JP2009529915A - ガストリン物質に対して特異的なヒト抗体および方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ペプチドホルモンであるガストリンに対して特異的なヒト抗体に関する物質および方法、ならびにガンを有する被験体およびガストリン発現に関連する他の状態または障害を有する被験体の処置におけるこれらの抗体の使用に関する。

Description

本出願は、参照により本明細書に組み入れられる、2006年3月20日に提出された米国特許仮出願第60/784,501号の優先権の恩典を主張する。
発明の分野
本発明は、ペプチドホルモンガストリンに対して特異的なヒト抗体に関する物質および方法、ならびにガンを有する被験体およびガストリン発現に関連する他の状態または障害を有する被験体の処置におけるこれらの抗体の使用に関する。
発明の背景
ガストリンは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)であるCCK2Rを通してシグナルを伝達し、胃の上皮細胞増殖刺激および壁細胞による酸分泌が含まれる多様な効果を有するペプチドホルモンである(Yassin RR, Peptides 20:885-98, 1999(非特許文献1))同様に、胃ガンの進行における要因として特徴付けされており、その機能を中和する治療に関する可能性がある標的を与える(Smith et al. Gut 47:820-24, 2000(非特許文献2))。
ガストリンは、ヒトを含む多くの種の消化管において産生されるホルモンである。通常の成人は、唯一の細胞タイプ、すなわち胃の洞部分における胃粘膜に沿って並ぶG細胞においてガストリンを産生する(Ganong, Review of medical physiology. Norwalk, Conn., Appleton & Lange, 1995(非特許文献3))。食物摂取により、G細胞は刺激され、ガストリンを産生する。具体的には、胃の内腔の膨満、または胃におけるペプチドおよびアミノ酸の存在がガストリン分泌を刺激する。同様に、食物を見たり匂いをかぐことが、ガストリンの放出を刺激する(迷走神経を通して)可能性があることから、ガストリン放出の神経経路も同様に存在する。
分泌されると、ガストリンは、消化管において広範な活性を有する。正常な成体におけるガストリンの主要な役割は、胃の壁細胞による酸産生を刺激して、消化管に沿って並ぶ細胞の栄養因子として作用することである。ガストリンはまた、ペプシンおよび膵酵素放出の刺激、胆嚢収縮、および小腸運動性のような消化管における他の二次的な役割を果たす。ガストリンはまた、プレプロガストリンと呼ばれるアミノ酸101個の前駆体型で産生される。このタンパク質は、一連の切断段階を受けて、長さが異なるいくつかの異なるタンパク質を生成する(Mulholland et al., Surgery 103:135-47, 1988(非特許文献4))。さらなる翻訳後段階には、グリシンの付加およびアミド化が含まれる。ガストリンは、プレプロガストリン、プレガストリン、ガストリン34(G34、アミノ酸34個を有する)、ガストリン17(G17、アミノ酸18個を有する)、およびガストリン14(G14、アミノ酸14個を有する)として発現されてもよい。ガストリン(G34)は、胃酸分泌を刺激して、消化管(G.I.)粘膜に対して栄養効果を有する。グリシン延長ガストリン(Gly-G17)およびアミド化ガストリン(G17-NH2)も同様に、胃酸分泌を刺激して、G.I.粘膜に対して栄養効果を示す。
健康な成人におけるガストリン機能は、摂取された食物を消化するプロセスのために消化管を準備することに限定される。しかし、最近の多くの研究は、膵臓ガン、胃ガン、および結腸直腸ガンが含まれるいくつかのタイプのガンの増殖因子としてガストリンを暗示している(Baldwin et al., Gut 42:581-4, 1998(非特許文献5);Smith et al., Aliment Pharmacol Ther 14:1231-47, 2000(非特許文献6))。ガストリンおよびガストリン受容体が発現されていることは、ガン患者から採取した原発腫瘍において証明されている。いくつかの腫瘍タイプは自身のガストリンを産生および分泌するように思われることから、ガストリンはオートクラインおよびパラクライン経路のみならず、内分泌経路によって腫瘍の生育を刺激するように作用しうる。論文として発表されているいくつかの研究は、ガン患者から採取した腫瘍がガストリンを産生して、高レベルのガストリン受容体を発現することを証明している(Schmitz et al., Eur J Clin Invest 31:812-20, 2001(非特許文献7);Finley et al., Cancer Res 53:2919-26, 1993(非特許文献8);Weinberg et al., J Clin Invest 100:597-603, 1997(非特許文献9);Caplin et al., Br J Surg 87:1035-40, 2000(非特許文献10))。
ガストリン受容体に対する低分子アンタゴニストを用いて、ガン細胞のガストリン媒介有糸分裂を破壊する治療アプローチが診療所で試みられている。ガストリン受容体に関するいくつかの低分子アンタゴニストが、腫瘍学の適応に関して臨床試験において調べられている。
抗体は、その高い程度の特異性および親和性により治療標的を中和する強力なアプローチを表す。マウスガストリンペプチドに対して特異的なモノクローナル抗体が、米国特許第6,861,510号(特許文献1)および第5,688,506号(特許文献2)に開示されている。しかし、これらの抗体は、臨床治療にとって必要なヒトガストリンに対する所望の特異性を保有しない。
このように、当技術分野においてガンの処置およびガストリン発現に関連する他の状態または障害の処置に用いるためのヒトガストリンに対する特異的抗体を開発する必要性がなおも存在する。
米国特許第6,861,510号 米国特許第5,688,506号 Yassin RR, Peptides 20:885-98, 1999 Smith et al. Gut 47:820-24, 2000 Ganong, Review of medical physiology. Norwalk, Conn., Appleton & Lange, 1995 Mulholland et al., Surgery 103:135-47, 1988 Baldwin et al., Gut 42:581-4, 1998 Smith et al., Aliment Pharmacol Ther 14:1231-47, 2000 Schmitz et al., Eur J Clin Invest 31:812-20, 2001 Finley et al., Cancer Res 53:2919-26, 1993 Weinberg et al., J Clin Invest 100:597-603, 1997 Caplin et al., Br J Surg 87:1035-40, 2000
発明の概要
本発明の物質および方法は、当技術分野における上記のおよび他の関連する必要性を満たす。
一つの態様において、本発明は、SEQ ID NO:1〜12および23〜33に記載のアミノ酸配列を有する機能的断片が含まれる、抗原結合化合物を提供する。関連する態様において、前記の抗原結合化合物は、本発明の一つまたは複数のCDR配列を含み、所望の生物活性を示す、完全にアセンブルされた四量体抗体、ポリクローナル抗体、HUMAN ENGINEERED(商標)抗体が含まれるモノクローナル抗体;ヒト化抗体;ヒト抗体;キメラ抗体;多重特異的抗体、抗体断片、Fab、F(ab')2;Fv;scFv、または一本鎖抗体断片;ディアボディ;トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、ミニボディ、直線状抗体(linear antibody);キレート性組換え型抗体(chelating recombinant antibody)、トリボディ(tribody)またはバイボディ(bibody)、イントラボディ(intrabody)、ナノボディ、低分子モジュール免疫薬剤(small modular immunopharmaceutical;SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、VHH含有抗体、またはこれらの抗体の任意の一つの変異体もしくは誘導体からなる群より選択される。本発明の抗原結合化合物は、好ましくは、表面プラズモン共鳴によって測定した場合に少なくとも10-7、10-8、10-9 Mまたはそれより高い結合親和性を保持する。
一つの局面において、本発明の抗体は、SEQ ID NO:1〜10のアミノ酸配列に記載される抗体XPA061、XPA063、XPA065、XPA067、およびXPA081を含む。抗体は、上記のアミノ酸配列に記載される抗体の全てまたは一部を含んでもよいとさらに企図される。一つの態様において、抗体は、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、および11の重鎖のCDR1、CDR2、もしくはCDR3の少なくとも一つ、またはSEQ ID NO: 2、4、6、8、10、および12の軽鎖のCDR1、CDR2、もしくはCDR3の少なくとも一つを含む。
本発明の別の態様において、SEQ ID NO: 1、3、5、7、9、および11に記載されるアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%相同である可変重鎖アミノ酸配列を含む、上記の抗体の変異体が提供される。関連する態様において、抗体は、SEQ ID NO: 2、4、6、8、10、および12に記載されるアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%相同である可変軽鎖アミノ酸配列を含む。
本発明の一つの局面は、以下に記述される本発明の重鎖CDR配列の任意の1つ、二つ、および/または三つを含む重鎖を含む標的抗原に結合する抗体を提供する。
好ましくは、重鎖は、重鎖CDR3配列として同定されたアミノ酸配列を含む。そのような「重鎖CDR3配列」には、図1または図3ならびにSEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、および23〜33に記載される重鎖CDR3配列として同定されたアミノ酸配列が含まれる。または、重鎖CDR3配列は、図1または図3において同定された任意の重鎖CDR3アミノ鎖配列と比較して一つまたは複数のアミノ酸変化、すなわち置換、挿入、または欠失を含有するアミノ酸配列を含む。好ましい置換には、図1または図3の別の重鎖CDR3内での対応する位置でのアミノ酸に対する置換が含まれる。または、重鎖CDR3配列は、図1または図3において示される重鎖CDR3のコンセンサスアミノ酸配列を含んでもよい。
上記の本発明の重鎖CDR3配列を含む重鎖は、さらに本発明の「重鎖CDR1配列」を含んでもよく、これには図1もしくは図3において重鎖CDR1として同定されたアミノ酸配列、図1もしくは図3において同定された任意の重鎖CDR1と比較して1つもしくは複数のアミノ酸変化を含有する、好ましくは図1の別の重鎖CDR1内での対応する位置でアミノ酸に対する置換を含有するアミノ酸配列、または図1もしくは図3において示される重鎖CDR1のコンセンサス配列のいかなるものも含まれる。
または、上記の本発明の重鎖CDR3配列を含む重鎖はさらに、本発明の「重鎖CDR2配列」を含んでもよく、これには図1もしくは図3において重鎖CDR2として同定されたアミノ酸配列、図1もしくは図3において同定された任意の重鎖CDR2と比較して1つもしくは複数のアミノ酸変化を含有する、好ましくは図1もしくは図3の別の重鎖CDR2内での対応する位置でアミノ酸に対する置換を含有するアミノ酸配列、または図1もしくは図3において示される重鎖CDR2のコンセンサス配列のいかなるものも含まれる。
上記の本発明の重鎖CDR3配列を含む重鎖はまた、(a)上記の本発明の重鎖CDR1配列、および(b)上記の本発明の重鎖CDR2配列の双方を含んでもよい。
上記の任意の重鎖CDR配列にはまた、CDRのいずれかの末端に付加されたアミノ酸が含まれてもよい。アミノ酸類似体を含有する変異体または誘導体の親和性成熟または調製が含まれる、本発明の抗体および抗原結合化合物の変異体および誘導体の調製を以下にさらに詳しく記述する。例示的な変異体には、アミノ酸配列内の対応するアミノ酸の保存的もしくは非保存的置換、またはヒト抗体配列の対応するアミノ酸によるアミノ酸の置換を含有する変異体が含まれる。
上記の重鎖の任意の一つを含む抗体はさらに、軽鎖、好ましくは標的抗原に結合する軽鎖、および最も好ましくは以下に記述される本発明の軽鎖CDR配列を含む軽鎖を含んでもよい。
本発明の別の局面は、以下に記述される本発明の軽鎖CDR配列の任意の一つ、二つ、および/または三つを含む軽鎖を含む標的抗原に結合する抗体を提供する。
好ましくは、軽鎖は、軽鎖CDR3配列として同定されたアミノ酸配列を含む。そのような「軽鎖CDR3配列」には、図2ならびにSEQ ID NO: 2、4、6、8、10、および12において軽鎖CDR3配列として同定されたアミノ酸配列が含まれる。または、軽鎖CDR3配列は、図2において同定された任意の軽鎖CDR3アミノ鎖配列と比較して一つまたは複数のアミノ酸変化、すなわち置換、挿入、または欠失を含有するアミノ酸配列を含む。好ましい置換には、図2の別の軽鎖CDR3内での対応する位置でのアミノ酸に対する置換が含まれる。または、軽鎖CDR3配列は、図2において示される軽鎖CDR3のコンセンサスアミノ酸配列を含んでもよい。
上記の本発明の軽鎖CDR3配列を含む軽鎖は、さらに本発明の「軽鎖CDR1配列」を含んでもよく、これには図2において軽鎖CDR1として同定されたアミノ酸配列、図2において同定された任意の軽鎖CDR1と比較して1つもしくは複数のアミノ酸変化を含有する、好ましくは図2の別の軽鎖CDR1内での対応する位置でアミノ酸に対する置換を含有するアミノ酸配列、または図2において示される軽鎖CDR1のコンセンサス配列のいかなるものも含まれる。
または、上記の本発明の軽鎖CDR3配列を含む軽鎖はさらに、本発明の「軽鎖CDR2配列」を含んでもよく、これには図2において軽鎖CDR2として同定されたアミノ酸配列、図2において同定された任意の軽鎖CDR2と比較して一つもしくは複数のアミノ酸変化を含有する、好ましくは図2の別の軽鎖CDR2内での対応する位置でアミノ酸に対する置換を含有するアミノ酸配列、または図2において示される軽鎖CDR2のコンセンサス配列のいかなるものも含まれる。
上記の本発明の軽鎖CDR3配列を含む軽鎖はまた、(a)上記の本発明の軽鎖CDR1配列、および(b)上記の本発明の軽鎖CDR2配列の双方を含んでもよい。
上記の軽鎖の任意の一つを含む抗体はさらに、重鎖、好ましくは標的抗原に結合する重鎖、および最も好ましくは上記の本発明の重鎖CDR配列を含む重鎖を含んでもよい。
さらに別の態様において、抗体または抗原結合化合物は、ヒト抗体配列の定常領域および一つまたは複数の重鎖および軽鎖可変フレームワーク領域を含む。関連する態様において、抗体は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4の改変または非改変定常領域を含む。例示的な態様において、定常領域は、任意で一定の特性を増強または減少するように改変される。たとえば、定常領域、特にヒンジまたはCH2領域に対する改変は、ADCCおよび/またはCDC活性が含まれるエフェクター機能を増加または減少させる可能性がある。他の態様において、IgG2定常領域は抗体-抗原凝集体形成を減少させるように改変される。IgG4の場合、定常領域、特にヒンジ領域に対する改変は、ハーフ抗体の形成を低減させる可能性がある。
例示的な態様において、本発明の抗体は、ヒト抗体コンセンサス配列、ヒト生殖系列配列、ヒトコンセンサス生殖系列配列、またはヒト抗体配列の任意の一つに由来する、基づく、またはその一部を含有し、配列は以下におけるものである:
生殖系列配列(National Center for Biotechnology Informationによって維持される)が含まれる、データベースにおける全てのIg配列を検索することができるKabat, NCBI Ig Blast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/showGermline.cgi);Kabat Database http://www.bioinf.org.uk/abs/seqtest.html, Martin, A.C.R. "Accessing the Kabat Antibody Sequence Database by Computer" Proteins: Structure, Function and Genetics, 25 (1996), 130-133;
ImMunoGeneTicsデータベース(Montpellier France)(http://imgt.cines.fr/), Lefranc, M.-P. et al., Nucleic Acids Research, 27, 209-212, 1999;
V-Base, Tomlinson, I. M., Williams, S. C, Ignatovich, O., Corbett, S.J. & Winter, G. (1996) VBASE Sequence Directory (Medical Research Council Centre for Protein Engineering, Cambridge, UK);
Zurich University (http://www.biochem.unizh.ch/antibody/Sequences/index.html), Burmester, et al., Selection, characterization and X-ray structure of anti-ampicillin single chain Fv fragments from phage-displayed murine antibody libraries. J.Mol.Biol., 309 (2001) 671-685;
The Therapeutic Antibody Human Homology Project (TAHHP) (http://www.path.cam.ac.uk/〜mrc7/humanisation/TAHHP.html), "Reshaping antibodies for therapy" Edward G. Routledge, Scott D. Gorman and Mike Clark, in Protein Engineering of Antibody Molecules for Prophylactic and Therapeutic Applications in Man pp.13-44 (1993), Academic Titles, Nottingham, England;
Humanization by design (http://people.cryst.bbk.ac.uk/〜ubcg07s/), Bendig, M.M., Kettleborough, C. A., Jones, S.T., Maeda, H. and Saldanha, J. (1993), "The humanisation of mouse monoclonal antibodies by CDR-grafting: Examples with anti-viral and anti-tumour cell antibodies", in Monoclonal Antibodies 2: Applications in Clinical Oncology ed. A.A. Epenetos, pp119-140, Chapman & Hall Medical Publishers;Leger, O.J.P. and Saldanha, J. W. (2000), "Preparation of recombinant antibodies from immune rodent spleens and the design of their humanization by CDR grafting", in Monoclonal Antibodies: A Practical Approach eds. P. Shepherd and C. Dean, pp25-69, Oxford University Press;
Antibody Resources (http://www.antibodyresource.com/educational.html), Antibody Engineering (by TT Wu), Humana Press。
本発明のさらに別の態様において、上記の抗体は、少なくとも10[-7]Mの親和性Kdを有する。関連する局面において、抗体は少なくとも10[-9]Mの親和性Kdを有する。
一つの局面において、本発明は具体的に、約10-8 M〜10-12 M、約10-9 M〜10-12 M、または10-9 M〜10-11 Mの範囲の親和性Kdでガストリンに結合する単離モノクローナル抗体の無菌的組成物を企図する;関連する局面において、本発明は、ガストリン発現に関連する障害を処置するためにそのような組成物を用いることを企図する。
本発明のさらに別の局面は、上記の本発明の任意の重鎖もしくは軽鎖CDR配列、またはこれらのCDR配列の任意の組み合わせを含む非免疫グロブリン様組換え型ポリペプチドまたは他の化合物を提供する。たとえば、そのような化合物は、たとえばタンデムリピートまたは多価立体配置で一つのコピーまたは複数のコピーとして本発明のCDR配列を含んでもよい。そのような化合物はさらに一つまたは複数のコピーの他のCDR配列を含んでもよい。そのような化合物にはまた、非ペプチジル連結が含まれてもよい。
本発明のなおさらに別の態様において、前述の抗体をコードする核酸配列を含む単離核酸が提供される。関連する態様において、単離核酸は、 SEQ ID NO: 13、15、17、19 、および21に記載される重鎖ヌクレオチド配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一である重鎖核酸配列を含む。さらに別の関連する態様において、単離核酸は、SEQ ID NO: 14、16、18、20、および22に記載される軽鎖ヌクレオチド配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一である軽鎖核酸配列を含む。
別の態様において、前述の単離核酸を含むベクターが提供される。関連する態様において、単離核酸が調節制御配列に機能的に連結している前述のベクターが提供される。なおさらに別の態様において、前述のベクターを含む宿主細胞が提供される。
多数の方法が本発明において企図される。たとえば、単離核酸が発現されて抗体を産生するように、前述の宿主細胞を培養する段階を含む、前述の抗体を産生する方法が提供される。関連する態様において、方法はさらに、宿主細胞培養物から抗体を回収する段階を含む。関連する態様において、前述の方法によって産生された単離抗体が提供される。
本発明のさらなる局面は、標的抗原に結合しないが循環中の半減期、直接の細胞障害効果、検出可能な標識、またはレシピエントの内因性の補体カスケードもしくは内因性の細胞障害性の活性化のような他の機能の原因となる本発明の化合物の一部に向けられる。本発明の抗体は、定常領域の全てまたは一部を含んでもよく、IgA(たとえば、IgA1またはIgA2)、IgD、IgE、IgG(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、またはIgMが含まれる任意のアイソタイプの全てまたは一部であってもよい。定常領域を含むほかに、またはその代わりに、本発明の抗原結合化合物には、エピトープタグ、サルベージ受容体エピトープ、診断もしくは精製目的のための標識部分、または放射性核種もしくは毒素のような細胞障害性部分が含まれてもよい。
本発明の別の態様において、前述の抗体の任意の一つと、薬学的に適した担体、賦形剤、または希釈剤とを含む薬学的組成物が提供される。好ましくは、本発明の抗体および化合物は、治療的有効量、すなわち標的タンパク質発現に関連する状態または障害の臨床徴候または症状を改善するのに十分な量で、そのような処置を必要とする被験体に投与される。関連する態様において、薬学的組成物はさらに、第二の治療物質を含む。さらに別の関連する態様において、第二の治療物質が増殖因子、サイトカイン、化学療法剤、または放射線療法剤である薬学的組成物が提供される。別の態様において、第二の治療物質は、別の抗体である。
本発明の別の態様において、被験体が哺乳動物である前述の方法が提供される。関連する態様において、哺乳動物はヒトである。
別の態様において、抗体が標的と結合パートナーとの相互作用を阻害する前述の方法が提供される。さらに別の態様において、抗体が約2μg/kg〜50 mg/kg、0.1 mg/kg〜30 mg/kg、または0.1 mg/kg〜10 mg/kgの用量で投与される、前述の方法が提供される。
本発明の別の態様において、本明細書において定義されるように標的タンパク質発現に関連する状態または障害を予防または低減するための薬剤の製造における本発明の抗体の使用が企図される。
前述の使用のいずれにおいても、薬剤は、第二の治療物質を用いる処置と整合性を有する。
本発明の別の態様において、薬剤が第二の治療物質を用いる処置と整合性を有する、本明細書に開示の状態または障害の症状を示す患者を処置するための薬剤を調製するために本発明の抗体の相乗的組み合わせを用いることが企図される。関連する態様において、第二の治療物質は、ケモカイン、サイトカイン、増殖因子、化学療法剤、放射線療法剤、または放射線療法である。
薬剤における抗体の量が、治療効果を達成するために必要な第二の治療物質の用量を低減するのに有効な用量である、前述の使用の任意の態様が企図される。
前述の任意の薬剤における抗体の量は、約2μg/kg〜50 mg/kg体重の用量であってもよい。関連する態様において、薬剤における抗体の量は約0.1 mg/kg〜30 mg/kg体重の用量である。なおさらに別の態様において、薬剤における抗体の量は、約0.1 mg/kg〜10 mg/kg体重の用量である。
キットも同様に本発明によって企図される。一つの態様において、キットは、バイアルまたは瓶のような容器に入れられて、さらに容器に貼付または包装された、容器の内容を記述して、標的タンパク質発現に関連する状態または障害を予防または低減するために容器の内容物の使用に関する指示および/または説明書を提供するラベルを含む、本発明の組成物の治療的有効量を含む。
発明の詳細な説明
本発明は、標的抗原発現に関連する状態または障害を処置するための治療薬を開発するための当技術分野における必要性に取り組む。本発明は、標的の結合パートナーを通してシグナル伝達を消失させるように標的と相互作用する分子または物質を提供する。
本発明がより完全に理解されるように、いくつかの定義を以降に述べる。
本明細書において用いられるように、「標的」または「標的抗原」とは、ガストリンペプチドホルモンを指す。ガストリンは、アミノ酸34個のペプチドであってもよく、またはガストリンのアミノ酸17個の変異体もしくはアミノ酸14個の変異体のようなより短いバージョンのペプチドであってもよい。好ましい態様において、ガストリンはヒトガストリンである。
本明細書において用いられるように、抗標的抗体の「望ましい生物活性」は、ガストリンに対する結合能およびその機能的効果の阻害能である。
本明細書において用いられるように、「状態」または「標的発現に関連する障害」とは、標的活性が有害である状態または障害であり、これには、高レベルの標的が、障害または障害の悪化の一因となる要因の病理生理学の原因であることが示されているまたは疑われている疾患および他の障害が含まれると共に、高レベルの標的発現が望ましくない臨床徴候または症状に関連している疾患および他の障害が含まれる。そのような障害は、たとえば分泌されるおよび/または細胞表面上の標的レベルの増加、または障害に罹っている被験体の罹患細胞もしくは組織におけるシグナル伝達の増加によって明らかにされる可能性がある。標的レベルの増加は、たとえば上記の標的特異的抗体を用いて検出してもよい。
標的発現に関連する例示的な状態または障害には、膵臓ガン、食道ガン、胃ガン、結腸直腸ガン、および小細胞肺ガンのようなガンと共に、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ピロリ菌(H. Pylori)に関連する他の潰瘍または状態、胃食道逆流疾患、自己免疫性胃炎、萎縮胃体部胃炎、膵臓の腫瘍(ガストリノーマ)に関連するゾリンジャー・エリソン症候群、および炎症性腸疾患が含まれる。
「免疫グロブリン」または「本来の抗体」は、四量体糖タンパク質である。天然に存在する免疫グロブリンにおいて、それぞれの四量体は、それぞれの対が一つの「軽」(約25 kDa)鎖と一つの「重」(約50〜70 kDa)鎖を有する、二つの同一の対のポリペプチド鎖で構成される。それぞれの鎖のアミノ末端部分には、主に抗原認識の原因となる約100〜110またはそれより多いアミノ酸の可変領域が含まれる。それぞれの鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能の原因となる定常領域を定義する。ヒト軽鎖は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)軽鎖として分類される。重鎖はミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)、およびイプシロン(ε)として分類され、それぞれ抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして定義する。軽鎖および重鎖において、可変および定常領域は約12個またはそれより多いアミノ酸の「J」領域によって接合され、重鎖にはまた約10個より多いアミノ酸の「D」領域が含まれる。一般的に、Fundamental Immunology, Ch. 7(Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N. Y. (1989))を参照されたい(その全内容が全ての目的に関して参照により本明細書に組み入れられる)。それぞれの軽鎖/重鎖の対の可変領域は、無傷の免疫グロブリンが2つの結合部位を有するように、抗体結合部位を形成する。
それぞれの重鎖は、一つの末端で一つの可変ドメイン(VH)を有し、その後に多くの定常ドメインを有する。それぞれの軽鎖は少なくとも一つの末端で可変ドメイン(VL)を有し、他の末端で定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖可変ドメインのあいだの界面を形成すると考えられる(Chothia et al., J. Mol. Biol. 196:901-917, 1987)。
免疫グロブリン可変ドメインは、三つの超可変領域またはCDRによって接合された比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を示す。N末端からC末端にかけて、軽鎖および重鎖はいずれもドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。それぞれのドメインに対するアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991))、またはChothia & Lesk,(J. Mol Biol. 196:901-917, 1987);Chothia et al.,(Nature 342:878-883, 1989)の定義に従う。
抗体の超可変領域は、抗原結合の原因となる抗体のCDRアミノ酸残基を指す。超可変領域は、CDRからのアミノ酸残基[すなわち、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1991)によって記述されるように、軽鎖可変ドメインにおける残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、および89〜97(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおける31〜35(H1)、50〜65(H2)、および95〜102(H3)]、および/または超可変ループからの残基(すなわち、[Chothia et al., J. Mol. Biol. 196: 901-917 (1987)]によって記述されるように、軽鎖可変ドメインにおける残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメインにおける26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3))を含む。
フレームワークまたはFR残基は、超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
本明細書において用いられるように「重鎖可変領域」とは、抗体重鎖可変ドメインの少なくとも一つの相補性決定領域(CDR)を含む抗体分子の領域を指す。重鎖可変領域は、抗体重鎖の一つ、二つ、または三つのCDRを含有してもよい。
本明細書において用いられるように「軽鎖可変領域」とは、抗体軽鎖可変ドメインの少なくとも一つの相補性決定領域(CDR)を含む抗体分子の領域を指す。軽鎖可変領域は、抗体に応じてカッパまたはラムダ軽鎖であってもよい、抗体軽鎖の一つ、二つ、または三つのCDRを含有してもよい。
「抗体」という用語は、その最も広い意味で用いられ、これには、完全にアセンブルされた抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異抗体(たとえば、二重特異抗体)、抗原に結合することができる抗体断片(たとえば、Fab'、F'(ab)2、Fv、一本鎖抗体、ディアボディ)、およびそれらが所望の生物活性を示す限り、前述を含む組換え型ペプチドが含まれる。抗原結合部分は、組換えDNA技術または無傷の抗体の酵素的もしくは化学的切断によって産生してもよい。抗体断片、または抗原結合部分には、とりわけ、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、ドメイン抗体(dAb)、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、一本鎖抗体断片、キメラ抗体、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、直線状抗体、キレート性組換え型抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、低分子モジュール免疫薬剤(SMIP)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、VHH含有抗体、またはその変異体もしくは誘導体が含まれ、その抗体が所望の生物活性を保持する限り、CDR配列のようなポリペプチドに対して特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも一部を含有するポリペプチドが含まれる。
「モノクローナル抗体」とは、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、微量存在する可能性がある、起こりうる天然に存在する変異を除き、同一である。
本明細書において用いられるように、「抗体変異体」とは、天然の抗体可変領域ドメインの可変領域において少なくとも一つのアミノ酸置換、欠失、または挿入を含有する抗体ポリペプチド配列を指す。変異体は非改変抗体と実質的に相同または実質的に同一であってもよい。
本明細書において用いられるように、「キメラ抗体」とは、典型的に異なる種を起源とする異なる二つの抗体に由来する抗体含有配列を指す(たとえば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。最も典型的に、キメラ抗体は、ヒトおよび齧歯類抗体断片、一般的にヒトの定常領域とマウス可変領域とを含む。
「中和抗体」は、それが結合する標的抗原のエフェクター機能を消失または有意に低減させることができる抗体分子である。したがって、「中和」抗標的抗体は、酵素活性、リガンド結合、または細胞内シグナル伝達のような、エフェクター機能を消失または有意に低減させることができる。
「単離」抗体は、その天然の環境の成分から同定され、分離され、回収されている抗体である。その天然の環境の混入成分は、抗体の診断または治療的使用を干渉するであろう物質であり、これには酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様溶質が含まれてもよい。好ましい態様において、抗体は、(1)ローリー法によって決定した場合に抗体の95重量%より大きく、最も好ましくは99重量%より大きく、(2)スピンカップシークエネーターを用いることによってN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度に、または(3)クーマシーブルーを用いて、もしくは銀染色を用いて還元または非還元状態でSDS-PAGEによって均質になるまで、精製されると考えられる。単離抗体には、抗体の天然の環境の少なくとも一つの成分が存在しないことから、組換え細胞内でのインサイチュー抗体が含まれる。しかし、当初、単離抗体は少なくとも一つの精製段階によって調製されると考えられる。
本明細書において用いられるように、「特異的に結合する」、「標的特異的」である、標的に対して「特異的」である、または標的抗原に対して「免疫反応性」である抗体とは、類似の抗原より大きい親和性で標的抗原に結合する本発明の抗体または抗体物質を指す。一つの局面において、本発明の標的結合ポリペプチド、またはその断片、変異体、もしくは誘導体は、他の種、すなわち非ヒト種の標的に対するその結合親和性と比較してヒト標的に対してより大きい親和性で結合すると考えられるが、標的のオルソログを認識して結合する結合ポリペプチドは本発明の範囲内である。
たとえば、その同源の抗原に対して「特異的である」抗体またはその断片であるポリペプチドは、抗体の可変領域が検出可能な優先性で対象ポリペプチドを認識して結合する(すなわち、ファミリーメンバー間に局所配列同一性、相同性、または類似性が存在する可能性があるにもかかわらず、結合親和性における測定可能な差によって、関心対象ポリペプチドを同じファミリーの他の公知のポリペプチドと区別することができる)ことを示している。特異的抗体はまた、抗体の可変領域外の配列、特に分子の定常領域における配列との相互作用を通して、他のタンパク質(たとえば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)タンパク質AまたはELISA技術における他の抗体)と相互作用する可能性があると理解されると考えられる。本発明の方法において用いるための抗体の結合特異性を決定するためのスクリーニングアッセイは当技術分野において周知であり、慣習的に行われている。そのようなアッセイの包括的な考察に関しては、Harlow et al. (Eds), Antibodies A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor Laboratory; Cold Spring Harbor, NY (1988), Chapter 6を参照されたい。本発明において用いられる抗体は、当技術分野において公知の任意の方法を用いて産生することができる。
「エピトープ」という用語は、抗原結合領域の一つまたは複数で選択的結合物質によって認識および結合されうる任意の分子の一部を指す。エピトープは通常、アミノ酸または炭水化物側鎖のような分子の化学的に活性な表面基からなり、特異的三次元構造特徴と共に特異的電荷特徴を有する。本明細書において用いられるエピトープは、隣接または非隣接であってもよい。その上、エピトープは、ペプチボディを生成するために用いられるエピトープと同一である三次元構造を含むが、ペプチボディの免疫応答を刺激するために用いられる、標的において見いだされるアミノ酸残基を全く含まないまたはごく一部を含むという点において模倣体(ミモトープ)であってもよい。本明細書において用いられるように、ミモトープは、選択的結合物質によって結合されるエピトープとは異なる抗原であるとは見なされない;選択的結合物質は、エピトープおよびミモトープの同じ三次元構造を認識する。
本発明の抗体物質およびポリペプチドに関連して用いる場合の「誘導体」という用語は、ユビキチン化、治療物質または診断物質との複合体化、標識(たとえば、放射性核種または様々な酵素)、PEG化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)のような高分子の共有結合的付着、およびヒトのタンパク質において通常存在しない、オルニチンのようなアミノ酸の化学合成による挿入または置換、のような技術によって化学改変されたポリペプチドを指す。誘導体は、本発明の非誘導体化分子の結合特性を保持する。
「検出部分」または「標識」とは、分光的、光化学、生化学、免疫化学、または化学的手段によって検出可能な組成物を指す。たとえば、有用な標識には、32P、35S、蛍光色素、電子密度の高い試薬、酵素(たとえば、ELISAにおいて一般的に用いられているような)、ビオチン-ストレプトアビジン、ジゴキシゲニン、それに対する抗血清またはモノクローナル抗体が入手可能なハプテンおよびタンパク質、または標的と相補的な配列を有する核酸分子が含まれる。検出部分はしばしば、試料中の結合した検出部分の量を定量するために用いることができる放射活性、色素形成、または蛍光シグナルのような測定可能なシグナルを生成する。
「治療的有効量」という用語は、本明細書において、標的タンパク質発現に関連する疾患の症状または徴候を改善または弱めるのに有効な本発明の標的特異的組成物の量を示すために用いられる。
本発明は、図1および2において示されるそれらの例示的配列を含んでもよい標的特異的抗体、その断片、変異体、および誘導体、先に引用した標的特異的抗体が含まれる薬学的製剤、薬学的製剤を調製する方法、ならびに薬学的製剤および化合物によって患者を処置する方法を提供する。
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMに割り当てることができるが、これらをさらにサブクラスまたはアイソタイプ、たとえばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に割り当ててもよい。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元立体配置は周知である。異なるアイソタイプは異なるエフェクター機能を有し、たとえばIgG1およびIgG3アイソタイプはADCC活性を有する。本発明の抗体は、それが定常ドメインを含む場合、これらのサブクラスまたはアイソタイプのいずれであってもよい。
本発明の抗体は、約105 M-1より大きいもしくはそれに等しい、約106 M-1より大きいもしくはそれに等しい、約107 M-1より大きいもしくはそれに等しい、約108 M-1より大きいもしくはそれに等しい、または約109 M-1、1010 M-1、1011 M-1、もしくは1012 M-1より大きいもしくはそれに等しいKaの、抗原に対する結合親和性を示す可能性がある。そのような親和性は、平衡透析のような従来の技術を用いて;BIAcore 2000機器を用いて、製造元によって概要される一般的技法を用いて;125I標識標的抗原を用いるラジオイムノアッセイによって;または当業者に公知の別の方法によって容易に決定される可能性がある。この親和性データを、たとえばScatchard et al.,(Ann N.Y. Acad. Sci, 51:660, 1949)の方法によって分析してもよい。
本発明の抗体ポリペプチド
本発明は、標的特異的抗体をコードするアミノ酸分子を含む。例示的な態様において、本発明の標的特異的抗体は、ヒトカッパ(κ)もしくはヒトラムダ(λ)軽鎖、もしくはそれに由来するアミノ酸配列、ヒト重鎖もしくはそれに由来する配列、または一本鎖、二量体、四量体、もしくは他の型として重鎖および軽鎖を共に含みうる。いくつかの態様において、標的特異的免疫グロブリンの重鎖および軽鎖は、異なるアミノ酸分子である。他の態様において、同じアミノ酸分子が、標的特異的抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含有する。
いくつかの態様において、ヒト抗標的抗体のアミノ酸配列は、図2において示される抗体XPA061、XPA063、XPA065、XPA067、およびXPA081またはその変異体の軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列の一つまたは複数のCDRを含む。いくつかの態様において、VLは、前述の抗体の任意の一つの軽鎖のCDR1の開始からCDR3の終了までのアミノ酸配列を含む。
一つの態様において、標的特異的抗体は、そのそれぞれがSEQ ID NO: 2、4、6、8、10、および12に記載される、またはSEQ ID NO:14、16、18、20、および22に記載されるVL領域をコードする核酸分子によってコードされる、VL領域のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する抗体のCDR1、CDR2、およびCDR3領域から独立して選択される、軽鎖CDR1、CDR2、またはCDR3を含む。一つの局面において、軽鎖CDR1は、Chothiaの番号付けによれば、残基およそ24〜34位であり、CDR2は残基およそ50〜56位であり、およびCDR3は残基およそ89〜97位に及ぶ。標的特異的抗体のポリペプチドは、XPA061、XPA063、XPA065、XPA067、およびXPA081からなる群より選択されるVL領域のアミノ酸配列を含む抗体のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含んでもよい。
いくつかの態様において、ヒト標的特異的抗体は、図1もしくは3に記載される抗体XPA061、XPA063、XPA065、XPA067、およびXPA081、またはその変異体の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列の一つまたは複数のCDRを含む。いくつかの態様において、VHは、前述の抗体の重鎖の任意の一つのCDR1の開始からCDR3の終了までのアミノ酸配列を含む。
一つの態様において、標的特異的抗体は、そのそれぞれがSEQ ID NO: 1、3、5、7、9、および11に記載される、またはSEQ ID NO:13、15、17、19、および21に記載されるVH領域をコードする核酸分子によってコードされる、VH領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する抗体のCDR1、CDR2、およびCDR3領域から独立して選択される、軽鎖CDR1、CDR2、またはCDR3を含む。標的特異的抗体は、そのそれぞれがSEQ ID NO:23〜33に記載されるVH領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する抗体のCDR1、CDR2、およびCDR3領域から独立して選択される、重鎖CDR1、CDR2、またはCDR3を含んでもよいとさらに企図される。一つの局面において、重鎖CDRは図1に記載されるChothia番号付けに従って以下のように存在する:CDR1は残基およそ31〜35位であり、CDR2は残基およそ50〜65位であり、およびCDR3は残基およそ95〜102位に及ぶ。標的特異的抗体のポリペプチドは、XPA061、XPA063、XPA065、XPA067、およびXPA081からなる群より選択されるVH領域のアミノ酸配列を含む抗体のCDR1、CDR2、およびCDR3領域を含んでもよい。
別の態様において、抗体は、先に開示した軽鎖と先に開示した重鎖とを含む。
抗体配列の変異体は、本明細書に記載される任意のアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%相同である可変重鎖または可変軽鎖アミノ酸配列を含むアミノ酸配列を指すと企図される。
抗体重鎖および軽鎖のCDRは、抗体結合親和性を改善する可能性があり、たとえば親和性成熟を通して得られる変異体アミノ酸配列を含むとさらに企図される。一つの局面において、本発明の抗体は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、または23〜33に記載される親抗体配列のCDR2と約35%同一性を有する重鎖CDR2配列を含むと企図される。関連する局面において、本発明の抗体は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、または23〜33に記載される親抗体配列のCDR3と約50%同一性を有する重鎖CDR3配列を含むと企図される。
本発明の抗体核酸
本発明はまた、標的特異的抗体をコードする核酸分子を包含する。いくつかの態様において、異なる核酸分子は、標的特異的抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードする。他の態様において、同じ核酸分子が、標的特異的抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードする。一つの態様において、核酸は、本発明の標的特異的抗体をコードする。
一つの局面において、本発明の核酸分子は、SEQ ID NO:2、4、6、8、および10に記載される抗体XPA061、XPA063、XPA065、XPA067、およびXPA081のVLアミノ酸配列またはその一部をコードするヌクレオチド配列を含む。関連する局面において、VLアミノ酸配列は、配列番号:12に記載されるコンセンサス配列である。いくつかの態様において、核酸は、抗体の軽鎖CDRのアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様において、部分は、CDR1〜CDR3を含む隣接部分である。一つの態様において、部分は、軽鎖CDR1、CDR2、またはCDR3領域の少なくとも一つ、二つ、または三つを含む。
関連する局面において、核酸分子は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、および12の軽鎖アミノ酸配列またはその一部をコードするヌクレオチド配列を含む。一つの態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:14、16、18、20、および22のいずれか一つの軽鎖ヌクレオチド配列またはその一部を含む。
いくつかの態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、および12に記載されるVLアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一であるVLアミノ酸配列をコードする。本発明の核酸分子には、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、および12の軽鎖可変領域アミノ酸配列をコードする核酸配列に対して、本明細書に記述される条件のような高ストリンジェンシー条件条件でハイブリダイズする核酸、またはSEQ ID NO:14、16、18、20、および22の軽鎖可変領域核酸配列を有する核酸が含まれる。
本発明の核酸分子は、抗体XPA061、XPA063、XPA065、XPA067、およびXPA081のいずれか一つのVHアミノ酸配列またはその一部をコードするヌクレオチド配列を含むとさらに企図される。いくつかの態様において、核酸は、抗体の重鎖CDRのアミノ酸配列をコードする。いくつかの態様において、部分は、重鎖CDR1〜CDR3を含む隣接部分である。一つの態様において、部分は、重鎖CDR1、CDR2、またはCDR3領域の少なくとも一つ、二つ、または三つを含む。
関連する局面において、核酸分子は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、および11の重鎖の一つの重鎖アミノ酸配列またはその一部をコードするヌクレオチド配列を含む。一つの態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:13、15、17、19、および21の重鎖ヌクレオチド配列またはその一部を含む。
いくつかの態様において、核酸分子は、SEQ ID NO:1、3、5、7、および9に記載されるVHアミノ酸配列XPA061、XPA063、XPA065、XPA067、およびXPA081と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるVHアミノ酸配列をコードする。関連する局面において、VHアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11に記載されるコンセンサス配列である。本発明の核酸分子には、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、および11の重鎖可変領域アミノ酸配列をコードする核酸配列に対して、先に記述した条件のような高ストリンジェンシー条件でハイブリダイズする核酸、またはSEQ ID NO:13、15、17、19、および21の任意の一つの重鎖可変領域核酸配列を有する核酸が含まれる。
本発明の核酸は、完全長の軽鎖または完全長の重鎖がそれぞれ、軽鎖定常領域または重鎖定常領域を含む、XPA061、XPA063、XPA065、XPA067、およびXPA081から選択される抗体の完全長の軽鎖または重鎖をコードするとさらに企図される。
一つの局面において、完全長の軽鎖抗体は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、および12に記載される配列を含む。完全長の軽鎖をコードするヌクレオチドはSEQ ID NO:2、4、6、8、10、および12の配列をコードし、SEQ ID NO:14、16、18、20、および22に記載されるヌクレオチド配列を含むとさらに企図される。
一つの局面において、完全長の重鎖抗体は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、および11のいずれか一つにおける配列を含む。完全長の重鎖をコードするヌクレオチドはSEQ ID NO:1、3、5、7、9、および11の重鎖配列をコードし、SEQ ID NO:13、15、17、19、および21のいずれか一つに記載されるヌクレオチド配列を含むとさらに企図される。
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、好ましくは関連する抗原およびアジュバントの多数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射によって動物において作製される。改善された抗体反応は、免疫される種において免疫原性であるタンパク質、たとえばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズのトリプシン阻害剤に、二官能性物質または誘導体化物質、たとえばマレイミドベンゾイルスルホスクシニミドエステル(システイン残基を通して複合体化)、N-ヒドロキシスクシニミド(リジン残基を通して)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、または当技術分野において公知の他の物質を用いて、適切な抗原を複合体化することによって得てもよい。
タンパク質または複合体(それぞれ、ウサギまたはマウスの場合)たとえば100μgまたは5μgを3倍容積のフロイント完全アジュバントと混合して、溶液を多数の部位に皮内注射することによって、動物を抗原、抗原性複合体、または誘導体に対して免疫する。1ヶ月後、動物に、フロイントの完全アジュバントにおいてペプチドまたは複合体の当初の量の1/5(から1/10の分画)によって多数の部位で追加免役する。追加免疫注射の7〜14日後、動物から採血して血清を抗体力価に関してアッセイする。力価が平衡となるまで動物を追加免役する。好ましくは、同じ抗原であるが、異なるタンパク質におよび/または異なるクロスリンク剤を通して複合体化した複合体によって、動物を追加免疫する。複合体はまた、タンパク質融合体として組換え細胞培養において作製することができる。同様に、ミョウバンのような凝集物質も免疫応答を増強するために適切に用いられる。
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は一般的に非常に特異的であり、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体が典型的に含まれる従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、一つの抗原部位に対して向けられる可能性がある。その特異性のほかに、モノクローナル抗体は、それらが均質な培養物によって合成され、異なる特異性および特徴を有する他の免疫グロブリンが混入しないという点において有利である。
本発明に従って用いられるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,(Nature, 256:495-7, 1975)に記述されるハイブリドーマ法によって作製されてもよく、組換えDNA法(たとえば、米国特許第4,816,567号)によって作製されてもよい。モノクローナル抗体はまた、たとえばClackson et al., (Nature 352:624-628, 1991)およびMarks et al.,(J. Mol. Biol. 222:581-597, 1991)に記述される技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離してもよい。
ハイブリドーマ法において、マウスまたはハムスターもしくはマカクサルのような他の適当な宿主動物を、免疫化のために用いられるタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を産生するまたは産生することができるリンパ球を誘発するために、本明細書に記述されるように免疫する。または、リンパ球をインビトロで免疫してもよい。次にリンパ球をポリエチレングリコールのような適した融合物質を用いて骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。
このように調製されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは非融合の親骨髄腫細胞の生育または生存を阻害する一つまたは複数の物質を含有する適した培養培地に播種して生育させる。たとえば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠損する場合、ハイブリドーマの培養培地には典型的に、HGPRT欠損細胞の生育を阻害するヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)が含まれると考えられる。
好ましい骨髄腫細胞は、効率よく融合して、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル産生を支持して、培地に対して感受性がある細胞である。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞も同様に、ヒトモノクローナル抗体を産生するために記述されている(Kozbor, J. Immunol, 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。例示的なマウス骨髄腫株には、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, Calif. USAから入手可能なMOP-21およびM.C.-11マウス腫瘍、ならびにAmerican Type Culture Collection, Rockville, Md. USAから入手可能なSP-2またはX63-Ag8-653細胞に由来する株が含まれる。
ハイブリドーマ細胞が生育している培養培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生に関してアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着検定(ELISA)のようなインビトロ結合アッセイによって決定される。モノクローナル抗体の結合親和性は、たとえばスキャッチャード分析(Munson et al., Anal. Biochem., 107:220 (1980))によって決定することができる。
所望の特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンを限界希釈法によってサブクローニングして、標準的な方法によって生育させてもよい(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。この目的に関して適した培養培地には、たとえばDMEMまたはRPMI-1640培地が含まれる。さらに、ハイブリドーマ細胞は、動物の腹水腫瘍としてインビボで生育させてもよい。サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体をふさわしくは、たとえばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィーのような通常の免疫グロブリン精製技法によって培養培地、腹水、または血清から分離する。
本発明の抗体は、当技術分野において周知のおよび本明細書に記述される抗体のより小さい抗原結合断片として用いてもよいとさらに企図される。
抗体断片
抗体断片は、無傷の完全長の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片;ディアボディ;直線状抗体;一本鎖抗体分子(たとえば、scFv);二重特異的、三重特異的等の抗体のような多重特異的抗体断片(たとえば、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ);ミニボディ;キレート性組換え型抗体;トリボディまたはバイボディ;イントラボディ;ナノボディ;低分子モジュール免疫薬剤(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質;ラクダ化抗体;VHH含有抗体、および抗体断片から形成される他のポリペプチドが含まれる。
抗体のパパイン消化により、それぞれが一つの抗原結合部位を有するVL、VH、CL、およびCHドメインからなる一価の断片である「Fab」断片と呼ばれる二つの同一の抗原結合断片と、その名称がその容易な結晶化能を反映する残りの「Fc」断片とが産生される。ペプシン処置は、F(ab')2断片を生じ、これは、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインが一つのポリペプチド鎖に存在する二つの「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片を有する、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された二つのFab断片を含む二価の断片である。好ましくはFvポリペプチドはさらに、Fvに抗原結合のための所望の構造を形成させることができるポリペプチドリンカーをVHおよびVLドメインのあいだに含み、それによって一本鎖抗体(scFv)が得られ、この中でVLおよびVH領域は、合成リンカーを通して一価の分子を形成するように対を形成し、それらを一つのタンパク質鎖として作製することができるようにする(Bird et al., Science 242:423-426, 1988、およびHuston et al., Proc Natl. Acad. Sci. USA. 85:5879-5883, 1988)。sFvの総説に関しては、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 1 13, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。Fd断片はVHおよびCH1ドメインからなる。
さらなる抗体断片には、VHドメインからなるドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al., Nature 341:544-546, 1989)が含まれる。ディアボディは、VHおよびVLドメインが一つのポリペプチド鎖上に発現されている二価の抗体であるが、短すぎて同じ鎖上の二つのドメイン間の対形成を許容することができないリンカーを用いて、それによってドメインを別の鎖の相補的ドメインと対を形成させて、二つの抗原結合部位を作製する(たとえば、EP 404,097;WO 93/11161;Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448, 1993;およびPoljak et al., Structure 2:1121-1123, 1994)。ディアボディは二重特異的または単特異的となりうる。
軽鎖を欠損する機能的重鎖抗体は、テンジクザメ(Greenberg et al., Nature 374:168-73, 1995)、カーペットシャーク(Nuttall et al., Mol Immunol. 38:313-26, 2001)、ならびにラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカ、およびラマのようなラクダ科の動物(Hamers-Casterman et al., Nature 363: 446-8, 1993;Nguyen et al., J. Mol Biol. 275: 413,1998)において天然に存在する。抗原結合部位は、これらの動物において一つのドメイン、VHHドメインに低減される。これらの抗体は、重鎖可変領域のみを用いて抗原結合領域を形成し、すなわちこれらの機能的抗体は、構造H2L2(「重鎖抗体」または「HCAb」と呼ばれる)のみを有する重鎖のホモ二量体である。ラクダ科のVHHは、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含有して、CH1ドメインを欠損する(Hamers-Casterman et al.,、前記)IgG2およびIgG3定常領域を組換えすることが報告されている。たとえば、ラマのIgG1は、その中でVHがヒンジ、CH1、CH2、およびCH3ドメインを含有する定常領域と組換えする通常の(H2L2)抗体アイソタイプであるが、ラマのIgG2およびIgG3はCH1ドメインを欠損して、軽鎖を含有しない重鎖のみのアイソタイプである。ラクダ科のVHHドメインは、高い親和性で抗原に結合すること(Desmyter et al., J. Biol. Chem. 276:26285-90, 2001)および溶液中で高い安定性を保有すること(Ewert et al., Biochemistry 41:3628-36, 2002)が見いだされている。古典的なVHのみの断片は、可溶性型で産生することが難しいが、フレームワーク残基をよりVHH様に変更すると、溶解度の改善および特異的結合を得ることができる(たとえば、Reichman, et al., J Immunol Methods 1999, 231:25-38を参照されたい)。ラクダ科の重鎖を有する抗体を作製する方法は、たとえば米国特許出願公開第20050136049号および第20050037421号に記述されている。
重鎖抗体の可変ドメインは、分子量がわずか15 kDaに過ぎない最小の完全に機能的な抗原結合断片であることから、この実体はナノボディと呼ばれる(Cortez-Retamozo et al., Cancer Research 64:2853-57, 2004)。ナノボディライブラリは、Conrath et al.,(Antimicrob Agents Chemother 45: 2807-12, 2001)に記述される免疫されたヒトコブラクダから生成してもよく、または記述される組換え法を用いて生成してもよい。
二重特異的Fab-scFv(「バイボディ」)および三重特異的Fab-(scFv)(2)(「トリボディ」)の産生は、Schoonjans et al.(J Immunol. 165:7050-57, 2000)およびWillems et al.(J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 786: 161-76, 2003)に記述されている。バイボディまたはトリボディの場合、scFv分子をVL-CL(L)およびVH-CH1(Fd)鎖の一つまたは双方に融合させて、たとえばトリボディを産生するためには二つのscFvをFabのC末端に融合させて、バイボディでは一つのscFvをFabのC末端に融合させる。
ペプチドリンカー(無ヒンジ)を通して、またはIgGヒンジを通してCH3に融合したscFvからなる「ミニボディ」は、Olafsen, et al., Protein Eng Des Sel. 2004 Apr;17(4):315-23に記述されている。
イントラボディは細胞内発現を証明して、細胞内タンパク質機能を操作することができる一本鎖抗体である(Biocca, et al.. EMBO J. 9:101-108, 1990;Colby et al., Proc Natl Acad Sci USA. 101:17616-21, 2004)。細胞内領域で抗体のコントラクト(contruct)を保持している細胞シグナル配列を含むイントラボディは、Mhashilkar et al(EMBO J 14:1542-51, 1995)、およびWheeler et al.(FASEB J. 17:1733-5. 2003)に記述されるように産生されてもよい。トランスボディはタンパク質の形質導入ドメイン(PTD)が一本鎖の可変断片(scFv)抗体と融合されている細胞透過性の抗体である。Heng et al., (Med Hypotheses. 64:1105-8, 2005)。
さらに、SMIPである抗体、または標的タンパク質に対して特異的な結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である抗体が企図される。これらの構築物は、抗体エフェクター機能を実行するために必要な免疫グロブリンドメインに融合された抗原結合ドメインを含む一本鎖ポリペプチドである。たとえば、WO 03/041600、米国特許出願公開第20030133939号および米国特許出願公開第20030118592号を参照されたい。
一つまたは複数のCDRを、それをイムノアドヘシンにするために、共有結合的または非共有結合的に分子に組み入れてもよい。イムノアドヘシンは、より大きいポリペプチド鎖の一部としてCDRを組み入れてもよく、別のポリペプチド鎖にCDRを共有結合的に連結させてもよく、またはCDRを非共有結合的に組み入れてもよい。CDRにより、イムノアドヘシンは、関心対象の特定の抗原に特異的に結合する。
このように、抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域の一つ、二つ、および/または三つのCDRを含む多様な組成物を当技術分野において公知の技術によって生成してもよい。
多重特異的抗体
いくつかの態様において、同じまたは異なる分子の少なくとも二つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する本発明の多重特異的(たとえば、二重特異的)抗標的抗体を生成することが望ましい可能性がある。例示的な二重特異的抗体は、標的分子の二つの異なるエピトープに結合してもよい。または標的特異的抗体のアームを、細胞防御機構を標的に集中させるために、T細胞受容体分子(たとえば、CD2またはCD3)のような細胞表面分子、またはFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、およびFcγRIII(CD16)のようなIgGのFc受容体(FcγR)に結合するアームと組み合わせてもよい。二重特異的抗体はまた、標的を発現するまたは取り込む細胞に細胞障害剤を局在させるために用いてもよい。これらの抗体は、標的結合アームと、細胞障害剤(たとえば、サポニン、抗インターフェロン-60、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メソトレキセート、または放射活性同位元素ハプテン)に結合するアームとを保有する。二重特異的抗体は、完全長の抗体または抗体断片(たとえば、F(ab')2二重特異的抗体)として調製することができる。
二重特異的抗体を作製するための別のアプローチに従って、抗体分子対のあいだの界面が、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合を最大限にするように操作されうる。好ましい界面は、抗体の定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法において、第一の抗体分子の界面からの一つまたは複数の小さいアミノ酸側鎖を、より大きい側鎖(たとえば、チロシンまたはトリプトファン)と置換する。大きいアミノ酸側鎖を小さい側鎖(たとえば、アラニンまたはトレオニン)に置換することによって、大きい側鎖と同一または類似の大きさの代償的「腔」が第二の抗体分子の界面上に作製される。これは、ホモ二量体のような他の望ましくない最終産物に対してヘテロ二量体の収率を増加させるための機構を提供する。1996年9月6日に公開されたWO 96/27011を参照されたい。
二重特異的抗体には、クロスリンクまたは「ヘテロ複合」抗体が含まれる。たとえば、ヘテロ複合体における抗体の一つをアビジンに共役させて、もう一つをビオチンに共役させることができる。ヘテロ複合抗体は、任意の簡便なクロスリンク法を用いて作製してもよい。適したクロスリンク剤は当技術分野において周知であり、多数のクロスリンク技術と共に米国特許第4,676,980号において開示されている。
抗体断片から二重特異的抗体を生成するための技術も同様に文献に記述されている。たとえば、二重特異的抗体は、化学的連結を用いて調製することができる。Brennan et al.,(Science 229:81-83, 1985)は、無傷の抗体をタンパク質分解的に切断して、F(ab')2断片を生成する方法を記述している。これらの断片は、ビシンジチオールを安定化させるためおよび分子間ジスルフィド形成を防止するために、ジチオール錯体形成剤である亜砒酸ナトリウムの存在下で還元される。次に、生成されたFab'断片をチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換する。次に、Fab'-TNB誘導体の一つを、メルカプトエチルアミンによる還元によってFab'-チオールに再変換して、等モル量の他のFab'-TNB誘導体と混合して二重特異的抗体を形成する。産生された二重特異的抗体は、酵素の選択的固定のための物質として用いることができる。なおさらなる態様において、大腸菌から直接回収されたFab'-SH断片をインビトロで化学的に共役させて、二重特異的抗体を形成することができる(Shalaby et al., J. Exp. Med. 175:217-225 (1992))。
Shalaby et al, J. Exp. Med. 175:217-225 (1992)は、完全なヒト化二重特異的抗体F(ab')2分子の産生を記述している。それぞれのFab'断片は個々に大腸菌から分泌され、インビトロで方向性の化学カップリングを受けて二重特異的抗体を形成する。このように形成された二重特異的抗体は、HER2受容体を過剰発現する細胞および正常ヒトT細胞に結合することができると共に、ヒト乳腺腫瘍標的に対するヒト細胞障害性リンパ球の溶解活性を誘発することが可能であった。
二重特異的抗体断片を組換え細胞培養物から直接作製および単離するための様々な技術も同様に記述されている。たとえば、二重特異的抗体は、ロイシンジッパーを用いて産生されている(Kostelny et al., J. Immunol. 148:1547-1553, 1992)。FosおよびJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合によって異なる二つの抗体のFab'部分に連結した。抗体のホモ二量体をヒンジ領域で還元して単量体を形成した後、再度酸化すると抗体ヘテロ二量体が形成される。この方法はまた、抗体のホモ二量体の産生のためにも利用することができる。Hollinger et al. (Proc. Natl. Acad. Sci USA 90:6444-48, 1993)によって記述される「ディアボディ」技術は、二重特異的抗体断片を作製するための代わりの機構を提供している。
断片は、短すぎて同じ鎖上の二つのドメイン間で対を形成することができないリンカーによって、軽鎖可変領域(VL)に接続された重鎖可変領域(VH)を含む。したがって、一つの断片のVHおよびVLドメインを、別の断片の相補的VLおよびVHドメインと対を形成させ、それによって二つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(scFv)二量体を用いて二重特異的抗体断片を作製するための別の戦略も同様に報告されている。Gruber et al., J. Immunol. 152: 5368 (1994)を参照されたい。
または、二重特異的抗体は、Zapata et al. Protein Eng. 8:1057-62 (1995)に記述されるように産生された「直線状抗体」であってもよい。直線状抗体は、抗原結合領域の対を形成する縦列のFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)の対を含む。直線状抗体は二重特異的または単特異的となりうる。
さらなる態様において、二重特異的抗体は、キレート性組換え型抗体(CRAb)であってもよい。キレート性組換え型抗体は、標的抗原の隣接する重なり合わないエピトープを認識して、双方のエピトープに同時に結合するのに十分な柔軟性がある(Neri et al., J Mol Biol. 246:367-73, 1995)。
二つより多い価数を有する抗体も同様に企図される。たとえば、三重特異的抗体を調製することができる(Tutt et al., J. Immunol. 147:60, 1991)。
キメラおよびヒト化抗体
キメラまたはヒト化抗体は、親のマウスモノクローナル抗体よりもヒトにおいて免疫原性が低いことから、それらはアナフィラキシーのリスクがかなり低くヒトの処置のために用いることができる。このように、これらの抗体は、ヒトに対するインビボ投与を伴う治療応用において好ましい可能性がある。
特に、ヒトにおいて単独または複合体として繰り返しインビボ投与された齧歯類抗体は、レシピエントにおいて齧歯類抗体に対する免疫応答、いわゆるHAMA反応(ヒト抗マウス抗体)を生じると考えられる。HAMA反応は、反復投与が必要である場合に薬剤の有効性を制限する可能性がある。抗体の免疫原性は、ポリエチレングリコールのような親水性ポリマーによる抗体の化学的改変によって、または抗体結合構造をよりヒトに類似させるように遺伝子操作法を用いることによって低減される可能性がある。
マウスモノクローナル抗体の可変Igドメインがヒト定常Igドメインに融合されているキメラモノクローナル抗体は、当技術分野において公知の標準的な技法を用いて生成することができる(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 6841-6855 (1984);およびBoulianne et al, Nature 312, 643-646, (1984)を参照されたい)いくつかのキメラモノクローナル抗体は、ヒトにおいて免疫原性が低いことが証明されているが、マウス可変Igドメインはなおも、有意なヒト抗マウス反応に至りうる。
ヒト化抗体は、たとえば(1)非ヒト相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワークおよび定常領域に移植すること(当技術分野において「CDRグラフティング」によるヒト化と呼ばれるプロセス)、または(2)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基を置換することによってヒト様表面によってそれらを「覆い隠す」こと(当技術分野において「ベニアリング(veneering)」と呼ばれるプロセス)が含まれる多様な方法によって達成されてもよい。本発明において、ヒト化抗体には、「ヒト化」および「ベニアリング」の双方が含まれると考えられる。これらの抗体は、たとえばそのそれぞれが参照により本明細書に組み入れられる、Jones et al., Nature 321:522 525 (1986);Morrison et al., Proc. Natl Acad. Sci, U.S.A., 81:6851-6855(1984);Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92 (1988);Verhoeyer et al., Science 239:1534-1536 (1988);Padlan, Molec. Immun. 28:489-498 (1991);Padlan, Molec. Immunol. 31:169-217 (1994);およびKettleborough et al., Protein Eng. 4:773-83 (1991)において開示されている。
「CDRグラフティング」はヒト可変Igドメインの適当な四つのフレームワーク領域にマウス重鎖および軽鎖可変Igドメインからの6個のCDRの一つまたは複数を導入する段階を伴う。この技術(Riechmann, et al., Nature 332:323-27 (1988))は、抗原との主要な接点であるCDRループを支持するための足場として、保存されたフレームワーク領域(FR1-FR4)を利用する。しかし、CDRグラフティングの短所は、フレームワーク領域のアミノ酸が抗原結合に寄与しうることから、およびCDRループのアミノ酸が二つの可変Igドメインの会合に影響を及ぼしうることから、それによって起源のマウス抗体よりも実質的に低い結合親和性を有するヒト化抗体が得られうる点である。ヒト化モノクローナル抗体の親和性を維持するために、起源のマウス抗体のフレームワーク領域と最も厳密に類似するヒトフレームワーク領域を選ぶことによって、および抗原結合部位のコンピューターモデリング(たとえば、 Co et al., J. Immunol. 152, 2968-2976 (1994))により補助されたフレームワークまたはCDR内での一つのアミノ酸の部位特異的変異誘発によって、CDRグラフティング技術を改善することができる。
抗体をヒト化する一つの方法は、非ヒト重鎖および軽鎖配列を、ヒト重鎖および軽鎖配列と整列させる段階、そのようなアライメントに基づいて非ヒトフレームワークを選択しおよびヒトフレームワークによって置換する段階、分子モデリングによりヒト化配列のコンフォメーションを予測する段階、ならびに親抗体のコンフォメーションと比較する段階を含む。このプロセスの後に、ヒト化配列モデルの予測コンフォメーションが親非ヒト抗体の非ヒトCDRのコンフォメーションと厳密に近似するまで、CDRの構造を妨害するCDR領域における残基の繰り返し戻し変異を行う。
HUMAN ENGINEERING(商標)
抗体可変ドメインのHUMAN ENGINEERING(商標)は、Studnicka [たとえば、Studnicka et al. 米国特許第5,766,886号;Studnicka et al.,(Protein Engineering 7: 805-814, 1994)を参照されたい]によって、抗体分子の結合活性を維持しながら免疫原性を低減させる方法として記述されている。方法に従って、それぞれの可変領域アミノ酸は、置換のリスクを割り当てられている。アミノ酸置換は三つのリスクカテゴリの一つによって区別される:(1)低リスクの変化とは、免疫原性を低減させる可能性が最も高く、抗原結合を妨害する見込みが最も低い変化であり;(2)中等度のリスクの変化とは、免疫原性をさらに低減させるが、抗原結合またはタンパク質フォールディングに影響を及ぼす見込みがより大きい変化であり;(3)高リスク残基とは、結合にとってまたは抗体構造を維持するために重要であるが、抗原結合またはタンパク質フォールディングが影響を受ける最も高いリスクを有する残基である。プロリンの三次元構造的役割により、プロリンにおける改変は一般的に、たとえその位置が典型的に低リスク位置であっても、少なくとも中等度のリスク変化であると見なされる。
齧歯類抗体の軽鎖および重鎖の可変領域は、抗原結合またはタンパク質フォールディングのいずれにも有害な影響を及ぼす可能性が低いが、ヒト環境において免疫原性を低減させる可能性があることが決定された位置でヒトアミノ酸を置換するために、以下のようにHUMAN ENGINEERED(商標)に供される。「低リスク」位置であって方法に従う改変の候補であるアミノ酸残基を、齧歯類の可変領域のアミノ酸配列をヒト可変領域配列と整列させることによって同定する。個々のVHもしくはVL配列またはヒトコンセンサスVHもしくはVL配列、または個々のもしくはコンセンサスヒト生殖系列配列が含まれる任意のヒト可変領域を用いることができる。低リスク位置の任意の数のまたは低リスク位置の全数のアミノ酸残基を変化させることができる。たとえば、整列させたマウスとヒトのアミノ酸残基が異なるそれぞれの低リスク位置で、齧歯類残基をヒト残基と置換するアミノ酸改変を導入する。または、低リスク位置の全数のおよび中等度のリスク位置の任意の数のアミノ酸残基を変化させることができる。理想的には、免疫原性が最小となるように、低および中等度リスク位置の全てを齧歯類からヒト配列へと変化させる。
改変された重鎖および/または軽鎖可変領域を含有する合成遺伝子を構築して、ヒトγ重鎖および/またはκ軽鎖定常領域に連結する。IgA(IgA1もしくはIgA2のような任意のサブクラスの)、IgD、IgE、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4のような任意のサブクラスの)、またはIgMが含まれるHUMAN ENGINEERED(商標)抗体可変領域と共に、任意のヒト重鎖および軽鎖定常領域を用いてもよい。ヒト重鎖および軽鎖遺伝子を哺乳動物細胞のような宿主細胞に導入して、得られた組換え型免疫グロブリン産物を得て特徴付けする。
トランスジェニック動物からのヒト抗体
標的タンパク質に対するヒト抗体はまた、内因性の免疫グロブリン産生を有しないが、ヒト免疫グロブリン座を含有するように操作されているトランスジェニック動物を用いて産生することができる。たとえば、WO 98/24893は、内因性の重鎖および軽鎖座の不活化により、動物が機能的な内因性の免疫グロブリンを産生しない、ヒトIg座を有するトランスジェニック動物を開示している。WO 91/00906はまた、抗体が霊長類定常領域および/または可変領域を有し、内因性の免疫グロブリンコード座が置換または不活化されている、免疫原に対する免疫応答を開始することができるトランスジェニック非霊長類哺乳動物宿主を開示する。WO 96/30498および米国特許第6,091,001号は、定常または可変領域の全てまたは一部を置換して、改変抗体分子を形成する場合のように、哺乳動物における免疫グロブリン座を改変するためにCre/Loxシステムを用いることを開示する。WO 94/02602は、不活化された内因性のIg座および機能的ヒトIg座を有する非ヒト哺乳動物宿主を開示する。米国特許第5,939,598号は、内因性の重鎖を欠損して一つまたは複数の異種定常領域を含む外因性の免疫グロブリン座を発現するトランスジェニックマウスを作製する方法を開示する。同様に、米国特許第6,114,598号、第6,657,103号、および第6,833,268号を参照されたい。
上記のトランスジェニック動物を用いて、選択された抗原分子に対する免疫応答を産生することができ、抗体産生細胞を動物から採取して、これを用いてヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを産生することができる。免疫プロトコール、アジュバント等は当技術分野において公知であり、たとえば WO 96/33735に記述されるようにトランスジェニックマウスの免疫化において用いられる。この刊行物は、IL-6、IL-8、TNFa、ヒトCD4、Lセレクチン、gp39、および破傷風毒素が含まれる多様な抗原性分子に対するモノクローナル抗体を開示する。モノクローナル抗体を、対応するタンパク質の生物活性または生理的効果の阻害または中和能に関して試験することができる。WO 96/33735は、IL-8によって免疫したトランスジェニックマウスの免疫細胞に由来する、IL-8に対するモノクローナル抗体が、好中球のIL-8誘発機能を遮断したことを開示している。トランスジェニック動物を免疫するために用いられる抗原に対して特異性を有するヒトモノクローナル抗体はまた、WO 96/34096および米国特許出願公開第20030194404号;および米国特許出願公開第20030031667号において開示されている。
モノクローナル抗体を作製するのに有用なさらなるトランスジェニック動物には、米国特許第5,770,429号およびFishwild, et al. (Nat. Biotechnol. 14:845-851 (1996))に記述されているMedarex HuMAb-MOUSE(登録商標)が含まれ、これはヒト抗体の重鎖および軽鎖をコードする再編成されていないヒト抗体遺伝子からの遺伝子配列を含有する。HuMAb-MOUSE(登録商標)の免疫化は、標的タンパク質に対する完全なヒトモノクローナル抗体の産生を可能にする。
同様に、Ishida et al.(Cloning-Stem Cells. 4:91-102 (2002))は、ヒトDNAのメガベースの大きさのセグメントを含み、完全なヒト免疫グロブリン(hIg)座を組み入れるトランスクロモマウス(TCMOUSE(商標))について記述している。TCMOUSE(商標)は、IgG(IgG1〜G4)の全てのサブクラスが含まれるhIgの非常に多様なレパートリーを有する。様々なヒト抗原によってTCMOUSE(商標)を免疫すると、ヒト抗体を含む抗体反応を産生する。
同様に、Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 90:2551 (1993);Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993);Bruggermann et al., Year in Immunol, 7:33 (1993);および米国特許第5,591,669号、米国特許第5,589,369号、米国特許第5,545,807号;および米国特許出願公開第20020199213号を参照されたい。米国特許出願公開第20030092125号は、動物の免疫応答を所望のエピトープに偏らせる方法を記述している。ヒト抗体は、インビトロ活性化B細胞によって生成されてもよい(米国特許第5,567,610号および第5,229,275号を参照されたい)。
ディスプレイ技術からのヒト抗体
組換え型ヒト抗体遺伝子のレパートリー、および糸状バクテリオファージの表面上のコードされた抗体断片のディスプレイを作製するための技術の開発は、ヒト抗体を直接作製するための手段を提供した。ファージ技術によって産生された抗体は、細菌において抗原結合断片、通常FvまたはFab断片として産生され、このようにエフェクター機能を欠損する。エフェクター機能は二つの戦略の一つによって導入されうる。断片を、哺乳動物細胞において発現させるための完全な抗体に操作することができ、またはエフェクター機能を誘発することができる第二の結合部位を有する二重特異的抗体断片に操作することができる。
本発明は、ファージ上でヒト抗体ライブラリを合成する段階、標的タンパク質またはその一部によってライブラリをスクリーニングする段階、標的に結合するファージを単離する段階、およびファージから抗体を得る段階を含む、標的特異的抗体またはその抗原結合部分を産生する方法を企図する。例として、ファージディスプレイ技術に用いるための抗体のライブラリを調製するための一つの方法は、ヒト免疫グロブリン座を含む非ヒト動物を標的抗原またはその抗原性部分によって免疫して、免疫応答を作製する段階、免疫した動物から抗体産生細胞を抽出する段階、抽出した細胞からRNAを単離する段階、RNAを逆転写してcDNAを産生する段階、プライマーを用いてcDNAを増幅する段階、および抗体がファージ上で発現されるように、cDNAをファージディスプレイベクターに挿入する段階を含む。本発明の組換え型標的特異的抗体はこのようにして得てもよい。
ファージディスプレイプロセスは、糸状バクテリオファージの表面上での抗体レパートリーのディスプレイを通して免疫的選択を模倣して、次に、選んだ抗原に対するその結合によってファージの選択を行う。一つのそのような技術は、WO 99/10494に記載されており、これはMPLおよびmsk受容体に対する高親和性の機能的なアゴニスト抗体のそのようなアプローチを用いた単離を記述する。本発明の抗体は、組換え型のコンビナトリアル抗体ライブラリ、好ましくはヒトリンパ球に由来するmRNAから調製されたヒトVLおよびVH cDNAを用いて調製されたscFvファージディスプレイライブラリをスクリーニングすることによって単離することができる。そのようなライブラリを調製およびスクリーニングするための方法論は当技術分野において公知である。たとえば、米国特許第5,969,108号を参照されたい。ファージディスプレイライブラリを生成するためのキットが販売されている(たとえば、the Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27-9400-01;およびthe Stratagene SurfZAP.TM.ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。同様に抗体ディスプレイライブラリの生成およびスクリーニングにおいて用いることができる他の方法および試薬が存在する(たとえば、Ladner et al. 米国特許第5,223,409号;Kang et al. PCT公開番号WO 92/18619;Dower et al. PCT公開番号WO 91/17271;Winter et al. PCT公開番号WO 92/20791;Markland et al. PCT公開番号WO 92/15679;Breitling et al. PCT公開番号WO 93/01288;McCafferty et al. PCT公開番号WO 92/01047;Garrard et al. PCT公開番号WO 92/09690;Fuchs et al. (1991) Bio/Technology 9:1370-1372;Hay et al. (1992) Hum. Antibod. Hybridomas 3:81-85;Huse et al. (1989) Science 246:1275-1281;McCafferty et al., Nature (1990) 348:552-554;Griffiths et al. (1993) EMBOJ 12:725-734;Hawkins et al. (1992) J. Mol. Biol. 226:889-896;Clackson et al. (1991) Nature 352:624-628;Gram et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci USA 89:3576-3580;Garrad et al. (1991) Bio/Technology 9:1373-1377;Hoogenboom et al. (1991) Nuc Acid Res 19:4133-4137;およびBarbas et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7978-7982を参照されたい)。
一つの態様において、所望の特徴を有する標的抗原に対して特異的なヒト抗体を単離するためには、所望の特異性を有する抗体断片に関して選択するようにヒトVHおよびVLライブラリをスクリーニングする。本方法において用いられる抗体ライブラリは好ましくは、本明細書においておよび当技術分野において記述されるように調製およびスクリーニングされたscFvライブラリである(McCafferty et al., PCT公開番号WO 92/01047, McCafferty et al., (Nature 348:552-554 (1990);およびGriffiths et al., (EMBO J 12:725-734 (1993))。scFv抗体ライブラリは、好ましくは抗原として標的タンパク質を用いてスクリーニングされる。
または、抗体のFd断片(VH-CH1)および軽鎖(VL-CL)をPCRによって個々にクローニングして、コンビナトリアルファージディスプレイライブラリにおいて無作為に組換えした後、特定の抗原に対する結合に関して選択することができる。Fab断片はファージ表面に発現され、すなわちそれらをコードする遺伝子に物理的に連結している。このように、抗原結合によるFabの選択は、Fabコード配列を同時に選択する。これはその後増幅することができる。パニングと呼ばれる技法である抗原結合および再増幅の数ラウンドを通して、抗原に対して特異的なFabを濃縮して最終的に単離する。
1994年に、「ガイド選択(guided selection)」と呼ばれる、抗体をヒト化するためのアプローチが記述された。ガイド選択は、マウスモノクローナル抗体をヒト化するためにファージディスプレイ技術の能力を利用する(Jespers, L. S., et al., Bio/Technology 12, 899-903 (1994)を参照されたい)。この場合、マウスモノクローナル抗体のFd断片をヒト軽鎖ライブラリと組み合わせて提示することができ、得られたハイブリッドFabライブラリを抗原に関して選択してもよい。それによってマウスFd断片は、選択を誘導するための鋳型を提供する。次に、選択されたヒト軽鎖をヒトFd断片ライブラリと組み合わせる。得られたライブラリの選択は、完全なヒトFabをもたらす。
ファージディスプレイライブラリからヒト抗体を誘導するために、多様な技法が記述されている(たとえば、Hoogenboom et al., J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol, 222:581-597 (1991);米国特許第5,565,332号および第5,573,905号;Clackson, T., and Wells, J. A., TIBTECH 12, 173-184 (1994)を参照されたい)。特に、ファージディスプレイライブラリに由来する抗体のインビトロ選択および発展は、強力なツールとなった(Burton, D. R., and Barbas III, C. F., Adv. Immunol. 57, 191-280 (1994);Winter, G., et al., Annu. Rev. Immunol. 12, 433-455 (1994);米国特許出願公開第20020004215号およびWO 92/01047;米国特許出願公開第20030190317号;ならびに米国特許第6,054,287号および第5,877,293号を参照されたい)。
Watkins, "Screening of Phage-Expressed Antibody Libraries by Capture Lift," Methods in Molecular Biology, Antibody Phage Display: Methods and Protocols 178:187-193 (2002)、および2003年3月6日に公開された米国特許出願公開第20030044772号は、固相支持体上で候補結合分子の固定を伴う、捕獲リフト(capture lift)によってファージ発現抗体ライブラリまたは他の結合分子をスクリーニングするための方法を記述している。
Fv断片は、ファージタンパク質融合体(たとえば、M13遺伝子III)として発現された一つの鎖と可溶性断片として発現された相補鎖との会合によってファージの表面上に提示される。ファージは、クラスIファージfd、M13、f1、If1、Ike、ZJ/Z、Ff のうちの一つ、ならびにクラスIIファージXf、Pf1、およびPf3のうちの一つのような糸状ファージであってもよいと企図される。ファージはM13もしくはfd、またはその誘導体であってもよい。
最初のヒトVLおよびVHセグメントが選択された後、最初に選択されたVLおよびVHセグメントの異なる対を、標的結合に関してスクリーニングする「ミックス&マッチ」実験を行って、好ましいVL/VH対の組み合わせを選択する。さらに、抗体の質をさらに改善するために、好ましくは天然の免疫応答の際の抗体の親和性成熟の原因となるインビボ体細胞変異プロセスと類似のプロセスにおいて、VHおよび/またはVLのCDR1、CDR2、またはCDR3領域のいずれかにおいて、好ましいVL/VH対のVLおよびVHセグメントを無作為に変異させることができる。このインビトロ親和性成熟は、得られたPCR産物が、ランダム変異がVHおよび/またはVL CDR3領域に導入されているVLおよびVHセグメントをコードするように、プライマーに、一定の位置で四つのヌクレオチド塩基の無作為な混合物が「スパイク」されている、VL CDR1、CDR2、およびCDR3、またはVH CDR1、CDR2、およびCDR3に対して相補的なPCRプライマーを用いて、VLおよびVH領域を増幅することによって得ることができる。これらの無作為に変異したVLおよびVHセグメントを、標的抗原に対する結合に関して再スクリーニングすることができる。
組換え型免疫グロブリンのディスプレイライブラリからの標的特異的抗体のスクリーニングおよび単離後、選択された抗体をコードする核酸をディスプレイパッケージから(たとえば、ファージゲノムから)回収して、標準的な組換えDNA技術によって他の発現ベクターにサブクローニングすることができる。望ましい場合は、核酸を、以下に記述されるように本発明の他の抗体型を作製するためにさらに操作することができる。コンビナトリアルライブラリのスクリーニングによって単離された組換え型ヒト抗体を発現させるために、抗体をコードするDNAを組換え体発現ベクターにクローニングして、本明細書に記述されるように哺乳動物宿主細胞に導入する。
ファージディスプレイ法は細菌または宿主細胞のミューテーター株において行われてもよいと企図される。ミューテーター株は、その中で複製されるDNAをその親DNAに関して変異させる遺伝的欠損を有する宿主細胞である。例示的なミューテーター株は、NR9046mutD5およびNR9046 mut T1である。
同様に、ファージディスプレイ法はヘルパーファージを用いて行ってもよいと企図される。これは欠損ファージゲノムを含有する細胞に感染させるために用いられ、欠損を相補するように機能するファージである。欠損ファージゲノムは、何らかの機能コード遺伝子配列が切除されたファージミドまたはファージとなりうる。ヘルパーファージの例は、M13K07、M13K07遺伝子III no.3、およびカプシドタンパク質に融合された結合分子を提示またはコードするファージである。
抗体はまた、HまたはL鎖クローンのいずれかを含有する個々のコロニーを用いて、他の鎖(LまたはH)をコードするクローンの完全なライブラリに感染させて、得られた二つの鎖特異的結合メンバーを、記述されている技術のようなファージディスプレイ技術に従って選択する、WO 92/01047において開示されるような階層的二重コンビナトリアルアプローチを用いるファージディスプレイスクリーニング法によって生成される。この技術はまた、Marks et al,(Bio/Technology, 10:779-783 (1992))においても開示されている。
酵母および微生物細胞の表面上にペプチドを提示するための方法も同様に、抗原特異的抗体を同定するために用いられている。たとえば、米国特許第6,699,658号を参照されたい。抗体ライブラリを、免疫系におけるB細胞による抗体の細胞表面提示を有効に模倣するアグルチニンのような酵母タンパク質に付着させてもよい。
ファージディスプレイ法のほかに、リボソームmRNAディスプレイ法および微生物細胞ディスプレイ法を用いて抗体を単離してもよい。リボソームディスプレイを用いるポリペプチドの選別は、Hanes et al.,(Proc. Natl Acad Sci USA, 94:4937-4942(1997))およびKawasakiに発行された米国特許第5,643,768号および第5,658,754号に記述されている。リボソームディスプレイはまた、抗体の迅速な大規模変異分析にとって有用である。選択的変異アプローチはまた、リボソームディスプレイ技術を用いて選択することができる改善された活性を有する抗体を産生する方法を提供する。
アミノ酸配列変異体
CDRが標的分子に対する特異性または親和性の増加を提供するように改変されている、抗体のCDR 1個、2個、3個、4個、5個、および/または6個を含む改変ポリペプチド組成物が生成されると企図される。抗体CDR内の部位は典型的に、たとえば第一の部位を保存的選択肢(たとえば、非同一疎水性アミノ酸の代わりに疎水性アミノ酸を用いる)に置換した後、より類似でない選択肢(たとえば、荷電アミノ酸の代わりに疎水性アミノ酸を用いる)に置換することによって連続的に改変して、次に欠失または挿入を標的部位で作製してもよい。たとえば、プライマー領域間に存在する抗原特異的CDR配列を増幅するために、CDR周囲の保存されたフレームワーク配列を用いて、これらのコンセンサス配列と相補的なPCRプライマーを生成する。ヌクレオチドおよびポリペプチド配列をクローニングおよび発現する技術は当技術分野において十分に確立されている[たとえば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor, New York (1989)を参照されたい]。増幅されたCDR配列は適当なプラスミドにライゲーションされる。クローニングされたCDR 1個、2個、3個、4個、5個、および/または6個を含むプラスミドは任意で、CDRに連結されたさらなるポリペプチドコード領域を含有する。
改変CDRを含む抗体物質を、起源の抗原に関する結合親和性に関してスクリーニングする。さらに、抗体またはポリペプチドをさらに、標的抗原の活性の中和能に関して試験する。たとえば、標的抗原の生物活性の干渉能を決定するために、本発明の抗体を実施例に記載されるように分析してもよい。
以下により詳しく記述される保存的または非保存的アミノ酸置換によって、改変を行ってもよい。「挿入」または「欠失」は、好ましくはアミノ酸約1個〜20個の範囲であり、より好ましくはアミノ酸1〜10個である。組換えDNA技術を用いて抗体ポリペプチド分子においてアミノ酸の置換を系統的に作製して、得られた組換え型変異体を活性に関してアッセイすることによって変化を導入してもよい。核酸の変化は、異なる種(可変位置)からの核酸において、または非常に保存された領域(定常領域)において異なる位置で行うことができる。抗体配列を変化させて、本発明において有用である抗体ポリペプチド組成物を発現する方法を以下により詳しく記述する。
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100個またはそれより多い残基を含有するポリペプチドまでに及ぶアミノおよび/またはカルボキシ末端融合体と共に、一つまたは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体、またはエピトープタグもしくはサルベージ受容体エピトープに融合した抗体(抗体断片が含まれる)が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、たとえばN末端またはC末端における抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドとの融合体が含まれる。
「エピトープタグ」という用語は、エピトープタグに融合された抗体を指す。エピトープタグポリペプチドは、それに対する抗体を作製することができるエピトープを提供するのに十分な残基を有するが、抗体の活性を干渉するには短すぎる。エピトープタグは好ましくは、それに対する抗体が他のエピトープと実質的に交叉反応しないように十分に固有のものである。適したタグポリペプチドは一般的に、少なくとも6アミノ酸残基を有し、通常アミノ酸約8〜50残基(好ましくは約9〜30残基のあいだ)を有する。例には、インフルエンザヘムアグルチニン(HA)タグポリペプチドおよびその抗体12CA5(Field et al., Mol. Cell. Biol. 8: 2159-2165 (1988));c-mycタグならびにそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7、および9E10抗体(Evan et al., Mol. Cell. Biol. 5:3610-16 (1985)):ならびに単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体(Paborsky et al., Protein Engineering 3:547-53(1990))が含まれる。他の例示的なタグは、ニッケルキレート形成を用いてそのように標識された化合物を単離することができる、一般的にほぼ6個のヒスチジン残基であるポリヒスチジン配列である。当技術分野において周知であり、慣習的に用いられているFLAG(登録商標)タグ(Eastman Kodak, Rochester, NY)のような他の標識およびタグが、本発明に包含される。
本明細書において用いられるように、「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボ血清半減期を増加させることの原因となるIgG分子(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc部分のエピトープを指す。
別のタイプの変異体はアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、抗体分子中の少なくとも一つのアミノ酸残基が除去され、その場に異なる残基が挿入されている。超可変領域、CDR領域、またはフレームワーク領域のいずれかにおける置換的変異誘発が企図される。保存的置換は、アミノ酸をそのクラスの別のメンバーに置換する段階を伴う。非保存的置換は、これらのクラスの一つのメンバーを別のクラスのメンバーに置換する段階を伴う。
保存的アミノ酸置換は、関係する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性特性における類似性に基づいて作製される。たとえば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン(Ala、A)、ロイシン(Leu、L)、イソロイシン(Ile、I)、バリン(Val、V)、プロリン(Pro、P)、フェニルアラニン(Phe、F)、トリプトファン(Trp、W)、およびメチオニン(Met、M)が含まれ;極性の中性アミノ酸には、グリシン(Gly、G)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T)、システイン(Cys、C)、チロシン(Tyr、Y)、アスパラギン(Asn、N)、およびグルタミン(Gln、Q)が含まれる;陽性荷電(塩基性)アミノ酸には、アルギニン(Arg、R)、リジン(Lys、K)、およびヒスチジン(His、H)が含まれ;ならびに陰性荷電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸(Asp、D)およびグルタミン酸(Glu、E)が含まれる。
分子の酸化的安定性を改善するためおよび異常なクロスリンクを防止するために、抗体の適切なコンフォメーションの維持に関係しない任意のシステイン残基を一般的にセリンに置換してもよい。逆に、その安定性を改善するためにシステイン結合を抗体に付加してもよい(特に、抗体がFv断片のような抗体断片である場合)。
親和性成熟
親和性成熟は一般的に、親抗体のCDR内に置換を有する抗体変異体を調製およびスクリーニングする段階、および親抗体と比較して結合親和性のような生物学的特性が改善された変異体を選択する段階を伴う。そのような置換変異体を生成する簡便な方法は、ファージディスプレイを用いる親和性成熟である。簡単に説明すると、いくつかの超可変領域部位(たとえば、部位6〜7個)を変異させて、それぞれの部位で起こりうる全てのアミノ酸置換を生成する。このように生成された抗体変異体は、それぞれの粒子内でパッケージングされたM13の遺伝子III産物との融合体として、糸状ファージ粒子から一価の抗体として提示される。次に、ファージディスプレイ変異体をその生物活性(たとえば、結合親和性)に関してスクリーニングする。たとえば、WO 92/01047、WO 93/112366、WO 95/15388、およびWO 93/19172を参照されたい。
現在の抗体親和性成熟法は二つの変異誘発カテゴリーに属する:確率論的および非確率論的。エラープローンPCR、ミューテーター細菌種(Low et al., J. Mol. Biol. 260, 359-68 (1996))、および飽和変異誘発(Nishimiya et al.,. J. Biol. Chem. 275:12813-20 (2000);Chowdhury, P. S. Methods Mol. Biol. 178, 269-85 (2002))は、確率論的変異誘発法の典型的な例である(Rajpal et al., Proc Natl Acad Sci USA. 102:8466-71 (2005))。非確率論的技術はしばしば、特異的変異体の限定されたコレクションを生成するためにアラニンスキャンまたは部位特異的変異誘発を用いる。いくつかの方法を以下にさらに詳細に記述する。
パニング法による親和性成熟−組換え型抗体の親和性成熟は、一般的に、減少量の抗原の存在下で候補抗体のパニングの数回ラウンドを通して行われる。ラウンドあたりの抗原量を減少させることは、抗原に対して最大の親和性を有する抗体を選択して、それによって開始材料の大規模なプールから高い親和性の抗体を得る。パニングによる親和性成熟は、当技術分野において周知であり、たとえばHuls et al.(Cancer Immunol Immunother. 50:163-71 (2001))に記述されている。ファージディスプレイ技術を用いる親和性成熟法は、本明細書にいて他所で記述されており、当技術分野において公知である(たとえば、Daugherty et al., Proc Natl Acad Sci USA. 97:2029-34 (2000)を参照されたい)。
ルックスルー(look-through)変異誘発−ルックスルー変異誘発(LTM)(Rajpal et al., Proc Natl Acad Sci USA. 102:8466-71 (2005))は、抗体結合部位の迅速なマッピング法を提供する。LTMに関して、20個の天然のアミノ酸によって提供される主要な側鎖の化学を代表するアミノ酸9個を選択して、抗体の6個全てのCDRにおける位置毎に結合に対する機能的側鎖の寄与を詳細に調べる。LTMは、それぞれの「野生型」残基が、選択された9個のアミノ酸のうちの一つで系統的に置換されているCDR内の単一変異の位置シリーズを生成する。変異したCDRを混合して、全ての変異体の定量的提示に対して禁止的とならずに、複雑度および大きさが増加する、コンビナトリアル一本鎖可変断片(scFv)ライブラリを生成する。陽性選択後、改善された結合を有するクローンをシークエンシングして、有益な変異をマッピングする。
エラープローンPCR−エラープローンPCRは、異なる選択ラウンド間の核酸の無作為化を伴う。無作為化は、用いたポリメラーゼの内因性の誤差率によって低率で起こるが、転写の際の高い内因性誤差率を有するポリメラーゼを用いることによって(Hawkins et al., J Mol Biol. 226:889-96 (1992))、エラープローンPCRによって増強することができる(Zaccolo et al.,. J. Mol. Biol. 285:775-783 (1999))。成熟サイクル後、抗原に対して改善された親和性を有するクローンを、当技術分野で慣習的な方法を用いて選択する。
DNAシャッフリング−核酸シャッフリングは、変異体ポリヌクレオチドを産生するために、より短いまたはより低分子のポリヌクレオチドのプールのインビトロまたはインビボ相同的組換えのための方法である。DNAシャッフリングは、米国特許第6,605,449号、米国特許第6,489,145号、WO 02/092780、およびStemmer, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:10747-51 (1994)に記述されている。一般的に、DNAシャッフリングは、3段階を含む:シャッフルされる遺伝子のDNアーゼIによる断片化、断片の無作為ハイブリダイゼーション、およびDNAポリメラーゼの存在下でのPCR(セクシュアル(sexual)PCR)による断片化遺伝子の再アセンブリまたは充填、ならびに通常のPCRによる再アセンブル産物の増幅。
DNAシャッフリングは、それが逆連鎖反応であるという点においてエラープローンPCRとは異なる。エラープローンPCRにおいて、ポリメラーゼの開始部位の数および分子の数は、指数関数的に増加する。対照的に、ランダムポリヌクレオチドの核酸再アセンブリまたはシャッフリングにおいて、開始部位の数およびランダムポリヌクレオチドの数(大きさではない)は、時間と共に減少する。
抗体の場合、DNAシャッフリングによって、たとえばCDR1の全て、CDR2の全て、CDR3の全てとの自由な組み合わせ会合が可能となる。多数の配列ファミリーを同じ反応においてシャッフルさせることができると企図される。さらに、シャッフリングは一般的に、たとえばCDR1がCDR2の位置に見いだされないように相対的順序を保存する。まれなシャッフリング物質は、最善の(たとえば、最大親和性の)CDRを多数含有し、これらのまれなシャッフリング物質は、その優れた親和性に基づいて選択される可能性がある。
DNAシャッフリングにおいて用いられてもよい鋳型ポリヌクレオチドはDNAまたはRNAであってもよい。鋳型ポリヌクレオチドは、組換えられるまたは再アセンブルされる遺伝子の大きさ、またはより短いもしくはより低分子のポリヌクレオチドに応じて様々な長さであってもよい。好ましくは、鋳型ポリヌクレオチドは50 bp〜50 kbである。鋳型ポリヌクレオチドはしばしば二本鎖であるべきである。
鋳型ポリヌクレオチドと同一領域を有する、および鋳型ポリヌクレオチドとは異種の領域を有する一本鎖または二本鎖核酸ポリヌクレオチドを、遺伝子選択の最初の段階のあいだに鋳型ポリヌクレオチドに付加してもよいことが企図される。同様に、異なるがしかし関連する二つのポリヌクレオチド鋳型を最初の段階のあいだに混合してもよいことが企図される。
アラニンスキャン−抗原の結合に有意に寄与する超可変領域の残基を同定するために、アラニンスキャン変異誘発を行うことができる。Cunningham and Wells,(Science 244:1081-1085 (1989))。残基または標的残基の群を同定して(たとえば、arg、asp、his、lys、およびgluのような荷電残基)、アミノ酸と抗原の相互作用に影響を及ぼすために中性または陰性荷電アミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)によって置換する。次に、置換部位でまたは置換部位に対してさらなるまたは他の変異体を導入することによって、置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸位置を精密化する。
コンピューター補助設計−あるいは、またはさらには、抗体と抗原の接点を同定すること、またはそのような接点をモデルとするためにコンピューターソフトウェアを用いることは、抗原-抗体コンプレックスの結晶構造を分析するのに有益となる可能性がある。そのような接触残基および隣接残基は、本明細書において詳述した技術に従う置換の候補である。そのような変異体を生成した後、変異体のパネルを本明細書に記述されるスクリーニングに供して、一つまたは複数の関連するアッセイにおいて優れた特性を有する抗体を、さらに開発するために選択してもよい。
グリコシル化の変化
親抗体と比較して改変されたグリコシル化パターンを有する、抗体において見いだされる一つまたは複数の炭水化物部分を欠失する、および/または抗体に存在しない一つまたは複数のグリコシル化部位を付加する、抗体変異体を産生することができる。
抗体のグリコシル化は典型的に、N-連結またはO-連結である。N-連結は、アスパラギン残基の側鎖に対する炭水化物部分の付着を指す。Xがプロリンを除く任意のアミノ酸であるトリペプチド配列、アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニンは、アスパラギン側鎖に炭水化物部分を酵素的に付着させるための認識配列である。ポリペプチドにこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在すれば、可能性があるグリコシル化部位を作製する。このように、これらのトリペプチド配列の一つまたは複数を含有するようにアミノ酸配列を変化させることによって、N-連結グリコシル化部位を抗体に付加してもよい。O-連結グリコシル化は、糖であるN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースの一つをヒドロキシアミノ酸、最も一般的にセリンまたはトレオニンに付着させることを指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも同様に用いてもよい。一つまたは複数のセリンまたはトレオニン残基を起源の抗体の配列に挿入または置換することによって、O-連結グリコシル化部位を抗体に付加してもよい。
改善されたADCC活性を示す、フコシル化が存在しないまたは低減された抗体分子も同様に企図される。これを行うために多様な方法が当技術分野において公知である。たとえば、ADCCエフェクター活性は、CH2ドメインのAsn-297におけるN-連結グリコシル化の炭水化物構造に依存することが示されているFcγRIII受容体に対する抗体分子の結合によって媒介される。非フコシル化抗体は、この受容体に増加した親和性で結合し、本来のフコシル化抗体より効率的にFcγRIII媒介エフェクター機能を誘発する。たとえば、α-1,6-フコシルトランスフェラーゼ活性がノックアウトされているCHO細胞における非フコシル化抗体の組換え的産生によって、ADCC活性が100倍増加した抗体が得られる(Yamane-Ohnuki et al., Biotechnol Bioeng. 87:614-22 (2004))。類似の効果は、フコシル化経路におけるこのまたは他の酵素の活性の減少を通して、たとえばsiRNAまたはアンチセンスRNA処置を通して、酵素をノックアウトするために細胞株を操作することを通して、または選択的グリコシル化阻害剤と共に培養することを通して(Rothman et al., Mol Immunol. 26: 1113-23 (1989))達成することができる。いくつかの宿主細胞株、たとえばLec 13またはラットハイブリドーマYB2/0細胞株は、より低いフコシル化レベルの抗体を天然に産生する(Shields et al., J Biol Chem. 277:26733-40 (2002);Shinkawa et al., J Biol Chem. 278:3466-73 (2003))。たとえばGnTIII酵素を過剰発現する細胞における抗体の組換え的産生を通して二分された炭水化物レベルの増加も同様に、ADCC活性を増加させることが証明されている(Umana et al., Nat Biotechnol. 17:176-80 (1999))。ADCC活性を増加させるためには、二つのフコース残基のうち一つのみの非存在で十分である可能性があることが予測されている(Ferrara et al., Biotechnol Bioeng. 93:851-61 (2006))。
変化したエフェクター機能を有する変異体
抗体の他の改変が企図される。一つの局面において、たとえばガンを処置するための抗体の有効性を増強するために、エフェクター機能に関して本発明の抗体を改変することが望ましい可能性がある。エフェクター機能を改変する一つの方法は、システイン残基をFc領域に導入してもよく、それによってこの領域において鎖間ジスルフィド結合を形成させることを教示している。このようにして生成されたホモ二量体抗体は、改善されたインターナリゼーション能、および/または増加した補体媒介細胞殺傷、および抗体依存型細胞障害性(ADCC)を有する可能性がある。Caron et al.,(J. Exp Med. 176: 1191-1195 (1992))およびShopes, B.(J. Immunol. 148: 2918-2922 (1992))を参照されたい。抗腫瘍活性が増強されたホモ二量体抗体はまた、Wolff et al., (Cancer Research 53: 2560-2565 (1993))に記述されるようにヘテロ二官能性クロスリンク剤を用いて調製してもよい。または、二重のFc領域を有し、それによって補体溶解およびADCC能が増強する可能性がある抗体を操作することができる。Stevenson et al.,(Anti-Cancer Drug Design 3: 219-230 (1989))を参照されたい。さらに、CDR内の配列は、抗体をMHCクラスIIに結合させて、望ましくないヘルパーT細胞反応を誘発することができることが示されている。保存的置換によって、抗体は結合活性を保持するが、望ましくないT細胞反応の誘発能を失う。同様に、マウス可変領域がヒトγ1、γ2、γ3、およびγ4定常領域に接合したキメラ抗体を記述する、Steplewski et al., (Proc Natl Acad Sci USA. 85:4852-56 (1998))を参照されたい。
本発明の一定の態様において、たとえば腫瘍の浸透を増加させるためには、無傷の抗体よりむしろ抗体断片を用いることが望ましい場合がある。この場合、その血清半減期を増加させるために抗体断片を改変すること、たとえば半減期を増加させるためにPEGまたは多糖類高分子が含まれる他の水溶性高分子のような分子を抗体断片に付加することが望ましい場合がある。これはまた、たとえば抗体断片にサルベージ受容体結合エピトープを組み入れることによって行ってもよい(たとえば、抗体断片における適当な領域の変異によって、エピトープをペプチドタグに組み入れて、次にこれをたとえばDNAまたはペプチド合成によっていずれかの末端または中央部で抗体断片に融合させることによって)(たとえば、WO 96/32478を参照されたい)。
サルベージ受容体結合エピトープは、好ましくは、Fcドメインの一つまたは二つのループからの任意の一つまたは複数のアミノ酸残基が抗体断片の類似の位置に転移されている領域を構成する。さらにより好ましくは、Fcドメインの一つまたは二つのループからの三つまたはそれより多い残基が転移される。さらにより好ましくは、エピトープは、Fc領域(たとえば、IgGの)のCH2ドメインから得て、抗体のCH1、CH3、もしくはVH領域、または一つより多いそのような領域に転移する。または、エピトープをFc領域のCH2ドメインから得て、抗体断片のCL領域、VL領域、またはその双方に転移する。同様に、Fc変異体およびサルベージ受容体とのその相互作用を記述する国際出願 WO 97/34631およびWO 96/32478を参照されたい。
このように、本発明の抗体は、ジスルフィド結合に関係するシステインが改変または除去されている、および/またはmetがN末端に付加されている、および/またはN末端のアミノ酸20個の一つまたは複数が除去されている、および/またはC1q結合部位のような補体と相互作用する領域が除去されている、および/またはADCC部位が除去されている変異体が含まれる、変異体Fcサルベージ受容体との相互作用能を保持する、ヒトFc部分、ヒトコンセンサスFc部分、またはその変異体を含んでもよい[たとえば、Sarmay et al., Molec. Immunol. 29:633-9 (1992)を参照されたい]。
これまでの研究により、主にIgG残基233〜239位からなる下位ヒンジ領域に対するヒトおよびマウスIgG上のFcRに対する結合部位がマッピングされた。他の研究は、さらに広いセグメント、たとえばヒトFc受容体Iに関してGly316〜Lys338、ヒトFc受容体IIIに関してLys274〜Arg301およびTyr407〜Arg416を提唱し、または下位ヒンジの外側にいくつかの特異的残基、たとえばマウスFc受容体IIと相互作用するマウスIgG2bに関してAsn297およびGlu318を見いだした。ヒトFc受容体IIIAとヒトIgG Fc断片の3.2 Å結晶構造の報告により、Fc受容体IIIAに対する結合に関係しているとしてIgG1残基Leu234〜Ser239、Asp265〜Glu269、Asn297〜Thr299、およびAla327〜Ile332が描写された。結晶構造に基づいて、下位ヒンジ(Leu234〜Gly237)のほかに、IgG CH2ドメインループFG(残基326〜330位)およびBC(残基265〜271位)における残基が、Fc受容体IIAに対する結合において役割を果たす可能性があることが示唆されている。その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、Shields et al.,(J. Biol. Chem., 276:6591-604 (2001))を参照されたい。Fc受容体結合部位内での残基の変異によって、ADCCまたはCDC活性の変更のようなエフェクター機能の変更、または半減期の変更が起こりうる。上記のように、可能性がある変異には、アラニンによる置換、保存的置換、非保存的置換、異なるIgGサブクラスからの同じ位置での対応するアミノ酸残基との置換(たとえば、IgG1残基をその位置で対応するIgG2残基に置換する)が含まれる、一つまたは複数の残基の挿入、欠失、または置換が含まれる。
Shieldsらは、全てのヒトFc受容体に対する結合に関係しているIgG1残基がヒンジに対して近位のCH2ドメインに存在し、以下のように二つのカテゴリーに分類されることを報告した:1)全てのFcRと直接相互作用する可能性がある位置にはLeu234〜Pro238、Ala327、およびPro329(およびおそらくAsp265)が含まれる;2)炭水化物の性質または位置に影響を及ぼす位置にはAsp265およびAsn297が含まれる。Fc受容体IIに対する結合に影響を及ぼすさらなるIgG1残基は以下の通りである:(最大の効果)Arg255、Thr256、Glu258、Ser267、Asp270、Glu272、Asp280、Arg292、Ser298、および(より弱い効果)His268、Asn276、His285、Asn286、Lys290、Gln295、Arg301、Thr307、Leu309、Asn315、Lys322、Lys326、Pro331、Ser337、Ala339、Ala378、およびLys414。A327Q、A327S、P329A、D265A、およびD270Aは、結合を低減させた。全てのFcRに関して先に同定された残基のほかに、Fc受容体IIIAに対する結合を40%またはそれより多く低減させたさらなるIgG1残基は以下の通りである:Ser239、Ser267(Glyのみ)、His268、Glu293、Gln295、Tyr296、Arg301、Val303、Lys338、およびAsp376。FcRIIIAに対する結合を改善した変異体には、T256A、K290A、S298A、E333A、K334A、およびA339Tが含まれる。Lys414はFcRIIAおよびFcRIIBに関する結合を40%低減させ、Arg416は、FcRIIAおよびFcRIIIAに関して30%低減させ、Gln419はFcRIIAに対する結合を30%低減させ、FcRIIBに対する結合を40%低減させ、およびLys360は、FcRIIIAに対する結合を23%改善した。同様に、その全内容が参照により本明細書に組み入れられ、特異的Fcγ受容体(R)に対する結合のみを改善する、または同時にFcγRの一つのタイプに対する結合を改善して、別のタイプに対する結合を低減させるいくつかの位置がIgG1のFc領域において見いだされたことを記述する、Presta et al.,(Biochem. Soc. Trans. 30:487-490, 2001)を参照されたい。次に、FcγRIIIaに対する結合が改善された選択されたIgG1変異体を、インビトロ抗体依存的細胞障害(ADCC)アッセイにおいて試験したところ、末梢血単核球またはナチュラルキラー細胞のいずれかを用いた場合にADCCの増強を示した。
たとえば、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,194,551号は、そのいくつかがC1q結合またはCDC活性の低減を示す、ヒトIgG Fc領域においてアミノ酸329、331、または322位(Kabat番号付けを用いる)に変異を含有する変化したエフェクター機能を有する変異体を記述している。別の例として、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,737,056号は、そのいくつかがADCCまたはCDC活性の低減に関連する受容体結合プロフィールを示す、ヒトIgG Fc領域においてアミノ酸238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438、または439 位(Kabat番号付けを用いる)に変異を含有する変化したエフェクターまたはFcγ受容体結合を有する変異体を記述する。これらの中で、アミノ酸238、265、269、270、327、または329位での変異は、FcRIに対する結合を低減させると述べられており、 アミノ酸238、265、269、270、292、294、295、298、303、324、327、329、333、335、338、373、376、414、416、419、435、438、または439位での変異はFcRIIに対する結合を低減させると述べられており、およびアミノ酸238、239、248、249、252、254、265、268、269、270、272、278、289、293、294、295、296、301、303、322、327、329、338、340、373、376、382、388、389、416、434、435、または437位での変異は、FcRIIIに対する結合を低減させると述べられる。
その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,624,821号は、重鎖のアミノ酸残基318、320、または322位を変異させることによって、マウス抗体のC1q結合活性を変更することができること、および残基297位(Asn)を置換させることによって、溶解活性の除去が起こると報告している。
その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第20040132101号は、アミノ酸 240、244、245、247、262、263、266、299、313、325、328、もしくは332位(Kabat番号付けを用いて)に変異を有する、または234、235、239、240、241、243、244、245、247、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、327、328、329、330、もしくは332(Kabat番号付けを用いて)位に変異を有する変異体を記述し、その中で234、235、239、240、241、243、244、245、247、262、263、264、265、266、267、269、296、297、298、299、313、325、327、328、329、330、または332位での変異は、ADCCを低減させる、またはFcγ受容体に対する結合を低減させる可能性がある。
その全内容が参照により本明細書に組み入れられるChappel et al.(Proc Natl Acad Sci USA. 88:9036-40 (1991))は、IgG1の細胞親和性活性がその重鎖CH2ドメインの内因性の特性であることを報告している。IgG1のアミノ酸残基234〜237位のいずれかにおける一つの点突然変異は、その活性を有意に低下または消失させた。完全な結合活性を回復するためには、IgG1残基234〜237位(LLGG)の全てをIgG2およびIgG4に置換することが必要であった。全ELLGGP配列(残基233〜238位)を含有するIgG2抗体は、野生型IgG1より活性であることが観察された。
その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、Isaacs et al. (J Immunol. 161:3862-9 (1998))は、FcγR結合にとって重要であるモチーフ内での(233位のグルタメートからプロリンへの、234位のロイシン/フェニルアラニンからバリンへの、および235位のロイシンからアラニンへの)変異は、標的細胞の枯渇を完全に予防した。318位のグルタメートからアラニンへの変異は、マウスIgG2bのエフェクター機能を消失させ、同様にヒトIgG4の効力を低減させた。
その全内容が参照により本明細書に組み入れられるArmour et al.(Mol Immunol. 40:585-93 (2003))は、野生型IgG1より少なくとも10倍低い効率で活性化受容体FcγRIIaと反応するが、阻害性受容体であるFcγRIIbに対するその結合は4倍低減されるに過ぎないIgG1変異体を同定した。アミノ酸233〜236位の領域でおよび/またはアミノ酸327、330、および331位で、変異を作製した。その全内容が参照により本明細書に組み入れられるWO 99/58572を参照されたい。
その全内容が参照により本明細書に組み入れられるXu et al.(J Biol Chem. 269:3469-74 (1994))は、IgG1 Pro331のSerへの変異はC1q結合を有意に減少させて、溶解活性を実質的に消失させることを報告する。対照的にIgG4におけるSer331のかわりにProを用いることは、IgG4 Pro331変異体に対する部分的溶解活性(40%)を与えた。
その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、Schuurman et al.(Mol Immunol. 38:1-8 (2001))は、重鎖間結合形成に関係するヒンジシステインの一つを変異させること、すなわちCys226をセリンに変異させることによって、より安定な重鎖間連結が得られたことを報告している。IgG4ヒンジ配列Cys-Pro-Ser-CysのIgG1ヒンジ配列Cys-Pro-Pro-Cysへの変異も同様に、重鎖間の共有結合的相互作用を顕著に安定化させる。
その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、Angal et al.(Mol Immunol. 30: 105-8 (1993))は、IgG4における241位のアミノ酸のセリンをプロリン(IgG1およびIgG2のその位置において見いだされる)に変異させると、相同な抗体の産生に至ると共に、起源のキメラIgG4と比較して血清半減期の延長および組織分布の改善に至る。
共有結合的改変
抗体の共有結合的改変も同様に本発明の範囲に含まれる。それらは、応用可能であれば、化学合成または抗体の酵素的もしくは化学的切断によって作製してもよい。抗体の他のタイプの共有結合的改変は、選択された側鎖またはNもしくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化物質と抗体の標的化アミノ酸残基を反応させることによって、分子に導入される。
システイニル残基は、最も一般的に、クロロ酢酸またはクロロアセタミドのようなα-ハロアセテート(および対応するアミン)と反応して、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体を生じる。システイニル残基はまた、ブロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(5-イミダゾリル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロロ水銀ベンゾエート、2-クロロ水銀-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとの反応によって誘導体化される。
ジエチルピロカーボネートは、ヒスチジル側鎖に対して比較的特異的であることから、ヒスチジル残基は、pH 5.5〜7.0でジエチルピロカーボネートとの反応によって誘導体化される。パラ-ブロモフェナシルブロミドも同様に有用である;反応は、好ましくは0.1 Mカコジル酸ナトリウムにおいてpH 6.0で行われる。
リジニルおよびアミノ末端残基は、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応する。これらの物質による誘導体化は、リジニル残基の電荷を逆転させる効果を有する。α-アミノ含有残基を誘導体化するための他の適した試薬には、メチルピコリニミデートのようなイミドエステル、ピロドキサルリン酸、ピリドキサルクロロホウ化水素、トリニトロベンゼンスルホン酸、O-メチルイソウレア、2,4-ペンタジエン、およびグリコキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応が含まれる。
アルギニル残基は、一つまたはいくつかの従来の試薬、とりわけフェニルグリオキサル、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンとの反応によって改変される。アルギニン残基の誘導体化は、グアニジン官能基の高いpKaのために反応がアルカリ条件で行われる必要がある。さらに、これらの試薬は、アルギニンのε-アミノ基と共にリジン基と反応する可能性がある。
チロシル残基の特異的改変は、特に関心が高い、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応によって、チロシル残基に分光標識を導入することによって行ってもよい。最も一般的に、N-アセチルイミジゾールおよびテトラニトロメタンを用いてそれぞれ、O-アセチルチロシル種および3-ニトロ誘導体を形成する。チロシル残基は、ラジオイムノアッセイにおいて用いられる標識タンパク質を調製するために、125Iまたは131Iを用いてヨウ素化される。
カルボキシル側鎖(アスパルチルまたはグルタミル)は、RおよびR'が、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドのような異なるアルキル基である、カルボジイミド(R-N.dbd.C.dbd.N-R')との反応によって選択的に改変される。さらに、アスパルチルおよびグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアルパラギニルおよびグルタミニル残基へと変換される。
グルタミニルおよびアスパラギル残基はそれぞれ、対応するグルタミルおよびアスパルチル残基へとしばしば脱アミノ化される。これらの残基は、中性または塩基性条件で脱アミノ化される。これらの残基の脱アミノ化型は、本発明の範囲に含まれる。
他の改変には、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、およびヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(T. E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86 (1983))、N末端アミンのアセチル化、および任意のC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
別のタイプの共有結合的改変は、グリコシドの抗体への化学または酵素的カップリングを伴う。これらの技法は、それらが、宿主細胞において、N-またはO-連結グリコシル化のグリコシル化能を有する抗体の産生を必要としないという点において都合がよい。用いるカップリング様式に応じて、糖を(a)アルギニンおよびヒスチジン、(b)遊離のカルボキシル基、(c)システインのスルフヒドリル基のような遊離のスルフヒドリル基、(d)セリン、トレオニン、もしくはヒドロキシプロリンのヒドロキシル基のような遊離のヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、もしくはトリプトファンのような芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基に付加してもよい。これらの方法は、WO 87/05330およびAplin and Wriston, (CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981))に記述されている。
抗体に存在する任意の炭水化物部分の除去は、化学的または酵素的に行ってもよい。化学的脱グリコシル化は、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または同等の化合物に対する抗体の曝露を必要とする。この処置によって、連結糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)を除くほとんどまたは全ての糖の切断が起こるが、抗体は無傷のままである。化学的脱グリコシル化はHakimuddin, et al.,(Arch. Biochem. Biophys. 259: 52 (1987))、およびEdge et al.,(Anal. Biochem. 118: 131 (1981))によって記述される。抗体上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura et al., (Meth. Enzymol. 138: 350 (1987)によって記述されるように多様なエンドおよびエキソグリコシダーゼを用いることによって達成することができる。
抗体の別のタイプの共有結合的改変は、多様な非タンパク質様高分子、たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリオキシエチル化ソルビトール、ポリオキシエチル化グルコース、ポリオキシエチル化グリセロール、ポリオキシアルキレン、またはデキストランのような多糖類高分子の一つに抗体を連結させる段階を含む。そのような方法は当技術分野において公知であり、たとえば米国特許第4,640,835号;第4,496,689号;第4,301,144号;第4,670,417号;第4,791,192号、第4,179,337号、第4,766,106号、第4,179,337号、第4,495,285号、第4,609,546号、またはEP 315 456を参照されたい。
誘導体
先に述べたように、誘導体は、ユビキチン化、標識(たとえば、放射性核種または様々な酵素)、PEG化(ポリエチレングリコールによる誘導体化)のような高分子の共有結合的付着、およびオルニチンのようなアミノ酸の化学合成による挿入または置換のような技術によって化学改変されたポリペプチドを指す。二重特異的抗体のような本発明の抗体表面の誘導体化も同様に、治療物質として有用であり、本発明の方法によって産生されてもよい。
複合部分は、共有結合的にまたはイオン、ファンデルワールス、もしくは水素結合によって、たとえば放射活性ヌクレオチドの組み入れ、もしくはストレプトアビジンによって認識されるビオチン化ヌクレオチドを通して抗体物質に組み入れる、または付着させることができる。
インビボでより長い半減期を提供するために、ポリエチレングリコール(PEG)を抗体物質に付着させてもよい。PEG基は、任意の都合のよい分子量のPEG基であってもよく、直鎖または分岐であってもよい。PEGの平均分子量は、好ましくは約2キロダルトン(「kD」)〜約100 kDa、より好ましくは約5 kDa〜約50 kDa、最も好ましくは約5 kDa〜約10 kDaの範囲と考えられる。PEG基は一般的に、抗体物質上の反応基(たとえば、アルデヒド、アミノ、またはエステル基)に対する、PEG部分上の天然のまたは操作された反応基(たとえば、アルデヒド、アミノ、チオール、またはエステル基)を通してのアシル化または還元的アルキル化によって、本発明の抗体分子に付着すると考えられる。抗体物質へのPEG部分の付加は、当技術分野において周知の技術を用いて行うことができる。たとえば国際公開番号WO 96/11953および米国特許第4,179,337号を参照されたい。
抗体物質とPEGとのライゲーションは、通常、液相で起こり、逆相分析的HPLCによって容易にモニターされうる。PEG化物質は、調製用HPLCによって精製され、分析的HPLC、アミノ酸分析、およびレーザー脱離質量分析によって特徴付けされる。
抗体複合体
抗体は、その「裸で」または「非複合型」で投与されてもよく、または他の治療もしくは診断物質に直接複合体化してもよく、またはそのような他の治療もしくは診断物質を含む担体高分子に間接的に複合体化してもよい。
抗体は、放射性同位元素、親和性標識(ビオチン、アビジン等)、酵素標識(たとえば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等)、蛍光、発光、または生物発光標識(FITCまたはローダミン等)、常磁性原子等を用いることによって検出可能に標識することができる。そのような標識を行うための技法は当技術分野において周知であり、たとえばSternberger, L. A. et al., J. Histochem. Cytochem. 18:315 (1970);Bayer, E. A. et al., Meth. Enzym. 62:308 (1979);Engval, E. et al., Immunol. 109:129 (1972);Goding, J. W. J. Immunol. Meth. 13:215 (1976)を参照されたい。
抗体部分の複合体化は、米国特許第6,306,393号に記述される。一般的な技術はまた、Shih et al., Int. J. Cancer 41:832-839 (1988);Shih et al., Int. J. Cancer 46:1101-1106 (1990);およびShih et al., 米国特許第5,057,313号に記述される。この一般法は、酸化された炭水化物部分を有する抗体成分と、少なくとも一つの遊離のアミン機能を有し、複数の薬物、毒素、キレート剤、ホウ素付加物、または他の治療物質を負荷された担体高分子とを反応させる段階を伴う。この反応によって、最初のシッフ塩基(イミン)連結が起こり、これは二級アミンに還元されることによって安定化され、最終的な複合体を形成することができる。
担体高分子は、たとえば、アミノ酸残基少なくとも50個のアミノデキストランまたはポリペプチドであってもよい。薬物または他の物質を担体高分子に複合体化するための様々な技術が、当技術分野において周知である。ポリペプチド担体を、アミノデキストランの代わりに用いることができるが、ポリペプチド担体はその鎖にアミノ酸残基少なくとも50個、好ましくはアミノ酸残基100〜5000個を有するべきである。アミノ酸の少なくともいくつかはリジン残基、グルタメートまたはアスパルテート残基であるべきである。リジン残基のペンダントアミンならびにグルタメートおよびアスパルテートのペンダントカルボキシレートは、薬物、毒素、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素付加物、または他の治療物質を付着させるために都合がよい。適したポリペプチド担体の例には、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、そのコポリマー、およびこれらのアミノ酸の混合高分子、ならびに得られた負荷担体および複合体に対して所望の溶解特性を付与するための他の物質、たとえばセリンが含まれる。
または、複合抗体は、抗体成分を治療物質に直接複合体化することによって調製されうる。一般的技法は、治療物質が酸化された抗体成分に直接付着することを除き、間接的な複合体化の方法と類似である。たとえば、半減期を延長させるために、抗体の炭水化物部分をポリエチレングリコールに付着させることができる。
または、治療物質は、ジスルフィド結合形成を通して、またはN-スクシニル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)のようなヘテロ二官能性クロスリンク剤を用いて還元抗体成分のヒンジ領域に付着させることができる。Yu et al., Int. J. Cancer56:244 (1994)。そのような一般的な複合体化の方法は当技術分野において周知である。たとえば、Wong, Chemistry Of Protein Conjugation and Cross-Linking (CRC Press 1991);Upeslacis et al., "Modification of Antibodies by Chemical Methods," in Monoclonal Antibodies: Principles and Applications, Birch et al. (eds.), pages 187-230 (Wiley-Liss, Inc. 1995);Price, "Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies," in Monoclonal Antibodies: Production, Enineering and Clinical Application, Ritter et al. (eds.), pages 60-84 (Cambridge University Press 1995)を参照されたい。N-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジピン酸ジメチルHCL)、活性エステル(スベリン酸ジスクシニミジル)、アルデヒド(たとえば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(ビス(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(たとえば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(たとえば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)のような多様な二官能性タンパク質共役物質が当技術分野において公知である。
抗体融合タンパク質
抗体融合タンパク質を作製する方法は当技術分野において周知である。たとえば米国特許第6,306,393号を参照されたい。インターロイキン-2部分を含む抗体融合タンパク質は、Boleti et al., Ann. Oncol. 6:945 (1995)、Nicolet et al., Cancer Gene Ther. 2:161 (1995)、Becker et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 93:7826 (1996)、Hank et al., Clin. Cancer Res. 2:1951 (1996)、およびHu et al., Cancer Res. 56:4998 (1996)によって記述されている。さらに、Yang et al.,(Hum. Antibodies Hybridomas 6:129 (1995))は、F(ab')2断片および腫瘍壊死因子α部分が含まれる融合タンパク質を記述している。
組換え型分子が一つまたは複数の抗体成分と毒素または化学療法剤とを含む抗体-毒素融合タンパク質を作製する方法も同様に、当業者に公知である。たとえば、抗体-シュードモナス(Pseudomonas)エキソトキシンA融合タンパク質は、Chaudhary et al., Nature 339:394 (1989), Brinkmann et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 88:8616 (1991), Batra et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 89:5867 (1992), Friedman et al., J. Immunol. 150:3054 (1993), Wels et al., Int. J. Can. 60:137 (1995), Fominaya et al., J. Biol. Chem. 271:10560 (1996), Kuan et al., Biochemistry 35:2872 (1996)、およびSchmidt et al., Int. J. Can. 65:538 (1996)によって記述されている。ジフテリア毒素部分を含有する抗体-毒素融合タンパク質は、Kreitman et al., Leukemia 7:553 (1993), Nicholls et al., J. Biol. Chem. 268:5302 (1993), Thompson et al., J. Biol. Chem. 270:28037 (1995)、およびVallera et al., Blood 88:2342 (1996)によって記述されている。Deonarain et al., Tumor Targeting 1:177 (1995)は、RNアーゼ部分を有する抗体-毒素融合タンパク質を記述しているが、Linardou et al., Cell Biophys.24-25:243 (1994)は、DNアーゼI成分を含む抗体-毒素融合タンパク質を産生した。ゲロニンは、Wang et al., Abstracts of the 209th ACS National Meeting, Anaheim, Calif., Apr. 2-6, 1995, Part 1, BIOT005の抗体-毒素融合タンパク質における毒性部分として用いられた。さらなる例として、Dohlsten et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 91:8945 (1994)は、ブドウ球菌(Staphylococcal)エンテロトキシンAを含む抗体-毒素融合タンパク質を報告した。
そのような複合体の調製において使用されることがふさわしい毒素の実例は、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ、DNアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシンA、アメリカヤマゴボウの抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナスエキソトキシン、およびシュードモナスエンドトキシンである。たとえば、Pastan et al., Cell 47:641 (1986)、およびGoldenberg, CA--A Cancer Journal for Clinicians 44:43 (1994)を参照されたい。他の適した毒素は当業者に公知である。
本発明の抗体はまた、プロドラッグ(たとえば、ペプチジル化学療法剤、WO 81/01145を参照されたい)を活性な抗ガン剤に変換するプロドラッグ活性化酵素に、抗体を複合体化することによって、ADEPTにおいて用いてもよい。たとえば、WO 88/07378および米国特許第4,975,278号を参照されたい。
ADEPTにとって有用な免疫複合体の酵素成分には、それをより活性な細胞障害型に変換するような方法でプロドラッグに対して作用することができる任意の酵素が含まれる。
本発明において有用な酵素には、ホスフェート含有プロドラッグを遊離の薬物に変換するのに有用なアルカリホスファターゼ;スルフェート含有プロドラッグを遊離の薬物に変換するのに有用なアリールスルファターゼ;非毒性の5-フルオロシトシンを抗ガン剤である5-フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離の薬物に変換するのに有用な、セラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼおよびカテプシン(たとえば、カテプシンBおよびL)のようなプロテアーゼ;D-アミノ酸置換基を含有するプロドラッグを変換するのに有用なD-アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化プロドラッグを遊離の薬物に変換するのに有用な、β-ガラクトシダーゼおよびノイラミニダーゼのような炭水化物切断酵素;β-ラクタムによって誘導体化されている薬物を遊離の薬物に変換するのに有用なβ-ラクタマーゼ;およびそのアミン窒素においてフェノキシアセチルまたはフェニルアセチル基によってそれぞれ誘導体化されている薬物を遊離の薬物に変換するのに有用な、ペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼのようなペニシリンアミダーゼが含まれるがこれらに限定されるわけではない。または、アブザイムとして当技術分野において同様に公知の酵素活性を有する抗体を用いて、本発明のプロドラッグを遊離の活性薬に変換することができる(たとえば、Massey, Nature 328: 457-458 (1987)を参照されたい)。抗体-アブザイム複合体は、アブザイムを腫瘍細胞集団に送達するために、本明細書に記述されるように調製することができる。
上記の酵素を、上記のヘテロ二官能性クロスリンク試薬を用いるような、当技術分野において周知の技術によって抗体に共有結合させることができる。または、本発明の酵素の少なくとも機能的活性部分に連結された本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域を含む融合タンパク質を、当技術分野において周知の組換えDNA技術を用いて構築することができる(たとえば、Neuberger et al., Nature 312: 604-608 (1984)を参照されたい)。
抗体の組換えによる産生
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAを、従来の技法(たとえば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に対して特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)を用いて抗体を分泌するハイブリドーマ細胞から単離およびシークエンシングしてもよい。配列の決定は一般的に、関心対象の遺伝子またはcDNAの少なくとも一部を単離することを必要とすると考えられる。通常、これには、モノクローナル抗体をコードするDNA、または好ましくはmRNA(すなわちcDNA)のクローニングを必要とする。クローニングは、標準的な技術を用いて行われる(たとえば、参照により本明細書に組み入れられる、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Guide, Vols 1-3, Cold Spring Harbor Pressを参照されたい)。たとえば、ポリA+ mRNA、好ましくは膜会合型mRNAの逆転写によってcDNAライブラリを構築して、ヒト免疫グロブリンポリペプチド遺伝子配列に対して特異的なプローブを用いて、ライブラリをスクリーニングしてもよい。ヌクレオチドプローブ反応および他のヌクレオチドハイブリダイゼーション反応は、明記された条件で互いにハイブリダイズするポリヌクレオチドの同定を可能にする条件で行われる。
条件の一つの例示的な組は以下の通りである:50%ホルムアミド、5×SSC、20 mM Na・PO4、pH 6.8において42℃でのストリンジェントなハイブリダイゼーション;および1X SSCにおける55℃で30分間の洗浄。同等のハイブリダイゼーション条件を計算するための、および/または所望のレベルのストリンジェンシーを達成するために他の条件を選択するための式は周知である。同等のストリンジェンシー条件は、Ausubel, et al. (Eds.), Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1994), pp. 6.0.3〜6.4.10に記述されるように、温度および緩衝液、または塩濃度の変動を通して達成されうると当技術分野において理解される。ハイブリダイゼーション条件の改変は、経験的に決定されうるか、またはプローブのグアノシン/シトシン(GC)塩基対形成の長さおよび百分率に基づいて正確に計算されうる。ハイブリダイゼーション条件は、Sambrook, et al., (Eds.), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor, New York (1989), pp. 9.47〜9.51に記述されるように計算することができる。
しかし、好ましい態様においては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、関心対象の免疫グロブリン遺伝子セグメント(たとえば、軽鎖可変セグメント)をコードするcDNA(または完全長のcDNAの一部)を増幅する。増幅された配列は、任意の適したベクターに、たとえば発現ベクター、ミニジーンベクター、またはファージディスプレイベクター容易にクローニングすることができる。関心対象の免疫グロブリンポリペプチドのいくつかの部分の配列を決定することが可能である限り、用いる特定のクローニング法は重要でないと認識されると考えられる。本明細書において用いられるように、「単離」核酸分子または「単離」核酸配列は、(1)核酸の天然の起源において当初会合している少なくとも一つの混入核酸分子から同定および分離されている、または(2)関心対象の核酸の配列を決定することができるようにクローニングされた、増幅された、タグをつけられた、またはそうでなければバックグラウンド核酸と区別される、核酸分子であり、単離されたと見なされる。単離核酸分子は、天然において見いだされる形状または状態以外である。したがって、単離核酸分子は、天然の細胞に存在する核酸分子とは区別される。しかし、単離核酸分子には、たとえば天然の細胞とは異なる染色体の位置にその核酸分子が存在するような抗体を通常発現している細胞に含有される核酸分子が含まれる。
クローニングおよびシークエンシングのために用いられる一つのRNA源は、トランスジェニックマウスからのB細胞を得る段階およびB細胞を不死化細胞に融合する段階によって産生されるハイブリドーマである。ハイブリドーマを用いる長所は、それらが容易にスクリーニングされうること、および関心対象のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが容易に選択されうる点である。または、免疫した動物のB細胞(または脾臓全体)からRNAを単離することができる。ハイブリドーマ以外の起源を用いる場合、特異的結合特徴を有する免疫グロブリンまたは免疫グロブリンポリペプチドをコードする配列に関してスクリーニングすることが望ましい可能性がある。そのような一つのスクリーニング法は、ファージディスプレイ技術を用いることである。ファージディスプレイは、本明細書においてさらに記述され、同様に当技術分野において周知である。たとえば、そのそれぞれが参照により本明細書に組み入れられる、Dower et al., WO 91/17271、McCafferty et al., WO 92/01047、およびCaton and Koprowski, (Proc. Natl Acad. Sci USA, 87:6450-54 (1990))を参照されたい。ファージディスプレイ技術を用いる一つの態様において、免疫されたトランスジェニックマウスからのcDNA(または総脾臓cDNA)を単離して、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて免疫グロブリンポリペプチドの一部、たとえばCDR領域をコードするcDNA配列を増幅して、増幅された配列をファージベクターに挿入する。関心対象のペプチドをコードするcDNA、たとえば所望の結合特徴を有する可変領域ペプチドは、パニングのような標準的な技術によって同定される。
次に、増幅またはクローニングされた核酸の配列を決定する。典型的に、免疫グロブリンポリペプチドの全可変領域をコードする配列を決定するが、可変領域の一部、たとえばCDRコード部分のみをシークエンシングすることが時に適当であると考えられる。典型的に、シークエンシングされる部分は、長さが少なくとも30塩基であり、多くの場合、可変領域の長さの少なくとも約3分の1、または少なくとも約2分の1をコードする塩基がシークエンシングされると考えられる。
シークエンシングは、cDNAライブラリから単離されたクローンにおいて行うことができ、またはPCRを用いる場合には、増幅された配列のサブクローニング後、または増幅されたセグメントの直接PCRシークエンシングによって行うことができる。シークエンシングは、標準的な技術(たとえば、参照により本明細書に組み入れられるSambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Guide, Vols 1-3, Cold Spring Harbor Press、およびSanger, F. et al. (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74: 5463-5467を参照されたい)を用いて行われる。クローニングされた核酸の配列をヒト免疫グロブリン遺伝子およびcDNAの公表された配列と比較することによって、当業者はシークエンシングされる領域に応じて、(i)ハイブリドーマ免疫グロブリンポリペプチド(重鎖のアイソタイプが含まれる)の生殖系列セグメントの使用と、(ii)N-領域付加および体細胞変異プロセスに起因する配列が含まれる、重鎖および軽鎖可変領域の配列とを容易に決定することができると考えられる。免疫グロブリン遺伝子配列情報の一つの起源は、the National Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine, National Institutes of Health, Bethesda, Mdである。
単離後、DNAを発現ベクターに配置してもよく、次にこれを大腸菌(E. coli)、サルCOS細胞、ヒト胎児腎293細胞(たとえば、293E細胞)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはそうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞のような宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得る。抗体の組換えによる産生は当技術分野において周知である。
発現制御配列は、特定の宿主生物における機能的に連結されたコード配列の発現にとって必要なDNA配列を指す。たとえば、原核細胞に適した制御配列には、プロモーター、任意でオペレーター配列、およびリボソーム結合部位が含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、およびエンハンサーを利用することが知られている。
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係で配置された場合に、機能的に連結している。たとえば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドに関してDNAに機能的に連結しており;プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に機能的に連結しており;またはリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置された場合にコード配列に機能的に連結している。一般的に、機能的に連結するとは、連結を受けるDNA配列が隣接していること、および分泌リーダーの場合には、隣接して読み枠に存在することを意味する。しかし、エンハンサーは隣接している必要はない。連結は、簡便な制限部位でのライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを、通常の実践に従って用いる。
細胞、細胞株、および細胞培養物はしばしば互換的に用いられ、本明細書におけるそのような名称には全て子孫が含まれる。形質転換体および形質転換細胞には、初代の対象細胞、および継代回数とは無関係なそれに由来する培養物が含まれる。同様に、子孫は全て、意図的または偶然の変異によりDNA含有量が正確に同一でなくてもよいと理解される。当初の形質転換細胞においてスクリーニングされたものと同じ機能または生物活性を有する突然変異体子孫が含まれる。明確な名称が意図される場合、それは本文から明らかになると考えられる。
代わりの態様において、関心対象免疫グロブリンのアミノ酸配列は、直接のタンパク質シークエンシングによって決定してもよい。適したコードヌクレオチド配列は、普遍的なコドン表に従って設計することができる。
所望の抗体のアミノ酸配列変異体は、コードDNAに適当なヌクレオチド変化を導入することによって、またはペプチド合成によって調製してもよい。そのような変異体には、たとえば抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、および/または挿入、および/または置換が含まれてもよい。最終構築物が所望の特徴を保有する限り、最終構築物に達するように、欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせを作製する。アミノ酸変化はまた、グリコシル化部位の数または位置を変化させるような、抗体の翻訳後プロセスを変化させてもよい。
抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当技術分野において公知の多様な方法によって調製される。これらの方法には、天然起源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列変異体の場合)、またはオリゴヌクレオチド媒介(または部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発、および早期に調製された抗体変異体または抗体非変異体のカセット変異誘発による調製が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
本発明はまた、任意で宿主細胞、ベクター、および核酸を含む宿主細胞によって認識される制御配列に機能的に連結される、本発明の抗体をコードする単離核酸を提供し、ならびに該核酸が発現されるように宿主細胞を培養する段階、および任意で宿主細胞培養物または培養培地から抗体を回収する段階を含んでもよい、抗体を産生するための組換え技術を提供する。
抗体の組換えによる産生に関して、それをコードする核酸は、さらなるクローニング(DNAの増幅)のために、または発現のために、単離して複製ベクターに挿入する。モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の技法を用いて容易に単離およびシークエンシングされる(たとえば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)。多くのベクターが利用可能である。ベクター成分には一般的に以下の一つまたは複数が含まれるがこれらに限定されるわけではない:シグナル配列、複製開始点、一つまたは複数の選択マーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終止配列。
(1)シグナル配列成分
本発明の抗体は、直接組換えによって産生してもよいのみならず、好ましくはシグナル配列、または成熟タンパク質もしくはポリペプチドのN末端で特異的切断部位を有する他のポリペプチドである、異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとして組換えによって産生してもよい。選択されるシグナル配列は好ましくは、宿主細胞によって認識およびプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)配列である。原核宿主細胞が本来の抗体シグナル配列を認識およびプロセシングしない場合、シグナル配列を、たとえばペクチン酸リアーゼ(たとえば、pelB)、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または熱安定型エンテロトキシンIIリーダーの群から選択されるシグナル配列によって置換してもよい。酵母の分泌に関して、本来のシグナル配列を、たとえば酵母のインベルターゼリーダー、α因子リーダー(サッカロミセス(Saccharomyces)およびクルイベロミセス(Kluyveromyces)のα因子リーダーが含まれる)、酸ホスファターゼリーダー、C.アルビカンス(C. albicans)グルコアミラーゼリーダー、またはWO 90/13646に記述されるシグナルによって置換してもよい。哺乳動物細胞発現において、哺乳動物シグナル配列と共にウイルス分泌リーダー、たとえば単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。
そのような前駆体領域に関するDNAを読み枠で抗体をコードするDNAにライゲーションする。
(2)複製開始点成分
発現およびクローニングベクターはいずれも、一つまたは複数の選択された宿主細胞においてベクターを複製させることができる核酸配列を含有する。一般的に、クローニングベクターにおいて、この配列は、宿主染色体DNAとは無関係にベクターを複製させることができる配列であり、これには複製開始点または自律複製配列が含まれる。そのような配列は多様な細菌、酵母、およびウイルスに関して周知である。プラスミドpBR322からの複製開始点はほとんどのグラム陰性細菌に適しており、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点が、哺乳動物細胞においてベクターをクローニングするのに有用である。一般的に、複製開始点成分は、哺乳動物発現ベクターにとって必要ではない(SV40開始点は典型的にそれが初期プロモーターを含有するために用いられる可能性がある)。
(3)選択マーカー成分
発現およびクローニングベクターは、選択マーカーとも呼ばれる選択的遺伝子を含有してもよい。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、たとえばアンピシリン、ネオマイシン、メソトレキセート、テトラサイクリン、G418、ゲネチシン、ヒスチジノール、またはミコフェノール酸に対する抵抗性を付与する、(b)栄養要求欠損を補足する、または(c)複合培地から利用できない極めて重要な栄養、たとえばバチルス(Bacilli)に関するD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子を供給する、タンパク質をコードする。
選択スキームの一例は、宿主細胞の生育を停止させるために薬物を利用する。異種遺伝子によって首尾よく形質転換されるそれらの細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を産生し、このように、選択療法を生き延びる。そのような優性選択の例は、薬物メソトレキセート、ネオマイシン、ヒスチジノール、ピューロマイシン、ミコフェノール酸、およびヒグロマイシンを用いることである。
哺乳動物細胞に関する適した選択マーカーの別の例は、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-Iおよび-II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等のような、抗体コード核酸を取り込むためにコンピテント細胞の同定を可能にするマーカーである。
たとえば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、DHFRの競合的アンタゴニストであるメソトレキセート(Mtx)を含有する培養培地において形質転換体の全てを培養することによって最初に同定される。野生型DHFRを使用する場合の適当な宿主細胞は、DHFR活性を欠損するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
または、本発明の抗体、野生型DHFRタンパク質、およびアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような別の選択マーカーをコードするDNA配列によって形質転換または同時形質転換された宿主細胞(特に、内因性のDHFRを含有する野生型宿主)を、アミノグリコシド抗生物質、たとえばカナマイシン、ネオマイシン、またはG418のような選択マーカーに関する選択物質を含有する培地における細胞生育によって選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照されたい。
酵母において用いるのに適した選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7(Stinchcomb et al., Nature, 282: 39 (1979))に存在するtrp1遺伝子である。trp1遺伝子は、トリプトファンにおける生育能を欠損する酵母の変異株、たとえばATCC No. 44076またはPEP4-1に関する選択マーカーを提供する。Jones(Genetics 85: 12 (1977))。酵母宿主細胞ゲノムにおけるtrp1損傷の存在は、トリプトファンの非存在下での生育によって形質転換を検出するための有効な環境を提供する。同様に、Leu2-欠損酵母株(ATCC 20,622または38,626)は、Leu2遺伝子を有する公知のプラスミドによって相補される。Ura3-欠損酵母株は、ura3遺伝子を有するプラスミドによって相補される。
さらに、1.6μm環状プラスミドpKD1に由来するベクターをクルイベロミセス酵母の形質転換のために用いることができる。または、組換え型仔ウシキモシンを大規模産生するための発現システムが、K.ラクチス(K. lactis)に関して報告された。Van den Berg,(Bio/Technology, 8:135 (1990))。クルイベロミセスの産業株による成熟組換え型ヒト血清アルブミンの分泌のための安定なマルチコピー発現ベクターも同様に開示されている(Fleer et al, Bio/Technology, 9:968-975 (1991))。
(4)プロモーター成分
発現およびクローニングベクターは通常、宿主生物によって認識され、抗体コード核酸に機能的に連結しているプロモーターを含有する。原核宿主について用いるのに適したプロモーターには、アラビノース(たとえば、araB)プロモーターphoAプロモーター、β-ラクタマーゼおよびラクトースプロモーターシステム、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、およびtacプロモーターのようなハイブリッドプロモーターが含まれる。しかし、他の公知の細菌プロモーターが適している。細菌系において用いるためのプロモーターも同様に、本発明の抗体をコードするDNAに機能的に連結したシャイン-ダルガルノ(S.D.)配列を含有すると考えられる。
プロモーター配列は、真核細胞に関して公知である。実質的に全ての真核細胞遺伝子が、転写が開始される部位のおよそ25〜30塩基上流にATに富む領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70〜80塩基上流に見いだされる別の配列は、Nが任意のヌクレオチドであってもよいCNCAAT領域である。ほとんどの真核細胞遺伝子の3'末端は、コード配列の3'末端にポリAテールを付加するためのシグナルである可能性があるAATAAA配列である。これらの配列は全て真核細胞発現ベクターに適切に挿入される。
酵母宿主について用いるための適したプロモーター配列の例には、3-ホスホグリセレートキナーゼのプロモーター、またはエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼのような他の糖分解酵素のプロモーターが含まれる。
生育条件によって制御される転写のさらなる長所を有する誘導型プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびにマルトースおよびガラクトース利用の原因となる酵素のプロモーター領域である。酵母の発現において用いるのに適したベクターおよびプロモーターはEP 73,657においてさらに記述される。酵母のエンハンサーも同様に酵母プロモーターと共に都合よく用いられる。
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの抗体転写は、そのようなプロモーターが宿主細胞系と適合性である限り、たとえばエーベルソン白血病ウイルス、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2のような)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、最も好ましくはサイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、シミアンウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから得られたプロモーター、異種哺乳動物プロモーター、たとえばアクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターから得られたプロモーター、熱ショックプロモーターから得られたプロモーターによって制御される。
SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、同様にSV40ウイルス複製開始点を含有するSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモーターは、HindIII E制限断片として簡便に得られる。ウシ乳頭腫ウイルスをベクターとして用いて哺乳動物宿主においてDNAを発現させるためのシステムは、米国特許第4,419,446号において開示されている。このシステムの改変版は米国特許第4,601,978号に記述されている。同様に、単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞におけるヒトβインターフェロンcDNAの発現に関する、Reyes et al., Nature 297: 598-601 (1982)を参照されたい。または、ラウス肉腫ウイルス長末端反復をプロモーターとして用いることができる。
(5)エンハンサーエレメント成分
高等真核生物による本発明の抗体をコードするDNAの転写は、しばしばエンハンサー配列をベクターに挿入することによって増加する。哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、およびインスリン)からの多くのエンハンサー配列が公知である。しかし、典型的に真核細胞ウイルスからのエンハンサーが用いられると考えられる。例には、複製開始点の後期でのSV40エンハンサー(bp100〜270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期でのポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが含まれる。同様に、真核細胞プロモーターの活性化に関する増強エレメントに関するYaniv, Nature 297:17-18(1982)を参照されたい。エンハンサーは、抗体コード配列の5'または3'位でベクターにスプライシングされてもよいが、好ましくはプロモーターから5'部位に存在する。
(6)転写終止成分
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物からの有核細胞)において用いられる発現ベクターはまた、転写の終止のために、およびmRNAの安定化のために必要な配列を含有すると考えられる。そのような配列は一般的に、真核細胞またはウイルスのDNAまたはcDNAの5'および時に3'非翻訳領域から入手可能である。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分においてポリアデニル化断片として転写されたヌクレオチドセグメントを含有する。一つの有用な転写終止成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO 94/11026およびその中に開示されている発現ベクターを参照されたい。もう一つは、マウス免疫グロブリン軽鎖転写ターミネーターである。
(7)宿主細胞の選択および形質転換
本明細書におけるベクターにおいてDNAをクローニングまたは発現するための適した宿主細胞は、原核細胞、酵母、または先に記述した高等真核細胞である。この目的に適した原核細胞には、グラム陰性菌またはグラム陽性菌、たとえばエシェリキア属(Escherichia)、たとえば大腸菌、エンテロバクター(Enterobacter)、エルウィニア(Erwinia)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)のようなサルモネラ(Salmonella)、霊菌(Serratia marcescans)のようなセラチア(Serratia)、赤痢菌(Shigella)のような腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、ならびに枯草菌(B. subtilis)およびバチルス・リシェニホルミス(B. licheniformis)のようなバチルス(Bacilli)(たとえば、1989年4月12日に公開されたDD 266,710において開示された、バチルス・リシェニホルミス41 P)、緑膿菌(P. aeruginosa)のようなシュードモナス(Pseudomonas)およびストレプトミセス(Streptomyces)のような真正細菌が含まれる。一つの好ましい大腸菌クローニング宿主は、大腸菌294(ATCC 31,446)であるが、大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC 31,537)および大腸菌W3110(ATCC 27,325)のような他の株も適している。これらの例は、制限的よりむしろ例証的である。
原核細胞のほかに、糸状菌または酵母のような真核微生物は、抗体コードベクターに適したクローニングまたは発現ベクターである。出芽酵母または一般的なパン酵母は、下等真核宿主微生物の中でも最も一般的に用いられている。しかし、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe);たとえばK.ラクチス、K.フラギリス(K. fragilis)(ATCC 12,424)、K.ブルガリクス(ATCC 16,045)、K.ウィケラミイ(K. wickeramii)(ATCC 24,178)、K.ワルチイ(K. waltii)(ATCC 56,500)、K. ドロソフィラルム(K. drosophilarum)(ATCC 36,906)、K. サーモトレランス(K. thermotolerans)、およびK.マルキシアヌス(K. marxianus)のようなクルイベロミセス宿主;ヤロウィア(yarrowia)(EP 402,226);ピチア・パストリス(Pichia pastors)(EP 183,070);カンジダ(Candida);トリコデルマ・レエシア(Trichoderma reesia)(EP 244,234);ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa);シュワニアオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalism)のようなシュワニオミセス(Schwanniomyces)、ならびにたとえばアカパンカビ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicillium)、トリポクラディウム(Tolypocladium)、ならびにA.ニデュランス(A. nidulans)およびA.ニゲル(A. niger)のようなアスペルギルス(Aspergillus)宿主のような糸状菌のような、多数の他の属、種、および株が一般的に入手可能であり、本明細書において有用である。
グリコシル化抗体を発現するための適した宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物および昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウイルス株および変異体、ならびにスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(イモムシ)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、ドロソフィラ・メラノガスター(Drosophila melanogaster)(ショウジョウバエ)、およびカイコガ(Bombyx mori)のような宿主からの対応する許容性昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための多様なウイルス株、たとえば、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL-1変異体およびカイコガNPVのBm-5株が公式に利用可能であり、そのようなウイルスは、本発明に従う本明細書に記述のウイルスとして、特にスポドプテラ・フルギペルダ細胞のトランスフェクションのために用いてもよい。
ワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、タバコ、レムナ(lemna)、および他の植物細胞の植物細胞培養物も同様に宿主として利用することができる。
有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、CHOK1細胞(ATCC CCL61)、DXB-11、DG-44、およびチャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFRが含まれるチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO, Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 4216 (1980));SV40をトランスフェクトしたサル腎CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎細胞株(293または浮遊培養で生育させるためにサブクローニングした293細胞(Graham et al., J. Gen Virol. 36:59, 1977);ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod. 23:243-251, 1980);サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頚部ガン細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y Acad. Sci. 383:44-68 (1982));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒト肝腫細胞株(Hep G2)である。
宿主細胞は、抗体産生のために上記の発現またはクローニングベクターによって形質転換またはトランスフェクトされ、かつプロモーターを誘導するために、形質転換体を選択するために、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に改変された従来の栄養培地において培養される。さらに、新規ベクターおよび選択マーカーによって分離された多数のコピーの転写単位を有するトランスフェクト細胞株は、標的に結合する抗体を発現するために特に有用であり好ましい。
(8)宿主細胞の培養
本発明の抗体を産生するために用いられる宿主細胞は、多様な培地において培養してもよい。Ham's F10(Sigma)、最小基本培地(MEM、Sigma)、RPMI 1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Sigma)のような市販の培地は、宿主細胞を培養するのに適している。さらに、Ham et al.,(Meth. Enz. 58:44, 1979)、Barnes et al., Anal. Biochem. 102:255 (1980)、米国特許第4,767,704号;第4,657,866号;第4,927,762号;第4,560,655号;または第5,122,469号;WO 90103430;WO 87/00195;または米国再発行特許第30,985号に記述される任意の培地を、宿主細胞の培養培地として用いてもよい。これらの培地のいかなるものも、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の増殖因子(たとえば、インスリン、トランスフェリン、または上皮細胞増殖因子)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩のような)、緩衝液(HEPESのような)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンのような)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬のような)、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)、およびグルコースまたは同等のエネルギー源を添加してもよい。他の任意の必要な補助物質を、当業者に公知であろう適当な濃度で含めてもよい。温度、pH等のような培養条件は、発現のために選択された宿主細胞についてこれまで用いられている条件であり、当業者に明らかであると考えられる。
(9)抗体の精製
組換え技術を用いる場合、抗体を、ペリプラスム間隙において細胞内で産生する、または微生物培養物が含まれる培地に直接分泌させることができる。抗体が細胞内で産生される場合、第一段階として微粒子破片、宿主細胞または溶解断片をたとえば遠心または超遠心によって除去する。Better et al. (Science 240:1041-43, 1988; ICSU Short Reports 10:105 (1990);およびProc. Natl. Acad. Sci USA 90:457-461 (1993)は、大腸菌のペリプラスム間隙に分泌された抗体を単離するための技法を記述している[同様に、Carter et al. Bio/Technology 10:163-167 (1992)を参照されたい]。
微生物または哺乳動物細胞から調製された抗体組成物は、たとえばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー、および親和性クロマトグラフィーを用いて精製することができるが、親和性クロマトグラフィーが好ましい精製技術である。親和性リガンドとしてプロテインAが適切であるか否かは、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づく抗体を精製するために用いることができる(Lindmark et al., J. Immunol. Meth. 62: 1-13, 1983)。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプおよびヒトγ3に関して推奨される(Guss et al., EMBO J. 5:15671575 (1986))。親和性リガンドが付着するマトリクスは最も多くはアガロースであるが、他のマトリクスも利用可能である。制御孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンのような力学的に安定なマトリクスは、アガロースについて達成することができる場合より速い流速および短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J. T. Baker, Phillipsburg, N.J.)は精製にとって有用である。イオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、ヘパリンクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムのような)によるSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿のような、タンパク質精製に関する他の技術も同様に、回収される抗体に応じて利用可能である。
スクリーニング法
有効な治療は、有意な毒性なく有効な物質を同定することに依存する。当技術分野において公知の方法によって、抗体を結合親和性に関してスクリーニングしてもよい。たとえば、ゲルシフトアッセイ、ウェスタンブロット、放射標識競合アッセイ、クロマトグラフィーによる共分画、共沈殿、クロスリンク、ELISA等を用いてもよく、それらはたとえば、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、Current Protocols in Molecular Biology (1999) John Wiley & Sons, NYに記述されている。
本発明の一つの態様において、標的抗原の活性を調節する抗体に関してスクリーニングする方法は、試験抗体を標的ポリペプチドに接触させる段階、および抗体と標的リガンドとのコンプレックスの存在に関してアッセイする段階を含む。そのようなアッセイにおいて、リガンドは典型的に標識される。適したインキュベーションの後、遊離のリガンドを、結合型で存在するリガンドから分離する。遊離または非コンプレックス型標識の量は、特定の抗体が標的リガンドに結合するか否かの測定となる。
本発明の別の態様において、標的ポリペプチドに対して適した結合親和性を有する抗体断片またはCDRのハイスループットスクリーニングを使用する。簡単に説明すると、多数の異なる小さいペプチド試験化合物を固相基質上で合成する。ペプチド試験抗体を標的ポリペプチドに接触させて洗浄する。結合したポリペプチドを当技術分野において周知の方法によって検出する。本発明の精製抗体はまた、前述の薬物スクリーニング技術において用いるためにプレート上に直接コーティングすることができる。さらに、非中和抗体を用いて標的を捕獲し、固相支持体上にそれを固定することができる。
併用療法
標的抗原に対する結合に関して有効な一つより多い抗体が同定されれば、抗体の組み合わせが共に、標的ポリペプチドに関連して処置される状態または障害に対してなおも改善された効力を提供するように、標的抗原の異なるエピトープに対する二つまたはそれより多い抗体を混合してもよい。本発明の一つまたは複数の抗体を含む組成物は、標的ポリペプチドに関連して処置される状態または障害に罹っているまたは罹る素因を有するヒトまたは哺乳動物に投与してもよい。
二つの治療物質の同時投与は、物質がその治療効果を発揮する期間が重なっている限り、物質が同時にまたは同じ経路で投与されることを必要としない。同時、または異なる日もしくは週で投与される連続投与が企図される。
第二の物質は、サイトカイン、増殖因子、他の抗炎症剤、抗凝固剤、血圧を低下または低減させる物質、コレステロール、トリグリセリド、LDL、VLDL、もしくはリポタンパク質を低減させる、またはHDLを増加させる物質、コレステロール調節タンパク質のレベルを増加または減少させる物質、抗新生物薬または分子のような他の治療物質であってもよい。ガンまたは腫瘍のような過増殖障害を有する患者に関して、放射線療法、化学療法、光力学療法、または手術のような第二の治療様式との組み合わせも同様に企図される。
本発明の抗体および第二の物質は、同じ製剤において同時投与されてもよいと企図される。さらに、物質は異なる製剤で投与され、同時に投与されると企図され、同時とは互いに30分以内に与えられる物質を指す。
別の局面において、第二の物質は、抗体組成物の投与の前に投与される。投与の前とは、抗体による処置の1週間前から抗体投与の30分前までの範囲内での第二の物質の投与を指す。第二の物質は、抗体組成物の投与後に投与されるとさらに企図される。その後の投与は、抗体処置後30分から抗体投与後1週間までの投与を記述することを意味する。
抗体が、サイトカインもしくは増殖因子、または化学療法剤である第二の物質と組み合わせて投与される場合、投与には、放射線療法剤または放射線療法を用いることが含まれるとさらに企図される。抗体組成物と組み合わせて投与される放射線療法は、処置する医師によって決定されるように、ガンに関して処置される患者に典型的に与えられる用量で投与される。
細胞障害剤は、細胞の機能を阻害または予防する、および/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語には、放射活性同位元素(たとえば、I131、I125、Y90、およびRe186)、化学療法剤、および細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、または合成毒素もしくはそれらの断片のような毒素が含まれると意図される。非細胞障害剤は、細胞の機能を阻害または防止しない、および/または細胞の破壊を引き起こさない物質を指す。非細胞障害剤には、細胞障害性となるように活性化されうる物質が含まれてもよい。非細胞障害剤には、ビーズ、リポソーム、マトリクスまたは粒子が含まれてもよい(たとえば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2003/0028071号および第2003/0032995号を参照されたい)。そのような物質を、本発明に従う抗体に複合体化、カップリング、連結、または会合させてもよい。
本発明の抗体と共に用いることが企図される化学療法剤には、表1に記載される化学療法剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
Figure 2009529915
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本発明の方法および組成物を用いる障害の処置
別の態様において、本発明は、標的特異的抗体をその必要がある患者に投与することによって、標的活性を阻害するための方法を提供する。本明細書に記述される任意のタイプの抗体を治療的に用いてもよい。例示的な態様において、標的特異的抗体は、ヒト、キメラ、またはヒト化抗体である。別の例示的な態様において、標的はヒトであり、患者はヒト患者である。または、患者は、標的特異的抗体が交叉反応する標的タンパク質を発現する哺乳動物であってもよい。抗体は、獣医学目的のためにまたはヒト疾患の動物モデルとして、抗体が交叉反応する標的タンパク質を発現する非ヒト哺乳動物(すなわち、霊長類)に投与されてもよい。そのような動物モデルは、本発明の標的特異的抗体の治療効率を評価するのに有用となる可能性がある。
本発明による抗体物質によって処置することができる標的発現に関連する例示的な状態または障害には、膵臓ガン、食道ガン、胃ガン、結腸直腸ガン、および小細胞肺ガンのようなガンが含まれる。本発明の抗体を用いて処置される可能性がある他の状態または障害には、胃ガン、十二指腸ガン、ピロリ菌に関連する他の潰瘍または状態、胃食道逆流疾患、自己免疫性胃炎、萎縮性胃体部胃炎、膵臓の腫瘍(ガストリノーマ)に関連するゾリンジャー・エリソン症候群、および炎症性腸疾患が含まれる。
ガストリン発現および細胞活性化は、膵臓ガン(Smith et al., Am J Physiol 268(1 Pt 2):R135-41 (1995))、胃ガン(Watson et al., Br J Surg 75:342-5 (1988))(Watson, et al., Br J Cancer 59:554-8 (1989)(Piontek and Hengels, Anticancer Res 13:715-20 (1993))(Szabo et al., J Physiol Paris. 94:71-4 (2000))、および結腸直腸ガン(Ahmed et al., FEBS Lett 556:199-203 (2004))(Stepan et al., Mol Med 5:147-59 (1999))(Smith et al., Am J Physiol 271(3 Pt 2):R797-805 (1996))のいくつかのモデルにおいて見いだされている。
膵臓ガン−膵臓ガンは、米国においてガンによる死因の第五位である。外科的切除は時に長期生存に至り、有効な一時的緩和を提供しうることから、なおも一次処置である。何十年ものあいだ、5-フルオロウラシル(5-FU)は、転移性膵臓ガンにおいて最も広く用いられている化学療法剤であった。今日では、局所進行および転移性膵臓ガンを有する患者に関して、ゲムシタビンが現在の標準治療である(Tempero et al., J Clin Oncol. 21:3402-8 (2003))(Berlin et al., Clin Oncol 20:3270-5 (2002))。ゲムシタビンの独自の作用機序および都合のよい毒性プロフィールによって、ゲムシタビンに基づく多くの新規併用治療計画が膵臓ガンの処置として探求されている(たとえば、Rocha Lima et al., J Clin Oncol 20:1182-91 (2002)を参照されたい)。
胃ガン−胃ガンは、ガンによる死因の第二位である。胃ガンの治癒は、完全な外科的切除を行うことができる患者に限って可能である;これは患者全員の30%〜35%のみについて可能であるが、これらの患者においても再発が一般的である。リンパ節の切除レベルは重要な予後因子である:リンパ節一括切除を行う場合、5年生存率はほぼ40%であり、これはリンパ節切除を行わない場合よりかなり良好である。進行期による推定5年相対生存率は以下の通りである:I期では65%、II期では20%、III期では10%、およびIV期では<1%である。進行疾患は、不治であり、患者は化学療法によって処置される。胃ガンの現在の治療には、FAM、5-FU、マイトマイシンC、および低用量ドキソルビシンの併用(たとえば、Rougier et al., 1994)、FAMTX(マイトマイシンを高用量メソトレキセートに置換したFAM)、エトポシドプラスLVおよび5-FU(すなわち、ELF)、およびECF(持続的注入としてのエピルビシンプラス5-FUとシスプラチン)が含まれる。
結腸直腸ガン(一般的に「結腸」ガンと呼ばれる)は、胃腸管、またはGI系とも呼ばれる消化系の下位部分において発生する。このガンは通常、結腸および直腸の内面における前ガン様の変化または生育から発生する。結腸ガンは、米国におけるこの年のガンによる死亡の約10%を占める。手術は、結腸ガンの処置の最も一般的な型である。広がっていないガンの場合、しばしば、手術は疾患を制御する。
化学療法または放射線処置と併用した化学療法は、そのガンが腸壁までまたはリンパ節まで広がっているほとんどの患者に対して術前または術後に与えられる。処置には、以下の物質の単独または互いの組み合わせが含まれるがこれらに限定されない:5-フルオロウラシル、ドセタキセル、カンプトサル/イリノテカン、カペシタビン、オキサリプラチン、および抗血管内皮増殖因子抗体(AVASTIN(登録商標))。
小細胞肺ガン−肺の組織において通常形成され、体の他の部分に広がる攻撃性の(急速に生育する)小細胞肺ガン(SLCC)は、全ての肺ガンのおよそ20%を占める。これは、大きい中心気道におけるその起源、およびまばらな細胞質を有する小細胞層の組織学的組成を特徴とする。小細胞ガンは、しばしば転移する神経内分泌起源の腫瘍である。ガン細胞は、顕微鏡で見た場合に小さく、卵形のように見える。一般的な処置には、罹患組織を除去するための手術と共に放射線療法および化学療法が含まれる。SLCCを処置するために用いられる化学療法剤には、エトポシド、シスプラチン、およびビンクリスチンが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
胃食道逆流疾患−酸の逆流は、食道の壁に刺激を与え、平滑筋の二次的な蠕動収縮を誘発して、胸焼けとして知られる不快感または疼痛を生じる可能性がある。酸逆流のほとんどのエピソードは無症候性である。二次的な蠕動によって、酸および食物のおよそ90%が胃に戻される。胃において消化された食物は、胃の幽門に存在するG細胞からのガストリンの放出を化学的に刺激する。胃の膨満は、迷走神経からのアセチルコリンの放出を引き起こし、これはさらにG細胞を刺激して、ガストリンを産生させる。ガストリンは、血流の中を移動して、胃の体部および胃底に存在する壁細胞上のガストリン受容体に結合する。ガストリンがその受容体に結合すると、カルシウムイオン(Ca++)に対する壁細胞の透過性が、イオンが細胞内に移動するように変更される。Ca++の細胞内増加は、細胞内タンパク質ホスホキナーゼを活性化させる。タンパク質ホスホキナーゼの増加によってH+K+ATPアーゼの分泌細管への移動が起こり、そこでポンプの細胞外局面がカリウムイオン(K+)に曝露される。
GERDのいくつかの一般的な処置には、制酸剤、胃をコーティングする発泡剤;胃酸産生を妨害する、シメチジン、ファモチジン、ニザチジンおよびラニチジンのようなH2遮断薬;オメプラゾール、ランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、およびエソメプラゾールのようなプロトンポンプ阻害剤;ベタノコールおよびメトクロプラミドのような、食道括約筋を強化して胃内容排出をより迅速にするために役立つプロキネティクス(prokinetics)が含まれる。
胃および十二指腸潰瘍−胃潰瘍は、胃の内面の正常組織における裂け目である。十二指腸潰瘍は、十二指腸(小腸の最初の部分)の内面の正常組織における裂け目である。良性の胃潰瘍は、胃酸およびペプシンと呼ばれる酵素の分泌と、胃粘膜内面の防御とのあいだの不均衡によって引き起こされる。ピロリ菌感染症を有する人々にとって、主な目標は問題を引き起こす生物の撲滅である。多数の療法が有効であり、これには通常、抗生物質と組み合わせた、ファモチジンもしくはニザチジンのようなH2受容体アンタゴニスト、または酸を抑制するためのオメプラゾールもしくはエソメプラゾールのようなプロトンポンプ阻害剤が含まれる。ピロリ菌感染症を有しない人々の場合、制酸剤、H2受容体アンタゴニスト、またはプロトンポンプ阻害剤のような潰瘍治癒薬はたいてい有効である。迷走神経切断(胃の胃酸産生を制御する迷走神経を切断する)または部分的胃切除(胃の一部の除去)が必要となる可能性がある。
自己免疫性胃炎−自己免疫性胃炎は、血清中の抗壁および抗内因性因子(IF)抗体に関連する。胃体部が進行性の萎縮を受けて、IF欠損が起こり、患者は悪性貧血を発症する可能性がある。二つのタイプのIF抗体、すなわちI型およびII型が検出されている。I型IF抗体はIF-コバラミン結合部位を遮断して、このようにビタミンB-12の取り込みを防止する。細胞性免疫もまた、疾患に寄与する。T細胞リンパ球は胃粘膜に浸潤して、上皮細胞破壊に寄与し、胃の萎縮が起こる。
萎縮性胃体部胃炎−萎縮性胃体部胃炎(ABG)は、胃体部粘膜の萎縮、高ガストリン血症、および低/無酸症を特徴とする。自己免疫性胃炎と同様に、これは悪性貧血に関連する。胃体部胃炎はまた、ピロリ菌感染症および高ガストリン血症、またはガストリンレベルの増加にも関連する(Delle Fave et al., Dig Liver Dis. 34:270-8 (2002))。
ゾリンジャー・エリソン症候群(ZES)は、膵臓および十二指腸において腫瘍を引き起こして、胃および十二指腸において潰瘍を引き起こすまれな障害である。腫瘍は、胃に多量の胃酸を産生させるガストリンを分泌させて、胃および十二指腸潰瘍を引き起こす(Gibril et al., Curr Gastroenterol Rep. 7:114-21 (2005))。ZESによって引き起こされた潰瘍は、通常のペプチド潰瘍よりも処置に対する反応が低い。ZESに関する一次処置は、プロトンポンプ阻害剤およびH-2遮断薬が含まれる胃酸の産生を低減するための薬剤である。
炎症性腸疾患−炎症性腸疾患には、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)として知られる二つの状態が含まれる。ガストリン受容体発現は、CDの炎症および非炎症結腸において減少するがUCでは減少しない(ter Beek et al., J Clin Pathol. 57:1047-51 (2004))。しかし、血清ガストリンレベルはクローン病患者では上昇するが、潰瘍性大腸炎患者は正常対照と比較して有意な差を示さないことが他の研究により示された(Triantafillidis et al., Hepatogastroenterology. 50 Suppl 2:cccxv-cccxvii, (2003))。
一つの態様において、処置を必要とする動物におけるこれらの障害または疾患の処置は、本発明の抗体物質を含む組成物の有効量を動物に投与する段階を含む。
本発明の方法によって処置可能な状態は、好ましくは哺乳動物において起こる。哺乳動物には、たとえばヒトおよび他の霊長類、ならびにイヌおよびネコのようなペットまたはコンパニオン動物、ラット、マウス、およびウサギのような実験動物、ならびにウマ、ブタ、ヒツジ、およびウシのような農場動物が含まれる。
非治療的使用
本発明の抗体は、標的に関する親和性精製物質として、または標的タンパク質に関する診断アッセイにおいて、たとえば特異的細胞、組織、もしくは血清におけるその発現を検出するために、用いてもよい。抗体はまた、インビボ診断アッセイにおいて用いてもよい。一般的にこれらの目的に関して、抗体は、免疫シンチノグラフィーを用いて抗体の位置を特定できるように、放射性核種(111In、99Tc、14C、131I、125I、3H、32P、または35Sのような)によって標識される。
本発明の抗体は、競合的結合アッセイ、ELISAのような直接および間接サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイのような任意の公知のアッセイ法において使用してもよい。Zola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp.147-158 (CRC Press, Inc. 1987)。抗体はまた、当技術分野において公知の方法を用いて組織または細胞試料を標識するために用いてもよい。
標的特異的抗体は、全て当技術分野において周知である、ELISA、RIA、FACS、組織免疫組織化学、ウェスタンブロット、または免疫沈降が含まれるがこれらに限定されるわけではない従来のイムノアッセイにおいて用いることができる。本発明の抗体は、ヒトおよび他の哺乳動物における標的を検出するために用いることができる。本発明は、生物学的試料を本発明の標的特異的抗体に接触させる段階、および結合した抗体を検出する段階を含む、生物学的試料における標的を検出するための方法を提供する。一つの態様において、標的特異的抗体は、検出可能な標識によって直接標識される。別の態様において、標的特異的抗体(第一の抗体)は非標識であり、標的特異的抗体に結合することができる第二の抗体または他の分子を標識する。当業者に周知であるように、第一抗体の特定の種およびクラスに特異的に結合することができる第二抗体を選択する。たとえば、標的特異的抗体がヒトIgGである場合、第二抗体は、抗ヒトIgGとなりうる。抗体に結合することができる他の分子は、そのいずれもがたとえばPierce Chemical Co.から市販されているプロテインAおよびプロテインGを含むがこれらに限定されるわけではない。
先に開示のイムノアッセイは多くの目的のために用いられると企図される。たとえば、標的特異的抗体は、細胞における標的、細胞培養物における細胞の表面上の標的、または組織培養培地に分泌された標的を検出するために用いることができる。標的特異的抗体は、細胞表面上の、または様々な化合物によって処置されている組織培養培地に分泌される標的の量を決定するために用いることができる。この方法は、標的の発現または分泌を阻害または活性化するのに有用な化合物を同定するために用いることができる。この方法に従って、一つの細胞試料を一定期間、試験化合物によって処置して、別の試料を無処置とする。標的の総レベルを測定する場合、細胞を溶解して、上記のイムノアッセイの一つを用いて総標的レベルを測定する。処置対無処置細胞における総標的レベルを比較して、試験化合物の効果を決定する。
標識
いくつかの態様において、抗体物質は、その検出を促進するために標識される。「標識」または「検出部分」は、分光学、光化学、生化学、免疫化学、化学、または他の物理的手段によって検出可能な組成物である。たとえば、本発明において用いるのに適した標識には、放射活性標識(たとえば、32P)、蛍光体(たとえば、フルオレセイン)、電子密度の高い試薬、酵素(たとえば、ELISAにおいて一般的に用いられる)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテンおよびタンパク質が含まれ、ハプテンおよびタンパク質は、たとえば放射標識をハプテンもしくはペプチドに組み入れることによって検出可能にすることができ、またはハプテンもしくはペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために用いることができる。
本発明において用いるのに適した標識の例には、蛍光色素(たとえば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン等)、放射標識(たとえば、3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(たとえば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAにおいて一般的に用いられる他の酵素)、およびコロイド状金、着色ガラスまたはプラスチックビーズ(たとえば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等)のような比色測定標識が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
標識は、当技術分野における周知の方法に従ってアッセイの所望の成分に対して直接または間接的に共役させてもよい。好ましくは、一つの態様において、標識は本発明による活性物質と複合体化するためにイソシアネート試薬を用いて生体高分子に共有結合される。本発明の一つの局面において、本発明の二官能性イソシアネート試薬は、それに活性物質が付着していない生体高分子複合体を形成するために、生体高分子に標識を複合体化するために用いることができる。標識生体高分子複合体は、本発明による標識複合体を合成するための中間体として用いてもよく、または生体高分子複合体を検出するために用いてもよい。先に示したように、広範な標識を用いることができ、標識の選択は、必要な感度、アッセイの所望の成分との複合体化の容易さ、安定性要件、利用可能な機器、および使い捨て品の供給に依存する。非放射活性標識はしばしば、間接的手段によって付着される。一般的に、リガンド分子(たとえば、ビオチン)を分子に共有結合する。次に、リガンドは別の分子(たとえば、ストレプトアビジン分子)に結合させ、これは本質的に検出可能であるか、またはこれを検出可能な酵素、蛍光化合物、もしくは化学発光化合物のようなシグナルシステムに共有結合させる。
本発明の化合物はまた、たとえば酵素または蛍光体に複合体化することによって、シグナル生成化合物に直接複合体化することができる。標識として用いるのに適した酵素には、ヒドロラーゼ、特にホスファターゼ、エラスターゼ、およびグリコシダーゼ、またはオキシドターゼ、特にペルオキシダーゼが含まれるがこれらに限定されるわけではない。標識として用いるのに適した蛍光化合物、すなわち蛍光体には、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。適した蛍光体のさらなる例には、エオジン、TRITC-アミン、キニーネ、フルオレセインW、アクリジンイエロー、リサミンローダミン、Bスルホニルクロリドエリスロセイン、ルテニウム(トリス、ビピリジニウム)、テキサスレッド、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。標識として用いるのに適した化学発光化合物には、ルシフェリン、および2,3-ジヒドロフタラジンジオン、たとえばルミノールが含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明の方法において用いることができる様々な標識またはシグナル産生システムの総説に関しては、米国特許第4,391,904号を参照されたい。
標識を検出するための手段は、当業者に周知である。このように、たとえば、標識が放射活性である場合、検出手段には、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーの場合の写真フィルムが含まれる。標識が蛍光標識である場合、適当な波長の光によって蛍光色素を励起する段階、および得られた蛍光を検出する段階によって検出してもよい。蛍光は、電荷カップリング装置(CCDs)または光電子増倍管等のような電子検出器を用いることによって、視覚的に検出してもよい。同様に酵素標識は、酵素に関して適当な基質を提供する段階および得られた反応産物を検出する段階によって検出してもよい。比色測定または化学発光標識は、単純に標識に関連する色を観察することによって検出してもよい。本発明の方法において用いるのに適した他の標識および検出システムは、当業者に容易に明らかになると考えられる。そのような標識された調整物質およびリガンドは、疾患または健康状態の診断において用いることができる。
薬学的組成物の製剤
本発明の抗体物質をヒトまたは試験動物に投与するために、一つまたは複数の薬学的に許容される担体を含む組成物において抗体物質を製剤化することが好ましい。「薬学的または薬理学的に許容される」という句は、以下に記述されるように当技術分野において周知の経路を用いて投与した場合に、アレルギーまたは他の有害反応を産生しない分子実体および組成物を指す。「薬学的に許容される担体」には、任意のおよび全ての臨床的に有用な溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤等が含まれる。
さらに、化合物は水または一般的な有機溶媒との溶媒化合物を形成してもよい。そのような溶媒化合物も同様に企図される。
抗体は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻腔内、ならびに局所処置のために望ましい場合は、病変内投与が含まれる任意の適した手段によって投与される。非経口注入には、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮内、または皮下投与が含まれる。さらに、抗体はふさわしくは、特に減少用量の抗体によるパルス注入によって投与される。好ましくは、投与は、投与が短期であるか長期的であるかに応じて、注射、最も好ましくは静脈内または皮下注射によって与えられる。たとえば所望の部位近傍に留置されたカテーテルを通して、局部、特に経皮、経粘膜、直腸内、経口、または局所投与が含まれる他の投与法が企図される。注射、特に静脈内注射が好ましい。
活性物質として本発明の抗体物質を含有する本発明の薬学的組成物は、投与経路に応じて薬学的に許容される担体、または添加剤を含有してもよい。そのような担体または添加剤の例には、水、薬学的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニル高分子、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンゴム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、薬学的に許容される界面活性剤等が含まれる。用いられる添加剤は、適当であれば、本発明の投与剤形に応じて、上記のまたはそれらの組み合わせから選択されるがこれらに限定されない。
薬学的組成物の製剤は、選択される投与経路に応じて変化すると考えられる(たとえば、液剤、乳剤)。投与される抗体を含む適当な組成物を、生理学的に許容される媒体または担体において調製することができる。液剤または乳剤の場合、適した担体には、たとえば、生理食塩液および緩衝培地が含まれる、水溶性またはアルコール性/水溶性の液剤、乳剤または懸濁剤が含まれる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲルまたは固定油が含まれうる。静脈内媒体には、様々な添加剤、保存剤、または液体、栄養剤、もしくは電解質補給剤が含まれうる。
多様な水溶性担体、たとえば滅菌リン酸緩衝生理食塩液、静菌水、水、緩衝水、0.4%生理食塩液、0.3%グリシン等には、安定性を増強するために、軽度の化学改変等に供されるアルブミン、リポタンパク質、グロブリン等のような他のタンパク質が含まれてもよい。
抗体の治療的製剤は、所望の程度の純度を有する抗体を、任意の生理的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))と共に混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の剤形で保存するために調製される。許容される担体、賦形剤、または安定化剤は、使用される用量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、これには、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸のような緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンが含まれる抗酸化剤;保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールのような);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性高分子;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンのようなアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンが含まれる単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;蔗糖、マンニトール、トレハロース、またはソルビトールのような糖;ナトリウムのような塩形成対イオン;金属錯体(たとえば、Zn-タンパク質錯体);および/または TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤が含まれる。
本明細書の製剤はまた、処置される特定の適応にとって必要な一つより多い活性化合物、特に互いに有害に影響を及ぼさない相補的活性を有する化合物を含有してもよい。そのような分子はふさわしくは、意図される目的にとって有効である量で組み合わせて存在する。
活性成分はまた、たとえばコアセルベート化技術または界面重合化によって調製されたマイクロカプセルにおいて、たとえばそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルにおいて、コロイド状薬物送達システム(たとえば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)において、またはマクロエマルジョンにおいて捕獲されてもよい。そのような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)において開示されている。
インビボ投与のために用いられる製剤は無菌的でなければならない。これは滅菌濾過メンブレンを通して濾過することによって容易に達成される。
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤と混合して活性化合物を含有してもよい。そのような賦形剤は、懸濁剤、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴムである;分散剤または湿潤剤は、天然に存在するホスファチド、たとえばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合産物、たとえばステアリン酸ポリオキシエチレン、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物、たとえばヘプタデカエチル-エネオキシセタノール、またはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールのような、エチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトールとに由来する部分的エステルとの縮合産物、またはエチレンオキシドと、脂肪酸と無水ヘキシトールとに由来する部分的エステルとの縮合産物、たとえばモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンであってもよい。水性懸濁剤はまた、一つまたは複数の保存剤、たとえばエチル、またはn-プロピル、p-ヒドロキシベンゾエートを含有してもよい。
本発明の抗体は、使用前に適した担体において保存および溶解のために凍結乾燥することができる。この技術は、従来の免疫グロブリンについて有効であることが示されている。任意の適した凍結乾燥および溶解技術を使用することができる。凍結乾燥および溶解によって、様々な程度の抗体活性の喪失が起こり、代償するためにはその使用レベルを調節する必要があることが当業者に認識されると考えられる。
水の添加による水性懸濁剤の調製に適した分散性の粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤、および一つまたは複数の保存剤と混合して活性化合物を提供する。適した分散剤または湿潤剤および懸濁剤は既に先に言及した物質によって例示されている。
これらの製剤における抗体の濃度は、たとえば約0.5重量%、通常1重量%、または少なくとも約1重量%から15または20重量%まで広く異なっていてよく、選択される特定の投与様式に従って液体容積、粘度等に主に基づいて選択されると考えられる。このように、非経口注射のための典型的な薬学的組成物は、滅菌緩衝水1 mlおよび抗体50 mgを含有するように構成されると考えられる。静脈内注入のための典型的な組成物は、滅菌リンゲル液250 ml、および抗体150 mlを含有するように構成されうる。非経口の投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に公知であるかまたは明らかであり、たとえばRemington's Pharmaceutical Science, 15th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1980)においてより詳細に記述される。抗体の有効用量は、投与あたり0.01 mg〜1000 mg/kg体重の範囲である。
薬学的組成物は、滅菌注射用水溶性、油性懸濁液、分散液、または滅菌の注射可能な液剤もしくは分散剤を即時調製するための滅菌粉末の剤形であってもよい。懸濁物は、先に言及したそれらの適した分散剤または湿潤剤、および懸濁剤を用いて公知の技術分野に従って製剤化されてもよい。滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口で許容される希釈剤または溶媒における滅菌注射用液剤または懸濁剤、たとえば1,3-ブタンジオールにおける液剤であってもよい。担体は、たとえば水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、その適した混合物、植物油、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液を含有する溶媒または分散培地となりうる。さらに、滅菌固定油が、溶媒または分散培地として通常使用される。この目的に関して、合成のモノおよびジグリセリドが含まれる任意の刺激性の低い固定油を使用してもよい。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は、注射剤の調製において有用である。
全ての場合において、剤形は無菌的でなければならず、容易なシリンジ操作性が存在する程度に流動的でなければならない。適切な流動性は、たとえばレシチンのようなコーティングを用いることによって、分散剤の場合には必要な粒子径を維持することによって、および界面活性剤を用いることによって、維持することができる。製剤は製造および保存の条件で安定でなければならず、細菌および真菌のような微生物の混入作用に対して保存されなければならない。微生物の作用の予防は、様々な抗菌、抗真菌剤、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサル等によってもたらされうる。多くの場合において、等張剤、たとえば糖または塩化ナトリウムを含むことが望ましいと考えられる。注射用組成物の持続的な吸収は、組成物において吸収を遅らせる物質、たとえばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを用いることによってもたらされうる。
投与に有用な組成物は、その有効性を増加させるために取り込みまたは吸収増強剤と共に製剤化されてもよい。そのような増強剤には、たとえばサリチレート、グリココレート/リノレート、グリコレート、アプロチニン、バシトラシン、SDS、カプレート等が含まれる。たとえば、Fix(J. Pharm. Sci., 85:1282-1285(1996))、ならびにOliyai and Stella(Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol., 32:521-544 (1993))を参照されたい。
抗体組成物は、その同源の受容体またはリガンドに対する標的の結合、標的媒介シグナル伝達等が含まれる標的活性を阻害するために用いることが企図される。特に、組成物は、副作用が実質的にない濃度で阻害特性を示し、したがって持続的な処置プロトコールにとって有用である。たとえば、抗体組成物を別のより毒性の細胞障害剤と同時投与すると、患者における毒性の副作用を有効に低減させつつ、処置される状態または障害の有益な阻害を達成することができる。
さらに、本発明における使用が企図される組成物の疎水性および親水性の特性は、十分にバランスがとられ、それによってインビトロおよび特にインビボ使用の双方に関するその有用性を増強するが、そのようなバランスを欠損する他の組成物は実質的に有用性が低い。特に、本発明における使用が企図される組成物は、体における吸収および生物学的利用率を許容する適当な程度の水性培地における溶解度を有するが、同様に化合物が推定の作用部位まで細胞膜を通過することができる程度の脂質における溶解度を有する。このように、企図される抗体組成物は、標的抗原活性部位部位に送達することができる場合に最大限に有効である。
投与および用量
一つの局面において、本発明の方法には、薬学的組成物の投与段階が含まれる。
本発明の方法は、注射、経口摂取、鼻腔内、局部、経皮、非経口、吸入スプレー、膣内、または直腸内が含まれるがこれらに限定されるわけではない、哺乳動物被験体に直接または間接的に治療物質を導入するための任意の医学的に許容される手段を用いて行われる。本明細書において用いられる非経口という用語には、皮下、静脈内、筋肉内、および槽内注射と共に、カテーテルまたは注入技術が含まれる。皮内、乳腺内、腹腔内、髄腔内、延髄後方内、肺内注射による投与および/または特定の部位での外科的埋め込みも同様に企図される。
一つの態様において、投与は、部位への直接注射による処置、または製剤を内部に送達することができる持続的な送達もしくは持続的な放出機構による処置を必要とするガンまたは罹患組織の部位で行われる。たとえば、組成物(たとえば、可溶性のポリペプチド、抗体、または低分子)を持続的に送達することができる生体分解性のミクロスフェアもしくはカプセル、または他の生体分解性高分子形状を、ガンの近傍に埋め込まれる本発明の製剤に含めることができる。
治療組成物はまた、患者の多数の部位に送達してもよい。多数の投与は、同時に行ってもよく、または一定時間内に投与してもよい。一定の場合において、治療組成物の持続的な流れを提供することが有用である。さらなる治療を、一定期間、たとえば、毎時間、毎日、毎週、または毎月投与してもよい。
同様に、本明細書に記述の第二の物質と組み合わせた抗体組成物のような、多数の物質の投与も本発明において企図される。
所与の用量における抗体組成物の量は、治療が行われる個体の体格と共に処置される障害の特徴に応じて変化すると考えられる。例示的な処置において、約1 mg/日、5 mg/日、10 mg/日、20 mg/日、50 mg/日、75 mg/日、100 mg/日、150 mg/日、200 mg/日、250 mg/日、500 mg/日、または1000 mg/日を投与することが必要である可能性がある。これらの濃度は、1回投与剤形または複数回投与剤形として投与されてもよい。最初に動物モデルにおける、および次に臨床試験における標準的な用量反応試験により、特定の疾患状態および患者集団に関する最適な用量が明らかとなる。
従来の治療物質を本発明の治療物質と組み合わせて投与する場合には、用量を改変してもよいことは同様に明らかであると考えられる。
遺伝子治療
本発明の核酸分子は、遺伝子治療によってそれを必要とする患者に投与することができる。治療はインビボまたはエクスビボのいずれかとなりうる。一つの態様において、重鎖および軽鎖鎖の双方をコードする核酸分子が患者に投与される。別の態様において、B細胞は抗体の産生を専門としていることから、核酸分子は、核酸分子がB細胞の染色体に安定に組み入れられるように投与される。関連する態様において、前駆B細胞はエクスビボでトランスフェクトまたは感染を受け、その必要がある患者に再度移植される。さらなる態様において、前駆B細胞または他の細胞は、関心対象細胞タイプに感染することが公知であるウイルスを用いてインビボで感染させる。
本発明のポリペプチドをコードする機能的遺伝子を適当な細胞に送達することは、エクスビボ、インサイチュー、もしくはインビボにおいて、ウイルスベクター(たとえば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、またはレトロウイルス)が含まれるベクターを用いて、またはエクスビボで物理的なDNA移入法(たとえば、リポソームまたは化学的処置)を用いて行われる。たとえば、Anderson, Nature, supplement to vol. 392, no. 6679, pp. 25-20 (1998)を参照されたい。遺伝子治療技術に関するさらなる総説に関しては、Friedmann(Science, 244: 1275-1281 (1989));Verma(Scientific American: 263:68-72, 81-84 (1990));およびMiller(Nature, 357: 455-460 (1992))を参照されたい。本発明のヌクレオチドまたは本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の任意の一つの導入はまた、染色体外基質(一過性の発現)または人工染色体(安定な発現)によって行うことができる。細胞は、増殖するように、またはそのような細胞において所望の効果もしくは活性を生じるように、本発明のタンパク質の存在下でエクスビボで培養してもよい。別の態様において、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを発現するベクターを含む細胞をエクスビボで培養して、標的タンパク質の過剰発現のために処置を必要とする個体に投与してもよい。
一つの局面において、遺伝子治療法は、標的特異的抗体の重鎖またはその抗原結合部分をコードする単離核酸分子を投与する段階、および核酸分子を発現させる段階を含む。一つの態様において、遺伝子治療法は、標的特異的抗体の軽鎖またはその抗原結合部分をコードする単離核酸分子を投与する段階、および核酸分子を発現する段階を含む。別の態様において、遺伝子治療法は、重鎖またはその抗原結合部分をコードする単離核酸分子と、本発明の標的特異的抗体の軽鎖またはその抗原結合部分をコードする単離核酸分子とを投与する段階、および核酸分子を発現させる段階を含む。遺伝子治療法はまた、遺伝子治療を受ける患者に別の第二の物質を投与する段階を含んでもよい。
インビボまたはエクスビボのいずれかで感染後、処置した患者から試料を採取して、当技術分野において公知のまたは本明細書において考察される任意のイムノアッセイを用いて抗体発現レベルをモニターすることができる。
キット
さらなる局面として、本発明には、本発明の方法を実践するためにその使用を容易にするように包装された一つまたは複数の化合物または組成物を含むキットが含まれる。一つの態様において、そのようなキットには、密封ボトルまたは器のような容器に包装され、方法を実践する際の化合物または組成物の使用を記述するラベルが、容器に貼付されているかまたは包装に含まれる、本明細書に記述される化合物または組成物(たとえば、標的特異的抗体を単独または第二の物質と組み合わせて含む組成物)が含まれる。好ましくは、化合物または組成物は、単位投与剤形で包装される。キットにはさらに、特異的投与経路に従って組成物を投与するのに適した、またはスクリーニングアッセイを実践するのに適した装置が含まれてもよい。好ましくは、キットは、抗体組成物の使用を記述するラベルを含有する。
本発明のさらなる局面および詳細は、制限的よりむしろ例証的であると意図される以下の実施例から明らかになると考えられる。
実施例
実施例1
標的特異的抗体を単離する方法
ヒト増殖因子ガストリンの活性を中和することができる抗体のパネルを単離するために、scFvまたはFab断片のいずれかを発現する三つのヒト抗体ファージディスプレイライブラリを同時に調べた。ライブラリパニングのために用いた標的は、ガストリン17のN末端部分からのアミノ酸10個の短いペプチドであった。ペプチドをそのC末端でビオチン化して、可溶性のパニングアプローチにおいて用いた。
ファージディスプレイからの標的特異的抗体の選択は、Marks et al.(Methods Mol Biol. 248:161-76 (2004))によって記述された方法に従って行った。簡単に説明すると、ファージディスプレイを、ビオチン化ペプチド100 pmolと共に室温で1時間インキュベートして、形成されたコンプレックスをストレプトアビジンビーズ懸濁液(DYNABEADS(登録商標)M-280 Streptavidin, Invitrogen)100 μlを用いて捕獲した。ビーズを洗浄緩衝液(PBS+5%ミルク)によって洗浄することによって、非特異的ファージを除去した。結合したファージを100 nMトリエチルアミン(TEA)0.5 mlによって溶出し、等量の1 M TRIS-Cl pH 7.4を加えることによって直ちに中和した。溶出したファージプールを用いて、対数期で生育しているTG1大腸菌細胞に感染させて、ファージミドを記述のように救出した(Marks et al. Methods Mol Biol. 248:161-76 (2004))。選択を全体で3ラウンド繰り返した。3回目のパニングラウンドからの溶出ファージに感染させたTG1細胞から得た単コロニーを、ELISAアッセイにおいて結合活性に関してスクリーニングした。簡単に説明すると、溶出したファージに感染したTG1細胞から得られた単コロニーを用いて、96ウェルプレートにおいて培地に接種した。微小培養物を、OD600=0.6となるまで生育させて、その時点で可溶性の抗体断片の点発現を1 mM IPTGの付加によって誘導した後、30℃のシェーカーインキュベーターにおいて終夜培養した。細菌を遠心してペリプラスム抽出物を調製し、マイクロプレートの製造元によって提供された標準的なELISAプロトコールに従って、ストレプトアビジンマイクロプレート(REACT-BIND(商標)Streptavidin HBC, Pierce)上で固定されたビオチン化ガストリンに対する抗体結合活性を検出した。
実施例2
抗体断片のオフレート(off-rate)ランキング法
何千もの結合物質がファージライブラリから同定され、スクリーニング漏斗を通して結合体の数を低減させる改善された方法が必要である。スクリーニング漏斗は、ペプチド結合体を迅速に優先するためにハイスループットオフレートランク法を使用した。
クローンをその相対的オフレートに関して分析して、BIACORE(登録商標)を用いてペプチドに結合した相対量を分析した。ビオチン化ペプチドをストレプトアビジンセンサーチップ(BIACORE(登録商標))において捕獲した。抗体断片を含有するペリプレップをチップの上に注入して、1500反応単位(RU)までの結合を得た。未加工データをScrubberソフトウェアに移して、これを用いて個々の試料の解離速度を計算した。それぞれの試験表面に結合した試料の量(特異的、非特異的、または非ペプチド)を、BiaEvalソフトウェアを用いて計算した。特異的ペプチドのおよそ1/3の割合で対照表面(ストレプトアビジン単独または対照ペプチド)に結合した試料は、特異的ペプチドに対する結合が<20 RUであった試料と同様に、検討から除外した。残りの試料を解離速度に従ってランク付けした。
最も遅いオフレートを有するクローンに焦点を当てることによって、結合体の数を、精製のためおよびシングルポイント(single-point)の細胞に基づく機能的アッセイのために約65個まで狭めた。細胞に基づく機能的アッセイには、細胞内カルシウム流のガストリン誘発性の増加の阻害を測定する段階、およびCCK2R発現細胞におけるERK1/2(pERK1/2)のリン酸化および活性化レベルを検出する段階が含まれる。
実施例3
GPCRに対する中和抗体を選択するための細胞内カルシウム流のフローサイトメトリー測定
CCK2Rに対するガストリンの結合によって、ホスホリパーゼC(PLC)媒介細胞内カルシウム流が起こる。標的中和抗体のスクリーニングおよび特徴付けに関する一次機能的アッセイは、フローサイトメトリーおよび蛍光カルシウム指標色素Fluo-3およびFura Redを使用して、CCK2R発現細胞株(AGS-TR)における標的刺激細胞内カルシウム流を測定した。カルシウム結合に対するその反対の反応のために、Fluo-3は蛍光を増加させるのに対し、Fura Redは蛍光およびその異なる放射スペクトルを減少させて、これらの色素を組み合わせて用いることによって、偽の比率測定シグナルの生成が得られ、全体的なカルシウム流反応に及ぼす細胞の大きさおよび細胞内色素濃度の差のような変数の影響を低減させることができる(Novak et al., Cytometry 17:135-141 (1994))。速度論分析のあいだの刺激のリアルタイム注入はCytek Time Zeroカルシウム流測定システムを用いて行った。
AGS-TR細胞におけるFluo-3 AMおよびFura Red AMによる細胞負荷は、細胞内カルシウム濃度の増加に反応するシグナルが確実に起こりうる最大のものとなるように、濃度、時間、および温度に関して最適にした。色素が負荷された細胞を、必要となるまで氷中で維持した。分析の前に、細胞を37℃にプレインキュベートしてからガストリン刺激を加えた。細胞はCytek Time Zeroカルシウム流測定システムを用いて獲得した。ベースラインを確立するために、刺激を注入する前に事象を約10秒間獲得した。刺激の注入後、事象をおよそ40秒間獲得して、Fluo-3およびFura Redの蛍光の変化を検出することによって、細胞内カルシウム濃度の変化をモニターした。
中和抗体を同定するためのリード抗体選択は、以下のスクリーニングカスケードに従う。抗体をまず、典型的にEC50濃度(1 nM)で用いられるガストリンに対して100倍モル過剰で中和活性に関してまずスクリーニングした後、より低い濃度でさらに特徴付けを行った。
マウスハイブリドーマ由来抗ガストリン抗体(Aphton Corporation, Philadelphia, PA)および精製ELISA陽性ファージディスプレイ由来抗ガストリンscFvおよびF(ab)断片を、ガストリン(1 nM)に対してほぼ100倍モル過剰でガストリン中和活性に関してスクリーニングした。抗体XPA061、XPA081、XPA065、XPA067は全て、ガストリンによって刺激した細胞においておよそ80%のCa流の中和を示した。抗体XPA071、XPA063、XPA064、XPA088、およびXPA0116は全て70%より大きい中和を示した。抗体XPA0l22、XPA0121、XPA0120、XPA0119、XPA0118、XPA0123、PD-71、およびXPA092は、第二のスクリーニングラウンドにおいて良好な中和剤であると同定された。カルシウム流に関して70%より大きい中和を示した抗体をさらなる試験のために選んだ。
抗体の中和能をさらに区別するために、この閾値で中和する候補物質をさらに低濃度、たとえば2倍モル過剰で特徴を調べた。抗体XPA061は2倍モル過剰で用いた場合におよそ70%の中和を示したが、抗体XPA0120はおよそ50%阻害を示し、XPA0121およびXPA088はいずれもおよそ40%の阻害を示し、XPA0118およびXPA064は、わずかに30%より大きい阻害を示し、ならびにXPA0116、XPA0123、およびXPA0119は、20〜30%の阻害を証明した。他の抗体は、20%より下の中和を生じた。
低濃度で高い程度の中和を示したこれらの上位の候補物質を、細胞に基づく機能的アッセイにおいてさらに分析して、以下に記述されるように、IgGに対する抗体断片の再形成に関して選択した。
実施例4
GPCRに対する抗体を用いたERK1/2リン酸化中和のELISA測定
CCK2Rに対するガストリンの結合によって、CCK2R発現細胞におけるERK1/2(pERK1/2)の活性化が起こる。ガストリン-CCK2R結合の下流の効果に及ぼすガストリン抗体の効果を評価するために、ERK1/2の活性化を抗ガストリン抗体の存在下で測定した。
細胞を完全な増殖培地においてマイクロタイタープレートに播種して37℃で24時間後、細胞内シグナル伝達の基礎レベルを低減させるために、無血清培地において24時間インキュベートした。細胞をガストリン±可能性がある中和抗ガストリン抗体と共に37℃で5分間インキュベートして、氷冷PBSによって直ちに洗浄してから、細胞溶解物を生成するために、洗浄剤、キレート剤、ならびに様々なプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含有する標準的な溶解緩衝液を加えた。リン酸化ERK1/2(pERK1/2)を、標準的なELISA(すなわち、DUOSET(登録商標)IC Phospho-ERK1/ERK2, R&D Systems, Inc.、またはFACE(商標)ERK1/2, Active Motif)を用いて測定した。選択した抗体を用いたpERK1/2アッセイの結果を表2に示す。
実施例5
GPCRに対する中和抗体の抗増殖/アポトーシス活性の測定
CCK2R発現細胞の生育および増殖に及ぼす抗ガストリン抗体の効果を調べるために、ガストリンの抗体中和の結果としての生育阻害または細胞障害性を、当技術分野において周知の技術を用いて測定する。そのような技術には、代謝的に活性な細胞をモニターするための生存率色素による染色(すなわち、MTT、XTT、およびWST-1アッセイ);改変ヌクレオチド(たとえば、BrdU)または放射標識ヌクレオチド(たとえば、3H-チミジン)の取り込みをモニターするDNA合成の定量、またはDNAインターカレート色素を用いた細胞総数の定量(たとえば、CYQUANT(商標), Molecular Probes)が含まれる。
ガストリンの抗体中和の結果としてのアポトーシスの誘導は、標識アネキシンVを用いる初期アポトーシスマーカーとしてのホスファチジルセリン(PS)の細胞外曝露の増加のモニタリング、標識基質(たとえば、DEVD-AFC, R & D Systems, Inc.)を用いる細胞カスパーゼ-3の活性化、または細胞周期分析(たとえば、BrdUフローキット、BD Biosciences)におけるサブG0/G1集団の増加によって測定されるDNA断片化が含まれる、当技術分野における周知の技術を用いて測定される。
実施例6
ファージディスプレイによって同定された抗体候補物質の全IgGへの変換
初回スクリーニングからのリード候補結合物質結合体を、抗体重鎖および軽鎖定常領域を含む抗体に変換するために、重鎖および軽鎖結合体の可変領域を、カッパ(κ)、ラムダ(λ)、およびガンマ-2(γ2)定常領域遺伝子のいずれかをコードする固有の哺乳動物発現ベクター(WO 2004/033693)にクローニングした。
抗体を、Handa et al(2004 American Society of Cancer Biology Poster #1937)に記述されているように、293E細胞において一過性に発現させた。トランスフェクトした細胞の上清を培養6日目に採取してIgGを定量した。培養物4 mlにおける上位5個の候補物質からのIgG収率は32〜60μg/ml(32、53、54、58、および60μg/ml)であり、培養物における総IgGは128〜240μgであった。
これらの結果は、高親和性全ヒト抗体を生成するために、ファージディスプレイ技術によって同定された高親和性scFvまたはFabを免疫グロブリン定常領域に組換え的に複合体化してもよいことを示している。
実施例7
再フォーマット(re-formatted)IgG抗体の中和アッセイによる分析
全ヒトガストリン特異的IgGを細胞上清から単離して、既に記述したようにカルシウム流中和アッセイによって分析した。
再フォーマット全IgG抗ガストリン抗体を、マウスモノクローナル抗体Mu mAb2に関する初期の用量反応実験から計算したIC25(0.3 nM)およびIC75(1.7 nM)値で試験した。Mu mAb2およびXPA067も同様に、この実験における最大中和の対照として67 nMで試験した。
再フォーマットXPA067、XPA088、XPA0121、およびXPA0116抗体の分析から、XPA067およびMu mAb2が67 nMでそれぞれ、およそ85%および95%の中和を示すことが示された。1.7 nMでは、Mu mAb2およびXPA067はそれぞれ、およそ55%のカルシウム流中和を示し、XPA088およびXPA0118はそれぞれ、およそ30%阻害を示し、XPA0121はおよそ10%の中和を示した。0.3 nMでは、抗体は全て10%またはそれより低い中和を示した。
次に、リード抗体選択を二つの基準に基づいて行った:(1)カルシウム流IC50値、および(2)KD測定。より定量的なpERK1/2用量反応も同様に行って、異なるシグナル伝達経路におけるガストリン誘発シグナル伝達の中和を確認した。用量反応試験は、0.01 nMでXPA067、XPA061、ならびマウス抗体Mu mAB2およびMu mAb4に関して中和が100%であることを示している。IC50、Kd、およびpERK IC50を表2に示す。
Figure 2009529915
カルシウム流の用量反応実験および親和性測定の結果は、高親和性結合抗体を選択するために、ヒトファージディスプレイライブラリに由来する抗体およびオフレート基準によって、効力およびカルシウム流の中和能においてマウスハイブリドーマ由来抗体と同等のヒト抗体が生成されることを示している。
実施例8
抗ガストリンIgG抗体の親和性成熟
親和性を最適にするために、以下のようにXPA067について親和性成熟を行った。抗体のライブラリを産生して、以下の領域のランダム変異誘発を行った:VHおよびVL CDR3、VH CDR1、VH CDR2、およびVL CDR1。ライブラリは、Clackson and Lowman, Phage Display - A Practical Approach(Oxford University Press 2004)に記述されるように標準的な分子生物学技術を用いて構築した。
それぞれのCDR3を、全CDRを含むようにアミノ酸6個の二つのブロックに無作為化して、ライブラリH3B1(アミノ酸6個のVH CDR3のN末端ブロック)、H3B2(VH CDR3におけるアミノ酸6個のC末端ブロック)、L3B1(VL CDR3におけるアミノ酸6個のN末端ブロック)、およびL3B2(VL CDR3におけるアミノ酸6個のC末端ブロック)を産生した。30位でのバーニヤ残基が含まれるVH CDR1を無作為化して(Kabat, E.A. et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest. 4th Edition, US Department of Health and Human Services. 1987、およびKabat, E.A. et al. (1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Edition. US Department of Health and Human Services, Public Service, NIH, Washington)、ライブラリH1を産生した。VH CDR2を、残基50、52、53、54、56、および58において無作為化して、ライブラリH2を産生した。VL CDR1を残基27A、27B、27C、29、31、および32位で無作為化して、ライブラリL1を産生した。次に、親和性に基づく選択を7個のライブラリのうちの5個(H3B1、H3B2、L3B1、L3B2、H2)について行い、それによって標的抗原の濃度を連続的な選択ラウンドにおいて低減させた(Clackson and Lowman, Phage Display - A Practical Approach, Oxford University Press, 2004)。最適化プロセスのそれぞれの段階において、標的抗原に対するクローンXPA067 IgG1の結合を阻害することができるscFvを、記述されるように同定して査定した。
実施例9
DELFIA(登録商標)競合アッセイを用いる親和性成熟Abのスクリーニング
AbクローンXPA067のCDR無作為化からの抗体ライブラリの親和性に基づく選択から得られた個々のscFvを、親XPA067 IgG抗体に対するガストリン結合の阻害能に関して試験した。マイクロプレートに基づく競合的スクリーニングDELFIA(登録商標)アッセイ(Perkin Elmer)を、製造元によって提供されたプロトコールに従って行った。個々のクローンのペリプラスム抽出物に含有されるscFvを、試料アッセイにおける20%、10%、および5%ペリプラスム抽出物含有量を反映するような異なる希釈でアッセイした。最大希釈でXPA067 IgGに対するガストリンの結合を80%より大きく阻害したscFvをさらに特徴付けして、リード親和性成熟抗体を単離した。
上位11個のscFvを実施例5に記述されるようにscFv-Fcに変換して、実施例2、6、および9に記述されるように、Abの分析的および機能的ランク付けのために用いた。親和性成熟抗体11個のアミノ酸配列を図3およびSEQ ID NO:23〜33に記載する。図4は、起源XPA067抗体と親和性成熟抗体のCDR領域の比較である。
実施例10
成熟Abの結合親和性の決定
親(XPA067)および成熟抗体断片の親和性を、BIACORE(登録商標)2000を用いて表面プラズモン共鳴によって決定した。ストレプトアビジンセンサーチップ上に固定されたビオチン化ペプチドに対する抗体結合に関する速度論定数から親和性定数を計算した。
センサーチップに対する抗体による二価の結合を回避するために非常に低密度の抗体を固定した。抗体を連続3倍希釈の6つの濃度にて3連で調べた。データをBiaEvalソフトウェアによって分析した。
4つの成熟抗体断片のガストリン結合親和性を表3に示す。
Figure 2009529915
これらの結果は、親和性成熟プロセスが、開始の親抗体より大きい抗原親和性を有する抗体の生成に成功することを示している。
実施例11
抗体の効力の測定において有用な実験モデル
ガストリン活性が有害である状態または疾患における治療薬としての抗ガストリン抗体の有効性を評価するために、ヒト疾患に関して容認されたモデルである実験動物モデルを読み出しとして用いる。有用な実験モデルには、以下に記述のモデルが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
膵臓ガン
一つの態様において、PAN1細胞(ヒト膵臓ガン細胞)をヌードマウス5〜7匹の膵臓の尾部に注入する(0.1 mL中に細胞104個)正常位モデルが用いられる。ウサギ抗ガストリンG17抗血清を150 mgタンパク質/マウスで毎日iv(またはip)投与する。G17をワクチン接種されたウサギはヒトガストリン型に結合することができる抗体を産生すると考えられる。このように、ウサギG17抗血清はガストリン中和抗体を含有する。この方法において、本発明の組成物による単剤治療および抗体物質プラスゲンシチビン(GEMZAR(登録商標))のような第二の治療物質との併用療法の双方を評価する。併用療法実験において、ゲンシチビンを1、3、および6日目に4 mg/kgで与える。腫瘍の負荷がマウスの臨床状態に影響を与えた場合(体重減少、腹水、および悪液質)に試験を終了する。
胃ガン
一つの態様において、ヒト胃腫瘍から単離した細胞株MGLVA1およびST16を用いる腹腔内腫瘍モデルを用いる(Watson et al., Gut 45:812-7 (1999))。細胞をSCIDマウス(n=10)の腹腔に注射して、本発明のガストリン特異的抗体を毎日iv投与する(7.5×10-9 Mの血清ABC)。腫瘍の負荷がマウスの臨床状態に影響を与えた場合(体重減少、腹水、および悪液質)に試験を終了する。
結腸直腸ガン
一つの態様において、AP5LV細胞(5×106個)をSCIDマウス((Watson et al., Int J Cancer 61:233-40 (1995))の腹壁筋層に注射する。本発明の抗体を毎日iv投与する(3.75×10-9 Mの血清ABC)。28日目にマウスを終了させて、肺転移を測定する。
一定のG.I.腫瘍はガストリンを産生し、ガストリンに対して分裂促進性であるという証拠を、いくつかの領域において見いだすことができる:インビトロ細胞株試験、ヒト腫瘍組織について行った試験、およびインビボ動物試験。本発明のガストリン中和Abによる一定のG.I.腫瘍の処置は、ガストリン曝露に反応してG.I.腫瘍が増殖する場合、および/またはオートクラインおよびパラクライン経路を通してそれらが増殖するように刺激するガストリンを産生する場合には、臨床的利点を有すると予想される。
実験的自己免疫性胃炎
胃炎の実験モデルを、胃H/K-ATPアーゼによる免疫化によって(Alderuccio et al., Autoimmunity 25:167-175 (1997));Scarff et al., Immunology 92:91-98 (1997))、または一過性のリンパ球減少症が起こる多様な操作によって(Gleeson et al., Immunol Rev 149:97-125 (1996))、またはマウスの胸腺を切除することによって(Barrett et al., Eur J Immunol 25:238-244 (1995))BALB/cマウスにおいて誘発した。さらに、胃H/K-ATPアーゼに対する自己抗体を特徴とする自己免疫性胃炎を誘発するマウスにおける自然発生変異(Alderuccio et al., Am J of Pathol. 153:1311-1318 (1998))。
十二指腸潰瘍/ピロリ菌感染症
Sprague-Dawleyラットにおけるエタノール強制栄養によって誘発された十二指腸潰瘍の実験モデルは、Krantis et al.,(Dig Dis Sci. 38:722-9 (1993))に記述されている。ピロリ菌感染症および潰瘍の誘導は、Sprague Dawleyラットにおけるピロリ菌誘発潰瘍の誘導およびモニタリングを記述するRoss et al.,(Am J Pathol. 141:721-7(1992))において、および剛毛コットンラットにおけるピロリ菌誘発潰瘍を記述するMahler et al.,(Helicobacter. 10:332-44 (2005))に記述されている。ピロリ菌感染症を評価するのに有用な他の動物モデルが利用可能であり、当技術分野において公知である。たとえば、マウスモデルは、Day et al.,(Dig Dis Sci. 46:1943-51 (2001))に記述され、モンゴルアレチネズミモデルはSawada et al.(J Gastroenterol. 34 Suppl 11:55-60 (1999))に記述されている。
実施例12
再フォーマット抗体のインビトロでの親和性および効力
親和性成熟抗体を、実施例6に記述されるようにIgGテールを含むように再フォーマットしてこれらの再フォーマット抗体のガストリン結合およびインビトロでのガストリン効果の中和に対する親和性を測定した。
抗体の親和性は既に記述されたように測定した。再フォーマットされた親和性成熟抗体は、親抗体と比較して親和性の改善を示した。表4を参照のこと。
Figure 2009529915
これらの抗体によるインビトロでのガストリン中和効力を決定するために、インビトロカルシウム流アッセイを、実施例3に記述されるように行った。簡単に説明すると、細胞内カルシウム流のフローサイトメトリー測定をCCK2R過剰発現細胞株(AGS-TR)において行った。
再フォーマット抗体XPA067、XPA067.06、およびXPA067.18を、これらの細胞におけるカルシウム流のガストリン活性化の中和能に関してアッセイした。図5はカルシウム流アッセイの結果を示す。親抗体XPA067は、およそ1 nMの濃度でおよそ50%のガストリン中和を証明した。親和性成熟抗体XPA067.06は、約0.17 nMで50%中和に達し、親和性成熟抗体XPA067.18は約0.2 nMで50%中和を示した。
これらの結果は、親和性成熟抗体がガストリンに対してより大きい親和性を示し、したがって、親抗体と比較して抗体のより低濃度で中和の増加を示すことを証明する。このことは、親和性がより高い抗体はインビボでガストリンの中和を行うために必要な用量がより低いことを示唆する。しかし、親抗体は、約10 nMで90%の中和を達成することができ、したがって、何らかの治療応用に適している可能性がある。
実施例13
再フォーマット抗体のインビボでの効力
pHの変化のモニタリングは、治療的抗ガストリン抗体のインビボ効力を測定するための薬理学的エンドポイントとして役立ちうる。これまでの研究により、胃酸の産生を阻害するH2受容体アンタゴニストであるファモチジン、および胃酸分泌を阻害するムスカリンM1受容体アンタゴニストであるテレンゼピンのような物質が、CD-1マウスにおける胃のpHを増加させうることが証明されている。生物活性抗ガストリン抗体も同様に、内因性のガストリンの機能を中和して、胃のpHレベルを増加させるはずである。
ヒトガストリンは、マウス受容体と相互作用し、インビボで胃酸分泌に対して効果を有する。したがって、ヒトガストリン(h-G17)をCD-1マウスに導入して、抗ヒトガストリン抗体を投与することによって、抗ガストリン抗体のインビボでのガストリン中和活性を査定するように、胃pHモデルを改変した。このように、胃のpHを測定することによって、抗ガストリン抗体による外因性のヒトガストリンの中和を検出することができた。
抗ガストリンmAbのインビボ効力を評価するために、標的の中和効果を、読み出しとして胃のpHを用いて測定した。試験-2日目に(胃液採取の48時間前)、CD-1マウス(12〜14週齢)を抗ガストリンmAb(20 mg/kg体重)または抗KLH IgG1抗体対照(20 mg/kg体重)の腹腔内注射によって処置した。マウスには固形齧歯類飼料のかわりにNAP A-NECTAR(商標)水ゲルを与えた。-1日目(胃液採取の24時間前)に、水を自由に与えながらマウスを一晩絶食した。0日目(胃液採取当日)、ヒトガストリンh-G17(1 mg/kg体重;Sigma)、またはPBS(pH 7.4)を皮下注射した。h-G17またはPBS注射の20分後、H2Rアンタゴニスト(ファモチジン;30 mg/kg体重;Sigma)、ムスカリンM1受容体アンタゴニスト(テレンゼピン;30 mg/kg体重;Sigma)、またはPBSを各マウスに静脈内投与した。1時間後に胃を摘出した。胃液およそ50 μlを採取して、微小電極(モデル9669-10D; Horiba Ltd.)を有するpH計(モデルD-51; Horiba Ltd., Kyoto, Japan)を用いてpHを直接測定した。
図6は、ファモチジン単独の投与が、内因性のマウス胃酸を中和して、胃のpHレベルをおよそpH 5.5まで上昇させるが、外因性のヒトガストリンとファモチジンの投与は、胃のpHレベルをおよそpH 2まで低減させることを示している。このように、与えられた用量において、ファモチジンは、外因性のガストリンの効果を中和することができない。抗ガストリン抗体XPA067、ヒトガストリン、およびファモチジンの投与は、胃のpHのpH 2.5へのわずかな増加を証明した。しかし、XPA067の代わりに親和性成熟抗ガストリン抗体XPA067.06を投与すると、胃のpHをおよそpH 4までさらに増加させることができる。
図7は、テレンゼピン単独の投与が内因性のマウス胃酸を中和して、胃のpHレベルをおよそpH 3に上昇させるが、外因性のヒトガストリンとテレンゼピンの投与は、胃のpHをおよそpH 1.3まで低減させたことを証明している。抗ガストリン抗体XPA067、ヒトガストリンおよびテレンゼピンの投与は、胃pHのpH 1.5へのわずかな増加を証明した。しかし、XPA067の代わりに親和性成熟抗ガストリン抗体XPA067.06を投与すると、胃のpHをおよそpH 2までさらに増加させることができる。
これらの結果は、胃酸分泌の正常レベルが、選択的H2RアンタゴニストであるファモチジンまたはムスカリンM1受容体アンタゴニストであるテレンゼピンの投与によって減少することを証明している。さらに、これらの効果は、CD-1マウスに外因性のヒトガストリンを予め導入することによって消失させることができる。抗ガストリンmAbは外因性のヒトガストリンをインビボで中和する。胃のpHの上昇は、中和性の抗ガストリン抗体の投与後に観察された。インビボデータはまた、親和性成熟抗体XPA067.06が親抗体XPA067より強力なガストリン中和物質であることも示している。
本明細書におけるデータは、約10-9 Mの親和性を有するモノクローナル抗体が、約10 nMの濃度でインビトロでガストリン誘発カルシウム流活性の90%中和を達成できたこと、および二つの動物モデルにおいてインビボでのガストリンの酸刺激効果に及ぼす影響は最小であることを示している。親和性約10-12 Mを有するモノクローナル抗体は、0.17または0.2 nMの濃度でインビトロでガストリンの90%中和を達成し、同じ動物モデルにおいてインビボでガストリンの胃刺激効果の顕著な中和を生じた。親和性が3 log増加すると中和が比較的中等度の5倍改善されることは、かなり高い親和性の(すなわち、10-10または10-11 M未満の親和性値を有する)抗体は、有意によりよい中和を提供しない可能性がある。
親和性が3 log増加すると中和が比較的中等度の5倍改善されることは、かなり高い親和性の抗体(すなわち、10-10または10-11 M未満の親和性値)は、よりよい中和を提供して、薬理学的効力を増強することを示す。
上記の例証的な例に記載したように、本発明における多数の改変および変更が、当業者に想起されると予想される。その結果、添付の特許請求の範囲にみられるような制限のみが本発明になされるべきである。
抗ガストリン抗体XPA061、XPA063、XPA065、XPA067、XPA081の重鎖アミノ酸配列およびコンセンサス配列を示す。CDRを下線で示し、全ての配列に関するChotia番号をコンセンサス配列の下に含む。 抗ガストリン抗体XPA061、XPA063、XPA065、XPA067、XPA081の軽鎖アミノ酸配列およびコンセンサス配列を示す。CDRを下線で示し、全ての配列に関するChotia番号をコンセンサス配列の下に含む。 XPA.067親和性成熟抗体(SEQ ID NO: 23〜33)の重鎖アミノ酸配列を示す。CDRを下線で示す。 起源のXPA067抗体および親和性成熟抗体の重鎖CDR領域の比較。 親抗体XPA067と比較した、再フォーマットされた親和性成熟抗体XPA067.06およびXPA067.18の改善されたガストリン中和能を図示する。 胃pHファモチジンマウスモデルにおける抗ガストリン抗体の中和を示す。F:ファモチジン、G:h-17(ヒトガストリン)、XPA067:親α-ガストリンmAb、XPA067.06:親和性成熟α-ガストリンmAb。 胃pHテレンゼピンマウスモデルにおける抗ガストリン抗体の中和を示す。T:テレンゼピン、G:h-G17(ヒトガストリン)、XPA067:親α-ガストリンmAb、XPA067.06:親和性成熟α-ガストリンmAb。

Claims (60)

  1. 図1、図3、またはSEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、もしくは23〜33に記載の重鎖CDRアミノ酸配列のいずれか一つを含む、10-7 M以下の親和性kdでガストリン[ガストリン17]に結合する抗体。
  2. 図1、図3、またはSEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、もしくは23〜33に記載の重鎖CDRアミノ酸配列の少なくとも二つを含む、請求項1記載の抗体。
  3. 図1、図3、またはSEQ ID NO: 1、3、5、7、9、11、もしくは23〜33に記載の重鎖CDRアミノ酸配列の少なくとも三つを含む、請求項1記載の抗体。
  4. 以下を含む、請求項1記載の抗体:
    (a)図1もしくは図3に記載の重鎖CDR1アミノ酸配列、または一つもしくは二つのアミノ酸が変化しているその変異体;
    (b)(a)と同じ重鎖可変領域に由来する、図1に記載の重鎖CDR2アミノ酸配列、または一つもしくは二つのアミノ酸が変化しているその変異体;および
    (c)(a)と同じ重鎖可変領域に由来する、図1に記載の重鎖CDR3アミノ酸配列、または一つもしくは二つのアミノ酸が変化しているその変異体。
  5. 以下を含む、請求項1記載の抗体:
    (a)図1もしくは図3に記載の重鎖CDR1アミノ酸配列、または一つもしくは二つのアミノ酸が変化しているその変異体;
    (b)図1に記載の独立して選択された重鎖CDR2アミノ酸配列、またはそれと少なくとも65%の同一性を有するその変異体;および
    (c)図1に記載の独立して選択された重鎖CDR3アミノ酸配列、またはそれと少なくとも50%の同一性を有するその変異体。
  6. 重鎖CDR1、CDR2、またはCDR3アミノ酸配列の少なくとも二つが、図1または図3に記載されている、請求項4または5記載の抗体。
  7. 重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列の三つが、図1または図3に記載されている、請求項4または5記載の抗体。
  8. 重鎖CDR1、CDR2、またはCDR3アミノ酸配列の一つまたは複数が、図1に示されるコンセンサス配列である、請求項4〜7のいずれか一項記載の抗体。
  9. 重鎖CDR1アミノ酸配列中のアミノ酸が、図1または図3に記載の異なる重鎖CDR1アミノ酸配列内の対応する位置からのアミノ酸で置換されている、請求項4〜8のいずれか一項記載の抗体。
  10. 重鎖CDR2アミノ酸配列中のアミノ酸が、図1または図3に記載の異なる重鎖CDR2アミノ酸配列内の対応する位置からのアミノ酸で置換されている、請求項4〜8のいずれか一項記載の抗体。
  11. Xが任意のアミノ酸であるCDR2アミノ酸コンセンサス配列XIXPXXDXAXSAQKFQDを含む、請求項4〜8のいずれか一項記載の抗体。
  12. 重鎖CDR3アミノ酸配列中のアミノ酸が、図1または図3に記載の異なる重鎖CDR3アミノ酸配列内の対応する位置からのアミノ酸で置換されている、請求項4〜8のいずれか一項記載の抗体。
  13. Xが任意のアミノ酸であるCDR3アミノ酸コンセンサス配列DXXXXXSGSYを含む、請求項4〜8のいずれか一項記載の抗体。
  14. 図1または図3に記載の重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも65%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1〜13のいずれか一項記載の抗体。
  15. 図1または図3に記載の重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項14記載の抗体。
  16. 図1または図3に記載の重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項14記載の抗体。
  17. 図1または図3に記載の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む、請求項14記載の抗体。
  18. 一つまたは複数の重鎖フレームワークアミノ酸が、別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応するアミノ酸で置換されている、請求項1〜16のいずれか一項記載の抗体。
  19. ヒト抗体アミノ酸配列が、ヒトコンセンサス抗体配列、ヒト生殖系列抗体配列、またはヒト生殖系列コンセンサス抗体配列である、請求項18記載の抗体。
  20. 重鎖可変領域に付着したヒト重鎖定常領域をさらに含む、請求項1〜19のいずれか一項記載の抗体。
  21. 重鎖定常領域が、改変もしくは非改変IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、それらの断片、またはそれらの組み合わせである、請求項20記載の抗体。
  22. 図2またはSEQ ID NO: 2、4、6、8、10、もしくは12に記載の軽鎖CDRアミノ酸配列のいずれか一つを含む、10-7 M以下の親和性kdでガストリンに結合する抗体。
  23. 図2またはSEQ ID NO: 2、4、6、8、10、もしくは12に記載の軽鎖CDRアミノ酸配列のいずれか一つをさらに含む、請求項1〜21のいずれか一項記載の抗体。
  24. 図2またはSEQ ID NO: 2、4、6、8、10、もしくは12に記載の軽鎖CDRアミノ酸配列の少なくとも二つを含む、請求項22または23記載の抗体。
  25. 図2またはSEQ ID NO: 2、4、6、8、10、もしくは12に記載の軽鎖CDRアミノ酸配列の少なくとも三つを含む、請求項22または23記載の抗体。
  26. 以下を含む、請求項22または23記載の抗体:
    (a)図2に記載の軽鎖CDR1アミノ酸配列、または一つもしくは二つのアミノ酸が変化しているその変異体;
    (b)(a)と同じ軽鎖可変領域に由来する、図2に記載の軽鎖CDR2アミノ酸配列、または一つもしくは二つのアミノ酸が変化しているその変異体;および
    (c)(a)と同じ軽鎖可変領域に由来する、図2に記載の軽鎖CDR3アミノ酸配列、または一つもしくは二つのアミノ酸が変化しているその変異体。
  27. 以下を含む、請求項22または23記載の抗体:
    (a)図2に記載の軽鎖CDR1アミノ酸配列、または一つもしくは二つのアミノ酸が変化しているその変異体;
    (b)図2に記載の独立して選択された軽鎖CDR2アミノ酸配列、または一つもしくは二つのアミノ酸が変化しているその変異体;および
    (c)図2に記載の独立して選択された軽鎖CDR3アミノ酸配列、または一つもしくは二つのアミノ酸配列が変化しているその変異体。
  28. 軽鎖CDR1、CDR2、またはCDR3アミノ酸配列の少なくとも二つが、図2に記載されている、請求項26または27記載の抗体。
  29. 軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3アミノ酸配列の三つが、図2に記載されている、請求項26または27記載の抗体。
  30. 軽鎖CDR1、CDR2、またはCDR3アミノ酸配列の一つまたは複数が、図2に示されるコンセンサス配列である、請求項26〜29のいずれか一項記載の抗体。
  31. 軽鎖CDR1アミノ酸配列中のアミノ酸が、図2に記載の異なる軽鎖CDR1アミノ酸配列内の対応する位置からのアミノ酸で置換されている、請求項26〜30のいずれか一項記載の抗体。
  32. 軽鎖CDR2アミノ酸配列中のアミノ酸が、図2に記載の異なる軽鎖CDR2アミノ酸配列内の対応する位置からのアミノ酸で置換されている、請求項26〜30のいずれか一項記載の抗体。
  33. 軽鎖CDR3アミノ酸配列中のアミノ酸が、図2に記載の異なる軽鎖CDR3アミノ酸配列内の対応する位置からのアミノ酸で置換されている、請求項26〜30のいずれか一項記載の抗体。
  34. 図2に記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも65%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項22〜33のいずれか一項記載の抗体。
  35. 図2に記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項34記載の抗体。
  36. 図2に記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項34記載の抗体。
  37. 図2に記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、請求項34記載の抗体。
  38. 一つまたは複数の軽鎖フレームワークアミノ酸が、別のヒト抗体アミノ酸配列からの対応するアミノ酸で置換されている、請求項22〜36のいずれか一項記載の抗体。
  39. ヒト抗体アミノ酸配列が、ヒトコンセンサス抗体配列、ヒト生殖系列抗体配列、またはヒト生殖系列コンセンサス抗体配列である、請求項38記載の抗体。
  40. 軽鎖可変領域に付着したヒト軽鎖定常領域をさらに含む、請求項1〜39のいずれか一項記載の抗体。
  41. 軽鎖定常領域が、改変もしくは非改変ラムダ軽鎖定常領域、カッパ軽鎖定常領域、それらの断片、またはそれらの組み合わせである、請求項40記載の抗体。
  42. 試験抗体がガストリンに対して100倍モル過剰の濃度であり、ガストリンがEC50濃度(1 nM)である、AGS-TR細胞を用いるアッセイにおいて、カルシウム流の少なくとも70%の中和を示す、請求項1〜41のいずれか一項記載の抗体。
  43. XPA061、XPA063、XPA065、XPA067、XPA081、XPA067.06、XPA067.18のいずれかのCDRの少なくとも5個を含む、請求項1〜42のいずれか一項記載の抗体。
  44. 一本鎖抗体である、請求項1〜43のいずれか一項記載の抗体。
  45. 10-8 M以下の親和性kdでガストリン[ガストリン17]に結合する、請求項1〜43のいずれか一項記載の抗体。
  46. 10-9 M以下の親和性kdでガストリン[ガストリン17]に結合する、請求項1〜43のいずれか一項記載の抗体。
  47. 別の診断物質または治療物質に複合体化している、請求項1〜46のいずれか一項記載の抗体。
  48. 請求項1〜47のいずれか一項記載の重鎖または軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子。
  49. 調節制御配列に機能的に連結している請求項48記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
  50. 請求項49記載のベクターまたは請求項48記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
  51. 請求項50記載の宿主細胞を適した条件で培養する段階、および抗体を回収する段階を含む、抗体を産生するために請求項50記載の宿主細胞を用いる方法。
  52. 請求項51記載の方法によって産生された抗体。
  53. 重量で少なくとも95%の均質性まで精製される、請求項1〜47または52のいずれか一項記載の抗体。
  54. 請求項53記載の抗体と薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
  55. 請求項53記載の抗体と使用説明書とを含む、キット。
  56. 請求項54記載の薬学的組成物の治療的有効量を、必要とする被験体に投与する段階を含む、ガストリン発現に関連する状態または障害を処置するための方法。
  57. 状態または障害が、膵臓ガン、食道ガン、胃ガン、結腸直腸ガン、小細胞肺ガン、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ピロリ菌(H. Pylori)に関連する他の潰瘍または状態、胃食道逆流疾患、自己免疫性胃炎、萎縮性体部胃炎、膵臓の腫瘍(ガストリノーマ)に関連するゾリンジャー・エリソン症候群、または炎症性腸疾患からなる群より選択される、請求項56記載の方法。
  58. 抗体が第二の治療物質と組み合わせて投与される、請求項56または57記載の方法。
  59. 第二の治療物質が、H2遮断薬、プロトンポンプ阻害剤、または化学療法剤である、請求項58記載の方法。
  60. 10-8 M以下の親和性kdでガストリン[ガストリン17]に結合する、単離モノクローナル抗体。
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