以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る液体を吐出する装置および液体吐出方法の実施形態を詳細に説明する。本願において「液体を吐出する装置」は、液体を吐出するヘッドを備え、該ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置である。「液体を吐出する装置」には、被吐出物に対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。例えば、画像形成装置、立体造形装置、処理液塗布装置、噴射造粒装置などが該当する。以下では、「液体を吐出する装置」の一例として、画像形成装置の1つのインクジェット記録装置への適用例を示す。以下のインクジェット記録装置の説明では、記録液の一例である「インク(インク滴)」を上記「液体」の一例とし、「記録ヘッド」を上記「ヘッド」の一例とし、記録媒体の一例である「紙(用紙)」を上記「被吐出物」の一例として示す。
図1は、実施形態にかかるインクジェット記録装置1の全体構成を示す図である。インクジェット記録装置1は、記録ヘッド16(図2で説明)が搭載されたキャリッジ15をシート(用紙)の幅方向に走査させながら画像を形成し、1回あるいは複数回の走査が終了した後にシートを搬送し、次の記録ラインを形成する、いわゆるシリアル型インクジェット式記録装置である。
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、画像形成部2と、シート搬送部3と、ロール紙収納部4と、を含んで構成され、これら各部は装置本体1aの内部に配置されている。画像形成部2は、図示しない両側板にガイドロッド13およびガイドレール14が掛け渡され、これらのガイドロッド13およびガイドレール14にキャリッジ15が矢印A方向に摺動可能に保持されている。キャリッジ15には、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のインク滴を吐出する記録ヘッド16(図2参照)が搭載されている。
主走査機構10は、シートの幅方向の一方側に配置されるキャリッジ駆動モータ210と、キャリッジ駆動モータ210によって回転駆動される駆動プーリ220と、シート幅方向の他方側に配置された従動プーリ230と、駆動プーリ220と従動プーリ230との間に掛け回されたベルト部材240とを備えている。従動プーリ230は、テンションスプリング等によって外方、すなわち駆動プーリ220に対して離間する方向に張力(テンション)が印加されている。
ベルト部材240は、キャリッジ15の背面側に設けたベルト固定部に一部分が固定保持されていることで、シート幅方向にキャリッジ15を牽引する。また、キャリッジ15の主走査位置を検知するため、エンコーダシートがキャリッジ15のシート幅方向に沿って配置されている。
キャリッジ15の主走査位置は、キャリッジ15に設けられたエンコーダセンサによってエンコーダシートが読取られることにより検知される。このキャリッジ15における主走査領域のうち、記録領域では、ロール紙300がシート搬送部3によってシート幅方向と直交する方向、すなわちシート搬送方向(図中、矢印Bで示す方向)に間欠的に搬送される。また、シート幅方向のキャリッジ移動領域外、または主走査領域のうち一方の端部側領域には、記録ヘッド16のサブタンクに供給する各色のインクを収容したメインカートリッジ18が装置本体1aに対して着脱自在に装着されている。また、キャリッジ移動領域の一方の端部側、すなわち空吐出位置側(図中、左側)には、図示を省略しているが、増粘したインクを排出するために画像記録に寄与しないインク滴を吐出させる空吐出動作を行うときのインク滴を受ける空吐出受けが設けられている。
各記録ヘッド16は、所定の条件成立時、吐出性能の維持、回復のために上記空吐出位置において空吐出を行うようになっている。さらに、キャリッジ移動領域の他方の端部側、すなわちキャリッジホーム位置側(図中、右側)には、記録ヘッド16の維持回復を行う維持回復機構19が配置されている。維持回復機構19は、記録ヘッド16の各ノズル面をキャッピングするための各キャップや、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレードなどを備えている。
なお、装置の仕様によっては、例えば空吐出受けをキャリッジホーム位置側に設けて、キャップやワイパーブレードと同様に維持回復機構19に含めた構成としてもよいし、キャリッジホーム位置側および空吐出位置側の両方にそれぞれ空吐出受けを設ける構成であってもよい。
ロール紙収納部4は、給紙手段であり、画像記録用のシートとしてロール紙300がセットされるようになっている。このロール紙収納部4には、シート幅方向のサイズが異なるロール紙がセット可能である。
ロール紙300は、その紙軸に両側からフランジ310を装着し、このフランジ310をフランジ受け320に載置することによりロール紙収納部4に収容される。フランジ受け320の内部には、図示しない支持コロが設けられ、該支持コロがフランジ310の外周と当接することでフランジ310が回転し、ロール紙300がシート搬送経路に送り出される。但し装置構成は上記に限ったものではなく、小型のカットシートのみ対応のシリアル型インクジェットプリンタでも応用可能である。
図2は、キャリッジ15の上面図である。図2において、41は光センサ型の変位計などの、キャリッジ15と、シート(被吐出物)との距離を計測する計測部(以下、ギャップ計測部41と称する場合がある)であり、記録ヘッド16の吐出口面と同じ高さにてシートとの距離を測定する。
図2に示すように、キャリッジ15には、イエロー(Y)のインクを吐出する記録ヘッド16yと、マゼンタ(M)のインクを吐出する記録ヘッド16mと、シアン(C)のインクを吐出する記録ヘッド16cと、ブラック(K)のインクを吐出する記録ヘッド16kとが搭載されている。これらを総称して記録ヘッド16と称している。
また、図2に示すように、シート上に印字されたパターン画像Pを撮像するための撮像装置(撮像部の一例)42がキャリッジ15に支持されている。詳しくは後述するが、ギャップ計測部41にて計測されたギャップに応じて、記録ヘッド16でのインクの吐出タイミングが設定され、その設定後の印字結果を撮像装置42で撮像する。その撮像により得られた撮像画像に基づき充分な品質を確保できていると判断されれば、そこで記録ヘッド16の吐出性能の調整は終わる。逆に、充分でないと判断された場合には、更なる設定(調整)が実施される。なお、撮像装置42での撮像は、上記のような順番に限定されるものではなく、例えばギャップに応じたインク吐出タイミングの補正が実施される前に撮像を実施し、品質の確認をしても良い。また、キャリッジ15に対してのギャップ計測部41、撮像装置42の配置も、図2の例に限定されるものではない。
次に、図3乃至図6を参照しながら、本実施形態の撮像装置42の機械的な構成例について説明する。図3は、撮像装置42の外観を示す斜視図、図4は、撮像装置42の分解斜視図、図5は、図3中のX1方向から見た撮像装置42の縦断面図、図6は、図3中のX2方向から見た撮像装置42の縦断面図である。
撮像装置42は、図3および図4に示すように、取り付け片22が一体形成された筐体21を備える。筐体21は、例えば、所定の間隔を空けて対向する底板部21aおよび天板部21bと、これら底板部21aと天板部21bとを繋ぐ側壁部21c,21d,21e,21fを有する。筐体21の底板部21aと側壁部21d,21e,21fは、例えばモールド成形により取り付け片22とともに一体に形成され、これに対して天板部21bと側壁部21cとが着脱可能な構成とされる。図4では天板部21bと側壁部21cとを取り外した状態を示している。
撮像装置42は、例えば、筐体21の側壁部21eおよび取り付け片22をキャリッジ15の側面部に突き当てた状態で、ネジなどの締結部材を用いてキャリッジ15の側面部に締結されることにより、キャリッジ15に取り付けられる。このとき、撮像装置42は、図5および図6に示すように、筐体21の底板部21aが間隙dを介してシートに対し略平行な状態で対向するように、キャリッジ15に取り付けられる。間隙dの大きさは、後述のセンサユニット25により撮像される被写体と筐体21との間の距離に相当する。この距離は、例えば、シートの厚さの違いやシートを支持するプラテン表面の凹凸の影響などによって変動する。
シートと対向する筐体21の底板部21aには、筐体21の外部の被写体(パターン画像Pの測色を行う場合はシート上に形成されたパターン画像P)を筐体21の内部から撮像可能にするための開口部23が設けられている。また、筐体21の底板部21aの内面側には、支え部材33を介して開口部23と隣り合うようにして、基準チャート40が配置されている。基準チャート40は、パターン画像Pの測色やRGB値の取得を行う際に、後述のセンサユニット25によりパターン画像Pとともに撮像されるものである。なお、基準チャート40の詳細については後述する。
一方、筐体21内部の天板部21b側には、回路基板24が配置されている。また、筐体21の天板部21bと回路基板24との間には、画像を撮像するセンサユニット25が配置されている。センサユニット25は、図5に示すように、CCDセンサまたはCMOSセンサなどの二次元イメージセンサ25aと、センサユニット25の撮像範囲の光学像を二次元イメージセンサ25aの受光面(撮像領域)に結像するレンズ25bとを備える。
センサユニット25は、例えば、筐体21の側壁部21eと一体に形成されたセンサホルダ26により保持される。センサホルダ26には、回路基板24に形成された貫通孔24aと対向する位置にリング部26aが設けられている。リング部26aは、センサユニット25のレンズ25b側の突出した部分の外形形状に倣った大きさの貫通孔を有する。センサユニット25は、レンズ25b側の突出した部分をセンサホルダ26のリング部26aに挿通することで、レンズ25bが回路基板24の貫通孔24aを介して筐体21の底板部21a側に臨むようにして、センサホルダ26により保持される。
このとき、センサユニット25は、図5中の一点鎖線で示す光軸が筐体21の底板部21aに対して略垂直となり、且つ、開口部23と後述の基準チャート40とが撮像範囲に含まれるように、センサホルダ26により位置決めされた状態で保持される。これにより、センサユニット25は、二次元イメージセンサ25aの撮像領域の一部で、筐体21外部の被写体(シート上に形成されたパターン画像P)を、開口部23を介して撮像するとともに、二次元イメージセンサ25aの撮像領域の他の一部で、筐体21の内部に配置された基準チャート40を撮像することができる。
なお、センサユニット25は、各種の電子部品が実装される回路基板24に対して、例えばフレキシブルケーブルを介して電気的に接続される。また、回路基板24には、後述するインクジェット記録装置1のメイン制御基板100(後述の図8参照)に対して撮像装置42を接続するための接続ケーブルが装着される外部接続コネクタ27が設けられている。
また、筐体21の内部には、センサユニット25による撮像時にその撮像範囲を略均一に照明するための光源28が設けられている。光源28としては、例えばLED(Light Emitting Diode)が用いられる。本実施形態においては、図6に示すように、センサユニット25のレンズ25bの中心を基準として、開口部23と基準チャート40が並ぶ方向と直交する方向に均等に配置された2つのLEDを光源28として用いている。
光源28として用いる2つのLEDは、例えば回路基板24の底板部21a側の面に実装される。ただし、光源28は、センサユニット25の撮像範囲を拡散光により略均一に照明できる位置に配置されればよく、必ずしも回路基板24に直接実装されていなくてもよい。また、本実施形態では、光源28としてLEDを用いたが、光源28の種類はLEDに限定されるものではない。例えば、有機ELなどを光源28として用いるようにしてもよい。有機ELを光源28として用いた場合は、太陽光の分光分布に近い照明光が得られるため、測色精度の向上が期待できる。
また、筐体21の内部には、センサユニット25と該センサユニット25により開口部23を介して撮像される筐体21外部の被写体(シート上に形成されたパターン画像P)との間の光路中に、光路長変更部材29が配置されている。光路長変更部材29は、光源28の光に対して十分な透過率を有する屈折率nの光学素子である。光路長変更部材29は、筐体21外部の被写体の光学像の結像面を筐体21内部の基準チャート40の光学像の結像面に近づける機能を持つ。つまり、本実施形態の撮像装置42では、センサユニット25と筐体21外部の被写体との間の光路中に光路長変更部材29を配置することによって光路長を変更し、筐体21外部の被写体となるパターン画像Pの光学像の結像面と、筐体21内部の基準チャート40の結像面とを、ともにセンサユニット25の二次元イメージセンサ25aの受光面に合わせるようにしている。これによりセンサユニット25は、筐体21外部の被写体と筐体21内部の基準チャート40との双方にピントの合った画像を撮像することができる。
光路長変更部材29は、例えば図5に示すように、一対のリブ30,31によって、底板部21a側の面の両端部が支持されている。また、光路長変更部材29の天板部21b側の面と回路基板24との間に押さえ部材32が配置されることで、光路長変更部材29が筐体21内部で動かないようになっている。光路長変更部材29は、筐体21の底板部21aに設けられた開口部23を塞ぐように配置されるため、筐体21外部から開口部23を介して筐体21内部に進入するインクミストや塵埃などの不純物が、センサユニット25や光源28、基準チャート40などに付着するのを防止する機能も有することになる。
本実施形態の撮像装置42は、パターン画像Pの測色を行う際に、筐体21の内部に設けられた光源28を点灯し、この光源28の光を筐体21の外部のシート上に形成されたパターン画像Pに照射した状態で、センサユニット25による撮像を行う。
なお、以上説明した撮像装置42の機械的な構成はあくまで一例であり、これに限らない。本実施形態の撮像装置42は、少なくとも、筐体21の内部に設けられた光源28が点灯している間に、筐体21の内部に設けられたセンサユニット25により、筐体21の外部の被写体を、開口部23を介して撮像する構成であればよく、上記の構成に対して様々な変形や変更が可能である。例えば、上述した撮像装置42では、筐体21の底板部21aの内面側に基準チャート40を配置しているが、筐体21の底板部21aの基準チャート40が配置される位置に開口部23とは別の開口部を設けるとともに、この開口部が設けられた位置に筐体21の外側から基準チャート40を取り付ける構成であってもよい。この場合、センサユニット25は、開口部23を介してシート上に形成されたパターン画像Pを撮像するとともに、開口部23とは別の開口部を介して、筐体21の底板部21aに外側から取り付けられた基準チャート40を撮像することになる。この例では、基準チャート40に汚れなどの不良が生じた場合に、交換を容易に行える利点がある。
次に、図7を参照しながら、撮像装置42の筐体21に配置される基準チャート40の具体例について説明する。図7は、基準チャート40の具体例を示す図である。
図7に示す基準チャート40は、測色用の基準パッチを配列した複数の基準パッチ列410〜440、ドット径計測用パターン列460、距離計測用ライン450、およびチャート位置特定用マーカ470を有する。
基準パッチ列410〜440は、YMCKの1次色の基準パッチを階調順に配列した基準パッチ列410と、RGBの2次色の基準パッチを階調順に配列した基準パッチ列420と、グレースケールの基準パッチを階調順に配列した基準パッチ列(無彩色の階調パターン)430と、3次色の基準パッチを配列した基準パッチ列440と、を含む。ドット径計測用パターン列460は、大きさが異なる円形パターンが大きさ順に配列された幾何学形状測定用のパターン列であり、シートに印刷された画像のドット径の計測に用いることができる。
距離計測用ライン450は、複数の基準パッチ列410〜440やドット径計測用パターン列460を囲む矩形の枠として形成されている。チャート位置特定用マーカ470は、距離計測用ライン450の四隅の位置に設けられていて、各基準パッチの位置を特定するためのマーカとして機能する。センサユニット25により撮像される基準チャート40の画像から、距離計測用ライン450とその四隅のチャート位置特定用マーカ470を特定することで、基準チャート40の位置および各基準パッチやパターンの位置を特定することができる。
測色用の基準パッチ列410〜440を構成する各基準パッチは、撮像装置42の撮像条件を反映した色味の基準として用いられる。なお、基準チャート40に配置されている測色用の基準パッチ列410〜440の構成は、図7に示す例に限定されるものではなく、任意の基準パッチ列を適用することが可能である。例えば、可能な限り色範囲が広く特定できる基準パッチを用いてもよいし、また、YMCKの1次色の基準パッチ列410や、グレースケールの基準パッチ列430は、インクジェット記録装置1に使用されるインクの測色値のパッチで構成されていてもよい。また、RGBの2次色の基準パッチ列420は、インクジェット記録装置1で使用されるインクで発色可能な測色値のパッチで構成されていてもよく、さらに、Japan Color等の測色値が定められた基準色票を用いてもよい。
なお、本実施形態では、一般的なパッチ(色票)の形状の基準パッチ列410〜440を有する基準チャート40を用いているが、基準チャート40は、必ずしもこのような基準パッチ列410〜440を有する形態でなくてもよい。基準チャート40は、測色に利用可能な複数の色が、それぞれの位置を特定できるように配置された構成であればよい。
基準チャート40は、上述したように、筐体21の底板部21aの内面側に開口部23と隣り合うように配置されているため、センサユニット25によって、筐体21の外部の被写体と同時に撮像することができる。なお、ここでの同時に撮像とは、筐体21の外部の被写体と基準チャート40とを含む1フレームの画像データを取得することを意味する。つまり、画素ごとのデータ取得に時間差があっても、筐体21の外部の被写体と基準チャート40とが1フレーム内に含まれる画像データを取得すれば、筐体21の外部の被写体と基準チャート40とを同時に撮像したことになる。
次に、図8を参照しながら、本実施形態のインクジェット記録装置1の制御機構の概略構成について説明する。図8は、インクジェット記録装置1の制御機構の構成例を示すブロック図である。
本実施形態のインクジェット記録装置1は、図8に示すように、CPU101、ROM102、RAM103、記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106、制御用FPGA(Field-Programmable Gate Array)110、記録ヘッド16、ギャップ計測部41、撮像装置42、エンコーダセンサ130、主走査モータ8、および副走査モータ12を備える。CPU101、ROM102、RAM103、記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106、および制御用FPGA110は、メイン制御基板100に搭載されている。記録ヘッド16、エンコーダセンサ130、および撮像装置42はキャリッジ15に搭載されている。
CPU101は、インクジェット記録装置1の全体の制御を司る。例えば、CPU101は、RAM103を作業領域として利用して、ROM102に格納された各種の制御プログラムを実行し、インクジェット記録装置1における各種動作を制御するための制御指令を出力する。
記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106は、それぞれ、記録ヘッド16、主走査モータ8、副走査モータ12を駆動するためのドライバである。
制御用FPGA110は、CPU101と連携してインクジェット記録装置1における各種動作を制御する。図9は、制御用FPGA110が有する機能の一例を示す図である。図9に示すように、制御用FPGA110は、CPU制御部111、メモリ制御部112、設定部120、インク吐出制御部113、センサ制御部114、およびモータ制御部115を有する。説明の便宜上、図9の例では本発明に関する機能のみを例示しているが、制御用FPGA110が有する機能はこれらに限られるものではない。
CPU制御部111は、CPU101と通信を行って、制御用FPGA110が取得した各種情報をCPU101に伝えるとともに、CPU101から出力された制御指令を入力する。
メモリ制御部112は、CPU101がROM102やRAM103にアクセスするためのメモリ制御を行う。
設定部120は、ギャップ計測部41の計測結果と、撮像装置42による撮像で得られた撮像画像とに基づいて、記録ヘッド16からのインクの吐出性能を設定する。インクの吐出性能の設定とは、記録ヘッド16からのインクの吐出タイミングの設定やインク滴のサイズの設定などを含む概念である。この例では、設定部120は、第1の設定部121と第2の設定部122とを含む。第1の設定部121は、ギャップ計測部41の計測結果に基づいて、記録ヘッド16からのインクの吐出タイミングを設定する。第2の設定部122は、第1の設定部121による設定の後にシート上に形成されたパターン画像Pを撮像して得られた撮像画像を示すパターン撮像画像に基づいて、記録ヘッド16からのインクの吐出タイミングの再設定、または、インク滴のサイズの設定を実施する。例えばパターン画像Pは各画素の濃度が同じ値に設定された特定の色の画像であり、第2の設定部122は、パターン撮像画像に映り込んだパターン画像Pの濃度の最大値と最小値との差分が閾値以上の場合は、記録ヘッド16からのインクの吐出タイミングの再設定、または、インク滴のサイズの設定を実施する。より具体的な内容は後述する。また、この例では、設定部120は、CPU101からの制御指令に応じて動作する。
インク吐出制御部113は、CPU101からの制御指令に応じて記録ヘッドドライバ104の動作を制御することにより、記録ヘッドドライバ104により駆動される記録ヘッド16からのインクの吐出タイミングを制御する。
センサ制御部114は、CPU101からの制御指令に応じて各種のセンサを制御する。例えばセンサ制御部114は、エンコーダセンサ130から出力されるエンコーダ値などのセンサ信号に対する処理を行う。また、センサ制御部114は、ギャップ計測部41を制御し、ギャップ計測部41による計測結果を取得することもできる。さらに、センサ制御部114は、撮像装置42を制御し、撮像装置42による撮像で得られた撮像画像を取得することもできる。
モータ制御部115は、CPU101からの制御指令に応じて主走査ドライバ105の動作を制御することにより、主走査ドライバ105により駆動される主走査モータ8を制御して、キャリッジ15の主走査方向への移動を制御する。また、モータ制御部115は、CPU101からの制御指令に応じて副走査ドライバ106の動作を制御することにより、副走査ドライバ106により駆動される副走査モータ12を制御して、シートの副走査方向への移動を制御する。この例では、モータ制御部115は、キャリッジ15とシートとを相対的に移動させる駆動部として機能すると考えることができるし、主走査モータ8または副走査モータ12が駆動部として機能すると考えることもできる。
なお、以上の各部は、制御用FPGA110により実現する制御機能の一例であり、これら以外にも様々な制御機能を制御用FPGA110により実現する構成としてもよい。また、上記の制御機能の全部または一部を、CPU101または他の汎用のCPUにより実行されるプログラムによって実現する構成であってもよい。また、上記の制御機能の一部を、制御用FPGA110とは異なる他のFPGAやASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアにより実現する構成であってもよい。
図8に戻って説明を続ける。記録ヘッド16は、CPU101および制御用FPGA110により動作制御される記録ヘッドドライバ104により駆動され、シートにインクを吐出して画像を形成する。
エンコーダセンサ130は、エンコーダシートのマークを検知して得られるエンコーダ値を制御用FPGA110に出力する。このエンコーダ値は制御用FPGA110からCPU101へと送られて、例えば、キャリッジ15の位置や速度を計算するために用いられる。CPU101は、このエンコーダ値から計算したキャリッジ15の位置や速度に基づき、主走査モータ8を制御するための制御指令を生成して出力する。
ギャップ計測部41は、上述したように、光センサ型の変位計などで構成され、キャリッジ15と、シートとの距離を計測する。ギャップ計測部41による計測結果は制御用FPGA110を介してCPU101に送られる。
撮像装置42は、インクジェット記録装置1のインク吐出性能の調整を行う場合に、シート上に形成されたパターン画像Pを基準チャート40とともにセンサユニット25により撮像し、撮像画像から得られるパターン画像PのRGB値と基準チャート40の各基準パッチのRGB値とに基づいて、パターン画像Pの測色値(標準色空間における表色値であり、例えばL*a*b*色空間におけるL*a*b*値)を算出する。撮像装置42が算出したパターン画像Pの測色値は、制御用FPGA110を介してCPU101に送られる。なお、パターン画像Pの測色値を算出する具体的な方法としては、例えば特開2013−051671号公報に開示される方法を利用することができる。
図10は、第1の設定部121による設定方法を説明するための図である。図10の例では、インク吐出速度が10m/s、狙いのギャップが1.0mmの場合、ギャップ計測部41により計測されたギャップに応じて、吐出タイミングをどれだけ補正するかを示している(表中一番右の列の値が補正値)。このように吐出タイミングを設定(補正)することで、ギャップが変動した場合でもシート上のインクの着弾位置を狙いの位置に制御することができる。
図11は、第2の設定部122による設定方法を説明するための図である。図11の(A)および(B)の各々の上側の画像は、シート上に印字されたパターン画像P(ベタ画像)を示している。撮像装置42にてこれらのパターン画像Pを撮像し、図中X方向のX0〜X1間の測色を行う。その結果(画像濃度)を、上側のパターン画像Pと対比させたものが下側のグラフである。なお、グラフ中では、0(薄い)〜255(濃い)の256段階で濃度を表している。図11の(A)では濃度は常に「255」となっており、安定した品質となっている。そのため、第2の設定部122による設定(追加の補正)は必要なく、ここで調整は終了する。一方、図11の(B)は濃度が「230」まで薄くなっている部分があり、第2の設定部122による設定が必要と判定される。上述したように、第2の設定部122による設定の方法としては、インク滴のサイズを変更する(大きくする)、あるいは再度吐出タイミングを補正することで実施する。第2の設定部122による設定が終わったら、再度、撮像装置42による撮像および測色を実施し、上述の判定を行う。以上の処理を品質が安定するまで繰り返す。なお、この際の判定としては、画像濃度の最大値と最小値の差分を取得し、その差分が閾値以上であるか否かで判定してもよいし、閾値を超えた(X方向における)幅との組み合わせで判定してもよい。
図12は、本実施形態の制御の一例を示すフローチャートである。図12に示すように、インク吐出性能の調整を開始すると、ギャップ計測部41は、キャリッジ15とシートとのギャップを計測する(ステップS1)。次に、第1の設定部121は、ステップS1の計測結果に基づいて、記録ヘッド16からのインクの吐出タイミングを設定する(ステップS2)。次に、CPU101は、パターン画像Pをシート上に形成するよう、制御用FPGA110を制御する(ステップS3)。次に、CPU101は、シート上に形成されたパターン画像Pを撮像するよう、撮像装置42および制御用FPGA110を制御する(ステップS4)。以下の説明では、ステップS2の設定の後にシート上に形成されたパターン画像Pを撮像して得られた撮像画像を「パターン撮像画像」と称する場合がある。
次に、第2の設定部122は、パターン撮像画像に映り込んだパターン画像Pの濃度の最大値と最小値との差分が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5の結果が否定の場合(ステップS5:No)、処理は終了する。一方、ステップS5の結果が肯定の場合(ステップS5:Yes)、第2の設定部122は、画像濃度の差分(ステップS5の判定対象の差分)を解消するよう、記録ヘッド16からのインクの吐出タイミングの再設定、または、インク滴のサイズの設定を実施する(ステップS6)。ステップS6の後、CPU101は、再度パターン画像Pをシート上に形成するよう、制御用FPGA110を制御し(ステップS7)、ステップS4以降の処理を繰り返す。
図13は、パターン画像Pの一例を示す図である。図13では、パターン画像Pは、調整パターンとして、ベタの画像とハーフトーンの画像の2種類が混ざった構成となっている。この2種類の画像の撮像を行って画像情報を取得することで、より最適な設定を実施できる。例えば、ベタ画像では特に品質上問題がない場合でも、ハーフトーン画像では滴の構成等が異なるため濃度ムラが発生するケースが考えられる。そのような場合でも本パターンを使用しておけば、第2の設定部122による設定が必要であると判定され、安定した品質を確保することができる。
以上に説明したように、本実施形態では、ギャップ計測部41の計測結果(キャリッジ15とシートとのギャップ)と、撮像装置42による撮像で得られた撮像画像とに基づいて、記録ヘッド16からのインクの吐出性能を設定するので、ギャップのみに基づいてインクの吐出性能を設定する従来構成に比べて、十分な画像品質を提供することができる。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
例えば撮像装置42がギャップ計測部41の機能を備える形態であってもよい。要するに、キャリッジ15と、シートとの距離(ギャップ)を計測する計測部(この例では撮像装置42)は、撮像画像に基づいて、キャリッジ15とシートとの距離を計測する形態であってもよい。
図14を参照しながら、本変形例の撮像装置42が有する機能について説明する。図14は、本変形例の撮像装置42が有する機能の一例を示すブロック図である。
図14に示すように、撮像装置42は、上述したセンサユニット25および光源28のほか、光源駆動制御部51、タイミング信号発生部52、フレームメモリ53、平均化処理部54、測色演算部56、不揮発性メモリ57および距離算出部58を備える。これらの各部は、例えば、プロセッサやメモリを含むコンピュータシステム、あるいは、FPGAやASICなどの専用ハードウェアを用いて実現される。これらの各部の機能を実現するハードウェアは、例えば、撮像装置42の筐体21内部に配置された回路基板24に実装される。
センサユニット25は、レンズ25bを介して入射した光を二次元イメージセンサ25aにより電気信号に変換して、光源28により照明された撮像範囲の画像データを出力する。センサユニット25は、二次元イメージセンサ25aの光電変換により得られたアナログ信号をデジタルの画像データにAD変換し、その画像データに対してシェーディング補正やホワイトバランス補正、γ補正、画像データのフォーマット変換などの各種の画像処理を行った後に出力する機能を内蔵している。二次元イメージセンサ25aの各種動作条件の設定は、CPU101からの各種設定信号に従って行われる。なお、画像データに対する各種の画像処理は、その一部あるいは全部をセンサユニット25の外部で行うようにしてもよい。
光源駆動制御部51は、センサユニット25による画像の撮像時に、光源28を点灯させるための光源駆動信号を生成して、光源28に供給する。
タイミング信号発生部52は、センサユニット25による撮像開始のタイミングを制御するタイミング信号を生成し、センサユニット25に供給する。この例では、タイミング信号発生部52は、センサ制御部114(CPU101)の制御の下、動作する。
フレームメモリ53は、センサユニット25から出力された画像を一時的に格納する。
平均化処理部54は、パターン画像Pの測色を行う際に、センサユニット25から出力されてフレームメモリ53に一時的に格納された画像から、筐体21の開口部23により区切られる画像領域(以下、この画像領域を「被写体画像領域」という)と、基準チャート40を映した画像領域(以下、この画像領域を「基準チャート画像領域」という)とを抽出する。そして、平均化処理部54は、被写体画像領域の中央部の予め定められた大きさの領域の画像データを平均化して、得られた値をパターン画像PのRGB値として出力する。また、平均化処理部54は、基準チャート画像領域内の各基準パッチの領域の画像データを平均化して、得られた値を各基準パッチのRGB値として出力する。パターン画像PのRGB値は測色演算部56に渡される。なお、特願2016−083877号と同様に、このパターン画像PのRGB値を距離算出部58により算出された距離に応じて補正した上で測色演算部56に渡す形態であってもよい。この場合、基準チャート40の各基準パッチのRGB値は、距離算出部58により算出された距離に応じた補正は行われることなく、測色演算部56に渡される。
測色演算部56は、パターン画像PのRGB値と、基準チャート40の各基準パッチのRGB値とに基づいて、パターン画像Pの測色値を算出する。測色演算部56が算出したパターン画像Pの測色値は、メイン制御基板100上のCPU101へと送られる。なお、測色演算部56は、例えば特開2013−051671号公報に開示される方法によりパターン画像Pの測色値を算出できるため、ここでは測色演算部56の処理の詳細な説明は省略する。
不揮発性メモリ57は、測色演算部56がパターン画像Pの測色値を算出するために必要な各種データなどを記憶する。
距離算出部58は、センサユニット25により撮像されてフレームメモリ53に一時的に格納された画像を解析することにより、筐体21と筐体21外部の被写体との間の距離、より詳しくは、筐体21の底板部21aとパターン画像Pが形成されたシートとの間の距離(図5および図6に示した間隙dの大きさ)を算出する。ここでは、この間隔dが、キャリッジ15とシートとのギャップに相当するよう撮像装置42の配置が設計される。
この例では、光源28、センサユニット25、光源駆動制御部51、フレームメモリ53および距離算出部58が、ギャップ計測部411の機能(前述のギャップ計測部41と同様の機能)を備える。つまり、図14の点線で囲まれた部分が、ギャップ計測部411の機能を備える。なお、ギャップ計測部411の機能の一部が、CPU101に搭載される形態であってもよい。例えば「距離算出部58」による処理の一部がCPU101で行われる形態であってもよい。
図15乃至図17は、センサユニット25により撮像された画像例を示す図である。なお、図15乃至図17は、パターン画像Pが形成されていない状態のシートの紙面を被写体としてセンサユニット25により撮像を行った場合の画像例を示している。
図15乃至図17に示すように、センサユニット25により撮像された画像Imには、筐体21内部の基準チャート40を映した画像領域である基準チャート画像領域RCと、筐体21の開口部23を介して筐体21外部の被写体を映した画像領域、つまり、筐体21の開口部23により区切られる画像領域である被写体画像領域ROとが含まれる。そして、被写体画像領域ROは、高い輝度を示す高輝度領域RO_hの外側(基準チャート40と開口部23とが並ぶ方向と直交する方向の外側であり、図15乃至図17の例では高輝度領域RO_hの上下)に、低い輝度を示す低輝度領域RO_lが帯状に現れた画像となっている。
センサユニット25により撮像された画像Imにおいて、被写体画像領域ROの高輝度領域RO_hよりも外側に低輝度領域RO_lが現れるのは、筐体21の開口部23に対するセンサユニット25と光源28との位置関係の違いにより、センサユニット25により撮像される筐体21外部の被写体の撮像範囲の外側部分に、2つの光源28の一方からの光が照射されない領域が生じるためである。ここで、センサユニット25および光源28は、開口部23を有する筐体21に固定的に設けられているため、センサユニット25により撮像された画像Imにおける被写体画像領域ROの大きさは変化しない。しかし、被写体画像領域ROの高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率は、筐体21と筐体21外部の被写体との間の距離に応じて変化する。
図16に示す画像Imは、図15に示す画像Imよりも、筐体21と筐体21外部の被写体(シートの紙面)との間の距離が小さい状態でセンサユニット25により撮像された画像例を示している。図15に示す画像Imと図16に示す画像Imとを比較すると分かるように、筐体21と筐体21外部の被写体との間の距離が小さくなると、被写体画像領域ROの高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率は小さくなる。
図17に示す画像Imは、図15に示す画像Imよりも、筐体21と筐体21外部の被写体(シートの紙面)との間の距離が大きい状態でセンサユニット25により撮像された画像例を示している。図17に示す画像Imと図15に示す画像Imとを比較すると分かるように、筐体21と筐体21外部の被写体との間の距離が大きくなると、被写体画像領域ROの高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率は大きくなる。
以上のように、センサユニット25により撮像された画像Imにおいて、被写体画像領域ROの高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率は、筐体21と筐体21外部の被写体との間の距離に依存した値となる。したがって、被写体画像領域ROの高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率を求めることで、筐体21と筐体21外部の被写体との間の距離を算出することができる。
距離算出部58は、例えば以下のような方法により、筐体21と筐体21外部の被写体との間の距離を算出する。すなわち、距離算出部58は、まず、センサユニット25により撮像されてフレームメモリ53に一時的に格納された画像Imから、被写体画像領域ROを抽出する。そして、距離算出部58は、例えば、抽出した被写体画像領域ROに対して所定の閾値を用いた二値化処理を行って、被写体画像領域RO内の高輝度領域RO_hを白画素、低輝度領域RO_lを黒画素とする二値化画像を生成する。
次に、距離算出部58は、生成した二値化画像に対し、画像Imにおいて基準チャート画像領域RCと被写体画像領域ROとが並ぶ方向と直交する方向における白画素の画素数と黒画素の画素数とをカウントし、白画素の画素数に対する黒画素の画素数の割合を、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率として算出する。なお、本実施形態の撮像装置42では、上述したように、2つの光源28を、センサユニット25のレンズ25bの中心を基準として、開口部23と基準チャート40が並ぶ方向と直交する方向に均等に配置している。このため、筐体21と被写体との間に相対的な傾きが生じていない状態、より詳しくは、筐体21の底板部21aとパターン画像Pが形成されたシートの紙面とが平行な状態が保たれているものと仮定すると、被写体画像領域ROにおける低輝度領域RO_lは、高輝度領域RO_hに対し、画像Imにおいて基準チャート画像領域RCと被写体画像領域ROとが並ぶ方向と直交する方向の両側に、均等な大きさで現れる。したがって、白画素の画素数と黒画素の画素数のカウントは、被写体画像領域ROの半分の大きさ、つまり、被写体画像領域ROの中心から一方の低輝度領域RO_lに向かう方向でのみ行えばよい。
距離算出部58は、被写体画像領域ROの高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率を以上のように算出したら、得られた比率に基づいて、筐体21と筐体21外部の被写体との間の距離を算出する。なお、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率から、筐体21と筐体21外部の被写体との間の距離を算出する方法は、筐体21の開口部23に対する光源28の位置関係によって、3通り考えられる。以下、これら3通りの算出方法を個別に説明する。
<距離算出方法1>
図18は、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率から、筐体21と筐体21外部の被写体との間の距離を算出する方法を説明する図であり、光源28が、開口部23のエッジ部分の直上に位置するように回路基板24に実装されている場合の例である。
図18に示すように、光源28の位置をM、センサユニット25のレンズ25bの中心位置をA、開口部23の下側エッジ位置をB、線分ABの延長線と被写体との交点をC、レンズ25bの中心位置Aから被写体に対して垂直に下した直線(センサユニット25の光軸)と、開口部23の下側エッジ位置Bを通る被写体と平行な直線との交点をD、線分ADの延長線と被写体との交点をE、光源28の位置Mから開口部23の下側エッジ位置Bを通る直線と被写体との交点をFとする。このとき、線分ADの長さをL1、線分DEの長さをL2とすると、L2が、筐体21と被写体との間の距離であり、求める長さとなる。また、線分CFの長さをX、線分FEの長さをYとすると、X/Yが、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率に相当する。
図18から分かるように、筐体21と被写体との間の距離であるL2の値が変化しても、Yの値は変わらず、線分BDの長さと等しい値となる。一方、Xの値は、L2の値が小さくなるほど小さくなり、L2の値が大きくなるほど大きくなる。したがって、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率であるX/Yが分かれば、筐体21と被写体との間の距離であるL2の値が分かる。
図18において、直角三角形BCFと直角三角形ABDは相似形であるため、X:L2=Y:L1である。したがって、X・L1=L2・Yであり、これを変形するとX/Y=L2/L1となる。ここで、L1の値はセンサユニット25の取り付け位置によって決まる固定値であるため、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率であるX/Yが分かれば、筐体21と被写体との間の距離であるL2の値が分かる。
<距離算出方法2>
図19は、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率から、筐体21と筐体21外部の被写体との間の距離を算出する方法を説明する図であり、光源28が、開口部23のエッジ部分の直上よりもセンサユニット25のレンズ25b寄りに位置するように回路基板24に実装されている場合の例である。
図19に示すように、光源28の位置をM、センサユニット25のレンズ25bの中心位置をA、開口部23の下側エッジ位置をB、線分ABの延長線と被写体との交点をC、レンズ25bの中心位置Aから被写体に対して垂直に下した直線(センサユニット25の光軸)と、開口部23の下側エッジ位置Bを通る被写体と平行な直線との交点をD、線分ADの延長線と被写体との交点をE、開口部23の下側エッジ位置Bから被写体に対して垂直に下した直線と被写体との交点をF、光源28から開口部23の下側エッジ位置Bを通る直線と被写体との交点をG、光源28の位置Mから線分BDに対して垂直に下した直線と線分BDとの交点をI、線分MIの延長線と線分FEとの交点をJ、レンズ25bの中心位置Aを通って線分BDに平行な直線と線分IMの延長線との交点をKとする。このとき、線分ADの長さをL1、線分DEの長さをL2、線分KMの長さをL3とすると、L2が、筐体21と被写体との間の距離であり、求める長さとなる。また、線分CGの長さをX’、線分GEの長さをY’とすると、X’/Y’が、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率に相当する。
図19から分かるように、筐体21と被写体との間の距離であるL2の値が0の場合は、X’の値は0となり、Y’の値は、線分BDの長さに等しいYとなる。そして、L2の値が大きくなるほど、X’の値が所定の割合で大きくなるとともに、Y’の値も所定の割合で大きくなる。したがって、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率であるX’/Y’が分かれば、筐体21と被写体との間の距離であるL2の値が分かる。
図19において、線分GFの長さをkとおく。このとき、直角三角形BCFと直角三角形ABDは相似形であるため、(X’+k):L2=Y:L1である。したがって、X’=(Y・L2/L1)−kと表すことができる。また、Y’=Y+kである。
ここで、kの値を求めたい。線分BIの長さをmとおく。このとき、直角三角形MBIと直角三角形BGFは相似形であるため、m:L1−L3=k:L2である。したがって、k=L2・m/(L1−L3)と表すことができる。ここで、m/(L1−L3)はレイアウトによって一意に定まる定数である。このm/(L1−L3)をαとすると、k=α・L2と表すことができる。
したがって、X’=(Y・L2/L1)−α・L2となり、Y’=Y+α・L2となる。また、X’=(Y・L2/L1)−α・L2を変形すると、X’=L2((Y/L1)−α)と表すことができる。ここで、Y/L1もレイアウトによって一意に定まる定数であるため、Y/L1をβとすると、X’=L2(β−α)と表すことができる。
以上より、X’/Y’=L2(β−α)/Y+α・L2となる。α=m/(L1−L3)、β=Y/L1は、上述したように、それぞれレイアウトによって一意に定まる定数であるため、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率であるX’/Y’が分かれば、筐体21と被写体との間の距離であるL2の値が分かる。
<距離算出方法3>
図20は、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率から、筐体21と筐体21外部の被写体との間の距離を算出する方法を説明する図であり、光源28が、開口部23のエッジ部分の直上よりも側壁部21c寄りに位置するように回路基板24に実装されている場合の例である。
図20に示すように、光源28の位置をM、センサユニット25のレンズ25bの中心位置をA、開口部23の下側エッジ位置をB、開口部23の上側エッジ位置をH、線分ABの延長線と被写体との交点をC、レンズ25bの中心位置Aから被写体に対して垂直に下した直線(センサユニット25の光軸)と、開口部23の下側エッジ位置Bを通る被写体と平行な直線との交点をD、線分ADの延長線と被写体との交点をE、開口部23の下側エッジ位置Bから被写体に対して垂直に下した直線と被写体との交点をF、光源28の位置Mから開口部23の上側エッジ位置Hを通る直線と被写体との交点をG’、線分HG’と線分BDとの交点をI、Iから被写体に対して垂直に下した直線と被写体との交点をJ、光源28の位置Mから筐体21の底板部21aに対して垂直に下した直線と底板部21aとの交点をO、レンズ25bの中心位置Aを通って線分BDに平行な直線と線分OMの延長線との交点をKとする。このとき、線分ADの長さをL1、線分DEの長さをL2とすると、L2が、筐体21と被写体との間の距離であり、求める長さとなる。また、線分BIの長さをx、線分IDの長さをyとし、線分CG’の長さをX’’、線分G’Eの長さをY’’とすると、X’’/Y’’が、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率に相当する。
図20から分かるように、筐体21と被写体との間の距離であるL2の値が0の場合は、X’’の値はxとなり、Y’’の値はyとなる。そして、L2の値が大きくなるほど、X’’の値がxから所定の割合で大きくなるとともに、Y’’の値はyから所定の割合で小さくなる。したがって、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率であるX’’/Y’’が分かれば、筐体21と被写体との間の距離であるL2の値が分かる。
まず、最初にxの大きさを求めたい。図20において、線分HBの長さ(底板部21aの厚み)をa、線分MOの長さをb、線分OHの長さをcとおく。このとき、直角三角形MOHと直角三角形HBIは相似形であるため、L1−L3−a:a=c:xである。したがって、x=a・c/(L1−L3−a)と表すことができる。ここで、L2=0のとき、X’’=x、Y’’=yであるので、線分BDの長さをdとおくと、X’’/Y’’=x/y={a・c/(L1−L3−a)}/{d−a・c/(L1−L3−a)}となる。ここで、L1,L3,a,b,c,dの値はいずれもレイアウトによって定まる値であるため、{a・c/(L1−L3−a)}/{d−a・c/(L1−L3−a)}は固定値である。したがって、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率であるX’’/Y’’がこの値であれば、L2=0であることが分かる。
次に、線分CFの大きさと、線分FG’の大きさを求めたい。図20において、線分CFの長さをe、線分FG’の長さをfとおく。このとき、直角三角形ABDと直角三角形BCFは相似形であるため、L1:d=L2:eである。したがって、e=d・L2/L1と表すことができる。また、直角三角形HBIと直角三角形IJG’は相似形であるため、a:x=L2:f−xである。したがって、f=x・(a+L2)/aと表すことができる。
ここで、CG’=CF+FG’であるから、X’’=d・L2/L1+x・(a+L2)/a=L2・(d/L1+x/a)+xと表すことができる。ここで、d/L1+x/aはレイアウトによって一意に定まる定数である。このd/L1+x/aをαとすると、X’’=L2・α+xと表すことができる。
また、X’’+Y’’の値を求めると、直角三角形ABDと直角三角形ACEは相似形であるため、d:L1=(X’’+Y’’):(L1+L2)である。したがって、X’’+Y’’=d・(L1+L2)/L1=L2・d/L1+dと表すことができる。ここで、d/L1はレイアウトによって一意に定まる定数である。このd/L1をβとすると、X’’+Y’’=L2・β+dと表すことができる。したがって、Y’’=L2・β+d−X’’=L2・β+d−(L2・α+x)と表すことができる。
以上より、X’’/Y’’=(L2・α+x)/{L2・β+d−(L2・α+x)}となる。ここで、α=d/L1+x/a、β=d/L1は、上述したように、それぞれレイアウトによって一意に定まる定数である。また、xの値もdの値もレイアウトによって一意に定まる値である。したがって、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率であるX’’/Y’’が分かれば、筐体21と被写体との間の距離であるL2の値が分かる。
<その他の方法>
なお、以上の説明では、被写体画像領域ROの高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率に基づいて、筐体21と筐体21外部の被写体との間の距離を算出するものとしている。しかし、低輝度領域RO_lの大きさと高輝度領域RO_hの大きさ(図18の例では低輝度領域RO_lの大きさのみ)は、上述したように、筐体21と被写体との間の距離に応じて線形に変化する。したがって、低輝度領域RO_lまたは高輝度領域RO_hの大きさと、筐体21と被写体との間の距離との対応関係を示す対応テーブルを事前に作成しておき、この対応テーブルを用いて筐体21と被写体との間の距離を算出するようにしてもよい。
この場合、上記の対応テーブルは、筐体21と被写体との間の距離を順次変更しながらセンサユニット25による撮像を行い、得られた画像を解析して取得した低輝度領域RO_lまたは高輝度領域RO_hの大きさと、その画像を撮像したときの筐体21と被写体との間の距離とを対応付けることにより作成され、不揮発性メモリ57(第1のテーブル保持部の一例)などに格納される。そして、距離算出部58は、筐体21と被写体との間の距離を算出する際に、センサユニット25により撮像された画像を解析して低輝度領域RO_lまたは高輝度領域RO_hの大きさを取得し、不揮発性メモリ57が保持する対応テーブルを参照して、取得した低輝度領域RO_lまたは高輝度領域RO_hの大きさに対応する、筐体21と被写体との間の距離を算出する。
距離算出部58により算出された筐体21と被写体との間の距離(この例ではキャリッジ15とシートとの間のギャップに相当)は、CPU101に渡されて、上述の第1の設定部121による設定に用いられることになる。
<動作>
次に、本変形例の撮像装置42による距離計測動作を簡単に説明する。図21は、本変形例の撮像装置42による距離計測の手順を示すフローチャートである。
本変形例の撮像装置42は、筐体21と筐体21外部の被写体との間の距離を計測する場合、まず、光源駆動制御部51により光源28を点灯させる(ステップS101)。そして、光源28が点灯している状態で、センサユニット25による撮像を行う(ステップS102)。センサユニット25により撮像され、センサユニット25から出力された画像Imは、フレームメモリ53に格納される。
次に、距離算出部58が、センサユニット25により撮像されてフレームメモリ53に格納された画像Imから、被写体画像領域ROを抽出する(ステップS103)。そして、距離算出部58は、例えば、抽出した被写体画像領域ROに対する二値化処理や黒画素および白画素の画素数をカウントする処理などを行い、高輝度領域RO_hの大きさに対する低輝度領域RO_lの大きさの比率を算出する(ステップS104)。そして、距離算出部58は、算出した比率に基づいて筐体21と被写体との間の距離を算出し(ステップS105)、算出した距離をCPU101へ渡す。これにより、本変形例の撮像装置42による距離計測動作が終了する。
<インク(液体)>
次に、実施形態にかかるインクジェット記録装置1に用いるインク(液体)について説明する。実施形態にかかるインクジェット記録装置1に用いるインクとしては、特に制限なく用いることができる。特に、水、有機溶剤、色材、界面活性剤および樹脂粒子を含有するインクを用いると、ベタ濡れ性が良好であることから、画像濃度むらを効果的に抑制できる。
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%〜60質量%がより好ましい。
<有機溶剤>
有機溶剤としては、特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類等が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル−1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−メトキシ−N,N-ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
水溶性有機溶剤は、湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。水溶性有機溶剤の具体例としては、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料としては、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを用いることができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを用いることができる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
黒色用の顔料の具体例としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
さらに、カラー用の顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:1、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等が挙げられる。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー17、23、42、44、79、142、C.I.アシッドレッド52、80、82、249、254、289、C.I.アシッドブルー9、45、249、C.I.アシッドブラック1、2、24、94、C.I.フードブラック1、2、C.I.ダイレクトイエロー1、12、24、33、50、55、58、86、132、142、144、173、C.I.ダイレクトレッド1、4、9、80、81、225、227、C.I.ダイレクトブルー1、2、15、71、86、87、98、165、199、202、C.I.ダイレクトブラック19、38、51、71、154、168、171、195、C.I.リアクティブレッド14、32、55、79、249、C.I.リアクティブブラック3、4、35が挙げられる。
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤としては、竹本油脂(株)社製RT−100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、好適に使用することが可能である。分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル(株)社製)を用いて測定することができる。
顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
<界面活性剤>
界面活性剤としては、特に制限はないが、ベタ濡れ性の点から、シロキサン化合物が好ましい。また、界面活性剤としては、定着性の点からインク中の界面活性剤の総添加量は10質量%以下が好ましい。シロキサン化合物をインクに加えることで、各種記録媒体とインクとの親和性が向上し、インクは、記録媒体へ付着後すぐに広がり表面積を拡大する。これにより、インクの記録媒体へのベタ濡れ性が良好となることにより、高品位の画像を得ることができる。
<シロキサン化合物>
シロキサン化合物としては、例えばポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン部を有する化合物(シリコーン系化合物)の側鎖、及び/又は末端に親水性の基や親水性ポリマー鎖を有する化合物が一般的である。親水性の基や親水性ポリマー鎖としては、例えばポリエーテル結合(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドやこれらの共重合体など)、ポリグリセリン(C3Η6O(CH2CH(OH)CH2O)n−Hなど)、ピロリドン、ベタイン(C3Η6N+Me2−CH2COO−など)、硫酸塩(C3H6O(C2H4O)n−SO3Naなど)、リン酸塩(C3Η6O(C2H4O)n−P(=O)OHONaなど)、4級塩(C3H6N+Me3Cl−など)が挙げられる。なお、上記化学式中nは1以上の整数を表わす。
また、シロキサン化合物としては、末端に重合性ビニル基を有するポリジメチルシロキサンなどと共重合可能なその他のモノマー(該モノマーの少なくとも一部には(メタ)アクリル酸やその塩などの親水性モノマーを用いることが好ましい)との共重合で得られる側鎖にポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系化合物鎖を有するビニル系共重合体なども挙げられる。
シロキサン化合物としては、これらの中でもポリシロキサン部を有する化合物に親水性ポリマー鎖を有する化合物が好ましい。親水性ポリマー鎖としては、ポリエーテル結合を含有するものが特に好ましい。
また、シロキサン化合物としては、疎水基にメチルポリシロキサン、親水基にポリオキシエチレンの構造をもつ、非イオン界面活性剤であることが特に好ましい。
上記のシロキサン化合物のHLBは、8.0以下であることが好ましい。HLBが8.0以下であると、各種非浸透性記録媒体に対するインクジェット印字時において優れたインク乾燥性を確保することができる。
ここで、HLB(親水基/疎水基バランス「Hydrophile−Lipophile Balance」)は、以下の式(グリフィン法)により定義されるものである。
HLB=20×(親水部の式量の総和/分子量)
好適に使用できるシロキサン化合物としては、シルフェイスSAG005(日信化学工業(株)社製;HLB=7.0)、シルフェイスSAG008(日信化学工業(株)社製;HLB=7.0)、シルフェイスSAG002(日信化学工業(株)社製;HLB=12.0)、FZ2110(東レ・ダウ(株)社製;HLB=1.0)、FZ2166(東レ・ダウ(株)社製;HLB=5.8)、SH-3772M(東レ・ダウ(株)社製、HLB=6.0)、L7001(東レ・ダウ(株)社製;HLB=7.4)、SH-3773M(東レ・ダウ(株)社製;HLB=8.0)、KF-945(信越化学工業(株)社製;HLB=4.0)、KF-6017(信越化学工業(株)社製;HLB=4.5)、FormBan MS-575(Ultra Addives Inc.社製;HLB=5.0)などが挙げられる。
上記のシロキサン化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。上記のシロキサン化合物のインク中の総量が0.4質量%〜4.0質量%であることが好ましく、1.0質量%〜2.0質量%であるとさらに好ましい。1.0質量%〜2.0質量%であると各種非浸透性記録媒体へのインク定着性を確保でき、さらに光沢等の画像品質も良好である。
<樹脂粒子>
樹脂粒子としては、特に制限はないが、例えば、ポリエステル樹脂粒子;ポリウレタン樹脂粒子;エポキシ樹脂粒子;ポリアミド樹脂粒子;ポリエーテル樹脂粒子;アクリル樹脂粒子;アクリル−シリコーン樹脂粒子;フッ素系樹脂等の縮合系合成樹脂粒子;ポリオレフィン樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子、ポリビニルアルコール系樹脂粒子、ポリビニルエステル系樹脂粒子、不飽和カルボン酸系樹脂等の付加系合成樹脂粒子;セルロース類、ロジン類、天然ゴム等の天然高分子などが挙げられる。これらの樹脂粒子の中でも非浸透性記録媒体へのインク定着性の点から、ポリウレタン樹脂粒子が好ましい。ポリウレタン樹脂粒子は、シロキサン化合物との分散性相性がよく、造膜性が高まることから良好な乾燥性が得られ、効果的に色にじみを抑制することができる。
<添加剤>
インクには、必要に応じて、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
[実施例]
<インクの調製>
以下において、インクの調製についていくつかの実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、例中の「部」は「質量部」であり、「%」は、評価基準中のものを除き、「質量%」である。
<顔料分散液の調製>
<ブラック顔料分散液の調製例>
以下の処方混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル((株)シンマルエンタープライゼス社製:KDL型、メディア:直径0.3mmジルコニアボール使用)で7時間循環分散してブラック顔料分散液を得た。
カーボンブラック顔料(商品名:Monarch800、キャボット社製)・15部
アニオン性界面活性剤(パイオニンA−51−B、竹本油脂(株)社製)・・・2部
イオン交換水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83部
<シアン顔料分散液の調製例>
カーボンブラック顔料を、C.I.ピグメントブルー15:3(商品名:LIONOL BLUE FG−7351、東洋インキ(株)社製)に変更した以外は、ブラック顔料分散液の調製例1と同様にして、シアン顔料分散液を得た。
<マゼンタ顔料分散液の調製例>
カーボンブラック顔料を、C.I.ピグメントレッド122(商品名:トナーマゼンタEO02、クラリアントジャパン(株)社製)に変更した以外は、ブラック顔料分散液の調製例1と同様にして、マゼンタ顔料分散液を得た。
<イエロー顔料分散液の調製例>
カーボンブラック顔料を、C.I.ピグメントイエロー74(商品名:ファーストイエロー531、大日精化工業(株)社製)に変更した以外は、ブラック顔料分散液の調製例1と同様にして、イエロー顔料分散液を得た。
(実施例1)
<実施例1用インクの調製>
ブラック顔料分散液20%、メガファックF−470(フッ素系界面活性剤、大日本インキ化学工業(株)社製)0.4%、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド(商品名:エクアミドM−100、出光興産(株)社製)15%、1,2−プロパンジオール4%、1,3−ブタンジオール4%、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル15%、防腐剤として商品名:プロキセルLV(アビシア(株)社製)0.1%、及び高純水を混合攪拌し、0.2μmポリプロピレンフィルターにて濾過することによりインク1を作製した。
(実施例2〜6)
実施例2〜6は、表1に記載のインクの組成及び含有量に変更した以外は、実施例1と同様にして、インクを調製した。
<画像形成方法>
図13に示すパターン画像を使用し、図1に示すインクジェット記録装置1における図12のフローチャートに示す制御に従って画像形成を行った。
<評価方法>
(1)ベタ濡れ性
得られた画像のベタ部をマイクロスコープ((株)キーエンス社製 VHX−200)を用いて20倍で観察し、観察画像でインクが付着していない面積を除いたインク付着面積を測定し、次の基準で評価した。
◎:インク付着面積100%
○:インク付着面積98%以上、100%未満
△:インク付着面積95%以上、98%未満
×:インク付着面積95%未満
(2)画像濃度むら
得られた画像のベタ部に対し、縦横をそれぞれ4等分するように格子を作成し、9つの格子の交点の濃度を測色器(エックスライト社製 X−Rite eXact)で測定し、次の基準で評価した。
◎:一番大きい濃度と一番小さい濃度の差が0.1未満
○:一番大きい濃度と一番小さい濃度の差が0.1以上、0.15未満
△:一番大きい濃度と一番小さい濃度の差が0.15以上、0.2未満
×:一番大きい濃度と一番小さい濃度の差が0.2以上
(3)定着性
得られた画像のベタ部に対し、布粘着テープ(ニチバン(株)社製123LW−50)を使用した碁盤目剥離試験により、試験マス目100個の残存マス数をカウントすることにより評価した。
◎:残存マス数が98以上
○:残存マス数が90以上98未満
△:残存マス数が70以上90未満
×:残存マス数が70未満