ましい。より好ましくは2〜9質量%含み、特に好ましくは3〜8質量%含む。該量にすることによって、含フッ素光硬化性組成物におけるモノマーを容易に重合して硬化物を形成できるため、加熱等の操作を行う必要はない。また光重合開始剤の残渣が硬化物の物性を阻害しにくい。光重合開始剤とは光によりラジカル反応またはイオン反応を引き起こす化合物をいう。光重合開始剤としては、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、フッ素原子を含有する光重合開始剤が挙げられる。
含フッ素光硬化性組成物は、実質的に溶剤を含まないことが好ましい。溶剤を含まない場合、その使用に際しては他工程(溶剤の留去工程等)を行うことなく、硬化できる。また、硬化における含フッ素光硬化性組成物の体積収縮が小さい効果がある。実質的に溶剤を含まないとは、溶剤を含まないか、含フッ素光硬化性組成物の調製において用いられた溶剤が極力除去されていることをいう。含フッ素光硬化性組成物が溶剤を含む場合は、使用に際しては溶剤の留去を行うことが望ましい。
(モールドの製造方法)
モールド20の製造方法としては、モールド20の反転構造22に対応する微細構造が表面に形成されたマスターモールドを用いたナノインプリント法等が挙げられる。
熱可塑性の含フッ素重合体を用いたナノインプリント法としては、下記工程を有する方法が挙げられる。
(x−1)マスターモールドの表面と、熱可塑性の含フッ素重合体を含む膜とを熱圧着させ、該膜に反転構造22を形成する工程。
(x−2)マスターモールドと熱可塑性の含フッ素重合体を含む膜とを分離する工程。
含フッ素光硬化性組成物を用いたナノインプリント法としては、下記工程を有する方法が挙げられる。
(y−1)基板の表面とマスターモールドのパターン面との間に含フッ素光硬化性組成物を挟持して押圧する工程。
(y−2)含フッ素光硬化性組成物を光照射により硬化させて、マスターモールドの微細パターンが転写された表面を有する含フッ素重合体を得る工程。
(y−3)マスターモールドと含フッ素重合体とを分離する工程。
マスターモールドの材料としては、シリコン、ニッケル、銅、チタン、ステンレス、石英、ガラス、ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
(硬化性物質を含む溶液)
本発明において硬化性物質を含む溶液は、式Si(Xで表される4官能シラン(以下、単に4官能シランとも記載する)、式RSi(Xで表される3官能シラン(以下、単に3官能シランとも記載する)、含フッ素界面活性剤、有機溶剤、および水を含む。
前記式中、XおよびXはそれぞれ独立に炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。該基としては、それぞれメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、およびブトキシ基等が挙げられる。硬化性の点でメトキシ基またはエトキシ基が好ましい。
Rは、炭素数1〜10の置換または非置換の1価有機基である。ただし、該有機基は、ケイ素原子に結合する原子が炭素原子である有機基である。
非置換の1価有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基等の炭化水素基が挙げられる。これら炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基やアルキニル基、炭素数5または6のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、スチリル基等が挙げられる。
置換の1価有機基としては、シクロアルキル基、アリール基等の環状炭化水素基の水素原子がアルキル基で置換された基、前記炭化水素基の水素原子がハロゲン原子、官能基、官能基含有有機基などで置換された置換有機基などがある。官能基としては水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、シアノ基などが好ましい。
ハロゲン原子置換有機基としては、クロロアルキル基、ポリフルオロアルキル基などの塩素原子またはフッ素原子を有するアルキル基が好ましい。官能基含有有機基としては、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、グリシジル基、エポキシシクロヘキシル基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、N−アミノアルキル置換アミノアルキル基などが好ましい。特に塩素原子、メルカプト基、エポキシ基、アミノ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、グリシジル基、アルキルアミノ基、N−アミノアルキル置換アミノアルキル基などが好ましい。官能基や官能基含有有機基などで置換された置換有機基を有する3官能シランは、シランカップリング剤と呼ばれる範疇の化合物を含む。
置換有機基の具体例としては、以下の有機基が挙げられる。3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−アクリロイルオキシプロピル基、3−メタクリロイルオキシプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−アミノプロピル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基、2−シアノエチル基、3−ウレイドプロピル基、3−イソシアネートプロピル基。
4官能シランとしては、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトライソプロポキシシラン、およびテトラブトキシシラン等が挙げられる。硬化性物質の硬化性の点でTEOSまたはTMOSが好ましい。
Rが置換の有機基である場合の3官能シランとしては、下記化合物等が挙げられる。2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン。これらの化合物のエトキシ基が他のアルコキシル基(メトキシ基等)であるものを用いてもよい。
Rが非置換の有機基である場合の3官能シランとしては、下記化合物等が挙げられる。メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン。これらの化合物のエトキシ基が他のアルコキシ基(メトキシ基等)であるものを用いてもよい。フェニルトリエトキシシラン、またはフェニルトリメトキシシラン等の芳香族環を有する3官能シランを用いると硬化物質の屈折率を上げることができる。
前記4官能シランおよび3官能シランは、それぞれ1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記硬化性物質を含む溶液中に含まれる、4官能シランと3官能シランとの合計含有量は、該溶液の総量に対し、0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることが特に好ましく、1.5〜20質量%であることがとりわけ好ましい。4官能シランと3官能シランとの合計含有量が塗布液の総量に対して0.5〜30質量%であれば、ピンホールやクラック等の欠陥の少ない硬化物質が得られる。なお、ここでの合計含有量は、4官能シラン中、3官能シラン中の全てのアルコキシ基が加水分解されてシラノール基が生成し、生成した全てのシラノール基同士の脱水縮合反応が進行したと仮定した場合の含有量である。
前記硬化性物質を含む溶液において4官能シランに対する3官能シランのモル比は0.03〜1であり、0.05〜0.75であることが好ましく、0.1〜0.5であることが特に好ましい。4官能シランに対する3官能シランのモル比が0.03未満であると硬化物質にクラックが発生しやすくなるため厚膜を形成することが困難になる。4官能シランに対する3官能シランのモル比が1を超えると硬化物質の硬度が低下して傷つきやすくなる。4官能シランに対する3官能シランのモル比が0.03〜1であると傷つきにくく、厚膜の場合でもクラック等の欠陥の少ない硬化物質が得られる。
前記硬化性物質を含む溶液において、3官能シランとしては、反応性基を有する3官能シランを少なくとも1種類以上含むことが好ましい。反応性基を有する3官能シランを含むと、(c)のモールド上の硬化前駆体の層の表面に基材を貼り合わせる工程において、接着剤を用いた場合に接着剤と硬化前駆体に密着性が向上する。反応性基としては、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、およびイソシアネート基からなる群から選ばれる1種以上の基が好ましい。
反応性基を有する3官能シランとしては、下記の化合物等が挙げられる。ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン。これらの化合物のエトキシ基が他のアルコキシル基(メトキシ基等)であるものを用いてもよい。
前記硬化性物質を含む溶液が、反応性基を有する3官能シランを含まない場合でも、工程(c)において、硬化前駆体表面のUVオゾン処理やシランカップリング剤処理等の処理を加えることで、接着剤と硬化前駆体の密着性を向上させることができる。
前記硬化性物質を含む溶液に含まれる有機溶剤、硬化性物質の反応性、溶解性、安定性、溶液30の塗布性を考慮して選択する。有機溶剤はとしては下記有機溶剤が挙げられる。
アルコール類:メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等、
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等、
エステル類:酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等、
グリコールエーテル類:エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等、
グリコールエーテルエステル類:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等、
含窒素溶剤類:N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等、
芳香族炭化水素類:トルエン、キシレン等。
前記硬化性物質を含む溶液には含フッ素界面活性剤が含まれる。本発明においてはモールド表面が含フッ素重合体を含むため、離型性に優れる反面、前記硬化性物質を含む溶液をはじきやすいという性質を有する。前記硬化性物質を含む溶液に含フッ素界面活性剤を添加することで前記硬化性物質を含む溶液の濡れ性が向上し、モールド表面に均一な前記硬化性物質を含む溶液の膜を形成できる。
前記硬化性物質を含む溶液は含フッ素界面活性剤を、0.1〜2質量%含むことが好ましく、0.2〜1質量%含むことが特に好ましい。前記硬化性物質を含む溶液中の含フッ素界面活性剤が0.1質量%以上であれば濡れ性向上の効果が期待できる。含フッ素界面活性剤が2質量%未満であれば硬化性物質の硬化が阻害されにくい。
本発明における含フッ素界面活性剤は、フッ素原子含有量が10〜70質量%の含フッ素界面活性剤が好ましく、フッ素原子含有量が20〜40質量%の含フッ素界面活性剤が特に好ましい。含フッ素界面活性剤は、水溶性であっても脂溶性であってもよい。
含フッ素界面活性剤としてアニオン性含フッ素界面活性剤、カチオン性含フッ素界面活性剤、両性含フッ素界面活性剤、ノニオン性含フッ素界面活性剤のいずれを用いてもよいが、濡れ性向上の効果の点でノニオン性含フッ素界面活性剤が特に好ましい。
ノニオン性含フッ素界面活性剤は、ポリフルオロアルキルアミンオキサイド、またはポリフルオロアルキル・アルキレンオキサイド付加物、またはフルオロアルキル基を有するモノマーに基づくモノマー単位を含むオリゴマーもしくはポリマー等が挙げられる。フルオロアルキル基としては、炭素数4〜16の炭素原子−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されていてもよいポリフルオロアルキル基が好ましい。ノニオン性含フッ素界面活性剤は、フルオロアルキル基を有するモノマーに基づくモノマー単位を含むオリゴマーもしくはポリマー(質量平均分子量は1000〜8000)が好ましい。フルオロアルキル基を有するモノマーは、フルオロ(メタ)アクリレートが好ましく、フルオロアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。フルオロアルキル(メタ)アクリレートとしては(CH2=CYCOO)Rで表される化合物が好ましい(ただしYは水素原子またはメチル基で、Rは炭素数1〜30の1価含フッ素有機基を、示す)。
これらのノニオン性含フッ素界面活性剤の具体例としては、サーフロンS−145(商品名、セイミケミカル社製)、サーフロンS−393(商品名、セイミケミカル社製)、サーフロンKH−20(商品名、セイミケミカル社製)、サーフロンS−386(商品名、セイミケミカル社製)、サーフロンS−611(商品名、セイミケミカル社製)、サーフロンS−651(商品名、セイミケミカル社製)、フロラードFC−170(商品名、スリーエム社製)、フロラードFC−430(商品名、スリーエム社製)、フロラードFC−171(商品名、スリーエム社製)、フロラードFC−431(商品名、スリーエム社製)、メガファックF−444(商品名、大日本インキ化学工業社製)、メガファックF−479(商品名、大日本インキ化学工業社製)等が挙げられる。
前記硬化性物質を含む溶液には水が含まれる。水が含まれることにより、4官能シラン、3官能シランが加水分解されてシラノール基が生成する。さらにシラノール基同士の縮合重合により硬化反応が進む。硬化性物質を含む溶液には、4官能シランのアルコキシ基と3官能シランのアルコキシ基との合計モル数に対して1〜10倍モルの水が含まれていることが好ましい。
前記硬化性物質を含む溶液には反応触媒が含まれていることが好ましい。反応触媒を加えることで4官能シランや3官能シランの加水分解と縮合重合の速度を制御することができる。反応触媒としては塩酸、硝酸、酢酸等の酸、ナトリウム、カリウム、アンモニア、テトラメチルアンモニウム等のアルカリ、酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸マグネシウム等の塩、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムトリブトキシド、チタンテトラブトキシド、ジブチル錫ジアセテート等の有機金属化合物が挙げられる。
前記硬化性物質を含む溶液は、無機微粒子を含んでいてもよい。無機微粒子を含むことにより、硬化物質の屈折率を制御したり、硬化物質の強度を向上させたり、硬化物質に機能を付加したりすることができる。
無機微粒子としては、酸化物微粒子(シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、酸化スズ、酸化亜鉛等)、カーボン微粒子(カーボンナノチューブ、カーボンブラック、フラーレン等)、金属微粒子、合金微粒子、カルコゲナイト化合物微粒子、フッ化物微粒子等が挙げられる。
無機微粒子の形状としては、球状、粒状、棒状、数珠状、繊維状、フレーク状、中空状、凝集体状、不定形状等が挙げられる。無機微粒子は、一つの成分が別の成分によって被覆されたコア−シェル型粒子であってもよい。また、無機微粒子は、界面活性剤、高分子分散剤、シランカップリング剤等によって表面処理されていてもよい。
前記硬化性物質を含む溶液は添加剤として厚膜化剤、レベリング剤、消泡剤、分散剤、粘度調整剤等が含まれていてもよい。厚膜化剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセトアミド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース等の高分子化合物が挙げられる。前記硬化性物質を含む溶液中の添加剤の合計含有量は2質量%未満であることが好ましい。2質量%未満であれば硬化性物質の硬化が阻害されにくい。
モールド20への前記硬化性物質を含む溶液の供給方法としては、スピンコート、ディップコート、キャスト、スリットコート、スプレーコート等が挙げられる。
(b)工程:
図2(b)に示すように、含フッ素重合体の軟化温度未満で、前記硬化性物質を含む溶液の層30から溶媒を除去し、前記硬化性物質が硬化前駆体32となるまで硬化反応を進める(予備焼成)。
予備焼成の温度は、モールド20に含まれる含フッ素重合体の軟化温度よりも10℃以上低い温度が好ましい。軟化温度とは、含フッ素重合体が非結晶性である場合はガラス転移温度を意味し、含フッ素重合体が結晶性である場合は融解温度を意味する。
硬化前駆体32は、予備焼成によって硬化性物質が半硬化した状態である。該半硬化した状態とは、塗料のJIS規格における指触乾燥(塗った面の中央に触れてみて、塗料で指先が汚れない状態)であることが好ましい。
予備焼成時に、紫外線照射、マイクロ波照射、オゾン処理、プラズマ処理等を行い、硬化性物質の硬化を促進してもよい。
工程(a)と工程(b)を2回以上繰り返し、硬化前駆体32の層を2層以上形成してもよい。2層以上の硬化前駆体32の層は、すべて同じ成分の層であってもよく、それぞれ異なる成分の層であってもよい。硬化前駆体32の層は多孔質層であってもよい。また、該多孔質層に硬化性物質を含む溶液または硬化性物質からなる液体を含浸させてもよい。
工程(c):
図2(c)に示すように、モールド20上の硬化前駆体32に基材12を貼り合わせる。
貼り合わせ方法としては、硬化性の接着剤を基材12および/または硬化前駆体32の表面に塗布し、加熱や光照射等により接着剤を硬化させる方法が好ましい。接着剤を用いることで高い圧力をかけずに容易に貼り合わせることができる。また硬化性であれば貼り合せ後の接着剤が十分な硬さを有するため、微細構造体の機械的な耐久性が良好となる。硬化性の接着剤として無溶剤型の光硬化性樹脂または無溶剤型の熱硬化性樹脂を用いる方法が特に好ましい。接着剤が溶剤を含む場合は、貼り合せる前に溶剤を留去することが好ましい。接着剤が溶剤を含まなければ、溶剤の蒸発によるクラックやピンホールの発生を防ぐことができる。貼り合わせの温度は、モールド20に含まれる含フッ素重合体の軟化温度よりも10℃以上低い温度が好ましい。
接着剤を基材12および/または硬化前駆体32の表面に塗布する場合、貼り合せ後の接着剤層の厚みは3〜100μmが好ましく、5〜75μmが特に好ましく、10〜50μmがとりわけ好ましい。接着剤層の厚さが3μm以上であれば、工程(c)において基材と硬化前駆体の間に空隙が発生しにくく、良好な密着性が得られる。接着剤層の厚さが100μm未満であれば材料の無駄が少ない。
基材12が透明であり、かつ硬化前駆体32と基材12との貼り合せに接着剤を用いる場合は、硬化後の屈折率と透明基材の屈折率と差が0.05未満である透明接着剤を用いることが好ましい。硬化後の接着剤の屈折率や透明基材の屈折率はアッベ屈折計を用いて室温(25℃)における波長589nmの屈折率を測定する。接着剤の屈折率と基材の屈折率との差が0.05未満であれば透過率等の光学特性に悪影響を及ぼさない。該屈折率の差は0.03未満であればより好ましい。
工程(d):
図3(d)に示すように、硬化前駆体32の層を有するモールド20から該硬化前駆体32の層を分離して該硬化前駆体32の成形体を得る。
工程(e):
図3(e)に示すように、硬化前駆体32を完全に硬化させて、表面に微細構造14が形成された硬化物質16を含む微細構造体10を得る(焼成)。
(e)工程における硬化前駆体32の硬化は、前記(b)工程で使用した温度よりも高い温度で行うことが好ましい。
焼成温度は、50〜300℃が好ましく、生産性、硬化性の点から、80〜200℃が特に好ましい。
焼成時に、紫外線照射、マイクロ波照射、オゾン処理、プラズマ処理等を行い、硬化前駆体32の硬化を促進してもよい。
硬化物質の残膜(residual layer)の厚さは0.02〜5μmが好ましい。残膜厚さとは、図3(e)に記号Lで示すように、微細構造体が凸状構造の場合は凸部の付け根から接着剤と接している面までの距離、微細構造体が凹状構造の場合は凹部の底部から接着剤と接している面までの距離、を意味する。凸状構造と凹状構造の両方を有する場合は小さい方の値を残膜厚さとする。残膜厚さは、微細構造体の断面を電子顕微鏡により観察することで求める。残膜厚さが0.03〜4μmであれば特に好ましく、0.04〜3μmであればとりわけ好ましい。残膜厚さが0.02〜5μmであればピンホールやクラック等の欠陥が少ない。残膜厚さは、硬化性物質を含む溶液に含まれる3官能シランと4官能シランとの合計含有量や、硬化性物質を含む溶液のモールド上への塗布量によって制御できる。
微細構造体が低反射ガラスまたは高透過率ガラスの場合、硬化物質の残膜厚さは0.02〜0.3μmが好ましく、0.03〜0.25μmが特に好ましく、0.04〜0.2μmがとりわけ好ましい。残膜厚さが0.02μm以上であればピンホール等の欠陥が少ない。残膜厚さが0.3μm以下であれば、光の干渉による反射率の増大または透過率の低下が少ない。ただし、硬化物質の屈折率と硬化後の接着剤の屈折率との屈折率差が小さい場合(0.05以下)は、光の干渉の影響を受けづらいため、残膜厚さが0.3μmを超えても反射率の増大または透過率の低下が少ない場合がある。
工程(f):
図3(f)に示すように、必要に応じ、前記(e)工程で得られた微細構造体の硬化物質16の表面に撥水剤の薄膜18を形成する。基材12が硬化物質16よりも大きく、基材12の表面の一部が露出している場合、撥水剤の薄膜18が基材12の露出した表面に形成されてもよい。
撥水剤の薄膜を形成する方法としては、撥水剤の溶液を塗布し加熱処理する方法や、撥水剤を気相蒸着させた後に加熱処理する方法が挙げられる。塗布方法としては、スピンコート、ディップコート、キャスト、スリットコート、スプレーコート等が挙げられる。
加熱処理の温度は、20〜150℃が好ましく、生産性の点から、70〜140℃が特に好ましい。撥水剤の反応性を高めるために、加熱処理の際に湿度を制御してもい。
撥水剤としては、含フッ素化合物または含ケイ素化合物が好ましい。含フッ素化合物または含ケイ素化合物としては、前記含フッ素重合体、シランカップリング剤等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、含フッ素シランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤、アクリロイル基を有するシランカップリング剤、メタクリロイル基を有するシランカップリング剤、チオール基を有するシランカップリング剤、イソシアネート基を有するシランカップリング剤、オキシラニル基を有するシランカップリング剤が挙げられる。また、FS−10(信越化学社製)等の市販品を採用することもできる。
シランカップリング剤としては、撥水性等の点から、含フッ素シランカップリング剤が好ましく、フルオロアルキル基を有するシランカップリング剤が特に好ましい。
フルオロアルキル基としては、パーフルオロアルキル基;パーフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を含むフルオロアルキル基等が挙げられる。
パーフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤としては、下記化合物が挙げられる。
CF(CF(CHCHSiT
(CFCF(CF(CHCHSiT
CF(CF(C)(CHCHSiT
CF(CF(CHCHSiUT
(CFCF(CF(CHCHSiUT
CF(CF(C)(CHCHSiUT
CF(CFSON(C)(CHCHCHSiT等。
ただし、aは、3、5、7、9のいずれかであり、bは、2、4、6、8のいずれかであり、cは、0、1、3、5、7のいずれかであり、dは1〜3の整数である。
Tとしては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基またはエトキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。
Uは、1価炭化水素基である。Uとしては、アルキル基、1以上のアリール基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられ、アルキル基またはアルケニル基が好ましい。Uがアルキル基である場合、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。Uがアルケニル基である場合、炭素数2〜4のアルケニル基が好ましく、ビニル基またはアリル基がより好ましい。
パーフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖としては、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位、(CFCFCFO)単位および(CFO)単位からなる群から選ばれる1種以上のパーフルオロ(オキシアルキレン)単位からなるものが好ましく、(CFCFO)単位、(CFCF(CF)O)単位または(CFCFCFO)単位からなるものがより好ましく、含フッ素重合体の物性(耐熱性、耐酸性等)が優れる点から、(CFCFO)単位からなるものことが特に好ましい。
市販されているフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤としては、Gelest社製のAQUAPHOBE(登録商標)CF、3M社製のノベック(登録商標)EGC−1720、ダイキン社製のオプツール(登録商標)DSX(パーフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を有するシランカップリング剤)等が挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノエチル−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチル−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
以上説明した本発明の微細構造体の製造方法にあっては、耐久性、寸法精度、耐薬品性および離型性に優れる含フッ素重合体を表面に含むモールドを用いているため、ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が寸法精度よく形成された硬化物質を含む微細構造体を生産性よく大面積で製造できる。
また、前記(f)工程を有すれば、撥水性が高い微細構造が寸法精度よく表面に形成された硬化物質を含む微細構造体を生産性よく製造できる。微細構造体の硬化物質の表面の疎水性が高ければ、該硬化物質を含む微細構造体を光学素子とした場合、硬化物質の表面が水に濡れにくく、汚れが付着しにくく、水による光学素子の光学特性の変化または低下が抑えられる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
例1〜12は製造例であり、例13〜19、24〜27、32、33は実施例であり、例20〜23、28〜31は比較例である。
(軟化温度)
重合体について、熱重量測定装置(マックサイエンス社製、TG−DTA2000)を用いて、示差走査熱分析(DSC)により40℃から300℃まで窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件でスキャンを行った。
(屈折率)
屈折率はアッベ屈折計(アタゴ社製、DR−M2)を用いて室温(25℃)における波長589nmの屈折率を測定した。中間液として1−ブロモナフタレンを用いた。接着剤の屈折率を測定する際は、接着剤を厚さ0.1mmのフィルムとなるように硬化させて、該フィルムの屈折率を測定した。
(接触角)
水の接触角は、接触角計(協和界面科学社製、CA−X150型)を用いて、測定対象物の表面に約2μLの水滴を着滴させて測定した。モールドに対する水の接触角を測定する場合はパターンが形成されていない平坦な部分で測定した。撥水剤で処理された微細構造体に対する水の接触角を測定する場合はパターンが形成された部分で測定した。
(微細構造の寸法)
モールドの反転構造(凹部)および微細構造体の微細構造(凸部)の寸法(高さ(深さ)、幅、間隔)については、共焦点レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK−9500)を用い、反転構造または微細構造の寸法を3箇所測定して、それらを平均した。寸法について下記基準にて評価した。
○:凸部または凹部の高さ(深さ)が0.95〜1.05μmの範囲であること、幅が1.9〜2.1μmの範囲であること、間隔が1.9〜2.1μmの範囲であること、の全てを満たす。
×:凸部または凹部の高さ(深さ)、幅、間隔のうちいずれ一つ以上が前記基準を外れる。
(離型性)
微細構造体を製造する際のモールドの離型性について、下記基準にて評価した。
○:離型性が良好であり、微細構造が形成されていることが確認できる。
×:離型できずに接着してしまう。
(クラック)
微細構造体の外観を目視により観察し、下記基準にて評価した。
○:微細構造体にクラックが発生していない。
×:微細構造体にクラックが発生している。
(反射率)
微細構造体の反射率は分光測色計(コニカミノルタ社製、CM−3600d)を用いて測定した。微細構造体の裏面反射の影響を低減するため、裏面を黒色の油性ペンで塗りつぶしてから、波長400〜700nmにおける反射率を測定した。反射率について下記基準にて評価した。
○:波長400〜700nmにおける反射率の平均値が0.5%未満である。
△:波長400〜700nmにおける反射率の平均値が0.5〜1.0%である。
×:波長400〜700nmにおける反射率の平均値が1.0%よりも大きい。
(反射率変化)
上記の反射率測定を行った後、微細構造体の表面をウエスで10回拭いてから再度反射率を測定した。拭きとり試験前と拭き取り試験後の反射率を比較し、下記基準にて評価した。
○:波長400〜700nmにおける反射率の上昇が0.3%未満である。
△:波長400〜700nmにおける反射率の上昇が0.3〜0.5%である。
×:波長400〜700nmにおける反射率の平均値が0.5%よりも大きい。
(残膜(residual layer)厚さ)
微細構造体を割断し、導電層形成のために白金の薄膜をスパッタリング法にて形成したのちに電子顕微鏡(日立製作所製、S4300)にて断面観察を行い、残膜厚さを求めた。
(硬化物の屈折率)
シリコンウェーハ上に、微細構造体の作製に用いたものと同じ組成の硬化性物質を含む塗布液をスピンコートした。60℃で15分間の熱処理で乾燥した後に、120℃で15分間の熱処理で硬化させ、硬化物とした。硬化物の波長589nmにおける屈折率をエリプソメーター(J.A.Woolam社製、WVASE32)で測定した。
〔例1〕光硬化性組成物の調製:
バイヤル容器(内容積6mL)に、化合物(n1)の0.30g、化合物(n2)の0.40g、化合物(f1)の0.25g、およびノニオン性含フッ素界面活性剤である、フルオロアクリレート(CH=CHCOO(CH(CFF)のコオリゴマー(フッ素原子含有量約30質量%、重量平均分子量約3000)の0.01gを加え、つぎに光重合開始剤(チバカイギー・スペシャリティー社製、商品名:イルガキュア651)の0.04gを加えて混合して、粘度が12mPa・sの光硬化性組成物を調製した。
Figure 2011183554
〔例2〕重合体(P)の製造:
オートクレーブ(耐圧ガラス製)に、CF=CFOCFCFCF=CFの100g、メタノールの0.5g、および[(CHCHOCOO]の0.7gを入れ、懸濁重合法によって重合体(P)を得た。
重合体(P)は下式(p)で表される繰り返し単位からなる重合体である。重合体(P)の軟化温度(ガラス転移温度)は、108℃であった。
Figure 2011183554
〔例3−1〕重合体(P1)の製造:
重合体(P)を、オートクレーブ(ニッケル製、内容積1L)に入れ、オートクレーブ内を窒素ガスで3回置換してから4.0kPa(絶対圧)まで減圧した。オートクレーブ内に、窒素ガスで14体積%に希釈したフッ素ガスを101.3kPaまで導入してから、オートクレーブの内温を230℃に保って、6時間保持した。オートクレーブの内容物を回収して、主鎖に含フッ素脂肪族環を有し、かつ反応性基を有さない重合体(P1)を得た。
重合体(P1)の赤外吸収スペクトルを測定した結果、カルボキシ基に起因するピークは確認されなかった。重合体(P1)のフッ素原子の量は、重合体(P1)(100質量%)中68質量%であり、重合体(P1)からなる膜に対する水の接触角は、112度であった。
〔例3−2〕組成物(C1)の調製:
9質量%の重合体(P1)を含むパーフルオロトリブチルアミン溶液を調製し、該溶液をメンブレンフィルター(ポリテトラフルオロエチレン製、孔径0.2μm)で濾過して組成物(C1)を得た。
〔例4−1〕重合体(P2)の製造:
重合体(P)を、大気圧雰囲気下の熱風循環式オーブン中で300℃にて1時間熱処理した。ついで、超純水中で110℃にて1週間浸漬した。真空乾燥機中で100℃にて24時間乾燥して、主鎖に含フッ素脂肪族環を有し、かつ反応性基(カルボキシ基)を有する重合体(P2)を得た。
重合体(P2)の赤外吸収スペクトルを測定した結果、カルボキシ基に起因するピークが確認された。重合体(P2)のフッ素原子の量は、重合体(P2)(100質量%)中68質量%であった。
〔例4−2〕組成物(C2)の調製:
1質量%の重合体(P2)を含むパーフルオロトリブチルアミン溶液を調製し、該溶液をメンブレンフィルター(ポリテトラフルオロエチレン製、孔径0.2μm)で濾過して組成物(C2)を得た。
〔例5〕モールド1の作製:
オキシラニル基を有するプライマー(信越化学工業社製、FS−10)を、酢酸ブチルと2−プロパノールの重量比が5:9の混合溶液で20倍に希釈してプライマー塗布液とした。PCシート(帝人化成社製、パンライトシート1150、厚さ0.5mm)に、プライマー塗布液をスピンコート法により塗布した。100℃にて30分間、加熱乾燥して、オキシラニル基をPCシートの表面に導入する表面処理を行った。
ついで、表面処理されたPCシート表面に、組成物(C2)をバーコーターにて塗布し、140℃にて1時間、加熱乾燥して、組成物(C2)中のパーフルオロトリブチルアミンを揮発させて、重合体(P2)からなる層(厚さ約0.15μm)をPCシート表面に形成させた。
ついで、重合体(P2)からなる層の表面に、組成物(C1)をバーコーターにて塗布し、140℃にて2時間、加熱乾燥して、組成物(C1)中のパーフルオロトリブチルアミンを揮発させて、重合体(P1)からなる層(厚さ約1.2μm)を重合体(P1)の表面に形成させた。
シリコン製のマスターモールド(縦20mm×横20mm×厚さ0.63mm)を用意した。該マスターモールドは、ライン&スペースパターン(高さ1.0μm、幅2.0μm、間隔2.0μm)を表面の一部に有する。
該マスターモールドを140℃に加熱しながら、重合体(P1)からなる層へ7.5MPaの圧力にて押し当てて、3分間保持した。
マスターモールドおよびPCシートを60℃になるまで冷却し、マスターモールドを分離し、PCシート上の熱可塑性含フッ素重合体からなるモールド本体表面に、微細構造(凸部)に対応する反転構造(凹部)が形成されたモールド1を得た。
モールド1の表面の含フッ素重合体に含まれるフッ素原子は、重合体(100質量%)中68質量%であった。含フッ素重合体の軟化温度(ガラス転移温度)は108℃であった。含フッ素重合体の構造が形成されていない平坦な面に対する水の接触角を測定したところ112度であった。
なお、本実施例においては、含フッ素重合体の軟化温度(ガラス転移温度)は、モールドの状態ではなく、重合体単独(バルクの状態)で測定した値である。モールドの状態であってもバルクの状態であっても、軟化温度(ガラス転移温度)は変化しないと考えられるので、本実施例ではバルク状態での軟化温度(ガラス転移温度)を採用した。
〔例6〕モールド2の作製:
例5と同じシリコン製のマスターモールドに例1の光硬化性組成物を滴下した。続いてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製、A4100、厚さ125μm)を易接着面が光硬化性組成物側になるように押し付けた状態で、スポットUV照射装置(ウシオ電機社製、スポットキュアSP−9)を用いて光を10秒間照射した。波長365nmにおける照度は60mW/cmであった。PETフィルムを分離して、PETフィルム上の含フッ素重合体からなる本体表面に、微細構造(凸部)に対応する反転構造(凹部)が形成されたモールド2を得た。
モールド2の表面の含フッ素重合体に含まれるフッ素原子は、重合体(100質量%)中15質量%であった。含フッ素重合体の構造が形成されていない平坦な面に対する水の接触角を測定したところ92度であった。
〔例7〕モールド3の作製:
シリコン製のマスターモールドの代わりに、例5で作製したモールド1を用いた以外は例6と同様に行った。PETフィルム上の含フッ素重合体からなる本体表面に、微細構造(凸部)に対応する反転構造(凹部)が形成されたモールド3を得た。
モールド3の表面の含フッ素重合体に含まれるフッ素原子は、重合体(100質量%)中15質量%であった。含フッ素重合体の構造が形成されていない平坦な面に対する水の接触角を測定したところ104度であった。含フッ素の光硬化性組成物を、表面がフッ素樹脂からなるモールドに接触させた状態で硬化させたため、光硬化性組成物中のフッ素成分がモールドと接触している面に偏析して、例6と比べて接触角が高くなったと推測される。
〔例8〕モールド4の作製:
ETFEフィルム(旭化成社製、アフレックス、厚さ50μm)を用意した。続いて、例5と同じシリコン製のマスターモールドを230℃に加熱しながら、ETFEフィルムに5MPaの圧力にて押し当てて、3分間保持した。マスターモールドおよびETFEフィルムを60℃になるまで冷却し、ETFEフィルムとマスターモールドとを分離し、ETFEフィルムからなるモールド本体表面に、微細構造(凸部)に対応する反転構造(凹部)が形成されたモールド4を得た。
〔例9〕モールド5の製造:
PMMAシート(旭化成社製、デラグラスA、厚さ2mm)を用意した。続いて、例5と同じシリコン製のマスターモールドの表面に、パーフルオロ(ポリオキシアルキレン)基を有する含フッ素シランカップリング剤(ダイキン社製、オプツールDSX)を塗布した。マスターモールドを125℃に加熱しながら、PMMAシートに5MPaの圧力にて押し当てて、3分間保持した。マスターモールドおよびPMMAシートを60℃になるまで冷却し、PMMAシートとマスターモールドとを分離し、PMMAシートからなるモールド本体表面に、微細構造(凸部)に対応する反転構造(凹部)が形成されたモールド5を得た。
Figure 2011183554
〔例10〕モールド6の作製:
例5と同様にPCシートの表面にプライマーと重合体(P2)からなる層と重合体(P1)からなる層とを形成した。
ニッケル製のマスターモールド(縦25mm×横25mm×厚さ0.5mm)を用意した。該マスターモールドは、円錐状のホールアレイパターン(深さ0.25μm、三角配列、円錐の先端部分の間隔0.25μm)を表面全体に有する。
該マスターモールドを140℃に加熱しながら、重合体(P1)からなる層へ7.5MPaの圧力にて押し当てて、3分間保持した。マスターモールドおよびPCシートを80℃になるまで冷却し、PCシートとマスターモールドとを分離し、PCシート上の熱可塑性含フッ素重合体からなるモールド本体表面に、微細構造(凸部)に対応する反転構造(凹部)が形成されたモールド6を得た。
〔例11〕モールド7の作製:
モールド6に例1の光硬化性組成物を滴下した。続いてPETフィルム(東洋紡社製、A4100、厚さ125μm)を易接着面が光硬化性組成物側になるように押し付けた状態で、スポットUV照射装置を用いて光を10秒間照射した。マスターモールドからPETフィルムを分離して、PETフィルム上の光硬化性含フッ素重合体からなる本体表面に、微細構造(凸部)に対応する反転構造(凹部)が形成されたモールド7を得た。
〔例12〕硬化性物質を含む溶液の調製:
溶剤のエタノール、4官能シランのテトラメトキシシラン、3官能シランの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシラン、反応触媒を含む水の0.1規定硝酸水溶液を表2に記載された組成で混合し、1時間撹拌した。さらに、2−プロパノール(溶剤)と界面活性剤とを混合した溶液を加えて、塗布液1とした。同様に、表2に示す割合に従って塗布液2〜7を調製した。塗布液8については溶剤の2−プロパノール0.4gのみを加えて界面活性剤は加えなかった。
Figure 2011183554
〔例13〕
モールド1の表面に塗布液1を250rpm、30秒の条件でスピンコートし、60℃で15分乾燥させて硬化前駆体とした。続いて、硬化前駆体表面に光硬化性接着剤(エレクトロニクスマテリアルズ社製、OPTOCAST 3505−LT−UTF、屈折率1.521)を塗布した。光硬化性接着剤の上にスライドグラス(屈折率1.525)を載せて、スポットUV照射装置を用いて光を20秒間照射した後にモールド1を剥離した。離型性は良好で、容易に剥離することができた。さらに120℃で15分の熱処理を行って硬化前駆体を硬化させて硬化物質とし、表面に微細構造が形成された硬化物質を含む微細構造体を得た。微細構造を共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、モールドの微細構造が精確に転写されていた。また、微細構造体にクラックは見られなかった。結果を表3に示す。
〔例14〕〜〔例18〕
表3に示す塗布液とモールドとの組み合わせにより、例13と同様に微細構造体を得た。いずれの例においても、離型性は良好で、容易に剥離することができた。微細構造を共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、モールドの微細構造が精確に転写されていた。また、微細構造体にクラックは見られなかった。
〔例19〕
モールド1の代わりにモールド5を用いた以外は例13と同様に行った。モールドと硬化前駆体が強固に接着しており、剥離することができなかった。
〔例20〕
塗布液1の代わりに塗布液8を用いた以外は例13と同様に行った。離型性は良好で、容易に剥離することができた。微細構造を共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、モールドの微細構造が高さが不十分で0.85μmであった。また、微細構造体には多数のクラックが発生していた。
〔例21〕
塗布液1の代わりに塗布液9を用いた以外は例13と同様に行った。モールド1が塗布液をはじくため、微細構造体を作製することが出来なかった。
〔例22〕〜〔例23〕
モールド1の代わりに、表3に示すモールドを用いて例21と同様に実験を行った。モールドが塗布液をはじくため、微細構造体を作製することが出来なかった。
Figure 2011183554
〔例24〕
モールド7の表面に塗布液1を1000rpm、30秒の条件でスピンコートし、60℃で15分乾燥させて硬化前駆体とした。続いて、硬化前駆体表面に光硬化性接着剤(エレクトロニクスマテリアルズ社製、OPTOCAST 3505−LT−UTF、屈折率1.521)を塗布した。光硬化性接着剤の上にスライドグラス(屈折率1.525)を載せて、スポットUV照射装置を用いて光を20秒間照射した後にモールド7を剥離した。離型性は良好で、容易に剥離することができた。さらに120℃で15分の熱処理を行って硬化前駆体を硬化させて硬化物質とし、表面に微細構造が形成された硬化物質を含む微細構造体を得た。微細構造体にクラックは見られなかった。得られた微細構造体の反射率を測定したところ、0.7%であった。反射率測定を行った範囲についてウェスで表面を10回拭いてから再度反射率を測定したところ0.9%であり、反射率の増加は0.2%であった。結果を表4に示す。ウェスで拭いていない部分で残膜厚さを調べたところ0.4μmであった。また、塗布液1の硬化物の屈折率は1.452であった。
〔例25〕
塗布液1の代わりに塗布液2を用いた以外は例24と同様に行った。微細構造体にクラックは見られなかった。得られた微細構造体の反射率を測定したところ、0.3%であった。ウェスで表面を10回拭いてから再度反射率を測定したところ0.4%であり、反射率の増加は0.1%であった。残膜厚さは0.2μm、塗布液2の硬化物の屈折率は1.450であった。
〔例26〕
塗布液1の代わりに塗布液3を用いた以外は例24と同様に行った。微細構造体にクラックは見られなかった。得られた微細構造体の反射率を測定したところ、0.3%であった。ウェスで表面を10回拭いてから再度反射率を測定したところ0.6%であり、反射率の増加は0.3%であった。残膜厚さは0.2μm、塗布液3の硬化物の屈折率は1.453であった。
〔例27〕
塗布液1の代わりに塗布液4を用いた以外は例24と同様に行った。微細構造体にクラックは見られなかった。得られた微細構造体の反射率を測定したところ、0.3%であった。ウェスで表面を10回拭いてから再度反射率を測定したところ、1.1%であり、反射率の増加は0.8%であった。残膜厚さは0.2μm、塗布液4の硬化物の屈折率は1.455であった。
〔例28〕
モールド7の表面に、塗布液5を1000rpm、30秒の条件でスピンコートし、60℃で15分乾燥させて硬化前駆体とした。卓上型光表面処理装置(セン特殊光源社製、PL21−200)を用いて紫外線を5分間照射して硬化前駆体表面を活性化した。続いて、硬化前駆体表面に光硬化性接着剤(エレクトロニクスマテリアルズ社製、OPTOCAST 3505−LT−UTF、屈折率1.521)を塗布した。光硬化性接着剤の上にスライドグラス(屈折率1.525)を載せて、スポットUV照射装置を用いて光を20秒間照射した後にモールド7を剥離した。離型性は良好で、容易に剥離することができた。さらに120℃で15分の熱処理を行って硬化前駆体を硬化させて硬化物質とし、表面に微細構造が形成された硬化物質を含む微細構造体を得た。微細構造体にクラックは見られなかった。得られた微細構造体の反射率を測定したところ、0.4%であった。反射率測定を行った範囲についてウェスで表面を10回拭いてから再度反射率を測定したところ0.7%であり、反射率の増加は0.3%であった。ウェスで拭いていない部分で残膜厚さを調べたところ0.4μmであった。また、塗布液5の硬化物の屈折率は1.513であった。
例24〜27について初期反射率を比較すると、例24では残膜厚さが最適な範囲よりも大きいため初期反射率が高くなっている。例28では残膜厚さが最適な範囲よりも大きいが、硬化物質中に屈折率の高いフェニル基を有しているため微細構造の屈折率が高く、微細構造と接着剤層の屈折率差が小さいために反射率が増えていないものと考えられる。
〔例29〕
塗布液1の代わりに塗布液8を用いた以外は例24と同様に行った。微細構造体のは多数のクラックが見られた。得られた微細構造体の反射率を測定したところ、1.2%であった。ウェスで表面を10回拭いてから再度反射率を測定したところ、1.8%であり、反射率の増加は0.6%であった。
〔例30〕
塗布液1の代わりに塗布液9を用いた以外は例24と同様に行った。モールド7が塗布液9をはじくために微細構造体が作製できなかった。
〔例31〕
塗布液1の代わりに液状ガラス(アポロリンク社製、TGA−CP210、有機変性含ケイ素ポリマー、テトラエトキシシラン、ジブチル錫ジアセテート、イソプロピルアルコール、メタノールを含む組成物)を用いた以外は例24と同様に行った。モールド7が液状ガラスをはじくために微細構造体が作製できなかった。
〔例32〕
モールド7の表面の全面を覆うように液状ガラス(アポロリンク社製、TGA−CP210)を滴下して、60℃で4時間乾燥させて硬化前駆体とした。卓上型光表面処理装置(セン特殊光源社製、PL21−200)を用いて紫外線を5分間照射して硬化前駆体表面を活性化した。続いて、硬化前駆体表面に光硬化性接着剤(エレクトロニクスマテリアルズ社製、OPTOCAST 3505−LT−UTF、屈折率1.521)を塗布した。光硬化性接着剤の上にスライドグラス(屈折率1.525)を載せて、スポットUV照射装置を用いて光を20秒間照射した後にモールド7を剥離した。離型性は良好で、容易に剥離することができた。さらに120℃で1時間の熱処理を行って硬化前駆体を硬化させて硬化物質とし、表面に微細構造が形成された硬化物質を含む微細構造体を得た。微細構造体にクラックは見られなかった。得られた微細構造体の反射率を測定したところ、0.7%であった。ウェスで表面を10回拭いてから再度反射率を測定したところ、3.0%であった。
例32ではモールドの表面の全面を大量の液状ガラスで覆うことで、モールド表面から液状ガラス溶液がはじかれずに微細構造体を形成できたが、微細構造体の断面を光学顕微鏡により観察したところ、微細構造の残膜厚さ(凸部の付け根から接着剤と接している面までの距離)は0.1mm〜0.2mmの範囲でばらつきが大きかった。
また、例31で使用している液状ガラスは有機変性含ケイ素ポリマーを主成分とするため硬度が十分でなく、ふき取り試験後に反射率が大幅に増加した。
例24〜32の結果を表4に示す。
Figure 2011183554
〔例32〕
例13で得られた該微細構造体の、微細構造が形成された表面に、1質量%の1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリクロロシランのトルエン溶液を塗布し、150℃で10分間加熱処理して、撥水剤の薄膜を有する微細構造体を得た。微細構造体に対する水の接触角は143度であった。
〔例33〕
例24と同様にして表面に微細構造が形成された硬化物質を含む微細構造体を得た。該微細構造体の、微細構造が形成された表面に、1質量%の1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルトリクロロシランを気相蒸着させた後に、150℃で10分間加熱処理して、撥水剤の薄膜を有する微細構造体を得た。微細構造体に対する水の接触角は151度であった。撥水処理後に微細構造体の反射率を測定したところ、0.7%であった。
本発明の製造方法で得られる微細構造体は、硬化物質の表面に微細構造が集合してなる微細パターンを有することから、各種機能性ガラス(低反射ガラス、高透過率ガラス、撥水ガラス、防汚ガラス等)、各種光学素子(波長フィルター、ワイヤーグリッド偏光子、波長板、補正素子、マイクロレンズ、バイナリー光学素子、回折格子、ブレーズ光学素子、フォトニクス結晶等)、各種デバイス(ディスプレイパネル、太陽電池パネル、発光パネル、LED)に用いることができる。また、製造が容易で大面積化も容易である。
10 微細構造体
12 基材
14 微細構造
16 硬化物質
18 撥水剤の薄膜
20 モールド
22 反転構造
30 硬化性物質を含む溶液の層
32 硬化前駆体

Claims (9)

  1. ゾルゲル法により硬化性物質を硬化して得られる、表面に微細構造が形成された硬化物質を含む微細構造体の製造方法であって、
    (a)表面に前記微細構造に対応する反転構造が形成され、かつその表面が含フッ素重合体を含む、モールドの該表面に、前記硬化性物質を含む溶液を供給して、前記モールドの表面に前記溶液の層を形成する工程と、
    (b)前記含フッ素重合体の軟化温度未満で溶媒を除去し、前記硬化性物質が硬化前駆体となるまで硬化反応を進める工程と、
    (c)モールド上の前記硬化前駆体の層の表面に基材を貼り合わせる工程と、
    (d)前記硬化前駆体の層を有するモールドから該硬化前駆体の層を分離して該硬化前駆体の成形体を得る工程と、
    (e)前記硬化前駆体を硬化させて硬化物質を含む微細構造体を得る工程と、を有する、微細構造体の製造方法において、
    前記硬化性物質を含む溶液が、式Si(Xで表される4官能シラン、式RSi(Xで表される3官能シラン、含フッ素界面活性剤、有機溶剤、および水を含み、
    かつ、前記4官能シランに対する前記3官能シランのモル比が、0.03〜1であることを特徴とする微細構造体の製造方法。
    ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
    、X:それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルコキシ基、
    R:炭素数が1〜10の置換または非置換の1価有機基(ただし、ケイ素原子と結合する原子は炭素原子である)。
  2. 前記硬化性物質を含む溶液において、式RSi(Xで表される3官能シランとして、Rが反応性基を含む基である3官能シランを少なくとも1種含む請求項1に記載の微細構造体の製造方法。
  3. 前記含フッ素重合体が含フッ素熱可塑性樹脂であり、該含フッ素熱可塑性樹脂からなる膜の水に対する接触角が90度以上である、請求項1または2に記載の微細構造体の製造方法。
  4. 前記含フッ素熱可塑性樹脂中に含まれるフッ素原子の量が、該熱可塑性樹脂(100質量%)中35質量%以上である請求項3に記載の微細構造体の製造方法。
  5. 前記含フッ素重合体が含フッ素光硬化性組成物の硬化物からなる重合体であり、該含フッ素重合体からなる膜の水に対する接触角が90度以上である、請求項1または2に記載の微細構造体の製造方法。
  6. 前記基材が透明基材であり、(c)工程において、硬化後の屈折率と透明基材の屈折率との差が0.05未満である透明接着剤を用いて前記硬化前駆体の層の表面に基材を貼り合わせる、請求項1〜5のいずれかに記載の微細構造体の製造方法。
  7. 前記微細構造における凸部または凹部の幅が、平均で20nm〜30μmであり、かつ凸部の高さまたは凹部の深さが、平均で10nm〜10μmである、請求項1〜6のいずれかに記載の微細構造体の製造方法。
  8. さらに、(f)前記(e)工程で得られた微細構造体の硬化物質の表面に撥水剤の薄膜を形成する工程を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の微細構造体の製造方法。
  9. 前記撥水剤が、含フッ素シランカップリング剤である、請求項8に記載の微細構造体の製造方法。
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