JP2016041809A - インク組成物及びインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】種々の記録媒体、特に非吸収性又は低吸収性の記録媒体に対して、ハジキや凝集ムラが少なく、ベタ埋まりが優れた印字品質を得ることが可能であり、かつ、ノズルの目詰まりを低減でき、インクの保存安定性にも優れた、インク組成物及び印刷物の提供。
【解決手段】少なくとも、色材と、HLBが4〜8と9〜20の水溶解性の異なる2種以上の式(1)で表されるポリシロキサン系界面活性剤と、1気圧下での沸点が180〜230℃の範囲内であるアルキルポリオール類と、を含んでなり、1気圧下での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含まず、インク非吸収性又は低吸収性の記録媒体に記録される、インク組成物、及びインクジェット記録方法によって記録が行われた記録物。
Figure 2016041809

【選択図】なし

Description

本発明は、インク組成物及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録用ヘッドのノズルから吐出させた微小なインク滴によって画像や文字を記録するいわゆるインクジェット記録方法は、従来、主に紙等のインク吸水性の記録媒体表面への記録に利用されてきた。このようなインクジェット記録方法に用いられるインク組成物としては、各種の染料および/又は顔料等の色材を高沸点有機溶剤および水の混合物に溶解ないし分散させたものが広く利用されている。
一方、紙等の吸水性の記録媒体だけではなく、印刷本紙、合成紙、フィルム等のインク非吸収性又は低吸収性の記録媒体に対してもインクジェット記録方法により記録可能なインク組成物が要求されている。このような要求に対して、インク非吸収性又は低吸収性の記録媒体に記録可能なインク組成物が提案されている(特許文献1参照)。
一方、ポリシロキサン系界面活性剤を用いるインクとしては、例えば、2種類以上の異なるHLB値を有する界面活性剤を含むW/O型エマルジョンから構成される孔版インク(特許文献2参照)、HLB値が11〜15の範囲内にある非イオン界面活性剤の1種又は2種以上を含む水なし平版用インク組成物(特許文献3参照)などが知られている。
特開2007−217671号公報 特開平6−220383号公報 特開昭63−178178号公報
しかしながら、特許文献1で提案されているインク組成物は、高沸点有機溶剤を含有するため、インク非吸収性又は低吸収性の記録媒体上に記録した際に、インクの乾燥が不十分となりやすく、濃淡ムラやブロッキング、インク密着不良等の印刷品質を損なう場合があった。また、高沸点有機溶剤を含有しないインク組成物は、インクジェット記録用ヘッドのノズルの乾燥を防止することができずノズルの目詰まりが生じやすくなると共に、インクの保存安定性も低下する場合があった。
一方でまた、特許文献2や特許文献3で提案されているインク組成物は、記録媒体においてフィルム等の非吸収記録媒体では、記録媒体表面への濡れ性不足から生じる、ハジキや凝集ムラ等を生じ、印字品質が不十分な場合があった。
本発明は、上記課題を解決することを鑑みてなされたものであり、種々の記録媒体に対して印刷可能なインク組成物およびインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、種々の記録媒体、特に非吸収性又は低吸収性の記録媒体に対して、ハジキや凝集ムラが少なく、ベタ埋まりが優れた印字品質を得ることが可能であり、かつ、ノズルの目詰まりを低減でき、インクの保存安定性にも優れた、インク組成物及びインクジェット記録方法を提供することにある。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本発明に係るインク組成物の一態様は、
少なくとも、色材と、水溶解性の異なる2種以上のポリシロキサン系界面活性剤と、1気圧下での沸点が180〜230℃の範囲内であるアルキルポリオール類と、を含んでなり、1気圧下での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含まず、インク非吸収性又は低吸収性の記録媒体に記録されることを特徴とする。
適用例1のインク組成物によれば、前記ポリシロキサン系界面活性剤と前記アルキルポリオール類とを併用することで、種々の記録媒体、特に非吸収性又は低吸収性の記録媒体に対して、ハジキや凝集ムラが少なく、ベタ埋まりが優れた印字品質を得ることが可能であり、かつ、ノズルの目詰まりを低減でき、インクの保存安定性にも優れる。
[適用例2]
適用例1のインク組成物において、(a)の特徴を有する親油的ポリシロキサン系界面活性剤と(b)の特徴を有する親水的ポリシロキサン系界面活性剤とを含むことができる。
(a)HLB値が4〜8である、又は、下記式(1)においてRがメチル基である親油的ポリシロキサン系界面活性剤。
(b)HLB値が9〜20である、又は、下記式(1)においてRが水素原子である親水的ポリシロキサン系界面活性剤。
Figure 2016041809
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは2〜13の整数を表し、mは0以上の整数を表し、nは1〜5の整数を表す。)
[適用例3]
適用例1又は適用例2のインク組成物において、インク組成物中における、前記親油的ポリシロキサン系界面活性剤含有量/前記親水的ポリシロキサン系界面活性剤含有量の質量比が、1/20以上2/1以下であることができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例のインク組成物において、インク組成物中における、前記親水的ポリシロキサン系界面活性剤含有量が前記親油的ポリシロキサン系界面活性剤の含有量よりも多いことができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例のインク組成物において、デービス法により算出されたHLB値が4.2〜8.0の範囲内であるグリコールエーテル類を含むことができる。
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例のインク組成物において、前記アルキルポリオール類は、C4〜7の1,2−直鎖アルキルジオール類であり、C4〜7の1,2−直鎖アルキルジオール類の質量/前記グリコールエーテルとの質量の関係は、1/1超過20/1以下であることができる。
[適用例7]
本発明に係る記録装置の一態様は、適用例1ないし適用例6のいずれか一例のインク組成物を記録することができる。
[適用例8]
本発明に係る記録物の一態様は、適用例7のインクジェット記録方法によって記録が行われた記録物である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
(1.インク組成物)
少なくとも、色材と、水溶解性の異なる2種以上のポリシロキサン系界面活性剤と、1気圧下での沸点が180〜230℃の範囲内であるアルキルポリオール類と、を含んでなり、1気圧下での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含まず、インク又は低吸収性の記録媒体に記録される、ことを特徴とする。
以下、本実施の形態に用いられる各成分について詳細に説明する。
(2.色材)
本実施の形態に係るインク組成物は、色材を含んでなる。色材としては、染料又は顔料が挙げられるが、耐水性、耐ガス性、耐光性等を有する観点から顔料であることが好ましい。このような顔料としては、顔料としては、無機顔料および有機顔料を使用することができ、それぞれ単独又は複数種混合して用いることができる。前記無機顔料としては、例えば、酸化チタンおよび酸化鉄の他に、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックが使用できる。また、前記有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等が使用できる。
イエロー有機顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、150、151、153、154、155、167、172、180、185、188、213等が挙げられる。
マゼンタ有機顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、53、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、194、202、209、219、224、245、247、254、264又はC.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
シアン有機顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、25、60、65、66、75、C.I.バットブルー4、60等が挙げられる。
ブラック系顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄顔料等の無機顔料;アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料等が挙げられる。
また、上記以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、10、36、37、C.I.ピグメントブラウン3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63、64、C.I.ピグメントホワイト4、6、6:1、7、18、26等が挙げられる。
これらの顔料は、インク組成物全量に対して0.5質量%以上20質量%以下の範囲で含まれることが好ましく、1質量%以上10質量%以下の範囲で含まれることがより好ましい。含有量が0.5質量%未満では印字濃度(発色性)が不十分である場合があり、また10質量%よりも大きいと光沢メディア上での光沢性劣化やノズルの目詰まり、吐出の不安定を起こす等、の信頼性に不具合を生じる場合がある。
また、発色や光沢メディア上での光沢性の観点から、インク中での顔料の体積平均粒子径(以下、適宜平均粒子径という)が50nm〜400nmの範囲であることが好ましい。これらの平均粒子径は、Microtrac UPA150(マイクロトラック社製)や粒度分布測定機LPA3100(大塚電子(株)製)等の粒径測定によって得ることがでる。
(3.分散剤)
前記顔料をインク組成物に適用するためには、顔料が水中で安定的に分散保持できるようにする必要がある。その方法としては、水溶性樹脂および/又は水分散性樹脂等の樹脂分散剤にて分散させる方法(以下、この方法により処理された顔料を「樹脂分散顔料」と記載する)、水溶性界面活性剤および/又は水分散性界面活性剤の界面活性剤にて分散させる方法(以下、この方法により処理された顔料を「界面活性剤分散顔料」と記載する)、顔料粒子表面に親水性官能基を化学的・物理的に導入し、前記の樹脂あるいは界面活性剤等の分散剤なしで水中に分散および/又は溶解可能とする方法(以下、この方法により処理された顔料を「表面処理顔料」と記載する)等が挙げられる。本実施の形態に係るインク組成物は、前記の樹脂分散顔料、界面活性剤分散顔料、表面処理顔料のいずれも用いることができ、必要に応じて複数種混合した形で用いることもできるが、樹脂分散顔料が好ましい。
樹脂分散顔料に用いられる樹脂分散剤としては、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α―メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等およびこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
前記の塩としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリン等の塩基性化合物との塩が挙げられる。これら塩基性化合物の添加量は、前記樹脂分散剤の中和当量以上であれば特に制限はない。
前記樹脂分散剤の分子量は、重量平均分子量として1,000〜100,000の範囲であることが好ましく、3,000〜10,000の範囲であることがより好ましい。分子量が前記範囲であることにより、顔料が水中で安定的に分散し、またインク組成物に適用した際の粘度制御等がしやすい。
また、酸価としては20〜300の範囲であることが好ましく、40〜150の範囲であることがより好ましい。酸価がこの範囲であることにより、顔料粒子の水中での分散性が安定的、これを用いたインク組成物にて記録された記録物の耐水性、及び発色性が良好となる。
以上述べた樹脂分散剤としては市販品を用いることもできる。詳しくは、ジョンクリル67(重量平均分子量:12,500、酸価:213)、ジョンクリル678(重量平均分子量:8,500、酸価:215)、ジョンクリル586(重量平均分子量:4,600、酸価:108)、ジョンクリル611(重量平均分子量:8,100、酸価:53)、ジョンクリル680(重量平均分子量:4,900、酸価:215)、ジョンクリル682(重量平均分子量:1,700、酸価:238)、ジョンクリル683(重量平均分子量:8,000、酸価:160)、ジョンクリル690(重量平均分子量:16,500、酸価:240)(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
また、界面活性剤分散顔料に用いられる界面活性剤としては、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アシルメチルタウリン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸塩、アルキル硫酸エステル塩、硫酸化オレフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、モノグリセライトリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、アルキルピリジウム塩、アルキルアミノ酸塩、アルキルジメチルベタイン等の両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミド、グリセリンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
前記樹脂分散剤又は前記界面活性剤の顔料に対する添加量は、顔料100質量部に対して好ましくは1質量部〜100質量部であり、より好ましくは5質量部〜50質量部である。この範囲であることにより、顔料の水中への分散安定性が確保できる。
また、表面処理顔料としては、親水性官能基として、−OM、−COOM、−CO−、−SO3M、−SO2NH2、−RSO2M、−PO3HM、−PO32、−SO2NHCOR、−NH3、−NR3(但し、式中のMは、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表し、Rは、炭素数1〜12のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいナフチル基を示す)等が挙げられる。これらの官能基は、顔料粒子表面に直接および/又は多価の基を介してグラフトされることによって、物理的および/又は化学的に導入される。多価の基としては、炭素数が1〜12のアルキレン基、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいナフチレン基等が挙げられる。
また、前記の表面処理顔料としては、硫黄を含む処理剤によりその顔料粒子表面に−SO3Mおよび/又は−RSO2M(Mは対イオンであって、水素イオン、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機アンモニウムイオンを示す)が化学結合するように表面処理されたもの、すなわち、前記顔料が活性プロトンを持たず、スルホン酸との反応性を有せず、顔料が不溶ないしは難溶である溶剤中に、顔料を分散させ、次いでアミド硫酸、又は三酸化硫黄と第三アミンとの錯体によりその粒子表面に−SO3Mおよび/又は−RSO2Mが化学結合するように表面処理され、水に分散および/又は溶解が可能なものとされたものであることが好ましい。
一つの顔料粒子にグラフトされる官能基は単一でも複数種であってもよい。グラフトされる官能基の種類およびその程度は、インク中での分散安定性、色濃度、およびインクジェット記録用ヘッド前面での乾燥性等を考慮しながら適宜決定されてよい。
以上に述べた樹脂分散顔料、界面活性剤分散顔料、表面処理顔料を水中に分散させる方法としては、樹脂分散顔料については顔料と水と樹脂分散剤、界面活性剤分散顔料については顔料と水と界面活性剤、表面処理顔料については表面処理顔料と水、また各々に必要に応じて水溶性有機溶剤・中和剤等を加えて、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミル等の従来用いられている分散機にて行なうことができる。この場合、顔料の粒径としては、平均粒子径で20nm〜500nmの範囲になるまで、より好ましくは20nm〜200nmの範囲、特に好ましくは50〜180nmの範囲になるまで分散することが、顔料の水中での分散安定性を確保する点で好ましい。
なお、本明細書では、「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒子径のことを指すものとする。平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPAシリーズ」日機装株式会社製)を用いることができる。
(4.水不溶性樹脂)
本発明において、樹脂分散剤は水不溶性樹脂であっても良い。水不溶性とは、例えば25℃の水100gに対する溶解度が1g未満である樹脂をいう。水不溶性樹脂の構造は特に限定されないが、好ましい例を2つ挙げる。
1つめの例は、疎水性基をもつモノマーと親水性基を持つモノマーとのブロック共重合体樹脂からなり、少なくとも塩生成基をもつモノマーを含有しているものである。
疎水性基を持つモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類や酢酸ビニル等のビニルエステル類やアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類などがあり、それぞれ単独あるいは2種類以上を混合して用いることもできる。
親水性基を持つモノマーとしては、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、エチレングリコール・プロピレングリコールモノメタクリレートなどがあり、それぞれ単独あるいは2種類以上を混合して用いることもできる。特に、ポリエチレングリコール(2〜30)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(1〜15)・プロピレングリコール(1〜15)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(2〜30)メタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(2〜30)メタクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(2〜30)メタクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合体)(1〜30)メタクリレートなどの分岐鎖を構成するモノマー成分を用いることによって、印刷画像の光沢性が向上する。
塩生成基をもつモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンカルボン酸、マレイン酸などがあり、それぞれ単独あるいは2種類以上を混合して用いることもできる。
さらに、片末端に重合成官能基を有するスチレン系マクロモノマー、シリコーン系マクロモノマーなどのマクロモノマーやその他のモノマーを併用することもできる。
2つめの例は、親水性構造単位(a)と疎水性構造単位(b)とを有する水不溶性樹脂である。親水性構造単位(a)は、親水性基含有のモノマーに由来するものであれば、特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものでも、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものでもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であっても、ノニオン性の親水性基であってもよい。
本発明における水不溶性樹脂は、解離性基を有するモノマー(解離性基含有モノマー)及び/又は非イオン性の親水性基を有するモノマーを用いて解離性基及び/又は非イオン性の親水性基を導入することができる。
前記解離性基は、乳化又は分散状態の安定性の観点から好ましい。解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の分散安定性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
前記親水性基含有モノマーとしては、解離性基含有モノマーが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーがより好ましい。解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
疎水性構造単位(b)は、主鎖を形成する原子に連結基を介して結合された芳香環を有する構造単位を含むことが好ましい。このような芳香環を持つ構造単位では、芳香環が、連結基を介して水不溶性樹脂の主鎖をなす原子と結合され、水不溶性樹脂の主鎖をなす原子に直接結合しない構造を有するので、疎水性の芳香環と親水性構造単位との間に適切な距離が維持されるため、水不溶性樹脂と顔料との間で相互作用が生じやすく、強固に吸着して分散性がさらに向上する。
2つめの例のより詳細な好ましいモノマー種は特開2011−162692号公報に記載されている。
水不溶性樹脂も上述の水溶性樹脂と同様にスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体が好ましい。
前記樹脂分散剤の分子量は、重量平均分子量として1,000〜100,000の範囲であることが好ましく、3,000〜10,000の範囲であることがより好ましい。分子量が前記範囲であることにより、顔料が水中で安定的に分散し、またインク組成物に適用した際の粘度制御等がしやすい。
また、酸価としては50〜300の範囲であることが好ましく、70〜150の範囲であることがより好ましい。酸価がこの範囲であることにより、顔料粒子の水中での分散性が安定的に確保でき、またこれを用いたインク組成物にて記録された記録物の耐水性が良好となる。
(5.アルキルポリオール類)
本実施の形態に係るインク組成物は、1気圧下での沸点が180〜230℃の範囲内であるアルキルポリオール類を含んでなる。本実施の形態に係るインク組成物は、前述の沸点範囲を満たすアルキルポリオール類を含むことで、記録媒体種の影響をあまり受けずに、インク組成物の濡れ性、浸透性、乾燥性を制御することできる。これにより、種々の記録媒体、特にインク非吸収性又は低吸収性の記録媒体に対して定着性に優れた画像を記録することができると共に、インクジェット記録用ヘッドのノズルの目詰まりを低減させることができる。
また、本実施の形態に係るインク組成物中の前記アルキルポリオール類は、前述のデービス法により算出されたHLB値が4.2〜8.0の範囲内であるグリコールエーテル類が添加される場合に、当該成分をインクビヒクル中への可溶化剤という特性も有する。
本実施の形態に係るインク組成物に含まれるアルキルポリオール類は、1気圧下での沸点が180〜230℃の範囲内であり、190〜220℃の範囲のポリオール類を少なくとも1種類以上含有することが好ましい。ポリオール類としては、C4〜7の1,2−直鎖アルキルジオール類が好ましい。(C4〜7の1,2−直鎖アルキルジオール類の質量)/(前記グリコールエーテルとの質量)の関係は、前記グリコールエーテルとの相溶性の観点から、好ましくは1/1超過20/1以下であること、より好ましくは質量比で2/1以上16/1以下であること、更に好ましくは質量比で4/1以上16/1以下である。
インク組成物に含まれるアルキルポリオール類の1気圧下での沸点が180℃未満であるとインク組成物の乾燥性が高まることにより、インクジェット記録用ヘッドのノズルの目詰まりが発生する場合がある。1気圧下での沸点が230℃より大きくなると、インク組成物の乾燥性が低下することで、特にインク非吸収性の記録媒体上に記録した印刷画像の濃淡ムラが目立ち、画像の定着性が低下する場合がある。
1気圧下での沸点が180〜230℃の範囲内であるアルキルポリオール類の具体例としては、プロピレングリコール[188℃]、1,3−プロパンジオール[210℃]、1,2−ブタンジオール[194℃]、1,3−ブタンジオール[208℃]、1,4−ブタンジオール[230℃]、1,2−ペンタンジオール[210℃]、3−メチル−1,3−ブタンジオール[203℃]、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール[226℃]、2−メチル−1,3−プロパンジオール[214℃]、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール[230℃]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール[210℃]、2−メチルペンタン−2,4−ジオール[197℃]、ジプロピレングリコール[230℃]、1,2−ヘプタンジオール[227℃]等が挙げられる。なお、括弧内の数値は、1気圧下での沸点を表す。
前記アルキルポリオール類の含有量は、記録媒体への濡れ性及び浸透性を向上させて濃淡ムラを低減させる効果や、インク保存安定性及び吐出信頼性を確保する観点から、インク組成物全量に対して5質量%以上30質量%以下の範囲で含まれることが好ましい。5質量%未満であると、インク組成物の保存安定性が低下し、またインク組成物の乾燥性が高まることで、インクジェット記録用ヘッドのノズルの目詰まりが発生する場合がある。一方、30質量%よりも大きくなると、インク組成物の乾燥性が低下することで、インク非吸収性の記録媒体上に記録した印刷画像の濃淡ムラが目立ち、画像の定着性が低下する場合がある。また、インク組成物粘度をインクジェット記録方式に適した範囲に調整し難くなる。
上記のアルキルポリオール類のうち、特に炭素数が4〜7(以下、「C4〜7」と略記することもある)の範囲内である1,2−直鎖アルキルジオール類は、上記の機能と併せて、本発明のインク組成物の必須成分であるグリコールエーテル類と相乗して、記録媒体に対するインク組成物の濡れ性をさらに高めて均一に濡らす作用、及び浸透性をさらに高める効果を有する。そのため、インク組成物にC4〜7の1,2−直鎖アルキルジオール類を含有させることで、さらにインクの濃淡ムラを低減させることができる。また、C4〜7の1,2−直鎖アルキルジオール類は、前述したグリコールエーテル類との相溶性に優れる。ここで「相溶する」とは、インク組成物を構成する各成分の中で、水を主溶媒としたインク組成において、前記グリコールエーテル類とC4〜7の1,2−直鎖アルキルジオール類の混合物が完全に溶解するような、各材料とこれら各材料の比率との組み合わせを意味する。前記グリコールエーテル類との相溶性に優れるC4〜7の1,2−直鎖アルキルジオールをインク組成物中に含ませることで、インク組成物における前記グリコールエーテルの溶解性を高めることができ、インク保存安定性及び吐出安定性の向上を実現できる。また、インク組成中へ前記グリコールエーテル類の含有量を増量することが容易となるため、さらなる記録画像の品質の向上に寄与することを可能とする。
このような特性を有するC4〜7の1,2−直鎖アルキルジオール類として具体的には1,2−ブタンジオール[194℃]、1,2−ペンタンジオール[210℃]、1,2−ヘキサンジオール[224℃]、1,2−ヘプタンジオール[227℃]等が挙げることができる。これらの中でも特に、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等のC4〜6(炭素数が4〜6)の1,2−直鎖アルキルジオールが、水への溶解性と前記グリコールエーテル類との相溶性、及び、ノズルの目詰まりに対する保湿性、さらに印刷画像の乾燥性の観点から好ましく、例えば、インク中におけるアルキルポリオール類の50質量%以上がC4〜6(炭素数が4〜6)の1,2−直鎖アルキルジオールであることが好ましい。
C4〜7の1,2−直鎖アルキルジオール類の添加量は、前記グリコールエーテル類との相溶性、インク組成物の保存安定性、及び吐出安定性確保、特に目詰まり防止の観点から、インク組成物全量に対して好ましくは0.5質量%〜25質量%の範囲であり、特に好ましくは1質量%〜20質量%の範囲である。特に、そのインク組成物を用いた後述するインクジェット記録方法の第2の工程(乾燥工程)において、C4〜7の1,2−直鎖アルキルジオール類の蒸発飛散速度が充分速いため、結果的に記録物の乾燥が迅速となって記録速度が向上するという格別な効果がある。また各工程中での臭気の点でも問題が出ない。
さらに、本発明のインク組成物は、1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含まない。1気圧下相当での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を含むことで、インク組成物の乾燥性が大幅に低下してしまう。その結果、種々の記録媒体、特にインク非吸収性又は低吸収性の記録媒体において、画像の濃淡ムラが目立つだけではなく、画像の定着性も得られないからである。1気圧下での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類としては、たとえば1気圧下での沸点が290℃のグリセリンが挙げられる。
実質的に含まないとは、添加する意義を十分に発揮する量以上含有させない事を示す。上記アルキルポリオールを「実質的に含まない」の具体例としては、たとえば1.0質量%以上含まない、好ましくは0.5質量%以上含まない、より好ましくは0.1質量%以上含まない、さらに好ましくは0.05質量%以上含まない、特に好ましくは0.01質量%以上含まない、もっとも好ましくは0.001質量%以上含まないことである。
(6.ポリシロキサン系界面活性剤)
本発明による水系顔料インク組成物は、HLB値が異なる2種以上のポリシロキサン系界面活性剤を含有する。
好ましい態様においては、HLB値が2〜8の親油的ポリシロキサン系界面活性剤1種又は2種以上と、HLB値が9〜20の親水的ポリシロキサン系界面活性剤1種又は2種以上とを含有する。HLB値が4未満の界面活性剤は、水系インク溶媒への溶解が困難になるので好ましくない。一方、親水的ポリシロキサン系界面活性剤として使用する界面活性剤のHLB値は、好ましくは9〜20、より好ましくは9〜16である。
なお、「HLB値(hydrophilic lipophilic balance:親水性親油性バランス)」とは、界面活性剤分子の親水基と親油基とのバランスから決められる値であり、HLB値が高いと親水性が高い界面活性剤であることを示し、HLB値が低いと親油性が高い界面活性剤であることを示す。本明細書において「親水的」及び「親油的」とは、HLB値が異なる2種のポリシロキサン系界面活性剤を単に相対的に比較した場合に、一方が他方に対してそれぞれ「親水的」及び「親油的」になることを意味するのみであり、「親水的」ポリシロキサン系界面活性剤及び「親油的」ポリシロキサン系界面活性剤が、それぞれ一般的に親水性の界面活性剤及び親油性の界面活性剤であることを意味するものではない。なお、ポリシロキサン系界面活性剤は、ポリエーテルシロキサン系界面活性剤であることが好ましい。
上記のポリシロキサン系界面活性剤は市販されているものを用いることができ、例えば、前記親水的ポリシロキサン系界面活性剤としては、KF−6011(HLB値=14.5)、KF−6013(HLB値=10)、KF−6004(HLB値=9)、KF−6043(HLB値=14.5)、KF−643(HLB値=14)、KF−640(HLB値=14)、KF−351A(HLB値=12)、KF−354L(HLB値=16)[いずれも、信越シリコーン株式会社製]、FZ−2105(HLB値=11)、L−7604(HLB値=13)、FZ−2104(HLB値=14)[いずれも、東レ・ダウコーニング社製]等を用いることができ、また前記親油的ポリシロキサン系界面活性剤としては、KF−945(HLB値=4)、KF−6020(HLB値=4)、X−22−6191(HLB値=2)、X−22−4515(HLB値=5)、KF−6015(HLB値=5)、KF−6017(HLB値=5)、KF−6038(HLB値=3)[いずれも、信越シリコーン株式会社製]、FZ−2116(HLB値=5)、FZ−2120(HLB値=6)、L−720(HLB値=7)、L−7002(HLB値=7)、FZ−2123(HLB値=8)[いずれも、東レ・ダウコーニング社製]等を用いることができる。
本発明による水系顔料インク組成物における前記ポリシロキサン系界面活性剤の含有量は特に限定されないが、水系顔料インク組成物の全質量に対して、前記親水的ポリシロキサン系界面活性剤と親油的ポリシロキサン系界面活性剤との合計量として、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜2質量%である。含有量が0.01質量%未満になると表面張力を下げる効果が不十分となることがあり、10質量%を越えると溶解せずにノズル面での濡れ性を悪化させることがある。
本発明による水系顔料インク組成物に含まれる前記親水的ポリシロキサン系界面活性剤と親油的ポリシロキサン系界面活性剤との比率も特に限定されないが、親油的ポリシロキサン系界面活性剤含有量/親水的ポリシロキサン系界面活性剤含有量の質量比が、好ましくは1/20〜2/1、より好ましくは1/15〜1/3である。前記の質量比が1/20未満になるか、あるいは2/1を越えると、本発明の目的とする効果、すなわち、良好な光沢性や鮮映性を向上させる効果が小さくなる場合がある。また、上述のように新油的ポリシロキサン系界面活性剤よりも親水的ポリシロキサン系界面活性剤が多いことが好ましく、より好ましくは2倍以上親水的ポリシロキサン系界面活性剤が多いことが好ましい。
また、ポリシロキサン系界面活性剤は、下記式(1)に示すものを好ましく用いることが出来る。前記ポリシロキサン系界面活性剤は、特に限定されないが、プロピレングリコールを20質量%、1,2−ヘキサンジオールを10質量%、前記ポリエーテルシロキサン系界面活性剤を0.1質量%、および水を69.9質量%含む水溶液とした場合に、その水溶液の1Hzの動的表面張力が26mN/m以下ものを使用することが好ましい。例えば、バブルプレッシャー動的表面張力計BP2(KRUS社製)を用いて測定することができる。
また、ポリシロキサン系界面活性剤として、下記式(1)
Figure 2016041809
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは2〜13の整数を表し、mは0以上の整数を表し、nは1〜5の整数を表す。)
で表される一種又は二種以上の化合物を含んでなることが好ましい。さらに、上記式(1)の化合物において、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは2〜11の整数を表し、mは20〜70の整数を表し、nは2〜5の整数である一種又は二種以上の化合物を含んでなることである。がより好ましい。さらにまた、上記式(1)の化合物において、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは9〜13の整数を表し、mは2〜4の整数を表し、nは1〜2の整数である一種又は二種以上の化合物を含んでなることがより好ましい。
このような特定のポリシロキサン系界面活性剤を使用することにより、記録媒体として非吸収性のものや印刷本紙に印刷した場合であっても、インクのビーディングとブリーディングがより改善される。
上記式(1)の化合物においては、Rがメチル基である親油的ポリシロキサン系界面活性剤を使用することによって、さらにインクのビーディングが改善できる。また、上記式(1)の化合物においては、Rが水素原子である親水的ポリシロキサン系界面活性剤を併用することにより、さらにインクのブリーディングが改善できる。Rがメチル基の界面活性剤好ましくは0.01〜1.0質量%、より好ましくは0.05〜0.70質量%含有される。
上記式(1)の化合物においては、Rがメチル基の化合物とRが水素原子の化合物との配合割合を適宜、調整することにより、さらにブリーディングやビーディングのない高品質な画像が実現でき、また顔料種や樹脂量により流動性が異なる場合の調整剤として効果的である。
上記のような界面活性剤は市販されているものを用いてもよく、例えば、オルフィンPD−501、オルフィンPD−570(日信化学工業株式会社製)、KF−954A、KF−353A、KF6017、X−22−6551、AW−3(いずれも、信越化学工業株式会社製)、BYK−347、同348(いずれも、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等を用いることができる。
本発明によるインク組成物には、その他の界面活性剤、具体的には、フッ素系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤等をさらに添加しても良い。
これらのうち、アセチレングリコール系界面活性剤を併用して用いることが好ましい。これによって、インクの気泡性が少なく、かつ、インクの表面張力を下げる効果がある。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、GA、DF110D(以上全て商品名、Air Products and Chemicals, Inc.製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
(7.グリコールエーテル類)
本実施の形態に係るインク組成物は、デービス法により算出されたHLB値が4.2〜8.0の範囲内であるグリコールエーテル類を含んでなることが好ましい。本実施の形態に係るインク組成物は、前述のHLB値範囲を満たすグリコールエーテル類を含むことで、記録媒体種の影響をあまり受けずに濡れ性・浸透速度を制御することできる。これにより、種々の記録媒体、特にインク非吸収性又は低吸収性の記録媒体に対して濃淡ムラが少ない鮮明な画像を記録することができる。
ここで、本実施の形態において用いられるグリコールエーテル類のHLB値は、デービスらが提唱した化合物の親水性を評価する値であり、たとえば文献「J.T.Davies and E.K.Rideal,“Interface Phenomena”2nd ed.Academic Press,New York 1963」中で定義されているデービス法により求められる数値で、下記の式(2)によって算出される値をいう。
HLB値=7+Σ[1]+Σ[2] ・・・・・(2)
(但し、[1]は親水基の基数を表し、[2]は疎水基の基数を表す。)
下記の表1に、代表的な親水基および疎水基の基数を例示する。
Figure 2016041809
本実施の形態に係るインク組成物に含まれるグリコールエーテル類は、デービス法により算出されたHLB値が4.2〜8.0の範囲内であり、5.8〜8.0の範囲内であることがより好ましい。HLB値が4.2未満であるとグリコールエーテル類の疎水性が高まり、主溶媒である水との親和性が低下してインクの保存安定性が低下する場合がある。HLB値が8.0より大きくなると、記録媒体への濡れ性・浸透性の効果が減少し、画像の濃淡ムラが目立つ場合がある。特に、疎水表面であるインク非吸収性又は低吸収性記録媒体への濡れ性の効果は顕著に低下する傾向がある。
このようなグリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノイソオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
前記例示したグリコールエーテル類の中でも、そのグリコールエーテル類中に含まれるアルキル基が分岐構造を有することがより好ましい。アルキル基が分岐構造を有するグリコールエーテル類を含有することで、特にインク非吸収性又は低吸収性の記録媒体に対して濃淡ムラが少ない鮮明な画像を記録することができる。具体的には、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、エチレングリコールモノイソオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル等が挙げられる。
前記グリコールエーテル類中に含まれるアルキル基の分岐構造の中でも、発色性をさらに高める観点から、2−メチルペンチル基、2−エチルペンチル基、2−エチルヘキシル基がさらに好ましく、2−エチルヘキシル基が特に好ましい。具体的には、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル等が挙げられ、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等が特に好ましい。
前記グリコールエーテル類の含有量は、記録媒体への濡れ性および浸透性を向上させて濃淡ムラを低減させる効果や、インク保存安定性および吐出信頼性を確保する観点から、インク組成物全量に対して0.05質量%以上6質量%以下の範囲で含まれることが好ましい。0.05質量%未満であると、インク組成物の濡れ性、浸透性、乾燥性が乏しくなってしまい、鮮明な画像が得られにくく、また印刷濃度(発色性)が不充分である場合がある。また、6質量%よりも大きくなると、インクの粘度が高くなりヘッドの目詰まりが発生したり、インク組成物中に完全に溶解しないことにより保存安定性が得られなかったりする場合がある。前記グリコールエーテル類の含有量は、インク組成物全量に対して0.1質量%以上2質量%以下の範囲で含まれることがより好ましい。
(8.樹脂粒子)
本実施の形態に係るインク組成物は、樹脂粒子としてポリマー粒子を含有する。インク組成物に樹脂粒子を含有させることにより、記録媒体上に耐擦性に優れた画像を形成することができる。特に塩化ビニルやポリプロピレン、ポリエチレン等のインク非吸収性又はインク低吸収性の記録媒体上に該樹脂粒子を含んでなるインク組成物を用いて記録する場合、後述するインクジェット記録方法における第2工程(乾燥工程)を経ることで、耐擦性に優れた画像が得られる。その理由は、後述するインクジェット記録方法における第2工程(乾燥工程)において、当該樹脂粒子がインクを固化させ、さらにインク固化物を記録媒体上に強固に定着させる作用を有するためであり、加熱によってこの作用をより高めることができるからである。
インク組成物に用いられる、第1ポリマー粒子としては、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂およびこれらの混合物からなる群より選択されるものが好ましくは挙げられる。中でもポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂およびウレタン系樹脂からなる群から選択されたものがより好ましく、特にポリオレフィン系樹脂としては、エチレン−極性モノマー共重合体、オレフィン系エラストマーから選択される何れかの樹脂であることが好ましい。これらの樹脂はホモポリマー又はコポリマーして利用されて良く、単相構造又は複相構造(コアシェル型)の何れのものとして利用されてよく、より具体的には、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸プロピル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸ヘキシル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体等のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、エチレン−フマル酸共重合体、エチレン−クロトン酸共重合体等のエチレン−エチレン性不飽和酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン−ステアリン酸ビニル等のエチレン−ビニルエステル共重合体、さらにはポリアクリル酸エステルもしくはその共重合体、ポリメタクリル酸エステルもしくはその共重合体、ポリアクリロニトリルもしくはその共重合体、ポリシアノアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレンもしくはそれらの共重合体、石油樹脂、クロマン・インデン樹脂、テルペン樹脂、ポリ酢酸ビニルもしくはその共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、ポリ塩化ビニルもしくはその共重合体、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、フッ素ゴム、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリブタジエンもしくはその共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、天然樹脂等が挙げられる。特に、塩化ビニルやポリプロピレン、ポリエチレン等のインク非吸収性のフィルムに対して相性が良く(分子構造中に疎水性部分を有し)、加えて強力な接着性を有する親水性部分とを併せ持つものが好ましく、たとえば、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
特に、酢酸ビニルモノマーに8〜35質量%程度のエチレンモノマーを混和し高圧下で乳化重合させ、エマルジョン化したエチレン−酢酸ビニル系ポリマー粒子は、耐水性・耐候性・耐アルカリ性に優れ、また、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムに対する接着性や、耐擦性も向上する。上記エチレン−酢酸ビニル共重合体は、密着性、耐擦性、耐水性等の面から、酢酸ビニル含量が8〜35質量%、特には、12〜30質量%のものが好ましい。
このような第1ポリマー粒子の平均粒子径は200nm以上であることが好ましく、より好ましくは、200nm以上〜550nm以下の範囲であり、200〜350nmの範囲であることが好ましい。ポリマー粒子の平均粒子径が200nm未満であるとインク吸収性の記録媒体である上質紙での耐擦性が十分得られなくなる。
また、熱変形温度(本願発明においては、Tg又はMFT)は100℃未満であることが好ましく、より好ましくは0℃〜90℃の範囲であるものであり、一層好ましくは0℃〜50℃、最も好ましくは20℃〜40℃の範囲である。このようなポリマー粒子を少なくとも1種以上含んでいることが好ましい。ポリマー粒子の熱変形温度が100℃以上であると後述する第2工程(乾燥工程)の加熱温度が100℃以上必要となる場合が生じ、非記録媒体が熱により収縮もしくは膨張して印刷画像に皺が発生する為、好ましくない場合がある。また、熱変形温度が0℃以上である成分を含むことにより、後述する第2工程(乾燥工程)においてより強固な樹脂皮膜が形成される効果が高い。そのため、記録された画像の耐擦性がさらに良好となる。またインクジェット記録式ヘッドのノズル先端でのインクの目詰まりが発生しにくい。一方、熱変形温度が0℃未満である成分のみからなるポリマー粒子を用いた場合、後述する第2工程(乾燥工程)を経てる場合に、強固な樹脂被膜が形成されにくく記録された画像の耐擦性が不良となる場合がある。さらにノズル先端でインク固化物が発生して目詰まりが発生しやすくなる。
インク組成物は、第2ポリマー粒子を含み、第2ポリマー粒子を構成する成分としては、たとえばカルナバワックス、キャンデリワックス、みつろう、ライスワックス、ラノリン等の植物・動物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス;カーボンワックス、ヘキストワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸アミド等の合成ワックス類、α−オレフィン・無水マレイン酸共重合体等の天然・合成ワックスエマルジョンや配合ワックス等を単独あるいは複数種を混合して用いることができる。この中で好ましいワックスの種類としては、ポリオレフィンワックス、特にポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスであり、ポリエチレンワックスが最も好ましい。ワックス粒子としては市販品をそのまま利用することもでき、たとえばノプコートPEM17(商品名、サンノプコ株式会社製)、ケミパールW4005(商品名、三井化学株式会社製)、AQUACER507、AQUACER515、AQUACER526、AQUACER531、AQUACER537、AQUACER552、AQUACER593、AQUACER840、AQUACER1547(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
上記、平均粒子径は200nm未満であることが好ましく、より好ましくは20nm〜100nmの範囲である。平均粒子径が200nm以上であるとフィルム等の表面が滑らかなインク非吸収性記録媒体に印刷した時の記録画像の耐擦性が悪くなる。
また、熱変形温度は100℃以上である事が好ましいが、耐擦性の観点から好ましくは100℃〜200℃の範囲にあるのが好ましい。熱変形温度が100℃未満であると擦られた時の摩擦熱によりポリマー粒子が軟化する為、十分な耐擦性が得られなくなる。
特に本実施の形態に係るインク組成物において、平均粒子径が200nm以上で、かつ熱変形温度が100℃未満の第1ポリマー粒子としてエチレン−酢酸ビニル系共重合体ポリマー粒子を、平均粒子径が200nm未満で、かつ熱変形温度が100℃以上の第2ポリマー粒子としてポリエチレンワックス粒子を用いた場合、インク吸収性、インク低吸収性、さらにはインク非吸収性のいずれの記録媒体上に記録した印刷画像においても良好な耐擦性を得ることができる。このような、上述のポリマー粒子を併用することで記録された画像の耐擦性が良好となる理由はいまだ明らかではないが、下記のように推察される。
エチレン−酢酸ビニル系共重合体ポリマー粒子を構成する成分は、インク非吸収性又は低吸収性の記録媒体及び水不溶性の着色剤に対して良好な親和性を有するため、第2工程(乾燥工程)において樹脂皮膜を形成する際に色材を包み込みながら記録媒体上に強固に定着する。一方、ポリエチレンワックス粒子の成分は、樹脂皮膜の表面にも存在しており、樹脂皮膜表面の摩擦抵抗を低減する特性を有する。これらの樹脂に共通に有しているエチレン骨格の相乗効果により、外部からの擦れによって削れにくく、かつ記録媒体から剥がれにくい樹脂皮膜を形成することができるため、記録された画像の耐擦性が向上するものと推察される。
平均粒子径が200nm未満で、かつ熱変形温度が100℃以上の第1ポリマー粒子および平均粒子径が200nm以上で、かつ熱変形温度が100℃未満の第2ポリマー粒子の含有量の総量は、インク組成物全量に対して、固形分換算で0.5質量%〜10質量%の範囲であることが好ましい。この範囲内であることにより、種々の記録媒体、特にインク非吸収性又は低吸収性の記録媒体上においても、本実施の形態に係るインク組成物と、好ましいインクジェット記録方法として後述する第2工程(乾燥工程)と、を組み合わせることで、インク組成物を固化・定着させることができる。
樹脂粒子中の第1ポリマー粒子と第2ポリマー粒子の含有比率は、固形分換算の質量基準で第1ポリマー粒子:第2ポリマー粒子=1:5〜10:1の範囲であることが好ましい。この範囲内であると、前述した機構が良好に働くため記録された画像の耐擦性が良好となる。
本実施の形態に係るインク組成物において、第1ポリマー粒子および第2ポリマー粒子は、いずれも微粒子状態(すなわち、エマルジョン状態又はサスペンジョン状態)で含有されていることが好ましい。樹脂粒子を微粒子状態で含有することにより、インク組成物の粘度をインクジェット記録方式において適正な範囲に調整しやすく、また保存安定性・吐出安定性を確保しやすい。
(9.水)
本実施の形態に係るインク組成物は、水を含んでなる。水は、前記インク組成物の主となる媒体であり、後述する第2工程(乾燥工程)において蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液およびこれを用いたインク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
(10.その他の添加剤)
本実施の形態に係るインク組成物には、さらにその特性を向上させる観点から、以上に述べた構成成分の他に、必要に応じて浸透溶剤、保湿剤、防腐・防かび剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート化剤等を添加することができる。
防腐剤・防かび剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジンチアゾリン−3−オン(ICI社のプロキセルCRL、プロキセルBND、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)等を挙げることができる。
さらに、pH調整剤、溶解助剤又は酸化防止剤の例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類及びそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸及びその塩を挙げることができる。
また、本発明によるインク組成物は、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を含んでいてもよく、その例としては、チバ・スペシャリティーケミカルズ社のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252153、Irganox1010、1076、1035、MD1024、ランタニドの酸化物等を挙げることができる。
(11.溶解助剤)
また、本発明によるインク組成物は、上記成分に加えて、溶解助剤を含んでなることが好ましい。
これを含んだインク組成物は、特にポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなるフィルム系のインク非吸収性の記録媒体を用いた場合、インク組成物の小滴を付着させた際の濡れ拡がりが均一となって、ベタ画像においても濃淡ムラや滲みの少ない、くっきりとした鮮明な画像が得られるという特性を有する。
溶解助剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドンなどのピロリドン類又は、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類等を好適に使用できる。中でも、ピロリドン類、ラクトン類がより好ましい。上記記録媒体溶解剤の添加量は適宜決定されてよいが、0.1〜30質量%程度が好ましく、0.1〜10質量%程度がさらに好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%程度である。最も好ましくは1質量%〜3質量%の範囲である。例えば、2−ピロリドンは比較的沸点が高く(245℃)、添加量が多いとインクが乾燥しにくくなる為、インク非吸収性の記録媒体に印刷した場合の耐擦性が低下する場合がある。
(12.インク組成物の物性)
インク組成物のpHは、中性ないしアルカリ性であることが好ましく、7.0〜10.0の範囲内であることがより好ましい。pHが酸性であると、インク組成物の保存安定性および分散安定性が損なわれることがある。また、インクジェット記録装置内のインク流路に用いられている金属部品の腐食等の不具合が発生しやすくなる。pHは、前述したpH調整剤を用いて中性ないしアルカリ性に調整することができる。
インク組成物の粘度は、20℃において1.5mPa・s〜15mPa・sの範囲であることが好ましい。この範囲内であれば、後述する第1工程においてインクの吐出安定性を確保することができる。
インク組成物の表面張力は、25℃において15mN/m〜40mN/mであることが好ましく、20mN/m〜30mN/mであることがより好ましい。この範囲内であれば、後述する第1工程においてインクの吐出安定性を確保することができ、インク非吸収性又は低吸収性の記録媒体に対する適正な濡れ性を確保することができる。
(13.インク組成物の製造方法)
本実施の形態に係るインク組成物は、前述した材料を任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。ここで、色材は、あらかじめ水性媒体中に均一に分散させた状態に調製した上で混合した方が、取り扱いの簡便さ等から好ましい。
各材料の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
(14.インクジェット記録方法)
本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、記録媒体上に前述のインク組成物の液滴を吐出して画像を形成する第1工程と、前記第1工程時又は前記第1工程後において前記記録媒体を加熱して前記記録媒体上の前記インク組成物を乾燥させる第2工程と、を含むことを特徴とする。以下、各工程について詳細に説明する。
14−1.第1工程
本実施の形態に係るインクジェット記録方法における第1の工程は、インクジェット記録方式で、記録媒体上に前述したインク組成物の液滴を吐出して画像を形成する工程である。
インクジェット記録方式は、前述したインク組成物を微細なノズルより液滴として吐出して該液滴を記録媒体に付着させる方式であれば、いかなる方法も使用することができる。インクジェット記録方式として、たとえば以下の4つの方式が挙げられる。
第1の方式は、静電吸引方式と呼ばれるもので、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、あるいはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式である。
第2の方式は、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式である。噴射したインク滴は噴射と同時に帯電させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する。
第3の方式は、圧電素子を用いる方式であり、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式である。
第4の方式は、熱エネルギーの作用によりインク液を急激に体積膨張させる方式であり、インク液を印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式である。
14−2.第2工程
本実施の形態に係るインクジェット記録方法における第2の工程は、前記第1工程時および前記第1工程後の少なくとも一方において、記録媒体上の前記インク組成物を乾燥させる工程である。第2工程を組み込むことにより、記録媒体上に付着させた前記インク組成物中に含有される液媒体の一部又は全部が速やかに蒸発飛散して、前記インク組成物中に含まれる平均粒子径が200nm以上で、かつ熱変形温度が100℃未満の第1ポリマー粒子の皮膜が形成される。これにより、インク吸収層を有しないプラスチックフィルムのようなインク非吸収性の記録媒体上においても、濃淡ムラが少ない高画質な画像を短時間で得ることができるとともに、樹脂による皮膜が形成されることで記録媒体上にインク乾燥物が接着して画像が定着する。
第2工程は、インク組成物中に存在する液媒体の蒸発飛散を促進させる方法であれば特に限定されない。第2工程に用いられる方法として、第1工程時および第1工程後の少なくとも一方で記録媒体に熱を加える方法、第1の工程後に記録媒体上のインク組成物に風を吹きつける方法、さらにそれらを組み合わせる方法等が挙げられる。具体的には、強制空気加熱、輻射加熱、伝導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥等が好ましく用いられる。
第2工程において熱を与える際の温度範囲は、インク組成物中に存在する液媒体の蒸発飛散を促進することができれば特に制限はないが、40℃以上であればその効果が得られ、好ましくは40℃〜90℃であり、より好ましくは40℃〜80℃の範囲である。温度が100℃を超える場合、記録媒体の種類によっては変形等の不具合が生じて第2工程後の記録媒体の搬送に支障が生じたり、記録媒体が室温まで冷えた際に収縮したりする等の不具合が起こる場合がある。
また、第2の工程における加熱時間は、インク組成物中に存在する液媒体が蒸発飛散し、かつポリマー粒子の皮膜を形成することができれば特に制限はなく、用いる液媒体種・樹脂粒子種・印刷速度を加味して適宜設定することができる。
(15.非吸収性又は低吸収性の記録媒体)
記録媒体としては、所望に応じてどのようなものを用いてもよい。その中でも、本実施の形態に係るインクジェット記録方法では、普通紙の他インク非吸収性又は低吸収性の記録媒体を好適に用いることができる。なお、本明細書において「インク非吸収性及び低吸収性の記録媒体」とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である記録媒体」を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
インク非吸収性の記録媒体としては、たとえばインクジェット印刷用に表面処理をしていない(すなわち、インク吸収層を形成していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。インク低吸収性の記録媒体として、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙、インク吸収性の記録媒体として上質紙、普通紙、再生紙等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
(16.インク組成物の調製)
16−1.顔料分散液の調製
本実施例で使用する顔料分散液は、以下のようにして調製した。カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7(PBk7))としてカラーブラックS170(商品名:デグサ・ヒュルス社製)65質量部をスチレン−アクリル酸系分散樹脂であるジョンクリル611(商品名:BASFジャパン株式会社製)35質量部、水酸化カリウム1.70質量部、イオン交換法と逆浸透法により精製した超純水250質量部を混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散を行った。得られた分散原液をガラス繊維ろ紙GA−100(商品名:アドバンテック東洋社製)で濾過して粗大粒子を除き、顔料濃度が15質量%となるように調整した。
得られた顔料分散液の粒径分布をマイクロトラックUPA150(日機装株式会社製)で測定したところ顔料の平均粒子径は117nmであった。
16−2.インク組成物の調製
上記で調製された顔料分散液を用いて、表3〜5に示す材料組成にてブラック色の材料組成の異なるインク組成物を調製した。各インク組成物は、表3〜5に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて2時間混合撹拌した後、孔径10μmのメンブランフィルターにて濾過してゴミや粗大粒子等の不純物を除去することにより調製した。なお、表3〜5中の数値は、全て質量%を示し、イオン交換水はインク全量が100質量%となるように添加した。なお、界面活性剤種については表2に示した。
Figure 2016041809
Figure 2016041809
Figure 2016041809
Figure 2016041809
また、同様な方法で、イエローインク(ピグメントイエロー74)、シアンインク(ピグメントブルー15:3)、マゼンタインク(ピグメントレッド122)を調整した。
なお、表中、StAc−EMはスチレンアクリル共重合体樹脂エマルジョン、PGはプロピレングリコール、12BDは1,2−ブタンジオール、12PDは1,2−ペンタンジオール、12HDは1,2−ヘキサンジオール、3Me13BDは3−メチル−1,3−ブタンジオール、Glyはグリセリン、EHDGはジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、EHGはエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、BTGはトリエチレングリコールモノブチルエーテル、TEAはトリエタノールアミン、PVCはポリ塩化ビニル、PPはポリプロピレンを示す。
加えて、KF−945は信越シリコーン製ポリシロキサン系界面活性剤であり、FZ−2123は東レ・ダウコーニング製ポリシロキサン系界面活性剤であり、KF−6013は信越シリコーン製ポリシロキサン系界面活性剤であり、KF−354Lは信越シリコーン製ポリシロキサン系界面活性剤であり、サーフィノール420はAir Products and Chemicals, Inc.製アセチレングリコール系界面活性剤であり、サーフィノール485はAir Products and Chemicals, Inc.製アセチレングリコール系界面活性剤であり、BYK348はビックケミー・ジャパン製ポリシロキサン系界面活性剤である。
表4、表5において、界面活性剤Aは、ポリシロキサン系界面活性剤であり、上記の式(1)において、Rがメチル基であり、aが9〜13の整数であり、mが2〜4の整数であり、nが1〜2の整数である化合物と、Rが水素原子であり、aが7〜11の整数であり、mが30〜50の整数であり、nが3〜5の整数である化合物と、を3:7で混合して作成したものである。
界面活性剤Bは、ポリシロキサン系界面活性剤であり、上記の式(1)において、Rがメチル基であり、aが9〜13の整数であり、mが2〜4の整数であり、nが1〜2の整数である化合物と、Rが水素原子であり、aが7〜11の整数であり、mが30〜50の整数であり、nが3〜5の整数である化合物と、を1:9で混合して作成したものである。
界面活性剤Cは、ポリシロキサン系界面活性剤AW−3(信越化学工業株式会社製)とポリシロキサン系界面活性剤X−22−6551(信越化学工業株式会社製)が、質量比で、9:1で混合した混合物である。
界面活性剤Dは、ポリシロキサン系界面活性剤であり、上記の式(1)において、Rがメチル基であり、aが9〜13の整数であり、mが2〜4の整数であり、nが1〜2の整数である化合物である。
(17.インク組成物の評価)
[評価1.記録物の濃淡ムラ評価]
記録媒体としてインク吸収性の上質紙(商品名「55PW8R」、リンテック株式会社製)、低吸収性の印刷本紙(商品名「PODグロスコート」、王子製紙株式会社製)、インク非吸収性のポリプロピレンフィルム(商品名「SY51M 2.6mil.PPWhite TC RP37 2.2mil.HIGH DENSITY WHITE」、UPM RAFLATA社製、以下「SY51M」と略記する)を使用した。また、インクジェット記録方式のプリンターとして、紙案内部に温度が可変できるヒーターを取り付けたインクジェットプリンター(製品名「PX−G930」、セイコーエプソン株式会社製、ノズル解像度:180dpi)を用いた。
インクジェットプリンターにインク組成物のいずれかを充填して、前記記録媒体のいずれか一方に画像を記録した。画像パターンとしては、横720dpi、縦720dpiの解像度で、50〜100%の範囲のdutyで、10%刻みで記録できる塗り潰しパターンを作製し、これを用いた。記録条件は、プリンターのヒーター設定を「記録面の温度が40℃となる設定」とした。さらに、記録中および記録直後の記録物に対して80℃の温度の風を送風することにより乾燥処理を行った。なお、前記送風の強度は、記録媒体表面での風速が2〜5m/秒程度となる状態とした。また、記録直後の送風時間は1分間とした。このような条件で記録したときの記録物の濃淡ムラを目視で確認した。その評価基準を以下に示す。
A:duty80%以上でも濃淡ムラが認められなかった。
B:duty70%まで濃淡ムラが認められなかった。
C:duty60%まで濃淡ムラが認められなかった。
D:duty60%以下でも濃淡ムラが認められた。
[評価2.インク組成物の保存安定性]
表3〜5に示した各インク組成物を、各々サンプル瓶内に密封して60℃環境下にて2週間放置した。放置後のインクの粘度変化により、インク組成物の保存安定性を評価した。その評価基準を以下に示すと共に、その評価結果を表3〜5に示す。
<粘度変化>
A:調製直後の粘度と比較して変化率が±5%未満。
B:調製直後の粘度と比較して変化率が±5%以上±10%未満。
C:調製直後の粘度と比較して変化率が±10%以上±20%未満。
D:調製直後の粘度と比較して変化率が±20%以上。
[評価3.ヘッドの目詰まり性]
表3〜5に示した各インク組成物を、インクジェット記録方式のプリンターであるインクジェットプリンター(製品名「PX−G930」、セイコーエプソン株式会社製、ノズル解像度:180dpi)のヘッド内に充填した。充填後、ノズルチェックパターンを印刷して充填不良・ノズル目詰まりのないことを確認してから、プリンターヘッドのキャップを外した状態(すなわちヘッドノズル面が乾燥しやすい状態)にして、25℃/40〜60%RHの環境下で一週間放置した。放置後、必要に応じてクリーニング動作を行ってノズルチェックパターンを印刷してノズルの吐出状況を観察することで、インク組成物のインクジェットヘッドの目詰まり性を評価した。その評価基準を以下に示すと共に、その評価結果を表3〜5に示す。
A:クリーニング動作が3回以内で、全ノズルからインク組成物が正常吐出された。
B:クリーニング動作が4回〜6回の範囲内で、全ノズルからインク組成物が正常吐出された。
C:クリーニング動作が7回〜10回の範囲内で、全ノズルからインク組成物が正常吐出された。
D:全ノズルからインク組成物が正常吐出されるまでにクリーニング動作が11回以上必要、あるいはクリーニング動作を11回以上行っても正常吐出されないノズルがあった。
[評価4.定着性]
評価1と同様にして、記録物を印字後、室温(25℃)環境下の実験室にて5時間放置した後で、記録面を学振型摩擦堅牢度試験機(製品名「AB−301」、テスター産業株式会社製)を用いて、荷重200g下、綿布にて10回擦ったときの記録面の剥がれ状態や綿布へのインク移り状態を確認することにより定着性を評価した。その評価基準を以下に示すと共に、その評価結果を表3〜5に示す。
A:10回擦ってもインク剥がれ・綿布へのインク移りが認められなかった。
B:10回擦った後インク剥がれ又は綿布へのインク移りが認められた。
C:10回擦り終わる前にインク剥がれ又は綿布へのインク移りが認められた。

Claims (8)

  1. 少なくとも、色材と、水溶解性の異なる2種以上のポリシロキサン系界面活性剤と、1気圧下での沸点が180〜230℃の範囲内であるアルキルポリオール類と、を含んでなり、1気圧下での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含まず、インク非吸収性又は低吸収性の記録媒体に記録される、インク組成物。
  2. 前記界面活性剤として、(a)の特徴を有する親油的ポリシロキサン系界面活性剤と(b)の特徴を有する親水的ポリシロキサン系界面活性剤とを含む、請求項1に記載のインク組成物。
    (a)HLB値が4〜8である、又は、下記式(1)においてRがメチル基である親油的ポリシロキサン系界面活性剤。
    (b)HLB値が9〜20である、又は、下記式(1)においてRが水素原子である親水的ポリシロキサン系界面活性剤。
    Figure 2016041809
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、aは2〜13の整数を表し、mは0以上の整数を表し、nは1〜5の整数を表す。)
  3. インク組成物中における、前記親油的ポリシロキサン系界面活性剤含有量/前記親水的ポリシロキサン系界面活性剤含有量の質量比が、1/20以上2/1以下である、請求項2に記載のインク組成物。
  4. インク組成物中における、前記親水的ポリシロキサン系界面活性剤含有量が前記親油的ポリシロキサン系界面活性剤の含有量よりも多い、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のインク組成物。
  5. デービス法により算出されたHLB値が4.2〜8.0の範囲内であるグリコールエーテル類を含む、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のインク組成物。
  6. 前記アルキルポリオール類は、C4〜7の1,2−直鎖アルキルジオール類であり、
    C4〜7の1,2−直鎖アルキルジオール類の質量/前記グリコールエーテルとの質量の関係は、1/1超過20/1以下である、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のインク組成物。
  7. 請求項1ないし6のいずれか一項に記載のインク組成物を記録する記録装置。
  8. 請求項7に記載のインクジェット記録方法によって記録が行われた、記録物。
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