JP2015230831A - 光放射構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明は、複数の微細孔を持つ光放射構造体であって、前記微細孔が第1の金属元素を含む第1の材料を備え、前記微細孔以外の表面の少なくとも一部に前記第1の金属元素とは異なる第2の金属元素を含む第2の材料を備え、前記光放射構造体が発する熱放射スペクトルのピーク波長より大きい波長の光において前記第1の材料の放射率が前記第2の材料の放射率より大きいことを特徴とする光放射構造体である。
【選択図】 図12
Description
表面に同じく高融点材料を被着させた構造を持つものが記載されている。被着材には基材と同質または異質の薄膜を形成する。(0014)段落には「フィラメント基材と被着材は同質の高融点材料を用いるのが好ましいが、所望により異なる材質の高融点材料を用いることもできる。」とある。被着材はマイクロキャビティの開口部を狭めるためのものであり、基材と被着材が異なる材料である必要はなく、異なる材料の例も示されていない。
[第1の実施例]
[構造の説明]
本発明の第1の実施例である光放射構造体は長さ5cm、幅2cm、厚さ6mmの板状であり、表面に微細孔が正方格子状に周期的に形成されている。図1に本実施例である光放射構造体の表面部の外観とその断面を示す。
[効果の説明]
図4に第1の実施例の光放射構造体を1400Kに加熱した時の熱放射スペクトルを実線で示す。合わせて同温度の黒体の熱放射スペクトル、キャップ層がないW光放射構造体とTa光放射構造体の熱放射スペクトルをそれぞれ破線と点線で示した。黒体の熱放射スペクトルBBは理論値である。1400Kでは黒体から1μm以下のエネルギーの高い波長光は殆ど放出されない。正方形の1辺の長さLを0.8μmにしたとき、放射スペクトルのピ−ク波長λpは1.6μmとなった。Wの熱膨張率は5×10−6(1/K)程度であり、1000℃の温度上昇により、開口径は0.5%程度増大するが、ピ−ク波長に対する影響は小さい。本実施例のTaキャップ層のW光放射構造体の放射スペクトルの1/e全幅は0.6μmであった。ピーク放射率はほぼ1である。キャップ層がないタングステンの光放射構造体の場合は、スペクトルの1/e全幅は0.8μmであった。Taキャップ層を用いたことで、スペクトル幅が25%低減した。ちなみにキャップ層がないTaだけからなる光放射構造体の場合は、放射強度は半減した。本実施例の光放射構造体において、光電変換波長1.8μm以上の領域での放射強度は、キャップ層がないTaのみの光放射構造体のものと一致した。
[製造方法の説明]
Taなどの高融点金属は通常の蒸着法が難しかったが、近年は電子線蒸着法やスパッタリング法が開発され、Ta薄膜が比較的簡単に得られるようになった。スパッタリング成膜法には、2極スパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロン法、反応性スパッタリング法などがあり、基本的にはいずれを用いてもよい。スパッタリング成膜法は成膜プロセスが安定していて、緻密で強い膜が高精度に均一な膜厚で作製できる。複数種の金属タ−ゲットを用いて所望の組成の合金膜を形成できる。2極スパッタリング法では、ターゲットを陰極、薄膜形成する基材・基板を陽極として電圧を加え、ガスイオン原子でターゲット表面を叩き、飛び出したターゲット材料物質の粒子(原子・分子)が基板に堆積する。マグネトロン法では、ターゲットの裏面に磁石を設置して磁界を発生させ、ガスイオン原子がターゲット表面に衝突し、叩きだされる二次電子をローレンツ力で捕らえてサイクロトロン運動で不活性ガスのイオン化を促進する。負イオンや二次電子を磁界で捕らえられるため、基材・基板温度の上昇が抑えられ、捕えた電子でガスイオン化が促進され、成膜速度を高速にできるため、スパッタリングによる成膜技術の主流になっている。高周波スパッタリング法は金属以外の成膜もできる。Arガスに加えて、酸素や窒素などの反応性ガスを導入する反応性スパッタリングでは、酸化物や窒化物の成膜ができる。
[第2の実施例]
[構造の説明]
本発明の第2の実施例である光放射構造体は単結晶Cr(クロム)本体とTaキャップ層とTa2O5酸化膜を有する。本実施例の光放射構造体を有するエミッタは、長さ25cm、幅5cm、厚さ5mmの板状エミッタである。本実施例の光放射構造体を適用したTPV装置は、前記の板状エミッタを8角形に組み合わせた8角柱形状のエミッタを有する。8角柱の外側の表面には本実施例の光放射構造体の微細孔が正方格子状に周期的に形成されている。本実施例を適用したTPV装置では、メタンガスを燃料とする携帯型非常用発電装置であり、波長フィルタを使わない簡単な装置構成で、1400Kのエミッタ温度で、出力1kW、発電効率15%の値が得られた。
図17にTaとCrの平板の放射率スペクトルを示す。Crは安価で加工しやすいが、放射率スペクトルが広い。Crの平板の放射率は波長2.5μmまで放射率約0.45の一定値を示している。一方Taは波長1.3μm以上で放射率0.5以下の小さな値である。これらを組み合わせることで、狭幅の熱放射スペクトルが得られる。
[製造方法の説明]
第2の実施例の光放射構造体は、表面を鏡面にしたCr単結晶にスパッタリングでTaを0.3μm厚形成し、第1の実施例の光放射構造体の製造方法を適用して製造できる。電子線露光で直径0.9μmの円形の微細孔を周期1.2μmの正方格子状に周期的にパタ−ニングした後、ドライエッチング装置で開口直径の1.67倍の深さ1.5μmまでエッチングした。得られた光放射構造体を空気中で1000℃に加熱し、Cr本体にCr2O3熱酸化膜及びTa表面にTa2O5の熱酸化膜を形成した。これらの熱酸化膜は、非常に緻密で安定な不動態膜であるため、高温での金属内部への酸化の進行や水素取り込みを抑制する効果がある。
[第3の実施例]
[構造の説明]
本発明の第3の実施例は、酸化膜保護層と中間層を有する三角格子周期で円形開口の光放射構造体であり、第2の実施の例のTPV装置のエミッタに用いられる。図19に第3の実施例の光放射構造体を示す。第3の実施例の光放射構造体は、光放射構造体130、Cr本体131、Cr2Ta中間層132、Taキャップ層133、Cr2O3保護層134、円形微細孔135、三角格子周期Λ136からなる。Cr2Ta中間層132は100nm厚、Taキャップ層133は0.3μm厚である。これらの合計の厚さt_capは0.40μmである。Cr2O3保護層134は100nm厚である。Taキャップ層133には、1w%〜20w%のCrを含ませてもよい。Taキャップ層の放射率の増加を抑制するために、Crの含有率は20w%以下が望ましい。さらに緻密な熱酸化膜を得るために1w%〜5w%のB(ホウ素)を添加してもよい。TaにCrを入れることで、大気中での加熱により、Cr:Taキャップ層の表面と開口部の断面にも緻密なCr2O3膜が形成される。微細孔表面の本体のCrにもCr2O3などの熱酸化膜が形成される。Cr2O3の融点は2435℃、Crの融点は1863℃、Taの融点は3020℃、Cr:Taの融点は2000℃以上であるので、1600℃までの加熱に耐える。
本実施例の場合、開口部の面積の割合は51%である。正方格子の場合、開口部の面積の割合は、次式
であり、同じ半径と周期の場合、開口部の面積の割合は44.2%である。三角格子の場合、正方格子の場合より開口部の面積の割合が15%程大きい。三角格子の場合、正方格子の場合と同様の放射スペクトル形状と狭窄効果が得られ、孔の密度が高いためにピーク放射率がやや向上する。
[効果の説明]
図22に第3の実施例に用いた酸化物のエリンガム図を示す。エリンガム図(Ellingham diagram)は、様々な酸化物について、各温度における酸化反応の標準生成ギブズエネルギーを表示した図である。標準生成ギブスエネルギーとは、酸素分子1molあたりの酸化反応によるギブスの自由エネルギーの変化量である。組成式に含まれる酸素数が異なる物質同士でも比較できる利点がある。
[製造方法の説明]
第3の実施例の光放射構造体は、開口のパタ−ニングを三角格子周期で円形開口の設定に変更し、第2の実施例の光放射構造体と同様の製造方法で製造できる。中間層に用いたCr2TaはCrターゲットとTaターゲットの両方を用いて、スパッタリング時間や強度を変えて組成を制御しながら形成した。Ta表面にCr2O3保護膜を形成するには、反応性スパッタ装置において、流量50〜200sccm のO2を加え、Crと酸素プラズマにより、Ta表面にCr2O3層を成膜する。Cr2O3層のドライエッチングのエッチングガスとしては、CF4とO2との混合ガス(O2ガスの混合比10%〜40%)を用いることができる。エッチング条件は、例えばCF4:40sccm、O2:10sccm、圧力:400mTorr、高周波電力:300Wである。O2ガスの混合比20%で酸化クロムのエッチング速度は0.4μm/分である。
[第4の実施例]
[構造の説明]
図23に本発明の第4の実施例の光放射構造体を示す。第4の実施例の光放射構造体は、酸化膜保護層と中間層を有する正方格子周期で円形開口の光放射構造体であり、第2の実施の例のTPV装置のエミッタに用いられる。第4の実施例の大きな特徴は、微細孔が正方格子周期であること、光放射構造体の本体にMoSi2なるシリコンと金属の化合物を用いていること、保護膜にSiO2を用いていることである。
[効果の説明]
MoO3の融点は795℃であり、蒸気圧が高い。そのため大気中でMoSi2を1000℃〜1200℃に加熱すると、MoO3の形でMoが離脱し、MoSi2の表面に緻密なSiO2被膜が形成される。室温に戻すとSiO2膜には圧縮応力がかかるが、SiO2膜は圧縮応力に耐える。MoSi2の電気伝導度は4.6×106(1/Ωm)であり、Crの電気伝導度6.5×106(1/Ωm)と同程度である。電気伝導に寄与する自由電子は光を反射、吸収する働きをする。このためMoSi2は高融点かつCrと同様の高い放射率を有するので、本実施例の光放射構造体の本体に適用できる。MoSi2の融点は2030℃で、熱膨張係数は8.2×10-6(1/K)である。これはTaの熱膨張係数よりやや大きいのでTaに圧縮応力がかかる。Mo5Si3の融点は2150℃で、熱膨張係数は6.7×10-6(1/K)であり、Taの熱膨張率とほぼ等しい。
TaMoSi2中間層はMoSi2本体とTaキャップ層との熱膨張差に起因する応力を緩和するために、Taキャップ層の剥れを抑制する。微細孔の深さtと、Taキャップ層の厚さが大きいので、仮にTaキャップ層の酸化が徐々に進行しても、Ta層がなくなりにくいので、寿命が大きくなる。
[製造方法の説明]
MoSi2は高融点材料であるため、一般的溶融法でバルク材を製造することは難しい。MoSi2はアーク溶解法、反応焼結法、真空プラズマスプレー法、拡散反応法、ホットプレス、HIP等を用いて製造される。製造過程は無酸素状態で行う。酸素の混入があるとSiO2ガラス相が粒界に偏析し、高温度域で軟化するためにクリープ特性が劣化する。入手したMoSi2板を鏡面研磨し、硫酸系エッチャントとHF系エッチャントで表面の酸化膜を除去した。背圧1×10-6Torrのマグネトロンスパッタ装置に入れ、基板温度300℃で、MoSi2板にスパッタリングでTa薄膜を0.65μm厚蒸着した。さらにプラズマCVD装置でSiO2層を50nm厚形成し、拡散炉を用い、窒素中1200℃で1時間、加熱してTaを拡散させ、50nm厚のTaMoSi2中間層を形成した。
[第5の実施例]
[構造の説明]
第5の実施例の光放射構造体は、Al2O3 (サファイア)基材とCr/Tiコ−ト層とTaキャップ層とAl2O3保護層を有する正方格子周期で円形開口の光放射構造体であり、第2の実施例のTPV装置のエミッタに用いられる。第5の実施例の大きな特徴は、金属ではない基材と金属コ−ト層を組み合わせて用いていることである。図24に本発明の第5の実施例の光放射構造体を示す。
[効果の説明]
Al2O3基材を用いたため、耐酸化性の高いエミッタが得られる。透明なAl2O3基材を用いた場合、Cr/Tiコ−ト層を施すことで、Crから熱放射が放出される。Al2O3とCrとTaの熱膨張係数が近いので、金属層の剥れがなく長寿命である。スペクトル狭窄効果は、上記の実施例と同様に得られる。
[製造方法の説明]
図25に第5の実施例の光放射構造体の加工工程の説明図を示す。Al2O3基材151の表面にCr/Tiコ−ト層152とTaキャップ層153とAl2O3保護層154を反応性スパッタリング法で形成する。第1の実施例と同様の方法で、フォトレジストマスク157などを用いて、1.2μm正方格子周期の0.9μm直径の円形開口のパタ−ニングを行い、ドライエッチングで深さ2.5μm微小孔を形成した。Al2O3基材151への微小孔の形成に関しては、誘導結合型プラズマエッチング装置を用いた。反応室の下部電極の上にウエハを載置し、反応室内の空気を排出して、反応室内の圧力を2×10-3Paとした。
[第6の実施例]
[構造の説明]
第6の実施例の光放射構造体は、黒色アルミナとTi中間層とTaキャップ層とAl2O3保護層を有する正方格子周期で円形開口の光放射構造体であり、第2の実施例のTPV装置のエミッタに用いられる。第6の実施例の特徴は、光放射構造体の本体に赤外波長の放射率がある黒色アルミナを用いていることである。
[効果の説明]
本実施例の黒色アルミナにはCo-Cr-Fe系やCo-Mn-Fe系などのスピネル系の固溶体である黒色セラミック顔料が含まれているために、赤外波長域に放射率0.3〜0.4を有する。Taキャップ層があるので、これまでの実施例のものと同様の波長狭窄効果が得られる。
[製造方法の説明]
本実施例の製造方法は前記の実施例と同様に、黒色アルミナ板状にTi中間層、Taキャップ層、アルミナ保護膜を反応性スパッタリング装置で形成し、パタ−ニング後、誘導結合型プラズマエッチング装置を用いて、金属層とアルミナに微細孔を形成する。
[第7の実施例]
[構造の説明]
第7の実施例の光放射構造体は、Er3Al5O12本体とTi中間層とTaキャップ層とAl2O3保護層を有する正方格子周期で円形開口の光放射構造体であり、第2の実施例のTPV装置のエミッタに用いられる。第7の実施例の特徴は、光放射構造体の本体に希土類Erを含むスピネル酸化物Er3Al5O12を用いていることである。
[効果の説明]
Er3Al5O12板を加熱すると、Er2+イオンのf軌道の電子遷移による1.5〜1.6μm帯の狭幅の熱放射が得られる。
[製造方法の説明]
スピネル酸化物Er3Al5O12板は、Er2O3とAl2O3の紛体を数μm粒径に粉砕し混ぜ合わせた後に加圧成型して、大気中、温度1600℃で3時間、加熱炉で焼結することで得られる。必要に応じて少量の焼結補助剤を用いる。
[第8の実施例]
[構造の説明]
第8の実施例の光放射構造体は、波長2μm〜10μmの中赤外波長帯域の光放射構造体であり、中赤外に吸収波長を有するガスを検出するガス検出装置の光源に用いられる。図28に本発明の第8の実施例の光放射構造体を示す。
[効果の説明]
図30に本発明の第8の実施例の光放射構造体の熱放射スペクトル(600K)を示す。黒体放射は600Kでの計算値である。光放射構造体の放射強度はSiCの放射率で補正した。Nbキャップ層がないCrだけの同直径開口の光放射構造体の熱放射スペクトルはピーク波長が5μmでスペクトル幅が広い。本実施例の熱放射スペクトルは波長4.3μm付近に強いピークを有する半値幅4μmのスペクトルであった。
[製造方法の説明]
第8の実施例の光放射構造体は、第3の実施例の光放射構造体と同様の方法で製造できる。
[第9の実施例]
[構造の説明]
第9の実施例の光放射構造体は、波長0.4μm〜0.7μmの可視光波長帯域の光放射構造体であり、照明用のフィラメントに用いられる。図31に本発明の第9の実施例の光放射構造体を示す。第9の実施例の光放射構造体は、光放射構造体210、W結晶本体211、AgWキャップ層212、円形微細孔213、正方格子周期Λ214からなる。AgWキャップ層212のAgは20原子%〜30原子%濃度、層厚は0.2μmである。円形微細213の周期Λは0.36μm、開口形状は円形で、円の直径Dは0.24μm、微細孔の深さtは0.6μmである。Λ/D比(=0.36/0.24)は1.5、t/D比(=0.6/0.24)は2.5である。t_cap/t比(=0.2/0.6)は0.33である。キャップ層212の材料にはAgW代わりに、近赤外での放射率がより小さいAgTaを用いることもできる。
[効果の説明]
波長0.7μmでの放射率はW板で0.5、AgW板で0.2、AgTa板で0.1以下である。AgWやAgTaをキャップ層に用いることで、波長0.7μm以上の赤外光の放射率を0.3以下に抑制できる。Wは可視域で0.5以上の高い放射率があるので、加熱時に光放射構造体フィラメントに形成された微小開口から強い可視光放射が得られる。Agを添加することで可視域での反射率を更に上げることができ、白色電球のフィラメントが得られる。
[製造方法の説明]
AgWはW結晶基板の両面にスパッタリングで形成する。これまでと同様の方法で、開口直径0.24μmのパタ-ニングを行い、ドライエッチングで光放射構造体を表面に形成する。裏面にも同様のプロセスで光放射構造体を表面に形成する。光放射構造体ウエハをフィラメントに用いる上記のサイズに切断してカットして内部に接続用の孔を開け、内部導入端子に接続してフィラメントを形成する。得られたフィラメントを白熱電球の中に設置し、不活性ガスで封止して本実施例の白熱電球を製造する。
[その他の実施例]
図35に本発明の光放射構造体のその他の実施例の材料と構造を示す。これらの光放射構造体はTPV装置用途で1.6μm帯の放射スペクトルを有する、光放射構造体の本体、中間層、キャップ層、保護膜の材料の組み合わせの例である。熱膨張係数の調整によるキャップ層の剥れ防止のために、中間層は本体とキャップ層の材料から成ることが多い。実施例においては、中間層の融点が本体より低下しないように、本体とキャップ層の組み合わせを選択した。本実施例の光放射構造体は安定な酸化膜に覆われているので、多くは大気中で1100℃以上の高温に耐える。酸化膜は赤外で透明なため本実施例の放射スペクトルの狭窄効果を妨げない。あるいは本体が高融点金属である場合、その高融点金属にRe、Os、Ir、Pt、Auなどを微小量添加することで、延性や強度を上げてもよい。これらの実施例の光放射構造体は、安価な材料で長寿命なTPV発電用のエミッタを提供できる。また同じ材料でも構造を変えることで、他の波長帯の放射が得られる。以下にその他の実施例について述べる。
Al:Wキャップ層はWに5%のAlを含む。12%以上のAlを含むとAlWの融点は1650℃に急激に低下するので、Al濃度は10%以内に制御する。
(付記1)
複数の微細孔を持つ光放射構造体であって、前記微細孔が第1の金属元素を含む第1の材料を備え、前記微細孔以外の表面の少なくとも一部に前記第1の金属元素とは異なる第2の金属元素を含む第2の材料を備え、前記光放射構造体が発する熱放射スペクトルのピーク波長より大きい波長の光において前記第1の材料の放射率が前記第2の材料の放射率より大きいことを特徴とする光放射構造体。
(付記2)
前記複数の微細孔が周期的に配列し、前記微細孔の開口径Dに対して、前記微細孔の配列周期の大きさΛと前記微細孔の深さtが、1.08≦Λ/D≦2かつ1≦t/D≦20であり、前記微細孔の深さtに対して、前記第2の材料の厚さsが1/20≦s/t≦1/2である付記1に記載の光放射構造体。
(付記3)
前記微細孔が三角格子状あるいは正方格子状に周期的に配列し、前記微細孔の開口形状が円または正多角形である付記1または2に記載の光放射構造体。
(付記4)
前記第1の材料または前記第2の材料が1000℃以上の融点を有し、前記第1の材料が金属、合金、それらのシリコン化合物、ホウ化物、炭化物または窒化物であり、前記第2の材料が金属または合金である付記1から3のいずれか1項に記載の光放射構造体。
(付記5)
前記第1の材料の金属元素がCr、Zr、V、Ti、W、Mo、Nb、Hfのいずれか一つであり、前記第2の材料の金属元素が前記第1の材料の金属元素と異なる金属元素でありTa、W、Mo、Nb、Hfのいずれか一つを含む付記1から4のいずれか1項に記載の光放射構造体。
(付記6)
前記第1の材料の金属元素に加えてFe、Ni、Co、Cu、Al、Siの少なくとも一つの元素を含むか、または、Re、Os、Ir、Pt、Auの少なくとも一つの元素を含む付記5に記載の光放射構造体。
(付記7)
前記第1の材料がWSi2、TaSi、MoSi2、NbSi2、HfSi2、CrSi2、ZrSi2、VSi2、TiSi2なるシリコン化合物、TaB2、W2B5、MoB2、NbB2、HfB2、CrB2、ZrB2、VB2、TiB2なるホウ化物、TaC、WC、MoC、NbC、CrC、ZrC、VC、TiCなる炭化物、または、TaN、WN、MoN、NbN、CrN、ZrN、VN、TiNなる窒化物である付記4に記載の光放射構造体。
(付記8)
前記第2の材料にさらにCr、Si、Al、V、Zr、Ca、Mg、Agのうちの少なくとも一つの元素を1w%〜20w%の範囲の濃度で含む付記5から7のいずれか1項に記載の光放射構造体。
(付記9)
前記第2の材料にさらにホウ素を1w%〜5w%の範囲の濃度で含む付記5から8のいずれか1項に記載の光放射構造体。
(付記10)
前記第1の材料または第2の材料の表面が酸化物の保護層で覆われており、前記酸化物は前記第1の材料または第2の材料の熱酸化膜、または、前記第1の材料または第2の材料に加えられたCr、Si、Al、V、Zr、Ca、Mg、Agの少なくとも一つの元素を含む熱酸化膜である付記1から9のいずれか1項に記載の光放射構造体。
(付記11)
前記第1の材料と第2の材料の間に中間層を有し、前記中間層がW、Mo、Nb、Hfであるか、または、前記第1の材料と第2の材料に含まれる金属元素を含む合金である付記1から10のいずれか1項に記載の光放射構造体光放射構造体。
(付記12)
前記第1の材料がセラミック基材に接しているか、または、金属不純物もしくは炭素を含む酸化物材料である付記1から11のいずれか1項に記載の光放射構造体。
(付記13)
前記セラミック基材はSiC、Al2O3、SiO2、CaO、MgOまたはBNであり、前記金属不純物はCo、Cr、Fe、MnまたはNiであり、前記酸化物は希土類を含みAl、Ga、Si、Ge、Ca、Mg 、ZrまたはVを含む酸化物材料である付記12に記載の光放射構造体。
(付記14)
付記1から13のいずれか1項に記載の光放射構造体、前記光放射構造体を加熱する加熱装置及び前記光放射構造体からの光を光電変換する光電変換素子を備えた熱光起電力発電システムであって、光電変換素子の発電限界波長λ0に対して、微細孔の開口直径Dを略λ0/2に制御した熱光起電力発電システム。
(付記15)
前記光放射構造体は温度T(600℃≦T≦1700℃)になるように加熱される請求項14に記載の熱光起電力発電システム。
(付記16)
付記1から13のいずれか1項に記載の光放射構造体を真空または希ガス封止した透明封止体と、前記光放射構造体を通電加熱する通電加熱装置を備えた可視光照明装置。
(付記17)
付記1から13のいずれか1項に記載の光放射構造体を含む赤外線光源部、前記赤外線光源部からの赤外線を通過させ、検知対象のガスが導入される測定セル部、前記測定セル部を通過した赤外線を検出する検出器部を備えたガス検知装置。
(付記18)
前記光放射構造体から放射される赤外線のうち所望の波長を通過させる波長選択フィルタを備えた付記17に記載のガス検知装置。
2 矩形微細孔
11 光放射構造体
12 単結晶タングステンの光放射構造体
13 タンタルキャップ層
14 微細孔
15 微細孔の周期Λ
16 正方形の1辺の長さL
71 支持台
72 ガス導入管
73 ガスバーナ
74 火炎口
75 光放射構造体(右)
76 スペ−サ
77 光放射構造体(左)
78 断熱支持体
79 微小孔アレイ
80 支持板
81 PV素子
82 放熱板
83 支持板
84 PV素子
85 放熱板
91 タングステン単結晶基板
92 タンタル薄膜
93 フォトレジスト
94 アルミニウム薄膜
95 電子線露光用レジスト
96 電子線レジストマスク
97 アルミニウムマスク
98 フォトレジストマスク
99 タングステン光放射構造体
100 光放射構造体
101 単結晶Crの光放射構造体
102 Taキャップ層
103 微細孔
104 周期Λx
105 周期Λy
106 開口円の直径D
107 孔の深さt
108 Ta2O5酸化膜
109 Cr2O3酸化膜
110 支持台
111 メタン導入管
112 空気導入管
113 支持脚
114 混合気導入管
115 放熱フィン
116 PV素子
117 8角形エミッタ
118 バ−ナ−
119 火炎口
120 断熱板
121 通気口
122 はめ込み接合部
123 メスのクロム板
124 オスのクロム板
130 光放射構造体
131 Cr本体
132 Cr2Ta中間層
133 Taキャップ層
134 Cr2O3保護層
135 円形微細孔
136 三角格子周期Λ
140 光放射構造体
141 MoSi2本体
142 TaMoSi2中間層
143 Taキャップ層
144 SiO2保護層
145 円形微細孔
146 正方格子周期Λ
150 光放射構造体
151 Al2O3基材
152 Cr/Tiコ−ト層
153 Taキャップ層
154 Al2O3保護層
155 円形微細孔
156 正方格子周期Λ
157 フォトレジストマスク
158 Cr/Ti層
159 Cr/Tiリフトオフ層
160 光放射構造体
161 黒色アルミナ本体
162 Ti中間層
163 Taキャップ層
164 Al2O3保護層
165 円形微細孔
166 正方格子周期Λ
170 光放射構造体
171 Er3Al5O12本体
172 Ti中間層
173 Taキャップ層
174 Al2O3保護層
175 円形微細孔
176 正方格子周期Λ
180 光放射構造体
181 Cr本体
182 CrNb中間層
183 Si:Nbキャップ層
184 SiO2保護層
185 円形微細孔
186 正方格子周期Λ
190 赤外線光源部
191 電線
192 ヒ−タ部
193 光放射構造体
194 ミラ−
195 波長選択フィルタ
196 測定セル部
197 検出器部
198 回転チョッパ−
199 同期モータ
200 前室
201 後室
202 熱流量センサ
203 検出ガス導入部
204 検出ガス排出部
205 光路
210 光放射構造体
211 W結晶本体
212 AgWキャップ層
213 円形微細孔
214 正方格子周期Λ
220 中心電極
221 外部導入線
222 口金
223 マウント
224 バルブ
225 内部導入線
226 光放射構造体フィラメント
227 不活性ガス
228 絶縁材
Claims (10)
- 複数の微細孔を持つ光放射構造体であって、前記微細孔が第1の金属元素を含む第1の材料を備え、前記微細孔以外の表面の少なくとも一部に前記第1の金属元素とは異なる第2の金属元素を含む第2の材料を備え、前記光放射構造体が発する熱放射スペクトルのピーク波長より大きい波長の光において前記第1の材料の放射率が前記第2の材料の放射率より大きいことを特徴とする光放射構造体。
- 前記複数の微細孔が周期的に配列し、前記微細孔の開口径Dに対して、前記微細孔の配列周期の大きさΛと前記微細孔の深さtが、1.08≦Λ/D≦2かつ1≦t/D≦20であり、前記微細孔の深さtに対して、前記第2の材料の厚さsが1/20≦s/t≦1/2である請求項1に記載の光放射構造体。
- 前記第1の材料または前記第2の材料が1000℃以上の融点を有し、前記第1の材料が金属、合金、それらのシリコン化合物、ホウ化物、炭化物または窒化物であり、前記第2の材料が金属または合金である請求項1または2に記載の光放射構造体。
- 前記第1の材料の金属元素がCr、Zr、V、Ti、W、Mo、Nb、Hfのいずれか一つであり、前記第2の材料の金属元素が前記第1の材料の金属元素と異なる金属元素でありTa、W、Mo、Nb、Hfのいずれか一つを含む請求項1から3のいずれか1項に記載の光放射構造体。
- 前記第1の材料がWSi2、TaSi、MoSi2、NbSi2、HfSi2、CrSi2、ZrSi2、VSi2、TiSi2なるシリコン化合物、TaB2、W2B5、MoB2、NbB2、HfB2、CrB2、ZrB2、VB2、TiB2なるホウ化物、TaC、WC、MoC、NbC、CrC、ZrC、VC、TiCなる炭化物、または、TaN、WN、MoN、NbN、CrN、ZrN、VN、TiNなる窒化物である請求項3に記載の光放射構造体。
- 前記第1の材料または第2の材料の表面が酸化物の保護層で覆われており、前記酸化物は前記第1の材料または第2の材料の熱酸化膜、または、前記第1の材料または第2の材料に加えられたCr、Si、Al、V、Zr、Ca、Mg、Agの少なくとも一つの元素を含む熱酸化膜である請求項1から5のいずれか1項に記載の光放射構造体。
- 前記第1の材料と第2の材料の間に中間層を有し、前記中間層がW、Mo、Nb、Hfであるか、または、前記第1の材料と第2の材料に含まれる金属元素を含む合金である請求項1から6のいずれか1項に記載の光放射構造体光放射構造体。
- 請求項1から7のいずれか1項に記載の光放射構造体、前記光放射構造体を加熱する加熱装置及び前記光放射構造体からの光を光電変換する光電変換素子を備えた熱光起電力発電システムであって、光電変換素子の発電限界波長λ0に対して、微細孔の開口直径Dを略λ0/2に制御した熱光起電力発電システム。
- 請求項1から8のいずれか1項に記載の光放射構造体を真空または希ガス封止した透明封止体と、前記光放射構造体を通電加熱する通電加熱装置を備えた可視光照明装置。
- 請求項1から8のいずれか1項に記載の光放射構造体を含む赤外線光源部、前記赤外線光源部からの赤外線を通過させ、検知対象のガスが導入される測定セル部、前記測定セル部を通過した赤外線を検出する検出器部を備えたガス検知装置。
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