JPH10324547A - クロム酸化物含有物質の処理方法 - Google Patents

クロム酸化物含有物質の処理方法

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JPH10324547A
JPH10324547A JP10058661A JP5866198A JPH10324547A JP H10324547 A JPH10324547 A JP H10324547A JP 10058661 A JP10058661 A JP 10058661A JP 5866198 A JP5866198 A JP 5866198A JP H10324547 A JPH10324547 A JP H10324547A
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正人 熊谷
Yasuo Kishimoto
康夫 岸本
Toshikazu Sakuratani
敏和 櫻谷
Yukio Sato
幸男 佐藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ステンレス鋼精錬で発生するスラグ、クロム
化合物製造の際に発生するクロム鉱滓、下水汚泥、下水
汚泥溶融スラグなどのクロム酸化物含有物質からのCr6+
の溶出を、完全にしかも工業的に簡易な方法で防止する
ことが可能なクロム酸化物含有物質の処理方法の提供。 【解決手段】 クロム酸化物含有物質に、硫黄および/
または酸化数が+5価以下の硫黄の含有量が0.03重量%
超えである水溶液を接触せしめるクロム酸化物含有物質
の処理方法、クロム酸化物含有物質と、硫黄および/ま
たは酸化数が+5価以下の硫黄を含有するスラグとを混
合し、該混合物に水および/または高炉スラグの散水冷
却時に発生する高炉スラグ溶出水を散水するか、または
水蒸気を吹き込むクロム酸化物含有物質の処理方法、お
よび、クロム酸化物含有物質を、前記した高炉スラグ溶
出水に浸漬するクロム酸化物含有物質の処理方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ステンレス鋼の精
錬の際に発生するステンレス鋼スラグ、重クロム酸ナト
リウムなどのクロム化合物の製造の際に発生するクロム
鉱滓、廃棄物溶融スラグ、下水汚泥および下水汚泥溶融
スラグなどのクロム酸化物含有物質からのCr6+の溶出を
防止することが可能なクロム酸化物含有物質の処理方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼精錬の際に発生するステン
レス鋼スラグ、および重クロム酸ナトリウムなどのクロ
ム化合物の製造の際に発生するクロム鉱滓は、数%のク
ロム酸化物を含有し、操業条件によっては、その一部は
Cr6+にまで酸化し、Cr6+が溶出する場合がある。
【0003】ステンレス鋼スラグ、クロム鉱滓などを路
盤材、仮設材、土木埋立材などとして使用する場合、ス
ラグからCr6+が溶出しないことが絶対条件である。ま
た、近年、ゴミ焼却灰、汚泥などを溶融処理することに
よってスラグ化し、生成したスラグを路盤材、タイルな
どとして有効利用することが検討されているが、ゴミ焼
却灰、汚泥などの種類によっては、生成したスラグから
Cr6+が溶出する場合があり、有効利用を困難にしてい
る。
【0004】このため、スラグを路盤材、土木埋立て材
などとして再利用する場合、Cr6+の溶出を防止するため
の新たな技術が提案されている。ステンレス鋼スラグか
らのCr6+の溶出防止方法としては、ステンレス鋼スラグ
にアルミ灰およびマグネシア系産業廃棄物を添加する方
法が開示されている(特開平6−171993号公報参照)。
【0005】しかし、上記した方法を工業的に実施しよ
うとすると、受滓鍋内に前記アルミ灰およびマグネシア
系産業廃棄物を敷き詰めておき、そこへ溶融状態のステ
ンレス鋼スラグを排出してスラグ落下のエネルギーで攪
拌混合する方法を用いることになる。この場合、溶鋼と
異なり、スラグは粘性が高いため、このような落下エネ
ルギーのみによる攪拌混合手段では均質な混合状態を形
成することは困難であり、スラグ中のクロム酸化物を完
全に安定化してCr6+の溶出を防止することはできない。
【0006】また、ステンレス鋼の脱炭精錬後、スラグ
中のCrを溶鋼中へ回収する還元処理を経た溶融状態のス
ラグに対し、FeS などの−2価のS化合物を添加し、不
活性ガスの吹き込み撹拌によりスラグ中S濃度を0.20wt
%以上としCr6+の溶出を防止する方法が開示されている
(特開平8−104553号公報参照)。この方法は、溶融ス
ラグに添加剤を均質に混合するために不活性ガスの吹き
込みを行いクロム酸化物の安定化を図るもので、スラグ
中のCr6+の溶出を防止する方法としては有効であるが、
還元処理終了後に不活性ガスの吹き込みやスラグの粘度
を低下させるための添加剤を使用するといった操作が必
要となり、経済性の面で問題があった。
【0007】また、上記方法の場合、溶融状態のスラグ
との混合を十分にするために、精錬炉内で添加すれば、
添加剤が溶鋼を汚染する問題が生じる。一方、クロム化
合物の製造の際に発生するクロム鉱滓では、Cr6+の溶出
防止方法として、一般にスラグを還元焙焼してCr6+をCr
3+に還元して無害化する方法が採用されているが、焙焼
法のため経済性の面で問題があった。
【0008】また、下水汚泥などの場合、埋立処分前に
減容化のために焼却処分が行われるが、この焼却灰から
のCr6+の生成防止の方法として、焼却時の空気比を1未
満に制御する方法が採用されている〔下水道協会誌、vo
l.38 No.378 、pp29-32(1994) 参照〕。しかし当該文献
に示されるように、出処などの異なる様々な性状の汚泥
に対応して最適な運転を行うことは非常に難しい課題で
あり、これは産業廃棄物などの焼却処分においても同様
であると考えられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記した従
来技術の問題点を解決し、ステンレス鋼スラグ、クロム
鉱滓、廃棄物溶融スラグ、下水汚泥、下水汚泥溶融スラ
グ、クロム酸化物を含む土壌などのクロム酸化物含有物
質を、工業的に簡易で経済性に優れた方法で処理し、こ
れらクロム酸化物含有物質からのCr6+の溶出を完全に防
止することが可能なクロム酸化物含有物質の処理方法を
提供することを課題とする。
【0010】さらに、本発明は、上記したクロム酸化物
含有物質を、短時間かつ被処理材の体積を大幅に増加す
ることなく処理し、上記した優れた効果を得ることが可
能なクロム酸化物含有物質の処理方法を提供することを
課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記した
従来技術の問題点について熟慮した結果、従来技術の場
合、溶融や焙焼、焼却といった高温状態でクロムの還元
条件を設定するために、条件設定の困難さと、経済性の
面での問題が生じていると考えた。そこで、常温あるい
は常温に近い状態でCr6+の還元を行う方法を検討し、前
記した様々なクロム酸化物含有物質を、還元剤を含む水
溶液と反応させて、Cr6+を還元する方法に関して種々検
討、実験を行った。
【0012】この結果、酸化数が+5価以下の還元性硫
黄を含有する水、特に高炉スラグの未エージング材から
溶出する硫黄イオンおよび硫黄を含有する水を使用する
ことにより、高反応率かつ工業的に簡易で経済性に優れ
た方法でクロム酸化物含有物質中のクロムの還元が可能
であることを新たに見出し、本発明(第1の発明、第2
の発明)に到った。
【0013】また、本発明者らは、前記した知見に基づ
いて、さらに鋭意検討した結果、下記知見[1] 〜[3] を
得、本発明(第3の発明〜第10の発明)に到った。 [1]:下記〜の硫黄含有物質を用いることによっ
て、クロム酸化物含有物質からのCr6+の溶出を極めて効
果的に防止することが可能であること。 ;高炉スラグの散水冷却時に発生する高炉スラグ溶出
水(以下高炉スラグ溶出水とも記す) ;自然エージング3カ月未満の高炉徐冷スラグ(以下
未エージング高炉徐冷スラグとも記す)、溶銑予備処理
スラグなどの硫黄および/または酸化数が+5価以下の
硫黄を含有するスラグ ;単体硫黄、硫黄含有温泉から精製した湯ノ花などの
単体硫黄を含有する物質(以下単体硫黄含有物質とも記
す) ;チオ硫酸ナトリウム、硫化鉄、硫化水素などの酸化
数が+5価以下の硫黄の化合物(以下+5価以下の硫黄
化合物とも記す) 〔以下、〜を総称して硫黄含有物質とも記す。〕 [2]:上記した〜の硫黄含有物質を用い、下記の処
理方法(a) 〜(d) によって、クロム酸化物含有物質から
のCr6+の溶出を極めて効果的に防止することが可能であ
ること。
【0014】(a);大気雰囲気中での静置法 (b);散水法 (c);浸漬法 (d);水蒸気吹き込み法 [3]:前記した〜の硫黄含有物質、さらには硫酸第
一鉄などの2価の鉄を含有する物質(以下2価鉄含有物
質とも記す)を組み合わせることによって、下記(1) 、
(2) の効果が得られること。
【0015】(1);高炉スラグ溶出水中の還元性硫黄濃
度が濃度変動によって低い場合でも、高炉スラグ溶出水
に、前記した単体硫黄含有物質、+5価以下の硫黄化合
物もしくは2価鉄含有物質を添加もしくは吹き込み、該
高炉スラグ溶出水にクロム酸化物含有物質を浸漬するこ
とによって、短時間の処理でCr6+を還元し、クロム酸化
物含有物質からのCr6+の溶出を完全に防止することが可
能であること。
【0016】(2);環境庁告示46号法による溶出試験に
おいてCr6+の溶出量が多いスラグ、または気孔率が低い
スラグであっても、クロム酸化物含有物質と前記した単
体硫黄含有物質とを混合し、該混合物に水蒸気を吹き込
むことによって、上記したスラグを、短時間かつ被処理
材の体積増加を招くことなく処理し、クロム酸化物含有
物質からのCr6+の溶出を完全に防止することが可能であ
ること。
【0017】すなわち、第1の発明は、クロム酸化物含
有物質に、硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫
黄の化合物を合計量で0.05重量%以上含有する水溶液を
接触せしめることを特徴とするクロム酸化物含有物質の
処理方法である。第2の発明は、クロム酸化物含有物質
に、硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄の含
有量が合計量で0.03重量%超えである水溶液を接触せし
めることを特徴とするクロム酸化物含有物質の処理方法
である。
【0018】第3の発明は、クロム酸化物含有物質と、
硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有す
るスラグとを混合し、大気雰囲気中で静置することを特
徴とするクロム酸化物含有物質の処理方法である。第4
の発明は、クロム酸化物含有物質に、高炉スラグの散水
冷却時に発生する高炉スラグ溶出水を散水することを特
徴とするクロム酸化物含有物質の処理方法である。
【0019】第5の発明は、クロム酸化物含有物質と、
硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有す
るスラグとを混合し、該混合物に、水および/または高
炉スラグの散水冷却時に発生する高炉スラグ溶出水を散
水することを特徴とするクロム酸化物含有物質の処理方
法である。第6の発明は、クロム酸化物含有物質を、高
炉スラグの散水冷却時に発生する高炉スラグ溶出水に浸
漬することを特徴とするクロム酸化物含有物質の処理方
法である。
【0020】第7の発明は、高炉スラグの散水冷却時に
発生する高炉スラグ溶出水に、硫黄および/または酸化
数が+5価以下の硫黄を含有する物質を加え、該高炉ス
ラグ溶出水にクロム酸化物含有物質を浸漬することを特
徴とするクロム酸化物含有物質の処理方法である。第8
の発明は、クロム酸化物含有物質と、硫黄および/また
は酸化数が+5価以下の硫黄を含有する物質とを混合
し、該混合物に水蒸気を吹き込むことを特徴とするクロ
ム酸化物含有物質の処理方法である。
【0021】第9の発明は、クロム酸化物含有物質と、
硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有す
るスラグとを混合し、該混合物に水蒸気を吹き込むこと
を特徴とするクロム酸化物含有物質の処理方法である。
第10の発明は、クロム酸化物含有物質と、硫黄および/
または酸化数が+5価以下の硫黄を含有するスラグと、
硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有す
る物質とを混合し、該混合物に水蒸気を吹き込むことを
特徴とするクロム酸化物含有物質の処理方法である。
【0022】前記した第3の発明、第5の発明、第9の
発明、第10の発明においては、硫黄および/または酸化
数が+5価以下の硫黄を含有するスラグとして、未エー
ジング高炉徐冷スラグおよび/または溶銑予備処理スラ
グを用いることが好ましく、さらには、未エージング高
炉徐冷スラグを用いることがより好ましい。また、前記
した第7の発明、第8の発明、第10の発明における硫黄
および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有する物
質としては、硫黄および/または酸化数が+5価以下の
硫黄の合計含有量が10wt%以上である硫黄含有物質を用
いることが好ましい。
【0023】上記した硫黄および/または酸化数が+5
価以下の硫黄の合計含有量が10wt%以上である硫黄含有
物質としては、単体硫黄、硫黄含有温泉から精製した湯
ノ花などの単体硫黄含有物質、チオ硫酸ナトリウム、硫
化鉄、硫化水素などの+5価以下の硫黄化合物などが好
ましく例示され、これらを併用することもできる。ま
た、前記した第4の発明、第5の発明、第8の発明〜第
10の発明においては、クロム酸化物含有物質(第4の発
明)またはクロム酸化物含有物質とスラグとの混合物
(第5の発明、第9の発明)またはクロム酸化物含有物
質と硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含
有する物質との混合物(第8の発明)またはクロム酸化
物含有物質とスラグと硫黄および/または酸化数が+5
価以下の硫黄を含有する物質との混合物(第10の発明)
を、大気雰囲気中で静置し、前記した処理を行うことが
好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、第1の発明〜第
10の発明の順にさらに詳細に説明する。 〔第1の発明、第2の発明:〕第1の発明は、クロム酸
化物含有物質に、硫黄および/または酸化数が+5価以
下の硫黄の化合物を合計量で0.05重量%以上含有する水
溶液を接触せしめるクロム酸化物含有物質の処理方法で
ある。
【0025】第2の発明は、クロム酸化物含有物質に、
硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄の含有量
が合計量で0.03重量%超えである水溶液を接触せしめる
クロム酸化物含有物質の処理方法である。本発明者ら
は、試薬のCrO3を純水に溶解して、Cr6+濃度を100mg/l
とした水溶液10リットルに、冷却、破砕1週間後の所定
粒度の未エージング高炉徐冷スラグまたは6ヶ月自然エ
ージング処理後の高炉徐冷スラグ100gを添加し、6時間
震盪後、水溶液中のCr6+濃度を測定し、Cr6+の減少量を
調査した。
【0026】表1に測定結果を示す。表1においては、
高炉徐冷スラグ1kg当たりのCr6+の減少量を還元能力と
して示した。未エージング高炉徐冷スラグは、粒度にも
よるが、6ヶ月自然エージング処理後の高炉徐冷スラグ
よりも、約10〜100 倍程度のCr6+の還元能力を有するこ
とがわかる。
【0027】また、還元能力は微粉ほど高い。高炉徐冷
スラグによりCr6+を還元できる理由は、高炉徐冷スラグ
中に存在する硫黄成分が水中に溶出して、Cr6+を還元す
るためと考えられる。また、同様に試薬のCrO3を純水に
溶解して、Cr6+濃度を100mg/l とした水溶液10リットル
に、酸化数が+5価以下の還元性硫黄を0.05重量%含む
高炉スラグ溶出水100gを添加し、6時間震盪後、水溶液
中のCr6+濃度を測定し、Cr6+の減少量を調査した。
【0028】表2に測定結果を示す。表2においては、
還元能力として、高炉スラグ溶出水1kgに対するCr6+
減少量を示した。表2に示されるように、高炉スラグ溶
出水の場合も、単位重量当たり未エージング高炉徐冷ス
ラグとほぼ同等のCr6+の還元能力を有することがわか
る。
【0029】表3に、Cr6+の還元処理に用いた高炉徐冷
スラグ中のCr6+の還元処理前後の硫黄の形態別の濃度を
示す。還元処理前後の濃度を比較すると、還元後はS2-
を除き低くなっている。また、還元処理後の水溶液中の
硫黄の形態別濃度を測定した結果、その多くがSO4 2-
あった。
【0030】したがって、高炉徐冷スラグ中のS0, S2O3
2-, SO4 2- が水に溶解し、それらのうちS0, S2O3 2-がSO
4 2- に酸化する際に、Cr6+を還元するものと考えられ
る。なお、スラグが微粉なほどCr6+の還元能力が高い理
由は、微粉ほど比表面積が大きいために、S0およびS2O3
2-が水に溶解しやすいためと考えられる。本発明は、上
記の知見に基づいて完成したものである。
【0031】本発明によれば、硫黄および/または酸化
数が+5価以下の硫黄の化合物を含有する水溶液は、ク
ロム酸化物含有物質との接触により、クロムを還元して
Cr(OH)3 などの安定なクロムの形態とするため、クロム
酸化物含有物質からのクロム酸化物の溶出を抑制するこ
とができる。また、クロム酸化物含有物質からクロムイ
オンが上記水溶液中に溶出したとしても水溶液中の反応
で還元することができるため、6価クロムの流出を防止
することができる。
【0032】第1の発明においては、硫黄および/また
は酸化数が+5価以下の硫黄の化合物を含有する水溶液
の硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄の化合
物の含有量は合計量で0.05重量%以上であることが好ま
しい。これは、硫黄および/または酸化数が+5価以下
の硫黄の化合物の含有量が合計量で0.05重量%未満の場
合、クロム酸化物含有物質の還元処理に数ヶ月以上を要
し、工業上使用し難いためである。
【0033】また、第2の発明においては、硫黄および
/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有する水溶液の
硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄の含有量
は、合計量で0.03重量%超えであることが好ましい。こ
れは、硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄の
含有量が合計量で0.03重量%以下の場合、クロム酸化物
含有物質の還元処理に数ヶ月以上を要し、工業上使用し
難いためである。
【0034】なお、上記した硫黄および/または酸化数
が+5価以下の硫黄の含有量の合計量とは、全硫黄量
(Total S)量からSO4 2- 中のS分を差し引いた硫黄の
量を示す。また、前記した第1の発明、第2の発明にお
ける硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄の化
合物もしくは硫黄および/または酸化数が+5価以下の
硫黄の供給源としては、下記〜の中から選ばれる1
種以上の硫黄含有物質が好ましく例示されるが、硫黄お
よび/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有する物質
であれば特に制限を受けるものではない。
【0035】:高炉スラグの散水冷却時に発生する高
炉スラグ溶出水(:高炉スラグ溶出水) :自然エージング3カ月未満の高炉徐冷スラグ(:未
エージング高炉徐冷スラグ)、溶銑予備処理スラグなど
の硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有
するスラグ :単体硫黄、硫黄含有温泉から精製した湯ノ花などの
単体硫黄を含有する物質(:単体硫黄含有物質) :チオ硫酸ナトリウム、硫化鉄および硫化水素などの
酸化数が+5価以下の硫黄の化合物(+5価以下の硫黄
化合物)
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】〔第3の発明〜第10の発明:〕本発明者ら
は、前記した第1の発明、第2の発明に基づいて、さら
に鋭意検討した結果、下記知見を得、第3の発明〜第10
の発明に至った。 [1]:下記〜の硫黄含有物質を用いることによっ
て、クロム酸化物含有物質からのCr6+の溶出を極めて効
果的に防止することが可能であること。
【0040】;高炉スラグの散水冷却時に発生する高
炉スラグ溶出水(:高炉スラグ溶出水) ;自然エージング3カ月未満の高炉徐冷スラグ(:未
エージング高炉徐冷スラグ)、溶銑予備処理スラグなど
の硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有
するスラグ ;単体硫黄、硫黄含有温泉から精製した湯ノ花(:単
体硫黄含有物質) ;チオ硫酸ナトリウム、硫化鉄、硫化水素などの酸化
数が+5価以下の硫黄の化合物(:+5価以下の硫黄化
合物) [2]:上記した〜の硫黄含有物質を用い、下記の処
理方法(1) 〜(4) によって、クロム酸化物含有物質から
のCr6+の溶出を極めて効果的に防止することが可能であ
ること。
【0041】(1):大気雰囲気中での静置法;クロム酸
化物含有物質と、硫黄および/または酸化数が+5価以
下の硫黄を含有するスラグとを混合し、大気雰囲気中で
静置する(第3の発明)。 (2):散水法; (a) クロム酸化物含有物質に高炉スラグ溶出水を散水す
る(第4の発明)。
【0042】(b) クロム酸化物含有物質と、硫黄および
/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有するスラグと
を混合し、該混合物に、水および/または高炉スラグ溶
出水を散水する(第5の発明)。 (3):浸漬法; (a) クロム酸化物含有物質を、高炉スラグ溶出水に浸漬
する(第6の発明)。
【0043】(b) クロム酸化物含有物質を、硫黄および
/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有する物質を加
えた高炉スラグ溶出水に浸漬する(第7の発明)。 (4):水蒸気吹き込み法; (a) クロム酸化物含有物質と、硫黄および/または酸化
数が+5価以下の硫黄を含有する物質とを混合し、該混
合物に水蒸気を吹き込む(第8の発明)。
【0044】(b) クロム酸化物含有物質と、硫黄および
/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有するスラグと
を混合し、該混合物に水蒸気を吹き込む(第9の発
明)。 (c) クロム酸化物含有物質と、硫黄および/または酸化
数が+5価以下の硫黄を含有するスラグと、硫黄および
/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有する物質とを
混合し、該混合物に水蒸気を吹き込む(第10の発明)。
【0045】[3]:前記した〜の硫黄含有物質、さ
らには硫酸第一鉄などの2価の鉄を含有する物質(:2
価鉄含有物質)を組み合わせることによって、下記(1)
、(2)の効果が得られること。 (1);前記したの高炉スラグ溶出水中の還元性硫黄濃
度が濃度変動によって低い場合でも、高炉スラグ溶出水
に、硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含
有する物質を加え、該高炉スラグ溶出水にクロム酸化物
含有物質を浸漬することによって、短時間の処理でCr6+
を還元し、クロム酸化物含有物質からのCr 6+の溶出を完
全に防止することが可能であること(第7の発明)。
【0046】(2);環境庁告示46号法による溶出試験に
おいてCr6+の溶出量が多いスラグ、または気孔率が低い
スラグであっても、クロム酸化物含有物質またはクロム
酸化物含有物質および硫黄および/または酸化数が+5
価以下の硫黄を含有するスラグの両者と、硫黄および/
または酸化数が+5価以下の硫黄を含有する物質とを混
合し、該混合物に水蒸気を吹き込むことによって、上記
したスラグを、短時間かつ被処理材の体積増加を招くこ
となく処理し、クロム酸化物含有物質からのCr6+の溶出
を完全に防止することが可能であること(第8の発明、
第10の発明)。
【0047】すなわち、第3の発明〜第10の発明は、下
記の技術内容から構成される。 〔第3の発明:〕第3の発明は、クロム酸化物含有物質
と、硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含
有するスラグとを混合し、大気雰囲気中で静置するクロ
ム酸化物含有物質の処理方法である。
【0048】上記した第3の発明においては、上記した
硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有す
るスラグとして、未エージング高炉徐冷スラグおよび/
または溶銑予備処理スラグを用いることが好ましく、さ
らには、未エージング高炉徐冷スラグを用いることがよ
り好ましい。 〔第4の発明:〕第4の発明は、クロム酸化物含有物質
に、高炉スラグの散水冷却時に発生する高炉スラグ溶出
水を散水するクロム酸化物含有物質の処理方法である。 〔第5の発明:〕第5の発明は、クロム酸化物含有物質
と、硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含
有するスラグとを混合し、該混合物に、水および/また
は高炉スラグの散水冷却時に発生する高炉スラグ溶出水
を散水するクロム酸化物含有物質の処理方法である。
【0049】上記した第5の発明においては、上記した
硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有す
るスラグとして、未エージング高炉徐冷スラグおよび/
または溶銑予備処理スラグを用いることが好ましく、さ
らには、未エージング高炉徐冷スラグを用いることがよ
り好ましい。 〔第6の発明:〕第6の発明は、クロム酸化物含有物質
を、高炉スラグの散水冷却時に発生する高炉スラグ溶出
水に浸漬するクロム酸化物含有物質の処理方法である。 〔第7の発明:〕第7の発明は、高炉スラグの散水冷却
時に発生する高炉スラグ溶出水に硫黄および/または酸
化数が+5価以下の硫黄を含有する物質を加えた高炉ス
ラグ溶出水に、クロム酸化物含有物質を浸漬するクロム
酸化物含有物質の処理方法である。
【0050】上記した硫黄および/または酸化数が+5
価以下の硫黄を含有する物質としては、硫黄および/ま
たは酸化数が+5価以下の硫黄の合計含有量が10wt%以
上である硫黄含有物質を用いることが好ましい。また、
上記した硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄
の合計含有量が10wt%以上である硫黄含有物質として
は、特に制限されるものではないが、例えば、単体硫
黄、硫黄含有温泉から精製した湯ノ花(:単体硫黄含有
物質)、チオ硫酸ナトリウム、硫化鉄、硫化水素などの
酸化数が+5価以下の硫黄の化合物(:+5価以下の硫
黄化合物)を用いることが好ましく、またこれらを2種
以上併用することも可能である。
【0051】なお、上記した酸化数が+5価以下の硫黄
を含有する物質としては、好ましくは、水中に溶け込ん
でいる酸素と反応しにくい物質が適する。これは、水中
に溶け込んでいる酸素と反応し易い硫黄含有物質を用い
た場合、クロム酸化物含有物質中のCr6+を完全に還元す
る前に、水中の酸素と反応し、還元能力が無くなるため
である。
【0052】高炉スラグ溶出水中の還元性硫黄濃度は、
季節および天候により変動し、0.03重量%以下の低濃度
になる場合があり、この場合、クロム酸化物含有物質中
のCr 6+の還元処理に長時間を必要とする。このため、本
発明者らは、高炉スラグ溶出水中の還元性硫黄濃度が0.
03重量%以下の場合でも、短時間の処理でクロム酸化物
含有物質からのCr6+の溶出を完全に防止することが可能
なクロム酸化物含有物質の処理方法について、鋭意検
討、実験を重ねた。
【0053】その結果、高炉スラグの散水冷却時に発生
する高炉スラグ溶出水に、硫黄および/または酸化数が
+5価以下の硫黄を含有する物質を加え、該高炉スラグ
溶出水にクロム酸化物含有物質を浸漬することによっ
て、高炉スラグ溶出水中の還元性硫黄濃度が0.03重量%
以下の場合でも、短時間の処理でクロム酸化物含有物質
からのCr6+の溶出を完全に防止することが可能であるこ
とを新たに見出し本発明に到った。
【0054】なお、本発明において、上記した高炉スラ
グ溶出水中の還元性硫黄濃度とは、全硫黄濃度からSO4
2- 中のS分を差し引いた硫黄濃度を示す。上記した第
7の発明によれば、硫黄および/または酸化数が+5価
以下の硫黄を含有する物質を加えることによって、高炉
スラグ溶出水中の還元性硫黄濃度を調整し、クロム酸化
物含有物質中のCr6+を完全に還元できる。
【0055】第7の発明における硫黄および/または酸
化数が+5価以下の硫黄を含有する物質の添加量は、高
炉スラグ溶出水中の還元性硫黄濃度が0.03重量%超えと
なるように調整するのが好ましい。これは、高炉スラグ
溶出水中の還元性硫黄濃度が0.03重量%以下の場合、ク
ロム酸化物含有物質中のCr6+を短時間で完全に還元する
ことが困難なためである。
【0056】また、本発明においては、高炉スラグ溶出
水に硫酸第一鉄、塩化第一鉄などの2価の鉄を含有する
物質(:2価鉄含有物質)を添加することも好ましい。
これは、高炉スラグ溶出水中に2価の鉄イオンを含有せ
しめることによって、クロム酸化物含有物質中のCr6+
短時間で完全に還元することが可能となるためである。 〔第8の発明:〕第8の発明は、クロム酸化物含有物質
と、硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含
有する物質とを混合し、該混合物に水蒸気を吹き込むク
ロム酸化物含有物質の処理方法である。
【0057】本発明者らは、環境庁告示46号法による溶
出試験において10mg/l以上のCr6+が溶出するスラグ、ま
たは気孔率が約5%以下のスラグを短時間かつ被処理材
の体積増加を招くことなく、工業的に簡易で経済性に優
れた方法で処理し、これらクロム酸化物含有物質からの
Cr6+の溶出を完全に防止することが可能な処理方法につ
いて、鋭意検討、実験を重ねた。
【0058】その結果、クロム酸化物含有物質と、硫黄
および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有する物
質とを混合し、該混合物に水蒸気を吹き込むことによっ
て、上記したスラグを短時間かつ被処理材の体積増加を
招くことなく処理し、これらクロム酸化物含有物質から
のCr6+の溶出を完全に防止することが可能であることを
新たに見出し本発明に到った。
【0059】上記した第8の発明における硫黄および/
または酸化数が+5価以下の硫黄を含有する物質として
は、硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄の合
計含有量が10wt%以上である硫黄含有物質を用いること
が好ましい。これは、硫黄および/または酸化数が+5
価以下の硫黄の合計含有量が大であるほど、クロム酸化
物含有物質に対する添加率を低くすることができ、被処
理材の体積の増加を最小限にすることができ、水蒸気の
使用量が少なくてすむと共に、処理後の被処理材の運搬
が容易となるためである。
【0060】上記した硫黄および/または酸化数が+5
価以下の硫黄の合計含有量が10wt%以上である硫黄含有
物質としては、特に制限されるものではないが、例え
ば、単体硫黄、硫黄含有温泉から精製した湯ノ花(:単
体硫黄含有物質)、チオ硫酸ナトリウム、硫化鉄などの
酸化数が+5価以下の硫黄の化合物(:+5価以下の硫
黄化合物)を用いることが好ましく、またこれらを2種
以上併用することも可能である。 〔第9の発明:〕第9の発明は、クロム酸化物含有物質
と、硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含
有するスラグとを混合し、該混合物に水蒸気を吹き込む
クロム酸化物含有物質の処理方法である。
【0061】上記した第9の発明においては、上記した
硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有す
るスラグとして、未エージング高炉徐冷スラグおよび/
または溶銑予備処理スラグを用いることが好ましく、さ
らには、未エージング高炉徐冷スラグを用いることがよ
り好ましい。 〔第10の発明:〕第10の発明は、クロム酸化物含有物質
と、硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含
有するスラグと、硫黄および/または酸化数が+5価以
下の硫黄を含有する物質とを混合し、該混合物に水蒸気
を吹き込むクロム酸化物含有物質の処理方法である。
【0062】上記した第10の発明においては、上記した
硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有す
るスラグとして、未エージング高炉徐冷スラグおよび/
または溶銑予備処理スラグを用いることが好ましく、さ
らには、未エージング高炉徐冷スラグを用いることがよ
り好ましい。また、上記した第10の発明における硫黄お
よび/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有する物質
としては、硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫
黄の合計含有量が10wt%以上である硫黄含有物質を用い
ることが好ましい。
【0063】これは、硫黄および/または酸化数が+5
価以下の硫黄の合計含有量が大であるほど、クロム酸化
物含有物質に対する添加率を低くすることができ、被処
理材の体積の増加を最小限にすることができ、水蒸気の
使用量が少なくてすむと共に、処理後の被処理材の運搬
が容易となるためである。上記した硫黄および/または
酸化数が+5価以下の硫黄の合計含有量が10wt%以上で
ある硫黄含有物質としては、特に制限されるものではな
いが、例えば、単体硫黄、硫黄含有温泉から精製した湯
ノ花(:単体硫黄含有物質)、チオ硫酸ナトリウム、硫
化鉄などの酸化数が+5価以下の硫黄の化合物(:+5
価以下の硫黄化合物)を用いることが好ましく、またこ
れらを2種以上併用することも可能である。
【0064】第10の発明によれば、水蒸気を吹き込むこ
とによって、クロム酸化物含有物質中のCr6+が溶出し易
い、すなわち還元し易い状態となり、さらに、高炉徐冷
スラグなどの硫黄および/または酸化数が+5価以下の
硫黄を含有するスラグと、硫黄および/または酸化数が
+5価以下の硫黄を含有する物質から硫黄、+5価以下
の硫黄が溶け出し、硫黄、+5価以下の硫黄が酸化する
ことにより、クロム酸化物含有物質中のCr6+をCr3+に還
元する。
【0065】すなわち、本発明によれば、硫黄および/
または酸化数が+5価以下の硫黄を含有するスラグと、
硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有す
る物質を組み合わせることにより、従来よりも短時間、
かつ、少量のスラグの添加で処理が可能となる。第10の
発明における還元機構は、下記の通りである。
【0066】気孔率5%以下、粒度が40mm以下のクロム
酸化物含有物質に水蒸気を吹き込み、クロム酸化物含有
物質中のCr6+の50%を溶出し易い状態にするためには約
1日、80%を溶出し易い状態にするためには約2日、10
0 %を溶出し易い状態にするためには約3日を要する。
一方、未エージング高炉徐冷スラグに水蒸気を吹き込む
場合、未エージング高炉徐冷スラグ中の+5価以下の硫
黄が溶解する量は、時間に比例し、全量が溶解するのに
ほぼ10日を要する。
【0067】一方、単体硫黄は、ほぼ3日で溶解する。
したがって、未エージング高炉徐冷スラグのみを添加し
た場合、約3日でクロム酸化物含有物質中のCr6+の100
%が溶出し易い、すなわち還元し易い状態になっている
にもかかわらず、高炉徐冷スラグから+5価以下の硫黄
が溶け出す速度が律速になり、3日以上の処理が必要で
あった。
【0068】もちろん、未エージング高炉徐冷スラグを
過剰に添加すれば、3日で処理が可能であるが、被処理
材の体積が増加し、水蒸気所要量の増加、処理後の被処
理材の運搬上の問題が生じる。一方、硫黄および/また
は酸化数が+5価以下の硫黄を含有する物質として、例
えば単体硫黄のみを添加した場合、単体硫黄は約3日で
溶解するため、単体硫黄がCr6+を還元する持続効果も約
3日である。
【0069】一方、気孔率5%以下のクロム酸化物含有
物質において、水蒸気を吹き込むこむことにより、クロ
ム酸化物含有物質中のCr6+の100 %を溶出し易い状態、
すなわち還元し易い状態にするのに約3日を要すること
から、クロム酸化物含有物質中のCr6+を完全に還元する
前に、単体硫黄のCr6+還元効果がなくなり、完全にCr 6+
を還元できない場合があった。
【0070】このため、未エージング高炉徐冷スラグと
硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有す
る物質を組み合わせ、水蒸気を吹き込んだ結果、クロム
酸化物含有物質中のCr6+を、被処理材の体積を大幅に増
加することなく短時間で完全に還元することが可能にな
った。すなわち、水蒸気吹き込みの1〜2日の初期は主
に単体硫黄、湯の花などの硫黄および/または酸化数が
+5価以下の硫黄を含有する物質により、2〜3日の末
期は主に未エージング高炉徐冷スラグなどの硫黄および
/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有するスラグに
よりクロム酸化物含有物質中のCr6+を還元するものであ
る。
【0071】以下、前記した第3の発明〜第10の発明に
おけるI.硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫
黄を含有するスラグ、高炉スラグ溶出水の好ましい条
件、II. 硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄
を含有するスラグの添加量、高炉スラグ溶出水の散水
量、高炉スラグ溶出水の還元性硫黄濃度、III.処理方法
について述べる。 〔I.硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を
含有するスラグ、高炉スラグ溶出水の好ましい条件:〕
本発明においては、前記した硫黄および/または酸化数
が+5価以下の硫黄を含有するスラグとして、未エージ
ング高炉徐冷スラグおよび/または溶銑予備処理スラグ
を用いることが好ましく、さらには、未エージング高炉
徐冷スラグを用いることがより好ましい。 (未エージング高炉徐冷スラグ;)本発明において用い
る未エージング高炉徐冷スラグとは、黄濁水を発生する
スラグ、すなわち、JIS A 5015付属書1の呈色判定試験
方法により、呈色があるスラグのことであり、概ね、自
然エージング3ヶ月未満の高炉徐冷スラグである。
【0072】さらには、冷却、破砕直後、すなわち破砕
後1週間以内の高炉徐冷スラグである未エージング高炉
徐冷スラグを用いることが、より好ましい。未エージン
グ高炉徐冷スラグの粒度は、特に限定しないが、微粉で
あるほど好ましい。これは、前記したように、微粉ほど
クロム酸化物の還元能力が高いためである。
【0073】さらには、還元処理後の有効利用の用途に
適した粒度の未エージング高炉徐冷スラグを用いること
が好ましい。例えば、ステンレス鋼スラグを還元処理
後、路盤材として有効利用する場合、還元剤として微粉
の未エージング高炉徐冷スラグを使用しすぎると、路盤
材としてJISA 5015 で規定されている粒度分布の規格を
満たさなくなる。
【0074】すなわち、この場合、路盤材の粒度分布規
格に適した粒度の未エージング高炉徐冷スラグを用いる
ことが好ましい。 (溶銑予備処理スラグ;)本発明において用いる溶銑予
備処理スラグは、高炉において溶銑の脱硫、脱燐を行う
際に得られるスラグである。 (高炉スラグ溶出水;)本発明において用いる高炉スラ
グ溶出水としては、例えば、未エージング高炉徐冷スラ
グに水を散水して生じた溶出水、例えば高炉から排出さ
れた高温状態の高炉スラグに水を散水して生じた溶出水
が好ましい。
【0075】また、本発明における高炉スラグ溶出水と
しては、概ね自然エージング3個月未満の高炉徐冷スラ
グに水を散水して生じた溶出水を用いることが好まし
く、例えば、高温状態の高炉スラグに水を散水して生じ
た溶出水が適する。高炉スラグ溶出水を用いる場合の高
炉スラグ溶出水中の硫黄および/または酸化数が+5価
以下の硫黄の化合物の濃度は、合計量で0.05重量%以上
であることが好ましい。
【0076】また、高炉スラグ溶出水を用いる場合の高
炉スラグ溶出水中の硫黄および/または酸化数が+5価
以下の硫黄の含有量は合計量で0.03重量%超えであるこ
とが好ましい。これは、前記したように、硫黄および/
または酸化数が+5価以下の硫黄化合物を0.05重量%未
満しか含まないような溶出水、または硫黄および/また
は酸化数が+5価以下の硫黄の含有量が0.03重量%以下
の溶出水では、クロム酸化物含有物質の還元処理に数ヶ
月以上を要し、工業上、使用し難いためである。 〔II. 硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を
含有するスラグの添加量、高炉スラグ溶出水の散水量、
高炉スラグ溶出水の還元性硫黄濃度:〕硫黄および/ま
たは酸化数が+5価以下の硫黄を含有するスラグの添加
量、高炉スラグ溶出水の散水量、高炉スラグ溶出水へ浸
漬時の高炉スラグ溶出水の還元性硫黄濃度は、特に制限
されるものではないが、下記で示される量および濃度で
あることが好ましい。
【0077】[1] :前記第3の発明(大気雰囲気中での
静置法)、第4の発明、第5の発明(散水法)、第8の
発明〜第10の発明(水蒸気吹き込み法)の場合;これら
の場合は、いずれも、未エージング高炉徐冷スラグなど
の硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有
するスラグの添加量(以下スラグの添加量とも記す)、
高炉スラグ溶出水の散水量、単体硫黄含有物質、+5価
以下の硫黄化合物などの硫黄および/または酸化数が+
5価以下の硫黄を含有する物質の添加量は、下記式(1)
を満足することが好ましく、さらには下記式(2) を満足
することがより好ましい。
【0078】 10≧A≧0.1 ………………………………(1) 10≧A≧0.2 ………………………………(2) なお、上記式(1) 、(2) 中のAは下記内容を示す。 A=〔混合するスラグの添加量(重量部)〕×10+〔散水する高炉スラグ溶出 水の量(重量部)〕+〔硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有す る物質の添加量(重量部)〕×500 ………(3) なお、上記式(3) 中の重量部はいずれも、クロム酸化物
含有物質1重量部当たりかつクロム酸化物含有物質中の
Cr6+溶出量1mg/l当たりの重量部であり、クロム酸化物
含有物質の量、クロム酸化物含有物質中のCr6+溶出量の
それぞれに比例した量を使用すればよい。
【0079】上記式(1) において、Aが0.1 未満の場合
はクロム酸化物含有物質からのCr6+の溶出防止効果が低
く、逆にAが10超えの場合は溶出防止効果が飽和し経済
的でない。クロム酸化物含有物質と未エージング高炉徐
冷スラグなどとの混合物に水を散水する場合の散水量
は、特に限定しないが、クロム酸化物含有物質が飽水状
態になるように散水することが好ましい。
【0080】これは、未エージング高炉徐冷スラグなど
によるクロム酸化物の還元は、未エージング高炉徐冷ス
ラグなどから溶出した硫黄、酸化数が+5価以下の硫黄
が、クロム酸化物含有物質中、あるいはクロム酸化物含
有物質から水中に溶出したCr 6+を還元することにより生
じるためである。 [2] :前記第6の発明、第7の発明(浸漬法)の場合;
高炉スラグ溶出水へ浸漬時の高炉スラグ溶出水の還元性
硫黄濃度は、0.03重量%超えであることが好ましい。
【0081】これは、高炉スラグ溶出水中の還元性硫黄
濃度が0.03重量%以下の場合、クロム酸化物含有物質中
のCr6+を短時間で完全に還元することが困難なためであ
る。なお、本発明において、上記した高炉スラグ溶出水
中の還元性硫黄濃度とは、全硫黄濃度からSO4 2- 中のS
分を差し引いた硫黄濃度を示す。 〔III. 処理方法:〕前記した第3の発明においては、
クロム酸化物含有物質と未エージング高炉徐冷スラグな
ど硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含有
するスラグとを混合し、大気雰囲気中で静置する。
【0082】これは、大気雰囲気中で静置することによ
って、上記した混合物の内部の水分が5wt%以上とな
り、Cr6+の還元反応が進むためである。また、前記した
第4の発明、第5の発明、第8の発明〜第10の発明にお
いても、クロム酸化物含有物質、またはクロム酸化物含
有物質と硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄
を含有するスラグ、またはさらに加えて硫黄および/ま
たは酸化数が+5価以下の硫黄を含有する物質との混合
物を大気雰囲気中で静置し、前記した処理を行うことが
好ましい。
【0083】これは、大気雰囲気中で静置する方法が最
も安価であるためである。大気雰囲気中で静置する方法
としては、排水処理設備を有するヤードで山積みする方
法が好ましく用いられる。山の大きさは、数m3 から数
万m3 程度の任意の大きさでよい。山積みの際は、高く
積まないほうが好ましい。これは、高く積んだ場合、山
の表面積が小さくなり、散水、降雨などによる水が山全
体に広がりにくくなり、その結果、還元処理に時間を要
するからである。
【0084】前記した第8の発明〜第10の発明におい
て、クロム酸化物含有物質と、硫黄および/または酸化
数が+5価以下の硫黄を含有する物質、硫黄および/ま
たは酸化数が+5価以下の硫黄を含有するスラグとの混
合物に水蒸気を吹き込む際の方式は、堆積した混合物
の表層に水蒸気を吹き付ける方式、堆積した混合物の
内部に水蒸気を吹き込む方式、堆積した混合物の下部
から水蒸気を吹き込む方式のいずれを用いてもよい。
【0085】なお、上記した混合物に吹き込む水蒸気の
温度は特に限定されるものではない。これは、大気中で
水蒸気を吹き込む場合、水蒸気の温度は通常100 ℃であ
るが、山積みしたスラグの内部に高圧力の水蒸気を吹き
込む場合、内部が高圧となることから、水の沸点が100
℃よりも高くなり、水蒸気の温度も圧力に応じて高くな
るためである。
【0086】本発明における水蒸気を吹き込む方法とし
ては、水蒸気を単独で吹き込む方法に限定されず、空
気、N2などの他のガスを含有する水蒸気を吹き込んでも
よい。なお、以上述べた第1の発明〜第10の発明におい
ては、高炉スラグ溶出水、未エージング高炉徐冷ス
ラグなどの硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫
黄を含有するスラグ、単体硫黄含有物質、+5価以
下の硫黄化合物に加えてクロム酸化物を還元する作用の
ある前記した2価鉄含有物質、活性炭などの他の還元剤
を併用することも可能である。
【0087】また、本発明を、ステンレス鋼スラグ、ク
ロム鉱滓、産業廃棄物溶融スラグ、下水汚泥、下水汚泥
溶融スラグなどのスラグだけでなく、Cr6+を溶出する可
能性のある他の物質に適用することにより、これらの物
質からのCr6+の溶出を防止することが可能である。
【0088】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的
に説明する。なお、本実施例におけるCr6+溶出量は、環
境庁告示46号法による溶出試験方法に基づいて測定し
た。 (実施例1)〔第1の発明〜第6の発明、第9の発明〕 クロム酸化物含有物質として、ステンレス鋼スラグ、重
クロム酸ナトリウム製造の際に発生したクロム鉱滓、下
水汚泥を用いた。
【0089】なお、ステンレス鋼スラグは、精錬の途中
の還元処理工程中に抜き取ったサンプルである。また、
硫黄含有物質として、未エージング高炉徐冷スラグ、6
ケ月自然エージング処理後の高炉徐冷スラグ、高炉スラ
グ溶出水を用いた。未エージング高炉徐冷スラグは、冷
却、破砕後、1週間以内の試料を用いた。
【0090】また、高炉スラグ溶出水としては、高温状
態の高炉スラグに水を散水して生じた溶出水を用いた。
溶出水中の+5価以下の還元性硫黄濃度は0.05wt%であ
った。表4に、実験に供した未エージング高炉徐冷スラ
グ、ステンレス鋼スラグ、クロム鉱滓、下水汚泥の化学
組成とCr6+溶出量を示す。
【0091】表4に示すように、Cr6+の溶出量は、ステ
ンレス鋼スラグが1.0mg/l 、クロム鉱滓が9.7mg/l 、下
水汚泥が0.80mg/lであった。上記したクロム酸化物含有
物質(:還元処理対象材)を、表5に示す条件下で処理
を施した。なお、表5における未エージング高炉徐冷ス
ラグの添加率 (wt%) は、処理対象物質100 重量%に対
する重量%である。
【0092】表5に、得られた結果を実験条件と併せて
示す。なお、還元処理対象材と未エージング高炉徐冷ス
ラグの混合は、均一になるようにした。大気雰囲気中で
静置した際の山の大きさは、約100tで、高さが2mにな
るようにした。
【0093】比較例1〜4に示すように、未エージング
高炉徐冷スラグを添加せずに、大気雰囲気中で静置処
理、または100 ℃水蒸気の吹き込み処理を行っても、Cr
6+の溶出量は、環境基準値である0.05mg/l以下にはなら
ず、これは還元剤がないためである。また、比較例5に
示すように、6ヶ月自然エージング処理後の高炉徐冷ス
ラグを添加し、大気雰囲気中で静置処理しても、Cr6+
溶出量は0.05mg/l以下にはならなかった。
【0094】比較例6は、ステンレス鋼スラグを大気雰
囲気中で静置し、ステンレス鋼スラグと同量の水道水を
散水したものであるが、処理前後でCr6+溶出量にほとん
ど変化は見られなかった。一方、実施例1〜16に示すよ
うに、[1] 未エージング高炉徐冷スラグを混合し、大気
雰囲気中で静置処理(実施例1〜4、10、14)、[2] 未
エージング高炉徐冷スラグを混合し、大気雰囲気中で静
置している際に、高炉スラグ溶出水、水のいずれか一方
または双方を散水する(実施例7、8、9、12、16)、
[3] 高炉スラグ溶出水中に浸漬処理(実施例6、11、1
5)、[4] 未エージング高炉徐冷スラグを混合し、高温
度の水蒸気を吹き込み処理(実施例5、13)することに
より、Cr6+の溶出量は0.05mg/l未満となり、環境基準を
満たした。
【0095】また、実施例17に示すように、ステンレス
鋼スラグと同量の高炉スラグ溶出水を散水した例では、
Cr6+の溶出量を環境基準を満たすまで低減できる。な
お、上記した実施例のステンレス鋼スラグ、クロム鉱
滓、下水汚泥は、上記した本発明による還元処理後、大
気雰囲気中で1年間放置しても6価クロムの溶出は認め
られなかった。
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
【表6】
【0099】(実施例2)〔第8の発明、第10の発明〕 クロム酸化物含有物質として、ステンレス鋼スラグ、重
クロム酸ナトリウム製造の際に発生したクロム鉱滓、下
水汚泥溶融スラグ、ステンレス鋼スラグ付着耐火物屑を
用いた。表6に、実験に供した上記クロム酸化物含有物
質の化学組成、気孔率、Cr6+溶出量を示す。
【0100】表6に示すように、Cr6+の溶出量は、ステ
ンレス鋼スラグ−Aが6.50mg/l、ステンレス鋼スラグ−
Bが32.7mg/l、ステンレス鋼スラグ−Cが13.2mg/l、ク
ロム鉱滓が25.3mg/l、下水汚泥溶融スラグが0.8mg/l 、
ステンレス鋼スラグ付着耐火物屑が0.12mg/lであった。
気孔率は、ステンレス鋼スラグ−Aが18%、ステンレス
鋼スラグ−Bが25%、ステンレス鋼スラグ−Cが4%、
クロム鉱滓が10%、下水汚泥溶融スラグが8%であっ
た。
【0101】なお、ステンレス鋼スラグは、通常、転炉
において還元処理後に排滓するが、本発明の実験用に還
元せずに排滓した。また、硫黄含有物質としては、未エ
ージング高炉徐冷スラグ、硫黄(:単体硫黄)、湯ノ花
を用いた。未エージング高炉徐冷スラグは、冷却、破砕
後、1週間以内の試料を用いた。
【0102】前記した還元処理対象スラグを、表7に示
す実験条件下で、水蒸気吹き込み法による処理を施し
た。表7に、得られた実験結果を実験条件と併せて示
す。表7の比較例8に示すように、ステンレス鋼スラグ
−Aは、未エージング高炉徐冷スラグを10%添加し、水
蒸気吹き込みを2日行った場合、Cr6+の溶出を防止する
ことができるが、水蒸気吹き込み2日では溶出量を0.05
mg/l以下にすることができない。
【0103】また、比較例9に示すように、ステンレス
鋼スラグ−Bは、未エージング高炉徐冷スラグを10%添
加し、水蒸気吹き込みを3日行った場合、Cr6+の溶出を
防止することができるが、水蒸気吹き込み3日では溶出
量を0.05mg/l以下にすることができない。しかし、本発
明例18〜26に示すように、高濃度の硫黄含有物質を用い
ることにより、少量の添加で、かつ3日以内の水蒸気吹
き込みにより、溶出量を0.05mg/l以下とすることができ
た。
【0104】また、比較例10に示すように、ステンレス
鋼スラグ−Cは、未エージング高炉徐冷スラグを20%添
加し、水蒸気吹き込みを3日行った場合、Cr6+の溶出を
防止することができるが、水蒸気吹き込み3日では溶出
量を0.05mg/l以下にすることができないが、本発明例25
に示すように、未エージング高炉徐冷スラグを5%と硫
黄を1%添加することにより、3日間の水蒸気吹き込み
で溶出量を0.05mg/l以下とすることができた。
【0105】
【表7】
【0106】
【表8】
【0107】
【表9】
【0108】(実施例3)〔第7の発明〕 前記した実施例2で用いたと同じクロム酸化物含有物質
を用いて、表8に示す実験条件下で浸漬法による処理を
施した。硫黄含有物質としては、高炉スラグ溶出水、硫
黄(:単体硫黄)、湯ノ花、硫化水素、チオ硫酸ナトリ
ウムを用い、2価鉄含有物質として硫酸第一鉄を用い
た。
【0109】表8に、得られた実験結果を実験条件と併
せて示す。表8の比較例12〜15に示すように、還元性硫
黄濃度:0.03重量%の高炉スラグ溶出水に、処理対象物
質を3〜5日浸漬した場合、Cr6+の溶出を防止すること
ができるが、溶出量を0.05mg/l以下にすることができな
い。しかし、本発明例27〜31に示すように、単体硫黄含
有物質、酸化数が+5価以下の硫黄を含有する化合
物(:+5価以下の硫黄化合物)、すなわち硫黄(:単
体硫黄)、湯ノ花、チオ硫酸ナトリウム、硫化水素を高
炉スラグ溶出水に添加または吹き込み、還元性硫黄濃度
を調整した高炉スラグ溶出水中に、処理対象物質を浸漬
することによって、浸漬5日以内で、溶出量を0.05mg/l
以下にすることができた。
【0110】また、本発明例32に示すように、硫酸第一
鉄を添加した高炉スラグ溶出水中に、処理対象物質を浸
漬することによって、浸漬3日で、溶出量を0.05mg/l以
下にすることができた。
【0111】
【表10】
【0112】
【表11】
【0113】
【発明の効果】本発明によれば、ステンレス鋼スラグ、
クロム鉱滓、産業廃棄物溶融スラグ、下水汚泥、下水汚
泥溶融スラグなどのクロム酸化物含有物質を、工業的に
簡易で経済性に優れた方法で処理し、これらクロム酸化
物含有物質からのCr6+の溶出を完全に防止することが可
能となった。
【0114】さらに、本発明によれば、クロム酸化物含
有物質を、短時間かつ被処理材の体積を極力増やさない
処理方法で処理し、上記した優れた効果を得ることが可
能となった。この結果、クロム酸化物含有物質の路盤
材、仮設材、土木埋立材などへの再利用を容易に行うこ
とが可能となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 熊谷 正人 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内 (72)発明者 岸本 康夫 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社千葉製鉄所内 (72)発明者 櫻谷 敏和 東京都千代田区内幸町2丁目2番3号 川 崎製鉄株式会社内 (72)発明者 佐藤 幸男 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川鉄鉱 業株式会社千葉製造所内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロム酸化物含有物質に、硫黄および/
    または酸化数が+5価以下の硫黄の化合物を合計量で0.
    05重量%以上含有する水溶液を接触せしめることを特徴
    とするクロム酸化物含有物質の処理方法。
  2. 【請求項2】 クロム酸化物含有物質に、硫黄および/
    または酸化数が+5価以下の硫黄の含有量が合計量で0.
    03重量%超えである水溶液を接触せしめることを特徴と
    するクロム酸化物含有物質の処理方法。
  3. 【請求項3】 クロム酸化物含有物質と、硫黄および/
    または酸化数が+5価以下の硫黄を含有するスラグとを
    混合し、大気雰囲気中で静置することを特徴とするクロ
    ム酸化物含有物質の処理方法。
  4. 【請求項4】 クロム酸化物含有物質に、高炉スラグの
    散水冷却時に発生する高炉スラグ溶出水を散水すること
    を特徴とするクロム酸化物含有物質の処理方法。
  5. 【請求項5】 クロム酸化物含有物質と、硫黄および/
    または酸化数が+5価以下の硫黄を含有するスラグとを
    混合し、該混合物に、水および/または高炉スラグの散
    水冷却時に発生する高炉スラグ溶出水を散水することを
    特徴とするクロム酸化物含有物質の処理方法。
  6. 【請求項6】 クロム酸化物含有物質を、高炉スラグの
    散水冷却時に発生する高炉スラグ溶出水に浸漬すること
    を特徴とするクロム酸化物含有物質の処理方法。
  7. 【請求項7】 高炉スラグの散水冷却時に発生する高炉
    スラグ溶出水に、硫黄および/または酸化数が+5価以
    下の硫黄を含有する物質を加え、該高炉スラグ溶出水に
    クロム酸化物含有物質を浸漬することを特徴とするクロ
    ム酸化物含有物質の処理方法。
  8. 【請求項8】 クロム酸化物含有物質と、硫黄および/
    または酸化数が+5価以下の硫黄を含有する物質とを混
    合し、該混合物に水蒸気を吹き込むことを特徴とするク
    ロム酸化物含有物質の処理方法。
  9. 【請求項9】 クロム酸化物含有物質と、硫黄および/
    または酸化数が+5価以下の硫黄を含有するスラグとを
    混合し、該混合物に水蒸気を吹き込むことを特徴とする
    クロム酸化物含有物質の処理方法。
  10. 【請求項10】 クロム酸化物含有物質と、硫黄および
    /または酸化数が+5価以下の硫黄を含有するスラグ
    と、硫黄および/または酸化数が+5価以下の硫黄を含
    有する物質とを混合し、該混合物に水蒸気を吹き込むこ
    とを特徴とするクロム酸化物含有物質の処理方法。
  11. 【請求項11】 前記した硫黄および/または酸化数が
    +5価以下の硫黄を含有するスラグとして、未エージン
    グ高炉徐冷スラグを用いることを特徴とする請求項3、
    5、9、10いずれかに記載のクロム酸化物含有物質の処
    理方法。
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