JP4557666B2 - 重金属の溶出低減方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有害な重金属が溶出する汚染された土壌、あるいは、有害な重金属が溶出するダストに対する有効な重金属の溶出低減方法に関する。
各産業において金属の用途は非常に広く、その種類は多岐に及んでいる。
これら金属の中には6価クロムをはじめとする水銀、鉛、およびカドミウムなどの人体に有害な重金属が含まれるが、その取り扱いの管理が厳しく行なわれているにも関わらず、不測の事故等により汚染され、有害な重金属が溶出する工場跡地などが数多く存在している。また、非鉄精錬業や製鉄業における精錬工程や、焼却処理炉からでるダスト中には、投入する物質によっては、ダストから有害な重金属が溶出する場合がある。
廃水、地下水または土壌浸出水の浄化方法として、セレン又は有機塩素化合物と、重金属を含む排水、地下水または土壌浸出水を、Feと場合によりFe3O4、Fe2O3を含有する硫化鉄の粒子に接触させる方法が、以下の特許文献1に開示されている。この場合、重金属は硫化物として硫化鉄の表面に析出し、分離される。硫化鉄や表面に生成した水酸化鉄が核となり沈澱を促進するので、硫化物を生成しない重金属も還元された後、水酸化物として沈澱する。6価セレンは還元されて4価セレンもしくは単体セレンとなり、生じた水酸化鉄のコロイドと共沈して分離される。有機塩素化合物を脱塩素化し無害化することもできる。
水銀を含む重金属に汚染された廃水を特許文献1に基づいて処理する場合、下記の反応により重金属が硫化物となり安定化する。
FeS → Fe2+ + S2- (化1)
Me2+ + S2- → MeS (化2)
PbSやCdSなどは、酸性領域では溶解度が大きく安定化しないが、中性領域からアルカリ領域では溶解度が低く安定状態となる。HgSは、過剰なS2-イオンが存在すると、再溶解するが(例えば、以下の非特許文献1参照)、S2-イオンの供給源として、FeSを投入した場合、FeSの溶解度は小さく、S2-イオンを過剰になる程度まで放出しないため、HgSは安定化できる。
しかしながら、pH9以上においては、FeSよりもFe(OH)2の方が溶解度は小さく、Fe2+イオンはFe(OH)2に移行する。その際、FeSから浸出したS2-イオンは過剰となり、HgSの再溶解が起こる。
また、溶存酸素によるFe2+イオンの酸化速度は、OH-モル濃度の2乗に比例し、特にpH6以上になるとFe2+イオンの酸化は顕著になる。Fe2+イオンが酸化されると、Fe3+イオンとなり、酸性〜アルカリ領域において、FeSより溶解度の小さいFe(OH)3を形成する。その際、FeSから浸出したS2-イオンは過剰となり、HgSの再溶解が起こる。
しかしながら、水銀を含む重金属に汚染された廃水処理の場合、廃水中の重金属イオンが、硫化物になることで安定化され、硫化物と処理水を短時間で分離するために、技術的に成立するものである。
一方、本発明が対象とする汚染土壌や汚染ダストは、中性からアルカリのものが多く、また、安定処理後も汚染土壌やダスト周辺に付随している水相と、汚染土壌や汚染ダスト自体の固相とは、分離されることなく、常に近接している。また、汚染土壌や汚染ダストの処理においては、重金属イオンの浸出工程と安定処理工程が必要であるが、浸出時間に多くの時間を要する場合がある。
特開2003−340465号公報 公害防止の技術と法規(水質編) 監修 通産産業省環境立地局 p.253〜p.258
特許文献1の方法で水銀を含む重金属が溶出する汚染土壌や汚染ダストを処理しようとする場合、まず、汚染土壌や汚染ダストに水分を加え、スラリー化し、pHを5.5〜8程度に制御し、Feを含有する硫化鉄を投入し安定化する必要がある。安定化を持続させるためには、常に、pHを5.5〜8の間で制御し、かつ、Fe2+イオンの溶存酸素による酸化を抑制するために、溶存酸素濃度を常に低下させておかねばならない。そうしないと、先に述べたように、過剰なS2-イオンを保持できなくなるため、水銀は再溶解をおこしてしまう。そのため、実際には、このような状況を維持することは困難であるという課題があった。
本発明は、水銀とその他の重金属が溶出する物質に対し、金属鉄、金属アルミニウム、金属ニッケル、金属亜鉛の1種または2種以上を含有した粉末と、非硫酸態硫黄を含む粉末もしくは溶液とを使用して、有害な重金属溶出を抑止することを目的とする。なお、非硫酸態硫黄とは、S2-からS4+までの状態である硫黄を含む化合物であり、硫化水素、元素硫黄、チオ硫酸塩、亜硫酸塩などがある。なかでも、元素硫黄は、取り扱いが容易であり、生石灰などと混合し、水を加え液状にすることにより反応性の良い多硫化カルシウムを作ることができる。
発明者は、上記課題を解決するために、水銀とその他の重金属が溶出する物質に対し、鋭意検討した結果、金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、金属亜鉛の1種または2種以上を含有した粉末を投入することで、下記の化3〜6の反応により水銀イオンは、粉末中のこれら金属により金属水銀に還元され、これら金属の表面に水銀を固定できることを見出した。
Hg2+ + Fe → Hg + Fe2+ (化3)
Hg2+ + Ni → Hg + Ni2+ (化4)
3Hg2+ + 2Al → 3Hg + 2Al3+ (化5)
Hg2+ + Zn → Hg + Zn2+ (化6)
化3〜6の反応は、硫化水銀のような形態で処理する場合と比べて、広範囲のpH領域で安定化できる。すなわち、pH4からpH12の領域で、溶出を産業廃棄物埋め立て基準値である0.005mg/L以下に安定化することができる。
また、非硫酸態硫黄として、フマックス法やソーダタカハックス法でコークスガスから脱硫する際に発生する親水性の良好な硫黄を用いることができる。これらの方法は、アルカリ性の吸収液に水溶性の酸化触媒を溶かしたもので硫化水素含有ガスを洗い、次いでこの吸収液を空気と接触させて液を再生するとともに元素硫黄を得る方法である。この硫黄に水分と、生石灰または消石灰またはこれらの成分を含む鉄鋼スラグ粉とを混合して、pH8以上、好ましくはpH9以上になるように調整し、60〜100℃に昇温することにより、反応性の良好な多硫化カルシウム(CaSn:n=2〜4)を含む液体(以下、黄水と呼称する)を、数十秒から数十分程度の短時間で安価に得ることができ、処理時間を短縮できることが判明した。さらに、黄水中に、未反応の硫黄と生石灰または消石灰またはこれらの成分を含む鉄鋼スラグ粉を含ませることによって、反応持続性のある黄水となる。なお、コークスガスから脱硫する際に発生する親水性の良好な硫黄は、硫黄を85〜95%、Naを1〜2%含んだものである。
また、非硫酸態硫黄として、工業試薬などに見られる撥水性を有する硫黄を用いる場合、これらの硫黄は、水溶液表面に浮き黄水が生成しにくい。このような場合は、アニオン性界面活性剤などの界面活性剤を併用することで撥水性がなくなり、硫黄は水溶液中に分散し、黄水が生成しやすくなる。但し、界面活性剤のコストがかかることや、黄水の生成により時間がかかること、界面活性剤の成分によっては溶出低減に悪影響を及ぼす場合があることから、上述した親水性の良い硫黄を用いることが好ましい。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである
)重金属溶出物として、水銀に加えて、硫化物又は水酸化物を生成する重金属元素が含有される土壌またはダストを、水と混合してスラリーとし、その中に、金属鉄、金属アルミニウム、金属ニッケル、金属亜鉛の1種または2種以上を含有する粉末を投入し、スラリーを混合、且つpHを4〜12に調整した後、更に非硫酸態硫黄を含有する粉末と、消石灰又は生石灰を投入して混合し、スラリーのpHを8以上12以下に調整することを特徴とする重金属の溶出低減方法。
)重金属溶出物として、水銀に加えて、硫化物又は水酸化物を生成する重金属元素が含有される土壌またはダストを、水と混合してスラリーとし、pHを8以上12以下に調整し、その中に、黄水、及び金属鉄、金属アルミニウム、金属ニッケル、金属亜鉛の1種または2種以上を含有した粉末を投入して混合することを特徴とする重金属の溶出低減方法。
)前記土壌またはダスト100質量部に対し、前記金属鉄、金属アルミニウム、金属ニッケル、金属亜鉛の1種または2種以上を含有する粉末の投入量を金属の総量で0.01〜20質量部、前記非硫酸態硫黄を含有する粉末又は黄水の投入量を硫黄換算で0.1〜5質量部とすることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の重金属の溶出低減方法。
)前記金属鉄を含有する粉末が製鉄業または金属精錬業で発生するダスト、前記非硫酸態硫黄を含有する粉末がコークスガスの脱硫時に発生する硫黄、の少なくともいずれかであることを特徴とする前記(1)〜()のいずれか1つに記載の重金属の溶出低減方法。
尚、本発明における重金属溶出物とは、水中に溶け出す重金属を含む物質のことであり、その溶出量の測定は、昭和48年環境庁告示13号に基づく。
すなわち、容出量は、試料に対して10倍質量の純水を入れ、6時間の振とうした後ろ過し、そのろ過液(検液)中の金属などを工場排水の分析方法などにより分析し、算出する。
本発明の方法により、金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、金属亜鉛の1種または2種以上を含有した粉末と非硫酸態硫黄を含有する粉末もしくは液体を使用して、雨水、地下水、又は海水等で溶出する、水銀及びその他有害な重金属を有する汚染土壌または汚染ダストを安定化処理して、それらの有害重金属溶出を抑止するという優れた効果を発揮することができる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の対象である、汚染土壌または汚染ダスト中に含有され、雨水、地下水、又は海水等で溶出する水銀とは、汚染土壌や産業廃棄物ダスト中に含まれるイオン性の水銀(例えば、塩化銀、硫酸銀、硝酸銀等)を示し、これを金属水銀に還元して安定化する。
また、本発明の対象である、汚染土壌や産業廃棄物ダスト中に含有され、雨水、地下水、又は海水等で溶出する水銀以外の有害な重金属とは、人体に悪影響を及ぼし、密度4g/cm3以上で、且つ硫化物又は水酸化物を形成する重金属で、クロム、鉛、カドミウム、銅、錫、コバルト、ニッケル、亜鉛、アンチモン等の金属を示し、これを硫化物または水酸化物に変化させて安定化する。また、水銀以外の重金属は1種に限らず、複数種含まれていても、共に安定化処理することができる。
ここで、安定化処理とは、昭和48年環境庁告示13号に記載の容出量の測定方法に基き(対象とする試料に対して10倍質量の純水を入れ、6時間の振とうした後ろ過し、そのろ過液(検液)中の金属などを工場排水の分析方法などにより分析し、算出する測定方法)、測定された容出量が、溶出基準値以下となる処理のことである。
例えば、水銀、6価クロム、鉛、カドミウムの溶出基準値は、水銀≦0.005、6価クロム≦1.5、鉛≦0.3、カドミウム≦0.3(mg/L)である。
本発明では、水銀イオンの安定化のために、金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、金属亜鉛の1種または2種以上を含有した粉末を使用する。製鉄業または金属精錬業で発生するダストは、金属鉄を含む物質で、水銀イオンの安定化剤となる。水銀イオンと、金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、金属亜鉛とは、化3〜6の反応式で先に述べたように反応し、水銀イオンは金属水銀となり安定化する。その反応領域は、pH4からpH12の領域と広範囲である。
一方、水銀以外の重金属イオンの安定化については、非硫酸態硫黄を含む粉末もしくは液体を使用する。非硫酸態硫黄を含む粉末とは、例えば、ガス精製時あるいは排ガス処理時の脱硫工程で発生する硫黄であり、特に、コークスガス精製時の脱硫工程(脱硫方法はフマックス法やソーダタカハックス法)で発生する硫黄は親水性に優れ、工業試薬に見られるような撥水性はなく、黄水を容易に形成しやすいという特徴がある。黄水は、前記の非硫酸態硫黄を含む粉末に水分と、生石灰または消石灰またはこれらを含む鉄鋼スラグ粉とを混合し、pH8以上、好ましくはpH9以上になるように調整し、60〜100℃に昇温することにより数十秒分〜数十分程度で得られ、反応性の良い多硫化カルシウムを含む液体である。この黄水の生成反応は常温でも起こるが、黄水の生成速度は遅い。生成した黄水と重金属は、硫化物を形成し安定化する。または、硫化物を形成しない重金属、例えば6価クロムについては、6価クロムを還元し、3価のクロムにし、水酸化クロム(III )を形成し安定化する。しかしながら、黄水は、溶存酸素により分解されやすく、汚染土壌や汚染ダストなどから重金属イオンの溶出に時間がかかる場合、安定化できない。そこで、常温においては黄水の生成速度が小さいことを利用し、硫黄を余剰に含ませることによって、長時間にわたり黄水が少量ずつ生成し、反応持続性のある非硫酸態硫黄を含む液体となる。
本発明で使用する金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、金属亜鉛の1種または2種以上を含有した粉末において、それらの金属の総含有率が20%未満であれば、水銀を安定化させるのに、大量投入が必要で、長期間も要し現実的ではない。それら金属の総含有率が20%以上であれば、投入率や比表面積にもよるが数日以内に安定化でき、実用的である。
また、製鉄業の精錬工程や圧延工程で発生するダスト中には金属鉄を20%以上含むものが多く、この金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、金属亜鉛の1種または2種以上を含有した粉末として十分使用でき、重金属溶出物質を安価に安定化することができる。
例えば、鉄鋼精錬時に発生するダストは金属鉄を20〜80質量%と多く含んでいる。
また、乾ダストに限らず、湿ダストでも直接又は乾燥することで使用可能である。
有害重金属の溶出低減処理における、第1の実施形態としては、有害重金属溶出物がダスト等の微粉でスラリー化が容易な場合はそのまま用い、硬い汚染土壌等でそのままの状態ではスラリーとなり難い場合は一度破砕して、粒径を4.75mm以下(篩目開き4.75mmの篩下)、好ましくは2mm以下(篩目開き2.00mmの篩下)のスラリーとなり、重金属の溶出し易い粒径まで小さくし、容器中(タンク、プール、防水シート等の、スラリー化が可能で容器外へのスラリーの流出が防止できるものであれば、種類は限定されない。)で水と混合してスラリー状にし、その中に、金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、金属亜鉛の1種または2種以上を含有した粉末と、非硫酸態硫黄を含有する粉末と、生石灰または消石灰(溶解し易いため、粉体に限らず、塊状でも可)またはこれらを含む鉄鋼スラグ粉(例えば、製鋼スラグで篩目開き4.75mmの篩下)とを投入し、混合し、スラリーのpHを8以上12以下、好ましくはpH9以上12以下に調整することで、重金属イオンを安定化処理する。pHは生石灰または消石灰の量で調整する。pH8以下であれば、黄水になりにくく、pH12以上であれば、金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、又は金属亜鉛による水銀の還元反応が進みにくい。pH調整は、苛性ソーダ、生石灰粉、消石灰粉または鉄鋼スラグ粉などで調整する。また、水温を60℃〜100℃にすると、黄水を短時間で生成でき、効果的である。その後、数時間から数日間静置することで、安定化処理できる。
スラリーを混合する方法としては、攪拌翼を容器に設置してモーターにて攪拌・混合する方法や、少量であれば、攪拌棒等を使用して人手で混合する方法等があるが、これらに限定されない。
スラリー化する際の添加水量は極力少なくし、安定化処理後の脱水などの作業が生じないようにすることが好ましい。混合しやすくするため添加水量を多くし、安定化処理した後、脱水しても効果には差異は生じない。
安定化後の土壌やダストは、必要に応じて元の場所に戻すこともできるし、埋め立て処理することも可能である。
第2の実施形態としては、第1の実施形態と同様に有害金属溶出物をそのままの状態、又は4.75mm以下、好ましくは2mm以下に破砕したものを、容器中で水と混合してスラリー状にし、その中に金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、金属亜鉛の1種または2種以上を含有した粉末を投入し、混合することで、水銀イオンを金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、又は金属亜鉛で還元し、金属水銀にし、粉末の表層に析出させることで、水銀の溶出を抑制することができる。この際、スラリーのpHは、pH4以上pH12以下が良い。酢酸、アンモニア水等の酸、アルカリ溶液、又は生石灰若しくは消石灰等をpH調整剤として用いることができる。pH調整は必要に応じてスラリーの混合中又は混合後に適宜行えばよい。それは、pH12を超える領域では、前記のように水銀イオンの還元反応が進みにくくなり、pH4未満では、金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、金属亜鉛の酸溶解が起こり、これらの粒子表面に析出した金属水銀が浮遊し、水銀は安定化しないためである。スラリー化する際の添加水量は極力少なくし、安定化処理後の脱水などの作業が生じないようにすることが好ましい。水銀の安定化処理の後、そのスラリー中に脱硫工程で発生する硫黄と、生石灰または消石灰またはこれらを含む鉄鋼スラグ微粉とを投入し、生石灰または消石灰の投入量により、pH8以上12以下、好ましくはpH9以上12以下になるように調整し、60〜100℃に昇温することで、黄水を発生させ、水銀以外の重金属を安定化する。スラリーの混合は、実施形態1と同様に行うことができる。安定化後の土壌やダストは、必要に応じて元の場所に戻すこともできるし、埋め立て処理することも可能である。
第3の実施形態としては、第1の実施形態と同様に有害金属溶出物をそのままの状態、又は4.75mm以下、好ましくは2mm以下に破砕したものを、容器中で水と混合してスラリー状にし、アンモニア水等のアルカリ溶液、又は生石灰若しくは消石灰を投入して、pHを8以上12以下、好ましくはpHを9以上12以下に調整し、前記方法で準備した黄水と、金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、金属亜鉛の1種または2種以上を含有した粉末とを投入し、混合し、重金属イオンを安定化処理する。スラリー化する際の添加水量は極力少なくし、安定化処理後の脱水などの作業が生じないようにすることが好ましい。スラリーの混合は、実施形態1と同様に行うことができる。安定化後の土壌やダストは、必要に応じて元の場所に戻すこともできるし、埋め立て処理することも可能である。
これら第1〜3の実施形態で大きな効果の差異はない。第1の実施形態は一度におおよそ20T以上のような大ロットでの処理でも対応できる。例えば、有害金属溶出物に金属鉄と硫黄と製鋼スラグと水を加え、少量ずつ連続的に混合し、混合したものを山積みにし、その山積みしたものの上部をシートで覆い、山積みしたもののなかに水蒸気を吹き込み、昇温することができ、大ロットでも対応ができる。第2の実施形態は、第1の実施形態と同様、おおよそ20T以上のような大ロットでの処理でも対応できる。第2の実施形態では、有害金属溶出物に金属鉄と水を混ぜた後に必要に応じてpH調整し、硫黄と製鋼スラグを混ぜて昇温することで、2回混合することになる。特に金属鉄と水銀イオンとの反応は固液反応であり、反応に時間がかかる。そこで、2回混合することで、水銀イオンの安定化処理の確実性を向上させることができる。また、1回目の混合後に、水銀のみの溶出試験を実施し、水銀の安定化をチェックすることで、より確実性が上昇する。第3の実施形態は、黄水が空気により酸化しやすいことから、一度の処理量はおおよそ20T以下の小ロットが好ましい。
上述した金属粉末、及び非硫酸態硫黄又は黄水の投入量としては、有害重金属溶出物100質量部に対し、金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、金属亜鉛の1種または2種以上を含有した粉末の投入量を金属の総量で0.01〜20質量部、非硫酸態硫黄を含有する粉末又は黄水の投入量を硫黄換算で0.1〜5質量部投入する。金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、金属亜鉛の1種または2種以上を含有した粉末の投入量が金属の総量で0.01質量部以下であれば、水銀の安定化は期待できず、20質量部以上であれば、水銀の安定化はできるが、多量の金属鉄、金属ニッケル、金属アルミニウム、金属亜鉛の1種または2種以上を含有した粉末を使用することになるため、経済的ではないためである。また、非硫酸態硫黄を含有する粉末又は黄水の投入が硫黄換算で0.1質量部以下であれば、溶出する有害重金属を安定化できず、5質量部以上であれば、薬品費用が大きくなり経済的ではなくなったり、安定化処理した後、過剰な非硫酸態硫黄が雨水に溶け、COD成分の高い水ができたりして、問題が生じるためである。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
対象汚染物の溶出量の測定は昭和48年環境庁告示13号に基づく。
すなわち、試料に対して10倍質量の純水を入れ、6時間の振とうした後ろ過し、そのろ過液(検液)中の金属などを工場排水の分析方法などにより分析し、溶出量を測定した。
尚、水銀、6価クロム、鉛、カドミウムの溶出基準値は、水銀≦0.005、6価クロム≦1.5、鉛≦0.3、カドミウム≦0.3(mg/L)である。
(実施例1)
水銀、6価クロム、鉛、カドミウムがそれぞれ0.3mg/L、25mg/L、9mg/L、5mg/L溶出する汚染ダスト(≦4.75mm、対象汚染物)20kgに対し、下記に示す方法で安定化処理を行なった。
容器中に汚染ダストと水を2L加え混合してスラリー状にし、その中に金属鉄粉(試薬、純度90%)と、コークスガスを脱硫する工程(ソーダタカハックス法)で生じた硫黄(硫黄含有率:91%)と、生石灰を投入して、pH10に調整した後、90℃に加温し、60分維持した。その後、常温で2日間静置し、改質ダストを得た。この改質ダストを用い、産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法(昭和48年環境庁告示13号)に準拠して、水銀、6価クロム、鉛、カドミウムの溶出試験を実施した。有害重金属低減剤の混合条件および溶出試験結果を表1中の実験No.2−1に示す。
以下の表1に示すように、水銀、6価クロム、鉛、カドミウムの溶出が基準値以下となり、汚染ダストの安定化処理ができることが分かる。
(実施例2)
水銀、6価クロム、鉛、カドミウムがそれぞれ0.3mg/L、25mg/L、9mg/L、5mg/L溶出する汚染ダスト(≦4.75mm、対象汚染物)20kgに対し、下記に示す方法で安定化処理を行なった。
容器中に汚染ダストと水を2L加え混合してスラリー状にし、その中に金属鉄粉(試薬、純度90%)を投入後、常温で混合し、2日間静置した。次に、コークスガスを脱硫する工程(ソーダタカハックス法)で生じた硫黄(硫黄含有率:91%)と生石灰を投入後、90℃に加温し、60分維持し、改質ダストを得た。この改質ダストを用い、産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法(昭和48年環境庁告示13号)に準拠して、水銀、6価クロム、鉛、カドミウムの溶出試験を実施した。有害重金属低減剤の混合条件および溶出試験結果を表1中の実験No.3−1〜6および実験No.4−1〜7に示す。
表1に示すように、金属鉄粉の投入量が0.01%以上で、硫黄の投入量が0.1%以上で、水銀、6価クロム、鉛、カドミウムの溶出が基準値以下となり、汚染ダストの安定化処理ができることが分かる。
(実施例3)
水銀、6価クロム、鉛、カドミウムがそれぞれ0.3mg/L、25mg/L、9mg/L、5mg/L溶出する汚染ダスト(≦4.75mm、対象汚染物)20kgに対し、下記に示す方法で安定化処理を行なった。
容器中に汚染ダストと水2Lを加え混合してスラリー状にし、金属鉄粉(試薬、純度90%)と、予め、用意した黄水を混合し、常温で混合し、2日間静置し、改質ダストを得た。黄水は、コークスガスを脱硫する工程(ソーダタカハックス法)で生じる硫黄と生石灰を加えスラリー状にし、90℃に加温し、10分維持し作成した。この改質ダストを用い、産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法(昭和48年環境庁告示13号)に準拠して、水銀、6価クロム、鉛、カドミウムの溶出試験を実施した。有害重金属低減剤の混合条件および溶出試験結果を表1中の実験No.5−1〜6に示す。
表1に示すように、水銀、6価クロム、鉛、カドミウムの溶出が基準値以下となり、汚染ダストの安定化処理ができることが分かる。
(実施例4)
水銀、6価クロム、鉛、カドミウムがそれぞれ0.3mg/L、25mg/L、9mg/L、5mg/L溶出する汚染ダスト(≦4.75mm、対象汚染物)20kgに対し、下記に示す方法で安定化処理を行なった。
汚染ダストに水2Lを加え混合してスラリー状にし、その中に製鉄業の転炉工程からの排ガスを湿式集塵した際に発生する金属鉄を30%含む転炉ダストと、予め、用意した黄水を混合し、常温で混合し、2日間静置し、改質ダストを得た。黄水は、コークスガスを脱硫する工程(ソーダタカハックス法)で生じる硫黄と生石灰を加えスラリー状にし、90℃に加温し、10分維持し作成した。この改質ダストを用い、産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法(昭和48年環境庁告示13号)に準拠して、水銀、6価クロム、鉛、カドミウムの溶出試験を実施した。有害重金属低減剤の混合条件および溶出試験結果を表1中の実験No.6−1に示す。 表1に示すように、金属鉄粉を用いた場合と同様に、水銀、6価クロム、鉛、カドミウムの溶出が基準値以下となり、汚染ダストの安定化処理ができることが分かる。
(実施例5)
水銀、6価クロム、鉛、カドミウムがそれぞれ0.3mg/L、25mg/L、9mg/L、5mg/L溶出する汚染ダスト(≦4.75mm、対象汚染物)20kgに対し、下記に示す方法で安定化処理を行なった。
汚染ダストに水2Lを加え混合してスラリー状にし、その中に金属ニッケル粉(純度99%)、金属アルミニウム粉(純度99%)、金属亜鉛粉(純度90%)のいずれかと、予め、用意した黄水を混合し、常温で混合し、2日間静置し、改質ダストを得た。黄水は、コークスガスを脱硫する工程(ソーダタカハックス法)で生じる硫黄と生石灰を加えスラリー状にし、90℃に加温し、10分維持し作成した。この改質ダストを用い、産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法(昭和48年環境庁告示13号)に準拠して、水銀、6価クロム、鉛、カドミウムの溶出試験を実施した。有害重金属低減剤の混合条件および溶出試験結果を表1中の実験No.7−1〜3に示す。 実験No.7−1では金属ニッケル粉を、実験No.7−2では金属アルミニウム粉を、実験No.7−3では金属亜鉛粉を使用した。表1に示すように、金属鉄粉を用いた場合と同様に、水銀、6価クロム、鉛、カドミウムの溶出が基準値以下となり、汚染ダストの安定化処理ができることが分かる。
Figure 0004557666

Claims (4)

  1. 重金属溶出物として、水銀に加えて、硫化物又は水酸化物を生成する重金属元素が含有される土壌またはダストを、水と混合してスラリーとし、その中に、金属鉄、金属アルミニウム、金属ニッケル、金属亜鉛の1種または2種以上を含有する粉末を投入し、スラリーを混合、且つpHを4〜12に調整した後、更に非硫酸態硫黄を含有する粉末と、消石灰又は生石灰を投入して混合し、スラリーのpHを8以上12以下に調整することを特徴とする重金属の溶出低減方法。
  2. 重金属溶出物として、水銀に加えて、硫化物又は水酸化物を生成する重金属元素が含有される土壌またはダストを、水と混合してスラリーとし、pHを8以上12以下に調整し、その中に、黄水、及び金属鉄、金属アルミニウム、金属ニッケル、金属亜鉛の1種または2種以上を含有した粉末を投入して混合することを特徴とする重金属の溶出低減方法。
  3. 前記土壌またはダスト100質量部に対し、前記金属鉄、金属アルミニウム、金属ニッケル、金属亜鉛の1種または2種以上を含有する粉末の投入量を金属の総量で0.01〜20質量部、前記非硫酸態硫黄を含有する粉末又は黄水の投入量を硫黄換算で0.1〜5質量部とすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の重金属の溶出低減方法。
  4. 前記金属鉄を含有する粉末が製鉄業または金属精錬業で発生するダスト、前記非硫酸態硫黄を含有する粉末がコークスガスの脱硫時に発生する硫黄、の少なくともいずれかであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重金属の溶出低減方法。
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