JP2015231972A - 容器入り歯磨組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】油性薬効成分の容器への吸着を有効に防止しつつ、良好な香味をもたらすことのできる容器入り歯磨組成物に関する。【解決手段】次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):(A)オリザノール、トコフェロール、トリクロサン、及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる1種又は2種以上の油性薬効成分 0.01質量%以上0.5質量%以下(B)トリアシルグリセロール 0.05質量%以上3質量%以下(C)ノニオン性界面活性剤 0.05質量%以上1.5質量%以下(D)水(E)香料成分 0.2質量%以上2質量%以下を含有し、各成分の含有量の質量比が特定の値である、ポリエチレン製の最内層を備えた容器に収容されている容器入り歯磨組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、容器入り歯磨組成物に関する。
従来より、歯磨組成物には、使用時に所望の薬効を発揮させることを目的として、種々の油性薬効成分が用いられている。こうした油性薬効成分の多くは、組成物中における溶解性や安定性に課題がある上、使用感も損なわれるおそれがあるため、これらを改善すべく多くの研究がなされている。
例えば、特許文献1には、水難溶性の油状有効成分(a−1)と、油性基剤(a−2)とを含有し、かつ特定のリン酸水素カルシウムを配合してなる口腔用組成物が開示されており、油性成分を多く含有することによるべたつきの発生等の使用感低下を抑制し、外観安定性の向上を図っている。また、特許文献2には、特定の水溶性有効成分、界面活性剤、非テルペンカットペパーミント油、及び植物油等の油溶成分を含有する歯磨組成物が開示されており、有効成分による優れた薬効を発揮しつつ、高い保存安定性や使用感をもたらしている。さらに、特許文献3には、(A)水難溶性有効成分と(B)油性成分とを特定の割合で含有し、かつショ糖脂肪酸エステルとアニオン界面活性剤を特定の含有量とする歯磨組成物が開示されており、水難溶性有効成分による薬効を発揮しつつ、良好な保存安定性を付与している。
一方、歯磨組成物は、通常吐出口が形成されたチューブ状の容器に格納されており、使用時にかかる容器の本体を押圧することで、内容物の歯磨組成物を吐出口から取り出すことができる。こうした歯磨組成物に油性薬効成分が含まれる場合、かかる油性薬効成分によっては、容器に付着して吐出した組成物中における濃度が低下するおそれがあるため、これを有効に防止することが望まれる。
特開2011−144160号公報 特開2007−45786号公報 特開2005−289917号公報
しかしながら、特許文献1〜2に記載のように、炭化水素油や高級アルコール等の油性成分を用いると、その量によっては香味が損なわれるおそれがあり、さらに良好な安定性を確保するには、有効成分と香料との量的関係についても検討を要する。また、特許文献3では、有効成分と香料との量的関係のみならず、用いる界面活性剤の量についても改善の余地があり、依然として組成物の安定性や香味に課題がある。そして、上記いずれの特許文献においても、有効成分の容器への吸着を十分に抑制できる組成物を得るには至っていない。
したがって、本発明は、油性薬効成分の容器への吸着を有効に防止しつつ、良好な香味をもたらすことのできる容器入り歯磨組成物に関する。
そこで本発明者らは、特定の油性薬効成分を、特定の油性成分であるトリアシルグリセロール、ノニオン性界面活性剤、水及び香料とともに、各々特定の含有量及び質量比で併用することにより、油性薬効成分の容器への吸着を効果的に抑制しつつ、良好な香味をもたらすことのできる容器入り歯磨組成物が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)オリザノール、トコフェロール、トリクロサン、及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる1種又は2種以上の油性薬効成分 0.01質量%以上0.5質量%以下
(B)トリアシルグリセロール 0.05質量%以上3質量%以下
(C)ノニオン性界面活性剤 0.05質量%以上1.5質量%以下
(D)水
(E)香料成分 0.1質量%以上2質量%以下
を含有し、成分(B)と成分(A)の含有量の質量比((B)/(A))が1以上20以下であり、成分(C)と成分(A)の含有量の質量比((C)/(A))が0.2以上20以下であり、かつ成分(E)と成分(A)の含有量の質量比((E)/(A))が1以上20以下である、ポリエチレン製の最内層を備えた容器に収容されている容器入り歯磨組成物に関する。
また、本発明は、成分(A)、(B)及び(E)を含む油溶性成分を15℃〜40℃の温度で混合して油相1を得る工程(1)、
成分(D)を含む水溶性成分を混合して水相1を得る工程(2)、並びに
油相1と水相1とを15℃〜40℃の温度で混合する工程(3)
を備え、工程(2)以外の工程において、40℃を超え100℃以下の加熱工程を含まない請求項1に記載の容器入り歯磨組成物の製造方法に関する。
本発明の容器入り歯磨組成物によれば、油性薬効成分がポリエチレン製の最内層を備えた容器へ吸着するのを有効に防止し、保存後の組成物中の油溶性薬効成分の含有量が減少するのを抑制できるとともに、優れた香味をも兼ね備え、良好な使用感を確保することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の容器入り歯磨組成物は、ポリエチレン製の最内層を備えた容器に収容されており、オリザノール、トコフェロール、トリクロサン、及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる1種又は2種以上の油性薬効成分(A)を0.1質量%以上0.5質量%以下含有する。通常、かかる成分(A)の油性薬効成分を含有する歯磨組成物は、最内層がポリエチレン製である容器に格納すると、保存後の成分(A)の含有量が減少するおそれがある。例えば、最内層近傍に存在する組成物である場合や、厚いポリエチレン層を備える容器に格納された場合に、成分(A)の含有量の減少傾向が著しい。これは、成分(A)はポリエチレンと親和性が高く、容器の最内層又は肩部に吸着しやすいため、組成物中における成分(A)の濃度の低下を招くことに因るものと考えられる。
本発明の容器入り歯磨組成物は、こうした成分(A)の容器への吸着を効果的に抑制し、保存後の成分(A)の濃度の低下を有効に防止することができる。
成分(A)のオリザノールは、米糠油及び米胚芽油特有に存在する生理活性物質でγ−オリザノールとも称され、植物性ステロールのフェルラ酸(3−メトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸)エステルの総称である。ここで、植物性ステロールとしては、トリテルペンアルコールや、トリテルペンアルコール以外の植物性ステロール、例えば、α−シトステロール、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、α−シトスタノール、β−シトスタノール、スチグマスタノール、カンペスタノール、ブラシカステロール、フコステロール、イソフコステロール、スピナステロール、アベナステロール等が挙げられる。γ−オリザノールは、単一化合物として用いてもよく、混合物として用いてもよい。なかでも、成分(A)のオリザノールとしては、良好な香味をもたらす観点から、シクロアルテノ−ルフェルラ酸エステル、24−メチレンシクロアルタノールフェルラ酸エステル、シクロブラノールフェルラ酸エステル、シクロサドールフェルラ酸エステル、β−シトステロールフェルラ酸エステル、スチグマステロールフェルラ酸エステル及びカンペステロールフェルラ酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を含有するものが好ましく、少なくともシクロアルテノ−ルフェルラ酸エステルを含有するものがより好ましい。
成分(A)のトコフェロールとしては、酢酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールが挙げられる。
成分(A)のトリクロサンは、広範囲な抗菌スペクトルをもつハロゲン化ジフェニルエーテル型の殺菌剤であり、化学名は2',4,4'−トリクロロ−2−ヒドロキシジフェニルエーテルであって、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社からイルガケアMPの商品名で販売されている。
成分(A)のイソプロピルメチルフェノールは、1−ヒドロキシ−4−イソプロピル−3−メチルフェノールであり、例えば、商品名ビオゾームとして大阪化成株式会社から販売されている。
イソプロピルメチルフェノールは、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、シメン
−5−オールとも称される。
なかでも成分(A)として、広範囲にわたる薬効を得つつ効果的に容器への吸着性を抑制し得る観点から、少なくともオリザノールを含むのが好ましい。
成分(A)の含有量は、かかる成分による薬効効果を十分に得る観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、0.01質量%以上であって、好ましくは0.02質量%以上である。成分(A)の含有量は、後述する成分とも相まって成分(A)の容器への吸着を有効に防止しつつ、良好な香味を兼ね備える観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、0.5質量%以下であって、好ましくは0.3質量%以下である。また、成分(A)の含有量は、本発明の容器入り歯磨組成物中に、0.01質量%以上0.5質量%以下であって、好ましくは0.02〜0.3質量%である。
本発明の容器入り歯磨組成物は、トリアシルグリセロール(B)を0.05質量%以上3質量%以下含有する。かかる成分(B)を併用することにより、香味が損なわれるのを効果的に抑制しつつ、成分(A)の容器への吸着を有効に防止し、組成物としての適度な保形性や容器からの良好な吐出性を確保することができる。
成分(B)のトリアシルグリセロールとしては、例えば、シア脂、オリーブ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、及びキョウニン油等の植物油、並びにトリグリセリンと脂肪酸を用いて工業的に製造した合成トリアシルグリセロールから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。成分(B)のトリアシルグリセロールの構成脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよく、またこれらが混在していてもよく、少なくとも構成脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリアシルグリセロール(B1)を含むのが好ましく、成分(A)の口腔内粘膜への吸着性の観点から、不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸が混在しているものが好ましい。
成分(B)のトリアシルグリセロールの構成脂肪酸の炭素数は、成分(A)の容器への吸着防止効果と良好な香味を兼ね備える観点から、好ましくは炭素数6〜24であり、より好ましくは炭素数12〜20である。
また、成分(B1)の構成脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリアシルグリセロールの含有量は、成分(A)の容器への吸着防止効果をより高める観点から、成分(B)中に、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%であり、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは92質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以下である。また、成分(B1)の含有量は、成分(B)中に、好ましくは20〜95質量%であり、より好ましくは30〜92質量%であり、さらに好ましくは40〜90質量%である。
成分(B)は、成分(A)の容器への吸着を有効に防止する観点、及び良好な香味を保持する観点から、好ましくは、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸から選ばれる脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールの含有量が、成分(B)中に95質量%以上であり、より好ましくは、オレイン酸、及びリノール酸から選ばれる不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロール成分(B1)と、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸から選ばれる脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールとの合計含有量が、成分(B)中に95質量%以上である。オレイン酸、及びリノール酸から選ばれる不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールの含有量は、成分(A)の容器への吸着防止効果と良好な香味とをバランスよく発揮する観点から、成分(B1)中に、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。また、オレイン酸、及びリノール酸から選ばれる不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールの含有量は、成分(B1)中に、好ましくは80〜100質量%であり、より好ましくは90〜100質量%であり、さらに好ましくは95〜100質量%である。具体的には、成分(B)としては、成分(A)の容器への吸着を有効に防止する観点から、シア脂及びオリーブ油から選ばれる1種又は2種が好ましい。
成分(B)の含有量は、成分(A)の容器への吸着を有効に防止する観点、及び組成物の良好な保存安定性を保持する観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、0.05質量%以上であって、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上である。成分(B)の含有量は、良好な保存安定性及び香味を確保する観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、3質量%以下であって、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。また、成分(B)の含有量は、本発明の容器入り歯磨組成物中に、0.05質量%以上3質量%以下であって、好ましくは0.1〜2質量%であり、より好ましくは0.2〜1質量%である。
成分(B)と成分(A)の含有量の質量比((B)/(A))は、成分(A)の容器への吸着を有効に防止する観点から、1以上であって、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2以上である。成分(B)と成分(A)の含有量の質量比((B)/(A))は、良好な保存安定性及び香味を確保する観点から、20以下であって、使用時の口腔内における歯磨組成物としての良好な泡立ちを確保する観点から、好ましくは10以下であり、さらに好ましくは7以下である。また、成分(B)と成分(A)の含有量の質量比((B)/(A))は、1以上20以下であって、好ましくは1.5〜10であり、より好ましくは2〜7である。
本発明の容器入り歯磨組成物は、ノニオン性界面活性剤(C)を0.05質量%以上1.5質量%以下含有する。かかる成分(C)を併用することにより、各成分の分散性を高めて優れた保存安定性を確保しつつ、成分(A)の容器への吸着防止効果と良好な香味を兼ね備えることができる。
成分(C)のノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、セスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、モノミリスチン酸ペンタグリセリンやステアリン酸モノグリセリン等のグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、モノミリスチン酸ポリグリセリルやラウリン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アミンオキサイド系界面活性剤、モノ−(又はジ−)エタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド、ポリエチレンポリプロピレングリコール等のポリグリコール、並びにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、成分(A)の容器への吸着を効果的に防止する観点から、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
成分(C)の含有量は、良好な保存安定性と香味を確保する観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、0.05質量%以上であって、好ましくは質量0.1%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上である。成分(C)の含有量は、本発明の歯磨組成物を口腔内に適用したときの成分(A)の歯や口腔内粘膜への付着性の観点、及び歯磨組成物の良好な気泡性を確保する観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、1.5質量%以下であって、好ましくは1.2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。また、成分(C)の含有量は、本発明の容器入り歯磨組成物中に、0.05〜1.5質量%であって、好ましくは0.1〜1.2質量%であり、より好ましくは0.2〜1質量%である。また、本発明の歯磨組成物の低温における粘度上昇を抑制し、容器からの吐出性を良好に保持する観点から、成分(C)として、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有しないことが好ましく、又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量は、本発明の容器入り歯磨組成物中に、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下である。
成分(C)と成分(A)の含有量の質量比((C)/(A))は、香味が損なわれるのを有効に防止しつつ、成分(A)の容器への吸着防止効果を良好に発揮する観点から、0.2以上であって、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.7以上である。成分(C)と成分(A)の含有量の質量比((C)/(A))は、組成物の良好な保存安定性を保持する観点から、20以下であって、好ましくは15以下であり、より好ましくは12以下である。また、成分(C)と成分(A)の含有量の質量比((C)/(A))は、0.2以上20以下であって、好ましくは0.5〜15であり、より好ましくは0.7〜12である。
成分(C)と成分(B)の含有量の質量比((C)/(B))は、成分(A)の溶解性又は分散性を高めつつ、組成物の保存安定性を確保する観点、及び香味が損なわれるのを有効に防止する観点から、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.4以上である。成分(C)と成分(B)の含有量の質量比((C)/(B))は、良好な香味を保持する観点から、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下である。また、成分(C)と成分(B)の含有量の質量比((C)/(B))は、好ましくは0.2〜5であり、より好ましくは0.4〜3である。
本発明の容器入り歯磨組成物は、さらに適度な泡立ちを付与し、良好な使用感を確保する観点から、アニオン界面活性剤(F)を含有することもできる。かかる成分(F)を含有することにより、良好な起泡性や泡質、優れた洗浄性を確保することができ、より一層使用感を高めることが可能となる。成分(F)のアニオン界面活性剤としては、例えば、アシルグルタミン酸ナトリウム、アシルサルコシンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、アルキルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩、N−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩、及びポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これら成分(F)の疎水基のアルキル基及びアシル基は、炭素数6〜18であることが好ましく、炭素数10〜14であることがより好ましい。また、ナトリウム塩であることが好ましい。なかでも、良好な起泡性及び低刺激性等を付与して使用感を高める観点から、アシルアミノ酸塩、N−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩及びアルキル硫酸エステル塩から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
成分(F)の含有量は、良好な起泡性を確保する観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。成分(F)の含有量は、製造時の脱泡性の観点、及び適度な起泡性を確保する観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下である。また、成分(F)の含有量は、本発明の容器入り歯磨組成物中に、好ましくは0.3〜3質量%であって、より好ましくは0.5〜2質量%であり、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%である。
本発明の容器入り歯磨組成物は、水(D)を含有する。本発明における成分(D)の水とは、歯磨き組成物に配合した精製水等だけでなく、例えば処方する際に用いる70%ソルビトール液(水溶液)のように、配合した各成分に含まれる水分をも含む、歯磨き組成物中に含まれる全水分を意味する。成分(D)の含有量は、各成分を良好に分散又は溶解させて保存安定性を確保する観点、及び容器からの吐出性を良好なものとする観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは12質量%以上である。成分(D)の含有量は、口腔内での分散性を高めつつ良好な保形性を保持する観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。また、成分(D)の含有量は、本発明の容器入り歯磨組成物中に、好ましくは8〜50質量%であり、より好ましくは10〜45質量%であり、さらに好ましくは12〜40質量%である。
なお、本発明の容器入り歯磨組成物中の水分量は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業)を用いることができる。この装置では、歯磨組成物を5gとり、無水メタノール25gにより懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して水分量を測定することができる。
本発明の容器入り歯磨組成物は、香料成分(E)を0.2質量%以上2質量%以下含有する。これにより、香料由来の香味を十分に付与することができるとともに、組成物の良好な保存安定性を確保し、成分(A)の容器への吸着防止効果を高めることもできる。かかる成分(E)の香料成分としては、例えば、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、シトラール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアセデヒド、シトラール、プレゴン、カルビートアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の香料成分が挙げられる。成分(E)として、上記の香料成分を含む、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、ペパーミント油等の天然香料成分、精油等を用いることもできる。また、成分(E)として、上記香料成分を含むストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料成分を用いることもできる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
成分(E)は、本発明の容器入り歯磨組成物における良好な香味を実現し、成分(A)と成分(B)との併用によるこれらの成分の安定性の観点から、ユーカリオイル、スペアミントオイル、ペパーミントオイル、及びスペアミントオイルから選ばれる1種又は2種以上の精油(E1)を成分(E)中に10〜35質量%含有することが好ましく、メントール(E2)を成分(E)中に40〜70質量%含有することが好ましく、精油(E1)とメントール(E2)を成分(E)中に合計で50〜90質量%含有することが好ましい。本発明の容器入り歯磨組成物における良好な香味を実現する観点から、好ましくはアネトールを成分(E)中に1〜18質量%含有し、アニスアルデヒド、シンナミックアルデヒド、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド、ペリラアルデヒド、シトラール、及びシトロネラール等から選ばれる1種又は2種以上のアルデヒドを、成分(E)中に好ましくは1〜7質量%含有する。
成分(E)の含有量は、香料由来の良好な香味を保持する観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、0.2質量%以上であって、好ましくは0.3質量%以上である。成分(E)の含有量は、他の成分とも相まって、組成物の良好な保存安定性を確保し、成分(A)の容器への吸着防止効果を高める観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、2質量%以下であって、好ましくは1.5質量%以下である。また、成分(E)の含有量は、本発明の容器入り歯磨組成物中に、0.2質量%以上2質量%以下であって、好ましくは0.3〜1.5質量%である。
なお、一般に香味を付与する成分として、非テルペンカットペパーミント油も用い得るが、本発明では、かかる非テルペンカットペパーミント油の含有量が、本発明の容器入り歯磨組成物中に0.1質量%以下であっても、成分(A)の容器への吸着防止効果を発揮しつつ、優れた香味をもたらすことができる。
成分(E)と成分(A)の含有量の質量比((E)/(A))は、成分(A)の容器への吸着防止効果を良好に保持しつつ、成分(A)の組成物における安定性を確保する観点、及び香味が損なわれるのを有効に防止する観点から、1以上であって、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上である。成分(E)と成分(A)の含有量の質量比((E)/(A))は、成分(A)による薬効を十分に発揮させつつ、組成物の保存安定性を確保する観点から、20以下であって、好ましくは15以下である。また、成分(E)と成分(A)の含有量の質量比((E)/(A))は、1以上20以下であって、好ましくは2〜15であり、より好ましくは3〜15である。
成分(E)、成分(A)、及び成分(B)の合計含有量と成分(C)の質量比({(E)+(A)+(B)}/(C))は、成分(A)の容器への吸着防止効果を良好に保持しつつ口腔内で成分(A)の薬効を発揮させる観点、組成物の安定性を確保する観点、及び香味が損なわれることを有効に防止する観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下である。
成分(A)、(B)及び(E)以外であり、かつ界面活性剤ではない油性成分は、香味を損なうことなく組成物の良好な保存安定性を保持し得る範囲内で、用いることができる。したがって、かかる油性成分は、成分(A)や成分(B)ではなく、成分(E)でもない上に、成分(C)のノニオン性界面活性剤や成分(F)のアニオン界面活性剤でもなく、その他の界面活性剤でもない。かかる油性成分としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、植物性スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素油;ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、エイコソニルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール等の炭素数8〜22の高級アルコール;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ウンデシレン酸等の炭素数8〜22の高級脂肪酸及びそのエステル;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン等のシリコーン油等が挙げられる。なかでも、かかる油性成分としては、組成物の良好な使用感や保形性を確保する観点から、25℃において固体の油性成分以外の油性成分であるのが好ましい。25℃において固体の油性成分としては、例えば、セチルアルコール等の高級アルコール、飽和脂肪酸や高級脂肪酸及びそのエステル等が挙げられる。
成分(A)、(B)及び(E)以外であり、かつ界面活性剤ではない油性成分の含有量は、香味が損なわれるのを有効に防止する観点、及び組成物としての適度な保形性や容器からの良好な吐出性を確保する観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下である。成分(A)、(B)及び(E)以外であり、かつ界面活性剤ではない油性成分の含有量は、各成分の溶解性又は分散性を確保する観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。成分(A)、(B)及び(E)以外であり、かつ界面活性剤ではない油性成分の含有量は、本発明の容器入り歯磨組成物中に、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.05〜1質量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.2質量%である。
本発明の容器入り歯磨組成物は、さらに粘結剤を含有することが好ましい。粘結剤を含有することにより、組成物に適度な粘性を付与して良好な保形性をもたせ、チューブ容器やスクイズ容器などの押圧により吐出する容器であっても、成分(A)の容器への吸着を防止しながら良好な吐出性を確保することができる。かかる粘結剤としては、例えばアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、ペクチン、寒天、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム及びメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、及び寒天から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、2種以上を組み合わせて含有することがさらに好ましい。
粘結剤の含有量は、保存安定性、保形性及び吐出性を確保する観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。粘結剤の含有量は、各成分を良好に分散又は溶解させる観点から、本発明の容器入り歯磨組成物中に、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である。また、粘結剤の含有量は、本発明の容器入り歯磨組成物中に、好ましくは0.3〜3質量%であり、より好ましくは0.5〜1.5質量%である。
本発明の容器入り歯磨組成物には、上記成分のほか、通常歯磨組成物に使用可能なその他の成分、例えば、研磨剤、発泡助剤、フッ化ナトリウムやモノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、pH調整剤、糖アルコール、保存剤等を本発明の効果が阻害されない範囲で適宜含有させることができる。
本発明の容器入り歯磨組成物は、適宜用途に応じて、練歯磨き組成物、ゲル状歯磨き組成物とすることができる。
本発明の容器入り歯磨組成物の25℃における粘度は、吐出性と保形性と使用感を良好に兼ね備える観点から、好ましくは1000〜5000dPa・sであり、より好ましくは1500〜4000dPa・sであり、さらに好ましくは2000〜4000dPa・sである。
なお、本発明の容器入り歯磨組成物の25℃における粘度は、製造後少なくとも24時間室温で静置した歯磨組成物を、粘度測定用の容器に詰め、25℃の恒温器で24時間保存した後、ヘリパス型粘度計を用いて、ロータT−C、回転数2.5rpm、1分間の条件で測定することができる。
本発明の容器入り歯磨組成物のpHは、良好な香味や使用感を保持する観点から、好ましくは5.5以上であり、より好ましくは6以上であり、好ましくは9以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは7.5以下である。
なお、本発明の容器入り歯磨組成物のpHとは、25℃でpH電極を用いて測定した値であり、蒸留水を加えて歯磨組成物の濃度として10質量%の水溶液に調整した後に測定した値を意味する。
本発明の容器入り歯磨組成物は、ポリエチレン製の最内層を備えた容器に収容されている。かかる容器は、格納された歯磨組成物の吐出性の観点から、肩部を介して吐出口が形成されてなるチューブ容器であることが好ましい。具体的には、かかる容器は容器本体及びキャップからなり、容器本体は吐出口と胴体部とを有する。胴体部は筒状の一端が融着されてなるとともに、胴体部の他端は肩部の外縁端部に連続しており、かかる肩部は中央から吐出口を突出して備えている。通常、容器本体の胴体部は多層構造を有しており、端部が融着されて歯磨組成物が充填される。容器本体の胴体部の端部における融着容易性の観点から、容器はポリエチレン製の最内層を備え、好ましくは低密度ポリエチレン製の最内層を備え、より好ましくは直鎖状低密度ポリエチレン製の最内層を備える。他の層としては、アルミニウム等の金属製の層、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂層、紙製の層等が挙げられる。本発明の容器のポリエチレン製の最内層の厚みは、50μm以上200μm以下であることが好ましく、70μm以上180μm以下であることが好ましい。
吐出口は筒状に突出しており、筒状の外周面にはキャップを装着するための係合部又は螺子溝が形成されている。キャップの内側には、吐出口の係合部と係合するための突起、又は吐出口の螺子溝と螺合するための螺子溝が形成された筒部を備え、吐出口はキャップとの係合又は螺合によって吐出口先端の開口を密封することができる。胴体部の他端に連続している肩部は、吐出口によりキャップと係合又は螺合させる観点、胴体部の立体性を確保する観点から、肩部の厚みは胴体部の厚みの3倍以上の厚みであることが好ましく、さらに、4倍以上の厚みであることが好ましく、肩部の成形性の観点から、0.8mm以上であることが好ましく、1mm以上であることが好ましく、1.2mm以上であることがさらに好ましく、使用性やコストの観点から2.5mm以下であることが好ましく、2mm以下であることが好ましい。本発明の歯磨組成物は、上述のように肩部が厚いポリエチレン製又は低密度ポリエチレン製であり、肩部の近傍において成分(A)が吸着されやすい容器においても、保存後の成分(A)の含有量の減少を有効に抑制することができる。
本発明の容器入り歯磨組成物の製造方法は、成分(A)、(B)及び(E)を含む油溶性成分を15℃〜40℃の温度で混合して油相1を得る工程(1)、
成分(D)を含む水溶性成分を混合して水相1を得る工程(2)、並びに
油相1と水相1とを15℃〜40℃の温度で混合する工程(3)
を備え、工程(2)以外の工程において、40℃を超え100℃以下の加熱工程を含まない。これにより、各成分の分散性又は溶解性を高めつつ、良好な香味を保持するとともに、成分(A)の容器への吸着を有効に防止することができる組成物を得ることができる。
工程(1)における油溶性成分は、成分(A)、(B)及び(E)を含むほか、必要に応じて他の油剤も含む。工程(1)において、成分(A)、(B)及び(E)、さらに必要に応じて他の油剤を混合して油相1を得る方法は、特に制限なく、常法により行うことができる。15℃〜40℃の温度で混合するとは、加熱することなく、これらの成分の撹拌等の混合を行う意味であり、好ましくは15℃〜35℃の温度で混合する。工程(1)においては、例えば組成物中における成分(E)の溶解性又は分散性を高める観点から、必要に応じてプロピレングリコール、エタノール、1,3−ブチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の溶剤を、成分(E)に対して5〜30質量%配合し混合することが好ましい。
工程(2)における水溶性成分は、成分(D)を含むほか、グリセリン、ソルビトール、粘結剤等の成分を含む。工程(2)においては、カルボキシメチルセルロースや寒天等の粘結剤を良好に分散させる観点から、粘結剤と成分(D)とを含む水溶性成分を40℃を超え100℃以下、好ましくは60℃〜80℃に加熱して溶解させ、その後にかかる温度を保持したまま、プロピレングリコール、グリセリンやソルビトール(液)、モノフルオロリン酸等のその他の水溶性成分と混合して水相1を得ることが好ましい。得られた水相1の温度は、工程(2)を経た後、工程(3)の処理前に15℃〜40℃、好ましくは15℃〜35℃の温度とする。
工程(3)では、工程(1)で得られた油相1と、工程(2)で得られた水相1とを15℃〜40℃の温度、好ましくは15℃〜35℃の温度で混合する。本発明の製造方法では、工程(2)以外の工程において、40℃を超え100℃以下の加熱工程を含まないことから、上述のとおり、工程(2)を経た後、工程(3)の処理前においても、また工程(3)を経た後の工程においても、40℃を超え100℃以下の加熱工程を含まず、15℃〜40℃の温度、好ましくは15〜35℃の温度で処理を行う。
なお、成分(C)のノニオン界面活性剤は、油相1又は水相1のいずれに配合してもよいが、製造性の観点から、油相1に配合する、すなわち工程(1)において配合することが好ましい。本発明の口腔用組成物が成分(F)のアニオン界面活性剤や研磨剤や20℃における溶解度が40%以下の糖アルコール等の紛体を含有する場合には、工程(3)において、これら成分(F)及び粉体を油相1及び水相1とともに配合して混合してもよく、工程(3)を経た後に配合して混合してもよいが、製造性の観点から、工程(3)において配合して混合することが好ましい。
本発明の容器入り歯磨組成物の製造方法により、良好な香味が損なわれることなく、成分(A)の容器への吸着防止効果を十分に発揮させることが可能な歯磨組成物を得ることができる。得られた歯磨組成物を上記容器に充填することにより、本発明の容器入り歯磨組成物とすることができる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の容器入り歯磨組成物、及びその製造方法を開示する。
[1]次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
(A)オリザノール、トコフェロール、トリクロサン、及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる1種又は2種以上の油性薬効成分 0.01質量%以上0.5質量%以下
(B)トリアシルグリセロール 0.05質量%以上3質量%以下
(C)ノニオン性界面活性剤 0.05質量%以上1.5質量%以下
(D)水
(E)香料成分 0.2質量%以上2質量%以下
を含有し、成分(B)と成分(A)の含有量の質量比((B)/(A))が1以上20以下であり、成分(C)と成分(A)の含有量の質量比((C)/(A))が0.2以上20以下であり、かつ成分(E)と成分(A)の含有量の質量比((E)/(A))が1以上20以下である、ポリエチレン製の最内層を備えた容器に収容されている容器入り歯磨組成物。
[2]成分(A)の含有量は、好ましくは0.02質量%以上であり、好ましくは0.3質量%以下である上記[1]の容器入り歯磨組成物。
[3]構成脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリアシルグリセロール(B1)の含有量は、成分(B)中に、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%であり、好ましくは92質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である上記[1]又は[2]の容器入り歯磨組成物。
[4]成分(B)の構成脂肪酸の炭素数は、好ましくは炭素数6〜24であり、より好ましくは炭素数12〜20である上記[1]〜[3]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[5]成分(B)は、好ましくはオレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸から選ばれる脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールを成分(B)中に95質量%含有し、或いは、好ましくはオレイン酸、及びリノール酸から選ばれる不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロール(B1)、並びにミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸から選ばれる脂肪酸を構成脂肪酸とするトリアシルグリセロールを成分(B)中に合計で95質量%以上含有するトリアシルグリセロールである上記[1]〜[4]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[6]成分(B)の含有量は、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である上記[1]〜[5]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[7]成分(B)と成分(A)の含有量の質量比((B)/(A))は、好ましくは1.5以上であり、さらに好ましくは2以上であり、好ましくは10以下であり、さらに好ましくは7以下である上記[1]〜[6]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[8]成分(C)は、好ましくはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上である上記[1]〜[7]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[9]成分(C)の含有量は、好ましくは質量0.1%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、好ましくは1.2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、またポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有しないことが好ましく、或いはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量は、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下である上記[1]〜[8]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[10]成分(C)と成分(A)の含有量の質量比((C)/(A))は、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.7以上であり、好ましくは15以下であり、より好ましくは12以下である上記[1]〜[9]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[11]成分(C)と成分(B)の含有量の質量比((C)/(B))は好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.4以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下である上記[1]〜[10]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[12]好ましくはアニオン界面活性剤(F)を含有し、成分(F)は、好ましくはアシルアミノ酸塩、N−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩及びアルキル硫酸エステル塩から選ばれる1種又は2種以上である上記[1]〜[11]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[13]成分(F)の含有量は、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下である上記[12]の容器入り歯磨組成物。
[14]成分(D)の含有量は、好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは12質量%以上であり、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である上記[1]〜[13]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[15]成分(E)の含有量は、好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以下である上記[1]〜[14]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[16]非テルペンカットペパーミント油の含有量が、0.1質量%以下である上記[1]〜[15]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[17]成分(E)と成分(A)の含有量の質量比((E)/(A))は、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、好ましくは15以下である上記[1]〜[16]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[18]成分(A)、(B)及び(E)以外であり、かつ界面活性剤ではない油性成分の含有量は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である上記[1]〜[17]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[19]25℃における粘度は、好ましくは1000〜5000dPa・sであり、より好ましくは1500〜4000dPa・sであり、さらに好ましくは2000〜4000dPa・sである上記[1]〜[18]いずれか1の容器入り歯磨組成物。
[20]成分(A)、(B)及び(E)を含む油溶性成分を15℃〜40℃の温度で混合して油相1を得る工程(1)、
成分(D)を含む水溶性成分を混合して水相1を得る工程(2)、並びに
油相1と水相1とを15℃〜40℃の温度で混合する工程(3)
を備え、工程(2)以外の工程において、40℃を超え100℃以下の加熱工程を含まない上記[1]〜[19]いずれか1の容器入り歯磨組成物の製造方法。
[21]好ましくは工程(2)を経た後の工程での温度が40℃以下であり、より好ましくは工程(2)を経た後の工程での温度が15℃〜40℃、さらに好ましくは15〜35℃である上記[20]の製造方法。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
[実施例1〜18、比較例1〜7]
表1に示す処方にしたがって、各歯磨組成物を調製した。具体的には、成分(A)、(B)及び(C)を含む組成物1を室温25℃で3時間混合して油相1を得た。次いで、得られた油相1を、予め水、グリセリン、ソルビール液(70%)、カルボキシメチルセルロース、寒天、及びモノフルオロリン酸等の水溶性成分を60℃で20分間混合して得た組成物2に、30℃未満において、油相1と研磨剤、粒状のエリスリトール、活性剤とともに配合し、さらに30℃未満(室温25℃)において20分間混合して歯磨組成物を調製した。歯磨組成物の粘度は3000dPa・s±400dPa・sとなるように粘結剤を調整し、例えば実施例1の25℃における粘度は3336dPa・sであった。
なお、比較例7及び比較例10は、油相1を得る工程において、トリステアリン酸グリセリル、ステアリン酸が溶解又は分散しないため、加熱して溶解させた。
また、歯磨組成物を充填する容器としては、チューブ容器を用いた。チューブ容器の容器本体の胴体部は、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンであって、最外層に印刷層(ニスを含む)を備え、印刷層/低密度ポリエチレン50μm/接着剤/高密度ポリエチレン80μm/接着剤/アルミニウム12μm/接着剤/ポリエチレンテレフタレート12μm/接着剤/直鎖状低密度ポリエチレン100μmで構成される、中間層にアルミニウム層を備える多層樹脂層からなるものであった。チューブ容器は、吐出口を一体に備える肩部を備え、肩部及び吐出口は低密度ポリエチレン製であり、肩部の厚みは平均1.3mmであった。
なお、吐出口は螺子溝を備えており、得られた歯磨組成物をかかる容器内に充填し、キャップを螺合して密封した後、保存した。次いで、保存後に吐出口から吐出させた歯磨組成物を用い、下記に示す方法にしたがって各測定及び各評価を行った。
結果を表1〜2に示す。
《粘度》
各歯磨組成物を粘度測定用の容器に詰め、25℃の恒温器で24時間保存した後、ヘリパス型粘度計(東機産業株式会社 TVB−10R)を用いて、ロータT-C、回転数2.5rpm、1分間の条件で測定した。
《風味》
3名のパネラーにより、歯磨組成物1gを用いた歯磨きを2分間行った際の風味について、油臭さを感じるか、刺激を感じるか否かを評価し、3名中2名以上が感じた評価を結果として示した。
《製造性・安定性》
製造性及び製造から24時間後の外観について、製造時に均一に混合され、油のしみ出しや分離がみられない場合を良好として、目視により評価した。
《オリザノールの残存率》
各歯磨組成物を、上記のチューブ容器に充填し、蓋を螺合して密封後、5℃、50℃の恒温槽にそれぞれ1ヶ月間保存した。保存後、50℃で保存した歯磨組成物を、チューブ容器の吐出口から約2g押し出し、γ−オリザノールの量をHPLCにより測定して、1g当たりの含有量に換算し、「50℃保存後の量」とした。
また、5℃で保存した歯磨組成物は、約20gを吐出口から吐出して除いた後に、約12gを吐出口から吐出し、測定用の歯磨組成物とした。そして、γ−オリザノールの量をHPLCにより測定し、歯磨組成物1g当たりの含有量を「5℃保存後の量」とした。
保存後のγ−オリザノールの残存率は、「50℃保存後の量」/「5℃保存後の量」と定義し、上記測値を元に算出した。結果を表1〜2に示す。
なお、HPLCの測定は以下の条件により行った。
<HPLC(高速液体クロマトグラフィー)の測定条件>
装置:日立高速液体クロマトグラム La chrom Elite(化学物質評価研究機構)
カラム:L−column ODS4.6×150mm(5μm)
カラム温度:40℃
移動相:メタノール/テトラヒドロフラン=88:12)
流量:1.0mL/Min
サンプル注入量:20μL
測定波長:326nm
(保持時間5min程度に見られる2〜3のピーク総和をγ−オリザノールのピークとして測定した。)
Figure 2015231972
Figure 2015231972
※1:オリザ油化株式会社製
※2:イルガケアMP、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製
※3:クロピュアリキッドベジラン、クローダジャパン株式会社製
※4:レオドールTW-S120V、花王株式会社製
※5:レオドールTW-L120、花王株式会社製
※6:レオドールTW-O120V、花王株式会社製
※7:レオドールAO-15V、花王株式会社製
※8:エマノーンCH-40、花王株式会社製
※9:エマノーン1112、花王株式会社製
※10:エマルゲン106、花王株式会社製
※11:サンソフトQ-14Y-C、太陽化学株式会社製
※12:リョートーシュガーエステルO-170、三菱化学フーズ株式会社製
※13:アミソフトMS-11、味の素株式会社製
※14:エマール10PT、花王株式会社製
※15:ケルデント、DSP五協フード&ケミカル株式会社製
※16:CMC1150、ダイセルファインケム株式会社製
※17:サンローズF35SH、日本製紙ケミカル製
※18:サイロピュア♯25、富士シリシア化学株式会社製
※19:ソルボシルAC77、PT PQ Silicas Indonesia製
※20:l−メントール50質量%、ペパーミントオイル15質量%、アネトール5質量%、スペアミントオイル5質量%、ユーカリオイル1質量%、アニスアルデヒド2.5質量%、プロピレングリコール17質量%、エタノール3質量%、他(1,8-シネオール、ターピネオール等)1.5質量%
※21:小堺製薬株式会社製(トリオレイン酸グリセリル82.5質量%、トリリノール酸グリセリル6質量%、トリパルミチン酸グリセリル9質量%、トリステアリン酸グリセリド2.3質量%、トリアラキン酸グリセル0.2質量%)
表1に示すように、実施例1〜12は比較例に比べて保存後のオリザノールの残存率が高いことが認められる。表2に示すように実施例13〜18は油臭さは感じられない良好な風味であり、成分(A)、(B)の溶解性や分散性が良く、外観上分離が生じないことも認められる。また、実施例13〜17は歯磨き中における歯磨組成物としての泡立ちにも優れ、使用感にも優れる。

Claims (5)

  1. 次の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び(E):
    (A)オリザノール、トコフェロール、トリクロサン、及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる1種又は2種以上の油性薬効成分 0.01質量%以上0.5質量%以下
    (B)トリアシルグリセロール 0.05質量%以上3質量%以下
    (C)ノニオン性界面活性剤 0.05質量%以上1.5質量%以下
    (D)水
    (E)香料成分 0.2質量%以上2質量%以下
    を含有し、成分(B)と成分(A)の含有量の質量比((B)/(A))が1以上20以下であり、成分(C)と成分(A)の含有量の質量比((C)/(A))が0.2以上20以下であり、かつ成分(E)と成分(A)の含有量の質量比((E)/(A))が1以上20以下である、ポリエチレン製の最内層を備えた容器に収容されている容器入り歯磨組成物。
  2. さらに、(F)アニオン界面活性剤を0.3質量%以上3質量%以下含有する請求項1に記載の容器入り歯磨組成物。
  3. 成分(A)、(B)及び(E)以外であり、かつ界面活性剤ではない油性成分の含有量が、2質量%以下である請求項1又は2に記載の容器入り歯磨組成物。
  4. 成分(C)として、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有しないか又は0.5質量%以下含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器入り歯磨組成物。
  5. 成分(A)、(B)及び(E)を含む油溶性成分を15℃〜40℃の温度で混合して油相1を得る工程(1)、
    成分(D)を含む水溶性成分を混合して水相1を得る工程(2)、並びに
    油相1と水相1とを15℃〜40℃の温度で混合する工程(3)
    を備え、工程(2)以外の工程において、40℃を超え100℃以下の加熱工程を含まない請求項1に記載の容器入り歯磨組成物の製造方法。
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