JP6851767B2 - 口腔用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、口腔用組成物に関する。
従来より、口腔用組成物に種々の薬理作用を付与し得るグリチルレチン酸やトコフェロール等は、薬効成分として多用されている。しかしながら、これらの成分は水への溶解性が低いため、良好な保存安定性を確保するには、何らかの対応が求められる。例えば、特許文献1に記載の液体口腔用組成物では、特定量のアラントイン等を併用することにより、β−グリチルレチン酸類の分散性及び長期保存安定性を高めている。また、特許文献2では、特定のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とアニオン性界面活性剤を用い、特定の容器に充填されてなる歯磨剤組成物とすることにより、長期保存後におけるグリチルレチン酸等の安定的な配合等を試みている。
さらに、特許文献3では、流動パラフィンとセタノールとを組み合わせた油性基剤等を用いることにより、グリチルレチン酸等を安定化させた口腔用組成物が開示されており、ヒドロキシエチルセルロースなる粘結剤を用いて所望の粘度への調整も試みている。また、特許文献4では、上記有効成分と界面活性剤とともに、特定のペパーミント油を特定量で併用することにより、優れた薬効に加え良好な香味の発現し得る歯磨組成物が開示されており、ヒドロキシエチルセルロース等の粘結剤も用い得る旨も記載されている。
特開2011−168557号公報 特開2004−250381号公報 特開2011−144160号公報 特開2007−45786号公報
こうしたグリチルレチン酸やトコフェロールのような油溶性薬効成分は、異味をもたらす可能性が高い上、日本では薬事法の規定により、その使用量も制限されてしまう。そのため、これらの成分による薬効を十分に発揮させるには、歯茎や口腔内粘膜への吸着性を高めることが有効ではあるものの、上記特許文献に記載の技術では未だ不十分である。また本発明者により、高温での保存環境に晒されると組成物の粘度が上昇しやすく、口腔用組成物の使用感や分散性を低下させる要因となり得ることから、保存前後における粘度の変動を抑制すべきであることが判明した。
したがって、本発明は、油溶性薬効成分の歯茎や口腔内粘膜への高い吸着性を安定的に確保しつつ、粘度の保存安定性を高めることのできる口腔用組成物に関する。
そこで本発明者は、種々検討したところ、油溶性薬効成分及び水とともに、特定の高級アルコール及び界面活性剤を各々特定量で併用しつつ、特定の粘結剤を特定量で含有する一方、特定の粘結剤の含有を制限した口腔用組成物であれば、油溶性薬効成分による効果を十分に発揮させつつ、保存前後における粘度の変動を有効に抑制することができることを見出した。
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、並びに(E):
(A)油溶性薬効成分 0.01質量%以上3.5質量%以下、
(B)セタノール(b1)、及びステアリルアルコール(b2)を含む炭素数12以上22以下の高級アルコール 3質量%以上30質量%以下、
(C)ソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤を含む界面活性剤 0.1質量%以上10質量%以下、
(D)水、並びに
(E)カルボキシビニルポリマー、及び(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーから選ばれる1種又は2種以上の粘結剤 0.01質量%以上1質量%以下
を含有し、成分(B)の含有量と成分(E)の含有量との質量比((B)/(E))が3以上280以下であり、かつセルロース系粘結剤の含有量が0.3質量%以下である口腔用組成物に関する。
本発明の口腔用組成物によれば、ラメラ構造を有するα−ゲルを形成させることにより、油溶性薬効成分の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を良好に確保しつつ、高温での保存環境に左右されることなく、優れた粘度安定性を発揮することができる。そのため、油溶性薬効成分による薬効を経時的にも安定して発揮させることが可能であり、また良好な使用感を保持することもできる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の口腔用組成物は、成分(A)として、油溶性薬効成分を0.01質量%以上3.5質量%以下含有する。かかる成分(A)とともに、主として後述する成分(B)及び成分(C)によってラメラ層が重なり合った構造を有するα−ゲルが形成されて、成分(A)を良好に包埋することができ、歯茎や口腔内粘膜への高い吸着性能を発揮することが可能となる。
成分(A)としては、具体的には、グリチルレチン酸、トコフェロール、及びトコフェロール誘導体から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、これらにより、抗炎症作用、歯槽骨吸収抑制作用、ヒスタミン遊離抑制作用、血行促進作用等をもたらすことができ、また歯周炎や歯周病等の予防改善作用をもたらすことも可能となる。
グリチルレチン酸としては、α−グリチルレチン酸、β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸等が挙げられる。なかでもβ−グリチルレチン酸が好ましい。トコフェロール及びその誘導体としては、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール及びニコチン酸トコフェロール等が挙げられる。なかでも、酢酸トコフェロールが好ましく、酢酸−DL−α−トコフェロールがより好ましい。本発明では、これらグリチルレチン酸、トコフェロール、及びトコフェロール誘導体から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
成分(A)の含有量は、所望の薬理作用を有効に発揮させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、0.01質量%以上であって、好ましくは0.02質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.08質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、良好な香味を確保する等の観点から、本発明の口腔用組成物中に、3.5質量%以下であって、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.35質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、0.01質量%以上3.5質量%以下であって、好ましくは0.02〜1質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%であり、さらに好ましくは0.08〜0.5質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.08〜0.35質量%以下である。
また、成分(A)として、なかでもグリチルレチン酸を含むことが好ましく、グリチルレチン酸の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.04質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下である。
本発明の口腔用組成物は、成分(B)として、セタノール(b1)、並びにステアリルアルコール(b2)を含む炭素数12以上22以下の高級アルコールを3質量%以上30質量%以下含有する。すなわち、成分(B)は、成分(b1)のセタノール、及び成分(b2)のステアリルアルコールを必須成分とする炭素数12以上22以下の高級アルコールである。かかる成分(B)を含有することにより、上記成分(A)及び後述する成分(C)とともに、α−ゲルを形成し、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への高い吸着性能を確保することができる。
成分(B)の高級アルコールは、良好にα−ゲルを形成しつつ、口腔用組成物としての適度な粘度を保持し、かつ粘度の変動を抑制してその保存安定性を確保する観点から、成分(b1)のセタノール、及び成分(b2)のステアリルアルコールを含む高級アルコールであり、かつ炭素数12以上22以下であって、成分(b1)の含有量及び成分(b2)の含有量の合計量と、成分(B)の含有量との質量比(((b1)+(b2))/(B))は、好ましくは0.85以上であり、より好ましくは0.9以上であり、さらに好ましくは0.92以上であり、1以下である。
成分(b1)及び成分(b2)以外の成分(B)としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、及びベヘニルアルコールから選ばれる1種又は2種以上であることが好ましい。
成分(b1)の含有量と成分(b2)の含有量との質量比((b1)/(b2))は、良好にα−ゲルを形成しつつ、口腔用組成物としての安定性を向上する観点から、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは0.7以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下であり、さらに好ましくは2以下であり、よりさらに好ましくは1.7以下である。
また、成分(b1)及び成分(b2)以外の炭素数12以上22以下の高級アルコールである、ラウリルアルコール及びミリスチルアルコールは、味の観点から、ラウリルアルコールの含有量及びミリスチルアルコールの含有量の合計量と、成分(B)の含有量との質量比((ラウリルアルコール+ミリスチルアルコール)/(B))が、好ましくは0.05以下であり、より好ましくは0.03以下であり、さらに好ましくは0.01以下である。
成分(b1)及び成分(b2)以外の炭素数12以上22以下の高級アルコールである、ベヘニルアルコールは、成分(B)の析出や分離を抑制する観点から、ベヘニルアルコールの含有量と成分(B)の含有量との質量比(ベヘニルアルコール/(B))が、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.05以下である。
なお、炭素数10以下の高級アルコールは、口腔用組成物としての安定性の観点から、炭素数10以下の高級アルコールの含有量と成分(B)の含有量との質量比(炭素数10以下の高級アルコール/(B))が、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.01以下であり、さらに好ましくは0.005以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、炭素数10以下の高級アルコールを含有しないことがよりさらに好ましい。
また、炭素数24以上の高級アルコールは、口腔用組成物としての安定性の観点から、炭素数24以上の高級アルコールの含有量と成分(B)の含有量との質量比(炭素数24以上の高級アルコール/(B))が、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.01以下であり、さらに好ましくは0.005以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、炭素数24以上の高級アルコールを含有しないことがよりさらに好ましい。
成分(B)の含有量は、良好にα−ゲルを形成させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、3質量%以上であって、好ましくは4.5質量%以上である。また、成分(B)の含有量は、適度な粘度としつつ、かかる粘度の保存安定性を高める観点、及び組成物中における各成分の分散性を確保する等の観点から、本発明の口腔用組成物中に、30質量%以下であって、好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは18質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、3質量%以上30質量%以下であって、好ましくは3〜25質量%であり、より好ましくは3〜20質量%であり、さらに好ましくは4.5〜18質量%である。
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、成分(A)の薬理作用を確保しつつ、形成されるα−ゲルによって成分(A)を良好に包埋させる観点から、好ましくは0.002以上であり、より好ましくは0.004以上であり、より好ましくは0.005以上である。また、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、各成分の分散性を確保しつつ、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を高める観点から、好ましくは0.2以下あり、より好ましくは0.15以下であり、成分(A)としてグリチルレチン酸を含む場合、グリチルレチン酸の含有量と成分(B)の含有量との質量比(グリチルレチン酸/(B))は、好ましくは0.1以下であり、より好ましくは0.05以下である。そして、成分(A)含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、好ましくは0.002〜0.2あり、より好ましくは0.004〜0.2であり、さらに好ましくは0.005〜0.15であり、成分(A)としてグリチルレチン酸を含む場合、グリチルレチン酸の含有量と成分(B)の含有量との質量比(グリチルレチン酸/(B))は、好ましくは0.002〜0.1であり、より好ましくは0.003〜0.1であり、さらに好ましくは0.003〜0.05である。
本発明の口腔用組成物は、成分(C)として、ソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれるノニオン界面活性剤(c1)含む界面活性剤を0.1質量%以上10質量%以下含有する。このように、成分(c1)のノニオン界面活性剤を含む成分(C)の界面活性剤を特定の含有量で用いることにより、上記成分(A)の安定性を確保しつつ、さらに成分(B)とともにα−ゲルを形成して成分(A)を良好に包埋し、歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を効果的に高めることができる。
成分(c1)は、ソルビタン脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれるノニオン界面活性剤である。ソルビタン脂肪酸エステルとしては、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能の観点から、好ましくは炭素数10以上の脂肪酸由来のものであり、より好ましくは炭素数12以上の脂肪酸由来のものであり、好ましくは炭素数20以下の脂肪酸由来のものであり、より好ましくは炭素数18以下の脂肪酸由来のものから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。具体的には、例えば、モノカプリン酸ソルビタン、モノウンデシル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノトリデシル酸ソルビタン、モノミリスチン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、テトラオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、及びトリステアリン酸ソルビタン等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、及びモノステアリン酸ソルビタンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能の観点から、好ましくは炭素数6以上の脂肪酸由来のものであり、より好ましくは炭素数12以上の脂肪酸由来のものであり、好ましくは炭素数22以下の脂肪酸由来のものであり、より好ましくは炭素数20以下の脂肪酸由来のものから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。また、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルにおけるエチレンオキシ基の平均付加モル数は、同様の観点から、好ましくは5〜40モルであり、より好ましくは10〜25モルであり、さらに好ましくは10〜20モルである。かかるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノミリスチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、優れた起泡性を発揮しつつ低温安定性を高める観点から、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
成分(C)は、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能の観点から、さらに炭素数12以上22以下の脂肪酸又はその塩であるアニオン界面活性剤(c2)を含有することが好ましい。成分(c2)は、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能の観点、及び良好な香味を確保する観点から、炭素数12以上であって、好ましくは炭素数14以上であり、より好ましくは16以上であり、炭素数22以下であって、好ましくは炭素数20以下であり、より好ましくは18以下である。また、成分(c2)を構成する脂肪酸は、直鎖であってもよく分岐鎖であってもよいが、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能の観点から、直鎖であるのが好ましい。かかる成分(c2)としては、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヤシ油脂肪酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、パルミチン酸、ステアリン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、少なくとも成分(c2)としてステアリン酸又はその塩を含有することがさらに好ましい。また、成分(c2)を構成する塩としては、ナトリウム及びカリウムから選ばれるアルカリ金属;アルギニン等の塩基性アミノ酸;モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム等のアルカノールアンモニウム;アンモニウム等が挙げられる。なかでも成分(c2)を構成する塩として、組成物の安定性の観点から、ナトリウム及びカリウムから選ばれるアルカリ金属が好ましい。
成分(C)は、上記成分(c1)を含むほか、成分(c2)を含んでもよく、さらにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれるノニオン界面活性剤(c3)、並びにアルキル硫酸ナトリウム、アシルメチルタウリン塩、及びアシルサルコシン塩から選ばれるアニオン界面活性剤(c4)から選ばれる1種又は2種以上を含んでもよい。すなわち、本発明の口腔用組成物は、成分(C)の界面活性剤として、成分(c1)のノニオン界面活性剤を含むほか、さらに成分(c2)のアニオン界面活性剤を含んでもよく、さらにノニオン界面活性剤として、成分(c1)以外の成分(c3)を含むことができ、又はアニオン界面活性剤として、成分(c2)以外の成分(c4)を含むことができる。
成分(c3)のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油におけるエチレンオキシ基の平均付加モル数は、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を良好に保持しつつ、組成物の安定性を確保する観点から、好ましくは20〜100モルであり、より好ましくは40〜80モルである。成分(c3)のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の含有量は、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性を良好に保持する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.01質量%以下であり、或いは本発明の口腔用組成物はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有しないものであってもよい。
成分(c3)のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンが2〜20個縮合したポリグリセリンに、炭素数8〜24の脂肪酸が1〜4個エステル結合したものが挙げられる。かかるポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸部分としては、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を良好に保持しつつ、組成物の安定性を確保する観点から、炭素数12〜20の脂肪酸由来のものが好ましく、炭素数12〜18の脂肪酸由来のものがより好ましく、炭素数12〜14の脂肪酸由来のものがさらに好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、これらの脂肪酸部分から構成されるモノエステルであることが好ましい。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルにおけるグリセリンの平均縮合度は、同様の観点から、好ましくは2〜20であり、より好ましくは5〜12である。
成分(c3)のショ糖脂肪酸エステルとしては、炭素数6〜20の脂肪酸由来の脂肪酸部分から構成されるショ糖脂肪酸エステルが挙げられる。なかでも、かかるショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸部分としては、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を良好に保持しつつ、組成物の安定性を確保する観点、及び良好な使用感を付与する観点から、炭素数10〜18の脂肪酸由来のものが好ましく、炭素数12〜14の脂肪酸由来のものがより好ましい。
成分(c4)のアルキル硫酸塩、アシルメチルタウリン塩、及びアシルサルコシン塩から選ばれる1種又は2種以上のアニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩;N-ラウロイルサルコシン、N−ミリストイルサルコシン、N−パルミトイルサルコシン、N−ステアロイルサルコシン、N−イソステアロイルサルコシン、N−オレオイルサルコシン等のアシルサルコシンのナトリウム塩又はカリウム塩;カプリルメチルタウリン、ラウリルメチルタウリン、ミリスチルメチルタウリン、パルミチルメチルタウリン、ステアリルメチルタウリン等のアシルメチルタウリンのナトリウム塩又はカリウム塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、ラウリル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン塩、N−ミリストイルサルコシン塩、ラウリルメチルタウリン塩、及びミリスチルメチルタウリン塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ラウリル硫酸ナトリウムがより好ましい。
成分(c1)の含有量は、成分(A)の安定性を確保しつつ、さらに成分(B)とともにα−ゲルを形成して成分(A)を良好に包埋し、歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を効果的に高める観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.4質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、組成物の安定性を確保する観点、及び適度な粘度を保持しつつ粘度安定性を確保し、風味とのバランスも保持する観点から、10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは6質量%以下である。
また、成分(c1)の含有量は、成分(c2)を含有しない場合には、成分(A)の安定性を確保しつつ、さらに成分(B)とともにα−ゲルを形成して成分(A)を良好に包埋し、歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を効果的に高める観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは1.5質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上である。
成分(c1)の含有量は、成分(c2)を含有する場合には、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以下である。
成分(c2)の含有量は、成分(A)の安定性を確保しつつ、さらに成分(B)とともにα−ゲルを形成して成分(A)を良好に包埋し、歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を効果的に高める観点、適度な粘度を付与する観点から、本発明の口腔用組成物中に、脂肪酸換算量で、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.08質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。また、成分(c2)の含有量は、組成物の安定性を確保する観点、適度な粘度を保持しつつ粘度安定性を確保し、風味とのバランスも保持する観点、口腔内粘膜への為害性を低減する観点から、本発明の口腔用組成物中に、脂肪酸換算量で、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。
成分(c1)の含有量及び成分(c2)の脂肪酸換算量の合計量は、成分(A)の安定性を確保しつつ、さらに成分(B)とともにα−ゲルを形成して成分(A)を良好に包埋し、歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を効果的に高める観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、組成物の安定性を確保する観点、及び適度な粘度を保持しつつ粘度安定性を確保し、風味とのバランスも保持する観点から、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは6.5質量%以下であり、また本発明の口腔用組成物は、成分(c1)及び成分(c2)の双方を含有することが好ましい。
成分(c3)の含有量は、成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を向上する観点、及び成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能と風味とのバランスを確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.25質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.05質量%以下である。
成分(c4)の含有量は、歯茎や口腔内粘膜への為害性、及び風味の観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.7質量%以下である。
成分(C)の含有量は、成分(A)の安定性を確保しつつ、さらに成分(B)とともにα−ゲルを形成して成分(A)を良好に包埋し、歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を効果的に高める観点から、本発明の口腔用組成物中に、0.1質量%以上であって、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.4質量%以上である。また、成分(C)の含有量は、組成物の安定性を確保する観点、及び適度な粘度を保持しつつ粘度安定性を確保し、風味とのバランスも保持する観点から、本発明の口腔用組成物中に、10質量%以下であって、好ましくは9質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、0.1質量%以上10質量%以下であって、好ましくは0.2〜9質量%であり、より好ましくは0.3〜8質量%であり、さらに好ましくは0.4〜7質量%である。
本発明の口腔用組成物において、成分(B)の含有量と、成分(c1)との質量比((B)/(c1))は、良好にα−ゲルを形成して成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を高める観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.5以上であり、さらに好ましくは2以上である。また、成分(B)の含有量と、成分(c1)との質量比((B)/(c1))は、口腔用組成物としての適度な粘度を保持しつつ粘度安定性を確保する観点、組成物としての安定性を確保する観点、及び良好な使用感を付与する観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは4.1以下である。そして、成分(B)の含有量と、成分(c1)の含有量との質量比((B)/(c1))は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1.5〜10であり、さらに好ましくは2〜4.1である。
本発明の口腔用組成物において、成分(B)の含有量と、成分(c2)との質量比((B)/(c2))は、良好にα−ゲルを形成して成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を高める観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.5以上であり、さらに好ましくは2以上である。また、成分(B)の含有量と、成分(c2)との質量比((B)/(c2))は、口腔用組成物としての適度な粘度を保持しつつ粘度安定性を確保する観点、組成物としての安定性を確保する観点、及び良好な使用感を付与する観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは10以下である。そして、成分(B)の含有量と、成分(c2)の含有量との質量比((B)/(c2))は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1.5〜15であり、さらに好ましくは2〜10である。
本発明の口腔用組成物において、成分(B)の含有量と、成分(c1)を含むノニオン界面活性剤の含有量との質量比((B)/ノニオン界面活性剤)は、良好にα−ゲルを形成して成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を高める観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.2以上であり、さらに好ましくは1.4以上である。また、成分(B)の含有量と、成分(c1)を含むノニオン界面活性剤の含有量との質量比((B)/ノニオン界面活性剤)は、口腔用組成物としての適度な粘度を保持しつつ粘度安定性を確保する観点、及び組成物としての安定性の観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは8以下である。そして、成分(B)の含有量と、成分(c1)を含むノニオン界面活性剤の含有量との質量比((B)/ノニオン界面活性剤)は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1.2〜10であり、さらに好ましくは1.4〜8である。
本発明の口腔用組成物が成分(C)として成分(c2)を含む場合、成分(B)の含有量と、成分(c2)を含むアニオン界面活性剤の含有量との質量比((B)/アニオン界面活性剤)は、良好にα−ゲルを形成して成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を高める観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.4以上である。また、成分(B)の含有量と、成分(c2)を含むアニオン界面活性剤の含有量との質量比((B)/アニオン界面活性剤)は、口腔用組成物としての適度な粘度を保持しつつ粘度安定性を確保する観点、組成物としての安定性を確保する観点、及び良好な使用感を付与する観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは9以下である。そして、成分(B)の含有量と、成分(c2)を含むアニオン界面活性剤の含有量との質量比((B)/アニオン界面活性剤)は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1.4〜9である。
本発明の口腔用組成物が成分(C)として成分(c2)を含む場合、成分(B)の含有量と、成分(c1)の含有量及び成分(c2)の脂肪酸換算量の合計量との質量比((B)/((c1)+(c2)))は、良好にα−ゲルを形成して成分(A)の歯茎や口腔内粘膜への吸着性能を高める観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.2以上であり、さらに好ましくは1.5以上である。また、成分(B)の含有量と、成分(c1)の含有量及び成分(c2)の脂肪酸換算量の合計量との質量比((B)/((c1)+(c2)))は、口腔用組成物としての適度な粘度を保持しつつ粘度安定性を確保する観点、組成物としての安定性を確保する観点、及び良好な使用感を付与する観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは4以下である。そして、成分(B)の含有量と、成分(c1)の含有量及び成分(c2)の脂肪酸換算量の合計量との質量比((B)/((c1)+(c2)))は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1.2〜10であり、さらに好ましくは1.5〜4である。
本発明の口腔用組成物は、口腔内粘膜への為害性を防止する観点から、カチオン性殺菌剤以外のカチオン性界面活性剤の含有を制限するのが好ましい。かかるカチオン性殺菌剤以外のカチオン性界面活性剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、カチオン性殺菌剤以外のカチオン性界面活性剤を含有しないのが好ましい。なお、カチオン性殺菌剤としては、第4級アンモニウム化合物、及びビグアニド化合物から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。第4級アンモニウム化合物としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウロイルコラミノホルミルメチルピリジニウム等が挙げられる。ビグアニド化合物としては、クロルヘキシジン及びその塩が挙げられ、かかる塩としては、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジンが挙げられる。
本発明の口腔用組成物は、成分(D)の水を含有する。本発明における成分(D)の水とは、口腔用組成物に配合した精製水等だけでなく、例えば処方する際に用いる70%ソルビトール液(水溶液)や48%水酸化カリウム液(水溶液)のように、配合した各成分に含まれる水分をも含む、口腔用組成物中に含まれる全水分を意味する。かかる成分(D)の水を含有することにより、口腔用組成物としての適度な粘度や良好な保形性を確保しつつ、形成されるα−ゲルを組成物中で良好に保持しながら各成分を良好に分散又は溶解させ、粘度安定性をも確保しながら良好な使用感と成分(A)の歯茎は口腔内粘膜への吸着性を向上することができる。成分(D)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上であり、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは92質量%以下である。そして、成分(D)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは30〜95質量%であり、より好ましくは40〜92質量%であり、さらに好ましくは50〜92質量%であり、よりさらに好ましくは55〜92質量%である。
なお、本発明の口腔用組成物の成分(D)の含有量、すなわち水分量は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業)を用いることができる。この装置では、口腔用組成物を5gとり、無水メタノール25gにより懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して水分量を測定することができる。
本発明の口腔用組成物は、成分(E)として、カルボキシビニルポリマー、及びアクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーから選ばれる1種又は2種以上の粘結剤を0.01質量%以上1質量%以下含有する。これにより、高温保存環境に晒されても粘度の過度な上昇を効果的に抑制しつつ、高い粘度安定性を付与することができ、また高温保存環境に晒された際に生じがちな成分(A)〜(C)により形成されたα−ゲルの崩壊を有効に防止することもできる。
カルボキシビニルポリマーとは、主モノマーがアクリル酸である重合体であり、アリルエーテル等により架橋されていてもよい。例えば、カーボポール940、941(以上、Lubrizol Advanced Materials 社)等の市販品を用いることができる。
(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーとは、アルキル(メタ)アクリル酸とアクリル酸、メタクリル酸又はこれらの低級アルキルエステルとの共重合体であって、ショ糖のアリルエーテル又はペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋したものである。例えば、ペムレンTR−1、ペムレンTR−2、カーボポールETD2020、カーボポール1342、カーボポール1382(以上、Lubrizol Advanced Materials 社)等の市販品を用いることができる。
これら成分(E)は、塩基との中和により、塩として用いるのが好ましい。塩基としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属水酸化物;アンモニウム;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来のアンモニウム;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸が挙げられ、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムがより好ましい。
成分(E)の含有量は、組成物としての適度な粘度を付与する観点、及び粘度安定性を確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、0.01質量%以上であって、好ましくは0.04質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。また、成分(E)の含有量は、成分(A)〜(C)により形成されたα−ゲルの安定性を確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、1質量%以下であって、好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.6質量%以下であり、さらに好ましくは0.4質量%以下である。そして、成分(E)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、0.01質量%以上1質量%以下であって、好ましくは0.04〜0.8質量%であり、より好ましくは0.1〜0.6質量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.4質量%である。
成分(B)の含有量と成分(E)の含有量との質量比((B)/(E))は、組成物としての適度な粘度を付与しつつ、粘度安定性を確保する観点から、3以上であって、好ましくは7以上であり、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは15以上である。また、成分(B)の含有量と成分(E)の含有量との質量比((B)/(E))は、成分(A)〜(C)により形成されるα−ゲルの崩壊を有効に防止しつつ、成分(A)の流動性を確保する観点から、280以下であって、好ましくは250以下であり、より好ましくは130以下であり、さらに好ましくは100以下である。そして、成分(B)の含有量と成分(E)の含有量との質量比((B)/(E))は、3以上280以下であって、好ましくは7〜250であり、より好ましくは10〜130であり、さらに好ましくは15〜100である。
成分(c2)の含有量と成分(E)の含有量との質量比((c2)/(E))は、組成物としての適度な粘度を付与しつつ、粘度安定性を確保する観点から、好ましくは0.4以上であり、より好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは0.8以上である。また、成分(c2)の含有量と成分(E)の含有量との質量比((c2)/(E))は、成分(A)〜(C)により形成されるα−ゲルの崩壊を有効に防止しつつ、成分(A)の流動性を確保する観点から、好ましくは200以下であり、より好ましくは100以下であり、さらに好ましくは60以下であり、よりさらに好ましくは30以下である。そして、成分(B)の含有量と成分(E)の含有量との質量比((c2)/(E))は、好ましくは0.4〜200であり、より好ましくは0.6〜100であり、さらに好ましくは0.8〜60であり、よりさらに好ましくは0.8〜30である。
本発明の口腔用組成物は、セルロース系粘結剤の含有が0.3質量%以下である。このようにセルロース系粘結剤の含有を制限することにより、適度な粘度や保形性を維持しながら、高温保存環境に晒された際における粘度上昇を有効に抑制し、また成分(A)〜(C)により形成されるα−ゲルの崩壊を有効に防止して、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への優れた吸着性能を保持することができる。セルロース系粘結剤としては、具体的には、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)が挙げられる。
かかるセルロース系粘結剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、0.3質量%以下であって、好ましくは0.25質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、或いは不可避的に混入する場合を除き、本発明の口腔用組成物は、セルロース系粘結剤を含有しなくともよい。
本発明の口腔用組成物は、成分(E)及びセルロース系粘結剤以外の粘結剤を含有することができる。成分(E)及びセルロース系粘結剤以外の粘結剤としては、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ペクチン、寒天、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェラガム、タマリドガム、及びサイリウムシードガム等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、カラギーナン、キサンタンガムから選ばれる1種又は2種の粘結剤が好ましい。これら成分(E)及びセルロース系粘結剤以外の粘結剤の含有量は、粘度安定性を確保する観点、及び成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性を向上する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下である。
本発明の口腔用組成物は、成分(E)による粘弾性の発現を補強する観点から、さらに増粘剤を含有することができる。増粘剤としては、吸油量が180〜350mL/100gの増粘性シリカ、及び脂肪酸デキストリンから選ばれる1種又は2種が好ましい。かかる増粘性シリカの含有量は、粘度安定性を確保する観点、及び成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性を向上する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下である。また脂肪酸デキストリンの含有量は、粘度安定性を確保する観点、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性を向上する観点、及び風味とのバランスの観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である。なお、脂肪酸デキストリンとしては、パルミチン酸デキストリンが好ましい。
本発明の口腔用組成物において、口腔用組成物に配合できる限られた界面活性剤の範囲での組成物の安定性を向上し、上記成分(A)〜(C)によるα−ゲルの形成が阻害されるのを有効に抑制する観点、及び風味を良好なものとする観点から、上記成分(B)の含有量に対し、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び香料以外の油剤(F)の含有を制限するのが好ましい。
かかる成分(F)としては、例えば、流動パラフィン、ワセリン、ミネラルオイル、軽質流動パラフィン、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、ミツロウウ、スクワラン、スクワレン等の炭化水素油;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸プロピル、セバシン酸ジエチル、グリセリン脂肪酸エステル等のエステル油;トリグリセライド及びこれを含むオリーブ油、ナタネ油、シア脂、米糠油の植物油;シリコーン油;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等の防腐剤;油溶性殺菌剤等が挙げられる。
具体的には、上記成分(B)の含有量と、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び香料以外の油剤(F)の含有量との質量比((F)/(B))は、好ましくは1未満であり、より好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.3以下である。
また、成分(F)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.5質量%以下である。なお、成分(F)が25℃で液体の油剤である場合には、かかる成分(F)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。
本発明の口腔用組成物は、上記成分(A)〜(C)により形成されるα−ゲルが崩壊するのを抑制する観点、特に成分(c2)を含有する場合は、成分(c2)と多価金属とが結合して金属塩が析出するのを防止することを可能とし、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への優れた吸着性能を確保する観点から、多価金属を含む研磨剤(研磨性紛体)の含有を制限するのが好ましい。かかる多価金属としては、例えばアルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンが挙げられ、これらを含む研磨剤としては、炭酸カルシウム等の水不溶性カルシウム化合物、リン酸水素カルシウム、不溶性メタリン酸カリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛等が挙げられる。
多価金属を含む研磨剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、或いは不可避的に混入する場合を除き、本発明の口腔用組成物は多価金属を含む研磨剤を含有しないのが好ましい。
また、本発明の口腔用組成物は、同様の観点から、ストロンチウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、鉄、銅、亜鉛、及びマンガンから選ばれる多価金属の含有量が、金属原子換算量で、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.1質量%以下である。
本発明の口腔用組成物は、吸油量が50〜150mL/100gの研磨性シリカを含有することができる。なお、研磨性シリカは、前述の多価金属を含む研磨剤(研磨性紛体)以外の研磨剤である。研磨性シリカの含有量は、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性を向上する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは7質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下であり、よりさらに好ましくは2質量%以下であり、よりさらに好ましくは1質量%以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、吸油量が50〜150mL/100gの研磨性シリカを含有しないものであってもよい。
なお、吸油量とは、シリカが担持できる油量を示したものであり、測定方法はJIS K5101−13−2(2004年制定)の方法により、吸収される煮あまに油の量により特定される値を意味する。
本発明の口腔用組成物は、上記成分(A)〜(C)により形成されるα−ゲルが崩壊するのを有効に抑制して、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への優れた吸着性能を保持する観点、適度な粘度を確保する観点、及び刺激の抑制の観点から、エタノールの含有を制限するのが好ましい。具体的には、エタノールの含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、エタノールを含有しないのが好ましい。
本発明の口腔用組成物は、風味の観点から、さらに糖アルコールを含有することが好ましい。かかる糖アルコールの含有量は、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性能を向上させる観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下であり、風味の観点から、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。かかる糖アルコールとしては、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノース、及びマンニトールから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、水への溶解性が高く、組成物をなめらかな感触にする観点から、ソルビトール、及びキシリトールから選ばれる1種又は2種がより好ましく、糖アルコールとして、少なくともソルビトールを含有することが好ましい。
本発明の口腔用組成物は、歯肉炎予防効果や口臭予防効果の観点から、銅クロロフィリンナトリウムを含有することができる。かかる銅クロロフィリンナトリウムの含有量は、歯肉炎予防効果や口臭予防効果を得る観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.004質量%以上であり、さらに好ましくは0.007質量%以上である。また、銅クロロフィリンナトリウムの含有量は、銅クロロフィリンナトリウムの安定性を確保しつつ、不要な反応を効果的に抑制する観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.05質量%以下である。そして、銅クロロフィリンナトリウムの含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.001〜0.5質量%であり、より好ましくは0.004〜0.3質量%であり、さらに好ましくは0.007〜0.1質量%であり、よりさらに好ましくは0.007〜0.05質量%である。
本発明の口腔用組成物において、銅クロロフィリンナトリウムの含有量と、成分(A)に含まれるβ−グリチルレチン酸の含有量との質量比(銅クロロフィリンナトリウム/β−グリチルレチン酸)は、歯肉炎予防効果や口臭予防効果を充分に発揮させる観点から、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上である。また、銅クロロフィリンナトリウムの含有量と、成分(A)に含まれるβ−グリチルレチン酸の含有量との質量比(銅クロロフィリンナトリウム/β−グリチルレチン酸)は、銅クロロフィリンナトリウムの安定性を確保しつつ、不要な反応を効果的に抑制する観点から、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.5以下である。そして、銅クロロフィリンナトリウムの含有量と、成分(A)に含まれるβ−グリチルレチン酸の含有量との質量比(銅クロロフィリンナトリウム/β−グリチルレチン酸)は、好ましくは0.05〜1であり、より好ましくは0.1〜0.5である。
本発明の口腔用組成物において、銅クロロフィリンナトリウムの含有量と、成分(B)の高級アルコールの含有量との質量比(銅クロロフィリンナトリウム/(B))は、歯肉炎予防効果や口臭予防効果を充分に発揮させる観点から、好ましくは0.0003以上であり、より好ましくは0.0005以上である。また、銅クロロフィリンナトリウムの含有量と、成分(B)の高級アルコールの含有量との質量比(銅クロロフィリンナトリウム/(B))は、銅クロロフィリンナトリウムの安定性を確保しつつ、不要な反応を効果的に抑制する観点から、好ましくは0.003以下であり、より好ましくは0.001以下である。そして、銅クロロフィリンナトリウムの含有量と、成分(B)の高級アルコールの含有量との質量比(銅クロロフィリンナトリウム/(B))は、好ましくは0.0003〜0.003であり、より好ましくは0.0005〜0.001である。
本発明の口腔用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分以外に、多価アルコール、甘味剤、湿潤剤、保存料、フッ化物、酵素、色素等を含有させることができる。
本発明の口腔用組成物の20℃における粘度は、適度な粘度を保持しつつ優れた粘度安定性を確保する観点、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への優れた吸着性能を発揮させる観点、及び良好な保形性や使用感を確保する観点から、好ましくは6000dPa・s以下であり、より好ましくは5000dPa・s以下であり、さらに好ましくは4000dPa・s以下であり、よりさらに好ましくは3800dPa・s以下であり、好ましくは300dPa・s以上であり、より好ましくは700dPa・s以上であり、さらに好ましくは1000dPa・s以上であり、よりさらに好ましくは1400dPa・s以上である。そして、本発明の口腔用組成物の20℃における粘度は、好ましくは6000dPa・s以下であり、より好ましくは300〜5000dPa・sであり、さらに好ましくは700〜4000dPa・sであり、よりさらに好ましくは1000〜3500dPa・sであり、よりさらに好ましくは1400〜3500da・sである。かかる粘度は、粘度測定用の容器に詰め、20℃の恒温器で24時間保存した後、ヘリパス型粘度計(VISCOMETER TVB−10 東機産業)を用いて、ロータT−C、回転数2.5rpm、1分間の条件で測定することができる。
本発明の口腔用組成物の形態としては、練歯磨剤、塗布剤、含嗽剤、液状歯磨剤等が挙げられる。なかでも、本発明の口腔用組成物を歯茎又は口腔内粘膜へ十分に行き渡らせ、成分(A)を効果的に吸着させる観点から、液状歯磨剤、練歯磨剤であるのが好ましい。本発明の口腔用組成物は、好ましくは口腔内に適用し、適用後に水を口腔内に含み嗽して用いる。適用後に水を口腔内に含嗽しても、歯茎又は口腔内粘膜に成分(A)を効果的に吸着させることができる。口腔内への適用方法は、塗布、歯ブラシによるブラッシング、又は含嗽のいずれであってもよく、塗布又は歯ブラシによるブラッシングが好ましい。
本発明の口腔用組成物の製造方法は、成分(B)の融点以上90℃以下の温度で、成分(B)と成分(C)を含有する混合液を混合する工程を備える。具体的には、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性能を有効に高める観点から、以下の工程(X)を備える製造方法であるのが好ましく、或いは成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への吸着性能を有効に高める観点、及び製造設備の簡便化の観点から、以下の工程(Y)を備える製造方法であるのが好ましい。
工程(X)を備える製造方法とは、成分(B)の融点以上90℃以下の温度で、成分(B)と成分(C)を含有する混合液1−1を混合した後、得られた混合液1−1に成分(D)を添加及び混合して混合液1−2を得る工程(X)を備える製造方法である。かかる製造方法においては、成分(A)は混合液1−1に含めて混合することが好ましいが、工程(X)を経た後に得られる混合液1−2に香料等とともに添加して混合してもよい。また、成分(D)の一部を混合液1−1に含めて混合してもよく、成分(C)が(c2)を含む場合には成分(D)の一部を混合液1−1に含めることが好ましい。混合液1−1を混合する際の温度、好ましくは混合液1−2を混合する際の温度は、成分(B)の融点以上90℃以下の温度であればよく、成分(B)の中で最も高い融点以上の温度であり、より好ましくは成分(B)の融点以上85℃以下の温度であり、さらに好ましくは80℃以上85℃以下の温度である。また、成分(A)〜成分(C)の混合順序は特に制限されない。成分(B)の融点以上の温度としては、好ましくは65℃以上であり、より好ましくは75℃以上であり、さらに好ましくは80℃以上である。なお、成分(E)は成分(D)とともに、或いは成分(D)を混合した後に添加及び混合すればよい。
また工程(Y)を備える製造方法とは、成分(B)〜(D)を含む混合液2を混合する工程(Y)を備える製造方法である。かかる製造方法においては、成分(A)は混合液2に含めて混合することが好ましいが、工程(Y)を得た後に得られる混合液2に香料等とともに添加して混合してもよい。なお、成分(E)は成分(D)とともに、或いは成分(D)を混合した後に添加及び混合すればよい。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
[実施例1〜6、比較例1〜2]
表1に示す処方にしたがい、各口腔用組成物を製造した。具体的には、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を80℃(80〜82℃)に加温して混合し、約10分間撹拌した。次いで、成分(D)及び成分(E)を添加して混合した後、その他の成分を添加して10分間混合することにより、口腔用組成物を得た。
得られた各口腔用組成物を用い、下記方法にしたがって各条件下における粘度を測定した。
結果を表1に示す。
《粘度の測定》
得られた各口腔用組成物について、下記方法にしたがって、初期粘度として1日保存後の粘度(P)を測定し、50℃恒温槽で2週間保存後の粘度として及び粘度(R)を測定した。測定には、ヘリパス型粘度計(VISCOMETER TVB−10 東機産業)を用い、ロータT−C、回転数2.5rpm、1分間の測定条件とした。
次いで、得られた値から、初期粘度に対する粘度の比(R)/(P)を算出した。かかる値が小さいほど、初期から保存後にわたり組成物の粘度の変動を抑制し、優れた粘度安定性を有することを意味する。
・1日後粘度(P)
得られた各口腔用組成物を粘度測定用の容器に詰め、25℃の恒温器で24時間保存した後に25℃の環境で粘度(P)を測定した。
・50℃2W粘度(R)
得られた各口腔用組成物を粘度測定用の容器に詰め、50℃の恒温器で2週間保存した後に粘度(R)を測定した。
Figure 0006851767
[実施例7〜11、比較例3]
表2に示す処方にしたがい、各口腔用組成物を製造した。具体的には、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を80℃(80〜82℃)に加温して混合し、約10分間撹拌した。次いで、成分(D)及び成分(E)を添加して混合した後、その他の成分を添加して10分間混合することにより、口腔用組成物を得た。
得られた各口腔用組成物を用い、下記方法にしたがってβ−グリチルレチン酸の吸着量を測定し、α−ゲルの形成の観察を行った。また各条件下における粘度の測定に関しては、実施例1と同様の手法を用いた。
結果を表2に示す。
《β−グリチルレチン酸の吸着量の測定》
調製してから24時間室温(25℃)で保存後の各口腔用組成物5.0gを、シリコーンシート(30mm×30mm、厚さ0.1mm)の直径25mmのガラス製の筒の内部に添加し、60秒間接触させてから、精製水2mLを添加して精製水とともにピペットで吸い取った後、同様に精製水2mLで2回洗浄した。その後、更に精製水2mLで5回洗浄後、シリコーンシートをメタノール1mLに浸漬し、ボルテックスミキサー(SHIBATA TEST TUBE MIXER TTM―1、柴田科学株式会社製)にて30秒間振盪した後、超音波洗浄装置(ASU CLEANER ASU−3(AS ONE))にて30分間処理を行った。メタノール中のβ−グリチルレチン酸の量を下記の条件によりHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて測定した。
一方、グリチルレチン酸の標準液は、β−グリチルレチン酸をメタノールで0.67、1.35、2.71、5.43ppmに希釈したものを用いた。β−グリチルレチン酸の含有量は、HPLCにより測定された各標準溶液のピーク面積を基に作成した検量線を用いて算出した。
(HPLCの測定条件)
装置:SHIMADZU Prominence(LC−20AD)(島津製作所) カラム:LiChroCART 125−4.0 LiChrospher100 RP−18(e)(5μm)(関東化学)
カラム温度:40℃
移動相:0.1w/v%リン酸含有メタノール(メタノール:水=8:2)
流量:1.0mL/min
サンプル注入量:20μL
測定波長:250nm
Figure 0006851767
[実施例12]
表4に示す処方にしたがい、口腔用組成物を製造した。具体的には、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を80℃(80〜82℃)に加温して混合し、約10分間撹拌した。次いで、成分(D)及び成分(E)を添加して混合した後、その他の成分を添加して10分間混合することにより、口腔用組成物を得た。
得られた口腔用組成物のほか、上記実施例4〜5及び比較例1で得られた口腔用組成物も用い、下記方法にしたがってβ−グリチルレチン酸の吸着量を測定し、α−ゲルの形成の観察を行った。また各条件下における粘度の測定に関しては、実施例1と同様の手法を用いた。
結果を表4に示す。
《β−グリチルレチン酸の吸着量の測定》
調製してから24時間室温(25℃)で保存後の各口腔用組成物を、食肉処理されたブタ下顎骨に付随する歯肉上に塗布し、180秒間接触させてから、精製水を含浸させた脱脂綿で3回清拭後、精製水2mLで10回洗浄した。処理部の一部を直径6mmの生検トレパン(BP−60F(カイインダストリーズ))で摘出後、メタノール1mLに浸漬し、超音波洗浄装置(ASU CLEANER ASU−3(AS ONE))にて90分間処理を行った。その後、メタノール中のβ−グリチルレチン酸の量を下記の条件によりLC−MS(高速液体クロマトグラフ質量分析計)にて測定した。
一方、グリチルレチン酸の標準液は、β−グリチルレチン酸をメタノールで1、10、100、1000ppbに希釈したものを用いた。β−グリチルレチン酸の含有量は、LC−MSにより測定された各標準溶液のピーク面積を基に作成した検量線を用いて算出し、その値から単位面積当たりのβ−グリチルレチン酸の吸着量を求めた。
(HPLCの測定条件)
装置:Nexcera(島津製作所)
カラム:Capcell core C18 2.7μm 2.1*50(資生堂) カラム温度:40℃
移動相:下記表3に示す条件
流量:0.6mL/min
サンプル注入量:5μL
Figure 0006851767
A:32.5mM 酢酸アンモニウム水
B:メタノール
(MS測定装置)
AB sciex Triple Quad4500(エービーサイエックス)
Figure 0006851767
なお、表1〜2、4に示す各口腔用組成物のうち、表2に示す比較例3以外、良好にα−ゲルが形成されていることが確認された。
これらの結果より、実施例の口腔用組成物は、高温保存環境に晒されても粘度の変動を有効に抑制しつつ、成分(A)の歯茎又は口腔内粘膜への高い吸着性能を良好に保持することがわかる。
本発明の口腔用組成物として、下記に示す処方の歯磨剤を常法により各々調製することができる。
[処方例1 歯磨剤]
銅クロロフィリンナトリウム 0.01質量%
β−グリチルレチン酸 0.05質量%
セタノール 7.5質量%
ステアリルアルコール 5質量%
モノステアリン酸ソルビタン 3質量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 0.5質量%
ステアリン酸 2質量%
48%苛性ソーダ 1質量%
カルボキシビニルポリマー 0.2質量%
ソルビトール(70%) 10質量%
グリセリン 15質量%
サッカリンナトリウム 0.01質量%
香料 1.3質量%
精製水 54.43質量%
計 100質量%
[処方例2 歯磨剤]
銅クロロフィリンナトリウム 0.01質量%
β−グリチルレチン酸 0.05質量%
酢酸DL-α-トコフェロール 0.2質量%
塩化セチルピリジニウム 0.01質量%
フッ化ナトリウム 0.21質量%
セタノール 7.5質量%
ステアリルアルコール 5質量%
モノステアリン酸ソルビタン 3質量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 0.5質量%
ステアリン酸 2質量%
48%苛性ソーダ 1質量%
カルボキシビニルポリマー 0.2質量%
ソルビトール(70%) 10質量%
グリセリン 15質量%
サッカリンナトリウム 0.01質量%
香料 1.3質量%
精製水 54.01質量%
計 100質量%
[処方例3 歯磨剤]
銅クロロフィリンナトリウム 0.01質量%
β−グリチルレチン酸 0.05質量%
酢酸DL-α-トコフェロール 0.2質量%
塩化セチルピリジニウム 0.01質量%
フッ化ナトリウム 0.33質量%
(フッ素原子換算量で1500ppm)
セタノール 7.5質量%
ステアリルアルコール 5質量%
モノステアリン酸ソルビタン 3質量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 0.5質量%
ステアリン酸 2質量%
48%苛性ソーダ 1質量%
カルボキシビニルポリマー 0.2質量%
ソルビトール(70%) 10質量%
グリセリン 15質量%
サッカリンナトリウム 0.01質量%
香料 1.3質量%
精製水 53.89質量%
計 100質量%
[処方例4 歯磨剤]
銅クロロフィリンナトリウム 0.01質量%
β−グリチルレチン酸 0.05質量%
酢酸DL-α-トコフェロール 0.2質量%
塩化セチルピリジニウム 0.01質量%
モノフルオロリン酸ナトリウム 1.1質量%
(フッ素原子換算量で1500ppm)
セタノール 7.5質量%
ステアリルアルコール 5質量%
モノステアリン酸ソルビタン 3質量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 0.5質量%
ステアリン酸 2質量%
48%苛性ソーダ 1質量%
カルボキシビニルポリマー 0.2質量%
ソルビトール(70%) 10質量%
グリセリン 15質量%
サッカリンナトリウム 0.01質量%
香料 1.3質量%
精製水 53.12質量%
計 100質量%

Claims (10)

  1. 次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、並びに(E):
    (A)油溶性薬効成分 0.08質量%以上3.5質量%以下、
    (B)セタノール(b1)、及びステアリルアルコール(b2)を含む炭素数12以上22以下の高級アルコール 4.5質量%以上18質量%以下、
    (C)炭素数10以上20以下の脂肪酸由来のソルビタン脂肪酸エステル、及び炭素数12以上20以下の脂肪酸由来のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のノニオン界面活性剤(c1)、並びに炭素数12以上22以下の脂肪酸又はその塩であるアニオン界面活性剤(c2)を含む界面活性剤 0.4質量%以上質量%以下、
    (D)水、並びに
    (E)カルボキシビニルポリマー、及び(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルコポリマーから選ばれる1種又は2種以上の粘結剤 0.04質量%以上0.4質量%以下を含有し、成分(B)の含有量と成分(E)の含有量との質量比((B)/(E))が15以上280以下であり、成分(b1)の含有量及び成分(b2)の含有量の合計量と、成分(B)の含有量との質量比(((b1)+(b2))/(B))が0.85以上1以下であり、かつセルロース系粘結剤の含有量が0.3質量%以下である口腔用組成物。
  2. 多価金属を含む研磨剤の含有量が、5質量%以下である請求項に記載の口腔用組成物。
  3. ストロンチウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、鉄、銅、亜鉛、及びマンガンから選ばれる多価金属の含有量が、金属原子換算量で2質量%以下である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
  4. 成分(A)が、グリチルレチン酸、トコフェロール、及びトコフェロール誘導体から選ばれる1種又は2種以上である請求項1〜のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
  5. 成分(A)、(B)、(C)及び香料以外の油剤(F)の含有量と、成分(B)の含有量との質量比((F)/(B))が1未満である請求項1〜のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
  6. ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノール、及びマンニトールから選ばれる1種又は2種以上の糖アルコールの含有量が、30質量%以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
  7. 成分(E)及びセルロース系粘結剤以外の粘結剤の含有量が、0.5質量%以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
  8. 炭素数10以下の高級アルコールの含有量と成分(B)の含有量との質量比(炭素数10以下の高級アルコール/(B))が0.1以下であり、かつ炭素数24以上の高級アルコールの含有量と成分(B)の含有量との質量比(炭素数24以上の高級アルコール/(B))が0.1以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
  9. ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれるノニオン界面活性剤(c3)の含有量が0.5質量%以下であり、かつアルキル硫酸ナトリウム、アシルメチルタウリン塩、及びアシルサルコシン塩から選ばれるアニオン界面活性剤(c4)の含有量が2質量%以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
  10. 成分(A)、成分(B)、成分(C)及び香料以外の油剤(F)の含有量が、5質量%以下である請求項1〜9のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
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