JP2014184370A - フッ素含有排水の処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】工場排水などの産業排水等に含まれる高濃度のフッ素を排水基準値以下に低減するとともに、スラッジの発生量を減少させ、かつ排水処理を一段階で行うことができるフッ素含有排水の処理方法を提供すること。
【解決手段】消石灰75〜98質量%と、セメント2〜25質量%とを混合し、排水処理剤を調製する第1工程と、排水に前記排水処理剤と酸とを添加した後、混合し、pHを9〜12に調整し、沈殿物を生成させる第2工程と、前記沈殿物を濾過し除去する第3工程のみからなるフッ素含有排水の処理方法。
【選択図】図4
【解決手段】消石灰75〜98質量%と、セメント2〜25質量%とを混合し、排水処理剤を調製する第1工程と、排水に前記排水処理剤と酸とを添加した後、混合し、pHを9〜12に調整し、沈殿物を生成させる第2工程と、前記沈殿物を濾過し除去する第3工程のみからなるフッ素含有排水の処理方法。
【選択図】図4
Description
本発明は、工場排水等に高濃度で含まれるフッ素を除去することができるフッ素含有排水の処理方法に関する。
フッ素は、製鋼工程、半導体製造業、窯業、火力発電所等の工場排水に含まれる有害物質である。また、自然界に於いても、火山地帯の湧水(温泉水等)にも多量に含まれる場合がある。フッ化物は主に骨や歯に影響を及ぼす有害物質とされ、1999年2月には水質汚濁にかかわる環境基準が設定され、その基準値は0.8mg/Lに制定された。また、それに伴い、水質汚濁防止法に基づく一律排水基準値も2001年7月より強化され、従来の15mg/Lから8mg/L(海域は15mg/L)となり(排水基準を定める省令 別表第一(昭和四十六年六月二十一日総理府令第三十五号))、フッ素の排出規制がますます厳しくなる傾向にある(非特許文献1)。
これまで、産業排水等に含まれるフッ素イオンを不溶化して、排水中から除去するための技術が種々提案されている。産業排水中のフッ素イオンを除去する方法としては、排水にカルシウム化合物を添加して難溶性のフッ化カルシウムとして沈殿させ、固液分離して処理する方法が最も簡易な方法として挙げられる(特許文献1)。また、第二段階の処理としてアルミニウム塩を添加し、中性領域で生成する水酸化アルミニウムにフッ素イオンまたはフッ化カルシウムのコロイド類を吸着させて沈降分離する方法が行われている(特許文献2)。また、複合金属化合物による方法も提案されている(特許文献3)。
科学と工業 Vol.79(10)pp.478−482(2005)
しかしながら、特許文献1の処理方法では、フッ化カルシウム生成による沈殿法では、排水中のフッ素濃度を20mg/L程度までしか低減することができない。また、特許文献2の方法では、フッ素を吸着した大量の沈殿が発生しやすく、脱水時間が長くなり、脱水ケーキ量が多くなる。この脱水ケーキは産業廃棄物として処分することが必要で、処理コスト低減のためにも排出量削減が大きな課題となっている。また、処理を二段階に分けて実施する為、水処理槽を最低2つ以上設置する必要がある等、そのための設備コストも大きくなるという課題があった。また、特許文献3の処理剤は使用量が多くなることや、処理後に金属化合物を沈殿させるために凝集剤が必要であり、処理コストが高いという問題があった。
そこで、本発明は、工場排水などの産業排水等に含まれる高濃度のフッ素を排水基準値以下に低減するとともに、スラッジの発生量を減少させ、かつ排水処理を一段階で行うことができるフッ素含有排水の処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、フッ素含有排水に、消石灰とセメントを特定の割合で混合し、pH調整することにより、単純な工程で、フッ素濃度を排水基準値にすることが可能で、また、処理時の沈殿物の発生量も少なく出来る排水処理方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、消石灰75〜98質量%と、セメント2〜25質量%とを混合し、排水処理剤を調製する第1工程と、排水に前記排水処理剤と酸とを添加した後、混合し、pHを9〜12に調整し、沈殿物を生成させる第2工程と、前記沈殿物を濾過し除去する第3工程のみからなるフッ素含有排水の処理方法に関する。この処理方法によれば、上記3工程のみという単純な工程で、フッ素濃度を排水基準値にすることが可能で、また、処理時の沈殿物の発生量も少なく出来る。
また、使用するセメントは、普通ポルトランドセメント、高炉セメント及びアルミナセメントよりなる群から選ばれる1種以上であると、より、フッ素濃度を排水基準値にすることが可能である。
pH調整に使用する酸は、硫酸、硝酸及び塩酸よりなる群から選ばれる1種以上であると、より、フッ素濃度を排水基準値にすることが可能である。
また、使用するセメントは、普通ポルトランドセメント、高炉セメント及びアルミナセメントよりなる群から選ばれる1種以上であると、より、フッ素濃度を排水基準値にすることが可能である。
pH調整に使用する酸は、硫酸、硝酸及び塩酸よりなる群から選ばれる1種以上であると、より、フッ素濃度を排水基準値にすることが可能である。
本発明の排水処理方法によれば、従来の消石灰を単独使用した処理方法に比較して、排水中のフッ素を効率的に低下させる処理方法を提供することができる。また、従来の処理方法で一般的な二段階処理を行なうことなく一段階の処理で短時間のうちに水質汚濁防止法の排水基準値以下に低減することが出来、更に、沈殿の発生量も減らすことが可能で、環境負荷低減と廃棄物処理のコスト削減に貢献できる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の第1工程では、消石灰75〜98質量%と、セメント2〜25質量%とを混合し、排水処理剤を調製する。消石灰の混合量は、好ましくは80〜95質量%、より好ましくは85〜93質量%、さらに好ましくは90〜92質量%である。セメントの混合量は、好ましくは3〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%、さらに好ましくは7〜10質量%である。セメントの含有率が25質量%を超えると、排水へのカルシウムイオンの供給が十分でなくなるので、排水中のフッ素濃度を排水基準値以下に低減することが困難となるので好ましくない。一方で、セメントの含有率が2質量%未満になると、カルシウムアルミネート水和物もしくはカルシウムシリケート水和物の生成量が十分ではなく、排水中に残留するフッ素イオンまたはフッ化カルシウムコロイド粒子が捕集できなくなるので、フッ素濃度を環境基準値以下に低減することが困難となるので好ましくない。
本発明で使用するセメントは、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、アルミナセメントを使用することが好ましい。その中でも、アルミナセメントを使用することがより好ましい。SO3量が4.0質量%を超えるJIS規格外のセメント関連製品を使用した場合、二水石膏の生成によるフッ素除去への阻害が発生する可能性があるので好ましくない。
第2工程では、排水に前記排水処理剤と酸とを添加した後、混合し、pHを9〜12に調整し、沈殿物を生成させる。
酸は、硫酸、硝酸及び塩酸よりなる群から選ばれる1種以上である。これらの中でも、塩酸が特に好ましく、排水中のフッ素濃度をより低減出来るだけでなく、沈殿物発生量も少なく、沈殿物の沈降速度も速くすることが可能である。
酸は、硫酸、硝酸及び塩酸よりなる群から選ばれる1種以上である。これらの中でも、塩酸が特に好ましく、排水中のフッ素濃度をより低減出来るだけでなく、沈殿物発生量も少なく、沈殿物の沈降速度も速くすることが可能である。
pHは9〜12の範囲、好ましくは10〜11の範囲に調整する。pHが9未満ではカルシウムアルミネート水和物もしくはカルシウムシリケート水和物が十分発生せず、排水中に残留するフッ素イオンまたはフッ化カルシウムコロイド粒子が捕集できなくなるので、フッ素残留濃度を排水基準値以下に低減することが困難となるおそれがある。また、pHが12を超えると吸着阻害が発生し、同様にフッ素残留濃度を排水基準値以下に低減することが困難となるおそれがあるので好ましくない。
前記排水に対する前記排水処理剤の添加割合は、排水中のフッ素含有量1mgに対して、排水処理剤が2〜10mg、好ましくは3〜8mg、より好ましくは4〜6mgである。これらの範囲であれば、排水中のフッ素濃度をより低減出来るだけでなく、沈殿物発生量も少なく、沈殿物の沈降速度も速くすることが可能である。
本発明の処理方法のメカニズムは以下のことが発生していると推察される。即ち、排水処理剤の主成分である消石灰が排水中で溶解してカルシウムイオンとなり、これがフッ素と反応して難溶性のフッ化カルシウム(CaF2)を生成及び沈殿することによりフッ素が除去される。一方で、フッ化カルシウムの生成と並行して、セメント中のカルシウムアルミネート相とカルシウムシリケート相は水と反応してカルシウムアルミネート水和物(エトリンガイト、C4AH13等)およびカルシウムシリケート水和物を生成する(図1及び図2)。これらの水和物が排水中に残留するフッ素イオンまたはフッ化カルシウムのコロイド粒子を捕集することにより、排水中のフッ素濃度を排水基準値以下に低減することができる。また、既存の消石灰とアルミニウム塩を組み合わせた方法よりも沈殿の含水率を低減できる。これに伴い、脱水ケーキの発生量を低減できる。また、カルシウムアルミネート水和物およびカルシウムシリケート水和物は沈殿粒子の粒径を大きくする作用があり、沈殿の凝集、沈降性を高めることができる。これにより、凝集剤を使用することなく清澄な排水を得ることができる。
本発明は、前記第1及び第2工程と、前記沈殿物を濾過し除去する第3工程のみからなる。発生する沈殿物を濾過する方法として、フィルタープレス、ロールプレス、スクリューデカンタ等の一般的な脱水機を利用することが出来る。中でも、脱水ケーキの強度が高く、ハンドリング性にすぐれるフィルタープレスが好ましい。
この沈殿物が発生する第3工程では、フッ化カルシウムを生成する反応とカルシウムアルミネート水和物およびカルシウムシリケート水和物を生成する反応は同時に生じているため、従来二槽(図3)を要した反応槽を一槽(図4)とすることができると推察される。
従来の方法である図3では、反応槽に排水処理剤を投入しpH調整した後、この処理排水を凝集槽に移し凝集剤を入れた後、pH調整し、沈殿物を沈殿槽に移し、沈殿物を濾過するという工程で、処理には二槽が必要である。一方、本発明の方法である図4では、反応槽に排水処理剤を投入しpH調整し、処理排水を沈殿槽に移し、沈殿物を濾過するという工程で、処理は一槽で済む。
従来の方法である図3では、反応槽に排水処理剤を投入しpH調整した後、この処理排水を凝集槽に移し凝集剤を入れた後、pH調整し、沈殿物を沈殿槽に移し、沈殿物を濾過するという工程で、処理には二槽が必要である。一方、本発明の方法である図4では、反応槽に排水処理剤を投入しpH調整し、処理排水を沈殿槽に移し、沈殿物を濾過するという工程で、処理は一槽で済む。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
以下に、本発明について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔排水処理剤の材料〕
本実施例の排水処理剤の材料として下記の物を準備した。
1)消石灰(Ca(OH)2)特号1 宇部マテリアルズ株式会社製)
2)アルミナセメント(フォンジュ ケルネオス社製)
3)普通セメント(日本工業規格JIS R 5210「ポルトランドセメント」適合品、宇部興産株式会社製)
4)高炉セメント(日本工業規格JIS R 5210「ポルトランドセメント」適合品、宇部興産株式会社製)
5)硫酸バンド(Al2(SO4)3・14H2O、朝日化学工業株式会社製)
本実施例の排水処理剤の材料として下記の物を準備した。
1)消石灰(Ca(OH)2)特号1 宇部マテリアルズ株式会社製)
2)アルミナセメント(フォンジュ ケルネオス社製)
3)普通セメント(日本工業規格JIS R 5210「ポルトランドセメント」適合品、宇部興産株式会社製)
4)高炉セメント(日本工業規格JIS R 5210「ポルトランドセメント」適合品、宇部興産株式会社製)
5)硫酸バンド(Al2(SO4)3・14H2O、朝日化学工業株式会社製)
〔排水処理剤の調製〕
排水処理剤Aは前記消石灰、B〜Eは前記消石灰と前記アルミナセメントを混合、Fは前記消石灰と前記普通セメントを混合、Gは前記消石灰と前記高炉セメントを混合したものである。Hは前記アルミナセメントである。Iは前記硫酸バンドである。Jは消石灰と硫酸バンドを2段階投入する方法である。なお、A〜Iについては全てを一括で投入し、Jのみ別々の反応槽に2段階に分けて投入している。各処理剤の成分比を表1に示す。
排水処理剤Aは前記消石灰、B〜Eは前記消石灰と前記アルミナセメントを混合、Fは前記消石灰と前記普通セメントを混合、Gは前記消石灰と前記高炉セメントを混合したものである。Hは前記アルミナセメントである。Iは前記硫酸バンドである。Jは消石灰と硫酸バンドを2段階投入する方法である。なお、A〜Iについては全てを一括で投入し、Jのみ別々の反応槽に2段階に分けて投入している。各処理剤の成分比を表1に示す。
〔模擬排水の調製〕
蒸留水1リットルに対しフッ化ナトリウム(和光純薬工業社製,試薬特級)を2.23g加え、フッ素濃度を1000mg/Lになるように模擬排水を調製した。次に、前記模擬排水に各種排水処理剤を添加・混合し、模擬排水のフッ素濃度を測定した。
蒸留水1リットルに対しフッ化ナトリウム(和光純薬工業社製,試薬特級)を2.23g加え、フッ素濃度を1000mg/Lになるように模擬排水を調製した。次に、前記模擬排水に各種排水処理剤を添加・混合し、模擬排水のフッ素濃度を測定した。
[1.pHの影響評価]
模擬排水(フッ素濃度1000mg/L)200mLに対して、処理剤Cを外割で0.55質量%添加、即ち、排水中のフッ素含有量1mg当たりに対して、処理剤を5.0〜5.5mg添加した。次に、塩酸を用いてpH4〜13までの各種条件に調整を行いながらマグネティックスターラーで10分間混合し、30分静置した後、5A濾紙にて濾過を行い、検液を作製した。その検液のフッ素濃度をJIS K 0102「工場排水試験方法」に準拠して測定した。その結果を表2に示す。なお、フッ素濃度の判定については排水基準値である8.0mg/Lを基準とした。実施例1〜3に示すようにpHが9〜12の実験条件の範囲で、フッ素濃度を8mg/L以下に減少させることが可能であると示された。
模擬排水(フッ素濃度1000mg/L)200mLに対して、処理剤Cを外割で0.55質量%添加、即ち、排水中のフッ素含有量1mg当たりに対して、処理剤を5.0〜5.5mg添加した。次に、塩酸を用いてpH4〜13までの各種条件に調整を行いながらマグネティックスターラーで10分間混合し、30分静置した後、5A濾紙にて濾過を行い、検液を作製した。その検液のフッ素濃度をJIS K 0102「工場排水試験方法」に準拠して測定した。その結果を表2に示す。なお、フッ素濃度の判定については排水基準値である8.0mg/Lを基準とした。実施例1〜3に示すようにpHが9〜12の実験条件の範囲で、フッ素濃度を8mg/L以下に減少させることが可能であると示された。
[2.各種排水処理剤の評価]
前記模擬排水(フッ素濃度1000mg/L)200mLに対して、処理剤を外割で0.5質量%〜0.55質量%、即ち、排水中のフッ素含有量1mg当たりに対して、処理剤を5.0〜5.5mg添加した。次に、硫酸または塩酸を用いてpH調整を行いながらマグネティックスターラーで10分間混合し、30分間静置した後、5A濾紙にて濾過を行い、検液を作製した。その検液のフッ素濃度をJIS K 0102「工場排水試験方法」に準拠して測定した。処理後のフッ素濃度について、結果を表3に示す。なお、フッ素濃度の判定については排水基準値である8.0mg/Lを基準とした。
表3の実施例1〜10に示すように、消石灰にアルミナセメント、高炉B種セメント、普通ポルトランドセメントのいずれか1種以上のセメントを、5〜20%添加し、pHを所定範囲に調整した場合、フッ素濃度を8mg/L以下に減少させることが可能であることがわかる。この理由として、フッ化カルシウムの生成と並行して発生したカルシウムアルミネート水和物(アルミナセメントに由来)もしくはカルシウムシリケート水和物(普通ポルトランドセメントや高炉セメントに由来)が排水中のフッ素イオンまたはフッ化カルシウムコロイド粒子を吸着したことが考えられる。
また、実施例1,5,9,10より、pHの調整に際し硫酸よりも塩酸を利用した場合の方がフッ素濃度の低減効果があることが確認された。この理由として、硫酸添加時には副産物として二水石膏が発生するが、塩酸添加時には発生せず、フッ素の取り込みが良好となることが考えられる。
また、生成した沈殿物の成分を特定するためにX線解析を行い同定した。X線解析装置はRINT−2500(株式会社リガク製)を用いた。硫酸でpH調整した実施例5の同定結果を図1に、塩酸でpH調整した実施例1の同定結果を図2に示す。図1より、沈殿物はフッ化カルシウム(CaF2)、カルシウムアルミネート水和物(エトリンガイト)、二水石膏であり、図2より沈殿物はフッ化カルシウム、カルシウムアルミネート水和物(C4AH13)であることがわかる。
前記模擬排水(フッ素濃度1000mg/L)200mLに対して、処理剤を外割で0.5質量%〜0.55質量%、即ち、排水中のフッ素含有量1mg当たりに対して、処理剤を5.0〜5.5mg添加した。次に、硫酸または塩酸を用いてpH調整を行いながらマグネティックスターラーで10分間混合し、30分間静置した後、5A濾紙にて濾過を行い、検液を作製した。その検液のフッ素濃度をJIS K 0102「工場排水試験方法」に準拠して測定した。処理後のフッ素濃度について、結果を表3に示す。なお、フッ素濃度の判定については排水基準値である8.0mg/Lを基準とした。
表3の実施例1〜10に示すように、消石灰にアルミナセメント、高炉B種セメント、普通ポルトランドセメントのいずれか1種以上のセメントを、5〜20%添加し、pHを所定範囲に調整した場合、フッ素濃度を8mg/L以下に減少させることが可能であることがわかる。この理由として、フッ化カルシウムの生成と並行して発生したカルシウムアルミネート水和物(アルミナセメントに由来)もしくはカルシウムシリケート水和物(普通ポルトランドセメントや高炉セメントに由来)が排水中のフッ素イオンまたはフッ化カルシウムコロイド粒子を吸着したことが考えられる。
また、実施例1,5,9,10より、pHの調整に際し硫酸よりも塩酸を利用した場合の方がフッ素濃度の低減効果があることが確認された。この理由として、硫酸添加時には副産物として二水石膏が発生するが、塩酸添加時には発生せず、フッ素の取り込みが良好となることが考えられる。
また、生成した沈殿物の成分を特定するためにX線解析を行い同定した。X線解析装置はRINT−2500(株式会社リガク製)を用いた。硫酸でpH調整した実施例5の同定結果を図1に、塩酸でpH調整した実施例1の同定結果を図2に示す。図1より、沈殿物はフッ化カルシウム(CaF2)、カルシウムアルミネート水和物(エトリンガイト)、二水石膏であり、図2より沈殿物はフッ化カルシウム、カルシウムアルミネート水和物(C4AH13)であることがわかる。
[3.沈殿発生量の評価]
模擬排水(フッ素濃度1000mg/L)200mLに対して、処理剤を0.55質量%、即ち、排水中のフッ素含有量1mg当たりに対して、処理剤を5.5mg添加した。次に、硫酸または塩酸を用いてpH調整を行いながらマグネティックスターラーで10分間混合し、30分間静置した後、5A濾紙にて濾過を行い、得られた濾液をさらに0.45μmのマイクロフィルターで再度濾過を実施して、回収された沈殿の発生量を測定した。その結果を表3に示す。なお、沈殿発生量の判定については、既存品による比較例である9.5kg/m3よりも少ないものを好ましい実施例とした。
実験の結果、表3の実施例1,5,8,10と比較例8より、消石灰とセメントを混合した処理剤は、既存の消石灰と硫酸バンドを2段階に分けて添加した場合よりも沈殿物の発生量が少なくなることがわかった。
模擬排水(フッ素濃度1000mg/L)200mLに対して、処理剤を0.55質量%、即ち、排水中のフッ素含有量1mg当たりに対して、処理剤を5.5mg添加した。次に、硫酸または塩酸を用いてpH調整を行いながらマグネティックスターラーで10分間混合し、30分間静置した後、5A濾紙にて濾過を行い、得られた濾液をさらに0.45μmのマイクロフィルターで再度濾過を実施して、回収された沈殿の発生量を測定した。その結果を表3に示す。なお、沈殿発生量の判定については、既存品による比較例である9.5kg/m3よりも少ないものを好ましい実施例とした。
実験の結果、表3の実施例1,5,8,10と比較例8より、消石灰とセメントを混合した処理剤は、既存の消石灰と硫酸バンドを2段階に分けて添加した場合よりも沈殿物の発生量が少なくなることがわかった。
[4.沈降物沈降速度の評価]
模擬排水(フッ素濃度1000mg/L)500mLに対して、処理剤を0.5%〜0.55%添加し、硫酸または塩酸を用いてpH調整を行いながらマグネティックスターラーで10分間混合した後、懸濁液を500mLメスシリンダーに移し、1分間手振盪を実施した。振盪後、メスシリンダーを静置し、沈殿物界面の沈降速度を計測した。その結果を表3に示す。なお、沈殿沈降速度の判定については、既存品による比較例である2.5mm/minよりも速いものを好ましい実施例とした。
実験の結果、表3の実施例1,5と比較例4,8より、消石灰とセメントを混合した処理剤は、既存の消石灰と硫酸バンドを2段階に分けて添加した場合よりも沈殿物の沈降速度が大きくなることがわかった。
以上のように、本発明の範囲内である実施例1〜10ではフッ素の低減能力が高く、沈殿が速やかに沈降して、沈殿量も少ないことがわかる。
模擬排水(フッ素濃度1000mg/L)500mLに対して、処理剤を0.5%〜0.55%添加し、硫酸または塩酸を用いてpH調整を行いながらマグネティックスターラーで10分間混合した後、懸濁液を500mLメスシリンダーに移し、1分間手振盪を実施した。振盪後、メスシリンダーを静置し、沈殿物界面の沈降速度を計測した。その結果を表3に示す。なお、沈殿沈降速度の判定については、既存品による比較例である2.5mm/minよりも速いものを好ましい実施例とした。
実験の結果、表3の実施例1,5と比較例4,8より、消石灰とセメントを混合した処理剤は、既存の消石灰と硫酸バンドを2段階に分けて添加した場合よりも沈殿物の沈降速度が大きくなることがわかった。
以上のように、本発明の範囲内である実施例1〜10ではフッ素の低減能力が高く、沈殿が速やかに沈降して、沈殿量も少ないことがわかる。
Claims (5)
- 消石灰75〜98質量%と、セメント2〜25質量%とを混合し、排水処理剤を調製する第1工程と、
排水に前記排水処理剤と酸とを添加した後、混合し、pHを9〜12に調整し、沈殿物を生成させる第2工程と、
前記沈殿物を濾過し除去する第3工程のみからなることを特徴とするフッ素含有排水の処理方法。 - 前記セメントは、普通ポルトランドセメント、高炉セメント及びアルミナセメントよりなる群から選ばれる1種以上である、請求項1記載のフッ素含有排水の処理方法。
- 前記酸は、硫酸、硝酸及び塩酸よりなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2記載のフッ素含有排水の処理方法。
- 前記排水に対する前記排水処理剤の添加割合は、排水中のフッ素含有量1mgに対して、排水処理剤が2〜10mgである、請求項1〜3の何れか1項記載のフッ素含有排水の処理方法。
- 前記沈殿物が、CaF2及び/又は4CaO・Al2O3・13H20である、請求項1〜4の何れか1項記載のフッ素含有排水の処理方法。
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