JP2016044258A - 水系インクセット及び繊維の捺染方法 - Google Patents

水系インクセット及び繊維の捺染方法 Download PDF

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Abstract

【課題】イエロー〜オレンジ〜マゼンタの色相範囲で従来以上に鮮やかな色相を示し、且つ水堅牢性が良好な、インクジェット捺染に用いる水系インクセットの提供。
【解決手段】イエローインク及びマゼンタインクの2色のインクを有するインクジェット捺染に用いる水系インクセットであって、該イエローインクが色素として少なくともC.I.Acid Yellow 184を含有し、該マゼンタインクが色素として少なくともC.I.Acid Red 52を含有する水系インクセット。
【選択図】なし

Description

本発明は水系インクセット及びそれを用いた繊維の捺染方法に関する。
インクジェットプリンタを用いた繊維のインクジェット捺染は、スクリーン捺染、ローラー捺染、ロータリー捺染等の捺染方法に比べ、製版工程が不要であり工程が短縮できること;デジタル化されたデザインを、コンピューターを介してそのままプリントできること;多品種の製品を少量ずつであっても生産することが可能であること;色素(染料)色糊の廃液等が大幅に削減できること;等の多くのメリットがある。一方、従来の製版捺染に比べ、プリント速度が遅いこと、及び濃色を再現し難いこと等の課題があった。このためインクジェット捺染は、見本反の製造や少量生産の範囲で使用されることが多かった。
近年、コンピューターの画像処理やプリントヘッド製造の技術的進歩によりインクジェットプリンタのプリント速度が大幅に向上されてきたことに加え、プリントデザインのデジタル化、プリント加工の多様化・小ロット化が市場で要求されてきたこと等を背景に、インクジェット捺染の普及が進んでいる。
インクジェット捺染用のインクとしては、シルク、ナイロン等のポリアミド系繊維用の酸性染料インク;ポリエステル系繊維用の分散染料インク;綿、レーヨン等のセルロース系繊維用の反応性染料(反応染料)インク;等が販売されている。
酸性染料を用いたインクジェット捺染においては、通常ブラック、イエロー、マゼンタ(レッドが用いられることもある)、及びブルー(シアンが用いられることもある)の4色のインクセットが用いられる。インクジェット捺染に用いるインクの性能としては高画質、且つ高堅牢性の印捺物の提供が可能で、且つ吐出安定性にも優れることが要望される。
高画質化の要望の1つとして、従来以上に見た目が鮮やかな色相に対する強い要望が挙げられる。この要望に対し、これまでも種々のインクやインクセットが提案されてきた。その1つとして、C.I.Acid Red 52を含有するインクが挙げられる。しかしながら、従来のインクセットでは、従来以上に見た目が鮮やかであり、且つ堅牢性にも優れたインクセットはなかった。
特許文献1には、C.I.Acid Yellow 184を含むインクジェット用インク組成物が開示されている。
特許文献2には、C.I.Acid Red 52とC.I.Acid Yellow73を含有するインクジェット用インク組成物が開示されている。
特開平11−158431号公報 特開2005−120367号公報
本発明はイエロー〜オレンジ〜マゼンタの色相範囲、特にオレンジの色相において従来以上に鮮やかな色相を示し、且つ水堅牢性に優れる染色物を与える水系インクセット、及びこれを用いる繊維の捺染方法の提供を課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、それぞれ特定の色素を含有する、少なくともイエロー及びマゼンタの2色のインクを備えるインクジェット捺染用の水系インクセットにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち本発明は、以下の1)〜10)に関する。
1)
イエローインク及びマゼンタインクの2色のインクを有するインクジェット捺染に用いる水系インクセットであって、該イエローインクが色素として少なくともC.I.Acid Yellow 184を含有し、該マゼンタインクが色素として少なくともC.I.Acid Red 52を含有する水系インクセット。
2)
イエローインク及びマゼンタインクのそれぞれの総質量中における色素の総含有量が、いずれも0.5〜20質量%である上記1)に記載の水系インクセット。
3)
イエローインクの総質量中における色素の総含有量が2〜8質量%であり、マゼンタインクの総質量中における色素の総含有量が2〜10質量%である、上記1)又は2)に記載の水系インクセット。
4)
イエローインクが含有する色素の全てがC.I.Acid Yellow 184である上記1)〜3)のいずれか一項に記載の水系インクセット。
5)
マゼンタインクが含有する色素の全てがC.I.Acid Red 52である上記1)〜3)のいずれか一項に記載の水系インクセット。
6)
水溶性有機溶剤をさらに含有する、上記1)〜5)のいずれか一項に記載の水系インクセット。
7)
上記1)〜6)のいずれか一項に記載の水系インクセットをインクとして用い、少なくとも以下の工程A〜工程Cの3工程を順次行うことを含む、繊維のインクジェット捺染方法。
工程A:各インクの液滴を記録信号に応じてそれぞれ吐出させ、繊維に付着させる工程。
工程B:工程Aにより繊維に付着させた各インクの液滴中の色素を、熱により繊維に固着させる工程。
工程C:繊維に残存する未固着の色素を洗浄する工程。
8)
繊維が、ポリアミド繊維、及びポリアミド繊維を含有する混紡繊維から選択される繊維である上記7)に記載のインクジェット捺染方法。
9)
上記7)又は8)に記載のインクジェット捺染方法により染色された繊維。
10)
ポリアミド繊維、及びポリアミド繊維を含有する混紡繊維から選択される繊維の染色に用いる、上記1)〜6)のいずれか一項に記載の水系インクセット。
本発明により、イエロー〜オレンジ〜マゼンタの色相範囲、特にオレンジの色相において従来以上に鮮やかな色相を示し、且つ水堅牢性に優れる染色物を与える水系インクセット、及びこれを用いる繊維の捺染方法を提供することができた。
本明細書においては特に断りのない限り、実施例を含めて「%」及び「部」数についてはいずれも質量基準で記載する。
上記イエローインクは、色素として少なくともC.I.Acid Yellow 184(以下、「AY184」という。)を含有する。
また、イエローインクの色調を望みの色に微調整する目的で、AY184以外の色素を、さらに含有することもできる。AY184以外の色素としては、例えば、C.I.Acid Yellow 1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、40:1、42、44、49、59、59:1、61、65、72、73、79、99、104、110、159、169、176、193、200、204、207、215、219、219:1、220、230、232、235、241、242、246等のイエロー色の色素が挙げられる。これらの中ではC.I.Acid Yellow 110、79が好ましい。
上記マゼンタインクは、色素として少なくともC.I.Acid Red 52(以下、「AR52」という。)を含有する。
また、マゼンタインクの色調を望みの色に微調整する目的で、AR52以外の色素を、さらに含有することもできる。AR52以外のの色素としては、例えば、C.I.Acid Red 1、6、8、9、13、18、27、35、37、54、57、73、82、88、97、97:1、106、111、114、118、119、127、131、138、143、143:1、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415、447等のレッド色の色素が挙げられる。これらの中ではC.I.Acid Red 131、249、289等が好ましい。
インクの色調を望みの色に微調整する目的で、上記イエローインク及びマゼンタインクが、それぞれAY184、又はAR52以外の色素を含有するときは、本発明により得られる効果を疎外しない範囲でそれぞれ含有するのが好ましい。
AY184及びAR52以外の色素を上記イエローインク及び/又はマゼンタインクが含有するときの、色素の混合割合は、他の色素の物性等にもよるため一概にいうことは困難である。しかしながら、おおよその目安としては、イエローインク及びマゼンタインクのそれぞれが含有する色素の総質量に対して、AY184又はAR52以外の色素の混合比率は通常0〜50%、好ましくは0〜25%、より好ましくは0〜20%、さらに好ましくは0〜10%、特に好ましくは0〜5%である。
上記イエローインクは、含有する色素の全てがAY184であることが最も好ましい。また、上記マゼンタインクは、含有する色素の全てがAR52であることが最も好ましい。
上記イエローインクの総質量中における色素の総含有量は通常0.5〜20%であり、マゼンタインクにおいても同様である。
また、イエローインクの総質量中における色素の総含有量は2〜10%が好ましく、マゼンタインクの総質量中における色素の総含有量は2〜8%が好ましい。
上記の色素は、粉末状;塊状;又はウェットケーキ;等のいずれの状態のものでも使用することができる。しかし、市販品として入手できる色素は、例えば「工業染色用粉末」、「インクジェット用」等の各種の品質があり、製造方法や純度等がそれぞれ異なり、液状品もある。それらの中には塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等の無機塩を、総質量中におおよそ10〜40質量%も含有する製品も存在する。
インクジェット捺染用インクとしては、インクの保存安定性及びインクジェットプリンタからの吐出精度等を良好にするため、できるだけ不純物の少ない色素等を使用するのが好ましい。又、特に精製操作を行わない水等は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の金属イオンを含むため、このような未精製の水等をインクに使用すると、微量ながら該イオン等がインクに混入する。
上記の無機塩及び金属イオンを含めて、本明細書においては便宜上、「無機不純物」と以下記載する。
これらの無機不純物は、インク中の色素の溶解度及びインク自体の貯蔵安定性を著しく悪化し、また、インクジェットプリンタヘッドの腐食・磨耗の原因ともなる。このため無機不純物は、インク中から除去することが好ましい。これらの無機不純物を除去する方法としては、例えば限外濾過法、逆浸透法、イオン交換法等の公知の方法が挙げられる。
インクの総質量中に含有してもよい無機不純物の含有量の上限は、通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。下限は0%、すなわち検出機器の検出限界以下が挙げられる。
上記の色素は、各種の塩として使用することができる。各種の塩としては、無機又は有機陽イオンと形成する塩が挙げられる。
そのうち無機陽イオン塩の具体例としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩が挙げられる。これらの中で、好ましい無機陽イオン塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの塩及びアンモニウム(NH4 +)塩が挙げられる。
有機陽イオンの塩としては例えば下記式(3)で表わされる4級アンモニウムイオンの塩が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、遊離酸、及びそれらの各種の塩の混合物でも良いし、色素が互変異性体を有するときは、その互変異性体の遊離酸及びそれらの各種の塩をも含む混合物であっても良い。例えばナトリウム塩とアンモニウム塩の混合物、遊離酸とナトリウム塩の混合物、リチウム塩、ナトリウム塩及びアンモニウム塩の混合物等、いずれの組み合わせであっても良い。
塩の種類によっては溶解性等の色素の物性値が異なるときも有る。このため、必要に応じて適宜塩の種類を選択したり、複数の塩等を含むときにはその比率を変化させること等も好ましく行われる。
造塩や塩交換等の方法は、いずれも公知の方法を用いることができる。
Figure 2016044258
上記式(3)においてZ、Z、Z、Zは、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基及びヒドロキシアルコキシアルキル基よりなる群から選択される基を表し、Z〜Zの全てが水素原子となることは無い。
式(3)におけるZ、Z、Z、Zのアルキル基の具体例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の、直鎖又は分岐鎖のC1−C4アルキル基が挙げられる。
ヒドロキシアルキル基の具体例としてはヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等の、ヒドロキシC1−C4アルキル基が挙げられる。
ヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等の、ヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基が挙げられる。これらの中ではヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基(好ましくはヒドロキシエトキシC1−C4アルキル基)が好ましい。
上記のうち、特に好ましいものとしては、水素原子;メチル;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルキル基;ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシエトキシC1−C4アルキル基;が挙げられる。
上記式(3)として好ましい化合物のZ、Z、Z及びZの組み合わせの具体例を下記表2に示す。
Figure 2016044258
上記の水系インクセットを構成する各インクは、さらに水溶性有機溶剤を含有することができる。
水溶性有機溶剤としては、多価アルコール類、ピロリドン類等が挙げられる。水溶性有機溶剤の含有量は、インクの総質量に対して通常0〜50%、好ましくは1〜50%、より好ましくは5〜40%である。
多価アルコール類としては、グリセリン、1,3−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール等のヒドロキシ基を2つ〜3つ有するC2−C6アルコール;ジグリセリン、ポリグリセリン等のポリグリセリルエーテル;ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル等のポリオキシC2−C3アルキレンポリグリセリルエーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の、モノ、ジ又はトリC2−C3アルキレングリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の、繰り返し単位が4以上で、分子量が約20,000以下程度のポリC2−C3アルキレングリコール(好ましくは液状のもの);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の、多価アルコールのC1−C4モノアルキルエーテル;等が挙げられる。
ピロリドン類としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン類;等が挙げられる。
これらの中ではグリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルカルビトール、及び2−ピロリドンが好ましい。
水溶性有機溶剤は、単独で使用することも、2種類以上を併用することもできる。
上記水系インクセットを構成する各インクは、色素、水、及び水溶性有機溶剤以外の成分として、例えば界面活性剤、pH調整剤、防腐防黴剤等のインク調製剤を、必要に応じてさらに含有することができる。
インク調製剤は合計で、インクの総質量に対して通常0〜10%、好ましくは0.05〜5%程度である。
界面活性剤としては、アニオン、カチオン、両性、及びノニオンの各界面活性剤が挙げられる。これらの中ではカチオン界面活性剤が好ましい。
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸又はその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレンアルコール系;他の具体例として、例えば、日信化学社製の商品名サーフィノール104、105PG50、82、420、440、465、485、オルフィンSTG;等が挙げられる。
これらの中ではサーフィノールが好ましく、サーフィノール104PG50、サーフィノール440がより好ましい。
pH調整剤としては、インクのpHを6.0〜11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミントリエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);又は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;等が挙げられる。
これらの中ではトリエタノールアミンが好ましい。インクの総質量中におけるpH調整剤の含有量は通常0.01〜2%、好ましくは0.05〜1%である。
防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン−1−オキサイド、ジンクピリジンチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩、アベシア社製プロクセルGXL等、好ましくはプロクセルGXL;等が挙げられる。
上記の各インクは、色素、水、必要に応じて水溶性有機溶剤及びインク調製剤等の各成分を混合することによって調製される。各成分は、各インクに対してそれぞれ独立に選択することも、同じものを選択することもできる。色素以外の成分については、各インク共に同じものを選択するのが好ましい。しかし、各インク中における各成分の含有量は、含有する色素の物性等に応じて個別に調整するのが好ましい。
上記の各インクは、少なくとも色素、及び水を含有する。また必要に応じて上記の水溶性有機溶剤、及びインク調整剤を含有することができる。
各インクの総質量中における色素、水溶性有機溶剤、及びインク調製剤の含有量は上記の通りであり、これらの成分以外の残部は水である。
上記の各インクは、上記の成分を混合し、溶液とすることにより得られる。インクジェット捺染用インクとしては、メンブランフィルター等で得られたインク溶液を濾過することにより、夾雑物を除いたインクとして使用するのが好ましい。メンブランフィルターの孔径は通常0.1μm〜1μm、好ましくは0.1μm〜0.5μmである。
上記の各インクの25℃における粘度は、E型粘度計にて測定したときに3〜20mPa・s;プレート法にて測定したときに20〜40mN/m;の各範囲内であるのが好ましい。インクの粘度は上記の範囲で、プリンタの吐出量;応答速度;インク液滴の飛行特性;及び、インクジェットヘッドの特性;等を考慮し、適切な値に調整することができる。
上記のインクジェット捺染方法は、上記イエローインク及びマゼンタインクの2色の水系インクをインクセットとして用い、少なくとも以下の工程A〜工程Cの3工程を順次行うことを含む、繊維のインクジェット捺染方法である。
[工程A]
各インクの液滴を記録信号に応じてそれぞれ吐出させ、繊維に付着させる工程。
[工程B]
工程Aにより繊維に付着させた各インクの液滴中の色素を、熱により繊維に固着させる工程。
[工程C]
繊維に残存する未固着の色素を洗浄する工程。
また、上記工程A〜工程Cの3工程に加えて、繊維に対して色素のにじみ防止等を目的とした前処理を施す工程を、上記工程Aの前にさらに含むことも可能であり、繊維の前処理工程は含む方が好ましい。
上記のインクジェット捺染方法に用いる繊維としては、ポリアミド繊維、及びポリアミド繊維を含有する混紡繊維から選択される繊維が好ましい。ポリアミド繊維としては、例えばシルク、ウール等の天然繊維;ナイロン等の合成ポリアミド繊維;等が挙げられる。混紡繊維としては、これらのポリアミド繊維を少なくとも含有し、他の繊維と混紡したものが挙げられる。
上記の繊維としては繊維の構造体も含まれ、上記の繊維から成る布帛等が好ましく挙げられる。
上記工程Aとしては、例えば、少なくとも上記イエローインク及びマゼンタインクが充填された容器(インクタンク、インクカートリッジ等ともいう)をインクジェットプリンタの所定の位置に装填し、記録信号に応じて該インクの液滴を吐出させて、繊維にインクを付着させる方法が挙げられる。
インクジェットプリンタには、例えば機械的振動を利用したピエゾ方式;加熱により生ずる泡を利用したバブルジェット(登録商標)方式;等を利用したものがある。上記インクジェット捺染方法は、いかなる方式のプリンタであっても使用が可能である。
上記の工程Bとしては、インクが付着した繊維を室温〜130℃に0.5〜30分程度放置して予備乾燥させた後、スチーミング処理を施して湿熱条件下に該繊維に色素を固着させる方法等が挙げられる。
スチーミング処理としては、湿度80〜100%、温度95〜105℃の温度下に、5〜20分置くことが好ましい。
上記の工程Cとしては、色素を固着させた後の繊維を、水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際して、界面活性剤を含有する水で洗浄することもできる。
上記工程Cを行った後、洗浄した繊維を通常50〜120℃で、5〜30分乾燥し、乾燥された染色物を得ることができる。
上記工程Aの前に行う繊維の前処理工程としては、1種類以上の糊材、及び前処理用のpH調整剤の両者を少なくとも含有する水溶液を繊維の処理液とし、予め工程Aを行う前の繊維に付与する工程が挙げられる。該繊維の処理液中には、さらにヒドロトロピー剤を含むのが好ましい。繊維の処理液中に含有する糊剤、前処理用のpH調整剤、及びヒドロトロピー剤等は、「前処理剤」等と呼称されることもある。
繊維の処理液を繊維に付与する方法としては、例えばパディング法が挙げられる。パディングの絞り率は40〜90%程度が好ましく、より好ましくは60〜80%程度である。
上記繊維の処理液が含有する糊剤としては、グアー、ローカストビーン等の天然ガム類;澱粉類;アルギン酸ソーダ、ふのり等の海藻類;ペクチン酸等の植物皮類;メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体;カルボキシメチル澱粉等の加工澱粉;シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム類;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊;等が挙げられる。これらの中ではグアー、ローカストビーン等の天然ガム類;シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム類;等が好ましい。
上記繊維の処理液が含有する前処理用のpH調整剤としては、水溶液とした際に酸性を示すものが好ましい。具体的には硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、及び酢酸アンモニウム等の性のアンモニウム塩が挙げられる。これらの中では、硫酸アンモニウムが好ましい。
上記繊維の処理液が含有するヒドロトロピー剤としては、尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、モノメチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素等の尿素又はチオ尿素等があげられる。これらの中では尿素が好ましい。
上記前処理剤は、それぞれの1種類を単独で用いることも、それぞれの2種類以上を併用することも可能であり、後者の方が好ましい。
上記繊維の処理液が含有する前処理剤の含有量は、例えば混紡繊維を用いるとき、混紡繊維の混紡比率等により一概に決めることは困難である。
その目安としては、繊維の処理液の総質量に対して、いずれも質量基準で糊剤が0.5〜5%、前処理用のpH調整剤が0.5〜5%、残部は水である。ヒドロトロピー剤をさらに含有するときは、同様に1〜20%であり、残部は水である。
また、繊維の処理液は酸性であることが好ましい。そのpHの範囲としては通常7以下、好ましくは5〜7である。
本発明のインクセットで染色された繊維は水堅牢度のみならず、洗濯堅牢度、汗耐光、耐光性等の堅牢度等の他の堅牢性試験、印捺濃度、彩度、色調、色再現域の広さ等の各種の性能においても優れる。
また、本発明のインクセットは、高粘度インクを必要とする工業用インクジェットヘッドが搭載されたプリンタでの、周波数値に係らない吐出性能を発揮することも可能である。
さらに、インクジェット捺染後に一定時間プリンタを放置し、再度吐出(捺染)を開始したときの吐出性も良好である。
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明はなんら限定されるものではない。
また、液の温度は内温を測定し、反応や塩析等の操作は特に断りのない限り、いずれも攪拌下で行った。
[インクジェット捺染用インクセットの調製]
下記表2に示した各成分を混合し、おおよそ1時間攪拌することにより、実施例1及び比較例1のそれぞについて、イエロー及びマゼンタの2色のインクセットを調製した。各インクセットを構成するインクは、0.45μmのメンブランフィルター(商品名:セルロースアセテート系濾紙、アドバンテック社製)で濾過することにより、試験用のインクジェット捺染用インクとした。また、インク溶液の調製に用いた「水」はイオン交換水であり、インク溶液のpHがpH8〜9になるように10%水酸化ナトリウム水溶液を加え、総量100部となるように水を加えて調整した。
下記表2中の略号は、以下の意味を表す。
AY184:C.I.Acid Red 184。
AY73:C.I.Acid Red 73。
AR52:C.I.Acid Red 52。
Figure 2016044258
[試験染布の調製]
グアー2部、硫酸アンモニウム2部、尿素5部、及び水91部を含む繊維の処理液を調製し、パッド法によりナイロン布(ナイロンタフタ)に前処理工程を行った。すなわち、ナイロン布を繊維の処理液に浸漬し、ゴムローラーにて余分な液を絞り落とした後、60℃にて乾燥した。
上記のようにして得たナイロン布に対して、実施例1のインクセットを使用して、インクジェットプリンタ(商品名:PIXUS ip4100、キヤノン社製)にてイエロー〜オレンジ〜マゼンタのベタ柄を、それぞれ100%、85%、70%、55%、40%、及び25%の6段階の階調でインクジェット捺染し、グラデーションの印捺物を得た。この印捺物を60〜80℃で予備乾燥後、湿度90%以上、100〜103℃で20分間スチーミング処理を行った。得られた印捺物を冷水で5分間洗浄した後、乾燥することにより試験染布を得た。この試験染布を「ナイロン染布1」とする。
実施例1のインクセットの代わりに、比較例1のインクセットを用いる以外は実施例1と同様にして、比較用の試験染布を得た。これらの比較用の試験染布を「ナイロン比較染布1」とする。実施例1のインクセットを用いて、ナイロン布に変えて絹布を使用したものを「絹染布1」、比較例1のインクセットを用いた絹の比較試験染布を「絹比較染布1」とする。
[発色および色相の確認]
上記のようにして得られた染色布について、目視で色相の確認をした。
なお、試験結果は以下A〜Cの3段階で評価した。
A:鮮やかなオレンジ色である。
B:オレンジ色である。
C:鮮やかではなく、オレンジ色でもない。
結果を下記表3に示す。
[水堅牢度試験]
各染布をJIS L 0846に記載の試験方法で試験した。試験には、東洋理化(株)製汗試験機(型番PS−V)を使用した。10cm×4cmのナイロン染色布の表面に10cm×4cmのナイロンの添付白布1枚を縫い付け、複合試験片とした。得られた複合試験片を室温で水に浸漬し、完全に濡らした。同様に、ナイロン染色布を絹染色布に変え、絹の添付白布を使用し、絹試験布1および絹比較染布1を用意した。複合試験片を水から取り出し、硬質プラスチック板2枚に挟み、汗試験機に取り付けて約12.5kPaの圧力をかけた。垂直位置に複合試験片を取り付けた汗試験機を、温度37度±2度の乾燥機に入れて、4時間保持した。処理後、汗試験機から複合試験片を取り離し、室温で乾燥させた。試験前後の各試験染布を、測色機を用いてCIEのL*、a*、b*を測定し、下記式を用いて算出した。色差ΔEは、数値の小さい方が試験前後で変退色の少ないことを意味し、優れた結果であることを示す。
ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)21/2
なお、上記式中のΔL*、Δa*及びΔb*は、ナイロン染布1、比較染布1について、それぞれL*、a*及びb*を測定した後、試験後のナイロン染布1、比較染布1の測定値から、ナイロン染布1、比較染布1の測定値を減じることにより、各ΔL*、Δa*及びΔb*を算出した。
測色機はGRETAG−MACBETH社製、商品名:SpectroEyeを用いた。
なお、試験結果は以下A〜Dの4段階で評価した。
A:ΔEが4.0未満。
B:ΔEが4.0以上で9.0未満。
C:ΔEが9.0以上で14.0未満。
D:ΔEが14.0以上。
結果を下記表3に示す。
Figure 2016044258
表3の結果から明らかなように、実施例1のサンプルは目視で鮮やかなオレンジ色を示したのに対し、比較例1のサンプルはDy値が低く、オレンジ色には染まらなかった。
また、ナイロン及び絹染布1の反射濃度ΔEは、イエロー及びマゼンタのいずれの色相においても各比較染布よりも小さく、水堅牢度が極めて優れることが確認された。その効果は、ナイロン染布1において特に顕著に観察された。
本発明のインクジェット捺染用インクセットは、特にイエロー〜オレンジ〜マゼンタの色相における水堅牢性が良好な染布の提供が可能であり、インクジェット捺染用インクセットとして極めて有用である。

Claims (10)

  1. イエローインク及びマゼンタインクの2色のインクを有するインクジェット捺染に用いる水系インクセットであって、該イエローインクが色素として少なくともC.I.Acid Yellow 184を含有し、該マゼンタインクが色素として少なくともC.I.Acid Red 52を含有する水系インクセット。
  2. イエローインク及びマゼンタインクのそれぞれの総質量中における色素の総含有量が、いずれも0.5〜20質量%である請求項1に記載の水系インクセット。
  3. イエローインクの総質量中における色素の総含有量が2〜8質量%であり、マゼンタインクの総質量中における色素の総含有量が2〜10質量%である、請求項1又は2に記載の水系インクセット。
  4. イエローインクが含有する色素の全てがC.I.Acid Yellow 184である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水系インクセット。
  5. マゼンタインクが含有する色素の全てがC.I.Acid Red 52である請求項1〜3のいずれか一項に記載の水系インクセット。
  6. 水溶性有機溶剤をさらに含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水系インクセット。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の水系インクセットをインクとして用い、少なくとも以下の工程A〜工程Cの3工程を順次行うことを含む、繊維のインクジェット捺染方法。
    工程A:各インクの液滴を記録信号に応じてそれぞれ吐出させ、繊維に付着させる工程。
    工程B:工程Aにより繊維に付着させた各インクの液滴中の色素を、熱により繊維に固着させる工程。
    工程C:繊維に残存する未固着の色素を洗浄する工程。
  8. 繊維が、ポリアミド繊維、及びポリアミド繊維を含有する混紡繊維から選択される繊維である請求項7に記載のインクジェット捺染方法。
  9. 請求項7又は8に記載のインクジェット捺染方法により染色された繊維。
  10. ポリアミド繊維、及びポリアミド繊維を含有する混紡繊維から選択される繊維の染色に用いる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の水系インクセット。
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