JP2016048240A - スクリーニング法 - Google Patents

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Abstract

【課題】生物学的シグナル伝達複合体の結合およびシグナル伝達を動態調節する能力を示すポリペプチド結合剤を、同定する方法、作製する方法、含む組成物、用いる方法を提供する。
【解決手段】(a)試験抗体の存在下で、第2の成分に対する第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータを測定するステップと、(b)試験抗体の非存在下で、第2の成分に対する第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータを測定するステップと、(c)試験抗体が、ステップ(a)および(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータにおいて1.5倍〜1000倍の差を示す時に、試験抗体を候補動態調節抗体として同定するステップとを含む、シグナル伝達複合体の第1の成分と第2の成分の間の結合を調節する候補動態調節抗体を同定する方法。
【選択図】なし

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2009年9月25日に出願した米国仮特許出願第61/246,079号および2010年2月19日に出願した米国仮特許出願第61/306,324号の優先権の利益を主張し、これらの各々は参照によりその全体が組込まれる。
分野
本発明は、生物学的シグナル伝達複合体、例えば、受容体−リガンド複合体の結合およびシグナル伝達を動態調節する能力を示すポリペプチド結合剤、例えば、抗体のスクリーニング法に関する。本発明は、所望の動態調節特性によって特徴づけられる特異的ポリペプチド結合剤にも関する。
添付資料の組み込み
本出願は、本出願と共に提出される、表の添付資料Aである、255KBのサイズで2009年9月25日に作製された「41726_SecretedProteins.txt」を含む。このASCIIテキストファイルに含まれる内容は、米国特許法施行規則(37C.F.R)§1.52(e)(5)に従って、その全体が参照により本書に組み込まれる。
背景
従来、ほとんどの抗体医薬は、細胞表面受容体またはその同族リガンドのいずれか一方に結合する抗体をスクリーニングし、その受容体のシグナル伝達活性を特異的に遮断または刺激する抗体を同定することにより同定されている。多くの抗体医薬は、リガンドまたは受容体のいずれか一方に結合することによってシグナル伝達経路を遮断し、それによって、その受容体に結合し、活性化するリガンドの能力を無くす。このような遮断抗体は、受容体−リガンド複合体の形成を阻止することによって、化学量論的にそれらの作用を媒介する。逆に、いくつかの抗体医薬は受容体に結合し、受容体のシグナル伝達を活性化する。このようなアゴニスト抗体は、そのリガンドの天然活性を模倣することによってそれらの作用を媒介することができるので、シグナル伝達を活性化するためにリガンドの存在を必要としない。
概要
本発明は、標的およびそのシグナル伝達パートナーが関わる細胞経路活性を正または負のいずれかで調節する所望の特性を有し、「動態調節剤」または「動態調節因子」と命名されたポリペプチド結合剤の新規カテゴリーを提供する。標的および/またはそのシグナル伝達パートナーは、タンパク質性または非タンパク質性の性質を有する内在性または外来性の化合物であり得るが、任意に、イオンおよび塩を排除し得る。本発明は、このような動態調節因子を、標的とそのシグナル伝達パートナーとの間の結合動態に対するそれらの作用に基づいて、または複合型対非複合型の標的(および/またはそのシグナル伝達パートナー)に対する動態調節因子の異なる結合に基づいて同定する新規の方法も提供する。このポリペプチド結合剤は、標的、そのシグナル伝達パートナーならびに/または標的およびそのシグナル伝達パートナーを含む複合体に結合し得る。この発見により、治療用途に適切な細胞経路活性の調節因子を同定することができる生物物理学的スクリーニングアッセイを設計することが可能になる。
いくつかの態様において、標的とそのシグナル伝達パートナーとの間の結合動態を調節するポリペプチド結合剤を同定するためのアッセイを提供する。標的の非限定的な例として、例えば、添付資料A(または配列番号1〜88)に記述されている登録番号のいずれの分泌タンパク質も挙げられる。これらの分泌タンパク質には、多くの分泌型膜結合受容体が含まれる。本明細書に添えた添付資料Aに、Swissprot/EMBLデータベースによって集められているヒト分泌タンパク質を載せている(例えば、Boeckmann et al."The SWISS−PROT protein knowledgebase and its supplement TrEMBL in 2003",Nucleic Acids Res.31:365−370(2003)参照)。添付資料Aに、このデータベース中の分泌タンパク質のアミノ酸配列、タンパク質の名称(および全ての頭字語または関連名)ならびにアミノ酸配列の長さについてのSwissprotアクセッション番号を提示する。本明細書で使用する「シグナル伝達パートナー」は、標的に結合した時、細胞経路を活性化するか、または阻害するシグナル伝達複合体もしくはシグナル伝達複合体の一部を形成する標的の結合パートナーである。このような動態調節因子であるポリペプチド結合剤の存在は、標的の、そのシグナル伝達パートナーに対する見かけの結合親和性を変える(強めるか、もしくは弱める)ので、細胞経路を活性化するために標的の用量反応を変える。あるいは、そのシグナル伝達パートナーに対する標的のオン速度(on−rate)を変える(増加させるか、もしくは減少させる)か、またはオフ速度(off−rate)を変える(減少させるか、もしくは増加させる)動態調節因子であるポリペプチド結合剤は、シグナル伝達パートナーと複合体を形成した標的の滞留時間を変更し(増加させるか、もしくは減少させ)、受容体内部移行の速度を変更し、かつ/またはシグナル伝達パートナー複合体によって活性化もしくは不活性化されるシグナル伝達タンパク質のリン酸化の程度を変更することもできる。このような変更は、標的とシグナル伝達パートナーの複合体形成による異なるシグナル伝達経路の相対活性化を著しく変えるので、細胞経路を活性化するために標的の用量反応を変える。このような動態調節因子は、安全性プロファイルの改善、クリアランス速度の変更、広範な治療濃度域および頻回投与の低さを含む、従来の治療薬物を超える利点を有することが期待される。標的が患者に投与されている外来性化合物である場合、この標的による補助治療としての動態調節因子の投与は、標的の投与の(毎日、毎週、毎月の)総量および/または頻度を変える(例えば、減少させる)ことができる。
本発明は、約1000ダルトン以下の分子量を有する非ポリマー性有機化合物などの従来の低分子薬物を除く、ポリペプチド結合剤である候補動態調節剤を同定する方法を提供する。特に意図するポリペプチド結合剤の例として、任意に、他のペプチド部分または非ペプチド部分と結合した抗体の抗原結合断片、ペプチボディー(peptibody)、ポリペプチドおよびペプチドを含む抗体が挙げられる。抗体の例として、モノクローナル抗体、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む4量体免疫グロブリン、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、抗体断片、scFv、Fab、CDR、げっ歯類の抗体、哺乳類の抗体、ヒトの抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体が挙げられる。
本発明は、シグナル伝達複合体(標的とシグナル伝達パートナー、またはその逆)の第1の成分と第2の成分との間の結合を調節するポリペプチド結合剤、例えば、候補抗体を同定する方法を提供する。このような第1の成分および/または第2の成分の例として、添付資料A(または配列番号1〜88)の分泌タンパク質のいずれか、およびこのような分泌タンパク質の内在性もしくは外来性のシグナル伝達パートナー、または本明細書記載のリガンド、受容体もしくは膜貫通タンパク質のいずれかが挙げられる。いくつかの実施形態において、この第1の成分および第2の成分はポリペプチドである。例示的な特定の実施形態において、この第1の成分および第2の成分は内在性である。
一態様において、候補動態調節剤を同定する方法は、(a)試験ポリペプチド結合剤、例えば、抗体の存在下で、前記第1の成分の前記第2の成分に対する結合親和性または結合速度パラメータを測定すること、(b)前記試験ポリペプチド結合剤の非存在下で、前記第1の成分の前記第2の成分に対する結合親和性または結合速度パラメータを測定すること、(c)前記試験ポリペプチド結合剤が、ステップ(a)および(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータにおいて少なくとも1.5倍の差を示す時に、前記試験ポリペプチド結合剤を候補動態調節剤として同定することが含まれる。図1は、いくつかの例示的な実施形態を説明する模式図である。いくつかの実施形態において、結合親和性または結合速度パラメータにおける差は、約1.5倍(すなわち、50%)から任意に約1000倍、または約1.5倍〜約100倍、約2倍〜約25倍、約2倍〜50倍、約1.5倍〜約25倍、約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、最高で500倍、最高200倍、最高で150倍、最高で100倍、最高で90倍、最高で80倍、最高で70倍、最高で60倍、最高で50倍、最高で40倍、または最高で30倍に及ぶ。いくつかの実施形態において、この試験ポリペプチド剤が、前記第1の成分と前記第2の成分との間の結合親和性または結合速度パラメータを強める場合(例えば、Kの低下、Kの増加、オフ速度/オン速度の比の低下、オン速度/オフ速度の比の増加、オン速度の増加、またはオフ速度の減少の場合)に、この試験ポリペプチド結合剤を、正の調節因子の候補として同定する。他の実施形態において、この試験ポリペプチド剤を、この試験ポリペプチド剤が前記第1の成分と前記第2の成分との間の結合親和性または結合速度パラメータを弱める場合(例えば、Kの増加、Kの減少、オフ速度/オン速度の比の増加、オン速度/オフ速度の比の減少、オン速度の減少、またはオフ速度の増加の場合)に、負の調節因子の候補として同定する。
いくつかの別の実施形態において、結合親和性が検出可能な程度に変化しない時でさえ、強い結合速度パラメータ(例えば、オン速度の増加またはオフ速度の減少による結合時間または滞留時間の増加)が、所望のシグナル伝達経路の相対的活性の増加をもたらす場合、この試験ポリペプチド結合剤を、結合速度パラメータにおいて所望の強化の割合を同定することにより、正の調節因子の候補として同定する。結合親和性が検出可能な程度に変化しない時でさえ、弱い結合速度パラメータ(例えば、オン速度の減少またはオフ速度の増加による結合時間または滞留時間の減少)が、所望のシグナル伝達経路の相対的活性の増加をもたらす場合、この試験ポリペプチド結合剤を、結合速度パラメータにおいて所望の弱化の割合を同定することにより、正の調節因子の候補として同定する。同様に、結合親和性が検出可能な程度に変化しない時でさえ、強い結合速度パラメータ(例えば、オン速度の増加またはオフ速度の減少による結合時間または滞留時間の増加)が、所望のシグナル伝達経路の相対的活性の減少をもたらす場合、この試験ポリペプチド結合剤を、結合速度パラメータにおいて所望の強化の割合を同定することにより、負の調節因子の候補として同定する。結合親和性が検出可能な程度に変化しない時でさえ、弱い結合速度パラメータ(例えば、オン速度の減少またはオフ速度の増加による結合時間または滞留時間の減少)が、所望のシグナル伝達経路の相対的活性の減少をもたらす場合、この試験ポリペプチド結合剤を、結合速度パラメータにおいて所望の弱化の割合を同定することにより、負の調節因子の候補として同定する。
別の態様において、候補動態調節剤を同定する方法は、(a)(i)前記第2の成分の存在下で、前記第1の成分に対する試験ポリペプチド結合剤、例えば、抗体の結合親和性もしくは結合速度パラメータを測定するか、または(ii)前記第1の成分の存在下で、前記第2の成分に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性もしくは結合速度パラメータを測定すること、(b)(i)前記第2の成分の非存在下で、前記第1の成分に対する前記試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメータを測定するか、または(ii)前記第1の成分の非存在下で、前記第2の成分に対する前記試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメータを測定すること、および(c)前記試験ポリペプチド結合剤が、ステップ(a)および(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータにおいて1.5倍〜100倍の差を示す時に、前記試験ポリペプチド結合剤を候補動態調節剤として同定することが含まれる。図2は、相互作用をこの第2の成分の存在下および非存在下で測定するいくつかの例示的な実施形態を説明する模式図である。
いくつかの実施形態において、ステップ(a)および(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータにおける差は、約1.5倍(すなわち、50%)から任意に約1000倍、または約1.5倍〜約100倍、約2倍〜約25倍、約2倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、最高で500倍、最高200倍、最高で150倍、最高で100倍、最高で90倍、最高で80倍、最高で70倍、最高で60倍、最高で50倍、最高で40倍、または最高で30倍に及ぶ。いくつかの実施形態において、ステップ(a)で測定される結合親和性または結合速度パラメータが、ステップ(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータよりも強い場合に、この試験ポリペプチド結合剤を正の調節因子の候補として同定する。他の実施形態において、ステップ(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータが、ステップ(a)で測定される結合親和性または結合速度パラメータよりも強い場合に、この試験ポリペプチド結合剤を負の調節因子の候補として同定する。
前述の方法のいずれをもハイスループットアッセイとして実行することができ、その際、複数(例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、100、150、200、500、1,000、10,000、または25,000個)のポリペプチド結合剤を同時にまたは連続してスクリーニングする。いくつかの実施形態において、これらの方法は、さらに、(a)第1の成分、(b)第2の成分、または(c)第1の成分および第2の成分を含む複合体のいずれか1つに対する結合親和性について、多数の試験ポリペプチド結合剤、例えば、抗体をアッセイし、その後、任意に、結合親和性または結合速度パラメータの差を測定することを含む。このようなライブラリーのプレスクリーニングもハイスループットアッセイとして実行することができ、その際、複数(例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、100、150、200、500、または1,000個)のポリペプチド結合剤を同時にまたは順次スクリーニングする。いくつかの実施形態において、スクリーニングされる多数の試験ポリペプチド結合剤は、親のポリペプチド結合剤に1つ以上の異なる変異を導入することによって作製される親のポリペプチド結合剤の変異体である。
さらなる実施形態において、このポリペプチド結合剤を、デコイ受容体、クリアランス受容体、または別のシグナル経路の成分などの異なる結合パートナーと比較して、第1または第2の成分に対する効果の選択性についてスクリーニングしてもよい。このような方法は、異なる結合パートナーに対して、第1もしくは第2の成分の結合親和性または結合速度パラメータを著しく変化させないポリペプチド結合剤を同定することを含んでもよく、このような結合パートナーは第1もしくは第2の成分のどちらでもない。
結合親和性または結合速度パラメータの前述の測定のいずれをも、第1の成分、第2の成分およびポリペプチド結合剤の1つ以上が溶液中にあるアッセイ、第1の成分、第2の成分およびポリペプチド結合剤の1つ以上が固相に(共有結合または非共有結合で)結合しているアッセイ、または第1の成分、第2の成分およびポリペプチド結合剤の1つ以上が細胞表面上で発現するアッセイで実行してもよい。この第1および/または第2の成分の各々それ自体は、複数化合物の複合体であってもよい。この第1および/または第2の成分(例えば、標的またはシグナル伝達パートナーもしくはその逆)は、7回膜貫通型受容体、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、アドレナリン受容体、神経伝達物質受容体、嗅覚受容体、オピオイド受容体、ケモカイン受容体、ロドプシン、受容体型チロシンキナーゼ、成長因子受容体、インテグリン、およびtoll様受容体、酵素または基質を含むが、これらに限定されない可溶性のまたは膜結合型のリガンドもしくは受容体であってもよい。
前述の方法のいずれも、さらに、候補動態調節ポリペプチド結合剤をリクローニングし、発現させること、もしくは合成して発現させること、または合成すること;この動態調節因子を精製し、かつ/または配列決定すること;Fc領域もしくはその断片を加えるか、または置換すること;この動態調節因子または変異体、例えば、親の抗体の少なくとも3つまたは6つの同じCDRを含む抗体を、無菌の薬学的に許容される希釈剤で無菌の組成物中に製剤化すること;ならびに/または動態調節因子または変異体を動物に投与することを含んでもよい。
前述の方法のいずれも、さらに、試験ポリペプチド結合剤の存在下および非存在下で、シグナル伝達複合体によって媒介されるシグナル伝達のレベルを測定すること、さらに、試験ポリペプチド結合剤がさらにアゴニスト、部分的アゴニスト、アンタゴニストまたは部分アンタゴニストであるか否かを決定することを含んでもよい。特定の実施形態において、このアゴニストまたは部分的アゴニストは、アロステリックアゴニストである。
関連する態様において、本発明は、前述の方法のいずれかまたは本明細書のどこかに記載する方法のいずれかによって同定されるポリペプチド結合剤、例えば、抗体を提供する。
別個の態様において、本発明は、所望の特性を有するポリペプチド結合剤も提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、(a)約10−5M以下、例えば、10−6M以下、10−7M以下、または10−8M以下(ここで、低い数は、高い結合親和性を示す)の平衡解離定数Kで、標的、例えば、添付資料A(すなわち配列番号1〜88)のいずれかの分泌タンパク質と結合し、かつ(b)前記標的とそのシグナル伝達パートナーとの間の結合親和性Kを、約1.5倍(すなわち、50%)から任意に約1000倍、約1.5倍〜約100倍、約2倍〜25倍、約2倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、または約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、最高で500倍、最高200倍、最高で150倍、最高で100倍、最高で90倍、最高で80倍、最高で70倍、最高で60倍、最高で50倍、最高で40倍、または最高で30倍改善することができる正の調節因子を提供する。他の実施形態において、本発明は、(a)約10−5M以下、例えば、10−6M以下、10−7M以下、または10−8M以下の平衡解離定数Kで、標的、例えば、添付資料A(すなわち配列番号1〜88)のいずれかの分泌タンパク質と結合し、かつ(b)前記標的とそのシグナル伝達パートナーとの間の結合親和性Kを、約1.5倍(すなわち、50%)から任意に約1000倍、約1.5倍〜約100倍、約2倍〜25倍、約2倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、または約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、最高で500倍、最高200倍、最高で150倍、最高で100倍、最高で90倍、最高で80倍、最高で70倍、最高で60倍、最高で50倍、最高で40倍、または最高で30倍低下させることができる負の調節因子を提供する。
このようなポリペプチド結合剤のいずれも、さらに精製し、実質的に均一な、例えば、少なくとも約90%、95%、97%、98%、99%または99.5%純粋な組成物を得ることができる。
本発明は、さらに、無菌の薬学的に許容される希釈剤を、例えば、治療有効量のこのようなポリペプチド結合剤、このようなポリペプチド結合剤の無菌組成物に加えることを含む無菌の医薬組成物を調製する方法、および、例えば、分泌タンパク質を含む複合体のシグナル伝達を調節する(増加または減少させる)ためにこのような無菌の組成物を投与する方法を提供する。
本明細書に記載のそれぞれの特徴もしくは実施形態、または組み合わせは、本発明の態様のいずれかの限定されない実例であり、したがって、本明細書に記載の任意の他の特徴もしくは実施形態、または組み合わせと合わせることができることが意図されると理解される。例えば、特徴が「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「さらなる実施形態」、「特定の例示的な実施形態」、および/または「別の実施形態」などの表現で記載されている場合、これらの種類の実施形態のそれぞれは、全ての可能な組み合わせを記載する必要なく、本明細書に記載の任意の他の特徴または特徴の組み合わせと組み合わせることを目的とする限定されない特徴の例である。このような特徴または特徴の組み合わせは、本発明のいずれの態様にも適用される。同様に、方法が、いくつかの特徴によって特徴づけられる抗体などのポリペプチド結合剤の同定について記載している場合、それらの特徴によって特徴づけられるポリペプチド結合剤も本発明で意図する。範囲に入る値の例が開示される場合、これらの例のいずれをも範囲の可能な終点と考えられ、このような終点間の任意のおよび全てのそれぞれの数値が意図され、高い終点と低い終点の任意のおよび全ての組み合わせが想定される。
本発明の多数のさらなる態様および利点は、目下本発明の好ましい実施形態について記載している本発明の以下の詳細な説明を考慮することで当業者に明らかになるであろう。本出願中で言及される全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国の特許、外国の特許出願、および非特許文献は、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。
試験ポリペプチド結合剤の存在下または非存在下で行われる結合の測定を説明する模式図である。 第2の複合体成分の存在下または非存在下で行われる結合の測定を説明する模式図である。 (A)リガンド濃度を変えた時、(B)調節因子(非アゴニスト抗体)の濃度を変えた時、(C)調節因子(アゴニスト抗体)の濃度を変えた時の、シグナル伝達活性に対する動態調節抗体の予想される効果を示すグラフである。 タンパク質−タンパク質相互作用の調節を検出する平衡解親和性測定法(equilibrium solution affinity measurement method)の模擬実験データを示すグラフである。 IL−1 sRI(A)、およびIL−1 sRII(B)へのIL−1β結合の親和性に対するXOMA 052の効果を示すグラフである。 (A)細胞アッセイについての、IL−1βのEC50でのXOMA 052によるIL−1β活性の中和を示すグラフである。(B、C)IL−1 sRI相互作用に対するIL−1βの負の親和性調節が、IL−1βに対する細胞の用量反応の変化をもたらし、IC50の増加をもたらすことを示すグラフである。 抗体/IL−1β複合体の注射の48時間後に血液循環中に残っている全IL−1βの量を示すグラフである。 T2Dにおける異なる薬剤の種類によるIL−1β活性の制御を示す図である。 実施例2に記載のGCSF−GCSFR結合相互作用を調節する抗体を同定する固相親和性測定アッセイの結果を示すグラフである。 GCSFRをトランスフェクトしたBAF3細胞に対するA10(B6)抗体のGCSF依存的結合を示すグラフである。 hINS−INSR結合相互作用を調節する抗体を同定する細胞ベース親和性測定アッセイの結果の見本のグラフである。 試験抗体によるhINS−INSR結合相互作用の調節を測定する細胞ベース親和性測定アッセイの結果の見本のグラフである。 pIRS−1リン酸化を刺激する試験抗INSR抗体の能力を測定するアッセイの結果の例のグラフである。 固定濃度の様々な試験抗体の存在下または非存在下におけるpIRS−1アッセイのインスリンEC50値を示す表である。 高脂肪食を与え、かつ部分的アゴニストの抗INSR抗体で処理した20週齢のDIOマウスの血糖値を示すグラフである。A.糖レベルの線グラフである。B.部分的アゴニストの抗INSR抗体の注射後の血糖の統計的に有意な低下を示す糖レベルの棒グラフである。 部分的アゴニストの抗INSR抗体の投与がDIOマウスにおける血糖管理を改善することを示すグラフである。A.糖負荷試験の時間経過;B.空腹時血糖値;C.糖負荷試験;曲線下面積(AUC)。 正の調節因子の抗INSR抗体が、DIOマウスのインスリン感受性を改善することを示すグラフである。A.インスリン負荷試験の時間経過;B.空腹時血糖値;C.インスリン負荷試験;曲線下面積(AUC)。 正の調節因子の抗INSR抗体が、DIOマウスの血糖管理を改善することを示すグラフである。A.グルコース負荷試験の時間経過;B.空腹時血糖値;C.グルコース負荷試験;曲線下面積(AUC)。 内在性リガンドに対する用量反応と比較した部分的アロステリックアゴニストの用量反応(A)またはアロステリックアゴニスト(B)の存在下もしくは非存在下でのリガンドによる活性化を示すグラフである。 内在性リガンドに対する用量反応と比較した正のアロステリック調節因子の抗体の用量反応(A)または正のアロステリック調節因子の抗体の存在下および非存在下における内在性リガンドの用量反応(B)を示すグラフである。 内在性リガンドのインスリンに対する一組の部分的アロステリックアゴニストのみについての活性化パラメータを示す表である。Ser473におけるAktリン酸化反応の割合(%)の測定から得たデータ。 負の対照抗体の存在下での内在性リガンドへの最大反応に対する、10μg/mlの部分的アロステリックアゴニスト抗体の存在下でのインスリンの活性化特性を示す表である。Ser473におけるAktリン酸化反応の割合(%)の測定から得たデータ。
詳細な説明
本発明は、ポリペプチド結合剤である動態調節剤、その使用、および動態調節剤を同定する様々な方法を提供する。これらの動態調節因子は、シグナル伝達複合体成分の結合および解離に対する動態速度定数を変えることによって、またはシグナル伝達複合体の構造状態を変えることを含む他の機構によって、例えば、遷移状態への結合およびシグナル伝達の活性化を促進することによって、細胞反応に対する正もしくは負のいずれか一方の効果を誘発することができる。
シグナル伝達複合体の調節は、シグナル入力に対する感受性の増加または減少およびシグナル伝達における付随する増加または減少をもたらすことができる。これらの動態調節因子の投与は、細胞経路の感受性および/もしくは細胞反応の絶対レベルを増加または減少させる。本発明の動態調節因子は、それらの特性に応じて、調節因子、増強因子、制御因子、エフェクターまたは増感剤として機能することができる。
多くの抗体医薬は、細胞表面受容体またはその同族リガンドのいずれか一方に結合し、かつその受容体に結合し、活性化するそのリガンドの能力を無くすことによってシグナル伝達経路を遮断するように働く。このような遮断薬は、受容体−リガンド複合体の形成を阻止することによって、化学量論的にそれらの作用を媒介する。しかし、異常に活性化した時に、疾患に結び付くほとんどの経路は、正常な生物過程において、正常な発達または恒常性の役割をも有する。この所見は、TNF−αおよびIL−6などの非常に強力なサイトカインが、病理学的な状況において炎症を促進するだけでなく、感染の制御に重要で有益な役割も担う免疫システムに対して特にあてはまる。それゆえに、いくつかの疾患の治療を成功させるためには、許容可能な副作用プロファイルを伴って正常な生理学的状態を回復するために、シグナル伝達経路の完全な阻害よりもむしろ減弱を必要とし得る。本発明が提供する動態調節因子は、このような利点を提供することが期待される。
他の治療薬は、細胞表面受容体に結合し、その受容体の活性を変えることによって細胞のシグナル伝達経路に影響を及ぼす。このような直接的なアゴニスト薬は、リガンドの天然活性を模倣することによってそれらの作用を媒介するので、固有の活性を有し得る。すなわち、これらのアゴニスト薬は、それらの作用を媒介するためにリガンドの存在を必要としない。さらなる治療薬は、リガンドに結合することによって細胞のシグナル伝達経路に影響を及ぼす。このような間接的なアゴニスト薬は、リガンドの安定性または結合価を変えることによってそれらの作用を媒介し得る。
生物プロセスは、一般に、二者択一的ではなくむしろ連続的な方法で制御されるので、多くの場合、経路の活性化の調節は、完全な経路の遮断または刺激よりも適切な治療方針であり得る。完全な経路の遮断または刺激よりもむしろ経路の活性化の調節についての機能的な細胞ベースのスクリーニングの実行は、このようなスクリーニングが、一般に、既知濃度の試験化合物を必要とし、この試験化合物の調製における全ての不純物に敏感であり得るので、ハイスループット法で容易に実行することはできない。特に、経路の活性化の調節についてハイスループットで、機能的な細胞ベースのスクリーニングを実行する能力は、細胞内環境に入ることができない細胞不透過性分子に限定され、特に、使用する生産システムにおいて異なる発現レベル、純度および安定度を有し得る組換え生体分子に限定される。さらに、(例えば、デコイ受容体、デコイ基質、または標的の不活性型の場合に、)いくつかの結合相互作用は、機能的スクリーニングにおいて測定すべきシグナル伝達出力を有しておらず、これらの相互作用を混乱させる薬剤を同定することを困難にさせ得る。
本発明はこれらの不都合を克服し、ハイスループット法で所望の活性および所望の効力を有する正および負の動態調節因子を同定する手段を提供する。
定義
「化合物」という用語は、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド、小分子、核酸(例えば、DNAおよびRNA)、炭水化物、脂質、脂肪、ステロイド、プリン、ピリミジン、ペプチド模倣薬、ポリケチド、ならびにそれらの誘導体、それらの構造類似体またはそれらの組み合わせを含むが、これらの限定されない任意の化合物、有機化合物もしくは無機化合物、内在性化合物または外来性化合物を表す。「内在性」は哺乳類に天然に存在することを意味するが、「外来性」は、哺乳類に天然に存在しない、例えば、投与される外来化合物を意味する。
「ポリペプチド結合剤」という用語は、抗原、例えば、標的またはそのシグナル伝達パートナーに特異的に結合することができるか、または測定可能な結合親和性で抗原に結合することができるポリペプチドを表す。ポリペプチド結合剤の例として、任意に他のペプチド部分または非ペプチド部分に結合している抗体、ペプチボディー、ポリペプチドおよびペプチドが挙げられる。ポリペプチド結合剤が結合することができる抗原には、抗体反応を引き起こすことができるか、または非特異的結合よりも高い検出可能な結合親和性でポリペプチド結合剤に結合することができる任意のタンパク質性または非タンパク質性の分子が含まれる。動態調節ポリペプチド結合剤が結合する抗原には、標的、標的のシグナル伝達パートナー、および/または標的とそのシグナル伝達パートナーを含む複合体が含まれ得る。
「抗体」という用語は最も広い意味で使用され、完全に結合した抗体、四量体抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗原に結合することができる抗体断片(例えば、Fab'、F'(ab)2、Fv、一本鎖抗体、二重特異性抗体)、およびそれらが所望の生物活性を示す限り、前述のものを含む組換えペプチドを含む。「免疫グロブリン」または「四量体抗体」は、2つの重鎖および2つの軽鎖(それぞれ、可変領域および定常領域を含む)からなる四量体の糖タンパク質である。抗原結合部分は、組換えDNA技術または無傷の抗体の酵素的もしくは化学的切断によって産生することができる。抗体断片または抗原結合部分には、抗体が所望の生物活性を保持する限り、とりわけ、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、相補鎖決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体断片、キメラ抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ミニボディ、線状抗体、キレート組換え抗体、トリボディ(tribody)もしくはバイボディ(bibody)、細胞内抗体、ナノボディ、小モジュラー免疫医薬(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、VHH含有抗体、またはその変異体もしくは誘導体、および1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つのCDR配列などのポリペプチドに特異的抗原結合を与えるのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドが含まれる。
「モノクローナル抗体」は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を表す。すなわち、その集団を含む個々の抗体は、少量に存在し得る可能性のある自然発生突然変異を除いて同一である。
本明細書で使用する「抗体変異体」は、自然抗体可変領域ドメインの可変領域内に、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失、または挿入を含む抗体ポリペプチド配列を指す。変異体は、無修飾の抗体と実質的に類似しているか、または実質的に同一であり得る。
本明細書で使用する「キメラ抗体」は、典型的には、異なる種から生じる2つの異なる抗体(例えば、米国特許第4,816,567号参照)に由来する配列を含む抗体を表す。最も典型的には、キメラ抗体は、ヒトとげっ歯類の抗体断片、一般にヒト定常領域とマウス可変領域を含む。
「中和抗体」は、抗体が結合する抗原の生物機能を無くすか、または著しく低下させることができる抗体分子である。したがって、「中和」抗体は、酵素活性、リガンド結合、または細胞内シグナル伝達などの生物機能を無くすか、または著しく低下させることができる。
「単離」抗体は、同定され、その天然環境の成分から分離され、回収された抗体である。その天然環境の夾雑物成分は、抗体の診断用途および治療用途と干渉する物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を含み得る。好ましい実施形態において、この抗体は、(1)ローリー法によって決定される場合、抗体の95重量%以上、最も好ましくは99重量%以上まで精製されるか、(2)スピニングカップ配列決定装置(spinning cup sequenator)の使用によってN末端もしくは内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで精製されるか、または(3)クーマシーブル−もしくは、好ましくは銀染色を用いて、還元もしくは非還元条件下でSDS−PAGEによって均一になるまで精製される。単離抗体は、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、組換え細胞内のそのままの抗体を含む。しかし、通常は、単離抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
本明細書で使用する「特異的に結合する」、「抗原特異的」、抗原「に特異的」または抗原と「免疫反応性のある」抗体は、類似配列を有する他の抗原よりも高い親和性で抗原に結合する本発明の抗体またはポリペプチド結合剤を指す。一態様において、本発明のポリペプチド結合剤、それらの断片、変異体、または誘導体は、他の、すなわち、ヒトではない種の類似抗原に対するその結合親和性と比較して、ヒト抗原に対して高い親和性で結合するが、標的のオルソログを認識し、結合するポリペプチド結合剤は本発明の範囲内に入る。
例えば、その同族抗原に「特異的な」抗体またはその断片であるポリペプチド結合剤は、これらの抗体の可変領域(例えば、この所望の抗原がポリペプチドである場合、ファミリーメンバー間の局在的な配列同一性、配列相同性、または配列類似性の存在の可能性にもかかわらず、結合親和性の測定可能な差異によって、この抗原ポリペプチドと同じファミリーの他の既知のポリペプチドを区別することができる抗体の可変領域)が検出可能な優先度で所望の抗原を認識し、結合することを示す。特異的抗体が、これらの抗体の可変領域外の配列、特に、この分子の定常領域の配列との相互作用を介して、他のタンパク質(例えば、黄色ブドウ球菌のタンパク質AまたはELISA技術における他の抗体)とも相互作用することができることは理解されるであろう。本発明の方法で使用するためのポリペプチド結合剤、例えば、抗体の結合特異性を決定するスクリーニング法は、当業で公知であり、日常的に実施されている。このようなアッセイの包括的な考察については、Harlow et al.(Eds),Antibodies A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory;Cold Spring Harbor,NY(1988),Chapter 6を参照されたい。本発明で使用する抗体は、当業で公知の任意の方法を用いて産生することができる。
「エピトープ」という用語は、抗原結合領域の1つ以上において、選択的結合剤が認識し、結合することができる任意の分子の部分を表す。エピトープは、通常、アミノ酸または炭水化物側鎖などの分子の化学的に活性のある表面のグループ分けからなり、特異的な3次元構造の特徴および特異的な電荷特性を有する。本明細書で使用するエピトープは近接していても、または近接していなくてもよい。
本発明のポリペプチド結合剤およびポリペプチドに関連して使用する時、「誘導体」という用語は、通常、ヒトのタンパク質において生じないユビキチン化、治療薬または診断薬への結合、(例えば、放射性核種または様々な酵素での)標識、ペグ化(ポリエチレングリコールでの誘導体化)などのポリマー共有結合、およびオルニチンなどのアミノ酸の化学合成による挿入または置換などの技術によって化学的に修飾されるポリペプチドを指す。誘導体は、本発明の非誘導体化分子の結合特性を保持する。
「検出可能な部分」または「標識」は、分光学的手段、光学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、または化学的手段によって検出できる組成物を表す。例えば、有用な標識には、32P、35S、蛍光色素、高電子密度試薬、(例えば、一般に、ELISAで使用されるような)酵素、ビオチン−ストレプトアビジン、ジオキシゲニン(dioxigenin)、ハプテンおよび抗血清またはモノクローナル抗体が利用できるタンパク質、または別の標識核酸分子と相補的な配列を有する核酸分子が含まれる。この検出可能な部分は、試料中の結合した検出可能な部分の量を定量化するのに使用することができる放射シグナル、発色シグナル、または蛍光シグナルなどの測定可能なシグナルを発生する場合が多い。
「ペプチド」または「オリゴペプチド」は、典型的には、長さが3〜100個のアミノ酸残基の短いアミノ酸配列であり、天然に存在するアミノ酸残基、ならびに特定の立体構造特異性またはタンパク質分解に対する耐性などの特定の生物活性をペプチドに与えるために、単独で、または天然に存在するアミノ酸残基と組み合わせて使用することができる天然に存在しない残基の類似体を包含する。ペプチドはペプチド配列の反復を含み、ヘッドトゥーテールまたはヘッドトゥーヘッドに配置されたアミノ酸配列の2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のコピーを含み得る。ペプチドは、非ペプチド性の部分、例えば、[伸張部]に結合していてもよい。ペプチドには、例えば、PEGなどの他のポリマー部分または非ポリマー部分との結合を介して形成される二量体、三量体またはより高次の多量体が含まれる。
「ポリペプチド」は、典型的には、長さが100個以上のアミノ酸残基の長いアミノ酸配列であり、天然に存在するアミノ酸残基、ならびに特定の立体構造特異性またはタンパク質分解に対する耐性などの特定の生物活性をポリペプチドに与えるために、単独で、または天然に存在するアミノ酸残基と組み合わせて使用することができる天然に存在しない残基の類似体を包含する。
本明細書で使用する「ペプチボディー」は、免疫グロブリン(Ig)定常領域の全てまたは一部と融合した1つ以上のペプチドを含む融合ポリペプチドである。例えば、米国特許第6,660,843号を参照されたい。このペプチドは、抗原に結合する任意の天然に存在するか、組換えで調製されるか、または化学合成されたペプチドであってもよい。このペプチドは反復していてもよく、ヘッドトゥーテールまたはヘッドトゥーヘッドに配置されたアミノ酸配列の2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のコピーを含んでいてもよい。このIg定常領域の部分は、少なくとも1つの定常領域ドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3、および/またはCH4)、複数ドメイン(例えば、CH3を含むCH2)、ドメインの複数コピー(例えば、CH2−CH2)、所望の活性を保持する定常ドメインの任意の断片、例えば、血液循環中の免疫グロブリンの半減期の延長に関与するサルベージ受容体エピトープを含んでもよい。
「小」分子または「小」有機分子は、約1000ダルトン以下の分子量を有する非ポリマー性有機化合物として本明細書で定義する。
本明細書で使用する「シグナル伝達複合体」は、細胞シグナルの伝達を媒介するタンパク質および/または内在性もしくは外来性化合物の集合体である。シグナル伝達複合体の例として、膜結合受容体に結合したリガンド、シグナルカスケードに関与する生化学反応を伝播するのに関連する基質または任意の細胞分子に結合した酵素が挙げられるが、これらに限定されない。シグナル伝達複合体は、共受容体、コファクター、裏打ちタンパク質、アロステリック調節因子、ならびに細胞シグナル伝達に関与するタンパク質および分子の多数の他の種類も含むことができる。シグナル伝達複合体は一過的に形成されるか、または長く存在することができる。シグナル伝達複合体の分子成分または成分は時間と共に変化し得、それぞれの成分および細胞環境の活性化状態に依存し得る。シグナル伝達複合体は、伝達活性のわずかな変化、完全な不活性化および構成的活性化、または正負両方の調節を含む、この複合体に対する広範囲な作用を引き起こすことができる化学的な修飾および制御を行うことができる。シグナル伝達複合体成分は、複合体中の他のタンパク質および/または化合物と結合(「複合体化」)して存在するか、またはそれらとは別々に(非複合体化)存在することができるタンパク質、例えば、添付資料A(または配列番号1〜88)のいずれかの分泌タンパク質であってもよい。
「治療有効量」という用語は、シグナル伝達複合体の異常(例えば、高度に異常または程度の低い異常)なシグナル伝達と関連する疾患の症状または徴候を寛解させるか、または和らげるのに効果的な、本発明の動態調節因子の組成物の量を示すために本明細書で使用する。
本明細書で使用する「結合」は、水素結合、ファンデルワールス、イオン双極子および疎水性相互作用を含む弱い力ならびに強い力のイオン結合の1つ以上からなる非共有結合性相互作用の特異的ネットワークに起因する2つ以上の別々の分子実体の間の物理的結合である。結合のレベルまたは程度を、親和性に関して測定することができる。親和性、または「結合親和性」は、平衡結合定数または動力学的結合速度パラメータによって定義され得る、2つ以上の別々の分子実体の間の結合相互作用の強度の尺度である。適切な定数、またはパラメータおよびそれらの測定単位の例は当業で公知であり、平衡結合定数(K)、例えば、約10−1以上、約10−1以上、約10−1以上、約10−1以上、約10−1以上、約1010−1以上、約1011−1以上または約1012−1以上;平衡解離定数(K)、例えば、約10−5M以下、約10−6M以下、約10−7M以下、約10−8M以下、約10−9M以下、約10−10M以下、約10−11M以下、または約10−12M以下;オン速度(例えば、sec−1、mol−1)およびオフ速度(例えば、sec−)を含むが、これらに限定されない。Kの場合は、より高い値が「より強い」または「強められた」結合親和性を意味するが、Kの場合は、より低い値が「より強い」または「強められた」結合親和性を意味する。本明細書で使用する「強められた」結合速度パラメータは、滞留時間の増加、速い結合または遅い解離を意味する。本明細書で使用する「弱められた」結合速度パラメータは、滞留時間の減少、遅い結合または速い解離を意味する。オン速度の場合は、より高い値が速いまたはより頻繁な結合を意味するので、一般に、強められた結合親和性をもたらす。オフ速度の場合は、より低い値が、一般に、遅い解離を意味するので、一般に、強い結合親和性をもたらす。しかし、さらに詳細を以下で説明するように、結合親和性を示すのはオン速度とオフ速度の比である。
2つの化合物間、例えば、抗体と抗原との間、またはシグナル伝達複合体の第1の成分と第2の成分の間の親和性は、直接的にまたは間接的に測定することができる。親和性の間接測定は、親和性を示す、かつ/または親和性に比例する代替特性を用いて行うことができる。このような代替特性には、シグナル伝達複合体の第2の成分への第1の成分の結合の量もしくはレベル、または第2の成分に対する第1の成分の見かけの結合親和性を予測するか、または相関する第1の成分もしくは第2の成分の生物物理学的特徴が含まれる。特定例には、第1もしくは第2の成分のいずれか一方の亜飽和濃度において、第2の成分への第1の成分の結合の量またはレベルを測定することが含まれる。測定することができる他の生物物理学的特徴には、正味の分子電荷、回転活性、拡散速度、融点、静電ステアリング(electrostatic steering)、または第1および第2の成分の一方もしくは両方の高次構造が含まれるが、これらに限定されない。さらに、測定することができる他の生物物理学的特徴には、温度、pH、またはイオン強度を変える影響に対する結合相互作用の安定性を決定することが含まれる。
測定される親和性は、多くの因子の中でも、とりわけ結合成分の濃度、アッセイ設定、結合成分の原子価、緩衝液組成、pH、イオン強度、温度ならびにアロステリックな調節因子および制御因子などの結合反応に加えられる追加成分を含む、測定を行うのに用いられる正確な条件によって決まる。定量的および定性的な方法を用いて、結合相互作用の絶対的および相対的強度の両方を測定することができる。
見かけの親和性は、親和性が、アロステリック調節因子、阻害剤、結合成分の原子価などの結合反応の条件または成分によって変化する条件下での2つ以上の別々の分子実体間の結合相互作用の強度の尺度である。
本明細書で使用する「亜飽和濃度」は、結合親和性Kを著しく下回る結合反応の1つ以上の成分の濃度、かつ/または他の成分(複数可)の結合部位の全てを占有するのに必要とされるより低い、結合反応における1つの成分の濃度である。亜飽和条件下で、結合反応中の相当な割合の結合成分の1つが、利用可能な結合部位を有する。
本明細書で使用する「生物物理学的アッセイ」は、絶対的なまたは相対的な方法で、少なくとも2つの化合物間の結合、会合、解離、結合親和性、結合レベル、または結合速度パラメータを測定する任意の方法である。生物物理学的アッセイは、一般にインビトロで行われ、精製された結合成分、未精製の成分、細胞結合型成分、ならびに精製された細胞結合型成分の組み合わせで行われ得る。
アゴニストは、シグナル伝達複合体成分に結合し、そのシグナル伝達を活性化するリガンドまたは薬剤の種類を説明するのに使用される用語である。アゴニストの効力としても知られるシグナル伝達複合体成分(例えば、受容体)の活性を変える能力は、シグナル伝達複合体成分にも結合するが、そのシグナル伝達複合体成分のシグナル伝達を活性化しない受容体リガンドの種類であるアンタゴニストとアゴニストとを区別する性質である。アゴニストの効力は、正であってシグナル伝達複合体成分の活性の増加を引き起こす、あるいは負であってシグナル伝達複合体成分の活性の減少を引き起こす。完全なアゴニストはシグナル伝達複合体成分に結合して、活性化し、そのシグナル伝達複合体成分において完全な効力を示す。部分的アゴニストも、所与のシグナル伝達複合体成分に結合して、活性化するが、完全アゴニストと比較してシグナル伝達複合体成分において部分的な効力のみを有する。逆アゴニストは、そのシグナル伝達複合体成分に対するアゴニストとして、同じシグナル伝達複合体成分の結合部位に結合する薬剤であり、そのシグナル伝達複合体成分の構成的活性を逆転させる。逆アゴニストは、アゴニストと逆の薬理学的作用を発揮する。コアゴニストは他のコアゴニストと共に働き、共に所望の効果を生む。
異なる態様において、本明細書で開示するアゴニストはアロステリックアゴニストとして作用する。それらのアゴニストは、活性リガンド結合部位と異なる受容体の一部に結合し、リガンドおよび受容体の結合親和性を著しく変化させない。例えば、それらは結合親和性を2倍または3倍未満しか変えない。それらのアゴニストは、その受容体のリガンド活性化のEC50にも著しく影響を与えない。例えば、それらのアゴニストはEC50を2倍または3倍未満しか変えない。このようなアロステリックアゴニストは、リガンドの最大アゴニスト反応の80%以下、例えば、15%〜80%、20%〜80%、20〜60%、20%〜40%または15%〜30%である最大アゴニスト反応で受容体を構成的に活性化する。特定の実施形態において、このアロステリックアゴニストは、リガンドの最大アゴニスト反応の少なくとも約15%、20%、25%、30%、35%、40%、かつ最高で45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%または80%で受容体を構成的に活性化する。これらの範囲の終点のいずれかの任意の組み合わせは、それぞれの可能な組み合わせを列挙する必要がないと考えられることは理解される。さらなる実施形態において、本発明は、10−5、10−6、10−7、10−8、10−9M以下のK親和性(ここで、低い値は高い結合親和性を示す)で受容体に結合するアロステリックアゴニストを提供する。本発明の理論に縛られることなく、アロステリックアゴニストの弱いアゴニスト活性は、天然の基本のリガンド活性化レベルの作用を模倣するように働くとともに、体外から投与されたリガンドがその正常な作用を有することを可能にする。特定の実施形態において、アロステリックアゴニストは部分的アロステリックアゴニストである。アンタゴニストは、受容体がアゴニストによって活性化するのを阻止する。選択的アゴニストは、シグナル伝達複合体成分の1つの特定の種類に選択的である。さらに、選択的アゴニストは前述の種類のいずれかであり得る。例示的な実施形態において、本発明は、少なくとも10−5、10−6、10−7、10−8、10−9M以下の親和性で(ここで、低い値は高い結合親和性を示す)、添付資料A(または配列番号1〜88)の分泌タンパク質のいずれかに結合し、かつ(a)インビトロアッセイで測定した時、天然リガンドの最大アゴニスト活性の20〜80%である最大アゴニスト活性を示し、(b)存在する時、受容体に対するリガンドのEC50を、2倍を超えるほどまでは変えず、(c)存在する時、受容体に対するリガンドのKDを、2倍を超えるほどまでは変えないアロステリックアゴニストポリペプチド結合剤、例えば、抗体を提供する。
アゴニストの効力は、通常、そのEC50値の逆数によって定義される。これは、アゴニストの最大の生物学的反応の半分を引き起こすのに必要とされるアゴニストの濃度を決定することによって、特定のアゴニストについて計算することができる。EC50が低ければ低いほど、アゴニストの効力は大きくなる。
アンタゴニストは、シグナル伝達複合体成分(例えば、受容体)に結合する際、それ自体で生物学的反応を誘発しないが、アゴニストが媒介する反応を阻止するか、または弱めるリガンドもしくは薬剤の種類である。アンタゴニストは、それらの同族のシグナル伝達複合体成分に対する親和性を有することはできるが効力はなく、結合は相互作用を撹乱し、受容体におけるアゴニストもしくは逆アゴニストの機能を阻害する。アンタゴニストは、シグナル伝達複合体成分の活性部位またはアロステリック部位に結合することによってそれらの作用を媒介するか、またはアンタゴニストは、通常、シグナル伝達複合体成分の活性の生物学的制御に関与しない特有の結合部位で相互作用することができる。アンタゴニスト活性は、アンタゴニスト−受容体複合体の寿命によって可逆的または不可逆的になり得、これは、ひいては、シグナル伝達複合体成分へのアンタゴニスト結合の性質によって決まる。アンタゴニストの大部分は、受容体の構造的に明確な結合部位における内在性リガンドまたは基質と競合することによってそれらの効力を達成する。
アンタゴニストは、それらが結合するシグナル伝達複合体成分を活性化する効力を示さない。しかし、一度結合すると、アンタゴニストは、アゴニスト、逆アゴニストおよび部分的アゴニストの機能を阻害することができる。機能的アンタゴニストアッセイにおいて、用量反応曲線は、様々な範囲の濃度のアンタゴニストがアゴニストの活性を逆にする能力の作用を測定する。アンタゴニストの効力は、通常、そのIC50値によって定義される。これは、アゴニストの最大の生物学的反応の半分の阻害を引き起こすのに必要とされるアンタゴニスト濃度を決定することによって特定のアンタゴニストについて計算することができる。IC50が低ければ低いほど、アンタゴニストの効力は大きくなる。
競合的アンタゴニストは、そのリガンドまたはアゴニストとして同じ結合部位(活性部位)でシグナル伝達複合体成分に可逆的に結合するが、シグナル伝達複合体成分を活性化することなく、シグナル伝達複合体成分と同じ結合部位に対してアゴニストと競合する。非競合的またはアロステリックのアンタゴニストは、アゴニストとは別の結合部位に結合し、その別の結合部位を介してそのシグナル伝達複合体成分に対してそれらの作用を発揮する。したがって、アンタゴニストは、結合に関してアゴニストと競合しない。不競合的アンタゴニストは、それらが別のアロステリック結合部位に結合し得る前に、それらがアゴニストによるシグナル伝達複合体成分の活性化を必要とする点で、非競合的アンタゴニストと異なる。
動態調節因子の同定法
本発明の理論に縛られることなく、本開示は、動態調節因子(M)を用いて、シグナル伝達複合体の2つの成分(第1の成分、C1および第2の成分、C2)間の相互作用のその動態混乱をもたらし、これは、以下のように数学的に記載することができる:
Figure 2016048240
ここで、これらの成分間の結合平衡定数の変化(K'C1C2)は、これらの成分間の平衡定数(KC1C2)、動態調節因子の濃度(M)、複合体に対する動態調節因子の親和性(K[C1C2]M)および第1の成分(KMC1)または第2の成分(KMC2)のいずれか一方に対する動態調節因子の親和性の関数である。
シグナル伝達複合体が受容体−リガンド複合体であり、調節因子が抗体である場合において、抗体との受容体−リガンド相互作用の動態混乱は、以下のように数学的に記載することができる:
Figure 2016048240
ここで、受容体−リガンド結合平衡定数の変化(K'RL)は、受容体−リガンド平衡定数(KRL)、抗体濃度(A)、複合体に対する抗体親和性(K[RL]A)および受容体(KAR)またはリガンド(KAL)のいずれか一方に対する抗体親和性の関数である。
この動態調節因子は、そのシグナル伝達パートナーに対する標的の結合親和性または結合速度パラメータが弱まるか、または強まる方法で、標的、そのシグナル伝達パートナー、または標的とシグナル伝達パートナーの複合体に結合する。例えば、標的が受容体またはリガンドのいずれか一方である場合、動態調節因子の存在下、その受容体に対するリガンドの結合親和性または結合速度パラメータは弱まるか、または強まる。K[C1C2]Mが十分に高い時に、K'C1C2は無限大に近づくので、完全な遮断活性を有する動態調節因子は、この分析において境界条件を示す。このモデルの1つの意味は、動態調節因子の濃度([M])が、結合リガンドに対して飽和している動態調節因子/抗原相互作用の平衡解離定数(K)を十分に超える時に、シグナル伝達調節の程度は動態調節因子の濃度と無関係であることである。それゆえに、相互作用の調節は、複合体対成分の親和性の比と関連し、その際、[M]は調節因子およびその抗原のKより大きい。
本開示は、標的および/またはそのシグナル伝達パートナーとの動態調節因子の相互作用の生物物理学的特性を用いて、標的シグナル伝達経路に対する動態調節因子の機能的効果を予測することができる。それゆえに、シグナル伝達経路を変える動態調節因子を、複合体型対非複合体型での、標的(および/またはそのシグナル伝達パートナー)に対するそれらの相対的親和性に基づいて同定することができる。本発明は、動態調節因子(M)とのシグナル伝達複合体の2つの成分(第1の成分、C1および第2の成分、C2)間の相互作用の動態混乱を以下の方法で予測することができることを企図する:
[C1C2]MまたはK[MC2]C1またはK[MC1]C2<KMC2またはKMC1は、正の動態調節をもたらす。
[C1C2]MまたはK[MC2]C1またはK[MC1]C2=KMC2またはKMC1は、動態調節をもたらさない。
[C1C2]MまたはK[MC2]C1またはK[MC1]C2>KMC2またはKMC1は、負の動態調節をもたらす。
シグナル伝達複合体が受容体(R)−リガンド(L)複合体であり、この動態調節因子は抗体(A)である場合、動態混乱は以下の方法で予測することができる:
[RL]AまたはK[AL]RまたはK[AR]L<KALまたはKARは、正の動態調節をもたらす。
[RL]AまたはK[AL]RまたはK[AR]L=KALまたはKARは、動態調節をもたらさない。
[RL]AまたはK[AL]RまたはK[AR]L>KALまたはKARは、負の動態調節をもたらす。
いくつかの実施形態において、抗体(A)などの動態調節因子を、図3Aに示すように、第1または第2の成分の任意の特定の亜飽和濃度(例えば、リガンド(L)濃度)において、受容体(R)−リガンド(L)相互作用などの結合相互作用を変えるその能力によって同定することができる。図3Aのデータを、10pM、500pMまたは10nMのいずれかの受容体リガンド相互作用の親和性を想定して、可逆的な相互作用モデルから作成した。この動態調節因子は、示す通り、受容体リガンド相互作用の親和性および対応する用量反応を、500pMの相互作用から10pM(正の調節因子)または10nM(負の調節因子)のいずれか一方へ効果的にシフトすることができた。いくつかの実施形態において、この動態調節因子は、特定のリガンド濃度で高レベルのR−L結合を生み出し、アッセイ曲線を左にシフトする(正の調節)。他の実施形態において、この動態調節因子は、特定のリガンド濃度で低レベルのR−L結合を生み出し、アッセイ曲線を右にシフトする(負の調節)。いくつかの実施形態において、図3Aに示すように、このシフトは均一である。他の実施形態において、このシフトは不均一であり、他の因子、例えば、複合体中のアクセサリータンパク質、受容体の内部移行などの関与を反映する。500pM親和性の図3Aのデータを用いて図3Bおよび3Cを作成し、その中で、固定濃度の抗原を想定して、シグナル伝達に対する様々な濃度の非アゴニスト抗体(図3B)またはアゴニスト抗体(図3C)の効果が示された。
結合特性と機能的効果の相関を、実例となる標的のインスリン受容体について、以下の表1に示す。
(表1)
Figure 2016048240
予測される効果が結合特性に整合することを示すデータの実例を以下の表2に示す。
(表2)
Figure 2016048240
インスリン非存在下において、このクローンの結合は明らかであるが、このアッセイで正確に測定するには不十分な強さである。
飽和濃度の試験抗体(2〜20μg/ml)でのアッセイの実行。10μg/mlのアイソタイプ対照Abの存在下におけるインスリンEC50=0.44nM
したがって、調節因子と、標的、そのシグナル伝達パートナーならびに/または標的およびそのシグナル伝達パートナーを含む複合体の間の相互作用(複数可)の結合特性は、一般に、標的シグナル伝達経路に対する動態調節因子の機能的効果を予測する。試験される標的に応じて、いくつかの他の因子を考慮する必要があり得る。これらには、(1)動態調節因子の濃度、標的の濃度、および/またはそのシグナル伝達パートナーの濃度(例えば、動態調節因子の濃度([M])が、動態調節因子とその抗原との間の結合のKよりも著しく高い場合に、予測が最適化される)、(2)用いる動態調節因子の構造形態、例えば、一価対二価(divalent)または二価(bivalent)、(3)標的の高次構造を制限し得る、かつ/または標的の活性化を引き起こし得る標的間/標的内の架橋、(4)ステリック機構またはアロステリック機構による、シグナル伝達複合体の集合またはドッキングを変えるか、またはシグナル伝達複合体の追加的成分を変える動態調節因子の能力、(5)「ボトルネック」を導入する疾患による、シグナル経路の変化などのシグナル伝達経路特異的特性、(6)シグナル伝達経路の負/正のフィードバック制御、(7)シグナル伝達複合体成分のクリアランス/内部移行の速度変化、(8)リガンドの結合および活性化を解くか、または差次的に変える標的における変化が含まれ、例えば、脱感作状態において、調節因子はリガンド結合を高めるがその受容体を捕捉する、または調節因子はリガンド結合を弱めるが、活性化しているその受容体の構造変化を誘導する。
いくつかの態様において、本発明は、試験ポリペプチド剤の存在下または非存在下における、シグナル伝達複合体の第2の成分に対するシグナル伝達複合体の第1の成分の差次的結合を測定する方法を提供する。これらの態様において、差次的結合は、好ましくは、亜飽和濃度の第1または第2の成分が存在する時に観察される。いくつかの好ましい実施形態において、第1または第2の成分の濃度を低下させ、亜飽和条件をもたらすことができる。
いくつかの態様において、本発明は、複合形態および非複合形態における、標的および/またはそのシグナル伝達パートナーへの試験ポリペプチド結合剤、例えば、抗体の差次的結合を測定する方法を提供する。これらの態様において、差次的結合は、好ましくは、亜飽和濃度の試験ポリペプチド結合剤が存在する時に観察される。いくつかの好ましい実施形態において、試験ポリペプチド結合剤の濃度を低下させ、亜飽和条件をもたらすことができる。
いくつかの実施形態において、試験ポリペプチド剤の非存在下における試験を、好ましくは、試験ポリペプチド剤として類似の構造クラスに属する化合物であるが、試験されているシグナル伝達複合体に影響がない異なる抗原に結合する対照化合物を用いて行う。例えば、試験抗体の対照は、無関係の抗原に結合するアイソタイプ整合型抗体結合、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)であり得る。
正の調節因子に対しては、C1の特定の亜飽和濃度において、より高いC1親和性は、正の調節因子の存在下におけるC2へのC1結合のより高いシグナルに反映される。動態調節因子の選択的結合は、C1単独またはC2単独のいずれか一方のシグナルと比較して、C1およびC2を含む複合体のより高いシグナルに反映される。いくつかの態様において、C1およびC2の複合体への動態調節因子の結合はあり得るが、C1単独またはC2単独のいずれか一方への測定可能な結合はない。
負の調節因子に対しては、C1の特定の亜飽和濃度において、より低いC1親和性は、調節因子の存在下におけるC2へのC1結合のより低いシグナルに反映される。動態調節因子の選択的結合は、C1およびC2の複合体への動態調節因子の結合のシグナルと比較して、C1単独またはC2単独への動態調節因子の結合のより高いシグナルに反映される。
本発明は、シグナル伝達複合体の第1および第2の成分の間の結合を調節する候補ポリペプチド結合剤、例えば、抗体を同定する方法を提供する。このような第1および/または第2の成分の例として、添付資料A(または配列番号1〜88)の分泌タンパク質のいずれか、ならびにこのような分泌タンパク質の内在性または外来性のシグナル伝達パートナーが挙げられ、これらはタンパク質性もしくは非タンパク質性であり得るが、任意に、イオンおよび塩を排除してもよい。いくつかの実施形態において、この第1および第2の成分はポリペプチドである。例示的な特定の実施形態において、この第1および第2の成分は内在性である。
他の例として、TNFα、CD3、CD4、CD20、VEGF−A、CD25、HER−2、EGFR、CD33、CD52、EPO、インスリン、INSR、ヒト成長ホルモン、GM−CSF、G−CSF、IL−2、TPO、神経栄養因子(NGF、NT−3、NT−4、GDNF)、IFNβ、TGFβ、TNFα、FGFR4、CETP、レプチン受容体、IL−10、IL−10受容体α、IL−10受容体β、成長ホルモン受容体、IL−13受容体、IL−18受容体、IL−2受容体αサブユニット、補体因子C5a、IL−17受容体、IL−20受容体、IL−3受容体、IL−4受容体、IL−5受容体、IL−9受容体、インターフェロンI型受容体1(IFNAR1)、インターフェロンI型受容体2(IFNAR2)、リンパ球機能抗原−3受容体、単球走化性タンパク質1リガンド、NGF受容体、IL−6、IL−6受容体のいずれか1つが挙げられる。それらの配列は当業で公知であり、NCBIのGenbankデータベースの代表的なアクセッション番号およびアミノ酸配列を以下に記載する。NCBI便覧(インターネット)ベセスダ(メリーランド州):国立医学図書館(米国)、全米バイオテクノロジーセンター;2002年10月、チャプター18、参照配列(RefSeq)プロジェクト。添付資料Aまたは本明細書中の配列番号1〜88に記載のタンパク質のいずれかへの言及は、配列番号1〜88のいずれかの代表的な配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質、または、例えば、42℃で、50%ホルムアミド、5XSSC、20mM Na・PO、pH6.8などのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件、かつ1×SSC中での55℃、30分の洗浄条件下で、少なくとも約20、30、40、50個以上の塩基長である配列番号1〜88またはそれらの断片のいずれかをコードする核酸分子を用いて、ヒトゲノムDNAライブラリーもしくはcDNAライブラリーから得ることができる核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質などのその任意の、天然に存在するヒト対立遺伝子変異体への言及を含む。
Figure 2016048240
Figure 2016048240
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一態様において、候補動態調節剤を同定する方法は、(a)試験ポリペプチド結合剤、例えば、抗体の存在下で、前記第2の成分に対する前記第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータを測定すること、(b)前記試験ポリペプチド結合剤の非存在下で、前記第2の成分に対する前記第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータを測定すること、かつ(c)前記試験ポリペプチド結合剤が、ステップ(a)および(b)において測定される結合親和性または結合速度パラメータにおいて少なくとも1.5倍の差を示す時に、候補動態調節剤として前記試験ポリペプチド結合剤を同定することを含む。いくつかの実施形態において、結合親和性または結合速度パラメータにおける差は、約1.5倍(少なくとも50%)〜任意に、約1000倍、または約1.5倍〜約100倍、約2倍〜25倍、約2倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、または約1.5倍〜約50倍の範囲である。
いくつかの実施形態において、試験ポリペプチド剤が前記第1の成分と前記第2の成分の間の結合親和性または結合速度パラメータを強める場合、この試験ポリペプチド結合剤を正の調節因子の候補と同定する。他の実施形態において、試験ポリペプチド剤が前記第1の成分と前記第2の成分の間の結合親和性または結合速度パラメータを弱める場合、この試験ポリペプチド剤を負の調節因子の候補と同定する。
特定の結合親和性の値または結合速度パラメータの値における変化(増加または減少)が「強められた」(もしくはより強い)結合親和性もしくは結合速度パラメータを表すか、または「弱められた」(もしくはより弱い)結合親和性もしくは結合速度パラメータを表すかは、そのパラメータの値およびその単位によって決まり、当業で公知である。例えば、パラメータKの場合、より高い値は、「強められた」結合親和性を意味し、したがって、約10−1のKは、約10−1のKよりも強い。別の例として、パラメータKの場合、より低い値は、「強められた」結合親和性を意味し、したがって、約10−6MのKは、約10−5MのKよりも強い。逆に、Kの場合、より低い値は、「弱められた」結合親和性を意味し、したがって、約10−1のKは、約10−1のKと比較して結合親和性が弱い。別の例として、Kの場合、より高い値は、「弱められた」結合親和性を意味し、その結果、約10−5MのKは、約10−6MのKと比較して結合親和性が弱い。
本明細書で使用する「強められた」結合速度パラメータは、増加した滞留時間、速い結合または遅い解離を意味する。本明細書で使用する「弱められた」結合速度パラメータは、減少した滞留時間、遅い結合または速い解離を意味する。
結合親和性は、オン速度とオフ速度の結合速度パラメータの比により決定することもできる。一般に、オン速度の場合、より高い値は、速いもしくは強い結合または増加した滞留時間を意味し、典型的には、より強い結合親和性をもたらす。逆に、オン速度のより低い値は、より遅いもしくは弱い結合または減少した滞留時間を意味し、典型的には、弱い結合親和性をもたらす。一般に、オフ速度の場合、より高い値は、より速い解離または減少した滞留時間を意味し、典型的には、より弱い結合親和性をもたらす。逆に、オフ速度のより低い値は、より遅い解離または増加した滞留時間を意味し、典型的には、より強い結合親和性をもたらす。これは、オフ速度のオン速度に対する比、またはオン速度のオフ速度に対する比が、以下に式で示される結合親和性を示すからである。
Figure 2016048240
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しかし、結合親和性が検出可能に、または著しく変わらない時でさえ、滞留時間の変化、すなわち、オン速度の増加もしくはオフ速度の減少による滞留時間の増加、またはオン速度の減少もしくはオフ速度の増加による滞留時間の減少は、依然として、シグナル伝達経路の差次的活性化をもたらし得る。例えば、受容体が2つの異なる経路を活性化し得るいくつかの場合において、これらの経路は、最大効果を必要とする受容体活性化の程度の点で異なる。1つのシグナル伝達経路を、低レベルの受容体活性化または滞留時間で完全に活性化することができるが、第2の経路の完全活性化は、より高レベルの受容体活性化または滞留時間を必要とする。
別の態様において、候補動態調節剤を同定する方法は、(a)(i)前記第2の成分の存在下で、前記第1の成分に対する試験ポリペプチド結合剤、例えば、抗体の結合親和性もしくは結合速度パラメータを測定するか、または(ii)前記第1の成分の存在下で、前記第2の成分に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性もしくは結合速度パラメータを測定すること、(b)(i)前記第2の成分の非存在下で、前記第1の成分に対する前記試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメータを測定するか、または(ii)前記第1の成分の非存在下で、前記第2の成分に対する前記試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメータを測定すること、(c)前記試験ポリペプチド結合剤が、ステップ(a)および(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータにおいて、少なくとも1.5倍(すなわち、50%)の差を示す時に、前記試験ポリペプチド結合剤を候補動態調節剤として同定することが含まれる。
いくつかの実施形態において、ステップ(a)で測定される結合親和性または結合速度パラメータが、ステップ(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータよりも少なくとも1.5倍(すなわち、50%)強い場合、この試験ポリペプチド結合剤を正の調節因子の候補として同定する。特定の実施形態において、ステップ(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータと比較して、ステップ(a)で測定される結合親和性または結合速度パラメータは、ステップ(a)対ステップ(b)について、約1.5倍(すなわち、50%)〜任意に、約1000倍強いか、または約1.5倍〜約100倍、約2倍〜25倍、約2倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、最高で500倍、最高200倍、最高で150倍、最高で100倍、最高で90倍、最高で80倍、最高で70倍、最高で60倍、最高で50倍、最高で40倍、または最高で30倍強い。
他の実施形態において、ステップ(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータが、ステップ(a)で測定される結合親和性または結合速度パラメータよりも少なくとも1.5倍(すなわち、50%)強い場合、この試験ポリペプチド結合剤を負の調節因子の候補として同定する。特定の実施形態において、ステップ(a)で測定される結合親和性または結合速度パラメータと比較して、ステップ(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータは、ステップ(b)対ステップ(a)について、約1.5倍(すなわち、50%)〜任意に、約1000倍強いか、または約1.5倍〜約100倍、約2倍〜25倍、約2倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、最高で500倍、最高200倍、最高で150倍、最高で100倍、最高で90倍、最高で80倍、最高で70倍、最高で60倍、最高で50倍、最高で40倍、または最高で30倍強い。
いくつかの実施形態において、第1の成分単独に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメータを測定する。いくつかの実施形態において、第2の成分単独に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメータを測定する。
いくつかの実施形態において、(A)第1および第2の成分を含む複合体に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメータ、任意に、K[C1C2]M、(B)このポリペプチド結合剤および第2の成分を含む複合体に対する第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータ、任意に、K[MC2]C1、または(C)このポリペプチド結合剤および第1の成分を含む複合体に対する第2の成分の結合親和性または結合速度パラメータ、任意に、K[MC1]C2からなる群から選択される1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータが、(1)第2の成分単独に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメータ、任意に、KMC2、または(2)第1の成分単独に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメータ、任意に、KMC1からなる群から選択される1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータよりも少なくとも約1.5倍強い場合に、この試験ポリペプチド結合剤を正の調節因子の候補として同定する。いくつかの実施形態において、(A)、(B)または(C)のいずれか1つ以上の特定の結合親和性または結合速度パラメータは、(1)または(2)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータよりも約1.5倍(すなわち、50%)〜任意に、約1000倍強いか、あるいは、約1.5倍〜約100倍、約2倍〜25倍、約2倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、最高で500倍、最高200倍、最高で150倍、最高で100倍、最高で90倍、最高で80倍、最高で70倍、最高で60倍、最高で50倍、最高で40倍、または最高で30倍強い。例えば、いくつかの実施形態において、(A)、(B)または(C)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータは、(1)または(2)の両方の結合親和性または結合速度パラメータよりも強い。いくつかの実施形態において、(1)の結合親和性または結合速度パラメータは、(2)の結合親和性または結合速度パラメータよりも強い。他の実施形態において、(2)の結合親和性または結合速度パラメータは、(1)の結合親和性または結合速度パラメータよりも強い。いくつかの実施形態において、2つ以上の結合親和性または結合速度パラメータを測定し、例えば、オフ速度とオン速度、KとK、またはそれらの任意の組み合わせを比較する。
特定の実施形態において、測定される結合親和性が平衡解離定数Kである場合、K[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれかは、KMC2またはKMC1のいずれかよりも低い、例えば、約1.5倍〜任意に、1000倍低い。同様に、測定される結合親和性がオフ速度である場合、(A)[C1C2]とM、(B)[MC2]とC1、または(C)[MC1]とC2の間のオフ速度のいずれかは、(1)MとC2または(2)MとC1の間のオフ速度のいずれかよりも低い、例えば、約1.5倍〜任意に、1000倍低い。1つの例示的な実施形態において、K[C1C2]Mは、KMC2よりも約1.5倍〜任意に、1000倍低い。別の例示的な実施形態において、K[MC2]C1は、KMC2よりも約1.5倍〜任意に、1000倍低い。別の例示的な実施形態において、K[MC1]C2は、KMC2よりも約1.5倍〜任意に、1000倍低い。別の例示的な実施形態において、K[C1C2]Mは、KMC1よりも約1.5倍〜任意に、1000倍低い。別の例示的な実施形態において、K[MC2]C1は、KMC1よりも約1.5倍〜任意に、1000倍低い。さらに別の例示的な実施形態において、K[MC1]C2は、KMC1よりも約1.5倍〜任意に、1000倍低い。同様の例を、(1)MとC2または(2)MとC1の間のオフ速度のそれぞれと比較して、(A)[C1C2]とM、(B)[MC2]とC1、または(C)[MC1]とC2の間のオフ速度のそれぞれについて想定することができる。
逆に、測定される結合親和性が平衡結合定数Kである場合、K[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれかは、KMC2またはKMC1のいずれかよりも高い、例えば、約1.5倍〜任意に、1000倍高い。同様に、測定される結合親和性がオン速度である場合、(A)[C1C2]とM、(B)[MC2]とC1、または(C)[MC1]とC2の間のオン速度のいずれかは、(1)MとC2または(2)MとC1の間のオン速度のいずれかよりも高い、例えば、約1.5倍〜任意に、1000倍高い。1つの例示的な実施形態において、K[C1C2]Mは、KMC2よりも約1.5倍〜任意に、1000倍高い。別の例示的な実施形態において、K[MC2]C1は、KMC2よりも約1.5倍〜任意に、1000倍高い。別の例示的な実施形態において、K[MC1]C2は、KMC2よりも約1.5倍〜任意に、1000倍高い。別の例示的な実施形態において、K[C1C2]Mは、KMC1よりも約1.5倍〜任意に、1000倍高い。別の例示的な実施形態において、K[MC2]C1は、KMC1よりも約1.5倍〜任意に、1000倍高い。さらに別の例示的な実施形態において、K[MC1]C2は、KMC1よりも約1.5倍〜任意に、1000倍高い。同様の例を、(1)MとC2または(2)MとC1の間のオン速度のそれぞれと比較して、(A)[C1C2]とM、(B)[MC2]とC1、または(C)[MC1]とC2の間のオン速度のそれぞれについて想定することができる。
いくつかの実施形態において、(1)第2の成分単独に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメータ、任意に、KMC2、または(2)第1の成分単独に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメータ、任意に、KMC1からなる群から選択される1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータが、(A)第1および第2の成分を含む複合体に対する試験ポリペプチド結合剤の結合親和性または結合速度パラメータ、任意に、K[C1C2]M、(B)このポリペプチド結合剤および第2の成分を含む複合体に対する第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータ、任意に、K[MC2]C1、または(C)このポリペプチド結合剤および第1の成分を含む複合体に対する第2の成分の結合親和性または結合速度パラメータ、任意に、K[MC1]C2からなる群から選択される1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータよりも少なくとも約1.5倍強い場合に、この試験ポリペプチド結合剤を負の調節因子の候補として同定する。いくつかの実施形態において、(1)または(2)のいずれか1つ以上の特定の結合親和性または結合速度パラメータは、(A)、(B)または(C)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータよりも約1.5倍(すなわち、50%)〜任意に、約1000倍強いか、あるいは、約1.5倍〜約100倍、約2倍〜25倍、約2倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、最高で500倍、最高200倍、最高で150倍、最高で100倍、最高で90倍、最高で80倍、最高で70倍、最高で60倍、最高で50倍、最高で40倍、または最高で30倍強い。いくつかの実施形態において、(1)または(2)のいずれかの結合親和性または結合速度パラメータは、(A)、(B)または(C)の全ての結合親和性または結合速度パラメータよりも強い。いくつかの実施形態において、(1)の結合親和性または結合速度パラメータは、(2)の結合親和性または結合速度パラメータよりも強い。他の実施形態において、(2)の結合親和性または結合速度パラメータは、(1)の結合親和性または結合速度パラメータよりも強い。いくつかの実施形態において、2つ以上の結合親和性または結合速度パラメータを測定し、例えば、オフ速度とオン速度、KとK、またはそれらの任意の組み合わせを比較する。
特定の実施形態において、測定される結合親和性が平衡解離定数Kである場合、KMC2またはKMC1のいずれかは、K[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれかよりも低い、例えば、約1.5倍〜任意に、1000倍低い。同様に、測定される結合親和性がオフ速度である場合、(1)MとC2または(2)MとC1の間のオフ速度のいずれかは、(A)[C1C2]とM、(B)[MC2]とC1、または(C)[MC1]とC2の間のオフ速度のいずれかよりも低い、例えば、約1.5倍〜任意に、1000倍低い。1つの例示的な実施形態において、KMC2はK[C1C2]Mよりも約1.5倍〜任意に、1000倍低い。別の例示的な実施形態において、KMC2は、K[MC2]C1よりも約1.5倍〜任意に、1000倍低い。別の例示的な実施形態において、KMC2は、K[MC1]C2よりも約1.5倍〜任意に、1000倍低い。別の例示的な実施形態において、KMC1は、K[C1C2]Mよりも約1.5倍〜任意に、1000倍低い。別の例示的な実施形態において、KMC1は、K[MC2]C1よりも約1.5倍〜任意に、1000倍低い。さらに別の例示的な実施形態において、KMC1は、K[MC1]C2よりも約1.5倍〜任意に、1000倍低い。同様の例を、(A)[C1C2]とM、(B)[MC2]とC1、または(C)[MC1]とC2の間のオフ速度のそれぞれと比較して、(1)MとC2または(2)MとC1の間のオフ速度のそれぞれについて想定することができる。
逆に、結合親和性が平衡結合定数Kである場合、KMC2またはKMC1のいずれかは、K[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれかよりも高い、例えば、約1.5倍〜任意に、1000倍高い。同様に、測定される結合親和性がオン速度である場合、(1)MとC2または(2)MとC1の間のオン速度のいずれかは、(A)[C1C2]とM、または(B)[MC2]とC1、または(C)[MC1]とC2の間のオン速度のいずれかよりも高い、例えば、約1.5倍〜任意に、1000倍高い。1つの例示的な実施形態において、KMC2は、K[C1C2]Mよりも約1.5倍〜任意に、1000倍高い。別の例示的な実施形態において、KMC2は、K[MC2]C1よりも約1.5倍〜任意に、1000倍高い。別の例示的な実施形態において、KMC2は、K[MC1]C2よりも約1.5倍〜任意に、1000倍高い。別の例示的な実施形態において、KMC1は、K[C1C2]Mよりも約1.5倍〜任意に、1000倍高い。別の例示的な実施形態において、KMC1は、K[MC2]C1よりも約1.5倍〜任意に、1000倍高い。さらに別の例示的な実施形態において、KMC1は、K[MC1]C2よりも約1.5倍〜任意に、1000倍高い。同様の例を、(A)[C1C2]とM、(B)[MC2]とC1、または(C)[MC1]とC2の間のオン速度のそれぞれと比較して、(1)MとC2または(2)MとC1の間のオン速度のそれぞれについて想定することができる。
これらの実施形態のいずれにおいても、試験ポリペプチド結合剤および第2の成分を、複数の異なる濃度の前記第1の成分と接触させることができる。これらの実施形態のいずれにおいても、試験ポリペプチド結合剤および第1の成分を、複数の異なる濃度の前記第2の成分と接触させることができる。これらの実施形態のいずれにおいても、複数の異なる濃度の試験ポリペプチド結合剤を前記第1の成分および前記第2の成分と接触させることができる。
第1の成分と第2の成分の間の結合相互作用に対する試験ポリペプチド結合剤の効果を決定する時、いくつかの特定の実施形態において、この試験ポリペプチド結合剤の抗原が第1の成分、例えば、リガンドである時、この試験ポリペプチド結合剤は第1の成分の濃度と比較して飽和濃度である。あるいは、この試験ポリペプチド結合剤の抗原が第2の成分、例えば、受容体である時、この試験ポリペプチド結合剤は第2の成分の濃度と比較して飽和濃度である。いくつかの実施形態において、この試験ポリペプチド結合剤の濃度は、第1の成分および第2の成分を含む複合体に対するこの試験ポリペプチド結合剤のKより高いか、または等しい。さらなる実施形態において、この第2の成分の濃度は、第1の成分、例えば、リガンドに対するこの試験ポリペプチド結合剤のKより低い。さらなる実施形態において、第1の成分、例えば、リガンドの濃度は、第2の成分、例えば、受容体への第1の成分の結合に関して亜飽和濃度である。いくつかの実施形態において、第1の成分、例えば、リガンドの濃度は、第1の成分と第2の成分との相互作用に関して約EC20〜EC80の範囲内である。いくつかの実施形態において、1つ以上の濃度の試験ポリペプチド結合剤を、1つ以上の濃度の第2の成分、例えば、受容体の存在下、複数の異なる濃度の第1の成分、例えば、リガンドと接触させる。いくつかの実施形態において、1つ以上の濃度の試験ポリペプチド結合剤を、1つ以上の濃度の第1の成分、例えば、リガンドの存在下、複数の異なる濃度の第2の成分、例えば、受容体と接触させる。
いくつかの実施形態において、正の調節因子を同定するために、複合体対非複合体の標的および/またはシグナル伝達パートナーへの試験ポリペプチド結合剤の差次的結合を測定する時、この試験ポリペプチド結合剤は、第1の成分および第2の成分を含む複合体に対して飽和濃度である。いくつかの実施形態において、試験ポリペプチド結合剤の濃度は、第1の成分、例えば、リガンドおよび第2の成分、例えば、受容体を含む複合体に対する試験ポリペプチド結合剤のKより高いか、または等しい。さらなる実施形態において、第2の成分、例えば、受容体の濃度は、第1の成分、例えば、リガンドに対する第2の成分、例えば、受容体のKより高い。さらなる実施形態において、第1の成分、例えば、リガンドの濃度は、第2の成分、例えば、受容体に対して飽和濃度である。さらなる実施形態において、この試験ポリペプチド結合剤は、第1の成分および第2の成分を含む複合体に対して亜飽和濃度である。いくつかの実施形態において、試験ポリペプチド結合剤の濃度は、第1の成分と第2の成分との相互作用に関して約EC20〜EC80の範囲内である。いくつかの実施形態において、第2の成分、例えば、受容体の濃度は、第1の成分、例えば、リガンドに対する第2の成分、例えば、受容体のKより高い。いくつかの実施形態において、第1の成分、例えば、リガンドの濃度は、第2の成分、例えば、受容体に対して飽和濃度である。
いくつかの特定の実施形態において、負の調節因子を同定するために、複合体対非複合体の標的および/またはシグナル伝達パートナーへの試験ポリペプチド結合剤の差次的結合を測定する時、この試験ポリペプチド結合剤が結合する抗原が第1の成分、例えば、リガンドである時、この試験ポリペプチド結合剤は第1の成分に対して亜飽和濃度である。この試験ポリペプチド結合剤が結合する抗原が第2の成分、例えば、受容体である時、この試験ポリペプチド結合剤は第2の成分に対して亜飽和濃度である。さらなる実施形態において、この試験ポリペプチド結合剤の濃度は、第1の成分と第2の成分との相互作用に関して約EC20〜EC80の範囲内である。さらなる実施形態において、この第2の成分、例えば、受容体の濃度は、第1の成分、例えば、リガンドに対する第2の成分、例えば、受容体のKより高い。さらなる実施形態において、第1の成分、例えば、リガンドの濃度は、第2の成分、例えば、受容体に対して飽和濃度である。
いくつかの実施形態において、これらの方法は、さらに、(a)第1の成分、(b)第2の成分、または(c)第1の成分と第2の成分を含む複合体のいずれか1つへの結合親和性について、複数の試験ポリペプチド結合剤、例えば、抗体をアッセイすることを含む。いくつかの特定の実施形態において、この試験ポリペプチド結合剤は、例えば、約10−5M以下、約10−6M以下、約10−7M以下、または約10−8M以下の平衡解離定数Kによって特徴づけられる結合親和性を有し、ここで、より低いKはより強い結合親和性を意味する。いくつかの実施形態において、スクリーニングされる複数の試験ポリペプチド結合剤は、親のポリペプチド結合剤に1つ以上の異なる変異を導入することによって作製された親のポリペプチド結合剤の変異体である。
さらなる実施形態において、これらの試験ポリペプチド結合剤を、デコイ受容体、クリアランス受容体、または代替シグナル経路の成分などの異なる結合パートナーと比較して、第1または第2の成分に対する作用の選択性についてスクリーニングすることができる。このような方法には、異なる結合パートナー、第1または第2の成分のいずれでもないこのような結合パートナーに対して、第1または第2の成分の結合親和性または結合速度パラメータを著しく変化させないポリペプチド結合剤を同定することが含まれ得る。いくつかの実施形態において、ポリペプチド結合剤の存在は、異なる結合パートナーに対する第1または第2の成分の結合親和性または結合速度パラメータを、5倍より多く、10倍より多く、20倍より多く、30倍より多く、40倍より多く、または50倍より多く変化させることはない。
前述の方法のいずれも、さらに、この試験ポリペプチド結合剤の存在下および非存在下で、シグナル伝達複合体によって媒介されるシグナル伝達のレベルを測定すること、さらに、この試験ポリペプチド結合剤がアゴニスト、部分的アゴニスト、アンタゴニストまたは部分的アンタゴニストであるかを決定することを含み得る。アンタゴニズムまたはアゴニズムを、リン酸化アッセイ、イオン流束アッセイ、分子輸送アッセイ、または遺伝子発現アッセイを含むが、これらに限定されない当業で公知のインビトロまたはインビボアッセイで測定することができる。
いくつかの実施形態において、この試験ポリペプチド結合剤は、第1の成分、例えば、リガンドと、第2の成分、例えば、受容体との相互作用の用量反応曲線を(正または負に)シフトさせる。このシフトは、少なくとも約1.5倍、例えば、約1.5倍〜約1000倍増加または減少したEC50として現れ得る。いくつかの実施形態において、この試験ポリペプチド結合剤は、シグナル伝達複合体の第1および第2の成分の相互作用によって産生されるシグナルの最大アゴニスト反応を著しく変化させない。他の実施形態において、この試験ポリペプチド結合剤それ自体は、(例えば、前記シグナル伝達複合体によって生じるシグナル伝達の最大アゴニスト反応を低下させる)アンタゴニストまたは(例えば、前記シグナル伝達複合体によって生じるシグナル伝達の最大アゴニスト反応を増加させる)アゴニストとして作用する。
この試験ポリペプチド結合剤がアンタゴニストまたは部分的アンタゴニストとして作用する場合、最大アゴニスト反応は、例えば、約1.5倍〜約100倍、約2倍〜約25倍、約1.5〜約50倍減少させるか、または約10%、25%、50%(1.5倍)、75%、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍減少され得る。あるいは、この試験ポリペプチド結合剤がアゴニストまたは部分的アゴニストとして作用する場合、最大アゴニスト反応は、例えば、少なくとも約10%、25%、50%(1.5倍)、75%、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍増加され得る。さらに、この試験ポリペプチド結合剤がアンタゴニストまたは部分的アンタゴニストとして作用する場合、IC50は1x10−5以下であり得る。この試験ポリペプチド結合剤は、さらなる所望の特徴を示すことができる。例えば、この試験ポリペプチド結合剤は、前記第1の成分、前記第2の成分、または前記第1および第2の成分を含む前記シグナル伝達複合体のクリアランスを著しく減少させない。
関連する態様において、本発明は、上記に記載の方法または本出願中のどこかに記載の方法のいずれかによって同定した抗体を提供する。
所望の特徴を有するポリペプチド結合剤
本発明は、特定の望ましい特徴を有するポリペプチド結合剤、例えば、抗体も提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、(a)標的、例えば、添付資料A(もしくは配列番号1〜88)の分泌タンパク質、またはリガンド、受容体もしくは本明細書に記載の成分のいずれかに、約10−5M以下、例えば10−6M以下、10−7M以下、または10−8M以下の平衡解離定数Kで結合し、(b)前記標的とそのシグナル伝達パートナー間の結合親和性Kを、少なくとも約1.5倍(すなわち、50%)または、約1.5倍〜任意に、約1000倍、または1.5倍〜約100倍、約2倍〜25倍、約2倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、最高で約500倍、最高で約200倍、最高で約150倍、最高で約100倍、最高で約90倍、最高で約80倍、最高で約70倍、最高で約60倍、最高で約50倍、最高で約40倍、または最高で約30倍改善することができる正の調節因子を提供する。
他の実施形態において、本発明は、(a)標的、例えば、添付資料A(もしくは配列番号1〜88)の分泌タンパク質、またはリガンド、受容体もしくは本明細書に記載の成分のいずれかに、約10−5M以下、例えば0−6M以下、10−7M以下、または10−8M以下の平衡解離定数Kで結合し、(b)前記分泌タンパク質とそのシグナル伝達パートナー間の結合親和性Kを、少なくとも約1.5倍(すなわち、50%)または、約1.5倍〜任意に、約1000倍、または1.5倍〜約100倍、約2倍〜25倍、約2倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、最高で約500倍、最高で約200倍、最高で約150倍、最高で約100倍、最高で約90倍、最高で約80倍、最高で約70倍、最高で約60倍、最高で約50倍、最高で約40倍、または最高で約30倍低下させることができる負の調節因子を提供する。
いくつかの実施形態において、本発明は、シグナル伝達複合体の第2の成分(C2)への第1の成分(C1)の結合を強める正の調節抗体を提供し、前記抗体は、以下の平衡解離定数Kの結合特性によって特徴づけられる:(i)前記抗体が、約10−5M以下、例えば10−6M以下、10−7M以下、または10−8M以下の平衡解離定数Kで、C1、C2、またはC1およびC2を含む複合体(C1C2)のいずれか1つに結合する;(ii)K[C1C2]A、K[AC2]C1、またはK[AC1]C2のいずれかが、KAC2またはKAC1のいずれかよりも少なくとも約50%(1.5倍)低く、ここで、C1またはC2は、標的およびそのシグナル伝達パートナー、任意で、添付資料A(もしくは配列番号1〜88)のいずれかの分泌タンパク質である。いくつかの実施形態において、K[C1C2]A、K[AC2]C1、またはK[AC1]C2のいずれかは、KAC2またはKAC1のいずれかよりも約1.5倍〜任意に、約1000倍、または1.5倍〜約100倍、約2倍〜25倍、約2倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、最高で約500倍、最高で約200倍、最高で約150倍、最高で約100倍、最高で約90倍、最高で約80倍、最高で約70倍、最高で約60倍、最高で約50倍、最高で約40倍、または最高で約30倍低い。いくつかの実施形態において、K[C1C2]A、K[AC2]C1、またはK[AC1]C2のいずれかは、KAC2またはKAC1の両方よりも少なくとも約1.5倍低いか、または約1.5倍〜任意に、約1000倍、または1.5倍〜約100倍、約2倍〜25倍、約2倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、最高で約500倍、最高で約200倍、最高で約150倍、最高で約100倍、最高で約90倍、最高で約80倍、最高で約70倍、最高で約60倍、最高で約50倍、最高で約40倍、または最高で約30倍低い。
いくつかの実施形態において、本発明は、シグナル伝達複合体の第2の成分(C2)への第1の成分(C1)の結合を弱める負の調節抗体を提供し、前記抗体は、以下の平衡解離定数Kの結合特性によって特徴づけられる:(i)前記抗体が、約10−5M以下、例えば、10−6M以下、10−7M以下、または10−8M以下の平衡解離定数Kで、C1、C2、またはC1およびC2を含む複合体(C1C2)のいずれか1つに結合する;(ii)KAC2またはKAC1のいずれかが、K[C1C2]A、K[AC2]C1、またはK[AC1]C2のいずれかよりも少なくとも約50%(1.5倍)低く、ここで、C1またはC2は、標的およびそのシグナル伝達パートナー、任意で、添付資料A(もしくは配列番号1〜88)のいずれかの分泌タンパク質である。いくつかの実施形態において、KAC2またはKAC1のいずれかは、K[C1C2]A、K[AC2]C1、またはK[AC1]C2のいずれかよりも約1.5倍〜任意に、1000倍、または1.5倍〜約100倍、約2倍〜25倍、約2倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、最高で約500倍、最高で約200倍、最高で約150倍、最高で約100倍、最高で約90倍、最高で約80倍、最高で約70倍、最高で約60倍、最高で約50倍、最高で約40倍、または最高で約30倍低い。いくつかの実施形態において、KAC2またはKAC1のいずれかは、K[C1C2]A、K[AC2]C1、またはK[AC1]C2の全てよりも少なくとも約1.5倍低いか、または1.5倍〜任意に、約1000倍、または1.5倍〜約100倍、約2倍〜25倍、約2倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、約1.5倍〜約50倍、例えば、少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、最高で約500倍、最高で約200倍、最高で約150倍、最高で約100倍、最高で約90倍、最高で約80倍、最高で約70倍、最高で約60倍、最高で約50倍、最高で約40倍、または最高で約30倍低い。
このようなポリペプチド結合剤のいずれも、好ましくは、精製され、実質的に均一、例えば、少なくとも約90%、95%、97%、98%、99%または99.5%純粋である。いくつかの例において、このポリペプチド結合剤はモノクローナル抗体である。
本発明は、さらに、例えば、分泌タンパク質を含む複合体のシグナル伝達を調節する(増加または減少させる)ために、無菌の薬学的に許容される希釈剤を、例えば、治療有効量のこのようなポリペプチド結合剤、このようなポリペプチド結合剤の無菌組成物に加えることを含む無菌の医薬組成物を調製する方法、ならびにこのような無菌組成物を投与する方法を提供する。
シグナル伝達複合体
遺伝子の活性化、代謝における変化、細胞の継続する増殖および細胞死、ならびに移動運動の刺激または抑制は、シグナル伝達複合体が媒介することができる細胞外刺激に対する細胞反応の一部である。多くの反応遺伝子のタンパク質産物が、それら自体、酵素および転写因子を含むので、遺伝子の活性化はさらなる細胞作用をもたらす。シグナル伝達カスケードの結果として産生される転写因子は、ひいては、さらに遺伝子を活性化することができる。それゆえに、最初の刺激は、遺伝子のコホート全体の発現を誘発し、これは、ひいては、任意の数の複雑な生理学的事象の活性化をもたらし得る。これらの事象には、インスリンが刺激する血液循環からの糖の取り込みの増加、ならびに細菌生成物が刺激する感染部位への好中球の移動が含まれる。
神経伝達物質は、イオンチャネルタンパク質に結合して複合体を形成することができ、イオンチャネルタンパク質の開口をもたらして原形質膜を通過する特定のイオンの急流を可能にするリガンドである。これは細胞膜電位の変化をもたらし、電気化学的インパルスの神経伝導などのプロセスに重要である。例えば、特定のシナプスにおける神経伝達物質アセチルコリンの結合は、Naを入れ、神経インパルスまたは筋収縮を開始するチャネルを開口する。リガンドは可溶性であり得るか、他の細胞の表面上もしくは細胞外基質の中で見出され得る。このような細胞表面または細胞外基質のリガンドは、食細胞が抗原をリンパ球に提示する時か、または細胞外基質への接着の際、線維芽細胞の細胞表面におけるインテグリンがフィブロネクチンと結合する時などリガンドが互いに接触する時に、細胞間にシグナルを送る。
ほとんどの哺乳類細胞は、細胞分裂だけでなく生存を制御する刺激を必要とする。増殖因子刺激が存在しない場合、プログラム細胞死がほとんどの細胞で生じる。細胞外刺激のこのような必要性は、単細胞および多細胞の両方の生物において細胞行動を制御するのに必要である。シグナル伝達経路は生物学的プロセスの中核をなすと認識されており、多くの疾患は、それらの調節不全に起因している。
シグナル伝達は、細胞内に位置し得る受容体、例えば、ステロイドホルモン、甲状腺ホルモン、レチノイン酸、およびビタミンD3誘導体の受容体、もしくは細胞表面上に位置し得る受容体、または細胞表面もしくは細胞内の両方に生じ得る受容体、例えば、リガンド依存性イオンチャネル受容体によって媒介され得る。シグナル伝達は、小分子を輸送する膜貫通トランスポーター、例えば、グルコーストランスポーター、またはナトリウムチャネル、カリウムチャネル、カルシウムチャネル、もしくは他の陽イオンチャネル、塩素イオンチャネル、重炭酸チャネルもしくは他の陰イオンチャネルなどのイオンチャネルによっても媒介され得る。多くのイオンチャネルは、小さいシグナル伝達分子またはリガンドとの結合に反応して開閉する。いくつかのイオンチャネルは細胞外リガンドによって開口し、いくつかは細胞内リガンドによって開口する。一般に、リガンドは、チャネルが開く時に輸送される物質ではない。ABC(「ATP結合カセット」)トランスポーターは、一方の表面でリガンド結合ドメインを、他方の表面でATP結合ドメインを露出する膜貫通型タンパク質である。これらのABCトランスポーターのいくつかの例として、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)、スルホニル尿素受容体(SUR)、TAP(抗原プロセシングと関連するトランスポーター(transporter associated with antigen processing))、SPGP(肝細胞が、胆汁の中に胆汁酸塩をくみ出すのに用いるトランスポーター)、および癌細胞から化学療法剤をくみ出し、それらの薬剤の有効性を低下させる多剤耐性(MDR)トランスポーターが挙げられる。このファミリーの遺伝子の変異は、ALD遺伝子−副腎白質ジストロフィー、SUR遺伝子−糖尿病、CFTR遺伝子−嚢胞性線維症、MDR遺伝子−癌における多剤耐性を含む様々な疾患と関係づけられている。ABCトランスポーターのリスト、それらの別名(もしあれば)、染色体位置、および推定機能を以下に記載する(Luckie et al.,Current Genomics,2003,4,109−121参照):
ABCA1 ABC1 9q31.1 偏在、HDLへのコレステロール流出
ABCA2 ABC2 9q34 2 脳、薬剤耐性
ABCA3 ABC3,ABCC 16p13.3 肺
ABCA4 ABCR 1p22.1−p21 桿体光受容器、N−レチニリデン−PE流出
ABCA5 17q24 筋肉、心臓、精巣
ABCA6 17q24 肝臓
ABCA7 19p13.3 脾臓、胸腺
ABCA8 17q24 卵巣
ABCA9 17q24 心臓
ABCA10 17q24 筋肉、心臓
ABCA12 2q34 胃
ABCA13 7p11−q11 全組織において低い
ABCB1 PGY1,MDR 7p21 副腎、腎臓、脳、多剤耐性
ABCB2 TAP1 6p21 全細胞、ペプチド輸送
ABCB3 TAP2 6p21 全細胞、ペプチド輸送
ABCB4 PGY3 7q21.1 肝臓、PC輸送
ABCB5 7p14 偏在
ABCB6 MTABC3 2q36 ミトコンドリア、鉄輸送
ABCB7 ABC7 Xq12−q13 ミトコンドリア、Fe/Sクラスター輸送
ABCB8 MABC1 7q36 ミトコンドリア
ABCB9 12q24 心臓、脳
ABCB10 MTABC2 1q42 ミトコンドリア
ABCB11 SPGP 2q24 肝臓、胆汁塩輸送
ABCC1 MRP1 16p13.1 肺、精巣、PBMC薬剤耐性
ABCC2 MRP2 10q24 肝臓、有機陰イオン流出
ABCC3 MRP3 17q21.3 肺、腸、肝臓、薬剤耐性
ABCC4 MRP4 13q32 前立腺、ヌクレオシド輸送
ABCC5 MRP5 3q27、偏在、ヌクレオシド輸送
ABCC6 MRP6 16p13.1 腎臓、腎臓
CFTR ABCC7 7q31.2 外分泌組織、塩素イオンチャネル
ABCC8 SUR1 11p15.1 膵臓、スルホニル尿素受容体
ABCC9 SUR2 12p12.1 心臓、筋肉
ABCC10 MRP7 6p21 全組織において低い
ABCC11 16q11−q12 全組織において低い
ABCC12 16q11−q12 全組織において低い
ABCD1 ALD Xq28 ペルオキシソーム、VLCFA輸送制御
4 Current Genomics, 2003, Vol. 4, No. 3 Luckie et al.
(表1) 続き
記号 別名 位置 発現 機能
ABCD2 ALDL1,ALDR 12q11−q12 ペルオキシソーム
ABCD3 PXMP1,PMP70 1p22−p21 ペルオキシソーム
ABCD4 PMP69,P70R 14q24.3 ペルオキシソーム
ABCE1 OABP,RNS4I 4q31 卵巣、精巣、脾臓、オリゴアデニル酸結合タンパク質
ABCF1 ABC50 6p21.33 偏在
ABCF2 7q36 偏在
ABCF3 3q25 偏在
ABCG1 ABC8,White 21q22.3 偏在、コレステロール輸送
ABCG2 ABCP,MXR,BCRP 4q22、胎盤、腸、毒素流出、薬剤流出、
ABCG4 White2 11q23 5 59 肝臓
ABCG5 White3 2p21 17 肝臓、腸、ステロール輸送
ABCG8 2p21 17 肝臓、腸、ステロール輸送。細胞表面受容体は、細胞外シグナル伝達分子の大部分を認識する。膜貫通受容体は細胞の原形質膜にまたがり、細胞の外側(細胞外ドメイン)に受容体の一方の部分、細胞の内側(細胞内ドメイン)に受容体の他方の部分がある。シグナル伝達は、一般に、受容体の細胞外ドメインへのリガンドの結合の結果として生じる。
細胞表面受容体へのリガンドの結合は、一般に、細胞内の一連の事象を刺激し、異なる種類の受容体は異なる細胞内反応を刺激する。受容体は、典型的には、特定のリガンド結合のみに反応する。結合する際、このリガンドは、一般に、受容体の細胞内部分の形または高次構造の変化を引き起こすことによって、原形質膜を越えてシグナルの伝達を開始する。このような高次構造の変化は、受容体に含まれる酵素活性の活性化をもたらすか、または細胞内の他のシグナル伝達タンパク質の結合部位を露出するかのいずれかである場合が多い。これらのタンパク質が一旦受容体に結合すると、それらはそれ自体活性化し、細胞質内にシグナルを伝えることができる。
真核細胞において、リガンド/受容体相互作用によって活性化されるほとんどの細胞内タンパク質は、一般に、酵素活性を保有する。これらの酵素には、チロシンキナーゼ、ヘテロ三量体Gタンパク質、低分子量GTPase、様々なセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ、ホスファターゼ、脂質キナーゼ、およびヒドロラーゼが含まれる。いくつかの受容体により刺激される酵素は、環状AMP(cAMP)および環状GMP(cGMP)などの環状ヌクレオチド、ホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)などのホスファチジルイノシトール誘導体、ジアシルグリセロール(DAG)ならびにイノシトール三リン酸(IP3)を含む特定の二次メッセンジャーを作りだす。他の活性化タンパク質は、アダプタータンパク質と相互作用する。アダプタータンパク質は、他のシグナル伝達タンパク質間の相互作用を促進し、特定の刺激に対する適切な細胞反応を生み出すのに必要なさらなるシグナル伝達複合体の形成を整える。酵素およびアダプタータンパク質の両方は、様々な二次メッセンジャー分子に反応する。
異なる細胞外シグナル伝達分子を認識する多くの異なるクラスの膜貫通受容体がある。例として、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、例えば、アドレナリン受容体、神経伝達物質受容体、嗅覚受容体、オピオイド受容体、ケモカイン受容体、およびロドプシン;受容体型チロシンキナーゼ、例えば、成長因子受容体、インテグリン;ならびにtoll様受容体が挙げられる。
場合によっては、シグナル伝達複合体成分は、2つ以上のシグナル伝達複合体のメンバーであり得、それぞれは、異なる複合体成分を含み、異なるシグナル伝達機能を行う(例えば、リガンドは2つ以上の同族受容体と結合することができる)。場合によっては、リガンドは1つ以上のデコイ受容体と結合することができる。デコイ受容体はリガンドと結合する受容体であり、リガンドがその正常な受容体に結合するのを阻害する。例えば、受容体VEGF−1は、血管内皮増殖因子(VEGF)がVEGFR−2に結合するのを阻止することができる。1つの結合パートナーとシグナル伝達複合体成分の結合対別のパートナーとシグナル伝達複合体成分の結合の差動調節は、生物のシグナル伝達の高度に標的化された制御を可能にする。場合によっては、シグナル伝達複合体成分は、特定の立体構造型の状態にある変異型または変異体型であり得、例えば、この複合体を構成的に活性化または不活性化させる。場合によっては、受容体は、リガンド結合高次構造などの特定の高次構造の状態になり得る。場合によっては、シグナル伝達複合体成分は、リガンドの変異型、変異体型、模倣型、または類似型であり得る。
試験ポリペプチド結合剤の種類および供給源:ペプチドおよびポリペプチド
天然のペプチドもしくはポリペプチドまたはランダムなペプチドもしくはポリペプチドの多数のライブラリーが市販されているか、または容易に合成される。あるいは、細菌、真菌、植物および動物の抽出物の形態の天然のペプチドもしくはポリペプチドのライブラリーが利用でき、または容易に作製される。さらに、天然のまたは合成的に作製されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的および生化学的手段により容易に変更され、それらを用いてコンビナトリアルライブラリーを作製することができる。アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などの追加の誘導体化または変更を行うことができる。
抗原に特異的に結合することができるタンパク質骨格のライブラリーも利用できる。これらには、アドネクチン(Adnectin)、アフィボディー、アンチカリン(Anticalin)、DARPins、遺伝子工学処理されたクニッツ型阻害剤、テトラネクチン、A−ドメインタンパク質、リポカリン、アンキリン反復タンパク質などの反復タンパク質、免疫タンパク質、α2p8ペプチド、昆虫デフェンシンA、PDZドメイン、カリブドトキシン、PHDフィンガー、TEM−Iβ−ラクタマーゼ、フィブロネクチンIII型ドメイン、CTLA−4、T−細胞受容体、ノッティン、ネオカルチノスタチン、炭水化物結合モジュール4−2、緑色蛍光タンパク質、チオレドキシンが含まれる(Gebauer&Skerra,Curr.Opin.Chem.Biol.13:245−55(2009);Gill&Damle,Curr.Opin.Biotech 17:653−58(2006);Hosse et al,Protein Sci.15:14−27(2006);Skerra,Curr.Opin.Biotech 18:295−3−4(2007))。
コンビナトリアルライブラリーにおけるスクリーニングの多くの異なるアプローチが当業で公知であり、生物学的ライブラリー、空間的にアドレス可能な並列(spatially addressable parallel)固相ライブラリーまたは液相ライブラリー、逆重畳積分を必要とする合成ライブラリー法、「一ビーズ一化合物」ライブラリー法、親和性クロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法が含まれる。
シグナル伝達複合体またはその成分に結合するペプチドを、公知の技術を用いて、過度の実験を行うことなく同定することができる。この点で留意すべきは、抗原に特異的に結合することができるペプチドについてペプチドライブラリーをスクリーニングする技術は、当業で周知であることである(例えば、米国特許第5,556,762号、同第5,750,373号、同第4,708,871号、同第4,833,092号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,571,689号、同第5,663,143号、PCT公開WO84/03506およびW084/03564、Geysen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81:3998−4002(1984);Geysen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,82:178−182(1985);Geysen et al.,in Synthetic Peptides as Antigens,130−149(1986);Geysen et al.,J.Immunol.Moth.,102:259−274(1987);Schoofs et al.,J.Immunol.,140:611−616(1988),Cwirla,S.E.et al.(1990)Proc.NatL Acad.Sci.USA,87:6378;Lowman,H.B.et al.(1991)Biochemistry,30:10832;Clackson,T.et al.(1991)Nature,352:624;Marks,J.D.et al.(1991),J.Mol.Biol.,222:581;Kang,A.S.et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8363、およびSmith,G.P.(1991)Current Opin.Biotechnol.,2:668参照)。
ペプチドは、公知のペプチド合成法を用いて化学的に合成することができるか、または組換え技術を用いて調製し、精製することができる。ペプチドは、通常、少なくとも約3つのアミノ酸長であるか、あるいは、少なくとも約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100個以上のアミノ酸長であり、このようなペプチドは、好ましくは、シグナル伝達複合体またはその成分に特異的に結合することができる。
この点で、バクテリオファージ(ファージ)ディスプレイは、抗原に特異的に結合することができるペプチドライブラリーのメンバー(複数可)を同定するために、大規模なペプチドライブラリーをスクリーニングすることができる1つの周知の技術である。ファージディスプレイは、変異体ポリペプチドを、バクテリオファージ粒子の表面のコートタンパク質との融合タンパク質として提示する技術である(Scott,J.K.and Smith,G.P.(1990)Science 249:386)。ファージディスプレイの有用性は、選抜して、ランダム化したタンパク質変異体(またはランダムクローンcDNA)の大規模ライブラリーを、高親和性で抗原に結合するタンパク質変異体の配列について、容易に、効率的に選別することができるという事実にある。ファージにおけるペプチドライブラリー(Cwirla,S.E.et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6378)またはタンパク質ライブラリー(Lowman,H.B.et al.(1991)Biochemistry,30:10832;Clackson,T.et al.(1991)Nature,352:624;Marks,J.D.et al.(1991),J.Mol.Biol.,222:581;Kang,A.S.et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8363)のディスプレイは、特異的結合特性を有するポリペプチドまたはペプチドについて、何百万のポリペプチドまたはペプチドをスクリーニングするのに用いられている(Smith,G.P.(1991)Current Opin.Biotechnol.,2:668)。
ほとんどのファージディスプレイ法は線維状ファージを用いているが、ラムダ型ファージディスプレイシステム(lambdoid phage display system)(WO95/34683、米国特許第5,627,024号)、T4ファージディスプレイシステム(Ren,ZJ.et al.(1998)Gene 215:439;Zhu,Z.(1997)CAN33:534;Jiang,J.et al.(1997)can 128:44380;Ren,ZJ.et al.(1997)CAN 127:215644;Ren,Z−J.(1996)Protein Sci.5:1833;Efimov,V.P.et al.(1995)Virus Genes 10:173)、およびT7ファージディスプレイシステム(Smith,G.P.and Scott,J.K.(1993)Methods in Enzymology,217,228−257;米国特許第5,766,905号)も知られている。
ペプチドライブラリーを作製し、これらのライブラリーをスクリーニングする方法は、米国特許第5,723,286号、同第5,432,018号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,498,530号、同第5,770,434号、同第5,734,018号、同第5,698,426号、同第5,763,192号、および同第5,723,323号に開示されている。
試験ポリペプチド結合剤の種類および供給源:抗体
「抗体」という用語は最も広い意味で用いられ、完全に組み立てられた抗体、四量体抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、抗原に結合することができる抗体断片(例えば、Fab'、F'(ab)2、Fv、一本鎖抗体、二重特異性抗体)、およびそれらが所望の生物活性を示す限り、前述のものを含む組換えペプチドを含む。「免疫グロブリン」または「四量体抗体」は、2つの重鎖および2つの軽鎖(それぞれ、可変領域および定常領域を含む)からなる四量体の糖タンパク質である。抗原結合部分は、組換えDNA技術または無傷の抗体の酵素的もしくは化学的切断によって産生することができる。抗体断片または抗原結合部分には、抗体が所望の生物活性を保持する限り、とりわけ、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、相補鎖決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体断片、キメラ抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、ミニボディ、線状抗体、キレート組換え抗体、トリボディもしくはバイボディ、細胞内抗体、ナノボディ、小モジュラー免疫医薬(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、VHH含有抗体、またはその変異体もしくは誘導体、および1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つのCDR配列などのポリペプチドに特異的抗原結合を与えるのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含むポリペプチドが含まれる。
天然に存在する免疫グロブリンにおいて、各四量体は、2つの同一対のポリペプチド鎖で構成され、それぞれの対は、1つの「軽鎖」(約25kDa)および1つの「重鎖」(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に、抗原認識に関与する約100〜110個以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主に、エフェクター機能に関与する定常領域を定義する。ヒト軽鎖は、カッパー(κ)鎖およびラムダ(λ)鎖として分類される。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)、およびエプシロン(ε)として分類され、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして抗体のアイソタイプを定義する。軽鎖および重鎖の中で、可変領域および定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖は約10個以上のアミノ酸の「D」領域も含む。概して、Fundamental Immunology,Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))(全ての目的のために、参照によりその全体が組込まれる)を参照されたい。それぞれの軽鎖/重鎖対の可変領域は、無傷の免疫グロブリンが2つの結合部位を有するように抗体結合部位を形成する。
各々の重鎖は、一端に可変ドメイン(V)、続いて、いくつかの定常ドメインを有する。各々の軽鎖は一端に可変ドメイン(V)およびその他端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと並んでおり、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと並んでいる。特定のアミノ酸残基が、軽鎖と重鎖の可変ドメインの間に界面を形成すると考えられている(Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901−917,1987)。
免疫グロブリン可変ドメインは、3つの超可変領域またはCDRによって連結された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ全体構造を示す。N末端からC末端まで、軽鎖および重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割当は、カバット(Kabat)免疫学的に関心のあるタンパク質配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)(米国国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州(1987および1991))、またはChothiaとLesk(J.Mol.Biol.196:901−917,1987)、Chothiaら(Nature 342:878−883,1989)の定義に従う。
抗体の超可変領域は、抗原結合に関与する抗体のCDRアミノ酸残基を表す。超可変領域は、CDRのアミノ酸残基(カバットらSequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、公衆衛生局、米国国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州(1991)に記載される、軽鎖可変ドメインの残基24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)、ならびに重鎖可変ドメインの残基31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3))、ならびに/または超可変ループのアミノ酸残基(Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901−917(1987)に記載される、軽鎖可変ドメインの残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)、重鎖可変ドメインの残基26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3))を含む。
フレームワークまたはFR残基は、超可変領域の残基以外のそれらの可変ドメイン残基である。
本明細書で使用する「重鎖可変領域」は、前記抗体重鎖可変ドメインの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む抗体分子の領域を表す。この重鎖可変領域は、前記抗体重鎖の1、2、または3のCDRを含み得る。
本明細書で使用する「軽鎖可変領域」は、前記抗体軽鎖可変ドメインの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む抗体分子の領域を表す。この軽鎖可変領域は、前記抗体軽鎖の1、2、または3のCDRを含み得、抗体によってκ軽鎖またはλ軽鎖のいずれか一方であり得る。
免疫グロブリンを、それらの重鎖定常ドメインのアミノ酸配列によって、異なるクラスのIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに割当てることができ、これらは、さらにサブクラスまたはアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に分けられ得る。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元立体配置が公知である。異なるアイソタイプは異なるエフェクター機能を有する。例えば、IgG1およびIgG3アイソタイプはADCC活性を有する。本発明の抗体は、それが定常ドメインを含む場合、これらのサブクラスもしくはアイソタイプ、その可変配列もしくはコンセンサス配列、または異なるアイソタイプのハイブリッド(例えば、IgG1/IgG2ハイブリッド)のいずれかであり得る。
例示的な実施形態において、本発明の抗体は、ヒトカッパ(κ)またはヒトラムダ(λ)軽鎖、それらに由来するアミノ酸配列、そのハイブリッドを、任意に、ヒト重鎖もしくはそれに由来する配列、または一本鎖、二量体型、四量体型(例えば、2つの重鎖および2つの軽鎖)もしくは他の型の重鎖および軽鎖の両方と共に含み得る。
モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を表す。一般に、モノクローナル抗体は高度に特異的であり、典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物と対照的に、単一抗原部位に対して向けられ得る。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、異なる特異性および特徴を有する他の免疫グロブリンが混入していない、均質培養により合成される点で都合がよい。
本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohlerら(Nature,256:495−7,1975)に記載されたハイブリドーマ法で作製され得るか、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号参照)により作製され得る。モノクローナル抗体は、例えば、Clacksonら(Nature 352:624−628,1991)およびMarksら(J.Mol.Biol.222:581−597,1991)に記載される技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーからも単離され得る。
ハイブリドーマ法においては、ハムスターもしくはマカクザルなどのマウスまたは他の適切な宿主動物を免疫化し、免疫に用いられるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生することができるリンパ球を誘発させる(Harlow&Lane;Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor,New York(1988)。
抗体の組換え産生
本発明は、本発明の抗体をコードする核酸分子も包含する。いくつかの実施形態において、異なる核酸分子が、抗原特異的抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードする。他の実施形態において、同じ核酸分子が、抗原特異的抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードする。
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)抗体を分泌するハイブリドーマ細胞から単離され、配列決定され得る。一般に、配列決定は、対象の遺伝子またはcDNAの少なくとも一部の単離を必要とする。通常、配列決定は、モノクローナル抗体をコードするDNA、好ましくは、mRNA(すなわち、cDNA)をクローニングすることを必要とする。クローニングは、標準技術(例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Guide,Vols 1−3,Cold Spring Harbor Press参照、これは参照により本明細書に組込まれる)を用いて実行される。例えば、cDNAライブラリーは、ポリA+mRNA、好ましくは、膜結合性mRNAの逆転写により構築することができ、このライブラリーは、ヒト免疫グロブリンポリペプチド遺伝子配列に特異的なプローブを用いてスクリーニングされる。ヌクレオチドプローブ反応および他のヌクレオチドハイブリダイゼーション反応は、特定の条件下で互いにハイブリダイズするポリヌクレオチドの同定を可能にする条件で実行される。
1つの例示的な条件のセットは以下の通りである:42℃で、50%ホルムアミド、5XSSC、20mM Na・PO、pH6.8でのストリンジェントなハイブリダイゼーション、かつ1×SSC中での55℃、30分の洗浄。所望のレベルのストリンジェンシーを達成するのに相当するハイブリダイゼーション条件を計算し、かつ/または他の条件を選択する式は公知である。相当するストリンジェンシーの条件は、Ausubelら(Eds.),Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons(1994),pp.6.0.3〜6.4.10に記載のとおり、温度および緩衝液、または塩濃度の変化により達成することができる。ハイブリダイゼーション条件の変更は経験的に決定するか、またはプローブの長さおよびグアノシン/シトシン(GC)塩基対の割合に基づいて正確に計算することができる。ハイブリダイゼーション条件は、Sambrook,et al.,(Eds.),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor,New York(1989),pp.9.47〜9.51に記載のとおりに計算することができる。
一実施形態において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、対象の免疫グロブリン遺伝子断片(例えば、軽鎖可変断片)をコードするcDNA(または全長cDNAの一部)を増幅させる。増幅された配列を、任意の適切なベクター、例えば、発現ベクター、ミニ遺伝子ベクター、またはファージディスプレイベクターに容易にクローニングすることができる。対象の免疫グロブリンポリペプチドのある部分の配列を決定することができる限り、使用する特定のクローニング法は決定的ではないことは理解されるであろう。本明細書で使用する「単離された」核酸分子または「単離された」核酸配列は、(1)通常、その核酸の天然源中に付随している少なくとも1つの夾雑物核酸分子から同定され、分離されるか、または(2)クローニングされ、増幅され、タグを付けられるかのいずれか一方である核酸分子であり、または別の方法で、対象の核酸配列を決定することができるように、バックグラウンドの核酸と区別されることが単離されることと考えられている。単離された核酸分子は、自然界に見られる形態または設定以外のものである。したがって、単離された核酸分子は、それが天然細胞内に存在するような核酸分子と区別される。しかし、単離された核酸分子は、通常、抗体を発現する細胞内に含まれる核酸分子を含み、例えば、この核酸分子は天然細胞の位置とは異なる染色体位置にある。
クローニングおよび配列決定に使用するRNAの1つの供給源は、トランスジェニックマウスからB細胞を取得し、不死化細胞にそのB細胞を融合させることにより産生されるハイブリドーマである。あるいは、RNAを免疫動物のB細胞(または脾臓全体)から単離することができる。ハイブリドーマ以外の供給源を用いる時、特異的結合特性を有する免疫グロブリンまたは免疫グロブリンポリペプチドをコードする配列をスクリーニングすることが好ましいこともある。このようなスクリーニングの1つの方法は、ファージディスプレイ技術の使用である。ファージディスプレイについては本明細書でさらに記載するが、当業で公知でもある。例えば、DowerらのWO91/17271、McCaffertyらのWO92/01047、およびCatonとKoprowski(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:6450−54(1990))を参照されたく、これらの各々は参照により本明細書に組込まれる。一実施形態において、免疫化トランスジェニックマウスのcDNA(例えば、全脾臓cDNA)を単離し、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、免疫グロブリンポリペプチドの一部、例えば、CDR領域をコードするcDNA配列を増幅させ、この増幅配列をファージベクターに挿入する。対象のペプチドをコードするcDNA、例えば、所望の結合特性を有する可変領域のペプチドを、パニングなどの標準的なファージディスプレイ技術によって同定する。
その後、増幅またはクローニングした核酸の配列を決定する。典型的には、免疫グロブリンポリペプチドの可変領域全体をコードする配列を決定するが、可変領域の一部、例えば、CDRコード部分のみを配列決定することが適切である場合もある。典型的には、配列決定される部分は少なくとも30塩基長であり、多くの場合、可変領域の長さの少なくとも約1/3または少なくとも約1/2をコードする塩基の配列が決定される。
cDNAライブラリーから単離されたクローンにおいて配列決定を行うことができ、PCRを用いる時は、増幅した配列をサブクローニングした後に、すなわち増幅断片のダイレクトPCRによって配列を決定することができる。標準的な技術を用いて配列決定を行うことができる(例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Guide,Vols 1−3,Cold Spring Harbor Press、およびSanger,F.et al.(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463−5467参照、これは参照により本明細書に組込まれる)。クローニングされた核酸の配列を、ヒト免疫グロブリン遺伝子およびcDNAの公表配列と比較することによって、当業者は、配列決定される領域に応じて、(i)(重鎖のアイソタイプを含む)ハイブリドーマ免疫グロブリンポリペプチドの生殖系列断片の使用、および(ii)N領域付加および体細胞変異のプロセスから生じる配列を含む重鎖および軽鎖可変領域の配列を容易に決定することができる。免疫グロブリン遺伝子配列情報の1つの情報源は、全米バイオテクノロジーセンター、国立医学図書館、米国国立衛生研究所、ベセスダ、メリーランド州である。
一度単離すると、このDNAを発現ベクターに入れることができ、その後、それ以外では免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルのCOS細胞、ヒト胚腎臓293細胞(例えば、293E細胞)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトし、この組換え宿主細胞内でモノクローナル抗体の合成を行う。抗体の組換え産生は当業で公知である。
発現制御配列は、特定の宿主生物内で作動可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。例えば、原核生物に適切な制御配列には、プロモーター、任意に、オペレーター配列、およびリボソーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。
別の実施形態において、ダイレクトなタンパク質配列決定によって、対象の免疫グロブリンのアミノ酸配列を決定することができる。適切にコードされたヌクレオチド配列を、一般的なコドン表にしたがって設計することができる。
所望の抗体のアミノ酸配列変異体を、適切なヌクレオチド変化をコードDNAに導入することによるか、またはペプチド合成によって調製することができる。このような変異体には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、挿入、および/または置換が含まれる。最終コンストラクトが所望の特性を有するという条件で、いかなる欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせをも行って、最終コンストラクトを得る。アミノ酸変化は、糖鎖付加部位の数または位置の変化などの抗体の翻訳後プロセスを変えることもできる。
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子を、当業で公知の様々な方法によって調製する。これらの方法には、(天然に存在するアミノ酸配列変異体の場合)天然源からの単離、オリゴヌクレオチド介在型(または部位特異的)変異誘発による調製、PCR変異誘発、抗体の以前に調整された変異体または非変異型版のカセット変異導入が含まれるが、これらに限定されない。
本発明は、任意に、宿主細胞が認識する制御配列に作動可能に連結された、本発明の抗体をコードする単離した核酸、核酸を含むベクターおよび宿主細胞、ならびに抗体産生のための組換え技術も提供し、この技術は、宿主細胞を培養し、その結果、核酸が発現し、任意に、宿主細胞の培養物または培地から抗体を回収することを含み得る。抗体産生のための様々なシステムおよび方法が、Birch&Racher(Adv.Drug Deliv.Rev.671−685(2006))によって概説されている。
抗体の組換え産生のために、それをコードする核酸を単離し、さらなるクローニング(このDNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入する。モノクローナル抗体をコードするDNAを容易に単離し、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)配列決定をする。多くのベクターが利用できる。一般に、これらのベクター成分には、以下のものの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない:シグナル配列、複製開始点、1つ以上の選択マーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、転写終結配列。
本明細書のベクターのDNAをクローニングまたは発現する適切な宿主細胞は、原核生物、酵母、または高等真核生物細胞である。この目的に適切する原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性生物などの真正細菌、例えば、エシェリキア、例えば、大腸菌などの腸内細菌科、エンテロバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、例えば、ネズミチフス菌、セルチア属、例えば、セルチア・マルセセンス、シゲラ属、枯草菌およびバチルス・リケニホスミス(例えば、1989年4月12日に公開されたDD266,710に開示されるバチルス・リケニホスミス41P)などのバチルス、緑膿菌などのシュードモナス菌、ストレプトマイセス属が含まれる。1つの好ましい大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC31,446)であるが、大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC31,537)および大腸菌W3110(ATCC27,325)などの他の株も適切である。これらの例は、限定するものではなくむしろ説明のためのものである。
原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核性の微生物が、抗体をコードするベクターに適するクローニング用または発現用の宿主である。出芽酵母または一般のパン酵母が、下等な真核生物の宿主微生物の中で最も一般的に用いられる。しかし、分裂酵母、例えば、クルイベロミセス・ラクチス、クルイベロミセス・フラジリス(ATCC12,424)、クルイベロミセス・ブルガリクス(K.bulgaricus)(ATCC16,045)、クルイベロミセス・ウィケラミ(K.wickeramii)(ATCC24,178)、クルイベロミセス・ワルティー(K.waltii)(ATCC56,500)、クルイベロミセス・ドロソフィラルム(K.drosophilarum)(ATCC36,906)、クルイベロミセス・サーモトレランス(K.thermotolerans)、クルイベロミセス・マルキシアヌス(K.marxianus)などのクルイベロマイセス宿主;ヤロウイア属(EP402,226);ピキア・パストリス(EP183,070);カンジダ属;トリコデルマ・リーゼイ(EP244,234);アカパンカビ;シュワンニオマイセス・オシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)などのシュワンニオマイセス;例えば、パンカビ、ペニシリウム、トリポクラジウムなどの糸状菌、ならびにアスペルギルス・ニジュランスおよびアスペルギルス・ニガーなどのアスペルギルス宿主などの多くの他の属、種、および株が一般に入手可能であり、本明細書に有用である。
グリコシル化抗体の発現に適する宿主細胞は、多細胞生物由来のものである。無脊椎動物細胞の例として、植物細胞および昆虫細胞が挙げられる。多くのバキュロウイルス株および変異体、ならびにヨトウガ(イモムシ)、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウジョウバエ(ショウジョウバエ)、カイコなどの宿主の対応し、許容される昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクション用の様々なウイルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカNPVのL−1変異体およびカイコNPVのBm−5株が公的に入手可能であり、このようなウイルスは、本発明によるウイルスとして、特に、ヨトウガ細胞のトランスフェクションのために使用することができる。
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペテュニア、トマト、タバコ、アオウキクサ属の植物細胞培養および他の植物細胞も、宿主として利用できる。
有用な哺乳類宿主細胞株の例として、CHOK1細胞(ATCC CCL61)、DXB−11、DG−44、およびチャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO,Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣細胞;SV40で形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7,ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293または懸濁培養で増殖させるためにサブクローニングされた293細胞(Graham et al.,J.Gen Virol.36:59,1977);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,(Biol.Reprod.23:243−251,1980);マウス腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76,ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌(HELA,ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト胚細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2,HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞癌株(Hep G2)が挙げられる。
抗体産生のために、上記に記載の発現ベクターまたはクローニングベクターで、宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトし、プロモーターを誘導するのに適切に改良された従来の栄養培地で培養し、形質転換体を選択するか、所望の配列をコードする遺伝子を増幅する。さらに、選択マーカーによって分離された複数コピーの転写ユニットを有する新規ベクター、およびその転写ユニットでトランスフェクトした細胞は特に有用であり、所望の抗原に結合する抗体の発現に好ましい。
所望の抗体の核酸配列を含む宿主細胞は、様々な培地で培養することができる。Ham's F10(Sigma)、Minimal Essential Medium((MEM)、(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびDulbecco's Modified Eagle's Medium((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、これらの宿主細胞を培養するのに適する。さらに、(Meth.Enz.58:44,1979),Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980),米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号、または同第5,122,469号、WO90103430、WO87/00195;または米国特許Re.No.30,985に記載の培地のいずれかを、これらの宿主細胞の培地として用いることができる。これらの培地のいずれも、必要であれば、ホルモンおよび/または他の成長因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、緩衝液(例えば、HEPES)、ヌクレオチド(例えば、アデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN(商標)薬物)、(通常、マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)微量元素、ならびに糖または同等のエネルギー源を補充してもよい。任意の他の必要な栄養補助剤も、当業者が知る適切な濃度で含めてもよい。温度およびpHなどの培養条件は、発現について選択した宿主細胞で以前に用いた条件であり、当業者に明らかであろう。
組換え技術を用いる時、抗体を細胞内で、細胞膜周辺腔で産生させるか、または微生物培養物から培地に直接分泌させることができる。抗体を細胞内で産生させる場合、第1のステップとして、宿主細胞または溶解断片のいずれか一方の微粒子細片を、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去する。Betterら(Science 240:1041−43,1988;ICSU Short Reports 10:105(1990);およびProc.Natl.Acad.Sci.USA 90:457−461(1993)が、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離する手順について記載している(Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992)も参照)。
微生物細胞または哺乳類細胞から調製される抗体組成物を、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィーを用いて精製することができ、親和性クロマトグラフィーが好ましい精製技術である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種類およびアイソタイプによってきまる。プロテインAを用いて、ヒトγ1、γ2、またはγ4の重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1−13,1983)。プロテインGは、全てのマウスのアイソタイプおよびヒトγ3のために推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドが結合する基質はアガロースである場合が多いが、他の基質も利用できる。調節された細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定な基質は、アガロースで達成することができる流速および時間よりも速い流速、および短い処理時間を可能にする。抗体がC3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)レジン(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSE(商標)でのクロマトグラフィー、(ポリアスパラギン酸カラムなどの)陰イオンまたは陽イオン交換レジンでのクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿法などのタンパク質精製のための他の技術も、回収される抗体に応じて利用可能である。
抗体断片
抗体断片は、無傷の、全長の抗体の一部、好ましくは、無傷の抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体断片の例として、Fab、Fab'、F(ab')、およびFv断片、ダイアボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、二重特異性抗体、三重特異性抗体などの多特異性抗体断片(ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫医薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、VHH含有抗体、ならびに抗体断片から形成される他のポリペプチドが挙げられる。例えば、Holliger&Hudson(Nat.Biotech.23(9)1126−36(2005))を参照されたい。
抗体のパパイン消化により、「Fab」と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、すなわちV、V、CおよびCドメインからなる一価の断片(それぞれは単一抗原結合部位を有する)、ならびに残りの「Fc」断片(この名前は、容易に結晶化されるその能力を反映する)が産生される。ペプシン処理ではF(ab')断片が得られ、これはヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結される2つのFab断片を含み、2つの「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片を有する二価の断片は、抗体のVおよびVドメインを含み、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖中に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、Fvが所望の抗原結合構造を形成することを可能にするVとVドメイン間のポリペプチドリンカーをさらに含み、結果的に一本鎖抗体(scFv)をもたらし、その中のVおよびV領域は対になり、単一タンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーにより一価の分子を形成する(Bird et al.,Science 242:423−426,1988,およびHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883,1988)。sFvの概説については、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.l 13,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。Fd断片は、VおよびC1ドメインからなる。
さらなる抗体断片には、Vドメインからなるドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al.,Nature 341:544−546,1989)が含まれる。ダイアボディは、VおよびVドメインが単一ポリペプチド鎖で発現する二価の抗体であるが、非常に短いため同一鎖の2つのドメイン間で対形成をさせることができないリンカーを用いて、これらのドメインを別の鎖の相補的なドメインとペア形成させ、2つの抗原結合部位を作り出す(例えば、EP 404,097;WO93/11161;Holliger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448,1993、およびPoljak et al.,Structure 2:1121−1123,1994参照)。ダイアボディは二重特異性または単一特異性であり得る。
軽鎖を欠く機能的重鎖抗体が、テンジクザメ(Greenberg et al.,Nature 374:168−73,1995)、オオセ(Nuttall et al.,Mol Immunol.38:313−26,2001)およびラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカおよびラマなどのラクダ科(Hamers−Casterman et al.,Nature 363:446−8,1993;Nguyen et al.,J.Mol.Biol.275:413,1998)において天然に存在する。この抗原結合部位は、これらの動物において、単一のドメインであるVHHドメインに縮小される。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを用いて抗原結合領域を形成する。すなわち、これらの機能的抗体は、構造Hのみを有する重鎖のホモ二量体である(「重鎖抗体」または「HCAb」と称される)。ラクダ科のVHHは、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含み、CH1ドメインを欠くIgG2およびIgG3定常領域で組換えられていると報告されている(上記のHamers−Casterman et al.)。例えば、ラマIgG1は従来の(H)抗体アイソタイプであり、Vは、ヒンジ、CH1、CH2およびCH3ドメインを含む定常領域で組換えられているが、ラマIgG2およびIgG3はCH1を欠き、軽鎖を含まない重鎖のみのアイソタイプである。ラクダ科VHHドメインは高親和性で抗原に結合し(Desmyter et al.,J.Biol.Chem.276:26285−90,2001)、溶液中で高い安定性を有する(Ewert et al.,Biochemistry 41:3628−36,2002)ことが判明している。古典的なVのみの断片を可溶型で産生することが困難であるが、フレームワーク残基をよりVH様に変えた時に、溶解性の改善および特異的結合を得ることができる(例えば、Reichman,etal.,J Immunol Methods 1999,231:25−38参照)。ラクダ科重鎖を有する抗体を作製する方法は、例えば、米国特許公開第20050136049号および同第20050037421号に記載されている。
抗体重鎖の可変ドメインは15kDaの分子量を有し、ナノボディと称される(Cortez−Retamozo et al.,Cancer Research 64:2853−57,2004)。ナノボディライブラリーは、Conrathら(Antimicrob Agents Chemother 45:2807−12,2001)に記載の免疫したヒトコブラクダから、またはRevets et al,Expert Opin.Biol.Ther.5(1):111−24(2005)に記載の組換え法を用いて作製することができる。
二重特異性Fab−scFv(「バイボディ」)および三重特異性Fab−(scFv)(2)(「トリボディ」)の産生については、Schoonjansら(J Immunol.165:7050−57,2000)およびWillemsら(J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.786:161−76,2003)に記載されている。バイボディまたはトリボディについては、例えば、トリボディを産生するために、scFv分子をVL−CL(L)およびVH−CH(Fd)鎖の一方または両方に結合させ、2つのscFvをFabのC末端に結合させるが、バイボディにおいては、1つのscFvをFabのC末端に結合させる。
ペプチドリンカー(ヒンジ無)またはIgGヒンジによりCH3に結合させたscFvからなる「ミニボディ」については、Olafsen,et al.,Protein Eng Des Sel.2004 Apr;17(4):315−23に記載されている。
イントラボディは細胞内発現を示す一本鎖抗体であり、細胞内のタンパク質機能を操作することができる(Biocca,et al.,EMBO J.9:101−108,1990;Colby et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.101:17616−21,2004)。イントラボディは、細胞内領域に抗体コンストラクトを保持する細胞シグナル配列を含み、Mhashilkarら(EMBO J 14:1542−51,1995)およびWheelerら(FASEB J.17:1733−5.2003)に記載されるとおりに産生させることができる。トランスボディは、タンパク質トランスダクションドメイン(protein transduction domain)(PTD)を一本鎖可変断片(scFv)抗体と融合させた細胞透過性抗体である(Heng et al.,Med Hypotheses.64:1105−8,2005)。
SMIPまたは抗原に特異的な結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である抗体がさらに企図される。これらのコンストラクトは、抗体エフェクター機能を実行するために必要な免疫グロブリンドメインに結合させた抗原結合ドメインを含む一本鎖ポリペプチドである。例えば、WO03/041600、米国特許公開第20030133939号および同第20030118592号を参照されたい。
1つ以上のCDRを、共有結合または非共有結合のいずれか一方で分子に取り込ませ、その分子をイムノアドヘシンにさせることができる。イムノアドヘシンは、巨大ポリペプチド鎖の一部としてCDR(複数可)を取り込むか、このCDR(複数可)を別のポリペプチド鎖に共有結合させるか、または非共有結合でこのCDR(複数可)取り込んでもよい。これらのCDRは、イムノアドヘシンを対象の特定抗原に特異的に結合させることを可能にする。
したがって、抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域の1、2、および/または3つのCDRを含む様々な組成物を、当業で公知の技術により作製することができる。
多特異性抗体
いくつかの実施形態において、同一分子または異なる分子の少なくとも2つ以上の異なるエピトープに対する結合特異性を有する本発明の多重特異性(例えば、二重特異性)抗体を作製することが好ましい場合もある。例示的な二重特異性抗体は、抗原の2つの異なるエピトープに結合することができる。あるいは、細胞防御機構を所望の抗原に集中させるために、抗原特異的抗体アームを、T細胞受容体分子(例えば、CD2またはCD3)、またはFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)などのIgG(FcγR)のFc受容体などの細胞表面分子に結合するアームと結合させてもよい。二重特異性抗体を用いて、所望の抗原を発現するか、または取り込む細胞に細胞毒性薬を局在化させることもできる。これらの抗体は、抗原結合アームならびに細胞毒性薬(例えば、サポリン、抗インターフェロン−60、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキサートまたは放射性同位元素ハプテン)に結合するアームを有する。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab')2二重特異性抗体)として調製することができる。
二重特異性抗体を作製する別のアプローチに従って、抗体分子の対間の界面を遺伝子工学処理し、組換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーの割合を最大限にさせることができる。好ましい界面は、抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。本方法において、第1の抗体分子の界面の1つ以上の小さいアミノ酸側鎖を、大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)と置換する。この大きな側鎖(複数可)と同一または類似のサイズの代償的な「空洞」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)と置換することによって、第2の抗体分子の界面上に作る。これは、ホモ二量体などの他の無用な最終生成物を上回る、ヘテロダイマーの収率を増加させるためのメカニズムを提供する。1996年9月6日に公開されたWO96/27011を参照されたい。
二重特異性抗体には、架橋抗体または「ヘテロ接合」抗体が含まれる。例えば、ヘテロ接合の抗体の一方はアビジンと、他方はビオチンと結合させることができる。ヘテロ接合抗体は、任意の便利な架橋法を用いて作製することができる。適切な架橋剤は当業で公知であり、いくつかの架橋技術と共に、米国特許第4,676,980号で開示されている。
抗体断片の二重特異性抗体を作製する技術も文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体を、化学結合を用いて調製することができる。Brennanら(Science 229:81−83,1985)は、F(ab')断片を作製するために、無傷の抗体をタンパク分解により切断する手順について記載している。これらの断片をジチオール錯化剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元して、近接のジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を防ぐ。その後、作製されたFab'断片をチオニトロ安息香酸(TNB)誘導体に変換する。その後、Fab'−TNB誘導体の1つを、メルカプトエチルアミンで還元することによってFab'−チオールに再変換させ、等モル量の他のFab'−TNB誘導体と混合して、二重特異性抗体を形成する。この産生された二重特異性抗体を、酵素の選択的固定化のための薬剤として用いることができる。さらなる実施形態において、大腸菌から直接回収されたFab'−SH断片をインビトロで化学的に結合させ、二重特異性抗体を形成させることができる(Shalaby et al.,J.Exp.Med.175:217−225(1992))。
ShalabyらのJ.Exp.Med.175:217−225(1992)は、完全にヒト化した二重特異性抗体F(ab')分子の産生について記載している。各々のFab'断片は大腸菌から別々に分泌され、インビトロで定方向化学的結合(directed chemical coupling)を施して、二重特異性抗体を形成した。このように形成された二重特異性抗体は、HER2受容体を発現する細胞および正常なヒトT細胞に結合することができ、ヒト乳腺腫瘍抗原に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解作用を引き起こすことができた。
組換え細胞培養から二重特異性抗体断片を直接作製し、単離する様々な技術についても記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて産生された(Kostelny et al.,J.Immunol.148:1547−1553,1992)。FosおよびJunタンパク質のロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合により2つの異なる抗体のFab'部分に結合させた。抗体のホモ二量体をヒンジ領域で還元し、単量体を形成させ、その後、再び酸化して、抗体のヘテロ二量体を形成させた。この方法は、抗体のホモ二量体の産生にも利用することができる。Hollingerら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−48,1993)によって記載される「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製する代替メカニズムを提供した。
この断片は、非常に短いため同一鎖の2つのドメイン間でペア形成をさせることができないリンカーにより、軽鎖可変領域(V)に結合させた重鎖可変領域(V)を含む。したがって、1つの断片のVおよびVドメインは、別の断片の相補的なVおよびVドメインとペア形成させることにより、2つの抗原結合部位を形成させる。一本鎖Fv(sFv)二量体を用いることによる二重特異性抗体断片を作製する別の方法も報告されている。Gruber et al.,J.Immunol.152:5368(1994)を参照されたい。
あるいは、この二重特異性抗体は、Zapataらの Protein Eng.8:1057−62(1995)に記載されるとおりに産生された「線状抗体」であってもよい。線状抗体は、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFd断片(V−C1−V−C1)を含む。線状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。
さらなる実施形態において、この二重特異性抗体は、キレート組換え抗体(CRAb)であり得る。キレート組換え抗体は、抗原の隣接エピトープまたは非オーバーラップエピトープを認識し、両方のエピトープに同時に結合するのに十分な可動性がある(Neri et al.,J Mol Biol.246:367−73,1995)。
2以上の結合価の抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる(Tutt et al.,J.Immunol.147:60,1991)。
キメラ抗体およびヒト化抗体
キメラ抗体またはヒト化抗体は、ヒトにおいて、親のマウスモノクローナル抗体よりも免疫原性が低いので、アナフィラキシーのリスクが非常に低く、それらの抗体をヒトの治療に使用することができる。
マウスモノクローナル抗体の可変Igドメインをヒトの定常Igドメインと融合させたキメラモノクローナル抗体は、当業で公知の標準的手順を用いて作製することができる(Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,6841−6855(1984);およびBoulianne et al,Nature 312,643−646,(1984)参照)。いくつかのキメラモノクローナル抗体はヒトにおいて免疫源性が低いことが証明されているが、マウス可変Igドメインはさらに著しいヒト抗マウス反応をもたらし得る。
ヒト化抗体は、例えば、(1)非ヒトの相補鎖決定領域(CDR)を、ヒトのフレームワークおよび定常領域に移植すること(当業で「CDR移植」を介するヒト化と称されるプロセス)、(2)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置換により、それらのドメインをヒト様表面で覆うこと(当業で「ベニヤリング(veneering)」と称されるプロセス)、または、(3)抗原結合またはタンパク質の折り畳みのいずれか一方に逆に作用する可能性は低いが、ヒト環境では免疫源性を低下させる可能性があると決定される位置でヒトのアミノ酸を置換すること(当業でHUMAN ENGINEERING(商標)と称されるプロセス)を含む様々な方法によって得ることができる。本発明において、ヒト化抗体は、「ヒト化」抗体、「ベニヤリング」抗体および「HUMAN ENGINEERED(商標)」抗体の全てを含む。これらの方法は、例えば、JonesらのNature 321:522 525(1986);MorrisonらのProc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,81:6851−6855(1984);MorrisonとOi,Adv.Immunol.,44:65−92(1988);VerhoeyerらのScience 239:1534−1536(1988);Padlan,Molec.Immun.28:489−498(1991);Padlan,Molec.Immunol.31:169−217(1994);KettleboroughらのProtein Eng.4:773−783(1991);Studnickaらの米国特許第5,766,886号;StudnickaらのProtein Eng 7:805−814,(1994)で開示されており、これらの各々は参照により本明細書に組込まれる。
トランスジェニック動物由来のヒト抗体
抗原に対するヒト抗体を、内在性の免疫グロブリン産生がなく、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように遺伝子工学処理されたトランスジェニック動物を用いて産生することもできる。例えば、WO98/24893は、ヒトIg遺伝子座を有するトランスジェニック動物について開示しており、これらの動物は、内在性の重鎖および軽鎖の遺伝子の不活性化により、機能的な内在性免疫グロブリンを産生しない。WO91/00906も、免疫原に対する免疫反応を開始することができるトランスジェニックの霊長類ではない哺乳類宿主について開示しており、その中の抗体は、霊長類の定常領域および/または可変領域を有し、内在性の免疫グロブリンをコードする遺伝子座は置換されているか、または不活性化されている。WO96/30498および米国特許第6,091,001号は、例えば、定常領域もしくは可変領域の全てまたは一部を置換して、改変された抗体分子を形成させる、哺乳類における免疫グロブリン遺伝子座を改変するためのCre/Loxシステムの使用について開示している。WO94/02602は、不活性化された内在性Ig遺伝子座および機能的なヒトIg遺伝子座を有する非ヒトの哺乳類宿主について開示している。米国特許第5,939,598号はトランスジェニックマウスを作製する方法について開示しており、そこでは、マウスは内在性重鎖を欠き、1つ以上の異種の定常領域を含む外来性の免疫グロブリン遺伝子を発現する。米国特許第6,114,598号、同第6,657,103号、および同第6,833,268号も参照されたい。
上記に記載のトランスジェニック動物を用いて、選択抗原に対する免疫反応を起こすことができ、抗体産生細胞をこの動物から除去し、それを用いて、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを産生することができる。免疫プロトコールおよびアジュバントなどは当業で公知であり、例えば、WO96/33735に記載されるとおり、トランスジェニックマウスの免疫に使用される。この公表文献は、IL−6、IL−8、TNFa、ヒトCD4、Lセレクチン、gp39および破傷風毒素を含む様々な抗原に対するモノクローナル抗体について開示している。これらのモノクローナル抗体を、対応するタンパク質の生物活性または生理学的作用を阻害するか、または中和する能力について試験することができる。WO96/33735は、IL−8で免疫したトランスジェニックマウスの免疫細胞に由来し、IL−8に誘導される好中球の機能を阻止する、IL−8に対するモノクローナル抗体について開示している。トランスジェニック動物を免疫するのに用いられる抗原に対して特異性を有するヒトモノクローナル抗体についても、WO96/34096、米国特許出願第20030194404号、および同第20030031667号に開示されている。
モノクローナル抗体を作製するのに有用なさらなるトランスジェニック動物には、米国特許第5,770,429号およびFishwild,et al.(Nat.Biotechnol.14:845−851(1996))に開示されているMedarex HuMAb−MOUSE(登録商標)が含まれ、これは、ヒト抗体の重鎖および軽鎖をコードする再編成されていないヒト抗体遺伝子の遺伝子配列を含む。HuMAb−MOUSE(登録商標)の免疫は、この抗原に対する全長ヒトモノクローナル抗体の産生を可能にする。
Ishidaら(Cloning Stem Cells.4:91−102(2002))も、ヒトDNAのメガ塩基対サイズの断片を含み、ヒト免疫グロブリン(hIg)遺伝子座全体を包含するTransChromoマウス(TCMOUSE(商標))について開示している。TCMOUSE(商標)は、IgG(IgG1−G4)のサブクラスの全てを含む十分に多様なレパートリーのhIgを有する。様々なヒト抗原を有するTCMOUSE(商標)の免疫は、ヒト抗体を含む抗体反応を産生する。
JakobovitsらのProc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993);JakobovitsらのNature,362:255−258(1993);BruggermannらのYear in Immunol.,7:33(1993);米国特許第5,591,669号、同第5,589,369号、同第5,545,807号、および米国特許公開第20020199213号も参照されたい。米国特許公開第20030092125号は、所望のエピトープに動物の免疫反応を偏らせる方法について記載している。ヒト抗体は、インビトロで活性化されたB細胞によっても作製することができる(米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号参照)。
ディスプレイ技術によるヒト抗体
組換えヒト抗体遺伝子のレパートリーを作製する技術、および繊維状バクテリオファージの表面におけるコードされた抗体断片の提示の技術の発達により、ヒト抗体を直接作製する手段がもたらされた。ファージ技術によって産生される抗体は、細菌内で抗原結合断片、通常、Fvまたは Fab断片として産生されるので、エフェクター機能を欠く。エフェクター機能は、2つの方法のうちの1つによって導入することができる。これらの断片を遺伝子工学処理して、哺乳類細胞での発現のための完全抗体、またはエフェクター機能を誘発することができる第2の結合部位を有する二重特異性抗体断片のいずれか一方にすることができる。
本発明は、ファージにおけるヒト抗体ライブラリーを合成するステップ、抗原またはその一部でこのライブラリーをスクリーニングするステップ、抗原に結合するファージを単離するステップ、およびこのファージから抗体を取得するステップを含む、抗原特異的抗体またはその抗原結合部分を産生する方法を企図する。例として、ファージディスプレイ技術で使用するための抗体ライブラリーを調製する1つの方法は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むヒトではない動物を抗原またはその一部で免疫して、免疫反応を生じさせるステップ、この免疫動物から抗体産生細胞を抽出するステップ、この抽出細胞からRNAを単離するステップ、このRNAを逆転写してcDNAを作製するステップ、プライマーを用いてこのcDNAを増幅するステップ、およびこのcDNAをファージディスプレイベクターに挿入し、その結果抗体がファージ上で発現するステップを含む。本発明の組換え抗原特異的抗体をこの方法で取得してもよい。別の例においては、抗体産生細胞を非免疫動物から摘出し、これらの摘出した細胞からRNAを単離し、逆転写してcDNAを作製し、プライマーを用いてこのcDNAを増幅し、ファージディスプレイベクターに挿入し、その結果抗体がファージ上で発現する。ファージディスプレイプロセスは、繊維状バクテリオファージの表面での抗体レパートリーの提示を経た免疫選択、およびその後の最適な抗原への抗体レパートリーの結合によるファージの選択を模倣する。このような1つの技術はWO99/10494で開示されており、これは、このようなアプローチを用いた、MPL受容体およびmsk受容体に対して高親和性で機能的なアゴニスト抗体の単離について記載している。本発明の抗体は、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリー、好ましくは、scFvファージディスプレイライブラリーのスクリーニングによって単離し、ヒトリンパ球に由来するmRNAから調製したヒトVcDNAおよびVcDNAを用いて調製することができる。このようなライブラリーを調製し、スクリーニングする方法は当業で公知である。例えば、米国特許第5,969,108号を参照されたい。ファージディスプレイライブラリーを作製するキットは市販されている(例えば、ファルマシア社の組換えファージ抗体システム(Recombinant Phage Antibody System)、カタログ番号27−9400−01およびストラタジーン社のSurfZAP.TM.ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。抗体ディスプレイライブラリーを作製し、スクリーニングするのに使用できる他の方法および試薬もある(例えば、Ladnerらの米国特許第5,223,409号; KangらのPCT公開WO92/18619;DowerらのPCT公開WO91/17271;WinterらのPCT公開WO92/20791;MarklandらのPCT公開WO92/15679;BreitlingらのPCT公開WO93/01288;McCaffertyらのPCT公開WO92/01047;GarrardらのPCT公開WO92/09690;Fuchs et al.(1991)Bio/Technology 9:1370−1372;Hay et al.(1992)Hum.Antibod.Hybridomas 3:81−85;Huse et al.(1989)Science 246:1275−1281;McCafferty et al.,Nature(1990)348:552−554;Griffiths et al.(1993)EMBO J 12:725−734;Hawkins et al.(1992)J.Mol.Biol.226:889−896;Clackson et al.(1991)Nature 352:624−628;Gram et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3576−3580;Garrad et al.(1991)Bio/Technology 9:1373−1377;Hoogenboom et al.(1991)Nuc Acid Res 19:4133−4137;およびBarbas et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7978−7982参照)。
一実施形態において、所望の結合特性を有する、抗原に特異的なヒト抗体を単離するために、ヒトVおよびVライブラリーをスクリーニングし、所望の特異性を有する抗体断片を選択する。本方法に用いる抗体ライブラリーは、好ましくは、本明細書に記載され、当業に知られる通りに調製され、スクリーニングされるscFvライブラリーである(McCaffertyらのPCT公開WO92/01047、McCafferty et al.,(Nature 348:552−554(1990))、およびGriffiths et al.,(EMBO J 12:725−734(1993))。好ましくは、これらのscFv抗体ライブラリーを、抗原を用いてスクリーニングする。
あるいは、抗体のFd断片(V−C1)および軽鎖(V−C)を、PCRにより別々にクローニングし、コンビナトリアルファージディスプレイライブラリーにランダムに組換え、特定抗原への結合について選択することができる。Fab断片をファージ表面で発現させる。すなわち、それらの断片をコードする遺伝子に物理的に結合させる。したがって、抗原結合によるFabの選択はFabコード配列の選択であり、その後、これらの配列を増幅することができる。パニングと呼ばれる手順である抗原結合および再増幅のラウンドを数回経て、この抗原に特異的なFabを濃縮し、最終的に単離する。
1994年に、「誘導選択(guided selection)」と呼ばれる抗体のヒト化法について記載された。誘導選択は、マウスモノクローナル抗体のヒト化のために、ファージディスプレイ技術の力を利用する(Jespers,L.S.,et al.,Bio/Technology 12,899−903(1994)参照)。このために、マウスモノクローナル抗体のFd断片は、ヒト軽鎖ライブラリーと組み合わせて提示することができ、その後、生じたハイブリッドFabライブラリーを、抗原を用いて選択してもよい。したがって、マウスFd断片は、選択を導くための鋳型を提供する。その後、選択されたヒト軽鎖を、ヒトFd断片ライブラリーと組み合わせる。生じたライブラリーの選択により、完全なヒトのFabが得られる。
ファージディスプレイライブラリーからヒト抗体を得るための様々な手順が記載されている(例えば、Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol,222:581−597(1991);米国特許第5,565,332号および同第5,573,905号;Clackson,T.,ならびにWells,J.A.,TIBTECH 12,173−184(1994)参照)。特に、ファージディスプレイライブラリー由来の抗体のインビトロ選択および発展は強力なツールになる(Burton,D.R.,and Barbas III,C.F.,Adv.Immunol.57,191−280(1994);Winter,G.,et al.,Annu.Rev.Immunol.12,433−455(1994);米国特許公開第20020004215号およびWO92/01047;米国特許公開第20030190317号、米国特許第6,054,287号および同第5,877,293号参照)。
Watkins,"Screening of Phage−Expressed Antibody Libraries by Capture Lift,"Methods in Molecular Biology,Antibody Phage Display;Methods and Protocols 178:187−193(2002)および2003年3月6日に公開された米国特許公開第20030044772号は、捕捉リフト(capture lift)、すなわち、固体支持体上への候補結合分子の固定化を含む方法による、ファージによって発現される抗体ライブラリーまたは他の結合分子のスクリーニング法について記載している。
Fv断片は、ファージタンパク質融合物(例えば、M13遺伝子IIIとの)として発現される1つの鎖と、可溶性断片として発現される相補鎖との会合によりファージの表面で提示される。このファージは、I型ファージ:fd、M13、f1、If1、lke、ZJ/Z、Ffのうちの1つならびにII型ファージXf、Pf1およびPf3のうちの1つなどの繊維状ファージであってもよいことが企図される。このファージは、M13、fd、またはその誘導体であり得る。
最初のヒトVおよびVセグメントを選択した時点で、最初に選択されたVおよびVセグメントの異なるペアを抗原結合についてスクリーニングする「様々なものを組み合わせる(mix and match)」実験を行い、好ましいV/Vペアの組み合わせを選択することができる。さらに、抗体の質をさらに改善するために、天然の免疫反応の間、抗体の親和性成熟に関与するインビボ体細胞変異プロセスと類似するプロセルで、好ましいV/Vペア(複数可)のVおよびVセグメントを、好ましくは、Vおよび/またはVのCDR1、CDR2またはCDR3領域のいずれかの中においてランダムに変異させることができる。このインビトロ親和性成熟は、それぞれ、VのCDR1、CDR2、およびCDR3、またはVのCDR1、CDR2、およびCDR3に相補的なPCRプライマーを用いてVおよびV領域を増幅することによって達成することができ、これらのプライマーは、特定の位置において4つヌクレオチド塩基のランダム混合物でスパイクされており、その結果生じたPCR生成物は、Vおよび/またはVのCDR3領域にランダム変異が導入されたVおよびVセグメントをコードする。これらのランダムに変異導入されたVおよびVセグメントを、抗原への結合についてスクリーニングすることができる。
組換え型免疫グロブリンディスプレイライブラリーからの抗原特異的抗体のスクリーニングおよび単離後、選択された抗体をコードする核酸を、ディスプレイパッケージから(例えば、ファージゲノムから)回収し、標準的な組換えDNA技術により他の発現ベクターにサブクリーニングすることができる。必要であれば、この核酸をさらに操作して、以下に記載の本発明の他の抗体型を作り出すことができる。コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングによって単離された組換えヒト抗体を発現させるために、本明細書に記載のとおりに、抗体をコードするDNAを組換え発現ベクターにクローニングし、哺乳類宿主細胞に導入する。
ファージディスプレイ法は、細菌または宿主細胞の変異誘発株内で実行してもよいことが企図される。変異誘発株は遺伝子欠陥を有する宿主細胞であり、その親のDNAに対してその株内で複製されるDNAに変異をもたらす。変異誘発株の例として、NR9046mutD5およびNR9046 mut T1が挙げられる。
ファージディスプレイ法はまた、ヘルパーファージを用いて実行してもよいと考えられる。これは、欠陥のあるファージゲノムを含む細胞を感染するのに用いられるファージであり、この欠陥を補完するように機能する。この欠陥のあるファージゲノムは、ファージミドまたはいくつかの機能をコードする遺伝子配列が除去されたファージであり得る。ヘルパーファージの例として、M13K07、M13K07遺伝子IIIno.3、ハイパーファージ、キャプシドタンパク質と融合させた結合分子を提示するか、またはコードするファージが挙げられる。
抗体は、WO92/01047に開示される階層的二重コンビナトリアルアプローチ(hierarchical dual combinatorial approach)を用いるファージディスプレイスクリーニング法により作製してもよく、その際、HまたはL鎖のクローンのいずれか一方を含む個々のコロニーを用いて、他の鎖(LまたはH)をコードするクローンの完全ライブラリーに感染させ、生じる2つの鎖に特異的な結合メンバーを、WO92/01047の中に記載される技術などのファージディスプレイ技術に従って選択する。この技術は、Marks et al,Bio/Technology,10:779−783(1992)でも開示されている。
ウイルス、酵母、微生物細胞および哺乳類細胞の表面上におけるポリペプチドの提示法も、抗原特異的抗体を同定するために用いられている。例えば、米国特許第5,348,867号、同第5,723,287号、同第6,699,658号、Wittrup,Curr Op.Biotech.12:395−99(2001);Lee et al,Trends in Biotech.21(1)45−52(2003);Surgeeva et al,Adv.Drug Deliv.Rev.58:1622−54(2006)を参照されたい。抗体ライブラリーを、凝集素などの酵母タンパク質に付着させ、免疫系のB細胞により抗体の細胞表面提示を効果的に模倣することができる。
ファージディスプレイ法に加えて、リボソームディスプレイおよびmRNAディスプレイを含むインビトロディスプレイ法を用いて、抗体を単離してもよい(Amstutz et al,Curr.Op.Biotech.12:400−05(2001))。リボソームディスプレイを用いるポリペプチドの選択については、Hanesら(Proc.Natl Acad Sci USA,94:4937−4942(1997))、Kawasakinに付与された米国特許第5,643,768号、および同第5,658,754号に記載されている。リボソームディスプレイは、迅速で大規模な抗体の変異解析にも有用である。選択的変異誘発法は、リボソームディスプレイ技術を用いて選択することができる、活性が改良された抗体を産生する方法も提供する。
グリコシル化の変更
親の抗体と比較してグリコシル化パターンが改良された抗体変異体、例えば、抗体中に見られる1つ以上の炭水化物部分の欠失、および/または抗体中に存在しない1つ以上のグリコシル化部位の付加を有する抗体変異体も産生することができる。
抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合型またはO結合型のいずれか一方である。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付着を指す。Xがプロリン以外の任意のアミノ酸である、アスパラギン−X−セリンおよびアスパラギン−X−スレオニンのトリペプチド配列は、このアスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的付着のための認識配列である。ポリペプチド中にこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在すると、潜在的なグリコシル化部位が作り出される。したがって、N結合グリコシル化部位は、それがこれらのトリペプチド配列の1つ以上を含むようにアミノ酸配列を変えることによって抗体に付加することができる。O結合型グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的には、セリンまたはスレオニンへの、N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースの糖のうちの1つの付着を指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリシンも用いられ得る。O結合型グリコシル化部位を、1つ以上のセリンもしくはスレオニン残基を元の抗体配列に挿入するか、または置換することによって抗体に付加してもよい。
FcグリカンはFc受容体およびC1qへのIgGの結合に影響を与えるので、IgGエフェクター機能に重要である。Fcグリカンが修飾され、エフェクター機能が改変された抗体変異体を産生することができる。例えば、シアル酸、コアのフコース、バイセクティングN−アセチルグルコサミン(bisecting N−acetylglucosamine)、およびマンノース残基などの末端糖が修飾された抗体は、FcγRIIIa受容体への結合が変更され、ADCC活性が変更されていてもよい。さらなる例において、末端のガラクトース残基が修飾された抗体は、C1qへの結合が変更され、CDC活性が変更されていてもよい(Raju,Curr.Opin.Immunol.20:471−78(2008)。
フコシル化されていないか、または低下しており、改善されたADCC活性を示す抗体分子も企図される。これを達成するための様々な方法が当業で公知である。例えば、ADCCエフェクター活性は、FcγRIII受容体への抗体分子の結合により媒介され、CH2ドメインのAsn−297の位置におけるN結合型グリコシル化の炭水化物構造によって決まることが示されている。非フコシル化抗体は親和性が増加することによりこの受容体に結合し、天然のフコシル化抗体よりも、FcγRIIIに媒介されるエフェクター機能をより効果的に引き起こす。例えば、α−1,6−フコシル基転移酵素がノックアウトされたCHO細胞における非フコシル化抗体の組換え産生は、ADCC活性が100倍増加した抗体をもたらす(Yamane−Ohnuki et al.,Biotechnol Bioeng.87:614−22(2004))。同様の効果を、例えば、siRNAもしくはアンチセンスRNA処理により、このフコシル化経路におけるこの酵素または他の酵素の活性を減少させるか、細胞株を遺伝子工学処理して酵素(複数可)をノックアウトするか、または選択的グリコシル化阻害剤と培養することにより達成することができる(Rothman et al.,Mol Immunol.26:1113−23(1989))。いくつかの宿主細胞株、例えば、Lec13またはラットハイブリドーマYB2/0細胞株は、フコシル化レベルの低い抗体を天然で産生する(Shields et al.,J Biol Chem.277:26733−40(2002);Shinkawa et al.,J Biol Chem.278:3466−73(2003))。例えば、GnTIII酵素を過剰発現する細胞で抗体を組換え産生することにより、二分された炭水化物のレベルの増加が、ADCC活性を増加することも明らかになった(Umana et al.,Nat Biotechnol.17:176−80(1999))。2つのフコース残基の一方のみが存在しないことが、ADCC活性を増加させるのに十分であり得ることが予想されている(Ferrara et al.,Biotechnol Bioeng.93:851−61(2006))。
エフェクター機能が変更された変異体
抗体の他の改変が企図される。一態様において、本発明の抗体をエフェクター機能に関して改変すること、例えば、癌治療における抗体の有効性を高めることが望ましい場合もある(Natsume et al,Drug Design Dev't&Ther.3:7−16(2009)。例示的なエフェクター機能には、Clq結合、CDC、Fc受容体結合、ADCC、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御などが含まれる。エフェクター機能を改変する1つの方法が、システイン残基(複数可)をFc領域に導入することにより、この領域における鎖間のジスルフィド結合形成が可能に成り得ることを教示する。このように作製されたホモ二量体の抗体は、内在化が改善され、かつ/または補体に媒介される細胞死および抗体依存性細胞傷害(ADCC)が増加され得る。Caron et al.,(J.Exp Med.176:1191−1195(1992))およびShopes,B.(J.Immunol.148:2918−2922(1992))を参照されたい。抗腫瘍活性が増強したホモ二量体の抗体も、Wolff et al.,(Cancer Research 53:2560−2565(1993))に記載のヘテロ二機能性の架橋剤を用いて調製することができる。あるいは、二重のFc領域を有する抗体を操作することができ、それによって、補体の溶解能およびADCC能が増強され得る。Stevensonら(Anti−Cancer Drug Design 3:219−230(1989))を参照されたい。さらに、CDR内の配列が抗体をMHCクラスIIに結合させ、望まれないヘルパーT細胞反応を引き起こすことが示されている。保存的置換が、抗体に結合活性を保持するが、望まれないヘルパーT細胞反応を引き起こすその能力を失わせるようにできる。マウスの可変領域がヒトのγ1、γ2、γ3、およびγ4の定常領域と結合したキメラ抗体について記載しているSteplewskiら(Proc Natl Acad Sci U S A.85:4852−56(1998))も参照されたい。
本発明の特定の実施形態において、例えば、腫瘍浸潤を増加させるために、無傷の抗体ではなく、抗体断片を使用することが望ましい場合もある。この場合、この抗体断片の血中半減期を増加させるように抗体断片を改変する、例えば、半減期を増加させるために、多糖ポリマーを含むPEGまたは他の水溶性ポリマーなどの分子を抗体断片に付加することが望ましい場合もある。これは、例えば、抗体断片へのサルベージ受容体結合エピトープの取り込みにより(例えば、抗体断片中の適切な領域の変異またはエピトープをペプチドタグに組込み、その後、例えば、DNAまたはペプチド合成により、いずれかの末端もしくは真ん中の位置で抗体断片に融合することにより)達成することもできる(例えば、WO96/32478参照)。
このサルベージ受容体結合エピトープは、好ましくは、Fcドメインの1つまたは2つのループの任意の1つ以上のアミノ酸残基が、抗体断片の類似の位置に移される領域を構成する。さらに好ましくは、Fcドメインの1つまたは2つのループの3つ以上の残基を移す。さらに好ましくは、このエピトープを(例えばIgGの)Fc領域のCH2ドメインから取得し、CH1、CH3、もしくはVH領域、または抗体の1つ以上のこのような領域に移す。あるいは、このエピトープをFc領域のCH2ドメインから取得し、抗体断片のC領域もしくはV領域、またはその両方に移す。Fc変異体およびそれらのサルベージ受容体との相互作用について記載している国際特許公開WO97/34631およびWO96/32478も参照されたい。
したがって、本発明の抗体は、Fcサルベージ受容体と相互作用する能力を保持するヒトFc部分、ヒトコンセンサスFc部分、またはその変異体を含んでもよく、ジスルフィド結合に関わるシステインが修飾されるか、もしくは除去される変異体、かつ/またはメチオニンがN末端に付加される変異体、かつ/またはN末端の20個のアミノ酸の1つ以上が除去された変異体、かつ/またはC1q結合部位などの補体と相互作用する領域が除去された変異体、かつ/またはADCC部位が除去された変異体を含む(例えば、Sarmay et al.,Molec.Immunol.29:633−9(1992)参照)。
以前の研究により、主に、FcRからIgG残基233〜239で構成される下側ヒンジ領域(lower hinge region)まで、ヒトおよびマウスのIgGの結合部位がマッピングされた。他の研究により、さらに広いセグメント、例えば、ヒトFc受容体IのGly316〜Lys338、ヒトFc受容体IIIのLys274〜Arg301およびTyr407〜Arg416が提唱され、下側ヒンジの外側のいくつかの特異的な残基、例えば、マウスFc受容体IIと相互作用するマウスIgG2bのAsn297およびGlu318が見出された。ヒトFc受容体IIIAを有するヒトIgG1 Fc断片の3.2Å結晶構造の報告は、IgG1残基Leu234〜Ser239、Asp265〜Glu269、Asn297〜Thr299、およびAla327〜Ile332がFc受容体IIIAへの結合に関与することを詳しく説明している。下側ヒンジ(Leu234〜Gly237)に加えて、IgG CH2ドメインループFG(残基326〜330)およびBC(残基265〜271)内の残基が、Fc受容体IIAへの結合に関与する可能性のあることが結晶構造に基づいて示唆されている。Shields et al.,(J.Biol.Chem.,276:6591−604(2001))を参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組込まれる。Fc受容体結合部位内の残基の変異は、ADCCまたはCDC活性の変更、または半減期の変更などのエフェクター機能の変更をもたらし得る。上記に記載の通り、可能性のある変異には、アラニンを用いる置換、保存的置換、非保存的置換、または異なるIgGサブクラスの同じ位置での対応するアミノ酸残基による置換(例えば、その位置での対応するIgG2残基でIgG1残基を置換すること)を含む1つ以上の残基の挿入、欠失または置換が含まれる。
Shieldsらは、全てのヒトFc受容体への結合に関与するIgG1残基がヒンジの近位のCH2ドメインに位置し、以下のような2つのカテゴリーに分類されることを報告した:1)全てのFcRと直接相互作用し得る位置は、Leu234〜Pro238、Ala327、およびPro329(およびおそらくAsp265)を含む;2)炭水化物の性質または位置に影響を与える位置は、Asp265およびAsn297を含む。Fc受容体IIへの結合に影響を与えた追加のIgG1残基は以下の通りである:(最も大きな影響)Arg255、Thr256、Glu258、Ser267、Asp270、Glu272、Asp280、Arg292、Ser298、ならびに(低い影響)His268、Asn276、His285、Asn286、Lys290、Gln295、Arg301、Thr307、Leu309、Asn315、Lys322、Lys326、Pro331、Ser337、Ala339、Ala378、およびLys414。A327Q、A327S、P329A、D265AおよびD270Aは結合を低下させた。全てのFcRに対して上記で特定された残基に加えて、Fc受容体IIIAへの結合を40%以上低下させた追加のIgG1残基は以下の通りである:Ser239、Ser267(Glyのみ)、His268、Glu293、Gln295、Tyr296、Arg301、Val303、Lys338、およびAsp376。FcRIIIAへの結合を改善した変異体には、T256A、K290A、S298A、E333A、K334A、およびA339Tが含まれる。Lys414は、FcRIIAおよびFcRIIBに対する結合において40%の低下を示し、Arg416は、FcRIIAおよびFcRIIIAに対して30%の低下を示し、Gln419はFcRIIAに対して30%の低下を、FcRIIBに対しては40%の低下を示し、Lys360はFcRIIIAに対して23%の改善を示した。特異的Fcγ受容体(R)への結合のみを改善するか、または同時に、FcγRの一方の種類への結合を改善し、別の種類への結合を低下させるIgG1のFc領域のいくつかの位置が見出されたことについて記載しているPrestaら(Biochem.Soc.Trans.30:487−490,2001)も参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組込まれる。その後、FcγRIIIaへの改善された結合を有する、選択されたIgG1変異体を、インビトロの抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイで試験し、末梢血単核球またはナチュラルキラー細胞のいずれか一方を用いた時に、ADCCの増強が示された。
例えば、米国特許第6,194,551号(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)は、(カバット付番を用いて)329、331または322番目のアミノ酸位置においてヒトIgG Fc領域に変異を含む、エフェクター機能が変更された変異体について記載しており、これらのいくつかは、C1q結合またはCDC活性の低下を示す。別の例として、米国特許第6,737,056号(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)は、(カバット付番を用いて)238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439番目のアミノ酸位置においてヒトIgG Fc領域に変異を含むエフェクターまたはFcγ受容体結合が変更された変異体ついて記載しており、これらのいくつかは、ADCCまたはCDC活性の低下に関連する受容体結合プロファイルを示す。これらの中で、238、265、269、270、327または329番目のアミノ酸位置における変異は、FcRIへの結合を低下させると述べられ、238、265、269、270、292、294、295、298、303、324、327、329、333、335、338、373、376、414、416、419、435、438または439番目のアミノ酸位置における変異は、FcRIIへの結合を低下させると述べられ、238、239、248、249、252、254、265、268、269、270、272、278、289、293、294、295、296、301、303、322、327、329、338、340、373、376、382、388、389、416、434、435または437番目のアミノ酸位置における変異は、FcRIIIへの結合を低下させると述べられている。
米国特許第5,624,821号(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)は、マウス抗体のClq結合活性を、この重鎖の318、320または322番目のアミノ酸残基を変異させることによって変更することができ、297番目(Asn)残基を置換すると溶解活性が除去されると報告している。
米国特許公開第20040132101号(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)は、(カバット付番を用いて)240、244、245、247、262、263、266、299、313、325、328、もしくは332番目のアミノ酸位置において、または(カバット付番を用いて)234、235、239、240、241、243、244、245、247、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、327、328、329、330、もしくは332番目の位置において変異を有する変異体について記載しており、その中の234、235、239、240、241、243、244、245、247、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、327、328、329、330、もしくは332番目の位置において変異は、ADCC活性を低下させるか、またはFcγ受容体への結合を低下させ得る。
Chappelら(Proc Natl Acad Sci U S A.88:9036−40(1991))(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)は、IgG1の細胞親和性活性は、その重鎖CH2ドメインの固有の特性であると報告している。IgG1の234〜237番目のアミノ酸残基のいずれかにおける単一点変異は、その活性を著しく低下させるか、または失わせた。IgG1の残基234〜237(LLGG)の全てをIgG2およびIgG4に置換することが、結合活性を完全に戻すのに必要とされた。ELLGGP配列(233〜238番目の残基)全体を含むIgG2抗体は、野生型IgG1よりも活性があることが観察された。
Isaacsら(J Immunol.161:3862−9(1998))(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)は、FcγR結合に重要なモチーフ内の変異(233番目のグルタミン酸がプロリンに、234番目のロイシン/フェニルアラニンがバリンに、235番目のロイシンがアラニンに変異)が、標的細胞の枯渇を完全に防いだと報告している。318番目のグルタミン酸をアラニンに変異すると、マウスIgG2bのエフェクター機能が除去され、ヒトIgG4の効力も低下した。
Armourら(Mol Immunol.40:585−93(2003))(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)は、野生型IgG1よりも少なくとも10倍低い効率で活性化受容体FcγRIIaと反応するが、抑制性受容体であるFcγRIIbへのその結合はわずか4倍低下するIgG1変異体を同定した。233〜236番目のアミノ酸の領域内、ならびに/または327、330および331番目のアミノ酸位置で変異させた。WO99/58572も参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組込まれる。
Xuら(J Biol Chem.269:3469−74(1994))(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)は、IgG1のPro331をSerに変異させると、C1q結合を著しく減少させ、実質的に溶解活性が除去されたと報告している。逆に、IgG4の331番目のSerのProへの置換が、IgG4 Pro331変異体に部分的溶解活性(40%)を与えた。
Schuurmanら(Mol Immunol.38:1−8(2001))(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)は、重鎖間結合形成に関与するヒンジのシステインの1つであるCys226をセリンに変異すると、より安定な重鎖間結合をもたらしたと報告している。IgG4ヒンジ配列Cys−Pro−Ser−CysをIgG1ヒンジ配列Cys−Pro−Pro−Cysに変異させることも、重鎖間の共有結合相互作用を著しく安定化させる。
Angalら(Mol Immunol.30:105−8(1993))(参照によりその全体が本明細書に組込まれる)は、(IgG1およびIgG2のその位置で見られる)IgG4の241番目のアミノ酸位置のセリンをプロリンに変異させると、均質な抗体の産生につながり、元のキメラIgG4と比較して血中半減期が延長され、組織分布が改善されると報告している。
共有結合修飾
本発明のポリペプチド結合剤、例えば、抗体の共有結合修飾も本発明の範囲に含まれる。該当する場合、これらは化学合成によって、またはポリペプチド結合剤の酵素的もしくは化学的切断によって行われ得る。ポリペプチド結合剤の共有結合修飾の他の種類は、選択される側鎖またはNもしくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と、ポリペプチド結合剤の標的アミノ酸残基とを反応させることによって分子内に導入される。
システイニル残基は、最も一般には、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドなどのα−ハロ酢酸(および対応するアミン)と反応し、カルボキシメチル誘導体またはカルボキシアミドメチル誘導体が生じる。システイニル残基は、ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミドゾイル(imidozoyl))プロピオン酸、リン酸クロロアセチル、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル2−ピリジルジスルフィド、p−クロロマーキュリ安息香酸、2−クロロマーキュリ−4−ニトロフェノール、またはクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応によっても誘導体化される。
ジエチルピロカーボネートはヒスチジル側鎖に比較的特異的であるので、ヒスチジル残基は、pH5.5〜7.0でジエチルピロカーボネートとの反応により誘導体化される。パラ−ブロモフェナシルブロミドも有用であり、この反応は、好ましくは、pH6.0にて0.1Mカコジル酸ナトリウム中で行われる。
リシニルおよびアミノ末端残基を、無水コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応させる。これらの薬剤を用いる誘導体化は、リシニル残基の電荷を逆にする作用を有する。α−アミノ含有残基を誘導体化するのに適する他の試薬には、メチルピコリンイミデートなどのイミドエステル、ピリドキサールリン酸、ピリドキサール、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O−メチルイソ尿素、2,4−ペンタンジオン、およびグリオキシル酸でのトランスアミナーゼ触媒反応が含まれる。
アルギニル残基は、1つまたはいくつかの標準試薬、とりわけ、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンとの反応により修飾される。アルギニン残基の誘導体化は、グアニジン官能基のpKaが高いため、この反応がアルカリ条件で行われることを必要とする。さらに、これらの試薬は、リジンおよびアルギニンイプシロン−アミノ基と反応し得る。
チロシル残基の特定の修飾は、チロシル残基にスペクトル標識を導入することを特に目的として、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応により行われ得る。最も一般には、N−アセチルイミジゾール(N−acetylimidizole)およびテトラニトロメタンを用いて、それぞれ、O−アセチルチロシル種および3−ニトロ誘導体を形成する。チロシル残基を125Iまたは131Iを用いてヨウ素化し、放射免疫測定法で使用する標識タンパク質を調製する。
カルボキシル側鎖(アスパルチルまたはグルタミル)を、カルボジイミド(R−N.dbd.C.dbd.N−R')(式中、RおよびR'は、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドなどの異なるアルキル基である)との反応によって選択的に修飾する。さらに、アスパルチルおよびグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によりアスパラギニルおよびグルタミニル残基に変換される。
グルタミニルおよびアスパラギニル残基は、しばしば、それぞれ対応するグルタミルおよびアスパルチル残基に脱アミド化される。これらの残基は、中性または塩基性条件下で脱アミド化される。これらの残基の脱アミド形態は本発明の範囲に入る。
他の修飾には、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリルまたはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman&Co.,San Francisco,pp.79−86(1983))、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意C末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
共有結合修飾の別の種類は、このポリペプチド結合剤にグリコシドを化学的または酵素的にカップリングすることを含む。これらの手順は、N−またはO−結合グリコシル化のためのグリコシル化能を有する宿主細胞においてポリペプチド結合剤の産生を必要としない点で好都合である。用いる結合形態によって、糖(複数可)は(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインの遊離スルフヒドリル基などの遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、スレオニン、もしくはヒドロキシプロリンの遊離ヒドロキシル基などの遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンの芳香族残基などの芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基に付着し得る。これらの方法は、WO87/05330およびAplinとWriston(CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259−306(1981))に記載されている。
ポリペプチド結合剤に存在する任意の炭水化物部分の除去を、化学的にまたは酵素的に達成することができる。化学的脱グリコシル化は、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または同等の化合物へのポリペプチド結合剤の暴露を必要とする。この処理により、このポリペプチド結合剤を無傷のまま、結合している糖(N−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミン)を除く、ほとんどまたは全ての糖の切断がもたらされる。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddinら(Arch.Biochem.Biophys.259:52(1987))およびEdgeら(Anal.Biochem.118:131(1981))に記載されている。このポリペプチド結合剤の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraら(Meth.Enzymol.138:350(1987))に記載される様々なエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼを用いることによって達成することができる。
このポリペプチド結合剤の共有結合修飾の別の種類は、様々な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール、ポリオキシアルキレン、またはデキストランなどの多糖ポリマーの1つにこのポリペプチド結合剤を結合することを含む。このような方法は当業で公知であり、例えば、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、同第4,179,337号、同第4,766,106号、同第4,179,337号、同第4,495,285号、同第4,609,546号またはEP315 456を参照されたい。
誘導体
誘導体は、ユビキチン化、(例えば、放射性核種または様々な酵素による)標識化、ペグ化(ポリエチレングリオールによる誘導体化)などの共有ポリマー結合、オルニチンなどのアミノ酸の化学合成による挿入または置換などの技術によって化学的に修飾された、抗体を含むポリペプチド結合剤を指す。抗体などの本発明のポリペプチド結合剤の誘導体は治療薬としても有用であり、本発明の方法によって産生することができる。
共役部分を、共有結合、イオン結合、ファンデルワールス結合もしくは水素結合のいずれかによって、ポリペプチド結合剤に組込むか、または結合させることができる。例えば、放射性ヌクレオチド、またはストレプトアビジンによって認識されるビオチン化ヌクレオチドの組込み。
ポリエチレングリコール(PEG)をこのポリペプチド結合剤に付着させ、インビボでの長い半減期をもたらすことができる。このPEG基は、任意の都合のよい分子量であり、直鎖状または分枝状であってもよい。PEGの平均分子量は、好ましくは、約2キロダルトン(「kD」)〜約100kDa、より好ましくは、約5kDa〜約50kDa、最も好ましくは、約5kDa〜約10kDaの範囲である。このPEG基を、一般に、PEG部分の天然の反応基もしくは操作された反応基(例えば、アルデヒド、アミノ、チオール、またはエステル)を介して、ポリペプチド結合剤の反応基(例えば、アルデヒド、アミノ、またはエステル基)にアシル化または還元的アルキル化することにより本発明のポリペプチド結合剤に付着する。ポリペプチド結合剤へのPEG部分の付加は、当業で公知の技術を用いて実行することができる。例えば、国際公開WO96/11953および米国特許第4,179,337号を参照されたい。
PEGによるポリペプチド結合剤の連結は、通常、水相で起こり、逆相分析HPLCにより容易に監視することができる。ペグ化した物質を分取HPLCにより精製し、分析HPLC、アミノ酸分析およびレーザー脱離質量分析により特徴づける。
抗体複合体
ポリペプチド結合剤を、その「裸」の形態もしくは非結合形態で投与するか、または他の治療薬もしくは診断薬と直接結合させるか、またはこのような他の治療薬もしくは診断薬を含む担体ポリマーに間接的に結合させてもよい。いくつかの実施形態において、このポリペプチド結合剤を、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物に由来する酵素的に活性のある毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位体(例えば、放射性複合体)などの細胞傷害性薬物と結合させる。適切な化学療法剤には、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、ビンデシン(Rowland et al.,(1986)上述)が含まれる。適切な毒素には、ジフテリア毒素などの細菌毒素、リシンなどの植物毒素、ゲルダナマイシン(Mandler et al J.Natl.Cancer Inst.92(19):1573−81(2000);Mandler et al Bioorganic&Med.Chem.Letters 10:1025−1028(2000);Mandler et al Bioconjugate Chem.13.786−91(2002))、マイタンシノイド(EP1391213;Liu et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−23(1996))、アウリスタチン(Doronina et al,Nat.Biotech.21:778−84(2003)およびカリケアマイシン(Lode et al Cancer Res.58:2928(1998);Hinman et al Cancer Res.53:3336−3342(1993))などの小分子毒素が含まれる。
ポリペプチド結合剤は、放射性同位体、(ビオチン、アビジンなど)親和性標識、(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどの)酵素標識、蛍光標識、発光標識、または(FITCまたはローダミンなどの)生物発光標識、および常磁性原子などの使用により検出可能な程度に標識することができる。このような標識を達成するための手順は当業で公知であり、例えば、Sternberger,L.A.et al.,J.Histochem.Cytochem.18:315(1970);Bayer,E.A.et al.,Meth.Enzym.62:308(1979);Engval,E.et al.,Immunol.109:129(1972);Goding,J.W.J.Immunol.Meth.13:215(1976)を参照されたい。
ポリペプチド結合剤部分の結合については、米国特許第6,306,393号に記載されている。一般的方法も、ShihらのInt.J.Cancer 41:832−839(1988);ShihらのInt.J.Cancer 46:1101−1106(1990);およびShihらの米国特許第5,057,313号に記載されている。この一般的な方法は、少なくとも1つの遊離アミン基を有し、多数の薬物、毒素、キレート剤、ホウ素アデンド(boron addend)、または他の治療薬が添加された担体ポリマーと、炭水化物部分が酸化したポリペプチド結合剤成分とを反応させることを含む。この反応は最初のシッフ基(イミン)結合をもたらし、これは、2級アミンへの還元により安定化され、最終結合体を形成し得る。
担体ポリマーは、例えば、少なくとも50個のアミノ酸残基のアミノデキストランまたはポリペプチドであってもよい。薬物または他の薬剤を担体ポリマーに結合させる様々な技術が当業で公知である。ポリペプチド担体をアミノデキストランの代わりに用いることができるが、このポリペプチド担体は、長さが少なくとも50個のアミノ酸残基、好ましくは、100〜5000アミノ酸残基を有するべきである。これらのアミノ酸残基の少なくともいくつかは、リジン残基またはグルタミン酸もしくはアスパラギン酸残基であるべきである。リジン残基のペンダントアミン、ならびにグルタミン酸およびアスパラギン酸のペンダントカルボン酸は、薬物、毒素、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素アデンドまたは他の治療薬を付着させるのに都合がよい。結果として得られる添加担体および添加複合体に望ましい溶解特性を与えるのに適するポリペプチド担体の例として、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、それらのコポリマー、ならびにこれらのアミノ酸および他のアミノ酸、例えばセリンの混合ポリマーが挙げられる。
あるいは、複合化ポリペプチド結合剤を、ポリペプチド結合剤成分を治療薬と直接結合させることによって調製することができる。一般手順は、治療薬が酸化ポリペプチド結合剤成分に直接付着することを除いて、間接的な結合法と類似している。例えば、ポリペプチド結合剤の炭水化物部分をポリエチレングリコールに付着させ、半減期を延長させることができる。
あるいは、治療薬を、ジスルフィド結合形成により、またはN−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロプリオネート(N−succinyl 3−(2−pyridyldithio)proprionate (SPDP))などのヘテロ二機能性架橋剤用いて、還元抗体成分のヒンジ領域に付着させることができる(Yu et al.,Int.J.Cancer56:244(1994))。このような結合の一般的技術は当業で公知である。例えば、Wong,Chemistry Of Protein Conjugation and Cross−Linking(CRC Press 1991);Upeslacis et al.,"Modification of Antibodies by Chemical Methods,"in Monoclonal Antibodies:Principles and Applications,Birch et al.(eds.),pages 187−230(Wiley−Liss,Inc.1995);Price,"Production and Characterization of Synthetic Peptide−Derived Antibodies,"in Monoclonal Antibodies:Production,Enineering and Clinical Application,Ritter et al.(eds.),pages 60−84(Cambridge University Press 1995)を参照されたい。N−サクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、二機能性のイミドエステル誘導体(アジプイミド酸ジメチルHCLなど)、活性エステル(スベリン酸ジサクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビスアジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビスジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トリエン2,6−ジイソシアネートなど)、および二活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)などの様々な二機能性タンパク質結合剤が当業で公知である。
抗体融合タンパク質
抗体融合タンパク質を作製する方法は当業で公知である。例えば、米国特許第6,306,393号を参照されたい。インターロイキン−2部分を含む抗体融合タンパク質については、Boleti et al.,Ann.Oncol.6:945(1995),Nicolet et al.,Cancer Gene Ther.2:161(1995),Becker et al.,Proc.Nat'l Acad.Sci.USA 93:7826(1996),Hank et al.,Clin.Cancer Res.2:1951(1996)、およびHu et al.,Cancer Res.56:4998(1996)に記載されている。さらに、Yang et al.,(Hum.Antibodies Hybridomas 6:129(1995))は、F(ab')断片及び腫瘍壊死因子α部分を含む融合タンパク質について記載している。抗体融合タンパク質のさらなる例が、Pastan et al,Nat.Reviews Cancer 6:559−65(2006)に記載されている。
組換え分子が1つ以上の抗体成分および毒素または化学療法剤を含む抗体−毒素融合タンパク質を作製する方法も、当業者に公知である。例えば、抗体−緑膿菌外毒素A融合タンパク質については、ChaudharyらのNature 339:394(1989)、BrinkmannらのProc.Nat'l Acad.Sci.USA 88:8616(1991)、BatraらのProc.Nat'l Acad.Sci.USA 89:5867(1992)、FriedmanらのJ.Immunol.150:3054(1993)、WelsらのInt.J.Can.60:137(1995)、FominayaらのJ.Biol.Chem.271:10560(1996)、KuanらのBiochemistry 35:2872(1996)、およびSchmidtらのInt.J.Can.65:538(1996)に記載された。ジフテリア毒素部分を含む抗体−毒素融合タンパク質については、KreitmanらのLeukemia 7:553(1993)、NichollsらのJ.Biol.Chem.268:5302(1993)、ThompsonらのJ.Biol.Chem.270:28037(1995)、およびValleraらのBlood 88:2342(1996)に記載された。DeonarainらのTumor Targeting 1:177(1995)は、RNase部分を有する抗体−毒素融合タンパク質について記載しているが、LinardouらのCell Biophys.24−25:243(1994)は、DNaseI成分を含む抗体−毒素融合タンパク質を産生した。WangらのAbstracts of the 209th ACS National Meeting,Anaheim,Calif.,Apr.2−6,1995,Part 1,BIOT005の抗体−毒素融合タンパク質においては、毒素部分としてゲロニンを用いた。さらなる例として、DohlstenらのProc.Nat'l Acad.Sci.USA 91:8945(1994)は、ブドウ球菌エンテロトキシン−Aを含む抗体−毒素融合タンパク質を報告した。
このような融合タンパク質の調製に適切に用いられる毒素の例として、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ、DNaseI、ブドウ球菌エンテロトキシン−A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリン毒素(diphtherin toxin)、緑膿菌外毒素、および緑膿菌内毒素が挙げられる。例えば、PastanらのCell 47:641(1986)、およびGoldenberg,CA−A Cancer Journal for Clinicians 44:43(1994)を参照されたい。他の適切な毒素が当業者に公知である。
本発明の抗体はまた、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤、WO81/01145参照)を活性のある抗癌剤に変換するプロドラッグ活性化酵素へ抗体を結合させることによって、ADEPTにおいて用いることができる。例えば、WO88/07378および米国特許第4,975,278号を参照されたい。
ADEPTに有用な免疫複合体の酵素成分には、酵素をより活性のある細胞傷害性形態に変換するような方法でプロドラッグに作用することができる任意の酵素が含まれる。
本発明に有用な酵素には、アルカリホスファターゼ、アリールスルファターゼ、シトシンデアミナーゼ、5−フルオロウラシル、セラチアプロテアーゼなどのプロテアーゼ、サーモリシン、スブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(カテプシンBおよびLなど)、D−アラニルカルボキシペプチダーゼ、βガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼなどの炭水化物分解酵素、β−ラクタマーゼ、ペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼなどのペニシリンアミダーゼが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、当業でアブザイムとしても知られる酵素活性を有する抗体を用いて、本発明のプロドラッグを遊離活性剤に変換することができる(例えば、Massey,Nature 328:457−458(1987)参照)。アブザイムを腫瘍細胞集団に送達するための抗体−アブザイム複合体は、本明細書に記載の通りに調製することができる。
上記の酵素は、上記に記載のヘテロ二機能性架橋試薬の使用などの当業で公知の技術によって抗体に共有結合することができる。もう1つの方法として、本発明の酵素の少なくとも機能的に活性のある部分と連結した本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域を含む融合タンパク質は、当業で公知の組換えDNA技術を用いて構築することができる(例えば、Neuberger et al.,Nature 312:604−608(1984)参照)。
医薬組成物の処方
本発明のポリペプチド結合剤をヒトまたは試験哺乳類に投与するために、1つ以上の無菌の薬学的に許容される担体を含む無菌の組成物にこのポリペプチド結合剤を処方することが好ましい。「薬学的にまたは薬理学的に許容される」という表現は、以下に記載の当業で公知の経路を用いて投与した時に、アレルギー反応または他の有害反応を引き起こさない分子実体および組成物を表す。「薬学的に許容される担体」には、いずれかのおよび全ての臨床的に有用な溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤などが含まれる。
このポリペプチド結合剤は、非経口投与、皮下投与、腹腔内投与、肺内投与、鼻腔内投与、ならびに局所療法が望まれる場合、病巣内投与を含む任意の適切な手段によって投与される。非経口注入には、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮内投与または皮下投与が含まれる。好ましくは、注射によって、最も好ましくは、静脈注射または皮下注射によって投薬は与えられ、ある程度、投与が短期かまたは慢性かどうかによって決まる。特に、経皮投与、経粘膜投与、直腸投与、経口投与、または例えば、所望の部位の近くに設置したカテーテルを経る局所投与(local administration)を含む他の投与法が考えられる。
有効成分として本発明のポリペプチド結合剤を含む本発明の医薬組成物は、投与経路に応じて、無菌の薬学的に許容される担体または添加剤を含んでもよい。このような担体または添加剤の例として、水、薬学的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、および薬学的に許容される界面活性剤などが挙げられる。必要に応じて、本発明の投薬形態に応じて、使用する添加剤を上記のものまたはそれらの組み合わせから選択するが、これらに限定されない。溶液またはエマルションにとって適切な担体には、例えば、生理食塩水および緩衝培地を含む水性溶液もしくはアルコール性/水性溶液、エマルションまたは懸濁液が含まれる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル溶液または固定油が含まれ得る。静脈媒体には、様々な添加剤、防腐剤、流体、栄養補液または電解質補液が含まれ得る。様々な水性担体は適切な、例えば、無菌のリン酸緩衝食塩水溶液、静菌水、水、緩衝水、0.4%生理食塩水、および0.3%グリシンなどであり、簡単な化学修飾などが行われたアルブミン、リポタンパク質、グロブリンなどの安定性を増加させる他のタンパク質を含んでもよい。
このポリペプチド結合剤の治療製剤を、所望の純度を有するポリペプチド結合剤と、任意の生理的に許容される担体、賦形剤または安定剤とを混合することによって(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で保存用に調製する。許容される担体、賦形剤または安定剤は、用いられる投薬量および濃度において受容者に無毒であり、リン酸、クエン酸、コハク酸および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール、アルキルパラベン(例えば、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン)、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン);単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤(例えば、EDTA);糖(例えば、ショ糖、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトール);塩を形成する対イオン(例えば、ナトリウム);金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);および/または非イオン性界面活性剤(例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG))を含む。
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術または界面重合よって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルもしくはゼラチン−マイクロカプセル、およびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド性薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)中に、またはマクロエマルション中に封入されてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
インビボ投与に使用する製剤は無菌でなければならない。これは、無菌の濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
これらの製剤中のポリペプチド結合剤の濃度は、広範に、例えば、約0.5重量%未満、通常、約1重量%または少なくとも約1重量%〜15重量%もしくは20重量%程度まで変化し得、選択される特定の投与法に従って、主として、液量、粘性などに基づいて選択される。それゆえに、非経口注射用の典型的な医薬組成物は、1mlの無菌の緩衝用水、および50mgのポリペプチド結合剤を含むように作製され得る。静脈内注射用の典型的な組成物は、250mlの無菌のリンゲル溶液、および150mgのポリペプチド結合剤を含むように作製され得る。非経口投与可能な組成物を調製する実際の方法は、当業者に公知であるか、または明らかであり、例えば、Remington's Pharmaceutical Science,15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1980)に詳細に記載されている。ポリペプチド結合剤の効果的な投薬量は、1投与につき体重1kgあたり0.01mg〜1000mgの範囲内にある。
この医薬組成物は、無菌の注射可能な水性懸濁液の形態、無菌の注射可能な油性懸濁液の形態、無菌の注射可能な分散剤の形態、または無菌の注射可能な溶液もしくは分散剤の即時調製用の無菌の粉末形態であってもよい。この懸濁液は、上で述べたそれらの適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いる既知の技術に従って処方され得る。無菌の注射可能な製剤は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液のような、無毒の、非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液であってもよい。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体のポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、植物油、リンゲル溶液および等張の塩化ナトリウム溶液を含む溶媒または分散媒であり得る。さらに、無菌の、固定油は、溶媒または分散媒として従来法で用いられる。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性の固定油を用いてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射物質の調製に使用できる。
全ての場合において、この形態は無菌でなければならず、かつ容易な注射可能性(syringability)が存在する程度に流動体でなければならない。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合には必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。これは、製造および保存条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。微生物作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合において、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが望ましい。注射可能な組成物の吸収の延長は、吸収遅延剤の組成物、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンにおける使用によってもたらされ得る。
投与に有用な組成物を取り込みまたは吸収の促進剤で処方し、それらの有効性を高めることができる。このような促進剤には、例えば、サリチル酸、グリココール酸/リノール酸、グリコール酸、アプロチニン、バシトラシン、SDS、およびカプリン酸などが含まれる。例えば、Fix(J.Pharm.Sci.,85:1282−1285(1996))and Oliyai and Stella(Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.,32:521−544(1993))を参照されたい。
生物物理学的アッセイ
複雑な生物学的事象は、統計力学、熱力学および化学反応速度論の観点から理解され得る相互作用単位のシステムとそれらの事象をみなす分子生物学的アプローチにより調べることができる。
一般に、核磁気共鳴(NMR)、等温滴定熱量測定、動態光散乱、表面プラズモン共鳴、二重偏光干渉測定を用いて、化合物が試験抗原に効果的に結合するかどうか、結合の化学量論、任意の関連した立体構造変化を評価し、無差別阻害剤を同定する(例えば、Correia J.J&Detrich H.W.(eds)"Biophysical Tools for Biologists vol.2."Methods in Cell Biol 89(2)(2008)参照)。
蛍光画像処理技術、および電子顕微鏡、X線結晶解析、NMR分光法および原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、生物学的に重要な構造を可視化する場合も多い。構造の立体構造変化は、二重偏光干渉測定および円偏光二色性などの技術を用いて測定することができる。光ピンセットまたはAFMを用いる分子の直接操作を用いて、力および距離がナノスケールである生物学的事象を監視することもできる。
原子間力顕微鏡、バイオホトニクス、バイオセンサー、バイオエレクトロニクス、カルシウムイメージング、熱量測定、円偏光二色性、低温生物学、二重偏光干渉測定、電気生理学、蛍光、顕微鏡観察、神経画像処理、中性子スピンエコー分光法、パッチクランプ法、核磁気共鳴分光法、X線結晶解析を含む多くの技術が、生物物理学における使用に利用できる。特定の実施形態において、本発明のアッセイは、検出可能な部分を用い得る。この検出可能な部分は、放射性シグナル、発色性シグナル、発光シグナル、または蛍光シグナルなどの測定可能なシグナルを直接的または間接的に生成することができる任意の1つであり得、これらを用いて、試料中の結合した検出可能な部分または標識の量を定量化することができる。当業で公知の検出可能な標識には、H、14C、32P、35S、または125Iなどの放射性同位体、電気化学発光標識(例えば、基質などと組み合わせたルテニウム(Ru)ベースの触媒)、発光標識もしくは生物発光標識(例えば、ユーロピウム、バナジウム)、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、もしくはルシフェリン酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、もしくは西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素)などの蛍光化合物もしくは化学発光化合物、コロイド金、色ガラスもしくはプラスチックビーズ(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)などの比色分析、常磁性原子、磁化剤、電子密度の高い試薬、蛍光色素を含むナノビーズもしくはマイクロビーズ、ナノ結晶、量子ドット、量子ビーズ、ナノタグ、蛍光標識を有するデンドリマー、マイクロトランスポンダー、電子供与分子もしくは分子構造、または光反射粒子が含まれる。マイクロ粒子はナノ結晶または量子ドットであり得る。ナノ結晶は光の光子を吸収し、その後、異なる波長で光子を再発光する物質(フルオロフォア)である。さらに、追加の蛍光標識または二次抗体はナノ結晶に結合していてもよい。ナノ結晶は、インビトロジェンおよびエビデントテクノロジー社(トロイ、ニューヨーク)などの供給元から市販されている。他の標識には、紫外線を照射した時に、生成物3−β−D−リボフラノシル−2,7−ジオキソピリド[2,3−d]ピリミジンを産生する非蛍光分子であるE)−5−[2−(メトキシカルボニル)エテニル]シチジンが含まれ、これは強力な蛍光シグナルを示す。バーコード標識については、米国特許公開第20070037195号に記載されている。
競合結合アッセイ、直接または間接サンドイッチアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、電気免疫測定法(electroimmunoassay)、表面プラズモン共鳴(SPR)、およびナノ粒子由来の技術などの当業で公知の様々なアッセイ法を、本発明で用いることができる。
競合結合アッセイは、標識された標準物質(例えば、このポリペプチド結合剤が結合する抗原またはその断片)のポリペプチド結合剤への結合に対して、試験試料中の抗原と競合する能力に頼る。試験試料中の抗原の量は、抗体に結合する標準物質の量に反比例する。結合する標準物質の量の決定を促進するために、典型的には、競合前または競合後に抗体を不溶化し、その結果、結合抗原を非結合抗原と都合よく分けることができる。別の実施形態において、競合結合アッセイは、標識されたポリペプチド結合剤の抗原またはその断片への結合に対して、非標識ポリペプチド結合剤と競合する能力を測定する。
サンドイッチアッセイは、典型的には、それぞれ、検出される、かつ/または定量化されるタンパク質の異なる免疫原性部分、すなわちエピトープに結合することができる2つの抗体の使用を含む。サンドイッチアッセイにおいて、試験試料中の検体は、典型的には、固相に固定された第1のポリペプチド結合剤に結合し、その後、第2のポリペプチド結合剤がこの検体に結合し、不溶性の3部構成の複合体を形成する。例えば、米国特許第4,376,110号を参照されたい。この第2のポリペプチド結合剤は、それ自体、検出可能な部分で標識され得る(直接サンドイッチアッセイ)か、検出可能な部分で標識される抗免疫グロブリン抗体を用いて測定され得る(間接サンドイッチアッセイ)。例えば、サンドイッチアッセイの1種類は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)であり、この場合において、検出可能な部分は酵素である。例えば、chapter 18,Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,eds.,John Wiley&Sons,New YorK,NY(1995)を参照されたい。
さらに別のアッセイ法の例として、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)発光が挙げられる。例えば、1つの化合物をFRET供与分子で標識し、その結合パートナーをFRET受容分子で標識するか、またはその逆でもよい。これらの結合パートナー間で結合が生じた時、FRET供与分子およびFRET受容分子は接近し、特定の波長で蛍光を発する。狭い帯域通過フィルターを用いて、その標識の波長を除く全ての波長を遮断することができる。FRET分子対は当業で(例えば、インビトロジェン社から)市販されており、メーカーの取扱説明書に従って用いることができる。FRET発光を、CCDカメラなどの光学画像処理技術を用いて検出する。
さらに別のアッセイ法の例として、例えば、WO/06086883に記載のバイオセンサーを用いる生物発光共鳴エネルギー発光(BRET)が挙げられる。
アッセイの別の種類は電子供与体で標識することを含む。1つの分子を電子供与体で標識し、相互作用分子を電気接点に結合させるか、またはその逆でもよい。これらの結合パートナー間で結合が生じた時、この標識はこの電気接点に電子を供与する。例えば、電気免疫測定法の方法について記載しているGhindilis,Biochem Soc Trans.28:84−9,(2000)およびDai et al.,Cancer Detect Prev.29:233−40(2005)を参照されたい。その後、この電気接点は、AD(アナログからデジタル)変換器によって読み取られ、定量化される。カウントされる電子の数が多いほど、より多い相互作用が起きる。
単一分子検出ができる標識の一実施形態は、Schultz et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:996−1001(2000)(参照により本明細書に組込まれる)に記載の光学レポーターとしてのプラズモン−共鳴分子(PRP)の使用である。PRPは、例えば、直径40〜100nmの金属ナノ粒子であり、金属の伝導電子の集団共鳴により光を散乱する(表面プラズモン共鳴)。ナノ粒子と関係するプラズモン共鳴の大きさ、ピーク波長、およびスペクトルバンド幅は、粒子のサイズ、形、および物質組成ならびに局所環境によって決まる。調製中にこれらのパラメータに影響を与えることにより、スペクトルの可視範囲のどこかに散乱ピークを有するPRPを形成することができる。球状のPRPについては、ピーク散乱波長と散乱効率の両方は半径が大きくなるにつれて増加し、異なる色の標識を生成する手段を提供する。例えば、銀の球の集団は、調製中に球の最終半径を調節することによって、そのピーク散乱波長が目標波長の数ナノメータの範囲内であるように再生可能な方法で調製することができる。PRPは明るいが、それでもナノサイズ化されるので、PRPは単一分子検出の指標として用いられる。すなわち、視野内に結合PRPが存在することは、単一結合事象を示し得る。表面プラズモン共鳴検出器システムの例として、BIAcoreアッセイシステムが挙げられる。例えば、Malmquist,J Molec Recognition,7:1−7(1994)を参照されたい。
分子相互作用はナノ粒子由来の技術を用いて検出することもできる。例えば、金ナノ粒子のクエンチングについて記載しているAo et al.,Anal Chem.78:1104−6(2006)、抗体検出におけるSiO(2)/Auナノ粒子表面について記載しているTang et al.,Biosens Bioelectron.2005 Nov 30、および固体基質−室温リン光免疫測定法(SS−RTP−IA)に使用するためのジブロモフルオレセインを含む二酸化ケイ素ナノ粒子について記載しているLieu et al.,J Immunol Methods.307:34−40(2005)を参照されたい。
結合親和性または結合速度パラメータの前述の測定のいずれかを、第1の成分、第2の成分およびポリペプチド結合剤の1つ以上が溶液中にあるアッセイか、第1の成分、第2の成分およびポリペプチド結合剤の1つ以上が固相に(共有結合または非共有結合で)結合しているアッセイか、または第1の成分、第2の成分およびポリペプチド結合剤の1つ以上が細胞表面で発現しているアッセイで行うことができる。この第1および/または第2の成分は、それぞれそれら自体、複数の化合物の複合体であってもよい。
溶液相の生物物理学的アッセイ
いくつかの実施形態において、動態調節因子を、溶液相の生物物理学的アッセイを用いて同定することができる。「溶液相」アッセイとは、測定される相互作用が液体中で起こるアッセイを意味する。溶液親和性アッセイは、平衡状態で相互作用の(「親和性」または「K」とも称される)平衡解離定数を測定する有用な手段である。調節因子が複合体(例えば、受容体/リガンド相互作用)を形成するタンパク質に結合することができる場合、この調節因子はその相互作用の親和性を変え、その後、溶液親和性アッセイを用いて、動態調節因子の存在および非存在下でこの相互作用の親和性を決定することができる。溶液親和性アッセイを用いて、複合体成分の固定濃度範囲にわたって、この調節因子に対する用量反応を測定することもできる。
本開示は、平衡溶液親和性測定のための新規の適用を提供する。このようなアッセイは、標的−シグナル伝達パートナー相互作用の親和性を差次的に調節するリード候補の能力に基づいて、リード候補の特徴付けおよび層化を可能にする。抑制剤または立体障害を起こす薬剤(steric−hindering drug)によって引き起こされた親和性の低下を監視するこれまでの研究は、結合パートナーの1つと前もって複合体を形成させた過剰の薬剤を利用し、典型的には、表面プラズモン共鳴(SPR)技術または放射性リガンドアッセイ技術を用いて行われてきた。いくつかの態様において、本開示は、リガンドおよび受容体または他のタンパク質結合パートナーがそれらの複合体を形成した時にのみ存在するエピトープに結合する薬剤の使用を可能にさせる。
実施例1では、タンパク質−タンパク質複合体モデルを用いる平衡溶液親和性測定の方法について記載する。全ての可逆的な結合相互作用は、理論的には、薬剤によって親和性が調節され、記載した形式と非常に似ているアッセイで監視できる。このアッセイ形式におけるリガンドおよび受容体の役割は転換することができ、そうすることで、このシステムが正確に機能していることを検証する機能を果たす。単に受容体−リガンド対だけでなく、相互作用結合パートナーの任意の対を用いることができる。
このような技術は、調べられている遊離(結合していない)結合パートナーの定量化のための高感度法として役立つ。この分析が固定濃度の一方の結合パートナー(B)を用いて行われ、他方の結合パートナー(A)を、少なくとも相互作用のK値を1ログ上回るおよび下回る広い濃度範囲にわたって変化させる時、結合していないBの量を測定し、相互作用のK値を与えるモデルにデータを適合させることができる。この実験は様々な濃度の動態調節剤の存在下および非存在下で行うことができ、親和性増強の詳細な特徴付けを可能にさせる。興味の薬剤ではなく、遊離結合パートナーBを測定することによって、A−B相互作用親和性の監視を、薬剤−複合体相互作用から独立して行うことができる。
このようなアッセイを用いて、結合相互作用の親和性を調節する薬剤をスクリーニングすることができる。これは、薬剤治療の開発およびより高感度の診断アッセイおよび分析アッセイに適用することができる。さらに、これらのアッセイは、親和性調節の程度を詳細に特徴づけることを可能にし、さらに複合体が形成した後にのみ作りだされるエピトープを認識する薬剤を許容する。本開示は、親和性調節における複数の薬剤候補の効力について、複数の薬剤候補の層化および順位づけを可能にする。
固相の生物物理学的アッセイ
いくつかの実施形態において、動態調節因子を固相の生物物理学的アッセイを用いて同定することができる。「固相」とは、本発明の試験化合物または複合体成分が付着することができる非水性の不活性基質を意味する。本明細書に包含される固相の例として、部分的にまたは全体的にガラス(例えば、調節された細孔ガラス)、多糖(例えば、アガロース)、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、シリコン金属、金属合金、アノポール(anopol)、ポリマー、ナイロン、またはタンパク質チップなどのマイクロアレイが挙げられる。特定の実施形態において、状況によって、固相には、アッセイプレートの壁、フィルター、膜、クロマトグラフィー樹脂、またはビーズが含まれ得る。この用語には、米国特許第4,275,149号に記載の粒子などの別々の粒子の不連続固相も含まれる。
いくつかの実施形態において、試験化合物または複合体成分を、選択的な結合対(例えば、ビオチンとアビジン、グルタチオンとGST、ヒスチジンタグとNi)を介した共有結合または間接的な付着を含むが、これらに限定されない当業で公知の任意の手段を用いて固相に付着または結合させる。
マイクロプレート、ビーズ、樹脂、チップなどを含むいくつかの固相アッセイ形式が当業で公知である。例えば、FMAT(商標)(fluorimetric microvolume assay technology;アプライドバイオシステムズ社、フォスターシティ、カリフォルニア州)システムは、蛍光標識リガンドまたはビオチン化リガンドのいずれか一方を用いて、ビーズに結合した細胞または受容体を用いることができる。これは、完全に均質なアッセイ形式として実行される可能性がある。実質的に同一の形式を、類似のビーズベースのシステムを用いるLuminex(商標)システム(ルミネックス社、オースティン、テキサス州)を用いて利用することができる。FMAT(商標)アッセイ形式とLuminex(商標)アッセイ形式の主な違いは検出法にある。Luminex(商標)プラットホームは光学フローセルを通してビーズを流し、これらのビーズから蛍光発光を測定し、FMAT(商標)は、マイクロプレートの壁の基盤に非常に近い狭い平面で蛍光を画像化する。別の方法として、電気化学発光システムが、親和性調節因子が高感度で、同種の能力を有するので、親和性調節因子のスクリーニングに容易に適用できる。Tricorder(商標)(バイオベリス社、ワシントンD.C.)などのこれらのシステムは、ルテニウム由来の電気化学発光検出技術を用いる。このシステムに最適化され得るアッセイ形式は、他のシステムに非常に類似しているが、主な違いは電気化学発光標識技術の使用および検出器具の使用である。
適切なアッセイには、標識された(例えば、ビオチン化した)標的のその結合パートナーに対する親和性を相互作用調節因子が調節するのを検出するように設計されたマイクロプレートベースのアッセイが含まれる。このアッセイは、均質か、または半均質であり得る。均質アッセイは、全ての成分を混合し、インキュベートした後分析するアッセイである。半均質アッセイは、反応の大部分が複合体の混合物として生じるが、洗浄ステップが最終試薬および検体の付加に先立って必要とされるアッセイであり、各成分を加え、その後、次の成分を加える前に洗浄する典型的な段階的集合サンドイッチアッセイと大いに異なる。いくつかの実施形態において、このアッセイは免疫測定法である。特定の実施形態において、このアッセイは、半均質の酵素免疫測定法(EIA)であり、EIAプレートに捕獲された標識(例えば、ビオチン化)検体の量を読み出し情報として用いることによって監視される結合パートナーの平衡結合定数の調節を可能にする。平衡、またはほとんど平衡環境における飽和をはるかに下回る標識検体の濃度において、平衡親和性定数の変化は、おおよそ、マイクロプレート上に保持されている検体の変化をもたらす。
いくつかの実施形態において、動態調節因子のアッセイを以下のように構築することができる。検体の結合パートナーを、EIAプレートなどのマイクロプレートに固定する。その後、このプレートを無関係のタンパク質または遮断剤(例えば、牛血清アルブミン、カゼイン、ChemiBlock(商標)(ミリポア社、ビレリカ、マサチューセッツ州))、無関係のIgGなど、または遮断剤の任意の組み合わせ)でブロッキングする。ブロッキング後、このプレートを洗浄し、酵素またはフルオロフォアなどの検出可能な部分に結合する調節因子、標識検体(例えば、ビオチン化検体)および2次検出試薬(例えば、ストレプトアビジン)の混合物をウェルに加える。様々な比色分析基質、蛍光基質または発光基質に作用する、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼなどの酵素を含む様々な検出可能な部分が当業で公知である。ユウロピウムは時間分解蛍光検出に用いられ、フルオロフォアは直接蛍光に用いられ得る。様々な標識を有する抗リガンド検出抗体も利用して、用いられる抗体が受容体結合リガンドを検出することができる限り、ビオチン化リガンドの必要性を避けることもできる。他の実施形態において、フルオロフォアまたは比色分析酵素に直接結合するリガンドを用いることができる。
一般に、プレートを数時間インキュベートし、様々な相互作用が平衡に達するようにする。インキュベーション後、このプレートを洗浄し、レポーター基質(例えば、比色分析基質、蛍光基質または発光基質)を用いてすぐに発色させる。このプレートに捕獲される標識検体が多いほど、2次検出試薬(例えば、ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ)のシグナルが高くなる。調節因子が相互作用の親和性を増加させる場合、動態調節因子の非存在下の時よりも、プレートに結合する標識(例えば、ビオチン化)検体の量は多くなる。調節因子が相互作用の親和性を減少させる場合、動態調節因子の非存在下の時よりも、プレートに結合する標識(例えば、ビオチン化)検体の量は少なくなる。
マイクロプレートアッセイを用いて、いくつかの方法で親和性調節を監視することができる。いくつかの実施形態において、固定濃度のポリペプチド結合剤を用いて、標識検体を様々なウェルに滴定する。これは、動態調節因子が存在しない場合の同じ検体滴定曲線に対する滴定曲線のシフトとして親和性調節効果を示す。
いくつかの実施形態において、標識検体の滴定を調節因子なしで行った時点で、単一標識検体濃度アッセイに用いる濃度を選択することができる。この濃度は、検体の滴定曲線の底のすぐ上に収まるべきである(EC10−20)。これにより、いかなるリガンド−受容体相互作用の親和性の増強調節も、このアッセイのシグナルに容易に観察できるシフトを作り出すことができるようにする。標識検体の高感度濃度をひとたび決定すると、このアッセイを、粗調節因子試料または精製調節因子試料を親和性調節効果について1点分析(single point analysis)で試験することができるスクリーニング様式で行うことができる。標識検体の固定濃度での調節因子の滴定を伴うアッセイを行い、調節因子効果の用量反応を示すこともできる。
いくつかの実施形態において、検体分子の標識(例えば、ビオチン化)は、その分子の結合能または安定性に影響し得る。その場合、利用非標識検体を試験相/平衡相で用いる別のアッセイ形式を使用することができる。試料を検出前に洗浄する場合、最適化量の標識検体を短時間加え、洗浄した後、検出するステップを加えることができる。これは、平衡相で結合した検体が標識検体の競合因子として作用することを可能にする。その後、平衡ステップで事前に結合させた非標識検体の量が高いほど、親和性増強抗体は低いアッセイシグナルをもたらし、プレートに結合する標識検体の能力を低下させる。2次レポーター分子を用いて、またはシグナルを増強させる滴定検出試薬の添加による半均質アッセイの他の形態も開発することができる。これらの種類の変更は当業者に公知である。固相親和性アッセイの例を実施例2に記載する。
細胞ベースの生物物理学的アッセイ
いくつかの実施形態において、動態調節因子を細胞ベースの生物物理学的アッセイを用いて同定することができる。「細胞ベース」とは、試験されるシグナル伝達複合体成分の少なくとも1つが細胞の表面に存在するアッセイを意味する。このようなアッセイは、Gタンパク質共役受容体(GPCR、例えば、ムスカリン性アセチルコリン受容体、アデノシン受容体、アドレナリン受容体、GABA受容体、アンジオテンシン受容体、カンナボイド受容体(cannaboid receptor)、コレシストキニン受容体、ドーパミン受容体、グルカゴン受容体、代謝型グルタミン酸受容体、ヒスタミン受容体、嗅覚受容体、オピオイド受容体、ロドプシン受容体、セクレチン受容体、セロトニン受容体、ソマトスタチン受容体、カルシウム感知受容体、ケモカイン受容体、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)受容体);受容体型チロシンキナーゼ(例えば、エリスロポエチン受容体、インスリン受容体、インスリン様成長因子1受容体、Eph受容体);グアニリルシクラーゼ受容体(例えば、ナトリウム利尿ペプチドの受容体、グアニリン受容体);およびイオンチャネル型受容体(例えば、ニコチン性アセチルコリン受容体、グリシン受容体、5−HT受容体、P2X受容体)を含む膜貫通受容体などの立体構造的に影響を受けやすいタンパク質が関与する結合相互作用の調節因子を検出するのに特に好都合であり得る。多数のヒト細胞膜受容体が、スタンフォード大学のグループによって維持されているHuman Plasma Membrane Receptomeデータベースにまとめられている(Ben−Shlomo et al.,"Signaling Receptome:A Genomic and Evolutionary Perspective of Plasma Membrane Receptors Involved in Signal Transduction"(Science Signaling STKE,Vol.2003,Issue 187,pp.re9,17 June 2003);Ben−Shlomo et al.,Molecular Endocrinology 21(8):2009−2014も参照)。この出版物およびデータベースのそれぞれのエントリーは、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。受容体型チロシンキナーゼ(Grassot et al.,2003,"RTKdb:database of receptor tyrosine kinase"Nucleic Acids Res 31:353−358)、Gタンパク質共役受容体(Horn et al.,2003,"GPCRDB information system for G protein−coupled receptors"Nucleic Acids Res 31:294−297)、嗅覚受容体(Skoufos et al.,2000,"Olfactory receptor database:a sensory chemoreceptor resource"Nucleic Acids Res 28:341−343)、チロトロピン受容体変異(Fuhrer et al.,2003"The thyrotropin receptor mutation database:update 2003"Thyroid 13:1123−1126)、核内受容体(Patterson et al.,1994"The androgen receptor gene mutations database"Nucleic Acids Res 22:3560−3562;Gottlieb et al.,1998,"The androgen receptor gene mutations database"Nucleic Acids Res 26:234−238)、および内分泌撹乱物質受容体(Nakata et al.,1999,"Development of the receptor database(RDB):application to the endocrine disruptor problem"Bioinformatics 15:544−552)のデータベースの追加的データベースが知られる。これらの出版物およびデータベースのそれぞれのエントリーは、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のグループによって維持されるLigand−Receptor Partnersデータベース(http://dip.doe−mbi.ucla.edu/dip/DLRP.cgi)は、ケモカイン、TNF、線維芽細胞増殖因子(FGF)、およびTGFβのリガンドの受容体のサブグループを含む。この出版物およびデータベースのそれぞれのエントリーは、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。Alliance for Cellular Signaling databaseは、多くのシグナル伝達遺伝子の広範囲の情報を含む。この出版物およびデータベースのそれぞれのエントリーは、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。同様に、reactome database(Joshi−Tope et al.,2005"Reactome:a knowledgebase of biological pathways"Nucleic Acids Res 33:D428−D432)およびHuman Protein Reference Database(Peri et al.,2003,"Development of human protein reference database as an initial platform for approaching systems biology in humans,"Genome Res 13:2363−2371)は、ヒト生物学におけるコア経路および反応のタンパク質−タンパク質相互作用のキュレーションされた情報源を表す。これらの出版物およびデータベースのそれぞれの項目は、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。
調節されるシグナル伝達複合体の1成分が膜の表面または膜内に存在する限り、様々な細胞型を用いることができる。これらの細胞は、内在性遺伝子または外来遺伝子のシグナル伝達複合体成分を発現することができる。外来遺伝子を宿主細胞に導入し、その結果これらの宿主細胞によってその遺伝子産物を発現させる方法は、当業で公知である(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Edition,Cold Spring Harbor,New York(2001)参照)。付着細胞または浮遊細胞を用いることができる。初代細胞培養、細胞株、または遺伝子工学処理をした細胞株を用いることができる。適切な細胞型には、CHO、IM−9、HEK 293、および3T3が含まれ得る。
いくつかのアッセイ形式を使用することができる。いくつかの実施形態において、受容体占有アッセイを用いることができる。特定の実施形態において、任意の結合リガンドを除去するために、細胞を血清飢餓状態にし、その後、リガンドの存在下または非存在下のいずれか一方でプレインキュベートした細胞に結合する調節因子を測定する。調節因子の結合は、任意の適切な検出システムを用いて検出することができる。例えば、調節因子を親和性タグまたはエピトープタグでタグを付け、金属イオン、グルタチオン、抗タグ抗体などの同族結合種で検出することができる。適切なタグは当業で公知であり、c−myc、FLAG、ポリ−His、V5、HA、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、共有結合性だが解離できるNorpDペプチド(covalent yet dissociable NorpD peptide)(CYD)、strep−tag、タンパク質Cの重鎖(HPC)、マルトース結合タンパク質(MBP)を含む。もう1つ方法として、調節因子を、比色分析酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、蛍光タンパク質(例えば、フィコエリトリン)、蛍光色素(例えば、Alexa Fluor(登録商標)、インビトロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)または他の適切な薬剤などの検出剤に結合させた特異的抗体、例えば、種特異的抗体または抗Fc抗体で検出することができる。正の動態調節因子は、リガンドに暴露されなかった細胞よりも、リガンドに暴露された細胞に対して高い結合親和性を示すことが期待される。負の動態調節因子は、リガンドに暴露されなかった細胞よりも、リガンドに暴露された細胞に対して低い結合親和性を示すことが期待される。受容体占有アッセイの例を実施例4に示す。
他の実施形態において、標識リガンドアッセイを用いて、試験ポリペプチド結合剤の存在下または非存在下で、リガンドの細胞への異なる結合を測定することができる。標識リガンド結合アッセイの例を実施例5に記載する。
シグナル伝達アッセイ
本開示の生物物理学的スクリーニングで同定された薬剤の正または負の調節活性を、試験ポリペプチド結合剤の存在下または非存在下におけるシグナル伝達のレベルを測定することによって確認することができる。
シグナル伝達は、細胞が1種類のシグナルまたは刺激を別のものに変える任意のプロセスを指す。細胞内シグナル伝達は、主として、カルシウム、脂溶性分子、例えば、ジアシルグリセロール、セラミド、エイコサノイド、リゾホスファチジン酸、一酸化窒素などのセカンドメッセンジャー分子によって行われる。したがって、セカンドメッセンジャーのレベルまたは位置の変化を用いて、シグナル伝達を測定することができる。
共通のシグナル伝達経路の例として以下のものが挙げられる:cAMP依存性経路(ヒトにおいて、cAMPはタンパク質キナーゼAを活性化することによって働く);MAPK/ERK経路(細胞内反応を細胞表面受容体への増殖因子の結合に結びつける経路);およびIP3/DAG経路(ホスホリパーゼCは、リン脂質のホスファチジルイノシトール4,5−二リン酸(PIP2)を切断し、ジアシルグリセロール(DAG)およびイノシトール1,4,5−三リン酸(IP3)をもたらす)。DAGは膜に結合したままとどまり、IP3は可溶性構造としてサイトゾルに放出される。その後、IP3はサイトゾルを通って拡散し、IP3受容体、特に、小胞体のカルシウムチャネルに結合する。これらのチャネルはカルシウムに特異的であり、カルシウムの通過のみを許す。これは、カルシウムのサイトゾル濃度を増加させ、細胞内変化のカスケードおよび活性をもたらす。さらに、カルシウムおよびDAGは共にタンパク質キナーゼCを活性化するように働き、続いて、他の分子をリン酸化し、細胞活性の変化をもたらす)。
シグナル伝達アッセイは、例えば、細胞タンパク質のレベル、位置、相互作用または翻訳後修飾を検出することができる。遺伝子発現を用いて、シグナル伝達を測定することもできる。
シグナル伝達複合体によって媒介されるシグナル伝達のレベルを測定する多数のアッセイが当業で利用できる。例えば、Dove,Nat.Methods 3:223−229(2006)を参照されたい。
アッセイの選択は、調節されるシグナル伝達経路の性質によってきまる。利用できるアッセイキットには、c−Fos、c−Jun、Gタンパク質、Gタンパク質キメラクローン、GPCR、NF−kB p50、NF−kB p50/p65、NF−kB p65、およびp38 MAPKをアッセイするキット;リン酸化スレオニンおよびリン酸化チロシン用などのリン酸化タンパク質アッセイキット;カルシウム、cAMP、cGMPおよびPIP3などのセカンドメッセンジャーをアッセイするキット;Cdc42、Rac、Rap、RasおよびRhoなどの低分子量GTP分解酵素をアッセイするキット;ならびにSTATアッセイキットが含まれる(例えば、www. biocompare.com参照)。利用できるキットには、対象の非リン酸化またはリン酸化タンパク質を検出するためのELISAおよびリン酸化部位特異的ELISA、細胞内成分を抽出する単離キット、多数の検出方法を利用する酵素アッセイ、ならびに標的アッセイが含まれる。アポトーシス、細胞骨格/細胞外基質、神経科学、一酸化窒素/細胞ストレス、タンパク質リン酸化と関係する経路などの経路内のシグナル伝達を測定するためのキットも利用できる(例えば、sigmaaldrich.com参照)。
シグナル伝達活性に対する試験化合物の効果を、単一リガンド、または試験化合物の濃度点にて測定することができる。あるいは、またはさらに、シグナル伝達アッセイを、複数のリガンドまたは試験化合物の濃度点を用いて行うことができる。
シグナル伝達を測定する例示的な方法には、カルシウム流出アッセイ、リン酸化アッセイ、遺伝子発現アッセイ、分子輸送アッセイ、および当業者に知られている他の方法が含まれるが、これらに限定されない。
細胞のシグナル伝達による細胞内カルシウムの変化を測定する方法は当業で公知である。例えば、Walsh et al.J.Biol.Chem.,283:16971−16984,2008およびJanas et al.,Clin Exp Immunol.139:439−446,2005を参照されたい。簡単に説明すると、最初に、インドメタシンなどの細胞内のカルシウム蓄積を阻害する薬剤、カルシウム結合の際に蛍光シグナルの変化により細胞内カルシウムの増加を報告するURA−2、FLUO−3、FLUO−4、カルシウム−3、カルシウム4、カルシウム5およびカルシウムグリーン−1/AM(Molecular Devices社、サニーベール、カリフォルニア州)、Rhod−4 NW (ABD Bioquest社、サニーベール、カリフォルニア州)などの蛍光色素、または細胞内カルシウムの上昇に反応して発光シグナルをもたらすバイオセンサー発光タンパク質、例えば、エクオリンおよびPHOTINA(登録商標)(Perkin Elmer社、ウォルサム、マサチューセッツ州)と共に適切な細胞を培養する。その後、細胞を本発明のポリペプチドと接触させ、細胞内カルシウムレベルの変化を、フローサイトメトリー、蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR)、共焦点蛍光顕微鏡、カルシウムチップ法(例えば、Cell Kinetics社、ロッド、イスラエル)または当業で公知の他のカルシウム検出法などの技術を用いて測定する。
チロシンまたはセリンリン酸化アッセイを用いて、受容体活性化を含む細胞経路の活性化を決定する場合も多く、リン酸化チロシンの検出法は当業で容易に利用できる。見本となるプロトコールは、例えば、Walsh et al.,J.Biol.Chem.,283:16971−16984,2008およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley&Sons,New York,N.Y.,Ch.18.4.1−18.4.7,1997に開示されている。適切な細胞を、細胞活性化を誘発するのに十分な時間、例えば、15〜30分間、本発明のポリペプチドと接触させ、これらの細胞を溶解し、タンパク質をSDS−PAGEゲルで分離する。その後、このゲルを抗リン酸化チロシン抗体または抗リン酸化セリン抗体で調べ、レベル、種類、およびタンパク質特異的リン酸化を化学発光などの当業の技術を用いて評価する。リン酸化の誘導も、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などのアッセイおよびMeso Scale Discovery社(ガイサーズバーグ、メリーランド州)から入手できるキットなどの他のマイクロプレートベースのアッセイ、またはBDバイオサイエンス社(サンノゼ、カリフォルニア州)もしくはミリポア社(ビレリカ、マサチューセッツ州)のフローサイトメトリーベースのアッセイにおいて、リン酸化チロシンまたはリン酸化セリンに特異的な抗体、ならびにリン酸化状態の受容体および/または他のタンパク質に特異的な抗体を用いて測定できる。
遺伝子発現を検出する方法が当業で公知である。本発明のポリペプチドと細胞を接触することによって誘導される遺伝子発現を、下流のシグナル伝達事象または対象の転写産物のmRNAのノザンブロット検出、遺伝子レポーターアッセイ、ディファレンシャルディスプレイ、サブトラクティブDNAアッセイおよび遺伝子発現プロファイリング(serial analysis of gene expression(SAGE))を含むが、これらに限定されない当業で公知の技術を用いて測定する(例えば、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York,N.Y.,Ch.4および25,1996,2001および2007参照)。さらに、遺伝子アレイ、例えば、GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0アレイは、本発明のポリペプチドと接触させた後に、細胞集団または対象における遺伝子発現レベルを測定するのに利用できる。
本発明のポリペプチドと細胞を接触させることによって誘導される分子輸送を、脂質ラフトアッセイ(lipid raft assay)および飲作用アッセイを含むが、これらに限定されない当業で公知の技術を用いてアッセイする。一実施形態において、シグナル誘導が可能なほど十分な時間、細胞を本発明のポリペプチドと接触させ、これらの細胞を溶解し、脂肪性物質または非脂肪性物質をショ糖密度勾配によって分離する。シグナル伝達タンパク質は、ショ糖密度勾配で分離した異なる脂質ラフト画分から単離することができ、シグナル伝達に影響を与える本発明のポリペプチドの能力を、本発明のポリペプチドとの接触前後に単離した脂質ラフトの膜結合タンパク質成分の変化によって測定する。例えば、Petrie et al.,J Immunol.165:1220−7,2000;Chamberlain et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.98:5619−24,2001;Janas et al.,Clin Exp Immunol.139:439−446,2005を参照されたい。飲作用および分子輸送を、[14C]ショ糖の取り込みを測定することによって電子顕微鏡を用いて(Chow et al.,The FASEB Journal.12:823−830,1998)、フローサイトメトリーを用いて、ならびに当業で公知の他の技術を用いて検出することができる。
リン酸化アッセイの例を実施例6に示す。
いくつかの態様において、生物物理学的スクリーニングを機能的スクリーニングと組み合わせ、動態調節特性のみを有する、すなわち、さらなるアンタゴニストもしくはアゴニスト特性をもたないポリペプチド結合剤を同定するか、または、さらにアゴニストもしくはアンタゴニスト特性を有する動態調節因子を同定する。動態調節特性およびアゴニスト特性の両方を有する薬物は、内在性標的の親和性および有効性の両方に影響を与えることよって、特定の標的に対する治療的介入の可能性のレパートリーを著しく拡大することができる。
既存の化合物から動態調節剤を産生する方法
任意のポリペプチド結合剤を本明細書に記載のアッセイで試験し、それらの動態調節特性を決定してもよい。一実施形態において、ポリペプチド結合剤が動態調節特性をもたないと決定する場合、異なるエピトープに結合し、動態調節効果を生み出す可能性の高い他のポリペプチド結合剤を取得するために、ポリペプチド結合剤を、免疫、パニングなどのためにその抗原との複合体中で用いてもよい。
親のポリペプチド結合剤の変異体を、当業者が知る任意の方法を用いて変異を導入するか、または結合を含む化学的誘導体化によって産生してもよい。その後、所望の動態調節特性を有する変異体を同定するために、これらの変異体を本明細書に開示されるアッセイでスクリーニングしてもよい。親のポリペプチド結合剤は動態調節活性をもっていなくてもよく、または好ましくは、いくつかの他の方法で増加、減少、また変化させることが望まれる既存の動態調節特性を有していてもよい。
親の薬物または薬物候補の改良型を生成する多くの方法が当業で利用できる。
アミノ酸配列変異体の調製
抗体またはポリペプチド結合剤の1、2、3、4、5、および/または6つのCDRを含む修飾されたポリペプチド組成物を作り、その際、抗原に対する特異性または親和性の増加をもたらすか、または標的とそのシグナル伝達パートナーとの間の結合親和性の調節の増加をもたらすように、CDRまたは非CDR領域を変更することが企図される。例えば、典型的には、抗体CDR内の部位を順番に、例えば、最初に保守的選択により置換し(例えば、疎水性アミノ酸を同一ではない疎水性アミノ酸と置換し)、その後、より異なる選択で置換する(例えば、疎水性アミノ酸を電荷アミノ酸と置換する)ことによって修飾し、その後、標的部位で欠失または挿入を行ってもよい。例えば、CDRを囲む保存されたフレームワーク配列を用いて、これらのコンセンサス配列と相補的なPCRプライマーを作製し、これらのプライマー領域の間に位置する抗原特異的CDR配列を増幅する。ヌクレオチド配列およびポリペプチド配列をクローニングし、発現させる技術は当業で十分に確立されている(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,New York(1989)参照)。増幅されたCDR配列を適切なプラスミドに連結する。1、2、3、4、5および/または6つのクローニングされたCDRを含むプラスミドは、任意に、このCDRに連結された追加のポリペプチドコード領域を含む。
修飾されたCDRを含むポリペプチド結合剤を、元の抗原に対する結合親和性についてスクリーニングする。さらに、抗体またはポリペプチドを、その抗原の活性を中和するその能力について試験する。例えば、本発明の抗体を、実施例に記載のとおりに分析し、標的の生物活性と干渉するそれらの能力を決定してもよい。
下記にさらに詳細に記載する保存的アミノ酸置換または非保存的アミノ酸置換によって、修飾を行ってもよい。「挿入」または「欠失」は、好ましくは、約1〜20個のアミノ酸、より好ましくは1〜10個のアミノ酸の範囲である。組換えDNA技術を用いて抗体ポリペプチド分子内のアミノ酸置換を体系的に行うことにより変異を導入し、活性について生じた組換え変異体をアッセイしてもよい。異なる種の核酸(可変位置)または高度に保存された領域(定常領域)において異なる部位で、核酸の変更を行うことができる。本発明に有用な抗体配列を変更する方法および抗体ポリペプチド組成物を発現させる方法を、以下により詳細に記載する。
アミノ酸配列挿入は、1残基〜100以上の残基を含むポリペプチドの長さのアミノ末端融合および/またはカルボキシ末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例として、N−末端メチオニル残基を有する抗体、またはエピトープタグもしくはサルベージ受容体エピトープと融合した(抗体断片を含む)抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異体には、例えば、N末端またはC末端にて、抗体の血中半減期を増加させるポリペプチドとの融合が含まれる。
「エピトープタグが付いた」という用語は、エピトープタグに融合した抗体を指す。エピトープタグポリペプチドは、それに対する抗体を作るためのエピトープを提供するのに十分な残基を有し、このポリペプチドが抗体の活性を干渉しないように十分短い。このエピトープタグは、好ましくは、十分に独特であり、その結果、それに対する抗体は他のエピトープと実質的に交差反応しない。一般に、適切なタグポリペプチドは少なくとも6個のアミノ酸残基、通常、約8〜50個の間のアミノ酸残基(好ましくは、約9〜30個の間の残基)を有する。例として、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)タグポリペプチドおよびその抗体12CA5(Field et al.,Mol.Cell.Biol.8:2159−2165(1988));c−mycタグおよび8F9抗体、3C7抗体、6E10抗体、G4抗体、B7抗体および9E10抗体(Evan et al.,Mol.Cell.Biol.5:3610−16(1985));単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体(Paborsky et al.,Protein Engineering 3:547−53(1990))が挙げられる。他の例示的なタグは、ポリヒスチジン配列、一般に、約6個のヒスチジン残基であり、ニッケルキレート化を用いて、そのようにタグで標識した化合物の単離を可能にする。当業で公知であり、日常的に用いられるFLAG(登録商標)タグ(イーストマンコダック社、ロチェスター、ニューヨーク州)などの他の標識およびタグは本発明に包含される。
本明細書で使用する「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子(例えば、IgG分子のインビボ血中半減期を増加させるのに関与するIgG、IgG、IgG、またはIgG)のFc領域のエピトープを指す。
変異体の別の種類はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、抗体分子の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、異なる残基がその場所に挿入されている。いずれの超可変領域もしくはCDR領域またはフレーム領域の中の置換変異誘発も企図される。保存的置換は、アミノ酸をそのクラスの別のメンバーと置換することを含む。非保存的置換は、これらのクラスの1つメンバーと別のクラスのメンバーで置換することを含む。
保存的アミノ酸置換を、関与する残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質における類似性に基づいて行う。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン(Ala、A)、ロイシン(Leu、L)、イソロイシン(Ile、I)、バリン(Val、V)、プロリン(Pro、P)、フェニルアラニン(Phe、F)、トリプトファン(Trp、W)、およびメチオニン(Met、M)が含まれ;極性があり、中性のアミノ酸には、グリシン(Gly、G)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、システイン(Cys、C)、チロシン(Tyr、Y)、アスパラギン(Asn、N)、およびグルタミン(Gln、Q)が含まれ;正電荷の(塩基性)アミノ酸には、アルギニン(Arg、R)、リジン(Lys、K)、およびヒスチジン(His、H)が含まれ;かつ負電荷の(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸(Asp、D)およびグルタミン酸(Glu、E)が含まれる。
抗体の適切な立体構造を維持するのに関与しないいかなるシステイン残基も、一般に、セリンと置換し、分子の酸化安定性を改善して、異常な架橋を防ぐことができる。逆に、(特に、抗体が、Fv断片などの抗体断片である場合)システイン結合(複数可)を抗体に付加し、その安定性を完全してもよい。
親和性成熟
一般に、親和性成熟は、親の抗体のCDR内に置換を有する抗体変異体を調製し、スクリーニングすること、かつ親の抗体と比較してより強い結合親和性など生物学的特性が改善された変異体を選択することを含む。このような置換変異体を作製する便利な方法は、ファージディスプレイを用いる親和性成熟である。簡単に説明すると、いくつかの超可変領域の部位(例えば、6〜7の部位)を変異させ、それぞれの部位にて全ての可能なアミノ置換を起こす。このように作製した抗体変異体は、それぞれの粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III産物との融合のような繊維状ファージ粒子の一価の様式で示される。その後、ファージディスプレイの変異体を、それらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。例えば、WO92/01047、WO93/112366、WO95/15388およびWO93/19172を参照されたい。
現在の抗体親和性成熟法は、2つの変異誘発カテゴリー、すわなち、確率的変異誘発と非確率的変異誘発に属する。エラープローンPCR、ミューテーター菌種(Low et al.,J.Mol.Biol.260,359−68(1996)、飽和変異誘発(Nishimiya et al.,J.Biol.Chem.275:12813−20(2000);Chowdhury,P.S.Methods Mol.Biol.178,269−85(2002))は、確率的変異誘発法の典型例である(Rajpal et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.102:8466−71(2005))。非確率的技術は、アラニンスキャニングまたは部位特異的変異誘発を用いて、特定の変異体の限られた収集物を作製することが多い。いくつかの方法については、以下にさらに詳細に記載する。
パニング法による親和性成熟
組換え抗体の親和性成熟は、一般に、減少させた量の抗原の存在下、候補抗体の数ラウンドのパニングを経て行われる。1ラウンドごとに抗原の量を減少させることにより、抗原に対する最も高い親和性を有する抗体を選択し、それによって、巨大プールの出発分質から高親和性の抗体を得る。パニングを経た親和性成熟は当業で公知であり、例えば、Hulsら(Cancer Immunol Immunother.50:163−71(2001))に記載されている。ファージディスプレイ技術を用いる親和性成熟法は本明細書のどこかに記載され、当業で公知である(例えば、Daugherty et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.97:2029−34(2000)参照)。
ルックスルー変異誘発
ルックスルー変異誘発(Look−through mutagenesis、LTM)(Rajpal et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.102:8466−71(2005))は、抗原結合部位を迅速にマッピングする方法を提供する。LTMでは、20個の天然アミノ酸によって提供される主要な側鎖化学を代表する9個のアミノ酸を選択し、抗体の全6個のCDR中の全ての位置での結合への機能的側鎖の貢献を分析する。LTMはCDR内に位置的な一連の単一変異を起こし、それぞれの「野生型」残基は、9個の選択したアミノ酸のうちの1個よって体系的に置換される。変異CDRを組み合わせ、全ての変異体の定量的ディスプレイが禁止されることなく、複雑さおよびサイズが増加した1本鎖可変断片(scFv)のコンビナトリアルライブラリーを作製する。正の選択後、より強い結合親和性を有するクローンの配列決定をし、有益な変異をマッピングする。
エラープローンPCR
エラープローンPCRは、異なる選択ラウンドの間に核酸のランダム化を含む。ランダム化は、用いるポリメラーゼの固有の誤差率によって低率で生じるが、転写中に、高い固有の誤差率を有するポリメラーゼ(Hawkins et al.,J Mol Biol.226:889−96(1992))を用いるエラープローンPCR(Zaccolo et al.,J.Mol.Biol.285:775−783(1999))によって高めることができる。変異サイクル後、抗原に対する強い結合親和性を有するクローンを、当業の所定の方法を用いて選択する。
DNAシャッフリング
核酸シャッフリングは、短いまたは低分子ポリヌクレオチドのプールのインビトロまたはインビボ相同組換えの方法であり、変異体ポリヌクレオチドを産生する。DNAシャッフリングについては、米国特許第6,605,449号、同第6,489,145号、WO02/092780およびStemmer,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:10747−51(1994)に記載されている。一般に、DNAシャッフリングは、3つのステップ、すなわち、DNaseIによりシャッフリングされる遺伝子の断片化、断片のランダムハイブリダイゼーションかつDNAポリメラーゼの存在下でのPCRによる断片化遺伝子の再構築または充填(セクシャルPCR(sexual PCR))、および再構築産物の標準的PCRによる増幅で構成される。
DNAシャッフリングは、それが逆連鎖反応であるという点でエラープローンPCRと異なる。エラープローンPCRにおいて、ポリメラーゼ開始部位の数および分子の数は指数関数的に増加する。逆に、ランダムポリヌクレオチドの核酸再構築またはシャッフリングにおいて、開始部位の数およびランダムポリヌクレオチドの数(サイズではない)は時間と共に減少する。
抗体の場合、DNAシャッフリングは、例えば、CDR1の全て、CDR2の全て、CDR3の全ての自由な組み合わせの結合を可能にする。複数のファミリーの配列を同一反応でシャッフルすることができることが企図される。さらに、一般に、シャッフリングは相対的順序を保存し、その結果、例えば、CDR1はCDR2の位置では見られない。まれなシャッフラント(shufflant)は、多数の最高の(例えば、最も高い親和性の)CDRを含み、これらのまれなシャッフラントはそれらの優れた親和性に基づいて選択されてもよい。
DNAシャッフリングに用いられ得る鋳型ポリヌクレオチドはDNAまたはRNAであり得る。組み合わせされるか、または再構築される遺伝子、短いポリヌクレオチドもしくは小分子ポリヌクレオチドのサイズによって様々な長さであり得る。好ましくは、この鋳型ポリヌクレオチドは50bp〜50kbである。この鋳型ポリヌクレオチドは、多くの場合、2本鎖であるべきである。
鋳型ポリヌクレオチドと同一の領域および鋳型ポリヌクレオチドと異種の領域を有する1本鎖または2本鎖核酸ポリヌクレオチドを、遺伝子選択の最初のステップ中に、この鋳型ポリヌクレオチドに加えてもよいことが企図される。異なるが関連する2つのポリヌクレオチド鋳型を、この最初のステップ中に混合することができることも企図される。
アラニンスキャニング
アラニンスキャニング変異誘発を行い、抗原結合に著しく貢献する超可変領域の残基を同定することができる(Cunningham and Wells,Science 244:1081−1085(1989))。標的残基の1残基またはグループ(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluなどの荷電残基)を同定し、中性または負に帯電したアミノ酸(最も好ましくは、アラニンまたはポリアラニン)で置換し、これらのアミノ酸と抗原の相互作用に影響を与える。その後、置換部位で、もしくは置換部位のかわりに追加の変異体または他の変異体を導入することによって、置換に対して機能的感受性を示すそれらのアミノ酸の位置を改良する。
コンピューターを使った設計
もう一つの方法として、またはさらに、抗原−抗体複合体の結晶構造を分析し、抗体と抗原間の接点を同定すること、またはコンピューターソフトウェアを用いて、このような接点をモデリングすることが有益であり得る。このような接触残基および隣接残基は、本明細書で詳しくのべる技術による置換の候補である。このような変異体を作製した時点で、変異体のパネルを本明細書に記載の通りにスクリーニングし、さらなる発展のために、1種類以上の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体を選択することができる。
動態調節剤の利点
動態調節剤は、競合的アンタゴニスト、アゴニストおよびリガンド置換などの標準的治療と比較して、治療薬としていくつかの利点を提供することが期待される。このような利点には、以下に概説するものが含まれ得る。
(1)自己制御活性
飽和レベルにおいて、動態調節剤は、その薬剤活性における濃度非依存的な限界により、毒性効果に対する潜在力が減少する。協同性が限られている調節因子は、投与量に関係なく、それらの作用に対して上限レベルを有する。従来薬とは異なり、動態調節因子は飽和に達し、それを越える調節因子の濃度の増加は機能にさらなる効果をもたらさない。その効果は、調節因子と内在性シグナル伝達複合体成分(例えば、リガンド)との間の(正または負のいずれか一方の)協同性の程度に制限される。この協同性に限定される限界は、投与計画に関して動態調節剤の安全性プロファイルを高める。それゆえに、動態調節剤を、好ましい全体的な安全性プロファイルを維持しながら、従来薬よりもさらに高頻度に与えることができ、薬剤の継続的な飽和レベルを維持する能力により有効性の増加がもたらされる。
(2)副作用を制限する複合体成分依存的な活性化/阻害
アゴニストまたはアンタゴニストとは異なり、動態調節因子は、内在性複合体成分(例えば、リガンド)の非存在下で不活性になり、複合体成分(例えば、リガンド)が存在する時などの適切な時にのみ活性があるようになり得る。動態調節因子がかなりのアゴニズムまたはアンタゴニズムを保有しない場合、従来のリガンドを越える別の強力な治療上の利点、すなわち、内在性アゴニストが存在する時にのみ組織反応を選択的に上方調節または下方調節する能力をもたらし得る。これらの特性は、動態調節剤が内在性の標的の空間的および時間的制御を拡大することを可能にする。
(3)より高い標的選択性、組織特異性、またはサブタイプ特異性からもたらされる低下したインビボの適切でない作用
動態調節剤は、複合体成分間の相互作用部位以外の部位に結合し得る。このようなアロステリック結合部位は、より複雑なオルソステリック部位と同じ進化的圧力に直面しない。したがって、より高い選択性が、アロステリック部位を標的にすることによって得られ得る。これは、標的サブタイプの全域でオルソステリック部位の配列保存が高度である時に特に都合がよい。
(4)広い治療濃度域
正の動態調節因子は、活性化受容体状態と非活性化受容体状態を区別することができるが、アゴニストは、全ての受容体状態を無差別に活性化する。したがって、かなりのアゴニズムをもたない動態調節因子は、アゴニストよりも広い治療濃度域を有する。さらに、正の動態調節因子は、受容体脱感作および/または耐性に対して責任が低下し得、可能な治療的適用の範囲を著しく拡大することができる。負の動態調節因子は、シグナル伝達を完全に阻止することなく、シグナル伝達を低下させることができる。例えば、これは、受容体が病理学的機能を媒介するのと当時に、生理学的に有用な機能を媒介する場合に有用であり得る。
実施例1
試験化合物の存在下または非存在下で、受容体−リガンド親和性を決定するための平衡溶液親和性測定法の使用
A.モデルシステム
本実施例は、受容体−リガンド複合体などのモデルとなるシグナル伝達複合体を用いる、平衡溶液親和性測定法について記載する。ここで記載するモデルシステムは固定化リガンドを有するビーズを用い、したがって、遊離受容体を、抗受容体Cy5標識ポリクローナル抗体を用いてアッセイおよび検出する。
結合パートナーの1つ、この場合はリガンドを、自動撹拌器によって懸濁し、小さなカラムベッドを形成することができる固相に固定化する。典型的には、この支持体はポリメチルメタクリレート(PMMA)、アガロース、または他の適合性のある物質のビーズである。他の結合パートナー、この場合は受容体を、その結合状態で、蛍光標識、ビオチン化標識、または別の方法でタグを付けた分子により検出する。
Sapidyne Instruments社のKinExa(商標)装置を用いて、動態排除分析(kinetic exclusion assay(KinExA))による親和性分析を行うことができる。簡単に説明すると、相互作用複合体成分、この場合は受容体とリガンドを、試験ポリペプチド結合剤の存在下または非存在下で様々な既知濃度で混合し、平衡に達するようにさせる。リガンド、遊離受容体、リガンド−受容体複合体を含む試料を、複合体成分の1つ、この場合はリガンドもしくは同等の競合的結合剤を結合させるか、またはコーティングした小さなビーズカラムに迅速に通過させる。遊離受容体をこのビーズ上のリガンドに結合させる。その後、この受容体に対するCy5蛍光標識2次抗体などの2次標識をこのカラムに通過させる。標識2次抗体は結合受容体に結合する。緩衝液洗浄により過剰の標識を除去し、元の試料中の遊離受容体の量に直接比例するビーズカラム上の蛍光シグナルを残す。このビーズベッドを蛍光検出器の近くに置き、蛍光シグナルのレベルを読み出す。
固定化リガンドを有するビーズのバッチを調製する。PMMA、アガロース、ポリスチレンなどを含む様々なビーズの種類を用いることができる。ビーズへのリガンドの結合を、当業者が知る様々な方法を用いて行うことができる。受容体のストックを、受容体−リガンド相互作用の予想Kを下回る濃度で調製する。実験は、用いることができる受容体の最低濃度を決定するために、リガンドを含めないで様々な濃度の受容体を用いて行われるべきである。このアッセイにおける受容体濃度を低くすることによって、親和性の決定はますます正確になる。500pM相互作用に対して、50pMの受容体濃度は正確なK測定を可能にするはずである。適切なシグナルを達成し、必要とされるダイナミック・レンジをもたらすのに十分な量の受容体を用いなければならない。
最適化受容体濃度を決定した時点で、試験化合物を含む、および試験化合物を含めない受容体の2×ストックを調製する(最終目的濃度が50pMである場合、100pM溶液を作製する)。
2×濃度にてリガンドの段階希釈を作り出す。この希釈系列は、理想的には、相互作用のK値を少なくとも10倍超える点、かつ少なくとも10倍下回る点が含まれるべきである。12点の用量設定+リガンドを含まない試料は、通常、1:2希釈系列でのこの種の範囲をカバーするのに十分である。
等量のリガンド滴定系列を受容体および受容体+試験化合物試料と混合し、これらを平衡に達するようにさせる。これは、その相互作用の動態に応じて数時間〜数週間かかり得る。相互作用の動態のいずれかが既知である場合、それらを用いて平衡までの時間を推定することができる。この反応は、低いが指数関数的な速度で真の平衡に近づき、それゆえに、数日で、反応が95%を超えて完了する場合が多いので、必ずしも真の平衡に達するまで高親和性相互作用を待つ必要は恐らくない。しかし、この関係を理解し、それを批判的に評価することは重要である。
必要とされるインキュベーション時間に達した時点で、Cy5標識抗受容体抗体の希釈を行う。標識分子がその結合パートナー、この場合はリガンドに結合する時に、標識分子がその抗原、この場合は受容体に結合することができることは重要であり、またはそうでなければ、このアッセイのシグナルは皆無かそれに近い。ここで記載するアッセイ形式については、抗受容体Cy5標識ポリクローナル抗体の1μg/mL溶液が適切である。
KinExa試料注入チューブを試料バイアルに入れる。その後、このKinExa装置は、全試料中の遊離受容体濃度を分析し、リガンドの濃度に対して、遊離受容体濃度を遊離受容体の割合(%)としてプロットする。曲線をモデルにあてはめ、K値を決定する。以下の式(式中、Rは受容体濃度、Lはリガンド濃度である)を用いて得られた結果の例を図4に示す。
Figure 2016048240
B.IL−1βシグナル伝達複合体
IL−1βは、急性期炎症反応を促進し、先天性免疫反応において重要な役割を担う極めて強力なサイトカインである。高レベルのIL−1βは、関節リウマチ、炎症性腸疾患、急性呼吸促迫症候群、および2型糖尿病などの炎症性疾患に関わるが、低レベルでは、膵臓β細胞の機能、増殖、および生存、腸の上皮細胞生存、および傷害に対する神経細胞反応に対して有益な効果を有する。多くの受容体−リガンドシステムと同様に、IL−1βシグナル伝達は複雑であり、複数のリガンドが膜結合型および可溶型のいくつかの受容体と相互作用する(Dinarello,Arthritis Rheum.52(7):1960−1967,2005)。IL−1βシグナル伝達活性は、単一の受容体であるIL−1のI型受容体(IL−1RI)およびその共受容体であるIL−1受容体アクセサリータンパク質(IL−1RAcP)によって媒介される。第2のIL−1ファミリーメンバーであるIL−1αは、同じ受容体複合体を介してシグナルを伝えるが、炎症性疾患には関与しない。IL−1β活性は厳しい生理的制御下にあり、複数レベルの負の制御には、デコイ受容体IL−1のII型受容体(IL−1RII)によって媒介される過剰のIL−1βの中和およびエンドサイトーシス;その受容体の複数の可溶型(sRI、RII、およびsRAcP)によって媒介される循環IL−1βの阻害;ならびに抑制性IL−1ホモログであるIL−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)による競合阻害が含まれる。この受容体−リガンドシステムの複雑さは、抗IL−1β抗体の産生に対する困難な問題を提示する。この経路を調節する最適な治療薬は、選択的に、高レベルのIL−1βシグナル伝達を有益な低いレベルに低下させるが、IL−1αシグナル伝達またはIL−1Ra活性と干渉することなく、可溶性受容体によるIL−1β活性の中和および受容体媒介経路によるIL−1βのクリアランスを可能にするものであると提案する。
生物物理学的アッセイ
KinExAアッセイを、試験化合物(抗IL−1β抗体XOMA052、米国特許第7,531,166号参照)の存在下または非存在下において、リガンド−受容体(IL−1sRIまたはIL−1sRII)混合物の試料中の遊離リガンド(IL−1β)の濃度を測定するように構成した。
可溶性IL−1受容体(IL−1sRI:R&D Systems社、カタログ番号260−100/CF、およびIL−1sRII:R&D Systems社、カタログ番号263−2R−050/CF)へのIL−1β±XOMA 052結合の平衡解離定数(K)を、KinExA技術(Sapidyne社)を用いて測定した。PBS(0.01Mリン酸、pH7.4、0.15M NaCl、0.02%アジド)中の可溶性受容体を、150nMから4pMまで、1%BSA試料緩衝液で連続希釈することによって、一定の結合部位濃度(1〜5nM)のIL−1β単独、またはXOMA052と混合したIL−1βに対して平衡実験を行った。K制御データを得るために、結合部位濃度は、そのKを2倍だけ超えた(IL−1β=1nMおよびIL−1β±XOMA 052=5nM)。XOMA 052が存在する全ての実験については、抗体濃度をIL−1βの100倍モル過剰量で維持し、サイトカインの全てがXOMA 052に結合することを確実にした。アッセイ開始前に、IL−1β(±XOMA 052)+受容体混合物を室温(約22℃)で12〜24時間インキュベートし、複合体形成が平衡に達するようにした。このインキュベーション期間後、受容体IL−1β±XOMA 052、およびIL−1sR/IL−1β複合体±XOMA 052を含む混合物を、受容体でブロッキングした抗IL−1β抗体結合ビーズからなる固相から引き出し、受容体に結合していないIL−1β(±XOMA 052)を捕獲した。捕獲抗体が完全に受容体と競合し、XOMA 052とは競合しないことを検証した。捕獲されたIL−1βは、平衡反応中に残っている受容体に結合していない遊離IL−1βの濃度に正比例し、試料緩衝液中でポリクローナル抗IL−1β抗体(R&D Systems社、AB−201−NA)、続いて、フィコエリトリン結合抗ヤギIgG2次抗体(Jackson ImmunoResearch laboratory、カタログ番号705−116−147)を用いて検出した。結合シグナルを、受容体非存在下での対照に対する割合として相対値に変換した。全ての平衡実験について、各試料につき二重に測定した。平衡滴定データを、KinExAソフトウェア(Version 2.4;Sapidyne Instruments社)を用いて1:1結合モデルにあてはめた。sRIについては合計5回、sRIIについては合計3回、これらの測定を繰り返した。結果は、XOMA 052が、2〜10nMのIL−1 sRIへのIL−1β結合の結合親和性を弱めるが、2nMにとどまるIL−1 sRIIへのIL−1β結合の結合親和性には影響がないことを示す(図5)。表面プラズモン共鳴(SPR)を用いる測定は、これらの結果と一致した。
このアッセイの別形の検証を行って、それぞれの間での可能性のある薬剤候補の順位づけを行うことができ得る。一旦、完全なK溶液平衡実験を行うと、曲線の対数線形部分のシグナルを生むのに必要とされる条件が分かる。動態調節剤を含めない相互作用のEC50値をわずかに下回るリガンド濃度を選択する。その後、各薬剤候補を、いく種類かの濃度で試験することができる。これは、この薬剤に対する用量反応の分析および潜在的な薬剤候補間での有効性の相対比較を可能にする。
機能アッセイ
機能アッセイを行って、シグナル複合体成分の親和性の低下が、IL−1βに対する細胞の用量反応におけるシフトを引き起こすという予測を確かめた。
MRC−5 IL−6放出アッセイ
MRC−5ヒト肺線維芽細胞(ATCC、マナッサス、バージニア州)を、10%牛胎仔血清(FBS;Hyclone社)を含むMEM完全増殖培地(インビトロジェン社)中に、1ウェルあたり5000細胞で無菌の96ウェル組織培養プレートに蒔いた。5%COで、37℃にて一晩インキュベートした後、上清を除去し、示した濃度の組換えヒトIL−1β(Peprotech社、カタログ番号200−001B)+対照IL−1βブロッキング抗体(WO2006/081139)、抗KLH (キーホールリンペットヘモシアニン)アイソタイプ対照抗体(IgG2;clone KLH8.G2(XOMA))、またはXOMA 052を含む増殖培地で置換した。
抗体の有効性アッセイを行い(図6A)、それによって、組換えヒトIL−1βを示した抗体と37℃で1時間プレインキュベートし、その後、MRC−5細胞を加え、IL−1βを最終濃度100pg/mlで加えた。
MRC−5細胞に添加する前に、IL−βの量を増加させながら100倍モル過剰の抗体と室温で一晩プレインキュベートすることを用いて、IL−1β用量反応アッセイを行った(図6B)。
5%COで、37℃にて20時間インキュベートした後、細胞上清を除去し、推定IL−6濃度に従って希釈し、ELISA(Quantikine(商標)ヒトIL−6 ELISA、R&D Systems社、カタログ番号D6050)によって、メーカーの取扱説明書に従って、ヒトIL−6についてアッセイした。全試料を準備して、二重または三重で分析した。
全血IL−8誘導アッセイ
健常なヒトの血液を、ヘパリン硫酸を含むコレクションチューブに静脈穿刺により収集した。全血を添加する前に、10%FBSを含むRPMI(インビトロジェン社)中で10倍モル過剰のXOMA 052と37℃で1時間プレインキュベートしたIL−βの漸増量を用いて、IL−1β用量反応アッセイを行った。96ウェル丸底プレート(Corning Costar社、カタログ番号3799)中で、試料を37℃で6時間インキュベートした後、最終濃度が0.5%のTriton X−100で10分間溶解させた。可溶化液を2000rpmで5分間遠心分離し、破片を除去し、きれいなプレートに移した。遠心分離ステップを繰り返した後、一晩保管するため、可溶化液を−80℃のフリーザーに移した。次の日の朝、可溶化液を解凍し、ELISA(Quantikine ヒトIL−8 ELISA、R&D Systems社、カタログ番号D8000C)により、メーカーの取扱説明書に従って、ヒトIL−8について試験した。全試料を準備して、二重または三重で分析した。結果を図6Cに示す。
結果
IL−1βへのXOMA 052結合は、高濃度のIL−1βでシグナル複合体形成を抑止しないが、それでもなお、これは生理的におよび病理学的に関連する濃度においてIL−1β活性の強力な阻害剤である。XOMA 052は、MRC−5サイトカイン放出アッセイにおいて、100pg/mLのIL−1βを完全に中和し、低いpM範囲にIC50が観察される。これは、対照ブロッキング抗体を用いて観察された中和(図6A)に匹敵し、組換えIL−1raよりも約10倍強力である。
動態摂動モデルは、シグナル複合体成分の親和性の低下が、IL−1βに対する細胞の用量反応においてシフトを引き起こすと予測する。XOMA 052がモル過剰の濃度のIL−1β中に存在する時、この抗体は、アイソタイプ対照抗体の存在下におけるIL−1βのEC50に対して、MRC−5細胞IL−6放出アッセイにおいて、最高で60倍もIL−1β用量反応曲線のEC50を増加させる(815pM対12pMのEC50値)。同じ条件下、IL−1βブロッキング抗体は、広範囲のIL−1β濃度にわたって、ほとんど完全に細胞反応を抑止する(図6B)。
全血におけるIL−8発現(図6C)、ラットNRKE細胞におけるcinq1、PBMCにおけるIL−8の刺激において、XOMA 052による類似の用量反応シフトが見られ、この効果は特定のアッセイシステムに特有ではないことを示す。したがって、高レベルのIL−1βが(例えば、膵臓β細胞において)病状を引き起こす生理的条件下、XOMA 052は過剰のIL−1βを中和するが、低レベルの有益なシグナル伝達の継続を潜在的に可能にする。さらに、XOMA 052は、IL−1β活性の完全な遮断と比較すると、感染に対する自然免疫反応のより優れた反応性を可能にし得る。XOMA 052に媒介されるシグナル伝達減衰の程度は、抗体の濃度が全ての利用できるIL−1βに結合するのに十分高い時、抗体の濃度と無関係である。そのような条件において、付随するシグナル出力は、リガンドの濃度のみによって決まる。
IL−1RIに対するIL−1β親和性の低下は、シグナル伝達の減衰を引き起こすが、IL−1RIIは応答細胞においてデコイ受容体として機能し、IL−1βに対する感受性を弱めるので、IL−1RIIへの効率的な結合の維持が重要である。さらに、IL−1RIIが媒介するIL−1βの内部移行は、IL−1βのクリアランスにとって重要な経路である。対象の治療抗体のその抗原への結合が生理学的クリアランス経路を妨げる時、抗体の半減期の延長および高親和性は、抗体/抗原複合体の蓄積をもたらすことができる。このような複合体は一般的に不活性であるが、抗体から解離する全ての抗原が遊離抗体と迅速に再結合することを確実にするために、過剰のレベルの抗体を維持することが必要であり得る。
XOMA 052はIL−1RIへのIL−1β結合の親和性を弱めるが、同様に、IL−1RIIへのその結合を弱めないことを示した。さらに、XOMA 052は、IL−1β/sRII複合体へのsRAcPの結合を妨げない。IL−1RIIおよびRAcPに結合するIL−1β/XOMA 052複合体の能力は、正常な生理学的機序によるサイトカインのクリアランスおよび中和を可能にし得、したがって長く存在する複合体の蓄積を低下させ得る。さらに、XOMA 052/IL−1β複合体への中和可溶性受容体の結合を維持することにより、これらの分子が活性を調節することを可能にするはずであり、したがってそれらのクリアランス前に複合体による潜在的な体系的活性を回避する。
IL−1受容体に結合するIL−1β/XOMA 052複合体の能力がクリアランス速度に影響を及ぼすか否かを調べるため、(結合しないアイソタイプ対照抗体とインキュベートする)遊離組換えヒトIL−1β、またはXOMA 052もしくは対照ブロッキング抗IL−1β抗体(BM5)のいずれか一方と事前に複合体を形成させた組換えヒトIL−1βのいずれか一方をマウスに注射し、48時間後に血液循環中に残っている測定可能な全IL−1βの量を、ELISA(BD OptEIA(商標)ヒトIL−1β ELISA set、BD Biosciences社、サンノゼ、カリフォルニア州、カタログ番号557953)によりキットの説明書に従って測定した。2つの別々の実験において、C57B/6マウス(n=4/グループ)に、ヒトIL−1βと事前に複合体を形成させた100μlの抗体のそれぞれ(1匹のマウスあたり20ngのIL−1βに対して1mg/kgの抗体)を静脈内注射した。48時間後のBM5−IL−1β複合体抗体およびXOMA 052−IL−1β複合体抗体の血中レベルのデータを図7に示す。試験1において、注射後48時間までに、BM5とのIL−1β複合体は7.7%が血液循環中に残っていたが、同期間に、XOMA 052−IL−1β複合体は1.7%のみ残っていた(p=0.006)。試験2において、注射後48時間までに、BM5とのIL−1β複合体は8.1%が血液循環中に残っていたが、XOMA 052−IL−1β複合体は1.8%のみ残っていた(p=0.02)。いずれかの抗体と複合体を形成したIL−1βは、遊離IL−1βよりも血液循環からゆっくり除去されたが、XOMA 052に結合したIL−1βは、ブロッキング抗体に結合したIL−1βよりも迅速に除去された。48時間後、ブロッキング抗体に結合したIL−1βと比較して、XOMA 052に結合したIL−1βは平均で4.6倍低く血清中で検出された。同時に、全抗体の濃度は互いに異なっておらず、違いは異なる抗体の差次的クリアランスに起因しないことを示した。
本明細書で概要を述べた、IL−1βを遮断することよりも減衰させるアプローチは、次第に炎症性疾患とみなされる2型糖尿病の疾患変化に必要とされるIL−1βシグナル伝達の最適な低下への重要な洞察をもたらし得る。高レベルのIL−1βは、β細胞機能不全およびアポトーシスを引き起こすことによってこの疾患の病状の基礎をなす証拠がある。しかし、低レベルのIL−1β活性は、最大レベルのインスリン放出の刺激ならびにβ細胞の増殖および生存に必要とされる。ANAKINRA(登録商標)(rhu IL−1ra)を用いた患者の治療はインスリン分泌およびグルコース調節を改善するが、薬剤の迅速なクリアランスにより頻回投与を必要とする。IL−1β活性を完全に中和するブロッキング抗体は、IL−1βの低レベルのシグナル伝達を可能にしない。XOMA 052などの動態調節(または制御)抗体はIL−1β活性を低下させるはずであり、高濃度のIL−1βにおいて低レベルのシグナル伝達を可能にするので、T2D患者において有益な範囲内でIL−1β活性を制御する(図8参照)。
複数の受容体への結合に対するリガンドの親和性を差次的に調節し、リガンド活性の状況依存的な減衰を可能にする組換え抗体について本明細書に記載している。多くの受容体−リガンドシステムが、複雑で状況依存的な細胞効果を生む複数のリガンドおよび受容体から構成されていることがますます理解されている。いくつかの受容体システムにとって、これらの効果は低レベルにおいては有益であり、高レベルにおいては病的であり、機構的にモノクローナル抗体治療に着手することが難しい。「二者択一スイッチ」よりむしろ「レオスタット」として治療に抗体を用いる能力が、疾患関連標的の活性を調節するための治療抗体設計において、付加的レベルの巧妙さおよび精巧さを導入する。
実施例2
固相親和性測定法を用いた動態調節因子の同定
ここに記載するアッセイは、任意の2つの相互作用結合剤を利用することができ、そのうちの1つを標識(例えば、ビオチン化)し、他方をEIAプレートに固定することができる。この実施例は、モデルシステムとしてその受容体(GCSFR)に結合する顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を使用する。このシステムに用いる手順を以下に記載する。異なる系を利用する場合に最適化する必要があり得る様々な条件には、プレートコーティング条件(時間、温度、濃度および緩衝液)、検体標識条件、および標識(例えば、ビオチン化)検体の濃度が含まれる。
GCSF−GCSFR結合相互作用の抗体調節因子を、以下に記載のアッセイを用いて同定した。
精製GCSF(R&D Systems社、ミネアポリス、ミネソタ州)を、PEGビオチン(Pierce Protein Research Products社、カタログ番号21329、ロックフォード、イリノイ州)を用いて、活性化NHS化学を介してビオチン化した。GCSFR(R&D Systems社、ミネアポリス、ミネソタ州)を、PBS中2μg/mL、100μL/ウェルで、振盪器にてEIAプレート(Nunc社、ロチェスター、ニューヨーク州)に37℃で1時間コーティングした。その後、このプレートを牛血清アルブミン(BSA)およびChemiBlock(商標)(ミリポア社、ビレリカ、マサチューセッツ州)ブロッキング溶液で、室温で少なくとも1/2時間、振盪器にてブロッキングした。反応物に干渉せず、EIAプレートにおける非特異的結合を十分に阻止する任意のブロッキング溶液をこのアッセイに用いることができ得る。
希釈プレートに試料を調製した。GCSF/GCSFR複合体(Biosite社、サンディエゴ、カリフォルニア州)で免疫したマウスから作製したOmniclonal(商標)ファージライブラリーからFab抗体断片を周辺質抽出物(PPE)としてスクリーニングした。1点分析には、PPE試料を、ブロッキング緩衝液で0.15μg/mLの濃度で調製したビオチン化GCSFと1:1で混合し、この溶液の50μLをEIAプレートに添加した。1点分析の有望なヒット(図9A)を精製し、リガンドの滴定を用いて、1.8μg/mLのFab濃度にてさらに試験するか(図9B)、または0.075μg/mLの固定リガンド濃度の様々な滴定で試験した(図9C)。50μL/ウェルの本抗体−GCSF−ビオチン溶液をブロッキングしたEIAプレートに加え、振盪器にて室温で1時間を超えてインキュベートした。PBSおよびブロッキング緩衝液のみの負の対照をこの1点分析に含め、バックグラウンドシグナルレベルをOD405nmでおおよそ0.83と定めた。精製Fab F5も正の対照として5μg/mLで含め、初期のスクリーニングラウンドから選択した。その後、ブロッキング緩衝液中5μg/mLにて、50μLのストレプトアビジン標識アルカリホスファターゼ(Zymed South社、サンフランシスコ、カリフォルニア州)を全てのウェルに加えた。ビオチン化検体および抗体混合物はウェルに残り、除去され、洗い流されることはなかった。その後、このプレートを、振盪器にて、室温でさらに1時間を超えてインキュベートした(ほとんどのアッセイにおいて3〜4時間の全反応時間を用いたが、さらに長くインキュベートすると、遅い相互作用が平衡に達するようになる)。その後、このプレートを完全に洗浄し、100μL/ウェルのp−ニトロフェニルホスファターゼ(PNPP;Pierce Protein Research Products社、ロックフォード、イリノイ州)で発色させた。このプレートを5〜15分間発色させた後、1M NaOHを100μL/ウェルで用いて反応を停止した。吸光度をマイクロプレートリーダーで405nmにて読み取った。
図9Aは、抗GCSF/GCSFR Fab PPEについての3通りの1点スクリーニングアッセイの結果である。対照と比較して、固定濃度のビオチン化GCSF:Fab混合物で試験したFabクローンのいくつかの存在下で、GCSFRに結合するビオチン化GSCFの増強または阻害が観察され、このスクリーニングによって正および負の両方の調節抗体の同定が示された。図9Bは、正に調節するFabの1つであるB2(E4)の存在下および非存在下におけるGCSF−ビオチンの滴定の結果を示す。ビオチン化GCSF結合曲線は、抗体B2(E4)の存在下で左にシフトした。これは、この抗体の存在下でのリガンド受容体相互作用の親和性の増強を示唆する。図9Cは、固定の濃度のビオチン化GCSFに対してさらに正に調節するFabであるB4(F5)、および調節が弱いまたは調節しないFabであるB6(A10)の滴定の結果を示す。B4(F5)Fabは、抗体用量依存的な方法で、プレートに結合した受容体へのビオチン化GCSFの結合を増強する。
実施例3
細胞結合測定法を用いたGCSF−GCSFR結合の動態調節因子の同定
本実施例は、リガンド(組換えヒトGCSF(rhGCSF)、R&D Systems社、ミネアポリス、ミネソタ州)の存在下または非存在下における、GCSFRトランスフェクト細胞への異なる試験化合物(例えば、抗体)結合を測定するFACSベースアッセイの使用について記載する。ELISAアッセイにおいて、ファージディスプレイライブラリー(実施例2参照)から抗GCSF/GCSFR抗体をスクリーニングし、GCSF−GCSFR複合体への結合に特異的な抗体を同定した。これらの抗体は複合体特異的であるので、数理モデルは、これらがGCSFRへのGCSF結合の動態を調節すると予測する。
BaF3はヒトGCSFに反応しないが、そのファミリーの他のサイトカインに反応するマウスリンパ球細胞株である。この細胞株を、RPMI(Gibco/インビトロジェン社)/10%FBS(Hyclone/Thermo Scientific社、ウォルサム、マサチューセッツ州)+2ng/mL マウスIL−3(R&D Systems社)中で維持する。ヒトGCSFR遺伝子(Origene社、ロックビル、メリーランド州)を、エレクトロポレーション、次いでG418(インビトロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)選択を用いて、BaF3細胞株(Alexion AAC 621)に安定的にトランスフェクトした。フィコエリトリン結合抗GCSFRα(CD114)抗体(554538(LMM741)、BD Biosciences社、サンノゼ、カリフォルニア州)を用いて、FACS分析により発現を確かめた。ヒトGCSFでトランスフェクトした細胞の刺激が増殖反応をもたらしたことから、機能的なリガンド/受容体相互作用が示された。
BaF3/GCSFR細胞(1×10細胞/試料)を、PBS/2%FBS/0.1%アジドで2回洗浄した後、同じ緩衝液で希釈したrhGCSFと氷上で15分間インキュベートした。rhGCSF(0、1、10または100ng/mL)の存在下または非存在下で、5μg/mLのGCSF/GCSFR試験抗体を加え、氷上で1時間インキュベートした後、10μg/mLのフィコエリトリン標識ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson Labs社、バーハーバー、メイン州)を加え、さらに1時間氷上でインキュベートした。試験抗体がGCSF/GCSFR複合体に結合した場合、その後、2次抗体をこの試験抗体に結合させ、細胞を染色した。いくつかの試験抗体が、GCSFの存在下でBaF3/GCSFR細胞に結合することが観察されたが、GCSFの非存在下では観察されなかった。これらの抗体はGCSFRまたはGCSFには結合せず、したがってGCSF/GCSFRシグナル伝達複合体にのみ結合することが示され、それらがGCSF/GCSFR複合体のシグナル伝達を正に調節することができることを示唆する。抗体A10(B6)(実施例2参照)のデータの例を図10に示す。rhGCSFの濃度を増加させ、A10(B6)の濃度を固定して細胞を処理すると、rhGCSFおよび無関係の抗体(KLH8−G2)を用いて染色した細胞と比較して、本アッセイにおいて平均蛍光指数(MFI)の読み出し情報に用量依存的な増加がもたらされた。
実施例4
細胞ベースの抗体親和性測定法を用いたINS−INSR結合の動態調節因子の同定
本実施例は、ヒトインスリン(hINS)の存在下または非存在下において、細胞に結合する異なる抗体を測定するフローサイトメトリー(FACS)ベースのアッセイの使用について記載する。本アッセイにおいて、ファージディスプレイライブラリーから抗インスリン受容体(INSR)抗体をスクリーニングし、INS−INSR結合の動態調節因子を同定した。
IM−9細胞をアメリカ培養細胞系統保存期間(ATCC)から入手し、RPMI 1640+10%FBSで維持した。アッセイに使用する前に、細胞を無血清のRPMI 1640で洗浄し、数を数え、RPMI 1640+0.5%BSA(Sigma−Aldrich社)で濃度を2×10細胞/mlに調節した。これらの細胞をこの培地で一晩培養し、それ自体を「血清飢餓」と名付けた。これらの細胞を一度洗浄し、0.5%BSAおよび0.01%アジ化ナトリウムを含むPBS(FACS緩衝液)に2×10細胞/mlの割合で再懸濁した。
インスリンに暴露した細胞を、70nMヒトインスリン(Sigma−Aldrich社、セントルイス、ミズーリ州)を補充したFACS緩衝液に再懸濁した。(+hINS)または(−hINS)の両方の細胞集団を4℃で30分間インキュベートし、FACS緩衝液で一度洗浄し、2×10細胞/mlの割合でFACS緩衝液に再懸濁した。細胞の25μl分を96ウェルプレートに入れ、25μlの抗体またはPPEと混合し、氷上で1時間インキュベートした。
その後、これらの細胞をFACS緩衝液で一度洗浄し、この抗体の結合を、25μlの適切な蛍光色素結合2次抗体の添加により検出した。最初のインキュベーションがmycタグ抗体を含むPPEを用いた場合、抗c−myc抗体(ロッシュ社)の1/1000希釈のうちの25μlをウェルに加え、これらの細胞を氷上で30分間インキュベートした。その後、これらの細胞をFACS緩衝液で一度洗浄し、抗c−mycの結合をフィコエリトリン結合抗マウスIgGの添加により明らかにした。氷上での最後の15分のインキュベーション後、これらの細胞を洗浄し、ペレットをFACS緩衝液に再懸濁した。これらの細胞をFACScan(商標)(Becton−Dickinson社、ミルピタス、カリフォルニア州)にて分析し、そのデータをFlowJo(商標)(Treestar社、アシュランド、オレゴン州)およびMicrosoft Excel(商標)の両方で解析した。
これらのアッセイは4種類の抗体の検出を可能にした。そのうちの例を図11に示す。
1.IM−9細胞をヒトインスリンに暴露した場合、IM−9細胞のみに結合する(独占的にINS/INSR複合体に結合する)抗体
2.IM−9細胞をヒトインスリンに暴露した場合、IM−9細胞により強く結合する(優先的にINS/INSR複合体に結合する)抗体
3.IM−9細胞をヒトインスリンに暴露した場合、IM−9細胞にあまり強く結合しない(優先的に、複合体を形成していないINSRに結合する)抗体
4.ヒトインスリンへのIM−9細胞の暴露とは無関係にIM−9細胞に結合する(複合体を形成していないINSRおよびINS/INSR複合体に等しく結合する)抗体
INS/INSR複合体に結合する抗体:複合体を形成していないINSRに結合する抗体の比が1.3を超えた場合、抗体を推定の正の調節因子として評価した。INS/INSR複合体に結合する抗体:複合体を形成していないINSRに結合する抗体の比が0.6未満であった場合、抗体を推定の負の調節因子として評価した。INS/INSR複合体に結合する抗体:複合体を形成していないINSRに結合する抗体の比が0.9を超えるが1.1未満であった場合、抗体を推定の非調節因子として評価した。
hINSRまたはmuINSRのいずれか一方でトランスフェクトした、懸濁に適するCHO−K1細胞をIM−9細胞の代わりに用い、インスリンに暴露した細胞を、70nMよりむしろ150nMのヒトインスリンを補充したFACS緩衝液で再懸濁したことを除いて、上記に記載の通りに実験を行った。
機能アッセイにおいて、正および負の調節活性を有する多数の抗INSR抗体のFACS結合データを検討した。負の調節因子は約0.7以下の+インスリン/−インスリン結合比を有し、大多数が0.5以下の比を有することが判明した。正の調節因子は約1.0以上の+インスリン/−インスリン結合比を有し、大多数が1.3以上の比を有することが判明した。この結合比を以下の表3に示す。したがって、リガンド存在下または非存在下において、調節抗体による差次的な受容体結合活性の比は、一般に、その調節機能(正または負)を予測する。
(表3)
Figure 2016048240
実施例5
細胞ベースのリガンド親和性測定法を用いた動態調節因子の同定
本実施例は、試験化合物(INSRに対する抗体)の存在下または非存在下における細胞への差次的リガンド(ヒトインスリン)結合を測定するFACSベースのアッセイの使用について記載する。本アッセイにおいて、ファージディスプレイライブラリーからINSR抗体をスクリーニングし、INS−INSR複合体の調節因子を同定した。
IM−9細胞をアメリカ培養細胞系統保存期間(ATCC)から入手し、RPMI 1640+10%FBSで維持した。アッセイに使用する前に、細胞を無血清のRPMI 1640で洗浄し、数を数え、RPMI 1640+0.5%BSA(Sigma−Aldrich社)で濃度を2×10細胞/mlに調節した。これらの細胞をこの培地で一晩培養し、それ自体を「血清飢餓」と名付けた。これらの細胞を一度洗浄し、0.5%BSAを含むPBS(結合緩衝液)に2×10細胞/mlの割合で再懸濁した。
血清飢餓細胞を、室温で15分間、INSR抗体に事前に暴露した後、R&D Systems社から購入した様々な濃度のビオチン化ヒトインスリンと室温でさらに30分間インキュベートした。ビオチン化インスリンの結合を、室温でさらに15分間、この混合物に1/100希釈したストレプトアビジン−フィコエリトリンを添加することによって明らかにした。その後、これらの細胞を結合緩衝液で1回洗浄し、0.5%BSA、0.1%アジ化ナトリウムおよび2%パラホルムアルデヒドを含む等量のPBSに再懸濁した。これらの細胞をFACScan(商標)(Becton−Dickinson社、ミルピタス、カリフォルニア州)にて分析し、そのデータをFlowJo(商標)(Treestar社、アシュランド、オレゴン州)およびMicrosoft Excel(商標)の両方で解析した。
図12は、異なるインスリン濃度における抗INSR抗体の存在下または非存在下におけるIM9細胞へのビオチン化インスリンの結合を示す。抗体83−7はビオチン化インスリンの結合を増強し、抗体MA−20はビオチン化インスリンの結合を減少させ、対照マウスIgGはビオチン化インスリンの結合に影響を与えなかった。
実施例6
リン酸化アッセイを用いた動態調節の確認
INSRにリン酸化される基質タンパク質には、インスリン受容体基質1(IRS−1)と呼ばれるタンパク質が含まれる。pIRS−1を形成するIRS−1リン酸化は、最終的には、インスリン応答性組織の外膜において高親和性グルコース輸送体(Glut4)分子の増加をもたらし、その結果、血液からこれらの組織へのグルコース取り込みの増加をもたらす。pIRS−1アッセイを、Luminex(登録商標)技術基盤(Luminex社、オースティン、テキサス州)を用いて行った。(a)固定濃度のインスリンにおける試験抗体の滴定、および(b)固定濃度の抗体におけるインスリンの滴定の2つの様式のアッセイを行った。複合体を形成したINSRおよび複合体を形成していないINSR(実施例4および5参照)へのそれらの差次的結合に基づいて選択した抗インスリン受容体(INSR)抗体を本アッセイにおいて試験し、INS−INSR複合体の調節因子を同定した。
細胞処理および溶解
計数し、遠心分離し、PBSで1回洗浄して、RPMI+0.5%Sigma Cohn V BSA(濾過滅菌し、4℃で保存したRPMI中の10%ストック)で約2×10細胞/mlの割合で再懸濁することにより、IM−9細胞を16〜20時間血清飢餓状態にした。
2×濃縮溶液のインスリン(Sigma I−9278(10mg/ml)、4℃で保存した1.77mMの液体ストック)希釈物をRPMI+0.5%BSAにて調製した。標準インスリン滴定は、4倍段階希釈、例えば、6.25nM、1.56nM、0.39nM、0.097nM、0.024nM、0.006nM、0.0015nM、0nMを含み得る。
Milliplex MAP Cell Signalling Buffer and Detection Kit(ミリポア社、カタログ番号48−602)およびPhospho−IRS−1 MAP Mates(ミリポア社、カタログ番号46−627)を、メーカーの取扱説明書に従って、pIRS−1レベルの検出に用いた。簡単に説明すると、50μl/ウェルの2×処理培地(0.5%BSA+/−試験抗体を含むRPMI)を含むV底プレートを準備し、50μlのRPMI+0.5%BSAに再懸濁した血清飢餓状態のIM−9細胞を1ウェルあたり1×10細胞で加えた。(a)インスリンの段階希釈物を含むウェルに添加される単一抗体濃度の大量の抗体/細胞混合物として、または(b)抗体の段階希釈物を含むウェルに直接細胞を加え、0.1nMのインスリンでスパイクするかのいずれか一方により、抗体の前処理をインスリン処理の前に15分間行った。プレートを37℃のインキュベーターに入れ、処理時間(合計15分)の最後の3分間、室温で1500rpmにて遠心分離した。反転して穏やかに拭き取ることにより上清を除去し、、処理した細胞ペレットを、以下の表1にしたがって調製した100μl溶解緩衝液(不安定成分、すなわち、プロテアーゼ阻害薬およびベンゾナーゼを使用直前に加えた)で、マルチチャネルピペットを用いて3回ピペッティングすることによって溶解した。プレートを室温で30分間、振盪器に置き、10分間3000rpmで遠心分離して、溶解物を清浄化し、ピペッティング中に生じ得る全ての気泡を除去した。50μlの澄んだ溶解物を取り出し、検出キットのアッセイ緩衝液−1(AB−1)50μLで1:1希釈し、2〜3回ピペッティングして混合し、その50μLを、25μl/ウェルの希釈ビーズ(下記参照)の上部のフィルタープレート膜上に加えた。
表1:溶解緩衝液成分
Figure 2016048240
フィルタープレート膜(ミリポア社、カタログ番号MABVN1250)を、25μlAB−1/ウェルで事前に湿らせた。事前に湿らすための緩衝液を、膜を乾燥させないように注意しながら、ミリポア社の真空マニホールドを用いてフィルタープレートから吸引し、全ての残っている液体をフィルタープレートの底から拭き取った。1ウェルにつき25μlの1×ビーズ懸濁液を加えた(pIRS−1ビーズ(ミリポア社、カタログ番号46−627)を、AB−1緩衝液で20×濃縮物から希釈することによって事前に調製し、ボルテックスと超音波処理を5秒間、それぞれ3回交互に行った)。
フィルタープレートのウェルをプレートシーラーで覆い、光の露光を防ぐためアルミホイルで覆い、室温で2時間または4℃で一晩のいずれかで、プレート振盪器(Labline社、Bellco社のプレート振盪器または類似のモデルで7〜8に設定)にてインキュベートした。
Luminexの検出
フィルタープレートを吸引し、それらの底を拭き取った。ビーズをウェルに残し、100μlのAB−1で洗浄し、1〜2分間振盪器に入れた。プレートを吸引し、洗浄ステップを繰り返した。
20×ストックからAB−1緩衝液で希釈した1×ビオチン化検出抗体を1ウェルにつき25μl加え、プレートを室温で1時間、振盪器にてインキュベートした。プレートを吸引し、それらの底を拭き取った。25×ストックからAB−1緩衝液で希釈した1×ストレプトアビジンフィコエリトリンを1ウェルにつき25μl加え、プレートを室温で15分間、振盪器にてインキュベートした。増幅緩衝液(ミリポア社、カタログ番号48−602)をそれぞれのウェルに25μl加え、プレートを室温でさらに15分間、振盪器にてインキュベートした。これらのプレートを吸引し、ビーズを150μLのAB−1に再懸濁し、Luminex(登録商標)装置にて読み取った。
結果
図13は、固定濃度の代表的試験抗体の存在下におけるインスリン滴定のpIRS−1アッセイ結果を示す。MFIを正規化し、曲線適合最大値を100%に調節した。いくつかの抗体(正の調節因子)は、インスリン滴定曲線を左にシフトさせた。他の抗体(負の調節因子)は、インスリン滴定曲線を右にシフトさせた。様々な規模の調節が観察された。図13のデータは、インスリン感度において最高で9倍の増加、または最高で24倍の減少をもたらす抗体を示す。
図14は、固定濃度の様々な試験抗体の存在下または非存在下における、pIRS−1アッセイのインスリンEC50値を示す表である。+Ab/−AbのEC50比に従って、結果を順位付けた。
実施例7
TNF−α/TNFR結合の動態調節因子の同定
TNFα調節因子の所望の特性はTNF−αの病的レベルのシグナル伝達を減弱させるとともに、自然免疫応答を支持するのに十分なシグナル伝達を可能にする。このようなTNF−α調節因子の同定を、TNF−α受容体(複数可)の1つまたは両方に対するTNF−αの親和性を低下させるポリペプチド結合剤(例えば、抗体)の選択を通して行う。TNF−α受容体(複数可)に対するTNF−αの親和性の低下は、速いオフ速度、遅いオン速度、低い結合定数および高い解離定数などのいくつかの標準的な分析的測定に反映される。代替法として、これを、TNFα−TNFR複合体と比較して、TNFα単独へのこのポリペプチド結合剤の優先的結合(例えば、高い結合シグナル)によって検出することができる。TNFα−TNFR複合体に対する結合シグナルがないことは、完全な遮断薬を示し、選択されない。
本実施例は、試験化合物(TNFα結合ポリペプチド)の存在下または非存在下におけるTNFR1またはTNFR2への差次的リガンド(ヒトTNFα)結合を測定するアッセイの使用について記載する。TNFR1およびTNFR2は生理学的経路において異なる役割を担うと考えられるので、これらの2つの受容体の活性を選択的に調節することが望ましい場合がある(例えば、TNFαは、主として、TNFR1との相互作用を介して炎症性反応を誘導するが、TNFR2発現は炎症性大腸炎モデルにおいて保護もたらし、TNFR1の上方制御は、虚血プレコンディショニングモデルにおいて神経保護をもたらす)。2つの受容体へのTNFαの結合の選択的調節は、異なる疾患において利点をもたらすことができ得る(Schneider et al Eur.J.Immunol.39(7):1743−53(2009);Mukai et al,J.Biochem.146(2):167−72(2009);Pradillo et al J.Cereb.Flow Metab.25(2):193−203(2005))。TNFα結合ポリペプチドを、未処理のファージディスプレイライブラリーおよびハイブリドーマなどの供給源から新たに得るか、またはインフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴール、HUMICADE(商標)、ゴリムマブ、アタシセプト、エタネルセプトなどの既知のTNFα結合ポリペプチドの変異体として作製する。
TNFα−TNFR結合相互作用の抗体調節因子を、以下に記載のアッセイを用いて同定することができる。
精製TNF(カタログ番号210−TA−010、R&D Systems社、ミネアポリス、ミネソタ州)をPEGビオチン(Pierce Protein Research Products社、カタログ番号21329、ロックフォード、イリノイ州)を用いて、活性化NHS化学を介してビオチン化する。TNFR1またはTNFR2(カタログ番号636−R1−025または1089−R2−025、R&D Systems社、ミネアポリス、ミネソタ州)を、PBS中2μg/mL、100μL/ウェルで、振盪器にてEIAプレート(Nunc社、ロチェスター、ニューヨーク州)に37℃で1時間コーティングする。その後、このプレートを牛血清アルブミン(BSA)およびChemiBlock(商標)(ミリポア社、ビレリカ、マサチューセッツ州)ブロッキング溶液で、室温で少なくとも1/2時間、振盪器にてブロッキングする。反応物に干渉せず、EIAプレートにおける非特異的結合を十分に阻止する任意のブロッキング溶液をこのアッセイに用いることができる。
希釈プレートに試料を調製する。TNFα−結合scFvまたはFabを、周辺質抽出物(PPE)またはハイブリドーマの上清としてスクリーニングすることができる。1点分析には、PPE試料を、ブロッキング緩衝液で0.15μg/mLの濃度で調製したビオチン化TNFと1:1で混合し、この溶液の50μLをEIAプレートに添加する。1点分析の有望なヒットを精製し、リガンドの滴定を用いてさらに試験するか、または固定リガンド濃度の様々な滴定で試験する。50μL/ウェルの本抗体−TNF−ビオチン溶液をブロッキングしたEIAプレートに加え、振盪器にて室温で1時間を超えてインキュベートする。PBSまたはブロッキング緩衝液のみの負の対照をこの1点分析に含め、バックグラウンドシグナルレベルを定める。ビオチン化検体および抗体混合物はウェルに残り、除去され、洗い流されることはない。その後、このプレートを、振盪器にて、室温でさらに1時間を超えてインキュベートする(ほとんどのアッセイにおいて3〜4時間の全反応時間を用いるが、長くインキュベートすると、遅い相互作用が平衡に達するようになる)。その後、このプレートを完全に洗浄し、100μL/ウェルのp−ニトロフェニルホスファターゼ(PNPP;Pierce Protein Research Products社、ロックフォード、イリノイ州)で発色させる。このプレートを5〜15分間発色させた後、100μL/ウェルの1M NaOHを用いて反応を停止させる。吸光度をマイクロプレートリーダーで405nmにて読み取る。
機能アッセイを行い、シグナル複合体成分の親和性の低下がTNFαへの細胞用量反応においてシフトを引き起こすことを確かめる。例えば、米国特許第7,524,502号および同第7,179,893号ならびに米国特許出願第2009/0155205号に記載のアッセイを含む様々な細胞ベースアッセイを、この目的のために用いることができる。
L929細胞におけるTNFαに誘導される細胞毒性の中和
TNFα感受性L929マウス線維芽細胞を、10%牛胎仔血清(FBS)を含むRPMI培地中5×10細胞の密度で96ウェル組織培養プレートに蒔く。所望の試験濃度の抗TNFα抗体または抗KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)アイソタイプ対照抗体のいずれか一方と37℃で1時間プレインキュベートした組換えTNFα(500pg/mL)を含むRPMI+FBS培地をL929細胞に加えることにより、抗体力価アッセイを行う。L929細胞に添加する前に、100倍モル過剰の抗体と室温で一晩プレインキュベートしたTNFαの漸増量を用いて、TNFα用量反応アッセイを行う。その後、これらのプレートを、5%CO中37℃で一晩(18〜24時間)インキュベートする。
TNFαに誘導される細胞毒性における効果を決定するために、100μLの培地を各ウェルから取り出し、50μLのPBS中5mg/mLの3,(4,4−ジメチルチアゾール−2−イル)2,5−ジフェニル−テトラゾリウムブロミド(MTT;Sigma Chemical社、セントルイス、ミズーリ州)を加える。その後、これらのプレートを37℃で4時間インキュベートする。50μLの20%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を各ウェルに加え、これらのプレートを37℃で一晩インキュベートする。570/630nmにおける光学密度を測定し、各試料について曲線をプロットし、標準方法によりIC50を決定する。全試料を二重または三重に準備してアッセイする。
HUVECにおけるELAM−1および/またはICAM−1発現の阻害
TNFαは、ELAM−1およびICAM−1などの内皮細胞接着分子の表面発現を誘導する。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)における膜結合ICAM−1および/またはELAM−1のTNFα刺激産生を中和する抗TNFα抗体の能力を、インビトロアッセイにおいて試験する。
簡単に説明すると、HUVEC(ATCC 番号CRL1730)を、TNFαおよび様々な濃度の試験抗体または対照抗体の存在下で、96ウェルプレートで増殖させる。その後、市販の検出試薬を用いる細胞溶解および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により、膜結合ICAM−1および/またはELAM−1の定量的相対発現をアッセイする。HUVECを、1ウェルにつき5×10細胞の密度で96ウェルプレートに蒔き、少なくとも2時間、37℃、5%COでインキュベートすることにより、このプレートに接着させる。
HUVECに組換えTNFαを含む培地を加え、所望の試験濃度の抗TNFα抗体または抗KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)アイソタイプ対照抗体のいずれか一方と37℃で1時間プレインキュベートすることにより、抗体力価アッセイを行う。HUVECに添加する前に100倍モル過剰の抗体と室温で一晩プレインキュベートした漸増量のTNFαを用いて、TNFα用量反応アッセイを行う。その後、これらのプレートを37℃で24時間、5%CO中でインキュベートする。インキュベーション後、培地を除去し、これらの細胞をPBSで洗浄する。これらの細胞を溶解し、溶解物をICAM−1および/またはELAM−1の存在下でアッセイする。アッセイには、市販の検出試薬(例えば、sICAM−1 Module set;Bender Medsystems社、タウセスター、イギリス)を用いる標準ELISAにより、溶解したICAM−1またはELAM−1の存在について澄んだ溶解物を分析する。二重または三重で全試料を準備してアッセイする。
Hs27細胞におけるTNFαが誘導するIL−6の上方制御の阻害
TNFαへの暴露により、ヒト包皮線維芽細胞を誘発して、IL−6を産生することができる。この発現の上方制御を阻害する抗TNFα抗体の能力を、これらの細胞を組換えTNFαおよび試験抗体と共にコインキュベートすることによって評価し、その後、市販のIL−6検出システムを用いて、培地中に分泌されたIL−6レベルを測定する。
(例えば、European Collection of Animal Cell Cultures(ECACC no.94041901)の)TNFα感受性ヒト包皮線維芽細胞Hs27を、96ウェル組織培養プレートに、10%牛胎仔血清を含むDMEM+Glutamax培地中2×10細胞の密度で蒔き、37℃で一晩インキュベートすることによってプレートに接着させる。Hs27細胞に所望の試験濃度の抗TNFα抗体または抗KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)アイソタイプ対照抗体のいずれか一方と37℃で1時間プレインキュベートした組換えTNFαを含む培地を加えることにより、抗体力価アッセイを行う。Hs27細胞に添加する前に100倍モル過剰の抗体と室温で一晩プレインキュベートした漸増量のTNFαを用いて、TNFα用量反応アッセイを行う。その後、これらのプレートを、5%CO中37℃で一晩(18〜24時間)インキュベートする。インキュベーション後、アッセイのために培地を取り出し、U底96ウェルプレートに移す。市販のELISAシステム(例えば、上記に記載のR&D Systems社)を用いて、この培地をIL−6の存在について分析する。二重または三重で全試料を準備してアッセイする。
実施例8
DIOマウスにおける、部分的アゴニストの抗INSR抗体の血糖管理に対する効果
食事性肥満(DIO)モデルにおいて、C57BL/6マウスは、高脂肪食(HFD)により約12〜14週後にインスリン耐性となり得る。部分的アゴニストまたは正の調節因子としてインビトロで作用することが示された抗INSR抗体をこのモデルで評価し、これらの抗体がインビボでインスリン感受性および/または血糖管理を改善するか否かを決定した。
部分的アゴニストの抗INSR抗体が空腹時血糖を低下させるか否かを決定するために、20週齢のDIOマウス(HFDにおいては14週齢、n=8/グループ)を5時間断食し、部分的アゴニスト抗体Ab030およびAb037、またはアイソタイプ対照(5mg/kg)を静脈内投与した。さらなる対照試験において、DIOマウスをインスリン(0.5U/kg)で処置するか、齢を合わせ、正常食(ND)を与えたマウスにアイソタイプ対照(5mg/kg)を投与した。注射前(時間=0)、ならびに投与後1時間、2時間および4時間目に血糖を採取した。齢を合わせた対照と比較して、DIOマウス(HFD食/アイソタイプ対照)において、1時間の時点で血糖の増加が観察され、HFD食の動物におけるインスリン耐性(図15A)と一致した。インスリンまたは部分的アゴニスト抗体のいずれか一方の投与は、血糖において統計的に有意な低下(p<0.05;片側t−検定)をもたらした(図15B)。いずれの抗体も、全ての時点で(血糖<36mg/dLと定義される)低血糖症を誘発しなかった。これらの結果は、抗INSR部分的アゴニスト抗体が安全に、効果的に空腹時血糖を低下させることを示唆する。
血糖管理に対する部分的アゴニスト抗INSR抗体の効果をさらに評価するために、18週齢のDIOマウス(HFDにおいては12週齢、n=8/グループ)に、Ab037(0.1、1.0または9mg/kg)またはアイソタイプ対照(1.0mg/kg)を腹腔内(IP)注射した。追加の対照として、年齢を合わせた対照マウスにアイソタイプ対照(1.0mg/kg)を投与するか、またはDIO動物にインスリン(0.75U/kg;IP)を与えた。16時間これらの動物を断食させ(抗体投与後約8時間目に開始)、糖(1.0U/kg)を注射し、2時間にわたって血糖を調べることにより、抗体投与後24時間目(インスリン投与後30分)に糖負荷試験(GTT)を行った。本実験において、HFDは空腹時血糖(図16B)または急速投与後の最大血糖(図16A)に有意な影響を与えなかった。それにも関わらず、DIOマウスにおいて、部分的アゴニスト抗体は、1.0mg/kg以上で投与した時、アイソタイプ対照と比較して空腹時血糖を有意に低下させ(図16B)、9.0mg/kgにおいてGTT曲線下面積(AUC)を低下させた(図16C)。
この結果は、抗INSR部分的アゴニスト抗体が空腹時血糖を低下させ、インビボの血糖管理を改善することができることを示す。
実施例9
DIOマウスにおける血糖管理に対する正の調節因子抗INSR抗体の効果
正の調節因子抗INSR抗体がインビボのインスリン感受性を改善するか否かを調べるために、18週齢のDIOマウス(n=8/グループ)に、Ab001(正の調節因子)(0.1、1.0または10mg/kg)、部分的アゴニスト抗体(Ab037)(10mg/kg)またはアイソタイプ対照(1.0mg/kg)をIP注射した。齢を合わせ、NDを与えたマウスにアイソタイプ対照(1.0mg/kg)を投与し、これを追加の対照とした(図17A)。5時間の断食後、インスリン(0.5U/kg)を投与し、2時間にわたって血糖を監視することにより、24時間後にインスリン負荷試験(ITT)を行った。HFDは、通常食に対して、空腹時血糖(図17B)またはITT AUC(図17C)に有意な影響を与えず、部分的アゴニスト抗体(Ab037)または正の調節因子抗体(Ab001)の投与のいずれも、アイソタイプ対照で処理したDIO動物と比較して、総計的に有意に低いAUC ITTをもたらさなかった(図17C)。部分的アゴニスト抗体(Ab037)は空腹時血糖を有意に低下させたが、正の調節因子の抗体Ab001は、統計的に有意ではなく、用量依存的な空腹時血糖の低下の傾向をもたらした。
翌週、抗体の追加投与後、同じ動物でGTTを行った(図18A)。本試験において、HFDは、対照を与えた動物と比較して、空腹時血糖(図18B)およびGTT AUC(図18C)において非統計的な増加をもたらした。アイソタイプ対照処理DIOマウスと比較して、部分的アゴニスト抗体および正の調節因子の抗体は、全投与試験で空腹時血糖を有意に低下させた。さらに、部分的アゴニスト抗体および正の調節因子の抗体は、アイソタイプ対照に対して、10mg/kgにてGTT AUCを有意に低下させた。
これらの結果は、INSRに特異的な部分的アゴニスト抗体および正の調節因子の抗体が糖尿病対象において血糖管理を改善することを示唆する。
実施例10
受容体に対するアロステリックアゴニスト抗体のパニング
遊離受容体よりも受容体/リガンド複合体に強い結合を示すアゴニスト抗体の選択は、リガンドに非競合的であり、受容体のオルソステリック部位へのリガンドの結合を阻止しないか、または減少させない抗体の同定の可能性を高める。内在性の結合部位とは異なる標的受容体上の部位に結合するこの種の抗体は、アロステリックアゴニストとして知られる(Kenakin et al.,J Receptors and Signal Transduction,27:247−259,2007;Jahns et al.,J Am Coll Cardiol.36:1280−87,2000;May et al.,Ann Rev Toxicol.47:1−51,2007)。
アゴニスト抗体をスクリーニングする上に記載の方法は、アロステリックアゴニストのスクリーニングにも有用である。受容体リガンド複合体への試験抗体の選択的結合は、アロステリック活性と一致するが、遊離受容体への試験抗体の選択的結合は、オルソステリック部位に対してインスリンと競合する抗体と一致する。このスクリーニングは、競合アゴニストの全てではないがいくつかを減少させることによって、アロステリックアゴニストの候補クローンのプールを濃縮するのに有用である。
アロステリック抗体は、リガンドの結合親和性および有効性に干渉する可能性がより低いので、最大のリガンドシグナル伝達またはリガンドへの最大感度に干渉する可能性がより低い。アロステリック抗体は、弱い部分的アゴニストから内在性リガンドと類似のアゴニズムレベルまでの様々なアゴニズムを示し得る。部分的アロステリックアゴニストは、内在性リガンドの最大反応よりも規模が非常に低い最大のシグナル伝達反応を引き起こす。いくつかの適用において、持続性の準最大のシグナル活性が最大シグナル活性を超えることが好ましい場合、部分的アゴニスト抗体は、完全のアゴニスト抗体よりも好ましい。部分的アロステリックアゴニストおよび正のアロステリック調節因子との間の際立った特徴は、INSRに特異的な抗体を用いて例証されるように、部分的アロステリックアゴニスト(図19)および正のアロステリック調節因子(増感剤)抗体(図20)の異なる結合曲線を示す図19および20に示す用量反応曲線の比較から明らかである。
図19Aは、内在性リガンド(インスリン)に対する用量反応と比較して、部分的アロステリックアゴニストの用量反応の例を示し、図19Bは、アロステリックアゴニストの存在下または非存在下におけるリガンドによる活性化を示す。図20Aは、内在性リガンドに対する用量反応と比較して、正のアロステリック調節因子の抗体の用量反応を示し、図20Bは、INSRに結合する正のアロステリック調節因子の抗体の存在下または非存在下における内在性リガンド(インスリン)の用量反応曲線を示す。図21は、内在性リガンドに対する部分的アロステリックアゴニストの一組の活性化パラメータを提供する。部分的アロステリックアゴニストによるシグナル活性化の性質は、同じ1次スクリーニング法から得られるアロステリック調節因子のシグナル活性化の性質とはっきりと異なる。
部分的アゴニストと内在性リガンドの両方による非依存的なシグナル活性化を同時に有することが有益である場合、非競合的な部分的アロステリックアゴニスト抗体は、競合アゴニストを超える治療上の利点を提供することができる。例えば、理論に縛られることなく、部分的アロステリックアゴニストを用いて、シグナル伝達経路の基本的な活性化を高めることができるが、なお、内在性リガンドレベルの一過的な変動に由来する反応を認める。特定の場合において、この種の部分的アロステリックアゴニストが存在する条件下で、内在性リガンドの用量反応は、ベースライン(恒常的または基本)のシグナル伝達レベルの増加を示し、内在性リガンドに対して同じかまたはそれ以上の最大反応に達するが、リガンドEC50にはほとんどまたは全く著しい変化はない。例えば、図19Bは、部分的アロステリックアゴニストの存在下または非存在下における内在性リガンドの用量反応を示し、図22は、負の対照抗体の存在下における内在性リガンドに対する最大反応と比較した、部分的アロステリックアゴニスト抗体の存在下におけるインスリンの最大活性化を示す。図22は、同じアッセイにおける負の対照抗体と比較した時、部分的アロステリックアゴニスト抗体Ab037およびAb040が、用量反応のEC50およびインスリンによるSer473におけるAkt最大のリン酸化にほとんどまたは全く著しい影響を与えないことを示す。
実施例21
抗INSR抗体によるINSRに対するインスリン結合親和性の調節を測定するアッセイ
インスリン受容体へのインスリンの結合に影響を与える調節抗体の能力を測定するために、INSRに対するモノクローナル抗体の存在下または非存在下において、血清飢餓状態のCHOK1細胞(hINSR8−CHOK1)の表面で発現させたヒトINSRへの無修飾インスリン結合の親和性を測定した。細胞培地における非常に低レベルのインスリンを測定するためにKinExAアッセイを開発した。このアッセイは、細胞培地からのインスリン枯渇のレベルを決定することによって、INSRを発現する細胞へのインスリンの結合を測定することを可能にした。インスリンがこれらの細胞に結合すると、細胞培地中のインスリンの濃度は低下した。INSRを発現する細胞の滴定を用いて、遊離インスリンの割合を測定することによって、INS−INSR相互作用の親和性を、KinExAソフトウェアを用いて推定することができ得る。このアッセイは、様々な抗INSR抗体によって示されるインスリン結合活性の調節の程度を測定するために用いられた。
hINSR8−CHOK1細胞を一晩血清飢餓状態にし、その後、細胞をペレット化し、(500μg/mLのBSAおよび0.1%アジ化ナトリウム(Sigma−Aldrich社、セントルイス、ミズーリ州)を含むPBS(Teknova社、ホリスター、カリフォルニア州)のアッセイ希釈緩衝液中3.5×10と2.0×10細胞/mLの間の)最大希釈のために、2×最終アッセイ濃度で再懸濁することによってアッセイの準備をした。細胞の2倍の段階希釈を行い10点の希釈系列を作り、細胞を含まない対照も用いた。細胞懸濁液を、それぞれ2mL体積のポリプロピレンアッセイチューブに一定分量ずつ分けた。これらの細胞懸濁液に、40μg/mL試験抗体(またはAb078については100μg/mL)1mLをそれぞれのチューブに加え、穏やかに混合し、氷上で30〜45分間インキュベートした。用いた抗体を、負の対照ヒトIgG2抗KLH抗体と比較して試験した。200pMインスリン1mLをそれぞれのチューブに加え、50pM(300pg/mL)(Sigma−Aldrich社、セントルイス、ミズーリ州)の最終インスリン濃度を確立した。試料を4℃で一晩18時間インキュベートした後、遠心分離をして細胞をペレット化し、上清を試験するために取り出した。
抗インスリンモノクローナル抗体でコーティングしたビーズを用いて、KinExA 3000分析を行った。2gのポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)ビーズ(Sapidyne社、ボイシ、アイダホ州)を、65μg/mLのクローンD6C4マウス抗インスリンモノクローナル抗体(Fitzgerald Industries社、アクトン、マサチューセッツ州)を含むアッセイ緩衝液PBS9mLに懸濁した。ビーズを室温で6時間回転させた後、静置させた。上清を、50mg/mLのBSAフラクションV(Sigma−Aldrich社、セントルイス、ミズーリ州)を含むPBSと置換し、一晩4℃で回転させた。用いた検出溶液は、ストレプトアビジン−PE(インビトロジェン社、カールスバッド、カリフォルニア州)を1μg/mL含むアッセイ希釈緩衝液中0.15μg/mLの濃度のビオチン化マウス抗インスリンクローンD3E7(Fitzgerald Industries社、アクトン、マサチューセッツ州)であった。KinExA 3000において、240秒間、0.25mL/分で試料を注入した後、ランニング緩衝液(0.05%アジ化ナトリウムを含むPBS)で60秒間すすぎ、その後、240秒間、検出溶液を注入し、最後の90秒間、1mL/分で洗浄した。初期の時点および試験の最後に近い時点での電圧の差異を測定し、親和性を計算するのに用いた。細胞のINSR濃度を2.5×10受容体/細胞と推定した。親和性を、KinExAソフトウェア(Sapidyne社、ボイシ、アイダホ州)を用いて決定し、EC50を、Prism(GraphPad Software社、ラホヤ、カリフォルニア州)での非線形あてはめによって計算した。
以下の表4に示す通り、いくつかの抗INSR抗体が、細胞に対するインスリンの親和性を高めた。試験抗体の1つは、細胞に対するインスリンの親和性を約3倍減少させた。
(表4)インスリン親和性およびIC50の表
Figure 2016048240
これらのデータは、本明細書記載のスクリーニング法が、インスリン受容体に対するインスリンの結合親和性を強める正の調節因子の抗体を生み出すことを示す。
本発明の特定の実施形態を例証の目的で本明細書に記載したが、様々な改良、実施形態の変化および組み合わせが、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく行われ得ることは、前述のことから理解されるであろう。このような改良、変化および組み合わせは、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
[本発明1001]
シグナル伝達複合体の第1の成分と第2の成分の間の結合を調節する候補動態調節抗体を同定する方法であって、
(a)試験抗体の存在下で、前記第2の成分に対する前記第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータを測定するステップと、
(b)前記試験抗体の非存在下で、前記第2の成分に対する前記第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータを測定するステップと、
(c)前記試験抗体が、ステップ(a)および(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータにおいて1.5倍〜1000倍の差を示す時に、前記試験抗体を候補動態調節抗体として同定するステップと
を含む、前記方法。
[本発明1002]
前記試験抗体が、前記第1の成分と前記第2の成分の間の結合親和性または結合速度パラメータを約1.5倍〜1000倍強める場合、前記試験抗体が正の調節抗体の候補として同定される、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記試験抗体が、前記第1の成分と前記第2の成分の間の結合親和性または結合速度パラメータを約2倍〜200倍強める、本発明1002の方法。
[本発明1004]
前記試験抗体が、前記第1の成分と前記第2の成分の間の結合親和性または結合速度パラメータを約1.5倍〜1000倍弱める場合、前記試験抗体が負の調節抗体の候補として同定される、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記試験抗体が、前記第1の成分と前記第2の成分の間の結合親和性または結合速度パラメータを約2倍〜200倍弱める、本発明1004の方法。
[本発明1006]
シグナル伝達複合体の第1の成分と第2の成分の間の結合を調節する候補動態調節抗体を同定する方法であって、
(a)(i)前記第2の成分の存在下で、前記第1の成分に対する試験抗体の結合親和性もしくは結合速度パラメータを測定するか、または(ii)前記第1の成分の存在下で、前記第2の成分に対する試験抗体の結合親和性もしくは結合速度パラメータを測定するステップと、
(b)(i)前記第2の成分の非存在下で、前記第1の成分に対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータを測定するか、または(ii)前記第1の成分の非存在下で、前記第2の成分に対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータを測定するステップと、
(c)前記試験抗体が、ステップ(a)および(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータにおいて1.5倍〜1000倍の差を示す時に、前記試験抗体を候補動態調節抗体として同定するステップと
を含む、前記方法。
[本発明1007]
ステップ(a)で測定される結合親和性または結合速度パラメータが、ステップ(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータよりも約1.5倍〜1000倍強い場合、前記試験抗体が正の調節抗体の候補として同定される、本発明1006の方法。
[本発明1008]
ステップ(a)で測定される結合親和性または結合速度パラメータが、ステップ(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータよりも約2倍〜200倍強い、本発明1007の方法。
[本発明1009]
ステップ(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータが、ステップ(a)で測定される結合親和性または結合速度パラメータよりも約1.5倍〜1000倍強い場合、前記試験抗体が負の調節抗体の候補として同定される、本発明1006の方法。
[本発明1010]
ステップ(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータが、ステップ(a)で測定される結合親和性または結合速度パラメータよりも約2倍〜200倍強い、本発明1009の方法。
[本発明1011]
前記第1の成分のみに対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータが測定される、本発明1006〜1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記第2の成分のみに対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータが測定される、本発明1006〜1011のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記第1の成分および第2の成分を含む複合体に対する試験抗体の結合親和性K が、約10 −5 −1 以下であり、前記試験抗体は前記第1の成分のみまたは前記第2の成分のみのいずれか一方に検出可能な程度で結合しない、本発明1001〜1012のいずれかの方法。
[本発明1013]
(A)前記第1の成分(C1)および第2の成分(C2)を含む複合体に対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK [C1C2]M 、(B)前記抗体および前記第2の成分を含む複合体に対する前記第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK [MC2]C1 、または(C)前記抗体および前記第1の成分を含む複合体に対する前記第2の成分の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK [MC1]C2 からなる群から選択される結合親和性または結合速度パラメータが、(1)前記第2の成分のみに対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK MC2 または(2)前記第1の成分のみに対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK MC1 からなる群から選択される結合親和性または結合速度パラメータよりも約1.5倍〜1000倍強い場合、前記試験抗体(M)が正の調節抗体の候補として同定される、本発明1001〜1012のいずれかの方法。
[本発明1014]
(A)、(B)または(C)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータが、(1)または(2)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータよりも約2倍または200倍強い、本発明1013の方法。
[本発明1015]
(A)、(B)または(C)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータが、(1)と(2)の両方の結合親和性または結合速度パラメータよりも約1.5倍〜1000倍強い、本発明1013の方法。
[本発明1016]
(A)、(B)または(C)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータが、(1)と(2)の両方の結合親和性または結合速度パラメータよりも約2倍〜200倍強い、本発明1013の方法。
[本発明1017]
(1)の結合親和性または結合速度パラメータが、(2)の結合親和性または結合速度パラメータよりも強い、本発明1013〜1016のいずれかの方法。
[本発明1018]
(2)の結合親和性または結合速度パラメータが、(1)の結合親和性または結合速度パラメータよりも強い、本発明1013〜1016のいずれかの方法。
[本発明1019]
前記結合親和性が平衡解離定数K であり、K [C1C2]M 、K [MC2]C1 、またはK [MC1]C2 のいずれか1つ以上がK MC2 またはK MC1 のいずれか1つ以上よりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1013の方法。
[本発明1020]
[C1C2]A がK MC2 よりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1019の方法。
[本発明1021]
[AC2]C1 がK MC2 よりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1019の方法。
[本発明1022]
[AC1]C2 がK MC2 よりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1019の方法。
[本発明1023]
[C1C2]A がK MC1 よりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1019の方法。
[本発明1024]
[AC2]C1 がK MC1 よりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1019の方法。
[本発明1025]
[AC1]C2 がK MC1 よりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1019の方法。
[本発明1026]
前記結合親和性が平衡結合定数K であり、K [C1C2]M 、K [MC2]C1 、またはK [MC1]C2 のいずれか1つ以上がK MC2 またはK MC1 のいずれか1つ以上よりも約1.5倍〜1000倍高い、本発明1013の方法。
[本発明1027]
(1)前記第2の成分(C2)のみに対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK MC2 または(2)前記第1の成分(C1)のみに対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK MC1 からなる群から選択される結合親和性または結合速度パラメータが、(A)前記第1の成分および第2の成分を含む複合体に対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK [C1C2]M 、(B)前記抗体および前記第2の成分を含む複合体に対する前記第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK [MC2]C1 、または(C)前記抗体および前記第1の成分を含む複合体に対する前記第2の成分の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK [MC1]C2 からなる群から選択される結合親和性または結合速度パラメータよりも約1.5倍〜1000倍強い場合、前記試験抗体(M)が負の調節抗体の候補として同定される、本発明1001〜1012のいずれかの方法。
[本発明1028]
(1)または(2)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータが、(A)、(B)または(C)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータよりも約2倍または200倍強い、本発明1027の方法。
[本発明1029]
(1)または(2)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータが、(A)、(B)および(C)の全ての結合親和性または結合速度パラメータよりも約1.5倍〜1000倍強い、本発明1027の方法。
[本発明1030]
(1)または(2)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータが、(A)、(B)および(C)の全ての結合親和性または結合速度パラメータよりも約2倍〜200倍強い、本発明1027の方法。
[本発明1031]
(1)の結合親和性または結合速度パラメータが(2)の結合親和性または結合速度パラメータよりも強い、本発明1027〜1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
(2)の結合親和性または結合速度パラメータが(1)の結合親和性または結合速度パラメータよりも強い、本発明1027〜1030のいずれかの方法。
[本発明1033]
前記結合親和性が平衡解離定数K であり、K MC2 またはK MC1 のいずれかがK [C1C2]M 、K [C2]C1 、またはK [MC1]C2 のいずれかよりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1027の方法。
[本発明1034]
MC2 がK [C1C2]M よりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1033の方法。
[本発明1035]
MC2 がK [MC2]C1 よりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1033の方法。
[本発明1036]
MC2 がK [MC1]C2 よりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1033の方法。
[本発明1037]
MC1 がK [C1C2]M よりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1033の方法。
[本発明1038]
MC1 がK [MC2]C1 よりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1033の方法。
[本発明1039]
MC1 がK [MC1]C2 よりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1033の方法。
[本発明1040]
前記結合親和性が平衡結合定数K であり、K MC2 またはK MC1 のいずれか1つ以上がK [C1C2]M 、K [MC2]C1 、またはK [MC1]C2 のいずれか1つ以上よりも約1.5倍〜1000倍高い、本発明1027の方法。
[本発明1041]
ステップ(a)において、前記試験抗体および第2の成分が、複数の異なる濃度の前記第1の成分と接触する、本発明1001〜1040のいずれかの方法。
[本発明1042]
ステップ(a)において、前記試験抗体および第1の成分が、複数の異なる濃度の前記第2の成分と接触する、本発明1001〜1040のいずれかの方法。
[本発明1043]
ステップ(a)において、複数の異なる濃度の前記試験抗体が前記第1の成分および前記第2の成分と接触する、本発明1001〜1040のいずれかの方法。
[本発明1044]
前記試験抗体が結合する抗原が前記第1の成分であり、前記試験抗体が前記第1の成分の濃度と比較して飽和濃度である、本発明1002〜1006のいずれかの方法。
[本発明1045]
前記試験抗体が結合する抗原が前記第2の成分であり、前記試験抗体が前記第2の成分の濃度と比較して飽和濃度である、本発明1002〜1006のいずれかの方法。
[本発明1046]
前記試験抗体の濃度が、前記第1の成分および前記第2の成分を含む複合体に対する前記試験抗体のK より高いか、またはそれに等しい、本発明1044または1045の方法。
[本発明1047]
前記第2の成分の濃度が前記第1の成分に対する前記試験抗体のK より低い、本発明1046の方法。
[本発明1048]
前記第1の成分の濃度が、第2の成分への第1の成分の結合に対する飽和濃度である、本発明1047の方法。
[本発明1049]
前記第1の成分の濃度が、前記第1の成分と前記第2の成分の相互作用に対する約EC 20 〜EC 80 の範囲内にある、本発明1048の方法。
[本発明1050]
1つ以上の濃度の前記試験抗体が、1つ以上の濃度の前記第2の成分の存在下で、複数の異なる濃度の前記第1の成分と接触する、本発明1002〜1006のいずれかの方法。
[本発明1051]
1つ以上の濃度の前記試験抗体が、1つ以上の濃度の前記第1の成分の存在下で、複数の異なる濃度の前記第2の成分と接触する、本発明1002〜1006のいずれかの方法。
[本発明1052]
前記試験抗体が第1の成分および第2の成分を含む複合体に対して飽和濃度である、本発明1007〜1008または1013〜1026のいずれかの方法。
[本発明1053]
前記試験抗体の濃度が、第1の成分および第2の成分を含む複合体に対する前記試験抗体のK より高いか、またはそれに等しい、本発明1052の方法。
[本発明1054]
前記第2の成分の濃度が前記第1の成分に対する前記第2の成分のK より高い、本発明1053の方法。
[本発明1055]
前記第1の成分の濃度が前記第2の成分に対して飽和濃度である、本発明1054の方法。
[本発明1056]
前記試験抗体が第1の成分および第2の成分を含む複合体に対して亜飽和濃度である、本発明1007〜1008または1013〜1026のいずれかの方法。
[本発明1057]
前記抗体の濃度が、前記第1の成分と前記第2の成分の相互作用に関して約EC 20 〜EC 80 の範囲内にある、本発明1056の方法。
[本発明1058]
前記第2の成分の濃度が前記第1の成分に対する前記第2の成分のK より高い、本発明1057の方法。
[本発明1059]
前記第1の成分の濃度が前記第2の成分に対して飽和濃度である、本発明1058の方法。
[本発明1060]
前記試験抗体が結合する抗原が前記第1の成分であり、前記試験抗体が前記第1の成分に対して亜飽和濃度である、本発明1009〜1010または1027〜1040のいずれかの方法。
[本発明1061]
前記抗体の濃度が、前記第1の成分と前記第2の成分の相互作用に対する約EC 20 〜EC 80 の範囲内にある、本発明1060の方法。
[本発明1062]
前記第2の成分の濃度が前記第1の成分に対する前記第2の成分のK より高い、本発明1061の方法。
[本発明1063]
前記第1の成分の濃度が前記第2の成分に対して飽和濃度である、本発明1062の方法。
[本発明1064]
前記試験抗体が結合する抗原が前記第2の成分であり、前記試験抗体が前記第2の成分に対して亜飽和濃度である、本発明1009〜1010または1027〜1040のいずれかの方法。
[本発明1065]
前記抗体の濃度が、前記第1の成分と前記第2の成分の相互作用に対する約EC 20 〜EC 80 の範囲内にある、本発明1060の方法。
[本発明1066]
前記第2の成分の濃度が前記第1の成分に対する前記第2の成分のK より高い、本発明1061の方法。
[本発明1067]
前記第1の成分の濃度が前記第2の成分に対して飽和濃度である、本発明1062の方法。
[本発明1068]
ステップ(a)の前に、前記第1の成分および前記第2の成分を含む複合体に対する結合親和性について複数の試験抗体をアッセイすることをさらに含み、任意で10 −5 Mの平衡解離定数K またはより強い結合親和性である、本発明1001〜1067のいずれかの方法。
[本発明1069]
ステップ(a)の前に、前記第1の成分に対する結合親和性について複数の試験抗体をアッセイすることをさらに含み、任意で10 −5 Mの平衡解離定数K またはより強い結合親和性である、本発明1001〜1068のいずれかの方法。
[本発明1070]
ステップ(a)の前に、前記第2の成分に対する結合親和性について複数の試験抗体をアッセイすることをさらに含み、任意で10 −5 Mの平衡解離定数K またはより強い結合親和性である、本発明1001〜1069のいずれかの方法。
[本発明1071]
ステップ(a)の前に、1つ以上の異なる変異を親の抗体に導入することにより、親の抗体の変異体である複数の試験抗体を産生することをさらに含む、本発明1001〜1070のいずれかの方法。
[本発明1072]
前記試験抗体の存在下および非存在下で、結合パートナーに対する前記第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータを測定することをさらに含み、その際、前記結合パートナーが前記第2の成分ではない、本発明1001〜1071のいずれかの方法。
[本発明1073]
前記結合パートナーがデコイ受容体、クリアランス受容体、または別のシグナル経路の成分である、本発明1072の方法。
[本発明1074]
前記結合パートナーに対する前記第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータを著しく変化させない試験抗体を同定することを含む、本発明1072または1073の方法。
[本発明1075]
前記試験抗体が、抗体断片、scFv、Fab、CDR、げっ歯類の抗体、哺乳類の抗体、ヒトの抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体からなる群から選択される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1076]
前記試験抗体がモノクローナル抗体である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1077]
前記結合親和性または結合速度パラメータが、平衡結合定数K 、平衡解離定数K 、オン速度、オフ速度および前述のいずれかの代替パラメータからなる群から選択される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1078]
前記代替パラメータが、前記第1の成分または前記第2の成分のいずれか一方の亜飽和濃度における前記第2の成分への前記第1の成分の結合の量またはレベルである、本発明1077の方法。
[本発明1079]
前記試験抗体、前記第1の成分、および前記第2の成分の全てが溶液中にある、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1080]
前記試験抗体、前記第1の成分、および前記第2の成分のうちの1つが固相に結合している、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1081]
前記結合が非共有結合である、本発明1080の方法。
[本発明1082]
前記試験抗体、前記第1の成分、および前記第2の成分のうちの1つがビーズ上にコーティングされている、本発明1080の方法。
[本発明1083]
前記第1の成分または第2の成分のうちの少なくとも1つが細胞表面上で発現する、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1084]
前記第1の成分が細胞表面上で発現し、前記第2の成分が異なる細胞表面上で発現する、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1085]
前記第1の成分が可溶性リガンドであり、前記第2の成分が膜結合受容体である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1086]
前記第1の成分が膜結合受容体であり、前記第2の成分が可溶性リガンドである、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1087]
前記第1の成分が膜結合リガンドであり、前記第2の成分が膜結合受容体である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1088]
前記膜結合受容体が7回膜貫通型受容体、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、アドレナリン受容体、神経伝達物質受容体、嗅覚受容体、オピオイド受容体、ケモカイン受容体、ロドプシン、受容体型チロシンキナーゼ、成長因子受容体、インテグリン、およびtoll様受容体からなる群から選択される、本発明1086または1087の方法。
[本発明1089]
前記第1の成分が酵素であり、前記第2の成分が前記酵素の基質である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1090]
前記第1の成分が2つ以上の化合物の複合体である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1091]
前記第2の成分が2つ以上の化合物の複合体である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1092]
前記第1の成分がサイトカインまたはケモカインであり、前記第2の成分が前記第1の成分の受容体である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1093]
前記第1の成分が成長因子であり、前記第2の成分が前記第1の成分の受容体である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1094]
前記第1の成分がIL−1βであり、前記第2の成分がIL−1受容体I型(IL−1RI)である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1095]
前記試験抗体の存在下および非存在下における、第3の成分に対する前記第1の成分および/または前記第2の成分の結合親和性または結合速度パラメータを測定することをさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1096]
前記第1の成分がIL−1βであり、前記第2の成分がIL−1RIであり、前記第3の成分がIL−1受容体アクセサリータンパク質(IL−1RAcP)である、本発明1095の方法。
[本発明1097]
前記試験抗体の存在下または非存在下で、IL−1βとIL−1RAcPの間の結合親和性または結合速度パラメータにおいて、2倍を超える差を示さない試験抗体を同定することをさらに含む、本発明1096の方法。
[本発明1098]
前記第1の成分がGCSFであり、前記第2の成分がGCSFRである、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1099]
前記第1の成分がGCSFRであり、前記第2の成分がGCSFである、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1100]
前記第1の成分がTNFαであり、前記第2の成分がTNFR1またはTNFR2である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1101]
前記第1の成分がTNFR1またはTNFR2であり、前記第2の成分がTNFαである、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1102]
ステップ(c)において同定された抗体をリクローニングし、発現させることをさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1103]
ステップ(c)において同定された抗体を精製することをさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1104]
ステップ(c)において同定された抗体の配列を決定することをさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1105]
Fc領域またはその断片を付加するか、または置換することをさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1106]
ステップ(c)において同定された試験抗体の少なくとも3つのCDRを含む抗体を、無菌の薬学的に許容される希釈剤で無菌の組成物中に製剤化することをさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1107]
ステップ(c)において同定された試験抗体の少なくとも3つのCDRを含む抗体を動物に投与することをさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1108]
前記試験抗体の存在下および非存在下において、前記シグナル伝達複合体によって媒介されるシグナル伝達のレベルを測定することをさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1109]
前記シグナル伝達複合体によって媒介されるシグナル伝達のレベルが、リン酸化アッセイ、イオン流束アッセイ、分子輸送アッセイ、または遺伝子発現アッセイで測定される、本発明1108の方法。
[本発明1110]
前記試験抗体が、前記シグナル伝達複合体の前記第1の成分のEC 50 を約1.5倍〜約1000倍増加させる、本発明1108〜1109のいずれかの方法。
[本発明1111]
前記試験抗体が、前記第1の成分によって引き起こされるシグナル伝達の最大アゴニスト反応を著しく変化させない、本発明1108〜1109のいずれかの方法。
[本発明1112]
前記試験抗体が、前記シグナル伝達複合体によって引き起こされるシグナル伝達の最大アゴニスト反応を約1.5倍〜1000倍低下させる、本発明1108〜1109のいずれかの方法。
[本発明1113]
前記試験抗体が、前記シグナル伝達複合体によって引き起こされるシグナル伝達のEC50を約1.5倍〜約1000倍減少させる、本発明1108〜1109のいずれかの方法。
[本発明1114]
前記抗体候補が、前記第1の成分によって引き起こされるシグナル伝達の最大アゴニスト反応を少なくとも10%増加させる、本発明1108〜1109のいずれかの方法。
[本発明1115]
前記抗体候補が、前記第1の成分、前記第2の成分、または前記第1および第2の成分を含む前記シグナル伝達複合体のクリアランスを著しく減少させない、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1116]
前記本発明のいずれかの方法によって同定される抗体。
[本発明1117]
10 −5 M以下の平衡解離定数K で配列番号1〜88のいずれかの分泌タンパク質に結合し、前記分泌タンパク質とそのシグナル伝達パートナーの間の結合親和性K を約1.5倍〜1000倍改善することができる、正の調節抗体。
[本発明1118]
前記正の調節抗体が、前記分泌タンパク質とそのシグナル伝達パートナーの間の結合親和性K を約2倍〜200倍改善することができる、本発明1117の抗体。
[本発明1119]
10 −5 M以下の平衡解離定数K で配列番号1〜88のいずれかの分泌タンパク質に結合し、前記分泌タンパク質とそのシグナル伝達パートナーの間の結合親和性K を約1.5倍〜1000倍低下させることができる、負の調節抗体。
[本発明1120]
前記負の調節抗体が、前記分泌タンパク質とそのシグナル伝達パートナーの間の結合親和性K を約2倍〜200倍低下させることができる、本発明1119の抗体。
[本発明1121]
シグナル伝達複合体の第2の成分(C2)への第1の成分(C1)の結合を強める正の調節抗体(M)であって、前記抗体が、以下の平衡解離定数K の結合特性によって特徴づけられ:(i)前記抗体が、10 −5 M以下の平衡解離定数K で、C1、C2、またはC1およびC2を含む複合体(C1C2)のいずれか1つに結合する;および(ii)K [C1C2]M 、K [MC2]C1 、またはK [MC1]C2 のいずれか1つ以上が、K MC2 またはK MC1 のいずれか1つ以上よりも約1.5倍〜1000倍低い、
C1またはC2が、配列番号1〜88のいずれかの分泌タンパク質である、前記正の調節抗体。
[本発明1122]
[C1C2]M 、K [MC2]C1 、またはK [MC1]C2 のいずれか1つ以上が、K MC2 またはK MC1 のいずれかよりも約2倍〜200倍低い、本発明1121の正の調節抗体。
[本発明1123]
[C1C2]M 、K [MC2]C1 、またはK [MC1]C2 のいずれか1つ以上が、K MC2 またはK MC1 の両方よりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1121の正の調節抗体。
[本発明1124]
シグナル伝達複合体の第2の成分(C2)への第1の成分(C1)の結合を弱める負の調節抗体(M)であって、前記抗体が、以下の平衡解離定数K の結合特性によって特徴づけられ:(i)前記抗体が、10 −5 M以下の平衡解離定数K で、C1、C2、またはC1およびC2を含む複合体(C1C2)のいずれか1つに結合する;および(ii)K MC2 またはK MC1 のいずれか1つ以上が、K [C1C2]M 、K [MC2]C1 、またはK [MC1]C2 のいずれか1つ以上よりも約1.5倍〜1000倍低い、
C1またはC2が、配列番号1〜88のいずれかの分泌タンパク質である、前記負の調節抗体。
[本発明1125]
AC2 またはK AC1 のいずれか1つ以上が、K [C1C2]M 、K [MC2]C1 、またはK [MC1]C2 のいずれか1つ以上よりも約2倍〜200倍低い、本発明1124の負の調節抗体。
[本発明1126]
AC2 またはK AC1 のいずれか1つ以上が、K [C1C2]M 、K [MC2]C1 、またはK [MC1]C2 の全てよりも約1.5倍〜1000倍低い、本発明1124の負の調節抗体。
[本発明1127]
10 −5 M以下の平衡解離定数K で、(i)IL−1β、(ii)IL−1R1、または(iii)IL−1βおよびIL−1R1を含む複合体のいずれか1つに結合し、IL−1βとIL−1R1の間の結合親和性K を約1.5倍〜1000倍強めることができる、正の調節抗体。
[本発明1128]
10 −5 M以下の平衡解離定数K で、(i)IL−1β、(ii)IL−1R1、または(iii)IL−1βおよびIL−1R1を含む複合体のいずれか1つに結合し、IL−1βとIL−1R1の間の結合親和性K を約1.5倍〜1000倍弱めることができる、負の調節抗体。
[本発明1129]
10 −5 M以下の平衡解離定数K で、(i)TNFα、(ii)TNFR1、または(iii)TNFαおよびTNFR1を含む複合体のいずれか1つに結合し、TNFαとTNFR1の間の結合親和性K を約1.5倍〜1000倍強めることができる、正の調節抗体。
[本発明1130]
10 −5 M以下の平衡解離定数K で、(i)TNFα、(ii)TNFR1、または(iii)TNFαおよびTNFR1を含む複合体のいずれか1つに結合し、TNFαとTNFR1の間の結合親和性K を約1.5倍〜1000倍弱めることができる、負の調節抗体。
[本発明1131]
10 −5 M以下の平衡解離定数K で、(i)TNFα、(ii)TNFR1、または(iii)TNFαおよびTNFR2を含む複合体のいずれか1つに結合し、TNFαとTNFR2の間の結合親和性K を約1.5倍〜1000倍強めることができる、正の調節抗体。
[本発明1132]
10 −5 M以下の平衡解離定数K で、(i)TNFα、(ii)TNFR1、または(iii)TNFαおよびTNFR2を含む複合体のいずれか1つに結合し、TNFαとTNFR2の間の結合親和性K を約1.5倍〜1000倍弱めることができる、負の調節抗体。
[本発明1133]
10 −5 M以下の平衡解離定数K で、(i)GCSF、(ii)GCSFR、または(iii)GCSFおよびGCSFRを含む複合体のいずれか1つに結合し、GCSFとGCSFRの間の結合親和性K を約1.5倍〜1000倍強めることができる、正の調節抗体。
[本発明1134]
10 −5 M以下の平衡解離定数K で、(i)GCSF、(ii)GCSFR、または(iii)GCSFおよびGCSFRを含む複合体のいずれか1つに結合し、GCSFとGCSFRの間の結合親和性K を約1.5倍〜1000倍弱めることができる、負の調節抗体。
[本発明1135]
10 −5 M以下の平衡解離定数K で、(i)インスリン、(ii)インスリン受容体、または(iii)インスリンおよびインスリン受容体を含む複合体のいずれか1つに結合し、インスリンとインスリン受容体の間の結合親和性K を約1.5倍〜1000倍強めることができる、正の調節抗体。
[本発明1136]
10 −5 M以下の平衡解離定数K で、(i)インスリン、(ii)インスリン受容体、または(iii)インスリンおよびインスリン受容体を含む複合体のいずれか1つに結合し、インスリンとインスリン受容体の間の結合親和性K を約1.5倍〜1000倍弱めることができる、負の調節抗体。
[本発明1137]
精製モノクローナル抗体である、本発明1117〜1136のいずれかの抗体。
[本発明1138]
本発明1116〜1137の抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチド。
[本発明1139]
本発明1116〜1137の抗体のいずれかの重鎖をコードするポリヌクレオチド。
[本発明1140]
本発明1116〜1137の抗体のいずれかの軽鎖をコードするポリヌクレオチド。
[本発明1141]
本発明1138〜1140のいずれかのポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
[本発明1142]
本発明1139または1140のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
[本発明1143]
適切な条件下で、本発明1141または1142の宿主細胞を培地で培養すること、および前記宿主細胞または培地から前記抗体を単離することを含む、抗体を産生する方法。
[本発明1144]
本発明1143の方法によって産生される抗体。
[本発明1145]
前記本発明1120〜1141または1148のいずれかの抗体に、無菌の薬学的に許容される希釈剤を加えることを含む、無菌の医薬組成物を調製する方法。
[本発明1146]
前記本発明のいずれかの抗体と無菌の薬学的に許容される希釈剤とを含む、無菌の組成物。
[本発明1147]
本発明1146の無菌の組成物を投与することを含む、組成物を哺乳動物に投与する方法。
[本発明1148]
前記投与が前記分泌タンパク質を含む複合体のシグナル伝達を増加させる、本発明1147の方法。
[本発明1149]
前記投与が前記分泌タンパク質を含む複合体のシグナル伝達を減少させる、本発明1147の方法。
[本発明1150]
前記第1の成分がIL−1βであり、前記第2の成分がIL−1R1であり、前記結合パートナーがIL−1R2またはIL−1アクセサリータンパク質のいずれかである、本発明1072の方法。
[本発明1151]
前記第1の成分がTNFαであり、前記第2の成分がTNFR1であり、前記結合パートナーがTNFR2である、本発明1072の方法。
[本発明1152]
前記第1の成分がTNFαであり、前記第2の成分がTNFR2であり、前記結合パートナーがTNFR1である、本発明1072の方法。
本発明の多数のさらなる態様および利点は、目下本発明の好ましい実施形態について記載している本発明の以下の詳細な説明を考慮することで当業者に明らかになるであろう。本出願中で言及される全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国の特許、外国の特許出願、および非特許文献は、参照によりその全体が本明細書に組込まれる。

Claims (153)

  1. シグナル伝達複合体の第1の成分と第2の成分の間の結合を調節する候補動態調節抗体を同定する方法であって、
    (a)試験抗体の存在下で、前記第2の成分に対する前記第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータを測定するステップと、
    (b)前記試験抗体の非存在下で、前記第2の成分に対する前記第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータを測定するステップと、
    (c)前記試験抗体が、ステップ(a)および(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータにおいて1.5倍〜1000倍の差を示す時に、前記試験抗体を候補動態調節抗体として同定するステップと
    を含む、前記方法。
  2. 前記試験抗体が、前記第1の成分と前記第2の成分の間の結合親和性または結合速度パラメータを約1.5倍〜1000倍強める場合、前記試験抗体が正の調節抗体の候補として同定される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記試験抗体が、前記第1の成分と前記第2の成分の間の結合親和性または結合速度パラメータを約2倍〜200倍強める、請求項2に記載の方法。
  4. 前記試験抗体が、前記第1の成分と前記第2の成分の間の結合親和性または結合速度パラメータを約1.5倍〜1000倍弱める場合、前記試験抗体が負の調節抗体の候補として同定される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記試験抗体が、前記第1の成分と前記第2の成分の間の結合親和性または結合速度パラメータを約2倍〜200倍弱める、請求項4に記載の方法。
  6. シグナル伝達複合体の第1の成分と第2の成分の間の結合を調節する候補動態調節抗体を同定する方法であって、
    (a)(i)前記第2の成分の存在下で、前記第1の成分に対する試験抗体の結合親和性もしくは結合速度パラメータを測定するか、または(ii)前記第1の成分の存在下で、前記第2の成分に対する試験抗体の結合親和性もしくは結合速度パラメータを測定するステップと、
    (b)(i)前記第2の成分の非存在下で、前記第1の成分に対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータを測定するか、または(ii)前記第1の成分の非存在下で、前記第2の成分に対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータを測定するステップと、
    (c)前記試験抗体が、ステップ(a)および(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータにおいて1.5倍〜1000倍の差を示す時に、前記試験抗体を候補動態調節抗体として同定するステップと
    を含む、前記方法。
  7. ステップ(a)で測定される結合親和性または結合速度パラメータが、ステップ(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータよりも約1.5倍〜1000倍強い場合、前記試験抗体が正の調節抗体の候補として同定される、請求項6に記載の方法。
  8. ステップ(a)で測定される結合親和性または結合速度パラメータが、ステップ(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータよりも約2倍〜200倍強い、請求項7に記載の方法。
  9. ステップ(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータが、ステップ(a)で測定される結合親和性または結合速度パラメータよりも約1.5倍〜1000倍強い場合、前記試験抗体が負の調節抗体の候補として同定される、請求項6に記載の方法。
  10. ステップ(b)で測定される結合親和性または結合速度パラメータが、ステップ(a)で測定される結合親和性または結合速度パラメータよりも約2倍〜200倍強い、請求項9に記載の方法。
  11. 前記第1の成分のみに対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータが測定される、請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記第2の成分のみに対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータが測定される、請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記第1の成分および第2の成分を含む複合体に対する試験抗体の結合親和性Kが、約10−5−1以下であり、前記試験抗体は前記第1の成分のみまたは前記第2の成分のみのいずれか一方に検出可能な程度で結合しない、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. (A)前記第1の成分(C1)および第2の成分(C2)を含む複合体に対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK[C1C2]M、(B)前記抗体および前記第2の成分を含む複合体に対する前記第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK[MC2]C1、または(C)前記抗体および前記第1の成分を含む複合体に対する前記第2の成分の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK[MC1]C2からなる群から選択される結合親和性または結合速度パラメータが、(1)前記第2の成分のみに対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でKMC2または(2)前記第1の成分のみに対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でKMC1からなる群から選択される結合親和性または結合速度パラメータよりも約1.5倍〜1000倍強い場合、前記試験抗体(M)が正の調節抗体の候補として同定される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  15. (A)、(B)または(C)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータが、(1)または(2)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータよりも約2倍または200倍強い、請求項13に記載の方法。
  16. (A)、(B)または(C)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータが、(1)と(2)の両方の結合親和性または結合速度パラメータよりも約1.5倍〜1000倍強い、請求項13に記載の方法。
  17. (A)、(B)または(C)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータが、(1)と(2)の両方の結合親和性または結合速度パラメータよりも約2倍〜200倍強い、請求項13に記載の方法。
  18. (1)の結合親和性または結合速度パラメータが、(2)の結合親和性または結合速度パラメータよりも強い、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
  19. (2)の結合親和性または結合速度パラメータが、(1)の結合親和性または結合速度パラメータよりも強い、請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記結合親和性が平衡解離定数Kであり、K[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれか1つ以上がKMC2またはKMC1のいずれか1つ以上よりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項13に記載の方法。
  21. [C1C2]AがKMC2よりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項19に記載の方法。
  22. [AC2]C1がKMC2よりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項19に記載の方法。
  23. [AC1]C2がKMC2よりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項19に記載の方法。
  24. [C1C2]AがKMC1よりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項19に記載の方法。
  25. [AC2]C1がKMC1よりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項19に記載の方法。
  26. [AC1]C2がKMC1よりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項19に記載の方法。
  27. 前記結合親和性が平衡結合定数Kであり、K[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれか1つ以上がKMC2またはKMC1のいずれか1つ以上よりも約1.5倍〜1000倍高い、請求項13に記載の方法。
  28. (1)前記第2の成分(C2)のみに対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でKMC2または(2)前記第1の成分(C1)のみに対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でKMC1からなる群から選択される結合親和性または結合速度パラメータが、(A)前記第1の成分および第2の成分を含む複合体に対する前記試験抗体の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK[C1C2]M、(B)前記抗体および前記第2の成分を含む複合体に対する前記第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK[MC2]C1、または(C)前記抗体および前記第1の成分を含む複合体に対する前記第2の成分の結合親和性または結合速度パラメータ、任意でK[MC1]C2からなる群から選択される結合親和性または結合速度パラメータよりも約1.5倍〜1000倍強い場合、前記試験抗体(M)が負の調節抗体の候補として同定される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  29. (1)または(2)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータが、(A)、(B)または(C)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータよりも約2倍または200倍強い、請求項27に記載の方法。
  30. (1)または(2)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータが、(A)、(B)および(C)の全ての結合親和性または結合速度パラメータよりも約1.5倍〜1000倍強い、請求項27に記載の方法。
  31. (1)または(2)のいずれか1つ以上の結合親和性または結合速度パラメータが、(A)、(B)および(C)の全ての結合親和性または結合速度パラメータよりも約2倍〜200倍強い、請求項27に記載の方法。
  32. (1)の結合親和性または結合速度パラメータが(2)の結合親和性または結合速度パラメータよりも強い、請求項27〜30のいずれか一項に記載の方法。
  33. (2)の結合親和性または結合速度パラメータが(1)の結合親和性または結合速度パラメータよりも強い、請求項27〜30のいずれか一項に記載の方法。
  34. 前記結合親和性が平衡解離定数Kであり、KMC2またはKMC1のいずれかがK[C1C2]M、K[C2]C1、またはK[MC1]C2のいずれかよりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項27に記載の方法。
  35. MC2がK[C1C2]Mよりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項33に記載の方法。
  36. MC2がK[MC2]C1よりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項33に記載の方法。
  37. MC2がK[MC1]C2よりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項33に記載の方法。
  38. MC1がK[C1C2]Mよりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項33に記載の方法。
  39. MC1がK[MC2]C1よりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項33に記載の方法。
  40. MC1がK[MC1]C2よりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項33に記載の方法。
  41. 前記結合親和性が平衡結合定数Kであり、KMC2またはKMC1のいずれか1つ以上がK[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれか1つ以上よりも約1.5倍〜1000倍高い、請求項27に記載の方法。
  42. ステップ(a)において、前記試験抗体および第2の成分が、複数の異なる濃度の前記第1の成分と接触する、請求項1〜40のいずれか一項に記載の方法。
  43. ステップ(a)において、前記試験抗体および第1の成分が、複数の異なる濃度の前記第2の成分と接触する、請求項1〜40のいずれか一項に記載の方法。
  44. ステップ(a)において、複数の異なる濃度の前記試験抗体が前記第1の成分および前記第2の成分と接触する、請求項1〜40のいずれか一項に記載の方法。
  45. 前記試験抗体が結合する抗原が前記第1の成分であり、前記試験抗体が前記第1の成分の濃度と比較して飽和濃度である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
  46. 前記試験抗体が結合する抗原が前記第2の成分であり、前記試験抗体が前記第2の成分の濃度と比較して飽和濃度である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
  47. 前記試験抗体の濃度が、前記第1の成分および前記第2の成分を含む複合体に対する前記試験抗体のKより高いか、またはそれに等しい、請求項44または45に記載の方法。
  48. 前記第2の成分の濃度が前記第1の成分に対する前記試験抗体のKより低い、請求項46に記載の方法。
  49. 前記第1の成分の濃度が、第2の成分への第1の成分の結合に対する飽和濃度である、請求項47に記載の方法。
  50. 前記第1の成分の濃度が、前記第1の成分と前記第2の成分の相互作用に対する約EC20〜EC80の範囲内にある、請求項48に記載の方法。
  51. 1つ以上の濃度の前記試験抗体が、1つ以上の濃度の前記第2の成分の存在下で、複数の異なる濃度の前記第1の成分と接触する、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
  52. 1つ以上の濃度の前記試験抗体が、1つ以上の濃度の前記第1の成分の存在下で、複数の異なる濃度の前記第2の成分と接触する、請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
  53. 前記試験抗体が第1の成分および第2の成分を含む複合体に対して飽和濃度である、請求項7〜8または13〜26のいずれか一項に記載の方法。
  54. 前記試験抗体の濃度が、第1の成分および第2の成分を含む複合体に対する前記試験抗体のKより高いか、またはそれに等しい、請求項52に記載の方法。
  55. 前記第2の成分の濃度が前記第1の成分に対する前記第2の成分のKより高い、請求項53に記載の方法。
  56. 前記第1の成分の濃度が前記第2の成分に対して飽和濃度である、請求項54に記載の方法。
  57. 前記試験抗体が第1の成分および第2の成分を含む複合体に対して亜飽和濃度である、請求項7〜8または13〜26のいずれか一項に記載の方法。
  58. 前記抗体の濃度が、前記第1の成分と前記第2の成分の相互作用に関して約EC20〜EC80の範囲内にある、請求項56に記載の方法。
  59. 前記第2の成分の濃度が前記第1の成分に対する前記第2の成分のKより高い、請求項57に記載の方法。
  60. 前記第1の成分の濃度が前記第2の成分に対して飽和濃度である、請求項58に記載の方法。
  61. 前記試験抗体が結合する抗原が前記第1の成分であり、前記試験抗体が前記第1の成分に対して亜飽和濃度である、請求項9〜10または27〜40のいずれか一項に記載の方法。
  62. 前記抗体の濃度が、前記第1の成分と前記第2の成分の相互作用に対する約EC20〜EC80の範囲内にある、請求項60に記載の方法。
  63. 前記第2の成分の濃度が前記第1の成分に対する前記第2の成分のKより高い、請求項61に記載の方法。
  64. 前記第1の成分の濃度が前記第2の成分に対して飽和濃度である、請求項62に記載の方法。
  65. 前記試験抗体が結合する抗原が前記第2の成分であり、前記試験抗体が前記第2の成分に対して亜飽和濃度である、請求項9〜10または27〜40のいずれか一項に記載の方法。
  66. 前記抗体の濃度が、前記第1の成分と前記第2の成分の相互作用に対する約EC20〜EC80の範囲内にある、請求項60に記載の方法。
  67. 前記第2の成分の濃度が前記第1の成分に対する前記第2の成分のKより高い、請求項61に記載の方法。
  68. 前記第1の成分の濃度が前記第2の成分に対して飽和濃度である、請求項62に記載の方法。
  69. ステップ(a)の前に、前記第1の成分および前記第2の成分を含む複合体に対する結合親和性について複数の試験抗体をアッセイすることをさらに含み、任意で10−5Mの平衡解離定数Kまたはより強い結合親和性である、請求項1〜67のいずれか一項に記載の方法。
  70. ステップ(a)の前に、前記第1の成分に対する結合親和性について複数の試験抗体をアッセイすることをさらに含み、任意で10−5Mの平衡解離定数Kまたはより強い結合親和性である、請求項1〜68のいずれか一項に記載の方法。
  71. ステップ(a)の前に、前記第2の成分に対する結合親和性について複数の試験抗体をアッセイすることをさらに含み、任意で10−5Mの平衡解離定数Kまたはより強い結合親和性である、請求項1〜69のいずれか一項に記載の方法。
  72. ステップ(a)の前に、1つ以上の異なる変異を親の抗体に導入することにより、親の抗体の変異体である複数の試験抗体を産生することをさらに含む、請求項1〜70のいずれか一項に記載の方法。
  73. 前記試験抗体の存在下および非存在下で、結合パートナーに対する前記第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータを測定することをさらに含み、その際、前記結合パートナーが前記第2の成分ではない、請求項1〜71のいずれか一項に記載の方法。
  74. 前記結合パートナーがデコイ受容体、クリアランス受容体、または別のシグナル経路の成分である、請求項72に記載の方法。
  75. 前記結合パートナーに対する前記第1の成分の結合親和性または結合速度パラメータを著しく変化させない試験抗体を同定することを含む、請求項72または73に記載の方法。
  76. 前記試験抗体が、抗体断片、scFv、Fab、CDR、げっ歯類の抗体、哺乳類の抗体、ヒトの抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体からなる群から選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  77. 前記試験抗体がモノクローナル抗体である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  78. 前記結合親和性または結合速度パラメータが、平衡結合定数K、平衡解離定数K、オン速度、オフ速度および前述のいずれかの代替パラメータからなる群から選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  79. 前記代替パラメータが、前記第1の成分または前記第2の成分のいずれか一方の亜飽和濃度における前記第2の成分への前記第1の成分の結合の量またはレベルである、請求項77に記載の方法。
  80. 前記試験抗体、前記第1の成分、および前記第2の成分の全てが溶液中にある、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  81. 前記試験抗体、前記第1の成分、および前記第2の成分のうちの1つが固相に結合している、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  82. 前記結合が非共有結合である、請求項80に記載の方法。
  83. 前記試験抗体、前記第1の成分、および前記第2の成分のうちの1つがビーズ上にコーティングされている、請求項80に記載の方法。
  84. 前記第1の成分または第2の成分のうちの少なくとも1つが細胞表面上で発現する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  85. 前記第1の成分が細胞表面上で発現し、前記第2の成分が異なる細胞表面上で発現する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  86. 前記第1の成分が可溶性リガンドであり、前記第2の成分が膜結合受容体である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  87. 前記第1の成分が膜結合受容体であり、前記第2の成分が可溶性リガンドである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  88. 前記第1の成分が膜結合リガンドであり、前記第2の成分が膜結合受容体である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  89. 前記膜結合受容体が7回膜貫通型受容体、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、アドレナリン受容体、神経伝達物質受容体、嗅覚受容体、オピオイド受容体、ケモカイン受容体、ロドプシン、受容体型チロシンキナーゼ、成長因子受容体、インテグリン、およびtoll様受容体からなる群から選択される、請求項86または87に記載の方法。
  90. 前記第1の成分が酵素であり、前記第2の成分が前記酵素の基質である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  91. 前記第1の成分が2つ以上の化合物の複合体である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  92. 前記第2の成分が2つ以上の化合物の複合体である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  93. 前記第1の成分がサイトカインまたはケモカインであり、前記第2の成分が前記第1の成分の受容体である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  94. 前記第1の成分が成長因子であり、前記第2の成分が前記第1の成分の受容体である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  95. 前記第1の成分がIL−1βであり、前記第2の成分がIL−1受容体I型(IL−1RI)である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  96. 前記試験抗体の存在下および非存在下における、第3の成分に対する前記第1の成分および/または前記第2の成分の結合親和性または結合速度パラメータを測定することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  97. 前記第1の成分がIL−1βであり、前記第2の成分がIL−1RIであり、前記第3の成分がIL−1受容体アクセサリータンパク質(IL−1RAcP)である、請求項95に記載の方法。
  98. 前記試験抗体の存在下または非存在下で、IL−1βとIL−1RAcPの間の結合親和性または結合速度パラメータにおいて、2倍を超える差を示さない試験抗体を同定することをさらに含む、請求項96に記載の方法。
  99. 前記第1の成分がGCSFであり、前記第2の成分がGCSFRである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  100. 前記第1の成分がGCSFRであり、前記第2の成分がGCSFである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  101. 前記第1の成分がTNFαであり、前記第2の成分がTNFR1またはTNFR2である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  102. 前記第1の成分がTNFR1またはTNFR2であり、前記第2の成分がTNFαである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  103. ステップ(c)において同定された抗体をリクローニングし、発現させることをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  104. ステップ(c)において同定された抗体を精製することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  105. ステップ(c)において同定された抗体の配列を決定することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  106. Fc領域またはその断片を付加するか、または置換することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  107. ステップ(c)において同定された試験抗体の少なくとも3つのCDRを含む抗体を、無菌の薬学的に許容される希釈剤で無菌の組成物中に製剤化することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  108. ステップ(c)において同定された試験抗体の少なくとも3つのCDRを含む抗体を動物に投与することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  109. 前記試験抗体の存在下および非存在下において、前記シグナル伝達複合体によって媒介されるシグナル伝達のレベルを測定することをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  110. 前記シグナル伝達複合体によって媒介されるシグナル伝達のレベルが、リン酸化アッセイ、イオン流束アッセイ、分子輸送アッセイ、または遺伝子発現アッセイで測定される、請求項108に記載の方法。
  111. 前記試験抗体が、前記シグナル伝達複合体の前記第1の成分のEC50を約1.5倍〜約1000倍増加させる、請求項108〜109のいずれか一項に記載の方法。
  112. 前記試験抗体が、前記第1の成分によって引き起こされるシグナル伝達の最大アゴニスト反応を著しく変化させない、請求項108〜109のいずれか一項に記載の方法。
  113. 前記試験抗体が、前記シグナル伝達複合体によって引き起こされるシグナル伝達の最大アゴニスト反応を約1.5倍〜1000倍低下させる、請求項108〜109のいずれか一項に記載の方法。
  114. 前記試験抗体が、前記シグナル伝達複合体によって引き起こされるシグナル伝達のEC50を約1.5倍〜約1000倍減少させる、請求項108〜109のいずれか一項に記載の方法。
  115. 前記抗体候補が、前記第1の成分によって引き起こされるシグナル伝達の最大アゴニスト反応を少なくとも10%増加させる、請求項108〜109のいずれか一項に記載の方法。
  116. 前記抗体候補が、前記第1の成分、前記第2の成分、または前記第1および第2の成分を含む前記シグナル伝達複合体のクリアランスを著しく減少させない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  117. 前記請求項のいずれか一項に記載の方法によって同定される抗体。
  118. 10−5M以下の平衡解離定数Kで配列番号1〜88のいずれかの分泌タンパク質に結合し、前記分泌タンパク質とそのシグナル伝達パートナーの間の結合親和性Kを約1.5倍〜1000倍改善することができる、正の調節抗体。
  119. 前記正の調節抗体が、前記分泌タンパク質とそのシグナル伝達パートナーの間の結合親和性Kを約2倍〜200倍改善することができる、請求項117に記載の抗体。
  120. 10−5M以下の平衡解離定数Kで配列番号1〜88のいずれかの分泌タンパク質に結合し、前記分泌タンパク質とそのシグナル伝達パートナーの間の結合親和性Kを約1.5倍〜1000倍低下させることができる、負の調節抗体。
  121. 前記負の調節抗体が、前記分泌タンパク質とそのシグナル伝達パートナーの間の結合親和性Kを約2倍〜200倍低下させることができる、請求項119に記載の抗体。
  122. シグナル伝達複合体の第2の成分(C2)への第1の成分(C1)の結合を強める正の調節抗体(M)であって、前記抗体が、以下の平衡解離定数Kの結合特性によって特徴づけられ:(i)前記抗体が、10−5M以下の平衡解離定数Kで、C1、C2、またはC1およびC2を含む複合体(C1C2)のいずれか1つに結合する;および(ii)K[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれか1つ以上が、KMC2またはKMC1のいずれか1つ以上よりも約1.5倍〜1000倍低い、
    C1またはC2が、配列番号1〜88のいずれかの分泌タンパク質である、前記正の調節抗体。
  123. [C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれか1つ以上が、KMC2またはKMC1のいずれかよりも約2倍〜200倍低い、請求項121に記載の正の調節抗体。
  124. [C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれか1つ以上が、KMC2またはKMC1の両方よりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項121に記載の正の調節抗体。
  125. シグナル伝達複合体の第2の成分(C2)への第1の成分(C1)の結合を弱める負の調節抗体(M)であって、前記抗体が、以下の平衡解離定数Kの結合特性によって特徴づけられ:(i)前記抗体が、10−5M以下の平衡解離定数Kで、C1、C2、またはC1およびC2を含む複合体(C1C2)のいずれか1つに結合する;および(ii)KMC2またはKMC1のいずれか1つ以上が、K[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれか1つ以上よりも約1.5倍〜1000倍低い、
    C1またはC2が、配列番号1〜88のいずれかの分泌タンパク質である、前記負の調節抗体。
  126. AC2またはKAC1のいずれか1つ以上が、K[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2のいずれか1つ以上よりも約2倍〜200倍低い、請求項124に記載の負の調節抗体。
  127. AC2またはKAC1のいずれか1つ以上が、K[C1C2]M、K[MC2]C1、またはK[MC1]C2の全てよりも約1.5倍〜1000倍低い、請求項124に記載の負の調節抗体。
  128. 10−5M以下の平衡解離定数Kで、(i)IL−1β、(ii)IL−1R1、または(iii)IL−1βおよびIL−1R1を含む複合体のいずれか1つに結合し、IL−1βとIL−1R1の間の結合親和性Kを約1.5倍〜1000倍強めることができる、正の調節抗体。
  129. 10−5M以下の平衡解離定数Kで、(i)IL−1β、(ii)IL−1R1、または(iii)IL−1βおよびIL−1R1を含む複合体のいずれか1つに結合し、IL−1βとIL−1R1の間の結合親和性Kを約1.5倍〜1000倍弱めることができる、負の調節抗体。
  130. 10−5M以下の平衡解離定数Kで、(i)TNFα、(ii)TNFR1、または(iii)TNFαおよびTNFR1を含む複合体のいずれか1つに結合し、TNFαとTNFR1の間の結合親和性Kを約1.5倍〜1000倍強めることができる、正の調節抗体。
  131. 10−5M以下の平衡解離定数Kで、(i)TNFα、(ii)TNFR1、または(iii)TNFαおよびTNFR1を含む複合体のいずれか1つに結合し、TNFαとTNFR1の間の結合親和性Kを約1.5倍〜1000倍弱めることができる、負の調節抗体。
  132. 10−5M以下の平衡解離定数Kで、(i)TNFα、(ii)TNFR1、または(iii)TNFαおよびTNFR2を含む複合体のいずれか1つに結合し、TNFαとTNFR2の間の結合親和性Kを約1.5倍〜1000倍強めることができる、正の調節抗体。
  133. 10−5M以下の平衡解離定数Kで、(i)TNFα、(ii)TNFR1、または(iii)TNFαおよびTNFR2を含む複合体のいずれか1つに結合し、TNFαとTNFR2の間の結合親和性Kを約1.5倍〜1000倍弱めることができる、負の調節抗体。
  134. 10−5M以下の平衡解離定数Kで、(i)GCSF、(ii)GCSFR、または(iii)GCSFおよびGCSFRを含む複合体のいずれか1つに結合し、GCSFとGCSFRの間の結合親和性Kを約1.5倍〜1000倍強めることができる、正の調節抗体。
  135. 10−5M以下の平衡解離定数Kで、(i)GCSF、(ii)GCSFR、または(iii)GCSFおよびGCSFRを含む複合体のいずれか1つに結合し、GCSFとGCSFRの間の結合親和性Kを約1.5倍〜1000倍弱めることができる、負の調節抗体。
  136. 10−5M以下の平衡解離定数Kで、(i)インスリン、(ii)インスリン受容体、または(iii)インスリンおよびインスリン受容体を含む複合体のいずれか1つに結合し、インスリンとインスリン受容体の間の結合親和性Kを約1.5倍〜1000倍強めることができる、正の調節抗体。
  137. 10−5M以下の平衡解離定数Kで、(i)インスリン、(ii)インスリン受容体、または(iii)インスリンおよびインスリン受容体を含む複合体のいずれか1つに結合し、インスリンとインスリン受容体の間の結合親和性Kを約1.5倍〜1000倍弱めることができる、負の調節抗体。
  138. 精製モノクローナル抗体である、請求項117〜136のいずれか一項に記載の抗体。
  139. 請求項116〜137に記載の抗体のいずれかをコードするポリヌクレオチド。
  140. 請求項116〜137に記載の抗体のいずれかの重鎖をコードするポリヌクレオチド。
  141. 請求項116〜137に記載の抗体のいずれかの軽鎖をコードするポリヌクレオチド。
  142. 請求項138〜140のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
  143. 請求項139または140に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
  144. 適切な条件下で、請求項141または142に記載の宿主細胞を培地で培養すること、および前記宿主細胞または培地から前記抗体を単離することを含む、抗体を産生する方法。
  145. 請求項143に記載の方法によって産生される抗体。
  146. 前記請求項120〜141または148のいずれか一項に記載の抗体に、無菌の薬学的に許容される希釈剤を加えることを含む、無菌の医薬組成物を調製する方法。
  147. 前記請求項のいずれか一項に記載の抗体と無菌の薬学的に許容される希釈剤とを含む、無菌の組成物。
  148. 請求項146に記載の無菌の組成物を投与することを含む、組成物を哺乳動物に投与する方法。
  149. 前記投与が前記分泌タンパク質を含む複合体のシグナル伝達を増加させる、請求項147に記載の方法。
  150. 前記投与が前記分泌タンパク質を含む複合体のシグナル伝達を減少させる、請求項147に記載の方法。
  151. 前記第1の成分がIL−1βであり、前記第2の成分がIL−1R1であり、前記結合パートナーがIL−1R2またはIL−1アクセサリータンパク質のいずれかである、請求項72に記載の方法。
  152. 前記第1の成分がTNFαであり、前記第2の成分がTNFR1であり、前記結合パートナーがTNFR2である、請求項72に記載の方法。
  153. 前記第1の成分がTNFαであり、前記第2の成分がTNFR2であり、前記結合パートナーがTNFR1である、請求項72に記載の方法。
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