JP2016044200A - インクジェットインクおよびインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インクジェット捺染に好適に用いられるインクジェットインクを提供すること。【解決手段】本発明によるインクジェットインクは、分散染料と、分散剤と、水溶性有機溶剤と、水と、少なくとも1種の塩基とを含むインクジェットインクであって、分散剤が、カルボキシル基を有する高分子化合物を含み、水溶性有機溶剤の含有量が、インクジェットインクの全質量に対して、10質量%以上70質量%未満であり、少なくとも1種の塩基の25℃での蒸気圧が1.4Pa以下であって、かつ、少なくとも1種の塩基の25℃でのpKaが7.5以上8.6以下である、インクジェットインクである。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェットインクおよびインクジェット記録方法に関する。
インクジェットインクを用いたインクジェット方式による画像の印刷方法は、インクの微小液滴をインクジェット記録ヘッド(以下、単に「記録ヘッド」ともいう。)より吐出させ、印刷対象となる記録媒体に着弾させて行う方法である。インクジェット方式は、その機構が比較的簡便、安価で、かつ高精細で高品位な画像を形成できることが利点である。このインクジェット方式の利点を生かして、インクジェット方式により布帛へ画像形成を行う、いわゆるインクジェット捺染について開発が進められている。インクジェット捺染では、布帛に前処理剤を付与し、前処理剤が付与された布帛にインクジェットインクの液滴を吐出し、布帛に着弾した染料を繊維に定着させて発色させ、布帛へ染着できなかった染料や前処理剤等を除去することによって、画像が形成される。
インクジェット捺染方法に適用可能なインクジェットインクとして、水性のインクジェットインクが挙げられる。水性のインクジェットインクとしては種々のものが知られている。
例えば、特許文献1には、分散顔料粒子、有機アミンの酸性塩、および付加的な遊離有機アミン(ただし、該有機アミンの酸性塩と該付加的な遊離有機アミンは、緩衝化したpHが8よりも大きくなり、25℃での抵抗率が500オーム-cm未満となうような濃度と相対的比率で存在し、該有機アミンの酸性塩を形成するのに使用される酸の当量に対する有機アミンの当量の比は、1.1:1.0よりも高い。)を含有する、連続インクジェット印刷用の水性インクジェット用インク組成物が開示されている。特許文献1に記載された発明は、優れた抵抗安定性、優れた空気分散インク補充安定性及び優れた伝導性インクpH安定性を有する水性インクジェット用インク組成物を提供することができる。
また、特許文献2には、アニオン性着色剤を含有する水系インクと液体組成物を含むインクジェット記録用インクセットであって、該液体組成物が、カチオン性ポリマー、水溶性有機溶媒、酸解離指数(pKa)が2〜6の酸、及び塩基解離指数(pKb)が3〜8の有機アミンを含有し、pKaが2未満の酸を含有しないか又は0.5重量%未満含有し、そのpHが7〜9である、インクジェット記録用インクセットが開示されている。特許文献2に記載された発明は、印字濃度に優れ、裏抜けが少ない高品質の印字物を提供し得るインクセット、並びにインクジェットプリントヘッドの材質適合性に優れ、保存時のpHの変化も少ない該インクセットに含まれる液体組成物を提供することができる。
特表2012−528229号公報 特開2011−126031号公報
特許文献1に記載された発明である連続インクジェット印刷用の水性インクジェット用インク組成物に含まれる色材は顔料に限定されている。しかし、インクジェット捺染の分野では、色材として分散染料が用いられることも多い。色材として分散染料が用いられるとき、分散染料をインク内で分散させるために、分散剤をインクに含有させることがある。分散剤としては様々な種類のものが知られているが、中でもカルボキシル基を有するアニオン性の分散剤が用いられることがある。ただし、カルボキシル基は酸性の官能基であるため、通常は中性からアルカリ性であるインクに分散剤を溶解しやすくするため、インクに塩基を含有させる必要がある。
本発明者らの研究により、従来のインクでは、この塩基として揮発性の高いものが用いられているため、インクが乾燥する際に塩基が空気中に蒸散してしまい、分散剤が再溶解しにくくなることが判明した。そのため、インクジェット記録装置で画像を形成する際に、記録ヘッド内や装置のインク流路内に残留したインクが乾燥して分散剤が析出すると、析出した分散剤は次回以降の画像形成時に流れてきたインクに再溶解されにくく、記録ヘッド内またはインク流路内に残存してしまう。この析出した分散剤はインクの吐出または流れを妨げるため、特にインクを連続して吐出する際などに、析出した分散剤によるインクの吐出不良(ノズル欠)が生じることがある。また、析出した分散剤が記録ヘッドの吐出口の一部をふさいだり、記録ヘッドを腐食させたりすると、インクが記録ヘッドから正常に吐出されず、記録媒体にインクが付着しない部分(白スジ)が発生することがある。白スジは、長期間にわたってインクを吐出し続ける際に生じやすい。
インクジェット記録装置では、このような残存した異物を除去するため、水やクリーニング液を流して記録ヘッド内またはインク流路内のクリーニングを行うことがあるが、本発明者らの研究によれば、析出した分散剤は、クリーニングでも完全には除去できなかった。
また、本発明者らの研究により、インクの保存中等に塩基が揮発すると、インクのpHが下がるため、インクにより記録ヘッドが腐食する可能性があることも判明した。pHの下がったインクにより記録ヘッドが腐食すると、ノズル欠や、インクが記録ヘッドから正常に吐出されないことによる白スジが発生することがある。
一方で、インクジェット捺染に用いるインクには、画像形成の際に良好に発色することも求められる。
すなわち、本発明は、インクを連続して吐出してもノズル欠が発生しにくく、長期間使用しても白スジが発生しにくいようなインクおよびそのようなインクを用いたインクジェット記録方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、分散剤が析出しにくく、またクリーニングによりノズル欠の発生を防げるようなインクおよびそのようなインクを用いたインクジェット記録方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、インクジェット捺染に用いた場合に、従来のインクと同様の発色性を有するインクおよびそのようなインクを用いたインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための具体的な手段は以下の第(1)項〜第(7)項である。
(1)分散染料と、分散剤と、水溶性有機溶剤と、水と、少なくとも1種の塩基とを含むインクジェットインクであって、該分散剤がカルボキシル基を有する高分子化合物を含み、該水溶性有機溶剤の含有量が該インクジェットインクの全質量に対して10質量%以上70質量%未満であり、該少なくとも1種の塩基の25℃での蒸気圧が1.4Pa以下であって、かつ、該少なくとも1種の塩基の25℃でのpKaが7.5以上8.6以下である、インクジェットインク。
(2)前記インクジェットインクの25℃でのpHが7以上9以下である、第(1)項に記載のインクジェットインク。
(3)前記インクジェットインク中の前記少なくとも1種の塩基の量が、前記分散剤が有する前記カルボキシル基に対して、モル当量で1.5倍以上である、第(1)項又は第(2)項に記載のインクジェットインク。
(4)前記水溶性有機溶剤が、グリコールエーテル類を含む、第(1)項〜第(3)項のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
(5)シリコーン系の界面活性剤を更に含む、第(1)項〜第(4)項のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
(6)第(1)項〜第(5)項のいずれか1項に記載のインクジェットインクの液滴を記録ヘッドから吐出させて記録媒体上に付着させる工程と、該記録媒体上に付着した該液滴を該記録媒体に定着させる工程とを含む、インクジェット記録方法。
(7)前記記録媒体は布帛であり、前記方法は、前記付着させる工程の前に、布帛に前処理剤を付与する工程を含み、前記定着させる工程の後に、布帛へ染着できなかった前記分散染料または前記前処理剤を除去する工程を含む、第(6)項に記載のインクジェット記録方法。
本発明によれば、インクを連続して吐出してもノズル欠が発生しにくく、長期間使用しても白スジが発生しにくいようなインクおよびそのようなインクを用いたインクジェット記録方法が提供される。さらに、本発明によれば、分散剤が析出しにくく、またクリーニングによりノズル欠の発生を防げるようなインクおよびそのようなインクを用いたインクジェット記録方法が提供される。さらに、本発明によれば、インクジェット捺染に用いた場合に、従来のインクと同様の発色性を有するインクおよびそのようなインクを用いたインクジェット記録方法が提供される。
図1は、インクジェット捺染用のインクジェット記録装置の構成の一例を示す部分概略図である。 図2は、実施例1(インク1)及び比較例3(インク13)の滴定曲線のシミュレーション結果を示す図である。
本発明について、以下に詳細に説明をする。
1.インクジェットインク
本発明によるインクジェットインクは、分散染料と、分散剤と、水溶性有機溶剤と、水と、少なくとも1種の塩基とを含むインクジェットインクであって、分散剤がカルボキシル基を有する高分子化合物を含み、水溶性有機溶剤の含有量がインクジェットインクの全質量に対して、0質量%以上70質量%未満であり、少なくとも1種の塩基の25℃での蒸気圧が1.4Pa以下であって、かつ、少なくとも1種の塩基の25℃でのpKa(以下、単に「pKa」ともいう。)が7.5以上8.6以下である、インクジェットインクである。
一般的に、分散剤等のカルボキシル基を有する樹脂を中和するため、インクジェットインクに塩基が添加されるが、分散剤に通常用いられている塩基では、インク乾燥時に塩基も揮発してしまい、樹脂が析出してしまうことがある。この析出物(分散剤等の樹脂成分)は、塩基が揮発してなくなったため、水に再溶解しにくい。特に、分散染料を用いた場合、乾燥過程で、樹脂の析出に加え、結晶化した染料同士の凝集も生じるため、インクジェットヘッドのノズル近傍で乾燥が生じると、不吐出または射出曲りによるノズル欠または白スジの原因となり、これらの回復も困難となる。
そこで、本発明では、インクジェットインクに、揮発性が低い塩基、すなわち、25℃での蒸気圧が1.4Pa以下である少なくとも1種の塩基を含有させることで、インクが乾燥しても塩基を揮発しにくくしている。これにより、分散剤が析出しにくく、析出したとしても、塩基が残っているためインクジェットインクへの再溶解性に優れるので、連続射出性が良好となる。また、析出した分散剤は水やクリーニング液にも再溶解しやすいので、クリーニングによってノズル欠の発生を抑えることも可能になる。
また、インクの保存中等に塩基が揮発すると、インクのpHが下がり、pHが下がったインクにより記録ヘッドが腐食する可能性がある。このようにして記録ヘッドが腐食すると、ノズル欠や、インクが記録ヘッドから正常に吐出されないことによる白スジが発生することがある。
これに対し、本発明によるインクジェットインクに含有させる上記少なくとも1種の塩基は揮発しにくいため、揮発によるpHの変化が生じにくい。ただし、インク中に含まれる他の成分が失われること、例えば上記少なくとも1種の塩基以外の塩基が揮発することにより、インクのpHが変化してしまい、記録ヘッドが腐食することがある。記録ヘッドが腐食すると、ノズル欠や画像の白スジが生じやすい。しかし、本発明によるインクジェットインクに含有させる上記少なくとも1種の塩基は、pKaが特定の値、すなわち、7.5以上8.6以下であるため、インクジェットインクが通常有する中性からアルカリ性付近のpH範囲において、緩衝作用によりインクジェットインクのpHを安定に保つことができる。これにより、インクジェットインクのpH変動が抑制されるため、インクジェットヘッドの腐食による劣化が少なく、ノズル欠や画像の白スジが起こりにくい。
また、本発明によるインクジェットインクでは、インクが中性付近からアルカリ性のときに緩衝能を有する上記少なくとも1種の塩基が添加されることで、乾燥時のインクのpH変動が抑制されるため、インクの性能変化が生じにくく、安定した画像形成が可能となる。
本発明のインクジェットインクのpHは、25℃において、7以上9以下であることが好ましい。本発明のインクジェットインクのpHは、例えば、東亜ディーケーケー株式会社のデジタルpHメーター「HM−30S」を使用して測定することができる。
なお、本発明のインクジェットインクを用いて捺染を行った後、少なくとも1種の塩基は洗浄工程によって除去することができるため、画像を形成した後にインクが水等に再溶解することによる画像の崩れは生じにくい。
さらに、本発明によるインクジェットインクは発色性にも優れる。
<分散染料>
本発明のインクジェットインクに含まれる分散染料は、本発明の目的を達成し、本発明の効果を奏すれば特に制限されないが、分散染料の例として以下のものが挙げられる。
分散染料の例として、
C.I.Disperse Yellow:3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232、
C.I.Disperse Orange:1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142、
C.I.Disperse Red:1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328、337、343
C.I.Disperse Violet:1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77、
C.I.Disperse Green9、
C.I.Disperse Brown:1、2、4、9、13、19
C.I.Disperse Blue:3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、77、79、79:1、79:2、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、281、284、285、287、288、291、291:1、293、295、297、301、315、330、333、373
C.I.Disperse Black1、3、10、24、
などが挙げられる。なかでも、経時による染料の分散安定性をより良好に保つことができる点で、分散染料は、C.I.Disperse Blue60を使用したインクで用いることが特に好ましい。
分散染料は、本発明の水系のインクジェットインク中で安定な分散状態を保つために、分散染料に各種の加工を施した分散体としうる。分散体は、分散染料が水系分散媒中で安定に分散状態を維持できるものであればよく、後述する、カルボキシル基を有する高分子化合物を含む分散剤で分散染料を分散可能に処理したものである。
分散染料の含有量は、本発明のインクジェットインク全体の質量に対して0.3質量%以上20質量%以下とすることが好ましく、0.5質量%以上10質量%未満とすることがより好ましい。分散染料の含有量が一定以上であると、得られる画像濃度を高めうる。一方、分散染料の含有量が一定以下であると、インクの粘度が過度に上昇せず、吐出安定性が損なわれにくい。
<分散剤>
本発明のインクジェットインクに含まれる分散剤は、カルボキシル基を有する高分子化合物を含む。この分散剤は、分散染料を水中に分散させやすくするための分散樹脂であり、分散染料などを記録媒体に定着させるためのバインダー樹脂として機能するものであってもよい。
分散樹脂としては、カルボキシル基を有する高分子化合物を含めば、特に制限されないが、分散樹脂は、水溶性樹脂であることが好ましく、疎水性ユニットと親水性ユニットとをバランスよく有することがより好ましい。親水性ユニットはカルボキシル基を有することが好ましく、カルボキシル基を有する親水性ユニットは、塩基で中和されていることが好ましい。親水性ユニットは、本発明のインクジェットインクに含まれる上記少なくとも1種の塩基で中和されていることが好ましいが、本発明のインクジェットインクに含まれうる他の塩基で中和されていてもよい。また、分散樹脂の親水性ユニットにはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはその共重合体等の親水性部位を含むことも好ましい。
そのような水溶性樹脂の例としては、アクリル系樹脂が挙げられる。本発明におけるアクリル系樹脂とは、(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸をモノマー成分とする樹脂であり;その例には、スチレン−アクリル系樹脂、アクリル−ウレタン系樹脂、アクリル−エチレンオキシド/プロピレンオキシド系樹脂、アクリロニトリル−アクリル系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系樹脂なども含まれる。これらのなかでも、疎水性モノマー単位と親水性モノマー単位とを有する樹脂が好ましい。
疎水性モノマー単位の例には、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸アルキルエステル(好ましくはアクリル酸C1−C12アルキルエステル);メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸アルキルエステル(好ましくはメタクリル酸C1−C12アルキルエステル);スチレン、α−メチルスチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;酢酸ビニル、酪酸ビニル、および安息香酸ビニルなどに由来する構成単位が含まれる。なかでも、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルおよび芳香族ビニル化合物に由来する構成単位が好ましい。疎水性モノマー単位は、一種類の疎水性モノマーから構成されてもよいし、二種類以上の疎水性モノマーを組み合わせて構成してもよい。
親水性モノマー単位の例には、アクリル酸、メタクリル酸などのα,β−不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和基含有ジカルボン酸またはそのモノエステル;酢酸ビニル;アクリルアミドなどに由来する構成単位が含まれる。なかでも、アクリル酸、メタクリル酸などのα,β−不飽和酸に由来する構成単位が好ましい。親水性モノマーは、一種類の親水性モノマーから構成されてもよいし、二種類以上の親水性モノマーを組み合わせて構成してもよい。
疎水性モノマー単位と親水性モノマー単位とを有する樹脂の具体例には、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等が含まれる。市販品の例には、JONCRYL586(BASF社製)、JONCRYL67(BASF社製)、JONCRYL819(BASF社製)などのJONCRYLシリーズが含まれる。
なかでも、疎水性モノマー単位と親水性モノマー単位とを有する樹脂は、少なくとも親水性モノマー単位としてアクリル酸に由来する構成単位またはメタクリル酸に由来する構成単位を有する樹脂であることが好ましい。
分散樹脂がアクリル酸やメタクリル酸などの酸性基含有モノマー由来の構成単位を有する場合、これらの酸性基は、部分的あるいは完全に、本発明のインクジェットインクに含まれる少なくとも1種の塩基で中和されていることが好ましい。
分散樹脂の酸価は、10mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、10mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることがより好ましい。分散樹脂の酸価が一定以上であると、水や水溶性有機溶剤に対する高い溶解性が得られやすい。一方、分散樹脂の酸価が一定以下であると、疎水性を有する色材粒子の表面との親和性が損なわれにくい。
分散樹脂の酸価とは、分散樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数(mgKOH/g)であり;JIS K 0070の酸価測定によって測定することができる。
JIS K 0070に準拠した酸価の測定は、以下の方法で行うことができる。即ち、樹脂10gを、300mlの三角フラスコに秤量し、エタノール:ベンゼン=1:2の混合溶媒を約50ml加えて樹脂を溶解させる。次いで、この溶液を、フェノールフタレイン指示薬を用いて、予め標定された0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定する。そして、滴定に用いた水酸化カリウムエタノール溶液の量から、下記計算式(1)で酸価(mgKOH/g)を求める。
樹脂が、エタノール:ベンゼン=1:2の混合溶媒約50mlに溶解しない場合は、エタノール50ml、あるいはエタノール/純水=1:1の混合溶媒約50mlのいずれか溶解するほうを用いて同様の滴定を行う。
計算式(1)
A=(B×f×5.611)/S
(式中、Aは樹脂の酸価(mgKOH/g)、Bは滴定に用いた0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、fは0.1mol/リットル水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、Sは樹脂の質量(g)、5.611は水酸化カリウムの式量の1/10の値(56.11/10)である)
分散樹脂の重量平均分子量は、3000以上30000以下であることが好ましく、7000以上20000以下であることがより好ましい。重量平均分子量が3000以上であると、色材の分散性を高める効果が得られやすいだけでなく、インクの記録媒体に対する定着能力も高めやすい。一方、重量平均分子量(Mw)が30000以下であると、インクの粘度を過度に上昇させることがなく、吐出安定性が損なわれにくい。
分散樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。測定条件は、以下の通りとしうる。
(測定条件)
溶媒 : テトラヒドロフラン
カラム : 東ソー製TSKgel G4000+2500+2000HXL
カラム温度: 40℃
注入量 : 100μl
検出器 : RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ : L6000(日立製作所(株)製)
流量 : 1.0ml/min
校正曲線 : 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13のサンプルによる校正曲線を使用する。13のサンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
分散樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−30℃以上100℃以下であることが好ましく、−20℃以上80℃以下であることがより好ましい。
分散樹脂の具体例には、JONCRYL67、同586、同819(以上、BASF社製、水溶性高分子化合物)、DISPERBYK−190(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等を挙げることができる。
分散樹脂の含有量は、インク全体に対して0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上6質量%以下であることがより好ましい。分散樹脂の含有量が0.5質量%以上であると、色材粒子の分散性を十分に高めうるだけでなく、バインダーとしても十分に機能しうる。即ち、インク着弾後の粘度上昇(流動性低下)を速やかに実現し、インク混じりなどを抑制しうる。一方、分散樹脂の含有量が10質量%以下であると、インクの粘度が過度に上昇することなく、吐出安定性が損なわれにくい。
分散染料と分散樹脂との質量比は、分散染料/分散樹脂が100/150以上100/15以下であることが好ましい。分散樹脂が一定以上であると、色材粒子を良好に分散させやすい。分散樹脂が一定以下であると、インクの粘度が増大しすぎるおそれがない。画像の耐久性と、インクの連続吐出性(吐出安定性)を高める観点などから、100/100以上100/20以下であることがより好ましい。
<水溶性有機溶剤>
本発明のインクジェットインクには水溶性有機溶剤が含まれる。
水溶性有機溶剤の例には、
アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等);
多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等);
アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等);
アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等);
複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等);
スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等);
グリコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等);
1,2−アルカンジオール類(例えば、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール等)
等が挙げられる。これらは、一種類で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、水溶性有機溶剤は、グリコールエーテル類を含むことが好ましい。グリコールエーテル類を含むことで、インクジェットヘッドのクリーニング性を向上させることができる。また、グリコールエーテル類はインクの表面張力を下げて、布帛などの記録媒体への浸透性や濡れ性を高めうると考えられる。
水溶性有機溶剤の含有量は、インク全体の質量に対して10質量%以上70質量%未満であり、20質量%以上45質量%未満であることが好ましい。水溶性有機溶剤の含有量を一定以上とすることで、インクの保湿性が高まり、インクジェットヘッドのノズル面でインクが乾燥して、吐出が不安定になるのを抑制することができる。
そのうち、グリコールエーテル類の含有量は、インク全体の質量に対して0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上でありうる。グリコールエーテル類の含有量は、例えば10質量%以下でありうる。グリコールエーテル類の含有量が上記の範囲であれば、十分なヘッドのクリーニング性が得られる。
<塩基>
本発明のインクジェットインクには、少なくも1種の塩基が含まれる。少なくとも1種の塩基は、25℃での蒸気圧が1.4Pa以下である。蒸気圧の測定は、公知の一般的な方法でよく、例えば、静止法により蒸気圧を求めることができる。静止法による蒸気圧測定は、試料の固体と平衡にある蒸気の圧力を直接、あるいは間接的に測定する方法であり、測定器としては、種々のマノメーターを使用することができるほか、OECDガイドライン104に従って測定することもできる。
少なくとも1種の塩基は、pKaが7.5以上8.6以下であり、7.7以上8.2以下であることが好ましい。塩基のpKaとしては、各メーカーが公表している値や、「無機化学全書 錯塩(柴田 雄次ら、丸善、1959年)」などに記載の値を用いることができる。
本発明のインクジェットインクに含まれる少なくとも1種の塩基は、2種以上の塩基から構成されてもよい。少なくとも1種の塩基の例としては、アミン類(例えば、アルカノールアミン、アルキルアミン)及びアミノ酸等が挙げられ、アミン類としては沸点が200℃以上のアミン類が好ましい。アミン類の具体例としては、N−メチルジエタノールアミン(MDA(pKa8.5))、トリエタノールアミン(TEA(pKa7.7))、グリシルグリシン(Glygly(pKa8.2))、トリイソプロパノールアミン(TIPA(pKa8.1))等が挙げられる。
本発明のインクジェットインクが含有する上記少なくとも1種の塩基の量は特に限定されないが、分散剤が有するカルボキシル基のすべてを中和できる量の塩基を含有させることが好ましい。たとえば、本発明のインクジェットインクは、分散剤が有するカルボキシル基に対して、モル当量で等倍以上の上記少なくとも1種の塩基を含有することが好ましく、1.5倍以上の上記少なくとも1種の塩基を含有することがさらに好ましく、2倍以上の上記少なくとも1種の塩基を含有することが最も好ましい。
上記少なくとも1種の塩基の他に、25℃での蒸気圧が1.4Paより大きい塩基、pKaが7.5以上8.6以下の範囲外である塩基、アンモニア、アルカリ金属含有塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等の塩基が本発明のインクジェットインクに含まれてもよい。
<界面活性剤>
本発明のインクジェットインクには、界面活性剤が含まれてもよい。
界面活性剤の例には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、シリコーン系界面活性剤、またはフッ素系界面活性剤等が含まれ、特に布帛への発色のむらを少なくする観点からシリコーン系界面活性剤が好ましい。
好適に用いられるシリコーン系界面活性剤の市販品の例には、信越化学工業製のKF−351A、KF−354L、KF−355A、KF−642、KF−96シリーズや、ビッグケミー社製のBYK347、BYK348などが含まれる。また、アセチレングリコール類の市販品の例には、Safynol465等が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、インクの表面張力を25mN/m以上50mN/m以下とするように調整されることが好ましい。具体的には、インク全体の質量に対して0.0001質量%以上5質量%以下程度としうる。
<その他成分について>
本発明のインクジェットインクには、必要に応じて防腐剤、防黴剤などがさらに含有されてもよい。
防腐剤または防黴剤の例には、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL)などが含まれる。
<インクジェットインクの物性について>
本発明のインクジェットインクの25℃における粘度は、インクの吐出安定性を得る観点から、1mPa・s以上40mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上40mPa・s以下であることがより好ましく、5mPa・s以上20mPa・s以下であることがさらに好ましい。インクの粘度は、E型粘度計により、25℃、20rpmで測定することができる。
25℃におけるインクの表面張力は、25mN/m以上50mN/m以下であることが好ましい。表面張力が25mN/m未満である場合、布帛などの記録媒体に対するインクの濡れ性が高すぎるため、画像が滲みやすい。一方、表面張力が50mN/m超である場合、布帛などの記録媒体に対するインクの濡れ性が低下し、インクの浸透力が低下しやすい。
本発明のインクジェットインクは、任意の方法で製造でき、例えば水不溶性色材を分散剤で分散させて分散体を得る工程と、当該分散体を用いてインクを調製する工程とを経て製造されうる。
2.インクジェット記録方法
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクジェットインクの液滴を、記録ヘッドから吐出させて記録媒体上に付着させる工程と、当該記録媒体上に付着した液滴を、記録媒体に定着させる工程とを含む。
記録媒体の例には、普通紙、布帛、インクジェット専用紙、インクジェット光沢紙、ダンボール、木材、印刷本紙などのコート紙、樹脂基材(例えばポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの疎水性樹脂基材)、金属基材、ガラス基材、布帛などが含まれる。なかでも、布帛が好ましい。
布帛は、セルロース系繊維、アミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維、アクリル系繊維などを主体とするものを用いることができる。具体的には、木綿、麻、羊毛、絹、ビスコスレーヨン、キュプラレーヨン、ポリノジック、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、レーヨンポリウレタン、ポリエステル、アセテート等などの繊維からなる布帛を用いることができるが、特にポリエステル系繊維を主体とする布帛を用いることが好ましい。布帛を構成する繊維は、一種類であっても、二種類以上を組み合わせてもよい。布帛を構成する糸の太さは、例えば10d以上100d以下の範囲としうる。
例えば、記録媒体として布帛を用いる場合、本発明のインクジェット記録方法は、(1)布帛に前処理剤を付与する工程(前処理工程)と、(2)前処理剤が付与された布帛に本発明のインクジェットインクの液滴を吐出する工程(画像形成工程)と、(3)布帛に着弾した染料を繊維に定着させる工程(発色工程)と、(4)布帛へ染着できなかった染料や前処理剤を除去する工程(洗浄工程)を含み;必要に応じて(5)洗浄された布帛を乾燥する工程(乾燥工程)をさらに含んでもよい。
<前処理工程>
前処理工程は、布帛上でのインクの滲みを防止して鮮明な画像を得るために、予め布帛に前処理剤で処理する工程である。前処理の方法は、特に制限されず、布帛の材質やインクに適した方法を、従来公知の方法から適宜選択することができる。例えば、前処理剤を、パッド法、コーティング法、スプレー法などで布帛に付与する方法が挙げられる。前処理剤の付与量(絞り率)は、布帛の種類やその用途にもよるが、布帛の全質量に対して例えば0.2質量%以上90質量%以下としうる。
前処理剤は、水溶性高分子、水溶性金属塩、ポリカチオン化合物、界面活性剤および撥水剤から選ばれる少なくとも一以上、好ましくは水溶性高分子を含む。
水溶性高分子は、天然水溶性高分子または合成水溶性高分子でありうる。天然水溶性高分子の例には、トウモロコシ、小麦等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチセルロースなどのセルロース誘導体;アルギン酸ナトリウム、グアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、アラビアゴムなどの多糖類;ゼラチン、カゼイン、ケラチン等の蛋白質物質などが含まれる。合成水溶性高分子の例には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸系ポリマーなどが含まれる。
水溶性金属塩の例には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属などの無機塩または有機酸塩などが含まれる。ポリカチオン化合物の例には、各種の4級アンモニウム塩のポリマーまたはオリゴマー、ポリアミン塩などが含まれる。水溶性金属塩およびポリカチオン化合物のなかには、布帛の色調を変化させたり、耐光堅牢度を低下させたりするものがあるため、布帛の種類に応じて選択することが好ましい。
界面活性剤の例には、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系のものが含まれる。アニオン系界面活性剤の例には、高級アルコール硫酸エステル塩、ナフタレン誘導体のスルホン酸塩などが含まれ;カチオン系界面活性剤の例には、第4級アンモニウム塩などが含まれ;両性界面活性剤の例には、イミダゾリン誘導体などが含まれ;ノニオン系界面活性剤の例には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが含まれる。
撥水剤の例には、シリコン系撥水剤、フッ素系撥水剤およびワックス系撥水剤が含まれる。
これらの水溶性高分子や界面活性剤は、画像形成後、高温で発色させる際に、タール化などの汚れを生じさせないために、高温環境下でも安定なものであることが好ましい。また、水溶性高分子や界面活性剤は、画像形成後、高温で発色させた後の洗浄処理で、布帛から取り除きやすいものであることが好ましい。
前処理剤は、pH調整剤をさらに含むことが好ましい。pH調整剤は、酸であることが好ましく、その具体例にはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸などが含まれる。前処理剤にpH調整剤として酸を添加することで、より高濃度で鮮明な画像を形成できる。
前処理剤は、必要に応じて還元防止剤、キレート剤、防腐剤、柔軟剤などの任意成分をさらに含有してもよい。還元防止剤の例には、m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが含まれる。キレート剤の例には、アミノポリカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸塩、ポリカルボン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸などが含まれる。防腐剤は、インクの防腐剤として例示した防腐剤であってもよく、また同一であってもよい。
<画像形成工程>
画像形成工程は、記録ヘッドから本発明のインクジェットインクの液滴を布帛に向けて吐出して、発色前の画像を形成する工程である。複数の記録ヘッドを搭載するヘッドキャリッジに対して、布帛を相対移動させながら、インク液滴を吐出して、布帛に着弾させる。なお、前記各色のインク液滴は、別々に吐出しても、同時に吐出してもよい。発色前画像の滲みを抑制するなどの観点から、必要に応じて画像形成時に布帛を加熱してもよい。
<発色工程>
発色工程は、布帛中に十分に染着されていない発色反応前の画像中の染料を、布帛に染着させてインク本来の色相を発色させる工程である。その方法は、従来公知の方法でよく、例えば、スチーミング法、HTスチーミング法、HPスチーミング法、サーモフィクス法、アルカリパッドスチーム法、アルカリブロッチスチーム法、アルカリショック法、またはアルカリコールドフィックス法等が含まれ、捺染インクや布帛などにより適宜選択される。例えば、ポリエステル系繊維は、HTスチーマーで高温の蒸気を当てる場合は160℃以上180℃以下で5分以上10分以下の間処理されることが好ましく;HPスチーマーで高圧の蒸気の当てる場合は130℃以上140℃以下で約30分間処理されることが好ましい。セルロース系繊維は、95℃以上105℃以下で、5分以上15分以下の間処理されることが好ましく;絹や羊毛等のアミド系繊維は、95℃以上105℃以下で、20分以上40分以下の間処理されることが好ましい。なお、発色反応前の画像が形成された布帛は直ちに発色されてもよく、時間が経過してから発色されてもよい。
<洗浄工程>
洗浄工程は、布帛の発色工程後に布帛へ染着できなかった染料や前処理剤を除去する工程である。洗浄方法は、従来公知の水洗法やソーピング法等を用いることができ、インクジェットインクや布帛などの種類により適宜選択される。例えば、ポリエステル系繊維を主体とする布帛は、一般的には苛性ソーダ、界面活性剤およびハイドロサルファイトの混合液で洗浄処理されうる。
本発明のインクジェットインクに含まれる塩基は、洗浄工程で布帛から除去することができるため、画像を形成した後にインクが水等に再溶解することによる画像の崩れは生じにくい。
<乾燥工程>
乾燥工程は、前記洗浄工程の後に行われ、洗浄された布帛を乾燥させる工程である。乾燥方法は特に限定されないが、洗浄された布帛を絞ったり、干したり、または乾燥機(ヒートロール、アイロン等)を使用して乾燥させる。
<インクジェット記録装置>
以下において、図面を参照しながら前処理工程と画像形成工程を行う装置について説明するが、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置は、これに限定されない。
図1は、インクジェット記録装置の構成の一例を示す部分概略図である。インクジェット記録装置は、布帛を搬送する搬送手段2と、布帛にインクジェットインクを吐出する複数の記録ヘッド(不図示)を搭載するヘッドキャリッジ5と、布帛に温風を付与する温風付与手段6とを有する。
搬送手段2は、粘着性ベルト21と、サポートローラ22と、搬送ローラ23と、ニップローラ24とを備えている。粘着性ベルト21は、サポートローラ22と搬送ローラ23とに保持され、サポートローラ22と搬送ローラ23との間を周回している。ニップローラ24は、粘着性ベルト21を介して、搬送ローラ23に対向して配置されている。
温風付与手段6とヘッドキャリッジ5は、布帛Pの上方に配置される。温風付与手段6は、内部にファン6Aおよび発熱体6Bを備えており、温度制御できるようになっている。ヘッドキャリッジ5に搭載される記録ヘッドは、特に制限はなく、サーマル型、ピエゾ型のいずれであってもよい。記録ヘッドのノズル径は、10μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。ノズル径が10μm未満の場合は不溶物によるノズル目詰まりが生じやすいためである。一方、100μm超の場合は、形成画像の鮮鋭性が低くなるためである。また、吐出するインク液滴サイズは、4pl以上150pl以下であることが好ましく、5pl以上80pl以下であることがより好ましい。インク液滴サイズが4pl未満の場合は、吐出されたインク液滴がヘッド近傍の気流の影響を受けやすいためである。一方、150pl超の場合は、形成画像の粒状感が目立つためである。
本発明に適用可能なインクジェット記録装置は、設定された画像形成条件に従って、各色インクの吐出を制御するインク制御部(不図示)を備えていてもよい。
搬送ローラ23が駆動すると、粘着性ベルト21の上面に配置された布帛Pがニップローラ24下面に搬送される。布帛Pは、粘着性ベルト21とニップローラ24により加圧されて、粘着性ベルト21に固定される。粘着性ベルト21に固定された布帛Pは、ヘッドキャリッジ5の下方に搬送される。ヘッドキャリッジ5に搭載される複数の記録ヘッドは、本発明のインクジェットインクのインク液滴を吐出し、前処理剤が付与された布帛の一定領域(着弾可能領域)に着弾させ、画像を形成する。次いで、温風付与手段6から温度制御可能な風または温風を吹き付けて、布帛Pに形成された画像を乾燥させる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を表す。
<インク材料>
(分散染料)
C.I.Disperse Blue 60
(分散剤)
J819:JONCRYL819(BASF社製、酸価75mgKOH/g、重量平均分子量14500、Tg57℃)
(25℃での蒸気圧が1.4Pa以下であって、かつ、pKaが7.5以上8.6以下である塩基(塩基1))
N−メチルジエタノールアミン(MDA(pKa8.5)日本乳化剤株式会社製)
トリエタノールアミン(TEA(pKa7.7))
グリシルグリシン(Glygly(pKa8.2))
トリイソプロパノールアミン(TIPA(pKa8.1)ダウ・ケミカル社製)
(上記以外の塩基(塩基2))
NaOH
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP(pKa9.8))
塩基1及び塩基2の25℃での蒸気圧およびpKaを表1に示す。
Figure 2016044200
(水溶性有機溶剤)
EG:エチレングリコール
Gly:グリセリン
DPGME:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
DPGPE:ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル
(界面活性剤)
Safynol465(アセチレンジオールにエチレンオキサイドを65%付加したもの;エアープロダクツ社製)
KF−351A(信越化学工業製)
BYK−347(ビッグケミー社製)
(水)
イオン交換水
分散剤の酸価と重量平均分子量は、それぞれ以下の方法で測定した。
(酸価)
酸価は、JISのK0070に準拠して、以下の方法で測定した。
樹脂10gを、300mlの三角フラスコに秤量し、エタノール:ベンゼン=1:2の混合溶媒を約50ml加えて樹脂を溶解させた。次いで、この溶液を、フェノールフタレイン指示薬を用いて、予め標定された0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液で滴定した。そして、滴定に用いた水酸化カリウムエタノール溶液の量から、下記計算式(1)で酸価(mgKOH/g)を求めた。
計算式(1)
A=(B×f×5.611)/S
(式中、Aは樹脂の酸価(mgKOH/g)、Bは滴定に用いた0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)、fは0.1mol/リットル水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、Sは樹脂の質量(g)、5.611は水酸化カリウムの式量の1/10の値(56.11/10)である)
(重量平均分子量)
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した。測定条件は以下の通りとした。
(測定条件)
溶媒 : テトラヒドロフラン
カラム : 東ソー製TSKgel G4000+2500+2000HXL
カラム温度: 40℃
注入量 : 100μl
検出器 : RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ : L6000(日立製作所(株)製)
流量 : 1.0ml/min
校正曲線 : 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13のサンプルによる校正曲線を使用した。13のサンプルは、ほぼ等間隔に用いた。
<インクの調製>
(分散液1の調製)
イオン交換水77.55質量%に分散剤としてJONCRYL819を20質量%、ジメチルアミノエタノール(DMAE(pKa9.87))2.45質量%を加え、60℃に加熱しながら攪拌し、JONCRYL819の分散剤水溶液を得た。この分散剤水溶液30質量%をイオン交換水35質量%に加え、これにエチレングリコール10質量%とグリセリン5質量%、をさらに加えて混合した。この溶液にC.I.Disperse Blue 60を20質量%添加し、プレミックスした後、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、分散液1を得た。
<実施例1>
(インク1の調製)
上記調製した分散液1を47.5質量%、塩基1としてMDAを0.65質量%、Safynol465を1質量%、防黴剤としてプロキセルGXL(ゼネカ製)を0.2質量%、水溶性有機溶剤としてエチレングリコールとグリセリンを、分散液1に含まれる分と合わせてそれぞれ35質量%と5質量%となるように添加し、全体が100質量%となるようにイオン交換水をさらに加えて、攪拌した。得られた溶液を1μmのフィルターでろ過して、インク1を得た。
<実施例2〜10、比較例1〜3>
インク2〜13の調製
塩基1、塩基2、水溶性有機溶剤、界面活性の種類および添加量を表2に示されるように変更した以外は実施例1と同様にしてインク2〜13を調製した。なお、各実施例および比較例において、表2には示さないが、防黴剤であるプロキセルGXLをすべてのインクに0.2質量%添加した。
インク1〜13の25℃におけるpHは、東亜ディーケーケー株式会社のデジタルpHメーター「HM−30S」を使用して測定した。
調製したインク1〜13の組成及びpHを表2に示す。
Figure 2016044200
得られたインク1〜13の、連続吐出性、ヘッド長期耐久性、析出性、クリーニング性及び発色性を、以下の方法で評価した。
<連続吐出性>
(前処理工程)
まず、ポリエステル布帛を用意し、下記の前処理剤を、絞り率(または付着量)が80質量%となるように施した後、60℃で乾燥させた。前処理剤は、アルギン酸ナトリウムを2.5質量%(株式会社キミカ製 アルギテックスLL)、クエン酸を0.2質量%、m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.5質量%およびイオン交換水を96.8質量%を含むものを用いた。
(画像形成工程)
ノズル口径22μm、ノズル数512、最小液適量14pl、ノズル密度180dpi(なお、dpiは2.54cm当たりのドット数を表す)のヘッドを搭載したプリンター(コニカミノルタ社製、ナッセンジャーVII)を用いて、前処理したポリエステル布帛に1時間連続して、A4サイズのベタ画像を印刷した。その印刷が終了した後に、ノズルチェックパターンを印刷し、ノズル欠の個数を確認し、下記の評価基準に従って評価した。
◎:ノズル欠なし
○:ノズル欠1個
△:ノズル欠2個以上5個以下
×:ノズル欠が6個以上
<ヘッド長期耐久性>
コニカミノルタ製のインクジェットヘッド(HA−1024)を15個用意し、インク1〜13をそれぞれのヘッドに充填しキャップをし、その状態で40℃で保存した。このインクジェットヘッドを週に1回記録装置に組み込んで前記画像形成を3ヶ月間行った。次いで、3ヶ月経過後に形成した画像を評価することにより、インクジェットヘッドの長期耐久性を判定した。
○:3ヶ月経過後の画像と初期の画像は殆ど同一であり、インクジェットヘッドの劣化は殆ど生じていない
△:3ヶ月経過後の画像にわずかな白スジが発生しており、部分的ではあるがインクジ
ェットヘッドの劣化が見られる
×:3ヶ月経過後の画像は白スジが多発しており、インクジェットヘッドが大きく劣化
している。
<析出性>
φ5cmのシャーレにインク1〜13をそれぞれ、10g入れ、ふたをせずに室温で放置し、以下の評価基準で評価した。
◎:7日以上放置しても析出が見られない
○:3日以上放置しても析出が見られない
△:3日以上放置すると小さな粒が数個見られる
×:3日以内に明らかに析出が見られる。
<クリーニング性>
(ヘッドクリーニング液の調製)
消泡剤:シリコーン系消泡剤、東レダウコーニング社製、FSアンチフォーム92 0.30質量%
防黴剤:アーチケミカル社製、プロキセルGXL−S 0.10質量%
イオン交換水(総量を100質量%とするに必要な量) 99.60質量%
上記各添加剤を混合、攪拌して、ヘッドクリーニング液を調製した。
(クリーニング機構を有するインクジェット記録装置)
クリーニング機構を有するインクジェット記録装置(コニカミノルタ社製、ナッセンジャーVII)を用い、記録ヘッドとしてはコニカミノルタ製のインクジェットヘッド(HA−1024)を装備し、インク1〜13を用いた。
(インク連続吐出及びクリーニング操作)
上記インクジェット記録装置に、インク1〜13を装填し、540dpi×720dpiの解像度、駆動電圧12.4Vの条件で、全ノズル(512ノズル)から連続30分間射出し、その後10分間休止した。この作業を1日に12回繰り返して行った。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す。
次いで、1日当たり12回の出射を行った後、クリーニング機構を用いて各ヘッドクリーニング液を用いて、記録ヘッドのクリーニングを行った。
上記12回の出射とクリーニングとを1日で行い、この操作を連続して7日間行った。
(クリーニング性の評価)
上記方法に従って、1日当たり12回の出射及びクリーニング操作を連続7日間行った後、記録ヘッド(512ノズル)からインク1〜13を540dpi×720dpiの解像度、駆動電圧12.4Vの条件で吐出したとき、ノズル欠を起こしているか否か、下記の評価基準で評価をした。
◎:ノズル面がきれいで吐出欠がない
○:ノズル面にわずかに付着物がみられるが吐出欠はない
△:ノズル欠が1個以上5個未満のノズルで発生する
×:ノズル欠が5個以上のノズル以上発生する
<発色性>
(前処理工程)
まず、ポリエステル布帛を用意し、下記の前処理剤を、絞り率(または付着量)が80質量%となるように施した後、60℃で乾燥させた。前処理剤は、アルギン酸ナトリウムを2.5質量%(株式会社キミカ製 アルギテックスLL)、m−ニトロベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.5質量%および残量はイオン交換水を含むものを用いた。
(画像形成工程)
インクジェットプリンターとして、ナッセンジャーVII(コニカミノルタ社製)を用いて、前処理したポリエステル布帛にベタ画像をプリントした。
(発色性の評価)
前記各ベタ画像を、HTスチーマーHT−3型(辻井染機工業製)にて、175℃で4分間と7分間スチーミングを行った後(発色工程);80℃での還元洗浄を含む洗浄を行い(洗浄工程)、乾燥させた。得られたベタ画像を目視観察し、下記の評価基準に基づいて発色性を評価した。
◎: スチーミングの時間が4分間と7分間の画像で色が変わらない
○:3分間の画像の方が7分間に比べてやや濃度が薄い
△:3分間の画像の方が7分間に比べて明らかに濃度が薄い
×:3分間の画像の方が7分間に比べて非常に濃度が薄い
実施例1〜10及び比較例1〜3(インク1〜13)の評価結果を表3に示す。
Figure 2016044200
(インクの滴定)
インク1(実施例1)及びインク13(比較例3)のそれぞれに対して、水酸化ナトリウム水溶液で滴定しながら、東亜ディーケーケー株式会社のデジタルpHメーター「HM−30S」を使用して25℃でのpHを測定するという条件で、インク1(実施例1)及びインク13(比較例3)のそれぞれの滴定曲線をシミュレーションした。インク1(実施例1)及びインク13(比較例3)のそれぞれの滴定曲線のシミュレーション結果を図2に示す。
(結果及び考察)
表3から明らかなように、実施例1〜10(インク1〜10)は、比較例1〜3(インク11〜13)に対して、良好な連続吐出性(ノズル欠の発生しにくさ)、ヘッド長期耐久性(白スジの発生しにくさ)、析出性(析出のしにくさ)、クリーニング性を有し、発色性については、実施例1〜10(インク1〜10)と、比較例1〜3(インク11〜13)とは同等の性能を有した。実施例2〜10(インク2〜10)は、インクのpHが7以上9以下であるため、ヘッドが腐食しにくく、ヘッド長期耐久性が良好であった。実施例4〜10(インク4〜10)は、分散剤が有する前記カルボキシル基に対してモル当量で1.5倍以上の塩基をインクが含有するため、インクを保存しても分散剤が析出しにくかった。実施例6〜10(インク6〜10)は、水溶性有機溶媒がグリコールエーテル類を含むため、クリーニング性が良好であった。実施例8〜10(インク8〜10)は、シリコーン系の界面活性剤をインクが含むため、発色性が良好であった。
また、図2の滴定曲線の結果より、実施例1(インク1)は、比較例3(インク13)とは異なり、緩衝能を有していた。
本発明のインクジェットインクは、記録媒体、特には布帛への画像形成に好適に用いられるインクジェットインクである。
P 布帛
2 搬送手段
5 ヘッドキャリッジ
6 温風付与手段
6A ファン
6B 発熱体
21 粘着性ベルト
22 サポートローラ
23 搬送ローラ
24 ニップローラ

Claims (7)

  1. 分散染料と、分散剤と、水溶性有機溶剤と、水と、少なくとも1種の塩基とを含むインクジェットインクであって、
    該分散剤がカルボキシル基を有する高分子化合物を含み、
    該水溶性有機溶剤の含有量が該インクジェットインクの全質量に対して10質量%以上70質量%未満であり、
    該少なくとも1種の塩基の25℃での蒸気圧が1.4Pa以下であって、かつ、該少なくとも1種の塩基の25℃でのpKaが7.5以上8.6以下である、
    インクジェットインク。
  2. 前記インクジェットインクの25℃でのpHが7以上9以下である、請求項1に記載のインクジェットインク。
  3. 前記インクジェットインク中の前記少なくとも1種の塩基の量が、前記分散剤が有する前記カルボキシル基に対して、モル当量で1.5倍以上である、請求項1又は2に記載のインクジェットインク。
  4. 前記水溶性有機溶剤が、グリコールエーテル類を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  5. シリコーン系の界面活性剤を更に含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインクの液滴を記録ヘッドから吐出させて記録媒体上に付着させる工程と、該記録媒体上に付着した該液滴を該記録媒体に定着させる工程とを含む、インクジェット記録方法。
  7. 前記記録媒体は布帛であり、
    前記方法は、
    前記付着させる工程の前に、布帛に前処理剤を付与する工程を含み、
    前記定着させる工程の後に、布帛へ染着できなかった前記分散染料または前記前処理剤を除去する工程を含む、請求項6に記載のインクジェット記録方法。



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