JP2014019842A - インクジェット組成物、インクジェット記録装置、および記録物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】色材と、1,2−ペンタンジオールと、1,2−ヘキサンジオールとを含み、
前記1,2−ペンタンジオールの含有量は、0質量%超過20質量%未満であるインク組成物。
【選択図】なし
Description
一方、紙等の吸水性の被記録媒体だけではなく、印刷本紙、合成紙、フィルム等のインク非吸収性または低吸収性の被記録媒体に対してもインクジェット記録装置により記録可能なインク組成物が要求されている。このような要求に対して、インク非吸収性または低吸収性の被記録媒体に記録可能なインク組成物が幾つか提案されている(たとえば、特許文献1〜4参照)。
その一方で、高沸点有機溶剤を含有しないインク組成物は、インクジェット記録用ヘッドのノズルの乾燥を防止することができずノズルの目詰まりが生じやすくなると共に、主溶媒に対して溶解性の低い有機溶剤がインクから分離しインクの保存安定性も低下する傾向があった。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、前記課題を解決することで、種々の被記録媒体に対して印刷可能なインク組成物およびインクジェット記録装置を提供するものであり、すわなち、インク吸収性、インク低吸収性、さらにはインク非吸収性のいずれの被記録媒体上に記録した際においても、濃淡ムラ抑制および耐擦性に優れ、しかもノズルの目詰まりを低減でき、かつ保存安定性に優れるインク組成物、およびそれを用いたインクジェット記録装置を提供するものである。
色材と、1,2−ペンタンジオールと、1,2−ヘキサンジオールとを含み、前記1,2−ペンタンジオールの含有量は、0質量%超過20質量%未満である、インク組成物。
[適用例2]
デービス法のHLB値が3.0〜7.8のグリコールエーテル、消泡剤、難溶解性アルカンジオールから選択される一種以上を含み、
1,2−ペンタンジオール及び1,2−ヘキサンジオールの総量と、デービス法のHLB値が3.0〜7.8のグリコールエーテル、消泡剤、難水溶性アルカンジオールとの総量の質量比は、3:1〜15:1である、適用例1に記載のインク組成物。
[適用例3]
標準沸点280℃以上のアルキルポリオールを実質的に含有しない、適用例1又は2に記載のインク組成物。
[適用例4]
前記1,2−ペンタンジオール及び前記1,2−ヘキサンジオール以外の標準沸点190℃以上250℃以下のアルキルポリオールをさらに含む、適用例1ないし3のいずれか一例に記載のインク組成物。
[適用例5]
デービス法によるHLB値が3.0〜7.8の範囲内であるのグリコールエーテルを含む適用例1ないし4のいずれか一例に記載のインク組成物。
[適用例6]
消泡剤を含む適用例1ないし5のいずれか一例に記載のインク組成物。
[適用例7]
インク組成物中の標準沸点190℃以上250℃以下のアルキルポリオールの総量が10質量%以上30質量%以下である、適用例1ないし6のいずれか一例に記載のインク組成物。
[適用例8]
前記色材が樹脂分散剤によって分散された顔料であり、
分散後の前記色材の平均粒子径が80nm以上140nm以下である、適用例1ないし7のいずれか一例に記載のインク組成物。
[適用例9]
適用例1ないし8のいずれか一例に記載のインク組成物を用いて記録を行う記録装置。
[適用例10]
適用例1ないし8のいずれか一例に記載のインク組成物が記録された記録物。
1.1.色材
本実施の形態に係るインク組成物は、色材を含んでなる。色材としては、染料または顔料が挙げられるが、耐水性、耐ガス性、耐光性等を有する観点から顔料であることが好ましい。
このような顔料としては、公知の無機顔料、有機顔料、カーボンブラックのいずれも用いることができる。これらの顔料は、インク組成物全量に対して0.5質量%以上20質量%以下の範囲で含まれることが好ましく、1質量%以上10質量%以下の範囲で含まれることがより好ましい。
また、酸価としては30〜300の範囲であることが好ましく、50〜150の範囲であることがより好ましい。酸価がこの範囲であることにより、顔料粒子の水中での分散性が安定的に確保でき、またこれを用いたインク組成物にて記録された記録物の耐水性が良好となる。
本明細書における平均粒子径は、特に異なりの無い限り体積基準のものである。測定方法としては、例えば、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、日機装株式会社製のマイクロトラックUPA)が挙げられる。
本実施の形態に係るインク組成物は、1,2−ペンタンジオール(標準沸点;210℃)を0質量%超過20質量%未満の範囲で含んでなる。また、本願発明は標準沸点280℃以上のアルキルポリオールを実質的に含有しない。当該ポリオールは、従来良好な保湿剤として用いられてきたが、記録媒体上での速乾性が求められるインク組成物の場合、当該ポリオールを含ませることが出来ない。しかし、本実施の形態に係るインク組成物は、1,2−ペンタンジオールを含むことで、保存安定性を損なうことなく、インク非吸収性または低吸収性の被記録媒体に印刷した際の速乾性、インクジェット記録用ヘッドの目詰まり防止剤、他の溶剤や界面活性剤のインクビヒクル中への可溶剤としての特性、及びインク非吸収性または低吸収性の非記録媒体に対する濡れ性向上効果を有し、加えて、紙等の吸水性の被記録媒体に対する吸収性、さらに、紙等の吸水性の被記録媒体に印刷した際の発色性も向上する。これにより、種々の被記録媒体に対して濃淡ムラを低減させ、にじみのない高発色な画像を記録することができると共に、インクジェット記録用ヘッドのノズルの目詰まりを低減させることができる。また、1,2−ペンタンジオールは後述する1,2−ヘキサンジオールと同様に難溶解性の有機溶剤の可溶化効果を有し、かつ、1,2−ヘキサンジオールよりも顔料や染料、及び樹脂の分散安定性の阻害効果も低いという特性を有する。
また、本実施の形態に係るインク組成物において、1,2−ペンタンジオールは、多量にインク中に含ませると顔料の分散安定性を阻害し、インク組成物としての保存安定性が劣化してしまう事、かつ、記録媒体上で乾燥性が低下してしまう事より、添加量はインク組成物中で20質量%未満が好ましい。
インク組成物は、被記録媒体への濡れ性及び浸透性を向上させて濃淡ムラを低減させる効果や、インク保存安定性及び吐出信頼性を確保する観点から、1,2−ヘキサンジオール(標準沸点224℃)を含有する事が好ましい。この場合の含有量は、インク組成物全量に対して0.5質量%以上10質量%以下の範囲で含まれることが好ましい。より好ましくは1質量%以上7質量%以下である。
0.5質量%未満であると、インク組成物の保存安定性が低下し、またインク組成物の乾燥性が高まることで、インクジェット記録用ヘッドのノズルの目詰まりが発生する場合がある。一方、10質量%よりも大きくなると、インク組成物の乾燥性が低下することで、画像の濃淡ムラが目立ち、画像の定着性が低下する場合がある。また、インク組成物粘度をインクジェット記録方式に適した範囲に調整し難くなる。
本実施の形態に係るインク組成物は、1,2−ペンタンジオールと1,2−ヘキサンジオール以外の標準沸点190〜250℃の範囲内であるアルキルポリオール類をさらに含んでなることが好ましい。本実施の形態に係るインク組成物は、前述の沸点範囲を満たすアルキルポリオール類を含むことで、被記録媒体種の影響をあまり受けずに、より一層インク組成物の濡れ性、浸透性、乾燥性を制御することできる。これにより、種々の被記録媒体に対して定着性に優れた画像を記録することができると共に、インクジェット記録用ヘッドのノズルの目詰まりを低減させることができる。
本実施の形態に係るインク組成物は、デービス法により算出されたHLB値が3.0〜7.8の範囲内であるグリコールエーテル類を含んでなることが好ましい。本実施の形態に係るインク組成物は、前述のHLB値範囲を満たすグリコールエーテル類を含むことで、被記録媒体種の影響をあまり受けずに濡れ性・浸透速度を制御することできる。これにより、種々の被記録媒体、特にインク非吸収性または低吸収性の被記録媒体に対して濃淡ムラが少ない鮮明な画像を記録することができる。
HLB値=7+Σ[1]+Σ[2] ・・・・・(1)
(但し、[1]は親水基の基数を表し、[2]は疎水基の基数を表す。)
下記の表1に、代表的な親水基および疎水基の基数を例示する。
また、本実施の形態に係るインク組成物中の前記アルキルポリオール類は、デービス法により算出されたHLB値が3.0〜7.8の範囲内であるグリコールエーテル類のインクビヒクル中への可溶化剤という特性を有する。
樹脂粒子には、主として後述するインクジェット記録装置における乾燥装置により樹脂皮膜を形成し被記録媒体上に定着させる効果を持つポリマー粒子と、記録された記録物の表面に滑沢を付与し耐擦性を向上させるワックス粒子と、が含まれる。本実施の形態に係るインク組成物には、樹脂粒子としてポリマー粒子とワックス粒子とを併用して添加することが好ましい。なお、樹脂粒子の熱変形温度は40℃以上であることが好ましい。以下、ポリマー粒子およびワックス粒子について詳細に説明する。
ポリマー粒子を構成する樹脂としては、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂およびこれらの混合物からなる群より選択されるものが好ましくは挙げられる。これらの樹脂はホモポリマーまたはコポリマーして利用されて良く、単相構造または複相構造(コアシェル型)の何れのものとして利用されてよく、より具体的には、たとえばポリアクリル酸エステルもしくはその共重合体、ポリメタクリル酸エステルもしくはその共重合体、ポリアクリロニトリルもしくはその共重合体、ポリシアノアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレンもしくはそれらの共重合体、石油樹脂、クロマン・インデン樹脂、テルペン樹脂、ポリ酢酸ビニルもしくはその共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、ポリ塩化ビニルもしくはその共重合体、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、フッ素ゴム、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリブタジエンもしくはその共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、天然樹脂等が挙げられる。この中で、特に分子構造中に疎水性部分と親水性部分とを併せ持つものが好ましい。
酢酸ビニル系ポリマー粒子の体積基準の平均粒子径は、水性インク組成物の保存安定性・吐出安定性を確保する点から、好ましくは5nm〜2,000nmの範囲であり、より好ましくは50nm〜800nmの範囲である。
本実施の形態に係るインク組成物は、ワックス粒子を含んでいてもよい。ワックス粒子を添加することにより、主として後述するインクジェット記録方法における第2工程(乾燥工程)により樹脂皮膜を形成し被記録媒体上に定着させる効果を持つ酢酸ビニル系ポリマー粒子と相乗して、記録された記録物の表面に滑沢を付与し耐擦性を向上させる効果がある。本実施の形態に係るインク組成物には、酢酸ビニル系ポリマー粒子とワックス粒子とを併用して添加することが好ましい。以下、ワックス粒子について詳細に説明する。
本実施の形態に係るインク組成物は、界面活性剤をさらに含んでもよい。インク組成物に界面活性剤を含有させることにより、被記録媒体上に均一に濡れ拡がる作用が付与される。これにより、濃淡ムラが少ない鮮明な画像を記録することが可能となる。
このような効果を有する界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤であることが好ましい。ノニオン系界面活性剤の中でも、特に本実施の形態に係るインク組成物に含まれる前記グリコールエーテル類と前記アルキルポリオール類との相溶性・相乗効果に優れるものとして、シリコーン系界面活性剤および/またはアセチレングリコール系界面活性剤がより好ましい。
本実施形態のインクは、消泡剤を含み得る。これによって、インク組成物内での気泡発生を抑制し、吐出安定性が良好なインク組成物を得る事が出来る。
本実施の形態に係るインク組成物は、ピロリドン誘導体をさらに含んでもよい。これを含んだインク組成物は、特にポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなるフィルム系のインク非吸収性の被記録媒体を用いた場合、インク組成物の小滴を付着させた際の濡れ拡がりが均一となって、ベタ画像においても濃淡ムラや滲みの少ない、くっきりとした鮮明な画像が得られるという特性を有する。その理由は定かではないが、ピロリドン誘導体の分子骨格構造に含まれるピロリドン構造がフィルム系の被記録媒体に対する親和性が高いため、それを含むインク組成物においてもフィルムに対する濡れ性が向上するものと推察される。また、ピロリドン誘導体は前記グリコールエーテル類やアルキルポリオール類との相溶性にも優れているため、本実施の形態に係るインク組成物は優れた保存安定性および吐出安定性の両立が可能となる。さらにピロリドン誘導体は乾燥後には皮膜成分として機能するため、記録された画像の耐擦性向上にも寄与する。
本実施の形態に係るインク組成物には、さらにその特性を向上させる観点から、以上に述べた構成成分の他に、必要に応じて浸透溶剤、保湿剤、防腐・防かび剤、pH調整剤、キレート化剤等を添加することができる。
本実施の形態に係るインク組成物は、水を含んでなる事が好ましい。水は、前記インク組成物の主となる媒体であり、後述する第2工程(乾燥工程)において蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液およびこれを用いたインク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
インク組成物のpHは、中性ないしアルカリ性であることが好ましく、7.0〜10.0の範囲内であることがより好ましい。pHが酸性であると、インク組成物の保存安定性および分散安定性が損なわれることがある。また、インクジェット記録装置内のインク流路に用いられている金属部品の腐食等の不具合が発生しやすくなる。pHは、前述したpH調整剤を用いて中性ないしアルカリ性に調整することができる。
インク組成物の表面張力は、25℃において15mN/m〜40mN/mであることが好ましく、20mN/m〜35mN/mであることがより好ましい。この範囲内であれば、後述する第1工程においてインクの吐出安定性を確保することができ、インク非吸収性または低吸収性の被記録媒体に対する適正な濡れ性を確保することができる。
本願発明において、水に対して溶解性の低い、デービス法のHLB値が3.0〜7.8のグリコールエーテル、消泡剤、難溶解性アルカンジオールから選択される一種以上が含まれているインク組成物の場合、1,2−ペンタンジオール及び1,2−ヘキサンジオールの総量と、デービス法のHLB値が3.0〜7.8のグリコールエーテル、消泡剤、難水溶性アルカンジオールとの総量の質量比は、保存安定性の観点から、3:1〜15:1である事が好ましい。より好ましくは5:1〜12:1である。
本実施の形態に係るインク組成物は、前述した材料を任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。ここで、色材は、あらかじめ水性媒体中に均一に分散させた状態に調製した上で混合した方が、取り扱いの簡便さ等から好ましい。
各材料の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
本実施の形態に係るインクジェット記録装置は、インクジェット記録ヘッドから被記録媒体上に前述のインク組成物の液滴を吐出して画像を形成する第1工程と、前記第1工程時または前記第1工程後において、乾燥機構により前記被記録媒体を加熱して前記被記録媒体上の前記インク組成物を乾燥させる第2工程と、を含むことを特徴とする。以下、各工程について詳細に説明する。
本実施の形態に係るインクジェット記録装置における第1の工程は、インクジェット記録ヘッドから被記録媒体上に前述したインク組成物の液滴を吐出して画像を形成する工程である。
インクジェット記録ヘッドは、前述したインク組成物を微細なノズルより液滴として吐出して該液滴を被記録媒体に付着させる方式であれば、いかなる方法も使用することができる。インクジェット記録ヘッドの方式として、たとえば以下の4つの方式が挙げられる。
第2の方式は、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式である。噴射したインク滴は噴射と同時に帯電させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する。
第3の方式は、圧電素子を用いる方式であり、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式である。
第4の方式は、熱エネルギーの作用によりインク液を急激に体積膨張させる方式であり、インク液を印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式である。
本実施の形態に係るインクジェット記録装置における第2の工程は、前記第1工程時および前記第1工程後の少なくとも一方において、乾燥機構により被記録媒体上の前記インク組成物を乾燥させる工程である。第2工程を組み込むことにより、被記録媒体上に付着させた前記インク組成物中に含有される液媒体(具体的には、水、グリコールエーテル類、アルキルポリオール類)が速やかに蒸発飛散して、前記インク組成物中に好ましく用いられるピロリドン誘導体および/またはポリマー粒子の皮膜が形成される。これにより、インク吸収層を有しないプラスチックフィルムのようなインク非吸収性の被記録媒体上においても、濃淡ムラが少ない高画質な画像を短時間で得ることができる。また、前記インク組成物中に好ましく用いられるピロリドン誘導体および/またはポリマー粒子の皮膜を形成させることで被記録媒体上にインク乾燥物が接着するため画像が定着する。
第2工程において熱を与える際の温度範囲は、インク組成物中に存在する液媒体の蒸発飛散を促進することができれば特に制限はないが、40℃以上であればその効果が得られ、好ましくは40℃〜80℃であり、より好ましくは40℃〜60℃の範囲である。温度が80℃を超える場合、被記録媒体の種類によっては変形等の不具合が生じて第2工程後の被記録媒体の搬送に支障が生じたり、被記録媒体が室温まで冷えた際に収縮等の不具合が起こったりする場合がある。
また、第2の工程における加熱時間は、インク組成物中に存在する液媒体が蒸発飛散し、かつ好ましく用いられるピロリドン誘導体および/または樹脂粒子の皮膜を形成することができれば特に制限はなく、用いる液媒体種・樹脂粒子種・印刷速度を加味して適宜設定することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
3.1.1.顔料分散液1の調製
本実施例で使用するインク組成物は、色材として水不溶性の顔料を使用した。顔料をインク組成物に添加する際には、あらかじめ該顔料を樹脂分散剤で分散させた顔料分散液を用いた。
なお、顔料分散液1は、以下のようにして調製した。まず、下記の顔料65部をスチレン−アクリル酸系分散樹脂であるジョンクリル611(商品名:BASFジャパン株式会社製)35部、水酸化カリウム1.70部、イオン交換法と逆浸透法により精製した超純水250部を混合して、ジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散を行った。得られた水分散液を孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過することで、固形分濃度が20%(顔料固形分:15%)のブラック顔料分散液1を得た。得られた分散原液をガラス繊維濾紙GA−100(商品名:アドバンテック東洋社製)で濾過して粗大粒子を除き、顔料濃度が15質量%となるように調整した。また、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(商品名「マイクロトラックUPA」、日機装株式会社製)で顔料分散液1の平均粒子径を測定したところ、110nmであった。
ジルコニアビーズによるボールミルにて15時間分散を実施する以外は、上記、「3.1.1.顔料分散液1の調製」と同様にして、固形分濃度が20%(顔料固形分:15%)のブラック顔料分散液2を得た(平均粒子径:90nm)。なお平均粒子径の測定装置はマイクロトラックUPAである(以下同様)。
3.1.3.顔料分散液3の調製
ジルコニアビーズによるボールミルにて7時間分散を実施する以外は、上記、「3.1.1.顔料分散液1の調製」と同様にして、固形分濃度が20%(顔料固形分:15%)のブラック顔料分散液3を得た(平均粒子径:130nm)。
3.1.4.顔料分散液4の調製
ジルコニアビーズによるボールミルにて4時間分散を実施する以外は、上記、「3.1.1.顔料分散液1の調製」と同様にして、固形分濃度が20%(顔料固形分:15%)のブラック顔料分散液4を得た(平均粒子径:150nm)。
以下に、顔料分散液の製造に使用した顔料種を示す。
C.I.ピグメントブラック7(ブラック顔料分散液に使用)。
上記の「3.1.1.顔料分散液1の調製〜3.1.4.顔料分散液4の調製」で調製された各顔料分散液を用いて、表2および表3に示す材料組成にて材料組成の異なるインク組成物を調製した。各インク組成物は、表2および表3に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて2時間混合撹拌した後、孔径10μmのメンブランフィルターにて濾過してゴミや粗大粒子等の不純物を除去することにより調製した。なお、表2中の数値は、全て質量%を示し、イオン交換水はインク全量が100質量%となるように添加した。
BYK−348(ビックケミー・ジャパン株式会社製、シリコーン系界面活性剤)
・サーフィノールDF110D(日信化学株式会社製、アセチレングリコール系消泡剤)
・AQUACER515(ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエチレンワックスエマルジョン(35%分散液))
・レザミンD−1060(大日精化株式会社製、ポリカーボネート系のウレタン系樹脂からなる樹脂粒子を含むエマルジョン)
・タケラックW−5030(三井化学株式会社製、ポリエーテル系のウレタン系樹脂からなる樹脂粒子を含むエマルジョン)
・AQUACER507(ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエチレンワックス粒子を含むエマルジョン)
・アルマテックスE118BF、アルマテックスE208(三井化学株式会社製)。
3.2.1.ヘッドの目詰まり性
表2に示した各インク組成物を、インクジェット記録方式のプリンターであるインクジェットプリンター(製品名「PX−G930」、セイコーエプソン株式会社製、ノズル解像度:180dpi)のヘッド内に充填した。充填後、ノズルチェックパターンを印刷して充填不良・ノズル目詰まりのないことを確認してから、プリンターの電源をOFFにして、ヘッドをホームポジションに戻した状態(すなわちヘッドにキャップした状態)にして、40℃/10〜20%RHの環境下で二週間放置した。放置後、必要に応じてクリーニング動作を行ってノズルチェックパターンを印刷してノズルの吐出状況を観察することで、インク組成物のインクジェットヘッドの目詰まり性を評価した。その評価基準を以下に示すと共に、その評価結果を表4に示す。
B:クリーニング動作が4回〜6回の範囲内で、全ノズルからインク組成物が正常吐出された。
C:クリーニング動作が7回〜10回の範囲内で、全ノズルからインク組成物が正常吐出された。
D:全ノズルからインク組成物が正常吐出されるまでにクリーニング動作が11回以上必要であった。
E:クリーニング動作を11回以上行っても正常吐出されないノズルがあった。
表2に示した各インク組成物を、各々サンプル瓶内に密封して60℃環境下にて1週間放置した。放置後のインクの粘度変化、およびインク成分の分離・沈降・凝集状況を観察することにより、インク組成物の保存安定性を評価した。その評価基準を以下に示すと共に、その評価結果を表5に示す。
A:調製直後の粘度と比較して変化率が±5%未満。
B:調製直後の粘度と比較して変化率が±5%以上±10%未満。
C:調製直後の粘度と比較して変化率が±10%以上±20%未満。
D:調製直後の粘度と比較して変化率が±20%以上。
<インク成分の分離・沈降・凝集>
A:インク成分の分離・沈降・凝集が無い。
B:インク成分の分離・沈降・凝集のうちのいずれかがわずかに見られる。
C:インク成分の分離・沈降・凝集のうちのいずれかが明確に見られる。
D:インク成分の分離・沈降・凝集のうちのいずれかが著しい。
被記録媒体としてインク吸収性の上質紙(商品名「55PW8R」、リンテック株式会社製)を使用した。また、インクジェット記録方式のプリンターとして、紙案内部に温度が可変できるヒーターを取り付けたインクジェットプリンター(製品名「PX−G930」、セイコーエプソン株式会社製、ノズル解像度:180dpi)を用いた。
A:O.D.値が1.4以上を示す。
B:O.D.値が1.3以上1.4未満を示す。
C:O.D.値が1.3以上1.3未満を示す。
D:O.D.値が1.2未満を示す。
被記録媒体としてインク吸収性の上質紙(商品名「55PW8R」、リンテック株式会社製)、低吸収性の印刷本紙(商品名「PODグロスコート」、王子製紙株式会社製)、インク非吸収性のポリプロピレンフィルム(商品名「SY51M 2.6mil.PPWhite TC RP37 2.2mil.HIGH DENSITY WHITE」、UPM RAFLATA社製、以下「SY51M」と略記する)を使用した。また、インクジェット記録方式のプリンターとして、紙案内部に温度が可変できるヒーターを取り付けたインクジェットプリンター(製品名「PX−G930」、セイコーエプソン株式会社製、ノズル解像度:180dpi)を用いた。
インクジェットプリンターにインク組成物のいずれかを充填して、上記記録媒体に印刷した。印刷パターンとしては、横720dpi、縦720dpiの解像度で、100%のdutyで印刷できる塗り潰しパターンを作製しこれを用いた。記録条件は、プリンターのヒーター設定を「記録面の温度が40℃となる設定」とした。さらに、記録中および記録直後の記録物に対して80℃の温度の風を送風することにより乾燥処理を行った。なお、前記送風の強度は、被記録媒体表面での風速が2〜5m/秒程度となる状態とした。また、記録直後の送風時間は1分間とした。
その後、室温(25℃)環境下の実験室にて5時間放置した記録物の記録面を学振型摩擦堅牢度試験機(製品名「AB−301」、テスター産業株式会社製)を用いて、荷重200g下、綿布にて10回擦ったときの記録面の剥がれ状態や綿布へのインク移り状態を確認することにより耐擦性を評価した。その評価基準を以下に示すと共に、その評価結果を表7に示す。
B:10回擦った後インク剥がれまたは綿布へのインク移りがわずかに認められた。
C:10回擦った後インク剥がれまたは綿布へのインク移りが認められた。
D:10回擦り終わる前にインク剥がれまたは綿布へのインク移りが認められた。
記録媒体として、低吸収性の印刷本紙(商品名「PODグロスコート」、王子製紙株式会社製)、インク非吸収性のポリプロピレンフィルム(商品名「SY51M 2.6mil.PPWhite TC RP37 2.2mil.HIGH DENSITY WHITE」、UPM RAFLATA社製、以下「SY51M」と略記する)を使用した。また、インクジェット記録方式のプリンターとして、紙案内部に温度が可変できるヒーターを取り付けたインクジェットプリンター(製品名「PX−G930」、セイコーエプソン株式会社製、ノズル解像度:180dpi)を用いた。
印刷パターンとしては、横720dpi、縦720dpiの解像度で、50%〜100%の範囲のdutyで10%刻みで印刷できる塗り潰しパターンを作製しこれを用いた。その他の印刷条件は、上記「3.3.3.印刷物の印刷濃度測定」と同様にした。
このような条件で記録したときの記録物の濃淡ムラ(発色、光沢ムラ)を目視で確認した。その評価基準を以下に示すと共に、その評価結果を表8に示す。なお、濃淡ムラは本願発明においては必須の解決課題ではない。
B:duty70%まで濃淡ムラが認められなかった。
C:duty60%まで濃淡ムラが認められなかった。
D:duty60%以下でも濃淡ムラが認められた。
Claims (10)
- 色材と、1,2−ペンタンジオールと、1,2−ヘキサンジオールとを含み、
前記1,2−ペンタンジオールの含有量は、0質量%超過20質量%未満であるインク組成物。 - デービス法のHLB値が3.0〜7.8のグリコールエーテル、消泡剤、難溶解性アルカンジオールから選択される一種以上を含み、
1,2−ペンタンジオール及び1,2−ヘキサンジオールの総量と、デービス法のHLB値が3.0〜7.8のグリコールエーテル、消泡剤、難水溶性アルカンジオールとの総量の質量比は、3:1〜15:1である、請求項1に記載のインク組成物。 - 標準沸点280℃以上のアルキルポリオールを実質的に含有しない、請求項1又は2に記載のインク組成物。
- 前記1,2−ペンタンジオール及び前記1,2−ヘキサンジオール以外の標準沸点190℃以上250℃以下のアルキルポリオールをさらに含む、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のインク組成物。
- デービス法によるHLB値が3.0〜7.8の範囲内であるのグリコールエーテルを含む請求項1ないし4のいずれか一項に記載のインク組成物。
- 消泡剤を含む請求項1ないし5のいずれか一項に記載のインク組成物。
- インク組成物中の標準沸点190℃以上250℃以下のアルキルポリオールの総量が10質量%以上30質量%以下である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のインク組成物。
- 前記色材が樹脂分散剤によって分散された顔料であり、
分散後の前記色材の平均粒子径が80nm以上140nm以下である、請求項1ないし7のいずれか一項に記載のインク組成物。 - 請求項1ないし8のいずれか一項に記載のインク組成物を用いて記録を行う記録装置。
- 請求項1ないし8のいずれか一項に記載のインク組成物が記録された記録物。
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