JP2016043299A - アルミニウム酸化物膜塗布形成用組成物、アルミニウム酸化物膜を有する物品の製造方法、及びアルミニウム酸化物膜を有する物品 - Google Patents

アルミニウム酸化物膜塗布形成用組成物、アルミニウム酸化物膜を有する物品の製造方法、及びアルミニウム酸化物膜を有する物品 Download PDF

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Abstract

【課題】密着性が優れたアルミニウム酸化物膜を得ることが可能な、アルミニウム酸化物膜の製造するための方法およびこの方法に用いることができる膜形成用組成物を提供。【解決手段】(A)一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物またはその部分加水分解物(有機アルミニウム化合物に対してモル比で0.7以下の水での)の有機溶媒溶液を、基材表面に0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下、噴霧塗布して塗布膜を形成する工程、(B)塗布膜を形成した基材を0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下、400℃以下の温度で加熱して、塗布膜からアルミニウム酸化物膜を形成する工程、を含むアルミニウム酸化物膜を有する物品の製造方法。(R1は水素、炭素数1〜4のアルキル基、R2、R3は水素、炭素数1〜4のアルキル基などを表す。)【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウム酸化物膜塗布形成用組成物、アルミニウム酸化物膜を有する物品の製造方法、及びアルミニウム酸化物膜を有する物品に関する。本発明のアルミニウム酸化物膜塗布形成用組成物は、基材への密着性が優れたアルミニウム酸化物膜を形成することができる組成物である。
アルミニウム酸化物は、強度、高耐熱性、高熱伝導度、低熱膨張率、絶縁性、緻密性などにおいて優れた特性を有することから、工業製品の各種用途に幅広く使用されている。
アルミニウム酸化物は、ナノ粒子、粉体、フィラー、板状、棒状等の形状を有するものとして、研磨材料、耐火材料、耐熱材料、絶縁物、放熱材料に供されている。さらに、前述の特性を持つ膜としても利用され、電子材料用アルミナシート、アルミニウム酸化物膜の作製、触媒担体の作成、耐熱性付与、空気、水分に対するバリア性付与、反射防止効果付与、帯電防止効果付与、防曇効果付与、耐摩耗性等の付与、セラミック製造用バインダー等の用途に供されておいる。具体的には、機械部品や切削工具の保護膜、半導体、磁性体、太陽電池等の絶縁膜、誘電体膜、反射防止膜、表面デバイス、磁気ヘッド、赤外線等のセンサー素子、食品、薬品、医療器材等の包装材料における空気・水分等へのバリア膜、各種粉体、フィルム、ガラスやプラスチックを素材としたフィルムや成形体等の基材へのコーティング膜およびこれらを用いた耐熱材料や高硬度フィルム、光学部材等への応用がある。
アルミニウム酸化物の製造方法としては、種々の方法が知られている。例えば、ボーキサイトを出発原料にした、いわゆるバイヤー法や、アルミニウムアルコキシドの加水分解を経た製造方法が知られている。また、一般的なアルミニウム酸化物膜の製造方法として、例えば、真空装置を用いる成膜手法である、スパッタリング法、化学気相成長(MOCVD)法、蒸着などの物理気相成長(PVD)法がよく知られている。
アルミニウム酸化物膜の形成においては、塗布法での成膜が知られている。この塗布法は、装置が簡便で膜形成速度が速いため生産性が高く製造コストが低い、真空装置を用いる必要がなく真空容器による制約がないため、大きな酸化物膜の作成も可能である等の利点がある。アルミニウム酸化物膜形成のための塗布法として、ディップコート法(特許文献1,2)、スプレー熱分解法(特許文献3〜7)、ミストCVD法(非特許文献1)、スピンコート法(特許文献8〜10)等が知られている。この中でも、特にスプレー熱分解法のような噴霧塗布による成膜方法を用いて、アルミニウム酸化物薄膜の形成について種々の検討がなされている(特許文献3〜7)。
また、塗布法での成膜によるアルミニウム酸化物膜形成において用いることが出来るアルミニウム酸化物膜形成用組成物として、種々の組成物が提案されている。例えば、アルミニウム酸化物であるアルミナ膜を形成する方法において、アルミニウム酸化物膜形成用組成物として、アミン化合物と水素化アルミニウム化合物との錯体を用いることが記載されている(特許文献8〜10)、さらに有機アルミニウム化合物としてアルキルアルミニウムの有機溶媒溶液を用いることが記載されている(特許文献9〜11)。
特開昭58−95611公報 特開昭58−91030公報 特開2006−161157公報 特開2007−270335公報 特開2007−238393公報 特開2009−120873公報 特開2010−209363公報 特開2007−287821公報 WO2012/053433A1 WO2012/053436A1 特開平4−139005公報
"Growth and electrical properties of AlOx grown by mist chemical vapor deposition" Toshiyuki Kawaharamura, Takayuki Uchida, Masaru Sanada, Mamoru Furuta AIP Advances, Vol.3 (2013) 032135.
近年、フィルム等、樹脂基材への酸化物成膜が求められており、1)成膜温度の低温化、2)基材への密着性、3)酸化物の形成状態が重要な要素となっているため、樹脂基材へのアルミニウム酸化物膜の成膜も通常、真空を用いた蒸着法等により成膜が行われている。
これまで知られている、スプレー塗布法による検討においては、そのアルミニウム源として、塩化アルミニウム等の無機塩や、酢酸アルミニウムやアルミニウムイソプロポキシドやアルミニウムトリスアセチルアセトナトの有機アルミニウム錯体等が用いられている。しかし、それらを用いた場合の成膜温度は、通常500℃以上と高温であり、また、アルミニウムトリスアセチルアセトナト等の有機アルミニウム錯体は有機溶媒への溶解度が低く、アルミニウム源の高濃度化が困難であり、これらを用いたスプレー成膜においては、アルミニウム酸化物膜の生産性を上げることが困難である。このように、これまで検討されているアルミニウム化合物で構成されるアルミニウム酸化物膜形成用組成物では、樹脂基材への成膜が可能な、250℃以下でのアルミニウム酸化物膜形成を実施することは困難であった。
一方、塗布成膜においてアルミニウム源として用いることができるアルミニウム酸化物膜形成用組成物としては、有機アルミニウム化合物としてアルキルアルミニウムの有機溶媒溶液があるが、アルキルアルミニウムは大気中で発火性があり、保管、使用時には非常な注意を払わねばならない化合物である。そのため、アルキルアルミニウムを噴霧塗布してスプレー熱分解法を行うことは極めて困難である。
また、アルキルアルミニウムは炭素数が少ないほど酸素や水との反応性が高くなることが知られている。そのため、特許文献9および10においては、アルキルアルミニウムを用いたスピンコート成膜に関する実施例においてジイソブチルアルミニウムハイドライド(アルキル基の炭素数4)や、トリオクチルアルミニウム(アルキル基の炭素数8)といった炭素数4以上のアルキルアルミニウムが用いられている。また、これらの成膜方法としてはスピンコート成膜が用いられているが、スプレー熱分解法による成膜についてはなされおらず、未だ不明である。
さらに、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの水素化物は、溶媒として用いられているアニソールなどのエーテル系溶媒を利用した場合においては、ハイドライドとエーテル系溶媒とが反応する場合があり、高温になった場合、薬液の反応による分解の恐れがある。
このように、アルキルアルミニウムを有機溶媒に溶解した組成物を基材に噴霧塗布し、熱分解することによりアルミニウム酸化物膜の形成を行う際においては、検討が十分にされているとは言えず、未だ課題が多い。
また、アルキルアルミニウムの部分加水分解物についても、アルキルアルミニウムを有機溶媒に溶解した組成物の場合と同様に、基材に噴霧塗布し、熱分解することによりアルミニウム酸化物膜の形成を行う際においては、検討がされているとは言えず、未だ課題が多い。
本発明の目的は、アルキルアルミニウムまたはアルキルアルミニウムの部分加水分解物を有機溶媒に溶解した組成物を基材に噴霧塗布し、熱分解分解することによりアルミニウム酸化物膜の形成を行い、密着性が優れたアルミニウム酸化物膜を得ることが可能な、アルミニウム酸化物膜の製造するための方法およびこの方法に用いることができる膜形成用組成物を提供することにある。
さらには、上記製造方法を用いて作製したアルミニウム酸化物膜を提供すること、さらにはこのアルミニウム酸化物膜を含むアルミニウム酸化物機能膜およびそれら膜や機能膜を有する基材である物品を提供することである。
上記課題を解決するための本発明は、以下のとおりである。
[1]
(A)下記一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物またはその部分加水分解物の有機溶媒溶液を、基材の少なくとも一部の表面に噴霧塗布して塗布膜を形成する工程、
但し、前記部分加水分解物は、前記有機アルミニウム化合物に対してモル比で0.7以下の水を用いて前記有機アルミニウム化合物を有機溶媒中で部分的に加水分解して得た物であり、かつ
前記噴霧塗布は、0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で行う、
(B)前記塗布膜を形成した基材を0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下、400℃以下の温度で加熱して、前記塗布膜からアルミニウム酸化物膜を形成する工程、
を含むアルミニウム酸化物膜を有する物品の製造方法。
(式中、R1は水素、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐したアルキル基、R2、R3は独立に、水素、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐したアルキル基、炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐したアルコキシル基、アシルオキシ基、またはアセチルアセトナート基を表す。)
[2]
前記工程(A)において、有機アルミニウム化合物の有機溶媒溶液を用い、
一般式(1)中、R1は炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐したアルキル基、R2、R3は独立に、炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐したアルキル基、炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐したアルコキシル基、アシルオキシ基、またはアセチルアセトナート基を表す、[1]に記載の製造方法。
[3]
前記有機溶媒が電子供与性を有する有機溶媒を含有し、かつ
前記溶液中の有機アルミニウム化合物の濃度が、0.1〜35重量%である、
[2]に記載の製造方法。
[4]
前記電子供与性を有する有機溶媒を構成する分子のモル数が、有機アルミニウム化合物のモル数に対して等倍以上存在することを特徴とする[3]に記載の製造方法。
[5]
前記工程(A)の噴霧塗布において、基材表面の温度が20〜300℃である[2]〜[4]のいずれか一項に記載の製造方法。
[6]
前記工程(A)において、有機アルミニウム化合物の部分加水分解物の有機溶媒溶液を用い、
前記工程(A)で用いる前記有機溶媒が、炭化水素化合物および/または電子供与性を有する有機溶媒を含有する有機溶媒である[1]に記載の製造方法。
[7]
前記有機溶媒溶液における部分加水分解物濃度が0.1〜35質量%の範囲である[6]に記載の製造方法。
[8]
前記工程(A)を400℃以下の温度での加熱下で行い、前記工程(A)と同時に又は引き続き工程(B)での加熱を行う[6]または[7]に記載の製造方法。
[9]
前記噴霧塗布は、スプレー塗布法、スプレー熱分解法、静電塗布法、又はインクジェット法により行う、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の製造方法。
[10]
前記一般式(1)中のR1がメチル基またはエチル基である[1]〜[9]のいずれか一項に記載の製造方法。
[11]
下記一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物の有機溶媒溶液からなる膜形成用組成物であって、
前記組成物は、膜の塗布形成が0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で行われるアルミニウム酸化物膜の形成に用いるための物である、前記組成物。
(式中、R1は水素、炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐したアルキル基、R2、R3は独立に、水素、炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐したアルキル基、炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐したアルコキシル基、アシルオキシ基、またはアセチルアセトナート基を表す。)
[12]
下記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物を有機溶媒中で部分的に加水分解して得られた、前記有機アルミニウム化合物の部分加水分解物を含有する膜形成用組成物であって、
(a)前記部分加水分解は、前記有機アルミニウム化合物に対するモル比が0.7以下の水を用いて行われ、かつ
(b)前記組成物は、膜塗布形成が0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で行われるアルミニウム酸化物膜の形成に用いるための物である、前記組成物。
(式中、R1は水素、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐したアルキル基、R2、R3は独立に、水素、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐したアルキル基、炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐したアルコキシル基、アシルオキシ基、またはアセチルアセトナート基を表す。)
[13]
前記0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で行われる膜塗布形成は、
(c1)前記組成物を0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で基材の少なくとも一部の表面に噴霧塗布して塗布膜を形成する工程、および
(c2)前記塗布膜を形成した基材を0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下、400℃以下の温度で加熱して、アルミニウム酸化物膜を形成する工程、を含む、[11]または[12]に記載の組成物。
[14]
基材に密着した透明なアルミニウム酸化物膜を形成するための[11]〜[13]のいずれか一項に記載の組成物。
[15]
[1]〜10のいずれか一項に記載の方法、または[11]〜[14]のいずれか一項に記載の組成物を用いて0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で製造した、アルミニウム酸化物膜を有する物品。
[16]
前記物品がアルミニウム酸化物膜を基材に付着した複合体またはアルミニウム酸化物膜とアルミニウム酸化物膜以外の層とを有する複合膜を基材に付着した複合体である[15]に記載のアルミニウム酸化物膜を有する物品。
本発明の製造方法およびアルミニウム酸化物膜製造用組成物を用いれば、塗布および加熱を行うだけで成膜温度が低温でも、基材への密着性に優れ、酸化物の形成状態が良好なアルミニウム酸化物膜を形成することができる。
より具体的には、本発明によれば、トリエチルアルミニウム(炭素数2)のような、炭素数1〜3のアルキル基を置換基に有する有機アルミニウム化合物またはその部分加水分解物を、電子供与性有機溶媒等を含む有機溶媒に溶解した塗布液を用いることで、アルキルアルミニウムのような反応性のある化合物の成膜操作における取扱いを容易にし、スプレー成膜における反応を制御をすることが容易となることで、400℃以下の低温においても、塗布および加熱を行うだけで、基材への密着性に優れ、酸化物の形成状態が良好なアルミニウム酸化物膜を形成することができる。
なお、本発明の方法で製造されたアルミニウム酸化物膜は基材への密着性に優れ、酸化物の形成状態が良好なことから、電子材料用アルミナシート、アルミニウム酸化物膜の作成、触媒担体の作成、耐熱性付与、空気、水分に対するバリア性付与、反射防止効果付与、帯電防止効果付与、防曇効果付与、耐摩耗性等の付与、セラミック製造用バインダー等の用途に供されており、具体的には、機械部品や切削工具の保護膜、半導体、磁性体、太陽電池等の絶縁膜、誘電体膜、反射防止膜、表面デバイス、磁気ヘッド、赤外線等のセンサー素子、食品、薬品、医療器材等の包装材料における空気・水分等へのバリア膜、各種粉体、フィルム、ガラスやプラスチックを素材としたフィルムや成形体等の基材へのコーティング膜およびこれらを用いた耐熱材料や高硬度フィルム、光学部材、セラミック製造用バインダー等の用途に使用されるアルミニウム酸化物膜などのアルミニウム酸化物機能膜として適用することができる。
さらにこれらのアルミニウム酸化物膜やアルミニウム酸化物機能膜を有する基材は、耐熱フィルム等の耐熱材料、絶縁材料、水分や酸素等へのバリアフィルム等の材料、反射防止フィルム・ガラス等の反射防止材料、高硬度フィルムや材料として利用が可能である。
スプレー成膜装置を示す図である。 実施例1−1で得られたアルミニウム酸化物膜の走査型電子顕微鏡写真(薄膜表面) 実施例1−1で得られたアルミニウム酸化物膜の走査型電子顕微鏡写真(薄膜断面) 実施例1−10で得られたアルミニウム酸化物膜の走査型電子顕微鏡写真(薄膜表面) 実施例1−17で得られたアルミニウム酸化物膜の走査型電子顕微鏡写真(薄膜表面) 実施例2−4で得られた組成物Fの真空乾燥後の1H−NMRスペクトル 実施例2−1で窒素雰囲気下200℃で加熱による成膜でガラス基板に上に得られたアルミニウム酸化物膜の走査型電子顕微鏡写真(薄膜表面) 実施例2−1で窒素雰囲気下200℃で加熱による成膜でガラス基板に上に得られたアルミニウム酸化物膜の走査型電子顕微鏡写真(薄膜断面) 実施例2−2で窒素雰囲気下200℃で加熱による成膜でガラス基板に上に得られたアルミニウム酸化物膜の走査型電子顕微鏡写真(薄膜表面) 実施例2−2で窒素雰囲気下200℃で加熱による成膜でガラス基板に上に得られたアルミニウム酸化物膜の走査型電子顕微鏡写真(薄膜断面)
<アルミニウム酸化物膜を有する物品の製造方法>
本発明のアルミニウム酸化物膜を有する物品の製造方法は下記工程(A)及び(B)を含む。
工程(A)下記一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物またはその部分加水分解物の有機溶媒溶液を、基材の少なくとも一部の表面に噴霧塗布して塗布膜を形成する工程、
(式中、R1は水素、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐したアルキル基、R2、R3は独立に、水素、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐したアルキル基、炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐したアルコキシル基、アシルオキシ基、またはアセチルアセトナート基を表す。)
(B)前記塗布膜を形成した基材を0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下、400℃以下の温度で加熱して、前記塗布膜からアルミニウム酸化物膜を形成する工程。
工程(A)
工程(A)は、一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物の有機溶媒溶液を、基材の少なくとも一部の表面に噴霧塗布して塗布膜を形成する工程(以下、工程(A1)と呼ぶ)、または一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物の部分加水分解物の有機溶媒溶液を、基材の少なくとも一部の表面に噴霧塗布して塗布膜を形成する工程(以下、工程(A2)と呼ぶ)である。
一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物におけるR1、R2およびR3として表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基を挙げることができる。一般式(1)で表される化合物は、R1は炭素数1、2、3または4の化合物であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物は、特にR1が炭素数1であるメチル基や炭素数2であるエチル基であることが好ましい。R、Rとして表される炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐したアルキル基も上記R1と同様である。
前記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物におけるR2およびR3として表される炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐したアルコキシル基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基、メトキシエトキシ基等を上げることが出来、アシルオキシ基の具体例としてはアセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基等を挙げることが出来る。
一般式(1)で表される化合物は、価格が安く入手が容易であり、エーテル系溶媒等の電子供与性を有する溶媒や炭化水素溶媒などへの溶解性が高いという点から、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウムが好ましく、特に、安価で重合助触媒としての使用量も多く入手が容易なことから、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシドが好ましく、これらの中でも特に重合助触媒用途として使用量が最も多く、安価で入手が容易であるトリエチルアルミニウムが好ましい。
これら化合物は一般的に市販品として入手可能なものとして、R1、RおよびRとは異なる炭素数のアルキル基や、水素が有機アルミニウム化合物中に微量または少量含まれていることが知られている。例えば、本発明で好適なトリエチルアルミニウムは、R1、RおよびRにおいてアルキル基の大部分であるエチル基に加えて、n−ブチル基や水素等が含まれているが、本発明においては、これらを問題なく使用することが出来る。
また、差し支えない範囲で、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムsec-ブトキシドや、アルミニウムtert-ブトキシド等のアルコキシドのやアルミニウムアセチルアセトナト等のβジケトナト錯体、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機塩といったアルミニウム化合物を本発明で使用する溶液に共存させてもよい。
工程(A1)で用いる噴霧塗布用溶液
工程(A1)で用いる噴霧塗布用溶液は、一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物を有機溶媒に溶解した溶液である。一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物は、工程(A1)においては加水分解することなく用いることから、R1は炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐したアルキル基であることが適当である。
有機溶媒は、一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物に対して溶解性を有するという観点から、電子供与性を有する有機溶媒であることが適当である。電子供与性を有する有機溶媒は、一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物に対して溶解性を有するものであればよい。
電子供与性有機溶媒の例としては、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキエタンやジエチルエーテル、ジn −プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、グライム、ジグライム、トリグライム、アニソール、メトキシトルエン等のエーテル系溶媒、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等のアミン系溶媒等を挙げることができる。電子供与性を有する溶媒としては、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンが好ましい。
工程(A1)では、電子供与性有機溶媒に共存が可能な溶媒として、炭化水素化合物を挙げることが出来、工程(A1)では、電子供与性有機溶媒と炭化水素化合物の混合物も有機溶媒として使用できる。前記炭化水素化合物としては、炭素数5〜20のより好ましくは炭素数6〜12の直鎖、分岐炭化水素化合物または環状炭化水素化合物、炭素数6〜20の、より好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素化合物およびそれらの混合物を例示することが出来る。炭化水素化合物の具体的な例として、ペンタン、n−ヘキサン、ヘプタン、イソヘキサン、メチルペンタン、オクタン、2,2,4−トリメチルペンタン(イソオクタン)、n−ノナン、n−デカン、n−ヘキサデカン、オクタデカン、エイコサン、メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2−メチルオクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン、石油エーテル等の炭化水素系溶媒を挙げることが出来る。
工程(A1)で用いる噴霧塗布用溶液における、一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物の濃度は、反応性の制御が容易であるという観点から、0.1〜35質量%の範囲とすることが適当である。濃度が高ければ高いほど少ない塗布回数で膜を製造できるが、炭素数1〜3のアルキル基を有する有機アルミニウム化合物の反応性が高くなり、成膜時以外の取扱いが難しくなる。そのため、通常、濃度の上限が問題とされ、化合物の濃度は、好ましくは0.1〜25質量%、さらに好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.1〜12質量%である。
工程(A2)で用いる噴霧塗布用溶液
工程(A2)で用いる噴霧塗布用溶液は、一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物の部分加水分解物の有機溶媒溶液である。一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物は、前述のとおりである。有機溶媒としては、炭化水素化合物、電子供与性有機溶媒及びその混合物の何れの有機溶媒も使用できる。炭化水素化合物及び電子供与性有機溶媒は、工程(A1)において説明したものと同様である。
部分加水分解物は、一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物に対してモル比で0.7以下の水を用いて前記有機アルミニウム化合物を有機溶媒中で部分的に加水分解して得た物である。モル比で0.7以下の水を用いた部分加水分解物であれば、工程(A1)で用いる噴霧塗布用溶液(部分加水分解していない有機アルミニウム化合物)と同様に噴霧塗布し、工程(B)を経ることで、所望の酸化アルミニウム膜を製造することができる。部分加水分解は、一般式(1)で表される化合物を有機溶媒に溶解した溶液に水を添加するか、または一般式(1)で表される化合物の有機溶媒溶液と水を混合することが行う。前記水の添加量は、前記有機アルミニウム化合物に対するモル比を0.6以下の範囲とすることが、工程(A1)で用いる噴霧塗布用溶液(部分加水分解していない有機アルミニウム化合物)と同様に噴霧塗布できることから好ましい。この水の添加量に下限はないが、部分加水分解の工程を付す以上、微量の水の添加では操作が煩雑になるだけであるから、例えば、0.05以上、好ましくは0.1以上とすることができる。
前記溶液中の一般式(1)で表される化合物の濃度は、有機溶媒への溶解性及び得られる部分加水分解物中の部分加水分解物の濃度等を考慮して適宜決定されるが、例えば、0.1〜50質量%の範囲とすることが適当であり、0.1〜35質量%の範囲が好ましい。
水の添加又は混合は、水を他の溶媒と混合することなく行うことも、水を他の溶媒と混合した後に行うこともできる。水の添加又は混合は、反応の規模にもよるが、例えば、60秒〜10時間の間の時間をかけて行うことができる。部分加水分解物の収率が良好であるという観点から、原料である一般式(1)の有機アルミニウム化合物に水を滴下することにより添加することが好ましい。水の添加は、例えば、一般式(1)で表される化合物と有機溶媒、例えば、電子供与性有機溶媒との溶液を攪拌せずに(静置した状態で) または攪拌しながら実施することができる。添加時の温度は、−90〜150℃の間の任意の温度を選択できる。−15〜30℃であることが水と有機アルミニウム化合物の反応性という観点から好ましい。
水の添加後に、水と一般式(1)で表される化合物との加水分解反応をさらに進行させるために、例えば、1分から48時間、攪拌せずに(静置した状態で)置くか、または攪拌することができる。反応温度については、−90〜150℃の間の任意の温度で反応させることができる。−15〜80℃であることが部分加水分解物を高収率で得るという観点から好ましい。加水分解反応における圧力は制限されない。通常は、常圧(大気圧) で実施できる。水と一般式(1) で表される化合物との加水分解反応の進行は、必要により、反応混合物をサンプリングし、サンプルをNMRあるいはIR等で分析、もしくは、発生するガスをサンプリングすることによりモニタリングすることができる。
有機溶媒、原料である前記一般式(1)の有機アルミニウム化合物、そして水はあらゆる慣用の方法に従って反応容器に導入することができ、有機アルミニウム化合物及び水はそれぞれ有機溶媒との混合物としても導入することができる。加水分解反応工程は回分操作式、半回分操作式、連続操作式のいずれでもよく、特に制限はないが、回分操作式が望ましい。
上記加水分解反応により、一般式(1) の有機アルミニウム化合物は、水により部分的に加水分解されて、部分加水分解物を含む生成物が得られる。一般式(1)の有機アルミニウム化合物がトリメチルアルミニウムやトリエチルアルミニウム等である場合、加水分解物についての解析は古くから行われている。しかし、報告により結果が異なり、生成物の組成が明確に特定されている訳ではない。また、水の添加モル比や反応時間等によっても、生成物の組成は変化し得る。本発明の方法における生成物の主成分は部分加水分解物であり、部分加水分解物は下記一般式(2)で表される構造単位を含む化合物の混合物であると推定される。
(式中、Qは一般式(1)におけるR1、R2、R3のいずれかと同じであり、mは1〜200の整数である。)
加水分解反応終了後、例えば、ろ過、濃縮、抽出、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法によって、上記生成物の一部または全部を回収及び/又は精製することができる。一般式(1)の有機アルミニウム化合物に対する水のモル比が比較的高い条件においては、不溶物を生じる場合があり、この場合には、細孔径が例えば、3μm以下であるフィルターを用いてろ過し、不溶物を実質的に含有しない、部分加水分解物含有組成物を得ることが好ましい。
上記方法で有機溶媒から分離して回収した部分加水分解物(固形分)は、反応に使用した有機溶媒と異なる、噴霧塗布用有機溶媒に溶解して噴霧塗布用の組成物とすることもできる。但し、有機溶媒から分離することなく反応生成混合物である部分加水分解物含有物をそのまま、あるいは適宜濃度を調整して噴霧塗布用溶液とすることもできる。
噴霧塗布用有機溶媒として用いることが出来る有機溶媒の例としては、炭素数5〜20のより好ましくは炭素数6〜12の直鎖、分岐炭化水素化合物または環状炭化水素化合物、炭素数6〜20の、より好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素化合物およびそれらの混合物を例示することが出来る。
これら炭化水素化合物の具体的な例として、ペンタン、n−ヘキサン、ヘプタン、イソヘキサン、メチルペンタン、オクタン、2,2,4−トリメチルペンタン(イソオクタン)、n−ノナン、n−デカン、n−ヘキサデカン、オクタデカン、エイコサン、メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2−メチルオクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン、石油エーテル等の炭化水素系溶媒を上げることが出来る。
また噴霧塗布用有機溶媒として用いることが出来る有機溶媒のその他の例としては、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキエタンやジエチルエーテル、ジn−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、グライム、ジグライム、トリグライム、アニソール、メトキシトルエン等のエーテル系溶媒、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等のアミン系溶媒等を挙げることができる。
また、これらの有機溶媒は単独で使用するのみならず、2 種類以上を混合して用いることも可能である。
また、噴霧塗布用溶液において、加水分解後に前記溶液中に残存しているR1、R2、R3がアルコキシド基の場合においては、組成物に共存が可能な溶媒として、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルノール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコールも噴霧塗布用有機溶媒として使用が可能である。
工程(A2)で用いる部分加水分解物含有組成物の部分加水分解物の固形分濃度は、例えば、0.1〜30質量%の範囲であることができる。濃度が高ければ高いほど少ない塗布回数で膜を製造できるが、有機アルミニウム化合物の部分加水分解物を含む反応生成物の溶解度、例えば、アルミニウム酸化物膜の形成の容易さを考慮すると、好ましくは0.1〜25質量%、さらに好ましくは0.1〜15質量%とすることが出来る。
上記工程(A2)で用いる部分加水分解物含有噴霧塗布用溶液は、本発明のアルミニウム酸化物膜塗布形成用組成物に相当する。
<噴霧塗布について>
噴霧塗布は工程(A1)及び工程(A2)で共通する。
噴霧塗布は噴霧塗布用溶液を用い、基材の少なくとも一部の表面に噴霧塗布を行う。噴霧塗布することで、噴霧塗布用溶液の塗膜が形成される。噴霧塗布は、常温(室温)で実施することも出来るが、後述のように、加熱下で行うこともできる。さらに、噴霧塗布は、0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で行う。
塗噴霧布を不活性ガス雰囲気下で行うのは、噴霧塗布用溶液に含まれる有機アルミニウム化合物及び/又は部分加水分解物が雰囲気中の水分と反応し徐々に分解することや、アルミニウム酸化物膜の形成を行うために、噴霧塗布用溶液に対して、水が共存する条件での成膜の制御を容易にする観点や、可燃性の溶剤等を扱う為である。不活性ガスについては、特に限定はないが、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素等を挙げることができる。これらの中でも、特にコストの面で窒素が望ましい。また、塗布の際の圧力については、大気圧下、加圧下、減圧下のいずれでも実施できるが、通常、大気圧で実施するのが装置上も簡便であり、コストもかからず好ましい。
さらに、不活性ガス雰囲気には、0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下を用いる。塗噴霧布には、例えば、スプレー塗布法、スプレー熱分解法、静電塗布法、インクジェット法といった噴霧塗布用溶液が噴霧によって基材にする到達するまでの空間において、共存する水等の酸素源との反応によるアルミニウム酸化物の形成が容易な噴霧塗布の手法を用いる。その際、不活性ガス雰囲気が0.5モル%〜30モル%の水分を含有することで、噴霧され、基材にする到達するまでの空間において、加水分解反応が進行し、その後のアルミニウム酸化物膜薄膜の生成がスムーズになる。アルミニウム酸化物膜薄膜の生成がよりスムーズになるという観点からは、不活性ガス雰囲気の水分含有量は、1モル%〜25モル%であることが好ましい。この特定の水分を含む不活性ガスの例として、例えば、0.5モル%の水分を含有する不活性ガスとして、露点が−2℃、21℃での相対湿度として21%の不活性ガスが例示され、1モル%の水分を含有する不活性ガスとして、露点が8℃、21℃での相対湿度として43%の不活性ガスを例示でき、また、25モル%の水分を含有する不活性ガスとしては65℃の飽和水蒸気を含むものを例示できる。
不活性ガスについては、特に限定はないが、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素等を挙げることができる。これらの中でも、特にコストの面で窒素が望ましい。基材表面へのスプレー塗布は、加圧下や減圧下でも実施できるが、大気圧で実施するのが、装置上も簡便であり好ましい。
噴霧塗布の方法としては、例えば、スプレー塗布、スプレー熱分解法、静電塗布法、インクジェット法などを用いることができる。スプレー熱分解法、静電塗布法は、基材を加熱しながら塗布と成膜を同時にできる方法であり、そのため、塗布と並行して溶媒を乾燥させることができ、条件によっては、溶媒乾燥のための加熱が不要である場合もある。さらに、条件によっては、乾燥に加えて、有機アルミニウム化合物の部分加水分解物のアルミニウム酸化物への反応も少なくとも一部、進行する場合もある。そのため、後工程である、所定の温度での加熱によるアルミニウム酸化物膜形成をより容易に行える場合もある。
工程(B)
工程(B)においては、塗布膜を形成した基材を0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下、400℃以下の温度で加熱して、前記塗布膜からアルミニウム酸化物膜を形成する。0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気は工程(A)で説明したものと同様である。
加熱温度は、塗布液の組成や噴霧塗布方法、基材の種類に応じて適宜選択できる。但し、400℃以下の温度で行う。基材の種類によっては、400℃を超える温度での加熱によってアルミニウム酸化物膜を形成することも可能であるが、本発明においては、400℃以下の温度での加熱で十分に良好な物性を有するアルミニウム酸化物膜を形成することができる。
また、噴霧塗布方法の種類によっては、工程(A)の塗布の際にも、雰囲気及び/又は基材を加熱することもできる。この場合、塗布と加熱の温度を同一にする方が操作が簡便であり好ましい。噴霧塗布における塗布および成膜の際の雰囲気及び/又は基材の加熱温度は、例えば、50〜400℃、好ましくは100〜400℃の範囲であることができる。特に、本発明においては、基材に樹脂などの耐熱性の低い基材を用いる場合の成膜や、金属、酸化物、窒化物、炭素化合物等の無機物や低分子、ポリマーなどの有機物および前述の無機物および有機物の複合物から形成される、電極、半導体、絶縁物等の電子デバイス膜等の機能性材料に対して熱や高エネルギーを与える処理で問題がある場合への成膜が可能であり、50〜350℃の範囲が好ましく、100〜300℃範囲で行うことがより好ましい。
図1に、本発明で用いることができる噴霧塗布による成膜装置の例として、スプレー成膜装置を示す。図中、1は塗布液を充填したスプレーボトル、2は基材ホルダ、3スプレーノズル、4はコンプレッサ、5は基材、6・・・水蒸気導入用チューブを示す。スプレー塗布は、基材を基材ホルダ2に設置し、必要によりヒーターを用いて所定の温度まで加熱し、その後、不活性ガス雰囲気中(大気圧下)で、基材の上方に配置したスプレーノズル3から圧縮した不活性ガスと塗布液を同時供給し、塗布液を霧化、噴霧させ、水蒸気導入用チューブ6より水を導入して成膜雰囲気で共存させることにより、基材上にアルミニウム酸化物膜薄膜を形成することができる。加熱下でスプレー塗布する場合には、追加の加熱等することなしにアルミニウム酸化物膜を形成することもできる。
塗布液のスプレー塗布は、基材への付着性、溶媒の蒸発の容易性等を考慮すると、塗布液をスプレーノズルより液滴の大きさが30μm以下の範囲になるように吐出することが好ましい。また、スプレーノズルから基材に到達するまでに有機溶媒が幾分蒸発し液滴の大きさが減少すること等を考慮するとスプレーノズルと基材との距離を50cm以内として行うことが、アルミニウム酸化物膜を製造することができるという観点から好ましい。
スプレー熱分解法や静電塗布法等の噴霧塗布による成膜方法は、基材を加熱しながら塗布と成膜を同時にできる方法であり、そのため、塗布と並行して有機溶媒を乾燥させることができ、条件によっては、溶媒乾燥のための加熱が不要である場合もある。さらに、条件によっては、乾燥に加えて、有機アルミニウム化合物の部分加水分解物のアルミニウム酸化物への反応も少なくとも一部、進行する場合もある。そのため、後工程である、所定の温度での加熱によるアルミニウム酸化物膜形成をより容易に行える場合もある。スプレー熱分解法における塗布および成膜の際の基材の加熱温度は、例えば、50〜400℃、好ましくは100〜400℃の範囲であることができる。特に基材に樹脂などの耐熱性の低い基材を用いる場合には、50〜350℃の範囲、好ましくは50〜350℃の範囲で行うことが出来る。
また、工程(A)において基材表面へ噴霧塗布用溶液を噴霧塗布した後、必要により基材を所定の温度とし、溶媒を乾燥した後、工程(B)において所定の温度で加熱することによりアルミニウム酸化物膜を形成させることもできる。
工程(A)における有機溶媒の乾燥温度は、例えば、20〜200℃の範囲であることができ、共存する有機溶媒の種類に応じて適時設定することができる。溶媒乾燥後のアルミニウム酸化物膜形成の為の加熱温度は、前記のとおりである。
本発明の噴霧塗布による成膜においては、溶媒乾燥温度とその後のアルミニウム酸化物膜形成の為の加熱温度を同一にし、溶媒乾燥とアルミニウム酸化物膜形成を同時に行うことが可能であり、その際の温度は、工程(B)における前述の範囲の加熱温度に設定される。
尚、本発明における噴霧塗布および加熱は、加圧下や減圧下でも実施できるが、大気圧で実施するのが装置上も簡便であり、コストもかからず好ましい。
上記製造方法においてアルミニウム酸化物膜を形成するための基材として用いられるものとして、ガラス、金属、セラミックス等の無機物、プラスチック等の高分子基材や紙、木材等の有機物およびこれらの複合物がある。
これらの基材は、アルミニウム酸化物膜を形成に支障がなければ特に制限はないが、例えば、ガラスとしては石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダガラス、無アルカリ、鉛ガラス等のガラスやサファイヤ等の酸化物等が挙げられる。また、金属としては、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、アルミニウム、鉄、銅、チタン、シリコン、ニッケル、金、銀およびこれらを含む合金等が挙げられる。セラミックスとしては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア等の酸化物、ホウ素化窒素、窒化アルミ、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ガリウム等の窒化物、炭化ケイ素等の炭素化合物やこれらを含む複合物等が挙げられる。さらに、プラスチックを形成する高分子には、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ(メタ)アクリル(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン(COP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリウレタン、トリアセテート、トリアセチルセルロース(TAC)、セロファン、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等)およびこれらを含む複合樹脂等を例示することができる。これらの中でも、EVA、COP、PP、PE、PET、PPS,PEN、PC、PMMA、PES、ポリイミド、ポリアミド、アラミド、PVC、PVA、PTFE、PFAが好ましい。
また、これら基材の形状としては、例えば、フィルム状、板状や三次元の任意の形状を有する立体構造物のものおよびこれらの複合物が使用可能である。
さらに、これら機材は透明、半透明、不透明のいずれでもよい。例えば、透明基材としてフィルム状のものは、薄板ガラス等の無機物や高分子基材としてプラスチックフィルム等の有機物を例示することができる。
基材がプラスチックフィルムの場合には、ポリマーの種類によって無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよい。例えば、ポリエステルフィルム例えばPETフィルムは、通常、二軸延伸フィルムであり、またPCフィルム、トリアセテートフィルム、セロファンフィルム等は、通常、無延伸フィルムである。
不透明な機材として、金属や金属の酸化物、窒化物、炭素化合物のウエハーやシート等やポリイミド、ポリアミド、アラミド、炭素繊維、PP、PE、PETシートや不織布等の高分子基材でも使用することが出来る。
さらに、これらの基材以外にも、金属、酸化物、窒化物、炭素化合物等の無機物や低分子、ポリマーなどの有機物および前述の無機物および有機物の複合物から形成される、電極、半導体、絶縁物等の電子デバイス膜等の機能性材料に対しても塗布成膜が可能である。
本発明のアルミニウム酸化物膜製造用溶液用い、噴霧塗布による成膜を行なえば、塗布および加熱を行うだけで成膜温度が低温でも、基材への密着性に優れ、酸化物の形成状態が良好なアルミニウム酸化物膜を形成することができる。機材への密着性は本発明のアルミニウム酸化物製造用溶液を用いて得られたアルミニウム酸化物膜それ自身も高く、通常、酸化物の直接成膜が困難な基材においても良好な密着性が得られるが、必要に応じてアンダーコート処理、プライマー処理、コロナ処理、UV照射、塩素化等等の一般的に知られている基材に成膜した酸化物の密着性を高めるような方法を用いて塗布成膜することも可能である。
[アルミニウム酸化物およびアルミニウム酸化物膜]
本発明のアルミニウム酸化物膜製造用溶液用い、噴霧塗布による成膜を行なえば、塗布および加熱を行うだけで成膜温度が低温でも、基材への密着性に優れ、酸化物の形成状態が良好なアルミニウム酸化物膜を形成することができる。
製造されたアルミニウム酸化物膜は、本発明における「アルミニウム酸化物」は、アルミニウム元素と酸素元素とを含有する化合物であり、これら2つの元素がアルミニウム酸化物に占める割合が90%以上のものをいう。アルミニウムと酸素以外には水素や炭素を含有する場合があり得る。また、本発明において500℃以下で製造された「アルミニウム酸化膜」は、通常、X線回折分析で明瞭なピークが観測されず、アモルファス状態である。
これらアルミニウム酸化物膜は基板等の耐熱温度が許容されれば、成膜後の後処理によって一般的に知られている1000℃以上での高い温度での加熱等の手法により結晶化させることも可能である。即ち、必要に応じて、工程(B)においてアルミニウム酸化物膜が形成された後に、さらに、酸素等の酸化ガス雰囲気下、アルゴン、酸素等のプラズマ雰囲気下で、上記加熱を行うことによりアルミニウム酸化物の形成を促進、または、結晶性を向上させることも可能である。さらに、本発明で得られたアルミニウム酸化物膜中の残存有機物等の炭素成分の除去やアルミニウム酸化物膜の膜質の向上等を目的として一般的に用いられている紫外線等の光照射やマイクロ波等での処理を行ってもよい。アルミニウム酸化物膜の膜厚には特に制限はないが、例えば、0.005〜5μmの範囲、より実用的には0.001〜5μmの範囲であることができる。本発明の製造方法によれば、上記塗布(乾燥)加熱を1回以上繰り返すことで、上記範囲の膜厚の膜を適宜製造することができる。また、原理的には、塗布回数を繰り返したり、塗布時間を長くすることで、5μm以上の膜の形成も可能である。本発明の製造方法では、不活性ガス雰囲気下、基材表面に上記噴霧塗布用溶液を塗布する工程(A)及び得られた塗布物を加熱する工程(B)を1回または2回以上行うことを含む。塗布および得られた塗布物の加熱操作は、絶縁性や耐熱性など所望の物性を得るために必要な回数を適宜行なうことができるが、好ましくは1回〜50回、より好ましくは、1回〜30回さらに好ましくは1回〜10回等の範囲で適宜実施できる。本発明で用いる噴霧塗布法においては、透過率が高い透明なものから半透明・不透明なものを得ることができる。ガラスや樹脂などへの基材への密着性の高い膜を得ることが出来る。
[アルミニウム酸化物を含む機能膜]
製造されたアルミニウム酸化物膜は基材への密着性に優れ、酸化物の形成状態が良好である。そのため、アルミニウム酸化物膜を基材に付着した複合体(物品)や、アルミニウム酸化物膜とアルミニウム酸化物膜以外の層とを有する複合膜を基材に付着した複合体(物品)とすることができる。複合膜は、アルミニウム酸化物を含む機能膜として用いることが出来る。例えば、電子材料用アルミナシート、アルミニウム酸化物膜の作製、触媒担体の作製、耐熱性付与、空気、水分に対するバリア性付与、反射防止効果付与、帯電防止効果付与、防曇効果付与、耐摩耗性等の付与、セラミック製造用バインダー等の用途に供することが出来る。具体的には、機械部品や切削工具の保護膜、半導体、磁性体、太陽電池等の絶縁膜、誘電体膜、反射防止膜、表面デバイス、磁気ヘッド、赤外線等のセンサー素子、食品、薬品、医療器材等の包装材料における空気・水分等へのバリア膜、各種粉体、フィルム、ガラスやプラスチックを素材としたフィルムや成形体等の基材へのコーティング膜およびこれらを用いた耐熱材料や高硬度フィルム、光学部材、セラミック製造用バインダー等の用途に使用されるアルミニウム酸化物膜などの、基材に対して種々の機能性を付与することができる機能膜の一部又は全部として適用することができる。
[アルミニウム酸化物膜を有する基材およびアルミニウム酸化物を含む機能膜を有する基材]
さらにこれらのアルミニウム酸化物膜やアルミニウム酸化物を含む機能膜を有する基材は、耐熱フィルム等の耐熱材料、絶縁材料、水分や酸素等へのバリアフィルム等の材料、反射防止フィルム、ガラス等の反射防止材料、高硬度フィルムや材料として利用が可能である。
[アルミニウム酸化物膜製造用組成物]
本発明は、アルミニウム酸化物膜形成用組成物を包含する。
この組成物の第一の態様は、前記一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物の有機溶媒溶液からなる膜形成用組成物であって、前記組成物は、膜の塗布形成が0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で行われるアルミニウム酸化物膜の形成に用いるための物である、前記組成物。
この組成物の第二の態様は、 前記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物を有機溶媒中で部分的に加水分解して得られた、前記有機アルミニウム化合物の部分加水分解物を含有する膜形成用組成物であって、
(a)前記部分加水分解は、前記有機アルミニウム化合物に対するモル比が0.7以下の水を用いて行われ、かつ
(b)前記組成物は、膜塗布形成が0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で行われるアルミニウム酸化物膜の形成に用いるための物である、前記組成物である。
第一の態様の組成物は、工程(A1)において噴霧塗布用溶液として説明したものである。第二の態様の組成物は、工程(A2)において噴霧塗布用溶液として説明したものである。
前記0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で行われる膜塗布形成は、
(c1)前記組成物を0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で基材の少なくとも一部の表面に噴霧塗布して塗布膜を形成する工程、および
(c2)前記塗布膜を形成した基材を0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下、400℃以下の温度で加熱して、アルミニウム酸化物膜を形成する工程、を含む。これらの工程は、工程(A)および工程(B)として前述したとおりである。
本発明の組成物は、基材に密着した透明なアルミニウム酸化物膜を形成するために用いられる組成物である。
以下に本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
全ての有機アルミニウム化合物を含む溶液の調製およびそれを用いた成膜は窒素ガス雰囲気下で行い、溶媒は全て脱水および脱気して使用した。
トリエチルアルミニウムのモル数は以下の式より算出した。
トリエチルアルミニウムのモル数=〔使用したトリエチルアルミニウム(市販品)の重量(g)〕/〔トリエチルアルミニウムの分子量(114.16)〕
アルミニウム酸化物膜に成膜時における水は、必要に応じて65℃に加熱した水に窒素をバブリングさせることによって窒素中に水を飽和させた状態(不活性ガス中の水分として25モル%)のものとして成膜雰囲気に供給した。成膜雰囲気における不活性ガス中の水分含有率は露点測定(湿度)により得た。また、溶液の調製や成膜等の操作において室温で行う場合は、室温が18〜27℃でとなるような環境下において実施した。
実施例および比較例における各成膜における基材上におけるアルミニウム酸化物およびその膜の形成は、ATR−IR(全反射(attenuated total reflection,:ATR)法による赤外分光法)、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer:電子線マイクロアナライザ)、XRD(X‐ray diffraction:X線回折)による解析で確認した。
可視光等の透過率は、分光光度計を用いて測定した。
アルミニウム酸化物膜の膜厚は、触針式表面形状測定器による測定または薄膜断面のSEM測定により行った。
成膜したアルミニウム酸化物膜の基材への密着性は、粘着テープを用いた基材に塗布製膜したアルミニウム酸化物膜へのテープ貼り・剥がしによる剥離試験により確認した。
薬液の反応性は、温度(20℃)および湿度(50%)が一定な無風大気中において濾紙に薬液を滴下し、濾紙上での反応性を目視で確認した。
[実施例1−1]
テトラヒドロフラン(THF)74.8gに、トリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム株式会社製)8.3g を室温で加えた。十分攪拌した後に、ろ過することで、噴霧塗布に用いるための、トリエチルアルミニウムを含むアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液A)を得た。
薬液の反応性について、濾紙上での反応性を目視で確認したところ、濾紙の焦げ等は確認されなかった。
得られたアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液A)を用いて、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。アルミニウム酸化物膜を成膜する基材として、18mm角(厚さ0.7mm)のガラス基板(コーニング社製、EagleXG(R))を用い、このガラス基板を200℃に加熱し、大気圧、不活性ガス中の水分が2.3モル%(相対湿度90%@21℃)で水が存在する窒素雰囲気下において、ヒーターで加熱した基板に対して、スプレーノズルより溶液Aを2ml/分で8分間噴霧した。スプレーノズルより吐出する液滴の大きさは、3〜20μmの範囲であり、かつスプレーノズルと基板との距離を20cmとして行った。噴霧終了後、製膜した基材を5分間加熱を継続した。
ガラス基板上に形成された膜を、放冷後に大気中に取り出して、SEMおよびEPMAで分析し、膜の付着および膜を構成する元素が酸素およびアルミニウム元素であることを確認した、さらにATR−IRにより分析を行ったところ、550〜1000cm-1付近のガラス基板由来のピークと重なるピークの増加および2800〜3100cm-1の間に見られる、有機アルミニウム化合物や溶媒がそれらの構造中に有するC−Hに由来するに帰属されるピークが観測されないことを確認した。以上の分析から、本溶液を用いた成膜方法により、200℃の低温におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。また、本実施例で得られたアルミニウム酸化物膜は、XRDによりピークが確認されず、アモルファス状態であることが確認された。アルミニウム酸化物膜の膜厚は、触針式表面形状測定器による測定したところ、329nmであった。また、可視光(550nm)での透過率は97.9%であり、透過率80%以上の透明なアルミニウム酸化物膜を得た。
この実施例1−1のトリエチルアルミニウムを含むアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液A)と同様の組成の溶液を用いて、実施例1−1記載の上記の成膜をもう一度行い、アルミニウム酸化物膜の膜厚が332nmを得た。この膜についてSEMで分析を行い、膜の表面構造として図2、膜の断面構造として図3の形状であることをそれぞれ確認した。
[実施例1−2]
実施例1−1において、テトラヒドロフラン(THF)を76.5g、トリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム株式会社製)4.0gとして、実施例1−1と同様の操作を行い、噴霧塗布に用いるための、トリエチルアルミニウムを含むアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液B)を得た。
薬液の反応性について、濾紙上での反応性を目視で確認したところ、濾紙の焦げ等は確認されなかった。
得られたアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液B)を用いて、実施例1−1と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。基板上に形成された膜の同様の分析により、本溶液を用いた成膜方法により、200℃の低温におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。ガラス基板上に形成されたアルミニウム酸化物膜の膜厚は、279nmであった。得られた膜の可視光(550nm)での透過率は94.8%であり、透過率80%以上の透明なアルミニウム酸化物膜を得た。
[実施例1−3]
実施例1−1において、テトラヒドロフラン(THF)の代わりに1,2−ジエトキシエタン79.2gを用い、トリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム株式会社製)を8.8gとして、実施例1−1と同様の操作を行い、噴霧塗布に用いるための、トリエチルアルミニウムを含むアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液C)を得た。
薬液の反応性について、濾紙上での反応性を目視で確認したところ、濾紙の焦げ等は確認されなかった。
得られたアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液C)を用いて、実施例1−1と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。基板上に形成された膜の同様の分析により、本溶液を用いた成膜方法により、200℃の低温におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。ガラス基板上に形成されたアルミニウム酸化物膜の膜厚は、358nmであった。また、可視光(550nm)での透過率は95.3% であり、透過率80%以上の透明なアルミニウム酸化物膜を得た。
[実施例1−4]
実施例1−1において、テトラヒドロフラン(THF)の代わりにジイソプロピルエーテル82.7gを用い、トリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム株式会社製)を9.2gとして、実施例1−1と同様の操作を行い、噴霧塗布に用いるための、トリエチルアルミニウムを含むアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液D)を得た。
得られたアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液D)を用いて、実施例1−1と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。基板上に形成された膜の同様の分析により、本溶液を用いた成膜方法により、200℃の低温におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。ガラス基板上に形成されたアルミニウム酸化物膜の膜厚は、307nmであった。また、可視光(550nm)での透過率は97.6% であり、透過率80%以上の透明なアルミニウム酸化物膜を得た。
[実施例1−5]
実施例1−1において、テトラヒドロフラン(THF)の代わりにテトラヒドロフラン(THF)41.3gとヘキサン41.3gとの混合溶媒を用い、トリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム株式会社製)を9.2gとして、実施例1−1と同様の操作を行い、噴霧塗布に用いるための、トリエチルアルミニウムを含むアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液E)を得た。
薬液の反応性について、濾紙上での反応性を目視で確認したところ、濾紙の焦げ等は確認されなかった。
得られたアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液E)を用いて、実施例1−1と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。基板上に形成された膜の同様の分析により、本溶液を用いた成膜方法により、200℃の低温におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。ガラス基板上に形成されたアルミニウム酸化物膜の膜厚は、211nmであった。また、可視光(550nm)での透過率は97.6% であり、透過率80%以上の透明なアルミニウム酸化物膜を得た。
[実施例1−6]
実施例1−1において、テトラヒドロフラン(THF)の代わりにテトラヒドロフラン(THF)21.9gとトルエン51.0gとの混合溶媒を用い、トリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム株式会社製)を8.1gとして、実施例1−1と同様の操作を行い、噴霧塗布に用いるための、トリエチルアルミニウムを含むアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液F)を得た。
薬液の反応性について、濾紙上での反応性を目視で確認したところ、濾紙の焦げ等は確認されなかった。
得られたアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液F)を用いて、実施例1−1と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。基板上に形成された膜の同様の分析により、本溶液を用いた成膜方法により、200℃の低温におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。ガラス基板上に形成されたアルミニウム酸化物膜の膜厚は、271nmであった。また、可視光(550nm)での透過率は95.5% であり、透過率80%以上の透明なアルミニウム酸化物膜を得た。
[実施例1−7]
実施例1−4において、ジイソプロピルエーテルの代わりにジイソプロピルエーテル41.2gと混合キシレン41.2gとの混合溶媒を用い、トリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム株式会社製)を9.1gとして、実施例1−4と同様の操作を行い、噴霧塗布に用いるための、トリエチルアルミニウムを含むアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液G)を得た。
薬液の反応性について、濾紙上での反応性を目視で確認したところ、濾紙の焦げ等は確認されなかった。
得られたアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液G)を用いて、実施例1−1と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。基板上に形成された膜の同様の分析により、本溶液を用いた成膜方法により、200℃の低温におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。ガラス基板上に形成されたアルミニウム酸化物膜の膜厚は、330nmであった。また、可視光(550nm)での透過率は93.9% であり、透過率80%以上の透明なアルミニウム酸化物膜を得た。
[実施例1−8]
実施例1−3において、1,2−ジエトキシエタンの代わりに1,2−ジエトキシエタン62.3gと混合キシレン15.6gとの混合溶媒を用い、トリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム株式会社製)を8.7gとして、実施例1−3と同様の操作を行い、噴霧塗布に用いるための、トリエチルアルミニウムを含むアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液H)を得た。
薬液の反応性について、濾紙上での反応性を目視で確認したところ、濾紙の焦げ等は確認されなかった。
得られたアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液H)を用いて、実施例1−1と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。基板上に形成された膜の同様の分析により、本溶液を用いた成膜方法により、200℃の低温におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。ガラス基板上に形成されたアルミニウム酸化物膜の膜厚は、281nmであった。また、可視光(550nm)での透過率は94.4% であり、透過率80%以上の透明なアルミニウム酸化物膜を得た。
[実施例1−9]
実施例1−8において、1,2−ジエトキシエタンと混合キシレンとの混合溶媒の代わりに1,2−ジエトキシエタン39.5gとトルエン39.5gとの混合溶媒を用い、トリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム株式会社製)を8.9gとして、実施例1−8と同様の操作を行い、噴霧塗布に用いるための、トリエチルアルミニウムを含むアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液I)を得た。
薬液の反応性について、濾紙上での反応性を目視で確認したところ、濾紙の焦げ等は確認されなかった。
得られたアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液I)を用いて、実施例1−1と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。基板上に形成された膜の同様の分析により、本溶液を用いた成膜方法により、200℃の低温におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。ガラス基板上に形成されたアルミニウム酸化物膜の膜厚は、310nmであった。また、可視光(550nm)での透過率は94.3% であり、透過率80%以上の透明なアルミニウム酸化物膜を得た。
[実施例1−10]
実施例1−1において、アルミニウム酸化物膜を成膜する基材として、18mm角(厚さ0.7mm)のガラス基板(コーニング社製、EagleXG(R))の代わりにポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(60mm角(厚さ75μm))を用い、基材の加熱温度を200℃から130℃に変更した条件で、実施例1−1と同様の操作を行い、アルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液A)と同様の組成の溶液を用いて、スプレー成膜により130℃に加熱したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアルミニウム酸化物膜の成膜を行った。基板上に形成された膜の同様の分析により、本溶液を用いた成膜方法により、130℃の低温におけるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムへのアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。得られた膜の表面構造に関するSEM測定結果を図4に示す。このアルミニウム酸化物膜の可視光(550nm)での透過率は86%であり、透過率80%以上の透明なアルミニウム酸化物膜を得た。
[実施例1−11]
実施例1−10において、アルミニウム酸化物膜を成膜する基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(60mm角(厚さ25μm))の代わりに多孔質ポリプロピレン(PP)フィルム(2次電池セパレータ用:60mm角(厚さ20μm))を用い、このフィルムを130℃に加熱し、アルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液A)と同様の組成の溶液を用いて、実施例1−10と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。基板上に形成された膜の同様の分析により、本溶液を用いた成膜方法により、130℃の低温におけるポリプロピレン(PP)多孔質フィルムへのアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。
[実施例1−12]
実施例1−10において、アルミニウム酸化物膜を成膜する基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(60mm角(厚さ75μm))の代わりにアラミド不織布(2次電池セパレータ仕様:60mm角(厚さ57μm))を用い、このフィルムを130℃に加熱し、アルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液A)と同様の組成の溶液を用いて、実施例1−10と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。基板上に形成された膜の同様の分析により、本溶液を用いた成膜方法により、130℃の低温におけるアラミド多孔質フィルムへのアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。
[実施例1−13]
テトラヒドロフラン(THF)150.0gに、トリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム株式会社製)15.0g を室温で加えた。十分攪拌した後に、溶液をフィルター(細孔:3μm以下)でろ過することで、噴霧塗布に用いるための、トリエチルアルミニウムを含むアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液J)を得た。
薬液の反応性について、濾紙上での反応性を目視で確認したところ、濾紙の焦げ等は確認されなかった。
アルミニウム酸化物膜を成膜する基材として、ポリプロピレン(PP)フィルム(30mm角(厚さ0.2mm))を用い、このフィルムを130℃に加熱し、アルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液J)を用いて、実施例1−1と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。基板上に形成された膜の同様の分析により、本溶液を用いた成膜方法により、130℃の低温におけるポリプロピレン(PP)フィルムへのアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。
[実施例1−14]
トリエチルアルミニウムの含有量を少なくした、テトラヒドロフラン(THF)69.7gとトリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム株式会社製)2.16gとからなるアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液K)およびトリエチルアルミニウムの含有量を少なくした、テトラヒドロフラン(THF)69.7gとトリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム株式会社製)0.70g とからなるアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液L)を実施例1−1と同様の手法で調製し、ガラス基板の加熱温度を200℃において実施例1−1記載の条件で成膜を行ったところ、200℃におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。
また、本実施例で得られたアルミニウム酸化物膜は、XRDによりピークが確認されず、アモルファス状態であることが確認された。溶液Kおよび溶液Lのおのおのの溶液を用いてスプレー成膜によって得られたアルミニウム酸化物膜の可視光(550nm)での透過率および膜厚は、ぞれぞれ、99%、75nm(溶液K)、99%、30nm(溶液L)であった。
[実施例1−15]
実施例1−1および実施例1−2において、それぞれの実施例で得たアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液A:実施例1−1、溶液B:実施例1−2)を用い、ガラス基板の加熱温度を300℃に変えて、同様の操作を行い、同様の解析により、本溶液を用いた成膜方法により、300℃におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。本実施例で得られたアルミニウム酸化物膜は、XRDによりピークが確認されず、アモルファス状態であることが確認された。
[実施例1−16]
実施例1−1〜10で得られた膜の密着性について、スコッチテープ(R)2364(3M社製)を用いて、剥がし試験により確認を行った。アルミニウム酸化物膜を成膜した前記ポリプロピレン(PP)フィルムの成膜面にテープを押し付けて貼り、斜め45°に引き剥がした。引き剥がした後を目視、ATR−IRおよびSEM測定で確認したところ、強い膜の剥がれは確認されず、本組成物によって成膜した膜の密着性が高いことを確認した。
[実施例1−17]
アルミニウム酸化物膜を成膜する基材として、紙(薬包紙(20mm角(厚さ31μm))を用い、この紙を142℃に加熱し、実施例1−4で調製したアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液D)を用いて、実施例1−1と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。紙上に形成された膜の同様の分析により、本溶液を用いた成膜方法により、142℃の低温における紙へのアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。
得らえた膜をSEM分析を行ったところ、図5が得られ、紙の繊維の表面を粒子状のアルミニウム酸化物がコートされていることが確認された。
[実施例1−18]
実施例1−1〜10および14において得られたアルミニウム酸化物膜のついたいずれの基材も、550nmでの垂直透過率が80%以上と高く、光学材料として利用が可能である。また、ガラス基板に成膜したアルミニウム酸化物膜は、500℃の加熱でも変質が見られず、耐熱材料としての利用が可能である。実施例1−1〜15および17で得られた膜の表面抵抗値を測定したところ、抵抗値が得られず導電性がないことから、絶縁材料としての利用が可能である。実施例1−1、10および17のアルミニウム酸化物膜のついた基材は成膜で得らえた膜表面に微小な凹凸を有することが確認され、反射防止効果、触媒担体としての利用が可能である。実施例1−1〜10および17において、本発明の組成物で成膜したアルミニウム酸化物膜はガラスや樹脂等の基材への密着性が高いことから、各種基材の保護膜や塗装や積層膜の下地等、アンダーコート膜、基材に積層可能な電子デバイス用膜等の利用が可能である。このように、本発明のアルミニウム酸化物膜のついた基材は、アルミニウム酸化物機能膜としての利用が可能である。
[実施例1−19]
実施例1−1〜9、14および15に記載のアルミニウム酸化物膜を有するガラス基板や、実施10〜13において得られたアルミニウム酸化物膜を有するポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリルといった樹脂の板およびフィルム、および実施例1−17で得られたアルミニウム酸化物膜を有する紙は、いずれも実施例1−18記載の機能を有するアルミニウム酸化物機能膜を有する基材として利用が可能である。
[比較例1−1]
実施例1−2において、テトラヒドロフラン(THF)の代わりにヘキサンを用いて、実施例1−2と同様の操作を行い、噴霧塗布に用いるための、トリエチルアルミニウムを含むアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液X)を得た。
この電子供与性溶媒を含まない溶液(溶液K)を用いて、実施例1−1と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行ったが、粉状の物質が基材に付着したのみであった。また、付着した粉状の物質はほとんどなく、基材から剥がれ落ちてしまい、アルミニウム酸化物膜は形成されなかった。
[比較例1−2]
実施例1−1おいて、大気圧、不活性ガス中の水分が0.003モル%(相対湿度0.1%@21℃)と実質的にほとんど水分を含まない窒素雰囲気下において、ヒーターで加熱した基板に対して、スプレーノズルより溶液Aを2ml/分で8分間噴霧した。実施例1−1と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行ったが、基材に付着物はほとんどなく、成膜終了後に、得られた膜を相対湿度90%の水分を含む窒素雰囲気下で200℃の加熱を行ったが、基材に付着した物質がほとんどないことから、同様にアルミニウム酸化物膜の形成は確認できなかった。
[比較例1−3]
トルエン86.41gに、アルミニウムトリスアセチルアセトナト(Al(acac)3)4.32g を室温で加えた。十分攪拌した後に、溶液をフィルター(細孔:3μm以下)でろ過することで、噴霧塗布に用いるための、アルミニウムトリスアセチルアセトナト(Al(acac)3)を含むアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液L)を得た。
この炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐したアルキル基を有機アルミニウム化合物の構造中に含まない有機アルミニウム化合物を含有する溶液(溶液Y)を用いて、実施例1−1と同様の操作を行い、スプレー成膜により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。
この電子供与性溶媒を含まない溶液(溶液L)を用いて、実施例1−1と同様の操作を行い、基板の加熱温度が200℃においてスプレー成膜により膜の成膜を行ったが、基材への付着物はほとんどなくアルミニウム酸化物膜は形成されなかった。
[比較例1−4]
トルエン90.19gに、アルミニウムトリイソプロポキシド(Al(OiPr)3)4.51g を室温で加えた。十分攪拌した後に、溶液をフィルター(細孔:3μm以下)でろ過することで、噴霧塗布に用いるための、アルミニウムトリイソプロポキシド(Al(OiPr)3)を含むアルミニウム酸化物膜製造用溶液(溶液Z)を得た。
この炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐したアルキル基を有機アルミニウム化合物の構造中に含まない有機アルミニウム化合物を含有する溶液(溶液M)を用いて、実施例1−1と同様の操作を行い、、基板の加熱温度が200℃においてスプレー成膜により膜の成膜を行ったが、基材への付着物はほとんどなくアルミニウム酸化物膜は形成されなかった。
[実施例2−1]
テトラヒドロフラン(THF)108.45gに、トリエチルアルミニウム(TEAL:東ソー・ファインケム株式会社製)15.13gを室温で加えた。十分攪拌して得られたTEAL/THF溶液に、20℃前後となるように反応による発熱を除熱しながら、水0.48gを含有したTHF溶液48.8gを、水のTEALに対するモル比(水/TEAL)が0.2になるように撹拌しながら滴下した。その後、65℃まで加熱して65℃で2.5時間反応させた。反応終了後、放冷して反応生成物を回収した。反応後の生成物は無色透明溶液であった。薬液の反応性について、濾紙上での反応性を目視で確認したところ、濾紙の焦げ等は確認されなかった。
このようにして、トリエチルアルミニウムを部分的に加水分解した生成物を含むアルミニウム酸化物膜製造用組成物(組成物A)を得た。
この組成物Aを用いて、スプレー熱分解法により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。アルミニウム酸化物膜を成膜する基材として、18mm角(厚さ0.7mm)のガラス基板(コーニング社製、EagleXG(R))を用い、このガラス基板を200℃に加熱し、大気圧、不活性ガス中の水分が2.3モル%(相対湿度90%@21℃)でと水が存在する窒素雰囲気下において、ヒーターで加熱した基板に対して、スプレーノズルより溶液Aを2ml/分で8分間噴霧した。この成膜時において供給した酸素源である水の組成物A中のAlモル数に対するモル比は90であった。スプレーノズルより吐出する液滴の大きさは、3〜20μmの範囲であり、かつスプレーノズルと基板との距離を20cmとして行った。噴霧終了後、製膜した基材を5分間加熱を継続した。
ガラス基板上に形成された膜を、放冷後に大気中に取り出して、SEMおよびEPMAで分析し、膜の付着および膜を構成する元素が酸素およびアルミニウム元素であることを確認した。図7に本実施例で得られた膜の表面、図8に前記膜の断面のSEM分析の結果をそれぞれ示した。さらにATR−IRにより分析を行ったところ、550〜1000cm-1付近のガラス基板由来のピークと重なるピークの増加および2800〜3100cm-1の間に見られる、有機アルミニウム化合物や溶媒がそれらの構造中に有するC−Hに由来するに帰属されるピークが観測されないことを確認した。以上の分析から、本溶液を用いた成膜方法により、200℃の低温におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。また、本実施例で得られたアルミニウム酸化物膜は、XRDによりピークが確認されず、アモルファス状態であることが確認された。アルミニウム酸化物膜の膜厚は、触針式表面形状測定器による測定したところ、146nmであった。また、可視光(550nm)での透過率は91.0%であり、透過率80%以上の透明なアルミニウム酸化物膜を得た。
得られた膜の密着性について、クロスカット試験およびそこで使用したスコッチテープ(R)2364(3M社製)を用いた剥がし試験を行い、目視およびATR−IRおよびSEM測定で確認したところ、膜の剥がれ等のないことを確認した。
[実施例2−2]
実施例2−1において、水0.48gの代わりに水0.95gとし、水のTEALに対するモル比(水/TEAL)が0.4になるように滴下すること以外は、実施例2−1と同様の手法を用いて、無色透明溶液を得た。薬液の反応性について、濾紙上での反応性を目視で確認したところ、濾紙の焦げ等は確認されなかった。
このようにして、トリエチルアルミニウムを部分的に加水分解した生成物を含むアルミニウム酸化物膜製造用組成物(組成物B)を得た。
この組成物Bを用いて、実施例2−1と同様な手法で、スプレー熱分解法により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。実施例2−1と同様の分析により、組成物Bを用いた成膜方法により、200℃の低温におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。また、本実施例で得られたアルミニウム酸化物膜は、XRDによりピークが確認されず、アモルファス状態であることが確認された。アルミニウム酸化物膜の膜厚は、触針式表面形状測定器による測定したところ、119nmであった。また、可視光(550nm)での透過率は84.3%であり、透過率80%以上の透明なアルミニウム酸化物膜を得た。
得られた膜の密着性について、実施例2−1と同様、クロスカット試験およびそこで使用したスコッチテープ(R)2364(3M社製)を用いた剥がし試験を行い、目視およびATR−IRおよびSEM測定で確認したところ、膜の剥がれ等のないことを確認した。図9に本実施例で得られた膜の表面、図10に同膜の断面のSEM分析の結果をそれぞれ示した。
[実施例2−3]
実施例2−1において、水0.48gの代わりに水1.44gとし、水のTEALに対するモル比(水/TEAL)が0.6になるように滴下すること以外は、実施例2−1と同様の手法を用いて、無色透明溶液を得た。この生成物中に含まれる微量のゲル状の不溶物をフィルター(細孔:3μm以下)でろ過を行い、無色透明溶液を回収した。薬液の反応性について、濾紙上での反応性を目視で確認したところ、濾紙の焦げ等は確認されなかった。
このようにして、トリエチルアルミニウムを部分的に加水分解した生成物を含むアルミニウム酸化物膜製造用組成物(組成物C)を得た。
この組成物Cを用いて、実施例2−1と同様な手法で、スプレー熱分解法により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。実施例2−1と同様の分析により、組成物Cを用いた成膜方法により、200℃の低温におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。また、本実施例で得られたアルミニウム酸化物膜は、XRDによりピークが確認されず、アモルファス状態であることが確認された。アルミニウム酸化物膜の膜厚は、触針式表面形状測定器による測定したところ、76nmであった。また、可視光(550nm)での透過率は83.3%であり、透過率80%以上の透明なアルミニウム酸化物膜を得た。
得られた膜の密着性について、実施例2−1と同様、クロスカット試験およびそこで使用したスコッチテープ(R)2364(3M社製)を用いた剥がし試験を行い、目視およびATR−IRおよびSEM測定で確認したところ、膜の剥がれ等のないことを確認した。
[比較例2−1]
実施例2−1において、水0.48gの代わりに水1.91gとし、水のTEALに対するモル比(水/TEAL)が0.8になるように滴下すること以外は、実施例2−1と同様の手法を用いて、無色透明溶液を得た。この生成物中に含まれる微量のゲル状の不溶物をフィルター(細孔:3μm以下)でろ過を行い、無色透明溶液を回収した。薬液の反応性について、濾紙上での反応性を目視で確認したところ、濾紙の焦げ等は確認されなかった。
このようにして、トリエチルアルミニウムを部分的に加水分解した生成物を含むアルミニウム酸化物膜製造用組成物(組成物D)を得た。
この組成物Dを用いて、実施例2−1と同様な手法で、スプレー熱分解法により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行ったが、基板への付着物はほとんど見られず、膜を形成をすることが出来なかった。
[比較例2−2]
実施例1において、加水分解時に添加する水の量を変えて水のTEALに対するモル比(水/TEAL)が1.0になるように水の量を調整したこと以外は実施例2−1の組成物Aの調製方法と同様にして、トリエチルアルミニウムを部分的に加水分解した生成物を含むアルミニウム酸化物膜製造用組成物(組成物E)を調製した。この組成物Eを用いて、実施例2−1と同様な手法で、スプレー熱分解法により、アルミニウム酸化物膜の成膜を200℃で行ったが、白い粉状の粉体が基板表面に付着し、密着性の良い膜を得ることが出来なかった。
得られた膜の密着性について、実施例2−1と同様、クロスカット試験およびそこで使用したスコッチテープ(R)2364(3M社製)を用いた剥がし試験を行い、目視およびATR−IRおよびSEM測定で確認したところ、基板表面に付着した白い粉状の粉体は剥がれてしまうことを確認した。
実施例2−1、2、3、4および比較例2−1でそれぞれ調製した各組成物を用いたスプレー成膜の結果について表1に示す。
[実施例2−4]
テトラヒドロフラン(THF)73.2gに、トリエチルアルミニウム(TEAL:東ソー・ファインケム株式会社製)11.35gを室温で加えた。十分攪拌して得られたTEAL/THF溶液に、20℃前後となるように反応による発熱を除熱しながら、水1.08gを含有したTHF溶液36.6gを、水のTEALに対するモル比(水/TEAL)が0.6になるように撹拌しながら滴下した。その後、65℃まで加熱して65℃で2.5時間反応させた。反応終了後、放冷して反応生成物を回収した。反応後の生成物は無色透明溶液であった。この生成物中に含まれる微量のゲル状の不溶物をフィルター(細孔:3μm以下)でろ過を行い、無色透明溶液を回収した。薬液の反応性について、濾紙上での反応性を目視で確認したところ、濾紙の焦げ等は確認されなかった。
このようにして、トリエチルアルミニウムを部分的に加水分解した生成物を含むアルミニウム酸化物膜製造用組成物(組成物F)を得た。この組成物Fの一部について、真空乾燥により溶媒等を除去した後のトリエチルアルミニウムを部分的に加水分解した生成物を主成分とする残存物について、1H-NMR(THF−d8,ppm) 測定を行い、図6のスペクトルを得た。この組成物Fを用いて、実施例2−1と同様な手法で、スプレー熱分解法により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。実施例2−1と同様の分析により、組成物Fを用いた成膜方法により、200℃の低温におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。
[実施例2−5]
実施例2−1で調製した組成物Aを用いて、アルミニウム酸化物膜を成膜する基材として、ポリプロピレン(PP)フィルム(30mm角(厚さ0.2mm))およびポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(60mm角(厚さ75μm))を用いて、基材の加熱温度を130℃として実施例2−1と同様な手法で、スプレー熱分解法により、アルミニウム酸化物膜の成膜をそれぞれの基材に行った。実施例2−1と同様の分析により、組成物Fを用いた成膜方法により、130℃の低温におけるアルミニウム酸化物膜の形成を確認した。
[比較例2−3]
実施例2−1において、トリエチルアルミニウムを部分的に加水分解した生成物を含むアルミニウム酸化物膜製造用組成物(組成物A)を用いて、不活性ガス中の水分が0.25モル%(相対湿度1%@21℃)でと水が存在する窒素雰囲気下としたこと以外は実施例2−1と同様の手法により、スプレー熱分解法により、アルミニウム酸化物膜の成膜を行った。この成膜では、ガラス基板への付着物はほとんどなく、アルミニウム酸化物膜を得ることが出来なかった。
[実施例2−6]
実施例2−1、2、3において得られたアルミニウム酸化物膜のついたいずれの基材も、550nmでの垂直透過率が80%以上と高く、光学材料として利用が可能である。また、ガラス基板に成膜したアルミニウム酸化物膜は、成膜後にさらに500℃で加熱を行っても変質が見られず、耐熱材料としての利用が可能である。これらの膜の表面抵抗値を測定したところ、抵抗値が得られず導電性がないことから、絶縁材料としての利用が可能である。さらに、本発明の組成物で成膜したアルミニウム酸化物膜はガラスや樹脂等の基材への密着性が高いことから、各種基材の保護膜や塗装や積層膜の下地等、アンダーコート膜、基材に積層可能な電子デバイス用膜等の利用が可能である。これらのアルミニウム酸化物膜のついた基材は成膜で得らえた膜表面に微小な凹凸を有することが確認され、反射防止効果、触媒担体としての利用が可能である。このように、本発明のアルミニウム酸化物膜のついた基材は、アルミニウム酸化物機能膜としての利用が可能である。
[実施例2−8]
実施例2−1、2、3および4に記載のアルミニウム酸化物膜を有するガラス基板や、実施例2−6において得られたアルミニウム酸化物膜を有するポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)といった樹脂フィルムは、いずれも実施例2−7記載の機能を有するアルミニウム酸化物機能膜を有する基材として利用が可能である。
本発明は、アルミニウム酸化物膜の製造分野に有用である。
1・・・スプレーボトル、
2・・・基材ホルダ(ヒーター付)、
3・・・スプレーノズル、
4・・・コンプレッサ−、
5・・・基材、
6・・・水蒸気導入用チューブ

Claims (16)

  1. (A)下記一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物またはその部分加水分解物の有機溶媒溶液を、基材の少なくとも一部の表面に噴霧塗布して塗布膜を形成する工程、
    但し、前記部分加水分解物は、前記有機アルミニウム化合物に対してモル比で0.7以下の水を用いて前記有機アルミニウム化合物を有機溶媒中で部分的に加水分解して得た物であり、かつ
    前記噴霧塗布は、0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で行う、
    (B)前記塗布膜を形成した基材を0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下、400℃以下の温度で加熱して、前記塗布膜からアルミニウム酸化物膜を形成する工程、
    を含むアルミニウム酸化物膜を有する物品の製造方法。
    (式中、R1は水素、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐したアルキル基、R2、R3は独立に、水素、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐したアルキル基、炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐したアルコキシル基、アシルオキシ基、またはアセチルアセトナート基を表す。)
  2. 前記工程(A)において、有機アルミニウム化合物の有機溶媒溶液を用い、
    一般式(1)中、R1は炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐したアルキル基、R2、R3は独立に、炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐したアルキル基、炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐したアルコキシル基、アシルオキシ基、またはアセチルアセトナート基を表す、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記有機溶媒が電子供与性を有する有機溶媒を含有し、かつ
    前記溶液中の有機アルミニウム化合物の濃度が、0.1〜35重量%である、
    請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記電子供与性を有する有機溶媒を構成する分子のモル数が、有機アルミニウム化合物のモル数に対して等倍以上存在することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記工程(A)の噴霧塗布において、基材表面の温度が20〜300℃である請求項2〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記工程(A)において、有機アルミニウム化合物の部分加水分解物の有機溶媒溶液を用い、
    前記工程(A)で用いる前記有機溶媒が、炭化水素化合物および/または電子供与性を有する有機溶媒を含有する有機溶媒である請求項1に記載の製造方法。
  7. 前記有機溶媒溶液における部分加水分解物濃度が0.1〜35質量%の範囲である請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記工程(A)を400℃以下の温度での加熱下で行い、前記工程(A)と同時に又は引き続き工程(B)での加熱を行う請求項6または7に記載の製造方法。
  9. 前記噴霧塗布は、スプレー塗布法、スプレー熱分解法、静電塗布法、又はインクジェット法により行う、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
  10. 前記一般式(1)中のR1がメチル基またはエチル基である請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
  11. 下記一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物の有機溶媒溶液からなる膜形成用組成物であって、
    前記組成物は、膜の塗布形成が0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で行われるアルミニウム酸化物膜の形成に用いるための物である、前記組成物。
    (式中、R1は水素、炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐したアルキル基、R2、R3は独立に、水素、炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐したアルキル基、炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐したアルコキシル基、アシルオキシ基、またはアセチルアセトナート基を表す。)
  12. 下記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物を有機溶媒中で部分的に加水分解して得られた、前記有機アルミニウム化合物の部分加水分解物を含有する膜形成用組成物であって、
    (a)前記部分加水分解は、前記有機アルミニウム化合物に対するモル比が0.7以下の水を用いて行われ、かつ
    (b)前記組成物は、膜塗布形成が0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で行われるアルミニウム酸化物膜の形成に用いるための物である、前記組成物。
    (式中、R1は水素、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐したアルキル基、R2、R3は独立に、水素、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐したアルキル基、炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐したアルコキシル基、アシルオキシ基、またはアセチルアセトナート基を表す。)
  13. 前記0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で行われる膜塗布形成は、
    (c1)前記組成物を0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で基材の少なくとも一部の表面に噴霧塗布して塗布膜を形成する工程、および
    (c2)前記塗布膜を形成した基材を0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下、400℃以下の温度で加熱して、アルミニウム酸化物膜を形成する工程、を含む、請求項11または12に記載の組成物。
  14. 基材に密着した透明なアルミニウム酸化物膜を形成するための請求項11〜13のいずれか一項に記載の組成物。
  15. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法、または請求項11〜14のいずれか一項に記載の組成物を用いて0.5モル%〜30モル%の水分を含有する不活性ガス雰囲気下で製造した、アルミニウム酸化物膜を有する物品。
  16. 前記物品がアルミニウム酸化物膜を基材に付着した複合体またはアルミニウム酸化物膜とアルミニウム酸化物膜以外の層とを有する複合膜を基材に付着した複合体である請求項15に記載のアルミニウム酸化物膜を有する物品。
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