JP6459781B2 - 口腔用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、硝酸カリウムのカリウムイオン溶出性が向上し、かつイソプロピルメチルフェノールが経時においても安定化し、泡立ちも良く、優れた知覚過敏抑制効果及び口腔バイオフィルム殺菌効果を付与することができる口腔用組成物に関する。
従来、知覚過敏症状を抑制する有効成分として、神経鈍麻作用を有する硝酸カリウムが知られている。硝酸カリウムはカリウムイオンとして存在することで神経鈍麻作用を発揮するため、カリウムイオンの溶出量が高いほど知覚過敏症状の緩和効果も高くなる。しかし、従来の口腔用組成物では、カリウムイオンの溶出量には改善の余地があった。また、従来、硝酸カリウムの配合によって泡立ちが悪くなる傾向があるという課題も存在した。
一方、口腔内の歯周病バイオフィルム殺菌力を持つ難水溶性の非イオン性殺菌剤であるイソプロピルメチルフェノールは、歯周病の予防又は抑制に有効であり、硝酸カリウムと共にイソプロピルメチルフェノールを配合して知覚過敏症及び歯周病を同時に抑制することは口腔疾患の予防又は抑制には有効であるが、口腔用組成物中でイソプロピルメチルフェノールを経時において安定化し、両成分の効果を十分かつ有効に発現させることは技術的に難しかった。
特許文献1(特開2009−137897号公報)は、硝酸カリウム、イソプロピルメチルフェノール、ノニオン界面活性剤を適切に配合することによって、優れた神経鈍麻作用及びバイオフィルム殺菌力を付与できること、また、特許文献2(特開2011−98920号公報)では、イソプロピルメチルフェノール、硝酸カリウム、アニオン界面活性剤及び/又はノニオン界面活性剤、特定の香料成分を配合することで、優れたバイオフィルム殺菌力及び知覚過敏緩和作用、嫌味のない使用感を持つ歯磨剤組成物が提案されている。
特開2009−137897号公報 特開2011−98920号公報
従って、口腔用組成物において、硝酸カリウムのカリウムイオン溶出性を向上し、かつイソプロピルメチルフェノールを経時において安定化配合し、両成分の効果をより有効に発現させる技術の開発が望まれた。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、硝酸カリウムのカリウムイオン溶出性が向上し、かつイソプロピルメチルフェノールが経時においても安定化し、泡立ちも良く、優れた知覚過敏抑制効果及び口腔バイオフィルム殺菌効果を与えることができる口腔用組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)硝酸カリウム、(B)アシルアミノ酸、アシルタウリン及びその塩から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤、(C)ノニオン性界面活性剤、(D)イソプロピルメチルフェノールを配合し、(B)、(C)成分の配合比率を示す(B)/(C)が質量比として0.1〜6とし、ラウリル硫酸ナトリウムを配合しないことによって、硝酸カリウムのカリウムイオン溶出性が向上し、かつイソプロピルメチルフェノールが安定化し、泡立ちも良好となり、優れた知覚過敏抑制効果及び口腔バイオフィルム殺菌効果を与えることができる、味が良く使用感も良好な口腔用組成物が得られることを知見した。
即ち、本発明者らは、界面活性剤の中でも、(B)特定のアミノ酸型アニオン性界面活性剤と(C)ノニオン性界面活性剤とを併用して用いることで、(A)硝酸カリウムのカリウムイオンが特に界面活性剤と結合するのを防止し、カリウムイオン溶出性を向上し、また、硝酸カリウムの添加による泡立ちの低減を防止して十分かつ適度な泡立ちを確保することもでき、かつ、有効成分の(D)イソプロピルメチルフェノールの経時における安定性を確保できることを見出した。
更に詳述すると、本発明者らは、硝酸カリウムの神経鈍麻作用の発現性の影響因子としてカリウムイオンの溶出性に着目したところ、口腔用組成物に界面活性剤、特にラウリル硫酸ナトリウムと共に硝酸カリウムを配合するとカリウムイオンの溶出性には改善の余地があることが判明した。これは、本発明者らの知見では、硝酸カリウムが界面活性剤、特にラウリル硫酸ナトリウムと結合し、溶解性の低いラウリル硫酸カリウムとして存在することで、硝酸カリウムのカリウムイオンが十分に溶出しなくなるためであり、また、ラウリル硫酸カリウムの生成により、歯磨剤組成物の泡立ちが低下する課題が発生した。そこで、泡立ちを低下させることなく十分な泡立ち量を確保し、硝酸カリウムのカリウムイオン溶出性を向上することを目的に更に検討を重ねた結果、(B)成分のアミノ酸型アニオン性界面活性剤を用いることによって、硝酸カリウムのカリウムイオンが界面活性剤と結合することなく十分に溶出し、カリウムイオン、界面活性剤の本来の機能を満足に確保できること、これにより、硝酸カリウムのカリウムイオン溶出性が向上し、神経鈍麻作用が十分に発現して格段に優れた知覚過敏抑制効果を付与し、また、十分な泡立ちを持たせることができることを見出した。
一方、アミノ酸型アニオン性界面活性剤の使用によって、口腔バイオフィルム殺菌力を持つイソプロピルメチルフェノールの口腔用製剤内での安定性が経時において低下する課題が発生し、その原因は容器への吸着であることが明らかになった。本発明者らは、かかる容器吸着による安定性の低下は、(A)、(B)、(D)成分と共に(C)ノニオン性界面活性剤を(B)/(C)の質量比が特定割合となるように組み合わせることによって防止できることを見出した。これにより、イソプロピルメチルフェノールが経時においても安定化し、歯周病原性等の口腔バイオフィルム殺菌効果に優れる。従って、本発明では、(A)、(B)、(C)、(D)成分を組み合わせることによって、(B)/(C)の質量比が特定範囲内において、上記の特異的かつ顕著な作用効果を与える。
更に、本発明では、(A)、(B)、(C)、(D)成分の組み合わせに、後述の(E)特定の香料を添加すると、アミノ酸型アニオン性界面活性剤由来の舌への刺激性が発現するのを防止し、使用感をより改善できる。
特許文献1、2では、硝酸カリウムのカリウムイオン溶出性について検討されておらず、泡立ち量に関する言及もなく、不明であるが、ラウリル硫酸ナトリウムの使用が許容され、カリウムイオンの溶出量には未だ改善の余地があった。かかる先行技術から、特定のアニオン性界面活性剤を使用することによる、硝酸カリウムのカリウムイオン溶出性の向上及び泡立ちの改善を予測することはできない。
従って、本発明は下記の口腔用組成物を提供する。
〔1〕
(A)硝酸カリウム、
(B)アシルアミノ酸、アシルタウリン及びその塩から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤、
(C)ノニオン性界面活性剤、
(D)イソプロピルメチルフェノール
を含有し、(B)、(C)成分の配合比率を示す(B)/(C)が質量比として0.1〜6であり、ラウリル硫酸ナトリウムを含有しないことを特徴とする口腔用組成物。
〔2〕
更に、(E)下記の(E−1)及び(E−2)成分、
(E−1)ヴァイオレット抽出物、
(E−2)スペアミント油、カシア油及びサリチル酸メチルから選ばれる1種又は2種以上
を含む香料を含有する〔1〕記載の口腔用組成物。
〔3〕
(E)成分の香料が、前記(E−1)及び(E−2)成分に加えて下記の(E−3)成分、
(E−3)メントール、シネオール、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド及び3−(L−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールから選ばれる1種又は2種以上
を含む〔2〕記載の口腔用組成物。
本発明によれば、硝酸カリウムのカリウムイオン溶出性が向上し、かつイソプロピルメチルフェノールが安定化し、泡立ちも良好であり、優れた知覚過敏抑制効果及び口腔バイオフィルム殺菌効果を付与することができ、味が良く使用感も良好な口腔用組成物を提供することができる。この口腔用組成物は、知覚過敏症及び歯周病の抑制用として有効に使用できる。
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の口腔用組成物は、(A)硝酸カリウム、(B)アシルアミノ酸、アシルタウリン及びその塩から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤、(C)ノニオン性界面活性剤、(D)イソプロピルメチルフェノールを含有する。
(A)硝酸カリウムは、神経鈍麻作用を持つ知覚過敏抑制剤であり、その配合量は組成物全体の1〜10%(質量%、以下同様。)が好ましく、より好ましくは3〜8%である。配合量が1%以上であると、カリウムイオンの溶出によって神経鈍麻作用が十分に発現し、10%以下であることが、それ自身の渋み(えぐみ)の発現を防止し味を良好に維持するには好適である。
(B)成分のアニオン性界面活性剤は、アシルアミノ酸、アシルタウリン及びその塩から選ばれる1種又は2種以上のアミノ酸型アニオン性界面活性剤であり、好ましくは炭素数8〜18、より好ましくは炭素数12〜16の直鎖状又は分岐鎖状の飽和又は不飽和炭化水素基を有するものであり、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましく、特にナトリウム塩が好ましい。
具体的に、アシルアミノ酸塩としては、ラウロイルメチルアラニン塩などのメチルアラニン塩、ラウロイルグルタミン酸塩、ミリストイルグルタミン酸塩、ステアロイルグルタミン酸塩などのグルタミン酸塩が挙げられ、アシルタウリン塩としては、ラウロイルメチルタウリン塩、ヤシ油脂肪酸メチルタウリン塩、ミリストイルメチルタウリン塩などのメチルタウリン塩が挙げられる。これらのうちでは、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、特にラウロイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウムが好ましく、味の観点からラウロイルメチルタウリンナトリウムが更に好ましい。
(B)成分のアニオン性界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.3〜3%が好ましく、更に好ましくは0.5〜2%である。0.3%以上配合するとカリウムイオン溶出性を確保しつつ、起泡力を十分に向上できる。3%以下の配合量で、苦味がなく好適である。また、舌への刺激を抑制するためにも好適である。
(C)ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、脂肪酸ポリグリセリルが挙げられる。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、平均付加モル数3〜30のものが好ましく、更には5〜20のものがより好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、アルキル基の炭素数12〜18、エチレンオキサイドの平均付加モル数3〜30のものが好ましく、更には5〜20のものがより好ましい。アルキルグルコシドはアルキル基の炭素数が12〜16のものが好ましい。脂肪酸ポリグリセリルは、脂肪酸の炭素数が10〜30、特に12〜16のものが好ましい。(C)成分は、これらから選ばれる1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用し得る。
具体的には、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、C12〜16アルキルグルコシド、ヤシ油アルキルグルコシド、モノミスチリン酸ヘキサグリセリルが好適であり、より好ましくはポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテルであり、これら2種を組み合わせることが更に好ましい。
(C)成分のノニオン性界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.5〜3%が好ましく、更に好ましくは1.0〜2.5%である。0.5%以上であるとイソプロピルメチルフェノールを経時においても十分に安定化できる。3%以下であることが、十分な泡立ちを確保し、また、味を良好に保持するには好適である。
本発明では、(B)、(C)成分を適切な配合比率の範囲内で配合する。
(B)、(C)成分の配合比率を示す(B)/(C)は、質量比として0.1〜6であり、好ましくは0.3〜3である。(B)/(C)が上記範囲内であると、硝酸カリウムのカリウムイオン溶出性が向上し、また、十分な泡立ちを付与できると共に、イソプロピルメチルフェノールの経時における安定性が優れ、使用感も良好となる。(B)/(C)が0.1未満であると、泡立ちが劣り、6を超えると、イソプロピルメチルフェノールの経時における安定性が劣る。
(D)イソプロピルメチルフェノールは、歯周病等の原因となる口腔バイオフィルムの殺菌剤であり、4−イソプロピル−3−メチルフェノール(ビオゾール)、2−イソプロピル−5−メチルフェノール(チモール)が挙げられ、特に4−イソプロピル−3−メチルフェノールが好ましい。
(D)成分のイソプロピルメチルフェノールの配合量は、組成物全体の0.01〜0.5%が好ましく、より好ましくは0.02〜0.3%である。配合量が多いほど口腔バイオフィルム殺菌力は高まるが、0.5%以下であることが、イソプロピルメチルフェノールの味(苦味、異味)を感じないためには好適である。
本発明では、更に、(E)香料として、下記の(E−1)及び(E−2)成分、
(E−1)ヴァイオレット抽出物、
(E−2)スペアミント油、カシア油、サリチル酸メチルから選ばれる1種又は2種以上
を含む香料を、刺激緩和剤として配合することが好ましい。アミノ酸型アニオン性界面活性剤は、歯茎等の口腔粘膜への刺激は低いものの、敏感な舌への弱い刺激がある。しかしながら、香料として(E)成分を用いることによって、(B)成分のアミノ酸型アニオン性界面活性剤に由来する舌への刺激性が発現するのを防止し、刺激をマスキングして使用感をより改善できる。
この場合、(E−1)成分の抽出物とは、植物体の水及び/又は有機溶剤(エタノールなど)で抽出したものをさし、一般にエキストラクト、オレオレジン、レジノイド、コンクリート、アブソリュートが抽出物に相当し、これらを用いることができる。(E−2)成分としては、特にスペアミント油及び/又はカシア油が好ましい。
(E)成分の香料は、(E−1)、(E−2)成分に加えて、更に下記の(E−3)成分、(E−3)メントール、シネオール、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−(L−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールから選ばれる1種又は2種以上を含むことがより好ましい。(E−3)成分を含むと、爽快な使用感を与えることができる。
この場合、(E−3)成分としては、特にメントールと、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド及び/又は3−(L−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールとの組み合わせが好ましい。
(E)成分の香料の配合量は、各香料成分に応じて適宜調整し得るが、(E−1)ヴァイオレット抽出物の配合量は、組成物全体の0.000005〜0.05%が好ましく、より好ましくは0.00001〜0.03%である。配合量が多いほど刺激の緩和には好適であるが、0.05%以下であることが渋味の発現を防止するには好適である。
(E−2)成分のスペアミント油の配合量は組成物全体の0.02〜0.3%、特に0.04〜0.2%が好ましく、カシア油の配合量は組成物全体の0.01〜0.2%、特に0.02〜0.1%が好ましく、サリチル酸メチルの配合量は組成物全体の0.01〜0.2%、特に0.02〜0.1%が好ましい。(E−2)成分は前記配合量の範囲内で配合し得る。配合量が多いほど刺激の緩和には好適であるが、多く配合しすぎないことが辛味の発現を防止するには好適である。
(E)成分が(E−3)成分を含む場合、(E−3)成分のメントールの配合量は、組成物全体の0.3〜0.9%、特に0.4〜0.8%が好ましい。更に、シネオールの配合量は、組成物全体の0.005〜0.3%、特に0.01〜0.2%が好ましく、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、3−(L−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールの配合量は、組成物全体の0.005〜0.3%、特に0.01〜0.2%が好ましい。(E−3)成分は前記配合量の範囲内で配合し得る。配合量が多いほど刺激の緩和、爽快感の付与には好適であるが、多く配合しすぎないほうが苦味の発現を防止するには好適である。
(E)成分は、(E−1)、(E−2)成分、更には(E−3)成分の各成分の配合量が上記範囲内で添加し得る。
本発明の口腔用組成物は、特に練歯磨、液状歯磨、液体歯磨、潤製歯磨等の歯磨剤として好適に調製され、特に練歯磨として好適である。この場合、上記成分に加えて、必要に応じてその他の公知成分を添加することができる。例えば、研磨剤、界面活性剤、粘稠剤、粘結剤、香料、色素、甘味剤、防腐剤、各種有効成分などが挙げられる。
研磨剤としては、シリカゲル、沈降シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる(配合量は、通常5〜50%)。
界面活性剤としては、(B)成分のアニオン性界面活性剤、(C)成分のノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤は配合しなくてもよく、アニオン性界面活性剤の総配合量は組成物全体の0.3〜3%とすることができるが、本発明の効果を妨げない範囲でその他の界面活性剤、例えばカチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤を添加してもよい。なお、本発明の口腔用組成物に、ラウリル硫酸ナトリウムは配合されない。
粘稠剤としては、ソルビット、キシリット等の糖アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが挙げられる(配合量は通常、0.1〜50%。)。
粘結剤としては、キサンタンガム等のガム類、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウムなどの有機粘結剤、無機粘結剤が挙げられる(配合量は通常、0.1〜5%。)。
香料としては、上記(E)成分に加え、通常使用される香料を添加することができる。
色素としては、青色1号、青色4号等の法定色素、天然色素、酸化チタン等、甘味剤としては、サッカリンナトリウム等、防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸又はその塩等が挙げられる。
有効成分としては、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ等の酵素、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン性殺菌剤、ビタミン類、歯石予防剤などが挙げられ、これらは有効量配合し得る。
本発明の口腔用組成物は、公知の合成樹脂で形成された収容容器、特に少なくとも最内層が合成樹脂で形成されたチューブ容器に好適に充填できる。合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等が挙げられるが、特に低密度ポリエチレンが好ましい。本発明では、このような容器に充填されていてもイソプロピルメチルフェノールの吸着が経時において抑えられ、イソプロピルメチルフェノールが安定化する。
以下、実施例及び比較例、実験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
[実施例、比較例]
表1、2に示す組成の歯磨剤組成物(練歯磨)を常法により調製し、チューブ容器に充填し、下記に示す実験1を行い、カリウムイオンの溶出性、泡立ち、使用感(味)、イソプロピルメチルフェノールの安定性を評価した。結果を表1、2に併記した。なお、チューブ容器は、最内層が低密度ポリエチレンである、口径8mmのラミネートチューブを使用した。
実験1;
(1)カリウムイオン溶出性の評価方法
調製した歯磨剤組成物を人工唾液で10倍希釈し、10,000rpmで10分間遠心分離した。上清液中に含まれるカリウムイオン濃度をイオンメーター(Orion 1115000 4−Star:サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)で測定した。平均値(N=6)を算出し、抽出液中のカリウムイオン量とした。
組成中に含まれるカリウムイオン量を理論値とし、理論値に対する、各歯磨剤組成物の抽出液中のカリウムイオン量の割合を算出し、次の評価基準に従って評価して◎、○、×で示した。この結果が○、◎のものを、硝酸カリウムのカリウムイオンの溶出性が優れると判断した。
カリウムイオン溶出性の評価基準
◎:抽出液中のカリウムイオン量が対理論値で80%以上
○:抽出液中のカリウムイオン量が対理論値で70%以上、80%未満
×:抽出液中のカリウムイオン量が対理論値で70%未満
(2)泡立ちの評価方法
4名のモニタが、歯磨剤組成物を歯ブラシに載せ、通常の方法で口腔内を洗浄した際の口腔内での泡立ちを下記の評点基準により評価した。4名の評価点の平均を求め、下記評価基準に従って評価した。
泡立ちの評点基準
4点;非常に泡立つ
3点;やや泡立つ
2点;あまり泡立たない
1点;非常に泡立たない
泡立ちの評価基準
◎:平均点3.5点以上
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
(3)使用感(味)の評価方法
4名のモニタが、歯磨剤組成物を歯ブラシに載せ、通常の方法で口腔内を洗浄した後の味を下記の評点基準により評価した。4名の評価点の平均を求め、下記評価基準に従って評価した。
味の評点基準
4点;非常に良い(苦味を感じない)
3点;やや良い(苦味をやや感じる)
2点;あまり良くない(苦味を感じる)
1点;非常に良くない(苦味をかなり感じる)
使用感(味)の評価基準
◎:平均点3.5点以上
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
(4)イソプロピルメチルフェノールの安定性の評価方法
40℃で6ヶ月保存後の歯磨剤組成物について、下記試験条件に従いHPLCを用いてイソプロピルメチルフェノール濃度を測定した。各サンプルの製造直後のイソプロピルメチルフェノール濃度を100とした際の残存率を算出し、次の基準に従い、イソプロピルメチルフェノールの安定性(容器への吸着抑制効果)を判定した。
なお、イソプロピルメチルフェノールの定量は、下記方法で行った。
歯磨剤組成物を10g分取し(チューブから押し出した最初の10gを使用)、60%エタノール溶液で抽出した。この液を0.45μmのフィルターでろ過した後、高速液体クロマトグラフィーで測定した。下記の機器を使用し、測定条件は、カラム温度45℃、アセトニトリル/水/酢酸混液(容量比60:40:1)を移動相に用い、1.0ml/分の流量で、紫外吸光光度(波長285nm)での絶対検量線法により測定した。
測定値から、下記式でイソプロピルメチルフェノール(IPMP)の残存率を求め、下記の評価基準に従って安定性を評価し、IPMPの安定性として表に示した。
試験条件
・使用機器
ポンプ :PU−980(日本分光(株))
試料導入部 :AS−950(日本分光(株))
検出器 :UV−970(日本分光(株))
記録装置 :Chromatocoder21J
(システムインスツルメント(株))
カラム恒温槽 :CO−966(日本分光(株))
カラム :YMC−Pack ODS−A A−303
(4.6mmφ×250mm)((株)ワイエムシィ)
残存率の算出
イソプロピルメチルフェノール(IPMP)の残存率(%)
=(評価サンプルのIPMP濃度(%)/初期のIPMP濃度(%))×100
IPMPの安定性の評価基準
◎:90%以上100%以下
○:85%以上90%未満
×:85%未満
Figure 0006459781
*;香料中に、l−メントールを0.02%、シネオールを0.001%(対香料)含む(ペパーミント油由来)。(E−1)、(E−2)成分は含まない(以下同様。)。
なお、(C)アルキル(炭素数12〜16)グルコシドは、PLANTACARE 1200UP(BASF社製)を用いた。
Figure 0006459781
**;ラウリル硫酸ナトリウム/(C)の配合比率
次に、下記の実験2を行い、舌への刺激性について評価した。
実験2;
上記の実施例1と同じ歯磨組成に、更に、(E)成分として(E−1)、(E−2)、(E−3)成分を添加して歯磨剤組成物A〜Kを同様に調製し、下記方法で舌への刺激性を評価した。結果を表3、4に併記した(表中の配合量の数値は、実施例1の香料中のメントール、シネオールを含み、歯磨剤組成物全体に対する量である。)
舌への刺激性の評価方法
4名のモニタが、歯磨剤組成物を歯ブラシに載せ、口腔内を洗浄した際の舌への刺激性を下記の評点基準により判定した。4名の評点の平均を求め、下記評価基準に従って評価した。
舌への刺激性の評点基準
点数 刺激の強さ
4点;刺激がなかった
3点;刺激がほとんどなかった
2点;刺激がややあった
1点;刺激があった
舌への刺激性の評価基準
◎:平均点3.5点以上
○:平均点3.0点以上3.5点未満
△:平均点2.0点以上3.0点未満
×:平均点2.0点未満
Figure 0006459781
Figure 0006459781
表3、4に示すように、(E−1)又は(E−2)成分を含まない香料を添加した歯磨剤組成物A、Bは、舌への刺激が抑えられなかったが、これらに比べて(E−1)及び(E−2)成分を添加した歯磨剤組成物C〜Kでは、舌への刺激が抑制された。更に(E−2)成分として精製スペアミン及びカシア油を添加した歯磨剤組成物H〜Kでは、刺激がより抑制された。また、(E−1)、(E−2)成分に加えて(E−3)成分を0.3%以上添加した歯磨剤組成物D〜Kでは爽快な使用感が得られ、更に、(E−3)成分としてl−メントールとN−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミドを添加した歯磨剤組成物I〜Kでは、非常に高い爽快感が得られた。

Claims (9)

  1. (A)硝酸カリウム、
    (B)アシルアミノ酸、アシルタウリン及びその塩から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤、
    (C)ノニオン性界面活性剤、
    (D)イソプロピルメチルフェノール
    を含有し、(B)、(C)成分の配合比率を示す(B)/(C)が質量比として0.1〜6であり、ラウリル硫酸ナトリウムを含有しないことを特徴とする口腔用組成物。
  2. (B)成分のアニオン性界面活性剤が、炭素数8〜18の直鎖状又は分岐鎖状の飽和又は不飽和炭化水素基を有するものである請求項1記載の口腔用組成物。
  3. (B)成分のアニオン性界面活性剤が、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム及びステアロイルグルタミン酸ナトリウムから選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の口腔用組成物。
  4. (C)成分のノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、脂肪酸ポリグリセリルから選ばれる1種又は2種以上である請求項1、2又は3記載の口腔用組成物。
  5. (A)成分を1〜10質量%、(B)成分を0.3〜3質量%、(C)成分を0.5〜3質量%、(D)成分を0.01〜0.5質量%含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の口腔用組成物。
  6. 更に、(E)下記の(E−1)及び(E−2)成分、
    (E−1)ヴァイオレット抽出物、
    (E−2)スペアミント油、カシア油及びサリチル酸メチルから選ばれる1種又は2種以上
    を含む香料を含有する請求項1〜5のいずれか1項記載の口腔用組成物。
  7. (E)成分の香料が、前記(E−1)及び(E−2)成分に加えて下記の(E−3)成分、
    (E−3)メントール、シネオール、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド及び3−(L−メントキシ)プロパン−1,2−ジオールから選ばれる1種又は2種以上
    を含む請求項6記載の口腔用組成物。
  8. 少なくとも最内層が合成樹脂で形成された容器に充填された請求項1〜7のいずれか1項記載の口腔用組成物。
  9. 合成樹脂が低密度ポリエチレンである請求項8記載の口腔用組成物。
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