JP2016022406A - 重金属汚染水の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】重金属汚染水に、CaSx(x=2〜6)及び鉄系凝集剤を、下記条件(A)、(B)を満たすように添加し、混合することによって析出した重金属含有フロックを沈降させる沈降工程と、沈降した重金属含有フロックからなる残渣を固液分離して、重金属汚染水から重金属を除去した処理水を得る固液分離工程を有することを特徴とする重金属汚染水の処理方法。
条件(A):CaSx中の全硫化態硫黄と、重金属汚染水中の重金属とのモル比が5以上
条件(B):CaSx及び鉄系凝集剤を添加後の重金属汚染水のpHが6.0〜8.0
【選択図】図1
Description
しかしながら、重金属汚染水の多硫化カルシウムによる処理には、多硫化カルシウムの添加量が多すぎると、不溶性の重金属硫化物からなるフロックとして沈降した重金属が再溶出するという問題があることが確認されている。
また、多硫化カルシウムは、硫化水素ガスの発生が硫化ナトリウム等と比較して起こりにくいものの、完全に抑制できるわけではなく、依然として、その安全性には問題があった。
かかる状況下、本発明の目的は、重金属汚染水に含まれる重金属を効果的に不溶化することができると共に、重金属の再溶出の問題が生じず、かつ、硫化水素ガスの発生が抑制できる、重金属汚染水の処理方法を提供することである。
前記重金属汚染水に、多硫化カルシウムCaSx(x=2〜6)及び鉄系凝集剤を、下記条件(A)、(B)を満たすように添加及び混合し、析出した重金属含有フロックを沈降させる沈降工程と、
沈降した前記重金属含有フロックからなる残渣を固液分離して、前記重金属汚染水から重金属を除去した処理水を得る固液分離工程とを有することを特徴とする重金属汚染水の処理方法を提供することにより上記課題を解決するものである。なお、条件(A)、(B)は下記のとおりである。
条件(A):
前記多硫化カルシウムCaSx(x=2〜6)中の全硫化態硫黄(S)と、前記重金属汚染水中の重金属(M)とのモル比(S/M)が5以上である。
条件(B):
前記多硫化カルシウム及び前記鉄系凝集剤を添加後の前記重金属汚染水のpHが6.0〜8.0の範囲である。
多硫化カルシウムCaSx(x=2〜6)中の全硫化態硫黄(S)と、重金属汚染水中の重金属(M)とのモル比(S/M)が5以上である。
pHが6.0〜8.0の範囲、好ましくは6.5〜7.5の範囲である。
さらに上述のように重金属の硫化物または水酸化物と、硫化鉄、水酸化鉄を同時に生成させ、さらにpH域を6.0〜8.0の範囲に調整していることで、より効果的に重金属の除去処理を行うことができる。
<重金属汚染水>
重金属汚染水の処理方法において、処理対象となる重金属成分を含有する重金属汚染水は特に制限されず、いずれも処理対象となる。
具体的には、重金属成分を含有する工業廃水、有害重金属類を含有する廃液、廃水が挙げられる。また、地下水の処理にも有効である。さらに、有害重金属類の種類及びその存在形態が異なる汚染土壌、底質、汚泥や廃棄物等を水洗した際に発生する、重金属成分を含有する洗浄水も好適な対象となる。なお、汚染水には重金属以外にも有機物等の他の成分を含有していてもよい。また、汚染土壌の間隙水、焼却灰の含有水も対象となる。
多硫化カルシウムは、化学式CaSx(xは2以上の整数)で表される化合物である。多硫化カルシウムは、還元性が高いため、溶液中で重金属イオンを還元し、硫化物や水酸化物の形態で沈澱させて無害化する効果を有する。
例えば、6価クロム(Cr6+)は、多硫化カルシウムにより、3価クロム(Cr3+)に還元されるとともに、大部分は水酸化クロムとして沈析して、無害化される。水銀、鉛及びカドミウムは、多硫化カルシウムに由来する硫化物イオンと反応し、金属硫化物を形成し不溶化する。また、後述するように鉄系凝集剤と同時に使用することにより、多硫化カルシウムから発生する過剰な硫化物イオンを硫化鉄(FeS)として不溶化するため、硫化水素ガスの発生が抑制され、安全かつ有効に使用することができる。
特に、鉄系凝集剤としてポリシリカ鉄と同時に使用すると、上述のように過剰な硫化物イオンを硫化鉄(FeS)とすることができることに加え、ポリシリカ鉄のpH調整作用により、好ましい範囲である6.5〜7.5の範囲に重金属汚染水のpHを調整することができるため、気相への硫化水素ガスの放出がより効果的に抑制される。
ここでいう、「全硫化態硫黄濃度」とは、硫化物の形態で存在する硫黄の全濃度(硫化物量)を意味し、塩化バリウム沈殿法(重量法)等の任意の公知の方法を用いて測定できる。
重金属汚染水の処理方法において用いられる鉄系凝集剤は、塩化鉄、硫酸鉄、ポリ硫酸第二鉄及びポリシリカ鉄並びにこれらの水和物からなる群より選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。これらの鉄系凝集剤は適用できるpH値の範囲が広く、硫酸アルミニウムに比べて生じたフロックが重く、沈降しやすいという利点がある。
上述のように汚染水中の重金属は、多硫化カルシウム由来の硫化物イオンと反応して、重金属硫化物となるが、一般に、重金属硫化物は比重が小さく、沈降しづらい。そこで、鉄系凝集剤を併用することで、鉄系凝集剤に含有される鉄成分由来のフロックを形成し、このフロックに重金属(硫化物や水酸化物等も含まれる。)を捕集させ、重金属含有フロックとして沈降させる。
Fe/Sのモル比が0.04より小さくなると、重金属の除去効果が低下する。また、Fe/Sのモル比が0.55より大きくなると重金属の除去効果は変わらず、鉄系凝集剤の使用量が増加し、処理コストが増大する。
鉄系凝集剤を上記のような添加比率にすることにより、多硫化カルシウムから発生する硫黄(S)を確実に硫化鉄に転換できるため、硫化水素ガスの発生を抑制することができる。
また、pH値が6.0以下であると、多硫化カルシウム等の硫化物が処理中に反応して硫化水素ガスが発生しやすくなり、また、処理後のpH値が8.0以上になると、生成した重金属含有フロックの沈降性も悪くなり、沈殿した重金属含有フロックから重金属が再溶出するおそれがある。重金属汚染水の処理方法では、ポリシリカ鉄を添加することにより、処理水のpHを6.5から7.5に調整することが容易にできるため、硫化物に由来する硫化水素ガスの発生を抑制し、不溶化された有害重金属類の再溶出を抑制することができる。
重金属汚染水の処理方法では、重金属成分を含有する汚染水に、多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄等の鉄系凝集剤を「同時に添加及び混合」する方法の具体例としては、以下の(1)〜(3)に示す方法が挙げられる。
(1) 重金属汚染水に多硫化カルシウム及び鉄系凝集剤を同時に徐々に添加し、撹拌混合する。
(2) 重金属汚染水に、まず多硫化カルシウムを添加して撹拌し、次いで鉄系凝集剤を徐々に添加して撹拌混合する。
(3) 重金属汚染水に、まず鉄系凝集剤を添加して撹拌し、次いで多硫化カルシウムを徐々に添加して撹拌混合する。
なお、条件(A)において、重金属Mのモル数(Mの原子数)は、汚染水に複数種の重金属が含まれる場合はその合計値であることが好ましい。
なお、沈降工程において、重金属汚染水が含有する重金属の種類や量、添加される多硫化カルシウム及び鉄系凝集剤の種類や量によっては、析出する重金属含有フロックが沈降しない場合がある。このような場合には、沈降工程において、重金属汚染水に多硫化カルシウム及び鉄系凝集剤を添加して混合した後に、シリカ含有無機系凝集剤を添加して混合し、沈降せずに液層に残存する微粒状重金属含有フロックを、シリカ含有無機系凝集剤で捕集及び凝集させて、沈降させることが好ましい。
なお、本発明における「PS灰」は、古紙を再生するときに生ずる産業廃棄物を焼却したもののみならず、パルプ製造工程、紙製造工程、古紙処理工程等から発生する紙組成物を焼却することにより生成する灰も含む概念と定義する。なお、PS灰としては、多孔質PS灰が好ましい。多孔質PS灰は、上記紙組成物を高温(例えば、800℃以上)で焼成することにより得ることができる。また、紙組成物を高温で焼成することにより、ダイオキシン等の発生が抑制できるため、環境負荷を低減させるためにも、高温焼成の多孔質PS灰が好ましい。
固液分離工程は、上述の沈降工程の後、沈降した重金属含有フロックからなる残渣(スラッジ)を固液分離して、重金属汚染水から重金属を除去した処理水を得る工程である。
a)多硫化カルシウム1(CaSx(x=5.04))
(株)柳井化学工業製(CaSx 27.5%)
pH:10.2(20℃)
ORP:−538mV
硫化水素イオン濃度:46000mg/L
硫黄濃度:186900mg/L
全硫化態硫黄:22重量%
カルシウム濃度:46300mg/L
S/Caモル比:5.04
液比重:1.28
(株)共和熱工業製
pH:11.4(17℃)
ORP:−535mV
硫化水素イオン濃度:33000mg/L
硫黄濃度:85000mg/L
全硫化態硫黄:13重量%
カルシウム濃度:28400mg/L
S/Caモル比:3.74
液比重:1.12
a)ポリシリカ鉄1
タイキ薬品工業(株)製「PSI−025」
Si換算濃度:1.1重量%
Fe換算濃度:4.0重量%
Si/Feモル比:0.25
液比重:1.11
b)ポリ硫酸第二鉄
硫酸第二鉄水和物(和光純薬工業(株)製)の試薬を純水で希釈して鉄(Fe)濃度4wt%に調整した。
液比重:1.13
(3)シリカ含有無機系凝集剤
HALVO(株)製「デイフロック」
水銀、鉛、六価クロムについて、試薬標準液(和光純薬工業(株)製)を使用して各重金属の模擬汚染水を製造し、各模擬汚染水に対し、多硫化カルシウムと鉄系凝集剤の添加前後の重金属の濃度を評価した。なお、試料中の重金属濃度の評価方法は以下のとおりである。
処理後の模擬汚染水の分析方法(処理水)は、濾紙(5C)にて濾過し、濾液を3000rpmの回転数で20分間遠心分離機にかけた。次いで、その上澄み液を0.45μmの濾紙にて濾過し、濾液中の重金属濃度を、(株)久留米リサーチパーク保有のICP−MS分析装置(Agilent Technologies社製 7700型)を使用して測定した。
(1)高濃度水銀模擬汚染水の調製
0.1N水酸化ナトリウム(NaOH)、45mLを300mLのビーカーに入れ、水銀標準液(和光純薬工業(株)製「Hg1000」)100mLを手で撹拌しながらゆっくりと加えた。次に、この液のpHが7なるように0.1N水酸化ナトリウム(NaOH)で調整することにより、高濃度水銀模擬汚染水を調製した。高濃度水銀模擬汚染水中の水銀濃度は、419.8mg/L、pHは7であった。
多硫化カルシウムとして、上記多硫化カルシウム1(CaSx(x=5.04))を使用し、鉄系凝集剤として、上記ポリシリカ鉄1(PSI−025)を使用した。
まず、高濃度水銀模擬汚染水100mLをビーカーに入れて、マグネチックスターラーにて撹拌しながら多硫化カルシウムとポリシリカ鉄を添加した。高濃度水銀模擬汚染水への多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄の添加は同時添加とし、模擬汚染水を撹拌しながら、多硫化カルシウム中のS濃度とポリシリカ鉄中のFe濃度とのモル比(Fe/Sモル比)が0.09になるようにして添加した。なお、多硫化カルシウムとポリシリカ鉄の添加終了後も継続して5分間撹拌した。
また、多硫化カルシウムとポリシリカ鉄の添加量は、多硫化カルシウム中の全硫化態硫黄のモル数と、模擬汚染水中の水銀のモル数の比(S/Hg)を基準に変化させた。なお、処理中のpHは、ポリシリカ鉄によって、最終的にpH7近傍になるように調整した。
処理後の模擬汚染水(処理水)は、前記重金属濃度分析法により分析した。
S/Hgのモル比が12.6の場合の水銀濃度(Hg)は0.06mg/L、高濃度水銀模擬汚染水液の処理後の最終pHは7.3であった。その結果を図1に示す。
実施例1と同様に、鉄系凝集剤を使用せず、多硫化カルシウム1のみを用い、実験を行った。S/Hgのモル比が12.6の場合、最終pHは11.6であった。その結果を図1に併せて示す。
(1)低濃度水銀模擬汚染水の調製
低濃度水銀模擬汚染水は、水銀標準液(和光純薬工業(株)製「Hg1000」)100mLを1Lビーカーに入れ、純水950mLで希釈し、0.1N水酸化ナトリウム(NaOH)でpH7になるように調整した。この時の水銀濃度は3.45mg/Lと4.57mg/L、pHは7であった。
水銀濃度3.45mg/Lと4.57mg/Lの低濃度水銀模擬汚染水をそれぞれ1Lビーカーに入れ、多硫化カルシウム1とポリシリカ鉄のFe/Sモル比0.09になるようにして、S/Hgモル比を変化させ、実施例1と同様に処理し、処理後の水銀濃度を測定した。S/Hgのモル比が23.4の時の水銀濃度は0.07mg/L、最終pHは7.1であった。その結果を図2に示す。
模擬汚染水濃度4.56mg/Lのものを使用し、鉄系凝集剤を使用せず、多硫化カルシウム1のみを用い、S/Hgのモル比が大きい場合で実施例1と同様の実験を行った結果を、図2に併せて示す。
一方、添加した薬剤が多硫化カルシウムとポリシリカ鉄である場合には、S/Hgの値が水銀濃度を著しく減少させてのちに、さらに多硫化カルシウム(及びポリシリカ鉄)を添加しても水銀濃度が増加しなかった。このことから、実施例2の処理方法では、幅広いS/Hgの値でも、析出した水銀硫化物から水銀は再溶出せずに使用できることが確認された。
(1)鉛模擬汚染水の調製
鉛模擬汚染水は、鉛標準液(和光純薬工業(株)製「Pb1000」)を、100mL、純水96mLと、5N水酸化ナトリウム(NaOH)4mLを混合して、pH12.7の模擬汚染水を調製した。鉛模擬汚染水中の鉛濃度は、71.8mg/Lであった。
多硫化カルシウムとして、上記多硫化カルシウム1(CaSx(x=5.04))を使用し、鉄系凝集剤としてポリシリカ鉄1(PSI−025)を使用した。
まず、上記模擬汚染水100mLをビーカーに入れて、マグネチックスターラーにて撹拌しながら、多硫化カルシウム1とポリシリカ鉄を添加した。模擬汚染水への多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄の添加は同時添加とし、模擬汚染水を撹拌させながら、多硫化カルシウムとポリシリカ鉄とのFe/Sモル比が0.09になるようにして添加した。なお、多硫化カルシウムとポリシリカ鉄の添加終了後も継続して5分間撹拌した。その他は実施例1と同様にした。結果を図3に示す。
多硫化カルシウム2に対するポリシリカ鉄のFe/Sモル比を変化させた場合の鉛模擬汚染水からの鉛除去効果について評価した。
なお、多硫化カルシウムとして、多硫化カルシウム2(CaSx(x=3.74))を使用し、鉄系凝集剤としてポリシリカ鉄1(PSI−025)を使用した。
実施例3と同様の模擬汚染水(鉛濃度:71.8mg/L)に対し、S/Pbモル比が7になるようにして、多硫化カルシウムとポリシリカ鉄中のFe/Sモル比を変化させ、汚染水中のPb濃度の除去効果を比較した。混合方法や濃度評価方法は、実施例1と同様にした。その結果を表1に示す。
(1)六価クロム模擬汚染水の調製方法
六価クロム汚染土30gを1Lビーカーに入れ、純水600mLを加え、硝子製撹拌棒を用いて手で3分間混合した。この混合液を濾紙濾紙(5C)で濾過し、六価クロム模擬汚染水を調製した。この汚染水のpHは7.9であり、総クロム濃度は10.7mg/Lであった。
試験用汚染水300mLをビーカーに取り、多硫化カルシウム1((株)柳井化学工業製)を3倍希釈したものを450μL、ポリシリカ鉄(タイキ薬品工業(株)製PSI−025)を3倍希釈したもの450μLを同時に添加し、撹拌機を用いて、回転速度150rpmで5分間撹拌した。次に150rpmの撹拌速度で撹拌しながら、六価クロム模擬汚染水のpHが7付近になるように、3倍希釈したポリシリカ鉄を徐々に添加した。この時、3倍希釈したポリシリカ鉄の添加量は300μLであった。ポリシリカ鉄添加後、撹拌速度を50rpmにして1分撹拌後、3分間静置した。この時の多硫化カルシウムとポリシリカ鉄のFe/Sモル比は0.15であった。次にHALVO(株)製シリカ含有無機系凝集剤「デイフロック」を撹拌速度150rpmで、3分間かけて徐々に添加し、添加終了後、撹拌速度を50rpmにし、1分間撹拌した。この時のシリカ含有無機系凝集剤の添加量は0.036gであった。処理水は濾紙で濾過し、濾液中のクロム濃度を測定した。測定結果は最終pH7.2、総クロム濃度0.009mg/Lであった。
実施例5と同様に、ポリシリカ鉄の代わりに、ポリ鉄溶液(Fe4w%)を使用した以外は同様に処理した。この時の3倍希釈した多硫化カルシウムの量は450μL、3倍希釈したポリ鉄の添加量は1050μLであった。この時の多硫化カルシウムとポリ鉄のFe/Sモル比は0.21であった。測定結果は最終pH7.0、総クロム濃度0.022mg/Lであった。
実施例5で、多硫化カルシウム1とポリシリカ鉄のFe/Sモル比を0.027にし、最終pHが8.8で、その他は実施例5と同様にした時の総クロム濃度は3.2mg/Lであった。Fe/Sのモル比が低くなるとクロムの除去も困難になる事が分かった。
実施例5でシリカ含有無機系凝集剤を使用せず、微粒子が存在した状態での総クロム濃度は1.2mg/Lであった。
使用した試料土、及び水銀模擬汚染土調製用の重金属試薬、処理組成物成分は下記のとおりである。
[試料土]
真砂土
[重金属試薬]
水銀標準液:和光純薬工業(株)製「Hg1000」
[処理組成成分]
多硫化カルシウム(CaSx)及び鉄系凝集剤として、下記の製品を使用した。
(1)多硫化カルシウム1:(株)柳井化学工業製
(2)鉄系凝集剤:タイキ薬品工業(株)製 PSI−025
試料土として真砂土を使用し、試料土を105℃にて24時間乾燥させたものを、非金属製の2mmのふるいで篩分した。
次いで、篩分した試料土をアルミトレーに入れ、当該試料土に水銀標準液を表2に示す添加量で添加して混合した後に、アルミトレーにアルミラップをかけて90℃で24時間乾燥させた。さらにアルミラップを外して110℃で2時間乾燥させた。
水銀模擬汚染土50gを500mLビーカーに入れて、純水450mLを加水して10重量%のスラリーにした。この時のスラリーはpH7.5であった。
模擬汚染土500mLに対する多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄の添加の容量割合(v/v%)を表3に示す。容量割合Aの多硫化カルシウムの場合は、マグネチックスターラーにて45分間撹拌した。多硫化カルシウムとポリシリカ鉄を併用する処理の場合は、多硫化カルシウムを添加後30分間撹拌し、その後、ポリシリカ鉄を添加して15分間撹拌した。撹拌終了後、濾紙で濾過し水銀模擬汚染土、プラスチックトレーに広げて7日間常温で風乾した。
7日間常温で風乾した処理後の水銀模擬汚染土について、(株)環境技術センターにて、溶出試験及び水銀濃度を分析した。その結果を表4に示す。
表4より、多硫化カルシウム単独処理試料Cの添加割合では溶出基準をクリアしている。しかし、多硫化カルシウムとポリシリカ鉄を併用した処理の試料D(Fe/Sのモル比0.09)では、試料Cの3分の1の多硫化カルシウムの添加量で溶出基準をクリア出来ている。試料Dと同量の多硫化カルシウム単独での処理の試料Bでは、水銀の溶出量が多く規制値以上に成っている。しかし、多硫化カルシウムとポリシリカ鉄を併用することにより、効率的に水銀の溶出を抑制(不溶化)できる事が分かった。
使用した煤塵及び処理組成物成分は下記のとおりである。
[煤塵]
医療用器具焼却灰
[処理組成成分]
多硫化カルシウム(CaSx)及び鉄系凝集剤として、下記の製品を使用した。
(1)多硫化カルシウム1:(株)柳井化学工業製
(2)鉄系凝集剤:タイキ薬品工業(株)製 PSI−025
煤塵量30gを採取し、500mLのビーカーに入れ、純水300mLを加えた。
卓上撹拌機(新東科学(株)製BL1200)を用いて、この分散液を150rpmにて撹拌しながら、多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄を同時に添加した。添加後10分間撹拌を継続し、その後10分間静置した。この分散液に、表5に示すように、煤塵量に対する多硫化カルシウム及びポリシリカ鉄の添加量を変化させた3種類のサンプルを作製した。この時の多硫化カルシウムとポリシリカ鉄のFe/Sモル比は0.09とした。次いで定性濾紙で濾過し、濾過物をトレーに広げて7日間常温で風乾した。
各サンプルより得られた、不溶化処理後の煤塵15gをプラスチック容器に入れ、純水150mLを添加し、10(w/v%)のスラリーを調製した。次に、このスラリーを振とう機で毎分200回、振幅2cmの条件で5時間振とうして得られた溶出液を、遠心分離機にかけ、回転数3000rpmにて20分間遠心分離を行った。その上澄み液のpHと、鉛の溶出量をICP−MS分析装置を用いて測定した。その結果を表6に示す。
本発明の汚染土の処理方法により、表6から多硫化カルシウムを煤塵量に対して、10(v/w%)混合し、ポリシリカ鉄と併用する事で、土壌溶出基準の2260倍の鉛を含有する煤塵からの鉛の溶出量を、不溶化処理により99.96%低減できた。
Claims (8)
- 重金属汚染水に含まれる重金属を不溶化処理する重金属汚染水の処理方法であって、
前記重金属汚染水に、多硫化カルシウムCaSx(x=2〜6)及び鉄系凝集剤を、下記条件(A)、(B)を満たすように添加及び混合し、析出した重金属含有フロックを沈降させる沈降工程と、
沈降した前記重金属含有フロックからなる残渣を固液分離して、前記重金属汚染水から重金属を除去した処理水を得る固液分離工程とを有することを特徴とする重金属汚染水の処理方法。
条件(A):
前記多硫化カルシウムCaSx(x=2〜6)中の全硫化態硫黄(S)と、前記重金属汚染水中の重金属(M)とのモル比(S/M)が5以上である。
条件(B):
前記多硫化カルシウム及び前記鉄系凝集剤を添加後の前記重金属汚染水のpHが6.0〜8.0の範囲である。 - 前記鉄系凝集剤が、ポリ硫酸第二鉄及びポリシリカ鉄、並びにこれらの水和物からなる群より選択される少なくとも1種以上である請求項1に記載の重金属汚染水の処理方法。
- 前記多硫化カルシウム中の全硫化態硫黄(S)に対する前記鉄系凝集剤中の鉄(Fe)のモル比(Fe/S)が0.04〜0.55の範囲である請求項2に記載の重金属汚染水の処理方法。
- 前記鉄系凝集剤が、ポリシリカ鉄である請求項2に記載の重金属汚染水の処理方法。
- 前記ポリシリカ鉄に含まれるシリカ(Si換算)と鉄(Fe)のモル比(Si/Fe)が、0.01〜3である請求項4に記載の重金属汚染水の処理方法。
- 前記重金属汚染水が、6価クロム、カドミウム、鉛及び水銀から選択される1種以上の重金属を含有する請求項1から5のいずれかに記載の重金属汚染水の処理方法。
- 前記沈降工程において、前記重金属汚染水に前記多硫化カルシウムCaSx(x=2〜6)及び前記鉄系凝集剤を添加して混合した後に、シリカ含有無機系凝集剤を添加して混合し、沈降せずに液相に残存する重金属含有微粒状フロックを前記シリカ含有無機系凝集剤で捕集及び凝集させて、沈降させる請求項1から6のいずれかに記載の重金属汚染水の処理方法。
- 前記シリカ含有無機系凝集剤が、シリカ粉末、火山灰白土、珪藻土、廃石膏及びペーパースラッジ灰からなるからなる群より選択される少なくとも1種以上を含む請求項7に記載の重金属汚染水の処理方法。
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